IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レスメド・リミテッドの特許一覧

特許7543351装置、方法、及びコンピュータ可読記憶媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】装置、方法、及びコンピュータ可読記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
A61M16/00 345
A61M16/00 315
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022128874
(22)【出願日】2022-08-12
(62)【分割の表示】P 2020174533の分割
【原出願日】2013-04-12
(65)【公開番号】P2022160696
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】61/623,643
(32)【優先日】2012-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】バシン,デイヴィッド・ジョン
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-526568(JP,A)
【文献】特開2007-301372(JP,A)
【文献】特表2007-512049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
M字型吸気流量制限の測定量を計算することと、
呼気気道陽圧(EPAP)の増加についての複数の別々の圧力成分を計算することと、ここで、前記計算された複数の別々の圧力成分のうちのある圧力成分は、前記M字型吸気流量制限の測定量に起因した呼気気道陽圧(EPAP)の最大増加の比率であり
通常の近時の換気量に対する呼吸別の換気量の比に応じて前記EPAPの最大増加の比率である前記ある圧力成分を調整することと、
前記調整されたEPAPの最大増加の比率である前記ある圧力成分でEPAP値を増加させることと
を行うように構成されている、呼吸障害を治療するための装置。
【請求項2】
前記M字型吸気流量制限の計算された測定量がゼロである場合、前記EPAP値を最小EPAP値に向けて減衰させることを更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
吸気継続時間が閾値よりも大きい場合、前記EPAP値を最小EPAP値に減衰させることを更に含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記EPAPの最大増加の比率は、前記比が増加するにつれて一般に減少する、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
M字型吸気流量制限は、1つは前縁にあり1つは後縁にある2つの局所的なピークと、該2つの局所的なピーク間の比較的平坦部分又はくぼみとを有する吸気流量波形によって特徴付けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の別々の圧力成分は、吸気流量の平坦性に起因する圧力成分と、吸気流量のリバースチェアネスに起因する圧力成分と、いびきに起因する圧力成分と、無呼吸及び/又は高い換気インピーダンスに起因する圧力成分とを更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
コントローラが、M字型吸気流量制限の測定量を計算することと、
前記コントローラが、呼気気道陽圧(EPAP)の増加についての複数の別々の圧力成分を計算することと、ここで、前記計算された複数の別々の圧力成分のうちのある圧力成分は、前記M字型吸気流量制限の測定量に起因した呼気気道陽圧(EPAP)の最大増加の比率であり
前記コントローラが、通常の近時の換気量に対する呼吸別の換気量の比に応じて前記EPAPの最大増加の比率である前記ある圧力成分を調整することと、
前記コントローラが、前記調整されたEPAPの最大増加の比率である前記ある圧力成分でEPAP値を増加させることと
を含む、呼吸障害を治療するための装置のコントローラの動作方法。
【請求項8】
前記コントローラは、前記M字型吸気流量制限の計算された測定量がゼロである場合には、前記EPAP値を最小EPAP値に向けて減衰させることを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記コントローラは、吸気継続時間が閾値よりも大きい場合には、前記EPAP値を最小EPAP値に減衰させることを更に含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
前記EPAPの最大増加の比率は、前記比が増加するにつれて一般に減少する、請求項7~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
M字型吸気流量制限は、1つは前縁にあり1つは後縁にある2つの局所的なピークと、該2つの局所的なピーク間の比較的平坦部分又はくぼみとを有する吸気流量波形によって特徴付けられる、請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の別々の圧力成分は、吸気流量の平坦性に起因する圧力成分と、吸気流量のリバースチェアネスに起因する圧力成分と、いびきに起因する圧力成分と、無呼吸及び/又は高い換気インピーダンスに起因する圧力成分とを更に含む、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項12のいずれか1項に記載の呼吸障害を治療するために構成された装置のコントローラにおける方法をプロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、呼吸障害の診断、治療、及び改善のうちの1つ又は複数に関し、また呼吸障
害を防止する手法に関する。特に、本技術は、呼吸障害を治療するための医療デバイス及
びそれらの使用、並びに呼吸障害を防止するための医療デバイスに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2012年4月13日に出願された米国仮出願第61/623643号の利
益を主張する。この米国仮出願の開示内容は、その全内容が、引用することによって本明
細書の一部をなすものとする。
【0003】
[連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発に関する記載]
非適用
【0004】
[共同研究開発の関係者の名称]
非適用
【0005】
[シーケンスリスト]
非適用
【背景技術】
【0006】
身体の呼吸器系は、ガス交換を容易にしている。鼻及び口は、患者の気道への入口を形
成する。
【0007】
気道は、一連の分岐する管を備え、これらの管は、肺の中に深く入り込むにつれて、よ
り細く、より短く、かつより多くなっていく。肺の最も重要な機能は、酸素が空気から静
脈血内に移動することを可能にするとともに二酸化炭素が排出することを可能にするガス
交換である。気管は、左右の主気管支に分岐し、これらの主気管支は、最終的に終末細気
管支に更に分岐する。気管支は、誘導気道を構成し、ガス交換には関与しない。気道が更
に分岐すると、呼吸細気管支に至り、最終的には 肺胞に至る。肺のこの胞状部位は、ガ
ス交換が行われる場所であり、呼吸域と呼ばれる。これについては、West, Respiratory
Physiology- the essentialsを参照されたい。
【0008】
様々な呼吸障害が存在する。
【0009】
睡眠呼吸障害(SDB)の一形態である閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠中の上
側気道の閉鎖又は閉塞によって特徴付けられる。この閉塞性睡眠時無呼吸は、睡眠中に、
異常に小さな上気道と、舌、軟口蓋、及び中咽頭後壁の部位における筋緊張の正常欠損と
が組み合わさった結果生じる。この条件によって、罹患患者は、一晩に、時に200回~
300回、通常30秒~120秒の継続時間の間、呼吸が停止する。この閉塞性睡眠時無
呼吸は、しばしば、過度の日中の傾眠を引き起こし、心血管疾患及び脳損傷を引き起こす
場合がある。この症候群は、特に中高年の太りすぎの男性にとって一般的な障害であるが
、罹患した人は、その問題に気付いていない場合がある。これについては、米国特許第4
,944,310号(Sullivan)を参照されたい。
【0010】
チェーンストークス呼吸(CSR)は、動脈血の反復的な脱酸素及び再酸素添加を引き
起こす律動的な吸(waxing)換気及び呼(waning)換気の交番する周期が存在する患者の
呼吸調節器の障害である。CSRは、反復的な低酸素のために有害である可能性がある。
患者の中には、CSRが睡眠からの反復的な覚醒に結び付き、これによって、深刻な不眠
、交感神経作用の増大、及び後負荷の増加が引き起こされる者がいる。これについては、
米国特許第6,532,959号(Berthon-Jones)を参照されたい。
【0011】
チェーンストークス呼吸等の中枢起源の周期性呼吸障害は、上気道閉塞とともに起こる
場合がある。
【0012】
CSRの診断は、通例、睡眠検査を行うことと、結果の睡眠ポリグラフ(「PSG」)
データを解析することとを伴う。完全な診断PSG検査では、様々な生物学的パラメータ
がモニタされる。この様々な生物学的パラメータは、通常は鼻漏信号、呼吸努力の測定量
(measure)、パルスオキシメトリ、睡眠位置を含み、脳波検査(「EEG」)、心電図
検査(「ECG」)、筋電図検査(「EMG」)、及び電気眼球図記録(「EOG」)を
含む場合がある。呼吸特性は、視覚的特徴からも識別され、したがって、臨床医は、睡眠
中の呼吸機能を評価し、CSRの存在を査定することが可能になる。臨床医による診察は
、最も包括的な方法ではあるが、高価なプロセスであり、臨床経験及び見識に大きく依存
する。
【0013】
1 システム
睡眠呼吸障害を治療するのに用いられる1つの既知の製品は、ResMedによって製
造されたS9睡眠療法システムである。
【0014】
2 療法
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を治療するために、経鼻持続気道陽圧(CPAP)療法
が用いられている。持続気道陽圧が空気圧式スプリントとして動作し、軟口蓋及び舌を前
方に押して中咽頭後壁から離すことによって上気道閉塞を防止することができるというこ
とが前提となっている。
【0015】
CSR、OHS、COPD、MD、及び胸壁障害を治療するために、非侵襲的換気(N
IV)が用いられている。NIVの幾つかの場合には、例えば、1回換気量又は毎分換気
量を測定して目標換気量を満たすように換気測定量を制御することによって目標換気量を
実施するように加圧治療を制御することができる。瞬時換気測定量と長期換気測定量との
比較等による換気測定量のサーボ制御は、CSRの影響を打ち消す治療としての機能を果
たすことができる。幾つかのそのような場合には、装置によって送達される加圧治療の形
態は、圧補助換気とすることができる。そのような加圧治療は、通常、吸気中の高レベル
の圧力(例えば、IPAP)の生成と、呼気中の低レベルの圧力(例えば、EPAP)の
生成とを提供する。
【0016】
3 患者インタフェース
陽圧の空気の供給を患者の気道の入口に適用することは、鼻マスク、フルフェイスマス
ク、又は鼻枕等の患者インタフェースの使用によって容易にされる。様々な患者インタフ
ェースデバイスが知られているが、それらの多くは、特に長期間装着するとき又は患者が
システムに不慣れであるときに、目立ちすぎること、審美的に望ましくないこと、フィッ
ト性が不十分であること、使用が難しいこと、及び不快であることのうちの1つ又は複数
の難点を有する。個人用保護具の一部として専ら飛行士用に設計されたマスク又は専ら麻
酔薬の投与用に設計されたマスクは、それらの本来の用途に許容可能とすることができる
が、それでも、長期間、例えば睡眠中の装着には、あいにく不快である場合がある。
【0017】
4 PAPデバイス
陽圧の空気は、通常、モータ駆動ブロワ等のPAPデバイスによって患者の気道に供給
される。このブロワの放出口は、可撓性の送達導管を介して、上記に説明したような患者
インタフェースに接続される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本技術は、改善された快適さ、コスト、効能、使い易さ、及び製造可能性のうちの1つ
又は複数を有する、呼吸障害の検出、診断、改善、治療、又は防止に用いられる医療デバ
イスを提供することを対象としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本技術の第1の態様は、呼吸障害の検出、診断、改善、治療、又は防止に用いられる装
置に関する。
【0020】
本技術の別の態様は、呼吸障害の検出、診断、改善、治療、又は防止に用いられる方法
に関する。
【0021】
本技術の態様は、換気量の評価のための装置又は呼吸加圧治療を生成するための装置に
おいて実施することができる、患者のSDB事象及び/又は換気量を査定又は評価するた
めの方法を提供する。
【0022】
本技術の態様は、周期性呼吸の呼吸加圧治療中に上気道閉塞の影響を打ち消すようにE
PAPのレベルを自動的に調整する方法及び装置を提供する。
【0023】
本技術の1つの形態の1つの態様は、目標換気量を達成するべく空気の供給圧力を制御
するように構成されたサーボ・ベンチレータ(servo-ventilator)を含み、これは、例え
ば、漏れの急変の結果として、測定された換気量の誤認を生む変化に応答して、目標換気
量の調整の割合を削減する。
【0024】
本技術の1つの形態の1つの態様は、サーボ・ベンチレータであって、近時の補償され
ていない漏れの測定量が増加するにつれて、目標換気量がよりゆっくりと上昇するように
、前記目標換気量を連続して計算し、前記目標換気量を達成するべく空気の供給の圧力を
制御する、ように構成されているサーボ・ベンチレータを備えている。
【0025】
本技術の1つの形態の1つの態様は、近時の補償されていない漏れの測定量が増加する
につれて、よりゆっくりと上昇する通常の近時の換気量の測定量を提供する、呼吸障害を
治療するための装置又は方法を含む。
【0026】
本技術の1つの形態の別の態様は、増加の割合の限度が上限によって定められている目
標換気量を提供する、呼吸障害を治療するための装置又は方法を含む。
【0027】
本技術の1つの形態の別の態様は、患者快適さを改善するべく近時の圧補助の安定性が
高まるにつれて、より素早く降下する目標換気量を提供する、呼吸障害を治療するための
装置又は方法を含む。
【0028】
これらの3つの直近に説明した態様は、組み合わせて用いられるときに特に有利とする
ことができる。
【0029】
本技術の1つの形態の別の態様は、検出された無呼吸又は呼吸低下の継続時間に従って
、呼気気道陽圧(EPAP)の値を、増加する継続時間とともにEPAPの調整値が最大
EPAP値よりも大きな値に指数関数的に近づくよう、調整して、EPAPが換気中に気
道を固定する機能を改善する、呼吸障害を治療するための装置又は方法を含む。
【0030】
本技術の1つの形態の別の態様は、患者に送達されている圧補助の大きさの程度及び患
者の空気流量の絶対値の測定量を目標絶対空気流量と比較したときの小ささの程度に応じ
て呼吸低下を検出することによって、呼吸低下検出における偽陰性の数を低減する、呼吸
障害を治療するための装置又は方法を含む。
【0031】
これらの2つの最も直近に説明した態様は、組み合わせて用いられるときに特に有利と
することができる。
【0032】
本技術の1つの形態の別の態様は、EPAP値に対する「行動性」呼吸の影響を低減す
るべく、EPAP値をM字型吸気流量制限の計算された測定量に従って増加させ、その増
加量が、通常の近時の換気量に対する、呼吸別の(breathwise)換気量の比に依存するよ
うにする、呼吸障害を治療するための装置又は方法を含む。
【0033】
本技術の1つの形態の別の態様は、吸気流量波形を吸気流量波形におけるノッチのロケ
ーションの回りに対称にしたものに基づいて、患者のM字型吸気流量制限の測定量を計算
する、呼吸障害を治療するための装置又は方法を含む。
【0034】
これらの2つの最も直近に説明した態様は、組み合わせて用いられるときに特に有利と
することができる。
【0035】
本技術の1つの形態の別の態様は、EPAPの増加の悪影響を低減するべく、EPAP
値を吸気流量制限のリバースチェアネスの計算された測定量に従って増加させ、その増加
量が現在の呼吸と直前の呼吸との間のリバースチェアネス(reverse-chairness)の整合
性(consistency)に依存するようにする、呼吸障害を治療するための装置又は方法を含
む。
【0036】
本技術の1つの形態の別の態様は、患者への気体の流れの送達における近時の補償され
ていない漏れの程度に応じた患者の吸気流量制限のリバースチェアネスの測定量を計算す
る、呼吸障害を治療するための装置又は方法を含む。
【0037】
これらの2つの直近に説明した態様は、組み合わせて用いられるときに特に有利とする
ことができる。
【0038】
本技術の1つの形態の別の態様は、呼気性いびきが存在しない場合における吸気性いび
きの計算された測定量に従ってEPAP値を増加させる、呼吸障害を治療するための装置
又は方法を含む。
【0039】
本技術の1つの形態の別の態様は、瞬時インタフェース圧力に対するいびきフィルタの
出力と、瞬時インタフェース圧力に依存する閾値との間の差の現在の呼吸の吸気部分にわ
たる平均として、吸気性いびきの測定量を計算する、呼吸障害を治療するための装置又は
方法を含む。
【0040】
本技術の1つの形態の別の態様は、現在の呼吸の呼気部分の間における瞬時インタフェ
ース圧力に対するいびきフィルタの出力の継続時間及び強度に関する結合閾値(joint th
resholds)を用いて、呼気性いびきの測定量を計算する、呼吸障害を治療するための装置
又は方法を含む。
【0041】
これらの3つの直近に説明した態様は、「擬似いびき」に起因したEPAPの増加を低
減するべく、組み合わせて用いられるときに特に有利とすることができる。
【0042】
本技術の1つの形態の別の態様は、下側呼吸数及び呼吸数の短期変動の許容範囲を改善
するべく、患者の現在の呼吸サイクルの位相を推定し、その位相推定値の標準変化率に与
えられる重みが、患者が目標換気量以上の換気量を近時に達成している程度に依存するよ
うにする、呼吸障害を治療するための装置又は方法を含む。
【0043】
この最も直近に説明した態様は、前に説明した態様のうちの任意のもの又はそれらを組
み合わせたものと組み合わせて用いることができる。
【0044】
本技術の1つの形態の別の態様は、周期性呼吸及び呼吸不全を有する患者を治療するべ
く、瞬時換気量を目標換気量に増加させるのに十分な圧補助の値と、総肺胞換気量を目標
総肺胞換気量に増加させるのに十分な圧補助の値とを組み合わせたものである値の圧補助
を患者に送達する、呼吸障害を治療するための装置又は方法を含む。
【0045】
この最も直近に説明した態様は、前に説明した態様のうちの任意のもの又はそれらを組
み合わせたものと組み合わせて用いることができる。
【0046】
本技術の他の態様は、上記に説明した態様による方法をプロセッサに実行させるように
構成されたコンピュータプログラムコードが記録されたコンピュータ可読記憶媒体を含む
【0047】
もちろん、上記態様の幾つかの部分は、本技術の部分態様を形成することができる。ま
た、これらの部分態様及び/又は態様のうちの様々なものは、様々な方法で組み合わせる
ことができ、本技術の追加の態様又は部分態様も構成することができる。
【0048】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約書、図面、及び特許請求の範囲に含まれ
る情報を検討することから明らかになるであろう。
【0049】
本技術は、限定ではなく例として、添付図面の図に示されている。これらの図において
、同様の参照符号は類似の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
1 治療システム
図1a】本技術によるシステムを示す図である。患者インタフェース3000を装着している患者1000は、PAPデバイス4000から陽圧の空気の供給を受ける。PAPデバイスからの空気は、加湿器5000において加湿され、空気回路4170に沿って患者1000に進む。2 呼吸器系
図2a】鼻腔及び口腔、喉頭、声帯、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓、及び横隔膜を含む人間の呼吸器系の概略を示す図である。
図2b】鼻腔、鼻骨、外側鼻軟骨、大鼻翼軟骨、鼻孔、上唇、下唇、喉頭、硬口蓋、軟口蓋、咽頭口腔部、舌、喉頭蓋、声帯、食道、及び気管を含む人間の上気道の図である。3 患者インタフェース
図3a】本技術の1つの形態による患者インタフェースを示す図である。4 PAPデバイス
図4a】本技術の1つの形態によるPAPデバイスを示す図である。
図4b図4aのPAPデバイスの空気圧回路の概略図である。上流及び下流の方向が示されている。
図4c図4aのPAPデバイスの電気構成要素の概略図である。
図4d図4aのPAPデバイスにおいて実施されるアルゴリズムの概略図である。この図において、実線を有する矢印は、例えば電子信号を介した情報の実際の流れを示す。5 加湿器
図5a】本技術の1つの態様による加湿器を示す図である。6 呼吸波形
図6a】睡眠中の人の一般的な呼吸波形のモデルを示す図である。横軸は時間であり、縦軸は呼吸流量である。パラメータ値は変動する場合があるが、一般的な呼吸は、次の近似値、すなわち、1回換気量Vt、0.5L、吸息時間Ti、1.6s、ピーク吸気流量Qpeak、0.4L/s、呼息時間Te、2.4s、ピーク呼気流量Qpeak、-0.5L/sを有することができる。呼吸の全継続時間Ttotは、約4sである。人は、通常、毎分約15呼吸(BPM)の呼吸数で呼吸し、換気量Ventは約7.5L/分である。Ttotに対するTiの比である通常のデューティサイクルは約40%である。
図6b】自動PAPを用いて治療され、マスク圧力が約11cmHOである、約90秒の期間にわたって約34呼吸で正常に呼吸するノンレム睡眠中の患者を示す図である。上部のチャネルは、オキシメトリ(SpO)を示し、縦方向の目盛りは、90%~99%の飽和度の範囲を有する。この患者は、図示した期間全体を通じて約95%の飽和度を維持していた。第2のチャネルは、定量的な呼吸気流量を示し、目盛りは縦方向で-1LPS~+1LPSの範囲であり、吸気は正である。第3のチャネル及び第4のチャネルには、胸部運動及び腹部運動が示されている。
図6c】治療前の患者の睡眠ポリグラフである。上から下まで6分間の横スパンを有する11個の信号チャネルがある。上部の2つのチャネルはともに、異なる頭皮ロケーションからのEEG(脳波図)である。2番目の周期的なスパイクは、皮質の覚醒及び関連した活動を表している。下にある第3のチャネルは、おとがい下のEMG(筋電図)である。覚醒時点の辺りの活動の増加は、おとがい舌筋漸増を表す。第4のチャネル及び第5のチャネルは、EOG(電気眼球図)である。第6のチャネルは、心電図である。第7のチャネルは、約90%から70%未満への反復的な脱飽和を有するパルスオキシメトリ(SpO)を示している。第8のチャネルは、差圧トランスデューサに接続された鼻カニューレを用いた呼吸気流量である。25秒~35秒の反復的な無呼吸が10秒~15秒の回復呼吸のバーストと交互に起こることは、EEG覚醒及び増加したEMG活動と一致する。第9のものは、胸部運動を示し、第10のものは、腹部運動を示している。腹部は、覚醒に至る無呼吸の長さにわたる運動の漸強を示す。両者は、回復過呼吸の間の身体全体の運動に起因して、覚醒の間は乱雑になる。したがって、無呼吸は閉塞性であり、その状態は深刻である。最も下のチャネルは姿勢であり、この例では、変化を示していない。
