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  • 特許-成形体の硬度の制御方法、及び成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】成形体の硬度の制御方法、及び成形体
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20240826BHJP
   B29C 43/20 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021552114
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2020030496
(87)【国際公開番号】W WO2021075131
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2019190825
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山縣 悠介
(72)【発明者】
【氏名】高野 重永
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】小谷 享平
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-001201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/34
B29C 43/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非共役オレフィン単位を含む結晶性部分と、共役ジエン単位を含むエラストマー部分とを有する共重合体からなり、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御する方法であって、
結晶性部分とエラストマー部分との比率が互いに異なる共重合体を2種以上用いて、結晶性部分とエラストマー部分との比率が互いに異なる成形部材を2種以上準備し、該成形部材を用いて、任意の箇所で結晶性部分とエラストマー部分との比率が異なる成形体を形成する工程と、
前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱し、成形体中の結晶性部分を融解させる工程と、
前記加熱後の成形体を冷却して固化させる工程と、
を含むことを特徴とする、成形体の硬度の制御方法。
【請求項2】
非共役オレフィン単位を含む結晶性部分と、共役ジエン単位を含むエラストマー部分とを有する共重合体からなり、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御する方法であって、
結晶性部分とエラストマー部分とのポリマー鎖での分布が互いに異なる共重合体を2種以上用いて、結晶性部分とエラストマー部分との分布が互いに異なる成形部材を2種以上準備し、該成形部材を用いて、任意の箇所で結晶性部分とエラストマー部分との分布が異なる成形体を形成する工程と、
前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱し、成形体中の結晶性部分を融解させる工程と、
前記加熱後の成形体を冷却して固化させる工程と、
を含むことを特徴とする、成形体の硬度の制御方法。
【請求項3】
非共役オレフィン単位を含む結晶性部分と、共役ジエン単位を含むエラストマー部分とを有する共重合体からなり、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御する方法であって、
結晶化度が互いに異なる共重合体を2種以上用いて、結晶化度が互いに異なる成形部材を2種以上準備し、該成形部材を用いて、任意の箇所で結晶化度が異なる成形体を形成する工程と、
前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱し、成形体中の結晶性部分を融解させる工程と、
前記加熱後の成形体を冷却して固化させる工程と、
を含むことを特徴とする、成形体の硬度の制御方法。
【請求項4】
前記2種以上の共重合体の結晶性部分が、同じ単量体単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形体の硬度の制御方法。
【請求項5】
前記2種以上の共重合体のエラストマー部分が、同じ単量体単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形体の硬度の制御方法。
【請求項6】
前記共重合体の少なくとも1種が、芳香族ビニル単位を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の成形体の硬度の制御方法。
【請求項7】
前記共重合体は、非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、からなる共重合体であり、ブチレン単位が0mol%である、請求項1~のいずれか一項に記載の成形体の硬度の制御方法。
【請求項8】
前記共重合体は、非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、芳香族ビニル単位と、からなる共重合体であり、ブチレン単位が0mol%である、請求項1~のいずれか一項に記載の成形体の硬度の制御方法。
【請求項9】
前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱する際、更に加圧する、請求項1~のいずれか一項に記載の成形体の硬度の制御方法。
【請求項10】
3Dプリンターを用いて、前記成形部材を2種以上準備する、請求項1~9のいずれか一項に記載の成形体の硬度の制御方法。
【請求項11】
非共役オレフィン単位を含む結晶性部分と、共役ジエン単位を含むエラストマー部分とを有し、結晶性部分とエラストマー部分との比率が互いに異なる第1共重合体及び第2共重合体を用いて、前記結晶性部分とエラストマー部分との比率が互いに異なる成形部材を2種準備し、
前記第1共重合体における共役ジエン単位の割合(mol%)及び前記第2共重合体における共役ジエン単位の割合(mol%)の差が、25mol%以上60mol%以下であり、
前記第1共重合体における非共役オレフィン単位の割合(mol%)及び前記第2共重合体における非共役オレフィン単位の割合(mol%)の差が、25mol%以上65mol%以下である、請求項1に記載の成形体の硬度の制御方法。
【請求項12】
非共役オレフィン単位を含む結晶性部分と、共役ジエン単位を含むエラストマー部分とを有し、結晶性部分とエラストマー部分とのポリマー鎖での分布が互いに異なる第1共重合体及び第2共重合体を用いて、前記結晶性部分とエラストマー部分との分布が互いに異なる成形部材を2種準備し、
前記第1共重合体における共役ジエン単位の割合(mol%)及び前記第2共重合体における共役ジエン単位の割合(mol%)の差が、25mol%以上60mol%以下であり、
前記第1共重合体における非共役オレフィン単位の割合(mol%)及び前記第2共重合体における非共役オレフィン単位の割合(mol%)の差が、25mol%以上65mol%以下である、請求項2に記載の成形体の硬度の制御方法。
【請求項13】
非共役オレフィン単位を含む結晶性部分と、共役ジエン単位を含むエラストマー部分とを有し、結晶化度が互いに異なる第1共重合体及び第2共重合体を用いて、前記結晶化度が互いに異なる成形部材を2種準備し、
前記第1共重合体における共役ジエン単位の割合(mol%)及び前記第2共重合体における共役ジエン単位の割合(mol%)の差が、25mol%以上60mol%以下であり、
前記第1共重合体における非共役オレフィン単位の割合(mol%)及び前記第2共重合体における非共役オレフィン単位の割合(mol%)の差が、25mol%以上65mol%以下である、請求項3に記載の成形体の硬度の制御方法。
【請求項14】
