(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】肺高血圧症の治療のための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/505 20060101AFI20240826BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240826BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240826BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240826BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20240826BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240826BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
A61K31/505
A61K9/14
A61K9/72
A61K31/497 ZNA
A61K31/4985
A61P9/12
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022128291
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2019523817の分割
【原出願日】2017-10-27
【審査請求日】2022-08-29
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515189759
【氏名又は名称】プルモキネ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジスマン、ローレンス エス.
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/054574(WO,A1)
【文献】特表2016-506418(JP,A)
【文献】特表2014-506870(JP,A)
【文献】特表2008-510830(JP,A)
【文献】Int Heart J,2015年,Vol.56,pp.245-248
【文献】Ann. N. Y. Acad. Sci.,2015年,Vol.1358,pp.68-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
症状を治療するための医薬組成物であって、
(a)治療有効量のチロシンキナーゼ阻害剤、ここで該チロシンキナーゼ阻害剤が、以下の式のもの
【化1】
またはその薬学的に許容される塩である、
(b)治療有効量のホスホジエステラーゼ5型(PDEV)阻害剤、ここで前記ホスホジエステラーゼ5型(PDEV)阻害剤はタダラフィルまたはその薬学的に許容される塩である、および
(c)治療有効量のエンドセリン受容体拮抗薬、ここで該エンドセリン受容体拮抗薬がアンブリセンタンまたはその薬学的に許容される塩である、
を含み、
該症状が肺動脈高血圧症である、上記医薬組成物。
【請求項2】
対象がヒトである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記チロシンキナーゼ阻害剤の投与が吸入によるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記チロシンキナーゼ阻害剤の投与が吸入器によるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記チロシンキナーゼ阻害剤の投与がネブライザーによるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記チロシンキナーゼ阻害剤の投与がアトマイザーによるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記PDEV阻害剤およびエンドセリン受容体拮抗薬の投与が経口投与である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記チロシンキナーゼ阻害剤の前記治療有効量が、1日当たり約0.25mg/kg~約1mg/kgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記PDEV阻害剤の前記治療有効量が、1日当たり約20mg~約40mgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記エンドセリン受容体拮抗薬の前記治療有効量が、1日当たり約5mg~約10mgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が乾燥粉末として製剤化される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記タダラフィルまたはその薬学的に許容される塩およびアンブリセンタンまたはその薬学的に許容される塩が経口投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2016年10月27日に出願された米国仮特許出願第62/413,788号明細書の利益を主張する。
【0002】
政府の権利に関する記述
本発明は、米国国立保健研究所によるR44HL102946の下に政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
肺高血圧症(PH)は、高い併存疾患罹患率および死亡率をもたらす肺血管系のまれな障害である。この疾患の病状は、無秩序な血管形成の叢状病変と、異常な新生内膜細胞増殖とを含み、これらは肺細動脈を通る血流を妨げる。キナーゼは、細胞の増殖に重要な役割を果たしており、PHの根底にある病状に対処するために使用することができる。キナーゼ阻害剤を使用してPHを治療することができる。
【0004】
参照による援用
本出願で引用された各特許、刊行物および非特許文献は、それぞれが個々に参照により組み込まれているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施形態では、本発明は、症状を治療する方法を提供し、該方法は、治療有効量のチロシンキナーゼ阻害剤、治療有効量のホスホジエステラーゼ5型(PDEV)阻害剤および治療有効量のエンドセリン受容体拮抗薬をそれを必要とする対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】PDGFRαα、PDGFRαβおよびPDGFRββのPDGFR経路を示す。
【0007】
【
図2】化合物1およびイマチニブを用いてまたは用いずに、様々な濃度のPDGFBによって処理したヒト肺線維芽細胞内のリン酸化PDGFRβのELISAから得られた結果を示す。
【0008】
【
図3】ラットの吸入後の肺、動脈および静脈の化合物1の平均濃度を比較する。
【0009】
【
図4】動脈および静脈の化合物1の平均濃度の経時的な変化を示す。
【0010】
【
図5】化合物1による治療後に、肺高血圧症のラットから得られた肺溶解物からのpPDGFRβおよびPDGFRβのウエスタンブロット分析を示す。
【0011】
【
図6】AAV-PDGFB SU5416低酸素症モデルにおけるPDGFBの肺遺伝子発現の増加を示す。
【0012】
【
図7】右室収縮期圧(RVSP)の%低下に対するタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の併用療法の効果を示す。
【0013】
【
図8】右室肥大(RV/(LV+IVS))に対するタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の併用療法の効果を示す。
【0014】
【
図9】肺細動脈の内腔領域と中膜領域とを比較したヘマトキシリンおよびエオシン染色された肺切片を示し、内腔/中膜比に対するタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の単剤療法および併用療法の効果を示す。
【0015】
【
図10】内腔/中膜比に対するタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の単剤療法および併用療法の効果を比較する。
【0016】
【
図11】PDGFRβ(Y1021)のリン酸化に対するタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の単剤療法および併用療法の効果を示す。
【0017】
【
図12】PDGFRα(Y751)のリン酸化に対するタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の単剤療法および併用療法の効果を示す。
【0018】
【
図13】アクチン対照とともに、総PDGFRβと対比したリン酸化PDGFRβのウエスタンブロット分析におけるタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の単剤療法および併用療法の効果を示す。
【0019】
【
図14】タダラフィル、アンブリセンタンおよび吸入化合物1を用いて治療した群では、ビヒクルのみの群ならびにタダラフィルおよびアンブリセンタン群と比較してMYPTのリン酸化が減少したことを示すウエスタンブロットを示す。
【0020】
【
図15】ビヒクルのみ;タダラフィルおよびアンブリセンタン;化合物1;ならびにタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1を用いて治療した群のMYPTのリン酸化に対する効果を示す。
【0021】
【
図16】治療群の総STAT3(pSTAT3/STAT3)と比較してSTAT3のリン酸化の減少を示すウエスタンブロットを示す。
【0022】
【
図17】総STAT3(pSTAT3/STAT3)と比較した、ビヒクルのみ;タダラフィルおよびアンブリセンタン;化合物1;ならびにタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1を用いて治療した群のSTAT3のリン酸化に対する効果を示す。
【0023】
【
図18】一回換気量に対するタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の単剤治療および併用治療の効果を示す。
【0024】
【
図19】呼吸頻度に対するタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の単剤治療および併用治療の効果を示す。
【0025】
【
図20】分時換気量に対するタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の単剤治療および併用治療の効果を示す。
【0026】
【
図21】気道抵抗に対するタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の単剤治療および併用治療の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
肺動脈高血圧症(PAH)としても知られている肺高血圧症(PH)は、肺、および心臓の右側の動脈に影響を及ぼす慢性疾患である。治療しないでおくと、PAHは心不全に至る可能性がある。したがって、PAHは高い併存疾患罹患率および死亡率をもたらす障害である。世界保健機関は、基礎関連疾患に基づいて、PAH、左心疾患によるPH、肺疾患および/または低酸素症によるPH、慢性血栓塞栓性PH(CTEPH)、および他の多因子機序によるPHの5つの群にPHを分類している。
【0028】
PAHの病状には、叢状病変と呼ばれる肺動脈のリモデリングから生じる複雑な血管形成と、異常な新生内膜細胞増殖とが含まれ、これらは肺細動脈を通る血流を妨げる。キナーゼは細胞の増殖に重要な役割を果たしており、PAHの根底にある病状に対処することを標的とし得る。
【0029】
PAHは、家族性形態および素因的遺伝的異常、例えば、骨形成因子2型受容体の遺伝子変異、エンドグリン、アクチビン様受容体キナーゼ1(ALK1)、mothers against decapentaplegic 9(SMAD9)および関連経路、自己免疫障害(例えば、全身性硬化症および強皮症)、先天性心疾患、門脈圧亢進症を伴う肝疾患、ならびにHIV感染症を含むいくつかの病因と関連し得る。PAHは、平均肺動脈圧≧25mmHg、および肺毛細血管楔入圧または左室収縮終末期圧≦15mmHgを示すことがある。
【0030】
血小板由来増殖因子(PDGF)経路を介したシグナル伝達は、PAHの発症および進行を促進する可能性がある。PDGF受容体(PDGFR)は、2つの主要なアイソフォーム、αおよびβを有する。PDGFRのαおよびβアイソフォームは、ホモ二量体(すなわちPDGFRααおよびPDGFRββ)およびヘテロ二量体(すなわちPDGFRαβ)を形成することができる。いくつかの実施形態では、PDGFRααはPDGFRαと略され、PDGFRββはPDGFRβと略される。異なるPDGFRアイソフォームを介するシグナル伝達は、異なるシグナル伝達経路を活性化することができる。
【0031】
PDGFRに結合するリガンドは、PDGFAおよびPDGFBなどの一本鎖タンパク質であり、これらもホモ二量体およびヘテロ二量体を形成することができる。PDGFRαに結合するリガンドはPDGFAAであり、PDGFABおよびPDGFBBにも少量結合する。PDGFBBは、PDGFRβに結合する一次リガンドである。
【0032】
PDGFRを介したシグナル伝達はPAHに重要な役割を果たしており、PAHではPDGF経路が活性化されている。
図1は、PDGFRαα、PDGFRαβおよびPDGFRββのPDGFR経路を示し、PDGFRβ受容体がAKT、ERKまたはSTAT3経路を活性化して、カルシウム流入および血管形成を促進することができることを示す。PDGFRαホモ二量体はPLCγおよびPI3K経路を活性化し、カルシウム流入のみを刺激する。PDGFRαβヘテロ二量体はERKおよびSTAT3経路を活性化し、NPκβおよびインターロイキン-6(IL-6)活性を刺激する。PDGFシグナル伝達はまた、E2F4、Jun、ESR1、EST1、ETS1、SMAD1、SP1、STAT1、MYC、HIFA、LEF1、CEBPBおよびFOSを含む転写因子を増加させる。略語:A、PDGFA;B、PDGFB;αα、PDGFRαホモ二量体;αβ、PDGFRαβヘテロ二量体;ββ、PDGFRβホモ二量体;PLCγ、ホスホリパーゼCγ;PI3K、ホスホイノシチド3キナーゼ;ERK、細胞外関連キナーゼ(p38MAPキナーゼとしても知られる);AKT、プロテインキナーゼB;STAT3、シグナル伝達兼転写活性化因子3。
【0033】
イマチニブは強力なPDGF阻害剤であり、PDGFRαアイソフォームよりもPDGFRβアイソフォームに対して効力が低い。イマチニブは、PDGFを阻害することにより右室収縮期圧(RVSP)を低下させ、PAHのラットモノクロタリンモデルの生存率を改善する。イマチニブはまた、PAHが進行した患者の心肺血行動態を改善する。しかし、イマチニブの経口投与は重大な副作用をもたらし、進行したPAHの治療および予防には使用されない。
【化1】
【0034】
肺血管床は、血管作動因子の起源および標的である。肺血管恒常性のための最も重要な血管作動因子の中には、一酸化窒素(NO)およびナトリウム利尿ペプチドファミリー(例えば、心房、脳およびC型ナトリウム利尿ペプチド)を含む細胞内セカンドメッセンジャーとして環状グアノシン一リン酸(cGMP)を利用する因子がある。PDEVは、肺内の動脈壁平滑筋に存在する。PDEV阻害剤は、血管を裏打ちしている平滑筋細胞内のサイクリックGMPに対するcGMP特異的PDEVの分解作用を遮断する。PDEV阻害剤の例には、シルデナフィル(Viagra(登録商標))、タダラフィル(Cialis(登録商標))およびバルデナフィル(Levitra(登録商標))が挙げられる。
【化2】
【0035】
可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)は、NOシグナル伝達経路における酵素である。NOがsGCの補欠ヘム基に結合すると、sGCは、血管拡張を促進し、かつ平滑筋増殖、白血球動員、血小板凝集および血管リモデリングを阻害するcGMPの合成を触媒する。sGC刺激物質はsGCを直接刺激し、cGMP産生を増加させる。sGC刺激物質の非限定的な例には、YC-1、BAY 41-2272、BAY 41-8543、リオシグアト(Adempas(登録商標);BAY 63-2521)、CFM-1571、BAY 60-4552、ベリシグアト(BAY 1021189)およびA-350619が挙げられる。
【化3】
【0036】
ET受容体拮抗薬は、ET受容体を遮断する薬物である。ET受容体拮抗薬の3つのクラスは以下の通りである。1)ET A受容体のみに作用する選択的ET
A受容体拮抗薬、2)ET AおよびET B受容体に作用する二重拮抗薬ならびに3)ET B受容体のみに作用する選択的ET
B受容体拮抗薬。選択的ET
A受容体拮抗薬の例には、シタキセンタン、アンブリセンタン、アトラセンタン、BQ-123およびジボテンタンが挙げられる。二重拮抗薬の例には、ボセンタン(Tracleer(登録商標))、マシテンタン(Opsumit(登録商標))およびテゾセンタンが挙げられる。選択的ET
B受容体拮抗薬の例には、BQ-788およびA192621が挙げられる。
【化4】
【0037】
本開示は、PDEV阻害剤、ET受容体拮抗薬および/またはsGCのレジメンに吸入PDGFR阻害剤を加えることの臨床効果を記載する。
