(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】アルミナ粉末、フィラー組成物、樹脂組成物、封止材、及び指紋認証センサー
(51)【国際特許分類】
C01F 7/023 20220101AFI20240826BHJP
C01F 7/027 20220101ALI20240826BHJP
C01F 7/422 20220101ALI20240826BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240826BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240826BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240826BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240826BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
C01F7/023
C01F7/027
C01F7/422
C08K3/22
C08K3/36
C08L101/00
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2022512027
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012293
(87)【国際公開番号】W WO2021200485
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2020063815
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】新田 純也
(72)【発明者】
【氏名】山口 純
(72)【発明者】
【氏名】川畑 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】平井 英明
(72)【発明者】
【氏名】西 泰久
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193493(JP,A)
【文献】特開2009-246251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/02
C08K 3/22
C08K 3/36
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ粒子を含む、アルミナ粉末であって、
前記アルミナ粒子のうち、顕微鏡法による投影面積円相当径が50nm以上であるアルミナ粒子の平均球形度が0.80以上であり、粒子径が75μm以上であるアルミナ粒子の含有率が0.05質量%以下であり、
前記アルミナ粉末の平均粒子径が、0.2μm以上15μm以下であり、
前記平均粒子径は、レーザー回折光散乱式粒度分布測定機によって測定された粒子径であり、
下記の測定方法によって測定された、前記アルミナ粉末に含まれる水分量が、30ppm以上500ppm以下である、アルミナ粉末。
(測定方法)
前記アルミナ粉末1gを常温から900℃まで加熱昇温させて、500℃以上900℃以下で発生した水分量をカールフィッシャー電量滴定法にて測定する。
【請求項2】
粒子径が25μm以上75μm未満であるアルミナ粒子の含有率が0.1質量%以下である、請求項1に記載のアルミナ粉末。
【請求項3】
粒子径が1μm以下であるアルミナ粒子の含有率が1質量%以上35質量%以下であり、顕微鏡法による投影面積円相当径が50nm以上1μm以下であるアルミナ粒子の平均球形度が0.80以上である、請求項1又は2に記載のアルミナ粉末。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミナ粉末と、シリカとを含む、フィラー組成物。
【請求項5】
樹脂と、請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミナ粉末又は請求項4に記載のフィラー組成物とを含む、樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物を含む、封止材。
【請求項7】
請求項6に記載の封止材を含む、指紋認証センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ粉末、フィラー組成物、樹脂組成物、封止材、及び指紋認証センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の電子化及びネットワーク化が大きく進展し、企業や個人の機密情報管理が重要となっている。これらの機密情報へのアクセス管理においては、本人認証機能が必要となり、高度な認証機能が必要な分野には、指紋認証機能の普及が進んでいる。
【0003】