継ぎ目を有しない成形体であって、請求項1~13のいずれか一項に記載の成形体の硬度の制御方法を用いて、任意の箇所での硬度を制御したことを特徴とする、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の硬度の制御方法、及び成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐久性等の様々な特性に優れるゴム材料として、例えば、共役ジエン化合物と非共役オレフィン化合物とを単量体として少なくとも用い、これらを所定の触媒の存在下で重合させてなる共重合体が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/190072号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなジエン系のゴム材料を用いて成形体を製造する方法としては、当該ゴム系材料とともに、充填剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を必要に応じて適宜配合し、混練機で均一に混練してゴム組成物を得た後、当該ゴム組成物に所定条件下で熱を加える方法が一般的である。そのため、かかる方法で得られる成形体は、硬度等の物理特性が全体に亘ってほぼ均一となる。
【0005】
一方、成形体の用途によっては、部分ごとに硬度が異なることが要求されることがある。これに対して、例えば、ゴム組成物の組成を変える等して硬度が異なる複数の部材を作製し、これらを任意の手段により接着・一体化して成形体を製造する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、得られる成形体に継ぎ目(接合部)が不可避的に形成されるため、長期の使用の間に、亀裂等が入る虞があり、また、外観性の観点からも好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御する方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる方法を用いて、任意の箇所での硬度を制御した、継ぎ目を有しない成形体を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0008】
本発明の第1の成形体の硬度の制御方法は、結晶性部分とエラストマー部分とを有する共重合体からなり、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御する方法であって、
結晶性部分とエラストマー部分との比率が互いに異なる共重合体を2種以上用いて、結晶性部分とエラストマー部分との比率が互いに異なる成形部材を2種以上準備し、該成形部材を用いて、任意の箇所で結晶性部分とエラストマー部分との比率が異なる成形体を形成する工程と、
前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱し、成形体中の結晶性部分を融解させる工程と、
前記加熱後の成形体を冷却して固化させる工程と、
を含むことを特徴とする。
かかる本発明の第1の成形体の硬度の制御方法によれば、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御することができる。
【0009】
本発明の第2の成形体の硬度の制御方法は、結晶性部分とエラストマー部分とを有する共重合体からなり、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御する方法であって、
結晶性部分とエラストマー部分とのポリマー鎖での分布が互いに異なる共重合体を2種以上用いて、結晶性部分とエラストマー部分との分布が互いに異なる成形部材を2種以上準備し、該成形部材を用いて、任意の箇所で結晶性部分とエラストマー部分との分布が異なる成形体を形成する工程と、
前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱し、成形体中の結晶性部分を融解させる工程と、
前記加熱後の成形体を冷却して固化させる工程と、
を含むことを特徴とする。
かかる本発明の第2の成形体の硬度の制御方法によっても、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御することができる。
【0010】
本発明の第3の成形体の硬度の制御方法は、結晶性部分とエラストマー部分とを有する共重合体からなり、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御する方法であって、
結晶化度が互いに異なる共重合体を2種以上用いて、結晶化度が互いに異なる成形部材を2種以上準備し、該成形部材を用いて、任意の箇所で結晶化度が異なる成形体を形成する工程と、
前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱し、成形体中の結晶性部分を融解させる工程と、
前記加熱後の成形体を冷却して固化させる工程と、
を含むことを特徴とする。
かかる本発明の第3の成形体の硬度の制御方法によっても、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御することができる。
【0011】
本発明の成形体の硬度の制御方法の好適例においては、前記2種以上の共重合体の結晶性部分が、同じ単量体単位を含む。この場合、各共重合体の結晶性部分が融解して一体化する効果をより確実に得ることができる。
【0012】
本発明の成形体の硬度の制御方法の他の好適例においては、前記2種以上の共重合体のエラストマー部分が、同じ単量体単位を含む。この場合、成形体の耐久性が向上する。
【0013】
本発明の成形体の硬度の制御方法の他の好適例においては、前記共重合体の結晶性部分が、非共役オレフィン単位を含む。この場合、共重合体の結晶性部分が硬いため、該共重合体を、成形体の任意の箇所の硬度の上昇に利用し易い。
【0014】
本発明の成形体の硬度の制御方法の他の好適例においては、前記共重合体のエラストマー部分が、共役ジエン単位を含む。この場合、共重合体のエラストマー部分が軟らかいため、該共重合体を、成形体の任意の箇所の硬度の低減に利用し易い。
【0015】
本発明の成形体の硬度の制御方法の他の好適例においては、前記共重合体の少なくとも1種が、芳香族ビニル単位を含む。この場合、成形体の耐破壊特性が向上する。
【0016】
本発明の成形体の硬度の制御方法において、前記共重合体は、非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、からなる共重合体であり、ブチレン単位が0mol%であることが好ましい。
【0017】
本発明の成形体の硬度の制御方法において、前記共重合体は、非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、芳香族ビニル単位と、からなる共重合体であり、ブチレン単位が0mol%であることも好ましい。
【0018】
本発明の成形体の硬度の制御方法の他の好適例においては、前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱する際、更に加圧する。この場合、所望の形状の成形体を製造し易くなる。
【0019】
また、本発明の成形体は、継ぎ目を有しない成形体であって、上記の成形体の硬度の制御方法を用いて、任意の箇所での硬度を制御したことを特徴とする。
かかる本発明の成形体は、継ぎ目を有さず、任意の箇所での硬度が制御されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御する方法を提供することができる。
また、本発明によれば、かかる方法を用いて、任意の箇所での硬度を制御した、継ぎ目を有しない成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態の成形体の硬度の制御方法における、成形体の形成工程の一例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の成形体の硬度の制御方法、及び成形体を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0023】
<成形体の硬度の制御方法>
本実施形態の成形体の硬度の制御方法(以下、「本実施形態の制御方法」と称することがある。)は、結晶性部分とエラストマー部分とを有する共重合体からなり、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御する方法であって、互いに異なる共重合体を2種以上用いて、互いに異なる成形部材を2種以上準備し、該成形部材を用いて、成形体を形成する工程(形成工程)と、前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱し、成形体中の結晶性部分を融解させる工程(加熱工程)と、前記加熱後の成形体を冷却して固化させる工程(冷却工程)と、を含む。
