(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】スイッチングモジュール、電力変換装置、及び、電力変換装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240826BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2022150476
(22)【出願日】2022-09-21
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】森下 謙史郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 充孝
(72)【発明者】
【氏名】山中 泰礼
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-525716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0008772(US,A1)
【文献】特開2020-167749(JP,A)
【文献】米国特許第06774465(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換回路に用いられるスイッチングモジュールであって、
互いに直交する第1方向及び第2方向に延びるように形成されたケース部材と、
前記第1方向及び前記第2方向に直交する積層方向において前記ケース部材と対向するように配置された1以上のスイッチング素子と、
前記ケース部材を介して前記1以上のスイッチング素子の少なくとも一部を前記積層方向の一方側に向かって押圧可能な押圧部材と、を備え、
前記1以上のスイッチング素子は、前記第2方向において前記ケース部材の両端部のうちの一方の端部寄りに配置されている、スイッチングモジュール。
【請求項2】
前記押圧部材には、前記第2方向において前記両端部のうちの他方の端部と前記1以上のスイッチング素子との間に位置し、前記スイッチングモジュールを固定するための貫通部が形成されている、請求項1に記載のスイッチングモジュール。
【請求項3】
前記1以上のスイッチング素子は、複数のスイッチング素子であり、
前記複数のスイッチング素子は、前記第1方向に沿って並んだ状態で配置されている、請求項2に記載のスイッチングモジュール。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記複数のスイッチング素子のうちの2以上の素子を押圧可能に形成されており、
前記押圧部材は、前記貫通部が形成された接続部分と、前記2以上の素子をそれぞれ押圧するように構成され、前記第1方向において互いに離れた状態で前記接続部分に接続された2以上の押圧部分と、を有する、請求項3に記載のスイッチングモジュール。
【請求項5】
前記ケース部材は、前記積層方向において開口部分が互いに逆向きの第1収容部と第2収容部とを有し、
前記押圧部材は、前記第1収容部に設けられており、
前記1以上のスイッチング素子は、前記第2収容部に設けられている、請求項1に記載のスイッチングモジュール。
【請求項6】
前記1以上のスイッチング素子に含まれるスイッチング素子は、本体部分と、複数のリード端子とを有し、
前記複数のリード端子のそれぞれの少なくとも一部分が、前記ケース部材を貫通して、前記第1方向及び前記第2方向に交差する方向に沿って延びており、
前記複数のリード端子は、前記第1方向に延びるライン上に並んでいる、請求項1に記載のスイッチングモジュール。
【請求項7】
前記第2方向において、前記一方の端部、前記複数のリード端子、及び、前記本体部分が、この順に並んでいる、請求項6に記載のスイッチングモジュール。
【請求項8】
前記押圧部材を覆うように、前記ケース部材に取り付けられたカバー部材を更に備える、請求項1に記載のスイッチングモジュール。
【請求項9】
前記カバー部材は、前記押圧部材を覆う天板と、前記天板のうちの前記押圧部材と対向する面とは反対側の上面に設けられ、前記スイッチングモジュールが取り付けられる部材に形成された穴に嵌合可能な固定部と、を有する、請求項8に記載のスイッチングモジュール。
【請求項10】
前記1以上のスイッチング素子は、複数のスイッチング素子であり、
前記電力変換回路は、三相交流を出力する変換回路であり、
前記複数のスイッチング素子は、三相交流における1つの相に関する前記電力変換回路の1つのアームを構成することが可能である、請求項1に記載のスイッチングモジュール。
【請求項11】
前記1以上のスイッチング素子は、複数のスイッチング素子であり、
前記複数のスイッチング素子のそれぞれは、前記電力変換回路におけるアームの互いに対応する部位に配置される素子である、請求項1に記載のスイッチングモジュール。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のスイッチングモジュールと、
前記スイッチングモジュールが固定されるヒートシンクと、
前記1以上のスイッチング素子に含まれる1以上のリード端子が電気的に接続されている回路基板と、を備え、
前記スイッチングモジュールは、前記1以上のスイッチング素子の少なくとも一部が前記押圧部材により前記ヒートシンクに向かって押された状態で前記回路基板と共に前記ヒートシンクに対して固定されている、電力変換装置。
【請求項13】
前記回路基板は、互いに逆向きの第1主面及び第2主面を有し、
前記電力変換装置は、前記第1主面に設けられたコンデンサを更に備え、
前記スイッチングモジュールは、前記第2主面に対向するように設けられており、
前記第1主面に直交する方向から見て、前記コンデンサの少なくとも一部は、前記スイッチングモジュールと重なるように配置されている、請求項12に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記回路基板は、互いに逆向きの第1主面及び第2主面を有し、
前記電力変換装置は、前記1以上のスイッチング素子に含まれる、前記電力変換回路における主回路用のリード端子に電気的に接続されるブスバーを更に備え、
前記ブスバーは、前記第1主面に対して交差した状態で前記第1主面に設けられている、請求項12に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記回路基板では、前記1以上のスイッチング素子に含まれる1以上のリード端子の近傍において前記第1方向に沿って延びる仮想ラインを境界として、高圧領域と低圧領域とに区画されており、
前記高圧領域は、前記電力変換回路の主回路が形成される領域であり、
前記低圧領域は、前記主回路よりも低い電圧で動作する部品が配置される領域である、請求項12に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記回路基板は、互いに逆向きの第1主面及び第2主面を有し、
前記電力変換装置は、前記1以上のスイッチング素子に含まれる、前記主回路用のリード端子に電気的に接続されるブスバーを更に備え、
前記ブスバーは、前記仮想ライン上に位置し、且つ、前記第1主面に対して交差した状態で、前記第1主面に設けられている、請求項15に記載の電力変換装置。
【請求項17】
スイッチングモジュールを組み立てる第1組立工程と、
前記スイッチングモジュールを回路基板に取り付ける取付工程と、
前記取付工程後に、前記回路基板においてはんだ付けを行う基板工程と、
前記基板工程後に、前記回路基板に取り付けられた状態の前記スイッチングモジュールを、ヒートシンクに対して固定する第2組立工程と、を含む、電力変換装置の製造方法であって、
前記第1組立工程は、
1以上のスイッチング素子、互いに直交する第1方向及び第2方向に延びるように形成されたケース部材、及び、前記1以上のスイッチング素子の少なくとも一部を押圧可能な押圧部材を準備することと、
前記第1方向及び前記第2方向に直交する積層方向において前記ケース部材と対向し、且つ、前記第2方向において前記ケース部材の両端部のうちの一方の端部寄りに位置するように、前記1以上のスイッチング素子を配置することと、
前記積層方向において前記ケース部材を介して前記1以上のスイッチング素子の少なくとも一部と重なるように、前記押圧部材を配置することと、を含み、
前記第2組立工程は、前記1以上のスイッチング素子の少なくとも一部が前記押圧部材により前記ヒートシンクに向かって押されるように、前記スイッチングモジュールを前記回路基板と共に前記ヒートシンクに対して固定することを含む、電力変換装置の製造方法。
【請求項18】
前記1以上のスイッチング素子は、複数のスイッチング素子であり、
前記押圧部材には、前記スイッチングモジュールを固定するための貫通部が形成されており、
前記第1組立工程において前記1以上のスイッチング素子を配置することは、前記第1方向に沿って並ぶように前記複数のスイッチング素子を配置することを含み、
前記第1組立工程において前記押圧部材を配置することは、前記貫通部が前記第2方向において前記両端部のうちの他方の端部と前記複数のスイッチング素子との間に位置するように、前記押圧部材を配置することを含み、
前記第2組立工程において前記スイッチングモジュールを前記回路基板と共に前記ヒートシンクに対して固定することは、少なくとも前記貫通部内に配置した固定部材によって、前記スイッチングモジュールを前記ヒートシンクに対して固定することを含む、請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチングモジュール、電力変換装置、及び、電力変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヒートシンクと、電子部品を収容するケースと、電子部品をヒートシンク側に押圧する押圧部材と、を有する電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、装置の小型化に有用なスイッチングモジュール、電力変換装置、及び、電力変換装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るスイッチングモジュールは、電力変換回路に用いられるモジュールである。このスイッチングモジュールは、第1方向及び第2方向に延びるように形成されたケース部材と、第1方向及び第2方向に直交する積層方向においてケース部材と対向するように配置された1以上のスイッチング素子と、ケース部材を介して1以上のスイッチング素子の少なくとも一部を積層方向の一方側に向かって押圧可能な押圧部材と、を備える。1以上のスイッチング素子は、第2方向においてケース部材の両端部のうちの一方の端部寄りに配置されている。
【0006】
