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特許7543296スイッチング制御回路及びスイッチング電源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】スイッチング制御回路及びスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021554172
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035433
(87)【国際公開番号】W WO2021084964
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019195332
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】名手 智
(72)【発明者】
【氏名】湯 翼飛
(72)【発明者】
【氏名】シャーウィン リアル クレメンテ
【審査官】間宮 嘉誉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0284994(US,A1)
【文献】特開2018-007515(JP,A)
【文献】特開2008-005567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0147630(US,A1)
【文献】特開2014-117056(JP,A)
【文献】特開2004-234584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタ及びスイッチング素子の直列回路に加わる入力電圧から、前記スイッチング素子をスイッチングすることを通じ、出力電圧を生成するためのスイッチング制御回路において、前記スイッチング素子に流れる電流を対象電流として検出する電流検出部と、前記出力電圧の供給を受ける負荷の大きさに応じたフィードバック電圧に基づき、前記スイッチング素子を設定されたスイッチング周波数でスイッチングさせるPWM動作、又は、バースト動作を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記スイッチング素子のターンオンを指示するセット信号を発生させるセット信号発生部と、前記スイッチング素子のターンオフを指示するリセット信号を発生させるリセット信号発生部と、前記セット信号を受けたときに前記スイッチング素子をオン状態にするための信号を前記スイッチング素子に供給し且つ前記リセット信号を受けたときに前記スイッチング素子をオフ状態にするための信号を前記スイッチング素子に供給するドライブ部と、を有し、前記バースト動作では前記スイッチング周波数での前記スイッチング素子のスイッチングを停止し、
前記バースト動作において、前記セット信号発生部は前記フィードバック電圧に基づき前記セット信号を発生させ、その後、前記リセット信号発生部は前記対象電流の値が、前記フィードバック電圧に応じたターンオフ閾値を超えことを契機に前記リセット信号を発生させ、
前記リセット信号発生部は、前記セット信号の発生後の所定区間にて、前記ターンオフ閾値を時間経過と共に増大させ
前記リセット信号発生部は、前記所定区間において時間経過と共に信号値が増大する第1スロープ補償信号を前記フィードバック電圧に比例する信号に加算することで前記ターンオフ閾値を示すターンオフ閾値用信号を生成し、前記バースト動作において、前記対象電流の値を示す電流検出信号と前記ターンオフ閾値用信号とを比較することにより前記リセット信号を発生させ、
前記セット信号発生部は、前記スイッチング周波数の信号を生成するオシレータを有し、前記PWM動作では、前記オシレータを用いて前記スイッチング周波数にて前記セット信号を発生させ、
前記リセット信号発生部は、前記PWM動作において、前記電流検出信号と、前記ターンオフ閾値用信号と、所定の過電流閾値を示す過電流閾値用信号と、に基づいて、前記リセット信号を発生させ、
前記リセット信号発生部は、前記所定区間において時間経過と共に信号値が増大する第2スロープ補償信号を所定値を持つ信号に加算することで前記過電流閾値用信号を生成する
スイッチング制御回路。
【請求項2】
前記リセット信号発生部は、前記電流検出信号と前記ターンオフ閾値用信号とを比較する第1比較器、及び、前記電流検出信号と前記過電流閾値用信号とを比較する第2比較器を有し、前記PWM動作において、前記第1比較器及び前記第2比較器の各比較結果に基づき前記対象電流の値が前記ターンオフ閾値又は前記過電流閾値より大きくなったときに前記リセット信号を発生させる
、請求項1に記載のスイッチング制御回路。
【請求項3】
前記負荷の大きさが減少するにつれて前記フィードバック電圧は低下し、
前記制御部は、前記フィードバック電圧が所定のバースト判定電圧より高い状態に保たれているとき、前記PWM動作を継続的に実行し、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧を下回ると前記バースト動作を開始する
、請求項1又は2に記載のスイッチング制御回路。
【請求項4】
前記制御部は、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧より高い状態から前記バースト判定電圧より低い状態に移行したことを受けて前記バースト動作を開始し、前記バースト動作の開始後、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧よりも高い所定のバースト解除電圧を上回るまで前記スイッチング素子をオフ状態に維持し、前記フィードバック電圧が前記バースト解除電圧を上回ると前記セット信号発生部により前記セット信号を発生させ、その後、前記対象電流の値がターンオフ閾値を超えたことを受けて前記リセット信号発生部により前記リセット信号を発生させる
、請求項3に記載のスイッチング制御回路。
【請求項5】
前記負荷の大きさが減少するにつれて前記フィードバック電圧は上昇し、
前記制御部は、前記フィードバック電圧が所定のバースト判定電圧より低い状態に保たれているとき、前記PWM動作を継続的に実行し、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧を上回ると前記バースト動作を開始する
、請求項1又は2に記載のスイッチング制御回路。
【請求項6】
前記制御部は、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧より低い状態から前記バースト判定電圧より高い状態に移行したことを受けて前記バースト動作を開始し、前記バースト動作の開始後、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧よりも低い所定のバースト解除電圧を下回るまで前記スイッチング素子をオフ状態に維持し、前記フィードバック電圧が前記バースト解除電圧を下回ると前記セット信号発生部により前記セット信号を発生させ、その後、前記対象電流の値がターンオフ閾値を超えたことを受けて前記リセット信号発生部により前記リセット信号を発生させる
、請求項5に記載のスイッチング制御回路。
【請求項7】
一次側巻線として前記インダクタを有し且つ二次側巻線を有するトランスを用いて、一次側に加わる前記入力電圧から二次側にて前記出力電圧が生成される
、請求項1~6の何れかに記載のスイッチング制御回路。
【請求項8】
一次側巻線及び二次側巻線を有するトランスを用いスイッチング方式にて、一次側に加わる入力電圧から二次側にて出力電圧を生成するスイッチング電源装置において、
インダクタとしての前記一次側巻線に直列接続されるスイッチング素子と、
請求項1~7の何れかに記載のスイッチング制御回路と、
前記出力電圧に基づき前記フィードバック電圧を生成するフィードバック電圧生成回路と、を備えた
ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記入力電圧は交流電圧を整流及び平滑化することで生成される
、請求項8に記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング制御回路及びスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタ及びスイッチング素子の直列回路に加わる入力電圧から、スイッチング素子をスイッチングすることを通じ、出力電圧を生成するスイッチング電源装置が知られている。典型的には例えば、トランスを用いたAC/DCコンバータにおいて、インダクタとしての一次側巻線に対しスイッチング素子を直列接続して、それらの直列回路に対し交流電圧を全波整流して得た直流の入力電圧を印加し、スイッチング素子をスイッチング駆動することで二次側にて出力電圧を得る。
【0003】
この種のスイッチング電源装置では、通常、パルス幅変調を利用して、スイッチング素子をスイッチング周波数でスイッチングさせるPWM動作が実行される。軽負荷時には、電力消費の削減を目的としてバースト動作が実行されるタイプのスイッチング電源装置もある(例えば下記特許文献1参照)。バースト動作では、上記スイッチング周波数によるスイッチングを行わずに、周期性を持たない態様で必要な時にのみスイッチング素子のスイッチングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2008-541688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PWM動作及びバースト動作を切り替え実行可能なスイッチング電源装置では、負荷の大きさが監視され、負荷の大きさに応じたフィードバック電圧に基づき、PWM動作及びバースト動作が切り替え実行されることになる。このとき、PWM動作とバースト動作との切り替えの境界電力(バースト境界電力)が存在することになるが、従来のスイッチング電源装置では、この境界電力が、入力電圧の大小に依存して変化することがあった。
【0006】
即ち例えば、AC/DCコンバータで考えた場合、AC/DCコンバータへの入力交流電圧の実効値は100Vとなったり240Vとなったりすることがあり、それに連動して、トランスの一次側巻線とスイッチング素子との直列回路に加わる直流の入力電圧も様々に変化する。従来のスイッチング電源装置では、上記境界電力が、入力電圧の大小に依存して(例えばAC/DCコンバータへの入力交流電圧の実効値が100Vであるのか240Vであるのかに応じて)変化することがあった。これは、負荷の消費電力が同じであるのに、入力電圧によってバースト動作が行われたり行われなかったりすることを意味する(この現象の発生理由については後に詳説される)。
