(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】アブレイダブル材料を含むハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
C22C 1/08 20060101AFI20240826BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240826BHJP
B22F 1/0655 20220101ALI20240826BHJP
B23K 35/30 20060101ALI20240826BHJP
C22C 1/04 20230101ALI20240826BHJP
C22C 19/05 20060101ALI20240826BHJP
F01D 11/12 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
C22C1/08 Z
B22F1/00 M
B22F1/0655
B23K35/30 310D
C22C1/04 B
C22C19/05 B
C22C19/05 C
F01D11/12
(21)【出願番号】P 2021547726
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 US2020018046
(87)【国際公開番号】W WO2020172034
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】アナンド、クリシュナムルシィ
(72)【発明者】
【氏名】アダハラプラプ、ラガンヴェンドゥラ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】カッラ、エカラヴヤ
(72)【発明者】
【氏名】パブラ、シュリンダー シン
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03879831(US,A)
【文献】特開2016-075273(JP,A)
【文献】特表2004-507620(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0040210(US,A1)
【文献】米国特許第03817719(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0137259(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108431290(CN,A)
【文献】特開2016-017027(JP,A)
【文献】特開2005-263595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/08
C22C 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム構造体(300)であって、当該ハニカム構造体(300)が、
複数のセル(320)であって、前記複数のセル(320)の各セル(320)
が、空隙(310)を取り囲むセル壁(330)を含む
、複数のセル(320)と、
前記複数のセル(320)の各セル(320)の前記空隙(310)内のアブレイダブル材料であって、前記アブレイダブル材料
が、少なくとも1つの金属合金
及び複数の中空粒子を含み、前記少なくとも1つの金属合金
が、ろう付け合金を含み、前記複数の中空粒子
が、中空フライアッシュ粒子を含み、前記ろう付け合金
及び前記中空フライアッシュ粒子
が、結合剤と混合され、次いで前記複数のセル(320)に充填されるアブレイダブル材料と
を含む、ハニカム構造体(300)。
【請求項2】
前記ろう付け合金
が、900℃~1200℃の範囲内のろう付け温度を有する活性ニッケル基ろう付け合金であり、前記活性ニッケル基ろう付け合金
が、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)
及びハフニウム(Hf)からなる群から選択される少なくとも1つの活性元素を含む、請求項1に記載の
ハニカム構造体(300)。
【請求項3】
前記ろう付け合金
が、Ni-Cr7%-Si4.5%-Fe3%-B3.2%-Ti0.5~10%であり、割合
が重量割合であり、残部
がニッケル(Ni)である、請求項1に記載の
ハニカム構造体(300)。
【請求項4】
前記アブレイダブル材料
が、
3.05mm~5.08mm(120ミル~200ミル