【0038】
本発明の化合物
開示された発明は、プロテインキナーゼ阻害剤の治療用製剤ならびに肺および血管の症状を治療する方法を記載する。本発明の化合物は、PDGFRαまたはPDGFRβの1つ以上の下流標的のリン酸化を調節することができ、ここで下流標的とは、PDGFRαまたはPDGFRβ活性化の結果としてリン酸化される任意の基質である。いくつかの実施形態では、PDGFRαまたはPDGFRβの下流標的は、AKT、PDGFR、STAT3、ERK1またはERK2である。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書の化合物の非限定的な例には、以下の式の化合物
【化5】
またはその薬学的に許容される塩が挙げられ、
式中、
・Wは、NR
1、O、Sまたは結合手であり、
・各XおよびYは、独立してCR
2またはNであり、
・各R
1a、R
1bおよびR
1cは、独立してH、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ基、エーテル基、カルボン酸基、カルボキサルデヒド基、エステル基、アミン基、アミド基、カーボナート基、カルバマート基、チオエーテル基、チオエステル基、チオ酸基、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、これらはいずれも置換または非置換であり、
・各R
2aおよびR
2bは、独立してH、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、これらはいずれも置換または非置換であるか、一緒になってカルボニルを形成し、
・各Z
1、Z
2、Z
3、Z
4およびZ
5は、独立してCR
2またはNであり、
・各R
1およびR
2は、独立してH、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ基、エーテル基、カルボン酸基、カルボキサルデヒド基、エステル基、アミン基、アミド基、カーボナート基、カルバマート基、チオエーテル基、チオエステル基、チオ酸基、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、スルフヒドリル、ニトロ、ニトロソ、シアノ、アジド、スルホキシド基、スルホン基、スルホンアミド基、スルホン酸基、イミン基、アシル基、アシルオキシ基であり、これらはいずれも置換または非置換である。
【0040】
いくつかの実施形態では、WはNR1であり、式中、R1はHまたはアルキルである。いくつかの実施形態では、WはNR1であり、式中、R1はHである。いくつかの実施形態では、各R2aおよびR2bは、独立してHまたはアルキルである。いくつかの実施形態では、各R2aおよびR2bは、独立してHまたはメチルである。いくつかの実施形態では、各R2aおよびR2bは、独立してHおよびエチルである。
【0041】
いくつかの実施形態では、各XおよびYは、独立してCR2であり、式中、R2はH、ハロゲン、ヒドロキシルまたはアルキルである。いくつかの実施形態では、各XおよびYは、独立してNである。いくつかの実施形態では、XはCR2であり、式中、R2はHであり、YはNである。いくつかの実施形態では、XはNであり、YはCR2であり、式中、R2はHである。
【0042】
いくつかの実施形態では、各R1a、R1bおよびR1cは、独立してH、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R1a、R1bおよびR1cは、独立してH、アリールまたはヘテロアリールであり、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R1a、R1bおよびR1cは、独立してHまたはアリールであり、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R1a、R1bおよびR1cは、独立してHまたは置換アリールである。
【0043】
いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは置換アリールである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは置換フェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cはヒドロキシル、アルキルまたはアルコキシで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cはヒドロキシルまたはアルコキシで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cはヒドロキシルおよびアルコキシで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cはアルコキシで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cはメトキシで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは2つのメトキシ基で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは3,4-ジメトキシフェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニルである。
【0044】
いくつかの実施形態では、各Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5は、独立してCR2であり、式中、R2はH、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、エーテル基、アミン基またはアミド基である。いくつかの実施形態では、各Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5は、独立してCR2であり、式中、R2はHまたはアミド基である。いくつかの実施形態では、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2である(式中、R2はアミド基である)。いくつかの実施形態では、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2であり(式中、R2はNHC(O)R3であり、式中、R3はH、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールである)、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2であり(式中、R2はNHC(O)R3であり、式中、R3はアリールまたはヘテロアリールである)、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2である(式中、R2はNHC(O)R3であり、式中、R3は置換ヘテロアリールである)。いくつかの実施形態では、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2である(式中、R2はNHC(O)R3であり、式中、R3は置換ピリジニルである)。いくつかの実施形態では、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2である(式中、R2はNHC(O)R3であり、式中、R3はメチルピリジニルである)。いくつかの実施形態では、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2である(式中、R2はNHC(O)R3であり、式中、R3は2-メチルピリジン-5-イルである)。
【0045】
いくつかの実施形態では、WはNR1であり(式中、R1はHである)、各XおよびYは独立してNであり、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは置換アリールであり、各R2aおよびR2bは独立してHまたはアルキルであり、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2である(式中、R2はNHC(O)R3であり、式中、R3は置換ヘテロアリールである)。いくつかの実施形態では、WはNR1であり(式中、R1はHである)、各XおよびYは独立してNであり、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは置換フェニルであり、各R2aおよびR2bは独立してHまたはアルキルであり、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2である(式中、R2はNHC(O)R3であり、式中、R3はピリジニルである)。いくつかの実施形態では、WはNR1であり(式中、R1はHである)、各XおよびYは独立してNであり、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは2つのアルコキシ置換基を有するフェニルであり、各R2aおよびR2bは独立してHまたはアルキルであり、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2である(式中、R2はNHC(O)R3であり、式中、R3はメチルピリジニルである)。いくつかの実施形態では、WはNR1であり(式中、R1はHである)、各XおよびYは独立してNであり、各R1aおよびR1bはHであり、R1cはアルコキシ基およびヒドロキシル基で置換されたフェニルであり、各R2aおよびR2bは独立してHまたはアルキルであり、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2である(式中、R2はNHC(O)R3であり、式中、R3はメチルピリジニルである)。いくつかの実施形態では、WはNR1であり(式中、R1はHである)、各XおよびYは独立してNであり、各R1aおよびR1bはHであり、R1cはアルコキシ基およびヒドロキシル基で置換されたフェニルであり、各R2aおよびR2bは独立してHまたはアルキルであり、各Z1、Z3、Z4およびZ5は独立してCR2であり(式中、R2はHである)、Z2はCR2である(式中、R2はNHC(O)R3であり、式中、R3は2-メチルピリジン-5-イルである)。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書の化合物の非限定的な例には、以下の式の化合物
【化6】
またはその薬学的に許容される塩が挙げられ、
式中、
・各R
1a、R
1bおよびR
1cは、独立してH、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ基、エーテル基、カルボン酸基、カルボキサルデヒド基、エステル基、アミン基、アミド基、カーボナート基、カルバマート基、チオエーテル基、チオエステル基、チオ酸基、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、これらはいずれも置換または非置換であり、
・各R
2aおよびR
2bは、独立してH、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、これらはいずれも置換または非置換であり、
・各R
3a、R
3b、R
3c、R
3dおよびR
3eは、独立してH、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ基、エーテル基、カルボン酸基、カルボキサルデヒド基、エステル基、アミン基、アミド基、カーボナート基、カルバマート基、チオエーテル基、チオエステル基、チオ酸基、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、スルフヒドリル、ニトロ、ニトロソ、シアノ、アジド、スルホキシド基、スルホン基、スルホンアミド基、スルホン酸基、イミン基、アシル基またはアシルオキシ基であり、これらはいずれも置換または非置換である。
【0047】
いくつかの実施形態では、各R1a、R1bおよびR1cは、独立してH、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R1a、R1bおよびR1cは、独立してH、アリールまたはヘテロアリールであり、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R1a、R1bおよびR1cは、独立してHまたはアリールであり、アリールは、置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cはアリールであり、アリールは置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは置換アリールである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cはハロゲン、ヒドロキシル、アルキルまたはアルコキシ基で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは2つのアルコキシ基で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは3,4-ジメトキシフェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cはアルコキシ基およびヒドロキシル基で置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bはHであり、R1cは3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニルである。
【0048】
いくつかの実施形態では、各R2aおよびR2bは、独立してHまたはアルキルである。いくつかの実施形態では、各R2aおよびR2bは、独立してHまたはメチルである。いくつかの実施形態では、各R2aおよびR2bは、独立してHまたはエチルである。
【0049】
いくつかの実施形態では、各R3a、R3b、R3c、R3dおよびR3eは、独立してH、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ基、アミン基またはアミド基であり、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R3a、R3b、R3c、R3dおよびR3eは、独立してH、ヒドロキシルまたはアミド基であり、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはアミド基である。いくつかの実施形態では、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはNHC(O)R3であり(式中、R3はH、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールである)、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはNHC(O)R3であり(式中、R3はアリールまたはヘテロアリールである)、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはNHC(O)R3であり、式中、R3は置換ピリジニルである。いくつかの実施形態では、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはNHC(O)R3であり、式中、R3はメチルピリジニルである。いくつかの実施形態では、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはNHC(O)R3であり、式中、R3はメチルピリジン-5-イルである。
【0050】
いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bは独立してHであり、R1cは置換アリールであり、各R2aおよびR2bは独立してHまたはアルキルであり、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはアミド基である。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bは独立してHであり、R1cは置換フェニルであり、各R2aおよびR2bは独立してHまたはメチルであり、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはNHC(O)R3であり、式中、R3は置換ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bは独立してHであり、R1cは置換フェニルであり、各R2aおよびR2bは独立してHまたはメチルであり、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはNHC(O)R3であり、式中、R3は置換ピリジニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bは独立してHであり、R1cは置換フェニルであり、各R2aおよびR2bは独立してHまたはメチルであり、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはNHC(O)R3であり、式中、R3はメチルピリジニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bは独立してHであり、R1cは2つのアルコキシ基で置換されたフェニルであり、各R2aおよびR2bは独立してHまたはメチルであり、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはNHC(O)R3であり、式中、R3は置換ピリジニルである。いくつかの実施形態では、各R1aおよびR1bは独立してHであり、R1cは1つのアルコキシ基および1つのヒドロキシル基で置換されたフェニルであり、各R2aおよびR2bは独立してHまたはメチルであり、各R3a、R3c、R3dおよびR3eは独立してHであり、R3bはNHC(O)R3であり、式中、R3は置換ピリジニルである。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書の化合物の非限定的な例には、以下の式の化合物
