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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】浮遊式防波堤構造物
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20240826BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20240826BHJP
   B63B 21/00 20060101ALI20240826BHJP
   B63B 35/38 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
E02B3/06 302
B63B35/44 Z
B63B21/00 B
B63B35/38 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021571410
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 IL2020050540
(87)【国際公開番号】W WO2020250212
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】267357
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】506311471
【氏名又は名称】エルタ システムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ボロダ,ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】タヨウリ,フェリ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイシス,グレゴリー
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102535393(CN,A)
【文献】国際公開第2010/043735(WO,A1)
【文献】特開2004-300800(JP,A)
【文献】特開2015-214299(JP,A)
【文献】特開平08-246431(JP,A)
【文献】特開平08-189282(JP,A)
【文献】特開平02-099488(JP,A)
【文献】特開平04-146887(JP,A)
【文献】実開平05-038022(JP,U)
【文献】特開平07-247528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
B63B 35/44
B63B 21/00
B63B 35/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊式防波堤構造物であって、
水面に配置され、汀線から所定の距離を置いて沖合に設置されるように構成された浮遊式プラットフォームであって、岸を向く1の長辺と、水平線を向く別の長辺とを有する浮遊式プラットフォームと、
係留システムであって、
前記浮遊式プラットフォームの1の長辺側で海底に位置するサイドアンカーの少なくとも1のペアと、前記浮遊式プラットフォームの別の長辺側で海底に位置するサイドアンカーの少なくとも1の他方のペアと、
前記浮遊式プラットフォームに一端が連結された交差する係留バネ線の少なくとも2のペアとを備え、
前記交差する係留バネ線の各ペアは、一端が前記浮遊式プラットフォームの対応する長辺に連結され、他端がサイドアンカーの対応するペアに連結され、それにより前記浮遊式防波堤構造物が海底に固定されている、係留システムと、
前記浮遊式プラットフォームの長辺のいずれか一方に配置された減衰システムであって、波を砕いて、前記浮遊式防波堤構造物を安定させるとともに、波の動きにより付与される波のエネルギーおよび応力を吸収するように構成された減衰システムとを備え、
前記減衰システムは、浮体のセットを含み、それら浮体が独立して、波の作用が最も顕著な深さで、水面上の波とともに上下に浮動するように構成され、
前記浮体は、前記減衰システムが配置されている前記浮遊式プラットフォームの長辺に沿って、列をなして配置されるとともに、当該長辺から離れて延在し、各列が、複数の浮体を含むことを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の浮遊式防波堤構造物において、
前記浮遊式プラットフォームが、水面に浮かび、前記浮遊式防波堤構造物に浮力を与えるのに十分な寸法および重量を有する浮力ベッセルを含むことを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項3】
請求項1に記載の浮遊式防波堤構造物において、
前記浮遊式プラットフォームが、
水面の上方に配置され、所望の積載物を有するデッキと
水面の下方に配置され、前記デッキを保持するように構成された浮遊式ベースと、
