IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンドレ プリールの特許一覧

<>
  • 特許-空調装置 図1
  • 特許-空調装置 図2
  • 特許-空調装置 図3
  • 特許-空調装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/06 20060101AFI20240826BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20240826BHJP
   F25B 11/02 20060101ALI20240826BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20240826BHJP
   F24F 1/02 20190101ALI20240826BHJP
   F02C 1/04 20060101ALI20240826BHJP
   F01K 9/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F25B9/06 K
F25B9/00 301
F25B11/02 B
F24F5/00 Z
F24F1/02
F02C1/04
F01K9/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021578229
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 FR2020051180
(87)【国際公開番号】W WO2021005290
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】1907548
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】522001378
【氏名又は名称】アンドレ プリール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ プリール
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-110108(JP,A)
【文献】特表平11-503223(JP,A)
【文献】特開2003-065621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/06
F25B 9/00
F25B 11/02
F24F 5/00
F24F 1/02
F02C 1/04
F01K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置であって、前記空調装置は、被冷却空気を圧縮する空気圧縮機(1)と、前記空気圧縮機(1)を駆動する原動機と、液体に接触して第1ダクト(2)により前記空気圧縮機(1)の出口接続された空気-液体熱交換器(3)を収容した液体タンク(9)と、前記空気-液体熱交換器(3)に第2ダクト(4)により接続された空気-空気熱交換器(5)と、前記空気-空気熱交換器(5)の出口第3ダクト(6)により接続された圧縮空気エンジン(7)と、断熱性を有し、前記空調装置の構成要素の全てを収容し、前記空気圧縮機(1)の供給に使用される空気の導入を可能とする開口部を有する筐体(17)とを備える空調装置であって;
- 前記第1、第2、及び第3ダクト(2、4、6)は、前記空気圧縮機(1)によって与えられる圧力に耐えることができ、低い圧力降下で圧縮空気通過を可能にするような大きさにされており;
- 前記空気-液体熱交換器(3)は、前記空気圧縮機(1)により圧縮される被冷却空気から、前記液体タンク(9)内に置かれた液体に熱を伝達するものであり、低い圧力降下で圧縮空気の通過を可能とするような大きさにされており;
- 前記空気-空気熱交換器(5)は、前記空気-液体熱交換器(3)の出口における圧縮空気の温度をさらに下げるものであり、かつ、低い圧力降下で圧縮空気の通過を可能にするような大きさされており、前記空気-空気熱交換器(5)を冷却するために使用される空気は、前記空調装置が配置された周囲空気であり;
- 前記圧縮空気エンジン(7)は、前記空気-空気熱交換器(5)の出口で回収された圧縮空気の膨張を得ることを可能にし、前記圧縮空気の温度を自然に下げ、冷却された空気を供給し、同時に、再利用可能な機械的エネルギーを生成
- 前記圧縮空気エンジン(7)のモータシャフトは、前記圧縮空気エンジン(7)によって与えられた機械的エネルギーを回収するために、機械的な接続によって前記空気圧縮機(1)の駆動シャフトに連結されてる;
空調装置において、
前記空調装置は、蒸気エンジン(11)と、前記蒸気エンジン(11)を前記液体タンク(9)に接続するダクト(10)と、を備え、前記液体タンク(9)は、収容する液体の圧力を上昇させて前記液体の沸騰を許容するように設計され、前記蒸気エンジン(11)は、通過する蒸気の温度及び圧力を下げることを可能にし、かつ、前記空調装置は、蒸気-空気熱交換器(13)と、前記蒸気エンジン(11)の出口を前記蒸気-空気熱交換器(13)に接続するダクト(12)と、を備え、前記蒸気-空気熱交換器(13)は、前記蒸気の凝縮及びその液体状態への復帰を可能にし、前記蒸気-空気熱交換器(13)によって使用される冷却空気は、前記空調装置が配置された前記周囲空気から導かれ、
更に、前記空調装置は、(i)前記蒸気の温度を下げるために、前記筐体(17)内に設けられた前記開口部を、前記蒸気-空気熱交換器(13)に接続するダクト(18)と、前記筐体(17)内に設けられた前記開口部を、前記空気-空気熱交換器(5)に接続し、前記筐体(17)の内部に位置する空気圧縮機(1)により吸収される空気を予熱しつつ、前記空気-液体熱交換器(3)の出口で圧縮された空気の温度を下げるダクト(19)と、を備え、