【0007】
入力電圧によってバースト動作が行われたり行われなかったりすること(換言すればバースト動作の実行条件が入力電圧に依存すること)は望ましくなく、バースト動作に関わる電力設計最適化の妨げとなる。
【0008】
本発明は、バースト動作の実行条件が入力電圧に応じて変化することを抑制するスイッチング制御回路及びスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスイッチング制御回路は、インダクタ及びスイッチング素子の直列回路に加わる入力電圧から、前記スイッチング素子をスイッチングすることを通じ、出力電圧を生成するためのスイッチング制御回路において、前記スイッチング素子に流れる電流を対象電流として検出する電流検出部と、前記出力電圧の供給を受ける負荷の大きさに応じたフィードバック電圧に基づき、前記スイッチング素子を設定されたスイッチング周波数でスイッチングさせるPWM動作、又は、バースト動作を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記スイッチング素子のターンオンを指示するセット信号を発生させるセット信号発生部と、前記スイッチング素子のターンオフを指示するリセット信号を発生させるリセット信号発生部と、前記セット信号を受けたときに前記スイッチング素子をオン状態にするための信号を前記スイッチング素子に供給し且つ前記リセット信号を受けたときに前記スイッチング素子をオフ状態にするための信号を前記スイッチング素子に供給するドライブ部と、を有し、前記バースト動作では前記スイッチング周波数での前記スイッチング素子のスイッチングを停止し、前記バースト動作において、前記セット信号発生部は前記フィードバック電圧に基づき前記セット信号を発生させ、その後、前記リセット信号発生部は前記対象電流の値がターンオフ閾値を超えたことを契機に前記リセット信号を発生させ、前記リセット信号発生部は、前記セット信号の発生後の所定区間にて、前記ターンオフ閾値を時間経過と共に増大させる構成(第1の構成)である。
【0010】
上記第1の構成に係るスイッチング制御回路において、前記ターンオフ閾値は、前記フィードバック電圧に応じた値を持つ構成(第2の構成)であっても良い。
【0011】
上記第1又は第2の構成に係るスイッチング制御回路において、前記リセット信号発生部は、前記所定区間において時間経過と共に信号値が増大するスロープ補償信号を前記フィードバック電圧に比例する信号に加算することで前記ターンオフ閾値を示すターンオフ閾値用信号を生成し、前記バースト動作において、前記対象電流の値を示す電流検出信号と前記ターンオフ閾値用信号とを比較することにより前記リセット信号を発生させる構成(第3の構成)であっても良い。
【0012】
上記第3の構成に係るスイッチング制御回路において、前記セット信号発生部は、前記スイッチング周波数の信号を生成するオシレータを有し、前記PWM動作では、前記オシレータを用いて前記スイッチング周波数にて前記セット信号を発生させ、前記リセット信号発生部は、前記PWM動作において、前記電流検出信号と、前記ターンオフ閾値用信号と、所定の過電流閾値を示す過電流閾値用信号と、に基づいて、前記リセット信号を発生させる構成(第4の構成)であっても良い。
【0013】
上記第4の構成に係るスイッチング制御回路において、前記リセット信号発生部は、前記電流検出信号と前記ターンオフ閾値用信号とを比較する第1比較器、及び、前記電流検出信号と前記過電流閾値用信号とを比較する第2比較器を有し、前記PWM動作において、前記第1比較器及び前記第2比較器の各比較結果に基づき前記対象電流の値が前記ターンオフ閾値又は前記過電流閾値より大きくなったときに前記リセット信号を発生させる構成(第5の構成)であっても良い。
【0014】
上記第4又は第5の構成に係るスイッチング制御回路において、前記リセット信号発生部は、前記所定区間において時間経過と共に信号値が増大する第1スロープ補償信号を前記フィードバック電圧に比例する信号に加算することで前記ターンオフ閾値用信号を生成し、且つ、前記所定区間において時間経過と共に信号値が増大する第2スロープ補償信号を所定値を持つ信号に加算することで前記過電流閾値用信号を生成する構成(第6の構成)であっても良い。
【0015】
上記第1~第6の構成の何れかに係るスイッチング制御回路において、前記負荷の大きさが減少するにつれて前記フィードバック電圧は低下し、前記制御部は、前記フィードバック電圧が所定のバースト判定電圧より高い状態に保たれているとき、前記PWM動作を継続的に実行し、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧を下回ると前記バースト動作を開始する構成(第7の構成)であっても良い。
【0016】
上記第7の構成に係るスイッチング制御回路において、前記制御部は、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧より高い状態から前記バースト判定電圧より低い状態に移行したことを受けて前記バースト動作を開始し、前記バースト動作の開始後、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧よりも高い所定のバースト解除電圧を上回るまで前記スイッチング素子をオフ状態に維持し、前記フィードバック電圧が前記バースト解除電圧を上回ると前記セット信号発生部により前記セット信号を発生させ、その後、前記対象電流の値がターンオフ閾値を超えたことを受けて前記リセット信号発生部により前記リセット信号を発生させる構成(第8の構成)であっても良い。
【0017】
上記第1~第6の構成の何れかに係るスイッチング制御回路において、前記負荷の大きさが減少するにつれて前記フィードバック電圧は上昇し、前記制御部は、前記フィードバック電圧が所定のバースト判定電圧より低い状態に保たれているとき、前記PWM動作を継続的に実行し、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧を上回ると前記バースト動作を開始する構成(第9の構成)であっても良い。
【0018】
上記第9の構成に係るスイッチング制御回路において、前記制御部は、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧より低い状態から前記バースト判定電圧より高い状態に移行したことを受けて前記バースト動作を開始し、前記バースト動作の開始後、前記フィードバック電圧が前記バースト判定電圧よりも低い所定のバースト解除電圧を下回るまで前記スイッチング素子をオフ状態に維持し、前記フィードバック電圧が前記バースト解除電圧を下回ると前記セット信号発生部により前記セット信号を発生させ、その後、前記対象電流の値がターンオフ閾値を超えたことを受けて前記リセット信号発生部により前記リセット信号を発生させる構成(第10の構成)であっても良い。
【0019】
上記第1~第10の構成の何れかに係るスイッチング制御回路において、一次側巻線として前記インダクタを有し且つ二次側巻線を有するトランスを用いて、一次側に加わる前記入力電圧から二次側にて前記出力電圧が生成される構成(第11の構成)であっても良い。
【0020】
本発明に係るスイッチング電源装置は、一次側巻線及び二次側巻線を有するトランスを用いスイッチング方式にて、一次側に加わる入力電圧から二次側にて出力電圧を生成するスイッチング電源装置において、インダクタとしての前記一次側巻線に直列接続されるスイッチング素子と、上記第1~第11の構成の何れかに係るスイッチング制御回路と、前記出力電圧に基づき前記フィードバック電圧を生成するフィードバック電圧生成回路と、を備えた構成(第12の構成)である。
【0021】
上記第12の構成に係るスイッチング電源装置において、前記入力電圧は交流電圧を整流及び平滑化することで生成される構成(第13の構成)であっても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、バースト動作の実行条件が入力電圧に応じて変化することを抑制するスイッチング制御回路及びスイッチング電源装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】は、本発明の第1実施形態に係るAC/DCコンバータの全体構成図である。
図2】は、本発明の第1実施形態に係り、AC/DCコンバータとしての電子部品の外観斜視図である。
図3】は、本発明の第1実施形態に係り、AC/DCコンバータの一部構成図である。
図4】は、本発明の第1実施形態に係り、フィードバック電圧に応じたモード設定の説明図である。
図5】は、本発明の第1実施形態に係るバースト動作の説明図である。
図6】(a)~(c)は、本発明の第1実施形態に係り、仮想状況における一次側電流の波形を示す図である。
図7】は、本発明の第1実施形態に係り、仮想状況における入力電圧及びバースト境界電圧の関係図である。
図8】は、本発明の第1実施形態に係り、実状況における一次側電流の波形を示す図である。
図9】は、本発明の第1実施形態に係り、実状況における入力電圧及びバースト境界電圧の関係図である。
図10】は、本発明の第1実施形態に係り、一次側制御回路の概略内部ブロック図である。
図11】は、本発明の第1実施形態に係り、メイン制御部の構成図である。
図12】は、本発明の第1実施形態に係り、バースト動作に関わる各種電圧及び信号の波形図である。
図13】は、本発明の第1実施形態に係り、セット信号発生部の機能ブロック図である。
図14】は、本発明の第1実施形態に係り、フィードバック電圧とスイッチングに関わる周波数との関係図である。
図15】は、本発明の第1実施形態に係り、スロープ補償信号の波形を説明するための図である。
図16】は、本発明の第1実施形態に係り、ドライブ部の動作に関わる複数の信号の波形図である。
図17】は、本発明の第1実施形態に係り、リセット信号を発生させるために一次側電流と対比される電流の波形(5種類の電流の波形)を示す図である。
図18】は、本発明の第1実施形態に係り、二次側電力及びスイッチング周波数間の関係が入力電圧に依存しない様子を示す図である。
図19】は、バースト動作に関わる電圧及び信号等の基本波形図である。
