(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】現像装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
G03G15/08 226
G03G15/08 235
(21)【出願番号】P 2022200126
(22)【出願日】2022-12-15
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 洋介
(72)【発明者】
【氏名】岩田 和明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢
(72)【発明者】
【氏名】関 順司
(72)【発明者】
【氏名】小沼 洋明
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-086238(JP,A)
【文献】特開2007-256942(JP,A)
【文献】特開2021-021795(JP,A)
【文献】特開2009-020231(JP,A)
【文献】特開2007-293095(JP,A)
【文献】特開2003-057940(JP,A)
【文献】特開2015-184601(JP,A)
【文献】特開2008-015221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に当接して前記現像剤担持体に担持された現像剤の層の厚さを規制する規制部材と、
を備え、
前記規制部材の表面の前記現像剤担持体と当接する部分において、最大高さ粗さRz、凹凸の平均間隔Sm、ISO25178に定義される三次元表面粗さパラメータにおける突出山部の初期状態の体積Vmpとしたとき、
3≦Rz<20(μm)、
30≦Sm≦100(μm)、および、
Vmp≧0.05ml/m
2
であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記規制部材の表面の前記現像剤担持体との当接する部分は、凹方向の粗面処理された金型により、凸方向の粗面を持つように成形されている
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤は、平均粒径が50nm以下の疎水化処理された無機微粉体を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤担持体は、前記規制部材の表面の最大高さ粗さRzよりも大きな直径の凹凸付与粒子を含有し、
前記現像剤担持体の表面の実測表面積S、前記現像剤担持体の表面を理想的な平面とした場合の理論表面積S0、前記現像剤担持体の表面において前記凹凸付与粒子を除いた部分の表面積比S/S0とすると、
S/S0≧1.18
であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤担持体の表面において、
S/S0≧1.20
であることを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
画像形成装置の装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、請求項1から5のいずれか1項に記載の現像装置を備えている
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
表面に静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に現像剤を供給して前記静電潜像を現像する現像装置と、
を備え、
前記現像装置は、請求項1から5のいずれか1項に記載の現像装置である
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を利用した画像形成装置では、画像データに対応した光を電子写真感光体(感光体)に照射して静電像(潜像)を形成する。そして、この静電像に対して、現像装置から記録材料である現像剤のトナーを供給して、トナー像として顕像化する。このトナー像は、転写装置によって感光体から記録紙などの記録材へ転写する。このトナー像を、定着装置で記録材上に定着することで記録画像が形成される。
【0003】
乾式一成分現像法を用いる現像装置に関しては、種々の装置が提案されている。一例を挙げれば、次のようなものがある。磁性一成分現像剤(磁性トナー)を、現像剤担持体としての現像スリーブ上に担持し、層厚規制部材によって均一なトナー層を形成する。この現像スリーブを感光体に近接又は接触させる。そして、現像スリーブに交流成分と直流成分からなる現像バイアス電圧を印加することで、感光体上の静電像と現像スリーブとの間に電位差を発生させ、トナーを静電像に移動させて現像を行う。
【0004】
層厚規制部材としての規制ブレードの特性は、現像スリーブに担持される現像剤の層厚と帯電量とに規定される。具体的には、単位質量当りの現像剤帯電量(Q/M)及び単位面積当りの現像剤量(M/S)が用いられる。近年の高画質化、高速度化に伴い、現像剤は現像スリーブ表面に帯電量の揃った状態で薄く均一に担持されることが求められている。これらの特性は、現像スリーブの形状、材質、表面性及び電子写真プロセス条件が一定であれば、規制ブレードの物理形状、例えば表面粗さに強く依存する。この要因を制御して所定の現像特性を発現させるかが層厚規制部材の重要なポイントとなる。
【0005】
そこで、特許文献1では、層厚規制部材の少なくとも電荷付与面が、表面粗さ高さRzで1μm以上かつ20μm以下となるように粗面化することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、層厚規制部材の電荷付与面の垂直方向の粗さであるRzを規制するだけでは、表面の粗さの均一性が規制できず、現像剤担持体表面に現像剤の均一な薄層を形成するのは困難であった。その結果、現像剤担持体表面に現像剤の融着が見られ、画像スジが発生することがあった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、画像形成装置に用いられる現像装置において、現像スリーブへのトナーの融着を抑制して画像品質を安定させることが可能な規制ブレードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に当接して前記現像剤担持体に担持された現像剤の層の厚さを規制す
る規制部材と、
を備え、