本開示の一側面に係る電力変換装置の製造方法は、スイッチングモジュールを組み立てる第1組立工程と、スイッチングモジュールを回路基板に取り付ける取付工程と、取付工程後に、回路基板においてはんだ付けを行う基板工程と、基板工程後に、回路基板に取り付けられた状態のスイッチングモジュールを、ヒートシンクに対して固定する第2組立工程と、を含む製造方法である。第1組立工程は、1以上のスイッチング素子、互いに直交する第1方向及び第2方向に延びるように形成されたケース部材、及び、1以上のスイッチング素子の少なくとも一部を押圧可能な押圧部材を準備することと、第1方向及び第2方向に直交する積層方向においてケース部材と対向し、且つ、第2方向においてケース部材の両端部のうちの一方の端部寄りに位置するように、1以上のスイッチング素子を配置することと、積層方向においてケース部材を介して1以上のスイッチング素子の少なくとも一部と重なるように、押圧部材を配置することと、を含む。第2組立工程は、1以上のスイッチング素子の少なくとも一部が押圧部材によりヒートシンクに向かって押されるように、スイッチングモジュールを回路基板と共にヒートシンクに対して固定することを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、装置の小型化に有用なスイッチングモジュール、電力変換装置、及び、電力変換装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、電力変換装置を備える発電システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、スイッチ回路の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、電力変換装置の構成の一例を模式的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、回路基板におけるレイアウトの一例を模式的に示す上面図である。
【
図5】
図5は、スイッチングモジュールの一例を模式的に示す分解斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、ケース部材の一例を模式的に示す下面図である。
図6(b)は、ケース部材にスイッチング素子が収容された状態の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7(a)は、カバー部材の一例を模式的に示す上面図である。
図7(b)及び
図7(c)は、カバー部材に設けられた固定部の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8(a)は、スイッチングモジュールの一例を模式的に示す斜視図である。
図8(b)は、スイッチングモジュールの一例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、回路基板におけるレイアウトの一例を模式的に示す上面図である。
【
図10】
図10(a)及び
図10(b)は、電力変換装置の製造過程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。一部の図面には、X軸、Y軸、及び、Z軸で規定される直交座標系が示される。
【0010】
[電力変換装置の回路構成]
図1に示される電力変換装置1は、直流(直流電流)を交流(交流電流)に変換する装置である。電力変換装置1は、例えば、太陽光発電システムに用いられる。電力変換装置1を備える太陽光発電システムは、発電装置6において太陽光の入射に応じて発生する直流を、電力系統8に対応する交流に変換し、電力系統8に交流を出力するシステムである。電力系統8は、一般家庭及び工場等の需要家に交流電力を供給する系統である。電力系統8は、電力会社等により運営される商用の電力系統であってもよい。電力系統8に対応する交流は、例えば、三相交流であり、U相8Uと、V相8Vと、W相8Wとを有する。V相8Vは、接地されていてもよい。
【0011】
発電装置6は、直流電源の一例であり、太陽光の入射に応じて直流を生成し、生成した直流を正極6P及び負極6Nに出力する。電力変換装置1は、発電装置6が生成した直流を、電力系統8に対応する交流に変換する。なお、電力変換装置1は、発電装置6が生成した直流を昇圧したうえで、電力系統8に対応する交流に変換してもよい。電力変換装置1は、回路構成として、電力変換回路2と、制御回路4とを有する。
【0012】
電力変換回路2は、発電装置6が生成した直流を交流に変換して電力系統8に出力する回路である。電力変換回路2は、三相交流を電力系統8に出力する回路であってもよい。電力変換回路2は、直流を昇圧する回路を含んでいてもよい。電力変換回路2は、例えば、第1点11と、第2点12と、第3点13と、第1コンデンサ14と、第2コンデンサ15と、スイッチング回路20とを有する。第1点11は、発電装置6の正極6Pに接続される。第2点12は、発電装置6の負極6Nに接続される。第3点13は、第1コンデンサ14を介して第1点11に接続され、第2コンデンサ15を介して第2点12に接続される。
図1においては、1個の第1コンデンサ14が示されているが、第1コンデンサ14は、互いに並列に接続された複数個のコンデンサによって構成されてもよい。同様に、第2コンデンサ15は、互いに並列に接続された複数個のコンデンサによって構成されてもよい。
【0013】
スイッチング回路20は、インバータ回路である。スイッチング回路20は、複数のスイッチング素子によって、一次側である発電装置6と、二次側である電力系統8との間の接続状態を変更することで、発電装置6が生成した直流を交流に変換する。スイッチング回路20が有する複数のスイッチング素子それぞれは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング回路20が有するスイッチング素子は、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のIGBT以外のスイッチ素子であってもよい。複数のスイッチング素子それぞれでは、ゲート駆動信号に応じてオン状態及びオフ状態が切り替わる。
【0014】
一例では、スイッチング回路20は、第3点13を電力系統8のいずれか1つの相(例えばU相8U)に接続した状態を維持しつつ、第1点11及び第2点12のそれぞれと電力系統8の残りの2つの相(例えばV相8V及びW相8W)との間を接続及び遮断することで、電力系統8に対応する三相交流を生成する。スイッチング回路20は、3レベルのインバータ回路であってもよい。
図1には、スイッチング回路20が、3レベル双方向スイッチ方式である場合の回路構成が例示されている。スイッチング素子がIGBTである場合、スイッチング素子と電力系統8との間に流れる電流が、スイッチング素子のコレクタからエミッタに向かって流れる。スイッチング回路20は、U相8Uに対応する複数のスイッチング素子と、W相8Wに対応する複数のスイッチング素子とを含んでもよい。
【0015】
U相8Uに対応する複数のスイッチング素子は、スイッチング素子21U、スイッチング素子22U、スイッチング素子23U、及びスイッチング素子24Uを含む。スイッチング回路20は、接続点17Uを有しており、接続点17Uは、スイッチング素子21Uを介して第1点11に接続される。接続点17Uは、スイッチング素子22U及びスイッチング素子23Uを介して第3点13に接続される。スイッチング素子22Uとスイッチング素子23Uとは、互いのエミッタ同士が接続されるように、直列に接続されている。
図1に示される例とは異なり、スイッチング素子22U及びスイッチング素子23Uは互いのコレクタ同士が接続されてもよく、これらの一対のスイッチング素子が逆阻止型である場合に、一対のスイッチング素子が逆並列接続されてもよい。接続点17Uは、スイッチング素子24Uを介して第2点12に接続される。さらに接続点17Uは、電力系統8のU相8Uに接続される。
【0016】
W相8Wに対応するスイッチ群は、スイッチング素子21W、スイッチング素子22W、スイッチング素子23W、及びスイッチング素子24Wを含む。スイッチング回路20は、接続点17Wを有しており、接続点17Wは、スイッチング素子21Wを介して第1点11に接続される。接続点17Wは、スイッチング素子22W及びスイッチング素子23Wを介して第3点13に接続される。スイッチング素子22Wとスイッチング素子23Wとは、互いにエミッタ同士が接続されるように、直列に接続されている。
図1に示される例とは異なり、スイッチング素子22W及びスイッチング素子23Wは互いのコレクタ同士が接続されてもよく、これらの一対のスイッチング素子が逆阻止型である場合に、一対のスイッチング素子が逆並列接続されてもよい。接続点17Wは、スイッチング素子24Wを介して第2点12に接続される。さらに接続点17Wは、電力系統8のW相8Wに接続される。
【0017】
第3点13は、スイッチング回路20のいずれのスイッチング素子も介さずに、電力系統8のV相8Vに接続される。なお、接続点17UとU相8Uとの間、接続点17WとW相8Wとの間、及び、第3点13とV相8Vとの間に、開閉器及びフィルタ等の他の回路要素が設けられてもよい。
【0018】
スイッチング素子21U、スイッチング素子22U、スイッチング素子23U、及びスイッチング素子24Uから成るスイッチ群(以下、「スイッチ群25U」と称する。)は、インバータ回路において1つのアームを構成可能である。スイッチング素子21W、スイッチング素子22W、スイッチング素子23W、及びスイッチング素子24Wから成るスイッチ群(以下、「スイッチ群25W」と称する)は、インバータ回路において1つのアームを構成可能である。スイッチング素子21U及びスイッチング素子21Wは、それぞれのアームにおいて互いに対応する部位に配置され、互いに同じ機能(役割)を有する。スイッチング素子22Uとスイッチング素子22W、スイッチング素子23Uとスイッチング素子23W、及び、スイッチング素子24Uとスイッチング素子24Wのそれぞれも同様に、それぞれのアームにおいて互いに対応する部位に配置され、互いに同じ機能(役割)を有する。
【0019】
図1では、U相8Uに関して、1つのスイッチ群25Uが記載されている。U相8Uに関するアームが、
図2に示されるように、複数(
図2では3つ)のスイッチ群25Uによって構成されてもよい。1つのスイッチ群25Uは、インバータ回路においてU相8Uに関するアームを構成する(機能させる)ことが可能な最小単位である。スイッチ群25Uの個数は、例えば、電力変換回路2の主回路における容量(例えば、最大電流値)に応じて選択される。第1点11及び第2点12の間において、複数のスイッチ群25Uに含まれる複数組のスイッチング素子21U及びスイッチング素子24Uが、互いに並列に接続されてもよい。第3点13及び接続点17Uの間において、複数のスイッチ群25Uに含まれる複数組のスイッチング素子22U及びスイッチング素子23Uが、互いに並列に接続されてもよい。
【0020】
複数のスイッチ群25Uにおける複数のスイッチング素子21Uは、1つのアームにおいて互いに対応する部位に配置されており、互いに同じ機能(役割)を有する。複数のスイッチ群25Uにおける複数のスイッチング素子22U、複数のスイッチング素子23U、及び、複数のスイッチング素子24Uのそれぞれも、複数のスイッチング素子21Uと同様に、1つのアームにおいて互いに対応する部位に配置されており、互いに同じ機能(役割)を有する。W相8Wに関するインバータ回路のアームが、U相8Uに関するアームと同様に、1つのスイッチ群25W又は複数のスイッチ群25Wを含んでもよい。1つのスイッチ群25Wは、インバータ回路においてW相8Wに関するアームを構成する(機能させる)ことが可能な最小単位である。
【0021】
図1に戻り、制御回路4は、電力系統8に対応する交流を生成し、生成した交流を電力系統8に出力するように電力変換回路2を制御する。制御回路4は、例えば、、発電装置6が発電し得る最大電力に基づいて、電力系統8に対応した交流を生成するようにスイッチング回路20を制御する。制御回路4は、スイッチング回路20を制御する際に、スイッチング回路20に含まれる複数のスイッチング素子それぞれに、ゲート駆動信号を出力する。
【0022】
[電力変換装置の装置構成]
続いて、
図3~
図9を用いて、上述した電力変換回路2及び制御回路4を備える電力変換装置1の装置構成(電力変換装置1を構成する各種の部材)について説明する。