【化7】
またはその薬学的に許容される塩が挙げられ、
式中、
・各R
2aおよびR
2bは、独立してH、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、これらはいずれも置換または非置換であり、
・各R
4a、R
4b、R
4cおよびR
4dは、独立してH、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ基、カルボン酸基、エステル基、アミン基、アミド基、スルフヒドリル、ニトロ、ニトロソ、シアノ、アジド、スルホキシド基、スルホン基、スルホンアミド基、スルホン酸基またはアシルオキシ基であり、これらはいずれも置換または非置換であり、
・各R
5a、R
5b、R
5c、R
5dおよびR
5eは、独立してH、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ基、カルボン酸基、エステル基、アミン基またはアミド基であり、これらはいずれも置換または非置換である。
【0052】
いくつかの実施形態では、各R2aおよびR2bは、独立してHまたはアルキルである。いくつかの実施形態では、各R2aおよびR2bは、独立してHまたはメチルである。いくつかの実施形態では、各R2aおよびR2bは、独立してHまたはエチルである。いくつかの実施形態では、各R2aおよびR2bは、独立してHおよびエチルである。
【0053】
いくつかの実施形態では、各R4a、R4b、R4cおよびR4dは、独立してH、ハロゲン、ヒドロキシルまたはアルキルである。いくつかの実施形態では、各R4a、R4b、R4cおよびR4dは、独立してHまたはアルキルである。いくつかの実施形態では、各R4a、R4cおよびR4dは独立してHであり、R4bはアルキルである。いくつかの実施形態では、各R4a、R4cおよびR4dは独立してHであり、R4bはメチルである。
【0054】
いくつかの実施形態では、各R5a、R5b、R5c、R5dおよびR5eは、独立してH、ヒドロキシル、アルコキシまたはアミン基であり、これらはいずれも置換または非置換である。いくつかの実施形態では、各R5a、R5b、R5c、R5dおよびR5eは、独立してH、ヒドロキシルまたはアルコキシである。いくつかの実施形態では、各R5a、R5dおよびR5eは独立してHであり、各R5bおよびR5cは独立してヒドロキシルまたはアルコキシである。いくつかの実施形態では、各R5a、R5dおよびR5eは独立してHであり、各R5bおよびR5cは独立してアルコキシである。いくつかの実施形態では、各R5a、R5dおよびR5eは独立してHであり、各R5bおよびR5cは独立してメトキシである。いくつかの実施形態では、各R5a、R5dおよびR5eは独立してHであり、R5bはアルコキシであり、R5cはヒドロキシルである。いくつかの実施形態では、各R5a、R5dおよびR5eは独立してHであり、R5bはメトキシであり、R5cはヒドロキシルである。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書の化合物は、上記で定義された変数を有する、以下の式のもの
【化8】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0056】
本明細書の化合物の非限定的な例には、以下の式
【化9-1】
【化9-2】
またはその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0057】
本明細書の化合物の非限定的な例には、以下の式
【化10-1】
【化10-2】
またはその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0058】
本明細書の化合物の非限定的な例には、以下の式
【化11-1】
【化11-2】
またはその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0059】
本明細書のいずれの化合物も、立体異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、混合物、ラセミ体、アトロプ異性体および互変異性体のいずれかまたはすべてとすることができる。
【0060】
キナーゼ阻害剤の例示としての一例は化合物1であり、化合物1は以下の式の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【化12】
【0061】
化学基のための任意の置換基
任意の置換基の非限定的な例には、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、ハロゲン、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アジド基、スルホキシド基、スルホン基、スルホンアミド基、カルボキシル基、カルボキサルデヒド基、イミン基、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、ハロアルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アリールアルコキシ基、ヘテロシクリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルバマート基、アミド基、ウレタン基およびエステル基が挙げられる。
【0062】
アルキルおよびアルキレン基の非限定的な例には、直鎖、分岐および環状のアルキルおよびアルキレン基が挙げられる。アルキルまたはアルキレン基は、例えば、置換または非置換のC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29、C30、C31、C32、C33、C34、C35、C36、C37、C38、C39、C40、C41、C42、C43、C44、C45、C46、C47、C48、C49またはC50基とすることができる。
【0063】
直鎖アルキル基の非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルが挙げられる。
【0064】
分岐アルキル基は、任意の数のアルキル基で置換された任意の直鎖アルキル基を含む。分岐アルキル基の非限定的な例には、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルが挙げられる。
【0065】
環状アルキル基の非限定的な例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチル基が挙げられる。環状アルキル基はまた、縮合、架橋およびスピロ二環系ならびに高級の縮合、架橋およびスピロ系を含む。環状アルキル基は、任意の数の直鎖、分岐または環状アルキル基で置換することができる。
【0066】
アルケニルおよびアルケニレン基の非限定的な例には、直鎖、分岐および環状アルケニル基が挙げられる。アルケニル基の単数または複数のオレフィンは、例えば、E、Z、シス、トランス、末端またはエキソ-メチレンとすることができる。アルケニルまたはアルケニレン基は、例えば、置換または非置換のC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29、C30、C31、C32、C33、C34、C35、C36、C37、C38、C39、C40、C41、C42、C43、C44、C45、C46、C47、C48、C49またはC50基とすることができる。
【0067】
アルキニルまたはアルキニレン基の非限定的な例には、直鎖、分岐および環状アルキニル基が挙げられる。アルキニルまたはアルキニレン基の三重結合は、内部にあっても末端にあってもよい。アルキニルまたはアルキニレン基は、例えば、置換または非置換のC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29、C30、C31、C32、C33、C34、C35、C36、C37、C38、C39、C40、C41、C42、C43、C44、C45、C46、C47、C48、C49またはC50基とすることができる。
【0068】
ハロアルキル基は、任意の数のハロゲン原子、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子で置換された任意のアルキル基とすることができる。ハロアルケニル基は、任意の数のハロゲン原子で置換された任意のアルケニル基とすることができる。ハロアルキニル基は、任意の数のハロゲン原子で置換された任意のアルキニル基とすることができる。
【0069】
アルコキシ基は、例えば、任意のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基で置換された酸素原子とすることができる。エーテルまたはエーテル基はアルコキシ基を含む。アルコキシ基の非限定的な例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシおよびイソブトキシが挙げられる。
【0070】
アリール基は、複素環式または非複素環式とすることができる。アリール基は、単環式または多環式とすることができる。アリール基は、本明細書に記載の任意の数の置換基、例えば、ヒドロカルビル基、アルキル基、アルコキシ基およびハロゲン原子で置換することができる。アリール基の非限定的な例には、フェニル、トルイル、ナフチル、ピロリル、ピリジル、イミダゾリル、チオフェニルおよびフリルが挙げられる。
【0071】
アリールオキシ基は、例えば、任意のアリール基で置換された酸素原子、例えば、フェノキシとすることができる。
【0072】
アラルキル基は、例えば、任意のアリール基で置換された任意のアルキル基、例えば、ベンジルとすることができる。
【0073】
アリールアルコキシ基は、例えば、任意のアラルキル基で置換された酸素原子、例えば、ベンジルオキシとすることができる。
【0074】
複素環は、炭素ではない環原子、例えば、N、O、S、P、Si、Bまたは任意の他のヘテロ原子を含有する任意の環とすることができる。複素環は、任意の数の置換基、例えば、アルキル基およびハロゲン原子で置換することができる。複素環は芳香族(ヘテロアリール)または非芳香族とすることができる。複素環の非限定的な例には、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピペリジン、スクシンアミド、マレイミド、モルホリン、イミダゾール、チオフェン、フラン、テトラヒドロフラン、ピランおよびテトラヒドロピランが挙げられる。
【0075】
アシル基は、例えば、ヒドロカルビル、アルキル、ヒドロカルビルオキシ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アラルキル、アリールアルコキシまたは複素環で置換されたカルボニル基とすることができる。アシルの非限定的な例には、アセチル、ベンゾイル、ベンジルオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが挙げられる。
【0076】
アシルオキシ基は、アシル基で置換された酸素原子とすることができる。エステルまたはエステル基はアシルオキシ基を含む。アシルオキシ基またはエステル基の非限定的な例はアセタートである。
【0077】
カルバマート基は、カルバモイル基で置換された酸素原子とすることができ、カルバモイル基の窒素原子は、非置換であるか、1つ以上のヒドロカルビル、アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはアラルキルで一置換または二置換される。窒素原子が二置換されている場合、2つの置換基は窒素原子と一緒になって複素環を形成することができる。
【0078】
本開示は、プロテインキナーゼ阻害剤と、肺および血管の症状を治療するための少なくとも1つの追加の薬剤とを含む治療用製剤を記載する。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1および1つの追加の薬剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1およびPDEV阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1およびタダラフィルを含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1およびシルデナフィルを含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1およびET受容体拮抗薬を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、化合物1と、選択的ETA受容体拮抗薬、二重拮抗薬または選択的ETB受容体拮抗薬とを含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1および選択的ETA受容体拮抗薬を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、化合物1と、シタキセンタン、アンブリセンタン、アトラセンタン、BQ-123またはジボテンタンとを含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1およびシタキセンタンを含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1およびアンブリセンタンを含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1および二重拮抗薬を含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1およびマシテンタンを含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1およびsGC刺激物質を含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1およびリオシグアトを含む。いくつかの実施形態では、製剤は化合物1およびベリシグアトを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、製剤は化合物1および2つの追加の薬剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、化合物1、PDEV阻害剤およびET受容体拮抗薬を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、化合物1、タダラフィルおよびアンブリセンタンを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、化合物1、PDEV阻害剤およびsGC刺激物質を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、化合物1、タダラフィルおよびリオシグアトを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、化合物1、ET受容体拮抗薬およびsGC刺激物質を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、化合物1、アンブリセンタンおよびリオシグアトを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、製剤は化合物1および3つの追加の薬剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、化合物1、PDEV阻害剤、ET受容体拮抗薬およびsGC刺激物質を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、化合物1、タダラフィル、アンブリセンタンおよびリオシグアトを含む。
【0081】
薬学的に許容される塩
本開示は、本明細書に記載の任意の治療用化合物の薬学的に許容される塩の使用を提供する。薬学的に許容される塩には、例えば、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。化合物に付加されて酸付加塩を形成する酸は、有機酸または無機酸とすることができる。化合物に付加されて塩基付加塩を形成する塩基は、有機塩基または無機塩基とすることができる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩は金属塩である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩はアンモニウム塩である。
【0082】
適切な塩基から誘導される塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびN-(アルキル)4