図20】は、バースト動作に関わる電圧及び信号等の変形波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“14”によって参照されるスイッチングトランジスタは(図1参照)、スイッチングトランジスタ14と表記されることもあるし、トランジスタ14と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0025】
まず、本発明の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。本発明の実施形態において、ICとは集積回路(Integrated Circuit)の略称である。PWMとはパルス幅変調(Pulse Width Modulation)の略称である。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称する。
【0026】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。以下、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。任意のトランジスタについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。
【0027】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るAC/DCコンバータ1の全体構成図である。図1には、AC/DCコンバータ1に接続される負荷LDも示されている。AC/DCコンバータ1は、一次側に設けられた回路である一次側回路10と、二次側に設けられた回路である二次側回路20と、を備える。AC/DCコンバータ1において、一次側と二次側は互いに絶縁されている、換言すれば一次側回路10と二次側回路20は互いに絶縁されている。また、AC/DCコンバータ1は、一次側回路10と二次側回路20に亘って設けられるトランスTR及びフォトカプラPCを備える。トランスTRは、一次側回路10に配置された一次側巻線W1と、二次側回路20に配置された二次側巻線W2と、を備える。トランスTRにおいて、一次側巻線W1と二次側巻線W2とは電気的に絶縁されつつ互いに逆極性にて磁気結合されている。フォトカプラPCは、二次側回路20に配置された発光素子PCeと、一次側回路10に配置された受光素子PCrと、を備える。
【0028】
AC/DCコンバータ1では、トランスTRを用いて入力電圧VINから絶縁形式で出力電圧VOUTが生成される。一次側回路10におけるグランドは“GND1”にて参照され、二次側回路20におけるグランドは“GND2”にて参照される。入力電圧VINはグランドGND1を基準とする一次側電圧であり、出力電圧VOUTはグランドGND2を基準とする二次側電圧である。一次側回路10及び二次側回路20の夫々において、グランドは0V(ゼロボルト)の基準電位を有する導電部(所定電位点)を指す又は基準電位そのものを指す。但し、グランドGND1とグランドGND2は互いに絶縁されているため、互いに異なる電位を有し得る。
【0029】
一次側回路10について説明する。一次側回路10には、フィルタ11、整流回路12、平滑コンデンサ13、スイッチングトランジスタ14、電流センス抵抗15、スイッチング制御回路の例である一次側制御回路16、電源生成回路17及びフィードバック用コンデンサ18が設けられる。スイッチングトランジスタ14はNチャネル型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)として構成されている。
【0030】
フィルタ11は、AC/DCコンバータ1に入力された交流電圧VACのノイズを除去する。交流電圧VACは商用交流電圧であって良い。整流回路12は、フィルタ11を通じて供給された交流電圧VACを全波整流するダイオードブリッジ回路である。平滑コンデンサ13は整流回路12により全波整流された電圧を平滑化することで入力電圧VINを生成する。平滑コンデンサ13の両端間にグランドGND1を基準として入力電圧VINが加わる。平滑コンデンサ13の両端は入力電圧VINが加わる入力端子TMINに相当する又は入力端子TMINに接続されると解される。入力電圧VINは交流電圧VACの実効値に応じた電圧値を有する正の直流電圧である。入力電圧VINは交流電圧VACの周期にて若干脈動し得るが、ここでは当該脈動を無視する。
【0031】
一次側巻線W1の一端に入力電圧VINが印加され、一次側巻線W1の他端はスイッチングトランジスタ14のドレインに接続される。スイッチングトランジスタ14のソースは電流センス抵抗15を介してグランドGND1に接続される。電流センス抵抗15で発生する電圧降下、即ち電流センス抵抗15の両端子間電圧が、電流センス電圧VCSとして一次側制御回路16に入力される。電流センス電圧VCSは、スイッチングトランジスタ14に流れる電流の値に比例した電圧値を持つ。また、スイッチングトランジスタ14に流れる電流、即ち、一次側巻線W1に流れる電流を一次側電流と称し、符号“I”にて表す。
【0032】
一次側制御回路16には、出力端子TM1、電流センス端子TM2、フィードバック端子TM3、電源端子TM4及びグランド端子TM5が設けられている。出力端子TM1はスイッチングトランジスタ14のゲートに接続される。電流センス端子TM2にて上述の電流センス電圧VCSを受ける。フィードバック端子TM3にて後述のフィードバック電圧VFBを受ける。フィードバック電圧VFBはフィードバック用コンデンサ18の両端子間電圧に相当し、コンデンサ18の一端がフィードバック端子TM3に接続され、コンデンサ18の他端がグランドGND1に接続される。電源端子TM4は電源生成回路17から提供される直流の電源電圧VCCを受ける。グランド端子TM5は一次側のグランドGND1に接続される。一次側制御回路16は電源電圧VCCに基づいて駆動する。
【0033】
電源生成回路17は、入力電圧VINを元に電源電圧VCCを生成して、電源電圧VCCを一次側制御回路16に供給する。トランスTRの一次側に補助巻線(不図示)が設けられていても良い。この場合、電源生成回路17は、スイッチングトランジスタ14がスイッチング駆動される際に補助巻線に生ずる誘起電圧を整流することで電源電圧VCCを生成する回路であって良い。或いは、電源生成回路17は、入力電圧VINをDC/DC変換することで電源電圧VCCを生成するDC/DCコンバータであっても良い。
【0034】
一次側制御回路16は、トランジスタ14のゲートにスイッチング信号を供給してトランジスタ14のゲート電圧を制御することで、トランジスタ14をスイッチング駆動する。スイッチング信号は、信号レベルがローレベル及びハイレベル間で切り替わる矩形波状の信号である。トランジスタ14のゲートにローレベル、ハイレベルの信号が供給されているとき、トランジスタ14は、夫々、オフ状態、オン状態となる。
【0035】
一次側制御回路16を電源ICの形態で形成しても良い。図2に電源ICとしての電子部品1ICの外観斜視図を示す。電子部品1ICは、一次側制御回路16を構成する半導体集積回路が形成された半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体に取り付けられ且つ筐体から露出した複数の外部端子と、を備えた電子部品(半導体装置)であり、半導体チップを樹脂にて構成された筐体内に封入することで形成される。上記複数の外部端子の中に図1の端子TM1~TM5が含まれる。
【0036】
二次側回路20について説明する。二次側回路20には、整流ダイオード21、平滑コンデンサ22及びフィードバック回路23が設けられる。ここでは、AC/DCコンバータ1の構成要素の内、二次側に配置される回路を二次側回路20と称している。このため、AC/DCコンバータ1の構成要素に含まれない負荷LDは、二次側に配置されてはいるものの、二次側回路20には属さない。
【0037】
トランスTRにおいて、二次側巻線W2の一端は整流ダイオード21のアノードに接続され、二次側巻線W2の他端はグランドGND2に接続される。整流ダイオード21のカソードは平滑コンデンサ22の一端に接続され、平滑コンデンサ22の他端はグランドGND2に接続される。このため、スイッチングトランジスタ14がオンであるときに入力電圧VINに基づく電流が一次側巻線W1に流れて一次側巻線W1にエネルギが蓄積され、その後、スイッチングトランジスタ14がオフとされると、蓄積されたエネルギが二次側巻線W2から整流ダイオード21を通じて平滑コンデンサ22に向けて出力される。この結果、平滑コンデンサ22の両端間に出力電圧VOUTが生じる。平滑コンデンサ22の両端は出力電圧VOUTが加わる出力端子TMOUTに相当する又は出力端子TMOUTに接続されると解される。出力電圧VOUTは、入力電圧VINと、一次側巻線W1の巻き数及び二次側巻線W2の巻き数の比と、に応じた電圧値を有する正の直流電圧である。出力電圧VOUTは若干脈動し得るが、ここでは当該脈動を無視する。通常、一次側巻線W1の巻き数に対し二次側巻線W2の巻き数は少なく、よって、出力電圧VOUTは入力電圧VINよりも小さい(即ち出力電圧VOUTは入力電圧VINよりも低い電圧値を有する)。
【0038】
負荷LDは、出力端子TMOUTに接続されて出力電圧VOUTに基づき駆動する任意の負荷であり、例えば、マイコンコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、DC/DCコンバータである。負荷LDの消費電流、即ち、平滑コンデンサ22を放電させる向きに平滑コンデンサ22及び負荷LD間に流れる電流を負荷電流又は出力電流と称し、符号“ILD”にて表す。
【0039】
フィードバック回路23は、出力電圧VOUTが所定の目標電圧VTGと一致するようにフォトカプラPCの発光素子PCeを駆動する。例えば、フィードバック回路23は、出力電圧VOUTと所定の目標電圧VTGとの間の誤差に応じた電流を発光素子PCeに供給する。フィードバック回路23はシャントレギュレータやエラーアンプ等にて構成される。目標電圧VTGは、出力電圧VOUTが一致すべき、出力電圧VOUTの目標電圧である。
【0040】
フォトカプラPCの受光素子PCrにはフィードバック電流IFBが流れる。フィードバック電流IFBの大きさは、発光素子PCeに流れる電流の大きさが増大するにつれて増大し、減少するにすれて減少する。受光素子PCrはフィードバック端子TM3とグランドGND1との間に設けられ、フィードバック電流IFBはフィードバック端子TM3からグランドGND1に向けて流れる。