【0024】
そして、第1実施形態の成形体の硬度の制御方法では、結晶性部分とエラストマー部分との比率が互いに異なる共重合体を2種以上用いて、結晶性部分とエラストマー部分との比率が互いに異なる成形部材を2種以上準備し、該成形部材を用いて、任意の箇所で結晶性部分とエラストマー部分との比率が異なる成形体を形成する。前記成形部材を用いて形成した成形体においては、任意の箇所を構成する共重合体の種類が異なるため、成形体の任意の箇所で結晶性部分とエラストマー部分との比率が異なる。
ここで、結晶性部分は硬く、エラストマー部分は軟らかいため、成形体の任意の箇所での結晶性部分とエラストマー部分との比率を変化させることで、成形体の任意の箇所での硬度を変化させることができる。そして、前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱し、成形体中の結晶性部分を融解させることで、各成形部材間の継ぎ目が消失し、その後、冷却して固化させて得られる成形体は、継ぎ目を有さず、また、任意の箇所での硬度が制御されている。
従って、前記第1実施形態の成形体の硬度の制御方法によれば、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御することができる。
【0025】
また、第2実施形態の成形体の硬度の制御方法では、結晶性部分とエラストマー部分とのポリマー鎖での分布が互いに異なる共重合体を2種以上用いて、結晶性部分とエラストマー部分との分布が互いに異なる成形部材を2種以上準備し、該成形部材を用いて、任意の箇所で結晶性部分とエラストマー部分との分布が異なる成形体を形成する。前記成形部材を用いて形成した成形体においては、任意の箇所を構成する共重合体の種類が異なるため、成形体の任意の箇所で結晶性部分とエラストマー部分との分布が異なる。
ここで、結晶性部分の連鎖長が長い箇所は相対的に硬く、結晶性部分の連鎖長が短い箇所は相対的に軟らかいため、成形体の任意の箇所での結晶性部分とエラストマー部分との分布を変化させることで、成形体の任意の箇所での硬度を変化させることができる。そして、前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱し、成形体中の結晶性部分を融解させることで、各成形部材間の継ぎ目が消失し、その後、冷却して固化させて得られる成形体は、継ぎ目を有さず、また、任意の箇所での硬度が制御されている。
従って、前記第2実施形態の成形体の硬度の制御方法によっても、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御することができる。
【0026】
また、第3実施形態の成形体の硬度の制御方法では、結晶化度が互いに異なる共重合体を2種以上用いて、結晶化度が互いに異なる成形部材を2種以上準備し、該成形部材を用いて、任意の箇所で結晶化度が異なる成形体を形成する。前記成形部材を用いて形成した成形体においては、任意の箇所を構成する共重合体の種類が異なるため、成形体の任意の箇所で結晶化度が異なる。
ここで、結晶化度が高い箇所は硬く、結晶化度が低い箇所は軟らかいため、成形体の任意の箇所での結晶化度を変化させることで、成形体の任意の箇所での硬度を変化させることができる。そして、前記成形部材を用いて形成した成形体を加熱し、成形体中の結晶性部分を融解させることで、各成形部材間の継ぎ目が消失し、その後、冷却して固化させて得られる成形体は、継ぎ目を有さず、また、任意の箇所での硬度が制御されている。
従って、前記第3実施形態の成形体の硬度の制御方法によっても、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御することができる。
【0027】
本実施形態の制御方法は、特に限定されないが、例えば、3Dプリンターを用いて実施することができる。
【0028】
なお、本明細書において、共重合体における「結晶性部分」は、JIS K 7121-1987に準拠した示差走査熱量計(DSC)による当該共重合体の測定において、融点が確認された場合に、その存在を認めることができるものとする。
【0029】
また、本明細書において、共重合体における「エラストマー部分」は、当該共重合体がゴム弾性を示した場合に、その存在を認めることができるものとする。
【0030】
また、本明細書において、成形体における「継ぎ目」は、当該成形体の任意箇所の断面の原子間力顕微鏡(AFM)画像が、単一の共重合体を用いて一体成形されてなる成形体の断面のAFM画像と相違がない場合に、その不存在を認めることができるものとする。
【0031】
上述の通り、形成工程は、結晶性部分とエラストマー部分とを有し、互いに異なる共重合体を2種以上用いて、互いに異なる成形部材を2種以上準備し、該成形部材を用いて、成形体を形成する工程である。なお、使用する共重合体の詳細については、後述する。
【0032】
図1に、本実施形態の制御方法における形成工程の一例を示す。この例では、まず、図1の上段に示すように、第1共重合体からなるシート状の成形部材1及び第2共重合体からなるシート状の成形部材2をそれぞれ準備し、上記2つのシート状の成形部材1,2を切断する。次いで、図1の中段に示すように、切断した第1共重合体からなるシート状の成形部材1及び第2共重合体からなるシート状の成形部材2の切断面を当接させ、1枚のシート状の複合部材3とする。次いで、このシート状の複合部材3を必要に応じて加熱した後、図1の下段に示すように巻回し、棒状(ロール状)にする。そして、かかる棒状の複合部材4を、加熱工程に供することができる。
【0033】
上記棒状の複合部材4を用い、加熱工程及び冷却工程を経て得られる成形体においては、一方の端部が実質的に第1共重合体由来の硬度を有し、他方の端部に近づくにつれて硬度が連続的(線形的)に変化し、他方の端部が実質的に第2共重合体由来の硬度を有することとなる。
【0034】
ここで、図1では、第1共重合体からなる矩形状でシート状の成形部材1と、第2共重合体からなる矩形状でシート状の成形部材2を用いているが、本実施形態において、形成工程で準備する成形部材の形状は、特に限定されない。
また、図1では、2つのシート状の成形部材1,2を矩形の対角線に沿って切断しているが、本実施形態において、切断箇所は、特に限定されないし、切断しなくてもよい。
また、図1では、2つのシート状の成形部材1,2の切断面を当接箇所としているが、本実施形態において、当接箇所は、特に限定されない。例えば、2種以上の共重合体のシート状成形部材を積層させて当接させてもよいし、一方の共重合体のシート状成形部材の上に、他方の共重合体のシート状成形部材片を複数配置して当接させてもよい。
また、図1では、加熱工程に供する複合部材を棒状にしているが、本実施形態において、加熱工程に供する複合部材の成形形状は、特に限定されない。
【0035】
なお、本実施形態において、成形部材1,2には、主として、結晶性部分とエラストマー部分とを有し、互いに異なる共重合体が用いられるが、該共重合体の他に、必要に応じ、カーボンブラックやシリカ等の補強性充填剤、老化防止剤、硫黄等の架橋剤等を適宜配合して、成形部材を作製してもよい。
【0036】
次に、加熱工程は、前記成形部材を用いて形成した成形体(複合部材3,4)を加熱する工程である。この工程により、成形体中の結晶性部分を融解させる。ここで、加熱工程時の加熱温度は、上記2種以上の共重合体の融点以上の温度であることが好ましい。これにより、各共重合体における結晶性部分をより十分に融解させ、継ぎ目がない成形体をより確実に得ることができる。なお、共重合体の融点が2つ以上存在する場合、加熱温度は、上記2種以上の共重合体の最も高い融点以上の温度であることが好ましい。より具体的に、加熱温度は、各共重合体の最も高い融点より10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことが更に好ましい。また、加熱温度としては、130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。一方、加熱温度に関して、上限は特にないが、250℃以下であることが好ましい。