+塩を含む。金属塩は、本発明の化合物に無機塩基が付加されて生じ得る。無機塩基は、例えば、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、またはリン酸塩などの塩基性対イオンと対になった金属カチオンからなる。金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属または主族金属(main group metal)とすることができる。いくつかの実施形態では、金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、セリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、カルシウム、ストロンチウム、コバルト、チタン、アルミニウム、銅、カドミウムまたは亜鉛である。いくつかの実施形態では、金属塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、鉄塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、コバルト塩、チタン塩、アルミニウム塩、銅塩、カドミウム塩または亜鉛塩である。
【0083】
アンモニウム塩は、本発明の化合物にアンモニアまたは有機アミンが付加されて生じ得る。いくつかの実施形態では、有機アミンは、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、ピペリジン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、ジベンジルアミン、ピペラジン、ピリジン、ピラゾール、ピピラゾール(pipyrrazole)、イミダゾール、ピラジンまたはピピラジン(pipyrazine)である。いくつかの実施形態では、アンモニウム塩は、トリエチルアミン塩、ジイソプロピルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩、N-メチルモルホリン塩、ピペリジン塩、N-メチルピペリジン塩、N-エチルピペリジン塩、ジベンジルアミン塩、ピペラジン塩、ピリジン塩、ピラゾール塩、ピピラゾール塩、イミダゾール塩、ピラジン塩またはピピラジン塩である。
【0084】
酸付加塩は、本発明の化合物に酸が付加されて生じ得る。いくつかの実施形態では、酸は有機である。いくつかの実施形態では、酸は無機である。いくつかの実施形態では、酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、イソニコチン酸、乳酸、サリチル酸、酒石酸、アスコルビン酸、ゲンチシン酸(gentisinic acid)、グルコン酸、グルクロン酸(glucaronic acid)、糖酸(saccaric acid)、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、パントテン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、フマル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、シュウ酸またはマレイン酸である。いくつかの実施形態では、酸塩は、アセタート、アジパート、ベンゾアート、ベンゼンスルホナート、ブチラート、シトラート、ジグルコナート、ドデシルスルファート、ホルマート、フマラート、グリコラート、ヘミスルファート、ヘプタノアート、ヘキサノアート、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、ラクタート、マレアート、マロナート、メタンスルホナート、2-ナフタレンスルホナート、ニコチナート、ニトラート、パルモアート、ホスファート、ピクラート、ピバラート、プロピオナート、サリチラート、スクシナート、スルファート、タータラート、トシラートまたはウンデカノアートである。
【0085】
いくつかの実施形態では、塩は、塩酸塩(hydrochloride salt)、臭化水素酸塩(hydrobromide salt)、ヨウ化水素酸塩(hydroiodide salt)、硝酸塩(nitrate salt)、亜硝酸塩(nitrite salt)、硫酸塩(sulfate salt)、亜硫酸塩(sulfite salt)、リン酸塩(phosphate salt)、イソニコチン酸塩、乳酸塩(lactate salt)、サリチル酸塩(salicylate salt)、酒石酸塩(tartrate salt)、アスコルビン酸塩(ascorbate salt)、ゲンチシン酸塩(gentisinate salt)、グルコン酸塩(gluconate salt)、グルクロン酸塩(glucaronate salt)、糖酸塩(saccarate salt)、ギ酸塩(formate salt)、安息香酸塩(benzoate salt)、グルタミン酸塩(glutamate salt)、パントテン酸塩(pantothenate salt)、酢酸塩(acetate salt)、プロピオン酸塩(propionate salt)、酪酸塩(butyrate salt)、フマル酸塩(fumarate salt)、コハク酸塩(succinate salt)、メタンスルホン酸(メシル酸)塩(methanesulfonate(mesylate)salt)、エタンスルホン酸塩(ethanesulfonate salt)、ベンゼンスルホン酸塩(benzenesulfonate salt)、p-トルエンスルホン酸塩(p-toluenesulfonate salt)、クエン酸塩(citrate salt)、シュウ酸塩(oxalate salt)またはマレイン酸塩(maleate salt)である。
【0086】
塩基付加塩は、本発明の化合物に塩基が付加されて生じ得る。いくつかの実施形態では、塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ液、水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムである。いくつかの実施形態では、塩基は、アルカリメタケイ酸塩(alkali metasilicate)、アルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過ケイ酸ナトリウム(sodium persilicate)またはメタ重亜硫酸カリウムである。
【0087】
本発明の化合物の純度
本明細書のいずれの化合物も精製することができる。本明細書の化合物は、少なくとも1%純粋、少なくとも2%純粋、少なくとも3%純粋、少なくとも4%純粋、少なくとも5%純粋、少なくとも6%純粋、少なくとも7%純粋、少なくとも8%純粋、少なくとも9%純粋、少なくとも10%純粋、少なくとも11%純粋、少なくとも12%純粋、少なくとも13%純粋、少なくとも14%純粋、少なくとも15%純粋、少なくとも16%純粋、少なくとも17%純粋、少なくとも18%純粋、少なくとも19%純粋、少なくとも20%純粋、少なくとも21%純粋、少なくとも22%純粋、少なくとも23%純粋、少なくとも24%純粋、少なくとも25%純粋、少なくとも26%純粋、少なくとも27%純粋、少なくとも28%純粋、少なくとも29%純粋、少なくとも30%純粋、少なくとも31%純粋、少なくとも32%純粋、少なくとも33%純粋、少なくとも34%純粋、少なくとも35%純粋、少なくとも36%純粋、少なくとも37%純粋、少なくとも38%純粋、少なくとも39%純粋、少なくとも40%純粋、少なくとも41%純粋、少なくとも42%純粋、少なくとも43%純粋、少なくとも44%純粋、少なくとも45%純粋、少なくとも46%純粋、少なくとも47%純粋、少なくとも48%純粋、少なくとも49%純粋、少なくとも50%純粋、少なくとも51%純粋、少なくとも52%純粋、少なくとも53%純粋、少なくとも54%純粋、少なくとも55%純粋、少なくとも56%純粋、少なくとも57%純粋、少なくとも58%純粋、少なくとも59%純粋、少なくとも60%純粋、少なくとも61%純粋、少なくとも62%純粋、少なくとも63%純粋、少なくとも64%純粋、少なくとも65%純粋、少なくとも66%純粋、少なくとも67%純粋、少なくとも68%純粋、少なくとも69%純粋、少なくとも70%純粋、少なくとも71%純粋、少なくとも72%純粋、少なくとも73%純粋、少なくとも74%純粋、少なくとも75%純粋、少なくとも76%純粋、少なくとも77%純粋、少なくとも78%純粋、少なくとも79%純粋、少なくとも80%純粋、少なくとも81%純粋、少なくとも82%純粋、少なくとも83%純粋、少なくとも84%純粋、少なくとも85%純粋、少なくとも86%純粋、少なくとも87%純粋、少なくとも88%純粋、少なくとも89%純粋、少なくとも90%純粋、少なくとも91%純粋、少なくとも92%純粋、少なくとも93%純粋、少なくとも94%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも96%純粋、少なくとも97%純粋、少なくとも98%純粋、少なくとも99%純粋、少なくとも99.1%純粋、少なくとも99.2%純粋、少なくとも99.3%純粋、少なくとも99.4%純粋、少なくとも99.5%純粋、少なくとも99.6%純粋、少なくとも99.7%純粋、少なくとも99.8%純粋または少なくとも99.9%純粋とすることができる。
【0088】
本発明の医薬組成物
本発明の医薬組成物は、本明細書に記載の任意の医薬化合物と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤および/または賦形剤などの他の化学成分との組合せとすることができる。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。医薬組成物は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、経口、非経口、眼内、皮下、経皮、経鼻、膣内および局所投与を含む様々な形態および経路により、医薬組成物として治療有効量で投与することができる。
【0089】
医薬組成物は、局所的に、例えば、化合物を臓器に直接注射することにより、場合によりデポ製剤もしくは徐放性製剤またはインプラントとして投与することができる。医薬組成物は、速放性製剤の形態、持続放出製剤の形態または中間放出(intermediate release)製剤の形態で提供することができる。速放性形態は即時放出を提供することができる。持続放出製剤は、制御放出または持続遅延放出を提供することができる。
【0090】
経口投与の場合、活性化合物と薬学的に許容される担体または賦形剤とを組み合わせることによって、医薬組成物を製剤化することができる。そのような担体を使用して、対象による経口摂取のために、液剤、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリーまたは懸濁液を製剤化することができる。経口用溶解性製剤に使用される溶媒の非限定的な例には、水、エタノール、イソプロパノール、食塩水、生理食塩水、DMSO、ジメチルホルムアミド、リン酸カリウム緩衝液、リン酸緩衝食塩水(PBS)、リン酸ナトリウム緩衝液、4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液(HEPES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸緩衝液(MOPS)、ピペラジン-N、N’-ビス(2-エタンスルホン酸)緩衝液(PIPES)および食塩クエン酸ナトリウム緩衝液(SSC)が挙げられ得る。経口用溶解性製剤に使用される共溶媒の非限定的な例には、スクロース、尿素、クレマフォール、DMSOおよびリン酸カリウム緩衝液が挙げられ得る。
【0091】
医薬製剤は静脈内投与用に製剤化することができる。医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の滅菌懸濁液、溶液またはエマルジョンとしての非経口注射に適した形態とすることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの調合剤を含有することができる。非経口投与用の医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。活性化合物の懸濁液は、油性注射懸濁液として調製することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。また、懸濁液は、化合物の溶解度を高めて高濃度溶液の調製を可能にする好適な安定剤または薬剤を含有することもできる。あるいは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリー水を用いて構成するための粉末形態とすることができる。
【0092】
活性化合物は局所投与することができ、溶液、懸濁液、ローション、ゲル、ペースト、薬用スティック、バーム、クリームおよび軟膏などの様々な局所投与組成物に製剤化することができる。そのような医薬組成物は、可溶化剤、安定剤、等張化促進剤、緩衝液および保存剤を含有することができる。
【0093】
化合物は、組成物の吸入用に製剤化することができる。いくつかの実施形態では、化合物は鼻腔内投与によって投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、溶液、懸濁液または乾燥粉末として投与される。
【0094】
化合物は、エアロゾルとして気道に直接投与することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、好適な噴射剤および補助剤とともに加圧エアロゾル容器に包装される。いくつかの実施形態では、噴射剤は、プロパン、ブタンまたはイソブテンなどの炭化水素噴射剤である。いくつかの実施形態では、エアロゾル製剤は、共溶媒、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、潤滑剤およびpH調整剤などの他の成分を含むことができる。エアロゾル製剤は、定量吸入器を用いて投与することができる。
【0095】
化合物は、肺サーファクタント製剤の形態で投与することができる。いくつかの実施形態では、肺サーファクタント製剤は、Infrasurf(登録商標)、Survanta(登録商標)、Curosurf(登録商標)、または合成肺サーファクタント製剤、例えば、Exosurf(登録商標)および人工肺拡張化合物(artificial lung expanding compound:ALEC)である。いくつかの実施形態では、サーファクタント製剤は、気道点滴を介して(すなわち、挿管後に)または気管内に投与される。
【0096】
化合物は、吸入可能な粉末として投与することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、吸入可能な乾燥粉末として投与することができる。いくつかの実施形態では、粉末製剤は、単糖類(例えば、グルコース、アラビノース)、二糖類(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖類または多糖類(例えば、デキストラン)、多価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)またはそれらの任意の組合せなどの薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、化合物は、ネブライザーまたはアトマイザーを用いて非加圧形態で投与される。
【0097】
いくつかの実施形態では、化合物1は吸入によって投与される。いくつかの実施形態では、化合物1および追加の薬剤は吸入によって投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は吸入によって投与され、追加の薬剤は強制経口投与によって投与される。
【0098】
吸入乾燥粉末として化合物1を送達すると、肺に局所送達され、全身薬物曝露が低減し、副作用が減少する。いくつかの実施形態では、全身薬物曝露が低減すると、出血、消化管の副作用、肝毒性、体液貯留もしくは浮腫、好中球減少症もしくは白血球減少症、貧血、または感染のリスクを低下させることができる。いくつかの実施形態では、全身薬物曝露が低減すると、悪心、嘔吐または下痢などの消化管の副作用のリスクを低下させることができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、吸入乾燥粉末製剤は、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%または約95重量%の化合物1を含有することができる。いくつかの実施形態では、吸入乾燥粉末製剤は、約40重量%、約50重量%または約60重量%の化合物1を含有することができる。いくつかの実施形態では、吸入乾燥粉末製剤は、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%または約95重量%のロイシンを含有することができる。いくつかの実施形態では、吸入乾燥粉末製剤は、約40重量%、約50重量%または約60重量%のロイシンを含有することができる。いくつかの実施形態では、吸入乾燥粉末製剤は、約50重量%の化合物1および約50重量%のロイシンを含有することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、吸入乾燥粉末製剤は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%の脂質ベースの界面活性剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、吸入乾燥粉末製剤は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルコリン(DMPC)またはリポソームを含有することができる。