【0041】
尚、ここでは、ダイオード整流方式(非同期整流方式)且つフライバック方式にて出力電圧VOUTを生成する例を挙げているが、AC/DCコンバータ1において、同期整流方式にて出力電圧VOUTを生成するようにしても良いし、フォワード方式にて出力電圧VOUTを生成するようにしても良い。
【0042】
図3を参照し、出力電圧VOUT及び負荷電流ILDとフィードバック電圧VFBとの関係について説明を加える。一次側制御回路16では、電源電圧VCCを元に所定の内部電源電圧Vregが生成されている。内部電源電圧Vregは、グランドGND1を基準とする正の直流電圧であり、例えば4Vである。一次側制御回路16にはフィードバック用抵抗RFBが設けられている。フィードバック用抵抗RFBの一端に内部電源電圧Vregが加えられ、フィードバック用抵抗RFBの他端にフィードバック端子TM3が接続される。
【0043】
負荷電流ILDはAC/DCコンバータ1にとっての負荷LDの大きさを表しており、負荷電流ILDが大きいほど負荷LDの大きさは大きく、負荷電流ILDが小さいほど負荷LDの大きさは小さい。負荷LDの大きさが大きいことは負荷LDが重いとも表現され、負荷LDの大きさが小さいことは負荷LDが軽いとも表現される。尚、負荷電流ILDの大/小とは、負荷電流ILDの瞬時値の大/小ではなく、負荷電流ILDの平均値の大/小を指すと解して良い。
【0044】
スイッチングトランジスタ14がターンオンされた後にターンオフされるという一連の動作を単位スイッチング動作と称する。AC/DCコンバータ1から負荷LDへの供給電力は、単位時間当たりのスイッチング動作数(即ち、単位時間当たりの単位スイッチング動作の繰り返し実行回数)と、各単位スイッチング動作における一次側電流Iのピーク電流値(以下、単にピーク電流値IPEAKと称され得る)と、により決定される。
【0045】
出力電圧VOUTが目標電圧VTGにて安定化されている或る状態を起点として、負荷LDの大きさが大きくなると(即ち負荷電流ILDが増大すると)、出力電圧VOUTが目標電圧VTGから低下する方向に向かう。これを受けて、フィードバック回路23は発光素子PCeへの電流供給量を減少させる(ゼロになりうる)。この結果、フィードバック電流IFBが減少してフィードバック電圧VFBが上昇する。この際、負荷電流ILDが大きくなるにつれて、フィードバック電流IFBの減少量及びフィードバック電圧VFBの上昇量は大きくなる。但し、フィードバック電圧VFBの上昇は内部電源電圧Vregまでに制限される。
【0046】
フィードバック電圧VFBが上昇すると、一次側制御回路16は、単位時間当たりの平均スイッチング動作数、又は、各単位スイッチング動作におけるピーク電流値IPEAKが増大するように、スイッチングトランジスタ14のスイッチング制御を実行する。これにより、負荷電流ILDの増大に抗して出力電圧VOUTを目標電圧VTGにて安定化させる。
【0047】
逆に、出力電圧VOUTが目標電圧VTGにて安定化されている或る状態を起点として、負荷LDの大きさが小さくなると(即ち負荷電流ILDが減少すると)、出力電圧VOUTが目標電圧VTGから上昇する方向に向かう。これを受けて、フィードバック回路23は発光素子PCeへの電流供給量を増大させる。この結果、フィードバック電流IFBが増大してフィードバック電圧VFBが低下する。この際、負荷電流ILDが小さくなるにつれて、フィードバック電流IFBの増大量及びフィードバック電圧VFBの低下量は大きくなる。但し、フィードバック電圧VFBの低下はグランドGND1の電位までに制限される。
【0048】
フィードバック電圧VFBが低下すると、一次側制御回路16は、単位時間当たりの平均スイッチング動作数、又は、各単位スイッチング動作におけるピーク電流値IPEAKが減少するように、スイッチングトランジスタ14のスイッチング制御を実行する。これにより、負荷電流ILDの減少に抗して出力電圧VOUTを目標電圧VTGにて安定化させる。
【0049】
このように、フィードバック電圧VFBは負荷LDの大きさに応じた電圧となる。本実施形態に係る構成では、負荷電流ILDが大きいほど(負荷電流ILDの平均値が大きいほど)フィードバック電圧VFBは高くなり、負荷電流ILDが小さいほど(負荷電流ILDの平均値が小さいほど)フィードバック電圧VFBは低くなる。
【0050】
一次側制御回路16は、複数のモードの何れかを自身の動作モードに設定し、設定した動作モードにて動作する。ここでは、複数のモードに第1~第5モードが含まれているものとする。一次側制御回路16はフィードバック電圧VFBに基づき第1~第5モードの何れかを動作モードに設定する。図4には、フィードバック電圧VFBと動作モードとの関係が示されている。
【0051】
第2~第4モードでは一次側制御回路16によりPWM動作が実行される。PWM動作では、スイッチングトランジスタ14が、設定されたスイッチング周波数fSWにて周期的にスイッチングされる。つまり、スイッチング周波数fSWは、PWM動作の実行時におけるスイッチングトランジスタ14のスイッチング周波数(即ち、1秒当たりの単位スイッチング動作の繰り返し実行回数)である。詳細は後述の説明から明らかとなるが、PWM動作における各単位スイッチング動作において、スイッチングトランジスタ14がターンオンされた後、一次側電流Iの値が或る電流値(例えばフィートバック電圧VFBに基づく電流値又は過電流検出電圧に基づく電流値)に達すると、スイッチングトランジスタ14はターンオフされる。つまり、一次側制御回路16は、所謂PWMカレントモードでトランジスタ14のスイッチング制御を行うことができる。
【0052】
一次側制御回路16の動作モードは、所定の電圧V、V、V、V及びVとフィードバック電圧VFBとの関係に基づき、“VFB<V”の成立時に第1モードに設定され、“V≦VFB<V”の成立時に第2モードに設定され、“V≦VFB<V”の成立時に第3モードに設定され、“V≦VFB<V”の成立時に第4モードに設定され、“V≦VFB”の成立時に第5モードに設定される。“0<V<V<V<V<V”が成立し、ここでは、電圧V、V、V、V、Vは、夫々、0.40V、0.55V、1.25V、2.00V、2.80V(ボルト)であるとする。電圧Vの意義は後述の説明から明らかとなる。
【0053】
上述したように、第2~第4モードではPWM動作が実行される。それらの内、第2モードはスイッチング周波数fSWが所定周波数fにて固定されるf固定モードであり、第4モードはスイッチング周波数fSWが所定周波数fよりも高い所定周波数fにて固定されるf固定モードである。周波数f、fは、ここでは、夫々、25kHz、100kHz(キロヘルツ)であるとする。第3モードはフィードバック電圧VFBの低下につれてスイッチング周波数fSWを低下させるf低減モードである。具体的には、第3モードでは、フィードバック電圧VFBが電圧Vから電圧Vに低下するにつれてスイッチング周波数fSWが周波数fから周波数fへと線型的に低下せしめられ、逆に、フィードバック電圧VFBが電圧Vから電圧Vに上昇するにつれてスイッチング周波数fSWが周波数fから周波数fへと線型的に増大せしめられる。
【0054】
PWM動作が実行される際、負荷LDが相対的に軽いときにスイッチング周波数fSWが低減されることで、電力の変換効率を高めることができる。尚、第2モードは削除されても良い。この場合、“V=V”とみなせば良い。
【0055】
第5モードは過負荷モードである。第5モードにおいて、“V≦VFB”が成立する状態が所定時間(例えば64ミリ秒)以上継続した場合、一次側制御回路16は、AC/DCコンバータ1が過負荷状態にあると判断して過負荷保護動作を行う。過負荷保護動作では、PWM動作や後述のバースト動作を行うことなく、スイッチングトランジスタ14のスイッチングを停止してトランジスタ14をオフ状態に維持する。尚、“V≦VFB”の非成立状態から“V≦VFB”の成立状態に移行した後、過負荷保護動作が行われるまでは、“fSW=f”によるPWM動作が実行される。第5モードは、本発明の特異な特徴に関与しないため、以下、特に必要なき限り、常に“VFB<V”が成立するものとして第5モードの存在を無視する。
【0056】
第1モードはバーストモードである。PWM動作が行われている状態からフィードバック電圧VFBが低下して“VFB<V”が成立するとバーストモードへの移行が発生して、一次側制御回路16によりバースト動作が実行される。バースト動作では、上記スイッチング周波数fSWでのスイッチングトランジスタ14のスイッチングが停止され、周期性を持たない態様でスイッチングトランジスタ14がスイッチングされる。バースト動作におけるスイッチングトランジスタ14のスイッチングが、偶然、周期性を持つこともあるが、このときのスイッチングトランジスタ14のスイッチング周波数は周波数fよりも低くなる。尚、詳細は後述の説明から明らかとなるが、“VFB<V”が成立している区間ではスイッチングトランジスタ14がオフ状態に保たれ、フィードバック電圧VFBが電圧V近辺で上下することでバースト動作が実現されることになる。
【0057】
図5を参照し、バースト動作について説明する。図5には、バースト動作が実行されているときのフィードバック電圧VFBの波形とスイッチングトランジスタ14の状態変化とが示されている。電圧VBST1は所定のバースト判定電圧であり、電圧VBST2は所定のバースト解除電圧である。バースト判定電圧VBST1図4の電圧Vに相当し、ここでは0.40Vである。バースト解除電圧VBST2はバースト判定電圧VBST1よりも高く、ここでは、0.45Vであるとする。
【0058】
負荷LDが軽いが故に“VFB<VBST1”が成立しているタイミングtを基準にして考える。タイミングtにおいてスイッチングトランジスタ14はオフ状態である。トランジスタ14がオフ状態に保たれていると出力電圧VOUTの低下に伴ってフィードバック電圧VFBが上昇してゆく。そして、タイミングtにてフィードバック電圧VFBがバースト解除電圧VBST2を上回ると、それを契機に一次側制御回路16によりトランジスタ14がターンオンされる。バースト動作において、トランジスタ14がターンオンされた後、タイミングtにて一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFFに達すると、スイッチングトランジスタ14がターンオフされる。
【0059】