)の範囲内の厚さを有する、請求項1に記載の
ハニカム構造体(300)。
【請求項5】
前記金属合金
が、細孔を含まない、請求項1に記載の
ハニカム構造体(300)。
【請求項6】
前記セル壁(330)
が、前記アブレイダブル材料を含む、請求項1に記載の
ハニカム構造体(300)。
【請求項7】
タービンエンジン(100)用の少なくとも1つの鋼部品に対する摩擦損傷を低減する方法であって、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のハニカム構造体(300)を前記少なくとも1つの鋼部品に適用する
こと
を含む、方法。
【請求項8】
前記ハニカム構造体(300)を前記少なくとも1つの鋼部品に適用すること
が、前記ハニカム構造体(300)の前記金属製アブレイダブルと前記セル壁(330)の両方を前記少なくとも1つの鋼部品の表面に結合することを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ハニカム構造体およびアブレイダブル材料に関し、より詳細には、摩擦損傷を低減するためにガスタービンエンジンの鋼構成要素に適用されるアブレイダブル材料を含むハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
慣例として、アブレイダブル材料は、回転機械内の可動部品と静止部品との間に使用され、それにより部品の1つがアブレイダブル材料に溝を切削するか、または擦り込む。ガスタービンエンジンでは、アブレイダブル材料は通常、静止ケース(例えば、シュラウド)上に載置され、回転ブレードは、アブレイダブル材料に溝を切削する/擦り込む。これにより、熱成長およびブレードクリープに対応することができる。しかし、ガスタービンエンジンのシュラウドが基材としてステンレス鋼を含む場合、効果的なアブレイダブルシステムを提供するために、鋼シュラウドと従来のアブレイダブル材料との間の熱膨張係数(CTE)の不一致の増大に対処する必要がある。これらの従来のアブレイダブルシステムは、ガスタービンエンジンの高温、大きなガス流、および酸化しやすい環境を考慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
アブレイダブル材料を含むハニカム構造体、およびタービンエンジンの鋼部品に対する摩擦損傷を低減する方法が開示される。本開示の第1の態様では、ハニカム構造体は、複数のセルであって、複数のセルの各セルは、空隙を取り囲むセル壁を含む複数のセルと、複数のセルの各セルの空隙内のアブレイダブル材料であって、アブレイダブル材料は、少なくとも1つの金属合金および複数の中空粒子を含み、少なくとも1つの金属合金は、ろう付け合金を含み、複数の中空粒子は、フライアッシュ粒子を含むアブレイダブル材料とを含む。
【0005】
本開示の第2の態様では、ハニカム構造体は、複数のセルであって、複数のセルの各セルは、空隙を取り囲むセル壁を含む複数のセルと、複数のセルの各セルの空隙内のアブレイダブル材料であって、アブレイダブル材料は、少なくとも1つの金属合金および複数の中空粒子を含み、少なくとも1つの金属合金は、MCrAlY-NiAlx(式中、Mは、Fe、Co、およびNiの1つまたは複数であり、xは、20%以上である)を含み、複数の中空粒子は、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、およびヒドロキシアパタイトからなる群から選択される少なくとも1つを含むアブレイダブル材料とを含む。
【0006】
本開示の第3の態様では、タービンエンジン用の少なくとも1つの鋼部品に対する摩擦損傷を低減する方法は、摩擦を起こしやすい場所で金属製アブレイダブル充填ハニカム構造体(metallic abradable filled honeycomb structure)を少なくとも1つの鋼部品に適用することであって、ハニカム構造体は、複数のセルを含み、複数のセルの各セルは、空隙を取り囲むセル壁を含み、金属製アブレイダブルは、少なくとも1つの金属合金および複数の中空粒子を含むことと、複数のセルの各セルの空隙を充填することとを含む。
【0007】
本開示のこれらおよび他の特徴は、本開示の様々な実施形態を図示する添付の図面と併せて、本開示の様々な態様に関する以下の詳細な説明から、さらに容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ケーシング/シュラウドに近接したブレードを含むガスタービンエンジンの一部の概略断面図である。