【0101】
化合物1およびロイシンの噴霧乾燥粉末製剤は、吸入に適した粒径を有することができる。いくつかの実施形態では、Next Generation Impactor(NGI)を用いたカスケードインパクション(cascade impaction)によって測定される粒子の空気動力学的質量中央径(MMAD)は、幾何標準偏差(GSD)1.5~3.5で1.9~3.8ミクロンの範囲内とすることができる。いくつかの実施形態では、MMADは、約1ミクロン、約1.5ミクロン、約2ミクロン、約2.5ミクロン、約3ミクロン、約3.5ミクロン、約4ミクロン、約4.5ミクロン、約5ミクロン、約5.5ミクロン、約6ミクロン、約6.5ミクロン、約7ミクロン、約7.5ミクロン、約8ミクロン、約8.5ミクロン、約9ミクロン、約9.5ミクロン、約10ミクロン、約11ミクロン、約12ミクロン、約13ミクロン、約14ミクロン、約15ミクロン、約16ミクロン、約17ミクロン、約18ミクロン、約19ミクロンまたは約20ミクロンである。いくつかの実施形態では、MMADは約1ミクロンである。いくつかの実施形態では、MMADは約2ミクロン~約2.5ミクロンである。いくつかの実施形態では、MMADは約2ミクロンであり、いくつかの実施形態では、MMADは約2.5ミクロンである。いくつかの実施形態では、MMADは約5ミクロン未満である。
【0102】
本明細書に提供される治療方法または使用方法を実施する際には、治療すべき疾患または症状を有する対象に、医薬組成物中の本明細書に記載の治療有効量の化合物を投与する。いくつかの実施形態では、対象はヒトなどの哺乳動物である。治療有効量は、疾患の重篤度、対象の年齢および相対的健康状態、使用される化合物の効力、ならびに他の因子に応じて大きく異なり得る。
【0103】
医薬組成物は、薬学的に使用することができる製剤に活性化合物を加工するのを容易にする賦形剤および助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を用いて製剤化することができる。選択した投与経路に応じて、製剤を改質することができる。本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物は、例えば、混合、溶解、乳化、カプセル化、封入または圧縮加工によって製造することができる。
【0104】
医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、および遊離塩基または薬学的に許容される塩の形態として本明細書に記載の化合物を含むことができる。医薬組成物は、可溶化剤、安定剤、等張化促進剤、緩衝液および保存剤を含有することができる。
【0105】
本明細書に記載の化合物を含む組成物の調製方法は、1つ以上の不活性の薬学的に許容される賦形剤または担体とともに化合物を製剤化して、固体、半固体または液体組成物を形成することを含む。固体組成物には、例えば、粉末剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤およびカシェ剤が挙げられる。液体組成物には、例えば、化合物が溶解された溶液、化合物を含むエマルジョン、または本明細書に開示される化合物を含むリポソーム、ミセルもしくはナノ粒子を含有する溶液が挙げられる。半固体組成物には、例えば、ゲル、懸濁液およびクリームが挙げられる。組成物は、液体溶液もしくは懸濁液、使用前に液体に溶解もしくは懸濁するのに適した固体形態、またはエマルジョンとすることができる。これらの組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤および他の薬学的に許容される添加剤などの少量の無毒性の補助物質を含有することができる。
【0106】
本発明に使用するのに適した剤形の非限定的な例には、液剤、粉末剤、ゲル剤、ナノ懸濁液、ナノ粒子、ミクロゲル、水性または油性懸濁液、エマルジョンおよびそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0107】
本発明に使用するのに適した薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例には、結合剤、崩壊剤、付着防止剤(anti-adherent)、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、被覆剤、着色剤、可塑剤、保存剤、懸濁剤、乳化剤、抗菌剤、球形化剤(spheronization agent)およびそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0108】
いくつかの実施形態では、製剤は、トリプトファン、チロシン、ロイシン、トリロイシン(trileucine)、イソロイシンおよびフェニルアラニンからなる群から選択される疎水性アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、組成物の約10重量%、約20重量%、約30重量%、約40重量%、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%または約90重量%の疎水性アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、本発明の製剤はロイシンを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、組成物の約30重量%、約40重量%、約50重量%、約60重量%、約70重量%のロイシンを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、組成物の約50重量%のロイシンを含む。いくつかの実施形態では、本発明の製剤はトリロイシンを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、組成物の約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%または約70重量%のトリロイシンを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、組成物の約50重量%のトリロイシンを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、製剤は、組成物の約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50%重量、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%または約95重量%の脂質などの脂質生成物を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、DSPC、DPPC、DMPCまたはリポソームを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、組成物の約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%または約70重量%のDSPCを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、組成物の約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%または約70重量%のDPPCを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、組成物の約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%または約70重量%のDMPCを含む。
【0110】
本発明の組成物は、例えば、即時放出形態または制御放出製剤とすることができる。即時放出製剤は、化合物が迅速に作用することを可能にするように製剤化することができる。即時放出製剤の非限定的な例には、容易に溶解する製剤が挙げられる。制御放出製剤は、活性剤の放出速度および放出プロファイルが生理学的および時間治療的(chronotherapeutic)要件に合致し得るように適合されているか、あるいはプログラムされた速度で活性剤を放出するように製剤化されている医薬製剤とすることができる。制御放出製剤の非限定的な例には、顆粒剤、遅延放出顆粒剤、ヒドロゲル(例えば、合成または天然起源のもの)、他のゲル化剤(例えば、ゲル形成食物繊維)、マトリックスベースの製剤(例えば、分散した少なくとも1つの活性成分を有するポリマー材料を含む製剤)、マトリックス内の顆粒、ポリマー混合物および顆粒塊が挙げられる。
【0111】
いくつかでは、制御放出製剤は遅延放出形態である。遅延放出形態は、化合物の作用を長期間遅延させるように製剤化することができる。遅延放出形態は、例えば、約4時間、約8時間、約12時間、約16時間または約24時間にわたり、有効量の1つ以上の化合物の放出を遅延させるように製剤化することができる。
【0112】
制御放出製剤は徐放性形態とすることができる。徐放性形態は、例えば、化合物の作用を長期間持続するように製剤化することができる。徐放性形態は、約4時間、約8時間、約12時間、約16時間または約24時間にわたり、本明細書に記載の任意の化合物の有効量を提供する(例えば、生理学的に有効な血液プロファイルを提供する)ように製剤化することができる。
【0113】
薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例は、例えば、いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれるRemington:The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995);Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975;Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins1999)に見出すことができる。
【0114】
投与方法
任意の順序でまたは同時に複数の治療剤を投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、追加の治療剤と組み合わせて、追加の治療剤の前に、または追加の治療剤の後に投与される。同時投与の場合、複数の治療剤は、単一の統一された形態で、または複数の形態で、例えば複数の別個の丸剤として提供することができる。薬剤は、単一の包装または複数の包装に一緒にまたは別個に包装することができる。1つまたは全部の治療剤を複数回投与することができる。同時投与ではない場合、複数回投与の間のタイミングは、約1カ月程度まで変動させることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、化合物1は第2の薬剤の前に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、PDEV阻害剤またはET受容体拮抗薬の投与前に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、PDEV阻害剤およびET受容体拮抗薬の投与前に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は第1の薬剤の投与後に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、PDEV阻害剤またはET受容体拮抗薬の投与後に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、PDEV阻害剤およびET受容体拮抗薬の投与後に投与される。
【0116】
本明細書に記載の治療剤は、疾患または症状の発生前、発生中または発生後に投与することができ、治療剤を含有する組成物を投与するタイミングは変化させることができる。例えば、組成物は予防薬として使用することができ、疾患または症状の発生の可能性を低下させるために、症状または疾患が発生しやすい対象に連続投与することができる。組成物は、症状の発症中、または症状の発症後できるだけ早く対象に投与することができる。治療剤の投与は、症状の発症の最初の48時間以内、症状の発症の最初の24時間以内、症状の発症の最初の6時間以内または症状の発症の3時間以内に開始することができる。初期投与は、本明細書に記載の任意の製剤を用いた本明細書に記載の任意の経路によるなど、現場での任意の経路を介するものとすることができる。治療剤は、疾患または症状の発症が検出されたか疑われた後に実施可能になり次第、かつ例えば、約1カ月から約3カ月までなどの疾患の治療に必要な期間にわたって投与することができる。治療期間は各対象によって異なり得る。
【0117】
本明細書に提供される医薬組成物は、他の療法、例えば、化学療法、放射線療法、外科手術、抗炎症薬および選択されたビタミンと組み合わせて投与することができる。他の薬剤は、医薬組成物の前、後、またはそれと同時に投与することができる。
【0118】
意図する投与方法に応じて、医薬組成物は、例えば、正確な投与量の単回投与に適した単位剤形の錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、液剤、懸濁剤、ローション剤、クリーム剤またはゲル剤などの固体、半固体または液体剤形の形態とすることができる。
【0119】
固体組成物の場合、無毒性の固体担体には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウムが挙げられる。
【0120】
本開示の組成物との組合せに適した薬学的に活性な薬剤の非限定的な例には、抗感染症薬、すなわち、アミノグリコシド、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗コリン薬/鎮痙薬、抗糖尿病薬、抗高血圧薬、抗悪性腫瘍薬、心血管治療薬、中枢神経系作用薬、凝固調節剤、ホルモン、免疫薬、免疫抑制薬および点眼剤が挙げられる。
【0121】
本開示での使用に適した剤形の非限定的な例には、液剤、エリキシル剤、ナノ懸濁液、水性または油性懸濁液、滴剤、シロップ剤およびそれらの任意の組合せが挙げられる。本開示での使用に適した薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例には、造粒剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、甘味剤、滑剤、付着防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、ガム、被覆剤、着色剤、香味剤、被覆剤、可塑剤、保存剤、懸濁剤、乳化剤、植物セルロース系材料および球形化剤ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0122】
リポソーム技術を介して化合物を送達することができる。薬物担体としてリポソームを使用すると、化合物の治療指数を増大させることができる。リポソームは天然リン脂質から構成され、界面活性剤特性を有する混合脂質鎖を含むことができる(例えば、卵ホスファチジルエタノールアミン)。リポソーム設計では、病的な組織に付着するために表面リガンドを使用することができる。リポソームの非限定的な例には、多重層ベシクル(multilamellar vesicle:MLV)、小型単層ベシクル(small unilamellar vesicle:SUV)および大型単層ベシクル(large unilamellar vesicle:LUV)が挙げられる。リポソームの物理化学的特性を調節して、生物学的障壁を通る浸透と投与部位での保持とを最適化し、早期分解と非標的組織に対する毒性とを発現する可能性を低下させることができる。最適なリポソーム特性は投与経路に応じて決まる。大きなサイズのリポソームは局所注射時に良好な保持力を示し、小さなサイズのリポソームはパッシブターゲティングを達成するのに適している。PEG化は、肝臓および脾臓によるリポソームの取り込みを減少させ、循環時間を増加させ、その結果、血管透過性滞留性亢進(EPR)効果のために炎症部位での局在化が増大する。
さらに、リポソーム表面を修飾して、特異的な標的細胞にカプセル化薬物を選択的に送達することができる。ターゲティングリガンドの非限定的な例には、疾患に関連する細胞の表面に濃縮された受容体に特異的なモノクローナル抗体、ビタミン、ペプチドおよび多糖類が挙げられる。
【0123】
本発明の組成物はキットとして包装することができる。いくつかの実施形態では、キットは、組成物の投与/使用に関する取扱説明書を含む。書面による資料は、例えば、ラベルとすることができる。書面による資料は、投与の条件方法を示唆することができる。説明書は、対象および担当医師に、治療の適用から最適な臨床転帰を達成するための最良の指針を提供する。書面による資料はラベルとすることができる。いくつかの実施形態では、ラベルは、規制機関、例えば、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)または他の規制機関によって承認され得る。いくつかの実施形態では、キットは、吸入器、アトマイザーまたはネブライザーなどの吸入送達装置を含む。いくつかの実施形態では、キットは、密封ブリスターパック内に粉末の吸入用カプセルを含む。
【0124】
投与
