(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ひずみゲージ、荷重センサ、ひずみゲージの製造方法、及び荷重センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
G01B7/16 R
(21)【出願番号】P 2022125678
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2019103613の分割
【原出願日】2016-08-31
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2015191990
(32)【優先日】2015-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【氏名又は名称】河村 育郎
(72)【発明者】
【氏名】稲森 道伯
(72)【発明者】
【氏名】江原 陽介
(72)【発明者】
【氏名】唐木 忠彦
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-302809(JP,A)
【文献】特開2010-243192(JP,A)
【文献】特開2015-094607(JP,A)
【文献】特開平08-148779(JP,A)
【文献】国際公開第2004/050352(WO,A1)
【文献】特開2003-338525(JP,A)
【文献】特開2008-309721(JP,A)
【文献】特開2005-140653(JP,A)
【文献】特開昭59-077303(JP,A)
【文献】特開平09-001723(JP,A)
【文献】特開2001-315256(JP,A)
【文献】特開2007-271280(JP,A)
【文献】特開平10-013020(JP,A)
【文献】特開2009-168505(JP,A)
【文献】特許第2651556(JP,B2)
【文献】特開2005-214970(JP,A)
【文献】特開昭61-176803(JP,A)
【文献】特開2013-234949(JP,A)
【文献】特開平04-350947(JP,A)
【文献】特開平06-218880(JP,A)
【文献】特開平07-166148(JP,A)
【文献】国際公開第2015/030237(WO,A1)
【文献】特開2012-220708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひずみゲージと、計測対象の重量に応じて変形する金属製且つ平板の起歪体とを用いて荷重センサを製造する方法であって、
前記ひずみゲージは、
樹脂材料で形成された基材と、
前記基材の表面上に設けられた金属製の抵抗体であって、一対のタブ及び該一対のタブの一方からジグザグに折り返しながら延在して該一対のタブの他方に接続するゲージ受感部を有する抵抗体と、
前記基材の、前記抵抗体が設けられた表面とは反対側の表面に設けられた融着層と、
前記ゲージ受感部を覆う、ポリイミドで形成されたカバーとを有し、
前記基材はポリイミドで形成され、可撓性を有し、且つ12μm~25μmの厚さを有する板状部材であり、
前記融着層が3μm~12μmの厚さを有する熱可塑性ポリイミド層であるひずみゲージであって、
前記製造方法は、
前記金属製且つ平板の起歪体の表面
の一部に前記ひずみゲージの前記融着層を接触させることと、
前記起歪体の
前記ひずみゲージとは反対側に配置されたヒータによって
、前記
起歪体上の前記融着層が接触されている部分を局所的に加熱することと、
前記加熱と同時に
前記カバーを介して前記ひずみゲージを前記起歪体に向けて押圧することとを含む製造方法。
【請求項2】
前記加熱及び前記押圧を行う時間が5秒~20秒である請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記起歪体はアルミニウム合金製である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記加熱の加熱温度が220℃~260℃である請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリイミド(TPI)層を融着層として備えるひずみゲージ、該ひずみゲージを備える荷重センサ、該ひずみゲージの製造方法、及び該荷重センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の重量計測等に使用される荷重センサは、起歪体とひずみゲージとを主に備える。起歪体は一般にアルミニウム合金等の金属製であり、計測対象の重量に応じて変形する(ひずみを生じる)。ひずみゲージは一般に、絶縁性を有する板状の基材と、基材の一面上に設けられた抵抗体とを有し、基材の他面が起歪体の表面に接着剤によって固定されている。起歪体に変形(ひずみ)が生じるとこれに応じてひずみゲージの抵抗体に伸縮が生じ、抵抗体の電気抵抗値が変化する。計測対象の重量は、この抵抗体の電気抵抗値の変化に基づいて求められる。ひずみセンサの一例は特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
