(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】腎臓病の治療のための新規化合物及びその医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20240826BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240826BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240826BHJP
C07D 471/04 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61P13/12
A61P43/00 121
C07D471/04 106C
(21)【出願番号】P 2021562854
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020061083
(87)【国際公開番号】W WO2020216740
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-20
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504064364
【氏名又は名称】ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】カーチャ エルス コンラート
(72)【発明者】
【氏名】レジナルド クリストフ ザビエル ブリス
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー ジャン‐クロード マリー クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド バン デール ギースト
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529743(JP,A)
【文献】特表2018-529707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0197911(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/04
A61K 31/
A61P 13/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)による化合物:
【化1】
(式中、R
1は、H又は-CH
3である);
又はその医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物、若しくは溶媒和物の医薬として許容し得る塩
を含む、多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療
のため
の医薬組成物。
【請求項2】
R
1がHである、請求項1記載の
医薬組成物。
【請求項3】
R
1が-CH
3である、請求項1記載の
医薬組成物。
【請求項4】
常染色体優性多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療
のための、請求項1~3のいずれか一項記載の
医薬組成物。
【請求項5】
医薬として許容し得る担体を含む
、請求項1~4のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項6】
さらなる治療剤を含む、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記さらなる治療剤が多発性嚢胞腎剤である、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記さらなる治療剤がトルバプタンである、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記さらなる治療剤がメトフォルミンである、請求項6記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、多発性嚢胞腎(PKD)の予防及び/又は治療に有用であり得る化合物に関する。本発明は、本発明の化合物を製造する方法、本発明の化合物を含む医薬組成物、本発明の化合物を投与することによる多発性嚢胞腎(PKD)の予防及び/又は治療の方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
多発性嚢胞腎(PKD)は、正常な腎実質を傷つけて腎不全を起こす、腎尿細管由来の液体が満たされた嚢胞の大幅な増大を特徴とする。よく見られる形態のPKDであるヒト常染色体優性PKD(ADPKD)は、相互作用タンパク質ポリシスチン-1及びポリシスチン-2をそれぞれコードする2つの遺伝子、PKD1及びPKD2のうちの1つにおける突然変異により起こり、遺伝性腎嚢胞性疾患のうちで最も一般的である(Torres, Harris, 及びPirsonの文献 2007)。
【0003】
PKD発症において、両腎容積が、嚢胞をつくりながら急激に増加する一方で、腎機能、特に糸球体濾過量(GFR)は反対に減少する。これにより、着実に、酸尿症、腎結石形成、疼痛、血圧上昇が起こり、最終的に動脈瘤又は心不全により死につながる(Torres, Harris, 及びPirsonの文献、2007)。
【0004】
さらに、嚢胞は破れて、通常治療が困難であり多くの場合抗生物質耐性に至り得る長期の抗生物質治療を要する感染症を起こし得る。
【0005】
最近、嚢胞発生には、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)による塩化物輸送が必要であり得て、CFTRが液体で満たされた嚢胞の生成及び維持の一因であり得ることが確認された(Yangらの文献、2008)。したがって、CFTRを阻害すれば、嚢胞形成及び/又は成長を予防又は低減させるだろう。
【0006】
現在まで、PKDに治癒法はなく、食品医薬品局(FDA)が認可した治療が1つあるだけである。さらに、現在の治療は、血圧低下剤投与、及び疾患の後期における透析など、疾患による疾患合併症を管理することに集中している(Torresの文献 2010);しかし、最終段階では、腎臓移植が依然として唯一の選択肢である。ADPKDの有病率は1000人の個人に1人であり、米国のみで600,000人が罹患しており、毎年およそ2144人の患者が腎代替療法を始める(Torres, Harris, 及び Pirsonの文献、2007)。
【0007】
さらに、CFTR阻害が、腸細胞上の内腔のCl-チャンネルの活性化をもたらすエンテロトキシンにより起こされる腸内の過度の液体分泌として下痢性疾患を有する患者の利益になり得ることも特定された(Thiagarajah 及びVerkmanの文献 2012)。
【0008】
したがって、現在の療法は満足できるものではなく、PKDの予防及び/又は治療のための新たな医薬が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
(発明の概要)
本発明は、多発性嚢胞腎(PKD)、より詳細には常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の予防及び/又は治療において有用であり得る化合物に関する。本発明は、本発明の化合物の製造の方法、本発明の化合物を含む医薬組成物、本発明の化合物を投与することによる多発性嚢胞腎(PKD)の予防及び/又は治療の方法も提供する。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様において、式(I)による本発明の化合物が、多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療に使用するために提供される:
【化1】
(式中、R
1は、H又は-CH
3である)。
【0011】
より特定の態様において、本発明の化合物は、多発性嚢胞腎(PKD)、より詳細には常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の予防及び/又は治療に使用するために提供される。
【0012】
驚くべきことに、本発明の化合物は、CF患者においてCFTR調節活性、特にタンパク質フォールディング及び輸送活性を有するが(WO 2017/060874)、意外にも、それらが野生型CFTR(非CF疾患でない)において阻害し、したがって、特にPKD及び/又は卵巣嚢腫において嚢胞形成及び/又は成長を予防及び/又は減少させ得ることが観察された。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、本発明の化合物、及び医薬担体、賦形剤、又は希釈剤を含む、PKDの予防及び/又は治療に使用するための医薬組成物を提供する。特定の態様において、該医薬組成物は、本発明の化合物と組み合わせた使用に好適なさらなる治療上有効な成分を併せて含み得る。より特定の態様において、該さらなる治療上有効な成分は、PKDの治療のための薬剤である。
【0014】
さらに、本明細書に開示の医薬組成物及び治療方法に有用な本発明の化合物は、調製され使用される状態で医薬として許容し得るものである。
【0015】
本発明のさらなる態様において、本発明は、本明細書に列記のものから選択される病態、特にPKDを患っている哺乳動物、特にヒトを治療する方法であって、有効量の本明細書に記載の本発明の医薬組成物又は化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0016】
本発明は、医薬に使用するための、本発明の化合物、及び好適な医薬担体、賦形剤、又は希釈剤を含む医薬組成物も提供する。特定の態様において、該医薬組成物は、PKDの予防及び/又は治療に使用するものである。
【0017】
追加の態様において、本発明は、本発明の化合物を合成する方法を、本明細書で後に開示される代表的な合成プロトコル及び経路と共に提供する。
他の目的及び利点は、以下の詳細な説明の考察から当業者に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
(図面の説明)
【
図1】
図1は、3Dヒト嚢胞成長アッセイにおける、8日間のビヒクル(DMSO)に対する10μMの試験化合物の化合物1及び化合物2の後の嚢胞サイズ(嚢胞面積、μm