【0037】
前記加熱工程において、前記成形部材を用いて形成した成形体(複合部材3,4)を加熱する際には、併せて加圧を行うことが望ましい。加圧を行うことで、所望の形状の成形体を製造し易くなる。ここで、加熱工程において、加圧する際(即ち、加熱加圧する際)の圧力は、3~7MPaとすることができ、加圧する時間は、3分~60分とすることができる。
【0038】
次に、冷却工程は、加熱後の成形体を冷却する工程である。この工程により、融解した結晶性部分が固化し、継ぎ目(接合部)のない成形体が得られる。なお、冷却は、例えば、冷却板等の冷却手段を用い、常温まで行うことができる。冷却時間は、3分~60分とすることができる。
【0039】
本実施形態の制御方法で得られる成形体は、任意の2点を結ぶ線に沿って硬度が漸増又は漸減していることが好ましい。換言すると、本実施形態の制御方法で得られる成形体は、硬度が段差状に変化する箇所がないことが好ましい。そのような成形体は、例えば、用いる共重合体の種類を適切に選択することにより得ることができる。
【0040】
本実施形態の制御方法では、冷却工程後の成形体を再度加熱し、シート状等の任意の形状に更に成形し、冷却して成形体を得ることもできる。
【0041】
<結晶性部分とエラストマー部分とを有する共重合体>
次に、本実施形態で用いる、結晶性部分とエラストマー部分とを有する共重合体について説明する。
【0042】
本実施形態では、結晶性部分とエラストマー部分とを有し、互いに異なる共重合体を2種以上用いる。互いに異なる共重合体を2種以上用いることで、成形体の任意の箇所での硬度を制御することができる。ここで、上述した、第1実施形態では、結晶性部分とエラストマー部分との比率が互いに異なる共重合体を2種以上用いる。また、第2実施形態では、結晶性部分とエラストマー部分とのポリマー鎖での分布が互いに異なる共重合体を2種以上用いる。また、第3実施形態では、結晶化度が互いに異なる共重合体を2種以上用いる。
【0043】
上記共重合体は、カップリング反応等により高分子鎖の少なくとも一部(例えば、末端)を変性させた共重合体であってもよい。
【0044】
上記共重合体は、共役ジエン単位(共役ジエン化合物に由来する単量体単位)を含むことが好ましい。共重合体における共役ジエン単位は、主に、エラストマー部分の形成に寄与するため、換言すれば、共重合体のエラストマー部分は、共役ジエン単位を含むことが好ましい。一般に、共役ジエン単位を含むエラストマー部分は、軟らかいため、成形体の任意の箇所の硬度の低減に利用し易い。なお、共役ジエン単位の中でも、トランス構造を有する共役ジエン単位(例えば、トランス-1,4結合している共役ジエン単位)は、結晶性を有し、結晶性部分となることもある。
【0045】
共重合体の単量体としての共役ジエン化合物は、炭素数が4~8であることが好ましい。かかる共役ジエン化合物として、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。そして、共重合体の単量体としての共役ジエン化合物は、共重合体に良好なエラストマー部分を形成する観点から、1,3-ブタジエン及び/又はイソプレンを含むことが好ましく、1,3-ブタジエン及び/又はイソプレンのみからなることがより好ましく、1,3-ブタジエンのみからなることが更に好ましい。別の言い方をすると、共重合体における共役ジエン単位は、1,3-ブタジエン単位(以下、単に「ブタジエン単位」と称することがある)及び/又はイソプレン単位を含むことが好ましく、ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位のみからなることがより好ましく、ブタジエン単位のみからなることが更に好ましい。
【0046】
前記共重合体は、共役ジエン単位のシス-1,4結合量が50~100%であることが好ましい。シス-1,4結合量が50%以上であることにより、共役ジエン単位が、エラストマー部分として軟らかく振る舞うことができる。なお、上記シス-1,4結合量は、共役ジエン単位全体における割合であって、共重合体全体における割合ではない。
【0047】
前記共重合体は、共役ジエン単位のトランス-1,4結合量が50~100%であることが好ましい。トランス-1,4結合量が50%以上であることにより、共役ジエン単位が、結晶性部分として硬く振る舞うことができる。なお、上記トランス-1,4結合量は、共役ジエン単位全体における割合であって、共重合体全体における割合ではない。
【0048】
本実施形態において、2種の共重合体(第1共重合体及び第2共重合体)を用い、且つ、第1共重合体及び第2共重合体がいずれも共役ジエン単位を含む場合には、第1共重合体における共役ジエン単位の割合(mol%)及び第2共重合体における共役ジエン単位の割合(mol%)の差を、10mol%以上とすることができる。これにより、得られる成形体の任意の2点間の硬度差を十分に大きくすることができる。同様の観点から、上記差は、20mol%以上とすることができ、25mol%以上とすることができる。一方、上記差は、過度に大きな硬度差による成形体の耐久性の悪化を抑制する観点から、60mol%以下とすることが好ましく、55mol%以下であることがより好ましく、50mol%以下であることが更に好ましく、45mol%以下であることが一層好ましく、40mol%以下であることが特に好ましい。
【0049】
前記2種以上の共重合体(異なる2種以上の共重合体)のエラストマー部分は、同じ単量体単位を含むことが好ましい。これにより、成形体の耐久性が向上する。
【0050】
前記2種以上の共重合体の結晶性部分は、同じ単量体単位を含むことが好ましい。これにより、各共重合体の結晶性部分が融解して一体化する効果をより確実に得ることができる。
【0051】
また、前記共重合体の結晶性部分は、非共役オレフィン単位(非共役オレフィン化合物に由来する単量体単位)を含むことが好ましい。共重合体における非共役オレフィン単位は、主に、結晶性部分の形成に寄与する。一般に、非共役オレフィン単位を含む結晶性部分は、硬いため、成形体の任意の箇所の硬度の上昇に利用し易い。なお、非共役オレフィン単位であっても、隣接するポリマー鎖の非共役オレフィン単位と規則正しく並んでいない部分は、結晶性を示さず、結晶性を示さない非共役オレフィン単位は、エラストマー部分となることもある。
なお、上述の第1実施形態では、結晶性部分とエラストマー部分との比率が互いに異なる共重合体を2種以上用いるが、この際、結晶性部分の形成に寄与する非共役オレフィン単位と、上述のエラストマー部分の形成に寄与する共役ジエン単位と、の比率が互いに異なる共重合体を2種以上用いることが好ましい。
【0052】
共重合体の単量体としての非共役オレフィン化合物は、炭素数が2~10であることが好ましい。かかる非共役オレフィン化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、ピバリン酸ビニル、1-フェニルチオエテン、N-ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。非共役オレフィン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。そして、共重合体の単量体としての非共役オレフィン化合物は、共重合体に良好な結晶性部分を形成する観点から、非環状の非共役オレフィン化合物であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン化合物は、α-オレフィンであることがより好ましく、エチレンを含むα-オレフィンであることが更に好ましく、エチレンのみからなることが特に好ましい。別の言い方をすると、共重合体における非共役オレフィン単位は、非環状の非共役オレフィン単位であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン単位は、α-オレフィン単位であることがより好ましく、エチレン単位を含むα-オレフィン単位であることが更に好ましく、エチレン単位のみからなることが特に好ましい。
【0053】