荷重センサにおいては、ひずみ追従性を損なわないようにクリープ現象を抑制するという観点や、ひずみの良好な伝達という観点から、抵抗体と起歪体との間の絶縁性と接着性を維持しつつひずみゲージを薄くすることが望まれている。
【0005】
ところで、上記のような荷重センサを製造するには、一般に、熱硬化性の接着剤を用いてひずみゲージを起歪体に接着する。接着においては、ひずみゲージに接着剤を塗布し、接着剤を塗布したひずみゲージを起歪体に接触させた状態でそれらを治具で一体に保持してひずみゲージと起歪体との接触面を加圧保持する。次いで、一体に保持されたひずみゲージと起歪体とを炉に入れて加熱して接着剤を硬化させる。加熱後にひずみゲージ及び起歪体を炉から取り出して治具を取り外し、最後にひずみゲージと起歪体との接触面から余分な接着剤を除去する。
【0006】
このような、接着剤を使用する複雑で手間のかかる荷重センサの製造工程をより単純化又は簡素化して製造効率を高くしたいという要望もある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決し、ひずみゲージを出来るだけ薄くするとともに、より簡単なプロセスで荷重センサを製造することができるひずみゲージ、該ひずみゲージを備える荷重センサ、該ひずみゲージの製造方法、及び該荷重センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、樹脂材料で形成された基材と、
前記基材の表面上に設けられた抵抗体と、
前記基材の、前記抵抗体が設けられた前記表面とは反対側の表面に設けられた融着層とを備え、
前記基材はポリイミドで形成され、可撓性を有し、且つ12μm~25μmの厚さを有する板状部材であり、
前記融着層が3μm~12μmの厚さを有する熱可塑性ポリイミド層であるひずみゲージが提供される。
【0009】
本発明の第2の態様に従えば、樹脂材料で形成された基材の一面上に複数の抵抗体を形成することと、
前記基材の他面上に3μm~12μmの厚さを有する熱可塑性ポリイミド層である融着層を形成することと、
前記基材を切断して、切断された前記基材の一面上に抵抗体を有し、他面上に前記融着層を有する複数のひずみゲージを得ることとを含み、
前記基材はポリイミドで形成され、可撓性を有し、且つ12μm~25μmの厚さを有する板状部材であるひずみゲージの製造方法が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様に従えば、ひずみゲージと、計測対象の重量に応じて変形する金属製且つ平板の起歪体とを用いて荷重センサを製造する方法であって、
前記ひずみゲージは、
樹脂材料で形成された基材と、
前記基材の表面上に設けられた金属製の抵抗体であって、一対のタブ及び該一対のタブの一方からジグザグに折り返しながら延在して該一対のタブの他方に接続するゲージ受感部を有する抵抗体と、
前記基材の、前記抵抗体が設けられた表面とは反対側の表面に設けられた融着層と、
前記ゲージ受感部を覆う、ポリイミドで形成されたカバーとを有し、
前記基材はポリイミドで形成され、可撓性を有し、且つ12μm~25μmの厚さを有する板状部材であり、
前記融着層が3μm~12μmの厚さを有する熱可塑性ポリイミド層であるひずみゲージであって、
前記製造方法は、
前記金属製且つ平板の起歪体の表面に前記ひずみゲージの前記融着層を接触させること
と、
前記起歪体の、前記表面と前記融着層との接触部とは反対側に配置されたヒータによっ
て前記接触部を加熱することと、
前記加熱と同時に前記ひずみゲージを前記起歪体に向けて押圧することとを含む製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のひずみゲージは、薄く、且つより簡単なプロセスで荷重センサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係るひずみゲージの斜視図である。
【
図2】
図2は融着層の厚みとひずみゲージの諸特性との関係を表すグラフである。
【
図3】
図3はひずみゲージの製造工程を示すフローチャートである。
【
図4】
図4はひずみゲージを起歪体に取り付けて荷重センサを製造する工程を示すフローチャートである。
【
図5】
図5はひずみゲージを起歪体に取り付ける様子を示す説明図である。
【
図6】
図6は本発明の実施形態に係る荷重センサの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のひずみゲージの実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0014】
図1に示す通り、実施形態のひずみゲージ10は、基材1と、基材1の一面上に設けられた抵抗体2と、抵抗体2を覆うカバー3と、基材1の他面上に設けられた融着層4とを主に有する。
【0015】
基材1は、樹脂材料で形成された可撓性を有する板状部材であり、より具体的には平行平板である。樹脂材料は、好ましくはポリイミド(PI)樹脂であり、以下ではポリイミド基材として説明するが、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などでも構わない。基材1の厚さは例えば約12μm~約25μmmである。
【0016】