図5の例では、トランジスタ14の一回分のスイッチングにてフィードバック電圧VFBが再びバースト判定電圧VBST1を下回っており、以後、タイミングt~t間の動作と同じ動作がバースト動作において繰り返される。タイミングtにてフィードバック電圧VFBがバースト解除電圧VBST2を上回った後、トランジスタ14の一回分のスイッチングにてフィードバック電圧VFBがバースト判定電圧VBST1を下回らないこともあり、この場合には、フィードバック電圧VFBがバースト判定電圧VBST1を下回るまで周波数fにてトランジスタ14のターンオンが繰り返される。負荷LDが重くなることでフィードバック電圧VFBが安定的にバースト判定電圧VBST1を上回るのであれば、一次側制御回路16にて実行される動作がバースト動作からPWM動作が移行することになる。
【0060】
ここで、図6(a)~(c)を参照し、上述のターンオフ閾値IOFFとして、固定値を有するターンオフ閾値IOFF[const]を用いると仮定したときのバースト動作について考える。図6(a)の実線波形610、図6(b)の破線波形620は、夫々、第1、第2仮想状況における一次側電流Iの波形を示している。第1仮想状況は“IOFF=IOFF[const]”且つ“VIN=VINL”であるときにバースト動作が実行される状況であり、第2仮想状況は“IOFF=IOFF[const]”且つ“VIN=VINH”であるときにバースト動作が実行される状況である。ここで、入力電圧VINの第1例である電圧VINLは入力電圧VINの第2例である電圧VINHよりも低い。例えば、電圧VINL、VINHは、夫々、図1の交流電圧VACの実効値が100V、240Vであるときの入力電圧VINに相当する。第1、第2仮想状況における一次側電流Iは、夫々、符号“I[VINL]”、“I[VINH]”にて参照される。図6(c)では、図6(a)に示される一次側電流I[VINL]の波形610と図6(b)に示される一次側電流I[VINH]の波形620とが重ねあわせて示されている。但し、図示の便宜上、図6(c)では、波形610及び620を若干互いに上下にずらして示している。
【0061】
第1及び第2仮想状況の何れにおいても、バースト動作においてスイッチングトランジスタ14がターンオンされた後、一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFF(ここではIOFF[const])に達したことを契機にスイッチングトランジスタ14がターンオフされる。但し、一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFF(ここではIOFF[const])に達したタイミングから、所定の遅延時間tDLYが経過した後に、スイッチングトランジスタ14が実際にターンオフする。遅延時間tDLYは、一次側制御回路16内の信号遅延や、スイッチングトランジスタ14のゲート容量の充放電時間に基づいている。
【0062】
遅延時間tDLYは、入力電圧VINの大小に拘らず一定である。しかしながら、遅延時間tDLYに対する一次側電流Iの変化量は入力電圧VINの大小に依存する。スイッチングトランジスタ14がオンである時の一次側電流Iの単位時間当たりの変化量は、一次側巻線W1のインダクタンス値に反比例し且つ入力電圧VINに比例するからである。結果、第1仮想状況における一次側電流Iのピーク電流値IPEAKであるピーク電流値IP1と、第2仮想状況における一次側電流Iのピーク電流値IPEAKであるピーク電流値IP2とを比較したとき、“IP1<IP2”となる。
【0063】
そうすると、“IOFF=IOFF[const]”であったならば、図7に示す如く、バースト境界電力PBSTが入力電圧VINの大小に応じて(換言すれば交流電圧VACの大小に応じて)変化することになる。バースト境界電力PBSTとは、バースト動作とPWM動作との切り替えの境界となる電力を指す。つまり、AC/DCコンバータ1から負荷LDへの供給電力(即ち出力電圧VOUTと負荷電流ILDとの積)が、バースト境界電力PBSTよりも大きければPWM動作が実行され、バースト境界電力PBSTよりも小さければバースト動作が実行される。
【0064】
バースト動作は軽負荷時でのAC/DCコンバータ1の電力消費を低減するものであるが、入力電圧VINによって、バースト動作が行われたり行われなかったりすることは望ましくなく、バースト動作に関わる電力設計最適化の妨げとなる。
【0065】
これを考慮し、一次側制御回路16では、スイッチングトランジスタ14のターンオンの後、ターンオフ閾値IOFFを徐々に増加させる補償(以下、アップスロープ補償と称する)を行う。
【0066】
図8において、実線波形630、破線波形640は、夫々、第1、第2実状況における一次側電流Iの波形を示している。第1実状況はターンオフ閾値IOFFにアップスロープ補償が適用され且つ“VIN=VINL”であるときにバースト動作が実行される状況であり、第2実状況はターンオフ閾値IOFFにアップスロープ補償が適用され且つ“VIN=VINH”であるときにバースト動作が実行される状況である。尚、図示の便宜上、図8では、波形630及び640を若干互いに上下にずらして示している。
【0067】
第1及び第2実状況の何れにおいても、バースト動作においてスイッチングトランジスタ14がターンオンされた後、一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFFに達したことを契機にスイッチングトランジスタ14がターンオフされる。但し、一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFFに達したタイミングから、所定の遅延時間tDLYが経過した後に、スイッチングトランジスタ14が実際にターンオフする。
【0068】
第1及び第2実状況では、スイッチングトランジスタ14のターンオンの後、ターンオフ閾値IOFFが徐々に増加する。このため、第1実状況における一次側電流Iのピーク電流値IPEAKであるピーク電流値IP1’と、第2実状況における一次側電流Iのピーク電流値IPEAKであるピーク電流値IP2’とを比較したとき、それらの差の大きさ|IP1’-IP2’|は、上述の仮想状況に対応する差の大きさ|IP1-IP2|よりも小さくなる。理想的には、|IP1’-IP2’|がゼロとされる(そうなるようにアップスロープ補償が設計される)。あらゆる状況において、|IP1’-IP2’|をゼロとすることは難しい場合もあるが、|IP1’-IP2’|が極力ゼロに近づくようにアップスロープ補償が設計される。
【0069】
図9に、アップスロープ補償がターンオフ閾値IOFFに適用された場合における、入力電圧VINとバースト境界電力PBSTとの関係を示す。アップスロープ補償の利用により、バースト境界電力PBSTにおける入力電圧VINへの依存性が低下し、バースト境界電力PBSTを入力電圧VINに依存せず実質的に一定とすることも可能となる。結果、AC/DCコンバータ1を含む装置のバースト動作に関わる電力設計の最適化が容易となる。
【0070】
図10に、一次側制御回路16の概略的な内部ブロック図を示す。一次側制御回路16は、セット信号発生部110、リセット信号発生部120及びドライブ部130を有するメイン制御部100と、電流検出部140と、を備える。電流検出部140は、電流センス抵抗15を用いてスイッチングトランジスタ14に流れる一次側電流I(対象電流)を検出し、その検出結果を示す電流検出信号SCSを生成及び出力する。具体的には、電流検出部140に対し、グランドGND1を基準として電流センス抵抗15にて生じる電圧降下(即ち電流センス電圧VCS)が与えられる。電流検出部140は、増幅器及びフィルタ等を含んで構成され、電流センス電圧VCSをk倍した電圧値を有する電圧信号を電流検出信号SCSとして生成及び出力する。ここで、kは正の任意の実数である。
【0071】
電流検出信号SCSはメイン制御部100に与えられる。また、フィードバック電圧VFBもメイン制御部100に与えられる。メイン制御部100は、フィードバック電圧VFB及び電流検出信号SCSに基づき(従って、フィードバック電圧VFB及び電流センス電圧VCSに基づき)、スイッチングトランジスタ14のゲートにスイッチング信号を供給してトランジスタ14のゲート電圧を制御し、これによってトランジスタ14をスイッチング駆動する。尚、トランジスタ14のゲートに供給される信号をゲート信号と表記することもある。
【0072】
セット信号発生部110は信号SETを生成する。リセット信号発生部120は信号RSTを生成する。信号SET及びRSTはドライブ部130に供給される。信号SET及びRSTの夫々は、ローレベル及びハイレベルの何れかの信号レベルをとる二値化信号である。ハイレベルの信号SETは、スイッチングトランジスタ14のターンオンを指示するセット信号として機能し、ローレベルの信号SETはセット信号として機能しない(無効である)。ハイレベルの信号RSTは、スイッチングトランジスタ14のターンオフを指示するリセット信号として機能し、ローレベルの信号RSTはリセット信号として機能しない(無効である)。
【0073】
ドライブ部130は、セット信号を受けたとき(即ちハイレベルの信号SETを受けたとき)、スイッチングトランジスタ14をオン状態にするための信号(即ちハイレベルのゲート信号)をスイッチングトランジスタ14のゲートに供給する。ドライブ部130は、リセット信号を受けたとき(即ちハイレベルの信号RSTを受けたとき)、スイッチングトランジスタ14をオフ状態にするための信号(即ちローレベルのゲート信号)をスイッチングトランジスタ14のゲートに供給する。
【0074】
また、メイン制御部100は、フィードバック電圧VFBに基づき、スイッチングトランジスタ14を設定されたスイッチング周波数fSWでスイッチングさせるPWM動作、又は、バースト動作を実行する。バースト動作では、上述の如く、スイッチング周波数fSWでのトランジスタ14のスイッチングを停止させる。
【0075】
バースト動作において、セット信号発生部110はフィードバック電圧VFBに基づきセット信号を発生させ(図5参照;“VFB>VBST2”となったことを受けてセット信号を発生させ)、その後、リセット信号発生部120は電流検出信号SCSを参照し一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFFを超えたことを契機にリセット信号を発生させる。ここで、ターンオフ閾値IOFFには上述のアップスロープ補償が適用される。