本明細書に記載の医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に適した単位剤形とすることができる。単位剤形では、製剤は、適切な量の1つ以上の化合物を含有する単位用量に分けられる。単位投与量は、別個の量の製剤を含有する包装の形態とすることができる。非限定的な例は、バイアルまたはアンプル内の液剤である。水性懸濁液組成物は、単回投与用の再密閉できない容器に包装することができる。複数回投与用の再密閉可能な容器は、例えば保存剤と組み合わせて使用することができる。非経口注射用の製剤は、アンプルなどの単位剤形で、または保存剤を含む複数回投与用の容器で提供することができる。
【0125】
本明細書に記載の化合物は、組成物中に約1mg~約500mgの範囲で存在することができる。本明細書に記載の化合物は、組成物中に、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mgまたは約500mgの量で存在することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、用量は、対象の体重で割った薬物の量、例えば、対象の体重1キログラム当たりの薬物のミリグラム数を用いて表すことができる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、約5mg/kg~約50mg/kg、250mg/kg~約2000mg/kg、約10mg/kg~約800mg/kg、約50mg/kg~約400mg/kg、約100mg/kg~約300mg/kgまたは約150mg/kg~約200mg/kgの範囲の量で投与される。
【0127】
いくつかの実施形態では、化合物1の用量は、約2.5mg~約100mgとすることができる。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mgまたは約100mgとすることができる。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は、約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kgまたは約0.9mg/kgとすることができる。いくつかの実施形態では、本発明は、約0.5mg/kgまたは約0.6mg/kgの化合物1の投与を記載する。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は約10mgとすることができる。いくつかの実施形態では、ある用量の化合物1を1日1回、1日2回、1日3回または1日4回投与することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、PDEV阻害剤の用量は、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mgまたは約50mgとすることができる。いくつかの実施形態では、PDEV阻害剤の用量は約20mgとすることができる。いくつかの実施形態では、PDEV阻害剤の用量は約40mgとすることができる。いくつかの実施形態では、ある用量のPDEV阻害剤を1日1回、1日2回、1日3回または1日4回投与することができる。いくつかの実施形態では、20mgのPDEV阻害剤を1日3回投与する。いくつかの実施形態では、40mgのPDEV阻害剤を1日1回投与する。
【0129】
いくつかの実施形態では、ET拮抗薬の用量は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mgまたは約20mgとすることができる。いくつかの実施形態では、ET拮抗薬の用量は約5mgとすることができる。いくつかの実施形態では、ET拮抗薬の用量は約10mgとすることができる。いくつかの実施形態では、ある用量のET拮抗薬を1日1回、1日2回、1日3回または1日4回投与することができる。いくつかの実施形態では、5mgのET拮抗薬を1日1回投与する。いくつかの実施形態では、10mgのET拮抗薬を1日1回投与する。いくつかの実施形態では、5mgのET拮抗薬を1日2回投与する。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明は、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kgまたは約20mg/kgのPDEV阻害剤、ET受容体拮抗薬の投与を記載する。いくつかの実施形態では、本発明は、約10mg/kgのPDEV阻害剤の投与を記載する。いくつかの実施形態では、本発明は、約10mg/kgのET受容体拮抗薬の投与を記載する。
【0131】
薬物動態学的および薬力学的測定
薬物動態学的および薬力学的プロファイル成分を用いて、本明細書に開示されている製剤を説明することができる。いくつかの実施形態では、特定の製剤は、以下のパラメータのいずれかまたはそれらの組合せによって説明することができる。
i)k10:(一次)消失速度定数
ii)k12:中央コンパートメントから末梢コンパートメントへの移行速度
iii)k21:末梢コンパートメントから中央コンパートメントへの移行速度
iv)t1/2α:分布半減期(distributive half-life)
v)t1/2β:排出半減期
vi)t1/2ka:吸収半減期
vii)V/F:血管外投与後の薬物の見かけの分布容積
viii)CL/F:血管外投与後の薬物の見かけの血漿クリアランス
ix)V2/F:中央コンパートメントの分布容積
x)CL2/F:見かけのコンパートメント間クリアランス
xi)Cmax:定常状態での最高血漿中濃度
xii)Tmax:Cmaxまでの時間
xiii)AUC0-t:0から最後の定量可能な濃度の時点までの血漿中濃度-時間曲線下面積
xiv)AUC0-inf:0から無限大まで外挿された血漿中濃度-時間曲線下面積
xv)AUMC:一次モーメント-時間曲線下総面積、または
xvi)MRT:平均滞留時間
【0132】
薬物動態学的および薬力学的データは様々な実験技術を用いて得ることができる。いくつかの実施形態では、血漿薬物濃度レベルは、有効な液体クロマトグラフ/質量分析-質量分析(LC/MS-MS)法を用いて決定される。いくつかの実施形態では、薬物動態学的パラメータは、標準的な非コンパートメント法を用いて決定することができる。いくつかの実施形態では、Cmax、AUC0-tおよびAUC0-infは、対数変換データを使用して統計的に分析される。
【0133】
特定の組成物または製剤を説明する適切な薬物動態学的および薬力学的プロファイル成分は、ヒト対象の薬物代謝の変動により変動し得る。薬物動態学的および薬力学的プロファイルは、対象群の平均パラメータの決定に基づき得る。対象群は、代表的な平均を決定するのに適した任意の妥当な数の対象、例えば、5例、10例、15例、20例、25例、30例、35例またはそれ以上を含む。平均は、例えば、測定された各パラメータについて全対象の測定値の平均を計算することによって決定される。本明細書に記載されるように、用量を調節して、所望のまたは有効な血液プロファイルなどの所望の薬物動態学的または薬力学的プロファイルを達成することができる。
【0134】
薬力学的パラメータは、本発明の組成物を説明するのに適した任意のパラメータであり得る。例えば、薬力学的プロファイルは、例えば約0分、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約21分、約22分、約23分、約24分、約25分、約26分、約27分、約28分、約29分、約30分、約31分、約32分、約33分、約34分、約35分、約36分、約37分、約38分、約39分、約40分、約41分、約42分、約43分、約44分、約45分、約46分、約47分、約48分、約49分、約50分、約51分、約52分、約53分、約54分、約55分、約56分、約57分、約58分、約59分、約60分、約0時間、約0.5時間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、約5.5時間、約6時間、約6.5時間、約7時間、約7.5時間、約8時間、約8.5時間、約9時間、約9.5時間、約10時間、約10.5時間、約11時間、約11.5時間、約12時間、約12.5時間、約13時間、約13.5時間、約14時間、約14.5時間、約15時間、約15.5時間、約16時間、約16.5時間、約17時間、約17.5時間、約18時間、約18.5時間、約19時間、約19.5時間、約20時間、約20.5時間、約21時間、約21.5時間、約22時間、約22.5時間、約23時間、約23.5時間または約24時間の投与後の時点で得ることができる。
【0135】
薬物動態学的パラメータは、化合物または製剤を説明するのに適した任意のパラメータであり得る。Cmaxは、例えば、約1μg/mL以上、約5μg/mL以上、約10μg/mL以上、約15μg/mL以上、約20μg/mL以上、約25μg/mL以上、約50μg/mL以上、約75μg/mL以上、約100μg/mL以上、約200μg/mL以上、約300μg/mL以上、約400μg/mL以上、約500μg/mL以上、約600μg/mL以上、約700μg/mL以上、約800μg/mL以上、約900μg/mL以上、約1000μg/mL以上、約1250μg/mL以上、約1500μg/mL以上、約1750μg/mL以上、約2000μg/mL以上、または本明細書に記載の化合物もしくは製剤の薬物動態学的プロファイルを説明するのに適した任意の他のCmaxであり得る。Cmaxは、例えば、約1μg/mL~約5,000μg/mL、約1μg/mL~約4,500μg/mL、約1μg/mL~約4,000μg/mL、約1μg/mL~約3,500μg/mL、約1μg/mL~約3,000μg/mL、約1μg/mL~約2,500μg/mL、約1μg/mL~約2,000μg/mL、約1μg/mL~約1,500μg/mL、約1μg/mL~約1,000μg/mL、約1μg/mL~約900μg/mL、約1μg/mL~約800μg/mL、約1μg/mL~約700μg/mL、約1μg/mL~約600μg/mL、約1μg/mL~約500μg/mL、約1μg/mL~約450μg/mL、約1μg/mL~約400μg/mL、約1μg/mL~約350μg/mL、約1μg/mL~約300μg/mL、約1μg/mL~約250μg/mL、約1μg/mL~約200μg/mL、約1μg/mL~約150μg/mL、約1μg/mL~約125μg/mL、約1μg/mL~約100μg/mL、約1μg/mL~約90μg/mL、約1μg/mL~約80μg/mL、約1μg/mL~約70μg/mL、約1μg/mL~約60μg/mL、約1μg/mL~約50μg/mL、約1μg/mL~約40μg/mL、約1μg/mL~約30μg/mL、約1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、約1μg/mL~約5μg/mL、約10μg/mL~約4,000μg/mL、約10μg/mL~約3,000μg/mL、約10μg/mL~約2,000μg/mL、約10μg/mL~約1,500μg/mL、約10μg/mL~約1,000μg/mL、約10μg/mL~約900μg/mL、約10μg/mL~約800μg/mL、約10μg/mL~約700μg/mL、約10μg/mL~約600μg/mL、約10μg/mL~約500μg/mL、約10μg/mL~約400μg/mL、約10μg/mL~約300μg/mL、約10μg/mL~約200μg/mL、約10μg/mL~約100μg/mL、約10μg/mL~約50μg/mL、約25μg/mL~約500μg/mL、約25μg/mL~約100μg/mL、約50μg/mL~約500μg/mL、約50μg/mL~約100μg/mL、約100μg/mL~約500μg/mL、約100μg/mL~約400μg/mL、約100μg/mL~約300μg/mLまたは約100μg/mL~約200μg/mLであり得る。
【0136】
本明細書に記載の化合物または製剤のTmaxは、例えば、約0.5時間以下、約1時間以下、約1.5時間以下、約2時間以下、約2.5時間以下、約3時間以下、約3.5時間以下、約4時間以下、約4.5時間以下、約5時間以下、または本明細書に記載の化合物もしくは製剤の薬物動態学的プロファイルを説明するのに適した任意の他のTmaxであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物または製剤のTmaxは、約1分以下、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約15分、約20分または約25分である。Tmaxは、例えば、約0.1時間~約24時間、約0.1時間~約0.5時間、約0.5時間~約1時間、約1時間~約1.5時間、約1.5時間~約2時間、約2時間~約2.5時間、約2.5時間~約3時間、約3時間~約3.5時間、約3.5時間~約4時間、約4時間~約4.5時間、約4.5時間~約5時間、約5時間~約5.5時間、約5.5時間~約6時間、約6時間~約6.5時間、約6.5時間~約7時間、約7時間~約7.5時間、約7.5時間~約8時間、約8時間~約8.5時間、約8.5時間~約9時間、約9時間~約9.5時間、約9.5時間~約10時間、約10時間~約10.5時間、約10.5時間~約11時間、約11時間~約11.5時間、約11.5時間~約12時間、約12時間~約12.5時間、約12.5時間~約13時間、約13時間~約13.5時間、約13.5時間~約14時間、約14時間~約14.5時間、約14.5時間~約15時間、約15時間~約15.5時間、約15.5時間~約16時間、約16時間~約16.5時間、約16.5時間~約17時間、約17時間~約17.5時間、約17.5時間~約18時間、約18時間~約18.5時間、約18.5時間~約19時間、約19時間~約19.5時間、約19.5時間~約20時間、約20時間~約20.5時間、約20.5時間~約21時間、約21時間~約21.5時間、約21.5時間~約22時間、約22時間~約22.5時間、約22.5時間~約23時間、約23時間~約23.5時間または約23.5時間~約24時間であり得る。
【0137】
本明細書に記載の化合物または製剤のAUC0-infまたはAUC0-tは、例えば、約1μg/g・min以上、約5μg/g・min以上、約10μg/g・min以上、約20μg/g・min以上、約30μg/g・min以上、約40μg/g・min以上、約50μg/g・min以上、約100μg/g・min以上、約150μg/g・min以上、約200μg/g・min以上、約250μg/g・min以上、約300μg/g・min、約350μg/g・min以上、約400μg/g・min以上、約450μg/g・min以上、約500μg/g・min以上、以上・約600μg/g・min以上、約700μg/g・min以上、約800μg/g・min以上、約900μg/g・min以上、約1000μg/g・min以上、約1250μg/g・min以上、約1500μg/g・min以上、約1750μg/g・min以上、約2000μg/g・min以上、約2500μg/g・min以上、約3000μg/g・min以上、約3500μg/g・min以上、約4000μg/g・min以上、約5000μg/g・min以上、約6000μg/g・min以上、約7000μg/g・min以上、約8000μg/g・min以上、約9000μg/g・min以上、約10,000μg/g・min、または本明細書に記載の化合物の薬物動態学的プロファイルを説明するのに適した任意の他のAUC(0-inf)であり得る。化合物のAUC(0-inf)は、例えば、約1μg/g・min~約10,000μg/g・min、約1μg/g・min~約10μg/g・min、約10μg/g・min~約25μg/g・min、約25μg/g・min~約50μg/g・min、約50μg/g・min~約100μg/g・min、約100μg/g・min~約200μg/g・min、約200μg/g・min~約300μg/g・min、約300μg/g・min~約400μg/g・min、約400μg/g・min~約500μg/g・min、約500μg/g・min~約600μg/g・min、約600μg/g・min~約700μg/g・min、約700μg/g・min~約800μg/g・min、約800μg/g・min~約900μg/g・min、約900μg/g・min~約1,000μg/g・min、約1,000μg/g・min~約1,250μg/g・min、約1,250μg/g・min~約1,500μg/g・min、約1,500μg/g・min~約1,750μg/g・min、約1,750μg/g・min~約2,000μg/g・min、約2,000μg/g・min~約2,500μg/g・min、約2,500μg/g・min~約3,000μg/g・min、約3,000μg/g・min~約3,500μg/g・min、約3,500μg/g・min~約4,000μg/g・min、約4,000μg/g・min~約4,500μg/g・min、約4,500μg/g・min~約5,000μg/g・min、約5,000μg/g・min~約5,500μg/g・min、約5,500μg/g・min~約6,000μg/g・min、約6,000μg/g・min~約6,500μg/g・min、約6,500μg/g・min~約7,000μg/g・min、約7,000μg/g・min~約7,500μg/g・min、約7,500μg/g・min~約8,000μg/g・min、約8,000μg/g・min~約8,500μg/g・min、約8,500μg/g・min~約9,000μg/g・min、約9,000μg/g・min~約9,500μg/g・minまたは約9,500μg/g・min~約10,000μg/g・minであり得る。
【0138】
