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特許7543340ナノポア配列決定用の集積回路およびフローセルのマルチチップパッケージング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ナノポア配列決定用の集積回路およびフローセルのマルチチップパッケージング
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20240826BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
C12M1/34 Z
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022077427
(22)【出願日】2022-05-10
(62)【分割の表示】P 2019521820の分割
【原出願日】2017-10-24
(65)【公開番号】P2022106943
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】62/413,336
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ブイトビッチ,ヤヌシュ・ベ
(72)【発明者】
【氏名】オウヤーン,シュウ
(72)【発明者】
【氏名】ミトニック,ユーリ
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/099672(WO,A1)
【文献】特開2007-010428(JP,A)
【文献】国際公開第2008/149976(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0196759(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0001250(US,A1)
【文献】国際公開第2007/145228(WO,A1)
【文献】特開2012-225770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/49
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/00-3/00
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む、ナノポアベースの配列決定システム:
複数のナノポアベースの配列決定チップ(804)、ここで前記ナノポアベースの配列決定チップの各々が、複数のナノポアセンサを備えるものである、
複数のナノポアベースの配列決定チップの少なくとも1つに連結された少なくとも1つのフローセル(806)、ここで前記複数のナノポアベースの配列決定チップの少なくとも1つに連結された前記フローセルが、前記システムの外部にある流体を前記ナノポアベースの配列決定チップの上面を流動させ、前記システムの外へ流動させることを可能にする、1つまたは複数の流体流路(808)を備えるものである、および、
制御信号を配列決定チップに伝送し、および配列決定チップで検出されたセンサ信号を伝送するために、前記複数のナノポアベースの配列決定チップに電気的に接続されたプリント配線基板であって、ナノポアベースの配列決定チップからの加熱除去を容易にするために、各ナノポアベースの配列決定チップが接続されたプリント配線基板の内部に、前記各ナノポアベースの配列決定チップに対応したそれぞれの温熱金属ブロックまたは温熱金属プレートが備えられている、前記プリント配線基板であって、
前記1つまたは複数の流体流路が、流体をチップ間の境界を流動するように導くものであり、ここで前記チップ間の境界が前記複数のナノポアベースの配列決定チップの前記少なくとも2つの間の境界であり、
前記チップ間の境界が密閉封止された、前記ナノポアベースの配列決定システム
【請求項2】
前記少なくとも1つのフローセルが、前記複数のナノポアベースの配列決定チップの少なくとも2つに連結された、請求項1に記載のナノポアベースの配列決定システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフローセルが、入口、出口、および流体ポンプに接続されている、請求項2に記載のナノポアベースの配列決定システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのフローセルが、成型された柔軟な材料またはガラス材料を備える、請求項1~のいずれか1項に記載のナノポアベースの配列決定システム。
【請求項5】
前記複数のナノポアベースの配列決定チップの前記少なくとも1つが、前記少なくとも1つのフローセルに接合する接合面を備えるものであり、ここで前記接合面は、回路または他の構成要素を備えないものである、請求項1~のいずれか1項に記載のナノポアベースの配列決定システム。
【請求項6】
複数のボンディングワイヤをさらに備え、前記プリント配線基板が、複数の金属接続子をさらに備え、前記複数のボンディングワイヤが、前記複数のナノポアベースの配列決定チップの少なくとも1つを前記複数の金属接続子の少なくともいくつかに電気的に接続し、前記複数のボンディングワイヤが、上方へ弧を描き互いに接触しないものである、請求項1~のいずれか1項に記載のナノポアベースの配列決定システム。
【請求項7】
前記複数のナノポアベースの配列決定チップが、前記プリント配線基板内に埋設され、前記プリント配線基板は、複数の金属接続子をさらに備え、前記複数の金属接続子の少なくとも1つが、前記プリント配線基板の上面の上に平坦に置かれかつ前記複数のナノポアベースの配列決定チップの1つの上面の上に平坦に置かれる一部分を有し、前記複数の金属接続子の前記少なくとも1つが、前記複数のナノポアベースの配列決定チップの前記1つに電気的に接続されている、請求項1~のいずれか1項に記載のナノポアベースの配列決定システム。
【請求項8】
前記プリント配線基板が、複数の空洞を備え、前記複数のナノポアベースの配列決定チップの前記少なくとも1つが、表を上にして前記プリント配線基板の下方に配置され、その結果、前記ナノポアベースの配列決定チップの前記複数のナノポアセンサが、前記複数の空洞の1つによって露出されている、請求項1~のいずれか1項に記載のナノポアベースの配列決定システム。
【請求項9】
少なくとも1つのフローセルを複数のナノポアベースの配列決定チップ(804)の少なくとも1つに連結するステップであって、ここで前記複数のナノポアベースの配列決定チップの前記少なくとも1つに連結された前記フローセルが、前記システムの外部にある流体を前記ナノポアベースの配列決定チップの上面を流動させ、前記システムの外へ流動させることを可能にする1つまたは複数の流体流路を備え、前記ナノポアベースの配列決定チップの各々が複数のナノポアセンサを備えるものである、前記ステップ、および、
ナノポアベースの配列決定チップからの加熱除去を容易にするために、各ナノポアベースの配列決定チップが接続されたプリント配線基板の内部に、前記各ナノポアベースの配列決定チップに対応したそれぞれの温熱金属ブロックまたは温熱金属プレートを備えるステップ、
制御信号を配列決定チップに伝送し、および配列決定チップで検出されたセンサ信号を伝送するために、温熱金属ブロックまたは温熱金属プレートを備えるプリント配線基板に前記各ナノポアベースの配列決定チップを電気的に接続するステップ、
を含み、
前記1つまたは複数の流体流路が、流体をチップ間の境界を流動するように導くものであり、ここで前記チップ間の境界が前記複数のナノポアベースの配列決定チップの前記少なくとも2つの間の境界であり、
前記チップ間の境界が密閉封止されたものである、