指紋認証には、光学型、感熱型、及び静電容量型等があるが、スマートフォンやタブレットに代表されるモバイル端末においては、高信頼性、高解像度、及び小型化の観点から、静電容量型の指紋認証が多く採用されている。静電容量型の指紋認証は指紋の微妙な凹凸による静電容量の差を精度良く検知する必要があり、指紋認証システムの静電容量を高めるために、指紋認証センサーを保護する封止材の高誘電化が要望されている。封止材の高誘電化のためには、アルミナ粉末などの誘電材料が用いられている(特許文献1等)。
【0004】
指紋認証センサーは、通常、半導体チップ上に配され、半導体チップと指紋認証センサーとは、金ワイヤに代表されるワイヤにより接続されている。そして、指紋認証センサーは、このワイヤと共に、封止材により封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近の指紋認証センサーでは、小型化の点から、金ワイヤに代表されるワイヤの細線化が進んでいるが、それに伴い、封止時において、封止材の流動圧力やワイヤへのフィラーの衝突によりワイヤが変形する、いわゆるワイヤ流れが発生する。そのため、指紋認証センサーの不良率が増加するとの問題がある。一方、ワイヤ流れを改善するために、封止材の粘度を低下させると、金型のエアーベント部から封止材が溢れ出る現象、いわゆるバリが発生する。以上から、誘電材料を含む最先端の封止材には、ワイヤ流れ及びバリの発生を抑制して封止できる特性が要求される。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、封止時におけるワイヤ流れ及びバリの発生を抑制できる、アルミナ粉末、並びにそのアルミナ粉末を含むフィラー組成物、樹脂組成物、封止材、及び指紋認証センサーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定のアルミナ粒子を含む特定のアルミナ粉末を用いることで、封止時におけるワイヤ流れ及びバリの発生を抑制できるフィラー組成物、樹脂組成物、封止材、及び指紋認証センサーを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]アルミナ粒子を含む、アルミナ粉末であって、前記アルミナ粒子のうち、顕微鏡法による投影面積円相当径が50nm以上であるアルミナ粒子の平均球形度が0.80以上であり、粒子径が75μm以上であるアルミナ粒子の含有率が0.05質量%以下であり、前記アルミナ粉末の平均粒子径が、0.2μm以上15μm以下であり、前記平均粒子径は、レーザー回折光散乱式粒度分布測定機によって測定された粒子径であり、下記の測定方法によって測定された、前記アルミナ粉末に含まれる水分量が、30ppm以上500ppm以下である、アルミナ粉末。
(測定方法)
前記アルミナ粉末1gを常温から900℃まで加熱昇温させて、500℃以上900℃以下で発生した水分量をカールフィッシャー電量滴定法にて測定する。
【0009】
[2]粒子径が25μm以上75μm未満であるアルミナ粒子の含有率が0.1質量%以下である、[1]に記載のアルミナ粉末。
[3]粒子径が1μm以下であるアルミナ粒子の含有率が1質量%以上35質量%以下であり、顕微鏡法による投影面積円相当径が50nm以上1μm以下であるアルミナ粒子の平均球形度が0.80以上である、[1]又は[2]に記載のアルミナ粉末。
[4][1]~[3]のいずれかに記載のアルミナ粉末と、シリカとを含む、フィラー組成物。
[5]樹脂と、[1]~[3]のいずれかに記載のアルミナ粉末又は[4]に記載のフィラー組成物とを含む、樹脂組成物。
【0010】
[6][5]に記載の樹脂組成物を含む、封止材。
[7][6]に記載の封止材を含む、指紋認証センサー。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、封止時におけるワイヤ流れ及びバリの発生を抑制できる、アルミナ粉末、並びにそのアルミナ粉末を含むフィラー組成物、樹脂組成物、封止材、及び指紋認証センサーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0013】
本実施形態のアルミナ粉末は、特定のアルミナ粒子を含む。以下、特に説明しない限り、本実施形態に係るアルミナ粒子を単に「アルミナ粒子」とも称し、本実施形態に係るアルミナ粒子を含むアルミナ粉末を単に「アルミナ粉末」とも称す。
【0014】
[アルミナ粉末]
アルミナ粒子のうち、下記の顕微鏡法による投影面積円相当径が50nm以上であるアルミナ粒子の平均球形度は、0.80以上であり、0.86以上0.98以下であることが好ましい。そのアルミナ粒子の平均球形度が上記範囲であると、樹脂にアルミナ粉末を充填しても増粘しにくくなり、封止材の粘度が好適な範囲となり、封止時において、封止材の流動圧力によるワイヤの変形を抑制できる。また、その平均球形度が上記範囲であると、金型のエアーベント部から封止材が溢れ出ることも抑制できる。本実施形態において、球形度、及び平均球形度は、例えば、下記の顕微鏡法により測定される。すなわち、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡等にて撮影した粒子像(写真、倍率:2000倍)を画像解析装置に取り込み、その粒子像から粒子の投影面積(SA)と周囲長(PM)を測定する。その周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円の面積を(SB)とすると、その粒子の球形度はSA/SBとなる。