(ii)前記空調装置は、液体圧縮機(15)と、前記蒸気-空気熱交換器(13)の出口を前記液体圧縮機(15)に接続するダクト(14)と、前記液体タンク(9)に前記液体圧縮機(15)を接続するダクト(16)と、を備えており、前記液体圧縮機(15)は、前記蒸気-空気熱交換器(13)で発生した蒸気の凝縮により得られた液体を、前記液体タンク(9)内の液体の沸騰による加圧下にある前記液体タンク(9)に再導入することを可能とし、且つ、
(iii)前記空調装置は、前記液体圧縮機(15)を駆動する電気モータと、を備え、又は、前記液体圧縮機(15)は、前記空調装置における他の回転駆動要素:前記空気圧縮機(1)、前記圧縮空気エンジン(7)又は前記蒸気エンジン(11)のうちの少なくとも1つに機械的に接続され、一方では、前記蒸気エンジン(11)のエンジンシャフトは、前記空気圧縮機(1)の前記シャフト及び前記圧縮空気エンジン(7)の前記シャフトに機械的に接続される、ことを特徴とする、
空調装置。
【請求項2】
前記空調装置は、前記空調装置の構成要素の全てを収容した第1筐体(17)を囲む第2筐体(20)を備え、前記第1筐体(17)と出来るだけ接して空気循環が行われるように、前記筐体(17,20)の間に空気循環用の空間(22)が形成されており;
前記第2筐体(20)は、前記空調装置が配置された前記周囲空気の導入を可能とする開口部(21)を有し、前記空調装置に導入される前記周囲空気の流れが、前記第1筐体(17)に入る前に、前記第1筐体(17)と前記第2筐体(20)との間をまず循環する、ことを特徴とする、
請求項1記載の空調装置。
【請求項3】
空調装置であって、前記空調装置は、被冷却空気を圧縮する空気圧縮機(1)と、前記空気圧縮機(1)を駆動する原動機と、液体に接触して第1ダクト(2)により前記空気圧縮機(1)の出口に接続された空気-液体熱交換器(3)を収容した液体タンク(9)と、前記空気-液体熱交換器(3)に第2ダクト(4)により接続された空気-空気熱交換器(5)と、前記空気-空気熱交換器(5)の出口に第3ダクト(6)により接続された圧縮空気エンジン(7)と、断熱性を有し、前記空調装置の構成要素の全てを収容し、前記空気圧縮機(1)の供給に使用される空気の導入を可能とする開口部を有する筐体(17)とを備える空調装置であって;
- 前記第1、第2、及び第3ダクト(2、4、6)は、前記空気圧縮機(1)によって与えられる圧力に耐えることができ、低い圧力降下で圧縮空気の通過を可能にするような大きさにされており;
- 前記空気-液体熱交換器(3)は、前記空気圧縮機(1)により圧縮される被冷却空気から、前記液体タンク(9)内に置かれた液体に熱を伝達するものであり、低い圧力降下で圧縮空気の通過を可能とするような大きさにされており;
- 前記空気-空気熱交換器(5)は、前記空気-液体熱交換器(3)の出口における圧縮空気の温度をさらに下げるものであり、かつ、低い圧力降下で圧縮空気の通過を可能にするような大きさにされており、前記空気-空気熱交換器(5)を冷却するために使用される空気は、前記空調装置が配置された周囲空気であり;
- 前記圧縮空気エンジン(7)は、前記空気-空気熱交換器(5)の出口で回収された圧縮空気の膨張を得ることを可能にし、前記圧縮空気の温度を自然に下げ、冷却された空気を供給し、同時に、再利用可能な機械的エネルギーを生成し;
- 前記圧縮空気エンジン(7)のモータシャフトは、前記圧縮空気エンジン(7)によって与えられた機械的エネルギーを回収するために、機械的な接続によって前記空気圧縮機(1)の駆動シャフトに連結されている;
空調装置において、
前記空調装置は、前記空調装置の構成要素の全てを収容した第1筐体(17)を囲む第2筐体(20)を備え、前記第1筐体(17)と出来るだけ接して空気循環が行われるように、前記筐体(17,20)の間に空気循環用の空間(22)が形成されており;
前記第2筐体(20)は、前記空調装置が配置された前記周囲空気の導入を可能とする開口部(21)を有し、前記空調装置に導入される前記周囲空気の流れが、前記第1筐体(17)に入る前に、前記第1筐体(17)と前記第2筐体(20)との間をまず循環する、ことを特徴とする、
空調装置。
【請求項4】
前記空調装置は、前記空調装置の前記蒸気エンジン(11)及び前記圧縮空気エンジン(7)によって回収された前記機械的エネルギーを、機械的な接続によって回収する発電機を駆動するのに適しており、
前記蒸気エンジン(11)と前記圧縮空気エンジン(7)によって与えられる複合的な機械エネルギーの合計が、前記空気圧縮機(1)を駆動するために必要とされるエネルギーよりも大きくなる前記空調装置の運転段階において、
前記空調装置は、得られた電気エネルギーを、その後、他の電気機器に供給することができ、又は、電気的ネットワークに戻すことができる、ことを特徴とする、
請求項1記載の空調装置。
【請求項5】
前記空気圧縮機(1)は、ベーン型空気圧縮機であることを特徴とする、請求項1、2、3又は4に記載の空調装置。
【請求項6】
前記圧縮空気エンジン(7)は、空気式ベーンモータであることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5に記載の空調装置。
【請求項7】
前記蒸気エンジン(11)は、ベーンモータ式であることを特徴とする、請求項1又は4に記載の空調装置。
【請求項8】
前記空気圧縮機(1)を駆動する原動機は、電気モータであることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載の空調装置。
【請求項9】
前記空気圧縮機(1)を駆動する原動機は、電気モータであり、且つ、前記発電機は、前記空気圧縮機(1)の駆動に用いられる電気モータであることを特徴とする、請求項4記載の空調装置。
【請求項10】