【
図2】摩擦後のブレード摩耗およびシュラウド切断部を概略的に示す図である。
【0009】
本開示の図面は、必ずしも原寸に比例しないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様だけを図示することを意図しており、したがって、本開示の範囲を限定するものと考えるべきではない。図面では、類似する符号は、図面間で類似する要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、一般に、ハニカム構造体およびアブレイダブル材料に関し、より詳細には、摩擦損傷を低減するためにガスタービンエンジンの鋼構成要素に適用されるアブレイダブル材料を含むハニカム構造体に関する。上述したように、ガスタービンエンジンのシュラウドが基材としてステンレス鋼を含む場合、鋼シュラウドと従来のアブレイダブル材料との間の熱膨張係数(CTE)の不一致が増大する。また上述したように、CTE不一致の懸念に加えて、従来のアブレイダブルシステムは、ガスタービンエンジンの高温、大きなガス流、および酸化しやすい環境を考慮していない。
【0011】
本開示の様々な態様は、従来のステンレス鋼部品に関連する前述のCTE不一致の問題に対処し、大きなガス流(約1725ポンド/秒)であっても高温性能(≧1620°F)を依然として維持しながら低コスト材料を使用するアブレイダブル材料を有するハニカム構造体を含む。本開示のさらなる態様は、ハニカム自体の酸化を低減および/または防止するための手法を含む。したがって、従来の手法と比較して、本開示のハニカム構造体を利用することによって、鋼エンジン部品の損傷(例えば、摩擦損傷)および酸化を低減することができる。加えて、損傷および酸化に対する感受性の低下は、本開示のハニカム構造体を利用する鋼エンジン部品のより長い寿命に寄与する。
【0012】
図1は、中心(または主)軸の周りを回転するように構成されたブレード110と、ブレード110に隣接する静止ケーシングセクション120(例えば、シュラウド)とを含むガスタービンエンジン100のセクションを図示する。熱成長およびブレードクリープに対応する手段がなければ、ブレード摩耗およびシュラウド切断の一方または両方が発生する可能性があり、これは
図2に概略的に図示されている。
図2に示す左側の図(「摩擦前」)および水平破線は、摩擦およびブレード摩耗/シュラウド切断が発生する前のブレード110とシュラウド120との間の隙間を図示する。右側の図(「摩擦後」)は、摩擦後のブレード摩耗ギャップ210およびシュラウド切断部220を図示する。
図2に示すように、ブレード摩耗ギャップ210およびシュラウド切断部220は、ブレード110とシュラウド120との間の元の隙間(水平破線で示す)を著しく増加させる。この隙間の増加は、エンジン100(
図1)の全体的な性能を低下させる可能性がある望ましくないギャップおよび空気流漏れを引き起こし得る。
【0013】
ハニカム構造体は、隙間制御の目的で使用することができる。従来のハニカム構造体は、摩擦/切断が発生する際の過度の摩擦熱および/または摩耗を防止するために、典型的には中央に空気ギャップ(空隙)を有する金属セル壁を含む多数の六角形のセルを有する。しかし、各ハニカムセル内の空気ギャップは、空気力学的損失の原因である空気乱流(例えば、回転渦)を生じさせる可能性がある。したがって、ハニカムセルをアブレイダブル材料で充填することは、ハニカムセル壁が構造的完全性を提供することができる一方で、そのような空気力学的損失を排除することができるという点で有益であり得る。アブレイダブル材料で充填されたハニカム構造体の様々な態様を、
図3を参照して以下に説明する。
【0014】
本開示の態様では、
図3に図示されるように、複数のセル320を含むハニカム構造体300が提供される。各セル320は、空隙310を取り囲むセル壁330を有する。各セル320は、セルサイズ(高さと呼ばれることもある)「h」を含む。セルサイズ/高さhは、限定はしないが、1/8インチ、3/16インチ、1/4インチ、および3/8インチ(ミリメートル単位:それぞれ3.175、4.7625、6.35、および9.525)などのサイズを含み得る。様々な態様において、セル壁330は金属であり、ニッケル基合金などの金属合金を含むことができる。しかし、様々な態様において、従来の手法と比較して耐酸化性および/または酸化防止を改善するために、セル壁330にアルミニウムコーティングを設けることができる。