よって、試料の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、SB=πr2であるから、SB=π×(PM/2π)2となり、個々の粒子の球形度は、球形度=SA/SB=SA×4π/(PM)2となる。投影面積円相当径が50nm以上である任意の粒子200個の球形度を上記のようにして求め、また、個々の粒子の球形度の相加平均値を平均球形度とする。なお、投影面積円相当径の上限は、通常50μmである。なお、具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。また、投影面積円相当径は、粒子の投影面積(SA)と同一の投影面積を持つ真円の直径を指す。
【0015】
アルミナ粒子のうち、粒子径が75μm以上であるアルミナ粒子の含有率は0.05質量%以下であり、0.02質量%以下であることが好ましい。アルミナ粒子の粒子径が75μm以上であると、アルミナ粒子がワイヤに衝突した際にワイヤが変形しやすくなるが、そのようなアルミナ粒子の含有率を0.05質量%以下にすることにより、アルミナ粒子のワイヤへの衝突頻度を低減できるので、ワイヤ流れを抑制することが可能となる。また、アルミナ粒子の含有率を0.05質量%以下にすると、得られる指紋認証センサーの表面平滑性を保つことが容易となり、感度が向上する。含有率の下限は、例えば、0質量%である。本実施形態において、粒子径は、レーザー回折光散乱式粒度分布測定機によって測定される。具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。
【0016】
アルミナ粉末の平均粒子径は、0.2μm以上15μm以下である。平均粒子径が上記範囲にあると、樹脂にアルミナ粉末を充填しても増粘しにくくなり、封止材の粘度が好適な範囲となり、封止時において、封止材の流動圧力によるワイヤの変形を抑制できる。また、平均粒子径が上記範囲にあると、金型のエアーベント部から封止材が溢れ出ることも抑制できる。更に、平均粒子径が上記範囲にあると、得られる指紋認証センサーの表面平滑性を保つことができるとの効果も奏する。平均粒子径が0.2μm以上であると、アルミナ粉末を樹脂に充填した際に微粒子の存在に伴う封止材の粘度の上昇を抑制し、ワイヤ流れを低減することができる。平均粒子径が15μm以下であると、樹脂に充填した際に封止材のバリを低減することができる。なお、本実施形態において、平均粒子径は、レーザー回折光散乱式粒度分布測定機によって測定される。具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。
【0017】
下記の測定方法によって測定された、アルミナ粉末に含まれる水分量は、30ppm以上500ppm以下であり、50ppm以上450ppm以下であることが好ましい。
(測定方法)
アルミナ粉末1gを常温から900℃まで加熱昇温させて、500℃以上900℃以下で発生した水分量をカールフィッシャー電量滴定法にて測定する。具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。
水分量が上記範囲にあると、樹脂にアルミナ粉末を充填しても増粘しにくくなり、封止材の粘度が好適な範囲となり、封止時において、封止材の流動圧力によるワイヤの変形を抑制できる。また、水分量が上記範囲にあると、金型のエアーベント部から封止材が溢れ出ることも抑制できる。更に、水分量が上記範囲にあると、得られる指紋認証センサーの表面平滑性を保つことができるとの効果も奏する。
【0018】
本発明者らは、この理由について定かではないが、下記のように推定している。ただし、理由はこれに限定されない。
500℃以上900℃以下で発生する水分は、主として、アルミナ粉末の表面におけるヒドロキシル基に由来すると推定されるので、アルミナ粉末には、少量のヒドロキシル基を有していると推定される。通常、樹脂は疎水性であるため、アルミナ粉末表面にヒドロキシル基が多く存在すると、樹脂とアルミナ粉末との親和性が低く、封止材の流動圧力を制御しにくくなる。また、アルミナ粉末が樹脂に保持しにくくなるため、アルミナ粒子のワイヤへの衝突頻度も多くなる。更に、アルミナ粉末から樹脂が突出しやすくなるため、封止材を有する指紋認証センサーの表面平滑性を保つことも難しくなる。一方、アルミナ粉末表面のヒドロキシル基が少ないと、樹脂との親和性は良好となるが、粘度が高くなるため、金型のエアーベント部から封止材が溢れ出る、いわゆるバリの発生が生じやすくなる。本実施形態では、アルミナ表面のヒドロキシル基に由来する水分量が上記範囲にある結果、樹脂との親和性を適度に保持することができるため、ワイヤ変形及びバリの発生が抑制され、得られる指紋認証センサーの表面平滑性を保つことができるとの効果も奏すると推定される。
【0019】
アルミナ粒子のうち、粒子径が25μm以上75μm未満であるアルミナ粒子の含有率は、0.1質量%以下であることが好ましい。この含有率の下限は、例えば、0質量部%以上である。具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。
