(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】含硫化合物およびこれを用いた香味付与組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 327/06 20060101AFI20240826BHJP
C07C 327/22 20060101ALI20240826BHJP
C07D 307/38 20060101ALI20240826BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20240826BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240826BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20240826BHJP
A23L 2/00 20060101ALN20240826BHJP
A23L 2/42 20060101ALN20240826BHJP
A23F 5/24 20060101ALN20240826BHJP
A23L 2/38 20210101ALN20240826BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20240826BHJP
A23G 9/32 20060101ALN20240826BHJP
A23G 1/32 20060101ALN20240826BHJP
A23L 2/02 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
C07C327/06 CSP
C07C327/22
C07D307/38
C11B9/00 T
A23L27/00 C
A23L27/20 D
A23L27/20 E
A23L27/20 G
A23L2/00 B
A23L2/42 101
A23F5/24
A23L2/00 Z
A23L2/38 L
A23L23/00
A23G9/32
A23G1/32
A23L2/02 A
(21)【出願番号】P 2022096144
(22)【出願日】2022-06-15
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2021110272
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 宗隆
(72)【発明者】
【氏名】川口 賢二
(72)【発明者】
【氏名】野澤 俊文
(72)【発明者】
【氏名】中西 啓
(72)【発明者】
【氏名】冨田 健介
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-015685(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087580(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C11B
C07D
A23L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
[式(1)中、nは0~2の整数を表し、R
1は水素原子または炭素数が1~9の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、R
2は水素原子、炭素数が1~5の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、炭素数が2~5の直鎖もしくは分岐鎖アルケニル基、フルフリル基またはp-メンタ-1-エン-8-イル基であり、R
3は水素原子またはメチル基である。]
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含む香味付与組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物または請求項2に記載の香味付与組成物を含む消費財。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物または請求項2に記載の香味付与組成物を他の香味付与組成物に添加する工程を含む、香味付与組成物の香味付与方法。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物または請求項2に記載の香味付与組成物を消費財に添加する工程を含む、消費財の香味付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含硫化合物、香味付与組成物および消費財、ならびに、香味付与組成物の香味付与方法および消費財の香味付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食品、香粧品、医薬品、保健衛生品など様々な物品(以下、消費財という場合がある。)に対する消費者の要求は、その消費財の香気にも及んでいる。例えば、飲食品の原料素材の一つである香料についても、従来から提案されている香料化合物だけでは十分には対応しきれず、従来にないユニークな香気・香味特性を有し、香気・香味特性だけでなく、それらの持続性に優れた香料組成物の開発が課題となっている。香粧品についても、消費者の嗜好性が多様化してきていることに伴い、各種各様の香粧品の開発が望まれている。
【0003】
これまで、香気改善のための提案がいくつか行われている。例えば、特許文献1には、含硫化合物の一つであるチオ酢酸エチルおよび/またはチオ酪酸メチル等を含む乳系香料組成物が、天然感にあふれ嗜好性の高い乳または乳製品様の香味を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者の検討によれば、特許文献1に記載の含硫化合物は、揮発しやすい化合物であり、持続性に乏しく添加対象が限られる等の問題があった。そのため、消費財に広く適用できる新規な含硫化合物の開発、ならびに、これを用いた新規な香味付与組成物および消費財の開発が期待されている。
【0006】
以上より、本発明の目的は、新規な含硫化合物、香味付与組成物および消費財、ならびに、香味付与組成物の香味付与方法、消費財の香味付与方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、以下で説明する新規含硫化合物が、発酵乳様、加熱乳様、油脂感、脂肪感、ミルク感、焙煎感、クリーム感などの香気特性を有すると共に、当該含硫化合物自体または当該含硫化合物を含有する香味付与組成物を消費財に添加することにより、香味を付与、改善または増強できることを見出し、本願に係る発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0009】
[1] 下記式(1)で表される含硫化合物。
【0010】
【0011】
[式(1)中、nは0~2の整数を表し、R1は水素原子または炭素数が1~9の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、R2は水素原子、炭素数が1~5の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、炭素数が2~5の直鎖もしくは分岐鎖アルケニル基、フルフリル基またはp-メンタ-1-エン-8-イル基であり、R3は水素原子またはメチル基である。]
[2] [1]に記載の含硫化合物を含む香味付与組成物。
[3] [1]に記載の含硫化合物または[2]に記載の香味付与組成物を含む消費財。
[4] [1]に記載の含硫化合物または[2]に記載の香味付与組成物を他の香味付与組成物に添加する工程を含む、香味付与組成物の香味付与方法。
[5] [1]に記載の含硫化合物または[2]に記載の香味付与組成物を消費財に添加する工程を含む、消費財の香味付与方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新規な含硫化合物、香味付与組成物および消費財、ならびに、香味付与組成物の香味付与方法および消費財の香味付与方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。本明細書において、「~」は下限値および上限値を含む範囲を意味し、「濃度(ppm、ppb、ppt)」、「%」は特に断りのない限りそれぞれ「質量濃度」、「質量パーセント濃度」を表すものとする。また、本明細書において、「香味」とは、香気(香り)によって変化し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚および/または味覚を含む感覚を意味する。本明細書において、用語「香味付与(香味を付与する)」には、香味を新たに加える、および/または、香味を増強することを含み、香味を付与乃至増強した結果、香味が改善されるものをも含んでいる。さらには、用語「香味付与(香味を付与する)」には、香味付与の結果、嗅覚および/または味覚以外の感覚、例えば、冷感、温感、質感(のど越し、固さ、粘度など、テクスチャともいう)、炭酸や辛さなどの刺激感などを増強、抑制、または改善するものも含んでいる。また、本明細書において、飲食品の香味を風味と呼ぶこともある。また、本明細書において、「添加」とは、ある対象に噴霧、滴下などによって単に加えること、およびある対象と混ぜ合わせることの、少なくとも1つを含む。
【0014】
(化合物)
本発明の一実施の形態に係る化合物(以下、本件化合物という場合がある。)は、下記式(1)で表される化合物である。
【0015】
【0016】
[式(1)中、nは0~2の整数を表し、R1は水素原子(H)または炭素数が1~9の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、R2は水素原子(H)、炭素数が1~5の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、炭素数が2~5の直鎖もしくは分岐鎖アルケニル基、フルフリル基またはp-メンタ-1-エン-8-イル基であり、R3は水素原子またはメチル基である。]
【0017】
本件化合物の例として、以下の式(2)で表される5-ホルミルオキシヘキサンチオS-酸(5-formyloxyhexanethioic S-acid;n=1,R1がメチル基,R2が水素原子(H),R3が水素原子(H)であるもの、式(3)で表される5-ホルミルオキシデカンチオS-酸(5-formyloxydecanethioic S-acid;n=1,R1がペンチル基,R2が水素原子(H),R3が水素原子(H)であるもの)、式(4)で表される4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-メチル(S-methyl 4-formyloxybutanethioate;n=0,R1が水素原子(H),R2がメチル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(5)で表される5-ホルミルオキシペンタンチオ酸S-メチル(S-methyl 5-formyloxypentanethioate;n=1,R1が水素原子(H),R2がメチル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(6)で表される4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-ブタン-2-イル(S-butan-2-yl 4-formyloxybutanethioate;n=0,R1が水素原子(H),R2がブタン-2-イル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(7)で表される4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-2-メチルブタ-3-エン-2-イル(S-2-methylbut-3-en-2-yl 4-formyloxybutanethioate;n=0,R1が水素原子(H),R2が2-メチルブタ-3-エン-2-イル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(8)で表される4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-3-メチルブタ-3-エン-1-イル(S-3-methylbut-3-en-1-yl 4-formyloxybutanethioate;n=0,R1が水素原子(H),R2が3-メチルブタ-3-エン-1-イル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(9)で表される4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-フルフリル(S-furfuryl 4-formyloxybutanethioate;n=0,R1が水素原子(H),R2がフルフリル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(10)で表される5-ホルミルオキシペンタンチオ酸S-フルフリル(S-furfuryl 5-formyloxypentanethioate;n=1,R1が水素原子(H),R2がフルフリル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(11)で表される5-ホルミルオキシヘキサンチオ酸S-フルフリル(S-furfuryl 5-formyloxyhexanethioate;n=1,R1がメチル基,R2がフルフリル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(12)で表される4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-p-メンタ-1-エン-8-イル(S-p-menth-1-en-8-yl 4-formyloxybutanethioate;n=0,R1が水素原子(H),R2がp-メンタ-1-エン-8-イル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(13)で表される4-ホルミルオキシドデカンチオ酸S-ブタン-2-イル(S-butan-2-yl 4-formyloxydodecanethioate;n=0,R1がオクチル基,R2がブタン-2-イル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(14)で表される5-ホルミルオキシテトラデカンチオ酸S-ブタン-2-イル(S-butan-2-yl 5-formyloxytetradecanethioate;n=1,R1がノニル基,R2がブタン-2-イル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(15)で表される4-アセトキシブタンチオ酸S-ブタン-2-イル(S-butan-2-yl 4-acetoxybutanethioate;n=0,R1が水素原子(H),R2がブタン-2-イル基,R3がメチル基であるもの)、式(16)で表される4-ホルミルオキシドデカンチオ酸S-フルフリル(S-furfuryl 4-formyloxydodecanethioate;n=0,R1がオクチル基,R2がフルフリル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(17)で表される5-ホルミルオキシテトラデカンチオ酸S-フルフリル(S-furfuryl 5-formyloxytetradecanethioate;n=1,R1がノニル基,R2がフルフリル基,R3が水素原子(H)であるもの)、式(18)で表される4-アセトキシブタンチオ酸S-フルフリル(S-furfuryl 4-acetoxybutanethioate;n=0,R1が水素原子(H),R2がフルフリル基,R3がメチル基であるもの)、式(19)で表される6-ホルミルオキシヘキサンチオS-酸(6-formyloxyhexanethioic S-acid;n=2,R1が水素原子(H),R2が水素原子(H),R3が水素原子(H)であるもの)、式(20)で表される6-アセトキシヘキサンチオS-酸(6-acetoxyhexanethioic S-acid;n=2,R1が水素原子(H),R2が水素原子(H),R3がメチル基であるもの)を挙げることができる。なお、アセトキシ基(acetoxy group)はアセチルオキシ基(acetyloxy group)とも呼ばれるが、本明細書においては「アセトキシ基」で統一する。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
本件化合物は、例えば、以下に示す反応経路に従って得ることができる。
【0038】
<第1工程>
【0039】
【0040】
[式(13)中、nは0~2の整数を表し、R1は水素原子(H)または炭素数が1~9の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、R3は水素原子(H)またはメチル基である。]
【0041】
式(13)に示す第1工程は、γ-ラクトン(n=0)、δ-ラクトン(n=1)またはε-ラクトン(n=2)に対して、ギ酸ベンジル(R3が水素原子(H))または酢酸ベンジル(R3がメチル基)を反応させ、分子内エステル結合を開環し、ホルミルオキシアルカン酸のベンジルエステル(R3が水素原子(H))またはアセトキシアルカン酸のベンジルエステル(R3がメチル基)を得る。
【0042】
<第2工程>
【0043】
【0044】