前記規制部材の表面の前記現像剤担持体と当接する部分において、最大高さ粗さRz、凹凸の平均間隔Sm、ISO25178に定義される三次元表面粗さパラメータにおける突出山部の初期状態の体積Vmpとしたとき、
3≦Rz<20(μm)、
30≦Sm≦100(μm)、および、
Vmp≧0.05ml/m2
であることを特徴とする現像装置である。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、
本発明は、画像形成装置に用いられる現像装置において、現像スリーブへのトナーの融着を抑制して画像品質を安定させることが可能な規制ブレードを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】実施例1に係る規制ブレードの粗面形成の概略図
【
図5】比較例1に係る規制ブレードの粗面形成の概略図
【
図7】現像スリーブ表面の微小粗さを表す表面積比S/S0の説明図
【
図10】実施例1に係る規制ブレードの表面形状プロファイル
【
図11】比較例1に係る規制ブレードの表面形状プロファイル
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。したがって、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。実施例には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。
【0013】
[実施例]
≪画像形成装置の全体構成≫
図1は、本発明の実施例にかかる画像形成装置100を示している。まず、画像形成装置100の全体構成について説明する。この画像形成装置は、直接転写方式を用いたモノクロレーザープリンタである。画像形成装置100は、画像情報に従って、記録材(例えば、記録用紙など)にモノクロ画像を形成することができる。
【0014】
画像形成装置100は、像担持体としての感光ドラム1と、感光ドラム1の表面を一様に帯電する接触帯電部材である帯電ローラ2と、帯電した感光ドラム1の表面にレーザ光を露光して静電潜像を形成する露光装置3と、を備えている。感光ドラム1は、アルミニウム製シリンダの外周面に機能性膜である下引き層、キャリア発生層、キャリア移送層を順にコーティングした有機感光ドラムを用いている。
【0015】
帯電手段である帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部を感光ドラム1に加圧接触することで従動回転する。帯電ローラ2の芯金には、帯電バイアスとして、直流電源52から所定の直流電圧が印加され、これにより感光ドラム1の表面には、一様な暗部電位(Vd)が形成される。前述の露光装置3からのレーザ光によって画像データに対応して発光されるレーザ光のスポットパターンは、感光ドラム1を露光し、露光された部位は、キャリア発生層からのキャリアにより表面の電荷が消失し、電位が低下する。この結果、露光部位は所定の明部電位(Vl)、未露光部位は所定の暗部電位(Vd)の静電潜像が、感光ドラム1上に形成される。
【0016】
感光ドラム1上に形成された静電潜像を現像する現像スリーブ4を備え、現像スリーブ4の回転方向に対してカウンターで当接し、コート量規制及び電荷付与を行っている規制ブレード6が構成される。本実施例では摩擦帯電により負帯電するトナーを用いたが、これに限定されるものではない。
【0017】
本実施例において、現像スリーブ4には、CPU53からの指示で直流電圧に交流電圧を重畳した現像バイアスが高圧電源51より印加される。感光ドラム1と現像スリーブ4との間では電界が発生するため、その電界の作用によって、帯電されたトナーtが感光ドラム1表面の静電潜像に応じたトナー像として付着する。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写ニップNtにおいて、転写ローラ62により記録材であるシート材Pに転写される。
【0018】
一方、シート材Pにトナー像が転写された後において、感光ドラム1の表面に残留した転写残トナーは、清掃部材としてのクリーニングブレード9によって除去される。そして、感光ドラム1は、再び、帯電ローラ2によって帯電され、画像形成に用いられる。
【0019】
感光ドラム1、帯電ローラ2、クリーニングブレード9は、一体化されてクリーニングユニット31を構成する。現像スリーブ4、規制ブレード6は、一体化されて現像装置7を構成する。そして、クリーニングユニット31と現像装置7とが一体化され、プロセスカートリッジ8として構成され、画像形成装置100の装置本体に対して着脱可能となっている。そして、転写ニップ部の下流側、感光ドラム1の上方には、シート材P上へ転写された未定着トナー像を加熱して定着する定着装置60が設けられている。装置上面には、定着装置60から排出されるシート材Pを受ける排紙部61が設けられている。
【0020】
≪規制ブレード≫
現像剤量規制ブレード(規制ブレード6、層厚規制部材、現像剤規制部材)の製造方法、材料等について説明する。規制ブレード6は、一般に鋼板等の剛性の有するブレード支持部材6bと、ゴム弾性を有するブレード部材6a、及び接着剤層から構成される。それぞれの材質は特に限定されるものではなく、ブレード支持部材6bとして、クロメート処理及び潤滑樹脂等の表面処理鋼板、リン青銅、ばね鋼等の弾性金属板より加工したもの、プラスチックやセラミックなど成型品等が挙げられる。また、ゴム弾性を有するブレード部材6aとしては熱硬化性ポリウレタン、シリコンゴム、液状ゴム等が挙げられる。本実施例ではブレード部材6aとして熱硬化性ポリウレタンを用いた。
【0021】
<ブレード部材の製造方法>
以下、本発明のブレード部材6aの製造方法の実施の形態を、製造装置と併せて説明する。
図2は電子写真装置用ブレード部材の製造装置40の一例を示す概略図である。
【0022】
(計量・混合・攪拌)
初めに、混合攪拌装置によりポリウレタン組成物を計量、混合攪拌して混合物を調製する。混合攪拌装置は製造装置40の一部であってもよいし、別装置であってもよい。
図2
に示すように、混合攪拌装置は、少なくとも2台のタンク10及び11を備える。タンク10、11の出口はそれぞれ、吐出・循環用配管14、15によってミキシングヘッド16に接続されている。吐出・循環用配管14、15にはそれぞれ、計量ポンプ12、13が設けられている。なお、ミキシングヘッド16は、液状物の導入口と吐出口を備えたチャンバー内に攪拌用回転子を備えた公知の構造からなり、ポリウレタン組成物を高精度に吐出できる。混合攪拌装置は、このような定量混合機を用い、計量ポンプ12、13により一定量の各組成物をミキシングヘッド16に供給し、均一に混合攪拌を行う。