発電機と、請求項4に記載の空調装置と、を備え、前記発電機を駆動するように構成されたセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機と、圧縮空気エンジン(moteur a air comprime)と、空気-液体及び空気-空気熱交換器と、蒸気エンジン(moteur a vapeur)と、を備え、これらの要素はすべて、冷却される周囲空気との関係において非常に良好な断熱性を許容するエンクロージャの内部に収容され、かつ、熱気を外部に排気する排気ダクトを必要としない利点を有する空調装置に関する。
【0002】
本発明は、空調装置の分野に関し、自宅又はビル内に位置する部屋又は構内を冷却することを意図したポータブル空調装置の分野における特定の用途を見出すであろう。
【背景技術】
【0003】
冷媒流体の相変化の循環を利用する冷蔵庫と同じ原理で、冷却したい部分から外部環境に熱を移動させる働きをする、いろいろなタイプの空調装置が、すでに知られている。冷媒流体は、一方では、冷却されるべき部分に配置された熱交換器において、他方では、外部環境において配置された熱交換器において、循環する。この循環は、冷媒流体を循環させるポンプとして働くコンプレッサによって行われる。この循環は4段階で行われる:
【0004】
1/ 圧縮:蒸気状態の冷媒流体が圧縮され、高圧・高温の状態でコンプレッサから出る;
【0005】
2/ 凝縮:非常に高温で圧縮された蒸気の状態にある冷媒流体は、その後、コンデンサ(又は熱交換器)に入り、そこで外部環境に熱を与え、それによって液化、つまり気体状態から液体状態に変化する;
【0006】
3/ 膨張:コンデンサの出口側では、液状で高圧下にある冷媒流体は、レギュレータ内の圧力を急速に下げることによって膨張する。(冷媒流体は、オリフィスを通して循環される。)この急激な圧力の低下は、この相変化(液体-蒸気)の結果として、現在、循環のうちその最も低温の状態にある冷媒流体の一部を気化させる効果を有する;
【0007】
4/ 蒸発:冷却され且つ部分的に蒸発した冷媒流体が、冷却される部分の内側にあるエバポレータ(熱交換器)で循環する。媒体(空気)を冷却するために、媒体から熱を奪う。熱を吸収することにより、冷媒流体は完全に蒸発し、液体状態から気体状態に変化する。次いで、冷媒流体は、新しい循環を繰り返す準備が整う。
【0008】
この循環は、凝縮相(上述した相2)中に、冷媒流体と外部環境との間に熱伝達を課すという欠点を有する。実際、室内に置かれたポータブル空調装置の場合、冷媒流体から抽出された熱量を、コンデンサ内でその冷却中に非常に高温の蒸気の状態で排出する必要がある。この排出は、通常、ポータブル空調装置の場合、室外の熱い空気の方向を変える排気ダクトを使用して行われる。この場合、部屋の壁や開口部(ドアや窓)にオリフィスを設ける必要がある。また、熱風排気ダクト用の通路を設けるために開口部を半開きにしておくことも可能であるが、室内の冷気を保ち、特に外部からの熱気を取り込まないようにするためには、次いで、前記開口部のすきまを塞ぐ必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、外部への熱の排出を有する空調装置で得られる冷却効率と同等の冷却効率を維持しつつ、このデメリットを改善する解決策を提供するものである。本発明は、熱交換器内の蒸発によって空気を冷却する冷媒流体の相変化の原理を用いるのではなく、空気-液体型熱交換器を用いて直接冷却される空気から熱を抽出することを提供する。本発明は、冷却される空気が、空気-液体熱交換器により液体に直接熱を与え、それに応じて液体の温度が上昇することを提供する。多くの種類の液体が、本発明の実施に適する可能性があるが、最も簡単なのは、水を使用することであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明は、請求項1に記載の空調装置に関する。従属クレームにはこの空調装置の特有の条件が設けられている。
【0011】
また、本発明は、請求項10に記載のセットに関する。
【0012】
本発明は、実施の形態によれば、冷却すべき空気を圧縮する空気圧縮機であって、この圧縮に伴って圧縮された空気の温度が急激に上昇する空気圧縮機と、このように圧縮された空気から液体タンク内に置かれた液体に熱を伝達する空気-液体熱交換器と、圧縮された空気の温度をさらに下げて、その段階において、圧縮された空気の状態を依然として維持することを目的とする空気-空気熱交換器と、圧縮された空気の膨張を達成することを目的とする圧縮空気エンジンであって、自然にその温度を下げ、冷却された空気を供給するとともに、再利用可能な機械的エネルギーを生成して、空気圧縮機の駆動を助けることを特徴とする空調装置に関するものであり、下記の事項により注目に値する:
【0013】
- 前記空気圧縮機は、電気モータによって、又は本発明の技術分野で公知の任意の他のタイプのモータによって機械的に駆動されることになり、前記空気圧縮機は、好ましくは、本発明の技術分野で公知のベーンを備えたタイプ、或いは、ピストン又はホイール空気圧縮機等の任意の他の種類のものであることが好ましい。前記空気圧縮機の目的は、結果として生じる温度上昇が、冷却される空気からより低い温度になる液体への熱伝達を保証するのに十分であるような圧力レベルを、冷却される空気にもたらすことである。前記液体が水である場合には、上述の圧力は、圧縮空気から水への熱伝達を可能にする100℃を超える圧縮空気温度を得るように選択されるであろう。この結果に必要な圧力は、10bar(1bar(0.1MPa)=14.5038Psi)のオーダーになる。
【0014】
- 前記空気-液体熱交換器は、本発明の技術分野で公知の設計のものであり、ダクトによって空気圧縮機の出口に接続されており、この2つの要素は、当業者が容易に達成できる低い圧力降下で圧縮空気の通過を可能にするような大きさにされており、その結果、圧縮空気の圧力は実質的に一定に保たれる。したがって、圧縮された空気は、空気-液体熱交換器を通過する間、一定の圧力で等圧的な変化を経て、その結果生じるエンタルピーの損失、すなわち熱の損失は、その圧力を維持しながら、その温度の低下をもたらす。