ナノポアベースの配列決定システムを統合する方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのフローセルを前記複数のナノポアベースの配列決定チップの少なくとも2つに連結するステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のナノポアベースの配列決定チップの前記少なくとも1つを、複数のボンディングワイヤを用いて、前記プリント配線基板の複数の金属接続子の少なくともいくつかに電気的に接続するステップをさらに含み、ここで前記複数のボンディングワイヤは上方へ弧を描き互いに接触しないものである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のナノポアベースの配列決定チップを、前記プリント配線基板内に埋設するステップをさらに含み、ここで前記プリント配線基板は、複数の金属接続子をさらに備え、前記複数の金属接続子の少なくとも1つが、前記プリント配線基板の上面の上に平坦に置かれかつ前記複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの1つの上面の上に平坦に置かれる一部分を有し、前記複数の金属接続子のうちの前記少なくとも1つが、前記複数のナノポアベースの配列決定チップの前記1つに電気的に接続されている、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記プリント配線基板が、複数の空洞を備え、
前記複数のナノポアベースの配列決定チップの少なくとも1つを、表を上にして前記プリント配線基板の下方に配置し、その結果、前記ナノポアベースの配列決定チップの前記複数のナノポアセンサが、前記複数の空洞の1つによって露出されている、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]近年の半導体産業における超小型化の進歩によって、生物工学者は、従来の大きな検出ツールをますます小さいフォームファクタに、いわゆるバイオチップ上にパッケージングすることを始められるようになった。バイオチップをより頑丈に、効率的にかつ費用対効果を高くするバイオチップの技術を開発することが、望ましいであろう。
【発明の概要】
【0002】
[0002]第1の態様では、本発明は、複数のナノポアベースの配列決定チップの各々が複数のナノポアセンサを備える、複数のナノポアベースの配列決定チップと、システムの外部にある流体が、ナノポアベースの配列決定チップの上面の上を流動し、システムの外へ流動することを可能にする、1つまたは複数の流体流路を備える、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも1つに連結された少なくとも1つのフローセルと、複数のナノポアベースの配列決定チップに電気的に接続されたプリント配線基板とを備える、ナノポアベースの配列決定システムを提供する。
【0003】
[0003]少なくとも1つのフローセルは複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも2つに連結され得て、少なくとも1つのフローセルが、入口、出口、および流体ポンプに接続され得る。1つまたは複数の流体流路が、流体をチップ間の境界を流動するように誘導し得て、チップ間の境界が、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも2つの間の境界である。チップ間の境界は、例えば、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも2つのチップ側壁が実質的に垂直かつ平坦となるようにダイシングすること、側壁が互いに対して突き当てられるように複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも2つの側壁を配置すること、および密閉封止材料を側壁上に堆積すること、によって密閉封止され得る。チップ間の境界は、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも2つを、少なくとも1つのフローセル上に結合させることによって、さらに密閉封止され得る。少なくとも1つのフローセルは、成型された柔軟な材料またはガラス材料を備え得る。
【0004】
[0004]複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのフローセルに接合する接合面を備え得て、接合面は、回路または他の構成要素を備えない。ナノポアベースの配列決定システムまたは器具は、複数のボンディングワイヤをさらに備え得て、プリント配線基板が、複数の金属接続子をさらに備え得て、複数のボンディングワイヤは、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも1つを複数の金属接続子のうちの少なくともいくつかに電気的に接続し得て、複数のボンディングワイヤは、上方へ弧を描き得て、互いに接触しない。ナノポアベースの配列決定システムは、複数のボンディングワイヤを被覆する封止層をさらに備え得る。
【0005】
[0005]複数のナノポアベースの配列決定チップは、プリント配線基板内に埋設され得て、プリント配線基板は、複数の金属接続子をさらに備え得て、複数の金属接続子のうちの少なくとも1つが、プリント配線基板の上面の上に平坦に置かれかつ複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの1つの上面の上に平坦に置かれる一部分を有し得て、複数の金属接続子のうちの少なくとも1つは、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの1つに電気的に接続され得る。システムまたは器具は、封止層をさらに備え得て、プリント配線基板の上面の上に平坦に置かれかつ複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの1つの上面の上に平坦に置かれる上述の一部分は、封止層によって被覆される。
【0006】
[0006]プリント配線基板が、複数の空洞を備え得て、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも1つが、表を上にしてプリント配線基板の下方に配置され得て、その結果、ナノポアベースの配列決定チップの複数のナノポアセンサは、複数の空洞のうちの1つによって露出されている。このとき、少なくとも1つのフローセルは、複数の空洞のうちの1つおよび複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも1つよって形成されたウェル内に埋設される。
【0007】
[0007]第2の態様では、本発明は、少なくとも1つのフローセルを、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも1つに連結するステップであって、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも1つに連結されたフローセルが、システムの外部にある流体がナノポアベースの配列決定チップの上面の上を流動し、システムの外へ流動することを可能にする、1つまたは複数の流体流路を備え、ナノポアベースの配列決定チップの各々が、複数のナノポアセンサを備える、ステップと、プリント配線基板を複数のナノポアベースの配列決定チップに電気的に接続するステップとを含む、ナノポアベースの配列決定システムを統合する方法を提供する。
【0008】
[0008]方法は、少なくとも1つのフローセルを複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも2つに連結するステップと、少なくとも1つのフローセルを、入口、出口、および流体ポンプに任意選択的に接続するステップとを含み得る。1つまたは複数の流体流路は、流体を所望するチップ間の境界を流動するように誘導し得て、チップ間の境界は、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも2つの間の境界であり、上述の境界は、密閉封止され得る。上述のチップ間の境界を密閉封止するステップは、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも2つのチップ側壁が実質的に垂直かつ平坦となるようにダイシングするステップと、側壁が互いに対して突き当てられるように複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも2つの側壁を配置するステップと、密閉封止材料を側壁上に堆積するステップとを含み得る。別法として、上述のチップ間の境界を密閉封止するステップは、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも2つを、少なくとも1つのフローセル上に結合させるステップを含み得る。
【0009】