抵抗体2は、例えば、銅ニッケル合金により形成された金属層であり、外部接続用のリード線が接合される一対のタブ2tと、一方のタブ2tからジグザグに折り返しながら延在して他方のタブ2tに接続するゲージ受感部2cとを有する。
【0017】
カバー3は、抵抗体2のゲージ受感部2cのみを覆うように抵抗体2の上に設けられ、ゲージ受感部2cに損傷等が生じることを防いでいる。カバー3は一例としてポリイミドで形成することができるが、前述のPAI、PE、PEEK等でもよい。なお、
図1においては、抵抗体2のゲージ受感部2cを明示するためカバー3は破線で示している。
【0018】
融着層4は、基材1の抵抗体2が形成された面とは反対側の面に積層された熱可塑性ポリイミド層である。融着層4の厚さは、3μm~12μmとすることが好ましく、例えば5μmとすることができる。この数値範囲が好ましい理由を、
図2に従って説明する。
図2はひずみゲージ10と後述する粗面処理をした起歪体20を接着した時のひずみゲージの融着層の厚みとひずみゲージの諸特性(ピール強度、絶縁性及びひずみ追従性)との関係を表すグラフである。融着層4の厚みが3μmではピール強度は3N/cmとなってしまい、融着層4の厚さが3μm以下ではひずみゲージ10を起歪体20(
図6)に十分なピール強度で固定することが出来ない。また、本発明では、この融着層4(熱可塑性ポリイミド層)が基材1(ポリイミド基材)とともに抵抗体2と起歪体20とを絶縁する機能を担っているため、融着層4(熱可塑性ポリイミド層)の厚みが薄すぎる場合、絶縁性が落ちてしまう恐れもある。
図2中、絶縁性は任意スケールで表わしており、ピール強度と同様に融着層4の厚みが増すほど高くなる傾向を示している。一方、融着層4の厚さが12μmよりも大きい場合には、起歪体20の粗面処理の影響もあり接着強度は更に上がるが、クリープ特性といったひずみ追従性が十分に得られなくなる。
【0019】
後述するように表面を粗面処理した起歪体20に融着層4を融着させる場合、融着層4の厚みは、起歪体20の表面粗さ以上であってよい。融着層4の厚みが起歪体20の表面粗さ未満である場合、起歪体20の凹凸の凹部の底まで融着層4が入り込むことができず、融着層4と起歪体20の間の接着強度が不十分になったり、後述する実施例で示すように信頼性が損なわれたりすることがある。
【0020】
熱可塑性ポリイミド層は、熱可塑性ポリイミドの他に、熱可塑性ポリイミド以外の樹脂及び/又はフィラーを含有してよい。熱可塑性ポリイミドは高価であるため、熱可塑性ポリイミド層が低コストの樹脂及び/又はフィラーを含有することで、ひずみゲージの原料費を低くすることができる。
【0021】
熱可塑性ポリイミド以外の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、オキセタン樹脂等が挙げられる。また、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等のエンジニアリングプラスチックを用いてもよい。
【0022】
エポキシ樹脂を含有する熱可塑性ポリイミド層は、ポリアミド酸とエポキシ樹脂を混合して加熱することにより得ることができる。このようにして得られたエポキシ樹脂を含有する熱可塑性ポリイミド層は、後述する参考例で示すように、エポキシ樹脂を含有しない熱可塑性ポリイミド層と比べて接着強度が高いという利点がある。
【0023】
フィラーとしては、酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化ケイ素等の無機微粒子が挙げられる。後述する参考例で示すように熱可塑性ポリイミド層に無機微粒子を適当な比率で含有させることにより、融着層4の線膨張係数を調整することができる。本実施形態のひずみゲージ10の融着層4の厚みは、従来のひずみゲージの接着剤の厚みよりも大きく、本実施形態のひずみゲージ10を起歪体20に取り付けるときの融着層4の加熱温度(融着温度)は、従来のひずみゲージを起歪体に取り付けるときの接着剤の加熱温度よりも高い。そのため、起歪体20に取り付けた本実施形態のひずみゲージ10の融着層4には、残留応力が発生しやすい傾向がある。それゆえ、本実施形態のひずみゲージ10においては、融着層4の線膨張係数を起歪体20の線膨張係数に近い値とすることで残留応力を抑制することが好ましい。よって、無機微粒子の配合量によって線膨張係数を調整できる、無機微粒子を含有する熱可塑性ポリイミド層は、本実施形態のひずみゲージ10の融着層4の材料として好適である。
【0024】
次に、本実施形態のひずみゲージ10の製造方法を、
図3のフローチャートに従って説明する。
【0025】
図3に示す通り、本実施形態のひずみゲージ10の製造方法は、片面上に金属箔が形成されたポリイミド樹脂を積層する基板準備工程(S01)と、ポリイミド基板の金属箔が形成された面とは反対側の面に融着層4を形成する融着層形成工程(S02)と、ポリイミド基板上の金属箔から複数の抵抗体2を形成する抵抗体形成工程(S03)と、形成された複数の抵抗体2の各々をカバー3で覆うカバー形成工程(S04)と、基板を複数のひずみゲージ10へと切断する分割工程(S05)とを含む。
【0026】
基板準備工程S01では、例えば、金属箔上にポリイミドを塗布し、焼成することでポリイミド基板を形成する。これにより、片面上に金属箔が設けられた板状のポリイミド基板が形成される。これにより、片面上に金属箔が設けられた板状のポリイミド基板が形成される。