図6d】患者が一連の総合的な閉塞性無呼吸を体験している場合の患者流量データを示す図である。記録継続時間は、ほぼ160秒である。流量は、約+1L/s~約-1.5L/sの範囲である。各無呼吸はほぼ10s~15sの間続く。
図6e】患者が低周波数の吸気性いびきを体験している場合の呼吸の目盛り付き吸気部分を示す図である。
図6f】患者が通常の又は「メサ」平坦吸気流量制限の一例を体験している場合の呼吸の目盛り付き吸気部分を示す図である。
図6g】患者が「リバースチェア(reverse chair)型」吸気流量制限の一例を体験している場合の呼吸の目盛り付き吸気部分を示す図である。
図6h】患者が「M字型」吸気流量制限の一例を体験している場合の呼吸の目盛り付き吸気部分を示す図である。
図6i】チェーンストークス呼吸の一例を示す図である。酸素飽和度(SpO)、流量を示す信号、及び運動の3つのチャネルがある。データは6分間にわたる。流量を表す信号は、鼻カニューレに接続された圧力センサを用いて測定されたものである。患者は、約22秒の無呼吸と、約38秒の過呼吸とを呈する。無呼吸中のより高い周波数の低振幅振動は心臓性のものである。
図7a図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7b図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7c図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7d図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7e図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7f図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7g図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7h図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7i図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7j図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7k図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7l図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7m図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7n図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7o図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7p図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図7q図4aのPAPデバイスの1つの形態における図4dのアルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
図8】本技術の1つの形態による位相の関数としての一例の「円滑かつ快適」な治療圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本技術を更に詳細に説明する前に、本明細書において説明する特定の例は変化すること
ができ、本技術はこれらの例に限定されるものではないことが理解されるべきである。こ
の開示において用いられる術語は、本明細書において論述する特定の例のみを説明するた
めのものであり、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
【0052】
1 治療システム
1つの形態では、本技術は、呼吸障害を治療するための装置を含む。この装置は、空気
等の加圧呼吸ガスを、患者インタフェース3000に通じる空気送達チューブを介して患
者1000に供給するためのフロージェネレータ又はブロワを備えることができる。
【0053】
2 療法
1つの形態では、本技術は、患者1000の気道の入口に陽圧を印加するステップを含
む、呼吸障害を治療する方法を含む。
【0054】
2.1 OSA用の経鼻CPAP
1つの形態では、本技術は、経鼻持続気道陽圧を患者に印加することによって患者の閉
塞性睡眠時無呼吸を治療する方法を含む。
【0055】
本技術の幾つかの実施形態では、陽圧の空気の供給は、一方又は双方の鼻孔を介して患
者の鼻通路に提供される。
【0056】
3 患者インタフェース3000
本技術の1つの態様による非侵襲的患者インタフェース3000は、次の機能的態様、
すなわち、シール形成構造体3100、プレナムチャンバ3200、位置決め安定化構造
体3300、及び空気回路4170への接続用の接続ポート3600を備える。幾つかの
形態では、機能的態様は、1つ又は複数の物理構成要素によって提供することができる。
幾つかの形態では、1つの物理構成要素は、1つ又は複数の機能的態様を提供することが
できる。使用の際、シール形成構造体3100は、気道への陽圧の空気の供給を容易にす
るべく、患者の気道への入口を取り囲むように配置される。
【0057】
4 PAPデバイス4000
本技術の1つの態様によるPAPデバイス4000は、機械構成要素及び空気圧構成要
素4100、電気構成要素4200を備え、1つ又は複数のアルゴリズム4300を実行
するようにプログラムされる。このPAPデバイスは、外部ハウジング4010を有する
。外部ハウジング4010は、外部ハウジング4010の上側部分4012及び外部ハウ
ジング4010の下側部分4014の2つの部分で形成される。代替の形態では、外部ハ
ウジング4010は、1つ又は複数のパネル4015を備えることができる。PAPデバ
イス4000は、PAPデバイス4000の1つ又は複数の内部構成要素を支持するシャ
ーシ4016を備える。1つの形態では、空気圧ブロック(pneumatic block)4020
が、シャーシ4016によって支持されるか、又はその一部分として形成される。PAP
デバイス4000は、取っ手4018を備えることができる。
【0058】
PAPデバイス4000の空気経路は、吸入口エアフィルタ4112、吸入口マフラ4
122、陽圧の空気を供給することが可能な制御可能圧力デバイス4140(好ましくは
、ブロワ4142)、及び放出口マフラ4124を備える。1つ又は複数の圧力センサ4
272及び流量センサ4274が、空気経路に備えられる。
【0059】
空気圧ブロック4020は、空気経路のうちの、外部ハウジング4010内に位置する
部分を含む。
【0060】
PAPデバイス4000は、電源装置4210、1つ又は複数の入力デバイス4220
、中央コントローラ4230、療法デバイスコントローラ4240、療法デバイス424
5、1つ又は複数の保護回路4250、メモリ4260、トランスデューサ4270、デ
ータ通信インタフェース4280、及び1つ又は複数の出力デバイス4290を有する。
電気構成要素4200は、単一のプリント回路基板アセンブリ(PCBA)4202上に
実装することができる。代替の形態では、PAPデバイス4000は、2つ以上のPCB
A4202を備えることができる。
【0061】
PAPデバイス4000の中央コントローラ4230は、1つ又は複数のアルゴリズム
モジュール4300を実行するようにプログラムされる。これらのアルゴリズムモジュー
ルは、1つの実施態様では、前処理モジュール4310、療法エンジンモジュール432
0、圧力制御モジュール4330、及び故障状態モジュール4340を含む。
【0062】
以下では、PAPデバイス4000は、人工呼吸器(ventilator)と区別することなく
呼ばれる。
【0063】
4.1 PAPデバイスの機械構成要及び空気圧構成要素4100
4.1.1 エアフィルタ(複数の場合もある)4110
本技術の1つの形態によるPAPデバイスは、1つのエアフィルタ4110、又は複数
のエアフィルタ4110を備えることができる。
【0064】
1つの形態では、吸入口エアフィルタ4112は空気経路の開始部において、ブロワ4
142の上流に位置している。図4bを参照されたい。
【0065】
1つの形態では、放出口エアフィルタ4114、例えば抗菌性フィルタは、空気圧ブロ
ック4020の放出口と患者インタフェース3000との間に位置している。図4bを参
照されたい。
【0066】
4.1.2 マフラ(複数の場合もある)4120
本技術の1つの形態では、吸入口マフラ4122は、空気経路においてブロワ4142
の上流に位置している。図4bを参照されたい。
【0067】
本技術の1つの形態では、放出口マフラ4124は、空気経路においてブロワ4142
と患者インタフェース3000との間に位置している。図4bを参照されたい。
【0068】
4.1.3 圧力デバイス4140
本技術の1つの形態では、陽圧の空気の流量を生成するための圧力デバイス4140は
、制御可能ブロワ4142である。例えば、このブロワは、ボリュート内に収容された1
つ又は複数のインペラを有するブラシレスDCモータ4144を備えることができる。ブ
ロワは、約4cmHO~約20cmHOの範囲、又は他の形態では約30cmH
まで陽圧の空気の供給を、例えば約120リットル/分で送達することが可能である。
【0069】
圧力デバイス4140は、療法デバイスコントローラ4240の制御を受ける。
【0070】
4.1.4 トランスデューサ(複数の場合もある)4270
本技術の1つの形態では、1つ又は複数のトランスデューサ4270が、圧力デバイス
4140の上流に位置する。この1つ又は複数のトランスデューサ4270は、空気経路
のその地点における空気の性質を測定するように構成及び準備されている。
【0071】
本技術の1つの形態では、1つ又は複数のトランスデューサ4270は、圧力デバイス
4140の下流であって、空気回路4170の上流に位置する。この1つ又は複数のトラ
ンスデューサ4270は、空気経路のその地点における空気の性質を測定するように構成
及び準備されている。
【0072】
本技術の1つの形態では、1つ又は複数のトランスデューサ4270は、患者インタフ
ェース3000に近接して位置する。
【0073】
4.1.5 アンチスピルバック弁(anti-spill back valve)4160
本技術の1つの形態では、アンチスピルバック弁は、加湿器5000と空気圧ブロック
4020との間に位置している。このアンチスピルバック弁は、水分が加湿器5000か
ら例えばモータ4144へ上流に向けて流れる危険性を低減するように構成及び準備され
ている。
【0074】
4.1.6 空気回路4170
本技術の一態様による空気回路4170は、空気圧ブロック4020と患者インタフェ
ース3000との間での空気又は呼吸に適したガスの流れを可能にするように構成及び準
備されている。
【0075】
4.1.7 酸素送達4180
本技術の1つの形態では、補助酸素4180が、空気経路における或る地点に送達され
る。
【0076】
本技術の1つの形態では、補助酸素4180は、空気圧ブロック4020の上流に送達
される。
【0077】
本技術の1つの形態では、補助酸素4180は、空気回路4170に送達される。
【0078】
本技術の1つの形態では、補助酸素4180は、患者インタフェース3000に送達さ
れる。
【0079】
4.2 PAPデバイスの電気構成要素4200
4.2.1 電源装置4210
本技術の1つの形態では、電源装置4210は、PAPデバイス4000の外部ハウジ
ング4010の内部にある。本技術の別の形態では、電源装置4210は、PAPデバイ
ス4000の外部ハウジング4010の外部にある。
【0080】
本技術の1つの形態では、電源装置4210は、電力をPAPデバイス4000のみに
提供する。本技術の別の形態では、電源装置4210は、電力をPAPデバイス4000
及び加湿器5000の双方に提供する。
【0081】
4.2.2 入力デバイス4220
本技術の1つの形態では、PAPデバイス4000は、人がこのデバイスとインタラク
トすることを可能にするボタン、スイッチ、又はダイアルの形態の1つ又は複数の入力デ
バイス4220を備える。これらのボタン、スイッチ、又はダイアルは、物理デバイスと
することもできるし、タッチスクリーンを介してアクセス可能なソフトウェアデバイスと
することもできる。これらのボタン、スイッチ、又はダイアルは、1つの形態では、外部
ハウジング4010に物理的に接続することもできるし、別の形態では、中央コントロー
ラ4230に電気接続されている受信機と無線通信することもできる。
【0082】
1つの形態では、入力デバイス4220は、人が値及び/又はメニュー選択肢を選択す
ることを可能にするように構成及び準備することができる。
【0083】
4.2.3 中央コントローラ4230
本技術の1つの形態では、中央コントローラ4230は、x86INTELプロセッサ
等の、PAPデバイス4000を制御するのに好適なプロセッサである。
【0084】
本技術の別の形態による、PAPデバイス4000を制御するのに好適なプロセッサ4
230は、ARM Holdings社が提供しているARM Cortex-Mプロセッサに基づく
プロセッサを含む。例えば、ST MICROELECTRONICS社が提供しているSTM32シリーズ
のマイクロコントローラを用いることができる。
【0085】
本技術の更なる代替の形態による、PAPデバイス4000を制御するのに好適な別の
プロセッサ4230は、ARM9ベースの32ビットRISC CPUファミリから選択
されたメンバを含む。例えば、ST MICROELECTRONICS社が提供しているSTR9シリーズ
のマイクロコントローラを用いることができる。
【0086】
本技術の或る特定の代替の形態では、16ビットRISC CPUをPAPデバイス4
000用のプロセッサ4230として用いることができる。例えば、TEXAS INSTRUMENTS
社によって製造されたMSP430ファミリのマイクロコントローラからのプロセッサを
用いることができる。
【0087】
プロセッサ4230は、1つ又は複数のトランスデューサ4270及び1つ又は複数の
入力デバイス4220から入力信号(複数の場合もある)を受信するように構成されてい
る。
【0088】
プロセッサ4230は、出力デバイス4290、療法デバイスコントローラ4240、
データ通信インタフェース4280、及び加湿器コントローラ5250のうちの1つ又は
複数に出力信号(複数の場合もある)を提供するように構成されている。
【0089】
プロセッサ4230、又は複数のそのようなプロセッサは、メモリ4260等のコンピ
ュータ可読記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムとして表された1つ又は複数の
アルゴリズム4300等の本明細書において説明する1つ又は複数の方法論を実施するよ
うに構成することができる。幾つかの場合には、前に論述したように、そのようなプロセ
ッサ(複数の場合もある)は、PAPデバイス4000と統合することができる。しかし
ながら、幾つかのデバイスでは、プロセッサ(複数の場合もある)は、呼吸治療の送達を
直接制御することなく、本明細書において説明する方法論のうちの任意のものを実行する
等の目的で、PAPデバイスの流量生成構成要素とは別個に実装することができる。例え
ば、そのようなプロセッサは、本明細書において説明するセンサのうちの任意のもの等か
らの記憶されたデータの解析によって、人工呼吸器又は他の呼吸関連事象の制御設定を求
める目的で、本明細書において説明する方法論のうちの任意のものを実行することができ
る。
【0090】
4.2.4 クロック4232
好ましくは、PAPデバイス4000は、プロセッサ4230に接続されたクロック4
232を備える。
【0091】
4.2.5 療法デバイスコントローラ4240
本技術の1つの形態では、療法デバイスコントローラ4240は、プロセッサ4230
によって実行されるアルゴリズム4300の一部分を形成する圧力制御モジュール433
0である。
【0092】
本技術の1つの形態では、療法デバイスコントローラ4240は、専用化されたモータ
制御集積回路である。例えば、1つの形態では、ONSEMI社によって製造されたMC330
35ブラシレスDCモータコントローラが用いられる。
【0093】
4.2.6 保護回路4250
好ましくは、本技術によるPAPデバイス4000は、1つ又は複数の保護回路425
0を備える。
【0094】
本技術による保護回路4250の1つの形態は、電気保護回路である。
【0095】
本技術による保護回路4250の1つの形態は、温度安全回路又は圧力安全回路である
【0096】
4.2.7 メモリ4260
本技術の1つの形態によれば、PAPデバイス4000は、メモリ4260、好ましく
は不揮発性メモリを備える。幾つかの形態では、メモリ4260は、バッテリ駆動スタテ
ィックRAMを含むことができる。幾つかの形態では、メモリ4260は、揮発性RAM
を含むことができる。
【0097】
好ましくは、メモリ4260は、PCBA4202上に位置する。メモリ4260は、
EEPROM又はNANDフラッシュの形態とすることができる。
【0098】
付加的に又は代替的に、PAPデバイス4000は、メモリ4260の着脱可能な形態
のもの、例えば、セキュアデジタル(SD)標準規格に従って作製されたメモリカードを
備える。
【0099】
本技術の1つの形態では、メモリ4260は、1つ又は複数のアルゴリズム4300等
の、本明細書において説明する1つ又は複数の方法論を表すコンピュータプログラム命令
が記憶されたコンピュータ可読記憶媒体として機能する。
【0100】
4.2.8 トランスデューサ4270
トランスデューサは、デバイスの内部に存在させることができるし、PAPデバイスの
外部に存在させることもできる。外部のトランスデューサは、例えば、空気送達回路、例
えば患者インタフェースに位置させることもできるし、その一部分とすることもできる。
外部のトランスデューサは、データをPAPデバイスに送信又は転送するドップラレーダ
移動センサ等の非接触センサの形態とすることもできる。
【0101】
4.2.8.1 流量4274
本技術による流量トランスデューサ4274は、差圧トランスデューサ、例えば、SENS
IRION社が提供しているSDP600シリーズの差圧トランスデューサに基づくことがで
きる。この差圧トランスデューサは、空気圧回路と流体連通し、圧力トランスデューサの
それぞれのものは、流量制限要素における第1の地点及び第2の地点のそれぞれに接続さ
れる。
【0102】
使用中、流量トランスデューサ4274からの信号、すなわち総流量Qt信号が、プロ
セッサ4230によって受信される。ただし、そのような流量信号を生成するか又は流量
を推定するための他のセンサを実装することができる。例えば、幾つかの実施形態では、
熱線質量流量センサ等の質量流量センサを実装して、流量信号を生成することができる。
オプションとして、流量は、米国特許出願第12/192,247号に記載された方法論
のうちの任意のもの等に従って、ここで説明した他のセンサの1つ又は複数の信号から推
定することができる。この米国特許出願の開示内容は、引用することによって、本明細書
の一部をなすものとする。
【0103】
4.2.8.2 圧力4272
本技術による圧力トランスデューサ4272は、空気圧回路と流体連通して位置してい
る。好適な圧力トランスデューサの一例は、HONEYWELL社のASDXシリーズからのセン
サである。代替の好適な圧力トランスデューサは、GENERAL ELECTRIC社が提供しているN
PAシリーズからのセンサである。
【0104】
使用中、圧力トランスデューサ4272からの信号は、プロセッサ4230によって受
信される。1つの形態では、圧力トランスデューサ4272からの信号は、プロセッサ4
230によって受信される前にフィルタリングされる。
【0105】
4.2.8.3 モータ速度4276
本技術の1つの形態では、モータ速度信号4276が生成される。モータ速度信号42
76は、好ましくは、療法デバイスコントローラ4240によって提供される。モータ速
度は、例えば、ホール効果センサ等の速度センサが生成することができる。
【0106】
4.2.9 データ通信システム4280
本技術の1つの好ましい形態では、データ通信インタフェース4280が設けられ、プ
ロセッサ4230に接続される。データ通信インタフェース4280は、好ましくは、リ
モート外部通信ネットワーク4282に接続可能である。データ通信インタフェース42
80は、好ましくは、ローカル外部通信ネットワーク4284に接続可能である。好まし
くは、リモート外部通信ネットワーク4282は、リモート外部デバイス4286に接続
可能である。好ましくは、ローカル外部通信ネットワーク4284は、ローカル外部デバ
イス4288に接続可能である。
【0107】
1つの形態では、データ通信インタフェース4280は、プロセッサ4230の一部分
である。別の形態では、データ通信インタフェース4280は、プロセッサ4230とは
別個の集積回路である。
【0108】
1つの形態では、リモート外部通信ネットワーク4282はインターネットである。デ
ータ通信インタフェース4280は、(例えば、イーサネット(登録商標)又は光ファイ
バを介した)有線通信、又は無線プロトコルを用いてインターネットに接続することがで
きる。
【0109】
1つの形態では、ローカル外部通信ネットワーク4284は、Bluetooth(登
録商標)又は民生赤外線プロトコル等の1つ又は複数の通信標準規格を利用する。
【0110】
1つの形態では、リモート外部デバイス4286は、1つ又は複数のコンピュータ、例
えばネットワークコンピュータのクラスタである。1つの形態では、リモート外部デバイ
ス4286は、物理コンピュータではなく、仮想コンピュータとすることができる。いず
れの場合も、そのようなリモート外部デバイス4286は、臨床医等の適切に認可された
人にアクセス可能とすることができる。
【0111】
好ましくは、ローカル外部デバイス4288は、パーソナルコンピュータ、移動電話、
タブレット、又はリモコンである。
【0112】
4.2.10 オプションのディスプレイ、アラームを備える出力デバイス4290 本
技術による出力デバイス4290は、視覚ユニット、オーディオユニット、及び触覚ユニ
ットのうちの1つ又は複数の形態を取ることができる。視覚ディスプレイは、液晶ディス
プレイ(LCD)又は発光ダイオード(LED)ディスプレイとすることができる。
【0113】
4.2.10.1 ディスプレイドライバ4292
ディスプレイドライバ4292は、ディスプレイ4294上での表示を目的とした文字
、シンボル、又は画像を入力として受け取り、ディスプレイ4294にそれらの文字、シ
ンボル、又は画像を表示させるコマンドにそれらを変換する。
【0114】
4.2.10.2 ディスプレイ4294
ディスプレイ4294は、ディスプレイドライバ4292から受信されたコマンドに応
答して文字、シンボル、又は画像を視覚的に表示するように構成されている。例えば、デ
ィスプレイ4294は、8セグメントディスプレイとすることができる。この場合、ディ
スプレイドライバ4292は、数字「0」等の各文字又は各シンボルを、8つのそれぞれ
のセグメントが特定の文字又はシンボルを表示するようにアクティブ化されるか否かを示
す8つの論理信号に変換する。
【0115】
4.3 PAPデバイスアルゴリズム4300
4.3.1 前処理モジュール4310
本技術による前処理モジュール4310は、トランスデューサ、例えば流量トランスデ
ューサ又は圧力トランスデューサから未処理データを入力として受信し、好ましくは、別
のモジュール、例えば療法エンジンモジュール4320への入力として用いられる1つ又
は複数の出力値を計算する1つ又は複数のプロセスステップを実行する。