2)の分布を箱ひげ図で示し、底部から上部への箱は、データポイントの25%パーセンタイル値、中央値、及び75%パーセンタイル値を表し、底部のひげは10%パーセンタイルを表し、上部のひげは90%パーセンタイルを表す。
【
図2】
図2は、3Dヒト嚢胞成長アッセイにおける、(3nM、10nM、30nM、100nM、300nM、1μM、3μM、及び10μM)の試験化合物の化合物1(黒丸)及び化合物2(黒三角)の8日後の、ビヒクル(DMSO)に対する嚢胞数の濃度依存性の減少を示す。標準偏差は、よりよく見えるようにバーにより表される。
【
図3】
図3は、3Dヒト嚢胞成長アッセイにおける、3nM、10nM、30nM、100nM、300nM、1μM、3μM、及び10μMの化合物1の8日後の、ビヒクル(DMSO)に対する嚢胞サイズ(嚢胞面積、μm
2)の分布を箱ひげ図で示し、底部から上部への箱は、データポイントの25%パーセンタイル値、中央値、及び75%パーセンタイル値を表し、底部のひげは10%パーセンタイルを表し、上部のひげは90%パーセンタイルを表す。
【
図4】
図4は、3Dヒト嚢胞成長アッセイにおける、3nM、10nM、30nM、100nM、300nM、1μM、3μM、及び10μMの化合物2の8日後の、ビヒクル(DMSO)に対する嚢胞サイズ(嚢胞面積、μm
2)の分布を箱ひげ図で示し、底部から上部への箱は、データポイントの25%パーセンタイル値、中央値、及び75%パーセンタイル値を表し、底部のひげは10%パーセンタイルを表し、上部のひげは90%パーセンタイルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
(定義)
以下の用語は、それとともに以下に提示される意味を有するものとし、本発明の説明及び意図される範囲を理解する際に有用である。
【0020】
化合物、そのような化合物を含む医薬組成物、並びにそのような化合物及び組成物を使用する方法を包含し得る本発明を説明する場合、以下の用語は、存在する場合、特記されない限り、以下の意味を有する。本明細書に記載される場合、以下に定義される部分はいずれも種々の置換基で置換され得ること、及びそれぞれの定義が、そのような置換部分を以下に述べられるその範囲内に含むように意図されていることも理解されるべきである。特記されない限り、「置換された」という用語は、以下に述べられるように定義されるものとする。「基」及び「ラジカル」という用語が、本明細書で使用される場合、互換的であるとみなされ得ることがさらに理解されるべきである。
【0021】
「a」及び「an」という冠詞は、該冠詞の文法上の対象の1つ又は1つを超える(すなわち、少なくとも1つ)を指すように本明細書において使用され得る。例として、「アナログ(an analogue)」は、1つのアナログ又は1つを超えるアナログを意味する。
【0022】
「医薬として許容し得る」とは、動物、より具体的にはヒトでの使用について、連邦政府若しくは州政府の規制当局又は米国以外の国の対応する規制当局により承認されている又は承認され得ること、或いは米国薬局方又は他の一般に認められた薬局方に収載されていることを意味する。
【0023】
「医薬として許容し得る塩」は、医薬として許容し得るものであり、親化合物の所望の薬理活性を有する本発明の化合物の塩を指す。具体的には、そのような塩は非毒性であり、無機又は有機の酸付加塩及び塩基付加塩であり得る。具体的には、そのような塩は:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸により形成された;又は酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸により形成された酸付加塩;或いは(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンにより置換されているか;又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどのような有機塩基と配位するときに形成される塩を包含する。塩は、さらに一例としてのみであるが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど;及び化合物が塩基性官能性を含有する場合、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などの無毒な有機酸又は無機酸の塩を包含する。「医薬として許容し得るカチオン」という用語は、酸性官能基の許容し得るカチオン性対イオンを指す。そのようなカチオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムカチオンなどにより例示される。
【0024】
「医薬として許容し得るビヒクル」は、それとともに本発明の化合物が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又は担体を指す。
【0025】
「プロドラッグ」は、開裂可能な基を有し、且つ加溶媒分解によるか又は生理的条件下で、インビボで医薬として活性がある本発明の化合物になる、本発明の化合物の誘導体を含む化合物を指す。そのような例は、コリンエステル誘導体など、N-アルキルモルホリンエステルなどを包含するが、これらに限定されない。
【0026】
「溶媒和物」は、溶媒と、通常は加溶媒分解反応により会合している化合物の形態を指す。この物理的会合は水素結合を含む。従来の溶媒は、水、EtOH、酢酸などを包含する。本発明の化合物は、例えば、結晶形態で調製され得且つ溶媒和又は水和され得る。好適な溶媒和物は、水和物などの医薬として許容し得る溶媒和物を包含し、化学量論的溶媒和物と非化学量論的溶媒和物の両者をさらに包含する。ある例において、溶媒和物は、例えば、1個以上の溶媒分子が、結晶性固体の結晶格子中に組み込まれている場合、単離可能だろう。「溶媒和物」は、溶液相と単離可能溶媒和物との両者を包含する。代表的な溶媒和物は、水和物、エタノラート、及びメタノラートを包含する。
【0027】
「対象」は、ヒトを包含する。「ヒト」、「患者」及び「対象」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0028】
「有効量」は、疾患を治療するために対象に投与されたとき、該疾患のために治療をもたらすのに充分である、本発明の化合物の量を意味する。「有効量」は、化合物、疾患及びその重症度、並びに治療されるべき対象の年齢、体重などにより多様となり得る。
【0029】
「予防する」又は「予防」は、疾患を引き起こす原因物質に暴露され得るか、又は疾患に罹る素因を有し得る対象における、疾患の発症前に疾患又は障害を獲得又は発症するリスクの低下(すなわち、疾患の臨床症状の少なくとも1つを発症させないこと)を指す。
【0030】
「予防(prophylaxis)」という用語は、「予防(prevention)」に関連し、その目的が、疾患を治療し又は治癒させることというよりは、疾患を予防することである対策又は処置を指す。予防対策の非限定的な例は、ワクチンの投与;例えば、動けないことが原因で血栓症のリスクがある入院患者への低分子量ヘパリンの投与;及びマラリアが風土病であるか、又はマラリアに罹るリスクが高い地理的地域への訪問に先立つ、クロロキンなどの抗マラリア剤の投与を包含し得る。
【0031】
用語「代謝物」は、本発明の化合物又はその医薬組成物の摂取時に対象の体内で形成される化合物(複数可)を指す。代謝物は、体から、例えば尿又は胆汁中に排泄される前にさらに代謝され得る。代謝物は、元の薬物に類似の又は異なる薬理活性を保持するので、本発明の化合物の全体的な治療活性に寄与し得る。代謝物は、酸化(例えばチトクロムP450による)、還元、加水分解、水和、肝臓ミクロソーム酵素系における抱合(例えば、硫酸、グリシン、及び/又はグルクロン酸との)、縮合、及び/又は異性化を含む、種々の反応により形成され得る。
【0032】
任意の疾患若しくは障害の「治療する」又は「治療」は、一実施態様において、疾患又は障害を改善させること(すなわち、疾患を止めること、又はその臨床症状のうちの少なくとも1つの徴候、範囲、若しくは重症度を低下させること)を指す。他の実施態様において、「治療する」又は「治療」は、対象により認識され得ない少なくとも1つの身体的パラメーターを改善させることを指す。また別の実施態様において、「治療する」又は「治療」は、疾患又は障害を、身体的に調節する(例えば、認識可能な症状の安定化)か若しくは生理的に調節すること(例えば、身体的パラメーターの安定化)、又はその両者を指す。さらなる実施態様において、「治療する」又は「治療」は、疾患の進行を遅らせることに関する。
【0033】
本明細書で使用される通り、多発性嚢胞腎(PKD)という用語は、尿細管が構造的に異常になり、腎臓内の多数の嚢胞の発生及び成長をもたらす病態の群を指す。特に、該用語は、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)及び常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)を指す。より詳細には、該用語は常染色体優性多発性嚢胞腎を指す。
【0034】
「本発明の化合物(複数可)」及び等価な表現は、本明細書に記載される式(複数可)の化合物を包含することを意味し、文脈上許容される場合、その表現は、医薬として許容し得る塩、及び溶媒和物、例えば、水和物、並びに医薬として許容し得る塩の溶媒和物を包含する。同様に、中間体への言及は、それら自体が特許請求されているかどうかに関わらず、文脈上許容される場合、それらの塩及び溶媒和物を包含することを意味する。
【0035】
本明細書において範囲が言及される場合、例えば非限定的にC1-8アルキルでは、範囲の引用は、該範囲の各々のメンバーの表示とみなされるべきである。
【0036】
本発明の化合物の他の誘導体は、それらの酸形態と酸誘導体形態の両者で活性を有するが、しかし酸感受性形態において、多くの場合、哺乳動物生体での溶解性、組織適合性、又は遅延放出という利点を提供する(Bundgaardの文献1985)。プロドラッグは、例えば、親酸と好適なアルコールとの反応により調製されるエステル、又は親酸化合物と置換若しくは非置換アミンとの反応により調製されるアミド、又は酸無水物若しくは混合無水物など、その分野の熟練者に周知の酸誘導体を包含する。本発明の化合物についている酸性基から誘導される単純な脂肪族又は芳香族のエステル、アミド、及び無水物は、特に有用なプロドラッグである。場合によっては、(アシルオキシ)アルキルエステル又は((アルコキシカルボニル)オキシ)アルキルエステルなどの二重エステル型プロドラッグを調製することが望ましい。特定のそのようなプロドラッグは、本発明の化合物のC1-8アルキル、C2-8アルケニル、任意に置換されたC6-10アリール、及び(C6-10アリール)-(C1-4アルキル)エステルである。