【0015】
空気力学的損失を低減または防止するために、様々な態様によれば、セル320内の空隙310は、アブレイダブル材料で充填される。アブレイダブル材料は、少なくとも1つの金属合金および複数の中空粒子を含むことができる。アブレイダブル材料の金属合金は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、およびコバルト(Co)のうちの任意の2つ以上を含んでもよい。そのような金属合金の非限定的な例には、ろう付け合金またはMCrAlY-NiAlx(式中、Mは、Fe、Co、およびNiの1つまたは複数であり、xは、20%以上である)が挙げられる。アブレイダブル材料の中空粒子は、中空フライアッシュ粒子および中空セラミック粒子を含むことができる。中空セラミック粒子は、限定はしないが、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、およびヒドロキシアパタイトの中空球を含み得る。
【0016】
Al2O3およびSiO2を主成分とする中空フライアッシュ粒子に関して、そのような粒子は、低コストのフィラーであるという利点がある。したがって、本開示の一態様は、活性ろう付け合金によって共に保持された中空フライアッシュ粒子を含むアブレイダブル材料でセル320の空隙310を充填することを含む。例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)などの活性元素を含む活性ろう付け合金は、それらのセル壁が酸化アルミニウム、酸化クロム、および酸化ケイ素などの酸化物を含む場合であっても、セル320のセル壁330などの金属表面に濡れて結合することができる。ろう付け合金は、例えば、高温ニッケル基活性ろう付け合金とすることができる。Ni基ろう付け合金の非限定的な例は、Ni-7Cr-4.5Si-3Fe-3.2B-(0.5~10)Ti、またはより具体的には、Ni-7Cr-4.5Si-3Fe-3.2B-4.5Tiであり、数字は重量%を表し、残部はニッケル(Ni)である。そのようなNi基ろう付け合金は、活性元素と粒子、例えば、セラミック粒子の反応により、金属をセラミック粒子を含む中空粒子などのアブレイダブル粒子に接合することができる。加えて、ろう付け合金は、ホウ素(B)を含むことができる。ホウ素(B)がろう付け合金中に存在する場合、ホウ素(B)は、例えば、酸化ケイ素セラミックと反応して結合して様々なホウケイ酸ガラス相を形成し、ろう付けとセラミック粒子との間の接着性を改善することができる。ろう付け合金の組成は、選択されたろう付け合金が900℃~1200℃の範囲内のろう付け温度を有するように選択することができる。
【0017】
例示的な実施形態では、以下に開示されるように、中空フライアッシュ粒子およびろう付け合金を含むアブレイダブル材料を作製し、続いてハニカム構造体を充填する。ろう付け合金を中空フライアッシュ粒子と(例えば、遠心的に)混合することができ、有機結合剤(例えば、特殊グレードの有機結合剤)を混合物に添加することができる。有機結合剤は、ろう付け温度未満で分解するように選択することができ、それによって残留物を残さず、清浄なろう付け接合部を可能にする。適切なろう付け(後述)を確実にするために、混合物に使用されるろう付け合金は、中空フライアッシュ粒子と完全に接触するために粉末形態であることが好ましい。最適な混合体積比を粒径に基づいて選択することができるため、325メッシュ(<45ミクロン粒径)をろう付け粉末に使用することができる。得られる混合物はペーストの形態であり得、次いでハニカム構造体300の空隙310に充填することができ、セル壁330が混合物を含む(
図3)。上述したように、ハニカム構造体300のセル壁330には、充填前にアルミニウムコーティングが設けられてもよい。
【0018】
様々な態様において、充填後、充填ハニカム構造体は熱処理される。熱処理は、2つのステップ、すなわち、有機結合剤を焼失させるための1つのステップと、ろう付け合金を溶融させてハニカム構造体のセル壁ならびにアブレイダブル材料の粒子に結合させるための後続のステップとで行うことができる。そのような熱処理は、結果としてハニカムのセル内に収容され、例えば、120ミル~200ミル(1ミル=1インチの1/1000)の範囲であり得る選択された厚さを有するアブレイダブル材料を生成する。結果として得られるアブレイダブル材料は、その中に使用される材料の性質と同伴される多孔性の両方に起因するアブレイダブル性を有する。多孔性は中空粒子によるものであり、したがって、アブレイダブル材料の金属合金に細孔形成剤を添加する必要がなく、さらに無細孔金属合金の使用を可能にする。