本実施形態において、2種の共重合体(第1共重合体及び第2共重合体)を用い、且つ、第1共重合体及び第2共重合体がいずれも非共役オレフィン単位を含む場合には、第1共重合体における非共役オレフィン単位の割合(mol%)及び第2共重合体における非共役オレフィン単位の割合(mol%)の差を、10mol%以上とすることができる。これにより、得られる成形体の任意の2点間の硬度差を十分に大きくすることができる。同様の観点から、上記差は、20mol%以上とすることができ、25mol%以上とすることができる。一方、上記差は、過度に大きな硬度差による成形体の耐久性の悪化を抑制する観点から、65mol%以下であることが好ましく、60mol%以下であることがより好ましく、55mol%以下であることが更に好ましく、50mol%以下であることが一層好ましく、45mol%以下であることが特に好ましい。
【0054】
上記共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が10,000~10,000,000であることが好ましく、100,000~9,000,000であることがより好ましく、150,000~8,000,000であることが更に好ましい。共重合体のMwが10,000以上であることにより、機械的強度を十分に確保することができ、また、Mwが10,000,000以下であることにより、高い作業性を保持することができる。
【0055】
上記共重合体は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が10,000~10,000,000であることが好ましく、50,000~9,000,000であることがより好ましく、100,000~8,000,000であることが更に好ましい。共重合体のMnが10,000以上であることにより、機械的強度を十分に確保することができ、また、Mnが10,000,000以下であることにより、高い作業性を保持することができる。
【0056】
上記共重合体は、分子量分布[Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)]が1.00~4.00であることが好ましい。共重合体の分子量分布が4.00以下であれば、共重合体の物性に十分な均質性をもたらすことができる。同様の観点から、上記共重合体の分子量分布は、3.50以下であることがより好ましく、3.00以下であることが更に好ましい。また、上記共重合体の分子量分布は、1.50以上であることがより好ましく、1.80以上であることが更に好ましい。
【0057】
なお、上述した重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。
【0058】
上記共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が30℃以上であることが好ましく、また、180℃以下であることが好ましい。共重合体の融点が30℃以上であれば、共重合体の結晶性が高くなり、耐亀裂性が更に向上し、また、180℃以下であれば、加熱時の加熱温度を過度に高める必要がなくなり、作業性が更に向上する。同様の観点から、上記2種以上の共重合体の融点は、140℃以下であることがより好ましい。なお、共重合体に融点が2つ以上ある場合は、高い方の融点を採用する。
【0059】
上記共重合体は、0~150℃における示差走査熱量計(DSC)で測定した吸熱ピークエネルギーが1J/g以上であることが好ましく、また、150J/g以下であることが好ましい。共重合体の吸熱ピークエネルギーが1J/g以上であれば、共重合体の結晶性が高くなり、耐亀裂性が更に向上し、また、150J/g以下であれば、作業性が更に向上する。同様の観点から、上記2種以上の共重合体の吸熱ピークエネルギーは、10J/g以上であることがより好ましく、また、120J/g以下であることがより好ましい。
【0060】
上記共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることが好ましく、-100~-10℃であることが更に好ましい。共重合体のガラス転移温度が0℃以下であれば、作業性が更に向上する。
【0061】
上記共重合体は、結晶化度(ΔH1/ΔH0×100、「結晶量」とも呼ぶ)が0.5%以上であることが好ましく、また、50%以下であることが好ましい。共重合体の結晶化度が0.5%以上であれば、非共役オレフィン単位に起因する結晶性を十分に確保して、耐亀裂性が更に向上する。また、共重合体の結晶化度が50%以下であれば、混練等の際の作業性が向上し、また、共重合体のタッキネスが向上するため、共重合体から作製した成形部材同士を貼り付ける際の作業性も向上する。同様の観点から、上記共重合体の結晶化度は、1%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることが更に好ましく、また、45%以下であることが更に好ましい。
なお、本明細書においては、示差走査熱量計(DSC)で測定した、ポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)に対する、共重合体の吸熱ピークエネルギー(ΔH1)の比率(ΔH1/ΔH0×100)を共重合体の結晶化度とする。
【0062】
上述の第3実施形態では、結晶化度が互いに異なる共重合体を2種以上用いる。ここで、結晶化度が互いに異なる2種の共重合体(第1共重合体及び第2共重合体)を用いる場合には、第1共重合体の結晶化度(%)と、第2共重合体の結晶化度(%)との差を、3%以上とすることができる。これにより、得られる成形体の任意の2点間の硬度差を十分に大きくすることができる。同様の観点から、上記差は、5%以上とすることができ、10%以上とすることができる。一方、上記差は、過度に大きな硬度差による成形体の耐久性の悪化を抑制する観点から、60%以下とすることが好ましく、50%以下とすることがより好ましく、40%以下とすることが更に好ましく、30%以下とすることがより更に好ましく、25%以下とすることが一層好ましく、20%以下とすることが特に好ましい。
【0063】
上述した融点、吸熱ピークエネルギー、ガラス転移温度、結晶化度等の物性は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0064】
ここで、上述した共重合体としては、例えば、上記共役ジエン単位と、上記非共役オレフィン単位とを含む二元共重合体(以下、単に「二元共重合体」と称することがある。)が挙げられる。二元共重合体及びその製造方法としては、例えば、国際公開第2012/014459号に記載のものを用いることができる。
【0065】
二元共重合体における共役ジエン単位の割合は、0mol%を超え且つ70mol%以下であることが好ましい。この場合、伸びと耐候性に優れる共重合体を得ることが可能となる。同様の観点から、二元共重合体における共役ジエン単位の割合は、60mol%以下であることがより好ましく、50mol%以下であることが更に好ましく、40mol%以下であることがより一層好ましい。
【0066】
二元共重合体において、共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、5%以下であることが好ましい。上記割合が5%以下であると、共重合体の耐熱性及び耐屈曲疲労性をさらに向上させることができる。同様の観点から、二元共重合体における共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、2.5%以下がより好ましく、1.0%以下が更に好ましい。なお、上記共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、共役ジエン単位全体における割合であって、共重合体全体における割合ではない。また、上記割合は、共役ジエン単位がブタジエン単位である場合には、1,2-ビニル結合量と同じ意味である。
【0067】
二元共重合体における非共役オレフィン単位の割合は、30mol%以上で且つ100mol%未満であることが好ましい。この場合、高温での破壊特性を効果的に向上させることができる。同様の観点から、二元共重合体における非共役オレフィン単位の割合は、40mol%以上であることがより好ましく、50mol%以上であることが更に好ましく、60mol%以上であることが特に好ましい。
【0068】