[0009]方法は、少なくとも1つのフローセルを、柔軟な材料を用いてまたはガラス材料を用いて成型するステップをさらに含み得る。方法は、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも1つの接合面を、少なくとも1つのフローセルに接合するステップをさらに含み得て、接合面は、回路または他の構成要素を備えない。
【0010】
[0010]方法は、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも1つを、複数のボンディングワイヤを用いて、プリント配線基板の複数の金属接続子のうちの少なくともいくつかに電気的に接続するステップであって、複数のボンディングワイヤは上方へ弧を描き互いに接触させないステップと、任意選択に複数のボンディングワイヤを、封止層を用いて被覆するステップとをさらに含み得る。
【0011】
[0011]方法は、複数のナノポアベースの配列決定チップを、プリント配線基板内に埋設するステップであって、プリント配線基板は、複数の金属接続子をさらに備え、複数の金属接続子のうちの少なくとも1つが、プリント配線基板の上面の上に平坦に置かれかつ複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの1つの上面の上に平坦に置かれる一部分を有し、複数の金属接続子のうちの少なくとも1つが、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの1つに電気的に接続されている、ステップをさらに含み得る。このとき、方法は、プリント配線基板の上面の上に平坦に置かれかつ複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの1つの上面の上に平坦に置かれる一部分を封止層によって被覆するステップをさらに含み得る。
【0012】
[0012]プリント配線基板が複数の空洞を備える場合、方法は、複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも1つを、表を上にしてプリント配線基板の下方に配置し、その結果、ナノポアベースの配列決定チップの複数のナノポアセンサが、複数の空洞のうちの1つによって露出されている、ステップをさらに含み得る。このとき、少なくとも1つのフローセルは、複数の空洞のうちの1つおよび複数のナノポアベースの配列決定チップのうちの少なくとも1つよって形成されたウェル内に埋設され得る。
【0013】
[0013]本発明の各種実施形態は、以下の詳細な説明および添付の図面において開示される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】[0014]ナノポアベースの配列決定チップ内のセル100の一実施形態を示す図である。
図2】[0015]ナノ-SBS技術を用いてヌクレオチド配列決定を実行するセル200の一実施形態を示す図である。
図3】[0016]予め装填されたタグを用いたヌクレオチド配列決定を実行しようとしているセルの一実施形態を示す図である。
図4】[0017]予め装填されたタグを用いた核酸配列決定のためのプロセス400の一実施形態を示す図である。
図5】[0018]ナノポアベースの配列決定チップ内のセル500の一実施形態を示す図である。
図6】[0019]液体およびガスが、チップ表面上のセンサの上を通過し接触することを可能にする、シリコンチップを取り囲む流動室を有する、ナノポアベースの配列決定システム600の上面図である。
図7A】[0020]図7Aは蛇行型流体流路を有するナノポアベースの配列決定システム700のある実施形態の例示図である。
図7B図7Bはナノポアベースの配列決定システム700を形成するために共に積層される多様な構成要素を示す図である。
図8A】[0021]図8Aはフローセルと一体化され単一のシステムにされた複数のナノポアベースの配列決定チップを備える、マルチチップナノポアベースの配列決定システム800の一実施形態を示す図である。
図8B】[0022]図8Bはナノポアベースの配列決定チップを最初にフローセルに接合する一例の図である。
図9】[0023]複数のフローセルと一体化され単一のシステムにされた複数のナノポアベースの配列決定チップを備える、マルチチップナノポアベースの配列決定システム900の一実施形態を示す図である。
図10】[0024]フローセルと一体化され単一のシステムにされた複数のナノポアベースの配列決定チップを備える、マルチチップナノポアベースの配列決定システム1000の一実施形態を示す図である。
図11】[0025]複数のフローセルと一体化され単一のシステムにされた複数のナノポアベースの配列決定チップを備える、マルチチップナノポアベースの配列決定システム1100の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0026]本発明は、多数の方法で実装可能であり、多数の方法は、プロセス、装置、システム、組成物、コンピュータ可読記憶媒体上で具現化されるコンピュータプログラム製品、および/または、プロセッサ、例えばプロセッサに結合されたメモリに記憶されるおよび/またはメモリによって提供される命令を実行するように構成されたプロセッサを含む。本明細書では、これらの実施態様または本発明がとり得る他の任意の形は、技術と称されることがある。一般に、開示されたプロセスのステップの順序は、本発明の範囲内で変更されてもよい。別途記載されていない限り、タスクを実行するように構成されたものとして記載されるプロセッサまたはメモリのような構成要素は、そのタスクを所定の時間に実行するように一時的に構成される一般的な構成要素またはそのタスクを実行するために製造された特定の構成要素として実施されてもよい。本明細書において、「プロセッサ」という用語は、データ、例えばコンピュータプログラム命令を処理するように構成された1つまたは複数のデバイス、回路および/または処理コアを意味する。
【0016】
[0027]以下、本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細な説明が、本発明の原理を示す添付の図面とともに提供される。本発明は、この種の実施形態に関連して記載されているが、本発明は、任意の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定され、本発明は、多数の代替物、変更物および均等物を包含する。多数の具体的な詳細は、以下の説明に記載され、本発明の完全な理解を提供する。これらの詳細は、例のために提供され、本発明は、これらの具体的な詳細の一部または全部を用いずに特許請求の範囲に従って実施され得る。明確性のために、本発明に関連する技術分野において公知である技術的な資料は、本発明が不必要に不明瞭にならないように詳述されていない。
【0017】
[0028]内径が1ナノメートル程度のポアサイズを有するナノポア膜デバイスは、迅速なヌクレオチド配列決定において見込みを示してきた。電位が導電性流体に浸漬されたナノポア全体に印加されたとき、ナノポアを通過するイオンの伝導に起因するわずかなイオン電流が観察可能である。電流の量は、ポアサイズに影響される。
【0018】
[0029]ナノポアベースの配列決定チップは、核酸(例えば、DNA)配列決定のために用いられてもよい。ナノポアベースの配列決定チップは、アレイとして構成される多数のセンサセルを組み込む。例えば、100万個のセルのアレイは、1000行×1000列のセルを含み得る。
【0019】
[0030]図1は、ナノポアベースの配列決定チップ内のセル100の一実施形態を示す。膜102は、セルの表面にわたって形成される。いくつかの実施形態では、膜102は、脂質二重層である。可溶性タンパク質ナノポア膜貫通分子複合体(PNTMC)および対象の分析物を含むバルク電解質114は、セルの表面上に直接配置される。ある実施形態では、単一のPNTMC104は、電気穿孔法によって膜102内に挿入される。アレイ内の個々の膜は、化学的にも電気的にも互いに接続されていない。それゆえ、アレイ内の各セルは、独立した配列決定機械であり、PNTMCと結合した単一の重合体分子に固有のデータを生成する。PNTMC104は、分析物上で作用し、そうでなければ不透過性の二重層を介してイオン電流を調節する。
【0020】
[0031]図1を続けて参照すると、アナログ測定回路112は、電解質区域108によって覆われた金属電極110に接続されている。電解質区域108は、イオン不浸透性膜102によって、バルク電解質114から分離される。PNTMC104は、膜102を横切り、イオン電流がバルク液体から作用電極110へと流れるための唯一の経路を提供する。セルは、バルク電解質114と電気的に接している対電極(CE)116も含む。セルは、参照電極117も含み得る。