【0023】
(注入)
製造装置40は、外周面にブレード部材6aの成型溝を有した成型ドラム18と、成型ドラム18の外周面の一部に該成型溝を覆うように配置されたエンドレスベルト19を備える。成型ドラム18の外周面の成型溝は、回転方向に連続するように設けられている。製造装置40はまた、加熱手段44を備える。加熱手段44は、成型ドラム18に内蔵または近接した位置、或いは、成型ドラム18とエンドレスベルト19の圧接された部分のエンドレスベルト19側に密接または近接に配置される。該加熱手段44により、
図3に示す成型ドラム18上の成型用溝とエンドレスベルト19とに囲まれた空間部23内で、成型用溝内に注液されたポリウレタン組成物を加熱硬化することができる。
【0024】
成型ドラム18は、例えば、硬質アルミニウム、鉄、ステンレス等からなる。成型ドラムの中心部は、水平な回転軸17により回転自在に支持され、駆動装置により所定速度で回転する。成型ドラム18の外周面に連続して形成されている成型用溝の形状は、製造される電子写真装置用のブレード部材6aの形状に合わせて適宜選択される。
【0025】
また、詳細は後述するが、規制ブレード6の現像スリーブ4との当接位置表面は、成型ドラム18の成型用溝表面部(離型面)28の表面凹凸がプリントされた形状となる。つまり、成型ドラム18の離型面28は規制ブレード表面を所定の形状に形成するために粗面処理加工を行う。
【0026】
エンドレスベルト19は、例えばステンレス等の金属帯板からなる。ステンレス以外の樹脂ベルトなどを用いてもよいが、その場合でもベルトの外側から加熱可能な手段を用いることが好ましい。
【0027】
エンドレスベルト19は、成型ドラム18とは別の駆動機構をもつ駆動ロール20、エンドレスベルト走行を調整するガイドロール21、エンドレスベルト19に張力を付与するテンションロール22に掛け渡されている。成型ドラム18とエンドレスベルト19は同等の周速で回転する。
【0028】
また、成型ドラム18とエンドレスベルト19の駆動手段を別にすることが、エンドレスベルト19のテンションの低荷重化を図ることができるため好ましい。駆動手段としては、例えばモータ、クラッチ、ブレーキなどの組み合わせを用いることが考えられる。しかし、成型ドラム18の周速に合わせて、成型ドラム18とエンドレスベルト19のテンションを一定化するために、成型ドラム18はモータによる駆動、エンドレスベルト19はパウダーブレーキとモータによる駆動が好ましい。
【0029】
加熱手段44による加熱方法としては、成型ドラム18の外部または内部からの加熱方法がある。ただし、外部からでは、外乱(室温など)の影響を受けるため、成型ドラム18を直接加熱する内部加熱が好ましい。内部加熱を行う手段としては、ヒータ、オイル、水などの手段があるが、省スペース、温度管理の面から、ヒータが最適である。
【0030】
図2に示す製造装置40において、原料配置手段であるミキシングヘッド16には、ポ
リウレタン組成物を所定速度で吐出できる吐出口が設けられている。ミキシングヘッド16内のポリウレタン組成物は、該吐出口より吐出され、エンドレスベルト19上に配置される。この時、成型ドラム18およびエンドレスベルト19は所定の速度で回転しており、成型ドラム18とエンドレスベルト19によって形成される空間部(溝)に対応する必要量が連続的に注入される。
【0031】
本発明に係るポリウレタン組成物は、加熱によって硬化反応が促進される。ポリウレタン組成物は、最初に、加熱機構を持たないエンドレスベルト19上に注入されるので、その時点では熱で加速されるウレタン重合反応が進まない。そして、エンドレスベルト19が加熱された成型ドラム18と接触後、接触表面が即座に昇温する。そして、エンドレスベルト19上に注入されたポリウレタン組成物が、成型ドラム18上の成型用溝に移動充填されると加熱かつ加圧が開始され、ウレタン重合反応が開始される。これにより、ポリウレタン組成物をムラなく均一に硬化することができる。なお、成型ドラム18上の溝部分にポリウレタン組成物を注入すると、初めに接触した面から硬化が進行するため、加熱された成型ドラム18接触面のみ先行して硬化が進行する。その結果、成型ドラム18接触面とエンドレスベルト19接触面との間で硬化ムラが起こり、表面模様、物性の不均一性が発生してしまう。なお、成型ドラム18と接触していない部分にエンドレスベルト19を冷却する冷却機構を設けても良い。
【0032】
(硬化)
次に、成型ドラム18の成型用溝とエンドレスベルト19により構成される空間部23にポリウレタン組成物を充満させながら、所定の時間の間、加熱硬化する。これにより、ポリウレタン組成物のウレタン重合反応が、成型ドラム18とエンドレスベルト19から離型可能な程度まで完了する。その結果、必要な幅と厚みおよび表面性を備えた電子写真装置用のブレード部材6aの原型体が連続的に形成される。
【0033】
なお、
図2に示す製造装置40を用いた本実施例においては、加熱温度は80~200℃程度が好ましい。ウレタン重合反応の進行により、ポリウレタン組成物が成型ドラム18とエンドレスベルト19から離型可能な程度までかかる時間は、20秒から90秒である。しかし、成型ドラム18とエンドレスベルト19から離型可能な程度までに硬化が終了していれば、離型を行うことが可能であるため、加熱温度、加熱時間はポリウレタン組成物の組成、製造装置の構成に合わせて適宜選択することができる。
【0034】
(離型・切断)
こうして加熱硬化終了したポリウレタン樹脂は、成型ドラム18とエンドレスベルト19から離型手段24により離型される。離型されたポリウレタン樹脂を、搬送機構25により搬送し、切断機構26により所定の寸法に切断する。切断は刃物によるNC切断、プレス抜き型等公知の方法から適したものを選択すれば良い。
【0035】
(離型処理のための構成)
成型ドラム18は、少なくともポリウレタン組成物が接触する部分、例えば、成型用溝に離型処理を施すことが望ましい。離型処理は、離型剤処理装置等を用い、型表面に離型剤を塗布する方法、成型ドラム18の表面にPTFE、フッ素含有メッキ等のメッキ処理を行う方法、シリコン等離型性のある樹脂をコーティングする方法等が挙げられる。しかしこれらには限られず、ウレタン樹脂の離型が可能であれば適したものを選択すれば良い。また、エンドレスベルト19についても、少なくともポリウレタン組成物が接触する部分に離型処理を施すことが望ましい。離型処理の方法は、前記成型ドラム18に対して行う離型処理と同様の方法でよい。