[式(14)中、nは0~2の整数を表し、R1は水素原子(H)または炭素数が1~9の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、R3は水素原子またはメチル基である。]
式(14)に示す第2工程は、第1工程で得られたホルミルオキシアルカン酸のベンジルエステル(R3が水素原子(H))またはアセトキシアルカン酸のベンジルエステル(R3がメチル基)に対して、炭素に担持されたパラジウム(Pd)触媒(以下「炭素担持パラジウム触媒」という。)を用いて水素ガスを反応させ、ホルミルオキシアルカン酸(R3が水素原子(H))またはアセトキシアルカン酸(R3がメチル基)を得る。
【0045】
<第3工程>
【0046】
【0047】
[式(15)中、nは0~2の整数を表し、R1は水素原子(H)または炭素数が1~9の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、R3は水素原子またはメチル基であり、R4は炭素数が1~6の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基である。]
【0048】
式(15)に示す第3工程は、第2工程で得られたホルミルオキシアルカン酸(R3が水素原子(H))またはアセトキシアルカン酸(R3がメチル基)に対して、ハロゲン化アシルを反応させ、ホルミルオキシアルカン酸無水物(R3が水素原子(H))またはアセトキシアルカン酸無水物(R3がメチル基)を得る。
【0049】
<第4工程>
【0050】
【0051】
[式(16)中、nは0~2の整数を表し、R1は水素原子(H)または炭素数が1~9の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、R2は水素原子(H)、炭素数が1~5の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、炭素数が2~5の直鎖もしくは分岐鎖アルケニル基、フルフリル基またはp-メンタ-1-エン-8-イル基であり、R3は水素原子またはメチル基であり、R4は炭素数が1~6の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基である。]
【0052】
式(16)に示す第4工程は、第3工程で得られたホルミルオキシアルカン酸無水物に対して、硫化水素もしくは硫化水素ナトリウム(R2が水素原子(H))、または、チオールもしくはナトリウムチオラート(ナトリウムスルフィド)(R2が水素原子(H)以外)を反応させ、本件化合物であるホルミルオキシアルカンチオ酸(R2が水素原子(H)、R3が水素原子(H))、ホルミルオキシアルカンチオ酸エステル(R2が水素原子(H)以外、R3が水素原子(H))、アセトキシアルカンチオ酸(R2が水素原子(H)、R3がメチル基)またはアセトキシアルカンチオ酸エステル(R2が水素原子(H)以外、R3がメチル基)を得る。
【0053】
以上の合成方法により得られた本件化合物は、さらに必要に応じてカラムクロマトグラフィまたは減圧蒸留などの手段を用いて精製してもよい。
【0054】
後述の実施例に示すように、本件化合物は、硫黄様、卵様、肉様、ガス様、バジル様、トロピカル様、ロースト香、焦げ様、ネギ様、シトラス様、パッションフルーツ様の香気などに代表される特徴的な香気を呈する。
【0055】
また、本件化合物はそれ自身特徴的な香気を有するが、経時変化によりラクトンを生成することがあるため、ラクトンおよび対応する含硫化合物のプレカーサーとしての用途も有する。
【0056】
(香味付与組成物)
本発明の一実施の形態に係る香味付与組成物(以下、本件香味付与組成物という場合がある。)は、本件化合物を所定量含有する。
【0057】
本発明者らは、本件化合物を所定量含む本件香味付与組成物が、後述の実施例にその一例を示すように、各種物品に添加することで優れた香味付与効果を奏することを見出した。すなわち、本件香味付与組成物は、添加対象の各種物品に乳(乳製品)のフレッシュ感および/またはコク感;柑橘類のフレッシュ感、ピール感および/または果汁感;柑橘類以外のフルーツの果肉感および/または完熟感;ビール風味のさわやかな苦い香味および/または麦芽の香ばしさ;各種嗜好飲料の挽きたて感、淹れたて感および/またはロースト感;スープの香ばしさおよび/またはコク感;焼き菓子の香ばしさ、コク感、ロースト感および/または焼き立て感;香粧品の各香調のフレッシュ感などを付与することができる。
【0058】
本件香味付与組成物は、本件化合物のみで構成してもよいし、本件化合物を所定量含んでいればそれ以外の成分を含んでいてもよい。例えば、本件香味付与組成物が本件化合物以外の成分として溶媒および/または他の香気成分を含む場合、本件香味付与組成物自体を香料組成物として使用することもできる。当該香味付与組成物中の本件化合物の濃度は、香味付与組成物の添加対象や香気特性に応じて任意に決定できる。
【0059】
本件香味付与組成物の添加対象の物品としては特に限定されないが、他の香味付与組成物または消費財(飲食品、香粧品、医薬品もしくは保健衛生品など)を例示できる。さらに、本件香味付与組成物は、他の香味付与組成物の例として、各種香料組成物に添加して、当該香料組成物に香味を付与し当該香料組成物の香味を改善することもできる。
【0060】
本件香味付与組成物中の本件化合物の濃度は、香味付与組成物の添加対象に応じて任意に決定できる。本件化合物の濃度の例として、香味付与組成物の全体質量に対して、1ppb(0.001ppm)~100%、好ましくは100ppb(0.1ppm)~1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%、1%、10%のいずれかとし、上限値を100%、10%、1%、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0061】
(香料組成物)
本発明の一実施の形態に係る香料組成物(以下、本件香料組成物という場合がある。)は、本件香味付与組成物の一態様であり、本件化合物を所定量含有し、着香を目的として各種物品に添加することができる。本件香料組成物は、各種物品に添加することでその物品に香味を付与することができる。より具体的には、本件香料組成物は、添加対象の各種物品に乳(乳製品)のフレッシュ感および/またはコク感;柑橘類のフレッシュ感、ピール感および/または果汁感;柑橘類以外のフルーツの果肉感および/または完熟感;ビール風味のさわやかな苦い香味および/または麦芽の香ばしさ;各種嗜好飲料の挽きたて感、淹れたて感および/またはロースト感;スープの香ばしさおよび/またはコク感;焼き菓子の香ばしさ、コク感、ロースト感および/または焼き立て感;香粧品の各香調のフレッシュ感などを付与することができる。本件香料組成物の具体例としては、飲食品用香料組成物(フレーバー組成物ともいう)、香粧品用香料組成物(フレグランス組成物ともいう)が挙げられる。添加対象となる物品の例としては、上述のように、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などの消費財が挙げられる。本件香料組成物の形態は特に限定されず、水溶性香料組成物、油溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が例示できる。
【0062】
本件香料組成物中の本件化合物の濃度は、香料組成物の添加対象に応じて任意に決定でき、前述の本件香味付与組成物と同様、有効成分である本件化合物の濃度を基準として添加量を調整すればよい。本件化合物の濃度の例として、香料組成物の全体質量に対して、1ppb(0.001ppm)~100%、好ましくは100ppb(0.1ppm)~1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%、1%、10%のいずれかとし、上限値を100%、10%、1%、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。なお、香料組成物の処方や香調にも依存するが、香料組成物中の本件化合物の濃度を100ppb~1%とすると、添加効果が感じられ、かつ、本件化合物由来の香りが過度に突出しないため好ましい。ただし、本件化合物は、添加対象の香料組成物の香調などによっては前記下限値を下回る濃度または前記上限値を上回る濃度で添加してもよい。
【0063】
また、本件香料組成物は、本件化合物に加えて、さらに他の任意の化合物または成分を含有し得る。
【0064】
そのような化合物または成分の例として、各種類の香料化合物または香料組成物、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、植物エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤などを例示することができる。例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、平成12年1月14日発行」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)、および「合成香料 化学と商品知識」(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。
【0065】
合成香料化合物の具体例として、炭化水素化合物としては、α-ピネン、β-ピネン、γ-テルピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5-ウンデカトリエンなどが挙げられる。
【0066】
アルコール化合物としては、ブタノール、ペンタノール、3-オクタノール、ヘキサノールなどの飽和アルコール、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、プレノール、2,6-ノナジエノールなどの不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、α-ターピネオール、テルピネン-4-オール、ボルネオールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
【0067】
アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、デカナールなどの飽和アルデヒド、(E)-2-ヘキセナール、2,4-オクタジエナールなどの不飽和アルデヒド、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、シトラール、ミルテナール、ペリルアルデヒドなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、p-トリルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
【0068】
ケトン化合物としては、2-ヘプタノン、2-ウンデカノン、1-オクテン-3-オン、アセトイン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン(メチルヘプテノン)などの飽和および不飽和ケトン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンなどのジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α-イオノン、β-イオノン、β-ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
【0069】
フランまたはエーテル化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピラン、エストラゴール、オイゲノール、1,8-シネオールなどが挙げられる。
【0070】
エステル化合物としては、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸オクチル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸イソアミル、2-メチル酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、イソ酪酸2-メチルブチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、ノナン酸エチルなどの脂肪族エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルピニル、酢酸ネリルなどのテルペンアルコールエステル、酢酸ベンジル、サリチル酸メチル、ケイ皮酸メチル、プロピオン酸シンナミル、安息香酸エチル、イソ吉草酸シンナミル、3-メチル-2-フェニルグリシド酸エチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
【0071】
ラクトン化合物としては、γ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトンなどの飽和ラクトン、7-デセン-4-オリド、2-デセン-5-オリドなどの不飽和ラクトンが挙げられる。
【0072】
酸化合物としては、酢酸、酪酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0073】
含窒素化合物としては、インドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチル、トリメチルピラジンなどが挙げられる。
【0074】
含硫化合物としては、硫化水素、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネート、2-ブタンチオール、3-メチル-3-ブテン-1-チオール、2-メチル-3-ブテン-1-チオール、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、2-メチル-1-ブタンチオール、3-メルカプトヘキサノール、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン、酢酸3-メルカプトヘキシル、1-p-メンテン-8-チオール、p-メンタ-8-チオール-3-オンおよびフルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
【0075】
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
【0076】
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、果実や野菜などの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶の抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼまたはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
【0077】
本件香料組成物は、本件香味付与組成物を公知の方法によって適切な溶媒や分散媒に添加して調製することができる。
【0078】
本件香料組成物の形態としては、本件香味付与組成物またはその他成分を水溶性または油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、またはその他固体製剤(固形脂など)などが好ましい。
【0079】
水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。)、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。
【0080】
また、乳化製剤とするためには、本件香味付与組成物を水溶性溶媒および乳化剤と共に乳化して得ることができる。本件香味付与組成物の乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、加工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸およびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインキラヤサポニン、またはカゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、本件化合物1質量部に対し、約0.01~約100質量部、好ましくは約0.1~約50質量部の範囲内が適当である。また、乳化状態を安定させるため、係る乳化液には水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を添加することができる。
【0081】
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜添加することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
【0082】
本件香料組成物は、上記以外に、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている成分を含有していてもよい。例えば、水、エタノールなどの溶剤や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライドなどの香料保留剤を含有することができる。
【0083】
(香味付与組成物の香味付与方法)
本発明の一実施の形態に係る香味付与組成物の香味付与方法(以下、本件に係る香味付与組成物の香味付与方法という場合がある。)は、本件化合物または本件香味付与組成物を他の香味付与組成物に添加する工程を含む。
【0084】