図3に示されるように、電力変換装置1は、例えば、回路体30と、筐体92と、カバー94と、絶縁シート96と、ヒートシンク98と、を備える。
図3では、説明のために電力変換装置1に含まれる各部材が分解されて描かれており、電力変換装置1の一部の部材は省略されている。
【0023】
回路体30、絶縁シート96、及びヒートシンク98は、1つの方向において積層されている。以下、回路体30、絶縁シート96、及びヒートシンク98が積層される方向(並ぶ方向)を「Z軸方向」とする。Z軸方向(積層方向)において、回路体30、絶縁シート96、及び、ヒートシンク98が、この順に並んで積層されている。本開示では、Z軸方向が上下方向に略一致し、回路体30がヒートシンク98に対して上方に位置するように電力変換装置1が配置された状態を基準にして、電力変換装置1の各部材について説明する。また、電力変換装置1が組み立てられた状態での各部材について説明する。ヒートシンク98から回路体30に向かう方向を「上」又は「上方」と定義し、回路体30からヒートシンク98に向かう方向を「下」又は「下方」と定義する。
【0024】
回路体30は、電力変換装置1における電力変換回路2の主回路の少なくとも一部、及び、制御回路4の少なくとも一部を形成する部材である。回路体30は、回路基板32を有する。回路体30では、各種の電子部品、及び、複数の電子部品がまとめられて形成された部品モジュールが回路基板32に搭載されている。回路基板32は、例えば、矩形状に形成されたプリント基板である。回路基板32は、Z軸方向に対して直交した状態で配置されてもよい。回路基板32は、Z軸方向において、互いに逆向きの一対の主面を有する。以下、回路体30の回路基板32のうち上を向く一方の主面(部品搭載面)を「表面32a」とし、回路基板32のうちの下を向く他方の主面(部品搭載面)を「裏面32b」とする。また、回路基板32の1つの外縁(例えば、長辺)が延びる方向を「X軸方向」とし、回路基板32のX軸方向に沿う外縁と直交する他の外縁(例えば、短辺)が延びる方向を「Y軸方向」とする。回路体30の詳細については、後述する。
【0025】
筐体92は、回路体30を収容する部材である。筐体92は、底壁92aと、周壁92bとを含む。底壁92aは、矩形状に形成されており、X軸方向及びY軸方向に延びている。周壁92bは、底壁92aの周縁部から上方に延びており、底壁92aと共に収容空間を形成する。カバー94は、底壁92aに対応する形状を有しており、筐体92の収容空間を閉じるように、周壁92bの上端部に取り付けられる。筐体92の底壁92aには、回路基板32に対応する形状を有する開口92cが形成されている。
【0026】
絶縁シート96は、回路体30のZ軸方向における一方側に重ねられている。絶縁シート96が開口92cから筐体92の収容空間の外に露出した状態で、回路体30及び絶縁シート96が、底壁92aに取り付けられる。絶縁シート96は、回路体30とヒートシンク98との間の絶縁を維持する機能を有する。
【0027】
ヒートシンク98は、回路体30で発生する熱を放出して、回路体30を冷却する。ヒートシンク98には、回路体30が固定される。ヒートシンク98は、例えば、ベース部98aと、ベース部98aに設けられた複数の放熱フィン98bと、を含む。ベース部98aは、開口92cに対応するように矩形状に形成されている。ヒートシンク98は、開口92cにおいてベース部98aが絶縁シート96と対向するように、底壁92aの外面に取り付けられる。ヒートシンク98に対して、回路体30が絶縁シート96を介して固定されることによって、回路体30で発生する熱がヒートシンク98に伝達し、回路体30からの放熱(回路体30の冷却)が行われる。
【0028】
(スイッチングモジュール)
回路体30は、複数のスイッチングモジュール40を有する。
図4に示されるように、複数のスイッチングモジュール40は、回路基板32の裏面32b(第2主面)に対向するように設けられている。
図4においては、回路体30を上方から見た状態が模式的に示されており、回路基板32の表面32aに設けられた各種の電子部品等は省略されている。複数のスイッチングモジュール40は、互いに同様の形状を有する。以下では、1つのスイッチングモジュール40の構造を説明した後に、回路基板32上のレイアウトについて説明する。
【0029】
図5には、1つのスイッチングモジュール40が、説明のために、分解された状態で示されている。スイッチングモジュール40は、電力変換回路2に用いられるモジュールである。スイッチングモジュール40は、電力変換回路2のスイッチング回路20に含まれる1以上のスイッチング素子と素子以外の部材とがパッケージ化されて形成される。スイッチングモジュール40に含まれるスイッチング素子(各スイッチング素子)は、個別に製造されたディスクリート部品(素子単体)である。以下では、4個のスイッチング素子が、他の部材と共に1つのモジュールとしてパッケージ化される場合について、U相8Uのアームに用いられるスイッチングモジュール40を例にして説明する。
【0030】
スイッチングモジュール40は、例えば、ケース部材50と、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uと、押圧部材60,60(2個の押圧部材)と、カバー部材70と、を備える。Z軸方向において、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uから成るスイッチ群、ケース部材50、押圧部材60、及び、カバー部材70が、下方からこの順で配置されている。Z軸方向において、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uは、互いに同じ位置に配置されてもよい。スイッチングモジュール40において、スイッチング素子と他の部材との位置関係は、特に説明がない限り、スイッチング素子の本体部分(リード端子を除いた部分)と、他の部材との位置関係を意味する。なお、ケース部材50と押圧部材60とは一体構造であってもよい。
【0031】
ケース部材50は、スイッチング素子と押圧部材60との間の絶縁を維持し、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uと押圧部材60との位置を規制する部材である。ケース部材50は、絶縁性を有する材料(例えば、樹脂)によって形成されている。ケース部材50は、全体として、板状に形成されており、平面視(上方から見ること)において矩形状である。ケース部材50は、X軸方向(第1方向)及びY軸方向(第2方向)に延びるように形成されている。ケース部材50のX軸方向における長さは、ケース部材50のY軸方向における長さよりも長くてもよい。
【0032】
ここで、ケース部材50のY軸方向における両端部のうちの一方の端部を「端部50a」と表記し、他方の端部を「端部50b」と表記する。ケース部材50には、端部50aから、Y軸方向における中央と端部50bとの間の位置まで、Y軸方向に沿って延びる複数(3個)のスリット51が形成されている。3個のスリット51のそれぞれは、Z軸方向においてケース部材50(ケース部材50の本体部分)を貫通している。3個のスリット51は、X軸方向において等間隔に並んでおり、ケース部材50のうちの端部50aを含む3/4程度の一部を、4つの分割部分52に分割する。4つの分割部分52は、4個のスイッチング素子に対応するように形成されている。
【0033】
ケース部材50は、載置面53aと、周壁53bとを有する。載置面53aは、上方を向き、X軸及びY軸方向に沿った平面である。載置面53aは、ケース部材50のうちのY軸方向における端部50aの近傍部分を除いた大部分に形成されており、押圧部材60を支持する面である。周壁53bは、載置面53aの周縁部において、上方に向かって載置面53aから突出するように形成されている。周壁53bのZ軸方向における長さは、押圧部材60の厚みと同程度であってもよい。載置面53a及び周壁53bによって、開口部分が上方を向く収容部53が構成される。収容部53は、押圧部材60を収容するための領域を形成する部分である。
【0034】
ケース部材50は、複数(2個)の位置決め部54を有する。複数の位置決め部54は、複数の押圧部材60にそれぞれ対応している。複数の位置決め部54それぞれは、載置面53aに設けられており、載置面53aから上方に突出している。例えば、載置面53aのうちの、ケース部材50のX軸方向における一端から数えて2番目と4番目との分割部分52を形成する部分に、複数の位置決め部54が設けられている。位置決め部54は、円柱状に形成されていてもよい。複数の位置決め部54それぞれは、押圧部材60のX軸方向及びY軸方向の位置を規制する部分である。
【0035】
図6(a)には、ケース部材50を下方から見た場合の図が示されている。複数の分割部分52それぞれは、対向面56aと、周壁56bとを含む。対向面56aは、下方を向き、X軸及びY軸方向に沿った平面である。対向面56aは、スイッチング素子の本体部分と対向した状態で、上記本体部分に接触する。周壁56bは、対向面56aの周縁部において、対向面56aから下方に向かって突出するように形成されている。複数の分割部分52それぞれの対向面56aと周壁56bとによって、開口部分が下方を向く収容部56(第2収容部)が形成される。収容部56は、複数のスイッチング素子を収容するための領域を形成する部分である。収容部56は、複数のスイッチング素子を個別に収容可能であってもよい。
図6(a)においては、1つのスイッチング素子が収容される部分が、収容部56と同じ符号「56」を用いて示されている。以上のように、ケース部材50は、Z軸方向において開口部分が互いに逆向きの収容部53(第1収容部)及び収容部56(第2収容部)を有する。
【0036】
ケース部材50には、複数の分割部分52のそれぞれにおいて、Z軸方向において分割部分52を貫通する複数の挿入孔58が形成されている。複数の挿入孔58は、載置面53aと重ならない部分(載置面53aが形成されていない部分)に位置する。複数の挿入孔58は、分割部分52の端部50a寄りの先端部分に位置する。複数の挿入孔58は、スイッチング素子の複数のリード端子に対応するように設けられる。1つの挿入孔58には、スイッチング素子のいずれか1つのリード端子が挿入される。Y軸方向において、1つの分割部分52に形成された複数の挿入孔58(全ての挿入孔58)は、互いに同じ位置に形成されている。複数の(全ての)分割部分52の間において、複数の挿入孔58のY軸方向における位置は互いに同じである。
【0037】
図5に戻り、ケース部材50には、載置面53aが形成されている位置において、Z軸方向においてケース部材50を貫通する複数の貫通穴59が形成されている。複数の貫通穴59は、複数の押圧部材60にそれぞれ対応している。貫通穴59は、スイッチングモジュール40をヒートシンク98に対して固定するために設けられる。貫通穴59は、Y軸方向において、スリット51とは異なる位置に形成されている。1つの貫通穴59は、X軸方向において、ケース部材50の一端から数えて1番目に位置するスリット51と同じ位置に形成されている。他の1つの貫通穴59は、X軸方向において、ケース部材50の一端から数えて3番目に位置するスリット51と同じ位置に形成されている。
【0038】
スイッチングモジュール40では、U相8Uに関する1つのスイッチ群25Uに含まれる全ての種類のスイッチング素子がパッケージ化される。すなわち、
図5に示される例では、スイッチングモジュール40に含まれる4個のスイッチング素子が、三相交流における1つの相(U相)に関する電力変換回路2の1つのアームを構成することが可能である。これらの4個のスイッチング素子は、3レベルインバータ回路の1つのアームにおける4つの部位(全ての部位)にそれぞれ対応する。1つのアームにおける部位は、スイッチング階層とも称される。