【0036】
(粗面処理)
本発明に係る規制ブレード6は、少なくとも現像スリーブ4に当接される部分に粗面化部分を形成することが望ましい。なお、規制ブレード6は、画像形成装置内において、現像剤担持体である現像スリーブ4との間で現像剤を摩擦帯電させつつ均一薄層状に現像剤量を規制する、ブレード状の部材である。
【0037】
従来、現像剤粒子を均一に帯電し搬送するには、この規制ブレード6の電荷制御面を滑らかにするほど良いと考えられてきた。ところが近年、電荷制御面の平坦性が、現像剤の均一な帯電及び搬送に与える影響を詳細に研究したところ、現像剤制御面をある程度粗面化した方が、現像剤の均一な帯電及び搬送を実現でき、画像スジ及び画像ムラ等の画像不良を抑制することが見出された。
【0038】
従って、本発明に係る成型ドラム18の成型用溝の長手方向に対して直交する断面において、底面の少なくとも1角に粗面化部分が形成されていることが好ましい。これにより、製造される規制ブレード6において、少なくとも現像スリーブ4に当接される部分が粗面化されるため、現像剤の均一な帯電及び搬送を実現できる。
【0039】
粗面化部分の形成方法としては、例えば、物理的手法により粗面化する方法が挙げられる。物理的手法の具体例としては、サンドペーパーや粗しフィルムを用いて成型ドラム18表面を粗面化する方法や、成型用溝内にこれらの粗し部材を設置する方法や、サンドブラスト法等のショットブラスト法が挙げられる。その他、粗面化が可能であれば方法は限定されない。
【0040】
ショットブラスト方における成形面の粗面化微粒子としては、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、炭化珪素(SiC)、マグネナイト(Fe3O4)、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、無機微粒子、有機微粒子、無機・有機ハイブリッド微粒子などを使用でき、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0041】
本実施例では成型ドラム上の離型面28をショットブラスト法で粗面化する方法を用いた。このような成型ドラム18を用いて規制ブレード6を製造すると、
図4のように、金型である成型ドラム18上の離型面28の形状に対応するように、規制ブレード6の表面形状が形成される。ここで、粗面処理前の離型面28を用いて規制ブレード6を製造した場合の離型面28および規制ブレード6の高さを破線Bで示す。粗面化した離型面28を用いて作成した規制ブレード6の表面は、破線Bに対して、凸方向(離型面および規制ブレードの面の法線方向)において凹凸を有する表面形状となる。
【0042】
また、比較例1で後述するが、成型ドラム18の離型面28に粗面化処理をする方法ではなく、金型(成型ドラム18)上に粒子を散布する方法で規制ブレード6の表面形状を形成したときの様子を
図5に示す。この方法では、規制ブレード6の表面に、元の離型面の高さである破線Bに対して、凹方向の凹凸が形成される。
【0043】
<規制ブレード表面の最大高さ粗さRz、及び、凹凸の平均間隔Smの測定方法>
このように形成された規制ブレード6の粗面化処理された表面形状の、最大高さ粗さ(Rz)と凹凸の平均間隔(Sm)を、表面粗さ測定機SE3500(小坂研究所(株)製)を用い、JIS B 0601に基づいて計測した。
測定長:4.0mm
カットオフ:0.8mm
測定速度:0.1mm/sec
【0044】
線粗さ測定モードで、直線を任意の水平方向に4本、任意の垂直方向に4本引き、計8の直線から得られた8個の値のうち上下限値2点を除外し、残りの6点で平均をとった値
とした。
【0045】
<規制ブレード表面の突出山部の体積Vmpの測定方法>
さらに、前述した線粗さRzとSmに加え、面の体積で表面粗さを管理するためのパラメータとして、ISO25178に定義される突出山部の体積Vmpを用いている。体積Vmpは、
図6に示すグラフのように定義される体積パラメータである。図中の負荷曲線は、負荷面積率が0%から100%となる高さを表した曲線であり、負荷面積率とは、ある高さ以上の領域の面積率を表す。
【0046】
本実施形態では、負荷面積率10%以下の部分を突出山部の体積Vmpとし、株式会社キーエンス社製の形状解析レーザ顕微鏡(VK-X3000)を用いて倍率10倍で観察して、1000μm×1000μmの測定領域から面の負荷曲線を求め算出した。
ローパスフィルタ : 5μm
傾き補正 : 有効
【0047】
突出山部の体積Vmpは、測定領域内の凹凸体積のうち突出山部側の面積率10%の高さを示す。表面凹凸の凸高さが均一に高さを有している場合に、Vmpの値は大きくなる。つまり、凹凸の最大高さ粗さRzが大きく、凹凸の平均間隔Smが小さいことで凹凸が細かくピーキーとなり、さらに突出山部の体積Vmpが大きいことで凸高さの均一性が高くなると、現像スリーブ4表面の付着物を効率的に循環することが可能となる。結果として、現像スリーブ4上の付着物の蓄積による汚染を抑制することが可能となる。さらに言えば、小粒径で静電的付着力も大きく除去するのが特に難しいトナーに外添される小径添加剤粒子の蓄積も安定し、長期にわたり抑制することが可能となる。
【0048】
<ブレード部材の物性>
また、本発明において規制ブレード6のブレード部材6aは、国際ゴム硬度(IRHD)が65~90°である。ゴム硬度が65°よりも低い場合、現像スリーブ4に当接したときの圧力が低く、トナーの搬送力が上がりすぎてしまい、現像スリーブ4上で薄層とならず充分な電荷量を付与できない。また、ゴム硬度が90°よりも高い場合は、現像スリーブ4に当接した時の圧力が上がりすぎてしまい、電荷制御面を粗面化した効果が得られなくなってしまう。本実施例で用いたブレード部材の硬度は70°であった。
【0049】
≪現像スリーブ≫
本発明に係る現像剤担持体である現像スリーブ4は、基体と表面層とを有し、この他に、例えば、基体と表面層との間に中間層(例えば、弾性層)を有することができる。本発明の現像スリーブ4は、電子写真方式の画像形成装置に用いる現像剤担持体として使用することができる。また、表面層は、基体表面に直接形成されることができる。以下に本発明の現像スリーブ4を詳しく説明する。
【0050】
(基体)