【0116】
本技術の1つの形態では、これらの出力値は、インタフェース圧力又はマスク圧力Pm
、呼吸流量Qr、及び漏れ流量Qlを含む。
【0117】
本技術の様々な形態では、前処理モジュール4310は、次のアルゴリズム、すなわち
、圧力補償4312、通気孔流量(vent flow)4314、漏れ流量4316、呼吸流量
4318、及びジャミング検出4319のうちの1つ又は複数を含む。
【0118】
4.3.1.1 圧力補償4312
本技術の1つの形態では、圧力補償アルゴリズム4312は、空気圧ブロックの放出口
に近接した空気経路における圧力を示す信号を入力として受信する。圧力補償アルゴリズ
ム4312は、空気回路4170における圧力降下を推定し、患者インタフェース300
0における推定された圧力Pmを出力として提供する。
【0119】
4.3.1.2 通気孔流量4314
本技術の1つの形態では、通気孔流量計算アルゴリズム4314は、患者インタフェー
ス3000における推定された圧力Pmを入力として受け取り、患者インタフェース30
00における通気孔3400からの空気の通気孔流量Qvを推定する。
【0120】
4.3.1.3 漏れ流量4316
本技術の1つの形態では、漏れ流量アルゴリズム4316は、総流量Qt及び通気孔流
量Qvを入力として受け取り、幾つかの呼吸サイクル、例えば約10秒を含むように十分
長い期間にわたってQt-Qvの平均を計算することによって、漏れ流量Qlを出力とし
て提供する。
【0121】
1つの形態では、漏れ流量アルゴリズム4316は、総流量Qt、通気孔流量Qv、及
び患者インタフェース3000における推定された圧力Pmを入力として受け取り、漏れ
コンダクタンスを計算するとともに漏れ流量Qlを漏れコンダクタンス及びインタフェー
ス圧力Pmの関数となるように求めることによって、漏れ流量Qlを出力として提供する
。1つの実施態様では、漏れコンダクタンスは、ローパスフィルタリングされた非通気孔
流量Qt-Qv及びマスク圧力Pmのローパスフィルタリングされた平方根の商として計
算される。ここで、ローパスフィルタ時定数は、幾つかの呼吸サイクル、例えば約10秒
を含むように十分に長い値を有する。
【0122】
4.3.1.4 呼吸流量4318
本技術の1つの形態では、呼吸流量アルゴリズム4318は、総流量Qt、通気孔流量
Qv、及び漏れ流量Qlを入力として受け取り、通気孔流量Qv及び漏れ流量Qlを総流
量Qtから差し引くことによって患者への呼吸流量Qrを推定する。
【0123】
4.3.1.5 ジャミング検出4319
漏れが近時に変化し、漏れ流量アルゴリズム4316がその変化を十分に補償していな
いとき、「ジャミング」と呼ばれる状態が存在する。このジャミングは、米国特許第6,
532,957号、米国特許第6,810,876号、又は米国特許出願公開第2010
/0101574号に記載された方法に従って判断することができる。これらの米国特許
等の開示内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。ジャミング状
態では、呼吸流量ベースラインは、通例、或る程度不正確である。これは、流量の形状を
歪め、流量制限の検出に影響を及ぼす。例えば、呼吸流量ベースラインが真のレベルを超
えている場合、呼気後期における呼吸流量が正となり、したがって、吸気前期の流量とし
て取り入れられ、これが呼気後休止流量(expiratory pause flow)である場合、吸気の
真の開始は、リバースチェア型波形の平坦部分後の増加としてみなされる場合がある。し
たがって、ジャミング、すなわち補償されていない漏れが近時に存在していた程度を表す
ファジィ真理変数RecentJammingが、ジャミングアルゴリズム4319によ
って計算される。
【0124】
アルゴリズム4319では、瞬時ジャミングファジィ真理変数Jが、呼吸流量Qrの絶
対量が予想されるものよりも長い間大きかったファジィ程度(fuzzy extent)として計算
される。空気流量が予想されるものよりも長い間正であったファジィ程度Aが、以下の
ファジィメンバシップ関数を用いて、呼吸流量Qrの正に向かう最後のゼロ交差以降の時
間tZIと吸気継続時間Tiとから計算される。
【数1】
【0125】
空気流量が大きくかつ正であるファジィ程度Bは、以下のファジィメンバシップ関数
を用いて、呼吸流量Qrから計算される。
【数2】
【0126】
漏れが突然増加したファジィ程度Iは、ファジィ真理変数A及びBのファジィ「
and」として計算される。
【0127】
正確な対称計算が、呼気について実行され、漏れが突然減少したファジィ程度としての
が導出される。空気流量が予想されるものよりも長い間負であるファジィ程度A
、式(1)のファジィメンバシップ関数を用いて、呼吸流量Qrの負に向かう最後のゼロ
交差以降の時間tZEと呼気継続時間Teとから計算される。空気流量が大きくかつ負で
あるファジィ程度Bは、式(2)のファジィメンバシップ関数を用いて、呼吸流量Qr
の負値から計算され、Iは、ファジィ真理変数A及びBのファジィ「and」とし
て計算される。瞬時ジャミングインデックスJが、ファジィ真理変数I及びIのファ
ジィ「or」として計算される。
【0128】
瞬時ジャミング値JがJの近時のピーク値よりも大きい場合、RecentJammi
ngは、瞬時ジャミング値Jに設定される。そうでない場合、RecentJammin
gは、10秒の時定数を用いてローパスフィルタリングされた瞬時ジャミング値Jに設定
される。
【0129】
4.3.2 療法エンジンモジュール4320
本技術の1つの形態では、療法エンジンモジュール4320は、患者インタフェース3
000における圧力Pm、患者への空気の呼吸流量Qr、漏れ流量Ql、ジャミングファ
ジィ真理変数RecentJammingのうちの1つ又は複数を入力として受け取り、
1つ又は複数の療法パラメータを出力として提供する。
【0130】
本技術の1つの形態では、療法パラメータは、CPAP治療圧Ptである。
【0131】
本技術の別の形態では、療法パラメータは、EPAP、波形値、及び圧補助のレベルで
ある。
【0132】
本技術の別の形態では、療法パラメータは、EPAP、波形値、目標換気量、及び瞬時
換気量である。
【0133】
本技術の様々な形態では、療法エンジンモジュール4320は、次のアルゴリズム、す
なわち、位相決定4321、波形決定4322、換気量決定4323、流量制限決定43
24、無呼吸/呼吸低下判断4325、いびき判断4326、EPAP決定4327、目
標換気量決定4328、及び療法パラメータ決定4329のうちの1つ又は複数を含む。
【0134】
療法エンジンモジュール4320の動作を示す図7a~図7qでは、実線の接続線は制
御の流れを示す一方、破線の接続線はデータの流れを示す。
【0135】
4.3.2.1 位相決定4321
本技術の1つの形態では、位相決定アルゴリズム4321は、呼吸流量Qrを示す信号
を入力として受け取り、患者1000の呼吸サイクルの位相の推定値Φを提供する。位相
の変化率は呼吸数を示す。
【0136】
1つの形態では、位相推定値Φは、吸息又は呼息のいずれかの値を有する離散変数であ
る。1つの形態では、位相推定値Φは、呼吸流量Qrが、正の閾値を超える正値を有する
ときに、吸息の離散値を有するものとして求められる。1つの形態では、位相推定値Φは
、呼吸流量Qrが負の閾値よりも負である負値を有するとき、呼息の離散値を有するもの
として求められる。
【0137】
1つの形態では、位相推定値Φは、吸息、吸気中休止(mid-inspiratory pause)、及
び呼息のうちの1つの値を有する離散変数である。
【0138】
1つの形態では、位相推定値Φは、例えば0~1、すなわち0~2π又は0度~360
度に変化する連続変数である。0.5(すなわち、π又は180度)に等しい位相推定値
Φは、吸気から呼気への遷移時に生じる。
【0139】
本技術の1つの形態では、位相決定アルゴリズム4321は、米国特許第6,532,
957に記載されているようなファジィ位相推定を用いる。この米国特許の開示内容は、
幾つかの調整を伴うが、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。一般に
、これらの調整の背後にある基本的な考え方は、少ない呼吸数及び呼吸数の短期変動の許
容範囲をより広くすることである。一般的な位相ルール(phase rules:相律)には、以
前よりも低いレベルの換気量における重みがより多く与えられ、患者同期が改善される。
これは、1つ又は2つの呼吸にわたる非常に短期間に目標換気量及び目標呼吸数の維持に
関して人工呼吸器の規定(prescriptiveness)の軽度の削減を補償する以上のものをもた
らす。
【0140】
従来の人工呼吸器における一種のバックアップレートに対応する「標準呼吸数」には、
ジャミングの度合い、呼吸低下の度合い、及び漏れが大きい程度に依存するファジィ論理
変数である、「トラブル」の度合いに依存する或る特定の重みが与えられる。「トラブル
」が存在しない場合であっても、この標準呼吸数には、大きな重みが与えられる。これは
、人工呼吸器の呼吸数を標準的な呼吸数に引き寄せる傾向があり、患者の呼吸数が、1つ
の実施態様では15呼吸/分に設定される標準的な呼吸数よりも低いときに同期不全を引
き起こす傾向がある。特に睡眠開始位相中に、より低い呼吸数で呼吸したい覚醒している
患者は、これによって押し進められると感じる可能性がある。共通の反応は、人工呼吸器
と格闘することであり、その結果、低換気量(人工呼吸器の観点から)になり、これによ
って、標準呼吸数に与えられる重みが更に増加し、圧補助がより高くなる。
【0141】
この影響を打ち消し、それによって、患者の快適さを高めるために、本技術の1つの形
態では、アルゴリズム4321によって、「トラブル」とは無関係の標準呼吸数に与えら
れる重みは、最小圧補助(最小スイング)及び最小圧補助を超える圧補助(「サーボスイ
ング」)の量に依存する。この量は、アルゴリズム4329によって求められる。概括的
に言えば、患者が目標換気量における換気量又はそれを超える換気量を近時に達成してお
り、そのため、患者が選ぶどの呼吸数でも呼吸することが許可されるべきであるというこ
とを低いサーボスイングレベルが示すということである。サーボスイングレベルは、次第
に高くなるにつれて、このことが当てはまらなくなることを次第に示す。実際のファジィ
メンバシップ計算は、最小スイングに依存する境界(SLow及びSHigh)を用いて
、現在のスイング(最小スイング及びサーボスイングの和)を用いて実行される。ファジ
ィ真理変数SwingIsLargeForStdRateは、「トラブル」とは無関係
の標準呼吸数に与えられる重み(実際には、吸気及び呼気の位相の標準変化率は一般には
異なるのこれらに与えられる重み)を求める目的での、スイングが大きいファジィ程度で
ある。
【0142】
図7aは、本技術の1つの形態における、アルゴリズム4321を実施するのに用いる
ことができる方法7100を示すフローチャートである。方法7100は、最小スイング
値MinSwingの一般に増加する関数として下側境界SLowを計算することによっ
てステップ7110から開始する。1つの実施態様では、SLowは、以下のように計算
される。
【数3】
【0143】
ステップ7120において、上側境界SHighは、SHighが常に下側境界SLo
w以上であるように、最小スイングの一般に増加する関数として計算される。1つの実施
態様では、SHighは、以下のように計算される。
【数4】
【0144】
ステップ7130において、方法7100は、最小スイング及び現在のサーボスイング
(最小を超える圧補助)の和としてスイングを計算する。方法7100は、次に、ステッ
プ7140において、ファジィ真理変数SwingIsLargeForStdRate
を次のように計算する。すなわち、最小スイングの或るかなり高いレベル以上においては
、SwingIsLargeForStdRateは、ファジィ真(fussy true)に設定
される。最小スイングのこの或るかなり高いレベルは、1つの実施態様では、8cmH
O(中枢起源の周期性呼吸を治療するように設計された人工呼吸器では実際には起こるべ
きではない)である。そうでない場合、スイングが下側境界SLowと上側境界SHig
hとの間で増加するにつれて、SwingIsLargeForStdRateは、ファ
ジィ偽からファジィ真に遷移する。
【数5】
【0145】
最後に、ステップ7150において、方法7100は、「トラブル」とは無関係の標準
呼吸数に対する重みが、ファジィ真理変数SwingIsLargeForStdRat
eの計算値に設定されることを除いて、米国特許第6,532,957号に記載された方
法で位相を推定する。
【0146】
式(3)、(4)、及び(5)によって規定されるファジィ真理関数の効果は、Min
Swingが増加するにつれて、SLow及びSHighの双方が次第に上昇するという
こと、並びにMinSwingが増加するにつれて、特に、MinSwingが6を超え
ると、SLowとSHighとの間の遷移領域が次第に狭くなり、MinSwing=8
において0にまで狭くなり、この地点で、SLow及びSHighもともに8に等しくな
り、そのため、最小スイング以上のスイングの任意の値は、SwingIsLargeF
orStdRateをファジィ真にする、ということである。
【0147】
アルゴリズム4321の代替の実施態様は、ステップ7110~7140を省略し、そ
の代わりに、患者が近時に目標換気量以上の換気量を達成していた程度の表示として低い
サーボスイングを用いるのではなく、この程度を示すファジィ真理変数を直接計算する。
ステップ7150は、「トラブル」が存在しない場合には、計算されたファジィ真理変数
の値に等しい重みを標準呼吸数に与える上記に説明したような位相を推定する。
【0148】
4.3.2.2 波形決定4322
本技術の1つの形態では、制御モジュール4330は、圧力対位相の所定の波形に従っ
て気道陽圧を提供するように療法デバイス4245を制御する。
【0149】
本技術の1つの形態では、波形決定アルゴリズム4322は、患者の現在の呼吸サイク
ルの位相を示す値Φを入力として受け取り、範囲[0,1]にある波形値Π(Φ)を出力
として提供する。
【0150】
1つの形態では、波形は、吸気に対応する位相の前期の値については1の値を有し、呼
気に対応する位相の後期の値については0の値を有する矩形波である。他の形態では、波
形は、位相の前期の値については1に徐々に上昇し、位相の後期の値については0に徐々
に降下する、より「円滑かつ快適」な波形である。図8は、一例示の「円滑かつ快適」な
波形Π(Φ)を示している。この波形は、位相が吸気中に0から0.5に増加するにつれ
て1に上昇し、位相が呼気中に0.5から1に増加するにつれて0に降下する。
【0151】
4.3.2.3 換気量決定4323
本技術の1つの形態では、換気量決定アルゴリズム4323は、呼吸流量Qrを入力と
して受け取り、瞬時患者換気量Ventの値を求める。
【0152】
1つの形態では、換気量決定アルゴリズム4323は、瞬時患者換気量Ventの現在
の値を、呼吸流量Qrの絶対値の2分の1として求める。
【0153】
4.3.2.4 吸気流量制限の検出4324
本技術の1つの形態では、プロセッサは、吸気流量制限の検出のための1つ又は複数の
アルゴリズム4324を実行する。
【0154】
1つの形態では、アルゴリズム4324は、呼吸流量信号Qrを入力として受け取り、
呼吸の吸気部分が吸気流量制限を呈する程度の1つ又は複数の測定量を計算する。
【0155】
アルゴリズム4324は、次の3つのタイプの吸気流量制限、すなわち、通常の平坦、
M字型、及び「リバースチェアネス」(図6f、図6h、及び図6g参照)のうちの少な
くとも1つの測定量を計算する。
【0156】
4.3.2.4.1 平坦
上気道流量制限は、往々にして、空気流量が吸気の比較的短い期間後にかなり安定した
レベルで安定する呼吸流量パターンを吸気中に生み出す。この安定したレベルは、空気流
量がこの文献に十分に説明されているスターリング弁(Starling valve)現象によって制
限され、通常は吸気の後期に下降するレベルである。このかなり安定した空気流量の期間
は、グラフ表示では「平坦」に見える(図6f参照)。吸気波形の平坦を示すものは、平
坦指数(FI:flattening index)と呼ぶことができる。矩形波形の平坦指数はゼロであ
る。波形の半分である中間部分の期間中に全体平均に等しい値で一定である波形も、ゼロ
のFIを有する。これは、実際には、波形の第1四半期における平均を超える初期上昇が
波形の最後の四半期における平均を下回る値とバランスするときに生じる可能性がある。
FIの「高い」値(例えば、0.2よりも大きい)は、流量制限が軽度であるか又はない
ことを示す。
【0157】
図7bは、本技術の1つの形態におけるアルゴリズム4324の一部分としての吸気流
量制限の平坦性の測定量を計算するのに用いることができる方法7200を示すフローチ
ャートである。方法7200は、吸気空気流量波形から平坦指数を計算するステップ72
10から開始する。ステップ7210の1つの実施態様では、吸気空気流量波形の平均値
が計算され、流量値がこの平均によって除算されて、正規化された波形が生成され、正規
化された波形の半分である中間部分のRMS偏差が平坦指数である。
【0158】
ステップ7210の幾つかの実施態様では、最も近時の5つの呼吸の地点別の平均の計
算が、上記FI計算の前に実行される。他の実施態様では、FIは、個々の呼吸に対して
計算され、最後の3つのFI値の中央値を取る等の或る種のフィルタリング演算が近時の
FI値に対して実行される。更に他の実施態様では、そのようなフィルタリングは行われ
ず、そのため、FIは、単一の呼吸のみから導出され、治療応答は、その単一の呼吸のF
Iに直接基づいている。そのような単一の呼吸の実施態様の基本原理は、CSR等の主と
して中枢起源の周期性呼吸の間は、呼吸努力の低下及び上気道閉塞の発症が非常に急速で
ある場合があるので、閉鎖型(すなわち、閉塞性)中枢性無呼吸の発症前に1つ又は2つ
の流量制限された呼吸しかないか、又は流量制限された呼吸は、通常はUAOを示さない
様々な形状と入り交じる場合があり、この流量制限の証拠に迅速に応答することが望まし
い。
【0159】
ステップ7220は、各呼吸の終わりに、その呼吸の平坦性指数(flatness index)が
増加するにつれて一般に減少するファジィ真理変数Flatnessを計算する。1つの
実施態様では、Flatnessは、以下のように計算される。
【数6】
【0160】
式(6)によれば、Flatnessは、0.05以下のFIの任意の値についてファ
ジィ真である。なぜならば、FI≦0.05を有する波形は、ヒューマンアセスメントに
は等価的に流量制限されているように見え、それらの間の相違は、大部分が、流量制限の
度合いとは無関係な雑音又は特徴に起因しているからである。
【0161】
4.3.2.4.2 M字型
通常の近時の値よりもあまり大きくない1回換気量又は呼吸別の換気量値を有するM字
型吸気流量波形は、流量制限を示す。そのような波形は、ほぼ中央において流量の比較的
急速な上昇及び降下並びにくぼみ又は「ノッチ」を有し、このくぼみは、流量制限に起因
している(図6h参照)。より高い1回換気量又は換気量値において、そのような波形は
一般に行動性、すなわち、睡眠中のマイクロ覚醒(microarousals)、又は吐息であり、
流量制限を示すものではない。CPAPデバイスでは、1回換気量又は換気量は、M字型
に従って一般に減少するが、高速に応答するサーボ人工呼吸器は、圧補助を増加させるこ
とによって換気量のそのような降下の影響を打ち消す傾向があり、そのため、低い換気量
レベルは、波形が実際に流量制限されているか否かを判定する際に一般に役立つ特徴では
ない。
【0162】
M字型波形を検出するために、M字に概ね類似する波形に対する吸気流量波形の類似性
が決定される。
【0163】
図7cは、本技術の1つの形態におけるアルゴリズム4324の一部分としてのM字型
吸気流量制限の測定量を計算するのに用いることができる方法7300を示すフローチャ
ートである。
【0164】
ノッチは、吸気流量波形の中心にない場合があるので、方法7300は、ノッチのロケ
ーションを見つけるように試み、次に、そのノッチが波形の中心になるように波形に直線
的な時間歪を施す(linearly timedistort)。ノッチを見つけるために、第1のステップ
7310は、以下のゼロを中心とした長さTi/2のV字型カーネルV(t)を用いて、
正規化された吸気流量波形f(t)(平均による正規化除算(normalisation division)
)の修正された畳み込みを実行する。ここで、Tiは吸気の継続時間である。
【数7】
【0165】
修正された畳み込みは、カーネルV(t)の左半分及び右半分を用いた別々の畳み込み
に基づいている。左半分の畳み込みは、以下のように計算される。
【数8】
【0166】
右半分の畳み込みは、以下のように計算される。
【数9】
【0167】
修正された畳み込みI(τ)は、左半分の畳み込みI(τ)及び右半分の畳み込みI
(τ)のいずれかが0である場合には、他の量にかかわらず、結果が0であり、双方が
1である場合には、結果が1であるような左半分の畳み込み及び右半分の畳み込みの結合
として計算される。上記のように制約されると、左半分の畳み込み及び右半分の畳み込み
の結合は、或る意味で論理「and」関数と類似し、したがって、「V-and型畳み込
み」という名称が与えられる。1つの実施態様では、この結合は、左半分の畳み込み及び
右半分の畳み込みの修正された幾何平均である。
【数10】
【0168】
上記制約は、配置されたノッチの左側の吸気流量波形が左方に一般に増加し、ノッチの
右側の吸気流量波形が右方に一般に増加するという状態を提供する。これは、左右の積分
を単に合計するよりも多くの特異度を提供する。式(10)に与えられた実施態様では、
時間シフトした正規化された吸気流量波形と各半分のVとの積の積分は厳密に正でなけれ
ばならず、そうでない場合、V-and型畳み込みは0である。これによって、例えば、
吸気流量の、Vの中心の左側の部分が実際には左方に増加しないが、V波形の右半分の積
分が非常に大きいので、実際には減少している左半分を圧倒するときに、様々な病態(pa
thologies)が防止される。
【0169】
V-and型畳み込みは、Ti/4~3Ti/4の範囲のカーネルV(t)の中心の位
置を用いて実行され、したがって、吸気流量波形の半分である中心部分の結果が得られる
【0170】
ステップ7320は、修正された畳み込みI(τ)がピークに達するロケーションを見
つけ、このピークの高さが閾値よりも大きい場合、ノッチは、このピークが位置するカー
ネルV(t)の中心のロケーションtnotchに存在するとみなされる。1つの実施態
様では、上記閾値は、0.15に設定される。
【0171】
ノッチが、ステップ7320によってロケーションtnotchに見つかった場合(「
Y」)、吸気流量波形f(t)は、次にステップ7330において、波形の半分がtno
tchの左側になるとともに半分が右側になるように時間歪を施されるか又は「対称にさ
れる」。この操作によって、流量波形f(t)に時間歪を施したもの又は流量波形f(t
)を「対称にした」ものG(t)が与えられる。
【数11】
【0172】
ノッチがステップ7320において見つからない場合(「N」)、ステップ7335は
、G(t)を吸気流量波形f(t)に設定する。なぜならば、検出可能なノッチを呈示し
ない幾つかの波形は、依然としてM字型流量制限を有する場合があるからである。
【0173】
或る区間I上の2つの関数の内積を通常の方法で定義する。
【数12】
【0174】
半値幅Tiの第1正弦波調和関数(sinusoidal harmonic function)及び第3正弦波調
和関数を以下のように定義する。
【数13】
及び
【数14】
【0175】
これらの2つの調和関数は、[0,Ti]上で直交する。[0,Ti]におけるtにつ
いて、F(t)はM字型吸気波形と概ね類似し、F(t)は標準的な吸気波形と概ね