本件化合物または本件香味付与組成物を他の香味付与組成物に有効量添加することで、添加対象の香味付与組成物に香味を付与することができる。より具体的には、本件化合物または本件香味付与組成物の添加対象である香味付与組成物に乳(乳製品)のフレッシュ感および/またはコク感;柑橘類のフレッシュ感、ピール感および/または果汁感;柑橘類以外のフルーツの果肉感および/または完熟感;ビール風味のさわやかな苦い香味および/または麦芽の香ばしさ;各種嗜好飲料の挽きたて感、淹れたて感および/またはロースト感;スープの香ばしさおよび/またはコク感;焼き菓子の香ばしさ、コク感、ロースト感および/または焼き立て感;香粧品の各香調のフレッシュ感などを付与し、香味付与組成物の香味を改善することができる。
【0085】
本件に係る香味付与組成物の香味付与方法において、添加対象の香味付与組成物に対する本件香味付与組成物(本件化合物)の添加量(濃度)は、有効成分として含まれる本件化合物によって香味が改善される有効量であればよく、香味付与組成物の種類や形態に応じて任意に設定することができる。添加対象の香味付与組成物が香料組成物である場合には、香料組成物に対する本件化合物の濃度の例としては、前掲「香料組成物」の項目で述べた通りである。
【0086】
本件に係る香味付与組成物の香味付与方法において、本件化合物または本件香味付与組成物を他の香味付与組成物に添加する方法は特に限定されない。また、本件化合物または本件香味付与組成物を他の香味付与組成物に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。
【0087】
(消費財)
本発明の一実施の形態に係る消費財(以下、本件消費財という場合がある。)は、本件化合物または本件香味付与組成物を所定量含むものである。本件消費財は、本件化合物または本件香味付与組成物が有効量添加されているため、香味が付与された消費財を提供することができる。より具体的には、本件消費財は、本件化合物または本件香味付与組成物が添加されているため、乳(乳製品)のフレッシュ感および/またはコク感;柑橘類のフレッシュ感、ピール感および/または果汁感;柑橘類以外のフルーツの果肉感および/または完熟感;ビール風味のさわやかな苦い香味および/または麦芽の香ばしさ;各種嗜好飲料の挽きたて感、淹れたて感および/またはロースト感;スープの香ばしさおよび/またはコク感;焼き菓子の香ばしさ、コク感、ロースト感および/または焼き立て感;香粧品の各香調のフレッシュ感などが付与され、これにより香味が改善される。また、本件消費財には、トップ、ミドル、ラストのいずれか1以上の香味のうち、特にトップの香り立ちおよび呈味感(広がり)が付与される。
【0088】
本件消費財において、消費財に対する本件香味付与組成物(本件化合物)の添加量(濃度)は、有効成分として含まれる本件化合物による消費財の香味や所望の効果の程度などに応じて任意に決定できる。
【0089】
当該濃度の例として、飲食品であれば、飲食品の全体質量に対して、本件化合物の濃度として10ppt(0.00001ppm)~100ppm(0.01%)、好ましくは1ppb(0.001ppm)~10ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppmのいずれか、上限値を100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい濃度の例として、飲食品の全体質量に対して、本件化合物の濃度として10ppt(0.00001ppm)~1ppb(0.001ppm)、10ppt(0.00001ppm)~1ppm、100ppt(0.0001ppm)~10ppb(0.01ppm)、1ppb(0.001ppm)~100ppb(0.1ppm)、10ppb(0.01ppm)~1ppm、10ppb(0.01ppm)~10ppmから、飲食品の風味特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。
【0090】
なお、飲食品の種類や香味にも依存するが、飲食品中の本件化合物の濃度を1ppb(0.001ppm)~10ppmとすると、添加効果が感じられ、かつ、本件化合物由来の香りが過度に突出しないため好ましい。ただし、本件化合物は、添加対象の飲食品の香味などによっては前記下限値を下回る濃度または前記上限値を上回る濃度で添加してもよい。
【0091】
当該濃度の例として、香粧品であれば、香粧品の全体質量に対して、本件化合物の濃度として1ppb(0.001ppm)~0.1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppmのいずれか、上限値を0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい濃度の例として、香粧品の全体質量に対して、本件化合物の濃度として、10ppb(0.01ppm)~10ppm、100ppb(0.1ppm)~100ppm、1ppm~0.1%の各範囲から、香粧品の香気特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。なお、香粧品の種類や香気にも依存するが、香粧品中の本件化合物の濃度を10ppb(0.01ppm)~100ppmとすると、添加効果が感じられ、かつ、本件化合物由来の香りが過度に突出しないため好ましい。ただし、本件化合物は、添加対象の香粧品の香気などによっては前記下限値を下回る濃度または前記上限値を上回る濃度で添加してもよい。
【0092】
本件香味付与組成物(本件化合物)は、それ自体を消費財に添加してもよいし、1種または2種以上の水溶性香料、乳化香料組成物、任意の香料化合物、天然精油(例えば、前掲の「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品香料」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」、および「合成香料 化学と商品知識」に記載される香料化合物)、から選択される1種以上と併せて消費財に添加してもよい。
【0093】
本件香味付与組成物(本件化合物)を添加可能な飲食品は特に限定されないが、例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰などの各種フルーツ風味;ミルク、ヨーグルト、バターなどの乳風味;バニラ風味;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティーなどの各種茶風味;コーヒー風味;コーラ風味;カカオ風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ガーリック、ワサビなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウイスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類風味;タマネギ、セロリ、ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜風味;鶏肉、鴨肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの各種畜肉風味;マグロなどの赤身魚、サバ、タイ、サケ、アジなどの白身魚、アユ、マス、コイなどの淡水魚、サザエ、ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝類、エビ、カニなどの各種甲殻類、ワカメ、昆布などの各種海藻類、などの各種魚介や海藻風味;米、大麦、小麦、麦芽などの麦類などの各種穀物風味;牛脂、鶏油、ラードなどの畜肉の油脂や各種魚類の油などの各種油脂風味;などの風味の1以上を有する飲食品が挙げられる。すなわち、上記風味の1種類のみを感じさせる飲食品でもよく、2種類以上の風味を感じさせる飲食品でもよく、その複数種類の風味が同類であっても異類であってもよく、例えば、前者の例としてフルーツ風味のうちバナナ、ピーチおよびアップル風味など複数のフルーツ風味を感じさせる(いわゆるミックスフルーツ風味)が挙げられ、後者の例として、レモンなどの柑橘風味および乳風味を感じさせるもの(シトラス風味の乳酸菌飲料など)や、ミント風味や柑橘風味およびコーラ風味を感じさせるもの(ミントまたはレモンフレーバーのコーラ飲料など)が挙げられる。
【0094】
より具体的な飲食品例としては、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストまたはその他のペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類、その他穀類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、および、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;チーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品;ビール酵母、パン酵母などの各種酵母、乳酸菌など各種微生物発酵品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;持ち帰り弁当の具や惣菜類;リンゴ、ぶどう、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物の果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果物の果肉飲料や果粒入り果実飲料;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、コーラ飲料、炭酸飲料(柑橘香味など各種香味のサイダーなど)、乳酸菌飲料などの嗜好飲料品;生薬やハーブを含む飲料;コーラ飲料、果汁飲料、乳飲料、ノンアルコールビールやビールよりも使用する麦芽量の少ない、いわゆる「第三のビール」などを含むビールテイスト飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料などの機能性飲料;各種酒類(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)風味のアルコールテースト飲料などのノンアルコール嗜好飲料類;ワイン、焼酎、泡盛、清酒、ビール、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒その他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)など、またはこれらを含むアルコール飲料類;などを挙げることができる。
【0095】
本件香味付与組成物(本件化合物)を添加可能な香粧品は特に限定されないが、例として、オーデコロン、オードトワレ、オードパルファム、パルファムなどの香水類;シャンプー、リンス、整髪料(ヘアクリーム、ポマードなど)などのヘアケア製品;ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤などの化粧品類;制汗スプレー、デオドラントシート、デオドラントクリーム、デオドラントスティックなどのデオドラント製品;無機塩類系、清涼系、炭酸ガス系、スキンケア系、酵素系、生薬系などの入浴剤;サンタン製品、サンスクリーン製品などの日焼け化粧品類;フェイス用石鹸や洗顔クリームなどの洗顔料、ボディ用石鹸やボディソープ、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤、柔軟剤、台所用洗剤、清掃用洗剤などの保健・衛生用洗剤類;歯みがき、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内や車内などの芳香消臭剤、ルームフレグランスなどの芳香製品;などを挙げることができる。
【0096】
本件香味付与組成物(本件化合物)が使用可能な香調は限定されるものではなく、本件香味付与組成物(本件化合物)によって香味を改善可能な任意の香調であってよい。
【0097】
(消費財の香味付与方法)
本発明の一実施の形態に係る消費財の香味付与方法(以下、本件に係る消費財の香味付与方法という場合がある。)は、本件化合物または本件香味付与組成物を、消費財に添加する工程を含む。
【0098】
本件香味付与組成物(本件化合物)を、飲食品や香粧品などの消費財に有効量添加することで、その消費財に香味を付与することができる。より具体的には、添加対象の消費財に乳(乳製品)のフレッシュ感および/またはコク感;柑橘類のフレッシュ感、ピール感および/または果汁感;柑橘類以外のフルーツの果肉感および/または完熟感;ビール風味のさわやかな苦い香味および/または麦芽の香ばしさ;各種嗜好飲料の挽きたて感および/または淹れたて感、ロースト感;スープの香ばしさおよび/またはコク感;焼き菓子の香ばしさ、コク感、ロースト感および/または焼き立て感;香粧品の各香調のフレッシュ感などを付与し、消費財の香味を改善することができる。また、本件香味付与組成物(本件化合物)を飲食品や香粧品などの消費財に有効量添加することで、トップ、ミドル、ラストのいずれか1以上の香味のうち、特にトップの香り立ちおよび呈味感(広がり)を付与することができる。
【0099】
本件に係る消費財の香味付与方法において、消費財に対する本件香味付与組成物(本件化合物)の添加量(濃度)は、有効成分として含まれる本件化合物によって、香味が改善される有効量であればよく、消費財の種類や形態に応じて任意に設定することができる。この場合において、消費財中の本件化合物の濃度の例としては、前掲「消費財」の項目で述べた通りである。
【0100】
消費財の香味付与方法において、本件化合物または本件香味付与組成物を消費財に添加する方法は特に限定されない。また、本件化合物または本件香味付与組成物を消費財に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
[実施例1]本件化合物の合成例
本件化合物を以下の実施例の通り合成した。
【0103】
<実施例1-1-1:5-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジルの合成>
【0104】
【0105】
500mL二口フラスコにδ-ヘキサラクトン(22.8g,0.20mol)、ギ酸ベンジル(272.2g,2.0mol)およびp-トルエンスルホン酸(0.96g,5.0mmol)を入れ、室温下で終夜撹拌した。反応液を重曹(炭酸水素ナトリウム)と食塩(塩化ナトリウム)の混合水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、得られる濾液を減圧下蒸留し、ギ酸ベンジル(203.5g)を回収した。蒸留残渣(54.0g)を減圧下蒸留することで、目的とする5-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジル(31.3g)を得た(収率63%)。
【0106】
<実施例1-1-2:5-ホルミルオキシヘキサン酸の合成>
【0107】
【0108】
200mLフラスコに5-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジル(12.5g,50.0mmol)、酢酸エチル(50mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.63g)を入れ、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。反応液をセライト濾過し、得られる濾液をそのまま次工程に供した。
【0109】
<実施例1-1-3:5-ホルミルオキシヘキサンチオS-酸の合成>
【0110】
【0111】
窒素雰囲気下、300mL四口フラスコに、前工程で得られた粗製(反応後の濾液全量)の5-ホルミルオキシヘキサン酸(50.0mmol)およびトリエチルアミン(Et3N,6.1g,60.0mmol)を入れ、氷水冷下撹拌した。ここに、塩化ピバロイル(PivCl,6.6g,55.0mmol)を氷水冷下滴下して2時間撹拌した。次に、氷水冷下撹拌しながらトリエチルアミン(50mL)を加え、硫化水素を氷水冷下で1.5時間、次いで室温まで昇温しながら1.5時間吹き込んだ。硫化水素の吹き込みを終了し、そのまま室温にて終夜撹拌した。ここに氷水冷下30%クエン酸水溶液を加えた後、分液して得られる水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水にて洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮して得られる粗製物(15.4g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、精製物を減圧下蒸留精製することで、目的とする5-ホルミルオキシヘキサンチオS-酸(4.5g)を得た。蒸留品には1.8%のピバル酸が含まれていたので、減圧して除去し、本発明品1-1(4.4g)とした。5-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジルからの収率は50%であった。
【0112】
<<本発明品1-1の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.02(s,1H),4.97-5.06(m,1H),4.26(br s,1H),2.60-2.64(m,2H),1.52-1.76(m,4H),1.23(d,3H,J=6.4Hz).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 197.2,160.7,45.1,34.7,20.9,19.9.