【0037】
本開示は、(i)所与の原子番号の全原子が、自然界で優勢である質量数(又は質量数の混合物)を有する形態(本明細書で「天然の同位体形態(natural isotopic form)」と称される)又は(ii)1つ以上の原子が、同じ原子番号を有するが、自然界で優勢である原子の質量数とは異なる質量数を有する原子に置き換えられている形態(本明細書で「非天然の変種同位体形態(unnatural variant isotopic form)」と称される)のいずれであろうと、本明細書に提供される本発明の化合物の全同位体形態を含む。原子が、自然界で質量数の混合物として存在し得ることが理解される。用語「非天然の変種同位体形態」は、自然界であまり見られない質量数を有する所与の原子番号の原子(本明細書で「まれな同位元素」と称される)の比率が天然に存在するものに比べて、例えば、その原子番号の原子の数で20%超、50%超、75%超、90%超、95%超、又は99%超のレベルに増加している実施態様も含む(後者の実施態様は「同位体濃縮された変種形態」と称される)。用語「非天然の変種同位体形態」は、まれな同位元素の比率が天然に存在するものに比べて減少している実施態様も含む。同位体形態は、放射性形態(すなわち、それらは放射性同位元素を組み込んでいる)も、非放射性形態も含み得る。放射性形態は、典型的には、同位体濃縮された変種形態だろう。
【0038】
そのため、ある化合物の非天然の変種同位体形態は、1つ以上の原子において、1つ以上の人工又はまれな同位元素、例えば、重水素(2H又はD)、炭素-11(11C)、炭素-13(13C)、炭素-14(14C)、窒素-13(13N)、窒素-15(15N)、酸素-15(15O)、酸素-17(17O)、酸素-18(18O)、リン-32(32P)、硫黄-35(35S)、塩素-36(36Cl)、塩素-37(37Cl)、フッ素-18(18F)ヨウ素-123(123I)、ヨウ素-125(125I)などを含み得るか、又は1つ以上の原子において、自然界で優勢である比率と比べて増加した比率の前記同位元素を含み得る。
【0039】
放射性同位元素を含む非天然の変種同位体形態は、例えば、薬物及び/又は基質組織分布試験に使用され得る。放射性同位元素、トリチウム、すなわち3H、及び炭素-14、すなわち14Cは、それらの組込みが容易であり且つ検出手段が整っていることを考慮すると、この目的に特に有用である。重水素すなわち2H又はDを組み込んでいる非天然の変種同位体形態は、より高い代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加又は用量要件の減少から生じる治療上の利点を与え得るので、いくつかの状況において好ましくなり得る。さらに、11C、18F、15O及び13Nなどの陽電子放出同位元素を組み込んだ非天然の変種同位体形態が調製されることがあるが、基質受容体占有率を調査するための陽電子放出トポグラフィー(Topography)(PET)試験に有用だろう。
【0040】
同じ分子式を有するが、それらの原子の結合の性質若しくは配列、又はそれらの原子の空間内での配置が異なる化合物が「異性体」と称されることも理解されるべきである。それらの原子の空間内での配置が異なる異性体は、「立体異性体」と称される。
【0041】
互いの鏡像でない立体異性体は「ジアステレオマー」と称され、互いの重ね合わせることのできない鏡像である立体異性体は「エナンチオマー」と称される。化合物が不斉中心を有する場合、例えば、それが4個の異なる基に結合されている場合、エナンチオマー対が可能である。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置により特徴付けることができ、カーン及びプレローグのR-及びS-順位則により、又は右旋性若しくは左旋性として(すなわち、それぞれ(+)若しくは(-)-異性体として)指示される、分子が偏光面を回転させる様式により記述される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとしても、又はその混合物としても存在し得る。同じ比率のエナンチオマーを含有する混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0042】
「互変異性体」は、特定の化合物構造の互換的形態であり、水素原子及び電子の転位の点で異なる化合物を指す。したがって、2つの構造は、π電子及び原子(通常はH)の移動を介して平衡となり得る。例えば、エノールとケトンは、それらが酸か塩基のいずれかによる処理により速やかに相互変換されるので、互変異性体である。互変異性の別の例は、フェニルニトロメタンのアシ形態及びニトロ形態であり、これらは酸又は塩基による処理により同様に形成される。
【0043】
互変異性形態は、対象となる化合物の最適な化学反応性及び生物活性の実現に関連し得る。
【0044】
本発明の化合物は、1個以上の不斉中心を有し得る;したがって、そのような化合物は、個々の(R)-又は(S)-立体異性体としても、それらの混合物としても製造され得る。
【0045】
別途示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲における特定の化合物の記載又は命名は、個々のエナンチオマーと、ラセミ体か否かを問わずその混合物の両者を含むものとする。立体化学の決定及び立体異性体の分離のための方法は、当技術分野において周知である。
【0046】
本発明の化合物が代謝されて、生物活性のある代謝体を生じ得ることが認識されるであろう。
【0047】
(本発明)
本発明は、多発性嚢胞腎(PKD)の予防及び/又は治療に有用であり得る化合物に関する。本発明は、本発明の化合物の製造の方法、本発明の化合物を含む医薬組成物、本発明の化合物を投与することによるPKDの予防及び/又は治療の方法も提供する。
【0048】
したがって、本発明の第1の態様において、式(I)による本発明の化合物が、PKDの予防及び/又は治療における使用のために提供される:
【化2】
(式中、R
1は、H又は-CH
3である)。
【0049】
一実施態様において、本発明の化合物は、R1がHである式Iによるものである。
【0050】
一実施態様において、本発明の化合物は、R1が-CH3である式Iによるものである。
【0051】
一実施態様において、本発明の化合物は、天然の同位体形態で提供される。
【0052】
一実施態様において、本発明の化合物は、非天然の変種同位体形態で提供される。具体的な実施態様において、非天然の変種同位体形態は、本発明の化合物の1つ以上の原子において化学構造中で水素が明示されている位置に重水素(すなわち、2H又はD)が組み込まれている形態である。一実施態様において、本発明の化合物の原子は、放射性ではない同位体形態である。一実施態様において、本発明の化合物の1つ以上の原子は、放射性である同位体形態である。好適には放射性同位元素は安定同位元素である。好適には、非天然の変種同位体形態は医薬として許容し得る形態である。
【0053】
一実施態様において、化合物の単一の原子が非天然の変種同位体形態で存在する本発明の化合物が提供される。別の実施態様において、2つ以上の原子が非天然の変種同位体形態で存在する本発明の化合物が提供される。
【0054】
非天然の同位体変種形態は、当業者に公知である従来の技法により、又は本明細書に記載されるプロセス、例えば、天然の同位体形態を調製するための添付される実施例に記載されるものに類似のプロセスにより一般的に調製され得る。そのため、非天然の同位体変種形態は、適切な同位体変種(又は標識)試薬を、実例において例として使用される通常の試薬の代わりに使用することにより調製可能である。
【0055】
一態様において、本明細書に記載される実施態様のいずれか1つによる本発明の化合物は、遊離塩基として存在する。
【0056】
一態様において、本明細書に記載される実施態様のいずれか1つによる本発明の化合物 は、医薬として許容し得る塩として存在する。
【0057】
一態様において、本明細書に記載される実施態様のいずれか1つによる本発明の化合物 は、該化合物の溶媒和物である。
【0058】
一態様において、本明細書に記載される実施態様のいずれか1つによる本発明の化合物は、化合物の医薬として許容し得る塩の溶媒和物である。
【0059】
さらなる態様において、本発明の化合物は代謝され得る。特定の態様において、本発明の化合物の代謝物は、本発明の化合物の酸化、還元、加水分解、水和、肝臓ミクロソームの酵素系における抱合、縮合、及び/又は異性化から生じ得る。特定の態様において、本発明の化合物の代謝物は、酸化及び本発明の化合物のグルクロン酸との抱合から生じ得る。最も特定の態様において、代謝物は、M2、O-デメチル化M2、M2グルクロニド、M3、化合物2(M4)、及びO-デメチル化M4から選択される:
【化3】
。
【0060】
各実施態様に対して明示された群が一般的に上記で別に列記されてきたが、本発明の化合物は、上記式並びに本明細書に提示される他の式中のいくつか又は各実施態様が、各変数に対するそれぞれ指定された特定のメンバー又は群の1つ以上から選択されるものを含む。したがって、本発明は、その範囲内にそのような実施態様の組合せを全て含むものとする。
【0061】
各実施態様に対して明示された群が一般的に上記で別に列記されてきたが、本発明の化合物は、1つ以上の変数(例えばR基)が、上記で列記された式(複数可)のいずれかによる1つ以上の実施態様から選択されるものであり得る。したがって、本発明は、その範囲内に開示された実施態様のいずれかからの変数の組合せを全て含むものとする。
【0062】
或いは、群若しくは実施態様又はそれらの組合せからの明示される変数の1つ以上の排除も本発明により意図される。
【0063】