【0076】
図11にメイン制御部100の詳細な構成例を示す。
【0077】
セット信号発生部110について説明する。図11の構成例において、セット信号発生部110は、比較器111及びオシレータ112を備える。比較器111は、ヒステリシス付きの比較器であって、フィードバック電圧VFBに応じたフィードバック信号SFB2に基づき、オシレータ112に対するイネーブル信号ENOSCを生成する。ここでは、フィードバック信号SFB2は、フィードバック電圧VFBの1/2倍の電圧値を有する電圧信号であるとする。比較器111は、フィードバック信号SFB2による電圧(VFB/2)と電圧(VBST1/2)又は電圧(VBST2/2)とを比較して、それらの大小関係を示す信号をイネーブル信号ENOSCとして出力する。イネーブル信号ENOSCは、ローレベル及びハイレベルの何れかの信号レベルをとる二値化信号である。
【0078】
比較器111において、電圧(VFB/2)と電圧(VBST1/2)又は電圧(VBST2/2)との比較は、フィードバック電圧VFBとバースト判定電圧VBST1又はバースト解除電圧VBST2との比較と等価である。故に、電圧VFBと電圧VBST1又はVBST2との大小関係に注目して比較器111の動作を説明する。図12に、電圧VFB、VBST1及びVBST2と、イネーブル信号ENOSCを含む各種信号との関係を示す(図12に示される信号OUTVCOについては後述)。
【0079】
一次側制御回路16の起動直後においては、所定の起動シーケンスによりフィードバック電圧VFBはバースト判定電圧VBST1及びバースト解除電圧VBST2よりも十分に高く、このとき、比較器111の出力信号であるイネーブル信号ENOSCはハイレベルとなっている。
【0080】
図12に示す如く、比較器111の出力信号(ENOSC)がハイレベルであるとき、比較器111では、フィードバック電圧VFBとバースト判定電圧VBST1とが比較され、“VFB>VBST1”の成立時にはイネーブル信号ENOSCがハイレベルに維持される一方、“VFB<VBST1”の成立時にはイネーブル信号ENOSCがハイレベルからローレベルに切り替えられる。比較器111の出力信号がハイレベルであるときにおいて、“VFB=VBST1”であったときには、イネーブル信号ENOSCはハイレベル及びローレベルの何れかとなる。
【0081】
図12に示す如く、比較器111の出力信号(ENOSC)がローレベルであるとき、比較器111では、フィードバック電圧VFBとバースト解除電圧VBST2とが比較され、“VFB<VBST2”の成立時にはイネーブル信号ENOSCがローレベルに維持される一方、“VFB>VBST2”の成立時にはイネーブル信号ENOSCがローレベルからハイレベルに切り替えられる。比較器111の出力信号がローレベルであるときにおいて、“VFB=VBST2”であったときには、イネーブル信号ENOSCはハイレベル及びローレベルの何れかとなる。
【0082】
オシレータ112は、フィードバック電圧VFBに応じた周波数を有する矩形波信号を生成し、イネーブル信号ENOSCがハイレベルであるときに限り、生成した矩形波信号を信号SETとして出力する。イネーブル信号ENOSCがローレベルであるならば、信号SETはローレベルに維持される。
【0083】
図13にオシレータ112の機能ブロック図を示す。図12も併せて参照し、オシレータ112は、フィードバック電圧VFBに応じた周波数fVCOを有する矩形波信号OUTVCOを連続的に生成及び出力する電圧制御発振器112aと、イネーブル信号ENOSCがハイレベルであるときに限り、電圧制御発振器112aから出力される矩形波信号OUTVCOを信号SETとしてオシレータ112の外部に出力するスイッチ部112bと、で構成されると考えることができる。イネーブル信号ENOSCがローレベルであるときには信号SETはローレベルで固定されるものとする。
【0084】
図14にフィードバック電圧VFBと周波数fVCOとの関係を示す。周波数fVCOには上限及び下限が存在する。周波数fVCOの上限は上述の周波数fであり、周波数fVCOの下限は上述の周波数fである(図4参照)。PWM動作が行われるとき、周波数fVCOが上述のスイッチング周波数fSWとなる。“VFB≦V”の成立時には周波数fVCOは周波数fで固定され、“V≦VFB”の成立時には周波数fVCOは周波数fで固定される。“V≦VFB≦V”の成立時には、フィードバック電圧VFBが電圧Vから電圧Vに上昇するにつれて周波数fVCOが周波数fから周波数fへと線型的に増大する。
【0085】
矩形波信号OUTVCOでは、微小時間だけ信号レベルがハイレベルとなるパルスが周波数fVCOにて繰り返し発生する。故に、イネーブル信号ENOSCがハイレベルであるときには、信号SETにおいてアップエッジが周波数fVCOにて繰り返し生じることになる。
【0086】
図11を再度参照し、リセット信号発生部120について説明する。図11の構成例において、リセット信号発生部120は、スロープ補償信号生成部121及び124と、加算器122及び125と、比較器123及び126と、論理和回路127と、を備える。
【0087】
スロープ補償信号生成部121はスロープ補償信号SSLPAを生成及び出力し、スロープ補償信号生成部124はスロープ補償信号SSLPBを生成及び出力する。スロープ補償信号SSLPA及びSSLPBの夫々は、時間経過と共に信号値が変化する電圧信号である。任意の電圧信号について、当該電圧信号の信号値は、当該電圧信号の電圧値に相当する。スロープ補償信号SSLPA及びSSLPBの夫々において、信号値の変化は周期性を有し、その周期の逆数は周波数fVCOと一致する。
【0088】
加算器122には、フィードバック電圧VFBに応じたフィードバック信号SFB1と、スロープ補償信号生成部121からのスロープ補償信号SSLPAが入力される。ここでは、フィードバック信号SFB1は、フィードバック電圧VFBの1/4倍の電圧値を有する電圧信号であるとする。加算器122は、フィードバック信号SFB1にスロープ補償信号SSLPAを加算し、加算結果による電圧信号をターンオフ閾値用信号SOFFAとして出力する。ターンオフ閾値用信号SOFFAの信号値(即ち電圧値)は、フィードバック信号SFB1の信号値(即ち電圧値;ここではVFB/4)と、スロープ補償信号SSLPAの信号値(即ち電圧値)との和となる。ターンオフ閾値用信号SOFFAは、上述のターンオフ閾値IOFFを電圧信号の形態で表したものであり、ターンオフ閾値用信号SOFFAによってターンオフ閾値IOFFが指し示される。
【0089】
比較器123において、反転入力端子にはターンオフ閾値用信号SOFFAが入力され、非反転入力端子には電流検出信号SCSが入力される。図10等を参照した説明から理解されるよう、電流検出信号SCSは一次側電流Iの値を指し示す電圧信号である。
【0090】
“SCS>SOFFA”の成立は“I>IOFF”の成立に相当し、“SCS<SOFFA”の成立は“I<IOFF”の成立に相当する。比較器123は、“SCS>SOFFA”が成立しているとき、即ち、電流検出信号SCSの信号値(電圧値)がターンオフ閾値用信号SOFFAの信号値(電圧値)よりも大きいとき、ハイレベルの信号を出力し、そうでないとき、ローレベルの信号を出力する。但し、“SCS=SOFFA”の成立時において比較器123の出力信号はハイレベルとなり得る。
【0091】
加算器125には、所定の過電流検出電圧VLIMを示す電圧信号SLIMと、スロープ補償信号生成部124からのスロープ補償信号SSLPBが入力される。過電流検出電圧VLIMは固定電圧値を有する。但し、一次側制御回路16の起動時におけるソフトスタート動作の実行時において、過電流検出電圧VLIMは上記固定電圧値よりも小さく設定されることがある。加算器125は、過電流検出電圧VLIMを示す電圧信号SLIMにスロープ補償信号SSLPBを加算し、加算結果による電圧信号を過電流閾値用信号SOFFBとして出力する。過電流閾値用信号SOFFBの信号値(即ち電圧値)は、電圧信号SLIMの信号値(即ち電圧値;ここではVLIM)と、スロープ補償信号SSLPBの信号値(即ち電圧値)との和となる。過電流閾値用信号SOFFBは、一次側電流Iに対する過電流閾値ILIMを電圧信号の形態で表したものであり、過電流閾値用信号SOFFBよって過電流閾値ILIMが指し示される。
【0092】
比較器126において、反転入力端子には過電流閾値用信号SOFFBが入力され、非反転入力端子には電流検出信号SCSが入力される。
【0093】
“SCS>SOFFB”の成立は“I>ILIM”の成立に相当し、“SCS<SOFFB”の成立は“I<ILIM”の成立に相当する。比較器126は、“SCS>SOFFB”が成立しているとき、即ち、電流検出信号SCSの信号値(電圧値)が過電流閾値用信号SOFFBの信号値(電圧値)よりも大きいとき、ハイレベルの信号を出力し、そうでないとき、ローレベルの信号を出力する。但し、“SCS=SOFFB”の成立時において比較器126の出力信号はハイレベルとなり得る。
【0094】
論理和回路127は、比較器123及び126の出力信号の論理和信号を信号RSTとして出力する。従って、比較器123の出力信号及び比較器126の出力信号の内、双方がローレベルである場合に限り信号RSTはローレベルとなり、少なくとも一方がハイレベルであれば、信号RSTはハイレベルとなる。
【0095】
故に、スロープ補償信号生成部121、加算器122及び比較器123から成る第1ブロックと、スロープ補償信号生成部124、加算器125及び比較器126から成る第2ブロックの何れかのブロックにより、リセット信号(即ちハイレベルの信号RST)が生成されることになる。後にも説明されるが、リセット信号を生成する機能は、“VFB<V”では第1ブロックが担い、“V≦VFB”では第2ブロックが担う(電圧Vに関し、図4参照)。
【0096】
図15に、信号OUTVCO、SET、SSLPA及びSSLPBの関係を示す。図15では、信号ENOSCがハイレベルに維持されていることを想定しているため、信号OUTVCOと信号SETとが一致している。
【0097】
スロープ補償信号SSLPA及びSSLPBは、信号OUTVCOのアップエッジが生じるタイミングにおいて、夫々、所定の初期信号値INI、INIを有する。初期信号値INI及びINIはゼロであるが、ゼロ以外で有り得ても良い。
【0098】