【0021】
[0032]いくつかの実施形態では、ナノポアアレイは、合成による単分子ナノポアベースの配列決定(ナノ-SBS)技術を用いる並行配列決定を可能にする。図2は、ナノ-SBS技術を用いてヌクレオチド配列決定を実行するセル200の一実施形態を示す。ナノ-SBS技術では、配列決定されるべき鋳型202およびプライマーは、セル200に導入される。この鋳型-プライマー複合体に対して、異なってタグ付けされた4つのヌクレ
オチド208は、バルク水相に添加される。正しくタグ付けされたヌクレオチドがポリメラーゼ204と複合体を形成すると、タグの尾部は、ナノポア206の筒内に位置決めされる。ナノポア206の筒内に保たれるタグは、固有のイオン遮断信号210を生成し、それにより、付加された塩基を、タグの異なる化学構造により電子的に同定する。
【0022】
[0033]図3は、予め装填されたタグを用いたヌクレオチド配列決定を実行しようとしているセルの一実施形態を示す。ナノポア301は、膜302内に形成される。酵素303(例えば、DNAポリメラーゼのようなポリメラーゼ)は、ナノポアと結合している。いくつかの場合では、ポリメラーゼ303は、ナノポア301に共有結合している。ポリメラーゼ303は、配列決定されるべき核酸分子304と結合している。いくつかの実施形態では、核酸分子304は環状である。いくつかの場合では、核酸分子304は線状である。いくつかの実施形態では、核酸プライマー305は、核酸分子304の一部にハイブリダイズしている。ポリメラーゼ303は、ヌクレオチド306のプライマー305上への、一本鎖核酸分子304を鋳型として用いる取込みを触媒する。ヌクレオチド306は、タグ種(「タグ」)307を備える。
【0023】
[0034]図4は、予め装填されたタグを用いた核酸配列決定のためのプロセス400の一実施形態を示す。段階Aは、図3において説明したような構成要素を示す。段階Cは、ナノポア内に装填されるタグを示す。「装填された」タグは、認識可能な長さの時間、例えば、0.1ミリ秒(ms)から10,000msの間、ナノポア内に位置決めされる、および/または、ナノポア内または近くに留まるタグでもよい。いくつかの場合では、予め装填されるタグは、ヌクレオチドから放出される前に、ナノポア内に装填される。いくつかの例では、タグが、ヌクレオチド組み込み事象の際に放出された後にナノポアを通過する(および/またはナノポアにより検出される)確率が適度に高い、例えば90%から99%である場合、タグは予め装填される。
【0024】
[0035]段階Aにおいて、タグ付けされたヌクレオチド(4つの異なるタイプ:A、T、GまたはCのうちの1つ)は、ポリメラーゼと結合していない。段階Bにおいて、タグ付けされたヌクレオチドは、ポリメラーゼと結合している。段階Cにおいて、ポリメラーゼは、ナノポアにドッキングする。タグは、ドッキングの間、電気的な力、例えば、膜および/またはナノポア全体に印加される電圧により生成される電界の存在下で生成される力によってナノポア内に引き込まれる。
【0025】
[0036]結合したタグ付けされたヌクレオチドのいくつかは、核酸分子と塩基対合しない。これらの塩基対合しなかったヌクレオチドは、典型的には、正しく対合したヌクレオチドがポリメラーゼと結合したままである時間スケールより短い時間スケール内で、ポリメラーゼによって拒絶される。対合しなかったヌクレオチドは、一時的にのみポリメラーゼと結合するので、図4に示すプロセス400は、典型的には、段階Dを越えて進行しない。例えば、対合しなかったヌクレオチドは、段階Bにおいて、または、プロセスが段階Cに入った少し後に、ポリメラーゼによって拒絶される。
【0026】
[0037]ポリメラーゼがナノポアにドッキングする前、ナノポアのコンダクタンスは、約300ピコジーメンス(300pS)である。段階Cにおいて、ナノポアのコンダクタンスは、約60pS、80pS、100pSまたは120pSであり、それぞれは、タグ付けされたヌクレオチドの4つのタイプのうちの1つに対応する。ポリメラーゼは、異性化およびリン酸基転移反応を経て、ヌクレオチドを成長している核酸分子内に組み込み、タグ分子を放出する。特に、タグがナノポア内に保たれるとき、固有のコンダクタンス信号(例えば、図2の信号210を参照)は、タグの異なる化学構造により生成され、それにより、付加された塩基を電子的に同定する。サイクル(すなわち、段階AからEまたは段階AからF)を繰り返すことにより、核酸分子の配列決定が可能になる。段階Dにおいて
、放出されたタグは、ナノポアを通過する。
【0027】
[0038]いくつかの場合では、図4の段階Fに見られるように、成長している核酸分子内に組み込まれていないタグ付けされたヌクレオチドも、ナノポアを通過することになる。組み込まれていないヌクレオチドは、いくつかの例では、ナノポアによって検出され得るが、その方法は、組み込まれたヌクレオチドと組み込まれなかったヌクレオチドとを、ヌクレオチドがナノポア内で検出される時間に少なくとも部分的に基づいて区別するための手段を提供する。組み込まれなかったヌクレオチドに結合したタグは、ナノポアを迅速に通過し、短期間(例えば、10ms未満)の間検出され、一方、組み込まれたヌクレオチドに結合したタグは、ナノポア内に装填され、長期間(例えば、少なくとも10ms)の間検出される。
【0028】
[0039]図5は、ナノポアベースの配列決定チップ内のセル500の一実施形態を示す。セル500は、2つの側壁および底部を有するウェル505を含む。ある実施形態では、各側壁は、誘電体層504を備え、底部は、作用電極502を備える。ある実施形態では、作用電極502は、上面および底面を有する。別の実施形態では、502の上面は、ウェル505の底部を構成し、一方、作用電極502の底面は、誘電体層501と接触している。別の実施形態では、誘電体層504は、誘電体層501の上にある。誘電体層504は、作用電極502が底部に配置されている、ウェル505を囲む側壁を形成する。本発明で使用するのに適した誘電体材料(例えば、誘電体層501または504)は、それだけには限らないが、磁器(セラミック)、ガラス、マイカ、プラスチック、酸化物、窒化物(シリコン一窒化物すなわちSiN)、シリコン酸窒化物、金属酸化物、金属窒化物、金属ケイ酸塩、遷移金属酸化物、遷移金属窒化物、遷移金属ケイ酸塩、金属酸窒化物、金属アルミン酸塩、ジルコニウムケイ酸塩、ジルコニウムアルミン酸塩、ハフニウム酸化物、絶縁材料(例えば、重合体、エポキシ、フォトレジスト、など)、またはそれらの組合せを含む。当業者には、本発明での使用に適切である他の誘電体材料を識別されよう。
【0029】
[0040]ある態様では、セル500は、1つまたは複数の疎水性層をさらに含む。図5に示すように、各誘電体層504は、上面を有する。ある実施形態では、各誘電体層504の上面は、疎水性層を備え得る。ある実施形態では、シラン処理は、誘電体層504の上面の上に疎水性層520を形成する。例えば、(i)6~20の炭素長鎖を含む(例えば、オクタデシル-トリクロロシラン、オクタデシル-トリメトキシシラン、またはオクタデシル-トリエトキシシラン)、(ii)ジメチルオクチルクロロシラン(DMOC)、あるいは(iii)有機官能性アルコキシシラン分子(例えば、ジメチルクロロ-オクトデシル-シラン、メチルジクロロ-オクトデシル-シラン、トリクロロ-オクトデシル-シラン、トリメチル-オクトデシル-シラン、またはトリエチル-オクトデシル-シラン、を含むシラン分子を有するシラン処理が、誘電体層504の上面に施され得る。ある実施形態では、疎水性層は、シラン処理された層またはシラン層である。ある実施形態では、シラン層は、1分子の厚さであり得る。ある態様では、誘電体層504は、膜の粘着に適した上面を備える(例えば、ナノポアを備える脂質二重層)。ある実施形態では、膜の粘着に適した上面は、本明細書で説明されるようなシラン分子を含む。いくつかの実施形態では、疎水性層520は、ナノメートル(nm)またはマイクロメートル(μm)スケールで提供される厚さを有する。他の実施形態では、疎水性層は、誘電体層504の全体または一部に沿って下方に延在し得る(その全体が引用することにより本明細書に組み込まれる、DavisらのU.S.20140034497も参照のこと)。
【0030】