【0039】
スイッチング素子21U,22U,23U,24Uは、X軸方向に沿って並んだ状態で、Z軸方向においてケース部材50と対向するように配置されている。スイッチング素子21U,22U,23U,24UのY軸方向における位置は、互いに同じであってもよい。スイッチング素子21U,22U,23U,24Uは、例えば、ケース部材50のX軸方向における一端から、この順で並んで配置されている。スイッチング素子21U,22U,23U,24Uは、収容部56に設けられてもよい。スイッチング素子21U,22U,23U,24Uは、例えば、4つの分割部分52に個別に収容されるように、収容部56に設けられている。
【0040】
スイッチング素子21U,22U,23U,24Uは、互いに同様の形状を有していてもよい。スイッチング素子21U,22U,23U,24Uのそれぞれは、本体部分28と、複数(3個)のリード端子29とを含む。本体部分28は、直方体状に形成されている。一例では、本体部分28の最も大きい一対の面がX軸及びY軸方向に沿うように配置される。Z軸方向から見て、本体部分28は長方形であり、その長辺がY軸方向に沿い、その短辺がX軸方向に沿うように本体部分28が配置されている。
【0041】
複数のリード端子29のそれぞれの少なくとも一部分(各リード端子29の少なくとも一部分)は、X軸方向及びY軸方向に交差する方向に沿って延びるように形成されている。一例では、複数のリード端子29は、本体部分28のうちのY軸方向の一方側を向く面に接続されている。リード端子29は、Y軸方向に沿って延びる第1部分と、Z軸方向に沿って延びる第2部分とを含む。上記第1部分の一端は、本体部分28に接続されており、第1部分の他端には上記第2部分の一端が接続されている。上記第2部分は、上記第1部分との接続部分を起点にして、Z軸方向に沿って上方に延びている。
【0042】
図6(b)には、収容部56にスイッチング素子が設けられた状態が模式的に示されている。スイッチング素子21U,22U,23U,24Uのそれぞれは、本体部分28の上面が収容部56の対向面56aに対向した状態で収容部56内に(対応する分割部分52の下方部分に形成された収容空間内に)配置されている。複数のリード端子29のそれぞれの、X軸方向及びY軸方向に交差する方向に沿って延びる一部分(例えば、上記第2部分)は、対応するリード端子29に挿入されて、ケース部材50を貫通するように配置されている。スイッチング素子21U,22U,23U,24Uのそれぞれは、リード端子とは別の端子29aを含んでもよい。端子29aは、板状に形成された端子であり、本体部分28の下面に対して平行な状態で、その下面に設けられている。端子29aの電位は、複数のリード端子29の1つの端子(例えば、コレクタ)と同じ電位であってもよい。
【0043】
図5に示されるように、複数の押圧部材60は、X軸方向に沿って並んで配置されている。押圧部材60は、ケース部材50を介してスイッチング素子21U,22U,23U,24Uの少なくとも一部をZ軸方向の一方側(下方)に向かって押圧可能な部材である。1つの押圧部材60は、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uのうちの2以上の素子を押圧可能に形成されてもよい。
図5に示される例では、一方の押圧部材60が、ケース部材50を介して、スイッチング素子21U及びスイッチング素子22Uを押圧するように構成されている。他方の押圧部材60が、ケース部材50を介して、スイッチング素子23U及びスイッチング素子24Uを押圧するように構成されている。
【0044】
押圧部材60は、X軸及びY軸方向に延在するように板状に形成された金属(板金)である。押圧部材60の少なくとも一部分が、板バネとして機能するように形成されており、これにより、スイッチング素子に対してケース部材50を介して外力を加えることが可能である。押圧部材60は、平面視において、U字状に形成されていてもよい。押圧部材60は、例えば、接続部分62と、2つの押圧部分64とを含む。
【0045】
接続部分62は、2つの押圧部分64を互いに接続する部分である。接続部分62は、X軸方向に沿って延びるように、全体として矩形状に形成されている。2つの押圧部分64は、2つのスイッチング素子をそれぞれ押圧するように構成されている。2つの押圧部分64は、X軸方向において互いに離れた状態で接続部分62に接続されている。2つの押圧部分64それぞれは、接続部分62のY軸方向における一端(端部50aに近い端部)を起点にして、Y軸方向に沿って延びるように形成されている。押圧部分64は、その一端が接続部分62に支持された板バネとして機能する。接続部分62の厚み(Z軸方向における大きさ)は、押圧部分64の厚みよりも大きくてもよい。押圧部分64が1枚の板金で構成され、接続部分62が2枚の板金が重なって構成されてもよい。
【0046】
押圧部材60は、ケース部材50の載置面53aに支持されるように、収容部53に設けられてもよい。2つの押圧部分64のいずれか一方には、位置決め穴66が形成されている。位置決め穴66は、Z軸方向において押圧部分64(押圧部分64の本体部分)を貫通している。位置決め穴66は、載置面53aに設けられた位置決め部54に対応する形状を有する。例えば、円形の位置決め穴66内に円柱状の位置決め部54が挿入されることで、押圧部材60のX軸及びY軸方向における位置が規制される。
【0047】
1つの押圧部材60は、2つの押圧部分64が、ケース部材50のX軸方向における一端から数えて1番目と2番目とに位置する2つの分割部分52に対応するように、収容部53に設けられる(載置面53aに支持される)。この1つの押圧部材60は、スイッチング素子21U及びスイッチング素子22Uをそれぞれ押圧する。他の1つの押圧部材60は、2つの押圧部分64が、ケース部材50のX軸方向における一端から数えて3番目と4番目とに位置する2つの分割部分52に対応するように、収容部53に設けられる(載置面53aに支持される)。この他の1つの押圧部材60は、スイッチング素子23U及びスイッチング素子24Uをそれぞれ押圧する。
【0048】
接続部分62には、Z軸方向において接続部分62を貫通する貫通穴69(貫通部)が形成されている。貫通穴69は、スイッチングモジュール40をヒートシンク98に対して固定するために設けられている。なお、接続部分62には、穴形状である貫通穴69に代えて、貫通部として切欠きが形成されてもよい。貫通穴69は、接続部分62のX軸方向における中央に設けられてもよく、X軸方向において2つの押圧部分64の間に位置していてもよい。貫通穴69は、X軸及びY軸が延びる平面(X-Y平面)において、ケース部材50の貫通穴59に対応するように設けられている。貫通穴69の中心は、対応する貫通穴59の中心に略一致していてもよい。貫通穴69の径は、対応する貫通穴59の径に略一致していてもよい。
【0049】
カバー部材70は、押圧部材60と回路基板32との間の絶縁を維持する部材である。カバー部材70は、ケース部材50の載置面53aに支持されている2つの押圧部材60を覆うように、ケース部材50に取り付けられる。カバー部材70は、例えば、載置面53aの全体を覆い、且つ、複数の分割部分52それぞれの挿入孔58が設けられる先端部を覆わないように形成されている。カバー部材70は、全体として、X軸及びY軸方向に延びるように形成されている。
図5及び
図7(a)に示されるように、カバー部材70は、平面視において、載置面53aの周縁部(周壁53b)に対応する形状を有する。
【0050】
カバー部材70は、天板72と、周壁74とを含む。天板72は、X軸及びY軸方向に延びるように形成された部分であり、載置面53a及び2つの押圧部材60を上方から覆う。周壁74は、天板72の周縁部から下方に向かって延びている。カバー部材70は、周壁74の下端部から下方に延びる1以上の固定部74aを含む。固定部74aが、ケース部材50のうちの対応する位置に形成された受け部55に嵌められることで、カバー部材70がケース部材50に対して固定される。周壁74は、カバー部材70がケース部材50に固定された状態(取り付けられた状態)において、ケース部材50の収容部53(周壁53b)を囲むように形成されていてもよい。
【0051】
カバー部材70には、Z軸方向において天板72を貫通する2つの貫通穴79が形成されている。貫通穴79は、スイッチングモジュール40をヒートシンク98に対して固定するために設けられている。2つの貫通穴79それぞれは、X-Y平面において、ケース部材50の貫通穴59、及び押圧部材60の貫通穴69に対応するように設けられている。貫通穴79の中心は、対応する貫通穴59の中心、及び対応する貫通穴69の中心に略一致していてもよい。貫通穴79の径は、対応する貫通穴59の径よりも大きくてもよく、対応する貫通穴69の径よりも大きくてもよい。
【0052】
カバー部材70は、固定部76を有する。固定部76は、スイッチングモジュール40が取り付けられる部材である回路基板32に形成された穴に嵌合可能な部分である。固定部76は、天板72のうちの押圧部材60と対向する面(下面)とは反対側の上面72aに設けられている。固定部76は、貫通穴79が設けられた位置(貫通穴79の開口縁の近傍部分)とは異なる位置に設けられており、例えば、平面視において天板72の中央に位置する。なお、
図5においては、固定部76が省略されている。
【0053】
固定部76は、例えば、
図7(b)に示されるように、2つに分割されるように形成された爪部76a,76bを含む。爪部76a,76bのそれぞれは、天板72の上面から上方に向かって延びるように形成されており、それらの先端部を含む一部は、側方に向かって膨出(突出)するように形成されている。爪部76a,76bは、回路基板32に形成された対応する貫通穴38に嵌合される。回路基板32の貫通穴38は、表面32a及び裏面32bにおいて開口している。爪部76a及び爪部76bの膨出する部分の大きさは、貫通穴38の径よりも大きい。
【0054】
爪部76a及び爪部76bが、貫通穴38に裏面32b側から挿入され、膨出する部分が表面32aから突出することで、爪部76a及び爪部76bが、回路基板32の貫通穴38の開口縁の近傍部分に引っ掛かる。すなわち、回路基板32から離れる方向にスイッチングモジュール40に外力が作用しても、爪部76a,76bが貫通穴38の開口縁の近傍部分に当接する。爪部76a及び爪部76bを含む固定部76が回路基板32に形成された貫通穴38に嵌合することで、回路基板32に対するスイッチングモジュール40の移動が規制される。すなわち、スイッチングモジュール40が回路基板32に保持される。
【0055】
カバー部材70は、2つの筒部78を有する。2つの筒部78は、2つの貫通穴79に対応するように設けられている。平面視において、筒部78は、対向する貫通穴79を囲むように形成されている。筒部78は、天板72の上面72aから上方に延びている。筒部78の内部には、貫通穴79と同じ径を有し、貫通穴79の内壁面と面一の穴が形成されている。以下では、説明の簡素化のために、貫通穴79には、天板72を貫通する部分に加えて、筒部78の内部の穴も含まれるものとして説明する。筒部78は、スイッチングモジュール40を回路基板32に取り付ける際に、回路基板32に形成された貫通穴39に挿入される。回路基板32の貫通穴39は、表面32a及び裏面32bにおいて開口している。筒部78は、スイッチングモジュール40をヒートシンク98に対して固定するために貫通穴79内に配置される部材と、回路基板32上に搭載された電子部品との間の絶縁を維持する機能を有する。