本明細書に記載の化合物または製剤の血漿中濃度は、例えば、約1ng/mL以上、約5ng/mL以上、約10ng/mL以上、約15ng/mL以上、約20ng/mL以上、約25ng/mL以上、約50ng/mL以上、約75ng/mL以上、約100ng/mL以上、約150ng/mL以上、約200ng/mL以上、約300ng/mL以上、約400ng/mL以上、約500ng/mL以上、または本明細書に記載の化合物もしくは製剤の任意の他の血漿中濃度であり得る。血漿中濃度は、例えば、約1ng/mL~約500ng/mL、約1ng/mL~約5ng/mL、約5ng/mL~約10ng/mL、約10ng/mL~約25ng/mL、約25ng/mL~約50ng/mL、約50ng/mL~約75ng/mL、約75ng/mL~約100ng/mL、約100ng/mL~約150ng/mL、約150ng/mL~約200ng/mL、約200ng/mL~約250ng/mL、約250ng/mL~約300ng/mL、約300ng/mL~約350ng/mL、約350ng/mL~約400ng/mL、約400ng/mL~約450ng/mLまたは約450ng/mL~約500ng/mLであり得る。
【0139】
本明細書に記載の化合物または製剤の血漿中濃度は、例えば、約1μg/mL以上、約5μg/mL以上、約10μg/mL以上、約15μg/mL以上、約20μg/mL以上、約25μg/mL以上、約50μg/mL以上、約75μg/mL以上、約100μg/mL以上、約150μg/mL、約200μg/mL以上、約300μg/mL以上、約400μg/mL以上、約500μg/mL以上、または本明細書に記載の化合物もしくは製剤の任意の他の血漿中濃度であり得る。血漿中濃度は、例えば、約1μg/mL~約500μg/mL、約1μg/mL~約5μg/mL、約5μg/mL~約10μg/mL、約10μg/mL~約25μg/mL、約25μg/mL~約50μg/mL、約50μg/mL~約75μg/mL、約75μg/mL~約100μg/mL、約100μg/mL~約150μg/mL、約150μg/mL~約200μg/mL、約200μg/mL~約250μg/mL、約250μg/mL~約300μg/mL、約300μg/mL~約350μg/mL、約350μg/mL~約400μg/mL、約400μg/mL~約450μg/mLまたは約450μg/mL~約500μg/mLであり得る。
【0140】
適応症
本開示は、症状を治療するための化合物の組合せの使用を記載する。いくつかの実施形態では、症状は、肺障害、例えば、PAH、左心疾患によるPH、肺疾患によるPH、肺内の凝血塊によるPH、または血液および他のまれな障害から生じるPHである。
【0141】
いくつかの実施形態では、本開示は、PAHを治療するための化合物の組合せの使用を記載する。いくつかの実施形態では、PAHは、原発性PAH、特発性PAH、遺伝性PAH、薬物および毒素誘発性PAH、または他の全身性疾患に関連するPAHである。いくつかの実施形態では、遺伝性PAHは、BMPR2、ALK1、エンドグリン、SMAD9、CAV1またはKCNK3によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、薬物および毒素誘発性PAHは、アンフェタミン、メタンフェタミン、コカインまたはフェンフルラミン-フェンテルミンの使用によって誘発される。いくつかの実施形態では、PAHは、他の全身性疾患と関連しており、結合組織病(例えば、強皮症、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病および慢性関節リウマチ)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、門脈圧亢進症または先天性心疾患によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、本開示は、肺静脈閉塞症(PVOD)または肺毛細血管腫症(PCH)を治療するために使用することができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、PHは左心疾患、例えば、左室収縮機能不全、左室拡張機能不全、心臓弁膜症、弁膜症によるものではない左心流入路および流出路閉塞、または先天性心筋症によって引き起こされた左心疾患に起因する。いくつかの実施形態では、PHは、肺疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患、睡眠時呼吸障害(例えば、睡眠時無呼吸)、肺胞低換気障害、高地環境への慢性的曝露、または肺の発達異常に起因する。
【0143】
いくつかの実施形態では、PHはCTEPHである。いくつかの実施形態では、PHは、詳細不明または多因子の機序を有するPH、例えば、血液障害(例えば、ある種の貧血、骨髄増殖性障害または脾臓摘出)、肺病変を有する全身障害(例えば、サルコイドーシス、ランゲルハンス細胞組織球症、神経線維腫症、血管炎またはリンパ脈管筋腫症)、代謝障害(例えば、細胞代謝不全のまれな疾患、または甲状腺疾患)、または他の分類されていない疾患(例えば、慢性腎不全、肺動脈を閉塞する腫瘍、およびその他のまれな疾患)によって引き起こされるPHである。
【0144】
いくつかの実施形態では、治療対象の症状は、異常な右室収縮期圧(RVSP)、肺動脈圧、心拍出量、右室肥大または肺動脈肥大に関連する肺障害である。いくつかの実施形態では、治療対象の症状は肺癌である。いくつかの実施形態では、治療対象の症状は肺原発血管肉腫である。
【0145】
例
例1:インビボ試験
雄のSprague Dawley(SD)ラット(体重:300~330g、Taconic)を用いて、化合物1単独の効果ならびにアンブリセンタンおよびタダラフィルと組み合わせた化合物1の効果を試験した。12時間の明/暗周期で標準的なラットケージに動物を収容し、標準的なラットの固形飼料および水を自由に摂取させた。the National Institutes of Health Guide for the Care and Use of Animalsに従って、動物を管理および使用した。
【0146】
例2:実験デザイン
3.1 吸入薬物動態学的試験
雄のSprague Dawleyラットに、化合物1の乾燥粉末製剤(化合物1/ロイシン)を60分間鼻のみに曝露して吸入させた。吸入薬物動態学的試験の平均蓄積用量は0.4mg/kgであり、蓄積率は0.1と仮定された。動物間でサンプリングするのに十分な時間をとるために、ラットを交互に曝露タワーに置いた。
【0147】
吸入投与が完了した後、ラットをイソフルランによる全身麻酔下に置き、気管切開術により挿管し、圧力制御ベンチレータに置いた。次いで、各ラットに対して胸骨切開術を実施した。指定された時点で、右室(RV)から静脈サンプルを採取し、左室(LV)から動脈サンプルを採取した。各サンプルについて、10μLのEDTAを含有するエッペンドルフチューブに1mLの血液を入れ、静脈サンプルおよび動脈サンプルを氷上に置いた。
【0148】
ラットの左右の肺動脈、静脈および気管支をクランプした。肺葉(すなわち、右上葉(RUL)、右中葉(RML)、右下葉(RLL)、肺副葉(Acc)、左上葉(LUL)、左中葉(LML)および左下葉(LLL))を摘出し、血液を吸い取って除去し、液体窒素中で急速冷凍した。全身麻酔下で放血によりラットを安楽死させた。ラットから得られた血液サンプルを遠心分離により分離し、エッペンドルフチューブに血漿上清を等分した。血漿サンプルおよび肺葉が抽出されアッセイされるまで、血漿サンプルおよび肺葉をマイナス80℃で保存した。
【0149】
3.2 AAV-PDGFB SU5416低酸素症試験
肺吹送により雄のSDラットにアデノ随伴ウイルス(AAV)-PDGFBを投与して、肺にPDGFBBを過剰発現させた。2つの血清型のAAV(AAV-5およびAAV6.2)を使用して、PDGFBBを過剰発現したラットを作成した。サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下で、ラットPDGFBを過剰発現させた。AAV-5-PDGFB 4.3×10
12ゲノムコピー(GC)およびAAV-6.2-PDGFB 1.6×10
11 GCを各ラットに吹送した。配列番号1は、CMVプロモーターの制御下で過剰発現されたラットPDGFBの配列を示す。
配列番号1
【化13-1】
【化13-2】
【0150】
4週間後、腹腔内(i.p.)注射を用いて20mg/kgのセマクサニブ(SU5416)を投与し、吸気酸素分率(FiO
2)10%で低酸素室にラットを3週間収容した。治療群を4群に分けた(表1):1)1日1回強制経口投与によるビヒクルおよび1日2回吸入によるビヒクル(V-V);2)1日1回強制経口投与による10mg/kgのタダラフィルおよび10mg/kgのアンブリセンタンならびに1日2回吸入によるビヒクル(TA-V);3)1日1回強制経口投与によるビヒクルおよび1日2回吸入による0.6mg/kgの化合物1(V-PK);ならびに4)1日1回強制経口投与による10mg/kgのタダラフィルおよび10mg/kgのアンブリセンタンならびに1日2回吸入による0.6mg/kgの化合物1(TA-PK)。低酸素室からラットを取り出した後、2日目から連日治療を実施し、4週間(28日間)続けた。
【表1】
【0151】
試験終了時に、各ラットのRVSPを測定し、動物をヘパリン化した。次いで、肺の右中葉を摘出し、液体窒素に入れた。全身麻酔下でラットを放血させ、残りの肺および心臓を摘出した。肺動脈をヘパリン化食塩水で灌流し、低圧下で10%ホルマリンを用いて固定した。心腔を解剖し、秤量し、ホルマリンで固定した。残りの肺は、気管を介して注入することによりホルマリンで固定した。ラットのRVSPを測定するために、イソフルランを用いて動物を鎮静させ、気管切開術を介して挿管し、TOPO(商標)圧力制御ベンチレータを用いて換気した。ピーク吸気圧は18cm H2Oであり、呼気終末陽圧(PEEP)は5cm H2Oであった。胸骨切開術を実施し、RV尖部を介してScisenseハイフィデリティー(high-fidelity)カテーテルを挿入した。測定したパラメータには以下を含めた:右室収縮終末期圧(RVESP)、RV拡張終末期圧(RVEDP)、RV血行動態、RV肥大、RV拡張終末期容積、RV収縮終末期容積、RV駆出分画率、PDGFRシグナル伝達、心拍出量および一回心仕事量。
【0152】
3.3 吸入用の化合物1の粉末の投与
化合物1の製剤には、約50%の化合物1および約50%のロイシンを含有させた。化合物をエタノール/水溶液に溶解させ、混合物を噴霧乾燥して吸入に適したエアロゾル特性を有する乾燥粉末を形成した。
【0153】
Vilnius Aerosol Generator(VAG)を用いて12ポートの鼻のみの吸入チャンバーを用いて、吸入用の化合物1の粉末をラットに送達した。吸入用の化合物1の粉末をVAGに充填し、流速を60分間3L/分に設定した。1.5L/分の流速でMercerインパクターを用いて、吸入された化合物1の量を測定した。Next Generation Impactor(NGI)を用いて、吸入用の化合物1の粉末のエアロゾルMMADを決定した。
【0154】
3.4 プレチスモグラフィー
EmkaデュアルチャンバープレチスモグラフおよびEmka ioxソフトウェアを用いてプレチスモグラフィーを行った。測定したパラメータには、呼吸頻度、一回換気量、分時換気量(MV)、最大吸気流速および最大呼気流量、ならびに気道抵抗を含めた。測定は薬物の初回投与前および試験終了時に行った。
【0155】
3.5 組織学および形態計測分析
全身麻酔下で、換気された動物から心臓および肺を摘出した。加圧下で主肺動脈を通してヘパリン化食塩水を注入した。定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)およびウエスタンブロット分析のために、右中葉を直ちに結紮し、液体窒素に入れた。心臓を摘出し、RV自由壁、心室中隔および左室(LV)自由壁を解剖して秤量した。加圧下で肺動脈および気管を通して緩衝ホルマリン(10%)を注入した。8μmに切片化したH&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)染色ホルマリン固定組織に対して形態計測分析を行った。ImageJソフトウェアを使用して、肺細動脈の中膜領域および内腔領域を測定した。ラット1匹ごとに1切片当たり少なくとも20個の肺細動脈に対して測定を行った。内腔領域の総中膜領域に対する比(L/M)を決定した。L/M比によって総肺細動脈面積の変動を正規化した。
【0156】
3.6 免疫組織化学的検査
熱誘導エピトープ賦活化を用いて抗原賦活化を行った。PDGFBB、総PDGFRα、総PDGFRβ、pPDGFRαおよびpPDGFRβに対して、肺切片の免疫組織化学的検査を行った。EXPOSEホースラディッシュペルオキシダーゼ/ジアミノベンジジン(HRP/DAB)キットを用いてシグナル検出を行った。
【0157】
3.7 ウエスタンブロット分析
50mM Tris-HCl、50mM NaCl、5mM EDTA、1%Triton X-100、0.05%SDS、50mM NaF、10mM β-グリセロリン酸、ピロリン酸ナトリウム、100μM Na3VO4ならびにホスファターゼおよびプロテアーゼ阻害剤を含有するpH7.4の溶解緩衝液中で、肺組織サンプルをホモジナイズした。溶解物を標準化し、7.5%または12%ポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に転写した。ブロッキング後、以下の抗体のうちの1つを用いて膜をプローブした:抗PDGFRβ、抗ホスホ(Y1021)-PDGFRβ、pMYPT、MYPT、pSTAT3またはSTAT3。シェーカー上でサンプルを一晩インキュベートし、続いて、HRPとコンジュゲートした二次抗体とともに1時間インキュベートした。結合した抗体は、増強化学発光(ECL)検出システムを用いて化学発光によって検出し、Licor C-Digit(登録商標)ブロットスキャナーを用いて濃度測定によって定量した。
【0158】
3.8 PDGFB遺伝子発現
TRIzol(商標)試薬を使用して肺組織由来のRNAを単離した。Nanodrop(商標)1000分光光度計を使用してRNA濃度を測定した。大容量cDNA逆転写キットを使用して、cDNAに各サンプルの等量のRNAを転写した。PDGFBおよび18S用のTaqMan(商標)Gene Expression Master MixおよびTaqMan(商標)プライマー/プローブを使用して、逆転写(RT)-qPCR反応を設定した。QuantStudio(商標)6 Flexシステムを使用して、遺伝子発現アッセイを行った。ハウスキーピング遺伝子として使用された18Sの発現に対して遺伝子発現を正規化した。
【0159】
3.9 酵素結合免疫吸着法(ELISA)
ホスホ-PDGF受容体β(Y751)に特異的なELISAキットを使用して、ヒト肺線維芽細胞内のPDGFBB刺激PDGFRリン酸化に対する化合物1とイマチニブとの用量効果を比較した。
【0160】
8継代以下の継代培養で成人ヒト肺線維芽細胞(HLFa)を維持した。5%ウシ胎児血清(FBS)、4mM GlutaMAX(商標)および1×抗生物質-抗真菌剤溶液を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で細胞を培養した。T-25フラスコに細胞を播種し、約70~80%コンフルエントになるまで増殖させた。細胞が約70~80%コンフルエントになった後、細胞を約24時間血清飢餓状態に置いた。
【0161】
化合物1またはイマチニブを用いて細胞を処理して、PDGFBBによるpPDGFRβ(Y751)の刺激の阻害について試験した。指定された濃度の化合物1を用いて細胞を前処理し、37℃、5%CO2インキュベーター内で30分間インキュベートした。前処理後、50ng/mLのPDGFBBをフラスコに加え、37℃、5%CO2で細胞を7.5分間インキュベートした。処理後、フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)を含有する細胞溶解緩衝液中で細胞を溶解させた。タンパク質定量のために細胞溶解物の上清を回収し、Micro BCA(商標)タンパク質アッセイキットを使用してアッセイした。次いで、サンドイッチELISAアッセイに細胞溶解物を使用して、pPDGFRα(Y849)およびpPDGFRβ(Y751)の量を定量した。各条件は2連で行った。
【0162】
ELISAアッセイ緩衝液でサンプルを希釈し、pPDGFR mAb被覆マイクロウェルに移し、37℃で2時間インキュベートした。サンプルのウェルインキュベーション後、1×ELISA洗浄緩衝液でウェルを4回洗浄した。検出抗体を各ウェルに加え、37℃のインキュベーター内でサンプルを1時間インキュベートした。検出抗体とともにインキュベートした後、ウェルを洗浄した。HRP結合二次抗体を各ウェルに加え、37℃のインキュベーター内でサンプルを30分間インキュベートした。HRP結合二次抗体のインキュベーション後、ウェルを再度洗浄した。3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を各ウェルに加え、37℃のインキュベーター内で10分間インキュベートした。TMBのインキュベーション後、TMBを含有する各ウェルに停止溶液を加えた。プレートを数秒間穏やかに振盪し、分光光度プレートリーダーおよびGenesis Liteソフトウェアを使用してサンプルウェルを450nmで読み取った。
【0163】
3.10 統計分析
XLSTAT 2017.4を用いて統計分析を行った。示されたデータは、他に記載がない限り、平均±平均の標準誤差(SEM)である。分散分析(ANOVA)と、それに続くボンフェローニ補正またはスチューデント-ニューマン-コイルス(SNK)検定とを用いて群間差を分析した。場合によっては、対照群との比較としてダネット検定を使用した。分散が正常ではない場合には、クラスカル-ウォリスノンパラメトリック分析を行い、続いて、複数の群を比較するためにSteel-Dwass-Critchlow-Fligner手順を行った。有意性をp=0.05レベルに設定した。