前記浮遊式ベースから延び、前記デッキを支持するように構成された支柱要素とを含むことを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項4】
請求項3に記載の浮遊式防波堤構造物において、
前記浮遊式ベースが、
複数の浮力ポンツーンであって、浮力ポンツーンの重量を大幅に上回る浮力を生成するために十分な水を押しのけるように構成された複数の浮力ポンツーンと、
前記浮力ポンツーンの上方に配置され、水面上の前記浮遊式防波堤構造物を安定させるように構成された複数のバランスポンツーンとを含み、
前記複数の浮力ポンツーンおよび前記複数のバランスポンツーンが、前記支柱要素を介して前記デッキに連結されていることを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項5】
請求項4に記載の浮遊式防波堤構造物において、
前記浮力ポンツーンの全体積が波の作用の領域の十分に下方にあり、前記バランスポンツーンが水面にあることを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項6】
請求項3に記載の浮遊式防波堤構造物において、
前記支柱要素が、約5メートル未満の高さの波が前記デッキに到達しないという要件を満たすために、水面の上方に十分なクリアランスを提供するのに適切な長さを有することを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項7】
請求項1に記載の浮遊式防波堤構造物において、
各列において、前記浮体が隣接列の浮体に対してずれて配置され、それにより、到来する波の直接の衝撃から前記一方の辺を遮蔽することを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項8】
請求項1に記載の浮遊式防波堤構造物において、
前記減衰システムが、前記浮体に関連付けられたレバーと、前記浮遊式プラットフォーム上に配置された回転シャフトを含み、前記浮体が、前記レバーを用いて前記回転シャフトに連結され、各レバーは、その一端が対応する浮体に接続され、その他端が前記回転シャフトに接続され、それにより前記回転シャフトの軸に沿った揺動運動を提供するのに適した形状を有することを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の浮遊式防波堤構造物において、
前記浮体が、円筒形状であり、円筒の断面の直径が0.5メートル~50メートルの範囲にあり、円筒の長さが1メートル~10メートルの範囲にあることを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項10】
請求項1に記載の浮遊式防波堤構造物において、
動作中、少なくとも1の浮体が、到来する波の頂上に位置し、少なくとも1の別の浮体が、到来する波の谷間に位置することを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項11】
請求項1に記載の浮遊式防波堤構造物において、
列の数が、2~6の範囲であることを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項12】
請求項8に記載の浮遊式防波堤構造物において、
前記浮体の動きに抵抗するように構成および配置された抵抗機構を備えることを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【請求項13】
請求項8に記載の浮遊式防波堤構造物において、
前記回転シャフトに動作可能に結合され、前記浮体から伝達される回転運動から電気エネルギーを生成するように構成された発電機を含むことを特徴とする浮遊式防波堤構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、沖合の浮遊式プラットフォームに関し、より詳細には、汀線を保護するために沖合で建設/組み立てられる浮遊式防波堤構造物の安定化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防波堤は、港、停泊地、マリーナおよび/またはビーチを波の襲来の影響から守るべく、到来する波のエネルギーを低減するために特定の沿岸地域の近くで沖合に建設される人工の沖合構造物である。防波堤は、海岸線を浸食や沿岸漂砂から保護することもできる。保護は、波のエネルギーの全部または一部を散逸および/または反射させて、波のエネルギーを減少させることにより実現することができる。
【0003】
防波堤には様々な種類がある。一般に、防波堤の構造は、「固定式」防波堤と「浮遊式」防波堤の2つのグループに分けられる。
【0004】
固定式防波堤の一例としては、世界の固定式沿岸防御構造物のなかでも有名で広く使用されている捨石防波堤がある。それらの恒久的な防波堤構造物は、自然の岩石とコンクリートまたはコンクリート装甲ユニットを用いて海底に構築される。そのような防波堤は、一端が岸に連結されて建設される場合と、元の汀線から100~600メートル沖合に建設される場合がある。