また、本実施形態においては、前記共重合体の少なくとも1種が、芳香族ビニル単位(芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位)を含むことが好ましい。共重合体が芳香族ビニル単位を含むことで、共重合体自体の耐破壊特性を向上させることができ、成形体の耐破壊特性も向上する。同様の観点から、本実施形態においては、上記2種以上の共重合体の全てが、芳香族ビニル単位を含むことがより好ましい。なお、共重合体における芳香族ビニル単位は、連鎖構造によって、結晶性部分の形成に寄与することもあるし、エラストマー部分の形成に寄与することもある。
【0069】
共重合体の単量体としての芳香族ビニル化合物は、炭素数が8~10であることが好ましい。かかる芳香族ビニル化合物として、具体的には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。そして、共重合体の単量体としての芳香族ビニル化合物は、スチレンを含むことが好ましく、スチレンのみからなることがより好ましい。別の言い方をすると、共重合体における芳香族ビニル単位は、スチレン単位を含むことが好ましく、スチレン単位のみからなることがより好ましい。
なお、芳香族ビニル単位における芳香族環は、隣接する単位と結合しない限り、共重合体の主鎖には含まれない。
【0070】
ここで、上述した共重合体としては、例えば、上記共役ジエン単位と、上記非共役オレフィン単位と、上記芳香族ビニル単位とを少なくとも含む多元共重合体(以下、単に「多元共重合体」と称することがある。)が挙げられる。なお、多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位のみからなってもよいし、更に他の単量体単位を含んでもよい。
【0071】
多元共重合体における共役ジエン単位の割合は、1mol%以上であることが好ましくまた、また、60mol%以下であることが好ましい。上記割合が1mol%以上であると、伸びに優れる共重合体が得られるので好ましく、また、60mol%以下であると、耐候性に優れる。同様の観点から、多元共重合体における共役ジエン単位の割合は、3mol%以上であることがより好ましく、5mol%以上であることが更に好ましく、8mol%以上であることが特に好ましく、また、55mol%以下であることがより好ましく、50mol%以下であることが更に好ましく、45mol%以下であることが一層好ましい。
【0072】
多元共重合体における非共役オレフィン単位の割合は、30mol%以上であることが好ましく、また、97mol%以下であることが好ましい。上記割合が30mol%以上であると、結果として共役ジエン単位又は芳香族ビニル単位の割合が減少して、耐候性が向上し、高温での耐破壊性(特には、破断強度(Tb))が向上する。上記割合が97mol%以下であると、結果として共役ジエン単位又は芳香族ビニル単位の割合が増加し、高温での耐破壊性(特には、破断伸び(Eb))が向上する。同様の観点から、多元共重合体における非共役オレフィン単位の割合は、35mol%以上であることがより好ましく、38mol%以上であることが更に好ましく、また、95mol%以下であることがより好ましく、90mol%以下であることが一層好ましい。
【0073】
多元共重合体における芳香族ビニル単位の割合は、2mol%以上であることが好ましく、また、35mol%以下であることが好ましい。上記割合が2mol%以上であると、高温における耐破壊性が向上し、また、上記割合が35mol%以下であると、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位による効果が顕著になる。同様の観点から、多元共重合体における芳香族ビニル単位の割合は、3mol%以上であることがより好ましく、5mol%以上であることがより一層好ましく、また、30mol%以下であることがより好ましく、25mol%以下であることが更に好ましく、20mol%以下であることが一層好ましく、17mol%以下であることが特に好ましい。
【0074】
多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位以外の、その他の構成単位を有していてもよいが、その他の構成単位の割合は、所望の効果を得る観点から、多元共重合体全体の30mol%以下であることが好ましく、20mol%以下であることがより好ましく、10mol%以下であることが更に好ましく、含有しないこと、即ち、割合が0mol%であることが特に好ましい。
【0075】
前記二元共重合体や前記多元共重合体においては、ブチレン単位の含有量が0mol%であることが好ましい。つまり、ブタジエンの水添によって得られたポリマーや、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)といった、スチレン-ブタジエン共重合体の水添物は含まれないことが好ましい。
換言すれば、前記共重合体は、非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、からなる共重合体であり、ブチレン単位が0mol%であることが好ましい。
また、前記共重合体は、非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、芳香族ビニル単位と、からなる共重合体であり、ブチレン単位が0mol%であることも好ましい。
【0076】
多元共重合体は、耐亀裂性、耐候性及び結晶性を好ましいものとする観点から、単量体として、一種の共役ジエン化合物、一種の非共役オレフィン化合物、及び一種の芳香族ビニル化合物を少なくとも用いて重合してなる重合体であることが好ましい。別の言い方をすると、多元共重合体は、一種の共役ジエン単位、一種の非共役オレフィン単位、及び一種の芳香族ビニル単位を含む多元共重合体であることが好ましく、一種の共役ジエン単位、一種の非共役オレフィン単位、及び一種の芳香族ビニル単位のみからなる三元共重合体であることがより好ましく、ブタジエン単位、エチレン単位、及びスチレン単位のみからなる三元共重合体であることが更に好ましい。ここで、「一種の共役ジエン単位」には、異なる結合様式の共役ジエン単位が包含される。例えば、共重合体がシス-1,4結合のブタジエン単位及びトランス-1,4結合のブタジエン単位を含んでいた場合であっても、当該共重合体は、一種の共役ジエン単位を含むと解される。
【0077】
多元共重合体は、共役ジエン単位の割合が1~60mol%で、非共役オレフィン単位の割合が30~97mol%で、且つ芳香族ビニル単位の割合が2~35mol%であることが好ましい。この場合、共重合体の耐亀裂性が更に向上し、また、耐候性も向上する。
【0078】
多元共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることが好ましい。これにより、耐亀裂成長性をより向上させることができる。なお、共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環~五員環については、13C-NMRスペクトルチャートにおいて10~24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。
【0079】
上述した多元共重合体は、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体として用いる重合工程を経て製造でき、更に、必要に応じ、カップリング工程、洗浄工程、その他の工程を経てもよい。
【0080】
ここで、多元共重合体の製造においては、触媒存在下で、共役ジエン化合物を添加せずに非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のみを添加し、これらを重合させることが好ましい。特に後述の触媒成分を使用する場合には、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物よりも共役ジエン化合物の方が高い反応性を有することから、共役ジエン化合物の存在下で非共役オレフィン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を重合させることが困難となり易い。また、先に共役ジエン化合物を重合させ、後に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を付加的に重合させることも、触媒の特性上困難となり易い。
【0081】
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0082】