【0015】
- 前記空気-空気熱交換器は、本発明の技術分野で公知の設計で、上述した空気-液体熱交換器と直列に配置され、ダクトで接続されている。この空気-空気熱交換器の機能は、空気-液体熱交換器の出口側で回収される圧縮空気の温度をさらに下げることである。この目的のために、冷却に使用される空気は、簡単には、本発明の空調装置対象物が配置されている周囲空気であろう。さらに、前記空気-空気熱交換器は、当業者が容易に達成することができる低い圧力降下で圧縮空気を通過させることができるようなサイズにすることで、圧縮空気の圧力は、実質的に一定に保たれることになる。したがって、圧縮空気は、空気から空気への熱交換器を通過する間、一定の圧力で等圧的な変化を経て、その結果生じるエンタルピーの損失、すなわち熱の損失は、その圧力を維持しながら、その温度の低下をもたらす。
【0016】
- 上述の空気-空気熱交換器の出口側で回収された圧縮空気を使用する前記圧縮空気エンジンは、ダクトによって、空気-空気熱交換器の出口側に接続されるが、好ましくは、例えばピストン又はタービンエンジンのような、本発明の技術分野で公知のベーン型又は任意の他の型である。前記圧縮空気エンジンの機能は、前記空気圧縮機によって提供される機械的な仕事の一部を回収することになる。この目的のために、当業者には周知であり、ここでは説明しない、伝動ベルト、チェーン、歯車又は単に駆動シャフトのような、圧縮空気エンジンのモータシャフト(l’arbre moteur)と空気圧縮機の駆動シャフトとの間の機械的な接続のために、前記圧縮空気エンジンが設けられる。注意すべきことであるが、前記圧縮空気エンジンを駆動するために使用される圧縮空気は等圧的な変化のみを経ているので、前記圧縮空気エンジンの入口における空気圧力は、前記空気圧縮機の出口における空気の圧力と実質的に同一である。しかしながら、圧縮空気エンジンの入口における圧縮空気の温度は、空気圧縮機の出口における圧縮空気の温度よりも低いので、圧縮空気エンジンの入口における圧縮空気の質量容積は、空気圧縮機の出口における圧縮空気の質量容積よりも低い。その結果、圧縮空気エンジンから回収される機械的エネルギーは、空気圧縮機によって提供される機械的な仕事よりも少ない。このことは、上述の熱交換器を介して圧縮空気のエンタルピーが失われるため、一貫性が保たれる。最終的に、圧縮空気エンジンを通過する間、圧縮空気は急速な膨張を経て、大気圧に等しい圧力に戻り、これは、その温度を瞬時に大幅に低下させ、かくして所望の空冷効果を得る効果を有する。
【0017】
- 上述した空気-液体熱交換器が配置された液体タンクは、空気圧縮機の出口側で圧縮空気からエンタルピー-すなわち熱-を回収するものである。液体タンクに含まれる液体は、空調装置の運転中、その温度上昇が自然に上昇する。前記液体の温度が高くなりすぎると、水の場合には100℃近傍で、より冷たい液体と交換する必要が生じることになる。この液体の交換作業をしないようにするために、圧縮空気からの熱を回収するために液体として水を使用し、その後、連続的に交換する水回路に液体タンクを接続するか、加熱された水を温水タンクに導く水回路に液体タンクを接続するだけでよい。これらの解決策は、当業者によって容易に実施することができ、また、空調装置と近くに配置された水道管との間に油圧接続を行う必要があるという欠点を有するので、ここでは説明しない。他の実施形態では、液体は、例えば、冷媒流体であってもよい。
【0018】
-液体タンクの変形例は、液体タンク内の液体の圧力の増加を可能にし、したがって、該液体の沸騰を可能にするように設計することである。この構成では、液体タンクは、沸騰している液体だけでなく、気相中に前記液体の一部を含んでいてもよい。ダクトは、本発明の技術分野で公知の任意の種類の蒸気エンジンに気相中の液体を導くであろう。蒸気エンジンの下流側で、前記蒸気エンジンの上流側よりも低い温度及び低い圧力で回収された蒸気は、ダクトによって、前記蒸気の凝縮及び液体状態への戻りを可能にする蒸気-空気熱交換器に導かれるであろう。蒸気-空気熱交換器によって使用される冷却空気は、前記空調装置が配置されている周囲空気を基にするだけでよい。液体圧縮機は、増圧器とも呼ばれ、蒸気-空気熱交換器の出口にダクトで接続され、より高い圧力で、蒸気-空気熱交換器内部で凝縮して得られた液体を液体タンクに再導入することになり、この液体も、この液体の沸騰によって加圧される。前記液体圧縮機は、電気モータによって、又は前記空調装置内の他の回転素子(空気圧縮機、圧縮空気エンジン又は蒸気エンジン)の1つ又は複数によって駆動されることになる。当該蒸気エンジンのエンジンシャフト(l’arbre moteur)は、空気圧縮機のエンジンシャフト及び前述の圧縮空気エンジンのエンジンシャフトに機械的に接続されることになる。ここに記載されていない機械的な接続は、ベルト、チェーン、ギア、又は上記の3つの要素に共通の単なる伝動シャフトのような、本発明の技術分野で公知のいかなる種類のものであってもよい。この構成により、圧縮空気が空気-液体熱交換器で失われることになるエンタルピーの一部を、機械的な仕事の形で回収することが可能になる。注意すべきことであるが、空調装置のある運転段階では、蒸気エンジンと圧縮空気エンジンによって与えられる複合的なエネルギーの合計は、空気圧縮機を駆動するために必要とされるエネルギーよりも大きくなり得る。これは、液体タンク内に位置する液体の温度が、大気圧条件下で前記液体の沸騰温度よりも著しく高く、したがって、結果として生じる蒸気圧が大気圧よりも著しく高い場合に発生する。これは、前述の空気-液体熱交換器を通して、空気圧縮機が圧縮空気の温度を上昇させるのに十分な仕事を与え、次いで、そのエンタルピーの一部を液体タンク内に収容された液体に与えることを前提としている。なお、このプロセスでは、冷却される周囲空気から取り出されるエンタルピーも考慮されている。この特定の段階では、空調装置によって戻される機械的エネルギーを使用して、その効率を最適化するために、空調装置によって冷却される空気を、空調装置が配置された部屋内にパルス状にするのに役立つファンのブレードを作動させることができる。戻された機械的エネルギーは、また、他の電気機器、例えば他の空気ファンに電力を供給することができる発電機を駆動するために、又は単に電気エネルギーを電源ネットワークに戻すために使用することができる。従って、これらの特定の条件下では、空調装置は、発電機として使用されてもよい。