【0056】
図7(c)に示されるように、2つの筒部78それぞれの外周面に、外方に向かって突出する突起部78a,78bが設けられてもよい。突起部78a及び突起部78bは、平面視において、貫通穴79の中心を通る仮想的な直線上に並んでいてもよい。突起部78aの最も外方に位置する部分と、突起部78bの最も外方に位置する部分との間の大きさは、回路基板32の貫通穴39の径よりも大きい。爪部76a,76bの嵌合と同様に、回路基板32の貫通穴39に裏面32b側から筒部78が挿入され、突起部78a,78bが表面32aから突出することで、突起部78a,78bが、貫通穴39の開口縁の近傍部分に引っ掛かる。突起部78a,78bを含む筒部78が回路基板32に形成された貫通穴38に嵌合することで、回路基板32に対するスイッチングモジュール40の移動が規制される。すなわち、突起部78a,78bを含む筒部78は、回路基板32に形成された貫通穴38に嵌合可能な固定部を構成し、この構成により、スイッチングモジュール40が回路基板32に保持される。
【0057】
図8(a)には、組み立てられた状態のスイッチングモジュール40が示されており、
図8(b)には、スイッチングモジュール40のY-Z平面における断面が示されている。
図8(b)においては、X軸方向において互いに位置が異なる、貫通穴69が形成されている部分の断面、及び、スイッチング素子21Uが収容されている部分の断面が模式的に示されている。スイッチング素子21U,22U,23U,24Uは、Y軸方向においてケース部材50の両端部のうちの一方の端部である端部50a寄りに配置されている。すなわち、Y-Z平面におけるスイッチングモジュール40の断面を見たときに、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uは、端部50a及び端部50bの間において、端部50a寄りに位置している。スイッチングモジュール40は、ケース部材50の両端部のうちの他方の端部である端部50b寄りに配置されたスイッチング素子を有しない。
【0058】
スイッチング素子21Uに着目した場合、端部50aとスイッチング素子21Uとの間のY軸方向における最短距離は、端部50bとスイッチング素子21Uとの間のY軸方向における最短距離よりも小さい。スイッチング素子22U,23U,24Uのそれぞれについても、端部50aとの間の距離と、端部50bとの間の距離との互いに関係は、スイッチング素子21Uでの対応する関係と同じである。
【0059】
スイッチング素子21U,22U,23U,24Uのそれぞれの各リード端子29のZ軸方向に沿って延びる部分は、ケース部材50の上面側において露出している。スイッチング素子21Uの複数のリード端子29の少なくとも一部は、はんだ付け等によって回路基板32に電気的に接続される。スイッチング素子22U,23U,24Uについても、各スイッチング素子の複数のリード端子29の少なくとも一部は、はんだ付け等によって回路基板32に電気的に接続される。以上のように、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uそれぞれに含まれる1以上のリード端子29は、回路基板32に電気的に接続されている。Z軸方向において、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uのそれぞれの各リード端子29の先端部(上端部)は、カバー部材70の天板72よりも高くてもよい。
【0060】
図8(b)に示されるように、ケース部材50の貫通穴59、押圧部材60の貫通穴69、及び、カバー部材70の貫通穴79は、互いに重なっており、スイッチングモジュール40をZ軸方向に貫通する1つの穴を構成する。貫通穴59、貫通穴69、及び貫通穴79は、Y軸方向において、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uと、端部50bとの間に位置している。平面視において、貫通穴59、貫通穴69、及び貫通穴79のいずれも、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uとは重なっていない。貫通穴59、貫通穴69、及び貫通穴79は、端部50aと端部50bとの間において、端部50bよりに位置していてもよい。貫通穴59、貫通穴69、及び貫通穴79のそれぞれについて、端部50bと貫通穴との間のY軸方向における最短距離は、端部50aと貫通穴との間のY軸方向における最短距離よりも小さくてもよい。
【0061】
1つのスイッチング素子(例えば、スイッチング素子21U)に着目した場合、Y軸方向において、端部50a、複数のリード端子29、本体部分28、及び、貫通穴69が、この順に並んでいてもよい。貫通穴69は、Y軸方向において、リード端子29が設けられる側とは反対側に設けられている。他のスイッチング素子(例えば、スイッチング素子22U,23U,24Uのそれぞれ)についても、Y軸方向において、端部50a、複数のリード端子29、本体部分28、及び貫通穴69が、この順に並んでいてもよい。
【0062】
スイッチングモジュール40は、固定部材88を備える。固定部材88は、スイッチングモジュール40をヒートシンク98に対して固定するための部材である。固定部材88は、例えばネジであり、その大部分(ネジ部)が貫通穴69内及び貫通穴59内に配置される。ヒートシンク98には、スイッチングモジュール40と対向する面に、ネジ穴が形成されていてもよい。固定部材88に含まれるネジ頭部は、押圧部材60の接続部分62よりも上方に位置し、貫通穴79内において接続部分62の上面に接触していてもよい。スイッチングモジュール40は、リード端子29におけるはんだ付け、及び、固定部76等によって、回路基板32に接続された状態で、ヒートシンク98に対して固定される。すなわち、スイッチングモジュール40は、回路基板32と共にヒートシンク98に対して固定される。
【0063】
固定部材88によってスイッチングモジュール40がヒートシンク98に対して固定されることで、押圧部分64における板バネの撓み力によって、下向きの力がケース部材50に作用する。これにより、押圧部材60によって、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uのうちの対応するスイッチング素子に対して、ヒートシンク98に向かう方向に力Fが作用する。固定部材88による固定によって、スイッチング素子21U等の各スイッチング素子が、ヒートシンク98に向かって押された状態(密着した状態)となり、スイッチング素子21U等を含むスイッチングモジュール40の放熱がより確実となる。なお、スイッチング素子21U等のスイッチング素子は、絶縁シート96を介してヒートシンク98に密着しており、
図8(b)では、絶縁シート96の図示が省略されている。
【0064】
図4に示されるように、U相8Uに関するアームが、複数のスイッチ群25Uを含む場合、回路基板32上には、それぞれがスイッチ群25Uを含む複数のスイッチングモジュール40が設けられる。W相8Wに関するアームが、複数のスイッチ群25Wを含む場合、回路基板32上には、それぞれがスイッチ群25Wを含む複数のスイッチングモジュール40が設けられる。以下、スイッチ群25Uを含むスイッチングモジュール40を「スイッチングモジュール40U」と表記し、スイッチ群25Wを含むスイッチングモジュール40を「スイッチングモジュール40W」と表記する。例えば、回路基板32の裏面32bには、3個のスイッチングモジュール40Uが設けられ、3個のスイッチングモジュール40Wが設けられる。なお、電力変換回路2が昇圧回路(DC/DCコンバータ)を含む場合、スイッチングモジュール40U,40Wに加えて、昇圧回路を構成する複数のスイッチング素子を含むスイッチングモジュール40が回路基板32に設けられてもよい。
【0065】
複数のスイッチングモジュール40Uは、回路基板32の裏面32bに沿う一方向(X軸方向)において並んで配置されている。複数のスイッチングモジュール40Uは、それぞれのモジュールに含まれるスイッチング素子21U,22U,23U,24Uが、X軸方向に並ぶように配置されている。複数のスイッチングモジュール40Uの間において、Y軸方向における位置(回路基板32上の搭載位置)は、互いに同じであってもよい。1つのスイッチングモジュール40Uに着目した場合に、平面視おいて、全てのリード端子29のZ軸方向に沿う部分が、X軸方向に延びる仮想的なライン(仮想ライン)上に並んでいてもよい。複数のスイッチングモジュール40Uに着目した場合に、平面視において、複数のスイッチングモジュール40Uに含まれる全てのリード端子29のZ軸方向に沿う部分が、X軸方向に延びる上記仮想ライン上に並んでいてもよい。複数の部分がX軸方向に延びる仮想ラインに並ぶとは、厳密な意味において複数の部分が直線上に並んでいることを意味せず、複数の部分それぞれの少なくとも一部のY軸方向における位置が互いに同じであればよい。
【0066】
複数のスイッチングモジュール40Uそれぞれは、回路基板32のY軸方向における両端部のうちの一方の端部32c寄りに配置されてもよい。スイッチング素子21U等のスイッチング素子と端部32cとの間のY軸方向における距離は、貫通穴69(又は、対応する貫通穴39)と端部32cとの間のY軸方向における距離よりも小さくてもよい。複数のスイッチングモジュール40Uに対応する複数組の貫通穴39は、X軸方向に沿う仮想ライン上に並んで形成されている。
【0067】
複数のスイッチングモジュール40Wは、回路基板32の裏面32bに沿う一方向(X軸方向)において並んで配置されている。複数のスイッチングモジュール40Wは、それぞれのモジュールに含まれるスイッチング素子21W,22W,23W,24Wが、X軸方向に並ぶように配置されている。複数のスイッチングモジュール40Wの間において、Y軸方向における位置(回路基板32上の搭載位置)は、互いに同じであってもよい。1つのスイッチングモジュール40Wに着目した場合に、平面視おいて、全てのリード端子29のZ軸方向に沿う部分が、X軸方向に延びる仮想的なライン(仮想ライン)上に並んでいてもよい。複数のスイッチングモジュール40Wに着目した場合に、平面視において、複数のスイッチングモジュール40Wに含まれる全てのリード端子29のZ軸方向に沿う部分が、X軸方向に延びる上記仮想ライン上に並んでいてもよい。
【0068】
複数のスイッチングモジュール40Wそれぞれは、回路基板32のY軸方向における両端部のうちの他方の端部32d寄りに配置されてもよい。スイッチング素子21W等のスイッチング素子と端部32dとの間のY軸方向における距離は、貫通穴69(又は、対応する貫通穴39)と端部32dとの間のY軸方向における距離よりも小さくてもよい。複数のスイッチングモジュール40Wに対応する複数組の貫通穴39は、X軸方向に沿う仮想ライン上に並んで形成されている。
【0069】
複数のスイッチングモジュール40Wは、X軸方向において、複数のスイッチングモジュール40Uと同じ位置にそれぞれ配置されていてもよい。Y軸方向において、1つのスイッチングモジュール40Uと、対応するスイッチングモジュール40Wとの間には、回路基板32上において領域が設けられている。Y軸方向において、端部32c、スイッチング素子21U等、スイッチングモジュール40Uの貫通穴69、スイッチングモジュール40Wの貫通穴69、スイッチング素子21W等、及び端部32dが、この順に並んでいてもよい。なお、
図4において、貫通穴39の位置が、対応する貫通穴69の位置に相当する。