【0027】
融着層形成工程S02では、例えば、ポリイミド基板の金属箔が形成された面とは反対側の面に熱可塑性ポリイミドワニスを塗布し、焼成する。これにより熱可塑性ポリイミド層である融着層4がポリイミド基板上に形成される。なお、熱可塑性ポリイミドワニスは、熱可塑性ポリイミド以外の樹脂及び/又はフィラーを含有してよい。また、熱可塑性ポリイミドワニスに代えて、熱可塑性ポリアミド酸ワニスを用いてもよい。抵抗体形成工程S03では、フォトリソグラフィを用いて、金属箔から複数の抵抗体2を形成し、カバー形成工程S04では、基板上に形成された複数の抵抗体2のそれぞれについて、ゲージ受感部2cをポリイミドのカバー3で覆う。分割工程S05では、抵抗体2の配置に従って基板を切削し、基材1、抵抗体2、カバー3、融着層4をそれぞれ1つずつ有する複数のひずみゲージ10を得る。
【0028】
次に、本実施形態のひずみゲージ10を起歪体20(
図6)に取り付けて荷重センサを製造する方法について説明する。
【0029】
図4のフローチャートに示す通り、ひずみゲージ10を起歪体20に取り付ける工程は、起歪体20の表面に凹凸を形成する表面処理工程(S11)、起歪体20にひずみゲージ10を融着する加熱・加圧工程(S12)、互いに固着されたひずみゲージ10及び起歪体20を空冷する冷却工程(S13)を含む。
【0030】
起歪体20は、アルミニウム合金等の金属によって形成することができる。また起歪体20は、
図6に示される板状部材には限られず、ロバーバル形、リング形等の様々な形状とし得る。また、起歪体20に取り付けられるひずみゲージ10の数は1つには限られず任意である。
【0031】
表面処理工程S11では、起歪体20の、ひずみゲージ10が融着される部分に粗面処理を施す。粗面処理は、例えば、サンドブラストやレーザブラスト、ケミカルエッチングなどにより起歪体20の表面に細かな凸凹を形成する。当該部分の表面粗さRaを例えば約5μmとする。センター値として約5μmで、3μm~7μmにするのが好ましい。その後、粗面処理が施された部分を洗浄する。これにより、起歪体20の表面に微小な凹凸を形成して起歪体20とひずみゲージ10の融着層4との接触面積を大きくすることができ、ひずみゲージ10をより高い接着強度で起歪体20に融着することが可能となる。
【0032】
加熱・加圧工程S12では、以下に詳述するように、ひずみゲージ10の融着層4を、起歪体20の粗面処理が施された部分に接触させた状態で加熱及び加圧を行い、ひずみゲージ10を起歪体20に融着する。
図5(a)~
図5(d)は、加熱・加圧工程S12を実施する具体的な手順の一例を示す。まず、
図5(a)に示すように、コンベア90上に載置された起歪体20に治具50によって保持されたひずみゲージ10を近接させ、次いで、
図5(b)に示すように、ひずみゲージ10の融着層4を起歪体20に接触させる。
【0033】
次いで、
図5(c)に示す通り、コンベア90の下方に配置された瞬間加熱ヒータ70によって、起歪体20の一部分、即ちひずみゲージ10の融着層4が接触されている部分を局所的に加熱する。同時に、治具50を更に下方に押し付けることでひずみゲージ10を起歪体20に押圧し、ひずみゲージ10の融着層4と、起歪体20の粗面処理が施された表面とを圧着させる。これにより融着層4を形成する熱可塑性ポリイミドが溶融し、表面処理工程S11において起歪体20の表面に形成された微小な凹部に侵入する。
【0034】
加熱温度は、一例として220℃~260℃程度、加圧力は一例として1N/m2~2N/m2程度、加熱及び加圧を行う時間は、一例として5秒~20秒程度とすることができる。
【0035】
冷却工程S13では、
図5(d)に示す通り、治具50によるひずみゲージ10の保持を解除し、ひずみゲージ10と起歪体20とを空冷する。これにより、融着層4を形成する熱可塑性ポリイミドが凝固し、ひずみゲージ10が起歪体20に高い接着強度で融着される。
【0036】
こうして、
図6に示すような、起歪体20とその一部に取り付けられたひずみゲージ10とを備える荷重センサ100を製造することができる。
【0037】
上記のように、本実施形態のひずみゲージ10の取付け方法は、ひずみゲージ10の融着層4を起歪体20に接触させて加熱及び加圧を同時に行い、次いで冷却するだけでひずみゲージ10を起歪体20に高い接着強度で固定することができる。したがって、ひずみゲージに接着剤を塗布する塗布工程や、ひずみゲージと起歪体との接触面から余分な接着剤を除去する接着剤除去工程を含む、熱硬化性の接着剤を用いる従来の工程に比べて、ひずみゲージ10の起歪体20への取付けを短時間で効率よく行うことができる。
【0038】
本実施形態のひずみゲージ10の取付け方法は、ひずみゲージ10の融着層4と起歪体20との接触面の近傍のみを、瞬間加熱ヒータ70によって局所的に加熱し、ひずみゲージ10の起歪体20への融着を行っている。したがって、本実施形態の取付け方法によれば、治具によって固定されたひずみゲージと起歪体とを炉内に配置し、ひずみゲージ、起歪体、治具の全体を150度以上で1時間以上加熱する従来の工程に比べて、加熱に要するエネルギー量を大きく低減することができる。
【0039】