【0019】
断熱性の良い筐体とは、上述した空調装置の構成要素を全て収容したエンクロージャを構成するものである。この筐体は、前述の圧縮空気に供給するために使用される空気の導入を可能にする開口部を有する。筐体内部に入る空気の流れは、第1の専用ダクトによって上述した空気-空気熱交換器に部分的に導かれ、第2の専用ダクトによって上述した蒸気-空気熱交換器に部分的に導かれることになる。この条件の目的は、空調装置の構成要素のすべてを、外部との熱交換が非常に少ないほぼ断熱環境に閉じ込めることである。このようにすれば、本発明が提案する空調装置が置かれている周囲の空気は、必要以上に加熱されることはなくなり、また、本発明の技術分野では公知のほとんどの空調装置のように熱風排気を出す必要もなくなり、これは、本発明が解決しようと提案する課題とまさに一致する。加えて、前記筐体の内部に置かれた空気圧縮機によって吸収された空気は、上述した空気-空気熱交換器によってもたらされる熱交換によって予熱され、かつ、上述した蒸気-空気熱交換器によって、並びに、前記筐体の内部に位置する他の素子の熱損失によって予熱されることになり、このようにして前記空気圧縮機に導入された空気によって回収されたエンタルピーは、上述した空気-液体熱交換器によって部分的に戻されることになる。
【0020】
- 上述した空調装置の全ての構成要素を収容した筐体を構成する筐体の変形例として、上述した空調装置の全ての構成要素を収容した第1筐体を以下のように構成したダブルハウジングを提供することになる:第1筐体は、上述した空調装置の全ての構成要素を収容する。この第1筐体は、上述した空気圧縮機に供給するために使用される空気の導入を可能にする開口部を有する。第2筐体は、第1筐体を取り囲み、これらの2つの筐体の間で空気の循環が可能となるように配置されることになり、その結果、前記空気の循環は、できるだけ前記第1筐体と接触して行われ;前記第2筐体は、前記空調装置が配置される周囲空気の導入を可能とする開口部を有し、前記第2筐体に導入される周囲空気の流れは、前記第1筐体に入る前に、前記第1筐体と前記第2筐体との間を、まずは、循環することになる。この構成により、上述した2つの筐体の間を循環する周囲空気を、一方では比較的高温になっている空調装置の構成要素と、他方では前記空調装置が配置され、温度が低下されることが求められている部屋の周囲空気と、の間の断熱材として、利用することが可能になる。
【0021】
本発明の他の目的及び利点は、本発明によって提案された装置の実施形態に関連して、非限定的な例によって、以下の説明において示される。また、本発明によって提案された空調装置の模式図を構成する添付図面を参照することによって、その理解がより容易になるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、空気圧縮機(1)、空気-液体熱交換器(3)、空気-空気熱交換器(5)及び圧縮空気エンジン(7)からなる空調装置の図である。
図2図2は、上記液体タンク(9)の変形例を有する上記の空調装置の図であって、上記液体の沸騰を可能にし、空気圧縮機(1)の駆動に寄与する蒸気エンジン(11)に電力を供給するために使用される蒸気の生成を可能にするものである。
図3図3は、上述の空調装置の構成要素を閉じ込めることを目的とした、筐体(17)を備えた空調装置の図である。
図4図4は、空調装置の構成要素を囲む第1筐体(17)と、第1筐体(17)を囲む第2筐体(20)とからなるダブルハウジングを提案する変形例を備えた上述の空調装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明が提案する空調装置の実施形態の一例は、以下のものから成る(図1):
【0024】
- 冷却される空気を圧縮することを意図した空気圧縮機(1)であって、前記空気圧縮機(1)は、実施形態のこの例の必要性のために、本発明の技術分野において周知の「ベーン型」のものであり、これは、本発明の技術分野においても公知の他のタイプの圧縮機の使用において何ら制限を構成しない;
- このように圧縮された空気から液体タンク(9)内に置かれた液体に熱を伝達することを意図した、本発明の技術分野で公知の空気-液体熱交換器(3);
- 本発明の技術分野で公知であって、前記空気-液体熱交換器(3)の出口で圧縮空気の温度を下げることを意図した空気-空気熱交換器(5);
- 本発明の技術分野で公知の圧縮空気エンジン(7)であって、本発明が提案する空調装置に求められる目的である、圧縮空気の温度を自然に下げて圧縮空気を膨張させる機能を有するとともに、再使用可能な機械的エネルギーを回収して空気圧縮機(1)の駆動に寄与することができ、以下の点について注目に値する:
【0025】