基体は、現像スリーブ4の分野で公知の基体を用いることができ、その形状は、中空円筒状、中実円柱状及びベルト形状等から適宜選択できる。この基体としては、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮等の非磁性の金属、又はこれらの合金を、中空円筒状または中実円柱状に成型し、研磨、研削を施したものを用いることができる。
【0051】
(表面層)
表面層は、バインダー樹脂、導電性粒子、第4級ホスホニウム塩及びアゾ系金属錯体化合物を含む樹脂組成物の硬化物である。なお、このバインダー樹脂は、分子構造中に、-NH2基、=NH基および-NH-結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造(結合)を有する。また、上記樹脂組成物は、後述する凹凸付与粒子等の他の添加剤を含む
ことができる。
【0052】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、NHn構造を有するフェノール樹脂、および、ウレタン変性エポキシ樹脂等のNHn構造を主鎖以外に有する樹脂を用いることが出来る。
【0053】
中でも特に上記NHn構造を有するフェノール樹脂は、硬化後の硬度が高く、且つ併用効果が高いため好ましく用いられる。このフェノール樹脂としては、その製造工程において、触媒としてアンモニア等の含窒素化合物を用いて製造されたフェノール樹脂が挙げられ、好ましく用いることができる。本実施例においてもバインダー樹脂としてフェノール樹脂を用いた。
【0054】
(第4級ホスホニウム塩)
第4級ホスホニウム塩は、本発明に係る現像スリーブ4の、現像剤に対する摩擦帯電付与性を安定化させるために必要である。その構造は、過剰な帯電付与の抑制の観点から塩(化合物)であることが好ましい。
【0055】
一般的に、第4級ホスホニウム塩は、正帯電性現像剤の帯電量を高めるための正帯電性荷電制御剤として用いられる。しかし、本発明では、第4級ホスホニウム塩を、前記バインダー樹脂と併用することにより、第4級ホスホニウム塩自身の正帯電性を緩和する方向に働き、アゾ系金属錯体化合物添加による負帯電性現像剤への過剰摩擦帯電抑制の効果を顕著に発揮させることができる。
【0056】
表面層形成用樹脂組成物は、前記第4級ホスホニウム塩を前記バインダー樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下有することが好ましい。添加量を0.1質量部以上とすることで現像剤の過剰帯電抑制効果を容易に発揮することができ、20質量部以下とすることで表面層の耐久性を維持したまま現像剤の過剰帯電抑制が容易に可能となる。
【0057】
(アゾ系金属錯体化合物)
アゾ系金属錯体化合物を表面層中に含有させることが、現像剤に対して適切な摩擦帯電付与をするために必要である。
【0058】
本発明に用いるアゾ系金属錯体化合物は、体積平均粒径を0.1μm以上、20μm以下に調整し使用するのが好ましく、より好ましくは0.1μm以上、10μm以下である。上記体積平均粒径を0.1μm以上20μm以下に制御することで、アゾ系金属錯体化合物を容易に表面層中に均一に分散することができ、これにより、表面層の摩擦帯電性が均一になり、画像濃度のムラを容易に抑制することができ好ましい。
【0059】
表面層形成用樹脂組成物は、前記アゾ系金属錯体化合物を、前記バインダー樹脂100質量部に対して1質量部以上40質量部以下有することが好ましく、さらに好ましくは、5質量部以上40質量部以下である。添加量を1質量部以上とすることで現像剤への過剰な摩擦帯電付与を容易に抑制することができ、40質量部以下とすることで表面層の耐久性を維持したまま現像剤への過剰な摩擦帯電付与を抑制することが容易に可能となる。
【0060】
(導電性粒子)
導電性粒子は、現像スリーブ4の分野で公知の導電性粒子を適宜選択して用いることができる。この導電性粒子としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属の微粉末、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリ
ブデン、チタン酸カリウム等の導電性金属酸化物、結晶性グラファイト、各種カーボンファイバー、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等の導電性カーボンブラック、更には金属繊維を挙げることができる。また、これらを1種、または2種以上用いても良い。
【0061】
これらのうち、分散性及び電気伝導性に優れることから、特にカーボンブラック、グラファイトが好ましい。これらのうち、導電性のアモルファスカーボンは、特に電気伝導性に優れ、高分子材料に充填して導電性を付与し、その添加量をコントロールするだけで、ある程度任意の導電度を得ることができるため好適である。また塗料にした場合のチキソ性効果により分散安定性・塗工安定性も良好となる。また、導電性粒子の体積平均粒径は、分散安定性の観点から10nm以上、樹脂組成物の抵抗均一性の観点から20μm以下が好ましい。
【0062】
表面層形成用樹脂組成物中の導電性粒子の含有量は、その粒径によっても異なるが、結着樹脂(バインダー樹脂)100質量部に対して1質量部以上100質量部以下とすることが好ましい。1質量部以上であれば表面層の低抵抗化を向上することが容易に可能となり、100質量部以下であると、導電性樹脂の強度(摩耗性)を大きく低下させることなく、抵抗値を好適に下げることが容易に可能となる。本実施例では、平均粒径4μmの導電性アモルファスカーボンを50質量部とした。
【0063】
(その他の添加剤)
樹脂組成物には、表面層の表面粗さを均一に、且つ、適切な表面粗さを維持する観点から、凹凸形成のための凹凸付与粒子を含有させることが好ましい。凹凸付与粒子は導電性を有する必要はなく、樹脂組成物表面に凹凸形状作製を目的として添加される。この凹凸付与粒子の体積平均粒径は、凹凸付与の観点から1μm以上、樹脂組成物の耐摩耗性維持の観点から30μm以下が好ましい。また、表面層形成用樹脂組成物中の凹凸付与粒子の添加量は、バインダー樹脂100質量部に対して、添加による効果発揮の観点から5質量部以上、耐摩耗性維持の観点から100質量部以下が好ましい。本実施例においては、15μmの粒子を15質量部添加した。
【0064】
(表面層の層厚、体積抵抗値及び表面粗さ)
表面層の層厚は4μm以上50μm以下、特には6μm以上30μm以下であることが好ましい。4μm以上であれば、表面層が基体を容易に覆うことができるため表面層作製の効果を得易く、50μm以下であれば添加する材料で表面層の粗さを制御し易い。
【0065】