MS(EI,70eV)m/z 115(100),97(71),73(24),71(11),69(87),55(58),45(28),43(19),41(31).
【0113】
<実施例1-2-1:5-ホルミルオキシデカン酸ベンジルの合成>
【0114】
【0115】
100mL三口フラスコにδ-デカラクトン(8.5g,0.05mol)、ギ酸ベンジル(68.1g,0.50mol)およびp-トルエンスルホン酸(0.24g,1.3mmol)を入れ、室温下で終夜撹拌した。反応液をジエチルエーテル(Et2O)にて希釈し、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られる濃縮残渣(65.1g)を減圧下蒸留し、ギ酸ベンジル(48.8g)を回収した。蒸留残渣(15.4g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することで、目的とする5-ホルミルオキシデカン酸ベンジル(11.2g)を得た(収率73%)。
【0116】
<実施例1-2-2:5-ホルミルオキシデカン酸の合成>
【0117】
【0118】
30mL二口フラスコに5-ホルミルオキシデカン酸ベンジル(3.1g,10.0mmol)、酢酸エチル(9mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.16g)を入れ、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。反応液をセライト濾過し、得られる濾液を減圧濃縮、減圧乾燥(~40℃)し、目的とする5-ホルミルオキシデカン酸(2.1g)を得た(粗製収率97%)。
【0119】
<実施例1-2-3:5-ホルミルオキシデカンチオS-酸の合成>
【0120】
【0121】
窒素雰囲気下、50mLフラスコに、前工程で得られた粗製の5-ホルミルオキシデカン酸(2.0g,9.3mmol)およびジエチルエーテル(Et2O,20mL)を入れ、氷水冷下撹拌した。ここに、トリエチルアミン(0.94g,9.3mmol)を滴下し、氷水冷下0.5時間撹拌した。次いで、塩化ピバロイル(1.2mL,9.3mmol)を氷水冷下15分間滴下し、氷水冷下で1時間撹拌した。反応液を濾紙濾過し、濾液36.8gを得た。
【0122】
200mL四口フラスコに、上記濾液(35.9g)を入れ、室温下硫化水素を1時間吹き込んだ。その後トリエチルアミン(10mL)を加え、室温下硫化水素を1時間吹き込んだ。終夜放置した反応液に15%クエン酸水溶液およびクエン酸を順に加え分液し、有機層を飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られる粗製物(3.1g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、精製物(1.22g)を得た。このうち、0.52gを蒸留精製することで、目的物である5-ホルミルオキシデカンチオS-酸(0.41g)を黄色油状物として得た(これを本発明品1-2とする。)。5-ホルミルオキシデカン酸からの収率は44%であった。
【0123】
<<本発明品1-2の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.07(s,1H),4.94-5.01(m,1H),4.66(br s,1H),2.56-2.67(m,2H),1.46-1.75(m,6H),1.21-1.34(m,6H),0.86(t,3H,J=6.8Hz).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 197.2,160.9,45.2,33.9,32.9,31.5,24.8,22.5,20.9,13.9.
MS(EI,70eV)m/z 171(56),153(100),135(55),111(24),97(33),83(44),81(16),71(20),69(73),57(22),55(68),43(28),41(31).
【0124】
<実施例1-3-1:4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルの合成>
【0125】
【0126】
300mL二口フラスコにγ-ブチロラクトン(12.9g,0.15mol)、ギ酸ベンジル(204.2g,1.5mol)およびp-トルエンスルホン酸(0.71g,3.75mmol)を入れ、室温下で約8日間撹拌した。反応液を飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、得られる濾液を減圧下蒸留し、ギ酸ベンジル(184.6g)を回収した。蒸留残渣(15.0g)を減圧下蒸留することで、目的とする4-ホルミルオキシブタン酸ベンジル(11.3g)を得た(収率34%)。
【0127】
<実施例1-3-2:4-ホルミルオキシブタン酸の合成>
【0128】
【0129】
100mLフラスコに4-ホルミルオキシブタン酸ベンジル(8.9g,40.0mmol)、酢酸エチル(40mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.45g)を入れ、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。反応液をセライト濾過し、得られる濾液をそのまま次工程に供した。
【0130】
<実施例1-3-3:4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-メチルの合成>
300mL三口フラスコに、先述の濾液、およびトリエチルアミン(4.9g,48mmol)を加え氷水冷下とした。塩化ピバロイル(5.3g,44mmol)を投入したのち、同温で3時間撹拌した。反応液に15%ナトリウムメタンチオラート水溶液(aq.NaSMe,28.0g,60mmol,1.5eq.)を一気に投入し室温で終夜撹拌した。反応液に水(150mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)、水(100mL)、飽和重曹水(100mL)および飽和食塩水(100mL)で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、減圧濃縮した。残渣(3.42g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メイン画分をKugelrohr蒸留し(120℃/0.1kPa)目的のチオエステルを無色油状物質として得た(1.49g,9.19mmol,これを本発明品1-3とする。)。4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルからの収率は23%であった。
【0131】
<<本発明品1-3の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.05(s,1H),4.20(dt,2H,J=0.8Hz,6.4Hz),2.67(t,2H,J=7.2Hz),2.28(s,3H),1.66-1.79(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 199.4,161.0,63.3,43.1,27.7,22.0,11.6.
MS(EI,70eV)m/z 162(3),115(100),87(88),75(19),69(12),47(10),45(41),43(53),41(27),31(19).
【0132】
<実施例1-4-1:5-ホルミルオキシペンタン酸ベンジルの合成>
【0133】
【0134】
200mL二口フラスコにδ-バレロラクトン(10.0g,0.10mol)、ギ酸ベンジル(136.1g,1.0mol)およびp-トルエンスルホン酸(0.48g,2.5mmol)を入れ、室温下で終夜撹拌した。反応液を飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、得られる濾液(166.2g)を減圧下蒸留し、ギ酸ベンジル(117.4g)を回収した。蒸留残渣(22.4g)を減圧下蒸留することで、目的とする5-ホルミルオキシペンタン酸ベンジル(16.2g)を得た(収率68%)。
【0135】
<実施例1-4-2:5-ホルミルオキシペンタン酸の合成>
【0136】
【0137】
100mLフラスコに5-ホルミルオキシペンタン酸ベンジル(8.0g,33.9mmol)、酢酸エチル(36mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.4g)を入れ、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。反応液をセライト濾過し、得られる濾液を減圧濃縮、減圧乾燥(~40℃)し、目的とする5-ホルミルオキシペンタン酸(4.9g)を得た。
【0138】
<実施例1-4-3:5-ホルミルオキシペンタンチオ酸S-メチルの合成>
実施例1-3-3と同様の方法により、目的の5-ホルミルオキシペンタンチオ酸S-メチルを無色油状物質として得た(1.8g,収率31%,これを本発明品1-4とする。)。
【0139】
<<本発明品1-4の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.03(s,1H),4.15(t,2H,J=6.0Hz),2.57(t,2H,J=6.8Hz),2.31(s,3H),2.00-2.08(m,2H).
13C NMR (CDCl3,100MHz)δ 198.7,160.8,62.6,39.9,24.4,11.6.
MS(EI,70eV)m/z 176(0.6),130(10),129(100),101(78),83(64),75(18),59(21),55(82),43(21),41(8),31(12).