[0041]別の態様では、ウェル505(誘電体層壁504によって形成される)は、作用電極502の上層の塩溶液区域506をさらに含む。全体に、本発明の方法は、浸透圧調節物質を含む溶液(例えば、塩溶液、塩緩衝溶液、電解質、電解液、またはバルク電解質)の使用を含む。本明細書で使用する場合、用語「浸透圧調節物質」は、溶液内に溶かされるとき、その溶液の浸透圧モル濃度を増大させる任意の可溶性化合物を示す。本発明では、浸透圧調節物質は、ナノポア配列決定システムの構造、例えば、本明細書で説明されるような塩溶液またはバルク電解質を収容するウェル、の内部の溶液内に可溶性を有する化合物である。したがって、本発明の浸透圧調節物質は、浸透性、詳細には脂質二重層を横切る浸透性に影響を及ぼす。本発明で使用される浸透圧調節物質は、それだけには限らないが、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、グルタミン酸リチウム、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、酢酸リチウム、ナトリウムアセテート、カリウムアセテート、塩化カルシウム(CaCl)、塩化ストロンチウム(SrCl)、塩化マンガン(MnCl)、および塩化マグネシウム(MgCl)などのイオン塩と、グリセロール、エリトリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マンニサイドマンニトール、グリコシルグリセロール、ブドウ糖、フルクトース、蔗糖、トレハロース、およびイソフルオロサイドなどの多価アルコールおよび糖と、デキストラン、レバン、およびポリエチレングリコールなどの重合体と、グリシン、アラニン、アルファ-アラニン、アルギニン、プロリン、タウリン、ベタイン、オクトピン、グルタミン酸塩、サルコシン、y-アミノ酪酸、およびトリメチルアミンN-オキシド(「TMAO」)などのいくつかのアミノ酸とそれらの誘導体とを含み得る(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、FisherらのU.S.20110053795をさらに参照のこと)。ある実施形態では、本発明は、浸透圧調節物質を含む溶液を利用し、浸透圧調節物質は、イオン性塩である。当業者には、本発明での使用に適切な浸透圧調節物質である他の化合物を識別されよう。別の態様では、本発明は、2つ以上の異なる浸透圧調節物質を含む溶液を提供する。
【0031】
[0042]本明細書で説明するナノポアベースの配列決定チップの構造は、1アトリットル~1ナノリットルの容量を有するウェル(例えば、図5)のアレイを備える。
【0032】
[0043]図5に示すように、膜は、誘電体層504の上面に形成され、ウェル505全体に及ぶ。例えば、膜は、疎水性層520の上面に形成された脂質単一層518を含む。膜がウェル505の開口に達したとき、脂質単一層は、ウェルの開口全体に及ぶ脂質二重層514に遷移する。脂質単一層518はまた、誘電体層504の垂直面(すなわち、側壁)の全体または一部に沿って延在してもよい。ある実施形態では、単一層518が沿って延在する垂直の表面504は、疎水性層を備える。タンパク質ナノポア膜貫通分子複合体(PNTMC)および対象の分析物を含むバルク電解質508は、ウェルの上に直接配置される。単一のPNTMC/ナノポア516は、脂質二重層514内に挿入される。ある実施形態では、二重層内への挿入は、電気穿孔法による。ナノポア516は、脂質二重層514を横切り、バルク電解質508から作用電極502へのイオン電流のための唯一の経路を提供する。
【0033】
[0044]セル500は、バルク電解質508に電気的に接する対電極(CE)510を含む。セル500は、参照電極512を任意選択で含み得る。いくつかの実施形態では、対電極510は、複数のセル間で共有され、それゆえ、共通電極とも称される。共通電極は、共通の電位を、測定セル内のナノポアと接触するバルク液体に印加するように構成可能である。共通の電位および共通電極は、測定セルの全てに共通である。
【0034】
[0045]いくつかの実施形態では、作用電極502は、金属電極である。非ファラデー性伝導のために、作用電極502は、腐食および酸化に耐性を示す、例えば、白金、金などの金属、チタン窒化物、およびグラファイトで形成され得る。例えば、作用電極502は、電気めっきを用いた白金電極であってもよい。例えば、作用電極502は、チタン窒化物(TiN)作用電極であってもよい。
【0035】
[0046]図5に示すように、ナノポア516は、ウェル505上に浮かべられた平面脂質
二重層514内に挿入される。電解液は、ウェル505の内側、すなわちトランス側(塩溶液506を参照のこと)、およびかなりさらに大きい外部貯蔵部522、すなわち、シス側(バルク電解質508を参照のこと)の両方に存在する。外部貯蔵部522内のバルク電解質508は、ナノポアベースの配列決定チップの複数のウェルの上にある。脂質二重層514は、ウェル505を覆って延在し、単一層が疎水性層520に付着されたところで脂質単一層518に遷移する。この形状は、電気的かつ物理的にウェル505を封止し、ウェルをより大きい外部貯蔵部から分離する。水および溶存ガスなどの中性分子は、脂質二重層514を通過し得るのに対して、イオンは通過し得ない。脂質二重層514内のナノポア516は、イオンが、ウェル505の内外に電導される単一の経路を提供する。
【0036】
[0047]核酸配列決定のために、ポリメラーゼがナノポア516に付着される。核酸の鋳型(例えば、DNA)は、ポリメラーゼによって保持される。例えば、ポリメラーゼは、鋳型に対して不足するものを補う溶液から六リン酸モノヌクレオチド(HMN)を取り込むことによって、DNAを合成する。固有で重合体のタグが、各HMNに取り付けられる。取込みの間、タグは、対電極510と作用電極502との間の電圧により生み出される電界の勾配の支援のもと、ナノポアに装填される。タグは、ナノポア516を部分的に閉塞し、ナノポア516を通過するイオン電流での測定可能な変化をもたらす。いくつかの実施形態では、交流(AC)バイアスまたは直流(DC)電圧が、電極間に印加される。
【0037】
[0048]ナノポアベースの配列決定チップを用いた核酸配列決定は、その中では異なるタイプの流体(例えば、液体またはガス)が流動室を介してナノポアベースの配列決定チップのセルを通り流されるステップを含む。著しく異なる特性(例えば、圧縮性、疎水性、および粘性)を有する複数の流体が、ナノポアベースの配列決定チップ表面上のセンサアレイの上を流される。改善された効率のために、アレイ内のセンサの各々は、流体へ安定した方法で露出させられなければならない。例えば、異なるタイプの流体の各々は、流体が、セル表面の各々を均一に覆い接触するようにチップへ送達され、次に、チップ外に送達され得るように、ナノポアベースの配列決定チップ上を流されなければならない。上述の通り、ナノポアベースの配列決定チップは、アレイとして構成される多数のセンサセルを組み込む。ナノポアベースの配列決定チップは、ますます多くのセルを含むために拡大されるので、チップのセル全体を異なるタイプの流体の均一な流れを達成することは、さらに難しくなる。
【0038】
[0049]いくつかの実施形態では、ナノポアベースの配列決定システムは、流体をチャネルの長さ方向に沿ったチップの異なるセンサ上を横切るように誘導する蛇行型流体流路を有する流動室を含む。流路は、図1のバルク電解質114または図5のバルク電解質508を収容するために用いられ得る。流路は、例えば、図5の外部貯蔵部522を形成するために用いられ得る。液体およびガスが、チップ表面上のセンサの上を通過しセンサと接触することを可能にする、シリコンチップを取り囲む流動室を有する、ナノポアベースの配列決定システム600の上面図である。流動室は、蛇行型または曲がりくねった流体流路608を備え、それにより、流体をセンサバンク606(各バンクが数千のセンサセルを含む)の1つの列(または1つの行)の直上をチップの一方の端部から反対の端部まで流れるように誘導し、次に、流体を繰り返し折り返して、全てのセンサバンクが、少なくとも1回横切られるまで、センサバンクの他の隣接した列の直上を流れるように誘導する。図6に示すように、システム600は、入口602および出口604を含む。
【0039】