【0019】
充填ハニカム構造体の別の例示的な実施形態では、金属合金は、脆性相としてNiAlx(x≧20%)が添加されたMCrAlY(式中、Mは、Fe、Ni、および/またはCoである)であってもよく、中空粒子は、酸化亜鉛の中空球であってもよい。この実施形態では、酸化亜鉛は、全アブレイダブル材料の22重量%を超えて構成され、得られるハニカム構造体のアブレイダブル性の改善に寄与する。酸化亜鉛中空球は、アブレイダブル材料の約40重量%を占めることができる。前述のように、ハニカム構造体300のセル壁330には、アブレイダブル材料で充填する前にアルミニウムコーティングが設けられてもよい。先に記載された実施形態と同様に、ハニカムのセル内に収容された結果として得られるアブレイダブル材料は、例えば、120ミル~200ミルの範囲であり得る選択された厚さを有することができる。
【0020】
本開示のさらに別の実施形態では、複数のセルを含むハニカム構造体が存在し、各セルは、空隙を取り囲むセル壁を含み、セル壁は、上述のアブレイダブル材料のいずれかを含む。言い換えれば、アブレイダブル材料は、ハニカム構造体自体のセルのセル壁を形成するようにパターニングされ、ハニカム構造体は、内部に依然として空隙を有するか、または内部にアブレイダブル材料で充填された空隙を有する。
【0021】
前述のアブレイダブル材料を含む本開示の上述のハニカム構造体は、例えば、鋼シュラウドとアブレイダブル材料との間の従来のCTE不一致の問題に対処するだけでなく、低コスト材料(例えば、中空フライアッシュ粒子)を使用することもでき、これらはすべて、大きなガス流(例えば、1725ポンド/秒)において高温性能(例えば、≧1620°F)を依然として維持している。加えて、従来の構造体と比較して考慮すると、ハニカム自体の酸化低減および/または防止を提供することができる(例えば、アルミナイド処理の場合)。本開示のハニカム構造体のこれらの特徴はすべて、従来の手法および結果として得られる構造体と比較して、そのようなハニカムを利用するエンジン部品のより長い寿命に寄与する。
【0022】
本開示のさらなる態様は、304グレードおよび310グレードのステンレス鋼などのステンレス鋼部品を含む、タービンエンジン用の少なくとも1つの鋼部品に対する摩擦損傷を低減する方法を含む。そのような方法は、例えば、摩擦を起こしやすい場所で上述の金属製アブレイダブル充填ハニカム構造体を鋼部品に適用することを含むことができる。充填ハニカム構造体の適用は、金属製アブレイダブルを鋼部品の表面に結合することを含むことができる。ハニカム構造体のセル壁への金属製アブレイダブルの結合は、鋼部品の表面への金属アブレイダブルの結合の前に、またはこれと同時に行うことができる。ハニカム構造体の充填および金属製アブレイダブルの結合は、以下のようにして行うことができる。
【0023】
上述したように、ハニカム構造体は、複数のセルを含み、複数のセルは、典型的には互いに規則的に離間しており、典型的には特定のセルサイズ(高さ「h」と呼ばれることもある、
図3参照)を有する六角形の形状である。複数のセルはまた、典型的には、特定のセル壁厚および特定の深さ(ハニカム厚さと呼ばれることもある)を有する。したがって、所与のセルが占める体積を、容易に推定することができる。よって、所定の量のオーバーフローと共にハニカム構造体の各セルを充填するのに必要な体積もまた、容易に決定することができる。このような体積を知ることにより、シリンジに所定の量のアブレイダブル材料のスラリーが供給される手動または自動化システムを使用して、スラリーをハニカム構造体のセルに分配することができる。スラリーの粘度は、アブレイダブル材料の個々の構成要素の体積および/または重量を考慮することによって調整することができる。自動化システムが利用される一実施形態では、システムは、各個々のハニカムセルに分配されるスラリーの量を制御するようにプログラムされてもよく、セルが所定の体積まで充填されることを確実にするために、あるセルから次のセルに移動するようにさらにプログラムされてもよい。
【0024】