信号OUTVCOにてアップエッジが生じたタイミングから次のアップエッジが生じるまでの区間を、単位区間と称する。1つの単位区間の長さは信号OUTVCOの周波数fVCOの逆数と一致する。各単位区間は前段区間P1と後段区間P2とから成る。各単位区間において、単位区間の開始と同時に前段区間P1が開始され、前段区間P1の終了と同時に後段区間P2が開始されて良い。
【0099】
各単位区間において、前段区間P1では、スロープ補償信号SSLPAの信号値(即ち電圧値)が初期信号値INIを起点にして時間経過と共に増大してゆき、前段区間P1の終了タイミングにてスロープ補償信号SSLPAの信号値は所定の信号値TOPを有する。当然“INI<TOP”である。各単位区間において、後段区間P2では、スロープ補償信号SSLPAの信号値(即ち電圧値)が信号値TOPを起点にして時間経過と共に減少してゆき、後段区間P2の終了タイミングにてスロープ補償信号SSLPAの信号値は所定の信号値BTMを有する。図15の例では、“BTM<INI”となっているが、“BTM=INI”又は“BTM>INI”で有り得て良い。
【0100】
各単位区間において、前段区間P1では、スロープ補償信号SSLPBの信号値(即ち電圧値)が初期信号値INIを起点にして時間経過と共に増大してゆき、前段区間P1の終了タイミングにてスロープ補償信号SSLPBの信号値は所定の信号値TOPを有する。当然“INI<TOP”である。各単位区間において、後段区間P2では、スロープ補償信号SSLPBの信号値(即ち電圧値)が信号値TOPを起点にして時間経過と共に減少してゆき、後段区間P2の終了タイミングにてスロープ補償信号SSLPBの信号値は所定の信号値BTMを有する。図15の例では、“BTM<INI”となっているが、“BTM=INI”又は“BTM>INI”で有り得て良い。
【0101】
前段区間P1にて上述のアップスロープ補償が実現される。後段区間P2におけるスロープ補償信号SSLPA及びSSLPBの信号値の減少は、ダウンスロープ補償と称される。ダウンスロープ補償(一般にACスロープ補償とも称され得る)は、サブハーモニック発振の防止を目的として導入されるものである。ダウンスロープ補償によるサブハーモニック発振の防止の原理は公知であるため、その説明を省略する。
【0102】
各単位区間において、後段区間P2の開始タイミングは、当該単位区間の開始タイミングから時間“q・1/fVCO”だけ後のタイミングとされる。“1/fVCO”は各単位区間の長さに相当する。係数qは、0より大きく且つ1より小さな値を持つ。サブハーモニック発振を有効に防止すべく、係数qに0.5以下の値を持たせると良く、例えば、“0.35<q<0.49”とされる。
【0103】
尚、図15の例では、各単位区間が前段区間P1及び後段区間P2のみから形成されているが、各単位区間において、前段区間P1の終了後、後段区間P2が開始される前に、スロープ補償信号SSLPA、SSLPBの信号値が夫々信号値TOP、TOPにて固定される有限の区間が存在していても良いし、後段区間P2の終了後、次の単位区間が開始される前に、スロープ補償信号SSLPA、SSLPBの信号値が夫々信号値BTM、BTMにて固定される有限の区間が存在していても良い。
【0104】
また、図15の例では、イネーブル信号ENOSCがハイレベルに維持されていることを想定しているが、イネーブル信号ENOSCがローレベルであるときの信号OUTVCO、SSLPA及びSSLPBの関係も上述したものと同じであって良い。但し、イネーブル信号ENOSCがローレベルであるときには、信号SSLPA及びSSLPBの変化は意味を持たないため、信号SSLPA及びSSLPBの信号値はゼロに固定されていても良い。
【0105】
ここでは、スロープ補償信号SSLPA及びSSLPBは互いに同じ信号であるとする。スロープ補償信号SSLPA及びSSLPBが互いに同じ信号である場合、スロープ補償信号生成部124を削除し、スロープ補償信号生成部121にて生成されるスロープ補償信号SSLPAを、加算器122に対して入力すると共に、加算器125に対しスロープ補償信号SSLPBとして入力しても良い。但し、スロープ補償信号SSLPA及びSSLPBは互いに異なる信号であっても良い。
【0106】
図11を再度参照し、ドライブ部130について説明する。図11の構成例において、ドライブ部130は、RS型のフリップフロップ131(以下、FF131と表記する)と、ドライバ132と、を備える。
【0107】
FF131は、セット入力端子(S)、リセット入力端子(R)及び出力端子(Q)を備える。FF131において、セット入力端子に対し信号SETが入力され、リセット入力端子に対し信号RSTが入力され、出力端子から信号DRVが出力される。図16に示す如く、FF131は、信号SETがハイレベルであれば出力端子からハイレベルの信号DRVを出力し、以後、信号RSTがハイレベルとなるまで出力信号DRVのハイレベルを維持する。FF131は、信号RSTがハイレベルであれば出力端子からローレベルの信号DRVを出力し、以後、信号SETがハイレベルとなるまで出力信号DRVのローレベルを維持する。メイン制御部100において、信号SET及びRSTが同時にハイレベルとなることは無い(そうなるように、信号SETのハイレベルのパルス幅は十分に短く設定されている)。
【0108】
ドライバ132は、一次側制御回路16の出力端子TM1(図1参照)を介してスイッチングトランジスタ14のゲートに接続され、FF131の出力信号DRVに基づき、スイッチングトランジスタ14のゲート電圧を制御する。ドライバ132は、出力信号DRVがハイレベルであれば、トランジスタ14のゲート電圧をハイレベルにすることでトランジスタ14をオン状態とし、出力信号DRVがローレベルであれば、トランジスタ14のゲート電圧をローレベルにすることでトランジスタ14をオフ状態とする。但し、FF131の出力信号DRVのアップエッジに応答してトランジスタ14が実際にオン状態に切り替わるまでには遅延が存在し、FF131の出力信号DRVのダウンエッジに応答してトランジスタ14が実際にオフ状態に切り替わるまでには遅延が存在する。
【0109】
図11の構成例に関してバースト動作を説明する。“VFB<V”の成立下では“SOFFA<SOFFB”が成立するよう過電流検出電圧VLIMが設定されている(電圧Vに関し、図4参照)。故に、バースト動作では、電流検出信号SCSの信号値がターンオフ閾値用信号SOFFAの信号値を上回ることを契機に(即ち一次側電流Iがターンオフ閾値IOFFを上回ることを契機に)、リセット信号(ハイレベルの信号RST)が発生する。バースト動作が行われるときには、フォードバック電圧VFBが十分に小さいが故に、リセット信号の発生タイミングが常に前段区間P1に属することとなり、アップスロープ補償が有効に機能して図8及び図9に示したような効果が得られる。
【0110】
次に、“VFB<V”の成立下でのPWM動作について説明する。上述したように、“VFB<V”の成立下では“SOFFA<SOFFB”が成立するよう過電流検出電圧VLIMが設定されている。故に、“VFB<V”の成立下でのPWM動作では、バースト動作と同様、電流検出信号SCSの信号値がターンオフ閾値用信号SOFFAの信号値を上回ることを契機に(即ち一次側電流Iがターンオフ閾値IOFFを上回ることを契機に)、リセット信号(ハイレベルの信号RST)が発生する。このリセット信号の発生タイミングが前段区間P1に属しておれば、アップスロープ補償が有効に機能する。一方で、サブハーモニック発振の抑制も重要であり、リセット信号の発生タイミングが後段区間P2に属しておれば、ダウンスロープ補償によるサブハーモニック発振の抑制効果が得られる。
【0111】
“VFB<V”の成立下でPWM動作が行われるときにおいてフィードバック電圧VFBが比較的低ければ、前段区間P1にてリセット信号が発生することが支配的となって、アップスロープ補償が有効に機能し易い。“VFB<V”の成立下でPWM動作が行われるときにおいてフィードバック電圧VFBが比較的高ければ、後段区間P2にてリセット信号が発生することが支配的となって、ダウンスロープ補償が有効に機能し易い。
【0112】
次に、“V<VFB”の成立下でのPWM動作について説明する。“V<VFB”の成立下では“SOFFA>SOFFB” が成立するよう過電流検出電圧VLIMが設定されている。故に、“V<VFB”の成立下でのPWM動作では、電流検出信号SCSの信号値が過電流閾値用信号SOFFBの信号値を上回ることを契機に(即ち一次側電流Iが過電流閾値ILIMを上回ることを契機に)、リセット信号(ハイレベルの信号RST)が発生する。このリセット信号の発生タイミングが前段区間P1に属しておれば、アップスロープ補償が有効に機能する。一方で、サブハーモニック発振の抑制も重要であり、リセット信号の発生タイミングが後段区間P2に属しておれば、ダウンスロープ補償によるサブハーモニック発振の抑制効果が得られる。
【0113】
第4モード(図4参照)の内、“V<VFB”が成立するモードは特にカレントリミットモードと称される。カレントリミットモードでは、一次側電流Iが過電流閾値ILIMに達したときにリセット信号が発生されることになる。カレントリミットモードにおいて、過電流検出電圧VLIMに対しアップスロープ補償を適用しなければ、上記の遅延時間tDLYの影響により、二次側での最大電力が入力電圧VINの大小に依存して変化することになる。図11の構成では、カレントリミットモードにおいて、スロープ補償信号生成部124及び加算器125を用いてアップスロープ補償が適用されているので、二次側での最大電力が入力電圧VINに依存して変化することが抑制される。
【0114】
図17に、リセット信号を発生させるために一次側電流Iと対比される電流の波形661~665を示す。波形661は、バースト動作において一次側電流Iと対比される電流波形(ターンオフ閾値IOFFを持つ電流の波形)である。波形662は、第2モードでのPWM動作において一次側電流Iと対比される電流波形(ターンオフ閾値IOFFを持つ電流の波形)である。波形663は、第3モードでのPWM動作において一次側電流Iと対比される電流波形(ターンオフ閾値IOFFを持つ電流の波形)である。波形664は、第4モード且つ“VFB<V”でのPWM動作において一次側電流Iと対比される電流波形(ターンオフ閾値IOFFを持つ電流の波形)である。波形665は、カレントリミットモードにおいて一次側電流Iと対比される電流波形(過電流閾値ILIMを持つ電流の波形)である。
【0115】