[0050]図6を参照すると、流体は、入口602を通りシステム600内へと誘導される。流体の種類、流体の濃度、または流速は、流体システムを制御するプロセッサと、流体を入口の中へかつ出口の外へとポンピングする流体ポンプとを備える、流体システムによって選択され得る。入口602は、管または針であってもよい。例えば、管または針は、1ミリメートルの直径を有し得る。液体またはガスを直接、単一の連続した空間を有する広い流動室内へ給送する代わりに、入口602は、液体またはガスを蛇行型流体流路608内へと給送し、それにより、液体またはガスをセンサバンク606の単一の列の直上を流れるように誘導する。蛇行型流体流路608は、上板と、流動室を蛇行型流路になるように仕切る仕切610とを互いに積層してフローセルを形成し、次に、フローセルをチップの上に取り付けることによって、形成され得る。液体またはガス流れは、蛇行型流体流路608を通過し流れた後、液体またはガスは、出口604に至るまで導かれ、システム600の外に導かれる。
【0040】
[0051]システム600によって、流体が、チップ表面上の全てのセンサの上を、より均一に流れることが可能になる。流路幅は、十分狭く、毛細管現象が効果をあらわし得るように構成される。より詳細には、流体と取り囲む表面との間の表面張力(これは流体内の凝集によって生じる)および粘着力が、流体をまとめて保持する役割を果たし、それにより流体または気泡が崩壊しデッド領域が形成されることを防止する。例えば、流路は、1ミリメートルまたはそれより短い幅を有し得る。狭小な流路は、流体の制御された流動を可能にし、先行する流体またはガスの流動からの残余を最小化する。
【0041】
[0052]図7Aは、蛇行型流体流路を有するナノポアベースの配列決定システム700のある実施形態の例示を示す。図7Bは、ナノポアベースの配列決定システム700を形成するために共に積層される多様な構成要素を示す。システム700は、プリント配線基板701、ナノポアアレイチップ702、仕切り703を有するガスケット704、バッキングプレート707、バッキングプレート707の下側にある対電極706、対電極706に接続する可撓性フラット回路716、入口708、出口710、スプリングプレート712、および複数の締結具714を含む、多様な構成要素を備える。蛇行型流体流路は、バッキングプレート707、ガスケット704、およびナノポアアレイチップ702の間に形成される空間である。蛇行型流路は、バッキングプレート707と、ガスケット704とを互いに積層してフローセルを形成し、次に、フローセルをナノポアアレイチップ702の上に取り付けることによって、形成される。流路の追加の実施形態は、YuanのU.S.20160274082の中で見つけることができ、その全体が引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0042】
[0053]配列決定の処理能力を向上させるために、ナノポアベースの配列決定チップは、より多くのセル、数百万または数千万を超えるセルを備えるように拡大される必要がある。しかしながら、数百万のセルを備えるチップは、半導体産業のレチクルサイズによって許容される最大チップサイズに即時に到達し得る。ナノポアベースの配列決定チップの力ずくの半導体拡大は、いくつかの理由により達成可能でない可能性がある。図5に示すように、ウェル505は、作用電極502上の塩溶液区域506を含む。ウェル寸法は、配列決定処理が適切に動作するために、各ウェルがある一定量の塩溶液を保持する必要があるので、簡単に削減することができない。そのうえ、ウェル間の間隔は、空間の削減がセル間の混信を導き得るので、簡単に削減することができない。加えて、各セルは、簡単にサイズを縮小できないアナログ測定構成要素(例えば、アナログデジタル変換器(ADC))を備える。別の動機づけは、ナノポアベースの配列決定パッケージがより大量のセルを有することのコストを低減できることである。さらに別の目的は、システム内のセルの数が製品要件に基づいて変更されるときの設計サイクルを短縮し、コストを低減することである。したがって、ナノポアベースの配列決定システム/パッケージ内のセル数を増大させる改善された技術が所望されるであろう。
【0043】
[0054]本出願では、複数のナノポアベースの配列決定チップおよび単一のパッケージ内に統合された1つまたは複数のフローセルを備える、マルチチップナノポアベースの配列決定システムが、開示される。マルチチップナノポアベースの配列決定システムは、いく
つかの利点を有する。パッケージ内セル数の拡大は、半導体産業のレチクルサイズにより許容される最大のダイサイズ、最小ウェルサイズおよび間隔、ならびに異なるアナログ構成要素の最小サイズを含む、多くの要因によって制限されない。マルチチップナノポアベースの配列決定パッケージはまた、低い収量をもたらしかねないダイサイズの増大を伴わずに、セル数が拡大し得るので、さらに費用効果がある。設計サイクルは、パッケージ内のセル数を変更するために、シリコンプロセスまたは組立工程を再設計する必要がないため、著しく削減される。セル数は、単にシステム内に統合される基準寸法の設計単位の数を増大することで、増大させられ得る。例えば、各設計単位は、別々に組み立てられ得るタイルであり、タイルは、並べて組み立てられてもよい。短縮された設計サイクルのために、パッケージ当たりのセル数は、カスタマイズされ、より広い範囲の製品を比較的低コストで提供し得る。
【0044】
[0055]図8Aは、フローセルと一体化され単一のシステムにされた複数のナノポアベースの配列決定チップを備える、マルチチップナノポアベースの配列決定システム800の一実施形態を示す。図8Aは、マルチチップナノポアベースの配列決定システムの断面図を示す。システム800は、プリント配線基板(PCB)802、複数のナノポアベースの配列決定チップ804、およびフローセル806を備える。図8Aに示すように、システム800は、3つのナノポアベースの配列決定チップ804を備える。しかしながら、異なる数のナノポアベースの配列決定チップ804が、システム内の総セル数を増減させるために、システム800内に統合され得ることを認識されたい。
【0045】
[0056]各ナノポアベースの配列決定チップ804は、アレイとして構成される多くのセンサセルを組み込む。例えば、100万個のセルのアレイは、1000行×1000列のセルを含み得る。いくつかの実施形態では、各ナノポアベースの配列決定チップ804は、単一のウェハチップである。いくつかの実施形態では、各ナノポアベースの配列決定チップ804は、積層されたウェハチップである(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、TianのU.S.20150275287をさらに参照のこと)。異なる種類のチップの構成要素、例えば、アナログ、デジタル、およびメモリ構成要素が、積層ウェハナノポアベースの配列決定チップを形成するために垂直方向に積層された、2枚以上のウェハに区分され得る。例えば、各積層ウェハは、異なる種類の構成要素、例えば、アナログ構成要素のみ、またはデジタル構成要素のみを備える。デジタル構成要素とアナログ構成要素を異なるウェハに分離することの1つの利点は、アナログウェハまたはデジタルウェハよりも高価な混合信号ウェハをチップ上で不必要にすることであり、さらには、アナログおよびデジタルウェハが、異なる種類の技術で、例えば、アナログ設計は180nm技術、デジタル設計は28nm技術で個別に設計されることを可能になる。
【0046】
[0057]フローセル806は、異なる材料を用いて形成され得る。いくつかの実施形態では、フローセル806は、バッキングプレートとガスケットを共に積層することによって形成される。ガスケットは、プラスチックまたはゴムなどの、可撓性の、圧縮可能な、または柔軟な材料で成型され得る。バッキングプレート、ガスケット、およびチップ間の空間は、蛇行型流体流路808を形成する。この種のフローセルは、図6、7A、7Bで開示されており、可撓性材料成型フローセルと呼ぶ。いくつかの実施形態では、フローセル806は、ガラスなどの非可撓性材料で形成される。ガラスフローセルは、流体をチップ表面上のセンサの上を通過するように導き接触させ得る、複数の蛇行型流体流路808を備えるように成形される。
【0047】
[0058]プリント配線基板802は、ナノポアベースの配列決定チップ804からの熱を外へ伝熱する、複数の温熱金属ブロック814を備える。図8Aは、温熱金属ブロック814と、その対応するチップ804との間に隙間が存在することを示しているが、温熱金属ブロックは、実際にはチップと接触しており、それによりチップからの加熱除去を容易にしていることを認識されたい。プリント配線基板802は、複数の金属接続子816をさらに備える。センサ信号および他の情報は、セルから複数のシリコン貫通ビア810を介して、チップの底面へ伝送され得る。信号および情報は次に、さらにシステム800の外にはんだボール812および金属接続子816を通り伝送される。制御信号は、同様に外部プロセッサまたはコントローラから金属接続子816、はんだボール812、およびシリコン貫通ビア810を介してチップ内のセルへと伝送され得る。