【0070】
図9に示されるように、回路基板32の表面32a(第1主面)には、電力変換回路2に含まれる第1コンデンサ14及び第2コンデンサ15(
図1を参照)が設けられる。
図9には、電力変換回路2における第1コンデンサ14が、互いに並列に接続された複数のコンデンサによって構成される場合が例示されており、第1コンデンサ14を構成する複数のコンデンサそれぞれが、符号「14a」を用いて表されている。すなわち、回路体30は、表面32aに設けられた複数のコンデンサ14aを有する。
【0071】
コンデンサ14aと、スイッチングモジュール40U及びスイッチングモジュール40Wの少なくとも一方に含まれる1以上のスイッチング素子とが、回路基板32に形成された配線パターンを介して電気的に接続されている。例えば、コンデンサ14aと、スイッチング素子21U,22U及びスイッチング素子21W,22Wとが、配線パターンを介して電気的に接続されている。表面32aに直交する方向から見て(平面視において)、コンデンサ14aの少なくとも一部は、スイッチングモジュール40Uと重なるように配置されている。複数のコンデンサ14aの少なくとも一部のコンデンサ14aについて、平面視において、コンデンサ14aの少なくとも一部が、いずれかのスイッチングモジュール40Uと重なっていてもよい。
図9に示される例において、スイッチングモジュール40Uと重ならない位置に、第1コンデンサ14を構成する1以上の別のコンデンサ14aが設けられてもよい。
【0072】
複数のコンデンサ14aは、X軸方向に延びる仮想的なライン上に並んでいてもよい。複数のコンデンサ14aは、互いに等間隔に並んでいてもよい。複数のコンデンサ14aそれぞれの少なくとも一部分のY軸方向における位置が、スイッチングモジュール40Uの少なくとも一部分のY軸方向における位置と同じであってもよい。一例では、X軸方向において、
図9の紙面上において右から2番目、4番目、又は6番目に位置するコンデンサ14aの少なくとも一部分は、1つのスイッチングモジュール40Uに対応する2つの貫通穴39(又は、2つの貫通穴69)の間に配置されている。X軸方向において、
図9の紙面上において右から3番目、5番目に位置するコンデンサ14aの少なくとも一部分は、1つのスイッチングモジュール40Uに対応する貫通穴39と、そのモジュールに隣り合う他のスイッチングモジュール40Uに対応する貫通穴39との間に配置されている。
【0073】
図9において、電力変換回路2における第2コンデンサ15を構成し、互いに並列に接続された複数のコンデンサそれぞれが、符号「15a」を用いて表されている。すなわち、回路体30は、表面32aに設けられた複数のコンデンサ15aを有する。コンデンサ15aと、スイッチングモジュール40U及びスイッチングモジュール40Wの少なくとも一方に含まれる1以上のスイッチング素子とが、回路基板32に形成された配線パターンを介して電気的に接続されている。例えば、コンデンサ15aと、スイッチング素子22U,24U及びスイッチング素子22W,24Wとが、配線パターンを介して電気的に接続されている。複数のコンデンサ15aは、X軸方向に延びる仮想的なライン上に並んでいてもよい。X軸方向において、複数のコンデンサ15aの位置が、複数のコンデンサ14aの位置にそれぞれ対応(略一致)していてもよい。Y軸方向において、1つのコンデンサ15aと、対応するコンデンサ14aとの間には、隙間が設けられている。複数のコンデンサ15aと、複数のスイッチングモジュール40W、及びスイッチングモジュール40Wに対応する複数の貫通穴39との関係は、複数のコンデンサ14aと、複数のスイッチングモジュール40U及び対応する複数の貫通穴39との関係と同じであってもよい。
【0074】
回路体30は、ブスバー80Uと、ブスバー80Wとを有する。ブスバー80U,80Wは、電力変換回路2の主回路の一部を構成する金属製の配線部材である。ブスバー80Uは、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uのうちの1以上の素子に含まれる、電力変換回路2における主回路用のリード端子29に電気的に接続される。ブスバー80Uは、例えば、電力変換回路2において接続点17UとU相8Uとの間の一部の回路を構成する。ブスバー80Uは、複数のスイッチングモジュール40Uに含まれる同電位となるべき複数のリード端子29を互いに電気的に接続してもよい。
【0075】
ブスバー80Wは、スイッチング素子21W,22W,23W,24Wのうちの1以上の素子に含まれる、電力変換回路2における主回路用のリード端子29に電気的に接続される。ブスバー80Wは、例えば、電力変換回路2において接続点17WとW相8Wとの間の一部の回路を構成する。ブスバー80Wは、複数のスイッチングモジュール40Wに含まれる同電位となるべき複数のリード端子29を互いに電気的に接続してもよい。
【0076】
ブスバー80U,80Wそれぞれは、回路基板32の表面32aに交差した状態で、表面32aに設けられている。ブスバー80U,80Wそれぞれの本体部分は、例えば、
図9における一点鎖線で囲まれる領域内の図に示されるように、表面32aに対して直交する方向に延びている。ブスバー80U,80Wそれぞれの本体部分は、X軸方向に延在するように形成されていてもよい。ブスバー80U,80Wは、回路基板32の配線パターンを介してリード端子29に電気的に接続されてもよく、配線パターンを介さずにリード端子29に接続されてもよい。
【0077】
回路基板32では、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uのぞれぞれの1以上のリード端子29の近傍においてX軸方向に沿って延びる仮想ライン(以下、「第1仮想ライン」という。)を境界として、高圧領域と低圧領域とに区画されている。1以上のリード端子29の近傍に位置する上記仮想ラインは、平面視においてリード端子29の少なくとも一部と重なるか、Y軸方向においてリード端子29から本体部分28のY軸方向における大きさ以内だけ離れている。上記仮想ラインを境界とし、Y軸方向における仮想ラインの一方側に高圧領域が設けられ、仮想ラインの他方側に低圧領域が設けられる。高圧領域は、電力変換回路2の主回路(直流から交流へ変換される電流が流れる回路)が形成される領域である。低圧領域は、主回路よりも低い電圧で動作する部品が配置される領域である。
【0078】
低圧領域には、例えば、スイッチング素子の開閉状態を切り替えるためのゲート駆動信号を生成するための各種部品が配置されている。高圧領域には、電力変換回路2の主回路よりも低い電圧で動作する部品からの電流が流れる配線パターンの一部が配置されてもよい。例えば、ゲート駆動信号用の電流が流れる配線パターンの一部が、高圧領域におけるリード端子29の接続部分まで形成されていてもよい。スイッチング素子21W,22W,23W,24Wのぞれぞれの1以上のリード端子29の近傍においても、X軸方向に沿って延びる仮想ライン(以下、「第2仮想ライン」という。)を境界として、高圧領域と低圧領域とに区画されていてもよい。
【0079】
図9に示される例では、第1仮想ラインを境界として、低圧領域LRUと高圧領域HRとに区画されており、第2仮想ラインを境界として、低圧領域LRWと高圧領域HRとに区画されている。低圧領域LRUには、例えば、スイッチング素子21U,22U,23U,24Uそれぞれへのゲート駆動信号を生成するための電子部品が配置される。低圧領域LRWには、例えば、スイッチング素子21W,22W,23W,24Wそれぞれへのゲート駆動信号を生成するための電子部品が配置される。高圧領域HRには、上述した複数のコンデンサ14a及び複数のコンデンサ15aと、複数のスイッチングモジュール40U及び複数のスイッチングモジュール40Wとが配置され、電力変換回路2の主回路用の配線パターンが形成される。
【0080】
Y軸方向において、低圧領域LRU、高圧領域HR、及び、低圧領域LRWが、この順に並んでいる。低圧領域LRUと高圧領域HRとの間には、ブスバー80Uが配置されている。すなわち、表面32aに設けられたブスバー80Uは、上記第1仮想ライン上に位置する。例えば、平面視においてブスバー80Uと重なるように第1仮想ラインが設定されている。低圧領域LRWと高圧領域HRとの間には、ブスバー80Wが配置されている。すなわち、表面32aに設けられたブスバー80Wは、上記第2仮想ライン上に位置する。例えば、平面視においてブスバー80Wと重なるように第2仮想ラインが設定されている。
【0081】
低圧領域LRUと高圧領域HRとに区画される範囲(X軸方向における範囲)は、少なくとも、複数のスイッチングモジュール40UのX軸方向における一端から他端までの範囲を含む。複数のスイッチングモジュール40UのX軸方向における一端から他端までの範囲以外においては、どのように領域が区画されてもよい。一例では、上記X軸方向における範囲は複数のスイッチングモジュール40UのX軸方向における一端から他端までの範囲と一致しており、複数のスイッチングモジュール40UのX軸方向における一端から他端までの範囲以外においては、低圧領域が設けられずに高圧領域が設けられる。
【0082】
[電力変換装置の製造過程]
続いて、
図10及び
図11も参照しながら、電力変換装置1の製造過程(電力変換装置の製造方法)の一例について説明する。電力変換装置1の製造過程は、例えば、第1組立工程と、取付工程と、基板工程と、第2組立工程と、を含む。
図10(a)は、電力変換装置1の製造過程の一例を示すフローチャートであり、
図10(a)に示されるように、第1組立工程、取付工程、基板工程、及び、第2組立工程は、この順で実行される。これらの工程の少なくとも一部が、人手によって行われてもよく、これらの工程の少なくとも一部が、装置によって自動で行われてもよい。以下では、
図5等に示されるスイッチングモジュール40が含まれる電力変換装置1を製造する場合について説明する。
【0083】
第1組立工程(ステップS01)では、上述したスイッチングモジュール40が組み立てられる。スイッチングモジュール40を組み立てるとは、スイッチングモジュール40に含まれる各種部材を互いに組み立てることを意味する。
図10(b)は、第1組立工程の一例を示すフローチャートである。
図10(b)に示されるように、第1組立工程において、最初にスイッチングモジュール40を構成する各種の部材が準備される(ステップS11)。各種の部材の準備には、複数のスイッチング素子を準備すること、互いに直交する2方向に延びるように形成されたケース部材50を準備することと、貫通穴69が形成された押圧部材60を準備することとが含まれる。
【0084】
次に、
図11(a)又は
図5に示されるように、ケース部材50の収容部56に、複数のスイッチング素子としてスイッチング素子21U,22U,23U,24Uが配置される(ステップS12)。複数のスイッチング素子が配置されると、複数のスイッチング素子が、ケース部材50が延在する上記2方向のうちの一方の方向(
図5では、X軸方向)に並び、且つ、上記2方向に直交する方向(積層方向)において、複数のスイッチング素子がケース部材50に対向する。また、複数のスイッチング素子は、上記2方向のうちの他方の方向(
図5では、Y軸方向)において、ケース部材50の端部50a寄りに配置される。各スイッチング素子が収容部56に配置される際に、各スイッチング素子の複数のリード端子29は、
図5における一点鎖線で結ばれた複数の挿入孔58に挿入される。
【0085】
次に、
図11(a)又は