特定の態様において、本発明は、上記式による化合物のプロドラッグ及び誘導体も提供する。プロドラッグは、代謝的に開裂可能な基を有し、且つ加溶媒分解により又は生理的条件下で、インビボで医薬として活性である本発明の化合物になる、本発明の化合物の誘導体である。そのような例には、コリンエステル誘導体など、N-アルキルモルホリンエステルなどがあるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の化合物の他の誘導体は、それらの酸形態と酸誘導体形態の両者で活性を有するが、酸感受性形態は、多くの場合、哺乳動物生体において溶解性、組織適合性、又は遅延放出の利点を与える(Bundgaardの文献 1985)。プロドラッグは、例えば、親酸と好適なアルコールとの反応により調製されるエステル、又は親酸化合物と置換若しくは非置換のアミンとの反応により調製されるアミド、又は酸無水物若しくは混合無水物など、その分野の熟練者に周知である酸誘導体を含む。本発明の化合物についている酸性基から誘導された単純な脂肪族又は芳香族エステル、アミド、及び無水物は好ましいプロドラッグである。場合によって、(アシルオキシ)アルキルエステル又は((アルコキシカルボニル)オキシ)アルキルエステルなどの二重エステル型プロドラッグを調製することが望ましい。特に有用であるのは、本発明の化合物のC1からC8アルキル、C2-C8アルケニル、アリール、C7-C12置換アリール、及びC7-C12アリールアルキルエステルである。
【0065】
(医薬組成物)
医薬として使用される場合、本発明の化合物は、典型的には、医薬組成物の形態で投与される。そのような組成物は、医薬分野で周知の様式で調製され得、且つ式Iによる少なくとも1種の本発明の活性化合物を含む。通常、本発明の化合物は、医薬として有効な量で投与される。実際に投与される本発明の化合物の量は、典型的には、治療されるべき病態、選択された投与経路、投与される実際の本発明の化合物、個々の患者の年齢、体重、及び応答、患者の症状の重症度などを含む関連状況を考慮して、医師により決定されるであろう。
【0066】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、経皮、皮下、関節内、静脈内、筋肉内、及び鼻腔内を含む、種々の経路により投与され得る。意図される送達経路に応じて、本発明の化合物は、好ましくは、注射用若しくは経口組成物として、又は全て経皮投与用の、軟膏として、ローションとして、若しくはパッチとして製剤化される。
【0067】
経口投与用の組成物は、バルク液体溶液若しくは懸濁液、又はバルク粉末の形態を取り得る。しかし、より一般的には、該組成物は、正確な投薬を容易にするために単位剤形で提供される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物用の単位投薬量として好適な物理的に別個の単位を指し、各々の単位は、所望の治療効果を与えるように計算された所定量の活性材料を、好適な医薬賦形剤、ビヒクル、又は担体と共に含有している。典型的な単位剤形は、液体組成物の予め充填され、予め測定されたアンプル若しくは注射器、又は固体組成物の場合、丸剤、錠剤、カプセル剤などを包含する。そのような組成物において、式Iによる本発明の化合物は、通常、より少ない成分(約0.1~約50重量%又は好ましくは約1~約40重量%)であり、残りは、所望の投薬形態を形成するのに役立つ、様々なビヒクル又は担体及び加工助剤である。
【0068】
経口投与に好適な液体形態は、緩衝剤、懸濁化及び分散化剤、着色料、香料などを伴う好適な水性又は非水性のビヒクルを包含し得る。固体形態は、例えば、以下の成分:微結晶性セルロース、トラガカントガム、若しくはゼラチンなどの結合剤;デンプン若しくはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル、若しくはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロース若しくはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント若しくはオレンジ香料などの着香剤のうちのいずれか、或いは類似の性質の本発明の化合物を包含し得る。
【0069】
注射用組成物は、典型的には、当技術分野で公知の注射用滅菌生理食塩水若しくはリン酸緩衝生理食塩水又は他の注射用担体に基づく。上述の通り、そのような組成物中の式Iによる本発明の活性化合物は、典型的には、より少ない成分であり、しばしば、約0.05~10重量%であり、残りは注射用担体などである。
【0070】
経皮組成物は、典型的には、有効成分(複数可)を、一般的には約0.01~約20重量%、好ましくは約0.1~約20重量%、好ましくは約0.1~約10重量%、及びより好ましくは0.5~約15重量%の範囲の量で含有する局所軟膏剤又はクリームとして製剤化される。軟膏剤として製剤化される場合、有効成分は、典型的には、パラフィン性軟膏基剤か水混和性軟膏基剤のいずれかと組み合わされるであろう。或いは、活性成分は、例えば、水中油型クリーム基剤とともにクリーム中に製剤化され得る。そのような経皮製剤は当技術分野で周知であり、通常、有効成分又は製剤の安定性の皮膚透過性(the dermal penetration of stability)を増大させる追加成分を含む。そのような公知の経皮製剤及び成分の全てが本発明の範囲内に含まれる。
【0071】
本発明の化合物は、経皮装置によっても投与され得る。したがって、経皮投与は、貯留槽型若しくは多孔性膜型又は固体マトリクス型のいずれかのパッチ剤を用いて達成され得る。
【0072】
経口投与可能な、注射可能な又は局所投与可能な組成物のための上記の成分は、代表的なものであるに過ぎない。他の材料及び加工技術などは、引用により本明細書中に組み込まれる、レミントンの医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第17版、1985、Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaのパート8に記載されている(Remington及びGennaroの文献1985)。
【0073】
本発明の化合物は、持続放出形態でも、又は持続放出薬物送達系からでも投与され得る。代表的な持続放出材料の説明は、レミントンの医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)に見出され得る。
【0074】
以下の製剤例は、本発明に従って調製され得る代表的な医薬組成物を例示するものである。しかしながら、本発明は、以下の医薬組成物に限定されない。
【0075】
(製剤1-錠剤)
式Iによる本発明の化合物は、乾燥粉末として、乾燥ゼラチン結合剤と約1:2の重量比で混合され得る。微量のステアリン酸マグネシウムが、滑沢剤として添加され得る。混合物は、打錠機で240~270mg錠(1錠あたり、80~90mgの式Iによる本発明の活性化合物)に成形され得る。
【0076】
(製剤2-カプセル)
式Iによる本発明の化合物は、乾燥粉末として、デンプン希釈剤と約1:1の重量比で混合され得る。混合物は、250mgカプセル(1カプセルあたり、125mgの式Iによる本発明の活性化合物)中に充填され得る。
【0077】
(製剤3-液剤)
式Iによる本発明の化合物(125mg)は、スクロース(1.75g)及びキサンタンガム(4mg)と混合され得、結果として得られる混合物は、ブレンドされ、No.10メッシュU.S.シーブに通され、その後、予め作製しておいた微結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(11:89、50mg)の水溶液と混合され得る。安息香酸ナトリウム(10mg)、香料、及び着色料が水で希釈され、撹拌しながら添加され得る。その後、撹拌しながら、充分な水が添加され得る。その後、さらに充分な水が添加されて、5mLの総体積を生じさせ得る。
【0078】
(製剤4-錠剤)
式Iによる本発明の化合物は、乾燥粉末として、乾燥ゼラチン結合剤と約1:2の重量比で混合され得る。微量のステアリン酸マグネシウムが、滑沢剤として添加され得る。混合物は、打錠機で450~900mg錠(150~300mgの式Iによる本発明の活性化合物)に成形され得る。
【0079】
(製剤5-注射剤)
式Iによる本発明の化合物は、緩衝滅菌生理食塩水の注射用水性媒体に、約5mg/mLの濃度まで溶解又は懸濁され得る。
【0080】
(製剤6-局所剤)
ステアリルアルコール(250g)及び白色ワセリン(250g)は、約75℃で融解され得、その後、水(約370g)に溶解された式Iによる本発明の化合物(50g)、メチルパラベン(0.25g)、プロピルパラベン(0.15g)、ラウリル硫酸ナトリウム(10g)、及びプロピレングリコール(120g)の混合物が添加され得、得られる混合物は、それが凝固するまで撹拌され得る。
【0081】
(治療の方法)
一実施態様において、本発明は、多発性嚢胞腎(PKD)の予防及び/又は治療における使用のための本発明の化合物又は本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。特定の実施態様において、該PKDは常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)である。
【0082】
別の実施態様において、本発明は、PKDの予防及び/又は治療における使用のための医薬の製造に使用するための本発明の化合物又は本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。特定の実施態様において、該PKDは常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)である。
【0083】
治療態様の追加の方法において、本発明は、PKDに罹患している哺乳動物の予防及び/又は治療の方法であって、有効量の本発明の化合物又は前記病態の治療若しくは予防に関して本明細書に記載される医薬組成物の1種以上の投与を含む方法を提供する。特定の実施態様において、該PKDは常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)である。
【0084】
一実施態様において、本発明は、本発明の化合物及び別の治療剤を含む医薬組成物を提供する。特定の実施態様において、他の治療剤はPKD治療剤である。特定の実施態様において、該PKDは常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)である。
【0085】
注射用量レベルは、全てが約1~約120時間、特に24~96時間の間に、約0.1mg/kg/時~少なくとも10mg/kg/時の範囲である。適正な定常状態レベルを達成するために、約0.1mg/kg~約10mg/kg又はそれを超える予充填ボーラスも投与され得る。最大総用量は、40~80kgのヒト患者の場合、約1g/日を超えないと考えられる。