金属ろう付け合金を含むアブレイダブル材料の場合、得られるろう付け接合部の連続的なメッシュを提供するために、金属ろう付け粒子間の連続的な接触を確実にするように少なくとも8~12体積パーセントの金属ろう付け合金を使用することができる。ろう付け合金によるセラミック媒体(例えば、中空フライアッシュ粒子)の濡れ性に応じて、またアブレイダブルの所望の最終的な特性を考慮して、金属ろう付け合金の体積パーセントは、約75体積パーセントまで増加させることができる。ハニカム構造体の充填後、充填ハニカム構造体全体は、少なくとも10-3mbarの真空を有する真空炉内でろう付けすることができる。ろう付け後、充填ハニカムセルがハニカムセルの壁の高さと同一平面になるように、ろう付けされた構造体を充填することができる。必要に応じて、ろう付けされた構造体は、例えば、タービンエンジン用の鋼部品に組み込まれる前に、追加の熱処理サイクルを受けてもよい。
【0025】
摩擦損傷を低減するための本開示の方法は、従来の手法と比較した場合、大きなガス流(例えば、1725ポンド/秒)であっても高温性能(例えば、≧1620°F)を依然として維持しながら、ステンレス鋼部品を含むタービンエンジン用の部品に対する摩擦損傷を低減することができ、場合によっては、その際に低コスト材料(例えば、中空フライアッシュ粒子)を利用する。したがって、従来の手法と比較した場合、本開示の方法は、部品のより長い寿命を可能にし、ひいては、製造、運転、および修理コストなどのガスタービンエンジンに関連する全体的なコストを低減することができる。
【0026】
本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「この(the)」は、特に明示しない限り、複数形も含むことを意図している。「備える(comprise)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、本明細書で使用する場合、記載した特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを明示するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの組が存在することまたは追加することを除外しないことがさらに理解されよう。
【0027】
本明細書および特許請求の範囲を通してここで使用される、近似を表す文言は、関連する基本的機能に変化をもたらすことなく、差し支えない程度に変動し得る任意の量的表現を修飾するために適用することができる。したがって、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語によって修飾された値は、明記された厳密な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例では、近似を表す文言は、値を測定するための機器の精度に対応することができる。ここで、ならびに本明細書および特許請求の範囲を通して、範囲の限定は組み合わせおよび/または置き換えが可能であり、文脈または文言が特に指示しない限り、このような範囲は識別され、それに包含されるすべての部分範囲を含む。範囲の特定の値に適用される「約」は、両端の値に適用され、値を測定する機器の精度に特に依存しない限り、記載された値の+/-10%を示すことができる。「実質的に」とは、大部分において、本開示の同じ技術的利益を提供する完全に指定されている、またはわずかな逸脱を主に指す。
【0028】
以下の特許請求の範囲におけるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクションの要素すべての、対応する構造、材料、動作、および均等物は、具体的に請求された他の請求要素と組み合わせてその機能を実施するための、一切の構造、材料、または動作を包含することを意図している。本開示の記述は、例示および説明の目的で提示されており、網羅的であることも、または本開示を開示した形態に限定することも意図していない。当業者には、本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく多くの修正および変形が明らかであろう。本開示の原理および実際の用途を最良に説明し、想定される特定の使用に適するように様々な修正を伴う様々な実施形態の本開示を他の当業者が理解することができるようにするために、本実施形態を選択し、かつ説明した。
【符号の説明】
【0029】
100 ガスタービンエンジン
110 ブレード
120 静止ケーシングセクション/シュラウド
210 ブレード摩耗ギャップ
220 シュラウド切断部
300 ハニカム構造体
310 空隙
320 セル
330 セル壁
h セルサイズ/高さ