【0140】
<実施例1-5-1:4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルの合成>
実施例1-3-1と同様の方法で4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルを合成した。
【0141】
<実施例1-5-2:4-ホルミルオキシブタン酸の合成>
【0142】
【0143】
200mL二口フラスコに対し、4-ホルミルオキシブタン酸ベンジル(8.9g,40mmol)、酢酸エチル(40mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.45g)を順次入れ、水素雰囲気下2日撹拌した。反応液をセライト濾過し、酢酸エチルで洗いこみ後、濾液を続く反応に付した。
【0144】
<実施例1-5-3:4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-ブタン-2-イルの合成>
300mL三口フラスコに対し、先述の溶液、およびトリエチルアミン(4.9g,48mmol)を加え氷水冷下とした。塩化ピバロイル(5.3g,44mmol)を投入したのち、同温で1時間撹拌した。反応液に対し、トリエチルアミン(7.1g,70mmol)および2-ブタンチオール(4.32g,48mmol)を加え、室温で4日間撹拌した。反応液に飽和重曹水(150mL)を加え、酢酸エチル抽出した。有機相を水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、減圧濃縮した。残渣(7.45g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メイン画分(4.38g)をKugelrohr蒸留し(145℃/0.3kPa)目的のチオエステルを無色油状物質として得た(3.71g,18.2mmol,これを本発明品1-5とする。)。4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルからの収率は45%であった。
【0145】
<<本発明品1-5の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.05(s,1H),4.19(br t,2H,J=6.8Hz),3.52(qui,1H,J=6.8Hz),2.63(t,2H,J=6.8Hz),2.03(qui,2H,J=6.8Hz),1.56-1.63(m,2H),1.28(d,3H,J=6.8Hz),0.94(t,3H,J=7.6Hz).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 198.5,160.9,62.7,41.0,40.3,29.4,24.4,20.8,11.4.
MS(EI,70eV)m/z 204(1),149(12),148(12),115(23),87(100),57(14),45(16),43(31),41(16).
【0146】
<実施例1-6-1:4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルの合成>
実施例1-3-1と同様の方法で4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルを合成した。
【0147】
<実施例1-6-2:4-ホルミルオキシブタン酸の合成>
【0148】
【0149】
200mL二口フラスコに対し、4-ホルミルオキシブタン酸ベンジル(8.9g,40mmol)、酢酸エチル(40mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.45g)を順次入れ、水素雰囲気下48時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、酢酸エチルで洗いこみ後、濾液を続く反応に付した。
【0150】
<実施例1-6-3:4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-2-メチルブタ-3-エン-2-イルの合成>
300mL三口フラスコに、先述の濾液、およびトリエチルアミン(4.9g,48mmol)を加え氷水冷下とした。塩化ピバロイル(5.3g,44mmol)を投入したのち、同温で3時間撹拌した。反応液に、トリエチルアミン(9.8g,96mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP,0.25g,2mmol)および2-メチルブタ-3-エン-2-チオール(4.1g,40mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチル抽出した。有機相を飽和塩化アンモニウム水溶液、水、飽和重曹水(100mL)および飽和食塩水(100mL)で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メイン画分をKugelrohr蒸留し(150℃/0.1kPa)目的のチオエステルを無色油状物質として得た(2.84g,13.1mmol,これを本発明品1-6とする。)。4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルからの収率は33%であった。
【0151】
<<本発明品1-6の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.03(s,1H),6.08(dd,1H,J=17.6Hz,6.4Hz),5.16(d,1H,J=17.6Hz),5.05(d,1H,J=6.4Hz),4.17(br t,2H,J=6.8Hz),2.55(br t,2H,J=6.8Hz),1.98(qui,2H,J=6.8Hz),1.54(s,6H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 198.1,160.8,142.7,112.8,62.7,51.3,40.4,26.8,24.1.
MS(EI,70eV)m/z 216(3),170(7),101(11),87(19),69(100),45(6),43(10),41(30).
【0152】
<実施例1-7-1:4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルの合成>
実施例1-3-1と同様の方法で4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルを合成した。
【0153】
<実施例1-7-2:4-ホルミルオキシブタン酸の合成>
【0154】
【0155】
200mL二口フラスコに、4-ホルミルオキシブタン酸ベンジル(8.9g,40mmol)、酢酸エチル(40mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.45g)を順次入れ、水素雰囲気下16時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、酢酸エチルで洗いこみ後、濾液を続く反応に付した。
【0156】
<実施例1-7-3:4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-3-メチルブタ-3-エン-1-イルの合成>
300mL三口フラスコに、先述の溶液、およびトリエチルアミン(4.9g,48mmol)を入れ氷水冷下とした。さらに塩化ピバロイル(5.3g,44mmol)を投入したのち、同温で3時間撹拌した。反応液に、トリエチルアミン(7.1g,70mmol)および3-メチルブタ-3-エン-1-チオール(4.08g,40mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチル抽出した。有機相を飽和重曹水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、減圧濃縮した。残渣(5.89g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メイン画分をKugelrohr蒸留し(150℃/0.1kPa)目的のチオエステルを無色油状物質として得た(4.85g,22.4mmol,これを本発明品1-7とする。)。4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルからの収率は56%であった。
【0157】
<<本発明品1-7の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.05(s,1H),4.79(s,1H),4.72(s,1H),4.20(t,2H,J=6.4Hz)3.01(t,2H,J=7.6Hz),2.66(t,2H,J=7.6Hz),2.27(t,2H,J=7.6Hz),1.99-2.07(m,2H),1.59(s,3H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 198.3,160.8,143.4,111.7,62.6,40.1,37.3,27.1,24.3,22.2.
MS(EI,70eV)m/z 216(3),170(12),102(29),101(52),100(14),87(100),69(29),68(25),67(16),45(28),43(47),41(32).
【0158】
<実施例1-8-1:4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルの合成>
実施例1-3-1と同様の方法で4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルを合成した。
【0159】
<実施例1-8-2:4-ホルミルオキシブタン酸の合成>
【0160】
【0161】
100mLフラスコに4-ホルミルオキシブタン酸ベンジル(8.9g,40.0mmol)、酢酸エチル(40mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.45g)を入れ、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。反応液をセライト濾過し、得られる濾液をそのまま次工程に供した。
【0162】
<実施例1-8-3:4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-フルフリルの合成>
【0163】
【0164】
窒素雰囲気下、300mL四口フラスコに、前工程で得られた粗製の4-ホルミルオキシブタン酸(40.0mmol)およびトリエチルアミン(4.9g,48.0mmol)を入れ、氷水冷下撹拌した。ここに、塩化ピバロイル(5.3g,44.0mmol)を氷水冷下20分間滴下して1.5時間撹拌した。次に、氷水冷下撹拌しながらトリエチルアミン(40mL)を加え、フルフリルメルカプタン(5.5g,48.0mmol)を0.5時間かけて滴下して室温へ昇温しながら終夜撹拌した。得られる反応液を飽和炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られる粗製物(9.9g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、精製物をKugelrohr蒸留器にて減圧下蒸留精製することで、目的とする4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-フルフリル(5.3g)を得た(これを本発明品1-8とする。)。4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルからの収率は58%であった。
【0165】
<<本発明品1-8の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.00(s,1H),7.30(dd,1H,J=1.6Hz,0.8Hz),6.27(dd,1H,J=3.2Hz,1.6Hz),6.19(dd,1H,J=3.2Hz,0.8Hz),4.17(br t,2H,J=6.4Hz),4.14(s,2H),2.66(t,2H,J=7.2Hz),1.99-2.07(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 197.1,160.8,150.2,142.3,110.6,108.0,62.6,40.0,25.7,24.2.
MS(EI,70eV)m/z 228(18),182(13),114(10),113(15),87(17),81(100),53(10),45(11),43(12).
【0166】
<実施例1-9-1:5-ホルミルオキシペンタン酸ベンジルの合成>
実施例1-4-1と同様の方法で5-ホルミルオキシペンタン酸ベンジルを合成した。
【0167】
<実施例1-9-2:5-ホルミルオキシペンタン酸の合成>
100mLフラスコに5-ホルミルオキシペンタン酸ベンジル(8,8.0g,33.9mmol)、酢酸エチル(36mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.4g)を入れ、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。反応液をセライト濾過し、得られる濾液を減圧濃縮、減圧乾燥(~40℃)し、目的とする5-ホルミルオキシペンタン酸(4.9g)を得た。
【0168】
<実施例1-9-3:5-ホルミルオキシペンタンチオ酸S-フルフリルの合成>
【0169】
【0170】
窒素雰囲気下、200mL四口フラスコに、前工程で得られた粗製の5-ホルミルオキシペンタン酸(4.9g,36.0mmol)およびジエチルエーテル(140mL)を入れ、氷水冷下撹拌した。ここに、トリエチルアミン(4.4g,43.2mmol)を5分間かけて滴下し、氷水冷下0.5時間撹拌した。次いで、塩化ピバロイル(4.8g,39.6mmol)のジエチルエーテル(30mL)溶液を氷水冷下0.5時間かけて滴下し、氷水冷下で1時間撹拌した。濾紙濾過(ジエチルエーテル50mLでリンス)し、濾液137.7gを得た。
【0171】
300mL四口フラスコに、上記濾液(137.7g)およびトリエチルアミン(36mL)を入れ、氷水冷下撹拌した。ここにフルフリルメルカプタン(4.9g,43.2mmol)のジエチルエーテル(10mL)溶液を滴下し、同温下2.5時間撹拌の後、室温下終夜撹拌した。得られる反応液を飽和炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られる粗製物(10.3g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、精製物(5.5g)を得た。これを減圧下蒸留精製することで、目的とする5-ホルミルオキシペンタンチオ酸S-フルフリル(3.6g)を得た(これを本発明品1-9とする。)。5-ホルミルオキシペンタン酸ベンジルからの収率は42%であった。
【0172】
<<本発明品1-9の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.02(s,1H),7.30(dd,1H,J=1.6Hz,0.8Hz),6.27(dd,1H,J=3.2Hz,1.6Hz),6.19(dd,1H,J=3.2Hz,0.8Hz),4.14(t,2H,J=6.4Hz),4.13(s,2H),2.60(t,2H,J=7.2Hz),1.64-1.80(m,4H).
13C NMR(CDCl3, 100MHz)δ 197.6,1601.0,150.4,142.2,110.6,107.9,63.3,43.0,27.7,25.6,21.8.
MS(EI,70eV)m/z 242(30),196(11),114(12),113(17),101(26),83(19),81(100),55(21),53(11).