本実施形態のひずみゲージ10が備える融着層4は短時間の加熱及び加圧で起歪体20に融着することができるため、ひずみゲージ10を起歪体20に取り付ける取付け工程を、治具50と瞬間加熱ヒータ70とを用いた一個流し工程として実現することができる。このような一個流しの取付け工程は、1時間以上の加熱工程を含むバッチ処理工程として行われる従来法の加熱・加圧工程(即ち、ひずみゲージと起歪体とを治具で一体に保持してひずみゲージと起歪体との接触面を加圧し、一体に保持されたひずみゲージと起歪体とを炉内で加熱し、加熱後にひずみゲージ及び起歪体を炉から取り出して治具を取り外すことを含む従来法の加熱・加圧工程)に比べて簡略である。
【0040】
ところで、ひずみ追従性の悪化の一つの例として、起歪体に取り付けられたひずみゲージの基材において、起歪体から離れた部分のひずみ量、即ち起歪体との接着面とは反対側の面である抵抗体が設けられた面の弾性変形の量(ひずみ量)が時間の経過と共に次第に小さくなることによってクリープ現象が生じることがある。このようなクリープ現象を抑制するためには、基材の厚みを小さくし、抵抗体をできるだけ起歪体の近くに配置することが望ましい。
【0041】
一方で、抵抗体及び起歪体は導体であるため、誘電体である基材によって抵抗体と起歪体とを絶縁しておく必要がある。したがって、クリープ現象の発生を抑制すべく基材の厚みを過度に小さくすると、絶縁破壊が生じて荷重センサが破損してしまう。
【0042】
本実施形態のひずみゲージ10は、ポリイミドで形成された基材1と、基材1の抵抗体2が形成された面とは反対側の面に形成された熱可塑性ポリイミド層である融着層4からなる積層構造を有する。このため、ポリイミドで形成された基材1の厚さを小さくしても、基材1と融着層4からなる積層構造によって抵抗体2と起歪体20とを良好に絶縁することができる。したがって、本実施形態のひずみゲージ10によれば、抵抗体2と起歪体20とを良好に絶縁しながら、基材1の厚さを小さくしてクリープ現象の発生を抑制することができるという効果もある。
【0043】
換言すれば、本実施形態のひずみゲージ10は、ポリイミド基材の一部分を熱可塑性ポリイミド層である融着層に置き換えた構成であるといえる。これにより、本実施形態のひずみゲージ10は、基材1の厚さを小さくしてクリープ現象の発生を抑制すると同時に、基材1と熱可塑性ポリイミド層である融着層4との積層構造により絶縁性能を維持しており、且つひずみゲージ10の起歪体20への接着を融着層4を用いて効率良く行うことが可能となっている。
【0044】
本実施形態のひずみゲージ10は、基材1をポリイミドにより形成し、融着層4を熱可塑性ポリイミドにより形成しているが、ポリイミドと熱可塑性ポリイミドとは共にポリイミド系の材料であるため相性がよく、高い接着強度を有して互いに接着されている。そのため、ひずみゲージ10を起歪体20に取り付けた状態においては、ひずみゲージ10の基材1が高い接着強度を有して起歪体20に固定されるという効果もある。なお、PAI、PE、PEEKも熱可塑性ポリイミドと同様に十分な接着強度を及び絶縁性能を有しており、基板1をポリイミドに代えてこれらの材料で形成することも可能である。また、その他の樹脂材料も、熱可塑性ポリイミドと十分な接着強度を有していれば、ポリイミドに代えて使用することは可能である。
【0045】
本実施形態のひずみゲージ10は、基材1の厚さが薄いため、ひずみゲージ10から融着層4を除いた部分の厚さが、従来のひずみゲージ、即ち融着層を有さず接着剤を用いて起歪体に取り付けるひずみゲージの厚さよりも小さい。したがって、本実施形態のひずみゲージ10を融着層4を介して起歪体20に取り付けた状態と、従来のひずみゲージを接着剤を用いて起歪体に取り付けた状態とを比較すると、本実施形態のひずみゲージ10の厚さは、従来のひずみゲージと接着材との合計の厚さよりも薄い。
【0046】
また、本実施形態のひずみゲージ10の融着層4は熱可塑性ポリイミドで形成されているため、熱硬化性の接着剤とは異なり常温で半永久的に保存することができる。それゆえ、本実施形態のひずみゲージ10は保存や取扱いが容易である。
【0047】
本実施形態のひずみゲージ10の製造方法によれば、分割工程S05を行う前に、融着層形成工程S04を行って、複数のひずみゲージ10の融着層4を一括して一工程で形成している。したがって融着層4を有するひずみゲージ10を効率よく製造することができる。
【0048】
なお上記実施形態のひずみゲージ10においては、カバー3をポリイミドで形成していたが、カバー3をその他の材料で形成することもできる。具体的には例えば、カバー3を熱可塑性ポリイミドで形成してもよい。
【0049】
なお上記実施形態の取付け方法においては、ひずみゲージ10を起歪体20に融着する際に起歪体20側から加熱を行っていたが、ひずみゲージ10側から加熱を行ってもよい。具体的には例えば、治具50にヒータを設け、治具50を用いて加熱と加圧の両方を行うことができる。あるいは、加熱・加圧工程S12は、治具によって加圧状態で保持されたひずみゲージ10と起歪体20を炉内に配置することにより行っても良い。
【0050】
なお、上記実施形態の取付け方法は、表面処理工程を含まなくてもよい。
【実施例】
【0051】
本発明のひずみゲージ及び荷重センサを実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