表面層の体積抵抗値としては、1×10-1Ω・cm以上1×103Ω・cm以下、特には、1×10-1Ω・cm以上、1×102Ω・cm以下であることが好ましい。体積
抵抗値が1×10-1Ω・cm以上1×103Ω・cm以下であれば、表面層中への導電性粒子の添加による抵抗調整が容易である。
【0066】
現像スリーブ4表面、すなわち表面層の粗さは、その現像方式によって異なるが、一般的には、JIS B0601-2001に規定の算術平均粗さ(Ra)が0.15μm以上3.00μm以下であることが好ましい。0.15μm以上かつ3.00μm以下であれば、現像スリーブ4として十分な搬送力が容易に発揮できる。
【0067】
(塗工方法)
本発明の現像スリーブ4の製造方法では、上述した、バインダー樹脂、導電性粒子、第4級ホスホニウム塩及びアゾ系金属錯体化合物を少なくとも含む塗料の塗膜を前記基体表面に形成し、その塗膜を硬化(乾燥固化でも良い)させて表面層を形成する。なお、表面層を形成するための材料を混合する際は、溶媒中にこれらの材料を分散混合して塗料化し
、前記基体表面に塗工することが好ましい。表面層作製には、前記バインダー樹脂、前記導電性粒子、前記第4級ホスホニウム塩及び前記アゾ系金属錯体化合物を、前記バインダー樹脂が溶解する溶剤(例えば、メタノールやイソプロピルアルコール等)に混合した塗料を用いることが好ましい。上記材料を分散混合するためには、ボールミル、サンドミル、アトライター、ビーズミル等の公知のメディア分散装置や、衝突型微粒化法や薄膜旋回法を利用した公知のメディアレス分散装置が好適に利用可能である。また得られた塗料の塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、静電塗工法、リング塗工法等の公知の方法が挙げられる。硬化方法としては、例えば加熱硬化法を挙げることができる。本実施例においては、塗工工程としてはスプレー法を、硬化方法としては加熱硬化法を用いた。
【0068】
<現像スリーブの凹凸付与粒子を除いた部分の表面積比S/S0>
本実施例における現像スリーブ4の微小表面粗さの測定方法について、
図7を用いて説明する。
図7は現像スリーブ4表面の表面を拡大した模式図である。凹凸付与粒子42を除いた表面層41の粗さとして、破線部Cの実測表面積Sに対する理想的な平面とした場合の理論表面積S0の表面積比S/S0を測定した。
【0069】
測定においては下記に示す方法を用いた
・形状解析レーザ顕微鏡(VK-X3000_キーエンス社製)
・レンズ:100倍
・測定エリア:40μm×40μm(大粒子を除いた位置)
※1箇所の撮影画像を4分割して測定 × 長手3エリアの計12か所の平均値
※Sは表面の実測表面積
S0は理想的な平面とした場合の理論表面積(40μm×40μm=1600μm2)・傾き補正:2次曲線補正
【0070】
測定された表面積比S/S0は、微小粗さの指標となる。ここで、
図8および
図9に、表面積比S/S0がそれぞれ異なる現像スリーブ4の表面SEM画像を示す。
図8と
図9を見比べると、明らかに微小凹凸の量や高さが違うことが分かる。本発明では、この微小凹凸を数理的に表現する方法として表面積比S/S0を用いた。
【0071】
図8に示す、微小大凸の多い現像スリーブ4表面の表面積比S/S0は、1.34であった。それに対し、
図9に示す、表面の微小凹凸が少ない現像スリーブ4の表面積比S/S0は、1.18であった。
【0072】
このように、微小凹凸が少ないと、表面積比S/S0が低くなる。表面積比S/S0は評価したエリア面積(40μm×40μm)に対して、微小凹凸部分も含めた実表面積の比である。評価エリアが全くの平面であった際には表面積比S/S0は1.00となり、凹凸が大きいほどその値は大きくなる。
【0073】
発明者らの鋭意検討によれば、この現像スリーブ4表面の表面積比S/S0が大きい場合には、凹凸の凹部に現像剤に含まれる小径添加材が入り込み融着し、蓄積しやすいことがわかった。そしてさらなる検討により、小径添加剤が蓄積することで現像スリーブ4表面が汚染され、現像スリーブ4上のトナーの帯電付与能力が阻害され適正な画像形成が行えない問題が発生しやすいことを発見した。その為、表面積比S/S0は低くすることが好ましいが、生産上皆無にすることは難しい。よって、可能な範囲でS/S0を低くすることが好ましい。
【0074】
≪現像剤≫
本発明においてトナーには、流動化剤として個数平均1次粒径が4~80nm、より好
ましくは6~50nmの無機微粉体が添加されることも好ましい。無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のために添加されるが、無機微粉体を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも可能となる。
【0075】
無機微粉体の個数平均1次粒径が80nmよりも大きい場合、或いは80nm以下の無機微粉体が添加されていない場合には良好なトナーの流動性が得られず、トナー粒子への帯電付与が不均一になり易い。この場合、カブリの増大、画像濃度の低下、消費量の増大等の問題が発生するおそれがある。一方、無機微粉体の個数平均1次粒径が4nmよりも小さい場合には、無機微粉体の凝集性が強まり、1次粒子ではなく解砕処理によっても解れ難い強固な凝集性を持つ粒度分布の広い凝集体として挙動し易い。この場合、凝集体の現像、像担持体或いはトナー担持体等を傷つけるなどによる画像欠陥を生じ易くなり好ましくない。
【0076】
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが使用でき、本実施例においては、平均一次粒径が50nmのシリカを用いた。
【0077】
≪評価≫
本実施例では、表面形状プロファイルの異なる規制ブレード6と、表面粗さS/S0の異なる現像スリーブ4を用意し、実施例1~3と比較例1~3で評価を行った。評価は、低温低湿環境(15℃/10%環境)で実際にプリント動作を行い、現像スリーブ上の汚染による画像不良の有無の比較を行った。なお、評価を低温低湿環境で行ったのは、低温低湿化においては、質量に対する静電気力の大きな小径粒子が、現像スリーブ表面へ静電的に付着することによる汚染が生じやすいからである。
【0078】
各実施例及び比較例に用いた規制ブレード6の表面パラメータを表1に示す。
【表1】
【0079】
(実施例1)
実施例1で用いた規制ブレード6は、成型ドラム上の離型面をショットブラスト法で粗面化することで表面形状を形成した。