- 前記空気圧縮機(1)は、電気モータによって機械的に駆動されるか、図示されていないが、本発明の技術分野において公知の任意の他のタイプの原動機によって駆動される;空気圧縮機(1)によって送出される圧力は、この非限定的な例の必要性のために10bar(1MPa)程度であってもよく、このようにして100℃よりもかなり高い値まで圧縮された空気の温度を上昇させるようにする。このようにして、空気-液体熱交換器(3)を通して、圧縮空気から液体へと熱伝達が行われ、この例では、前記液体は水から成り、この水が可能である沸騰の効果を伴う。空気圧縮機(1)と空気-液体熱交換器(3)との間には、空気圧縮機(1)によって供給される圧力に耐えることができるダクト(2)が設けられることになる。ダクト(2)及び空気-液体熱交換器(3)は、当業者が容易に達成できる低い圧力降下によって圧縮空気の通過を可能にするような大きさにされるので、そのため、圧縮空気の圧力は、実質的に一定に保たれ、空気圧縮機(1)によって与えられる圧力値に等しくなる。
【0026】
- 前記空気-空気熱交換器(5)は、本発明の技術分野で公知の設計の、上述した空気-液体熱交換器(3)と直列に配置され、上述したダクト(2)と同様の特性を有するダクト(4)によって接続されている。前記空気-空気熱交換器(5)を冷却するために使用される空気は、単純には、本発明の空調装置が配置されている周囲空気であろう。さらに、前記空気-空気熱交換器(5)は、空気-液体熱交換器(3)の場合と同様に、圧縮空気の圧力が実質的に一定に保たれるように、当業者が容易に達成することができる低い圧力降下により圧縮空気の通過を可能にするような大きさにされるであろう。
【0027】
- 前記圧縮空気エンジン(7)は、空気圧縮機モードで運転するために通常使用される方向とは逆方向に空気流の循環が行われるように取り付けられたベーン型空気圧縮機のみから構成することができる;この構成により、空気圧縮機内の圧縮空気を膨張させることが可能となり、結果的に、エンジンの運転に相当する機械的エネルギーを回収することが可能となる。このような条件は、本発明の技術分野においても公知の他のタイプの圧縮空気エンジンの使用において制限はないが、実施形態の優先的な選択を構成する;前記圧縮空気エンジン(7)は、上述した空気-空気熱交換器(5)の出口で回収された圧縮空気を使用し、ダクト(2)及びダクト(4)の特性と同様の特性を有するダクト(6)によって、空気-空気熱交換器(5)に接続される。前記圧縮空気エンジン(7)の機能は、前記ダクト(6)によってもたらされる圧縮空気を膨張させてその温度を著しく低下させ、このように冷却された膨張空気を、前記圧縮空気エンジン(7)の前記吹出口に接続されたダクト(8)を介して前記空調装置の外部に排気する;更に、前記圧縮空気エンジン(7)によってもたらされる機械的な仕事は、前記空気圧縮機(1)に一部伝達することになる。この目的のために、圧縮空気エンジン(7)のモータシャフトと空気圧縮機(1)の駆動シャフトとの間には、ここに添付される図には示されていないが、本発明の技術分野において周知である、伝動ベルト式、チェーン、ギア、伝動シャフト、又は他の任意の機械的な接続部の機械的な接続が設けられている。
【0028】
- 上述した空気-液体熱交換器(3)が置かれた前記液体タンク(9)は、空気圧縮機(1)の出口で圧縮空気からエンタルピー-又は熱-を回収するものである。この例では水によって構成されている液体を前記液体タンク(9)に収容しているが、空調装置の動作中にその温度が自然に上昇する。この水の温度が高くなりすぎると、100℃近傍では、冷水と交換する必要がある。このような水の交換作業をしないようにするためには、連続的に冷水と交換する水回路に液体タンク(9)を接続するか、加熱された水を温水タンクに導く水回路に液体タンクを接続するだけで十分である。これらの解決策は、当業者が容易に実施することができ、また、空調装置と近くに配置された水道管との間の油圧接続を必要とするという欠点を有するので、ここでは説明しない。
【0029】
- 液体タンク(9)の変形例(図2)は、液体タンク内の液体の圧力を増大させ、したがって、該液体の沸騰を可能にするように設計することを特徴とする。この構成では、液体タンク(9)は、沸騰水並びにこの水の一部を気相で閉じ込めることができる。ダクト(10)は、蒸気相中の水を、本発明の技術分野で公知の任意のタイプの蒸気エンジン(11)に導くであろう。好ましい実施形態の例の目的のために、前記蒸気エンジン(11)は圧縮空気エンジン(7)として構成され、「ベーン」型のものである。蒸気エンジン(11)の下流で、蒸気エンジン(11)の上流側よりも低い温度及び低い圧力で回収された蒸気は、ダクト(12)によって蒸気-空気熱交換器(13)に導かれ、蒸気-空気熱交換器(13)によって前記蒸気の凝縮及び液体状態への復帰が可能となる。蒸気-空気熱交換器(13)によって使用される冷却空気は、前記空調装置が配置されている周囲空気から供給されるだけでよい。蒸気-空気熱交換器(13)の出口にダクト(14)により接続され、且つ、ダクト(16)により液体タンク(9)に接続されたた液体圧縮機(15)は、蒸気-空気熱交換器(13)内部で凝縮した水を、そこでの水の沸騰によりその後加圧される液体タンク(9)に再導入することを可能とする。前記液体圧縮機(15)は、電気モータによって駆動されるか、又は前記空調装置における他の1つ又は複数の回転素子:空気圧縮機(1)、圧縮空気エンジン(7)、蒸気エンジン(11)によって駆動されることになる。前記蒸気エンジン(11)のエンジンシャフトは、前記した空気圧縮機(1)及び圧縮空気エンジン(7)のエンジンシャフトに機械的に接続することができる。ここに記載されていない機械的な接続は、ベルト、チェーン、ギア、又は単に上記の3つの要素に共通する伝動シャフト等の、本発明の技術分野で公知のいかなる種類のものであってもよく、これらは、その実施が容易であるために、優先的な手段を構成する。この構成により、圧縮空気が空気-液体熱交換器(3)で失われることになるエンタルピーの一部を、機械的な仕事の形で回収することが可能になる。
【0030】
