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特許7543399ポリマー組成物を作製するための方法およびそれに使用するのに適した組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ポリマー組成物を作製するための方法およびそれに使用するのに適した組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20240826BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20240826BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240826BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240826BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240826BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
C08L23/12
C08K5/10
C08K5/14
C08L23/00
C08L23/06
C08L23/08
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2022519588
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 US2020055704
(87)【国際公開番号】W WO2021076708
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】62/915,368
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー、シャオヨウ
(72)【発明者】
【氏名】トレナー、スコット
(72)【発明者】
【氏名】ケラー、キース
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】トリート、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】イー、シンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ、スチトラ
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-158340(JP,A)
【文献】特開2002-037893(JP,A)
【文献】特開2008-156408(JP,A)
【文献】特開2020-196859(JP,A)
【文献】特開2017-101225(JP,A)
【文献】特表2013-519735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0289620(US,A1)
【文献】特開平07-304815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/12
C08K 5/10
C08K 5/14
C08L 23/00
C08L 23/06
C08L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物を作製するための方法であって、
(a)連続相および不連続相を含むヘテロ相熱可塑性ポリマーを準備する工程であり、前記連続相がプロピレンポリマー相であり、前記不連続相がエチレンポリマー相である、工程と、
(b)相溶化剤を準備する工程であり、前記相溶化剤が、3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールおよび個以上の炭素-炭素二重結合を含む脂肪族カルボン酸から形式的に誘導されるエステル化合物を含み、前記炭素-炭素二重結合のうちの少なくとも2個が共役している、工程と、
(c)ペルオキシド化合物を準備する工程と、
(d)前記熱可塑性ポリマー、前記相溶化剤および前記ペルオキシド化合物を溶融混合装置に供給する工程であり、前記ペルオキシド化合物は、前記熱可塑性ポリマー、前記相溶化剤および前記ペルオキシド化合物を合わせた重量に対して1~315ppmの活性酸素の初期濃度をもたらす量で前記溶融混合装置に供給し、前記相溶化剤は、前記熱可塑性ポリマー、前記相溶化剤および前記ペルオキシド化合物を合わせた重量に対して200~10,000ppmの前記エステル化合物の初期濃度をもたらす量で前記溶融混合装置に供給する、工程と、
(e)前記熱可塑性ポリマー、前記相溶化剤および前記ペルオキシド化合物を、前記熱可塑性ポリマーの融点を超える温度で前記溶融混合装置において加工して、ポリマー組成物を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記ペルオキシド化合物が、前記熱可塑性ポリマー、前記相溶化剤、および前記ペルオキシド化合物を合わせた重量に対して、5315ppmの活性酸素の初期濃度をもたらす量で前記溶融混合装置に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペルオキシド化合物が、前記熱可塑性ポリマー、前記相溶化剤、および前記ペルオキシド化合物を合わせた重量に対して、5~265ppmの活性酸素の初期濃度をもたらす量で前記溶融混合装置に供給される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペルオキシド化合物が、前記熱可塑性ポリマー、前記相溶化剤、および前記ペルオキシド化合物を合わせた重量に対して、5~215ppmの活性酸素の初期濃度をもたらす量で前記溶融混合装置に供給される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポリマー組成物を作製するための方法であって、
(a)連続相および不連続相を含むヘテロ相熱可塑性ポリマーを準備する工程であり、前記連続相がプロピレンポリマー相であり、前記不連続相がエチレンポリマー相である、工程と、