【0086】
変性状態などの長期間の病態の予防及び/又は治療のために、治療用レジメンは、通常、数カ月又は数年にわたり、したがって患者の便宜及び忍容性のために経口投薬が好ましい。経口投薬の場合、1日に1~4回(1~4)の常用量、特に、1日に1~3回(1~3)の常用量、典型的には、1日に1~2回(1~2)の常用量、及び最も典型的には、1日に1回(1)の常用量が代表的なレジメンである。或いは、長期持続作用型薬物について、経口投薬の場合、1週間おきに1回、1週間に1回、及び1日に1回が代表的なレジメンである。具体的には、投薬レジメンは、1~14日おき、より具体的には1~10日おき、さらにより具体的には1~7日おき、及び最も具体的には1~3日おきであり得る。
【0087】
これらの投薬パターンを用いて、各々の用量は、約1~約1000mgの本発明の化合物を提供するが、具体的な用量は、各々約10~約500mg、特に約30~約250mgを提供する。
【0088】
経皮用量は、通常、注射用量を用いて達成されるのに類似又はそれよりも低い血液レベルを提供するように選択される。
【0089】
病態の発症を妨げるために使用する場合、本発明の化合物は、該病態を発症するリスクのある患者に、典型的には医師の助言に従い、且つその監督下で、上記の投薬量レベルで投与されるであろう。特定の病態を発症するリスクのある患者は、通常、該病態の家族歴を有する者、又は遺伝子検査若しくはスクリーニングにより該病態を特に発症しやすいことが確認されている者を包含する。
【0090】
本発明の化合物は、唯一の活性薬剤として投与できるが、同じ若しくは類似の治療活性を示し且つそのような併用投与に安全且つ有効であることが明らかにされている本発明の他の化合物を含む他の治療剤と組み合わせても投与できる。具体的な実施態様において、2種(又はそれより多く)の薬剤の共投与が、それぞれの著しく少ない用量の使用を可能とし、それにより、認められる副作用を低減させる。
【0091】
一実施態様において、本発明の化合物又は本発明の化合物を含む医薬組成物は、医薬として投与される。具体的な実施態様において、該医薬組成物は、さらなる有効成分を併せて含む。
【0092】
一実施態様において、本発明の化合物は、PKDを含む疾患の治療及び/又は予防のための別の治療剤と共投与され、特定の薬剤には、バソプレッシン受容体のアンタゴニスト、特にバソプレッシン-2受容体のアンタゴニスト(トルバプタン、リキシバプタン)、プラバスタチン、ベングルスタット、ボスチニブ、アンジオテンシン-変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、ベナゼプリル、ゾフェノプリル、ペリンドプリル、トランドラプリル、カプトプリル、エナラプリル、リジノプリル、又はラミプリル)、メトフォルミン、オクタペプチド(オクトレオチド)、環状ペプチド(ランレオチド)、マイクロRNAの短鎖オリゴヌクレオチド阻害剤(抗-miR)(例えば、抗-miR17(RGLS4326)(Leeらの文献2019))及びアンジオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)(例えば、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、フィマサルタン、及びアジルサルタン)があるが、これらに限定されない。特定の実施態様において、他の治療剤は、トルバプタン及びメトフォルミンから選択される。別の特定の実施態様において、他の特定の薬剤はRGLS4326である。
【0093】
共投与には、当業者には明らかであるように、2種以上の治療剤を患者に同じ治療計画の一部として送達するあらゆる手段が含まれる。2種以上の薬剤は、単一の製剤で、すなわち単一の医薬組成物として同時に投与され得るが、これは必須ではない。薬剤は、異なる製剤で異なる時間に投与され得る。
(略語)
【表1】
【0094】
(化学合成手順)
(一般)
本発明の化合物はWO 2017/060874に開示される通りに調製できる。
【0095】
特に、化合物1はWO 2017/060874の687ページにCpd 381として記載されており、化合物2(M4)はWO 2017/060874の758ページにCpd 629として記載されており、M3はWO 2017/060874の758ページにCpd 630として記載されており、
【0096】
M2はWO 2017/060873の655ページにCpd 892として記載されており;O-デメチル化M2はWO 2017/060873の656ページにCpd 898として記載されている。
【実施例】
【0097】
(実施例1.実例的合成)
【化4】
(1.1.工程i:シクロブチル-3-オキソ-プロピオニトリル)
1Lの四つ口丸底フラスコに、2つの滴下ロート及び装置の上部にセプタムを取り付けた。系全体を10分間真空下でフレームドライし(ヒートガン)、次いで窒素の陽圧流の下で(under a positive stream of nitrogen)(バルーン)で室温に冷却した。低温用温度計を窒素の陽圧流の下で適合させ(adapted)、次いで、窒素の陽圧流を使用して、1N LiHMDSのTHF溶液(468.0mL、468.0mmol、1.5当量)をカニューレによりフラスコに入れた。該溶液を、温度計により確認して-78℃(ドライアイス/アセトン冷却浴)に冷却した。乾燥MeCN(24.4mL、468.0mmol、1.5当量)をシリンジにより第1の滴下ロートに加え、次いで該反応混合物に(20分にわたり)滴加した。添加が終わると、該混合物を-78℃で1時間撹拌した。この時点で、シクロブタンカルボン酸エチルエステル(CAS番号14924-53-9、43.1mL、312.1mmol、1.0当量)を、乾燥THF溶液(106mL)として第2の滴下ロートに導入した。この溶液を2時間にわたりゆっくりと-78℃で反応混合物に加えた。該混合物を-78℃で2時間撹拌した。該反応混合物を300mLの冷水に注ぎ、30分間撹拌し、放置して室温まで温めた。次いで、該混合物を、酢酸エチルとH
2Oに分配した。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(3×300mL)で抽出した。合わせた有機相を廃棄した。次いで、水層を100mLの2N HClにより酸性化し、次いで酢酸エチル(3×300mL)で抽出し、50mLのブラインで洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮すると、標記化合物を与え、それをさらに精製せずに使用した。
【0098】
(1.2.工程ii:3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミン)
丸底フラスコに、3-シクロブチル-3-オキソ-プロピオニトリル(10g、81.4mmol)、4-フルオロフェニルヒドラジン塩酸塩(CAS番号823-85-8、12g、74mmol)、及びEtOH(35mL)を入れた。該反応混合物を2時間還流し、室温に冷却した。溶媒の半分を真空中で除去した。該混合物を激しく撹拌し、ジイソプロピルエーテル(350mL)を加えた。撹拌を1時間継続し、形成した沈殿物を濾過し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、減圧下40℃で乾燥させると、標記化合物を与えた。
【0099】
(1.3.工程iii:3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4,6-ジオール)
3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミン(5g、18.6mmol)とマロン酸ジエチル(CAS番号105-53-3、8.5mL、55.8mmol)の混合物を100℃で30分間加熱し、次いで170℃で3時間加熱した。該反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタン(60mL)に溶解させた。生じた溶液をn-ヘプタン(700mL)の撹拌されている溶液に加えた。沈殿物を濾過により回収し、n-ヘプタンで洗浄し、減圧下40℃で乾燥させると、標記化合物を与えた。
【0100】
(1.4.工程iv:4,6-ジクロロ-3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン)
ディーン・スターク装置を備えた三つ口丸底フラスコに、ジクロロリン酸フェニル(CAS番号770-12-7、854g、4.05mol)を入れた。3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4,6-ジオール(404g、1.35mol)を、5分間にわたり少量ずつ加えた。1時間かけて温度を170℃に上げて、170℃での撹拌を21時間継続した。該反応混合物を50℃に冷却し、撹拌されている4N NaOH水溶液(5L)に、温度を20℃未満に保ちながらゆっくりと加えた。該懸濁液を1時間10~15℃で撹拌し、次いで、冷水(3L)を加えた。沈殿物を濾過により回収し、水で洗浄し、減圧下40℃で乾燥させると、標記化合物を与えた。
【0101】
(1.5.工程v:メチル4-クロロ-3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-6-カルボキシラート)
圧力容器(pressured vessel)に、ジオキサン/メタノール(1:1、25mL)中の4,6-ジクロロ-3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン(5g、14.9mmol)、Pd(dppf)Cl2・DCM(CAS番号95464-05-4、218mg、0.3mmol)、及び酢酸ナトリウム(1.8g、22.3mmol)を加えた。該系にCO(4バール)を満たし、40℃で2時間加熱した。該容器を室温に冷却し、転化をLCMSによりモニターした。該反応容器に再びCO(4バール)を満たし、40℃で加熱した。完全な転化が観察されるまで、一続きの操作を繰り返した。粗製の混合物を減圧下で濃縮し、nヘプタン/ジクロロメタン(90/10~30/70)の混合物により溶離してフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製すると、標記化合物を与えた。
【0102】