【0173】
<実施例1-10-1:5-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジルの合成>
200mL二口フラスコにδ-ヘキサラクトン(11.4g,0.10mol)、ギ酸ベンジル(136.1g,1.0mol)およびp-トルエンスルホン酸(0.48g,2.5mmol)を入れ、室温下で終夜撹拌した。反応液を飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、得られる濾液を減圧下蒸留し、ギ酸ベンジル(120.8g)を回収した。蒸留残渣(23.4g)を減圧下蒸留することで、目的とする5-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジル(16.3g)を得た(収率65%)。
【0174】
<実施例1-10-2:5-ホルミルオキシヘキサン酸の合成>
200mLフラスコに5-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジル(16.0g,63.9mmol)、酢酸エチル(64mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.8g)を入れ、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。反応液をセライト濾過し、得られる濾液を減圧濃縮、減圧乾燥(~40℃)し、目的とする5-ホルミルオキシヘキサン酸(10.3g)を得た。
【0175】
<実施例1-10-3:5-ホルミルオキシヘキサンチオ酸S-フルフリルの合成>
【0176】
【0177】
窒素雰囲気下、200mL四口フラスコに、前工程で得られた粗製の5-ホルミルオキシヘキサン酸(5.0g,31.2mmol)およびジエチルエーテル(140mL)を入れ、氷水冷下撹拌した。ここに、トリエチルアミン(3.8g,37.4mmol)を滴下し、氷水冷下15分間撹拌した。次いで、塩化ピバロイル(4.1g,34.3mmol)のジエチルエーテル(30mL)溶液を氷水冷下0.5時間かけて滴下し、氷水冷下で1時間撹拌した。その後、濾紙濾過(ジエチルエーテル50mLでリンス)した。
【0178】
300mL四口フラスコに、上記濾液およびトリエチルアミン(31mL)を入れ、氷水冷下撹拌した。ここにフルフリルメルカプタン(4.3g,37.4mmol)のジエチルエーテル(10mL)溶液を滴下し、同温下2.5時間撹拌した後、室温下終夜撹拌した。得られる反応液を飽和炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られる粗製物(8.9g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、精製物(5.5g)を得た。これを減圧下蒸留精製することで、目的とする5-ホルミルオキシヘキサンチオ酸S-フルフリル(5.0g)を得た(これを本発明品1-10とする。)。5-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジルからの収率は63%であった。
【0179】
<<本発明品1-10の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.01(s,1H),7.30(dd,1H,J=2.0Hz,0.8Hz),6.27(dd,1H,J=3.2Hz,2.0Hz),6.19(br d,1H,J=3.2Hz),4.98-5.23(m,1H)4.13(s,2H),2.57(t,2H,J=7.2Hz),1.52-1.77(m,4H),1.23(d,3H,J=6.8Hz).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 197.7,160.7,150.4,142.2,110.5,107.9,70.3,43.2,34.8,25.6,21.2,19.9.
MS(EI,70eV)m/z 256(13),210(29),129(14),115(14),113(9),112(15),101(10),97(20),81(100),69(30),55(13),53(10).
【0180】
<実施例1-11-1:4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルの合成>
実施例1-3-1と同様の方法で4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルを合成した。
【0181】
<実施例1-11-2:4-ホルミルオキシブタン酸の合成>
【0182】
【0183】
200mL二口フラスコに対し、4-ホルミルオキシブタン酸ベンジル(8.9g,40mmol)、酢酸エチル(40mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.09g)を順次入れ、水素雰囲気下6時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、酢酸エチルで洗いこみ後、濾液を続く反応に付した。
【0184】
<実施例1-11-3:4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-p-メンタ-1-エン-8-イルの合成>
300mL三口フラスコに対し、先述の溶液、およびトリエチルアミン(4.9g,48mmol)を加え氷水冷下とした。塩化ピバロイル(5.3g,44mmol)を投入したのち、同温で3時間撹拌した。反応液に、トリエチルアミン(9.8g,96mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.25g,2mmol)およびp-メンタ-1-エン-8-チオール(チオターピネオール,6.8g)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチル抽出した。有機相を水、飽和重曹水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、メイン画分を減圧蒸留し(136~137℃/0.2kPa)目的のチオエステルを無色油状物質として得た(4.38g,15.4mmol,これを本発明品1-11とする。)。4-ホルミルオキシブタン酸ベンジルからの収率は39%であった。
【0185】
<<本発明品1-11の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.04(s,1H),5.35(dd,1H,J=3.2Hz,2.0Hz),4.18(t,2H,J=7.2Hz),2.56(t,2H,J=7.2Hz),1.80-2.12(m,8H),1.63(br s,3H),1.47(s,3H),1.46(s-3H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 199.0,160.9,134.0,120.3,62.8,55.7,42.8,40.8,31.1,26.9,24.9,24.5,24.4,24.3,23.2.
MS(EI,70eV)m/z 284(0.1),170(12),169(100),137(16),136(68),121(66),107(11),95(17),93(49),87(14),81(40),75(11),69(14),43(11),41(13).
【0186】
<実施例1-12-1:4-ホルミルオキシドデカン酸ベンジルの合成>
【0187】
【0188】
200mLナスフラスコにγ-ドデカラクトン(9.92g,50mmol)、ギ酸ベンジル(34.04g,250mmol)およびp-トルエンスルホン酸(0.48g)を入れ、室温下で24時間撹拌した。反応液をヘキサン(100mL)で希釈後、有機相を飽和重曹水、水道水および飽和食塩水で順次洗浄し、減圧濃縮した。その残渣を減圧蒸留し、余剰のギ酸ベンジルを回収した。蒸留残渣(9.89g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的とする4-ホルミルオキシドデカン酸ベンジルを無色油状物質として得た(0.43g、1.28mmol)を得た(収率2%)。
【0189】
<実施例1-12-2:4-ホルミルオキシドデカン酸の合成>
【0190】
【0191】
100mL二口フラスコに4-ホルミルオキシドデカン酸ベンジル(4.29g,12.8mmol)、99%エタノール(20mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.06g)を入れ、水素雰囲気下室温で2時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、得られた濾液を減圧濃縮して粗製の4-ホルミルオキシドデカン酸を白色固体として得た(2.95g、12.1mmol、94%)。
【0192】
<実施例1-12-3:4-ホルミルオキシドデカンチオ酸S-ブタン-2-イルの合成>
【0193】
【0194】
100mL二口フラスコに、前工程で得られた粗製の4-ホルミルオキシドデカン酸(1.42g)、塩化メチレン(20mL)を入れた後、氷水冷下でトリエチルアミン(1.18g)および塩化ピバロイル(0.88g)を入れ、同温で1時間撹拌した。反応液に追加のトリエチルアミン(1.18g)を加え、さらに2-ブタンチオール(0.65g)を加え、氷水冷下で1時間撹拌した後、室温で終夜撹拌した。得られた反応液に水道水およびジエチルエーテルを加えて撹拌し、下層を分離後、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後濾過し、減圧濃縮した残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的とする4-ホルミルオキシドデカンチオ酸S-ブタン-2-イル(0.87g、2.75mmol、収率47%,これを本発明品1-12とする。)を得た。
【0195】
<<本発明品1-12の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.08(s,1H),4.91-5.04(m,1H),3.45-3.55(m,1H),2.54-2.59(m,2H),1.84-2.04(m,2H),1.24-1.64(m,16H),0.95(t,3H,J=7.6Hz)0.86-0.89(m,6H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 198.8,160.8,73.2,40.2,39.9,34.0,31.8,29.4,29.4,29.4,29.2,26.5,25.1,22.6,20.8,14.1,11.4.
MS(EI,70eV)m/z 316(2),199(100),181(87),163(71),111(22),97ZZ(51),85(21),83(46),69(30),57(39),55(43),43(23),41(25).
【0196】
<実施例1-13-1:5-ホルミルオキシテトラデカン酸ベンジルの合成>
【0197】
【0198】
200mLナスフラスコに、δ-テトラデカラクトン(11.32g,50mmol)、ギ酸ベンジル(34.04g)およびp-トルエンスルホン酸(0.48g)を順次入れ、室温で23時間撹拌した。反応液をヘキサンで希釈後、有機相を飽和重曹水、水道水および飽和食塩水で洗浄し、減圧濃縮した。残渣を減圧蒸留し(~76℃/0.2kPa)余剰のギ酸ベンジルを回収し、残渣(17.14g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的の5-ホルミルオキシテトラデカン酸ベンジルを無色油状物質として得た(12.65g,34.9mmol,70%)。
【0199】
<実施例1-13-2:5-ホルミルオキシテトラデカン酸の合成>
【0200】
【0201】
100mL二口フラスコに、5-ホルミルオキシテトラデカン酸ベンジル(1.16g,3.2mmol),99%エタノール(20mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.08g)を順次入れ、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。反応液をセライト濾過した後、濾液を減圧濃縮し、粗製の5-ホルミルオキシテトラデカン酸を得た。
【0202】
<実施例1-13-3:5-ホルミルオキシテトラデカンチオ酸S-ブタン-2-イルの合成>
【0203】
【0204】
100mL二口フラスコに、5-ホルミルオキシテトラデカン酸(1.00g)、ジクロロメタン(10mL)およびトリエチルアミン(0.74g)を順次入れ、氷水冷下とし、塩化ピバロイル(0.55g)を加え、同温で1時間撹拌した。反応液に追加のトリエチルアミン(0.74g)を加え、2-ブタンチオール(0.41g)を滴下し、室温で終夜撹拌した。反応液に水を加え、ジエチルエーテル抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、減圧濃縮した。粗製物(2.71g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的の5-ホルミルオキシテトラデカンチオ酸S-ブタン-2-イルを微黄色油状物質として得た(0.60g,収率47%,これを本発明品1-13とする。)。
【0205】
<<本発明品1-13の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.08(s,1H),4.99(br qui,1H,J=6.0Hz),3.50(sex,1H,J=6.8Hz)2.52(t,2H,J=7.2Hz),1.22-1.80(m,22H),0.95(t,3H,J=7.6Hz)0.88(t,3H,J=6.8Hz).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 199.3,161.0,73.8,43.6,40.8,33.9,33.1,31.9,29.5,29.4,29.3,26.5,25.2,22.7,21.3,20.8,14.1,11.4.
MS(EI,70eV)m/z 344(1),227(49),209(100),191(44),111(25),109(23),97(41),95(22),83(35),71(19),69(38),57(38),55(46),43(24),41(25).
【0206】
<実施例1-14-1:4-アセトキシブタン酸ベンジルの合成>
【0207】
【0208】
200mLナスフラスコに、γ-ブチロラクトン(8.61g,100mmol)、酢酸ベンジル(75.1g,500mmol)およびp-トルエンスルホン酸(0.95g)を順次入れ、室温で24時間撹拌した。反応液をヘキサンで希釈後、有機相を飽和重曹水、水道水および飽和食塩水で洗浄し、減圧濃縮した。残渣を減圧蒸留し余剰の酢酸ベンジルを回収し(71.8g)、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的の4-アセトキシブタン酸ベンジルを無色油状物質として得た(3.50g,14.8mmol,収率14%)。
【0209】
<実施例1-14-2:4-アセトキシブタン酸の合成>
【0210】
【0211】
100mL二口フラスコに、4-アセトキシブタン酸ベンジル(2.36g,10mmol)、99%エタノール(20mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.12g)を順次入れ、水素雰囲気下室温で2時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮し、続く反応に付した。
【0212】
<実施例1-14-3:4-アセトキシブタンチオ酸S-ブタン-2-イルの合成>
先述の濾液を100mL二口フラスコに入れ、酢酸エチル(20mL)で溶解後、氷水冷下トリエチルアミン(1.8mL)および塩化ピバロイル(1.32g)を順次加え、同温で1時間撹拌した。反応液に追加のトリエチルアミン(2.6mL)を加え、2-ブタンチオール(0.90g)を加え、同温で1時間、室温で終夜撹拌した。反応液に水道水を加え撹拌し下層を分離後、有機相を飽和重曹水および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的の4-アセトキシブタンチオ酸S-ブタン-2-イルを淡黄色油状物質として得た(0.47g,2.15mmol,これを本発明品1-14とする。)。4-アセトキシブタン酸ベンジルからの収率は22%であった。
【0213】
<<本発明品1-14の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 4.06(t,2H,J=6.4Hz),3.49(sex,1H,J=6.8Hz),2.59(t,2H,J=7.2Hz),2.02(s,3H),1.97(qui,2H,J=6.8Hz),1.57(qui,2H,J=7.2Hz),1.26(d,2H,J=6.8Hz),0.93(t,3H,J=6.8Hz).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 198.7,171.0,63.3,40.9,40.5,29.5,24.5,20.9,20.8,11.4.