【0005】
多くの場所で、浮遊式防波堤は恒久的な防波堤に代わる費用対効果の高い選択肢となっている。また、浮遊式防波堤は、一般に、海底に建設する恒久的な構造物よりも許可を取得し易い。浮遊式防波堤は、小型船舶の港やマリーナの保護を目的として使用されることが多くなっている。浮遊式防波堤は、通常、チェーン、沈錘およびアンカーで係留される。
【0006】
固定式防波堤と比較して、浮遊式防波堤に有利な条件がいくつかある。特に、基礎が貧弱で底部支持型防波堤の適用ができない場合には、浮遊式防波堤が適切な解決策となる可能性がある。水深の深い所では、底部接続型防波堤は、浮遊式防波堤よりも費用がかかる場合が多い。浮遊式防波堤は、水の循環や魚の回遊への影響を最小限に抑えることができる。氷の形成が問題となる場合には、浮遊式防波堤を取り外し、保護区域に曳航することができる。それらは、停泊または係留が必要な区域に適している。浮遊式防波堤は、通常、高さが低く、特に潮差の高い地域では、水平線への侵入を最小限に抑えることができる。浮遊式防波堤は、通常、最小限の労力で新しいレイアウトに再配置することができる。
【発明の概要】
【0007】
従来の浮遊式防波堤は、通常、波を砕き、波高を下げることで、押し寄せる波の襲来に耐えるように設計された「受動的」な構造物である。当技術分野では、強い波を砕くための「能動的」な動作のための機構を含む新規の浮遊式防波堤構造物を提供する必要性が依然として存在する。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、浮遊式防波堤構造物は、水面に配置され、汀線から所定の距離を置いて沖合に設置されるように構成された浮遊式プラットフォームを含む。動作のために設置されたとき、浮力プラットフォームは、岸を向く1の長辺と、水平線を向く他方の別の長辺とを有する。
【0009】
浮遊式防波堤構造物は、係留システムおよび減衰システムも含む。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、係留システムが、浮力プラットフォームの1の長辺側で海底に位置するサイドアンカーの1または複数のペアと、浮遊式プラットフォームの別の長辺側で海底に位置するサイドアンカーの1または複数の他方のペアとを含む。
【0011】
係留システムは、浮遊式プラットフォームに連結された交差する係留バネ線の2以上のペアも含む。交差する係留バネ線の各ペアは、浮遊式プラットフォームの対応する長辺およびサイドアンカーの対応するペアに連結され、それにより浮遊式防波堤構造物が海底に固定される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、減衰システムは、浮遊式プラットフォームの前側長辺(すなわち、水平線/水深の深い所を向く長辺)に配置され、かつ波を砕いて、水面上の浮遊式防波堤構造物の水平位置を安定させるとともに、波の動きにより付与される波のエネルギーおよび応力を吸収するように構成されている。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、浮遊式プラットフォームは、水面に浮かび、浮遊式防波堤構造物に浮力を与えるのに十分な寸法および重量を有する浮力ベッセルを含む。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、浮体構造物は、水面の上方に配置されたデッキを含む。デッキは、産業活動および都市生活(例えば、遊歩道、遊び場、フードハウス/パブ、ショップなど)のための所望の積載物を有する。浮遊式構造物は、水面の下方に配置され、デッキを水面の上方に維持するように構成された浮遊式ベースも含む。浮遊式構造物は、浮遊式ベースから延び、水面の下方からデッキを支持するように構成された支柱要素も含む。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、浮遊式ベースは、支柱要素を介してデッキに接続された複数の取り外し可能な浮力ユニットを含む。各浮力ユニットは、浮力ユニットの重量を大幅に上回る浮力を生成するために十分な水を押しのけるように構成されたポンツーンを含む。また、浮力ユニットの位置は、浮力ユニットの全体積が波の作用の領域の十分に下方になるように設定されている。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、支柱要素は、水面の上方に十分なクリアランス(例えば、2~7メートルの範囲、任意選択的には約3メートル)を提供するのに適切な長さを有する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、減衰システムが浮体のセットを含み、それら浮体が独立して、波の作用が最も顕著な深さで、水面上の波とともに上下に浮動するように構成されている。浮体は、浮遊式構造物の少なくとも一方の辺に平行な列に配置されている。列は、一方の辺から離れて、到来する波の方向に沿って延在している。