図5に示されるように、ケース部材50の収容部53に押圧部材60が配置される(ステップS13)。押圧部材60の配置では、例えば、押圧部材60の位置決め穴66が、
図5における一点鎖線で結ばれた位置決め部54に挿入されるように、押圧部材60が収容部53に配置される。これにより、押圧部材60(押圧部材60の一部)が、積層方向においてケース部材50を介して2以上のスイッチング素子に重なる状態となる。また、押圧部材60の貫通穴59が、上記2方向のうちの他方の方向(
図5では、Y軸方向)において、ケース部材50の端部50bと各スイッチング素子との間に位置する状態となる。そして、押圧部材60を覆うように、ケース部材50に対してカバー部材70が取り付けられる(ステップS14)。例えば、カバー部材70に形成された固定部74aが、
図5における一点鎖線で結ばれた受け部55に嵌められるように、カバー部材70がケース部材50に取り付けられる。以上の工程により、1つのスイッチングモジュール40が組み立てられる。他の複数のスイッチングモジュール40についても、同様に組み立てられる。
【0086】
取付工程(ステップS02)では、スイッチングモジュール40が回路基板32に取り付けられる。取付工程においては、
図11(b)に示されるように、回路基板32の裏面32bを上方に向けた状態で、複数のスイッチングモジュール40(例えば、複数のスイッチングモジュール40U及び複数のスイッチングモジュール40W)のそれぞれが、回路基板32の裏面32bに上方から取り付けられる。一例では、スイッチングモジュール40の固定部76が、回路基板32の貫通穴38に挿入されて嵌められ、突起部78a及び突起部78bを含む筒部78が、回路基板32の貫通穴39に挿入されて嵌められる。これにより、スイッチングモジュール40が回路基板32に保持された状態となる。裏面32bにスイッチングモジュール40が取り付けられる際に、各スイッチング素子の複数のリード端子29が、回路基板32のスルーホールに挿入される。回路基板32へのスイッチングモジュール40の取り付けは、リード端子29へのはんだ付けが行われていないので、スイッチングモジュール40の仮固定に相当する。
【0087】
基板工程(ステップS03)では、回路基板32においてはんだ付けが行われる。一例では、複数のスイッチングモジュール40が取り付けられた状態の回路基板32(回路体30の中間体)を、表面32aが上方を向くように反転させる(
図11(c)を参照)。そして、表面32aに、複数のコンデンサ14a、複数のコンデンサ15a、ブスバー80U,80W、及び、他の各種の電子部品を載せた状態で、これらの部品でのはんだ付けが行われる。基板工程において、各スイッチング素子の複数のリード端子29の少なくとも一部が、はんだ付けによって、回路基板32に電気的に接続されてもよい。基板工程が行われることで回路体30が形成されてもよい。
【0088】
第2組立工程(ステップS04)では、
図11(c)に示されるように、回路基板32に取り付けられた状態のスイッチングモジュール40が、ヒートシンク98に対して固定される。一例では、第2組立工程において、複数のスイッチング素子(収容部56)及び回路基板32の裏面32bがヒートシンク98を向き、複数のスイッチング素子がヒートシンク98に支持されるように、回路体30がヒートシンク98に上から置かれる。そして、回路基板32の貫通穴39に嵌合されている筒部78の上端の開口から、貫通穴79、貫通穴69、及び貫通穴59を含む領域内に固定部材88を挿入(配置)する。
【0089】
その後、第2組立工程では、スイッチングモジュール40ごとに、少なくとも貫通穴69(押圧部材60の貫通穴69)内に配置した固定部材88によって、複数のスイッチング素子の少なくとも一部が押圧部材60によりヒートシンク98に向かって押されるように、スイッチングモジュール40を回路基板32と共にヒートシンク98に対して固定する。基板工程でのリード端子のはんだ付けに代えて、第2組立工程の後に、各スイッチング素子の複数のリード端子29の少なくとも一部が、はんだ付けによって、回路基板32に電気的に接続されてもよい。第2組立工程において、
図3に示される筐体92に対して回路体30、絶縁シート96及びヒートシンク98が固定されつつ、スイッチングモジュール40及び回路基板32のヒートシンク98への取り付けが行われてもよい。以上の工程を経た後に、筐体92内に他の部材が配置され、カバー94によって筐体92が閉じられることで、電力変換装置1が形成されてもよい。
【0090】
[変形例]
以上に説明したスイッチングモジュール40、電力変換装置1、及び、電力変換装置1の製造過程は一例であり、適宜変更可能である。
【0091】
スイッチング回路20は、3レベル双方向スイッチ方式に代えて、3レベルニュートラルポイントクランプ方式(NPC方式)のインバータ回路であってもよい。スイッチング回路20は、3レベルに代えて、2レベルのインバータ回路であってもよい。スイッチング回路20が2レベルのインバータ回路の場合において、1つのスイッチングモジュール40には、1つのアームを構成することが可能な(1つのアームの最小単位である)2個のスイッチング素子が含まれてもよい。
【0092】
1つのスイッチングモジュール40に含まれる複数の(全ての)スイッチング素子のそれぞれは、電力変換回路2におけるアームの互いに対応する部位に配置される素子であってもよい。この場合、1つのスイッチングモジュール40において、電力変換回路2におけるアームの互いに対応する部位(スイッチング階層)に配置される複数のスイッチング素子がパッケージ化されてもよい。互いに対応する部位に配置される複数のスイッチング素子は、同じ1つのアームに含まれていてもよく、関連する相が異なる2以上のアームに含まれていてもよい。一例では、1つのスイッチングモジュール40において、U相8Uに関するアームを構成する複数のスイッチ群25Uに含まれる複数のスイッチング素子21Uが、パッケージ化されてもよい。又は、1つのスイッチングモジュール40において、三相交流における関連する相が互いに異なるスイッチング素子21Uとスイッチング素子21Wとが、パッケージ化されてもよい。
【0093】
1つのスイッチングモジュール40では、複数のスイッチング素子に代えて、1個の(単一の)スイッチング素子が他の部材と共にパッケージ化されてもよい。この場合、1個のスイッチング素子が、Y軸方向において端部50a寄りに配置される。また、押圧部材60は、ケース部材50を介して1個のスイッチング素子を押圧可能となるように形成される。
【0094】
スイッチングモジュール40が複数のスイッチング素子を含む場合、押圧部材60は、2個のスイッチング素子に代えて、ケース部材50を介して1個のスイッチング素子を押圧するように構成されてもよい。1つのスイッチングモジュール40に4個のスイッチング素子が含まれる場合には、スイッチング素子を個別に押圧する4つの押圧部材60が設けられてもよい。1つの押圧部材60は、ケース部材50を介して、3個以上のスイッチング素子を押圧するように構成されてもよい。
【0095】
押圧部材60には、貫通穴69等の貫通部が形成されていなくてもよい。この場合、貫通穴69等の貫通部内に配置されるネジ等の固定部材以外の固定手段(例えば、カバー部材70による押さえ付け)によって、押圧部材60がスイッチング素子を押圧するように保持されてもよい。以上に説明した種々の例のうちの1つの例において、他の例において説明した事項の少なくとも一部が適用されてもよい。
【0096】
以上の説明において、「平行」、「平面」、及び「直交」等の記載がある場合、これらの記載は厳密な意味ではない。すなわち、「平行」、「平面」、及び「直交」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に平行」、「実質的に平面」、及び「実質的に直交」という意味である。外観上の寸法、大きさ、及び位置が「同じ」、「等しい」、及び「異なる」等の記載がある場合、これらの記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同じ」、「等しい」、及び「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同じ」、「実質的に等しい」、及び「実質的に異なる」という意味である。
【0097】
[まとめ]
本開示は、以下の(1)~(18)に記載の構成を含む。
【0098】
(1)電力変換回路2に用いられるスイッチングモジュール40であって、X軸方向及びY軸方向に延びるように形成されたケース部材50と、X軸方向及びY軸方向に直交する積層方向(Z軸方向)においてケース部材50と対向するように配置された1以上のスイッチング素子と、ケース部材50を介して1以上のスイッチング素子の少なくとも一部を積層方向の一方側に向かって押圧可能な押圧部材60と、を備え、1以上のスイッチング素子は、Y軸方向においてケース部材50の両端部のうちの一方の端部(端部50a)寄りに配置されている、スイッチングモジュール40。
上記スイッチングモジュール40では、ケース部材50を介してスイッチング素子が押圧部材60により押圧されるので、押圧部材60とスイッチング素子との間の絶縁がより確実に維持される。そして、スイッチング素子を第2方向の一方寄りに配置することで、押圧部材60の形状を簡素化し易い。そのため、スイッチングモジュール40の小型化が可能である。従って、上記スイッチングモジュール40は、装置の小型化に有用である。
【0099】
(2)押圧部材60には、Y軸方向において上記両端部のうちの他方の端部(端部50b)と1以上のスイッチング素子との間に位置し、スイッチングモジュール40を固定するための貫通部が形成されている、上記(1)に記載のスイッチングモジュール40。
この場合、スイッチングモジュール40が回路基板32に取り付けられた際に、回路基板32のうちのスイッチングモジュール40と重なる領域が、第2方向においてスイッチング素子が配置されている領域と貫通部(例えば貫通穴69)の周囲の領域とに区画することができる。回路基板32の部品配置及び配線パターン等のレイアウトは、スイッチング素子の位置と貫通部の位置に影響を受けるので、上記構成により、回路基板32でのレイアウトが容易である。
【0100】
(3)上記1以上のスイッチング素子は、複数のスイッチング素子であり、複数のスイッチング素子は、X軸方向に沿って並んだ状態で配置されている、上記(1)又は(2)に記載のスイッチングモジュール40。
互いに隣り合うスイッチング素子の間に押圧部材の貫通部を配置すると、貫通部内に配置される固定部材との間の絶縁を維持する観点からスイッチング素子同士の間隔を広くする必要がある。また、この場合、1以上のスイッチングモジュールが取り付けられる回路基板において複数の貫通部が点在し、貫通部の周囲の領域を他の部品を配置する領域として使用し難い。これに対して、上記スイッチングモジュール40では、固定用の貫通穴又は切欠き等の貫通部がY軸方向においてスイッチング素子と重ならない領域に設けられ、更に、ケース部材50の一方の端部(端部50a)寄りに複数のスイッチング素子がまとまって配置される。これにより、回路基板32において複数の貫通部それぞれの周囲の領域を連続してまとめることができ、それらの領域にコンデンサ等の他の部品を搭載し易くなる。そのため、回路基板32上の部品搭載領域を全体として縮小させることが可能である。したがって、上記スイッチングモジュール40は、装置の小型化に有用である。
【0101】
(4)押圧部材60は、複数のスイッチング素子のうちの2以上の素子を押圧可能に形成されており、押圧部材60は、貫通部が形成された接続部分62と、上記2以上の素子をそれぞれ押圧するように構成され、X軸方向において互いに離れた状態で接続部分62に接続された2以上の押圧部分64と、を有する、上記(3)に記載のスイッチングモジュール40。