- 筐体(17)(図3)は、良好な断熱性を有し、上述した空調装置の全ての構成要素を含むエンクロージャを構成するものである。この筐体(17)は、上述した空気圧縮機(1)に供給するために使用される空気の導入を可能にする開口部を有する。筐体(17)に入る空気の流れは、ダクト(19)によって空気-空気熱交換器(5)に部分的に導かれ、ダクト(18)によって蒸気-空気熱交換器(13)に部分的に導かれることになる。その条件の目的は、その筐体(17)によってもたらされた良好な断熱性により、空調装置の構成要素の全てを、外部との熱交換が非常に少ないほぼ断熱的な環境に閉じ込めることである。このようにすれば、空調装置が配置されている周囲の空気は必要以上に加熱されず、しかも、前記筐体(17)内部に配置されている空気圧縮機(1)で吸収された空気は、前記空気-空気熱交換器(5)及び蒸気-空気熱交換器(13)で生成された熱交換や筐体(17)内に配置されている他の要素の熱損失によって予熱されることになるので、このようにして前記空気圧縮機(1)に導入された空気によって回収されたエンタルピーは、前述した空気-液体熱交換器(3)によって一部回収されることになる。
【0031】
- 上述した空調装置の全ての構成要素を収容したエンクロージャを構成する筐体の変形例は、以下のように構成されたダブルハウジングを設けるものである(図4):第1筐体(17)は、上述したように空調装置の全ての構成要素を収容したものである。この第1筐体(17)は、上述した空気圧縮機(1)に供給するために使用される空気の導入を可能とする開口部を有する。第2筐体(20)は、第1筐体(17)を取り囲み、これら2つの筐体の間に空気循環用の空間(22)が設けられるように配置され、前記空気循環は、第1筐体(17)とできるだけ接触するように行われることになる。前記第2筐体(20)は、空調装置が置かれた周囲空気の導入を可能にする開口部(21)を有し、前記第1筐体(17)に入る前に、前記空調装置に導入される周囲の空気流が第1筐体(17)と第2筐体(20)との間を最初に循環することになる。この構成により、上述した2つの筐体の間を循環する周囲空気を、一方では比較的高温になっている空調装置の構成要素と、他方では前記空調装置が配置され、温度が低下されることが求められている部屋の周囲空気と、の間の断熱材として利用することが可能になる。
【0032】
より一般的には、本発明は、被冷却空気を圧縮する空気圧縮機(1)と、このように圧縮された空気から液体タンク(9)内に置かれた液体に熱を伝達する空気-液体熱交換器(3)と、この段階ではまだ圧縮空気の状態に保たれている、被冷却空気の温度をさらに低下させる空気-空気熱交換器(5)と、圧縮空気の膨張を得る圧縮空気エンジン(7)とを備え、これにより、自ずとその温度を低下させて冷却空気を供給するとともに、空気圧縮機(1)の駆動に寄与する再利用可能な機械エネルギーを生成することを特徴とする空調装置(1)を提供する:
- 本発明の技術分野において公知の設計の前記空気圧縮機(1)は、電気モータによって、又は本発明の技術分野において公知の任意の他のタイプのモータによって機械的に駆動される;
- 前記空気-液体熱交換器(3)は、本発明の技術分野で公知の設計のものであって、空気圧縮機(1)から供給される圧力に耐え得るダクト(2)により空気圧縮機(1)の出口に接続され、前記空気-液体熱交換器(3)及び前記ダクト(2)が低い圧力降下で圧縮空気の通過ができるような大きさにされている;
- 前記空気-空気熱交換器(5)は、本発明の技術分野で公知の設計のものであって、前記空気-液体熱交換器(3)の出口における圧縮空気の温度をさらに下げるものであって、前記ダクト(2)と同様の特性を有するダクト(4)によって前記空気-液体熱交換器(3)に接続され、前記空気-空気熱交換器(5)は、低い圧力降下で圧縮空気の通過を可能とするような大きさにされており、しかも、前記空気-空気熱交換器(5)を冷却するために使用される空気は、本発明の空調装置の対象となる空気が置かれる周囲空気である;
- 前記圧縮空気エンジン(7)は、本発明の技術分野で公知の設計のものであって、前記空気-空気熱交換器(5)の出口で回収された圧縮空気を用いて、前記ダクト(2)及び前記ダクト(4)の特性と同様の特性を有するダクト(6)によって、前記空気-空気熱交換器(5)に接続され、前記圧縮空気エンジン(7)のエンジンシャフトと前記空気圧縮機(1)の駆動シャフトとの間の機械的な接続によって前記空気圧縮機(1)の駆動に寄与し、前記機械的な接続は、本発明の技術分野で公知の任意のタイプのものである;
- 前記空気-液体熱交換器(3)が配置された前記液体タンク(9)は、前記空気圧縮機(1)の出口における前記圧縮空気からのエンタルピーを回収する;
- 筐体(17)は、本発明が提案する空調装置の構成要素を全て収容するものであり、筐体(17)に開口部を設けることにより、空気圧縮機(1)に空気を供給するための空気の導入が可能となり、しかも、筐体(17)に入る空気の流れは、ダクト(19)によって空気-空気熱交換器(5)に一部導かれ、ダクト(18)によって蒸気-空気熱交換器(13)に一部導かれる;
【0033】
上記に定義したものと組み合わせて取ることができる特定の構成によれば、前記空調装置は、液体タンク(9)内に位置する液体の温度が前記液体の沸騰温度よりも大幅に高く、その結果、得られる蒸気圧が大気圧よりも著しく高い相の間、発電機として使用できる。
なお、本発明の実施態様として、以下に示すものがある。
[態様1]
空調装置であって、前記空調装置は、被冷却空気を圧縮する空気圧縮機(1)と、前記空気圧縮機(1)を駆動する原動機と、液体に接触して第1ダクト(2)により前記空気圧縮機(1)の出口に接続された空気-液体熱交換器(3)を収容した液体タンク(9)と、前記空気-液体熱交換器(3)に第2ダクト(4)により接続された空気-空気熱交換器(5)と、前記空気-空気熱交換器(5)の出口に第3ダクト(6)により接続された圧縮空気エンジン(7)と、断熱性を有し、前記空調装置の構成要素の全てを収容し、前記空気圧縮機(1)の供給に使用される空気の導入を可能とする開口部を有する筐体(17)とを備える空調装置であって;