(1.6.工程vi:メチル3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-4-[4-(4-メトキシ-1-ピペリジル)-1-ピペリジル]ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-6-カルボキシラート)
メチル4-クロロ-3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-6-カルボキシラート(8.11g、22.6mmol)の乾燥N-メチルピロリジノン(100mL)溶液に、4-メトキシ-1,4'-ビピペリジン(5.37g、27.1mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(9.42mL、54.2mmol)を加えた。該反応混合物を100℃で24時間撹拌し、次いで周囲温度に冷却し、水で希釈した。0℃に冷却すると懸濁液が形成した。懸濁液を濾過し、得られた沈殿物を水で洗浄した。乾燥させた後、標記化合物が得られた。
【0103】
(1.7.工程vii:3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-4-[4-(4-メトキシ-1-ピペリジル)-1-ピペリジル]ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-6-カルボン酸)
メチル3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-4-[4-(4-メトキシ-1-ピペリジル)-1-ピペリジル]ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-6-カルボキシラート(80μmol)を、THF/エタノールの混合物(1/1;6mL)に溶解させ、水中1N水酸化ナトリウム(0.5mL、500μmol)を室温で加えた。該溶液を4時間撹拌した。1N HCl水溶液(0.5mL、500μmol)及びリン酸緩衝液を加えた(pH 6.2)。溶媒を減圧下で一部除去し、生じた混合物をクロロホルムで2回抽出した。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させると、標記化合物を与えた。
【0104】
(1.8.工程viii:N-(ジメチルスルファモイル)-1-(4-フルオロフェニル)-4-[4-(4-メトキシピペリジン-4-イル)ピペリジン-1-イル]-3-(プロパン-2-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-6-カルボキサミド)
3-シクロブチル-1-(4-フルオロフェニル)-4-[4-(4-メトキシ-1-ピペリジル)-1-ピペリジル]ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-6-カルボン酸(0.15mmol)及びカルボニルジイミダゾール(37mg、0.23mmol)を室温の無水DMF(800μL)中で1時間撹拌した。次いで、化合物1の場合N,N-ジメチルスルファミド(37mg、0.30mmol)又は化合物2の場合N-メチルスルファミド(33mg、0.30mmol)及びトリエチルアミン(42μL、0.30mmol)を加え、それに続いてDBU(34μL、0.23mmol)をゆっくりと加えた。該反応混合物を30分間室温で撹拌し、メタノールで希釈し、10mM酢酸アンモニウム水溶液中のアセトニトリルの40~70%勾配によりWaters(登録商標) Sunfire(商標)C8カラム(30×150mm)で分取HPLCにより精製すると、標記化合物を与えた。
【0105】
【0106】
化合物2
【化6】
表I.例示的な本発明の化合物
【表2】
【0107】
(生物学的実施例)
(実施例2.インビトロアッセイ)
(2.1.野生型CFTRにおける黄色蛍光タンパク質(YFP)ハライドアッセイ)
(2.1.1.アッセイ原理)
野生型CFTRを阻害する試験化合物の能力を評価するために、野生型ヒトCFTRによりトランスフェクトされたHEK293細胞を使用するYFPハライドアッセイが開発された(Galietta, Jayaraman,及びVerkmanの文献2001)。細胞を、投与量範囲の試験化合物と共に24時間インキュベートして、生じた野生型CFTR活性をプロットしてEC50を得た。
【0108】
形質膜での利用可能なCFTRを完全に活性化し、チャンネル活性の阻害を正確に決定するために、試験化合物を、また、フォルスコリンと共に野生型CFTRを発現する細胞に加えた。
【0109】
(2.1.2.プロトコル)
HEK293細胞を、10~80ngの野生型CFTR及びYFP(H148Q/I152L/F47L)をコードする20ngのプラスミドにより、jetPEI(Polyplus transfection社)を使用してトランスフェクトした。トランスフェクションの直後に、細胞を、ポリ-D-リジンコートされた黒色96-ウェルプレートに、ウェルあたり70,000細胞の密度で播種した。翌日、細胞を、コレクター(corrector)(複数可)により24時間処理した。このインキュベーション期間の後で、細胞を、Ca2+及びMg2+を含むDPBSで2回洗浄した。その後に、細胞を10μMフォルスコリン及び40μlの体積の所望の濃度の増強剤(potentiator)により処理して、良好なウィンドウ(陽性対照/陰性対照>2)及びシグナルとバックグラウンドの比をもたらす以前の実験において最適化された時点である10分間室温でインキュベートした。YFP蛍光を、EnVisionプレートリーダー(PerkinElmer社)を使用して測定した。110μL NaI緩衝液(137mM NaI、2.7mM KI、1.7mM KH2PO4、10.1mM Na2HPO4、5mM D-グルコース)の速度150μl/秒でのウェルへの注入の直前に開始して、シグナルを7秒間測定して、150μlの最終体積をもたらした。励起波長は485nmであり、発光波長は530nmであった。
【0110】
濃度-応答実験を、応答=ボトム+(トップ-ボトム)/(1+(EC50/濃度)^ヒル勾配))の形態の4パラメーターのヒル関数を使用してフィッティングして、EC50値を決定した。
【0111】
(2.1.3.結果)
このアッセイにおいて、化合物1はWT CFTRを728nMのEC50で阻害し、化合物2はwt CFTRを102nMのEC50で阻害する。
【0112】
(実施例3.TECCアッセイ)
(3.1.アッセイ原理)
TECCアッセイを使用して、生理的条件により近い正常な初代気道上皮細胞(HBE細胞)上で化合物を評価する。
【0113】
(3.2.ヒト気道上皮(HBE)細胞培養)
正常から移植された肺から単離された気道上皮細胞(wt CFTR)を、計画された移植を受けたドナーから得られた肺から単離した。これらの初代細胞を、直接、6.5mmの直径及び0.4μmの細孔径を有するIV型コラーゲンコートされたポリカーボネートTranswellサポート(Costar、#3397)上で、18~25日間気液(ali)界面で、基本的にTECCに関して以前に記載された通りに培養した(Fulcherらの文献2005)。
【0114】
(3.3.プロトコル)
経上皮クランプ回路(TECC)記録を、EP Design社(Bertem, Belgium)により開発され販売されているTECC装置を使用して実施した。記録の間、上皮細胞をNaCl-リンゲル溶液(120mM NaCl、20mM HEPES、1.2mM CaCl2、1.2mM MgCl2、0.8mM KH2PO4、0.8mM K2HPO4、5mMグルコース、pH 7.4)に、側底側(640μl)と頂端側(160μl)の両方で浸し、37℃に保った。頂端側アミロライドを使用して、内因性ENaC電流(100μM)を阻害する一方で、フォルスコリン(0.3μM)を頂端側と側底側の両方で適用して、CFTRを刺激した。実験の間に使用した全トリガー及び化合物は、最初にDMSOに溶解させて1000×濃度溶液にし、処理の直前に、10×ストックをNaCl-リンゲル溶液中に調製し、それを、実験中に正しい濃度のトリガー及び/又は化合物の添加に使用した。細胞を試験化合物により記録の前24時間処理し、この処理を電気生理学的記録の前にTECC緩衝液中で繰り返した。測定は、2分ごとに記録して20分の時間枠の間に実施した。経上皮電位(PD)及び経上皮抵抗(Rt)を開回路で測定し、オームの法則を使用してIeqに変換した。Ieqの最大の増加(ΔIeq)を、増加したCFTR活性の尺度として使用した。
【0115】
(3.3.1.結果)
このアッセイにおいて、正常なHBE細胞を、化合物1及び化合物2と組み合わせてインキュベートすると、0.3μMフォルスコリンを使用してCFTRチャンネルを活性化した場合、10.7μA/cm2(DMSO対照;ビヒクル)から3.06μA/cm2に電流が減少した(チャンネル活性の72%減少)。
【0116】
正常なHBE細胞を化合物1及び化合物2と組み合わせてインキュベートすると、0.1μMフォルスコリンを使用してCFTRチャンネルを活性化した場合、電流が4.09μA/cm2(DMSO対照;ビヒクル)から0.8μA/cm2に減少した(チャンネル活性の80%減少)。
【0117】
正常なHBE細胞を化合物1のみと共にインキュベートすると、0.3μMフォルスコリンを使用してCFTRチャンネルを活性化した場合、電流が14.4μA/cm2(DMSO対照;ビヒクル)から6.6μA/cm2に減少し(チャンネル活性の54%減少)、pIC50は6.97であった(108nMのIC50値をもたらす)。
【0118】
正常なHBE細胞を化合物2のみと共にインキュベートすると、0.3μMフォルスコリンを使用してCFTRチャンネルを活性化した場合、電流が14.1μA/cm2(DMSO対照;ビヒクル)から5.9μA/cm2に減少し(チャンネル活性の58%減少))、pIC50は7.50であった(32nMのIC50値をもたらす)。
【0119】
フォルスコリンがない状態のチャンネル活性は0.25μA/cm2の電流をもたらした。
【0120】
(実施例4.YHAアッセイにおけるCFTR活性に対するメトフォルミンと化合物1の組合せ)
(4.1.アッセイ原理)