類似する。したがって、対称にされた波形G(t)がF(t)と類似している程度は、
波形がどれだけMと類似しているかのインジケータである。ステップ7340は、この程
度を計算する。1つの実施態様では、ステップ7340は、この程度を、対称にされた波
形G(t)の第3の高調波(harmonic)の電力の、第1高調波及び第3高調波の電力の和
に対する比M3Ratioとして計算する。ここで、内積演算子が下付き文字を有しない
場合、区間は吸気区間[0,Ti]であることが理解される。
【数15】
【0176】
M3Ratioが大きいとき、吸気流量波形は、通常、Mと類似している。しかし、波
形が非常に非対称であり、波形の第1の半分又は第2の半分の一方の平均流量が他方の半
分よりもはるかに高い場合にも、M3Ratioは大きい可能性がある。この可能性を除
外するために、ステップ7340は、ノッチロケーションの回りの吸気流量波形f(t)
の対称性の測定量Symmも計算する。1つの実施態様では、ステップ7340は、対称
にされた波形G(t)の第1の半分及び第2の半分の第3調和成分を計算する。
【数16】
【0177】
ステップ7340は、次に、これらの成分のうちの小さい方の、それらの絶対値の和に
対する比として、測定量Symmを計算する。
【数17】
【0178】
ステップ7350は、次に、測定量Symmが、1つの実施態様では0.3に設定され
た低い閾値よりも小さいか否かを検査する。小さい場合(「Y」)、吸気流量波形は、対
称的なM字型でないとみなされ、吸気流量波形が対称的なM字型である程度の測定量であ
る量M3RatioSymは、ステップ7360において0に等しく設定される。測定量
Symmが上記閾値よりも小さくない場合(「N」)、M3RatioSymは、ステッ
プ7370においてM3Ratioに等しく設定される。
【0179】
4.3.2.4.3 リバースチェアネス
部分的上気道閉塞を有する幾つかの患者では、流量波形は、吸気の開始時に幾分増加し
、ほぼ定常状態で推移し、次に、吸気の後期に、閉塞がないことを示唆するレベルに大幅
に上昇し、次に、吸気の終了に向けてかなり標準的な形式で0に低下する(図6g参照)
。これは、幾分、側面から見たチェア(chair:椅子)と類似し、チェアの背もたれが吸
気の終了時にある。これは、「リバースチェアネス」と呼ばれる。なぜならば、通常の閉
塞性睡眠時無呼吸の流量制限された波形はこの形状と類似しているが、チェアの背もたれ
は吸気の開始近くにあるからである。特に図8に示すような「円滑かつ快適な」圧力波形
を有する大きな圧補助が存在する場合、リバースチェアネスは、部分的閉塞の初期状態に
起因していると考えられ、上昇する圧力が吸気中に上気道を開放し、そのため、吸気の後
段の部分では、気道は、実質的に遮られていない。この現象が治療されず、EPAPが次
第に下げられる場合、完全上気道閉塞が結果として生じる場合があることが確認されてい
る。したがって、リバースチェアネスを検出し、それに応じてEPAPを上昇させること
が望ましい。
【0180】
様々な非閉塞性の行動性波形、中でも注目すべきは、睡眠中のマイクロ覚醒、又は吐息
は、リバースチェアネスを示す波形を生成する場合があり、そのため、本技術では、リバ
ースチェアネスのこれらの非閉塞性の要因には対応しないように試みる措置がとられる。
【0181】
図7dは、本技術の1つの形態におけるアルゴリズム4324の一部分としての吸気流
量制限のリバースチェアネスの測定量を計算するのに用いることができる方法7400を
示すフローチャートである。
【0182】
方法7400は、ステップ7410から開始する。このステップにおいて、吸気流量波
形の滑らかな導関数が計算される。1つの実施態様では、ステップ7410は、吸気流量
波形を、標準偏差0.1秒を有するガウス関数の第1の導関数と畳み込む。ステップ74
10の他の実施態様では、好適なローパスフィルタ及びその後に続く微分等の同様の周波
数応答特性を有する他の様々な手段が用いられる。リバースチェアネス等の形状特性の検
出のために、大部分においてスケール依存しない導関数が用いられることが望ましく、そ
のため、1つの実施態様では、滑らかな導関数(リットル/秒/秒)は、ステップ741
5においてTypVent/9によって正規化され、秒-1という単位を有する正規化さ
れた導関数が与えられる。ここで、TypVentは、通常の近時の換気量の測定量(リ
ットル/分)(例えば、図7oを参照して以下で説明するように計算される)である。
【0183】
次に、ステップ7420が、初期上昇、ほぼ平坦な領域、及び更なる上昇に対応する3
つの状態を有する状態機械を用いて形状認識を実行する。吸気流量波形の始点において開
始すると、状態「LookingForInitialPositive」において、正
規化された導関数は、少なくとも0.3であることが見つかるまでトラバースされ、見つ
かると、状態は「LookingForLevel」に遷移する。この状態において、0
.05未満の正規化された導関数の値を求める探索が、正規化された導関数における現在
の位置から開始して実行され、探索されると、状態は、「LookingForPosi
tive」に遷移する。このロケーションから前方の最小及び最大の正規化された導関数
は、今度は最大の正規化された導関数が0.15を超え、正規化された導関数がこの最大
の正規化された導関数よりも少なくとも0.05小さいロケーションを探す探索が再び進
むにつれて、連続して更新される。後者の判定基準の意図は、或るヒステリシスを提供す
ることである。
【0184】
探索が進むにつれて、最大の正規化された導関数が増加する可能性があることは明らか
であり、その後に続くものについては、適度に大きな値が見つかることが望ましい。正規
化された導関数がその最大値から適度に減少しているという判定基準がない場合、探索は
、かなり速く終了することができる。ステップ7420は、DerivativeRan
geと呼ばれる、最大の正規化された導関数と最小の正規化された導関数との間の差を返
す。第3の状態に達することがない場合、DerivativeRangeは、0として
返される。次に、ステップ7425は、DerivativeRangeが、1つの実施
態様では0.2に等しい或る低い閾値よりも大きいか否かを検査する。大きい場合(「Y
」)、波形は、暫定的にリバースチェア型とみなされ、最小の導関数のロケーションtm
inが記録され、方法7400はステップ7430に進む。DerivativeRan
geが上記閾値より大きくない場合(「N」)、方法7400は、ステップ7495にお
いて、ファジィ真理変数ReverseChairnessCurrentを0に設定し
、終了する。
【0185】
ステップ7430は、変数LateProportionを計算する。この変数は、時
間にして吸気の最初の10%及び最後の10%を無視した、吸気の後半における吸気の1
回換気量の比率である。
【数18】
【0186】
ステップ7430は、最小の導関数のロケーションtminの前に起こる吸気の1回換
気量の比率である、変数EarlyProportionも計算する。
【数19】
【0187】
式(20)の分母は、方法7400において後に用いられる量である吸気の1回換気量
であることに留意されたい。
【0188】
ステップ7435は、EarlyProportionを、1つの実施態様では0.1
に等しい低い閾値と比較する。EarlyProportionが閾値よりも小さい場合
(「Y」)、波形は、リバースチェア型でないとみなされ、方法7400は、上記で説明
したようなステップ7495に進む。EarlyProportionが閾値よりも小さ
くない場合(「N」)、ステップ7440において、通常の近時の1回換気量(毎呼吸リ
ットル)が計算される。1つの実施態様では、ステップ7440は、毎分リットルの通常
の近時の換気量(例えば、図7oを参照して以下で説明するように計算される)を、毎分
呼吸の通常の呼吸数によって除算する。
【0189】
ステップ7440に続いて、方法7400は、3つのファジィ真理変数を計算する。ス
テップ7445は、3状態検出ステップ7420によって返されたDerivative
Rangeの一般に増加する関数としてDerivIncreaseIsLargeを計
算する。1つの実施態様では、ステップ7445は、DerivIncreaseIsL
argeを以下のように計算する。
【数20】
【0190】
ステップ7450は、LateProportionIsLargeを、LatePr
oportionの一般に増加する関数として計算する。1つの実施態様では、ステップ
7450は、LateProportionIsLargeを以下のように計算する。
【数21】
【0191】
ステップ7455は、ステップ7440において計算された通常の近時の1回換気量に
比例する閾値を用いて、ステップ7430において計算された吸気の1回換気量の一般に
減少する関数としてTidalVolumeIsNotLargeを計算する。1つの実
施態様では、ステップ7455は、TidalVolumeIsNotLargeを以下
のように計算する。
【数22】
【0192】
ステップ7460は、ジャミング前処理アルゴリズム4319によって計算されたファ
ジィ真理変数RecentJammingの一般に減少する関数として実数値の変数No
RecentJammingを計算する。1つの実施態様では、ステップ7460は、N
oRecentJammingを以下のように計算する。
【数23】
【0193】
最後に、方法7400は、ステップ7470において、現在の吸気がリバースチェア型
であるファジィ程度の変数ReverseChairnessCurrentを、Der
ivIncreaseIsLarge、LateProportionIsLarge、
及びTidalVolumeIsNotLargeのファジィAndにNoRecent
Jammingを乗算したものとして計算する。
【数24】
【0194】
したがって、現在の吸気は、平坦区域後の導関数の増加が適度に大きい程度でリバース
チェア型であり、呼吸の後半における1回換気量の比率は大きく、1回換気量は大きくな
く(マイクロ覚醒及び吐息の除外を助ける)、近時のジャミングは起こっていない。
【0195】
4.3.2.5 無呼吸及び呼吸低下の検出4325
本技術の1つの形態では、プロセッサ4230は、無呼吸及び/又は呼吸低下の検出の
ための1つ又は複数のアルゴリズム4325を実行する。
【0196】
完全上気道閉塞は、真のゼロの呼吸気流量を生み出す。換気補助が存在する場合、人工
呼吸器によって推定されるような呼吸気流量は、漏れが存在しない場合であっても、一般
にゼロではない。空気経路及びマスクにおける吸気中の圧力の上昇の結果、上気道閉塞の
場所に至るまでの空気経路においてガスの圧縮が生じ、したがって、少量でも、システム
内への真の流入が存在する。加えて、吸気中の圧力の上昇は、あらゆる漏れを防止するの
に十分なシールを維持している間であっても、マスクの一部を顔から引き離す場合があり
、その結果、吸気中に空気経路内への更なるガスの流入が生じる。対応する流出が呼気中
に生じる。加えて、マスク圧力の関数としての漏れのモデルは、特により高い漏れレベル
では不完全な場合があり、そのため、空気流量が真のゼロの間であっても、推定された流
量は、交互に正(吸気中)及び呼気中の負になる場合がある。これらの理由から、無呼吸
を検出するためのゼロ又はほぼゼロの呼吸気流量の判定基準は、多くの場合、真の閉鎖型
(すなわち、閉塞性)無呼吸中は適合せず、したがって、不適切である。
【0197】
したがって、本技術の1つの形態では、無呼吸を検出するための判定基準は、空気流量
が通常の近時の空気流量に対して相対的に低いということにしている。
【0198】
図7eは、本技術の1つの形態におけるアルゴリズム4325の一部分としての無呼吸
検出を実施するのに用いることができる方法7500を示すフローチャートである。最初
のステップ7510において、現在の呼吸気流量の測定量が計算される。1つの実施態様
では、ステップ7510は、短い近時の区間にわたる呼吸気流量のRMS値を計算する。
この区間は、1つの実施態様では、最後の2秒に等しい。
【0199】
ステップ7520において、通常の近時の空気流量の測定量が計算される。1つの実施
態様では、通常の近時の空気流量の測定量は、ステップ7510において用いられる区間
よりも長い長さの窓における呼吸気流量のRMS値を計算することによって直接計算され
る。この長さは、1つの実施態様では、現時点前の60秒である。代替の実施態様では、
ステップ7520は、呼吸気流量の値の2乗に対するローパスフィルタの出力の平方根を
計算する。ここで、このローパスフィルタは、時定数60秒を有する1次ローパスフィル
タ等のほぼ60秒の通常の時間応答を有する。
【0200】
ステップ7530において、通常の近時の空気流量の測定量に対する現在の空気流量の
測定量の比が計算される。次に、ステップ7540は、この計算された比が、所定の継続
時間D(1つの実施態様では10秒)以上の或る継続時間の間、連続して低い閾値(1つ
の実施態様では0.25)以下であるか否かを検査する。そうである場合(「Y」)、無
呼吸が検出されたか否かを示すブール変数(フラグ)Apneaが、ステップ7550に
おいて真に設定される。そうでない場合(「N」)、このフラグは、ステップ7560に
おいてクリアされる。Apneaが真である連続した時間期間は、無呼吸症状発現とみな
される。ステップ7540によれば、無呼吸期間は、継続時間が少なくともDでなければ
ならない。
【0201】
深刻ではあるが完全上気道閉塞でない状態の下では、人工呼吸器は、特に、その人工呼
吸器が、本技術の1つの形態のように呼吸低下に応答して圧補助を急速に増加させる人工
呼吸器である場合に、或る真の呼吸流量を生み出す場合がある。代替的に、漏れが十分に
モデル化されていないとき、方法7500が無呼吸を検出しないほど十分大きな中程度の
呼吸気流量が存在するように見える場合がある。真の呼吸気流量は、呼吸気流量推定(ア
ルゴリズム4318)が正確であったならば、方法7500が、無呼吸を検出していたほ
ど十分低い場合がある。無呼吸検出のいずれの「偽陰性」状況においても、中程度以上の
圧補助及び小さな絶対空気流量の組み合わせは、高換気インピーダンスと呼ばれ、呼吸低
下の指標としてとらえることができる。
【0202】
図7fは、本技術の1つの形態におけるアルゴリズム4325の一部分としての呼吸低
下検出を実施するのに用いることができる方法7600を示すフローチャートである。方
法7600は、ステップ7610から開始する。このステップは、ほぼ1つ又は2つの通
常の呼吸に関して特徴的な応答時間を有するローパスフィルタを空気流量の絶対値に適用
する。ステップ7610の1つの実施態様では、このローパスフィルタは、双一次変換方
法を用いてデジタル方式で実施される2次ベッセルローパスフィルタであり、周波数応答
が3.2/60秒において-3dBポイントを有する。ステップ7610の出力は、Ab
sAirflowFilterOutputで示される。
【0203】
次のステップ7620において、目標絶対空気流量(TgtAbsAirflowで示
す)が、現在の目標換気量の2倍の、通常の近時の換気量の測定量に基づく連続変化する
量として計算され、以下で説明するアルゴリズム4328を用いて計算される。ステップ
7620は、次に、絶対空気流量が小さい程度を示すファジィ真理変数AirflowI
sSmallを、TgtAbsAirflowに比例する閾値を用いてAbsAirfl
owFilterOutputの一般に減少する関数として計算する。1つの実施態様で
は、ステップ7620は、AirflowIsSmallを以下のように計算する。
【数25】
【0204】
次に、ステップ7630が、圧補助(すなわち、スイング)が大きい程度を示すファジ
ィ真理変数SwingIsLargeを計算する。1つの実施態様では、ステップ763
0は、SwingIsLargeを以下のように計算する。
【数26】
【0205】
高い換気インピーダンスを示すファジィ真理変数VentilationImpeda
nceIsHighが、ステップ7640において、AirflowIsSmallとS
wingIsLargeとのファジィ「And」として計算される。
【数27】
【0206】
無呼吸検出方法7500に概ね対応する方法で、VentilationImpeda
nceIsHighがゼロよりも大きい、すなわち、ファジィ的に偽でない連続した時間
期間は、呼吸低下症状発現とみなされる。
【0207】
4.3.2.6 いびきの検出4326
本技術の1つの形態では、プロセッサ4230は、いびきの検出のための1つ又は複数
のいびきアルゴリズムを実行する。
【0208】
いびきは、一般に上気道閉塞を示す。いびき信号を取得する比較的簡単な技法は、通常
は人工呼吸器の空気経路における好適なロケーションで測定された圧力信号にバンドバス
フィルタを適用することと、例えば全波整流及びローパスフィルタリングによってフィル
タ出力の大きさのインジケータを導出することとを含むことができる。通常、人工呼吸器
によって生成された雑音の或る補償が必要である。
【0209】
マスク漏れ、或る程度の通気孔流量、及び他の様々なファクタが、いびきの度合いを査
定するこの方法又は他の方法がいびきとして治療する音(「擬似いびき」と呼ばれる)を
生成する場合がある。これは、マスク漏れに応答してEPAPが増加されて、マスク漏れ
の量が更に増加し、これがいびきとして治療され、その結果、EPAPが更に増加される
ことが繰り返される「正のフィードバック」の状況をもたらす可能性がある。
【0210】
アルゴリズム4326の広範な目標は、真の吸気性いびきの測定量を計算することと、
呼気中の明らかないびきを検出することとである。目的は、吸気性いびきの度合いととも
に一般に増加するEPAP増加を提供することであるが、明らかな呼気性いびきが過度に
大きい場合には、EPAPの増加を提供しないことである。なぜならば、呼気性いびきは
、マスク漏れ又は場合によっては別の擬似いびき源を表す可能性が非常に高いからである
。これは、真の呼気性いびきは治療されないが、真の呼気性いびきは、特にCPAPデバ
イスではなく人工呼吸器においてはかなり稀であるように思われることを意味し、その結
果得られる特異度の利得は、十分に価値がある。真のいびきは、一般に吸気のみであり、
吸気の中期から後期に最大となり、吸気の最後の部分において一般に著しく減少するか又
は消滅する。
【0211】
図7gは、本技術の1つの形態におけるアルゴリズム4326を実施するのに用いるこ
とができる、吸気性いびきの測定量を計算するとともに明らかな呼気性いびきを検出する
方法7700を示すフローチャートである。
【0212】
いびきを測定するための一般に受け入れられた標準はないので、以下では、いびきの大
きさは「いびき単位」で表される。これらの単位では、0は、いびきがないことを表し、
0.2は、非常に穏やかないびきを表し、1.0は、中程度に大きな音のいびきを表し、
2.0は、より大きな音のいびきを表す。これらの単位は、振幅が線形である。
【0213】
方法7700は、ステップ7710から開始する。このステップは、いびきフィルタを
瞬時マスク圧力Pmに適用する。1つの実施態様では、このいびきフィルタは、30Hz
~300Hzの通過帯域を有するバンドパスフィルタであり、この後に、全波整流と、0
.5Hz~2Hzの高い周波数カットオフを有するローパスフィルタリングとが続く。こ
のいびきフィルタの出力は、「未処理いびき(raw snore)」と呼ばれる。
【0214】
次のステップ7720において、いびき閾値が計算される。このいびき閾値は、EPA
Pには依存しないが、瞬時マスク圧力Pmには依存する。なぜならば、擬似いびき信号は
、一般に、マスク圧力とともにほぼ瞬時に変化し、場合によっては、マスク及び顔の慣性
等の物理的性質に起因する小さな遅延を伴って変化する。いびき閾値tsnは、増加する
マスク圧力Pmとともに一般に増加するコースに従う。1つの実施態様では、ステップ7
720は、(いびき単位で)tsnを以下のように計算する。
【数28】
【0215】
ステップ7730が次に続く。このステップにおいて、方法7700は、いびき閾値t
snを超える未処理の吸気性いびきの量sに適用される重みW(s)を計算する。吸気流
量が高い場合、患者の呼吸器系及び空気経路の双方において生成される雑音は相当なもの
になる場合があり、擬似いびきを生成する。そのような状況では、この高い流量は、有意
な度合いのUAOが存在することができないことを示す。したがって、非常に高い呼吸流
量において生じる未処理いびきには、低い重みが与えられる。
【0216】
上記に説明したように、補償されていない漏れに起因して、一般に呼吸流量のベースラ
インについて或る不確実性が存在する(すなわち、計算された0の呼吸流量は、正確には
ゼロの真の呼吸流量に対応しない)ので、非常に低い呼吸流量において生じる未処理いび
きにも、低い重みが与えられる。
【0217】
したがって、ステップ7730において計算された重み関数W(s)は、1つの実施態
様では、以下の式によって与えられる。
【数29】
【0218】
ステップ7735は、各サンプル(例えば50Hz)における差分に重み関数W(s)
を乗算することによって、現在の呼吸の吸気部分にわたる未処理いびきの量といびき閾値
tsnとの間の重み付き差分を累算する。次に、ステップ7740は、現在の呼吸の吸気
部分の終わりにおいて、累算された重み付き差分を、吸気部分にわたるW(s)の累算し
たものによって除算する。その結果は、現在の呼吸の閾値(MWISAT)を超える平均
重み付き吸気性いびきである。
【0219】
方法7700は、有意な呼気性いびきを検出するために、呼気部分の間の未処理いびき
の強度及び継続時間に関する結合閾値を用いる。これらの閾値は、強度に関する閾値が増
加するにつれて継続時間に関する閾値が一般に減少するという意味で「結合」されている
。これは、大きな音の呼気性いびきが短い時間期間の間存在していた場合、又はより穏や
かな呼気性いびきがより長い時間期間の間存在していた場合、又は更に穏やかな呼気性い
びきが更に長い時間期間の間存在していた場合に、有意な呼気性いびきが存在するとみな
されることを意味する。1つの実施態様では、継続時間は、時間の観点から測定されるが
、他の実施態様では、継続時間は、呼気の継続時間Teによって除算することによって正
規化される。
【0220】
したがって、方法7700のステップ7750は、現在の呼吸の呼気部分の間の未処理
いびきの強度sの分布D(s)(観測される確率分布関数に類似している)を累算する。
1つの実施態様では、ステップ7750は、呼気中の未処理いびき強度sのヒストグラム
としてD(s)を保持する。現在の呼吸の終わりに、ステップ7760は、分布D(s)
を、呼気中の未処理いびき強度sの逆累積分布関数(CDF)C(s)に変換する。この
逆CDF C(s)は、s以上のいびき強度で費やされた呼気継続時間Teの比率である
。逆CDF C(s)は、次にステップ7770において、強度及び継続時間に関する結
合閾値を表す所定の「クリティカル(critical:臨界)」いびき関数Cc(s)と比較さ
れる。このクリティカルいびき関数Cc(s)は、増加する未処理いびき強度sとともに
一般に減少する。1つの実施態様では、クリティカルいびき関数Cc(s)は、以下のよ
うに定義される。
【数30】
【0221】
実際のいびき逆CDF C(s)が、未処理いびきの最小強度stを超える未処理いび
き強度sの任意の値においてクリティカルいびき関数Cc(s)を超える場合(すなわち
、C(s)>Cc(s)であるようなs>stが存在する場合)(「Y」)、ステップ7
780が、有意な呼気性いびきが検出されたことを示すブール変数Expiratory
SnoreをTrue(真)に設定する。そうでない場合(「N」)、ステップ7790
が、ExpiratorySnoreをFalse(偽)に設定する。1つの実施態様で
は、未処理いびきの最小強度stは、0.2いびき単位である。
【0222】
例えば、式(31)のクリティカルいびき関数Cc(s)の定義に基づくと、呼気性い
びき強度が、0.1秒間1いびき単位以上であった場合、又は呼気性いびき強度が、0.