各列は、複数の浮体を含む。各列において、浮体は、隣接する列の浮体に対してずれて配置され、それにより到来する波の直接的な衝撃から一方の辺を遮蔽する。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、減衰システムは、浮体に関連付けられたレバーと、防波堤構造物に配置された回転シャフトとを含む。浮体は、レバーによって回転シャフトに接続されている。各レバーは、その一端が対応する浮体に接続され、その他端が回転シャフトに接続され、それにより回転シャフトの軸に沿った揺動運動を提供するのに適した形状を有する。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、浮体は円筒形状を有しているが、他の形状も考えられる。円筒形状の浮体は、円筒の断面のサイズを0.5メートル~50メートルの範囲とし、円筒の長さを1メートル~100メートルの範囲とすることができる。なお、ある列の円筒形状の浮体は、他の列のものと寸法が異なっていてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、浮体の重量は、10kg~10000トンの範囲である。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、各列の浮体の数は、辺の長さによって決定され、浮遊式構造物の一方の辺から延びる列の数は、到来する波の長さによって決定される。例えば、列の数を1~6の範囲とすることができる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1の浮体が、到来する波の頂部に位置し、少なくとも1の別の浮体が、到来する波の谷部に位置する。
【0023】
浮遊式防波堤構造物は、回転シャフトに結合され、浮体の動きに機械的な抵抗を与えるように構成された抵抗機構(トルク抵抗機構)をさらに含むことができる。一実施形態によれば、トルク抵抗機構は、規定された高さレベルと同等以上の高さレベルを有する波の波動エネルギーを制御可能に減衰させ、それにより、規定された高さレベルよりも小さい高さレベルを有する波の通過を可能にするように構成されている。波の高さレベルは、波の最高点と最低点の間の距離として測定することができる。
【0024】
一実施形態によれば、本システムは、いくつかの実施形態において回転シャフトに動作可能に結合され、浮体から伝達される回転運動から電気エネルギーを生成するために使用される発電機を含む。
【0025】
このように、以下に続く本発明の詳細な説明がよりよく理解され得るように、本発明のより重要な特徴をかなり広く大まかに述べた。本発明の追加の詳細および利点は、詳細な説明に記載され、部分的にはその説明から理解されるか、または本発明の実施によって知ることができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下に、本明細書に開示の主題をよりよく理解し、それが実際にどのように実施され得るかを例示するために、単なる非限定的な例として、添付の図面を参照しながら、実施形態を説明する。
図1図1は、本発明の一実施形態に係る、水面に配置された浮遊式防波堤構造物の側面図を示している。
図2図2は、図1に示す浮遊式構造物の上面図を示している。
図3図3は、本発明の別の実施形態に係る、水面上に配置された浮遊式防波堤構造物の側面図を示している。
図4図4は、本発明の実施形態に係る浮遊式防波堤構造物によって実現される、岸から所定の距離に設置された防波堤を示している。
図5図5は、本発明の実施形態に係る浮遊式防波堤構造物によって実現される、1または複数の固定式海上構造物に連結された防波堤構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る浮遊式防波堤構造物の原理および動作は、図面および付随する説明を参照することにより、よりよく理解することができる。それらの図面および説明中の例は、説明のみを目的として与えられており、限定することを意図していないことを理解されたい。それら図面は、必ずしも縮尺通りではなく、説明のみを目的として与えられており、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。例えば、図中の一部の要素の寸法は、様々な実施形態の理解を深めるのを助けるために、他の要素に対して誇張されている場合がある。本発明の説明全体を通して、図面に示す浮遊式構造物およびその構成要素に共通するそれらの構成要素を識別するために、同じ符号および英字が利用される。
【0028】
図1および図2を併せて参照すると、本発明の一実施形態に係る、水域(海、海洋または湖など)14の水面13に配置された浮遊式防波堤構造物10の側面図および上面図が示されている。浮遊式防波堤構造物10は、浮遊式プラットフォーム11と、係留システム170とを含む。浮遊式プラットフォーム11は、水面に配置され、汀線(図1および図2には示されていない)から所定の距離をおいて沖合に設置されるように構成されている。