尿細管腎細胞を使用して野生型CFTRを阻害する試験化合物組合せの能力を評価するために、野生型マウスCFTRによりトランスフェクトされたmIMCD3_wt細胞(ATCC(登録商標)CRL-2123)を使用するYFPハライドアッセイが開発された(Galietta, Jayaraman, 及び Verkmanらの文献2001)。細胞を、投与量範囲の化合物1又は投与量範囲の化合物1と増加する投与量のメトフォルミンの組合せと共に、24時間インキュベートした。測定の直前に、形質膜での利用可能なCFTRを完全に活性化するために、フォルスコリンを、増加する用量のメトフォルミンと組み合わせて、又は組み合わせずに投与量範囲の化合物1と共に、野生型CFTRを発現しているmIMCD3細胞に加えた。試験化合物によるチャンネルの阻害をプロットして、IC50を得た。
【0121】
(4.2.アッセイプロトコル)
jetPEI(Polyplus transfection社)を使用して、マウスmIMCD3_wt細胞を、20ngの野生型CFTR及び80ngのYFP(H148Q/I152L/F47L)をコードするプラスミドによりトランスフェクトした。トランスフェクションの直後に、細胞を、ポリ-D-リジンコートされた黒色96-ウェルプレートに、ウェルあたり40,000細胞の密度で播種した。翌日、細胞を化合物で24時間処理した。このインキュベーション期間の後で、細胞を、Ca2+及びMg2+を含むDPBSで2回洗浄した。その後に、細胞を、10μMフォルスコリン及び40μlの体積の所望の濃度の化合物で処理し、良好なウィンドウ(陽性対照/陰性対照>2)及びシグナルとバックグラウンドの比をもたらす以前の実験において最適化された時点である15分間室温でインキュベートした。EnVisionプレートリーダー(PerkinElmer社)を使用して、YFP蛍光を測定した。このシグナルを、110μL NaI緩衝液(137mM NaI、2.7mM KI、1.7mM KH2PO4、10.1mM Na2HPO4、5mM D-グルコース)の150μl/秒の速度でのウェルへの注入の直前に開始して、7秒間記録して、最終体積150μlをもたらした。励起波長は485nmであり、発光波長は530nmであった。
【0122】
濃度-応答実験を、応答=ボトム+(トップ-ボトム)/(1+(EC50/濃度)^ヒル勾配))の形態の4パラメーターのヒル関数を使用してフィッティングして、EC50値を決定した。
【0123】
(4.3.結果)
上記アッセイに付すと、以下の結果が得られた。
表II.増加する濃度のメトフォルミン及び30μMの化合物1の存在下でのmIMCD3_wt YHAアッセイにおけるIC
50
【表3】
【0124】
30μMの化合物1のみは、3.12μMのEC50で、マウスmIMCD3_wt細胞中のマウスCFTR活性を阻害することができた。
【0125】
メトフォルミンと組み合わせると、化合物1は、増加する投与量のメトフォルミンを化合物1と組み合わせた場合、効力を増加させながらマウスmIMCD3細胞中のマウスCFTRチャンネルを阻害することが示された。5μMのメトフォルミンを化合物1と組み合わせた場合、化合物1はマウスCFTRを0.92μMのIC50で阻害した。メトフォルミンを化合物1と組み合わせた場合に観察された効力のシフトは、このアッセイにおけるマウスCFTRの阻害に対するメトフォルミンと化合物1との相加及び/又は相乗効果を示し得る。
【0126】
(実施例5.細胞アッセイ)
(5.1.3Dマウス嚢胞アッセイ)
(5.1.1.アッセイ原理)
このアッセイは、小さい嚢胞を形成するPKD1-/-ノックダウンマウス髄質管細胞(medullary mouse duct cells)を使用する。次いで、この嚢胞をフォルスコリンによりさらに刺激して、それらの拡大を起こす。次いで、嚢胞形成を妨害する試験化合物の能力を評価するために、試験化合物を追加のフォルスコリンと共に加える。3日後、これらの細胞を画像化して、特に嚢胞サイズ、細胞数、核形状、壁の厚さを測定する。
【0127】
(5.1.2.アッセイプロトコル)
3D嚢胞培養アッセイは、既に記載された通り、Pkd1-KOマウス-髄質内層集合管細胞(mIMRFNPKD 5E4)細胞により実施した(Booijらの文献2017)。簡潔に述べると:mIMRFNPKD 5.104細胞をCyst-Gel(OcellO社, Oortweg 21, Leiden, 2333CH, Netherlands.)と混合した。CyBio Felix 96/60液体ディスペンサーロボット(Analyik Jena社)を使用して、15μLの細胞-ゲルミックスを、384-ウェルプレート(GreinerμClear, Greiner Bio-One社)にピペットで移した。ゲル-細胞ミックスを、ウェルあたり2250細胞の最終細胞密度で播種した。37℃で30分間のゲル重合の後、33μL培地を各ウェルに加えた。細胞を、ゲル中で96時間成長させ、その後で細胞を、フォルスコリン(Calbiochem)と同時曝露(co-exposed)させ、以下の分子:ラパマイシン(SelleckChem社, S1039)、スタウロスポリン(SelleckChem社, S1421)を、それぞれ、嚢胞阻害又は毒性対照として使用した。試験化合物を、示された最終濃度で3Dアッセイにおいて試験した。72時間後、培養物を4%ホルムアルデヒド(Sigma Aldrich社)で固定化し、同時に0.2% Triton-X100(Sigma Aldrich社)で透過処理し、1×PBS(Sigma Aldrich社)中0.25μMローダミン-ファロイジン(Sigma Aldrich社)及び0.1% Hoechst 33258(Sigma Aldrich社)により2日間4℃で、光から保護した状態で染色した。固定化及び染色の後、プレートを1×PBSで洗浄し、その後、画像化の前に、プレートをGreiner SilverSeal(Greiner Bio-One社)で密封し、4℃で保存した。Molecular Devices ImageXpress Micro XLS(Molecular Devices社)を4×NIKON対物レンズと共に使用して画像化を実施した。各ウェルに対して、34のZ方向の画像を両チャンネルで作製し、各画像においてz-面全体をキャプチャーした。アクチン及び核の画像解析を、Ominerソフトウェア(OcellO社)を使用して実施した。
【0128】
(5.1.3.結果)
72時間の3D嚢胞アッセイにおける化合物1(10μM)のインキュベーションは、ビヒクル(100%と設定)と比べて14.5%の嚢胞腫脹をもたらし、嚢胞腫脹の85.5%の減少に相当した。
【0129】
72時間の3D嚢胞アッセイにおける化合物2(10μM)のインキュベーションは、ビヒクル(100%と設定)と比べて-1.7%の嚢胞腫脹をもたらし、嚢胞腫脹の100%の減少に相当した。
【0130】
(5.2.3Dヒト嚢胞成長アッセイ)
(5.2.1.アッセイ原理)
このアッセイは、培養中3Dで嚢胞を形成するヒトADPKDドナー腎臓から誘導されたヒト細胞を使用して、DiscoveryBioMed社(400 Riverhills Business Park, Suite 435, Birmingham, AL 35242-8101, USA)で実施された。このアッセイデザインにおいて、試験化合物処理の前に嚢胞を4日間形成させた(嚢胞減少デザイン)。嚢胞形成を支持するために特定のトリガーは全く使用しなかった。試験化合物を、既に形成された嚢胞の成長並びに新たな嚢胞の形成を防ぐその能力に関して評価した。8日間の試験化合物処理の後で、これらの細胞を画像化して、特に細胞数、嚢胞数、及び嚢胞サイズを測定した。
【0131】
(5.2.2.アッセイプロトコル)
3Dヒト嚢胞形成アッセイを、pkd1遺伝子の突然変異が確認されたDiscovery BioMed社のAutosomal Dominant Polycystic Kidney Disease(ADPKD)ドナー5由来の嚢胞から収集した細胞で実施した。
【0132】
減少アッセイパラダイムを選択して、嚢胞が既にゲル中に形成し始めた時点で嚢胞拡大を緩徐化又は停止させる試験化合物の能力を試験した。化合物1及び2を、8つの異なる投与量(3nM、10nM、30nM、100nM、300nM、1μM、3μM、及び10μM)で試験した。
【0133】
ドナー5細胞を、商標登録されたDiscovery BioMed biogelに、第0日にウェルあたり5,500細胞で播種し、試験化合物又はビヒクルを、細胞に、第5日、第7日、第9日、及び第11日に加えた。2.5% FBSを含む商標登録されたDiscovery BioMed RenalCyte Mediaを試験全体で使用して、細胞を維持した。重要なことに、フォルスコリン又はアルギニン-バソプレッシンなどの刺激剤を全く加えなかった。第4日(薬物処理の前)及び実験の終わる第12日に、4×倍率の対物レンズを使用してCytation 5(BioTek社)により画像を得て、6つの画像をキャプチャーし、つなぎ合わせて、384-ウェルプレート全体で単一のウェルの完全な視野を形成した。視野をゲル全体の多数の点でキャプチャーし、スタック全体をzプロジェクションに変換した。明視野画像を、嚢胞を認識するように訓練されたディープラーニングアルゴリズムを使用して分析し、それらの数及びサイズを測定した。第13日に、画像取得の後、細胞数を、Promega 3D CellTiterGlo(CTG)の使用により推定した。
【0134】
(5.2.3.結果)
10μMの投与量の化合物1とのインキュベーションは、定量化されたヒト嚢胞面積の31%の減少をもたらした(DMSO対照に対してp<0.05、有意性は一元ANOVAとそれに続くクラスカル・ウォリス事後解析により決定した)。(
図1)
【0135】
10μMの投与量の化合物2とのインキュベーションは、定量化されたヒト嚢胞面積41%の減少をもたらした(DMSO対照に対してp<0.05、有意性は一元ANOVAとそれに続くクラスカル・ウォリス事後解析により決定した)。(
図1)
【0136】
化合物1とのインキュベーションは、形成されたヒト嚢胞の数の濃度依存性の減少をもたらした。化合物1は、0.1μMの投与量から10μMの投与量まで有意な効果を示した(DMSO対照に対してp<0.05、有意性は二元ANOVAとそれに続くダネット事後解析により決定した)。(
図2)
【0137】
化合物2とのインキュベーションは、形成されたヒト嚢胞の数の濃度依存性の減少をもたらした。化合物2は、0.1μMの投与量から10μMの投与量まで有意な効果を示した(DMSO対照に対してp<0.05、有意性は二元ANOVAとそれに続くダネット事後解析により決定した)。(
図2)
表III.ビヒクル(DMSO)に対する化合物1及び化合物2の箱ひげ図嚢胞サイズ分布
【表4】
表IV.