図10はその表面形状プロファイルである。実施例1の規制ブレード6の最大高さ粗さRzは5μm、凹凸の平均間隔Smは75μm、突出山部の体積Vmpは0.07ml/m
2であった。また、現像スリーブ4の表面積比S/S0は1.34と、微小凹凸の大きいものを用いた。
【0080】
低温低湿環境において10000枚のプリントを行ったが画像不良の発生はなく、現像
スリーブ4上の汚染も確認されず、良好な状態を維持した。このように画像評価において良好な結果が得られたことを、表では「○」で示している。
【0081】
(比較例1)
比較例1では、実施例1のように成型ドラム上の離型面を粗面化するのではなく、離型面状に粒子を散布することで、
図5を用いて説明したように凹方向の粗し方で作成した規制ブレード6を用いた。比較例1で用いた規制ブレード6の表面プロファイルを
図11に示す。最大高さ粗さRzは5μm、凹凸の平均間隔Smは75μmであり、これらの値は実施例1と同等である。一方、突出山部の体積Vmpは0.03ml/m
2であり、実施例1よりも小さな値であった。これは、実施例1の場合と比べると、凸高さの均一性が低くなっていることを示す。このようになった理由は、実施例1では凸粗しによる成形を行ったのに対し、比較例1では凹粗しによる成形を行ったことによる。
【0082】
この規制ブレードを6用いて評価を行った結果、3000枚のプリントから濃度が薄くなる画像不良が発生した。この濃度薄の画像不良が発生した現像スリーブ上を観察したところ、流動化を目的として添加した微小粉体粒子であるシリカがリッチに堆積していた。このように画像評価結果において不良が見られることを、表では「×」で示している。
【0083】
これは、現像スリーブ表面に無機微粒子であるシリカが堆積することで、現像スリーブ4からトナーへの帯電特性付与が適正に行うことが出来なくなり、単位質量あたりのトナー帯電量(Q/M)が低下したことによるものである。
【0084】
比較例1と実施例1を比べると、以下のことが分かる。すなわち、比較例1と実施例1は両方とも、比較的、微小凹凸が大きい(表面積比S/S0=1.34)現像スリーブ4を用いている。このような場合、従来では比較例1のように汚染が進み、画像不良が発生することが多かった。しかし実施例1のように、規制ブレード表面の凸高さの均一性を高くすることで、画像不良を抑制することが可能となっている。
【0085】
(比較例2)
比較例2で用いた規制ブレード6は、実施例1と同じくショットブラスト法による離型面の粗面化処理を行ったが、その粗面化処理を弱めて作成した。その為、最大高さ粗さRzは2μmと低く、凹凸の平均間隔Smは150μmと広いものとなった。一方で、凸高さの安定性は維持されている為、突出山部の体積Vmpは0.07ml/m2と実施例1と同等の値であった。
【0086】
実施例1と同様に表面積比S/S0が1.34と微小粗さの大きな現像スリーブ4との組合せで、この規制ブレード6を用いた評価を行った。結果は3000枚のプリントから比較例1と同様に濃度薄の画像不良が発生した。
【0087】
これは、最大高さ粗さRzが低く、凹凸の平均間隔Smが大きいことで、表面の微小凹凸を表す表面積比S/S0が大きい現像スリーブ4表面への微小粒子であるシリカの汚染付着を効率的に除去できなかったことによるものである。
【0088】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と比べて離型面の粗面化を少しだけ弱め、最大高さ粗さRzは3μm、凹凸の平均間隔Smは100μm、突出山部の体積Vmpは0.05ml/m2とした。これ以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
【0089】
実施例2の結果として、10000枚のプリントを行い顕著な画像不良の発生は見られなかったが、現像スリーブ4表面に汚染が始まっている様子が見られた。このように画像
評価結果において顕著な不良が見られないが、汚染が始まっている様子が見られることを、表では「△」で示している。
【0090】
この実施例2の結果から、規制ブレード6の最大高さ粗さRzは3μm以上、凹凸の平均間隔Smは100μm以下、そして、突出山部の体積Vmpは0.05ml/m2以上であることが望ましいことが分かる。
【0091】
(実施例3)
現像スリーブ4の微小粗さを表す表面積比S/S0が1.18と低いこと以外は実施例
2と同様に評価を行った。すなわち、現像スリーブ4の表面の微小凹凸が実施例2と比較して少ない条件で評価を行った。結果として、10000枚のプリントを行い画像不良の発生もなく、現像スリーブ4表面への汚染も見られなかった。
【0092】
つまり、実施例2と実施例3の違いは現像スリーブ4の微小粗さを表す表面積比S/S0の違いであり、この表面積比S/S0が高いとシリカ等の微小粉体粒子が現像スリーブ4表面の微小凹凸に入り込み汚染の蓄積が生じやすいことが分かる。
【0093】
そして繰り返しとなるが、実施例2のように表面積比S/S0が大きな現像スリーブ4であっても、最大高さ粗さRzは3μm以上、凹凸の平均間隔Smは100μ以下、そして、突出山部の体積Vmpは0.05ml/m2以上の規制ブレード6を用いることで、現像スリーブ4の汚染による画像不良の発生を抑制することが可能となる。
【0094】
(比較例3)
この比較例3では、現像スリーブ4の表面積比S/S0は1.18と低いものを用いた。また、規制ブレード6の最大高さ粗さRzは5μm、凹凸の平均間隔Smが75μmと、規制ブレード6の凹凸は細かく大きいものを用いた。一方、規制ブレード6の突出山部の体積Vmpが0.04ml/m2と、小さいものを用いた。これは、規制ブレード6の表面の粗さを面で見た際の凹凸が不均一で、一部に高い凸があるが面全体で見ると凹凸の小さい部分があることを表している。
【0095】
この条件で評価を行った結果、スジ状に濃度薄となる画像不良が3000枚のプリントで発生した。そして、現像スリーブ4上を観察すると部分的に小径粒子であるシリカ汚染している部分があった。このように、最大高さ粗さRzが大きく凹凸の平均間隔Smが小さい場合にであっても、面粗さとして粗さが不均一である場合においては、局所的に汚染の堆積が生じてしまう可能性がある。
【0096】
より詳細には、最大高さ粗さRzは、規制ブレード表面での垂直方向の凹凸の高低差を規定する指標であり、凹凸の平均間隔Smは凹凸の間隔を規定する指標である。最大高さ粗さRzが大きい場合であっても、局所的に凸が形成されている可能性があり、面で見た際に全体の凸高さが均一であることが規定されているとは限らない。また、最大高さ粗さRzの規定に加えて凹凸の平均間隔Smが小さい場合であっても、前述したように局所的に高い凸となだらかに低い凸が所定間隔で形成されている可能性があり、所望の高さ以上の凸が所定間隔で形成されているとは限らない。