【0029】
図1および図2に示す実施形態によれば、浮遊式プラットフォーム11は、水に浮かぶ浮力ベッセル102を含む。浮力ベッセル102は、浮遊式防波堤構造物10に浮力を与えるのに十分な寸法および重量を有する。
【0030】
例えば、浮力ベッセル102は、軽量のプレストレストコンクリートおよびポストテンションコンクリートから構築することができる。また、グラスファイバや他の適切な材料から設計および構築することも可能である。
【0031】
必要に応じて、浮力ベッセル102は、中空の本体を有し、充填材で満たされたチャンバを含むように構成されるようにしてもよい。充填材は、コンクリート、高分子材料/発泡体、小石、ガラス、セラミック、砂、水などを含むことができる。必要に応じて、浮力ベッセル102の中空体は、空気または任意の適切なガス状物質を含むように適合させることができる。
【0032】
図1および図2に示す実施形態によれば、浮動プラットフォーム11の浮力ベッセル102は、単一のユニットである。しかしながら、必要に応じて、浮動プラットフォーム11は、互いに連結された複数の浮力ベッセル102の連鎖を含むことができる。そのような連結は、2つの連続する浮力ベッセルまたは/および浮遊式プラットフォームの間で曲げることができないか、または曲げることができる。
【0033】
図1および図2に示す実施形態によれば、浮遊式プラットフォーム11の外形は矩形であるが、他の外形も考えられる。矩形の浮遊式プラットフォーム11の長さは、幅の何倍にもなり得る。例えば、長さは50メートル~2000メートルの範囲、幅は10メートル~500メートルの範囲であるが、他の外形寸法も考えられる。
【0034】
動作中、浮遊式プラットフォーム11が矩形の場合、2本の長辺と2本の短辺を有する。以下、汀線に沿って取り付けられ、岸を向く浮遊式プラットフォーム11の長辺110aを後側長辺と呼び、水平線を向く他方の長辺110bを前側長辺と呼ぶ。
【0035】
係留システム170は、浮遊式プラットフォーム11の後側に位置するサイドアンカー18aの少なくとも1のペアと、浮遊式プラットフォーム11の前側に位置するサイドアンカー18bの少なくとも1の他方のペアとを含む。サイドアンカー18aを後側アンカーと呼び、サイドアンカー18bを前側アンカーと呼ぶ。サイドアンカー18a、18bは、海底19に配置されている。
【0036】
また、係留システム170は、後側アンカー18aに対応する係留バネ線17aの少なくとも1のペアと、前側アンカー18bに対応する係留バネ線17bの少なくとも1の別のペアとを含む。第1のペアおよび第2のペアの係留バネ線17a、17bは、それに対応して斜めに延び、浮遊式防波堤構造物10の前後方向の動きを制限するのに十分な角度で互いに交差している。
【0037】
交差する係留バネ線17a、17bは、矩形の浮力プラットフォーム11に配置された対応するフェアリード(図示省略)を介して、浮力プラットフォーム11の浮力ベッセル102に連結されている。交差する係留バネ線17a、17bは、それぞれサイドアンカー18a、18bによって、浮遊式防波堤構造物10を海底19に固定するように構成されている。
【0038】
図2に示すように、交差する係留バネ線17bの一方のペアは、前側長辺110bを対応する前側アンカー18bに接続し、交差する係留バネ線17aの他方のペアは、後側長辺110aを対応する後側アンカー18aに接続する。この例では、係留バネ線17a、17bが、矩形の浮力プラットフォーム11の短辺に接続されているが、他の接続点も考えられる。
【0039】
動作中、浮遊式防波堤構造物10は、汀線(図1および図2には示されていない)に対して選択された向きで係留することができ、それにより、浮遊式防波堤構造物により示される6自由度の運動(サージ、スウェイ、ヒーブ、ロール、ピッチおよびヨー)を低減するとともに、波の反射による一定の漂流の力を緩和することが可能であり、一方で、水位、水流、波および/または風の変化に応じて、防波堤構造物にサージ、スウェイおよび/またはヒーブの運動に対する所望の自由度を与えることができる。
【0040】
後側アンカー18aおよび前側アンカー18bは、風、流れ、海底構造などのアンカーポイントの位置における条件に応じて、異なる方法で実現することができることを理解されたい。後側アンカー18aおよび前側アンカー18bのタイプは、浮遊式防波堤構造物10のタイプ、重量、寸法等によって異なる。サイドアンカー18a、18bとしては、例えば、アンカー自体の重さで定位置を保つことができる重力アンカー、ドラッグ式アンカー、サクションバケットアンカーおよび/または杭打ちアンカーを挙げることができる。
【0041】