3秒間0.5いびき単位以上であった場合、明らかな呼気性いびきが検出される。
【0223】
4.3.2.7 EPAPの決定4327
本技術の1つの形態では、上気道閉塞が存在する場合にそれを示す複数の異なる特徴が
、上気道閉塞の重症度に一般に比例する度合いで、事前に設定された最小値minEPA
Pを超えるEPAPの上昇を引き起こす。UAOを示す特徴が存在しない場合、EPAP
は、事前に設定された最小EPAPに向けて次第に減衰する。この減衰は、送達されるE
PAPを最小にする傾向がある。任意の所与の時点において、EPAPは、これを上昇さ
せる傾向がある力と、減衰する傾向とがバランスした状態である。近似の平衡状態に達す
る場合がある。この近似の平衡状態では、軽度のUAOが時折示されることによって、U
AOが示されないときに生じる減衰によって平衡にされたEPAPの上方への移動が引き
起こされる。
【0224】
流量制限が示されたことに対するEPAP応答は漸進的である(すなわち、流量制限が
多くなった結果、EPAP成分は、少ない流量制限に起因したEPAP成分と比較してよ
り大きくなる)。なぜならば、流量制限が次第に深刻になるに伴って、無呼吸又は覚醒の
防止を試みるために高速に応答する必要性が高くからであり、また、流量制限の存在につ
いての不確実性が小さくなるからでもある。信号に対する漸進的応答を有する制御システ
ムも、信号のレベルの小さな変化に応答して大きな変化を有するものよりもほぼ常に安定
しており、概ね正常に動作する。
【0225】
アルゴリズム4327がEPAPの増加を処方すると、その増加は、瞬時に起こらない
場合がある。EPAPのそのような上昇は、プロセッサ4230が制御することができ、
PAPデバイス4000が吸気とみなすものの間にのみ行われるようにタイミングを合わ
せることができる。呼気中のEPAPの上昇は、吸気中の同じ上昇よりも覚醒を引き起こ
す傾向が高いと考えられている。なぜならば、おそらく、吸気における上昇は吸気作業を
減少させるが、呼気における上昇は、患者を次の吸気に押し進める傾向があるからである
。そのような技法の一例は、米国特許出願公開第2011/0203588号に開示され
ている。この米国特許出願公開の開示内容は、引用することによって本明細書の一部をな
すものとする。
【0226】
図7hは、アルゴリズム4324、4325、及び4326によって計算された上気道
閉塞の様々な指標の関数として、EPAPの新たな値CurrentEPAPを求める方
法7800を示すフローチャートである。方法7800は、本技術の1つの形態では、ア
ルゴリズム4327を実施するのに用いることができる。
【0227】
方法7800は、事前に設定された最小値minEPAPを超えるEPAPの5つの別
々の成分を計算する。すなわち、EPAP(1,2)(無呼吸及び/又は高い換気インピ
ーダンスに起因する)をステップ7810において計算し、EPAP(3)(吸気流量の
平坦性に起因する)をステップ7820において計算し、EPAP(4)(M字型吸気流
量に起因する)をステップ7830において計算し、EPAP(5)(吸気流量のリバー
スチェアネスに起因する)をステップ7840において計算し、EPAP(6)(いびき
に起因する)をステップ7850において計算する。ステップ7860は、これらの5つ
の成分を事前に設定された最小値minEPAPに加算する。最後に、ステップ7870
において、方法7800は、その結果のCurrentEPAPの新たな値が事前に設定
された最大値maxEPAPを超えないことを保証する。換言すれば、ステップ7870
は、CurrentEPAPの新たに計算された値の「上部をクリッピングして(clips
above)」maxEPAPにする。方法7800は、その後終了する。
【0228】
ステップ7810~7850のそれぞれは、UAOの対応する測定量(複数の場合もあ
る)に加えて、次のPAPデバイス変数又は信号、すなわち、呼吸流量Qr、漏れの量L
eak(リットル毎秒の漏れ流量Qlに等しい)、現在の目標換気量Vtgt、Curr
entEPAPの現時点の値、スイング(又は圧補助)の量、瞬時マスク圧力Pm、及び
近時のジャミングファジィ真理変数RecentJammingのうちの1つ又は複数を
入力として取る。
【0229】
一般に、EPAPの現在の値が増加するとき、EPAPの同じ上昇についてUAOのよ
り強力な証拠を必要とすることは道理にかなっている。なぜならば、EPAPが増加する
につれて、上昇したEPAPの潜在的な悪影響が増加するからである。これらの影響は、
固定された最大圧力を所与とした最大可能圧補助が減少し、漏れの可能性がより高くなる
ということである。漏れが増加するにつれて、計算された呼吸流量波形の精度の信頼度が
減少する。なぜならば、漏れのモデルは、漏れの規模が増大するにつれて、ますます不正
確になる傾向があるからである。
【0230】
4.3.2.7.1 無呼吸/呼吸低下に起因したEPAP成分
ステップ7810において、EPAP成分EPAP(1,2)は、無呼吸又は高い換気
インピーダンス(HVI)の検出された症状発現の継続時間とともに増加する。アルゴリ
ズム4325によって計算されるような無呼吸及び高い換気インピーダンスの症状発現は
重なる場合があるので、それらを或る方法で組み合わせることが望ましい。
【0231】
図7iは、方法7800のステップ7810を実施するのに用いることができる方法7
900を示すフローチャートである。方法7900は、ステップ7910から開始する。
このステップは、無呼吸又はHVIの症状発現、すなわち、FuzzyOr(Venti
lationImpedanceIsHigh,Apnea)>0(ここでは、Apne
aを0又は1のいずれかであるファジィ真理変数であるとする)が連続して当てはまって
いる期間が丁度途絶えたか否かを判断する。そうである場合(「Y」)、次のステップ7
920は、療法目的で症状発現の継続時間T_apn_Rxを計算する。ステップ792
0の1つの実施態様では、この継続時間は、各時点tの重み関数W(t)を次のように計
算することによって計算される。すなわち、Apneaが真である場合、W(t)=1で
あり、Apneaが偽であるが、VentilationImpedanceIsHig
hがファジィ的に偽でない場合、W(t)は、VentilationImpedanc
eIsHighの値に依存し、例えば、W(t)は、拡大係数にVentilation
ImpedanceIsHighを乗算したものである。次に、症状発現にわたるW(t
)の時間に関する積分は、療法目的での無呼吸及び高い換気インピーダンスの症状発現を
組み合わせたものの継続時間T_apn_Rxとみなすことができる。
【0232】
より簡単かつより伝統的なステップ7920の別の実施態様は、次のとおりである。症
状発現中に無呼吸があった場合、高い換気インピーダンスの期間は無視され、T_apn
_Rxは、単に上記に説明したような実際の無呼吸継続時間であるとみなされる。そうで
ない場合、T_apn_Rxは、上記に説明したようなVentilationImpe
danceIsHighに拡大係数を乗算したものを積分することによって求められる、
高い換気インピーダンスの重み付き継続時間に等しく設定される。
【0233】
ステップ7920のいずれの実施態様においても、
高い換気インピーダンスの状態のみが存在するとき、呼吸低下が、無呼吸検出方法750
0が無呼吸を検出するときに得るものほど重症でないか、若しくは無呼吸が実際に存在し
ているが、そうである信頼度が低いものほど重症でないかのいずれかでること、又はこれ
らの2つの可能性の或る組み合わせであり、そのため、この呼吸低下は、同じ継続時間の
明らかに診断された無呼吸に比べて療法を受けるに足らないこと、という事実に起因して
、拡大係数は0~1、例えば0.75に設定される。
【0234】
ステップ7930及び7940において、増加するT_apn_Rxとともに、Max
PossibleNewEPAPと呼ばれる、EPAP(1,2)の結果としてのEPA
Pの新たな最大可能値が、最大可能EPAP値maxEPAPを幾分超えて設定されたH
ighApneaRollOffPressureと呼ばれる値に指数関数的に近づくよ
うに、無呼吸/呼吸低下に起因したEPAP成分EPAP(1,2)が計算される。ステ
ップ7930の1つの実施態様では、
【数31】
であり、
【数32】
である。
【0235】
式(33)のレート定数k(単位1/秒を有する)は、低いEPAP値における圧力の
過度に急速な増加を回避するために、HighApneaRollOffPressur
eが増加するにつれて減少する。ステップ7930の1つの実施態様では、
【数33】
である。
【0236】
EPAP(1,2)の結果としての実際の新たなEPAPは、次にステップ7940に
おいて、maxEPAP以下となるように制限される。したがって、成分EPAP(1,
2)は、ステップ7940において以下のように計算される。
【数34】
【0237】
ステップ7910が「N」を返す場合、すなわち、無呼吸/呼吸低下に起因したEPA
Pの増加が処方されない場合、ステップ7950において、EPAP成分EPAP(1,
2)は、時定数τ1,2を用いてゼロに向けて指数関数的に減衰される。これは、EPA
(1,2)*ΔT/τ1,2だけEPAP(1,2)を削減することによって行われる
。ここで、ΔTは、EPAP(1,2)の最後の更新以降の時間間隔である。1つの実施
態様では、時定数τ1,2は40分である。
【0238】
4.3.2.7.2 平坦性に起因したEPAP成分
図7jは、方法7800のステップ7820を実施するのに用いることができる方法7
1000を示すフローチャートである。
【0239】
CurrentEPAPの値が上昇するにつれて、平坦性に起因したEPAP成分EP
AP(3)の増加に必要とされる吸気流量制限の平坦度が増大する。したがって、方法7
1000は、ステップ71010から開始し、このステップは、CurrentEPAP
が増加するつれて一般に減少する値CurrentEEP_RxFactorを計算する
。1つの実施態様では、
【数35】
である。
【0240】
加えて、EPAP(3)の増加は、漏れの量が増加するにつれて次第に減少される。し
たがって、方法71000は、ステップ71020において、Leakが増加するにつれ
て一般に減少する変数LeakRxFactorを計算する。1つの実施態様では、ステ
ップ71020は、LeakRxFactorを以下のように計算する。
【数36】
【0241】
式(37)のLeakに関する閾値0.5及び1.0は、以前の技術におけるものより
も高い。
【0242】
加えて、口漏れのインジケータである「弁型の漏れ(valve-like leak)」が増加する
につれて、EPAP(3)の増加に必要とされる最小平坦度は増加する。したがって、ス
テップ71030は、呼気の最初の0.5秒におけるピーク流量の、呼気の次の0.5秒
における平均流量に対する比として変数EarlyExpLeakRatioを計算する
。弁型の漏れの間、EarlyExpLeakRatioは、通常、5:1を超える。通
常の呼吸は、約1:1~4:1の比を与える。ステップ71030は、次に、Early
ExpLeakRatioが、弁型の漏れが発生している可能性を示す閾値を超えて増加
するにつれて一般に減少する変数ValveLikeLeak_RxFactorを計算
する。1つの実施態様では、
【数37】
である。
【0243】
これらの3つのファクタから、ステップ71040は、処方されるEPAP(3)の増
加のための平坦性に関する閾値MinFlatnessForRxを以下のように計算す
る。
【数38】
【0244】
式(36)~(39)によれば、CurrentEPAP、Leak、又は弁型の漏れ
のうちのいずれかが大きい場合、閾値MinFlatnessForRxは1に近く、し
たがって、深刻な平坦性のみがEPAP(3)の増加を引き起こす。
【0245】
次に、ステップ71050が、アルゴリズム4324によって計算されたFlatne
ssの値が閾値MinFlatnessForRx以下であるか否かを検査する。そうで
ない場合(「N」)、閾値MinFlatnessForRxを超えるFlatness
の超過量に比例するEPAP(3)の増加量ΔEPAP(3)が、ステップ71060に
おいて計算される。1つの実施態様では、比例定数は、0.5cmH0である。
【数39】
【0246】
次に、ステップ71060が、EPAP(3)をΔEPAP(3)だけ増加させる。ス
テップ71070は、EPAP(3)の増加された値をmaxEPAP-Current
EPAPにクリッピングして、平坦性の結果としてのEPAPの増加された値がmaxE
PAPを超えないことを保証する。
【0247】
ステップ71050が、FlatnessがMinFlatnessForRx以下で
あると判断した場合(「Y」)、ステップ71080において、EPAP(3)の値は、
時定数τを用いてゼロに向けて指数関数的に減衰される。これは、EPAP(3)*Δ
T/τだけEPAP(3)を削減することによって行われる。ここで、ΔTは、EPA
(3)の最後の更新以降の時間間隔である。1つの実施態様では、時定数τは20分
である。
【0248】
4.3.2.7.3 M字型に起因したEPAP成分
図7kは、本技術の1つの形態における方法7800のステップ7830を実施するの
に用いることができる方法71100を示すフローチャートである。
【0249】
非常に長い吸気流量波形は、ほぼM字型の外観を有する場合があるが、これは、流量制
限された呼吸をまれにしか反映しない。したがって、方法71100は、ステップ711
10から開始し、このステップは、吸気の継続時間Tiが「長い」閾値よりも大きいか否
かを検査する。この閾値は、1つの実施態様では3.5秒である。吸気の継続時間Tiが
「長い」閾値よりも大きい場合(「Y」)、現在の呼吸において適用される、M字型吸気
流量に起因したEPAP成分であるEPAP(4)における呼吸当たりの最大増加量の比
率である変数MRxProportionが、ステップ71120において0に設定され
る。吸気の継続時間Tiが「長い」閾値よりも大きくない場合(「N」)、ステップ71
130は、アルゴリズム4324によって計算されたM3RatioSymの値とともに
一般に増加するようにMRxProportionを計算する。1つの実施態様では、ス
テップ71130は、MRxProportionをM3RatioSymから以下のよ
うに計算する。
【数40】
【0250】
通常の近時の換気量よりも大幅に大きな換気量を有する呼吸は、流量制限をまれにしか
反映せず、通例、行動性である。したがって、ステップ71120又はステップ7113
0のいずれかに続いて、ステップ71040は、通常の近時の換気量(例えば、図7oを
参照して以下で説明するように計算される)に対する呼吸別の換気量(その呼吸にわたる
瞬時換気量Ventの平均)の比を計算する。次に、ステップ71140は、その比が増
加するにつれて一般に減少するようにMRxProportionを調整する。1つの実
施態様では、ステップ71140は、MRXProportionを以下のように調整す
る。
【数41】
【0251】
ステップ71150は、M3RatioSymが0よりも大きいか否かを検査する。M
3RatioSymが0よりも大きい場合(「Y」)、ステップ71160は、EPAP
(4)を、MRxProportionに比例する量ΔEPAP(4)だけ増加させる。
比例定数、すなわち、M字型吸気流量に起因したEPAP成分における呼吸当たりの最大
増加量は、1つの実施態様では、0.3cmH0に設定される。
【数42】
【0252】
ステップ71170は、EPAP(4)の増加された値をmaxEPAP-Curre
ntEPAPにクリッピングして、EPAPの新たな値がmaxEPAPを超えないこと
を保証する。
【0253】
ステップ71150が、M3RatioSymがゼロよりも大きくないと判断した場合
(「N」)、ステップ71180において、EPAP(4)の値は、時定数τを用いて
ゼロに向けて指数関数的に減衰される。これは、EPAP(4)*ΔT/τだけEPA
(4)を削減することによって行われる。ここで、ΔTは、EPAP(4)の最後の更
新以降の時間間隔である。1つの実施態様では、時定数τは20分である。
【0254】
4.3.2.7.4 リバースチェアネスに起因したEPAP成分
図7lは、方法7800のステップ7840を実施するのに用いることができる方法7
1200を示すフローチャートである。
【0255】
EPAPの現在の値が増加するにつれて、EPAPを更に増加させる前に、リバースチ
ェアネスを引き起こす基礎を成す状態が確かに存在するという信頼度がより大きいことが
望ましい。これを達成する1つの方法は、直前の呼吸もリバースチェアネスを呈している
程度を評価し、次に、現在のEPAPが上昇するにつれて、EPAPの増加量を計算する
ときに現在の呼吸の単純なリバースチェアネスにわたるその「整合性」の測定量をますま
す偏重することである。
【0256】
したがって、方法71200の最初のステップ71210は、変数ReverseCh
airnessConsistentを、現在の呼吸及び直前の呼吸についてアルゴリズ
ム4324によって計算されたReverseChairnessCurrentの重み
付き幾何平均として計算する。この計算は、現在の呼吸及び直前の呼吸に関する特定の種
類のファジィ「and」関数と解釈することができる。
【0257】
1つの実施態様では、ステップ71210は、現在の呼吸及び直前の呼吸についてのR
everseChairnessCurrentの値の最小値及び最大値を見つける。こ
れらの最小値及び最大値は、MinChairness及びMaxChairnessと
呼ばれる。MinChairness及びMaxChairnessの一方又は双方がゼ
ロである場合、リバースチェアネス測定量ReverseChairnessConsi
stentは、ゼロに設定される。そうでない場合、1つの実施態様では、ステップ71
210は、ReverseChairnessConsistentを以下のように計算
する。
【数43】
【0258】
次に、ステップ71220は、CurrentEPAPが増加するにつれてRever
seChairnessCurrentからReverseChairnessCons
istentに遷移する、療法目的のリバースチェアネスの測定量である変数Rever
seChairnessForRxを計算する。1つの実施態様では、ステップ7122
0は、ReverseChairnessForRxを以下のように計算する。
【数44】
【0259】
次に、ステップ71230は、ReverseChairnessForRxが、1つ
の実施態様では0.05である低い閾値未満であるか否かを検査する。そうでない場合(
「N」)、リバースチェアネスは有意であるとみなされ、ステップ71240は、リバー
スチェアネスに起因したEPAP成分EPAP(5)を、増加する現在のEPAP及び増
加する漏れとともに減少する量だけReverseChairnessForRxに比例
する量ΔEPAP(5)だけ増加させる。1つの実施態様では、ステップ71240は、
以下の量だけEPAP(5)を増加させる。
【数45】
【0260】
ステップ71250は、EPAP(5)の増加された値をmaxEPAP-Curre
ntEPAPにクリッピングして、EPAPの新たな値がmaxEPAPを超えないこと
を保証する。
【0261】
ステップ71230が、ReverseChairnessForRxが有意でないと
判断した場合(「N」)、ステップ71260において、EPAP(5)の値は、時定数
τを用いてゼロに向けて指数関数的に減衰される。これは、EPAP(5)*ΔT/τ
によってEPAP(5)を削減することによって行われる。ここで、ΔTは、EPAP
(5)の最後の更新以降の時間間隔である。1つの実施態様では、時定数τは20分で
ある。
【0262】
4.3.2.7.5 いびきに起因したEPAP成分
図7mは、方法7800のステップ7850を実施するのに用いることができる方法7
1300を示すフローチャートである。
【0263】
方法71300は、ステップ71320から開始し、このステップは、アルゴリズム4
326によって計算された、有意な呼気性いびきが検出されたことを示す、ブール変数E
xpiratorySnoreを調べる。ステップ71320が、Expiratory
Snoreが真であると判断した場合(「Y」)、ステップ71330において、いびき
に起因したEPAPの成分EPAP(6)の値は、時定数τを用いてゼロに向けて指数
関数的に減衰される。これは、EPAP(6)*ΔT/τだけEPAP(6)を削減す
ることによって行われる。ここで、ΔTは、EPAP(6)の最後の更新以降の時間間隔
である。1つの実施態様では、時定数τは20分である
【0264】
ステップ71320が、ExpiratorySnoreが真であると判断しない場合
(「N」)、ステップ71340は、アルゴリズム4326によって計算された閾値(M
WISAT)を超える平均重み付き吸気性いびきが、吸気性いびきが存在することを示す
ゼロよりも大きいか否かを判断する。大きくない場合(「N」)、方法71300は、ス
テップ71330に進み、上記に説明したように、EPAP(6)の値をゼロに向けて減
衰させる。
【0265】
大きい場合(「Y」)、EPAP成分EPAP(6)は、MWISAT値に従って増加
される。前に説明したように、ジャミングが存在するとき、呼吸流量ベースラインについ
てより大きな不確実性が存在する。したがって、EPAP(6)の増加量は、増加するジ
ャミングとともに、特に完了したばかりの呼吸の間のファジィ真理変数RecentJa
mmingの最大値とともに減少される。この最大値MaxJammingDuring
Breathは、ステップ71350においてRecentJammingから計算され
る。
【0266】
次に、ステップ71360は、MaxJammingDuringBreathが増加
するにつれて減少する量だけMWISATに比例する量ΔEPAP(6)だけEPAP
6)を増加させる。1つの実施態様では、ステップ71360は、以下の量だけEPAP
(6)を増加させる。
【数46】
【0267】
最後に、ステップ71370は、EPAP(6)の増加された値をmaxEPAP-C
urrentEPAPにクリッピングして、EPAPの新たな値がmaxEPAPを超え
ないことを保証する。
【0268】
4.3.2.8 目標換気量の決定4328
これまでの手法では、目標換気量は、瞬時換気量に適用される時定数3分を有する1次
ローパスフィルタ(換気フィルタ)の出力として計算される通常の近時の換気量の90%
に設定されている。
【0269】
そのような手法の下では、増加及び減少に関する目標換気量のダイナミクスには根本的
な非対称性が存在する。人工呼吸器は、換気量の上昇の影響を打ち消すことを何もしない
(人工呼吸器は、その圧補助を単に最小に下げるだけである)が、通常の近時の値の90
%における換気量を補助することによって換気量の降下の影響を打ち消す。患者努力がゼ
ロに突然低下する簡単な場合を考えることにする。最大圧補助がゼロである場合、実際の
換気量はゼロであり、そのため、換気フィルタ出力は、3分の時定数でゼロに向けて降下
する。一方、最大圧補助が目標換気量を維持するのに十分である場合、実際の換気量は、
患者努力がゼロに降下する直前の値の90%に維持される。したがって、換気フィルタの
出力と入力との間の差分は、圧補助がなかった場合のものの10%であり、そのため、出
力値の降下レートは、圧補助がなかった場合のものの10%であり、換気量は、1/0.