実施例1
実施例1において、以下のようにしてひずみゲージを作製した。まず、金属箔上にポリイミドワニスをキャスト法により塗布し、焼成することにより、片面に金属箔が設けられたポリイミド基板を得た。次に、ポリイミド基板の金属箔の設けられた面の反対の面に熱可塑性ポリイミドワニスをキャスト法により塗布し、焼成し、4μm厚さの融着層を形成した。金属箔上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、金属箔をエッチングすることにより、ポリイミド基板上に複数の抵抗体を形成した。さらに、抵抗体のゲージ受感部上にポリイミドワニスを塗布してカバーを形成した。抵抗体の配置に従ってポリイミド基板を切削して、複数のひずみゲージを得た。
【0053】
得られたひずみゲージを用いて、以下のようにして荷重センサを作製した。起歪体として用いる厚み1mmのアルミニウム基板の表面をレーザーブラストにより粗面処理し、洗浄した。粗面処理した表面の粗さを表面粗さ計(東京精密社製SURFCOMシリーズ、触針方式の表面粗さ測定機)により測定したところ、7μmであった。ここで測定した表面粗さは、最大高さ粗さ(Rz)である。ひずみゲージを治具で保持し、ひずみゲージの融着層を起歪体の粗面処理した部分に接触させ、30kgf/cm2の圧力で加圧しながら、起歪体の下方に配置したヒータにより、起歪体と融着層の接触部分を270℃で13秒間加熱した。次いで、治具によるひずみゲージの保持を解除し、ひずみゲージと起歪体とを空冷した。これにより、ひずみゲージが起歪体に融着され、荷重センサが得られた。
【0054】
実施例2
焼成により9μm厚さの融着層となる熱可塑性ポリイミドワニスを塗布した以外は実施例1と同様にして複数のひずみゲージを作製した。また、実施例1と同様にして荷重センサを作製した。
【0055】
<信頼性試験>
実施例1の荷重センサを16個、実施例2の荷重センサを15個用意し、各荷重センサのゼロバランスを測定した。次いで、ひずみゲージ周辺に人工汗液を塗布し、24時間常温常湿にて放置した。その後荷重センサを高温高湿環境下に1週間曝した後、荷重センサのゼロバランスを測定し、初期値との差(変化量)を求めた。なお、ゼロバランスの測定とは、無負荷時、定格印加電圧を加えた際の荷重センサの出力電圧を測定することを意味する。
【0056】
実施例1では、16個中4個の荷重センサのゼロバランスの変化量が0.025mVを超えていた。一方、実施例2では、ゼロバランスの変化量が0.025mVを超えたものは15個中ひとつもなかった。実施例1の荷重センサは、融着層の厚みが起歪体の表面粗さよりも小さかったため、起歪体の凹凸の凹部の底まで融着層の材料が充填されず、起歪体と融着層の間のすきまに人工汗が侵入したと考えられる。一方、実施例2の荷重センサは、融着層の厚みが起歪体の表面粗さよりも大きかったため、起歪体の凹凸の凹部の底まで融着層の材料が十分に充填されたと考えられる。
【0057】
参考例1
熱可塑性ポリイミドワニスまたは熱可塑性ポリイミドの前駆体である熱可塑性ポリアミド酸ワニスに、ビスフェノールA型エポキシ化合物を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の重量割合が表1に記載する値になるように配合した。同様に、熱可塑性ポリイミドワニスまたは熱可塑性ポリアミド酸ワニスにビスフェノールF型エポキシ化合物を、表2に記載する重量割合で配合した。また、熱可塑性ポリイミドワニスまたは熱可塑性ポリアミド酸ワニスに、エポキシ化合物として日産化学工業社製TEPIC(登録商標)を、表3に記載する重量割合で配合した。
【0058】
得られた組成物をガラス板(JIS R3203)上に塗布し、120℃で20分間加熱した後、200℃で10分間加熱した。
【0059】
加熱後の組成物の性状について、加熱後の組成物が完全に硬化してべたつき(タック)が発生しなかったものを○、べたつきが生じたものを×として、表1~3中に示す。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
表1~3に示すように、熱可塑性ポリイミドワニスにエポキシ化合物を配合した場合、エポキシ化合物の配合量によらず、加熱後にタックが生じた。一方、熱可塑性ポリアミド酸ワニスにエポキシ化合物を配合した場合は、エポキシ化合物の配合量を適切な値とすることにより、完全に硬化してタックは生じなかった。熱可塑性ポリアミド酸ワニスにエポキシ化合物を配合して硬化させることによって得られた樹脂層(熱可塑性ポリイミド層)は、熱可塑性ポリイミドとエポキシ樹脂を含有していた。
【0064】
なお、熱可塑性ポリアミド酸ワニスを硬化(ポリイミド化)させるためには、通常約300℃に加熱する必要があるが、本参考例においては、添加したエポキシ樹脂がポリアミド酸と反応したことにより、200℃程度の低い温度で硬化反応が進んだと考えられる。
【0065】