この含有率が上記範囲にあると、樹脂にアルミナ粉末を充填しても増粘しにくくなり、封止材の粘度が好適な範囲となり、封止時において、封止材の流動圧力によるワイヤの変形を更に抑制できる傾向にある。また、この含有率が上記範囲にあると、得られる指紋認証センサーの表面平滑性をより良好に保つことができるとの効果も奏する。アルミナ粒子の粒子径が25μm以上であると、アルミナ粒子がワイヤに衝突した際にワイヤが変形しやすくなるが、そのようなアルミナ粒子の含有率を0.1質量%以下にすることにより、アルミナ粒子のワイヤへの衝突頻度を低減できるので、ワイヤ流れを抑制することが可能となる傾向にある。また、アルミナ粒子の含有率を0.1質量%以下にすると、得られる指紋認証センサーの表面平滑性を保つことが容易となり、感度が向上する傾向にある。
【0020】
アルミナ粒子のうち、粒子径が1μm以下であるアルミナ粒子の含有率は、1質量%以上35質量%以下であることが好ましい。この含有率が上記範囲にあると、樹脂にアルミナ粉末を充填しても増粘しにくくなり、封止材の粘度が好適な範囲となり、封止時において、封止材の流動圧力によるワイヤの変形を更に抑制できる傾向にある。また、この含有率が上記範囲にあると、金型のエアーベント部から封止材が溢れ出ることもより抑制できる傾向にある。粒子径が1μm以下であるアルミナ粒子の含有率が35質量%以下であると、粗粒子による粘度の上昇をより抑制し、封止材の流動圧力を更に制御しやすくなる。一方、その含有率が1質量%以上であると、微粒子による伝搬経路がより形成しやすくなり、更に高い誘電性を有する高誘電体が得られやすく傾向にある。具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。
【0021】
アルミナ粒子のうち、上記の顕微鏡法による投影面積円相当径が50nm以上1μm以下であるアルミナ粒子の平均球形度は、0.80以上であることが好ましく、0.80以上0.98以下であることがより好ましい。平均球形度が上記範囲にあると、樹脂にアルミナ粉末を充填しても増粘しにくくなり、封止材の粘度が好適な範囲となり、封止時において、封止材の流動圧力によるワイヤの変形を更に有効に抑制できる。また、この平均球形度が上記範囲にあると、金型のエアーベント部から封止材が溢れ出ることもより有効に抑制できる。
【0022】
アルミナ粉末の比表面積は、封止材の良好な流動性を維持するという点から、1.0m2/g以上15m2/g以下であることが好ましく、1.5m2/g以上10m2/g以下であることがより好ましい。なお、本実施形態において、比表面積の測定は、BET法に基づく値であり、例えば、次の方法で測定される。すなわち、マウンテック社製比表面積測定機「Macsorb HM model-1208(商品名)」を用い、アルミナ粒子1.0gを用い、BET一点法にて測定する。なお、測定に先立ち、前処理として、アルミナ粒子について、窒素ガス雰囲気中で300℃、及び5分間加熱を行う。また、BET測定において、吸着ガスには、窒素30%、及びヘリウム70%の混合ガスを用い、本体流量計の指示値が25ml/minになるように流量を調整する。
【0023】
[アルミナ粉末の製造方法]
アルミナ粉末を得る際に用いられる原料としては、例えば、金属アルミニウム粉末、水酸化アルミニウム粉末若しくはそのスラリー、及びアルミナ粉末若しくはそのスラリーが挙げられるが、それらの中でも、金属アルミニウム粉末、及びアルミナ粉末が好ましい。原料としては、平均粒子径が1μm以上20μm以下の範囲にある、金属アルミニウム粉末、及び/又は金属アルミニウム粉末を適宜用いることが好ましい。また、アルミナ粉末は、アルミナを溶融、冷却、及び粉砕して電融アルミナ粉砕物を調製後、その粉砕物から分級処理して得られたアルミナ粉末であってもよい。金属アルミニウム粉末、及びアルミナ粉末は、市販品であってもよい。
【0024】
金属アルミニウム粉末、及びアルミナ粉末を、球状化するには、通常、火炎溶融法が用いられる。この方法によれば、球状化させやすい利点がある。
【0025】
金属アルミニウム粉末、及びアルミナ粉末は、金属アルミニウム粉末、アルミナ粉末を酸素、及び空気等の気体に分散させた乾式フィード法により、火炎中に噴霧供給する。噴霧方法としては、スプレードライヤーで用いられているような噴霧ノズルを利用できるが、強力な分散機能を有するフィード法で十分に分散させることが重要となり、例えば、エゼクタノズル形状にしたフィード管部を用いて、高速空気流によるせん断力による分散を利用したリングノズル方式で行うことが好ましい。
【0026】
火炎を形成するには、水素、天然ガス、アセチレンガス、プロパンガス(LPガス)、及びブタン等の燃料ガスと、空気、及び酸素等の助燃ガスとをノズルから噴射・燃焼させればよい。また、火炎溶融は、得られるアルミナ粉末のカールフィッシャー電量滴定法の水分量を調整するために、常時、イオン交換水等の水を供給し、雰囲気中の水蒸気濃度を変化させながら行う。水の噴霧は、例えば、噴霧ノズルを利用でき、ノズルの分散ガスには、通常、加圧した空気を使用する。噴霧する水の温度は、通常、室温(25℃)程度に管理することが好ましい。火炎温度は、2050℃以上2300℃以下に保持することが好ましい。火炎温度が2300℃より高いと急冷効果が得られにくくなり、また、火炎温度が2050℃より低いと高い球形度を実現することが難しくなる。火炎温度は、例えば、燃料ガスの供給量を変えることにより制御できる。また、燃料ガスの供給量を3Nm3/時間以上15Nm3/時間以下の範囲で、助燃ガスの供給量を15Nm3/時間以上75Nm3/時間以下の範囲で、及び水の供給量を30L/時間以上90L/時間以下の範囲で、それぞれ適宜変化させることにより、平均球形度、平均粒子径、アルミナ粉末に含まれる水分量の異なるアルミナ粉末を作製することができる。