(b)相溶化剤を準備する工程であり、前記相溶化剤が、3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールおよび個以上の炭素-炭素二重結合を含む脂肪族カルボン酸から形式的に誘導されるエステル化合物を含み、前記炭素-炭素二重結合のうちの少なくとも2個が共役している、工程と、
(c)ペルオキシド化合物を準備する工程と、
(d)前記熱可塑性ポリマー、前記相溶化剤および前記ペルオキシド化合物を合わせて中間体組成物を生成する工程であり、前記ペルオキシド化合物は、前記中間体組成物中に~315ppmの活性酸素を提供する量で前記熱可塑性ポリマーおよび前記相溶化剤と合わせ、前記相溶化剤は、前記中間体組成物中に200~10,000ppmの前記エステル化合物を提供する量で前記熱可塑性ポリマーおよび前記ペルオキシド化合物と合わせる、工程と、
(e)前記中間体組成物を、前記熱可塑性ポリマーの融点を超える温度に加熱する工程と、
(f)前記中間体組成物を混合して、ポリマー組成物を生成する工程と、
(g)前記ポリマー組成物を、それが凝固する温度に冷却する工程と
を含む、方法。
【請求項6】
前記ペルオキシド化合物は、前記中間体組成物中に5~315ppmの活性酸素を提供する量で前記熱可塑性ポリマーおよび前記相溶化剤と合わせる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ペルオキシド化合物は、前記中間体組成物中に50~265ppmの活性酸素を提供する量で前記熱可塑性ポリマーおよび前記相溶化剤と合わせる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ペルオキシド化合物は、前記中間体組成物中に5~215ppmの活性酸素を提供する量で前記熱可塑性ポリマーおよび前記相溶化剤と合わせる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記連続相が、ポリプロピレンホモポリマー、ならびにプロピレンと、50wt%までのエチレンおよびC~C10α-オレフィンモノマーからなる群から選択される1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択される、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記不連続相が、エチレンホモポリマー、ならびにエチレンと、C~C10α-オレフィンモノマーからなる群から選択されるコモノマーとのコポリマーからなる群から選択される、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記連続相のプロピレン含有量が80wt%以上である、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記不連続相のエチレン含有量が8wt%以上である、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記不連続相のエチレン含有量が8wt%~80wt%である、請求項1~12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記連続相が、前記熱可塑性ポリマーの総重量の5wt%~80wt%である、請求項1~13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記エステル化合物が、前記ポリオールの前記ヒドロキシ基のそれぞれを脂肪族カルボン酸と連結させることにより形式的に誘導されている、請求項1~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリオールが2-(ヒドロキシメチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジオールである、請求項1~15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記脂肪族カルボン酸が、C~C10脂肪族カルボン酸からなる群から選択される、請求項1~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記脂肪族カルボン酸が2,4-ヘキサジエン酸である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エステル化合物が2,2-ビス[(1,3-ペンタジエニルカルボニルオキシ)メチル]ブチル2,4-ヘキサジエノエートである、請求項1~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ペルオキシド化合物が2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンである、請求項1~19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
(a)40℃以下の融点を有する熱可塑性バインダと、
(b)ペルオキシド化合物と、
(c)3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールおよび個以上の炭素-炭素二重結合を含み、前記炭素-炭素二重結合のうちの少なくとも2個が共役している脂肪族カルボン酸から形式的に誘導されるエステル化合物と
を含むマスターバッチ組成物であって、
前記ペルオキシド化合物が、前記マスターバッチ組成物の総重量に対して1wt%以上の量で前記組成物中に存在し、前記エステル化合物が、前記マスターバッチ組成物の総重量に対して1wt%以上の量で前記組成物中に存在する、マスターバッチ組成物。
【請求項22】
前記熱可塑性バインダがポリオレフィンである、請求項21に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項23】