タックが発生しなかった熱可塑性ポリアミド酸ワニスにビスフェノールA型エポキシ化合物を10~85wt%配合した組成物、熱可塑性ポリアミド酸ワニスにビスフェノールF型エポキシ化合物を10~85wt%配合した組成物及び熱可塑性ポリアミド酸ワニスにTEPICを10wt%配合した組成物の硬化物をニードルでスクラッチし、ガラス板から剥離するかどうかを調べた。また、熱可塑性ポリイミドワニスをガラス板上に塗布し、200℃で30分間加熱して硬化させることにより、熱可塑性ポリイミド層を形成した。同様に、熱可塑性ポリアミド酸ワニスをガラス板上に塗布し300℃で60分間加熱して硬化させることにより、熱可塑性ポリイミド層を形成した。これらの熱可塑性ポリイミド層もニードルでスクラッチし、ガラス板から剥離するかを調べた。
【0066】
その結果、熱可塑性ポリイミドワニスのみから得られた熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリアミド酸ワニスのみから得られた熱可塑性ポリイミド層はいずれもガラス板から剥離したが、熱可塑性ポリアミド酸ワニスにエポキシ化合物を配向した組成物から得られた、エポキシ樹脂を含む熱可塑性ポリイミド層はガラス板から剥離しなかった。この結果は、エポキシ樹脂を含む熱可塑性ポリイミド層は、エポキシ樹脂を含有しない熱可塑性ポリイミド層と比べてガラスに対する接着強度が高いことを示している。このことから、熱可塑性ポリイミド層(融着層)がエポキシ樹脂を含有することにより、アルミ等の金属からなる起歪体と融着層の接着強度も向上することが推察される。
【0067】
参考例2
熱可塑性ポリアミド酸ワニスまたは熱可塑性ポリイミドワニスに、フィラーとして酸化アルミニウム微粒子(線膨張係数7.2ppm/℃)、ルチル型酸化チタン微粒子(線膨張係数7.2ppm/℃)、窒化ホウ素微粒子(線膨張係数0.57ppm/℃)、酸化ケイ素微粒子(線膨張係数0.55ppm/℃)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)微粒子(線膨張係数45ppm/℃)を配合した材料を硬化させて得られるフィラー含有熱可塑性ポリイミド層の線膨張係数を計算した。なお、フィラーを含有しない熱可塑性ポリイミド層の線膨張係数は40ppm/℃とした。線膨張係数の計算結果を表4に示す。
【0068】
【0069】
表4に示すように、無機材料である酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化ケイ素の微粒子をフィラーとして含有する熱可塑性ポリイミド層は、フィラーの配合量によって線膨張係数を広範な範囲で調整することができる。例えば、熱可塑性ポリイミド層が、酸化アルミニウム微粒子を約40~50wt%、酸化チタン微粒子を約40~50wt%、窒化ホウ素微粒子を約30~40wt%または酸化ケイ素微粒子を約30~40wt%含む場合、熱可塑性ポリイミド層の線膨張係数は約25ppm/℃となる。このような熱可塑性ポリイミド層からなる融着層は、線膨張係数25ppm/℃であるアルミ合金A2024を起歪体の材料として用いる場合に好適である。融着層と起歪体の線膨張係数がほぼ等しいことにより、融着等の熱プロセスによる残留応力の発生が抑制されるためである。このように、熱可塑性ポリイミド層が無機微粒子を含有することは、起歪体の線膨張係数に合わせて融着層の線膨張係数を調整できるという効果がある。一方、熱可塑性ポリイミド層がPEEK微粒子を含む場合は、表4に示すように線膨張係数の調整可能範囲が狭いため、起歪体の線膨張係数に合わせて融着層の線膨張係数を調整することが難しい傾向がある。
【0070】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0071】
本発明を次の態様により記載することもできる。
<態様1>
樹脂材料で形成された基材と、
前記基材上に設けられた抵抗体と、
前記基材の、前記抵抗体が設けられた面とは反対側の面に設けられた融着層とを有し、
前記融着層が熱可塑性ポリイミド層であるひずみゲージ。
<態様2>
前記抵抗体を覆う保護カバーを更に備える態様1に記載のひずみゲージ。
<態様3>
前記融着層の厚さが3μm~12μmである態様1又は2に記載のひずみゲージ。
<態様4>
前記樹脂材料はポリイミドである態様1~3のいずれか一つに記載のひずみゲージ。
<態様5>
前記熱可塑性ポリイミド層が、熱可塑性ポリイミド以外の樹脂及び/又はフィラーを含有する態様1~4のいずれか一つに記載のひずみゲージ。
<態様6>
前記熱可塑性ポリイミド層が、前記熱可塑性ポリイミド以外の樹脂を含有し、
前記熱可塑性ポリイミド以外の樹脂が、エポキシ樹脂である態様5に記載のひずみゲージ。
<態様7>
前記熱可塑性ポリイミド層が、前記熱可塑性ポリイミド以外の樹脂を含有し、
前記熱可塑性ポリイミド以外の樹脂が、フェノール樹脂である態様5に記載のひずみゲージ。
<態様8>
前記熱可塑性ポリイミド層が、前記熱可塑性ポリイミド以外の樹脂を含有し、
前記熱可塑性ポリイミド以外の樹脂が、エンジニアリングプラスチックである態様5に記載のひずみゲージ。
<態様9>
前記熱可塑性ポリイミド層が、前記フィラーを含有し、
前記フィラーが無機微粒子である態様5~8のいずれか1つに記載のひずみゲージ。
<態様10>
起歪体と、
前記起歪体に取り付けられた態様1~9のいずれか一つに記載のひずみゲージとを備える荷重センサ。
<態様11>
前記ひずみゲージは前記融着層を介して前記起歪体に取り付けられており、前記起歪体の表面上の、前記融着層が接触された部分には粗面処理が施されている態様10に記載の荷重センサ。