重合工程は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。一段階の重合工程とは、重合させる全ての種類の単量体、即ち、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物、及びその他の単量体、好ましくは、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、及び芳香族ビニル化合物を一斉に反応させて重合させる工程である。また、多段階の重合工程とは、1種類又は2種類の単量体の一部又は全部を最初に反応させて重合体を形成し(第1重合段階)、次いで、残る種類の単量体や前記1種類又は2種類の単量体の残部を添加して重合させる1以上の段階(第2重合段階~最終重合段階)を行って重合させる工程である。特に、多元共重合体の製造では、重合工程を多段階で行うことが好ましい。
【0083】
重合工程において、重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。上記重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。また、上記重合反応の圧力は、共役ジエン化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。また、上記重合反応の反応時間も特に制限がなく、例えば、1秒~10日の範囲が好ましいが、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。また、重合工程は、一段階で行ってもよいし、二段以上の多段階で行ってもよい。
【0084】
また、前記共役ジエン化合物の重合工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0085】
前記重合工程は、多段階で行うことが好ましい。より好ましくは、少なくとも芳香族ビニル化合物を含む第1単量体原料と、重合触媒とを混合して重合混合物を得る第1工程と、前記重合混合物に対し、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む第2単量体原料を導入する第2工程とを実施することが好ましい。更に、上記第1単量体原料が共役ジエン化合物を含まず、且つ上記第2単量体原料が共役ジエン化合物を含むことがより好ましい。
【0086】
前記第1工程で用いる第1単量体原料は、芳香族ビニル化合物とともに、非共役オレフィン化合物を含有してもよい。また、第1単量体原料は、使用する芳香族ビニル化合物の全量を含有してもよく、一部のみを含有してもよい。また、非共役オレフィン化合物は、第1単量体原料及び第2単量体原料の少なくともいずれかに含有される。
【0087】
前記第1工程において、重合混合物を得るための重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサノン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0088】
前記第2工程で用いる第2単量体原料は、共役ジエン化合物のみ、又は、共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物、又は、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物、又は、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物であることが好ましい。
【0089】
なお、第2単量体原料が、共役ジエン化合物以外に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1つを含む場合には、予めこれらの単量体原料を溶媒等と共に混合した後に重合混合物に導入してもよく、各単量体原料を単独の状態から導入してもよい。また、各単量体原料は、同時に添加してもよく、逐次添加してもよい。第2工程において、重合混合物に対して第2単量体原料を導入する方法としては、特に制限はないが、各単量体原料の流量を制御して、重合混合物に対して連続的に添加すること(所謂、ミータリング)が好ましい。ここで、重合反応系の条件下で気体である単量体原料(例えば、室温、常圧の条件下における非共役オレフィン化合物としてのエチレン等)を用いる場合には、所定の圧力で重合反応系に導入することができる。
【0090】
前記第2工程は、反応器内で、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。第2工程における温度(反応温度)は、特に制限はないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、反応温度を上げると、共役ジエン単位におけるシス-1,4結合の選択性が低下することがある。また、第2工程における圧力は、特に制限はないが、共役ジエン化合物等の単量体を十分に重合反応系に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。また、第2工程に費やす時間(反応時間)は、重合触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができるが、例えば、0.1時間~10日の範囲が好ましい。
【0091】
また、第2工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合反応を停止させてもよい。
【0092】
前記カップリング工程は、前記重合工程において得られた多元共重合体の高分子鎖の少なくとも一部(例えば、末端)を変性する反応(カップリング反応)を行う工程である。前記カップリング工程においては、重合反応が100%に達した際にカップリング反応を行うことが好ましい。
【0093】
前記カップリング反応に用いるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)等のスズ含有化合物;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)が、反応効率と低ゲル生成の点で、好ましい。なお、カップリング反応を行うことにより、数平均分子量(Mn)を増加させることができる。
【0094】
前記洗浄工程は、前記重合工程において得られた多元共重合体を洗浄する工程である。なお、洗浄に用いる媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられるが、重合触媒としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(たとえば塩酸、硫酸、硝酸)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。これ以上では酸が共重合体中に残存してしまうことで混練及び加硫時の反応に悪影響を及ぼす可能性がある。
この洗浄工程により、共重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
【0095】
ここで、上記の共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物の重合工程は、触媒成分として、下記(A)~(F)成分の1種以上の存在下で、各種単量体を重合させる操作を含むことが好ましい。なお、重合工程には、下記(A)~(F)成分を1種以上用いることが好ましいが、下記(A)~(F)成分の2種以上を組み合わせて、触媒組成物として用いることがより好ましい。
(A)成分:希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物
(B)成分:有機金属化合物
(C)成分:アルミノキサン
(D)成分:イオン性化合物
(E)成分:ハロゲン化合物
(F)成分:置換又は無置換のシクロペンタジエン(シクロペンタジエニル基を有する化合物)、置換又は無置換のインデン(インデニル基を有する化合物)、及び、置換又は無置換のフルオレン(フルオレニル基を有する化合物)から選択されるシクロペンタジエン骨格含有化合物
【0096】
上記(A)~(F)成分については、例えば、国際公開第2018/092733号等を参照することによって、重合に用いることができる。
【0097】