- 前記第1、第2、及び第3ダクト(2、4、6)は、前記空気圧縮機(1)によって与えられる圧力に耐えることができ、低い圧力降下で圧縮空気の通過を可能にするような大きさにされており;
- 前記空気-液体熱交換器(3)は、前記空気圧縮機(1)により圧縮される被冷却空気から、前記液体タンク(9)内に置かれた液体に熱を伝達するものであり、低い圧力降下で圧縮空気の通過を可能とするような大きさにされており;
- 前記空気-空気熱交換器(5)は、前記空気-液体熱交換器(3)の出口における圧縮空気の温度をさらに下げるものであり、かつ、低い圧力降下で圧縮空気の通過を可能にするような大きさにされており、前記空気-空気熱交換器(5)を冷却するために使用される空気は、前記空調装置が配置された周囲空気であり;
- 前記圧縮空気エンジン(7)は、前記空気-空気熱交換器(5)の出口で回収された圧縮空気の膨張を得ることを可能にし、前記圧縮空気の温度を自然に下げ、冷却された空気を供給し、同時に、再利用可能な機械的エネルギーを生成し;
- 前記圧縮空気エンジン(7)のモータシャフトは、前記圧縮空気エンジン(7)によって与えられた機械的エネルギーを回収するために、機械的な接続によって前記空気圧縮機(1)の駆動シャフトに連結されている;
空調装置。
[態様2]
態様1に記載の空調装置であって、
前記空調装置は、蒸気エンジン(11)と、前記蒸気エンジン(11)を前記液体タンク(9)に接続するダクト(10)と、を備え、前記液体タンク(9)は、収容する液体の圧力を上昇させて前記液体の沸騰を許容するように設計され、前記蒸気エンジン(11)は、通過する蒸気の温度及び圧力を下げることを可能にし、かつ、前記空調装置は、蒸気-空気熱交換器(13)と、前記蒸気エンジン(11)の出口を前記蒸気-空気熱交換器(13)に接続するダクト(12)と、を備え、前記蒸気-空気熱交換器(13)は、前記蒸気の凝縮及びその液体状態への復帰を可能にし、前記蒸気-空気熱交換器(13)によって使用される冷却空気は、前記空調装置が配置された前記周囲空気から導かれ、
前記空調装置は、更に、(i)前記蒸気の温度を下げるために、前記筐体(17)内に設けられた前記開口部を、前記蒸気-空気熱交換器(13)に接続するダクト(18)と、前記筐体(17)内に設けられた前記開口部を、前記空気-空気熱交換器(5)に接続し、前記筐体(17)の内部に位置する空気圧縮機(1)により吸収される空気を予熱しつつ、前記空気-液体熱交換器(3)の出口で圧縮された空気の温度を下げるダクト(19)と、を備え、
(ii)前記空調装置は、液体圧縮機(15)と、前記蒸気-空気熱交換器(13)の出口を前記液体圧縮機(15)に接続するダクト(14)と、前記液体タンク(9)に前記液体圧縮機(15)を接続するダクト(16)と、を備えており、前記液体圧縮機(15)は、前記蒸気-空気熱交換器(13)で発生した蒸気の凝縮により得られた液体を、前記液体タンク(9)内の液体の沸騰による加圧下にある前記液体タンク(9)に再導入することを可能とし、且つ、
(iii)前記空調装置は、前記液体圧縮機(15)を駆動する電気モータと、を備え、又は、前記液体圧縮機(15)は、前記空調装置における他の回転駆動要素:前記空気圧縮機(1)、前記圧縮空気エンジン(7)又は前記蒸気エンジン(11)のうちの少なくとも1つに機械的に接続され、一方では、前記蒸気エンジン(11)のエンジンシャフトは、前記空気圧縮機(1)の前記シャフト及び前記圧縮空気エンジン(7)の前記シャフトに機械的に接続される、ことを特徴とする、
空調装置。
[態様3]
前記空調装置は、前記空調装置の構成要素の全てを収容した第1筐体(17)を囲む第2筐体(20)を備え、前記第1筐体(17)と出来るだけ接して空気循環が行われるように、前記筐体(17,20)の間に空気循環用の空間(22)が形成されており;
前記第2筐体(20)は、前記空調装置が配置された前記周囲空気の導入を可能とする開口部(21)を有し、前記空調装置に導入される前記周囲空気の流れが、前記第1筐体(17)に入る前に、前記第1筐体(17)と前記第2筐体(20)との間をまず循環する、ことを特徴とする、
態様1又は2に記載の空調装置。
[態様4]
前記空調装置は、前記空調装置の前記蒸気エンジン(11)及び前記圧縮空気エンジン(7)によって回収された前記機械的エネルギーを、機械的な接続によって回収する発電機を駆動するのに適しており、
前記蒸気エンジン(11)と前記圧縮空気エンジン(7)によって与えられる複合的な機械エネルギーの合計が、前記空気圧縮機(1)を駆動するために必要とされるエネルギーよりも大きくなる前記空調装置の運転段階において、
前記空調装置は、得られた電気エネルギーを、その後、他の電気機器に供給することができ、又は、電気的ネットワークに戻すことができる、ことを特徴とする、
態様1、2又は3に記載の空調装置。
[態様5]
前記空気圧縮機(1)は、ベーン型空気圧縮機であることを特徴とする、態様1、2、3又は4に記載の空調装置。
[態様6]
前記圧縮空気エンジン(7)は、空気式ベーンモータであることを特徴とする、態様1、2、3、4又は5に記載の空調装置。
[態様7]
前記蒸気エンジン(11)は、ベーンモータ式であることを特徴とする、態様1、2、3、4、5又は6に記載の空調装置。
[態様8]
前記空気圧縮機(1)を駆動する原動機は、電気モータであることを特徴とする、態様1乃至7のうち何れかに記載の空調装置。
[態様9]
前記発電機は、前記空気圧縮機(1)の駆動に用いられる電気モータであることを特徴とする、態様4及び8に記載の空調装置。
[態様10]
発電機と、態様4に記載の空調装置と、を備え、前記発電機を駆動するように構成されたセット。
図1
図2
図3
図4