【0164】
例3:ヒト肺線維芽細胞内のPDGFRβのELISAアッセイ
図2は、化合物1およびイマチニブを用いてまたは用いずに、PDGFBによって処理したヒト肺線維芽細胞内のリン酸化PDGFRβ(pPDGFRβ)のELISAから得られた結果を示す。化合物1は、ヒト肺線維芽細胞では、PDGFBに刺激されたPDGFRβのリン酸化を阻害する点でイマチニブよりも約2.5倍強力であった。PDGFRβのリン酸化を阻害するための化合物1のIC
50は0.1μMであった。PDGFRβのリン酸化を阻害するためのイマチニブのIC
50は0.25μMであった。
【0165】
例4:吸入化合物1の薬物動態
乾燥粉末製剤として化合物1をラットに受動吸入させた後、肺内の化合物1の濃度は、動脈および静脈の血漿中濃度の化合物1の濃度の20~80倍であった。化合物1の平均蓄積用量は0.4mg/kgであった。t=240分、1440分ではn=2、他のすべての時点ではn=3。
【0166】
図3は、ラットの吸入後の肺、動脈および静脈の化合物1の濃度を比較する。動脈および静脈の化合物1の濃度は、肺の化合物1の濃度よりも数倍低かった。動脈および静脈の化合物1の濃度はベースラインに近く、グラフでは目立たない。
図4は、約500分の期間にわたる動脈および静脈の化合物1の濃度を比較的小さな縮尺で示す。データは、動脈および静脈の化合物1の最大平均濃度が約1μg/mLであったことを示している。動脈および静脈の化合物1の平均濃度は投与後急速に低下し、投与後約400分でゼロに達した。
【0167】
PK Solver 2.0を使用して、2コンパートメント薬物動態学的モデリングを行った。結果を表2および表3に示す。肺での化合物1の終末半減期(t
1/
2β)は、血漿中の125分と比較して385.9分であった。表2は、肺の化合物1の濃度に関する薬物動態学的パラメータを示す。表3は、静脈血漿中濃度における化合物1の濃度に関する薬物動態学的パラメータを示す。
【表2】
【表3】
【0168】
例5:ウエスタンブロット分析
Y1021でpPDGFRβに特異的な抗体を用いたウエスタンブロット分析を行って、治療した動物の肺のpPDGFRβレベルに対する吸入化合物1の効果を決定した。吸入化合物1またはビヒクルによって動物を治療した。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にサンプルを供し、得られたゲルをナイロンメンブレンに転写した。
【0169】
図5は、化合物1による治療が、総PDGFRβのレベルと比較して、pPDGFRβの比率を減少させたことを示すサンプルのウエスタンブロットを示す。
図5の上部パネルは、Y1021でリン酸化されたpPDGFRβに特異的な一次抗体とともにインキュベートした後のウエスタンブロットを示す。
図5の下部パネルは、総PDGFRβに特異的な抗体とともにインキュベーションした後のウエスタンブロットを示す。結果は、化合物1を用いて治療した動物では、ビヒクルを用いて治療した動物と比較してpPDGFRβレベルが減少したことを示す。
【0170】
例6:タダラフィルおよびアンブリセンタンと組み合わせた吸入化合物1の有効性
AAV-PDGFB SU5416低酸素症ラットモデルでは、PDGFB遺伝子発現が増加した。1)ビヒクルのみ、2)タダラフィル+アンブリセンタンおよびビヒクルならびに3)ビヒクルおよび化合物1を用いた治療は、PDGFB遺伝子発現のレベルに有意な影響を及ぼさなかった。対照的に、タダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1による併用治療は、PDGFB遺伝子発現を約70%増加させた。
図6は、タダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1を用いて治療した群では、対照群および他の治療群と比較してPDGFRBの肺遺伝子発現が増加したことを示す。
【0171】
PHのAAV-PDGFB過剰発現SU5416低酸素症ラットモデルでは、4週間にわたって1日1回タダラフィル10mg/kgおよびアンブリセンタン10mg/kgを強制経口投与する併用治療(TA-V、n=8)を実施すると、ビヒクルのみを用いた治療(V-V、n=9)と比較してRVSPが31%低下した。V-V群のRVSPは62.6±4.1mmHgであり、TA-V群のRSVPは42.9±2.2mmHgであった。4週間にわたって1日2回、0.6mg/kgの平均用量で受動吸入により化合物1の乾燥粉末製剤を投与すると、ビヒクル治療動物と比較して右室収縮期圧が29%低下した(RVSP 44.3±1.9mmHg、n=11)。4週間にわたって1日2回吸入化合物1と組み合わせて、10mg/kgのタダラフィルおよび10mg/kgのアンブリセンタンを連日強制経口投与した治療(TA-PK)では、V-V群と比較してRVSPが47%低下した(RVSP 33.2±1.2mmHg TA-PK n=9)(p=0.002 TA-PK vs.V-V、p=0.006 TA-V vs.V-Vおよびp=0.005 V-PK vs V-V)。V-PK群のラット1匹およびTA-PK群のラット3匹のRVSPは得られなかった。
【0172】
図7は、タダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1を用いた治療が、対照群および他の治療群と比較して、RVSPの最大の%低下を示したことを示す。*p<0.01 vs V-V、¶p<0.01 vs TA-VおよびV-PK。表4は、RVSPの%低下に対する治療の効果を要約する。略語:AVG=平均、SEM=平均値の標準誤差。
【表4】
【0173】
また、治療群では、RV重量をLV+心室中隔重量で割った(RV/(LV+IVS))比によって示されるように、右室肥大が減少した。V-V(n=9)0.50±0.03;TA-V(n=8)、0.38±0.02;V-PK(n=11)、0.36±0.01;およびTA-PK(n=9)、0.28±0.01。RV/(LV+IVS)比は、ビヒクル(V-V)群と比較して、TAおよびV-PK群では25%、TA-PK群では27%減少した。
図8は、タダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1を用いた治療が、対照群および他の治療群と比較して、右室肥大の最大の減少(RV/(LV+IVS))を示したことを示す。*p<0.01 vs V-V、¶p<0.01 vs TA-VおよびV-PK。
【0174】
タダラフィル+アンブリセンタン、吸入化合物1による治療と、タダラフィル+アンブリセンタンおよび吸入化合物1の組合せとによって、肺細動脈の内腔/中膜比が改善された。V-V(n=9)0.36±0.05;TA-V(n=8)0.58±0.04;V-PK(n=12)0.76±0.04;TA-PK(n=12)、0.83±0.05。
図9は、肺細動脈の内腔領域と中膜領域とを比較するH&E染色された肺切片を示し、化合物1による治療またはタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1による治療が、対照群ならびにタダラフィルおよびアンブリセンタンのみを用いて治療した群と比較して、肺細動脈の内腔/中膜比を改善したことを示している。
図10は、内腔/中膜比に対するタダラフィル、アンブリセンタンおよび化合物1の単剤療法および併用療法の効果を比較する。データは、TA-PK群では、V-V、TA-VおよびV-PK治療群と比較して内腔/中膜比が増加したことを示している。*p<0.0001 vs TA-PK vs.V-V、およびV-PK vs.V-V、¶p=0.002 vs TA-V vs V-V。
【0175】
V-PK群およびTA-PK群の両群に対する免疫組織化学的試験は、吸入化合物1を用いて治療したラットの肺のリン酸化PDGFRβ(Y1021)およびリン酸化PDGFRα(Y751)の減少を示した。
図11は、V-PKおよびTA-PK群では、V-VおよびTA-V治療群と比較してpPDGFRβ(Y1021)が減少したことを示している。
図12は、V-PKおよびTA-PK群では、V-VおよびTA-V治療群と比較してpPDGFRα(Y751)が減少したことを示している。また、V-PKおよびTA-PK群に対するウエスタンブロット分析は、吸入化合物1を用いて治療した群のpPDGFRβ(Y1021)の減少を示した。
図13は、V-PKおよびTA-PK治療群では、V-VおよびTA-V治療群と比較して、pPDGFRβ(Y1021)のレベルが減少したことを示すウエスタンブロット分析を示す。
図13はまた、V-PKおよびTA-PK治療群では、総PDGFRβのレベルおよびβアクチン対照と比較して、pPDGFRβ(Y1021)のレベルが減少したことを示す。
【0176】
また、タダラフィル、アンブリセンタンおよび吸入化合物1を用いて治療した群(TA-PK、n=9)では、ビヒクルのみの群(V-V)ならびにタダラフィルおよびアンブリセンタン治療群(TA-V、n=8)と比較して、ミオシン軽鎖ホスファターゼ(pMYPT)のリン酸化の減少が観察された。
図14は、タダラフィル、アンブリセンタンおよび吸入化合物1を用いて治療した群では、ビヒクルのみの群ならびにタダラフィルおよびアンブリセンタン群と比較してMYPTのリン酸化が減少したことを示すウエスタンブロットを示す。
図15は、TA-PK治療群が、V-V、TA-VおよびV-PK治療群と比較してpMYPT/MYP比の減少を示したことを示す。*p=0.027 TA-PK vs TA-V、p=0.016 TA-PK vs V-V、クラスカルウォリス分析。
【0177】
タダラフィル、アンブリセンタンおよび吸入化合物1を用いて治療した群(TA-PK、n=9)では、ビヒクルのみの群(V-V、n=9)と比較して、STAT3のリン酸化(pSTAT3)の減少が観察された。
図16は、治療群のウエスタンブロット分析を示し、TA-PKを用いて治療した群が、V-V、TA-VおよびV-PK治療群と比較して、pSTAT3の最大の減少を示したことを示している。
図17は、TA-VおよびV-PK群がpSTAT3の同様の減少を示し、TA-PK治療群がpSTAT3/STAT3比の最大の減少を示したことを示す。ダネット検定により*p=0.04。
【0178】
プレチスモグラフィー試験では、V-PKおよびTA-PK群の一回換気量が増加する傾向が示された。TA-PK群では、MVの有意な変化を伴わず、呼吸数の有意な減少が観察された。TA-PK群では、V-V群と比較して気道抵抗の有意な減少が観察された。
図18は、TA-PKを用いた治療が、V-V、TA-VおよびV-PK治療群と比較して、一回換気量のわずかな増加をもたらしたことを示す。
図19は、TA-PKを用いた治療が、V-V、TA-VおよびV-PK群と比較して、この群の呼吸頻度(呼吸数/分)を減少させたことを示す。*p=0.002 TA-PK vs V-V(複数の群を比較するためのボンフェローニ補正)。
図20は、TA-VおよびV-PKを用いた治療が、V-V群と比較して、分時換気量のわずかな減少をもたらしたことを示す。TA-PKを用いて治療した群は、V-V群と比較して、分時換気量に実質的な変化を示さなかった。
図21は、TA-PKを用いた治療が、V-V、TA-VおよびV-PK治療群と比較して、気道抵抗(Sraaw)の減少をもたらしたことを示す。¶p=0.047 TA-PK vs V-V(ダネット検定)。
【0179】
実施形態
以下の非限定的な実施形態は、本発明の例示としての例を提供するが、本発明の範囲を限定しない。
【0180】
実施形態1。症状を治療する方法であって、該方法が、治療有効量のチロシンキナーゼ阻害剤、治療有効量のホスホジエステラーゼ5型(PDEV)阻害剤および治療有効量のエンドセリン受容体拮抗薬をそれを必要とする対象に投与することを含む、上記方法。
【0181】
実施形態2。対象がヒトである、実施形態1に記載の方法。
【0182】
実施形態3。チロシンキナーゼ阻害剤が、以下の式のもの
【化14】
またはその薬学的に許容される塩である、実施形態1または2に記載の方法。
【0183】
実施形態4。PDEV阻害剤がシルデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0184】
実施形態5。PDEV阻害剤がタダラフィルまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0185】
実施形態6。PDEV阻害剤がバルデナフィルまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0186】
実施形態7。エンドセリン受容体拮抗薬が選択的ETA受容体拮抗薬である、実施形態1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0187】
実施形態8。選択的ETA受容体拮抗薬がアンブリセンタンまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0188】
実施形態9。エンドセリン受容体拮抗薬が二重拮抗薬である、実施形態1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0189】
実施形態10。二重拮抗薬がマシテンタンまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態1~6および9のいずれか一項に記載の方法。
【0190】
実施形態11。チロシンキナーゼ阻害剤の投与が吸入によるものである、実施形態1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0191】
実施形態12。チロシンキナーゼ阻害剤の投与が吸入器によるものである、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0192】
実施形態13。チロシンキナーゼ阻害剤の投与がネブライザーによるものである、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0193】
実施形態14。チロシンキナーゼ阻害剤の投与がアトマイザーによるものである、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0194】
実施形態15。PDEV阻害剤およびエンドセリン受容体拮抗薬の投与が経口投与である、実施形態1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0195】
実施形態16。チロシンキナーゼ阻害剤の治療有効量が、1日当たり約0.25mg/kg~約1mg/kgである、実施形態1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0196】
実施形態17。PDEV阻害剤の治療有効量が、1日当たり約20mg~約40mgである、実施形態1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0197】
実施形態18。エンドセリン受容体拮抗薬の治療有効量が、1日当たり約5mg~約10mgである、実施形態1~17のいずれか一項に記載の方法。
【0198】
実施形態19。症状が肺障害である、実施形態1~18のいずれか一項に記載の方法。
【0199】
実施形態20。症状が肺高血圧症である、実施形態1~19のいずれか一項に記載の方法。
【0200】
実施形態21。症状が肺動脈高血圧症である、実施形態1~20のいずれか一項に記載の方法。
【0201】
実施形態22。チロシンキナーゼ阻害剤が、吸入用の乾燥粉末として製剤化される、実施形態1~21のいずれか一項に記載の方法。
【0202】
実施形態23。PDEV阻害剤がタダラフィルまたはその薬学的に許容される塩であり、エンドセリン受容体拮抗薬がアンブリセンタンまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態1~3、5、7、8および11~22のいずれか一項に記載の方法。
【0203】
実施形態24。チロシンキナーゼ阻害剤の治療有効量が約0.25mg/kg/日~約0.5mg/日であり、PDEV阻害剤の治療有効量が約1mg/kgであり、エンドセリン受容体拮抗薬の治療有効量が約1mg/kgである、実施形態1~23のいずれか一項に記載の方法。
【0204】
実施形態25。タダラフィルまたはその薬学的に許容される塩およびアンブリセンタンまたはその薬学的に許容される塩が経口投与される、実施形態1~3、5、7、8および11~23のいずれか一項に記載の方法。
【0205】
実施形態26。チロシンキナーゼ阻害剤が吸入により投与される、実施形態1~25のいずれか一項に記載の方法。
【0206】
実施形態27。対象に治療有効量の可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質を投与することをさらに含む、実施形態1~26のいずれか一項に記載の方法。
【0207】
実施形態28。可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質がリオシグアトまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態1~27のいずれか一項に記載の方法。
【0208】
実施形態29。可溶性グアニル酸シクラーゼ阻害剤がベリシグアトまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態1~24のいずれか一項に記載の方法。
【配列表】