MS(EI,70eV)m/z 218(1),129(29),88(6),87(100),57(6),43(31),41(6).
【0214】
<実施例1-15-1:4-ホルミルオキシドデカン酸ベンジルの合成>
実施例1-12-1と同様の方法で4-ホルミルオキシドデカン酸ベンジルを合成した。
【0215】
<実施例1-15-2:4-ホルミルオキシドデカン酸の合成>
実施例1-12-2と同様の方法で4-ホルミルオキシドデカン酸を合成した。
【0216】
<実施例1-15-3:4-ホルミルオキシドデカンチオ酸S-フルフリルの合成>
【0217】
【0218】
100mL二口フラスコに、前工程で得られた粗製の4-ホルミルオキシドデカン酸(1.53g)、塩化メチレン(20mL)を入れた後、氷水冷下でトリエチルアミン(1.27g)および塩化ピバロイル(0.94g)を入れ、同温で1時間撹拌した。反応液に追加のトリエチルアミン(1.27g)を加え、さらにフルフリルメルカプタン(0.89g)を加え、氷水冷下で1時間撹拌した後、室温で終夜撹拌した。得られた反応液に水道水およびジエチルエーテルを加えて撹拌し、下層を分離後、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後濾過し、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的とする4-ホルミルオキシドデカンチオ酸S-フルフリル(1.63g、4.79mmol、収率77%,これを本発明品1-15とする。)を得た。
【0219】
<<本発明品1-15の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.04(s,1H),7.32(brd,1H,J=1.6Hz),6.28(dd,1H,J=3.2Hz,1.6Hz),6.20(br d,1H,J=3.2Hz),4.97-5.03(m,1H)4.17(d,1H,J=14.8Hz),4.13(d,1H,J=14.8Hz),2.55-2.66(m,2H),1.86-2.06(m,2H),1.24-1.75(m,14H),0.88(t,3H,J=6.8Hz).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 197.3,160.8,150.3,142.2,110.6,107.9,73.1,39.5,33.9,31.8,31.6,29.4,29.3,29.2,29.2,25.6,25.1,22.6,14.1.
MS(EI,70eV)m/z 340(8),294(30),213(19),114(9),113(10),112(14),97(13),83(13),82(11),81(100),69(11),55(15),43(9).
【0220】
<実施例1-16-1:5-ホルミルオキシテトラデカン酸ベンジルの合成>
実施例1-13-1と同様の方法で5-ホルミルオキシテトラデカン酸ベンジルを合成した。
【0221】
<実施例1-16-2:5-ホルミルオキシテトラデカン酸の合成>
【0222】
【0223】
100mL二口フラスコに、5-ホルミルオキシテトラデカン酸ベンジル(1.16g,3.2mmol),99%EtOH(20mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.08g)を順次入れ、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮し、濾液を続く反応に付した。
【0224】
<実施例1-16-3:5-ホルミルオキシテトラデカンチオ酸S-フルフリルの合成>
先述の濾液を100mL二口フラスコに入れ、酢酸エチル(20mL)で溶解後、氷水冷下トリエチルアミン(1.4mL)およびピバロイルクロリド(0.90g)を順次加え、同温で1時間撹拌した。反応液に追加のトリエチルアミン(2.8mL)を加え、フルフリルメルカプタン(0.99g)を加え、同温で1時間、室温で終夜撹拌した。反応液に水道水を加え撹拌し下相を分離後、有機相を飽和重曹水および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的の5-ホルミルオキシテトラデカンチオ酸S-フルフリルを淡黄色油状物質として得た(0.28g,0.76mmol,これを本発明品1-16とする。)。5-ホルミルオキシテトラデカン酸ベンジルからの収率は24%であった。
【0225】
<<本発明品1-16の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.08(s,1H),7.32(dd,1H,J=2.0Hz,0.8Hz),6.28(dd,1H,J=3.2Hz,2.0Hz),6.20(dd,1H,J=3.2Hz,0.8Hz),4.98(br qui,1H,J=6.0Hz),4.15(s,2H),2.58(t,2H,J=6.8Hz),1.23-1.80(m,20H),0.88(t,3H,J=6.8Hz).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 197.7,160.9,150.4,142.2,110.6,107.9,73.7,43.3,33.9,33.0,31.9,29.5,29.5,29.4,29.3,25.6,25.2,22.7,21.1,14.1.
MS(EI,70eV)m/z 368(5),322(25),241(41),213(22),209(11),114(16),13(13),112(19),97(13),83(13),82(16),81(100),69(16),55(19),43(11).
【0226】
<実施例1-17-1:4-アセトキシブタン酸ベンジルの合成>
実施例1-14-1と同様の方法で4-アセトキシブタン酸ベンジルを合成した。
【0227】
<実施例1-17-2:4-アセトキシブタン酸の合成>
【0228】
【0229】
100mL二口フラスコに、4-アセトキシブタン酸ベンジル(2.36g,10mmol),99%エタノール(20mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.12g)を順次入れ、水素雰囲気下室温で2時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮し、濾液を続く反応に付した。
【0230】
<実施例1-17-3:4-アセトキシブタンチオ酸S-フルフリルの合成>
先述の濾液を100mL二口フラスコに加え、酢酸エチル(20mL)で溶解後、氷水冷下トリエチルアミン(1.8mL)およびピバロイルクロリド(1.32g)を順次加え、同温で1時間撹拌した。反応液に追加のトリエチルアミン(2.6mL)を加え、フルフリルメルカプタン(1.14g)を加え、同温で1時間、室温で終夜撹拌した。反応液に水道水を加え撹拌し下相を分離後、有機相を飽和重曹水および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的の4-アセトキシブタンチオ酸S-フルフリルを淡黄色油状物質として得た(0.36g,1.46mmol,これを本発明品1-17とする。)。4-アセトキシブタン酸ベンジルからの収率は15%であった。
【0231】
<<本発明品1-17の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 7.31(br d,1H,J=1.6Hz),6.28(dd,1H,J=3.2Hz,1.6Hz),6.20(br d,1H,J=3.2Hz),4.15(s,2H)4.08(t,2H,J=6.4Hz),2.66(t,2H,J=7.6Hz),1.97-2.04(m,5H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 197.2,170.9,150.3,142.2,110.6,107.9,63.1,40.2,25.6,24.3,20.8.
MS(EI,70eV)m/z 242(15),182(30),156(12),129(27),113(20),87(86),81(100),53(13),43(47).
【0232】
<実施例1-18-1:6-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジルの合成>
【0233】
【0234】
300mLナスフラスコに、ε-カプロラクトン(23.65g)、ギ酸ベンジル(141.05g,)およびp-トルエンスルホン酸(2.00g)を順次入れ、室温下終夜反応させた。反応液を5%重曹水および飽和食塩水で洗浄後、有機相を減圧蒸留し目的の6-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジルを無色油状物質として得た(25.28g)。
【0235】
<実施例1-18-2:6-ホルミルオキシヘキサン酸の合成>
【0236】
【0237】
300mLナスフラスコに、6-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジル(6.0g)、酢酸エチル(15mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.15g)を順次入れ、水素雰囲気下48時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、酢酸エチルで洗いこみ後、濾液を続く反応に付した。
【0238】
<実施例1-18-3:6-ホルミルオキシヘキサンチオS-酸の合成>
300mL三口フラスコに、先述の濾液、およびトリエチルアミン(4.9g)を入れ氷水冷下とした。さらに塩化ピバロイル(4.4g)を投入したのち、同温で30分撹拌した。反応液に、トリエチルアミン(4.9g)を加え、硫化水素を氷水冷下2時間吹き込んだ後、室温で終夜撹拌した。反応液に15%クエン酸水溶液を加え、酢酸エチル抽出した。有機相を水道水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、減圧濃縮した。残渣(10.84g)を減圧蒸留しチオ酸とカルボン酸の混合物として留出物を得た後(2.15g)、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、真空乾燥して目的の6-ホルミルオキシヘキサンチオS-酸を淡黄色油状物質として得た(1.01g,5.7mmol,これを本発明品1-18とする。)。6-ホルミルオキシヘキサン酸ベンジルからの収率は24%であった。
【0239】
<<本発明品1-18の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.05(s,1H),4.14-4.19(m,2H),2.63(t,2H,J=7.2Hz),1.64-1.74(m,4H),1.38-1.48(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 197.4,161.1,63.5,45.4,28.1,25.1,24.8.
MS(EI,70eV)m/z 115(68),97(56),73(19),69(100),55(47),42(11),41(73),31(15),29(11).
【0240】
<実施例1-19-1:6-アセトキシヘキサン酸ベンジルの合成>
【0241】
【0242】
300mLナスフラスコに、ε-カプロラクトン(25.0g)、酢酸ベンジル(164.5g)およびp-トルエンスルホン酸(2.20g)を順次入れ、室温下終夜反応させた。反応液を5%重曹水および飽和食塩水で洗浄後、有機相を減圧蒸留し目的の6-アセトキシヘキサン酸ベンジルを無色油状物質として得た(6.0g)。
【0243】
<実施例1-19-2:6-アセトキシヘキサン酸の合成>
【0244】
【0245】
300mLナスフラスコに、6-アセトキシヘキサン酸ベンジル(6.0g)、酢酸エチル(15mL)および炭素担持パラジウム触媒(5%Pd-C,wet type,0.15g)を順次入れ、水素雰囲気下48時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、酢酸エチルで洗いこみ後、濾液を続く反応に付した。
【0246】
<実施例1-19-3:6-アセトキシヘキサンチオS-酸の合成>
300mL三口フラスコに、先述の濾液、およびトリエチルアミン(4.9g)を入れ氷水冷下とした。さらに塩化ピバロイル(4.4g)を投入したのち、同温で30分撹拌した。反応液に、トリエチルアミン(4.9g)を加え、硫化水素を氷水冷下2時間吹き込んだ後、室温で終夜撹拌した。反応液に15%クエン酸水溶液を加え、酢酸エチル抽出した。有機相を水道水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、減圧濃縮した。残渣(10.84g)を減圧蒸留しチオ酸とカルボン酸の混合物として留出物を得た後(2.15g)、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、真空乾燥して目的の6-アセトキシヘキサンチオS-酸を淡黄色油状物質として得た(2.04g,10.7mmol,これを本発明品1-19とする。)。6-アセトキシヘキサン酸ベンジルからの収率は47%であった。
【0247】
<<本発明品1-19の物性値>>
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 4.05(t,2H,J=6.8Hz)2.63(t,2H,J=7.2Hz),2.04(s,3H),1.60-1.80(m,4H),1.34-1.47(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 197.5,171.2,64.1,45.5,28.2,25.2,24.9,21.0.