【0027】
火炎中に噴射された金属アルミニウム粉末、及びアルミナ粉末は、高温の熱処理を受けて、アルミナ粉末の球状化が行われる。
【0028】
熱処理された粉末は、排ガスと共にブロワー等で吸引され、サイクロンやバグフィルターの捕集器で捕集される。その際の捕集温度は、好ましくは500℃以上である。捕集器の材質からその上限は1100℃程度であることが好ましい。また、捕集温度を500℃以上にすることにより、その他の陽イオン不純物や陰イオン不純物が多く混入するのを抑制し、アルミナ粉末の中性度をより十分にすることが可能となる。
【0029】
また、得られたアルミナ粉末に対しては、例えば、JIS規格のステンレス製試験用篩等を用いて、分級処理を行い、粒子径が75μm以上であるアルミナ粒子の含有率、及び粒子径が25μm以上75μm未満であるアルミナ粒子の含有率をそれぞれ調整することが好ましい。
【0030】
[フィラー組成物及びその製造方法]
本実施形態に係るフィラー組成物(以下、単に「フィラー組成物」とも称す)は、本実施形態に係るアルミナ粉末と、シリカとを含む。本実施形態に係るフィラー組成物は、アルミナ粉末とシリカとを含むことにより、流動性が向上し、封止材の流動圧力によるワイヤの変形を好適に抑制できる。
【0031】
(シリカ)
シリカとしては、例えば、結晶シリカ、非晶質シリカ、石英、ヒュームドシリカ、及び無水ケイ酸等公知のシリカを用いることができる。中でも、封止材として用いた際の絶縁性、及び耐湿安定性の観点から、非晶質シリカが好ましい。
【0032】
シリカは、上記の顕微鏡法による投影面積円相当径が0.05μm以上であるシリカの平均球形度が、0.85以上であることが好ましい。シリカの平均球形度が上記範囲であると、樹脂にアルミナ粉末と共にシリカを充填した場合に、アルミナ粉末の間隙にシリカが入り込む際の摩擦抵抗を低下させることができる。その結果、それらの粒子を充填した樹脂は増粘しにくくなり、封止材の粘度が好適な範囲となり、封止時において、封止材の流動圧力によるワイヤの変形を抑制できる。また、金型のエアーベント部から封止材が溢れ出ることも抑制できる。
【0033】
シリカには、平均粒子径が0.05μm以上1.5μm以下のシリカを用いることが好ましい。このようなシリカを用いると、アルミナ粉末の間隙にシリカが効率良く入り込むことができ、封止材として使用した際のワイヤ流れ量の低減、及びバリ低減効果をより高めることができる。
【0034】
シリカは、公知の表面処理を用いて表面処理されていてもよい。
【0035】
(シリカの製造方法)
シリカの製造方法は、例えば、(1)金属シラン粒子を化学炎や電気炉等で形成された高温場に投じて酸化反応させながら球状化する方法、(2)金属シラン粒子のスラリーを火炎中に噴霧して酸化反応させながら球状化する方法、(3)コロイダルシリカと呼ばれる珪酸ナトリウム等の珪酸アルカリ金属塩を原料とし、中和やイオン交換により金属イオンを除去して製造する方法、(4)テトラエトキシシラン等のアルコキシシランを原料とし、有機溶媒中で加水分解、及び縮合して製造する方法などが挙げられる。
【0036】
(アルミナ粉末及びシリカの含有率)
フィラー組成物が、アルミナ粉末と、シリカを含む場合、封止時におけるワイヤ流れ及びバリの発生を好適に抑制でき、更に流動性が向上し、封止材の流動圧力によるワイヤの変形をより好適に抑制できる点から、フィラー組成物100体積%に対して、アルミナ粉末を、85体積%以上99.8体積%以下で含むことが好ましく、90体積%以上98体積%以下で含むことがより好ましい。また、シリカは、フィラー組成物100体積%に対して、0.02体積%以上15体積%以下で含まれることが好ましく、2体積%以上10体積%以下で含まれることがより好ましい。
【0037】
(フィラー組成物の製造方法)
本実施形態のフィラー組成物としては、本実施形態に係るアルミナ粉末1種をそのまま用いてもよい。また、本実施形態に係るフィラー組成物は、2種以上のアルミナ粉末を適宜混合することで得られてもよい。さらに、本実施形態に係るフィラー組成物は、本実施形態に係るアルミナ粉末と、シリカとを適宜混合することで得られてもよい。混合方法としては、例えば、ボールミル混合が挙げられる。
【0038】
[樹脂組成物及びその製造方法]
本実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂と、本実施形態に係るアルミナ粉末又はフィラー組成物とを含む。本実施形態に係る樹脂組成物は、アルミナ粉末を含むことにより、封止時におけるワイヤ流れ及びバリの発生を好適に抑制できる。また、本実施形態に係る樹脂組成物は、フィラー組成物を含むことにより、アルミナ粉末を含むことによる効果に加えて、更に流動性が向上し、封止材の流動圧力によるワイヤの変形をより好適に抑制できる。