<成形体>
本発明の一実施形態の成形体は、継ぎ目を有しない成形体であって、上述した成形体の硬度の制御方法を用いて、任意の箇所での硬度を制御したことを特徴とする。
該成形体は、継ぎ目を有さないため、耐久性に優れ、また、任意の箇所での硬度が制御されているため、目的とする用途に好適に利用できる。
本実施形態の成形体は、5cm間隔をあけた任意の点での硬度差が、3~50であることが好ましい。硬度差を3以上とすることで、硬度差の効果を得ることができ、硬度差を50以下とすることで、剛性段差による亀裂の発生を防ぐことが可能となる。
該成形体の用途は、特に限定されず、例えば、タイヤ、コンベヤベルト、ホース、ゴムクローラ、免震装置、防振装置等のゴム物品に、また、車体部品、交通インフラ用部品(道路のポール、ガードレール等)、医療用品等の樹脂物品に、幅広く適用することができる。
【実施例
【0098】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0099】
(第1共重合体の調製)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン277gと、ブタジエン15gと、を含んだシクロヘキサン溶液63gを加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1,3-[(t-Bu)Me2Si]295Gd[N(SiHMe222}0.299mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C654]0.329mmol及びジイソブチルアルミニウムハイドライド3.29mmolを仕込み、シクロヘキサン115mLを加えて触媒溶液とした。得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器に加え、70℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、さらに1,3-ブタジエン135gを含むシクロヘキサン溶液544mLを267分かけて該耐圧ステンレス反応器に投入し、70℃で共重合を行った。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体を得た。このようにして、ブタジエン単位と、エチレン単位と、スチレン単位とを含む第1共重合体(三元共重合体)を調製した。なお、第1共重合体は、ゴム弾性を示すことを確認した。
【0100】
(第2共重合体の調製)
第1共重合体の調製において、モノ(1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体を、モノ((1-ベンジルジメチルシリル-3-メチル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{(1-BnMe2Si-3-Me)C95Gd[N(SiHMe222}に代えたこと及び使用量を適宜変更したこと、並びに、各種単量体の使用量を適宜変更したこと以外は同様にして、ブタジエン単位と、エチレン単位と、スチレン単位とを含む第2共重合体(三元共重合体)を調製した。なお、第2共重合体は、ゴム弾性を示すことを確認した。
【0101】
調製した共重合体について、以下の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0102】
(1)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC-8121GPC/HT、カラム:東ソー製GMHHR-H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、共重合体のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は40℃である。
【0103】
(2)エチレン単位、ブタジエン単位、スチレン単位の割合
共重合体中のエチレン単位、ブタジエン単位、スチレン単位の割合(mol%)を、1H-NMRスペクトル(100℃、d-テトラクロロエタン標準:6ppm)の各ピークの積分比より求めた。
【0104】
(3)融点(Tm)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、共重合体の融点(Tm1、Tm2)を測定した。
【0105】
(4)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、共重合体のガラス転移温度(Tg)とした。
【0106】
(5)結晶化度
共重合体サンプルを、-150℃~150℃まで、10℃/分で昇温し、0~150℃における吸熱ピークエネルギー(ΔH1)と、0~100℃の吸熱ピークエネルギー(ΔH2)と、100~150℃の吸熱ピークエネルギー(ΔH3)を測定した。また、同様にして、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)を測定した。
前記ポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)に対する、共重合体の吸熱ピークエネルギー(ΔH1)の比率(ΔH1/ΔH0×100)から、エチレン単位(非共役オレフィン単位)に由来する結晶化度(%)を算出した。
また、前記ポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)に対する、共重合体の0~100℃の吸熱ピークエネルギー(ΔH2)の比率(ΔH2/ΔH0×100)から、0~100℃におけるエチレン単位(非共役オレフィン単位)に由来する結晶化度(%)を算出した。
更に、前記ポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)に対する、共重合体の100~150℃の吸熱ピークエネルギー(ΔH3)の比率(ΔH3/ΔH0×100)から、100~150℃におけるエチレン単位(非共役オレフィン単位)に由来する結晶化度(%)を算出した。
なお、共重合体サンプルの吸熱ピークエネルギーと、ポリエチレンの結晶融解エネルギーは、示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)で測定した。
【0107】
(6)主鎖非環状構造の確認
得られた共重合体について、以下の方法で主鎖構造を確認したところ、13C-NMRスペクトルチャートにおいて、10~24ppmにピークが観測されなかったことから、得られた共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることを確認した。
【0108】
【表1】
【0109】
(成形体の作製及び評価)
成形体の作製においては、図1に示す形成工程を採用した。まず、第1共重合体及び第2共重合体をそれぞれ、300mm×300mm×厚み1mmの矩形シート状に成形した。次いで、各シート(成形部材)を、常法に従い、矩形の対角線に沿って切断したのち、切断した第1共重合体のシート及び第2共重合体のシートの切断面を当接させ、1枚の組み合わせ矩形シート(複合部材)とした。次いで、この組み合わせ矩形シートを160℃で1分間加熱した後、巻回し、棒状にした後、金属金型を用い、180℃、5MPaの条件で5分以上加熱加圧を行った。その後、冷却板を用い、5分で常温になるように冷却し、こうして棒状の成形体(長さ254mm)を作製した。
【0110】
作製した成形体について、原子間力顕微鏡(AFM)画像により断面を観察したところ、単一の共重合体を用いて成形された成形体の断面のAFM画像と相違がなかった。従って、作製した成形体は、継ぎ目がないことを確認した。
【0111】
また、作製した成形体について、JIS K 6253-3(タイプAデュロメーター)に準拠し、ASKER社製の硬度計(機器名:CL-150)を用いて、254mmの棒状成形体の両端部と、中央部の3点の硬度(表面硬度)を測定したところ、硬度は、端部から順に94、78、67(ポイント)であり、硬度が漸増(漸減)していることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の成形体の硬度の制御方法は、継ぎ目を有しない成形体の硬度を、任意の箇所で制御するのに利用できる。
【符号の説明】
【0113】
1,2:成形部材、 3:シート状の複合部材、 4:棒状の複合部材
図1