1*3=30分の時定数で低下する。
【0270】
目標換気量は、上昇するのが容易であるが、降下するのは困難であるので、実際の換気
量の短時間の上昇が、目標換気量及び実際の換気量の長い寿命の上昇を生み出す。そのよ
うな上昇は、通常、換気量の短時間の上昇が就寝の努力又はベッド内で動き回ること(mo
ving around in bed)に関連付けられる睡眠中の覚醒若しくは覚醒中の呼吸に起因するか
、又は、睡眠開始時には一般的ではあるが、人工呼吸器は周期性呼吸のサイクルの潜在的
な開始として治療する、短時間の無呼吸及び呼吸低下の間に、換気量を人工呼吸器が積極
的にサポートすることによって生み出される不安に起因する。加えて、人工呼吸器の目標
換気量が実際の換気量を超えるとき、人工呼吸器は、標準レートで呼吸を送達することに
ますます固執するようになり、これは、覚醒している患者に、更なる不快さ、不安、及び
人工呼吸器との格闘を引き起こす可能性があり、その後、過換気のバーストが続き、これ
は、目標換気量を更に上昇させ、したがって、状況を悪化させる。その上、本技術の目的
は、換気量を安定させることであって、任意の特定のレベルを設定することではなく、本
技術が一般に用いられる患者は、標準を下回る動脈血COレベルを有し、これらの患者
の目標は、COレベルを上昇させることであり、そのため、覚醒時の快適さと一致した
最低レベルで圧補助を維持することが望ましい。
【0271】
このために、本技術は、目標換気量が急速に上昇することを困難にするように設計され
るとともに、圧補助が少しの間適度に安定しており、したがって、上記検討によって不適
切に高いレベルにあるときに目標換気量が降下することを容易にするように設計された特
徴部を含む。
【0272】
図7nは、本技術の1つの形態におけるアルゴリズム4328を実施するのに用いるこ
とができる目標換気量を計算する方法71400を示すフローチャートである。
【0273】
方法71400は、ステップ71410から開始し、このステップは、図7oを参照し
て以下で詳細に説明するように、瞬時換気量(アルゴリズム4323によって計算される
)から通常の近時の換気量の測定量を計算する。ステップ71410は、通常近時換気フ
ィルタ(typical recent ventilation filter)と呼ばれることがある。次のステップ7
1420は、図7pを参照して以下で説明するように、圧補助の現在の値から、目標換気
量の任意の降下が高速化されるべきであるファジィ程度であるファジィ真理変数Shou
ldSpeedUpTargetVentilationAdjustmentを計算す
る。次に、ステップ71430は、通常の近時の換気量が乗算される目標小数(target f
raction)を計算する。これまでの手法では、目標小数は、1の直前の値、例えば0.9
に固定されていた。目標換気量をより急速に下げるための1つのメカニズムは、Shou
ldSpeedUpTargetVentilationAdjustmentが増加す
るにつれて1よりも更に僅かに小さな値に目標小数を減少させることを伴う。1つの実施
態様では、ステップ71430は、目標小数を以下のように計算する。
【数47】
【0274】
これは、ShouldSpeedUpTargetVentilationAdjus
tmentが十分に真であるとき、0.8の目標小数を生成する効果を有する。
【0275】
次のステップ71440は、ステップ71410によって計算された通常の近時の換気
量の測定量を計算された目標小数に乗算する。その結果の積は、図7qを参照して以下で
詳細に説明するように、目標換気量を計算するステップ71460に渡される。ステップ
71460は、目標換気フィルタと呼ばれることがある。これまでの手法における目標換
気量を計算するローパスフィルタのレート定数(時定数の逆数)は、通常は1/180に
固定されており、目標換気量の増加及び減少の双方について等しかった。しかしながら、
目標換気量をより急速に下げるための別のメカニズムは、ShouldSpeedUpT
argetVentilationAdjustmentが増加するにつれて、目標換気
フィルタの減少レート定数を増加させることである。したがって、ステップ71450は
、ステップ71460において減少レート定数が乗算される、ShouldSpeedU
pTargetVentilationAdjustmentとともに一般に増加する係
数SpeedUpRatioを計算する。1つの実施態様では、ステップ71450は、
係数SpeedUpRatioを以下のように計算する。
【数48】
【0276】
そのため、ShouldSpeedUpTargetVentilationAdju
stmentが十分に真であるとき、減少レート定数は、その基本値の3倍の最大値を有
する。
【0277】
したがって、これらの2つのメカニズム(式(48)及び(49))を組み合わせるこ
とによって、6の係数による目標換気量の下方調整の高速化を生み出すことができる。
【0278】
目標換気量を患者の平均換気要件に低減するのに要する時間は、目標換気量がこの要件
をどれだけ超えているのかに依存するが、目標換気量、したがって実際の換気量が低減し
て、動脈血COが無呼吸閾値を超える結果となるレベルに下げられるようになるには、
(安定した僅かではない圧補助の初期の90秒後に)1分~3分の期間にわたることを見
ることは珍しいことではなく、そのため、固有の呼吸ドライブは戻り、圧補助は最小値に
急速に降下する。
【0279】
図7oは、本技術の1つの形態における方法71400のステップ71410を実施す
るのに用いられるような通常の近時の換気量の測定量を計算する方法71500を示すフ
ローチャートである。
【0280】
ジャミング(上記で説明)は、呼吸流量ベースラインをシフトさせることによって、ほ
ぼ常に、明らかな換気量、したがって通常の近時の換気量の不当な増加を引き起こす。し
たがって、本技術の1つの形態では、ジャミングが存在するとき又は近時に存在していた
とき、通常の近時の換気量の調整のレートは削減される。
【0281】
瞬時換気量(アルゴリズム4323によって計算される)は、各入力サンプルの受信時
に実行されるステップ71520~71580を含むジャミング依存(jam-dependent)
ローパスフィルタ71510に入力される。ジャミング依存フィルタ71510は、ジャ
ミングが存在するか又は近時に存在していた限りにおいて時間を効果的に低速化する。ジ
ャミング依存フィルタ71510におけるこの時間の低速化は、ジャミング依存フィルタ
出力に対する、実行されるべき更新の比率を累算し、累算された比率が1を超えるときに
のみ更新が行われることを可能にすることによって実施される。ジャミング依存フィルタ
の出力サンプルの更新レートは、その更新によって、更新比率の値だけ削減される。した
がって、最初のステップ71520は、RecentJammingが増加するにつれて
1から0に一般に減少する変数UpdateProportionを計算する。1つの実
施態様では、ステップ71520は、UpdateProportionを以下のように
計算する。
【数49】
【0282】
次のステップ71530は、UpdateProportionの累算された値をUp
dateProportionだけインクリメントする。次に、ステップ71540は、
UpdateProportionの累算された値が1以上であるか否かを検査する。1
以上でない場合(「N」)、変数WeightedSumが、UpdatePropor
tionと換気フィルタの現在の出力サンプルとの積だけインクリメントされる(ステッ
プ71550)。方法71500は、次に、ステップ71520に戻り、UpdateP
roportionの新たな値をRecentJammingから計算する。
【0283】
UpdateProportionの累算された値が、少なくとも1に等しい場合(「
Y」)、変数WeightedVentilationが、ステップ71560において
、WeightedSumと、換気フィルタの現在の出力サンプルと累算されたUpda
teProportionの前の値(1未満である)を1から引いたものとの積との和と
して計算される。
【0284】
次に、ステップ71570において、UpdateProportionの累算された
値は、UpdateProportionの累算された値から1を減算することによって
(0~1の値に)再初期化される。最後に、ステップ71580は、累算されたUpda
teProportionの新たな値に換気フィルタの現在の出力サンプルを乗算するこ
とによってWeightedSumを再初期化する。方法71500は、次に、ステップ
71520に戻り、UpdateProportionの新たな値をRecentJam
mingから計算する。
【0285】
ジャミング依存フィルタ71510の出力は、ステップ71560によって生成された
WeightedVentilationの値のシーケンスである。UpdatePro
portionが1である場合(RecentJammingが十分に偽であるときのよ
うに)、ジャミング依存フィルタ71510の出力は、単なる瞬時換気量である。Upd
ateProportionがゼロになる場合(RecentJammingが十分に真
であるときのように)、ジャミング依存フィルタ71510の出力は、その現在の値にフ
リーズされる。UpdateProportionが0~1である中間の場合(Rece
ntJammingが0.1~0.3であるときのように)、例えば、Nを整数とした場
合の1/Nである場合、ジャミング依存フィルタ71510の出力は、N個のサンプル毎
に1回更新される、瞬時換気量のN個のサンプルの平均である。
【0286】
ジャミングが存在するか否かを判定する際に多少の遅延が必然的に存在する(例えば、
静かな呼気の終わりにおいて、漏れの突然の上昇は真の吸気流量と区別可能ではなく、相
違が明らかになるには少しの時間を要する)ので、ジャミング依存フィルタ71510の
出力は、本技術の1つの形態では、換気フィルタ71590に渡される。この換気フィル
タの応答は、ジャミング検出アルゴリズム4319と同様の時間経過を有する。したがっ
て、換気フィルタ71590の出力は、RecentJammingがファジィ的に真に
なり始めるまで、突然の補償されていない漏れに応答して上昇しない。換気フィルタ71
590の出力は、この場合、通常の近時の換気量である。
【0287】
1つの実施態様では、換気フィルタ71590は、0.0178Hzの-3dbポイン
トを有する2次ベッセルローパスフィルタである。他の実施態様では、換気フィルタ71
590の応答は、換気量における呼吸内変動を、以下で説明する上方スルーレート制限よ
りもはるかに低い値まで低減するように十分低速であるとともに、その時定数がこれまで
の手法の通常近時換気フィルタにおいて用いられる3分の時定数よりも小さくなるように
十分に高速である。
【0288】
ステップ71410の代替の実施態様では、換気フィルタ71590は、ジャミング依
存フィルタ71510よりも前に配置される。ジャミング依存フィルタ71510の出力
は、この場合、通常の近時の換気量の測定量として用いられる。
【0289】
以下で説明するように目標換気量の増加レートに最大限度を課すにもかかわらず、目標
換気量が、患者が実際に必要とするものを平均で超えることは、依然として比較的容易で
ある。これは、目標換気量が覚醒に起因して上昇するときに生じる場合もあるし、代謝率
が減少するとともに呼吸コントローラのCO応答が減少し、「覚醒ドライブ(awake dr
ive)」が消滅するときは、単に覚醒から睡眠への遷移の結果である場合もある。繰り返
すが、本技術の目的は、安定させなければ換気量が振動する呼吸器系において換気量を安
定させるために、中枢ドライブ(central drive)における比較的活発で短時間の降下に
対処するのに実際に必要なときにのみ、最小値を超える圧補助を送達することである。
【0290】
したがって、上記で説明したように、方法71400は、最小値を大幅に超えるかなり
安定した圧補助の状態を検出するステップ71420と、それが生じたときに下方への目
標換気量の調整を高速化するメカニズム(式(48)及び(49))とを組み込んでいる
【0291】
図7pは、本技術の1つの形態における方法71400のステップ71420において
用いられるようなファジィ真理変数ShouldSpeedUpTargetVenti
lationAdjustmentを計算する方法71600を示すフローチャートであ
る。
【0292】
概括的に言えば、方法71600は、最小値を超える圧補助(「サーボアシスタンス」
又は「サーボスイング」)が第1の近時の期間の間かなり安定しているとともに、第1の
近時の期間よりも大幅に短い第2の近時の期間の間もかなり安定しており、その上、圧補
助がしばらくの間かなり安定しており、現在もかなり安定しているファジィ程度を計算す
る。これは、標準偏差、平均絶対偏差、又は或るタイプのハイパスフィルタ等のスプレッ
ドの様々な統計的測定量によって求めることができる。これらのうちの任意のものによっ
て取得されるかなり低い値のスプレッドは、圧補助がかなり安定していることを示す。方
法71600では、この場合において典型的であるように特に特定の個人の分布が未知で
あるときに、一般によりロバストである順序統計量が、安定性を求めるのに用いられる。
【0293】
方法71600の1つの実施態様では、第1の近時の期間は最も近時の90秒であり、
第2の近時の期間は最も近時の30秒である。安定性を評価する期間としての90秒の選
択は、中枢ドライブの本質的に全てのチェーンストークス振動が、40秒~60秒が通常
の範囲である90秒以下の周期を有するということによって決定される。他が原因の周期
性呼吸は、60秒以下の周期を有する傾向がある。したがって、人工呼吸器は、そのよう
な振動を安定させるためだけに有意なサーボアシスタンスを送達している場合、90秒の
期間にわたってかなり安定していない可能性がある。
【0294】
方法71600は、ステップ71610から開始し、このステップにおいて、最小値を
超える圧補助が、1つの実施態様では2秒の時定数を用いて軽くローパスフィルタリング
される。次のステップ71620は、最も近時の30秒にわたるランニング(running)
順序統計量を計算する。ステップ71620の1つの実施態様では、最も近時の30秒に
わたる値のヒストグラムが、長さが30秒の入力値の循環バッファによって絶えず更新さ
れる。新たな入力値が追加されるとき、循環バッファ内の最も新しいサンプル及び最も古
いサンプルのヒストグラムカテゴリーが求められ、最も古いサンプルのヒストグラムカテ
ゴリー内のカウントが1だけディクリメントされ、最も新しいサンプルのヒストグラム内
のカウントが1だけインクリメントされる。ヒストグラムから近似の順序統計量を求める
ことは、定型化された作業である。特に、ステップ71620は、0.8の順序統計量と
0.2の順序統計量との差分、等価的には第80百分位数値と第20百分位数値との差分
として、Spread30と呼ばれるスプレッドの測定量を計算する。ステップ7162
0は、Median30と呼ばれる中央値も計算する。次のステップ71630は、Me
dian30に対するSpread30の比を計算する。
【0295】
ステップ71640が続き、このステップにおいて、最も近時の90秒にわたるランニ
ング順序統計量がステップ71620と同様の方法で計算される。特に、ステップ716
40は、0.8の順序統計量と0.2の順序統計量との差分、等価的には第80百分位数
値と第20百分位数値との差分として、Spread90と呼ばれるスプレッドの測定量
を計算する。
【0296】
最後のステップ71650は、計算された順序統計量と、最大圧補助と最小圧補助との
差分である定数MaxPossibleServoAssistanceとに基づいて、
ファジィ真理変数ShouldSpeedUpTargetVentilationAd
justmentを計算する。
【0297】
Median30が、1つの実施態様では2に設定される低い閾値よりも小さい場合、
ステップ71650は、ShouldSpeedUpTargetVentilatio
nAdjustmentをゼロに設定する。なぜならば、近時の圧補助は、これらの状況
の下では安定することができず、高くすることができないからである。そうでない場合、
ステップ71650は、ShouldSpeedUpTargetVentilatio
nAdjustmentを5つのファジィ真理変数のファジィ「And」として計算する
。ShouldSpeedUpTargetVentilationAdjustmen
tを計算するためにファジィ「And」が行われた5つのファジィ真理変数のうちの第1
のものは、MaxPossibleServoAssistanceが所定の閾値と比較
して大きい程度を示す。この変数は、MaxPossibleServoAssista
nceが小さいとき、実際の換気量に大きな変動が存在する場合であっても、サーボアシ
スタンスが小さくあることがかなり容易であり、そのため、圧補助のいずれの明らかな安
定性も軽視されることから、存在する。
【0298】
次の2つのファジィ真理変数は、圧補助が最も近時の30秒にわたってかなり安定して
いた程度を査定する。第4のファジィ真理変数は、サーボアシスタンスが最後の30秒に
わたって僅かではなかった程度(例えば、一般に、患者の呼吸パターンに影響を与えるの
に十分である)を査定し、最後のファジィ真理変数は、圧補助が最後の90秒にわたって
安定していた程度を査定する。
【0299】
1つの実施態様では、ステップ71650は、ShouldSpeedUpTarge
tVentilationAdjustmentを以下のように計算する。
【数50】
【0300】
順序統計量は、各「マスク装着(mask-on)」事象時にクリアされ、そのため、そのよ
うな事象から90秒後、ステップ71650は、変数ShouldSpeedUpTar
getVentilationAdjustmentを計算することが可能になる。
【0301】
図7qは、本技術の1つの形態における方法71400のステップ71460を実施す
るのに用いることができる、通常の近時の換気量から目標換気量を計算する方法7170
0を示すフローチャートである。
【0302】
方法71700は、目標換気量の増加レート(上方スルーレート)に上限を課す。
【0303】
方法71700は、ステップ71710から開始し、このステップは、方法71400
のステップ71440によって提供されるように、通常の近時の換気量に目標小数を乗算
したものから目標換気量の現在の値を減算し、目標換気量に対する予想インクリメントを
得る。
【0304】
ステップ71720は、予想インクリメントがゼロよりも大きいか否か判断する。そう
である場合(「Y」)、ステップ71730において、予想インクリメントに、増加レー
ト定数が乗算される。この増加レート定数は、1つの実施態様では、固定値、通常は1/
180秒-1に設定される。次のステップ71740は、その結果の調整されたインクリ
メントの上部を、1つの実施態様では3分当たり2.5リットル/分の目標換気量増加に
対応する0.93リットル/分/分に設定された上方スルーレート制限にクリッピングす
る。方法71700は、次に、以下で説明するステップ71790に進む。
【0305】
ステップ71720が、予想インクリメントがゼロよりも大きくないと判断した場合(
「N」)、ステップ71750は、予想インクリメント(実際にはディクリメント)に減
少レート定数を乗算し、次のステップ71760は、この積に、方法71400のステッ
プ71450において計算されたSpeedUpRatioを乗算して、調整されたイン
クリメントを取得する。
【0306】
ステップ71740及び71760のいずれかの後、方法71700は、調整されたイ
ンクリメントを現在の目標換気量に加算して、目標換気量の新たな値を生成する。ステッ
プ71795は、以下で説明するオプションのステップである。
【0307】
4.3.2.9 療法パラメータの決定4329
プロセッサ4230は、療法パラメータの決定のための1つ又は複数のアルゴリズム4
329を実行する。
【0308】
本技術の1つの形態では、アルゴリズム4329は、以下のものの1つ又は複数を入力
として受け取る。
i.範囲[0,1]にある波形値Π(Φ)(アルゴリズム4322から)、
ii.瞬時換気量Ventの測定量(アルゴリズム4323から)、
iii.目標換気量Vtgt(アルゴリズム4328から)、及び
iv.EPAP値(アルゴリズム4327から)。
【0309】
アルゴリズム4329は、瞬時換気量を目標換気量に増加させるのに十分な圧補助値A
を最初に計算する。1つの実施態様では、アルゴリズム4329は、目標換気量と瞬時換
気量との差分の積分に比例するAを計算する。
【数51】
【0310】
式中、Gは、コントローラ利得であり、通常は0.3cmH0リットル/分/秒に設
定される。計算された圧補助Aは範囲[minSwing,maxSwing]にクリッ
ピングされることに留意されたい。
【0311】
アルゴリズム4329の実施態様では、他の形態のコントローラ、例えば、比例、比例
積分、比例積分微分が、目標換気量及び瞬時換気量から圧補助値Aを計算するのに用いら
れる。
【0312】
アルゴリズム4329は、次に、以下の式を用いて目標治療圧Ptを計算する。
【数52】
【0313】
本技術の他の形態では、アルゴリズム4329は、式(52)のように圧補助値Aを計
算する。次に、療法エンジンモジュール4320は、EPAP、波形値、及び圧補助Aの
計算された値を出力する。次に、制御モジュール4330は、上記で説明したような目標
治療圧Ptの残りの計算を実行する。
【0314】
本技術の他の形態では、アルゴリズム4329は、EPAP、波形値、目標換気量、及
び瞬時換気量を単に出力するにすぎない。次に、制御モジュール4330は、上記で説明
したような目標治療圧Ptの残りの計算を実行する。
【0315】
中枢起源の周期性呼吸(CSR等)を有する患者は、有意な呼吸不全をまれにしか有さ
ない。なぜならば、不全は、プラント利得(plant gain)を減少させ、そのため、高い呼
吸コントローラ利得が存在する場合であっても、患者を安定させる傾向があるからである
。しかしながら、この組み合わせは、時として起こる。このメカニズムは、動脈血酸素飽
和度が比較的低く、呼吸仕事量の対応する増加がなく、オキシヘモグロビン飽和度曲線の
急勾配部分がプラント利得を増加させ、これらの患者とは、酸素が呼吸コントローラドラ
イブの重要な部分である領域において動作する肺疾患を伴う場合がある。そのような患者
は、徐波睡眠において中枢性呼吸不安定性を有する場合があり、この不安定性は、場合に
よっては、或る度合いの心不全によって悪化し、重度の(marked)REM脱飽和と結合す
る。酸素は、これらの患者にとっての主要な療法であるが、呼吸安定性を安定させるには
不十分な場合があり、REM脱飽和は、換気補助によって或る程度改善することができる
【0316】
そのような患者に対する従来の手法は、REM中には周期性呼吸がないので、呼吸不全
に対処するために、REMにおける十分な換気補助が存在するための十分高いレベルの最
小圧補助を設定することである。しかしながら、これは満足のいくものではない。なぜな
らば、これは、それ以外の時において換気量の不安定性の影響を打ち消すのに利用可能な
圧補助の範囲を減らすからである。好ましい手法は、最小目標換気量を設定することであ
る。これは、設定された最小目標換気量によって目標換気量の下方の限度を定めるオプシ
ョンのステップ71795(図7qに破線のボックスとして示す)を挿入することによっ
て、方法71700において簡単に実施することができる。1つの実施態様では、最小目
標換気量は、ゼロからその設定レベルに徐々に上昇して、患者が、目標換気量の下方の限
度が最小目標換気量によって定められる前に睡眠に入ることを可能にする。
【0317】
別の手法は、最小目標総肺胞換気量(同一出願人の米国特許出願公開第2007016
3590号に記載されている。この米国特許出願公開の開示内容は、引用することによっ
て本明細書の一部をなすものとする)を設定し、その開示内容に記載された総肺胞換気量
に基づく制御方法論を上記で説明したアルゴリズム4329の制御方法論と組み合わせる
ことである。
【0318】
上記2つの方法論を組み合わせるために、1つの実施態様は、双方を並列に実行し、各
方法論によって設定された圧補助の値の或る組み合わせに圧補助を調整するものである。
1つの実施態様では、この組み合わせは、2つの値のうちの大きい方である。
【0319】
この組み合わされた手法の利点は、低い総肺胞換気量ではあるが十分な全換気量を生み
出すことができる高い呼吸数における小さな1回換気量が、満足な換気量とみなされるの
ではなく、また、圧補助の増加を何ら生み出さないというのではなく、圧補助の適切な増
加を得るということである。これは、通常、呼吸数が一般に標準範囲にあるチェーンスト
ークス等の通常の中枢性呼吸不安定性を有する患者においては問題ではないが、素早く浅
い呼吸が生じる場合がある呼吸不全においては重要である。
【0320】
4.3.3 制御モジュール4330
本技術の1つの形態による制御モジュール4330は、目標治療圧Ptを入力として受
け取り、その圧力を送達するように療法デバイス4245を制御する。
【0321】
本技術の別の形態による制御モジュール4330は、EPAP、波形値、及び圧補助の
レベルを入力として受け取り、式(53)のように目標治療圧Ptを計算し、その圧力を
送達するように療法デバイス4245を制御する。
【0322】
本技術の別の形態による制御モジュール4330は、EPAP、波形値、目標換気量、
及び瞬時換気量を入力として受け取り、目標換気量及び瞬時換気量から式(52)のよう
に圧補助のレベルを計算し、EPAP、波形値、及び圧補助を用いて式(53)のように
目標治療圧Ptを計算し、その圧力を送達するように療法デバイス4245を制御する。
【0323】
4.3.4 故障状態の検出4340
本技術の1つの形態では、プロセッサは、故障状態の検出のための1つ又は複数の方法
を実行する。好ましくは、この1つ又は複数の方法によって検出された故障状態は、以下
のものの少なくとも1つを含む。
・電力障害(無電力又は不十分な電力)
・トランスデューサ故障検出
・構成要素の存在の検出不良
・推奨範囲外の動作パラメータ(例えば圧力、流量、温度、PaO
・検出可能なアラーム信号を生成する検査アラームの障害。
【0324】
故障状態を検出すると、対応するアルゴリズムが、以下のものの1つ又は複数によって
故障の存在をシグナリングする。
・可聴、視覚、及び/又は運動(例えば振動)アラームの起動
・外部デバイスへのメッセージの送信
・出来事のログ記録
【0325】
4.3.5 療法デバイス4245
本技術の好ましい形態では、療法デバイス4245は、療法を患者1000に送達する
ように制御モジュール4330の制御を受ける。
【0326】
好ましくは、療法デバイス4245は、陽圧空気デバイス4140である。
【0327】
5 加湿器5000
本技術の1つの形態では、貯水器5110及び加熱板5120を備える加湿器5000
が設けられる。
【0328】
6 用語解説
本技術を開示するために、本技術の幾つかの形態では、以下の定義のうちの1つ又は複
数を適用することができる。本技術の他の形態では、代替の定義を適用することができる
【0329】
6.1 通則
空気:本技術の幾つかの形態では、患者に供給される空気は、大気の空気とすることが
でき、本技術の他の形態では、大気の空気には、酸素を補うことができる。
【0330】
持続気道陽圧(CPAP):CPAP治療は、大気に対して連続して陽圧で、好ましく
は患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定の圧力で、空気又は呼吸に適したガスの供給を気
道の入口に適用することを意味するものとされる。幾つかの形態では、気道の入口におけ
る圧力は、単一の呼吸サイクル内で数水柱センチメートルだけ変動し、例えば、吸息中は
高くなり、呼息中は低くなる。幾つかの形態では、気道の入口における圧力は、呼息中は
僅かに高くなり、吸息中は僅かに低くなる。幾つかの形態では、圧力は、患者の呼吸サイ