【0039】
(樹脂)
樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で、又は2種以上を適宜混合して用いることができる。
【0040】
(アルミナ粉末、フィラー組成物、及び樹脂の含有率)
本実施形態の樹脂組成物において、樹脂組成物100質量%に対して、本実施形態に係るアルミナ粉末の含有率が、10質量%以上95質量%以下であることが好ましく、30質量%以上93質量%以下であることがより好ましい。また、樹脂組成物にフィラー組成物が含まれる場合、樹脂組成物100質量%に対して、本実施形態に係るフィラー組成物中に含まれるフィラー成分の合計の含有率が、10質量%以上95質量%以下であることが好ましく、30質量%以上93質量%以下であることがより好ましい。これらの場合、樹脂分(固形分)の含有率は、樹脂組成物の成形性の点から、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、7質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
(その他の成分)
本実施形態の樹脂組成物には、本実施形態の特性が損なわれない範囲において、本実施形態に係るアルミナ粉末及び樹脂以外に、必要に応じて、無機充填材、低応力化剤、ゴム状物質、反応遅延剤、硬化剤、硬化促進剤、難燃助剤、難燃剤、着色剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、光増感剤、増粘剤、滑剤、消泡剤、表面調整剤、光沢剤、シランカップリング剤、離型剤、及び重合禁止剤等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜混合して用いることができる。本実施形態の樹脂組成物において、その他の成分の含有率は、樹脂組成物100質量%に対して、通常、合計で10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよく、3質量%以下であってよく、1質量%以下であってよく、0.5質量%以下であってよい。
【0042】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、例えば、樹脂と、アルミナ粉末又はフィラー組成物と、必要に応じてその他の成分を十分に攪拌して得る方法が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物は、例えば、各成分の所定量を、ブレンダー及びヘンシェルミキサー等によりブレンドした後、加熱ロール、ニーダー、及び一軸又は二軸押し出し機等によって混練し、冷却後、粉砕することによって製造することができる。
【0043】
[封止材]
本実施形態に係る封止材は、封止時におけるワイヤ流れ及びバリの発生を抑制できることから、静電容量型の指紋認証センサーを保護する封止材に好適に用いることができる。封止材は、例えば、本実施形態の樹脂組成物と、封止材料用途で一般的に用いられる各種公知の添加剤又は溶媒等とを、公知のミキサーを用いて混合することで製造することができる。混合の際の各種成分、溶媒の添加方法は、一般に公知の方法を適宜採用できる。
【0044】
[指紋認証センサー]
本実施形態に係る指紋認証センサーは、静電容量型であり、本実施形態の封止材を含むものであれば特に限定されない。本実施形態に係る指紋認証センサーは、ワイヤ流れやバリの発生などにおける不良率が低く、安価に大量に生産することが可能である。本実施形態に係る封止材を用いて指紋認証センサーを封止する方法は、例えば、トランスファーモールド法、及び真空印刷モールド法等の公知の方法を適用することができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0046】
〔評価方法〕
(1)アルミナ粒子の平均球形度
上記の顕微鏡法のとおり、走査型電子顕微鏡(日本電子社製「JSM-6301F型」(商品名))にて撮影した任意の200個の粒子像を画像解析装置(マウンテック社製「MacView」(商品名))に取り込み、写真(倍率:2000倍)から、実施例及び比較例にて得られたアルミナ粉末に含まれるアルミナ粒子のそれぞれの投影面積(SA)と周囲長(PM)を測定した。それらの値を用いて、50nm以上であるアルミナ粒子、及び50nm以上1μm以下であるアルミナ粒子における、個々の粒子の球形度を求めた。また、個々の粒子の球形度の相加平均値を平均球形度とした。
【0047】
(2)粒子径が75μm以上であるアルミナ粒子、及び粒子径が25μm以上75μm未満であるアルミナ粒子の含有率
粒子径が75μm以上であるアルミナ粒子、及び25μm以上75μm未満であるアルミナ粒子のそれぞれの含有率は、それぞれ以下の湿式篩法で測定した。セイシン企業社製ふるい分け振とう機「オクタゴンDigital(湿式ふるいユニット)(商品名)」に、目開きが75μm、又は25μmのJIS規格のステンレス製試験用篩をセットし、実施例及び比較例にて得られたアルミナ粉末10gをそれぞれ精秤したものを篩上から投入し、9.5L/分のシャワー水量で5分間振とうさせた後、篩上に残った粉末をアルミニウム製容器に移し替え、大気中120℃で60分間乾燥させ、篩上のアルミナ粉末の質量を計量した。篩上のアルミナ粉末の質量を、測定に供したアルミナ粉末の質量で除して百分率にし、篩上に残ったアルミナ粉末の割合を算出し、粒子径が75μm以上であるアルミナ粒子、及び25μm以上75μm未満であるアルミナ粒子のそれぞれの含有率(質量%)を算出した。