この場合、スイッチング素子ごとに固定用の貫通部(例えば貫通穴)を設ける必要がなく、貫通部を設けることに起因して、回路基板の部品搭載領域が狭くなるのを回避できる。また、個々のスイッチング素子に、略一定の外力を加えることができ、安定した放熱が可能である。
【0102】
(5)ケース部材50は、積層方向において開口部分が互いに逆向きの収容部53と収容部56とを有し、押圧部材60は、収容部53に設けられており、上記1以上のスイッチング素子は、収容部56に設けられている、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のスイッチングモジュール40。
この場合、収容部53及び収容部56それぞれに収容されて移動が規制されることで、スイッチングモジュール40を他の部材に取り付ける際に、1以上のスイッチング素子及び押圧部材60のずれが抑制される。したがって、スイッチングモジュール40を含む装置の生産効率の向上に有用である。
【0103】
(6)上記1以上のスイッチング素子に含まれるスイッチング素子は、本体部分28と、複数のリード端子29とを有し、複数のリード端子29のそれぞれの少なくとも一部分が、ケース部材50を貫通して、X軸方向及びY軸方向に交差する方向に沿って延びており、複数のリード端子29は、X軸方向に延びるライン上に並んでいる、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載のスイッチングモジュール40。
回路基板の配線パターン及びブスバーの少なくとも一方の配線部材でリード端子29同士を電気的に接続する場合がある。上記構成により、配線部材の形状を簡素化することができる。
【0104】
(7)Y軸方向において、端部50a、複数のリード端子29、及び、本体部分28が、この順に並んでいる、上記(6)に記載のスイッチングモジュール40。
この場合、Y軸方向においてリード端子29が端部50aの近傍に配置され、スイッチングモジュール40と重ならない領域から、リード端子29に接続されるゲート駆動信号用の配線パターンを簡素化できる。そのため、回路基板32上において、リード端子29の近傍においてX軸方向に沿う仮想的なラインを境界に、電力変換回路2の主回路が形成される高圧の領域と、スイッチング素子の制御等のための回路が形成される低圧の領域とに区画するのが容易である。
【0105】
(8)押圧部材60を覆うように、ケース部材50に取り付けられたカバー部材70を更に備える、上記(1)~(7)のいずれか1つに記載のスイッチングモジュール40。
この場合、スイッチングモジュール40が取り付けられる回路基板32等の他の部材と押圧部材60との間の絶縁を維持しつつ、カバー部材70の取り付け前に押圧部材60をセットすることで、ケース部材50に押圧部材60を組み付ける作業が容易である。
【0106】
(9)カバー部材70は、押圧部材60を覆う天板72と、天板72のうちの押圧部材60と対向する面とは反対側の上面72aに設けられ、スイッチングモジュール40が取り付けられる部材(回路基板32)に形成された穴に嵌合可能な固定部(固定部76)と、を有する、上記(8)に記載のスイッチングモジュール40。
この場合、上記固定部によって、スイッチングモジュール40を回路基板32に仮固定した状態で、スイッチングモジュール40が搭載された回路基板32でのはんだ付け等の作業を行うことができる。はんだ付け等の作業中に、上記固定部による仮固定によって、スイッチングモジュール40が回路基板32に対してずれるのが抑制される。したがって、スイッチングモジュール40を含む装置の生産効率の向上に有用である。
【0107】
(10)上記1以上のスイッチング素子は、複数のスイッチング素子であり、電力変換回路2は、三相交流を出力する変換回路であり、複数のスイッチング素子は、三相交流における1つの相に関する電力変換回路2の1つのアームを構成することが可能である、上記(1)~(9)のいずれか1つに記載のスイッチングモジュール40。
この場合、三相交流の1つの相と他の相との間で、スイッチングモジュール40を共用化できる。また、1つの相のアームにおいてスイッチング素子を並列に接続する場合にも、スイッチングモジュール40を共用化できる。したがって、スイッチングモジュール40の生産の効率化に有用である。
【0108】
(11)上記1以上のスイッチング素子は、複数のスイッチング素子であり、複数のスイッチング素子のそれぞれは、電力変換回路2におけるアームの互いに対応する部位に配置される素子である、上記(1)~(9)のいずれか1つに記載のスイッチングモジュール40。
この場合、1つのスイッチングモジュール40では、同じ種類の複数のスイッチング素子が設けられるので、素子の種類を考慮せずに、スイッチングモジュール40を組み立てる際にスイッチング素子をケース部材50にセットできる。したがって、スイッチングモジュール40の生産の効率化に有用である。
【0109】
(12)上記(1)~(11)のいずれか1つに記載のスイッチングモジュール40と、スイッチングモジュール40が固定されるヒートシンク98と、上記1以上のスイッチング素子に含まれる1以上のリード端子29が電気的に接続されている回路基板32と、を備え、スイッチングモジュール40は、上記1以上のスイッチング素子の少なくとも一部が押圧部材60によりヒートシンク98に向かって押された状態で回路基板32と共にヒートシンク98に対して固定されている、電力変換装置1。
この電力変換装置1は、上記(1)~(11)のいずれか1つに記載のスイッチングモジュール40を備えるので、電力変換装置1の小型化に有用である。
【0110】
(13)回路基板32は、互いに逆向きの表面32a及び裏面32bを有し、電力変換装置1は、表面32aに設けられたコンデンサ14aを更に備え、スイッチングモジュール40は、裏面32bに対向するように設けられており、表面32aに直交する方向から見て、コンデンサ14aの少なくとも一部は、スイッチングモジュール40と重なるように配置されている、上記(12)に記載の電力変換装置1。
この場合、コンデンサ14aがスイッチングモジュール40に重ならない場合に比べて、スイッチング素子とコンデンサ14aとの間の物理的な距離が小さい。そのため、スイッチング素子とコンデンサ14aとの間の回路基板32における配線パターンの長さを短くできる。その結果、スイッチング素子とコンデンサ14aとの間の配線インダクタンスを小さくすることができる。
【0111】
(14)回路基板32は、互いに逆向きの表面32a及び裏面32bを有し、電力変換装置1は、上記1以上のスイッチング素子に含まれる、電力変換装置1における主回路用のリード端子29に電気的に接続されるブスバー80Uを更に備え、ブスバー80Uは、表面32aに対して交差した状態で表面32aに設けられている、上記(12)又は(13)に記載の電力変換装置1。
電力変換回路2の主回路では比較的大きな電流が流れるので、主回路用の配線パターンの幅等が大きくなる傾向がある。上記構成では、回路基板32に交差した状態で配置されるブスバー80Uによって、回路基板32上の主回路用の配線パターンを形成するための領域を小さくすることができる。したがって、電力変換装置1の小型化に更に有用である。
【0112】
(15)回路基板32では、上記1以上のスイッチング素子に含まれる1以上のリード端子29の近傍においてX軸方向に沿って延びる仮想ライン(第1仮想ライン)を境界として、高圧領域HRと低圧領域LRUとに区画されており、高圧領域HRは、電力変換回路2の主回路が形成される領域であり、低圧領域LRUは、上記主回路よりも低い電圧で動作する部品が配置される領域である、上記(12)又は(13)に記載の電力変換装置1。
主回路用の配線パターンと、低圧用の配線パターンとを、回路基板32のある領域で混在させると、主回路からの低圧用の配線パターン(信号)への電磁気的干渉を抑制する観点から、これらの配線パターン同士の間に距離をとることが必要となる。上記構成では、主回路用の高圧領域と、低圧領域とが区画されているので、上記電磁気的干渉を小さくでき、配線パターンをある程度密集できる。したがって、電力変換装置1の小型化に更に有用である。
【0113】
(16)回路基板32は、互いに逆向きの表面32a及び裏面32bを有し、電力変換装置1は、上記1以上のスイッチング素子に含まれる、上記主回路用のリード端子29に電気的に接続されるブスバー80Uを更に備え、ブスバー80Uは、上記仮想ライン(第1仮想ライン)上に位置し、且つ、表面32aに対して交差した状態で、表面32aに設けられている、上記(15)に記載の電力変換装置1。
この場合、高圧領域と低圧領域をより厳密に区分けすることができ、上記電磁気的干渉を更に小さくすることができる。
【0114】
(17)スイッチングモジュール40を組み立てる第1組立工程と、スイッチングモジュール40を回路基板32に取り付ける取付工程と、取付工程後に、回路基板32においてはんだ付けを行う基板工程と、基板工程後に、回路基板32に取り付けられた状態のスイッチングモジュール40を、ヒートシンク98に対して固定する第2組立工程と、を含む、電力変換装置1の製造方法であって、第1組立工程は、1以上のスイッチング素子、互いに直交する第1方向及び第2方向に延びるように形成されたケース部材50、及び、上記1以上のスイッチング素子の少なくとも一部を押圧可能な押圧部材60を準備することと、第1方向及び第2方向に直交する積層方向においてケース部材50と対向し、且つ、第2方向においてケース部材50の両端部のうちの端部50a寄りに位置するように、上記1以上のスイッチング素子を配置することと、積層方向においてケース部材50を介して上記1以上のスイッチング素子の少なくとも一部と重なるように、押圧部材60を配置することと、を含み、第2組立工程は、上記1以上のスイッチング素子の少なくとも一部が押圧部材60によりヒートシンク98に向かって押されるように、スイッチングモジュール40を回路基板32と共にヒートシンク98に対して固定することを含む、電力変換装置1の製造方法。
【0115】
(18)上記1以上のスイッチング素子は、複数のスイッチング素子であり、押圧部材60には、スイッチングモジュール40を固定するための貫通部が形成されており、上記第1組立工程において上記1以上のスイッチング素子を配置することは、第1方向に沿って並ぶように複数のスイッチング素子を配置することを含み、上記第1組立工程において押圧部材60を配置することは、貫通部が第2方向において上記両端部のうちの端部50bと複数のスイッチング素子との間に位置するように、押圧部材60を配置することを含み、上記第2組立工程においてスイッチングモジュール40を回路基板32と共にヒートシンク98に対して固定することは、少なくとも貫通部内に配置した固定部材88によって、スイッチングモジュール40をヒートシンク98に対して固定することを含む、上記(17)に記載の製造方法。
【符号の説明】
【0116】
1…電力変換装置、2…電力変換回路、14a,15a…コンデンサ、21U,22U,23U,24U…スイッチング素子、21W,22W,23W,24W…スイッチング素子、28…本体部分、29…リード端子、32…回路基板、32a…表面、32b…裏面、40…スイッチングモジュール、50…ケース部材、50a,50b…端部、53,56…収容部、60…押圧部材、62…接続部分、64…押圧部分、69…貫通穴、70…カバー部材、72…天板、72a…上面、76…固定部、80U,80W…ブスバー、88…固定部材、98…ヒートシンク。