クルごとに変動し、例えば、部分的上気道閉塞の指標の検出に応答して増加され、部分的
上気道閉塞の指標が存在しない場合には減少される。
【0331】
6.2 PAPデバイスの態様
空気回路:PAPデバイスと患者インタフェースとの間の空気又は呼吸に適したガスの
供給を送達するように使用時に構成及び準備された導管又はチューブである。特に、空気
回路は、空気圧ブロック及び患者インタフェースの放出口と流体接続することができる。
空気回路は、空気送達チューブと呼ばれる場合がある。幾つかの場合には、吸息用及び呼
息用に回路の別々のリムが存在する場合がある。他の場合には、単一のリムが用いられる
【0332】
APAP:自動気道陽圧である。SDB事象の指標の存否に応じて最小限度と最大限度
との間で絶えず調整可能な気道陽圧である。
【0333】
ブロワ又はフロージェネレータ:周囲圧力を超える圧力で空気の流れを送達するデバイ
スである。
【0334】
コントローラ:入力に基づいて出力を調整するデバイス、又はデバイスの一部分である
。例えば、コントローラの1つの形態は、デバイスへの入力を構成する、制御を受ける変
数、すなわち制御変数を有する。デバイスの出力は、制御変数の現在の値とその変数の設
定点との関数である。サーボ人工呼吸器は、入力として換気量を有し、設定点として目標
換気量を有し、出力として圧補助のレベルを有するコントローラを備えることができる。
入力の他の形態は、酸素飽和度(SaO)、二酸化炭素の分圧(PCO)、運動、光
レチスモグラムからの信号、及びピーク流量のうちの1つ又は複数とすることができる。
コントローラの設定点は、固定されたもの、可変のもの、又は学習されたもののうちの1
つ又は複数とすることができる。例えば、人工呼吸器における設定点は、患者の測定され
た換気量の長期平均とすることができる。別の人工呼吸器は、時間とともに変化する換気
設定点を有することができる。圧力コントローラは、特定の圧力で空気を送達するように
ブロワ又はポンプを制御するように構成することができる。
【0335】
療法:本文脈における療法は、陽圧療法、酸素療法、二酸化炭素療法、死腔の制御、及
び薬の投与うちの1つ又は複数とすることができる。
【0336】
モータ:電気エネルギーを部材の回転運動に変換するためのデバイスである。本文脈に
おいて、この回転部材は、回転軸に沿って移動する空気に圧力増加を与えるように、所定
の位置において固定軸の回りを回転するインペラである。
【0337】
気道陽圧(PAP)デバイス:陽圧の空気の供給を気道に提供するためのデバイスであ
る。
【0338】
トランスデューサ:エネルギー又は信号の1つの形態を別の形態に変換するためのデバ
イスである。トランスデューサは、力学的エネルギー(運動等)を電気信号に変換するた
めのセンサ又は検出器とすることができる。トランスデューサの例には、圧力センサ、流
量センサ、二酸化炭素(CO)センサ、酸素(O)センサ、努力センサ、運動センサ
、雑音センサ、プレチスモグラフ、及びカメラが含まれる。
【0339】
ボリュート:インペラによって圧送されている空気を受け取って、空気の流量率を低速
にし、圧力を増加させる遠心ポンプのケーシングである。ボリュートの断面は、面積が放
出ポートに向かって増大している。
【0340】
6.3 呼吸サイクルの態様
無呼吸:無呼吸は、流量が或る継続時間、例えば10秒の間、所定の閾値未満に降下し
たときに発生したと言われる。閉塞性無呼吸は、患者の努力にもかかわらず、気道の或る
閉塞によって空気が流れることができないときに発生したと言われる。中枢性無呼吸は、
呼吸努力の低下又は呼吸努力の欠如に起因した無呼吸が検出されたときに発生したと言わ
れる。
【0341】
呼吸数:患者の自発呼吸数は、通例、呼吸毎分で測定される。
【0342】
デューティサイクル:全呼吸時間Ttotに対する吸息時間Tiの比である。
【0343】
努力(呼吸):呼吸を試みる自発呼吸する人によって行われる作業である。
【0344】
呼吸サイクルの呼気部分:呼気流の開始から吸気流の開始までの期間である。
【0345】
流量制限:好ましくは、流量制限は、患者による努力の増大が流量の対応する増加を引
き起こさない患者の呼吸の状態とされる。流量制限が呼吸サイクルの吸気部分の間に生じ
ている場合、これは、吸気流量制限と呼ぶことができる。流量制限が呼吸サイクルの呼気
部分の間に生じている場合、これは、呼気流量制限と呼ぶことができる。
【0346】
流量制限された吸気波形のタイプ
(i)平坦型:上昇を有し、その後に比較的平坦な部分が続き、その後に降下が続く。
(ii)チェア型:単一の局所的なピークを有し、このピークは前縁にあり、その後に
比較的平坦な部分が続く。
(iii)リバースチェア型:比較的平坦な部分を有し、その後に単一の局所的なピー
クが続き、このピークは後縁にある。
(iv)M字型:1つは前縁にあり1つは後縁にある2つの局所的なピークを有し、こ
れらの2つのピーク間に比較的平坦な部分又はくぼみを有する。
【0347】
呼吸低下:呼吸低下は、流量の停止ではなく、流量の低下とされる。1つの形態では、
呼吸低下は、或る継続時間の間、閾値を下回る流量の低下があるときに発生したと言うこ
とができる。成人の1つの形態では、以下のもののいずれかが呼吸低下であるとみなすこ
とができる。
(i)少なくとも10秒間の患者呼吸の30%の低下に、関連した4%脱飽和が加わっ
たもの、又は
(ii)少なくとも3%の関連した脱飽和又は覚醒を伴った少なくとも10秒間の患者
呼吸の低下(ただし、50%未満)。
【0348】
過呼吸:標準流量よりも高いレベルへの流量の増加である。
【0349】
呼吸サイクルの吸気部分:好ましくは、吸気流の開始から呼気流の開始までの期間が、
呼吸サイクルの吸気部分とされる。
【0350】
開存性(気道):気道が開放している度合い、又は気道が開放している程度である。開
存気道は開放している。気道開存性は定量化することができ、例えば、1の値は開存して
おり、0の値は閉鎖している。
【0351】
終末呼気陽圧(PEEP):呼気の終わりに存在する肺内の大気を超える圧力である。
【0352】
ピーク流量(Qpeak):呼吸流量波形の吸気部分の間の流量の最大値である。
【0353】
呼吸流量、空気流量、患者空気流量、呼吸気流量(Qr):これらの同義の用語は、通
例はリットル毎分で表される、患者が受けている実際の呼吸流量である「真の呼吸流量」
又は「真の呼吸気流量」とは対照的に、PAPデバイスの呼吸気流量の推定値を指すもの
と理解することができる。
【0354】
1回換気量(Vt):余分な努力が加えられないとき、通常の呼吸中に吸い込んだ空気
又は吐き出した空気の体積である。
【0355】
(吸息)時間(Ti):呼吸流量波形の吸気部分の継続時間である。
【0356】
(呼息)時間(Te):呼吸流量波形の呼気部分の継続時間である。
【0357】
(全)時間(Ttot):1つの呼吸流量波形の吸気部分の開始と次の呼吸流量波形の
吸気部分の開始との間の全継続時間である。
【0358】
通常の近時の換気量:或る所定の時間スケールを超える近時の値がクラスタ化する傾向
がある換気量の値、すなわち、換気量の近時の値の中心傾向の測定量である。
【0359】
上気道閉塞(UAO):部分上気道閉塞及び完全上気道閉塞の双方を含む。これは、上
気道にわたる圧力差が増加するにつれて、流量のレベルが僅かにしか増加しないか又は減
少する場合さえある(スターリングレジスタ挙動)流量制限の状態に関連付けることがで
きる。
【0360】
換気量(Vent):単位時間当たりの吸気流量及び呼気流量の双方を含めて、患者の
呼吸器系によって交換されているガスの総量の測定量である。毎分の体積として表される
とき、この量は、「毎分換気量」と呼ばれることが多い。毎分換気量は、単に体積として
与えられることがあるが、毎分の体積であると理解される。
【0361】
6.4 PAPデバイスパラメータ
流量率:単位時間当たりに送達される空気の瞬時体積(又は質量)である。流量率及び
換気量は、単位時間当たりの体積又は質量という同じ次元を有するが、流量率は、はるか
に短い時間期間にわたって測定される。流量は、患者の呼吸サイクルの吸気部分の間は名
目的に正とすることができ、したがって、患者の呼吸サイクルの呼気部分の間は負とする
ことができる。幾つかの場合には、流量率というときは、スカラー量、すなわち、大きさ
のみを有する量を指す。他の場合には、流量率というときは、ベクトル量、すなわち、大
きさ及び方向の双方を有する量を指す。流量には、シンボルQが与えられる。総流量Qt
は、PAPデバイスを出て行く空気の流量である。通気孔流量Qvは、吐き出されたガス
のウォッシュアウトを可能にする通気孔を出て行く空気の流量である。漏れ流量Qlは、
患者インタフェースシステムからの意図的でない漏れの流量率である。呼吸流量Qrは、
患者の呼吸器系内に受け入れられる空気の流量である。
【0362】
漏れ:周囲への空気の流れである。漏れは、例えば吐き出されたCOのウォッシュア
ウトを可能にするために意図的である場合がある。漏れは、例えば、マスクと患者の顔と
の間の不完全なシールの結果として意図的でない場合がある。
【0363】
圧力:単位面積当たりの力である。圧力は、cmHO、g-f/cm、ヘクトパス
カルを含む様々な単位で測定することができる。1cmHOは、1g-f/cmに等
しく、ほぼ0.98ヘクトパスカルである。この明細書では、別段の明示がない限り、圧
力はcmHOの単位で与えられる。OSAの経鼻CPAP治療の場合、治療圧というと
きは、約4cmHO~20cmHO又は約4cmHO~30cmHOの範囲の圧
力を指す。患者インタフェースにおける圧力(より簡潔にマスク圧力)には、シンボルP
mが与えられる。
【0364】
音響パワー:音波によって搬送される単位時間当たりのエネルギーである。音響パワー
は、音圧に波面の面積を乗算したものの2乗に比例する。音響パワーは、通例、デシベル
SWL、すなわち、通常は10-12ワットとされる基準電力に対するデシベルで与えら
れる。
【0365】
音圧:音波が媒体を通って進む結果としての所与の時点における周囲圧力からの局所的
な偏りである。音響パワーは、通例、デシベルSPL、すなわち、人間の聴覚の閾値を考
慮して通常は20×10-6パスカル(Pa)とされる基準電力に対するデシベルで与え
られる。
【0366】
6.5 人工呼吸器の用語
適応サーボ人工呼吸器:固定された目標換気量ではなく変更可能な目標換気量を有する
人工呼吸器である。変更可能な目標換気量は、患者の或る特性、例えば、患者の呼吸特性
から学習することができる。
【0367】
バックアップレート:特にトリガされない限り、人工呼吸器が患者に送達する最小呼吸
数(通常は、毎分の呼吸の数)を設定する人工呼吸器のパラメータである。
【0368】
循環(cycled):人工呼吸器の吸気位相の終了である。人工呼吸器が、自発呼吸する患
者に呼吸を送達するとき、呼吸サイクルの吸気部分の終わりに、人工呼吸器は、呼吸の送
達を停止するように循環されると言われる。
【0369】
EPAP(又はEEP):人工呼吸器が所与の時点において達成しように試みる所望の
マスク圧力を生成するために、呼吸内で変動する圧力が追加される基底圧力である。
【0370】
IPAP:人工呼吸器が呼吸の吸気部分の間に達成しようと試みる所望のマスク圧力で
ある。
【0371】
圧補助:人工呼吸器の呼気中の圧力を超える人工呼吸器の吸気中の圧力の増加を示し、
一般に、吸気中の圧力の最大値と呼気中の圧力の最小値との差分(例えば、PS=IPA
P-EPAP)を意味する数値である。幾つかの文脈では、圧補助は、デバイスが実際に
達成する差分ではなく、達成しようと目標としている差分を意味する。
【0372】
サーボ人工呼吸器:患者の換気量を測定する人工呼吸器は目標換気量を有し、この患者
の換気量を目標換気量に持って行くように圧補助のレベルを調整する人工呼吸器である。
【0373】
自発/時限(S/T):自発呼吸する患者の呼吸の開始を検出しようと試みる人工呼吸
器又は他のデバイスのモードである。しかしながら、デバイスは、所定の時間期間内に呼
吸を検出することができない場合、呼吸の送達を自動的に開始する。
【0374】
スイング:圧補助と等価語である。
【0375】
トリガ:人工呼吸器が、自発呼吸する患者に空気の呼吸を送達するとき、患者の努力に
よる呼吸サイクルの呼吸部分の開始時に送達するようにトリガされると言われる。
【0376】
人工呼吸器:呼吸の作用の一部又は全てを実行する、患者に圧補助を提供する機械式デ
バイスである。
【0377】
人工呼吸器の吸気及び人工呼吸器の呼気:人工呼吸器が患者の吸気及び呼気にそれぞれ
適切な圧力を送達すべきであるとみなす期間である。患者と人工呼吸器との同期の質及び
上気道閉塞の有無に応じて、これらは、実際の患者の吸気又は呼気に対応する場合もある
し、対応しない場合もある。
【0378】
6.6 呼吸器系の解剖学
横隔膜:胸郭の底部にわたって延在する筋層である。横隔膜は、心臓、肺、及び肋骨を
収容する胸腔を腹腔から隔てている。横隔膜が収縮するにつれて、胸腔の体積が増加し、
空気が肺に引き込まれる。
【0379】
喉頭:喉頭、又は発声器(voice box)は、声帯を収容し、咽頭の下部分(下咽頭)を
気管と接続する。
【0380】
肺:人間の呼吸器官である。肺の気道部(conducting zone)は、気管、気管支、細気
管支、及び終末細気管支を含む。呼吸域は、呼吸細気管支肺胞管、及び肺胞を含む。
【0381】
鼻腔:鼻腔(又は鼻窩)は、顔の中央において鼻の上部及び背後の空気で満たされた大
きな空間である。鼻腔は、鼻中隔と呼ばれる垂直のひれによって2つに分割されている。
鼻腔の両側には、鼻甲介又は鼻介骨と呼ばれる3つの水平の伸び出たもの(outgrowths)
がある。鼻腔の前方には鼻がある一方、後方は、後鼻孔を経由して鼻咽頭に融合している
【0382】
咽頭:鼻腔の直ぐ下(下部)でかつ食道及び喉頭の上に位置する咽喉の部分である。咽
頭は、慣習的に3つの区域、すなわち、鼻咽頭(上咽頭)(咽頭の鼻部分)、咽頭口腔部
(中咽頭)(咽頭の口腔部分)、及び喉頭咽頭(下咽頭)に分割される。
【0383】
6.7 数学用語
この技術の複数の箇所でファジィ論理が用いられている。以下は、範囲[0,1]の「
ファジィ真理値」を出力するファジィメンバシップ関数を示すのに用いられる。0はファ
ジィ偽を表し、1はファジィ真を表す。
【数53】
【0384】
ファジィメンバシップ関数は、以下のように定義される。
【数54】
【0385】
式中、
【数55】
であり、fはファジィ真理値であり、x及びxは実数である。
【0386】
関数「Interp」は、値fがファジィ真理値ではなく実数と解釈されることを除
いて「FuzzyMember」と同じであると定義される。
【0387】
ファジィ真理値のファジィ「Or」は、それらの値のうちの最大値であり、ファジィ真
理値のファジィ「And」は、これらの値のうちの最小値である。これらは、2つ以上の
ファジィ真理値の関数FuzzyOr及びFuzzyAndによって示される。これらの
ファジィ演算の他の一般的な定義は、本技術において同様に機能することが理解されるべ
きである。
【0388】
時定数τを用いた「ゼロに向かう指数関数的減衰」は、時刻t=Tにおいて開始する任
意の減衰期間の間に減衰量Vの値が以下の式によって与えられることを意味する。
【数56】
【0389】
7 利点
チェーンストークス呼吸に関連付けられた呼吸筋系への中枢ドライブにおける振動は、
上気道筋系へのドライブにおける振動に関連付けられる場合があり、上気道閉塞への傾向
を悪化させる。通常、患者努力が高い期間中よりも患者努力が低い期間中の方が高い人工
呼吸器ドライブを用いた、患者を換気することによって呼吸ドライブにおける自律振動の
影響を打ち消すように試みるいずれの方法も、換気補助を送達しようと試みているとき、
上気道を大きく開放する必要があり、そうしない場合、換気補助は、或る程度、多くの場
合は完全に、患者努力が低い又は患者努力がゼロの期間中に効果的でなく、したがって、
患者の換気量を安定させることができない。
【0390】
この上気道を開放した状態に維持する必要があるということは、通常、上気道が常に開
放した状態に維持されるように呼気気道陽圧(EPAP)を設定しようと試みることによ
って対処される。これは、滴定と呼ばれる手法において様々なEPAPレベルにおける気
道の開存性のインジケータを観察しながら、EPAPの或る種の反復調整によって達成す
ることができる。滴定は、熟練を要する通常は高価な操作であり、好ましくは、睡眠検査
室で行われ、上気道閉塞(UAO)を克服するのに十分なEPAPを与えない場合がある
。この理由は、UAOが多くの場合に体位性であり、患者は、滴定夜の間、通常は仰臥姿
勢である最悪のUAOをもたらす姿勢を一度も呈さない場合があるということを含む。鎮
静薬及び他の薬は、上気道に様々な影響を与える場合がある。心不全の度合いが上気道の
浮腫を介して上気道閉塞の度合いに影響を及ぼすという証拠もある。したがって、心不全
の悪化は、滴定夜の間に予期することができない程度に上気道閉塞をより悪化させる場合
がある。
【0391】
したがって、本技術の利点は、CSR及びOSAの組み合わせを、睡眠検査室における
PSG及び/又は滴定の必要なく、患者の自宅で診断及び/又は治療することができると
いうことである。
【0392】
更なる利点は、CSR及びOSAの組み合わせをより効果的にかつ患者の快適さを改善
する方法で治療することができるということである。
【0393】
特に、利点は、補償されていない漏れ等のアーティファクトに応答して目標換気量を不
適切に増加させる自動サーボ人工呼吸器の傾向の影響を打ち消すことである。
【0394】
8 他の特記事項
本特許文書の開示内容の一部分は、著作権保護を受けるマテリアルを含んでいる。著作
権者は、本特許文書又は特許開示内容が特許商標庁の包袋又は記録に現われているときは
、いかなる者によるこの特許文書又は特許開示内容の複製に対しても異議を有しないが、
それ以外については、いかなる著作権も全てこれを留保する。
【0395】
文脈が明らかに別段の規定をしていない限り、値の範囲が提供されている場合には、下
限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間にある各値、及びその明示され
た範囲にある他の任意の明示された値又は間にある値が、本技術の範囲内に包含されるこ
とが理解される。これらの間にある範囲の上限及び下限は、当該間にある範囲に独立して
含まれる場合があり、これらも、本技術の範囲内に包含され、明示された範囲内で任意の
明確に除外された制限に従う。明示された範囲がこれらの上限及び下限の一方又は双方を
含む場合、それらの含まれる上限及び下限の一方又は双方を除外した範囲も本技術に含ま
れる。
【0396】
さらに、単数又は複数の値が、本技術の一部分として実施されるものとして本明細書に
明示されている場合、そのような値は、別段の明示がない限り、近似することができ、そ
のような値は、実際の技術的な実施態様が可能とすることができるか又は必要とする場合
がある程度まで任意の好適な有効桁で利用することができることが理解される。
【0397】
別段の定義がない限り、本明細書に用いられる全ての科学技術用語は、この技術が属す
る技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に
記載された方法及びマテリアルと類似の又は等価ないずれの方法及びマテリアルも、本技
術の実践又は試験において用いることができるが、限られた数の例示の方法及びマテリア
ルが本明細書に記載されている。
【0398】
特定のマテリアルが、構成要素の構築に用いられることが好ましいと特定されたとき、
同様の性質を有する明らかな代替のマテリアルを代替物として用いることができる。さら
に、本明細書に記載したありとあらゆる構成要素は、逆のことが明記されていない限り、
製造することが可能であると理解され、したがって、合わせて又は別々に製造することが
できる。
【0399】
数が特定されていないものは、本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる
とき、文脈が明らかに別段の規定をしていない限り、単数及び複数の等価なものを含むこ
とに留意しなければならない。
【0400】
本明細書で言及した全ての刊行物は、それらの刊行物の主題である方法及び/又はマテ
リアルを開示及び記載しているように引用することによって本明細書の一部をなすものと
する。本明細書において論述した刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示内容につい
てのみ提供される。本明細書におけるいかなるものについても、本技術が先行発明による
そのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さ
らに、提供される刊行物の日付は、実際の公開日とは異なる場合があり、実際の公開日は
、別個に確認することが必要な場合がある。
【0401】
その上、開示内容を解釈する際に、全ての用語は、文脈と一貫性のある最も広い合理的
な方法で解釈されるべきである。特に、「備える」及び「含む」(“comprises” and “
comprising”)という用語は、非排他的な方法で要素、構成要素、又はステップを指すも
のと解釈されるべきであり、参照される要素、構成要素、又はステップが存在することが
できること、利用することができること、又は明確に参照されない他の要素、構成要素、
若しくはステップと組み合わせることができることを示す。
【0402】
詳細な説明において用いられた見出し語は、読み手の参照を容易にするためにのみ含ま
れており、本開示又は特許請求の範囲全体を通じて見られる主題を限定するために用いら
れるべきではない。これらの見出し語は、特許請求の範囲の範囲又は特許請求の範囲の限
定事項を解釈する際に用いられるべきではない。
【0403】
特定の実施形態を参照して本明細書における技術を説明してきたが、これらの実施形態
は、本技術の原理及び適用の単なる例示にすぎないことが理解されるべきである。幾つか
の場合には、術語及びシンボルは、本技術を実施するのに必要とされない特定の詳細を意
味している場合がある。例えば、「第1」及び「第2」という用語が用いられる場合があ
るが、別段の指定がない限り、それらは、何らかの順序を示すことを意図するものではな
く、異なる要素を区別するのに利用される場合がある。さらに、上記方法論におけるプロ
セスステップは、或る順序で説明又は図示される場合があるが、そのような順序付けは必
須ではない。当業者であれば、そのような順序付けを変更することができ、及び/又はそ
れらの態様を同時に行うこともできるし、同期して行うこともできることを認識するであ
ろう。
【0404】
したがって、本技術の趣旨及び範囲から逸脱することなく、非常に多くの変更を例示の
実施形態に行うことができ、他のアレンジを考案することができることが理解されるべき
できである。
なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下の通りである。
請求項1:
サーボ人工呼吸器であって、
近時の補償されていない漏れの測定量が増加するにつれて、目標換気量がよりゆっくり
と上昇するように、前記目標換気量を連続して計算し、
前記目標換気量を達成するように空気の供給の圧力を制御する、
ように構成されている、サーボ人工呼吸器。
請求項2:
呼吸障害を治療するための装置であって、通常の近時の換気量の測定量の調整の割合が
、近時の補償されていない漏れの測定量が増加するにつれて低減されるように、前記通常
の近時の換気量の測定量を計算するように構成されている、呼吸障害を治療するための装
置。
請求項3:
前記近時の補償されていない漏れの測定量が増加するにつれて一般に減少する更新比率
を計算することと、
各入力サンプルの受信時に前記更新比率を累算することと、
前記累算された更新比率が1を超えるときにのみ、前記通常の近時の換気量の測定量に
対する更新量を計算することと、
によって、前記通常の近時の換気量の測定量を計算するように構成されている、請求項2
に記載の装置。
請求項4:
前記通常の近時の換気量の測定量に対する前記更新量は、最後の更新以降の入力サンプ
ルを各サンプルにおける前記更新比率によって重み付けしたものの和として計算される、
請求項3に記載の装置。
請求項5:
前記通常の近時の換気量の測定量に対する前記更新量を計算する際に、前記累算された
更新比率を再初期化することを更に含む、請求項3又は4に記載の装置。
請求項6:
前記通常の近時の換気量の測定量は、瞬時換気量の測定量から計算される、請求項3~
5のいずれか1項に記載の装置。
請求項7:
前記通常の近時の換気量の測定量にローパス換気フィルタを適用することを更に含む、
請求項6に記載の装置。
請求項8:
前記通常の近時の換気量の測定量は、瞬時換気量の測定量に適用されるローパス換気フ
ィルタの前記出力から計算される、請求項3~7のいずれか1項に記載の装置。
請求項9:
呼吸障害を治療するための装置であって、通常の近時の換気量の測定量と目標小数との
積から目標換気量を計算するように構成され、前記目標小数は、前記近時の圧補助に依存
する、呼吸障害を治療するための装置。
請求項10:
前記目標小数は、近時の圧補助の安定性が高まるにつれて減少する、請求項9に記載の
装置。
請求項11:
前記圧補助が第1の近時の期間の間安定しており、該第1の近時の期間よりも大幅に短
い第2の近時の期間の間も安定していた程度を示すファジィ真理変数として前記近時の圧
補助の安定性を計算するように構成されている、請求項10に記載の装置。
請求項12:
各期間にわたる前記圧補助の安定性は、その期間にわたって計算された圧補助の順序統
計量に基づいて計算される、請求項11に記載の装置。
請求項13:
前記ファジィ真理変数は、所定の最小圧補助を超える圧補助の量が前記第2の近時の期
間にわたって僅かではなかった程度を含む、請求項11に記載の装置。
請求項14:
前記ファジィ真理変数は、所定の最小圧補助を超える圧補助の最大値が大きい程度を含
む、請求項11に記載の装置。
請求項15:
呼吸障害を治療するための装置であって、前記近時の圧補助の安定性に応じて増加され
る減少レート定数を用いて、通常の近時の換気量の測定量と目標小数との積から目標換気
量を計算するように構成されている、呼吸障害を治療するための装置。
請求項16:
前記圧補助が第1の近時の期間の間安定しており、該第1の近時の期間よりも大幅に短
い第2の近時の期間の間も安定していた程度を示すファジィ真理変数として前記近時の圧
補助の安定性を計算するように構成されている、請求項15に記載の装置。
請求項17:
各期間にわたる前記圧補助の安定性は、その期間にわたって計算された圧補助の順序統
計量に基づいて計算される、請求項16に記載の装置。
請求項18:
前記減少レート定数は、前記ファジィ真理変数の前記値とともに一般に増加する係数に
よって増加される、請求項16又は17に記載の装置。
請求項19:
前記係数は、1に、前記ファジィ真理変数の前記値の2倍を加えたものである、請求項
18に記載の装置。
請求項20:
呼吸障害を治療するための装置であって、瞬時換気量から目標換気量を計算するように
構成され、前記目標換気量の増加レートは、前記目標換気量の上方スルーレートに対する
上限によって限度が定められる、呼吸障害を治療するための装置。
請求項21:
前記目標換気量は、所定の最小目標換気量によって下方の限度が定められる、請求項9
及び請求項15及び請求項20のいずれか1項に記載の装置。
請求項22:
呼吸障害を治療するための装置であって、
無呼吸又は呼吸低下の検出された症状発現の継続時間を計算することと、
前記計算された継続時間に従って呼気気道陽圧(EPAP)の値を調整することであっ
て、増加する継続時間とともに、前記EPAPの調整された値が、最大EPAP値よりも
大きな値に指数関数的に接近するように、調整することと、
を行うように構成されている、呼吸障害を治療するための装置。
請求項23:
前記指数関数的な増加の前記レート定数は、前記最大EPAP値よりも大きな値が増加
するにつれて減少される、請求項22に記載の装置。
請求項24:
前記EPAPの調整された値を前記最大EPAP値以下になるように制限することを更