図1および図2に示す実施形態によれば、浮遊式防波堤構造物10は、浮遊式プラットフォーム11の片側に配置される減衰システム12を含む。減衰システム12は、浮遊式プラットフォーム11の前側長辺110bに配置されている。減衰システム12は、浮遊式防波堤構造物10の水平方向の(および/または地理的な)位置を安定させ、波の動きによって付与される波のエネルギーおよび応力を吸収するために、波を砕くように構成されている。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、減衰システム12は、浮体121のセットを含み、それらの浮体121が独立して、水面上の波とともに、波の作用が最も顕著な深さで、上下に浮動するように構成されている。
【0043】
浮体121は、前側長辺110bに平行な列に配置されている。列は、前側長辺110bから垂直方向に離れて延びている。各列は、複数の浮体121を含む。各列において、浮体121は、隣接する列の浮体121に対してずれて配置されており、押し寄せる波の直接の影響から前側長辺110bを遮蔽することができる。浮体121は、レバー123を使用することにより、浮遊式プラットフォーム11上に配置された回転シャフト122に連結されている。各レバー123は、レバー123の一端が対応する浮体121に連結され、その他端が回転シャフト122に連結され、それにより回転シャフト122の軸に沿った揺動運動を提供するのに適した形状を有する。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、揺動されるレバー123は、抵抗機構111(例えば、トルク抵抗機構)に動作的に結合されており、この抵抗機構は、浮体121の上向きおよび/または下向きの動きに、規定された抵抗を加えて、それにより防波堤プラットフォーム10の減衰特性および/または波高(例えば、浅い波が減衰せずに通過するのを許容するための波高)を規定するように構成されている。抵抗機構111は、例えば、回転シャフト122上でそのグリップを制御可能に締めたり解放したりすることができるタイプのベルトストラップレンチ機構を利用して、回転シャフト122上に摩擦力を加えることにより実現することができる。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、各浮体121は、他の浮体とは独立しており、浮力を生成するために十分な水を押しのけるように構成されたポンツーンを含む。これらの浮体121のいずれかが破損したり正常に機能しない場合には、正常に機能しない浮体を容易に修理または交換することができる。このような構成は、例えば、プレストレスコンクリートおよびポストテンションコンクリートから浮力体を構築することで実現できるが、鋼で設計および構築したり、小規模な構造物の場合には、グラスファイバまたは他の適切な材料から設計および構築することも可能である。必要に応じて、浮体121のポンツーンは、その十分な浮力を提供するために中空体を有するように構成されるものであってもよい。
【0046】
浮体121の大きさ、形状および重量は、打ち寄せる波の最大のエネルギーを吸収するための条件によって決定される。例えば、浮体121は、円筒形状を有することができ、円筒の断面における直径を1メートル~20メートルの範囲に、円筒の長さを1メートル~10メートルの範囲にすることができる。
【0047】
浮体121の重量は、強い波のエネルギーを、浮体121が持ち上げられたときの位置エネルギーに移行させて吸収するのに十分な重量であることが望ましい。例えば、浮体121の重量は、10kg~100トンの範囲とすることができる。
【0048】
各列の浮体121の数は、浮遊式プラットフォームの長辺110bの長さによって決定される。また、長辺110bから延びる列の数は、到来する波の長さと形態によって決定される。この数は、浮遊式防波堤構造物10の所望の遮蔽と安定性を提供するのに十分な数である必要がある。例えば、列の数は、1~6の範囲とすることができ、一方、列内の浮体121の数は、1~1000の範囲とすることができる。
【0049】
さらに、嵐や過酷な気象条件の中で、減衰システム12の動作効率を最大にするためには、少なくとも1または複数の列の浮体121が、到来する波の頂部に位置し、少なくとも1または複数の列の浮体121が、到来する波の谷間に位置する必要がある。例えば、波長が10m~20mの範囲の波の場合、列の数が1~6の範囲であれば、この条件を実現することができる。
【0050】
図3を参照すると、本発明の別の実施形態に係る、水域(海洋、海、湖など)14の水面13に配置された浮遊式防波堤構造物100の側面図が示されている。本実施形態によれば、浮遊式プラットフォーム11は、水面13の下に配置された浮遊式ベース101と、支柱要素103によって支持されたデッキ1020とを含む半潜水型のプラットフォームである。
【0051】