アップスロープ補償は、バースト動作が行われるときだけではなくPWM動作が行われるときにも実行されるので、PWM動作において、二次側電力POUT(=VOUT×ILD)が入力電圧VINの変動に対して影響を受けなくなる又は受けにくくなる(但し、前半区間P1でリセット信号が発生した場合)。つまり、図9に示したような効果をPWM動作の実行時にも得ることができるようになる。
【0116】
結果、PWM動作が行われるとき、図18に示す如く、二次側電力POUTとスイッチング周波数fSWの関係を、入力電圧VINの変化に対して不変とすることも可能となる。これにより、入力電圧VINの変動があることを気にすることなく回路設計を行うことができ、設計の容易化が期待される(アップスロープ補償が無い場合、例えば、“VIN=VINL”であるときと“VIN=VINH”であるときの双方を考慮して回路設計を行う必要がある)。図18において、実線折れ線681は“VIN=VINL”であるときの二次側電力POUT及びスイッチング周波数fSW間の関係を示し、破線折れ線682は“VIN=VINH”であるときの二次側電力POUT及びスイッチング周波数fSW間の関係を示す。図示の便宜上、図18では、折れ線681及び682が若干互いに上下にずらして示されているが、理想的には折れ線681及び682は完全に重なり合う。
【0117】
上述の説明から理解されるよう、セット信号発生部110は、PWM動作において、オシレータ112を用い所定周波数fVCO(スイッチング周波数fSWに相当)にてセット信号を発生させる。リセット信号発生部120は、PWM動作において、電流検出信号SCSと、ターンオフ閾値IOFFを示すターンオフ閾値用信号SOFFAと、過電流閾値ILIMを示す過電流用閾値用信号SOFFBと、に基づき、リセット信号を発生させる。
【0118】
より具体的には、PWM動作においては、電流検出信号SCSとターンオフ閾値用信号SOFFAとを比較する比較器123の比較結果、及び、電流検出信号SCSと過電流閾値用信号SOFFBとを比較する比較器126の比較結果が参照され、それらの比較結果に基づき、一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFF又は過電流閾値ILIMより大きくなったときに、リセット信号が発生することになる。上述したように、“SCS>SOFFA”の成立は一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFFより大きいことを表し、“SCS>SOFFB”の成立は一次側電流Iの値が過電流閾値ILIMより大きいことを表す。
【0119】
セット信号の発生後の所定区間(前段区間P1に相当)においては、時間経過と共に信号値が増大するスロープ補償信号SSLPAをフィードバック電圧VFBに比例する信号SFB1に加算することでターンオフ閾値用信号SOFFAが生成され、且つ、時間経過と共に信号値が増大するスロープ補償信号SSLPBを所定値を持つ信号SLIMに加算することで過電流閾値用信号SOFFBが生成される。これにより、アップスロープ補償が実現される。上記所定区間の後には、サブハーモニック発振の防止を目的としたダウンスロープ補償が適用される。
【0120】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態では、第1実施形態に対する変形技術や応用技術等を説明する。第2実施形態に記載の事項を第1実施形態に適用することができる。
【0121】
第2実施形態は以下の実施例EX2_1~EX2_3を含む。第1実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の実施例EX2_1~EX2_3に適用され、各実施例において、第1実施形態での上述事項と矛盾する事項については各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、実施例EX2_1~EX2_3の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0122】
実施例EX2_1の説明に先立ち、第1実施形態の動作及び構成について補足する。第1実施形態では、負荷LDの大きさが減少するにつれてフィードバック電圧VFBが低下する構成が採用されている。このため、第1実施形態に係るメイン制御部100は、フィードバック電圧VFBが所定のバースト判定電圧VBST1より高い状態に保たれているとき、PWM動作を継続的に実行し、フィードバック電圧VFBがバースト判定電圧VBST1を下回るとバースト動作を開始する。
【0123】
つまり、第1実施形態に係るメイン制御部100は、フィードバック電圧VFBがバースト判定電圧VBST1より高い状態からバースト判定電圧VBST1より低い状態に移行したことを受けてバースト動作を開始し、バースト動作の開始後、図19に示す如く、フィードバック電圧VFBが所定のバースト解除電圧VBST2を上回るまでスイッチングトランジスタ14をオフ状態に維持し、フィードバック電圧VFBがバースト解除電圧VBST2を上回るとセット信号発生部110によりセット信号(ハイレベルの信号SET)を発生させ、その後、一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFFを超えたことを受けてリセット信号発生部120によりリセット信号(ハイレベルの信号RST)を発生させる。第1実施形態では“VBST2>VBST1”である。
【0124】
尚、図19では、セット信号の発生と同時にスイッチングトランジスタ14がターンオンすると仮定している(ターンオフに対してのみ遅延時間tDLYを図示している)。図11の構成において、一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFFを超えたとき、“SCS>SOFFA”が成立してリセット信号(ハイレベルの信号RST)が発生することになる。
【0125】
[実施例EX2_1]
実施例EX2_1を説明する。AC/DCコンバータ1において、負荷LDの大きさが減少するにつれてフィードバック電圧VFBが上昇する構成が採用されていても良く、この構成を実施例EX2_1として説明する。
【0126】
実施例EX2_1では、負荷LDの大きさが減少するにつれてフィードバック電圧VFBが上昇する構成が採用されているが故に、メイン制御部100は、フィードバック電圧VFBが所定のバースト判定電圧VBST1より低い状態に保たれているとき、PWM動作を継続的に実行し、フィードバック電圧VFBがバースト判定電圧VBST1を上回るとバースト動作を開始する。
【0127】
つまり、実施例EX2_1に係るメイン制御部100は、フィードバック電圧VFBがバースト判定電圧VBST1より低い状態からバースト判定電圧VBST1より高い状態に移行したことを受けてバースト動作を開始し、バースト動作の開始後、図20に示す如く、フィードバック電圧VFBが所定のバースト解除電圧VBST2を下回るまでスイッチングトランジスタ14をオフ状態に維持し、フィードバック電圧VFBがバースト解除電圧VBST2を下回るとセット信号発生部110によりセット信号(ハイレベルの信号SET)を発生させ、その後、一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFFを超えたことを受けてリセット信号発生部120によりリセット信号(ハイレベルの信号RST)を発生させる。実施例EX2_1では“VBST2<VBST1”である。
【0128】
尚、図20では、セット信号の発生と同時にスイッチングトランジスタ14がターンオンすると仮定している(ターンオフに対してのみ遅延時間tDLYを図示している)。図11の構成において、一次側電流Iの値がターンオフ閾値IOFFを超えたとき、“SCS>SOFFA”が成立してリセット信号(ハイレベルの信号RST)が発生することになる。
【0129】
[実施例EX2_2]
実施例EX2_2を説明する。図1のAC/DCコンバータ1は本発明に係るスイッチング電源装置の一種である。図1において、スイッチングトランジスタ14は、インダクタとしての一次側巻線W1に直列接続されるスイッチング素子の例であり、一次側制御回路16は、スイッチング素子をスイッチングするスイッチング制御回路の例である。スイッチング素子をPチャネル型のMOSFETとして構成する変形も可能であるし、バイポーラトランジスタ、接合型FET又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として構成する変形も可能である。何れにせよ、インダクタ及びスイッチング素子の直列回路に対し入力電圧VINが加えられ、スイッチング素子をスイッチングすることを通じ、出力端子TMOUTに出力電圧VOUTが発生する。
【0130】
フィードバック回路23、フォトカプラPC及びフィードバック用コンデンサ18は、出力電圧VOUTに基づきフィードバック電圧VFBを生成するフィードバック電圧生成回路を構成する。
【0131】
AC/DCコンバータ1を用いて電源アダプタを構成しても良い。或いは、AC/DCコンバータ1を内蔵する電気機器を構成しても良い。電気機器の種類は特に限定されず、オーディオ機器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機など、AC/DCコンバータ1を内蔵する機器であれば任意である。
【0132】
本発明に係るスイッチング電源装置はAC/DCコンバータに限定されず、トランスTRを用い一次側の入力電圧VINから絶縁形式で二次側にて出力電圧VOUTを生成する絶縁型DC/DCコンバータであっても良いし、入力電圧VINから出力電圧VOUTを生成する非絶縁型DC/DCコンバータであっても良い。
【0133】
[実施例EX2_3]
実施例EX2_3を説明する。上述の主旨を損なわない形で、任意の信号又は電圧に関して、ハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。
【0134】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0135】
1 AC/DCコンバータ(スイッチング電源装置)
14 スイッチングトランジスタ(スイッチング素子)
16 一次側制御回路(スイッチング制御回路)
100 メイン制御部
110 セット信号発生部
120 リセット信号発生部
130 ドライブ部
140 電流検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20