MS(EI,70eV)m/z 115(100),97(43),73(13),69(42),55(28),43(67),41(22).
【0248】
[実施例2]本件化合物の香気特性
本件化合物の香気評価を以下の手順により行った。実施例1で合成した本発明品1-1~1-19の1%エタノール溶液をそれぞれ調製し、本発明品2-1~2-19とした。本発明品2-1~2-19を、よく訓練された経験年数10年以上のパネリスト5名に嗅がせ、感じられる香気についてコメントさせた。代表的なコメントを表1に示す。
【0249】
【0250】
[実施例3]香料組成物(ミルク様)への添加効果
表2の処方に従って、ミルク基本調合香料組成物を調製した。
【0251】
【0252】
ミルク基本調合香料組成物に、必要に応じてエタノールで希釈した本発明品1-1~1-19を香味付与組成物として、ミルク基本調合香料組成物中の本件化合物の濃度が表3に示す濃度になるように添加し、本発明品3-1~3-57の香料組成物を調製した。そして、得られた本発明品3-1~3-57の香料組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-1~1-19のいずれも添加していないミルク基本調合香料組成物を対照品として、本発明品3-1~3-57を対照品と比べた際の香気についてコメントさせることにより行った。
【0253】
官能評価の結果を表3に示す。
【0254】
【0255】
表3に示すように、本件化合物を含む香味付与組成物は、ミルク様香料組成物にフレッシュ感およびコク感を付与することが確認された。
【0256】
[実施例4]香料組成物(グレープフルーツ様)への添加効果
表4の処方に従って、グレープフルーツ基本調合香料組成物を調製した。
【0257】
【0258】
グレープフルーツ基本調合香料組成物に、必要に応じてエタノールで希釈した本発明品1-1~1-19を香味付与組成物として、グレープフルーツ基本調合香料組成物中の本件化合物の濃度が表5に示す濃度になるように添加し、本発明品4-1~4-57の香料組成物を調製した。そして、得られた本発明品4-1~4-57の香料組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-1~1-19のいずれも添加していないグレープフルーツ基本調合香料組成物を対照品として、本発明品4-1~4-57を対照品と比べた際の香気についてコメントさせることにより行った。
【0259】
官能評価の結果を表5に示す。
【0260】
【0261】
表5に示すように、本件化合物を含む香味付与組成物は、グレープフルーツ様香料組成物にフレッシュ感およびピール感を付与することが確認された。
【0262】
[実施例5]飲食品(マンゴー風味飲料)への添加効果
市販の30%マンゴー果汁入り飲料(以下、マンゴー基本飲料という。)に、必要に応じてエタノールで希釈した本発明品1-1~1-19を香味付与組成物として、マンゴー基本飲料中の本件化合物の濃度が表6に示す濃度になるように添加し、本発明品5-1~5-57のマンゴー風味飲料を調製した。
【0263】
そして、得られた本発明品5-1~5-57のマンゴー風味飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-1~1-19のいずれも添加していないマンゴー基本飲料を対照品として、本発明品5-1~5-57を対照品と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせることにより行った。
【0264】
官能評価の結果を表6に示す。
【0265】
【0266】
表6に示すように、本件化合物を含む香味付与組成物は、マンゴー風味飲料に果肉感、完熟感および果汁感を付与し、マンゴー風味飲料の香味を改善することが確認された。なお、本発明品5-31~5-33に示すように、4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-p-メンタ-1-エン-8-イルを含む香味付与組成物(本発明品1-11)は、マンゴーの香調と相性がよく、幅広い濃度範囲で果汁感の付与効果を奏することが確認された。
【0267】
[実施例6]飲食品(ビール風味飲料)への添加効果
市販のノンアルコールビールに、必要に応じてエタノールで希釈した本発明品1-1~1-19を香味付与組成物として、ノンアルコールビール中の本件化合物の濃度が表7に示す濃度となるように添加し、本発明品6-1~6-19のビール風味飲料を調製した。
【0268】
そして、得られた本発明品6-1~6-19のビール風味飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-1~1-19のいずれも添加していないノンアルコールビールを対照品として、本発明品6-1~6-19を対照品と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせることにより行った。
【0269】
官能評価の結果を表7に示す。
【0270】
【0271】
表7に示すように、本件化合物を含む香味付与組成物は、ビール風味飲料にさわやかな苦い香味および麦芽の香ばしさを付与し、ビール風味飲料の香味を改善することが確認された。
【0272】
[実施例7]飲食品(コーヒー風味飲料)への添加効果
市販のブラックコーヒーに、必要に応じてエタノールで希釈した本発明品1-1~1-19を香味付与組成物として、ブラックコーヒー中の本件化合物の濃度が表8に示す濃度となるように添加し、本発明品7-1~7-57のコーヒー風味飲料を調製した。
【0273】
そして、得られた本発明品7-1~7-57のコーヒー風味飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-1~1-19のいずれも添加していないブラックコーヒーを対照品として、本発明品7-1~7-57を対照品と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせることにより行った。
【0274】
官能評価の結果を表8に示す。
【0275】
【0276】
表8に示すように、本件化合物を含む香味付与組成物は、コーヒー風味飲料に挽きたて感、淹れたて感およびロースト感などを付与し、コーヒー風味飲料の香味を改善することが確認された。なお、本発明品7-31~7-33に示すように、4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-p-メンタ-1-エン-8-イルを含む香味付与組成物(本発明品1-11)は、コーヒーの香調と相性がよく、幅広い濃度範囲で挽きたて感、淹れたて感および香ばしさの付与効果を奏することが確認された。
【0277】
[実施例8]飲食品(各種嗜好飲料(紅茶、麦茶、ココア))への添加効果
市販の無糖紅茶、麦茶、ココアに、必要に応じてエタノールで希釈した本発明品1-1~1-19を香味付与組成物として、各市販品中の本件化合物の濃度が表9に示す濃度となるように添加し、本発明品8-1~8-57の嗜好飲料を調製した。
【0278】
そして、得られた本発明品8-1~8-57の嗜好飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-1~1-19のいずれも添加していない各市販品を対照品として、本発明品8-1~8-57を対照品と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせることにより行った。
【0279】
官能評価の結果を表9に示す。
【0280】
【0281】
表9に示すように、本件化合物を含む香味付与組成物は、嗜好飲料に茶葉の苦さおよび/または香ばしさを付与し、嗜好飲料の香味を改善することが確認された。
【0282】
[実施例9]飲食品(スープ)への添加効果
市販のオニオンコンソメスープ(レトルト調理品)に、必要に応じてエタノールで希釈した本発明品1-1~1-19を香味付与組成物として、オニオンコンソメスープ中の本件化合物の濃度が表10に示す濃度となるように添加し、本発明品9-1~9-19のスープを調製した。
【0283】
そして、得られた本発明品9-1~9-19のスープについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-1~1-19のいずれも添加していないオニオンコンソメスープを対照品として、本発明品9-1~9-19を対照品と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせることにより行った。
【0284】
官能評価の結果を表10に示す。
【0285】
【0286】
表10に示すように、本件化合物を含む香味付与組成物は、スープに香ばしさ、コク、肉のロースト感および/またはスパイス感を付与し、スープの香味を改善することが確認された。
【0287】
[実施例10]飲食品(アイスクリーム)への添加効果
表11の処方に従って、アイスクリーム(ベース)を調製した。
【0288】
【0289】
アイスクリーム(ベース)に、必要に応じてエタノールで希釈した本発明品1-1~1-19を香味付与組成物として、アイスクリーム(ベース)中の本件化合物の濃度が表12に示す濃度になるように添加し、本発明品10-1~10-19のアイスクリームを調製した。
【0290】
そして、得られた本発明品10-1~10-19のアイスクリームについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-1~1-19のいずれも添加していないアイスクリーム(ベース)を対照品として、本発明品10-1~10-19を対照品と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせることにより行った。
【0291】
官能評価の結果を表12に示す。
【0292】
【0293】
表12に示すように、本件化合物を含む香味付与組成物は、アイスクリームにミルク様のフレッシュ感を付与し、アイスクリームの香味を改善することが確認された。
【0294】
[実施例11]飲食品(クッキー)への添加効果
表13の処方に従って、クッキー生地を調製した。
【0295】
【0296】
調製されたクッキー生地に、必要に応じてエタノールで希釈した本発明品1-1~1-19を香味付与組成物として、クッキー生地中の本件化合物の濃度が表14に示す濃度となるように添加し、220℃で7分間焼き上げ、本発明品11-1~11-19のクッキーを調製した。
【0297】
そして、得られた本発明品11-1~11-19のクッキーについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-1~1-19のいずれも添加せずに上記条件で焼き上げたクッキーを対照品として、本発明品11-1~11-19を対照品と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせることにより行った。
【0298】
官能評価の結果を表14に示す。
【0299】
【0300】
表14に示すように、本件化合物を含む香味付与組成物は、クッキーに(焦がしバター様の)香ばしさ、卵様のコク、小麦のロースト感および/または焼き立て感を付与し、クッキーの香味を改善することが確認された。
【0301】
[実施例12]香粧品(台所用洗剤)への添加効果
市販のオレンジ調、ベリー調、ローズ調およびピーチ調の香調の各台所用洗剤に、本発明品1-1~1-19を香味付与組成物として、台所用洗剤中の本件化合物の濃度が表15に示す濃度となるように添加し、本発明品12-1~12-76の台所用洗剤を調製した。そして、得られた本発明品12-1~12-76の台所用洗剤について、5名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品を添加していない上記各台所用洗剤を対照品として、本発明品12-1~12-76を対照品と比べた際の香気の違いについてパネリストにコメントさせることにより行った。
【0302】
官能評価の結果を表15に示す。
【0303】
【0304】
表15に示すように、本件化合物を含む香味付与組成物は、柑橘調、フルーツ調やフローラル調の各香調の洗剤の香気改善に有用であることが確認された。なお、4-ホルミルオキシブタンチオ酸S-p-メンタ-1-エン-8-イルを含む香味付与組成物(本発明品1-11)は、オレンジ調、ベリー調、ローズ調およびピーチ調の各香調の洗剤と相性がよく、表15に示した濃度を含む0.001~1ppmの幅広い濃度範囲でフレッシュ感の付与効果を奏することが確認された。