【0048】
(3)粒子径が1μm以下であるアルミナ粒子の含有率
実施例及び比較例にて得られたアルミナ粉末から、目開き1μmのJIS規格のステンレス製試験用篩を用いた篩上品を用いて、粒子径が1μm以下であるアルミナ粒子を分取した。その後、篩上のアルミナ粉末の質量を計量した。篩上のアルミナ粉末の質量を、測定に供したアルミナ粉末の質量で除して百分率にし、篩上に残ったアルミナ粉末の割合を算出し、粒子径が1μm以下であるアルミナ粒子のそれぞれの含有率(質量%)を算出した。
【0049】
(4)アルミナ粉末の平均粒子径
アルミナ粉末の平均粒子径は、ベックマンコールター社製レーザー回折光散乱式粒度分布測定機LS-230(商品名)を用いて測定した。測定に際して、測定対象となる、実施例及び比較例にて得られたアルミナ粉末のそれぞれ0.04gを、溶媒としてエタノール0.5mLとイオン交換水5mLとの混合液に加えて、前処理として2分間、トミー精工社製の超音波発生器UD-200(超微量チップTP-030装着)(商品名)を用いて30秒分散処理して、スラリーを得た。このスラリーを用いて、ポンプ回転数60rpmで、粒度分布を測定した。粒度分布の解析において、水及びアルミナ粒子の屈折率には、それぞれ1.333、及び1.768を用いた。粒度分布の解析は、体積部-累積で行った。測定した質量基準の粒度分布において、累積質量が50%となる粒子を平均粒子径(μm)として、アルミナ粉末の平均粒子径とした。
【0050】
(5)アルミナ粉末に含まれる水分量
アルミナ粉末1gを、水分気化装置(三菱ケミカルアナリテック社製VA-122(商品名))に入れ、電気ヒーターにて常温(25℃)から900℃まで加熱昇温させて、500℃以上900℃以下で発生した水分量をカールフィッシャー電量滴定法にて、アルミナ粉末に含まれる水分量(ppm)を測定した。
【0051】
(6)誘電性(比誘電率)、流動性(スパイラルフロー)、成形性(バリ長さ)、及びワイヤ流れ量・封止材の調製
実施例及び比較例にて得られたアルミナ粉末のそれぞれについて、封止材としての特性を評価した。具体的には、平均粒子径が1μm未満のアルミナ粉末を用いる場合には、表1における配合1にて、それ以外のアルミナ粉末を用いる場合には、表1における配合2に従って、各成分を配合し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製FM-10B型(商品名))にて1000rpmで1分間ドライブレンドした。なお、エポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製YX-4000H(商品名))、フェノール樹脂としてフェノールアラルキル樹脂(三井化学社製ミレックス(登録商標)XLC-4L(商品名))、シランカップリング剤としてエポキシ系シラン化合物(信越化学工業社製KBM-403(商品名))、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(北興化学工業社製)、及び離型剤としてカルナバワックス(クラリアント社製)を使用した。その後、同方向噛み合い二軸押出混練機(スクリュー径D=25mm、L/D=10.2、パドル回転数50rpm以上120rpm以下、吐出量3.0kg/時間、及び混練物温度94℃以上96℃以下)で加熱混練した。混練物(吐出物)をプレス機にてプレスして冷却した後、粉砕して封止材を製造した。得られた封止材を用いて、以下の方法に従って、誘電性(比誘電率)、流動性(スパイラルフロー)、成形性(バリ長さ)を評価した。
【0052】
【0053】
・誘電性(比誘電率)
トランスファー成形機を用いて、上記で得られた封止材を、直径100mm、及び厚さ3mmの円形状にそれぞれ成形し、その後、後硬化(ポストキュア)して、封止材の硬化体を作製した。トランスファー成形条件は、金型温度175℃、成形圧力7.5MPa、及び保圧時間90秒とし、ポストキュア条件は加熱温度175℃、及び加熱時間8時間とした。封止材の硬化体表面に導電性ペースト(藤倉化成社製ドータイト(登録商標)D-550(商品名))を薄く塗布し、LCRメータ(アジレント・テクノロジー社製HP4284A(商品名))、及び測定用電極(安藤電気社製SE-70(商品名))を用い、温度20℃、湿度40%、及び周波数1MHzで測定された静電容量から比誘電率を算出した。この比誘電率の値が大きいほど、誘電性が良好であることを示す。この比誘電率の値が、指紋認証センサーの封止材として使用した際の読み取り精度向上の点から、6以上であることが好ましい。
【0054】
・流動性(スパイラルフロー)
EMMI-I-66(Epoxy Molding Material Institute;Society of Plastic Industry)に準拠したスパイラルフロー測定用金型を取り付けたトランスファー成形機を用い、上記で得られた封止材のそれぞれのスパイラルフロー値(cm)を測定した。なお、トランスファー成形条件は、金型温度175℃、成形圧力7.5MPa、及び保圧時間120秒とした。このスパイラルフローの値が大きいほど、流動性が良好であることを示す。