【0048】
[0059]いくつかの実施形態では、複数のナノポアベースの配列決定チップ804は、まずフローセル806に接合され、次にそのチップとPCB802が接合され合体する。図8Bは、ナノポアベースの配列決定チップを最初にフローセルに接合する一例を示す。図8Bは、ナノポアベースの配列決定チップおよびフローセルの断面図を示す。フローセル806は、底部に位置している。なお、図8Bのフローセル806は、図8Aのフローセル806と比較して、上下反対に向いていることに留意されたい。複数のナノポアベースの配列決定チップも、上下反対に向いており、すなわち、セル(例えば、セル500)は上下反対に向いて、フローセル806に接合されている。チップ804がフローセル806に接合された後、チップとPCB802は次に、接合され合体する。最初にチップをフローセルに接合することの1つの利点は、フローセルが、チップとフローセルとの接合を容易にする平坦な接合表面を提供することである。ガラス材料を用いて形成されたフローセル806は、レーザ接合技術を用いてチップに接合され得る。いくつかの接合技術が、チップ上の回路へのまたは他の構成要素への損傷の原因となり得る、接合領域での多大な熱を発生させ得る。それゆえ、チップは、回路または他の構成要素を含まない接合面(例えば、チップの周縁部)を含むように設計される。
【0049】
[0060]システム800では、1つのフローセル806が、複数のナノポアベースの配列決定チップ804間で共有されている。システム内の全てのナノポアベースの配列決定チップ804のセンサ上を流動するように流体を導くために1つのフローセル806を使用する利点は、1つの入口、1つの出口、および1つの流体ポンプだけが、全体のシステムで必要とされ、それによりシステムの総コストが低減される。しかしながら、流体をチップ間の境界を横断して流動させることは、いくつかの課題を生み出す。流体がチップ間の境界を横断して蛇行型流体流路808を介して円滑に流動できることを保証するために、チップ804は、図8Aおよび8Bに示すように間に隙間を有せずに、互いに対して突き当てられなければならない。例えば、第2チップの側壁と隣接している第1のチップの側壁は、2つのチップの側壁が互いに対してぴったり突き当り得るように、一直線かつ平坦でなければならない。垂直ダイシング技術が、チップ側壁が垂直かつ平坦となるように、ナノポアベースの配列決定チップをウェハからダイシングするために使用され得る。例えば、プラズマエッチング装置が使用され得る。さらに、チップ間の境界は、気密で、液体通過を排除するように、密閉封止されなければならない。例えば、互いに隣接する2つのチップの側壁は、密閉封止されなければならない。いくつかの実施形態では、2つの隣接するチップの側壁は、クロムなどの密閉封止材料を堆積させることによって、密閉封止される。流体がチップ間の境界を横断して蛇行型流体流路808を介して円滑に流動できることを保証する別の方法は、上述したように、まずチップをフローセル806に接合し、次にそのチップとPCB802を接合し合体させることである。最初にチップをフローセルに接合することの1つの利点は、フローセルが平坦な接合表面を提供し、その結果チップは垂直方向に同一レベルで位置合せされ、これがチップ間境界の各々間の密閉封止の形成を支援し得る。
【0050】
[0061]図9は、複数のフローセルと一体化され単一のシステムにされた複数のナノポアベースの配列決定チップを備える、マルチチップナノポアベースの配列決定システム900の一実施形態を示す。図9は、マルチチップナノポアベースの配列決定システムの断面図を示す。システム900は、プリント配線基板(PCB)902、複数のナノポアベースの配列決定チップ904、および複数のフローセル906を備える。図9に示すように、システム900は、3つのナノポアベースの配列決定チップ904を備える。しかしながら、異なる数のナノポアベースの配列決定チップ904が、システム内の総セル数を増減させるために、システム900内に統合され得ることを認識されたい。
【0051】
[0062]いくつかの実施形態では、各ナノポアベースの配列決定チップ904は、単一のウェハチップである。いくつかの実施形態では、各ナノポアベースの配列決定チップ904は、積層ウェハチップである。複数のフローセル906は、システム800内で示したような可撓性材料成型フローセルまたはガラスフローセルと同様の種類であり得るが、流体をシステム内の全てのチップのセンサ上に流動させるように導く単一のフローセルを有する代わりに、システム900は、チップ904毎に1つのフローセル906を備え、各フローセル906は、それ自体の入口、出口、および流体ポンプを有する。各フローセル906は、流体をシステム内の単一のナノポアベースの配列決定チップ904のセンサの上を流動するように導く複数の流体流路908を備える。
【0052】
[0063]プリント配線基板902は、ナノポアベースの配列決定チップ904からの熱を外へ伝熱する、複数の温熱金属プレート914を備える。別法として、プリント配線基板902は、チップからの熱を外へ伝熱する、例えばシステム800で示した温熱金属ブロックの種類の、複数の温熱金属ブロック(図9に図示せず)を備えてもよい。プリント配線基板902は、制御またはセンサ信号および他の情報を伝送する、複数の金属接続子916をさらに備える。センサ信号および他の情報は、セルから複数のボンディングワイヤ912を介して、金属接続子916へ伝送され得る。信号および情報は次に、さらに金属接続子916を通り、PCB902の底面およびシステム900の外へ伝送される。制御信号は、同様に外部プロセッサまたはコントローラから金属接続子916、およびボンディングワイヤ912を介してチップ内のセルへと伝送され得る。
【0053】
[0064]いくつかの実施形態では、複数のナノポアベースの配列決定チップ904は、まずPCB902に接合される。チップ904がPCB902に接合された後、ボンディングワイヤ912が、チップ904をPCB902の金属接続子916に電気的に接続するために使用される。チップ904によって占有されるPCB上の空間を最小化するために、チップは互いに近接して配置される。チップが近接して配置されて、ボンディングワイヤ技術は、上方へ弧を描き、互いに近接して配置されるボンディングワイヤ912を配置するように使用され、一方でボンディングワイヤは互いに接触しないように維持される。
【0054】
[0065]ボンディングワイヤ912は、封止層910によって保護され被覆される。封止層910は、エポキシなどの異なる材料を用いて形成されてもよい。いくつかの実施形態では、フローセル906は、封止層910に堆積される前にチップ904に接合される。フローセル906を封止層910の前に配置する利点は、フローセル906が、封止材料がチップの構成要素上へと堆積することを予防する堰として機能し得ることである。いくつかの封止工程は、高温工程であり、それによって可撓性材料成型フローセルが溶ける結果をもたらし得る。この場合、高温に耐え得る材料、例えば、ガラスを用いて形成されたフローセルだけが使用され得る。いくつかの封止工程は、高温プロセスではない。この場合、可撓性材料成型フローセルまたはガラスフローセルの両方が使用され得る。いくつかの実施形態では、封止工程が高温工程であり、可撓性材料成型フローセルが使用される。高温がこの種のフローセルを損傷し得るので、最初に封止層が堆積され、次にフローセルが、フローセル上面に下向きの圧力を印加することによって、チップ上面に固定される。
【0055】
[0066]フローセル906をチップ904に接合するいくつかの接合技術が、チップ上の回路へのまたは他の構成要素への損傷の原因となり得る、接合領域での多大な熱を発生させ得る。それゆえ、チップ904は、回路または他の構成要素を含まない接合面(例えば
、チップの周縁部)を含むように設計される。
【0056】