【0097】
すなわち、最大高さ粗さRzが大きく凹凸の平均間隔Smが小さい場合であっても、例えば、一部分の最大凸高さは大きいが面で見た際の凸高さが不均一となっている可能性が考えられる。この場合には、特に現像剤よりも小さな粒径の添加剤による現像スリーブ上への融着を安定して除去することが出来ないことがある。そのため、現像スリーブ表面が徐々に汚染され堆積し、担持される現像剤の帯電均一性が保持されず、画像不良が生じる可能性がある。したがって、規制ブレード6の表面の粗さを面で見た際の凹凸が均一に形
成されていることが重要であり、最大高さ粗さRzと凹凸の平均間隔Smと突出山部の体積Vmpを規定することで、現像スリーブ4の汚染による画像不良の発生を抑制することができる。
【0098】
ここまで、実施例1~3と比較例1~3を用いて評価を行った結果から、規制ブレード6の最大高さ粗さRzは3μm以上と高く、凹凸の平均間隔Smは100μm以下と高密度の凹凸、そして、突出山部の体積Vmpが0.05ml/m2以上と面内の凹凸の均一性が高いものを用いることが好ましいことがわかった。このようにすることで、現像スリーブ4表面への微小粒子による汚染の体積を長期にわたり安定して抑制することが可能である。
【0099】
また、追加検討として、規制ブレード6の最大高さ粗さRzをさらに大きくする方向においては20μmまで大きくすると、現像スリーブ4の汚染の堆積は見られないが、現像スリーブ4上のトナーコート状態(M/S)が不均一になり縦方向の濃度ムラが極軽微に発生した。また、最大高さ粗さRzが3μm以上で凹凸の平均間隔Smが低いものとして30μmまで評価を行ったが画像不良の発生は無かった。一方で、最大高さ粗さ5μm以上を維持しつつ凹凸の平均間隔Smが30μm未満の規制ブレード6は作成することが出来ず未確認であるが、現像スリーブ4上のトナーコートの安定性を維持するためには凹凸の平均間隔Smは30μm以上が好ましいと考えられる。
【0100】
よって、規制ブレード6の最大高さ粗さRzは3μm以上20μm未満、凹凸の平均間隔Smは30μm以上100μm以下、そして、突出山部の体積Vmpが0.05ml/m2以上とすることで、現像スリーブ4表面の微小粗さを表す表面積比S/S0が高い場合であっても、静電気力によって微小粉体粒子が現像スリーブ4表面に付着しても効率的に除去することが可能となり、良好な画像形成を阻害する微小粉体粒子の堆積を抑制し、長期にわたり安定した画像形成を可能とすることが出来る。
【0101】
さらに追加検討として、現像スリーブ4の表面積比S/S0と規制ブレード6の関係についても考察した。ここで、表面積比S/S0が大きくなるほど、現像スリーブ4の耐久性は高くなるものの、汚染が進みやすいことが分かっている。例えば表面積比S/S0=1.34の場合と表面積比S/S0=1.18の場合を比べると、前者の方が耐久性は高い反面、汚染が進みやすい。発明者の検討によれば、表面積比S/S0が1.20以上となった場合、汚染が進みやすいことが分かっている。しかし本発明の規制ブレード6の構成によれば、このような汚染しやすい現像スリーブ4(典型的にはS/S0≧1.20)を用いた場合でも、画像不良を抑制できる。
【0102】
以上述べたように、本発明の好適な実施例では、表面粗さの垂直方向の凹凸高さと間隔の規定に加え、三次元表面粗における突出山部の体積を好適な範囲に規定している。その結果、粒径が小さく静電的付着力の大きな現像剤添加剤による現像装置において、現像スリーブ4への融着を長期にわたり抑制し、画像品質を安定させることが可能な規制ブレード6を提供することが可能となった。
【0103】
[構成1]
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に当接して前記現像剤担持体に担持された現像剤の層の厚さを規制する規制部材と、
を備え、
前記規制部材の表面の前記現像剤担持体と当接する部分において、最大高さ粗さRz、凹凸の平均間隔Sm、ISO25178に定義される三次元表面粗さパラメータにおける突出山部の初期状態の体積Vmpとしたとき、
3≦Rz<20(μm)、
30≦Sm≦100(μm)、および、
Vmp≧0.05ml/m2
であることを特徴とする現像装置。
[構成2]
前記規制部材の表面の前記現像剤担持体との当接する部分は、凹方向の粗面処理された金型により、凸方向の粗面を持つように成形されている
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
[構成3]
前記現像剤は、平均粒径が50nm以下の疎水化処理された無機微粉体を含有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
[構成4]
前記現像剤担持体は、前記規制部材の表面の最大高さ粗さRzよりも大きな直径の凹凸付与粒子を含有し、
前記現像剤担持体の表面の実測表面積S、前記現像剤担持体の表面を理想的な平面とした場合の理論表面積S0、前記現像剤担持体の表面において前記凹凸付与粒子を除いた部分の表面積比S/S0とすると、
S/S0≧1.18
であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の現像装置
[構成5]
前記現像剤担持体の表面において、
S/S0≧1.20
であることを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
[構成6]
画像形成装置の装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、請求項1から5のいずれか1項に記載の現像装置を備えている
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
[構成7]
表面に静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に現像剤を供給して前記静電潜像を現像する現像装置と、
を備え、
前記現像装置は、請求項1から5のいずれか1項に記載の現像装置である
ことを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0104】
4:現像スリーブ、6:規制ブレード、7:現像装置