に含む、請求項22又は23に記載の装置。
請求項25:
無呼吸又は呼吸低下の検出された症状発現がない場合には、前記EPAP値を最小EP
AP値に向けて減衰させることを更に含む、請求項22~24のいずれか1項に記載の装
置。
請求項26:
呼吸障害を治療するための装置であって、
M字型吸気流量制限の測定量を計算することと、
前記M字型吸気流量制限の計算された測定量に従って呼気気道陽圧(EPAP)値を増
加させることであって、該増加の量が、通常の近時の換気量に対する呼吸別の換気量の比
に依存するように増加させることと、
を行うように構成されている、呼吸障害を治療するための装置。
請求項27:
前記M字型吸気流量制限の計算された測定量がゼロである場合、前記EPAP値を最小
EPAP値に向けて減衰させることを更に含む、請求項26に記載の装置。
請求項28:
前記吸気継続時間が閾値よりも大きい場合、前記EPAP値を最小EPAP値に減衰さ
せることを更に含む、請求項26又は27に記載の装置。
請求項29:
前記増加の量は、前記比が増加するにつれて一般に減少する、請求項26~28のいず
れか1項に記載の装置。
請求項30:
M字型吸気流量制限は、1つは前縁にあり1つは後縁にある2つの局所的なピークと、
該2つのピーク間の比較的平坦部分又はくぼみとを有する吸気流量波形によって特徴付け
られる、請求項26~29のいずれか1項に記載の装置。
請求項31:
呼吸障害を治療するための装置であって、
吸気流量制限のリバースチェアネスの測定量を計算することと、
前記計算された吸気流量制限のリバースチェアネスの測定量に従って呼気気道陽圧(E
PAP)値を増加させることであって、該増加の量が現在の呼吸と直前の呼吸との間のリ
バースチェアネスの整合性に依存するように増加させることと、
を行うように構成されている、呼吸障害を治療するための装置。
請求項32:
前記リバースチェアネスの整合性は、前記現在の呼吸及び前記直前の呼吸について計算
された前記リバースチェアネスの測定量の重み付き幾何平均として計算される、請求項3
1に記載の装置。
請求項33:
前記増加の量は、前記EPAPの現在の値が増加するにつれて、前記現在の呼吸の前記
リバースチェアネスの測定量と、前記現在の呼吸と前記直前の呼吸との間の前記リバース
チェアネスの整合性との間で遷移する変数に比例する、請求項31又は32に記載の装置

請求項34:
前記増加の量は、増加する漏れの量とともに減少する、請求項31~33のいずれか1
項に記載の装置。
請求項35:
前記増加の量は、現在のEPAPの増加する値とともに減少する、請求項31~34の
いずれか1項に記載の装置。
請求項36:
前記吸気流量制限のリバースチェアネスの計算された測定量が閾値よりも小さい場合、
前記EPAP値を最小EPAP値に向けて減衰させることを更に含む、請求項31~35
のいずれか1項に記載の装置。
請求項37:
吸気流量制限のリバースチェアネスは、比較的平坦な部分と、この後に続く後縁にある
単一の局所的なピークとを有する吸気流量波形によって特徴付けられる、請求項31~3
6のいずれか1項に記載の装置。
請求項38:
呼吸障害を治療するための装置であって、
吸気性いびきの測定量を計算することと、
呼気性いびきを検出することと、
呼気性いびきが存在しない場合に、前記吸気性いびきの測定量に従って呼気気道陽圧(
EPAP)値を増加させることと、
を行うように構成されている、呼吸障害を治療するための装置。
請求項39:
前記増加の量は、近時の補償されていない漏れの量が増加するにつれて減少される、請
求項38に記載の装置。
請求項40:
前記近時の補償されていない漏れの量は、前記近時の補償されていない漏れの程度を示
すファジィ真理変数の前記現在の呼吸中の最大値として計算される、請求項39に記載の
装置。
請求項41:
吸気性いびきが存在しない場合又は呼気性いびきが存在する場合、前記EPAP値を最
小EPAP値に向けて減衰させることを更に含む、請求項38~40のいずれか1項に記
載の装置。
請求項42:
呼吸障害を治療するための装置であって、患者の現在の呼吸サイクルの位相を推定する
ように構成され、前記位相の推定値の標準的な変化率に与えられる重みが、前記患者が目
標換気量における換気量又はそれを超える換気量を近時に達成している程度に依存する、
呼吸障害を治療するための装置。
請求項43:
前記患者が目標換気量における換気量又はそれを超える換気量を近時に達成している程
度は、圧補助の現在のレベルが大きい程度を示すファジィ真理変数として計算される、請
求項42に記載の装置。
請求項44:
前記ファジィ真理変数は、圧補助の最小値が増加するにつれて増加する境界に対して計
算される、請求項43に記載の装置。
請求項45:
呼吸障害を治療するための装置であって、
瞬時換気量を目標換気量に増加させるのに十分な圧補助の値と、
総肺胞換気量を目標総肺胞換気量に増加させるのに十分な圧補助の値と、
の組み合わせである値で患者に圧補助を送達するように構成されている、呼吸障害を治療
するための装置。
請求項46:
患者の呼吸低下を検出するための装置であって、
前記患者に送達されている圧補助が大きい程度と、
前記患者の空気流量の絶対値の測定量が目標絶対空気流量と比較して小さい程度と、に
応じて、患者の呼吸低下を検出するための装置。
請求項47:
前記目標絶対空気流量は現在の目標換気量の2倍である、請求項46に記載の装置。
請求項48:
前記絶対空気流量の測定量は、前記空気流量の絶対値に対するローパスフィルタの出力
として計算される、請求項46又は47に記載の装置。
請求項49:
患者のM字型吸気流量制限の測定量を計算するための装置であって、吸気流量波形を吸
気流量波形におけるノッチのロケーションの回りに対称にしたものに基づいて、患者のM
字型吸気流量制限の測定量を計算するための装置。
請求項50:
V字型カーネルの左半分及び右半分との前記吸気空気流量波形の畳み込みの組み合わせ
のピークのロケーションとして前記ノッチのロケーションを計算することを更に含む、請
求項49に記載の装置。
請求項51:
前記組み合わせは、修正された幾何平均である、請求項50に記載の装置。
請求項52:
前記M字型吸気流量制限の測定量は、前記対称にされた波形が第3高調波関数と類似し
ている程度である、請求項49~51のいずれか1項に記載の装置。
請求項53:
前記M字型吸気流量制限の測定量は、前記対称にされた波形の第1高調波及び第3高調
波の電力の和に対する前記対称にされた波形の第3高調波の電力の比として計算される、
請求項52に記載の装置。
請求項54:
M字型吸気流量制限は、1つは前縁にあり1つは後縁にある2つの局所的なピークと、
前記2つのピーク間の比較的平坦な部分又はくぼみとを有する前記吸気流量波形によって
特徴付けられる、請求項49~53のいずれか1項に記載の装置。
請求項55:
前記M字型吸気流量制限の測定量は、前記ノッチロケーションの回りの前記吸気流量波
形の対称性の測定量が閾値未満である場合にゼロに設定される、請求項52~54のいず
れか1項に記載の装置。
請求項56:
前記吸気流量波形の対称性の前記測定量は、前記対称にされた波形の第1の半分及び第
2の半分の前記第3高調波成分のうちの小さい方の、該成分の絶対値の和に対する比とし
て計算される、請求項55に記載の装置。
請求項57:
患者への空気流量の送達における近時の補償されていない漏れの程度に応じて、前記患
者の吸気流量制限のリバースチェアネスの測定量を計算するための装置。
請求項58:
前記リバースチェアネスの測定量は、前記近時の補償されていない漏れの程度を示すフ
ァジィ真理変数の一般に減少する関数に比例する、請求項57に記載の装置。
請求項59:
吸気流量制限のリバースチェアネスは、比較的平坦な部分と、この後に続く後縁にある
単一の局所的なピークとを有する吸気流量波形によって特徴付けられる、請求項57又は
58に記載の装置。
請求項60:
空気流量がインタフェースを介して送達されている患者の吸気性いびきの測定量を計算
するための装置であって、瞬時インタフェース圧力に対するいびきフィルタの出力と前記
瞬時インタフェース圧力に依存する閾値との差分の現在の呼吸の吸気部分にわたる平均と
して前記測定量を計算するように構成されている、装置。
請求項61:
前記平均は、前記患者の呼吸気流量に依存する重み関数によって重み付けされる、請求
項60に記載の装置。
請求項62:
前記重み関数は、低い呼吸気流量及び高い呼吸気流量において低い、請求項61に記載
の装置。
請求項63:
前記閾値は、増加するインタフェース圧力とともに一般に増加する、請求項60~62
のいずれか1項に記載の装置。
請求項64:
空気流量がインタフェースを介して送達されている患者の呼気性いびきを検出するため
の装置であって、現在の呼吸の呼気部分の間の瞬時インタフェース圧力に対するいびきフ
ィルタの出力の継続時間及び強度に関する結合閾値を用いる装置。
請求項65:
前記結合閾値は、いびき強度の所定のクリティカル関数で表される、請求項64に記載
の装置。
請求項66:
前記所定のクリティカルいびき関数は、増加するいびき強度とともに一般に減少する、
請求項65に記載の装置。
請求項67:
前記いびきフィルタの出力の前記強度の逆累積分布関数と前記所定のクリティカルいび
き関数との比較に基づいて呼気性いびきを検出するように構成されている、請求項65又
は66に記載の装置。
請求項68:
呼気性いびきは、前記逆累積分布関数が、最小強度を超えるいびき強度の任意の値にお
ける前記クリティカル逆累積分布関数を超えている場合に検出される、請求項67に記載
の装置。
請求項69:
呼吸障害を治療するための装置であって、
導管及びインタフェースを介して陽圧の空気の供給を患者の気道に送達するように構成
された圧力デバイスと、
コントローラであって、
前記患者の通常の近時の換気量の測定量の調整のレートが、前記導管及び/又は前記
インタフェースにおける近時の補償されていない漏れの測定量が増加するにつれて低減さ
れるように前記通常の近時の換気量の測定量を計算し、
前記呼吸障害を治療するために前記計算された通常の近時の換気量の測定量に応じて
、前記圧力デバイスによって送達される空気の前記供給の前記圧力を制御する、
ように構成されたコントローラと
を備える装置。
請求項70:
患者の呼吸状態を検出するための装置であって、
前記患者の呼吸パラメータを表す信号を提供するように構成された1つ又は複数のセン
サと、
前記呼吸状態を検出するために前記センサからの前記信号を解析するように構成された
プロセッサであって、
前記呼吸状態は呼吸低下であり、
前記呼吸パラメータは絶対空気流量であり、
前記検出は、前記患者に送達されている圧補助が大きい程度と、前記患者の前記絶対
空気流量が目標絶対空気流量と比較して小さい程度とに依存する、
プロセッサと
を備える装置。
請求項71:
呼吸障害を治療する方法であって、
通常の近時の換気量の測定量の調整のレートが、近時の補償されていない漏れの測定量
が増加するにつれて低減されるように前記通常の近時の換気量の測定量を計算するステッ
プ含む方法。
請求項72:
前記計算するステップは、
前記近時の補償されていない漏れの測定量が増加するにつれて一般に減少する更新比率
を計算するステップと、
各入力サンプルの受信時に前記更新比率を累算するステップと、
前記累算された更新比率が1を超えるときにのみ、前記通常の近時の換気量の測定量に
対する更新量を計算するステップと
を含む、請求項71に記載の方法。
請求項73:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項71又は72に記載の呼吸障害を治療する
方法をプロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録さ
れている、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項74:
呼吸障害を治療する方法であって、
通常の近時の換気量の測定量と目標小数との積から目標換気量を計算するステップを含
み、前記目標小数は、近時の圧補助に依存する方法。
請求項75:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項74に記載の呼吸障害を治療する方法をプ
ロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている
、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項76:
呼吸障害を治療する方法であって、
近時の圧補助の安定性に応じて増加される減少レート定数を用いて、通常の近時の換気
量の測定量と目標小数との積から目標換気量を計算するステップを含む、呼吸障害を治療
する方法。
請求項77:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項76に記載の呼吸障害を治療する方法をプ
ロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている
、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項78:
呼吸障害を治療する方法であって、
瞬時換気量から目標換気量を計算するステップを含み、前記目標換気量の増加のレート
は、前記目標換気量の上方スルーレートに対する上限によって限度が定められる方法。
請求項79:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項78に記載の呼吸障害を治療する方法をプ
ロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている
、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項80:
呼吸障害を治療するための装置であって、
無呼吸又は呼吸低下の検出された症状発現の継続時間を計算することと、
前記計算された継続時間に従って呼気気道陽圧(EPAP)の値を調整することであっ
て、増加する継続時間とともに、前記EPAPの調整された値が、最大EPAP値よりも
大きな値に指数関数的に接近するように、調整することと、
を含む、呼吸障害を治療するための装置。
請求項81:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項80に記載の呼吸障害を治療する方法をプ
ロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている
、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項82:
呼吸障害を治療する方法であって、
M字型吸気流量制限の測定量を計算するステップと、
前記M字型吸気流量制限の計算された測定量に従って呼気気道陽圧(EPAP)値を増
加させるステップであって、該増加の量が、通常の近時の換気量に対する呼吸別の換気量
の比に依存するように増加させるステップと
を含む方法。
請求項83:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項82に記載の呼吸障害を治療する方法をプ
ロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている
、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項84:
呼吸障害を治療する方法であって、
吸気流量制限のリバースチェアネスの測定量を計算するステップと、
前記計算された吸気流量制限のリバースチェアネスの測定量に従って呼気気道陽圧(E
PAP)値を増加させるステップであって、該増加の量が現在の呼吸と直前の呼吸との間
のリバースチェアネスの整合性に依存するように増加させるステップとを含む方法。
請求項85:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項84に記載の呼吸障害を治療する方法をプ
ロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている
、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項86:
呼吸障害を治療する方法であって、
吸気性いびきの測定量を計算するステップと、
呼気性いびきを検出するステップと、
呼気性いびきが存在しない場合に、前記吸気性いびきの測定量に従って呼気気道陽圧(
EPAP)値を増加させるステップとを含む方法。
請求項87:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項86に記載の呼吸障害を治療する方法をプ
ロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている
、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項88:
呼吸障害を治療する方法であって、
患者の現在の呼吸サイクルの位相を推定するステップを含み、前記位相の推定値の標準
的な変化率に与えられる重みが、前記患者が目標換気量の換気量又はそれを超える換気量
を近時に達成している程度に依存する、方法。
請求項89:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項88に記載の呼吸障害を治療する方法をプ
ロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている
、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項90:
呼吸障害を治療する方法であって、
瞬時換気量を目標換気量に増加させるのに十分な圧補助の値と、
総肺胞換気量を目標総肺胞換気量に増加させるのに十分な圧補助の値と、
の組み合わせである値で患者に圧補助を送達するステップ
を含む方法。
請求項91:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項90に記載の呼吸障害を治療する方法をプ
ロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている
、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項92:
患者の呼吸低下を検出する方法であって、
前記患者に送達されている圧補助が大きい程度と、
前記患者の空気流量の絶対値の測定量が目標絶対空気流量と比較して小さい程度と、
に応じて前記呼吸低下を検出するステップを含む方法。
請求項93:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項92に記載の患者の呼吸低下を検出する方
法をプロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録され
ている、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項94:
患者のM字型吸気流量制限の測定量を計算する方法であって、吸気流量波形を吸気流量
波形におけるノッチのロケーションの回りに対称にしたものに基づいて、患者のM字型吸
気流量制限の測定量を計算する方法。
請求項95:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項94に記載の患者のM字型吸気流量制限の
測定量を計算する方法をプロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラ
ムコードが記録されている、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項96:
患者への空気流量の送達における近時の補償されていない漏れの程度に応じて、前記患
者の吸気流量制限のリバースチェアネスの測定量を計算する方法。
請求項97:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項96に記載の患者の吸気流量制限のリバー
スチェアネスの測定量を計算する方法をプロセッサに実行させるように構成されたコンピ
ュータプログラムコードが記録されている、コンピュータ可読記憶媒体。
請求項98:
空気流量がインタフェースを介して送達されている患者の吸気性いびきの測定量を計算
する方法であって、
瞬時インタフェース圧力に対するいびきフィルタの出力と前記瞬時インタフェース圧力
に依存する閾値との差分の現在の呼吸の吸気部分にわたる平均を計算するステップを含む
方法。
請求項99:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項98に記載の空気流量がインタフェースを
介して送達されている患者の吸気性いびきの測定量を計算する方法をプロセッサに実行さ
せるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている、コンピュータ可
読記憶媒体。
請求項100:
空気流量がインタフェースを介して送達されている患者の呼気性いびきを検出する方法
であって、
現在の呼吸の呼気部分の間の瞬時インタフェース圧力に対するいびきフィルタの出力の
継続時間及び強度に関する結合閾値を用いるステップを含む方法。
請求項101:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項100に記載の空気流量がインタフェース
を介して送達されている患者の呼気性いびきを検出する方法をプロセッサに実行させるよ
うに構成されたコンピュータプログラムコードが記録されている、コンピュータ可読記憶
媒体。
請求項102:
呼吸障害を治療する方法であって、
導管及びインタフェースを介して陽圧の空気の供給を患者の気道に送達するステップと

前記患者の通常の近時の換気量の測定量の調整のレートが、前記導管及び/又は前記イ
ンタフェースにおける近時の補償されていない漏れの測定量が増加するにつれて低減され
るように前記通常の近時の換気量の測定量を計算するステップと、
前記呼吸障害を治療するために前記計算された通常の近時の換気量の測定量に応じて、
前記空気の供給の前記圧力を制御するステップとを含む方法。
請求項103:
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項102に記載の呼吸障害を治療する方法を
プロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードが記録されてい
る、コンピュータ可読記憶媒体。
【符号の説明】
【0405】
1000 患者
3000 患者インタフェース
3100 構造体
3200 プレナムチャンバ
3300 構造体
3400 通気孔
3600 接続ポート
4000 PAPデバイス
4010 外部ハウジング
4012 上側部分
4014 部分
4015 パネル
4016 シャーシ
4018 取っ手
4020 空気圧ブロック
4100 空気圧構成要素
4110 エアフィルタ
4112 吸入口エアフィルタ
4114 放出口エアフィルタ
4120 マフラ
4122 吸入口マフラ
4124 放出口マフラ
4140 制御可能圧力デバイス
4142 制御可能ブロワ
4144 ブラシレスDCモータ
4160 バック弁
4170 空気回路
4180 補助酸素
4200 電気構成要素
4202 PCBA
4210 電源装置
4220 入力デバイス
4230 プロセッサ
4232 クロック
4240 療法デバイスコントローラ
4245 療法デバイス
4250 保護回路
4260 メモリ
4270 トランスデューサ
4272 圧力トランスデューサ
4274 流量
4276 モータ速度信号
4280 データ通信インタフェース
4282 リモート外部通信ネットワーク
4284 ローカル外部通信ネットワーク
4286 そのようなリモート外部デバイス
4288 ローカル外部デバイス
4290 出力デバイス
4292 ディスプレイドライバ
4294 ディスプレイ
4300 アルゴリズムモジュール
4310 処理モジュール
4312 圧力補償アルゴリズム
4314 通気孔流量
4316 漏れ流量
4318 呼吸流量
4319 アルゴリズム
4320 療法エンジンモジュール
4321 位相決定アルゴリズム
4322 波形決定アルゴリズム
4323 換気量決定
4324 アルゴリズム
4325 アルゴリズム
4326 アルゴリズム
4327 アルゴリズム
4328 目標換気量
4329 療法パラメータ
4330 制御モジュール
4340 故障状態
5000 加湿器
5110 貯水器
5120 加熱板
5250 加湿器コントローラ
7100 方法
7110 ステップ
7120 ステップ
7130 ステップ
7140 ステップ
7150 ステップ
7200 方法
7210 ステップ
7220 ステップ
7300 方法
7310 第1のステップ
7320 ステップ
7330 ステップ
7335 ステップ
7340 ステップ
7350 ステップ
7360 ステップ
7370 ステップ
7400 方法
7410 ステップ
7415 ステップ
7420 状態検出ステップ
7425 ステップ
7430 ステップ
7435 ステップ
7440 ステップ
7445 ステップ
7450 ステップ
7455 ステップ
7460 ステップ
7470 ステップ
7495 ステップ
7500 無呼吸検出方法
7510 ステップ
7520 ステップ
7530 ステップ
7540 ステップ
7550 ステップ
7560 ステップ
7600 方法
7610 ステップ
7620 ステップ
7630 ステップ
7700 方法
7710 ステップ
7720 ステップ
7730 ステップ
7735 ステップ
7740 ステップ
7750 ステップ
7760 ステップ
7770 ステップ
7780 ステップ
7790 ステップ
7800 方法
7810 ステップ
7820 ステップ
7830 ステップ
7840 ステップ
7850 ステップ
7860 ステップ
7870 ステップ
7900 方法
7910 ステップ
7920 ステップ
7930 ステップ
7940 ステップ
7950 ステップ
71000 方法
71010 ステップ
71020 ステップ
71030 ステップ
71040 ステップ
71050 ステップ
71060 ステップ
71070 ステップ
71080 ステップ
71100 方法
71110 ステップ
71120 ステップ
71130 ステップ
71140 ステップ
71150 ステップ
71160 ステップ
71170 ステップ
71180 ステップ
71200 方法
71210 最初のステップ
71220 ステップ
71230 ステップ
71240 ステップ
71250 ステップ
71260 ステップ
71300 方法
71320 ステップ
71330 ステップ
71340 ステップ
71350 ステップ
71360 ステップ
71370 ステップ
71400 方法
71410 ステップ
71420 ステップ
71430 ステップ
71440 次のステップ
71450 ステップ
71460 ステップ
71500 方法
71510 依存フィルタ
71520 ステップ
71530 次のステップ
71540 ステップ
71550 現在の出力サンプルステップ
71560 ステップ
71570 ステップ
71580 ステップ
71590 換気フィルタ
71600 方法
71610 ステップ
71620 ステップ
71630 次のステップ
71640 ステップ
71650 ステップ
71700 方法
71710 ステップ
71720 ステップ
71730 ステップ
71740 ステップ
71750 ステップ
71760 ステップ
71790 ステップ
71795 オプションのステップ
図1a
図2a
図2b
図3a
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図6g
図6h
図6i
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図7f
図7g
図7h
図7i
図7j
図7k
図7l
図7m
図7n
図7o
図7p
図7q
図8