【0055】
・成形性(バリ長さ)
2μm及び5μmのスリットを持つバリ測定用金型に、上記で得られた封止材のそれぞれを挿入し、成形温度175℃、及び成形圧力7.5MPaで成形した。その際にスリットから流れ出た封止材をノギスで測定し、それぞれのスリット幅におけるバリ長さ(mm)を測定した。このそれぞれのスリット幅のバリ長さを用いて、バリ長さの平均値を算出した。このバリ長さの平均値が短いほど、成形性が良好であることを示す。
【0056】
・ワイヤ流れ量
FC-BGA(Flip Chip Ball Grid Array)用サブストレート基板に、ダイシングダイアタッチフィルムを介して、サイズが縦8mm、横8mm、及び高さ0.3mmの評価用チップを載置し、金ワイヤで8ヶ所接続して構造体を得た。なお、金ワイヤの直径は20μmφ、金ワイヤの中心同士の距離(ピッチ)は80μm、金ワイヤ間の間隔は60μmとした。その後、構造体をトランスファー成形機の金型内に設置し、上記で得られた封止材のそれぞれを、プランジャーによりその金型内に構造体が封止されるように注入して、サイズが縦38mm、横38mm、及び高さ1.0mmのパッケージに成形後、後硬化(ポストキュア)して、模擬チップ封止材を得た。この模擬チップ封止材を、実施例及び比較例で得られた封止材毎に、それぞれ20個作製した。トランスファー成形条件は、金型温度175℃、成形圧力7.5MPa、及び保圧時間90秒とし、ポストキュア条件は加熱温度175℃、及び加熱条件8時間とした。得られた模擬チップ封止材について、それぞれの金ワイヤ部分について軟X線透過装置で観察し、パッケージングにより金ワイヤが流された最大流れ距離を測定した。この最大流れ距離の測定を20個の模擬チップ封止材の全てについて行い、得られたそれぞれの金ワイヤの最大流れ距離から平均値を算出して、この平均値をワイヤ流れ量(μm)とした。このワイヤ流れ量の値が小さいほど、高粘度であることを示す。
【0057】
[実施例1]
まず、アルミナ粉末の製造に用いる原料として、日本軽金属(株)社製アルミナLS-21(商品名)を溶融、冷却、及び粉砕して電融アルミナ粉砕物を調製した。なお、粉砕処理はボールミルで行い、粉砕メディアにはアルミナボールを用いた。
得られたアルミナ粉砕物から、分級処理によりアルミナ原料1(平均粒子径:3μm)、アルミナ原料2(平均粒子径:5μm)、アルミナ原料3(平均粒子径:8μm)、及びアルミナ原料4(平均粒子径:14μm)を調製した。
続いて、得られたアルミナ原料3を酸素ガス(ガス流量:35Nm3/時間)に同伴させて、噴霧ノズルから火炎中に供給し、製造炉内に常時、燃料ガス(LPガス、ガス流量:7Nm3/時間)、及び得られるアルミナ粉末のカールフィッシャー電量滴定法の水分量を調整するためにイオン交換水(水の供給量:90L/時間)を供給しながら、火炎溶融処理を行った。この処理により得られたアルミナ粉末を排ガスと共にブロワーによってバグフィルターに搬送し、アルミナ粉末を捕集した。なお、製造炉内へのイオン交換水の供給は、アトマックス社製アトマックスノズルBN160型を用いて、噴霧にて行った。噴霧は、ノズルの分散ガスにコンプレッサーで0.5MPに加圧した空気を使用し、噴霧する水の温度は25℃に管理した。水噴霧用ノズルは炉の中心から15°おきに2段挿入し、1段目のノズル位置は炉頂から80cmの高さ、及び2段目の位置は炉頂から100cmの高さに設置した。
得られたアルミナ粉末において、粒子径が75μm以上であるアルミナ粒子の含有率、及び粒子径が25μm以上75μm未満であるアルミナ粒子の含有率を調整するために、目開きが75μm、又は25μmのJIS規格のステンレス製試験用篩を用いて、分級を行った。
分級後のアルミナ粉末の物性を評価し、結果を表2に示した。なお、比誘電率については、6以上であった。
【0058】
[実施例2~10、及び比較例1~6]
アルミナ原料の種類、酸素ガスの供給量、燃料ガスの供給量、及びイオン交換水の供給量を表2及び3に従って変更した以外は、実施例1と同様にして、アルミナ粉末を得た。なお、実施例3、6、及び比較例3では、アルミナ原料として、金属アルミニウム粉末(平均粒子径:10μm)を用いた。
得られたアルミナ粉末の物性をそれぞれ評価し、結果を表2及び3に示した。なお、比誘電率については、比較例6以外は、6以上であったが、比較例6は、6未満であった。
【0059】
【0060】
【0061】
本出願は、2020月3月31日出願の日本特許出願(特願2020-063815)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる 。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、封止時におけるワイヤ流れ及びバリの発生を抑制できる、アルミナ粉末、並びにそのアルミナ粉末を含むフィラー組成物、及び樹脂組成物が得られる。それゆえ、本発明のアルミナ粉末、フィラー組成物、及び樹脂組成物は、封止材、及び指紋認証センサーに好適である。