[0067]図10は、フローセルと一体化され単一のシステムにされた複数のナノポアベースの配列決定チップを備える、マルチチップナノポアベースの配列決定システム1000の一実施形態を示す。図10は、マルチチップナノポアベースの配列決定システムの断面図を示す。システム1000は、プリント配線基板(PCB)1002、複数のナノポアベースの配列決定チップ1004、およびフローセル1006を備える。図10に示すように、システム1000は、3つのナノポアベースの配列決定チップ1004を備える。しかしながら、異なる数のナノポアベースの配列決定チップ1004が、システム内の総セル数を増減させるために、システム1000内に統合され得ることを認識されたい。
【0057】
[0068]プリント配線基板1002は、ナノポアベースの配列決定チップ1004からの熱を外へ伝熱する、複数の温熱金属プレート1014を備える。別法として、プリント配線基板1002は、チップからの熱を外へ伝熱する、例えばシステム800で示した温熱金属ブロックの種類の、複数の温熱金属ブロック(図10に図示せず)を備えてもよい。プリント配線基板1002は、制御またはセンサ信号および他の情報を伝送する、複数の金属接続子1016をさらに備える。信号および情報は、チップのセルから金属接続子1016を通り、PCB1002の底面およびシステム1000の外へ伝送される。制御信号は、同様に外部プロセッサまたはコントローラから金属接続子1016を介してチップ内のセルへと伝送され得る。
【0058】
[0069]いくつかの実施形態では、各ナノポアベースの配列決定チップ1004は、単一のウェハチップである。いくつかの実施形態では、各ナノポアベースの配列決定チップ1004は、積層ウェハチップである。ナノポアベースの配列決定チップ1004は、プリント配線基板1002内に埋設される。チップ1004がPCB1002内に埋設されることの利点の1つは、チップをPCB1002の金属接続子1016と接続するボンディングワイヤ(例えば、システム900で使用されていたもの)が必要とされず、PCB1002およびチップ1004の上面に平坦に置くことが可能である金属接続子1016の一部分によって置き換えられ、それにより垂直方向の空間を節約し、全体のシステムに単一のフローセルを使用することを可能にし得るということである。システム内の全てのナノポアベースの配列決定チップ1004のセンサ上を流動するように流体を導くために1つのフローセル1006を使用する利点は、1つの入口、1つの出口、および1つの流体ポンプだけが、全体のシステムで必要とされ、それによりシステムの総コストが低減される。
【0059】
[0070]フローセル1006は、異なる材料を用いて形成され得る。いくつかの実施形態では、フローセル1006は、ガラスなどの非可撓性材料で形成される。ガラスフローセル1006は、流体をチップ表面上のセンサの上を通過するように導き接触させ得る、空洞1008または複数の流体流路(図10に図示せず)を備えるように成形される。単一の大きな空洞を有するフローセルは、複数の流体流路を有するフローセルとは対照的に、フローセル設計とシステムの他の部分との統合を簡素化する利点を有する。チップ1004およびPCB1002の上面に露出される金属接続子1016の一部分は、封止層1010によって被覆され、その結果それらはフローセル1006内の流動から保護される。封止層1010は、エポキシなどの異なる材料を用いて形成されてもよい。金属接続子1016を封止することは、金属接続子がシステム900でのボンディングワイヤよりも平坦な表面をもたらすので、より良好に制御に制御され得る。
【0060】
[0071]いくつかの実施形態では、フローセル1006は、バッキングプレートとガスケットを共に積層することによって形成される。ガスケットは、プラスチックまたはゴムなどの、可撓性の、圧縮可能な、または柔軟な材料で成型され得る。バッキングプレート、ガスケット、およびチップ間の空間は、空洞1008または複数の流体流路(図10に図示せず)を形成する。いくつかの実施形態では、封止層1010は、別々に堆積される層、例えば、エポキシ層ではなく、ガスケットの一部分である。
【0061】
[0072]フローセル1006は、ナノポアベースの配列決定チップ1004ではなくPCB1002の上面に配置される。可撓性材料を用いて形成されたフローセルでは、フローセルは、フローセルの上面への下向きの圧力を印加することによって、PCB1002の上面に固定される。非可撓性材料を用いて形成されたフローセルでは、フローセルは、レーザ接合技術を用いてPCB1002に接合され得る。いくつかの接合技術は、接合領域での多大な熱を発生させ得る。フローセル1006は、PCB1002に接合され、チップ1004には接合されないので、接合工程は、チップ1004を損傷しないことになり、チップはもはや接合面を用意しておく必要がなく、回路または他の構成要素備えないので、チップ表面領域の相当量を節約することになる。
【0062】
[0073]図11は、複数のフローセルと一体化され単一のシステムにされた複数のナノポアベースの配列決定チップを備える、マルチチップナノポアベースの配列決定システム1100の一実施形態を示す。図11は、マルチチップナノポアベースの配列決定システムの断面図を示す。システム1100は、プリント配線基板(PCB)1102、複数のナノポアベースの配列決定チップ1104、および複数のフローセル1106を備える。図11に示すように、システム1100は、3つのナノポアベースの配列決定チップ1104を備える。しかしながら、異なる数のナノポアベースの配列決定チップ1104が、システム内の総セル数を増減させるために、システム1100内に統合され得ることを認識されたい。
【0063】
[0074]いくつかの実施形態では、各ナノポアベースの配列決定チップ1104は、単一のウェハチップである。いくつかの実施形態では、各ナノポアベースの配列決定チップ1104は、積層ウェハチップである。図11に示すように、ナノポアベースの配列決定チップ1104は、底部に、プリント配線基板1102の下方に位置する。利点は、チップ1104が、チップ804からの熱を外へ伝熱する、複数の温熱金属ブロック(図11に図示せず)を用いて、下方から非直接的に接触し、そのことがシステムのより良好な温度制御をもたらし得ることである。
【0064】
[0075]複数のフローセル1106は、システム800内で示したような可撓性材料成型フローセルまたはガラスフローセルと同様の種類であり得るが、流体をシステム内の全てのチップのセンサ上に流動させるように導く単一のフローセルを有する代わりに、システム1100は、チップ1104毎に1つのフローセル1106を備え、各フローセル1106は、それ自体の入口、出口、および流体ポンプを有する。各フローセル1106は、流体をシステム内の単一のナノポアベースの配列決定チップ1104のセンサの上を流動するように導く複数の流体流路1108を備える。
【0065】
[0076]プリント配線基板1102は、複数の空洞1114を備える。システムを組み立てるために、ナノポアベースの配列決定チップ1104の各々は、センサを上方向へ向け表を上にして、すなわち、ウェル(例えば、図5のウェル505)側を上にして、配置される。PCB1102は、チップ1104上のセンサアレイが複数の空洞1114によって露出されるように、チップ1104上に配置される。チップ1104が空洞1114の2つの開口のうちの1つに載せられることで、チップ1104は、空洞1114と共にPCB1102内のウェルを形成する。フローセル1106が次に、ウェル内に埋設され、フローセルの流体流路1108が流体をチップ1104のセンサ上を流動するように導き得るように、チップ1104に接合される。加えて、はんだボール1112が、チップ1104とPCB1102の間の接触を提供する。
【0066】
[0077]本出願で開示されるマルチチップナノポアベースの配列決定システムは、収量と削減された無駄な接合チップ領域との間のトレードオフに基づいて、最適なチップサイズを決定することによって、さらに最適化され得る。ナノポアベースの配列決定チップが大き過ぎる場合、そのときは、半導体製造によりチップ収量は減少し、それによりシリコンチップコストが増大する。ナノポアベースの配列決定チップが小さ過ぎる場合、そのときは、ボンディングワイヤおよびフローセルによって用いられるチップ領域の割合が増大し、それによりシリコンチップコストが増大する。一連の、チップ収量モデル、ならびにボンディングワイヤおよびフローセル設計ルールが与えられることで、チップサイズは、最も低いチップコストに最適化され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11