図2:ビヒクル(DMSO)に対する化合物1及び化合物2の濃度依存性嚢胞サイズ分布
【表5】
表V.
図3-ビヒクル(DMSO)に対する化合物1の濃度依存性嚢胞サイズ分布
【表6】
表VI.
図4-ビヒクル(DMSO)に対する化合物2の濃度依存性嚢胞サイズ分布
【表7】
【0138】
(5.3.トルバプタンと組み合わせたインビボ実験)
(5.3.1.モデル原理)
ADPKDマウスモデルは、PKD1遺伝子が、生後12日でのタモキシフェンによる(授乳中の雌における)マウスの処置によるCreリコンビナーゼの活性化により遍在的にノックアウトされているPKD1 flox/flox(lox部位がエクソン2-4に隣接している)/ユビキタスCreERT2マウスに基づいている。PKD1遺伝子のホモ接合型(Homozygotous)ノックアウトにより、ヒトにおけるADPKD疾患の発生をある程度模倣する腎嚢胞の迅速な形成が起こる。
【0139】
試験化合物(トルバプタン、化合物2、及びトルバプタン+化合物2の組合せ)を、このモデルにおいて、腎嚢胞の形成を減少させる(嚢胞体積%)それらの能力並びに腎機能のマーカーである血液尿素窒素(BUN)濃度により測定される、マウス腎臓を機能不全から保護するそれらの能力に関して評価した。
【0140】
特に、尿素窒素は、食品タンパク質の分解及び体の代謝から生じる血液中の正常な老廃物であり、通常は腎臓により除去される。腎機能が低下すると、BUNレベルが上昇する。
【0141】
(5.3.2.アッセイプロトコル)
実験の前に、PKD1 flox/flox(lox部位がエクソン2-4に隣接している)/ユビキタスCreERT2のマウスコロニーは、Charles River Laboratories社(France)で維持された。Creリコンビナーゼ活性を誘発するために、タモキシフェン(ヒマワリ油中60mg/kg)を、腹腔内注射により、生後12日に授乳中の雌に送達した。その後に、タモキシフェンを含有する乳を子に投与した。処置は4週齢で始まり、11週間だった。トルバプタンを食餌に組み込み(0.1%)、単独又は化合物2と組み合わせて与え、250mg/kgで、1日1回、経口投与した。処置の開始時及び試験の間定期的に、血清を回収して、Spotchemバイオアナライザーで血液尿素窒素(BUN)のレベルを測定した。剖検時に、腎臓を回収し、秤量して、腎臓重量/体重比を決定した。
【0142】
各マウスで、矢状面で切断した腎臓の半分を緩衝化ホルムアルデヒド(VWR社、France)中で24時間固定化してから、標準的な手順を使用してパラフィン包埋した。腎臓の切片を、画像解析の前にヘマトキシリンで染色した。
【0143】
嚢胞パーセンテージを、Calopix(商標)画像解析ソフトウェア(Tribvn社、France)を使用して、ヘマトキシリン染色された腎臓切片から計算した。嚢胞パーセンテージを、全切片面積に対する嚢胞の面積の比として測定した(Rodgerらの文献、2016)。嚢胞体積を推定するために、嚢胞パーセンテージに、全2腎臓重量をかけて、全嚢胞重量を決定し、次いで、それを、嚢胞液体の1g/mLを仮定して全嚢胞体積に変換した(Rodgerらの文献、2016)。
【0144】
2つの独立した実験を実施した。化合物2及びトルバプタンとのその組合せの効果を有意に決定する能力を増加させるために、2つの実験(BUN及び嚢胞体積%)の結果を合わせたメタ分析を実施した。
【0145】
(5.3.3.メタ分析の結果)
全実験群対疾患群のダネット事後多重比較を伴う二元配置ANOVAを、群及び試験の関数として、第4週でのBUN(mg/mL)に対して犠死時(第15週)のBUNのlog倍率変化(logFC)に適用した。
【0146】
第4週(処置開始)に対する第15週(犠死)での平均倍率変化を、疾患群(未処置)に100%の変化を仮定して計算する。
表VII.試験における第4週と比べた第15週のBUN平均倍率変化
【表8】
【0147】
トルバプタン又は化合物2を単独で第4週から第15週まで投与しても疾患群に対して有意な倍率変化が生じなかったが、トルバプタンと化合物2の組合せは、疾患群と比べて統計的に有意な倍率変化の差をもたらし、試験された投与量の化合物2と組み合わせたトルバプタンが、疾患進行に影響し得ることを示す。
【0148】
(結語)
前述の説明は例示的且つ説明的な性質のものであり、本発明及びその好ましい実施態様を説明するように意図されていることが、当業者に理解されるであろう。ルーチンの実験を通じて、当業者は、本発明の趣旨を逸脱せずになされ得る明白な修飾及び変更を認識するであろう。添付の特許請求の範囲の範囲内に入る全てのそのような修飾は、その中に含まれることが意図されている。したがって、本発明は、上記の説明によるのではなく、以下の特許請求の範囲及びその等価物により定義されることが意図されている。
【0149】
本明細書中に引用される特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない全ての刊行物は、各々の個々の刊行物が、あたかも完全に述べられているように、引用により本明細書中に組み込まれていることが具体的に且つ個別的に示されているかのように、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0150】
様々な化合物の示差的な細胞透過能力などの因子が、インビトロの生化学的アッセイと細胞アッセイとの間の化合物の活性の違いに寄与し得ることが理解されるべきである。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
式(I)による化合物:
(化1)
(式中、R
1
は、H又は-CH
3
である);
又はその医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物、若しくは溶媒和物の医薬として許容し得る塩が多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療における使用のために提供される。
(態様2)
R
1
がHである、態様1記載の化合物又はその医薬として許容し得る塩。
(態様3)
R
1
が-CH
3
である、態様1記載の化合物又はその医薬として許容し得る塩。
(態様4)
常染色体優性多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療に使用するための、態様1~3のいずれか一項記載の化合物若しくはその医薬として許容し得る塩又は態様13記載の医薬組成物。
(態様5)
態様1~3のいずれか一項記載の化合物又は医薬として許容し得る塩及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物。
(態様6)
さらなる治療剤を含む、態様5記載の医薬組成物。
(態様7)
前記さらなる治療剤が多発性嚢胞腎剤である、態様6記載の医薬組成物。
(態様8)
前記さらなる治療剤がトルバプタンである、態様6記載の医薬組成物。
(態様9)
前記さらなる治療剤がメトフォルミンである、態様6記載の医薬組成物。
【0151】
本出願で与えられ且つ記載されている本発明の化合物の化学名の少なくとも一部は、市販の化学物質命名ソフトウェアプログラムの使用により自動的に作り出された可能性があり、独立に確認されたものではない。この機能を実施する代表的なプログラムは、Open Eye Software社により販売されているLexichem命名ツール、及びMDL社により販売されているAutonom Softwareツールを包含する。示された化学名と図示された構造が異なる場合には、図示された構造が優先する。
(参考文献)
【化7】