<態様12>
前記粗面処理が施された部分の表面粗さが3~7μmである態様11に記載の荷重センサ。
<態様13>
前記融着層の厚さが、前記粗面処理が施された部分の表面粗さ以上12μm以下である態様11又は12に記載の荷重センサ。
<態様14>
樹脂材料で形成された基材の一面上に複数の抵抗体を形成することと、
前記基材の他面上に熱可塑性ポリイミド層である融着層を形成することと、
前記基材を切断して、切断された前記基材の一面上に抵抗体を有し、他面上に前記融着層を有する複数のひずみゲージを得ることとを含むひずみゲージの製造方法。
<態様15>
前記融着層を形成することが、エポキシ樹脂を配合した熱可塑性ポリアミド酸ワニスを前記基材の他面上に塗布し、焼成することを含む態様14に記載のひずみゲージの製造方法。
<態様16>
樹脂材料で形成された基材と、
前記基材上に設けられた金属製の抵抗体であって、一対のタブ及び該一対のタブの一方からジグザグに折り返しながら延在して該一対のタブの他方に接続するゲージ受感部を有する抵抗体と、
前記基材の、前記抵抗体が設けられた面とは反対側の面に設けられた融着層と、
前記ゲージ受感部を覆う、ポリイミドで形成されたカバーとを有するひずみゲージであって、
該ひずみゲージは、前記融着層を介して、計測対象の重量に応じて変形する金属製の起歪体に貼り付けるためのひずみゲージであり、
前記基材は厚さが12μm~25μmの、可撓性を有するポリイミドの板状部材であり、
前記融着層は厚さが3μm~12μmの熱可塑性ポリイミド層であるひずみゲージ。
<態様17>
前記融着層は、該融着層の加熱及び加圧を介して前記起歪体と3N/cm以上のピール強度で融着することを特徴とした態様16に記載のひずみゲージ。
<態様18>
前記起歪体は板状である態様16又は17に記載のひずみゲージ。
<態様19>
前記抵抗体は銅ニッケル合金により形成されている態様16~18のいずれか一つに記載のひずみゲージ。
<態様20>
前記熱可塑性ポリイミド層がエポキシ樹脂を含有する態様16~19のいずれか一つに記載のひずみゲージ。
<態様21>
前記熱可塑性ポリイミド層が無機微粒子であるフィラーを含有する態様16~20のいずれか一つに記載のひずみゲージ。
<態様22>
起歪体と
態様16~21のいずれか一つに記載のひずみゲージとを備え、
前記抵抗体と前記起歪体とのクリープ現象を抑制し、
前記抵抗体と前記起歪体との絶縁を良好に保つことを特徴とした荷重センサ。
<態様23>
計測対象の重量に応じて変形する金属製の起歪体と、
前記起歪体に取り付けられたひずみゲージとを備える荷重センサであって、
前記ひずみゲージが、
樹脂材料で形成された基材と、
前記基材上に設けられた金属製の抵抗体であって、一対のタブ及び該一対のタブの一方からジグザグに折り返しながら延在して該一対のタブの他方に接続するゲージ受感部を有する抵抗体と、
前記基材の、前記抵抗体が設けられた面とは反対側の面に設けられた融着層と、
前記ゲージ受感部を覆う、ポリイミドで形成されたカバーとを有し、
前記基材は厚さが12μm~25μmの、可撓性を有するポリイミドの板状部材であり、
前記融着層は厚さが3μm~12μmの熱可塑性ポリイミド層であり、
前記ひずみゲージの前記融着層が前記起歪体に融着している荷重センサ。
<態様24>
前記ひずみゲージの前記融着層が、該融着層の加熱及び加圧を介して前記起歪体に3N/cm以上のピール強度で融着している態様23に記載の荷重センサ。
<態様25>
前記起歪体は板状である態様23又は24に記載の荷重センサ。
<態様26>
ひずみゲージと、計測対象の重量に応じて変形する金属製且つ平板の起歪体とを用いて荷重センサを製造する方法であって、
前記ひずみゲージは、
樹脂材料で形成された基材と、
前記基材上に設けられた金属製の抵抗体であって、一対のタブ及び該一対のタブの一方からジグザグに折り返しながら延在して該一対のタブの他方に接続するゲージ受感部を有する抵抗体と、
前記基材の、前記抵抗体が設けられた面とは反対側の面に設けられた融着層と、
前記ゲージ受感部を覆う、ポリイミドで形成されたカバーとを有し、
前記基材は厚さが12μm~25μmの、可撓性を有するポリイミドの板状部材であり、
前記融着層は厚さが3μm~12μmの熱可塑性ポリイミド層であるひずみゲージであって、
前記製造方法は、
前記金属製且つ平板の起歪体の表面に前記ひずみゲージの前記融着層を接触させることと、
前記起歪体の、前記表面と前記融着層との接触部とは反対側に配置されたヒータによって前記接触部を加熱することと、
前記加熱と同時に前記ひずみゲージを前記起歪体に向けて押圧することとを含む。
<態様27>
前記加熱及び前記押圧を行う時間が5秒~20秒である態様26に記載の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のひずみゲージによれば、クリープ現象の発生を抑制し得る荷重センサを、効率よく製造することができる。したがって、荷重センサやこれを用いた計測機器の高精度化及び低価格化に貢献することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 基材、2 抵抗体、3 カバー、4 融着層、10 ひずみゲージ、20 起歪体、100 荷重センサ