浮遊式ベース101は、主に水面13の下に配置され、デッキ1020と、産業活動および/または都市生活のためにデッキ1020上に搭載される所望の積載物(例えば、機器および設備)15とを保持するように構成されている。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、浮遊式ベース101は、複数の浮力ポンツーン105と、浮力ポンツーン105の上方に配置された複数のバランスポンツーン107とを含む。図3には、2つの浮力ポンツーン105と2つの複数のバランスポンツーン107が示されているが、一般に、任意の数の浮力ポンツーン105とバランスポンツーン107を使用できることに留意されたい。浮力ポンツーン105とバランスポンツーン107は、共通の支柱要素103を介してデッキ102に接続されている。各浮力ポンツーン105は、浮力ポンツーンの重量を大きく上回る浮力を発生させるために、十分な水を押しのけるように構成されている。具体的に、浮力ポンツーン105は、浮遊式防波堤構造物100に50~100%の浮力を与える。バランスポンツーン107は、浮遊式防波堤構造物100に安定性および対応する0~50%の浮力を与えるように構成されている。
【0053】
これらの浮力ポンツーン105および/またはバランスポンツーン107のいずれかが破損したり正常に機能しない場合には、正常に機能しないユニットを容易に修理または交換することができる。この構成は、例えば、浮力ポンツーン105およびバランスポンツーン107を、軽量のプレストレスコンクリートおよびポストテンションコンクリートから構築することで実現できるが、鋼で設計および構築したり、小規模な構造物の場合には、グラスファイバまたは他の適切な材料から設計および構築したりすることも可能である。
【0054】
必要に応じて、浮力ポンツーン105およびバランスポンツーン107は、十分な重量を提供するために充填材で満たされた中空体を有するように構成されるものであってもよい。充填材は、金属、コンクリート、高分子材料/発泡体、レンガ、石、小石、ガラス、セラミック、砂などの無害な建設廃棄物などを含むことができる。
【0055】
浮力ポンツーン105およびバランスポンツーン107のサイズ、形状および重量は、デッキ102およびデッキに支持される機器のサイズ、形状および重量によって決定される。例えば、浮力ユニット105のサイズは1m~100mの範囲、重量は10kg~1000トンの範囲とすることができる。バランスポンツーン107のサイズは1m~50m、重量は10kg~5000kgの範囲とすることができる。
【0056】
浮力ポンツーン105と、浮力ポンツーン105の上に配置されたバランスポンツーン107の数および密度は、好ましくは、浮力ポンツーン105の全体積が波の作用領域の十分に下にあり、例えば、約5メートル~20メートル、水面下の深さにあり、一方、バランスポンツーン107は水面13にあるように設定される。
【0057】
支柱要素103は、所望の産業および都市インフラストラクチャを有するデッキ1020を維持するために、適切な強度を提供すべく、適切な材料で作られ、必要な構成および断面積を有することができる。例えば、支柱要素103は、鋼管、コンクリート柱などから形成することができる。支柱要素の数および密度は、デッキ1020および支持される機器のサイズおよび重量によって決定される。好ましくは、支柱要素103は、高さが約5メートル未満の比較的小さな波がデッキ1020に到達しないか、または少なくともデッキに搭載された機器や設備の動作を実質的に妨害しないという要件を満たすために、水面13の上方に十分なクリアランスを提供するのに適当な長さを有する。必要に応じて、支柱要素103は、構造物に追加の浮力を与えるために、中空パイプの形態で実現されるものであってもよい。
【0058】
この実施形態では、矩形の浮遊式プラットフォーム11の浮力のある浮遊式ベース101が、表面の波の作用よりも十分に低い位置にある。一方、矩形の浮遊式プラットフォーム11のデッキ1020は、波の作用のエネルギーよりも十分に高い位置にある。波の作用の力を受けるプラットフォーム構成要素の唯一の部分は、デッキ102を支持する支柱要素103のパイプまたは柱の細いセグメント、および浮遊式防波堤構造物100の安定化を提供するバランスポンツーン107である。この部分は、浮遊式ベース101およびデッキ1020の総面積に比べて小さい。
【0059】
図3に示すように、浮遊式構造物100は、係留システム170と、浮遊式プラットフォーム11の一方の側に配置された減衰システム12とをさらに含む。図3に示す実施形態の係留システム170および減衰システム12は、本明細書で述べた浮遊式構造物10(図1および図2)の係留システム170および減衰システム12と同様である。
【0060】
図1および図3をともに参照すると、浮遊式防波堤構造物(図1の10)および(図3の100)の減衰システム12は、打ち寄せる波のエネルギーを船内で使用可能なエネルギーに変換するために使用することもできる。一実施形態によれば、浮遊式防波堤構造物(図1の10)および(図3の100)は、揺動レバー123の変位によって作動するタービン(図示省略)を含むことができ、このタービンが、オンラインで使用するか電気バッテリに蓄える電気を生成する発電機Gnに直接接続される。
【0061】
図4を参照すると、本発明のいくつかの実施形態に係る浮遊式防波堤構造物10、100が示されており、それらは、汀線40からある所定の距離に、かつ汀線40と実質的に平行に設置されている。この具体的な非限定的な例では、浮遊式防波堤構造物10、100は、港41などの海上構造物の固定式防波堤/桟橋に隣接して配置されているが、そのような海上構造物とは全く繋がれておらず、同様に、それとは離れた場所、または水域14の他の適切な場所に設置することができる。
【0062】
浮遊式防波堤構造物10、100は、それを向く汀線40の一部を低波レベルまたは実質的に無波の状態とするために使用することができ、それにより、水泳および/または任意の他の水の活動のための都合の良い水の状態を作り出すことができる。浮遊式防波堤構造物10/100は、発電するためにも、または、ボートや他の水上船舶/クラフトを固定するための桟橋としても、かつ/または、例えば、水泳、ダイビング、SAP、サーフィンなどの任意の水の活動のために、浮遊式防波堤構造物10、100と汀線40との間の波の高さを制御するためにも使用することができる。よって、浮遊式防波堤構造物10,100の長さL2は、様々な異なる用途に応じて選択することができる。
【0063】
図5を参照すると、本発明の浮遊式防波堤構造物10/100を利用した防波堤システム500が示されており、この防波堤システムは、その上で歩行者および/または小型車両(例えば、自転車、オートバイなど)の通行を可能にするために、水域14に、岸との繋がりを有するように設置されている。例えば、防波堤システム500は、その1または複数の端部で他の海洋構造物、例えば、マリーナ44および/または港41の固定式防波堤/桟橋に機械的に連結された遊歩道を形成するように構築することができる。
【0064】
この具体的な非限定的な例では、防波堤システム500が、2つの細長い浮力ベッセル102(または、図3に示すようなデッキ1020)を備え、各々が1または複数の減衰システム12、係留システム170(図5には示されていない)、および他の可能性のある構成要素を有し、それらが、本明細書に開示の実施形態のいずれか、またはそれらの任意の組合せを用いて実現することができる。図5に示すように、浮力ベッセル102は、その一方の自由端がマリーナ44の固定式防波堤/桟橋に接続され、その他方の自由端が港41の固定式防波堤/桟橋に接続された直角構造物を形成している。このようにして、防波堤システム500によって囲まれた水域14の部分内の波の特性を、減衰システム12により実質的に制御して、泳ぐ人のための所望の低い波レベル(例えば、10~70cm)、またはサーフィンなどの他の活動のためのより大きな波レベル(例えば、50~150cm)を提供することができる。
【0065】
防波堤システム500の浮力ベッセル102(または図3のデッキ1020)の各々は、細長い浮力ベッセル102の後側に取り付けられた1または複数の施設プラットフォーム125を有することができ、それらは、遊び場、フードハウス/パブ、ショップなどに限定されるものではないが、それらの人間の活動施設を保持するように構成することができる。必要に応じて、施設プラットフォーム125の各々は、別々の支持浮力ポンツーン(図示省略)を有することができる。前述した実施形態と同様に、減衰システム12は、波のエネルギーから電気を生成するために使用することができ、それを、各プラットフォーム125に設けられた様々な施設に直接供給することができる。
【0066】
このように、本発明を好ましい実施形態に関して説明してきたが、本開示の基礎となる概念は、本発明のいくつかの目的を遂行するための他の構造、システムおよびプロセスを設計するための基礎として容易に利用できることを、本発明が属する技術分野の当業者は理解することができる。
【0067】
本発明の特徴は、浮遊式防波堤構造物の特定の用途に拘束されるものではなく、任意の大規模浮遊式プラットフォームにも同様に適用可能であることを理解されたい。
【0068】
また、本明細書で使用されている文言や用語は、説明のためのものであって、限定的なものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【0069】
最後に、添付の特許請求の範囲で使用されている「~を備える」という語は、「~を含むが、それに限定されるものではない」という意味に解釈されるべきであることに留意されたい。
【0070】
したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載の例示的な実施形態によって限定されると解釈されないことが重要である。添付の請求項で定義された本発明の範囲内で、他の変形が可能である。本出願または関連出願において、現在の請求項を補正するか、または新しい請求項を提示することによって、特徴、機能、要素および/または特性の他の組合せおよび部分的な組合せを請求することが可能である。そのような補正または新しい請求項は、異なる組合せに向けられたものであれ、同じ組合せに向けられたものであれ、また、元の請求項と異なる範囲、広い範囲、狭い範囲または等しい範囲であるかどうかに関わらず、同様に、本明細書の主題に含まれるものとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5