前記ペルオキシド化合物が、前記マスターバッチ組成物の総重量に対して5wt%以上の量で前記組成物中に存在する、請求項21または請求項22に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項24】
前記エステル化合物が、前記マスターバッチ組成物の総重量に対して5wt%以上の量で前記組成物中に存在する、請求項21~23の何れか1項に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項25】
前記エステル化合物が、前記ポリオールの前記ヒドロキシ基のそれぞれを脂肪族カルボン酸と連結させることにより形式的に誘導されている、請求項21~24の何れか1項に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項26】
前記ポリオールが2-(ヒドロキシメチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジオールである、請求項21~25の何れか1項に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項27】
前記脂肪族カルボン酸が、C~C10脂肪族カルボン酸からなる群から選択される、請求項21~26の何れか1項に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項28】
前記脂肪族カルボン酸が2,4-ヘキサジエン酸である、請求項27に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項29】
前記エステル化合物が2,2-ビス[(1,3-ペンタジエニルカルボニルオキシ)メチル]ブチル2,4-ヘキサジエノエートである、請求項21~28の何れか1項に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項30】
前記ペルオキシド化合物が2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンである、請求項21~29の何れか1項に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項31】
(a)ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物、チオ化合物、およびこれらの混合物からなる群から選択される酸化防止剤と、
(b)3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールおよび個以上の炭素-炭素二重結合を含み、前記炭素-炭素二重結合のうちの少なくとも2個が共役している脂肪族カルボン酸から形式的に誘導されるエステル化合物と
を含む添加剤組成物であって、
前記酸化防止剤が、前記添加剤組成物の総重量に対して8wt%以上の量で前記添加剤組成物中に存在する、添加剤組成物。
【請求項32】
前記エステル化合物が、前記添加剤組成物の総重量に対して10wt%以上の量で前記添加剤組成物中に存在する、請求項31に記載の添加剤組成物。
【請求項33】
前記酸化防止剤が2,6-ジ-tert-ブチルフェノール化合物である、請求項31または請求項32に記載の添加剤組成物。
【請求項34】
前記エステル化合物が、前記ポリオールの前記ヒドロキシ基のそれぞれを脂肪族カルボン酸と連結させることにより形式的に誘導されている、請求項31~33の何れか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項35】
前記ポリオールが2-(ヒドロキシメチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジオールである、請求項31~34の何れか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項36】
前記脂肪族カルボン酸が、C~C10脂肪族カルボン酸からなる群から選択される、請求項31~35の何れか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項37】
前記脂肪族カルボン酸が2,4-ヘキサジエン酸である、請求項36に記載の添加剤組成物。
【請求項38】
前記エステル化合物が2,2-ビス[(1,3-ペンタジエニルカルボニルオキシ)メチル]ブチル2,4-ヘキサジエノエートである、請求項31~37の何れか1項に記載の添加剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、ポリマー組成物を作製するため、特に、比較的高いメルトフローレートと比較的高い耐衝撃性との所望の組合せを示すポリマー組成物を作製するための方法を対象とする。本出願は、そのようなポリマー組成物を作製するために使用することができるマスターバッチおよび濃厚組成物も記載する。
[背景]
[0002]ポリマー樹脂のメルトフローレート(MFR)は、一般に分子量の関数である。一般に、メルトフローレートが増大すると、樹脂を低温で加工すること、および複雑なパーツ幾何形状を満たすことが可能になる。メルトフローレートを増大させるさまざまな従来技術の方法は、樹脂を、フリーラジカル、たとえばペルオキシドを生じることが可能な化合物と押出機中で溶融ブレンドすることを含む。ポリマーの重量平均分子量が低減し、MFRが増大する。しかし、ポリオレフィンポリマーの分子量が減少することによるメルトフローレートの増大は、改質ポリマーの強度および耐衝撃性に有害な影響を有することが多くの場合に見出されている。たとえば、ポリマーの分子量の減少は、ポリマーの耐衝撃性を有意に低下させうる。この低下された耐衝撃性は、ポリマーをある特定の適用または最終用途における使用にとって不適当にしうる。したがって、現存の技術が活用される場合、ポリマーのメルトフローレートの増大と望ましくない耐衝撃性の減少との妥協点に達する必要がある。この妥協点は、メルトフローレートが所望のレベルまで増大せず、より高い加工温度が必要とされること、および/またはより低い処理量をもたらすことを多くの場合に意味する。
【0002】
[0003]したがって、ポリマーのメルトフローを増大し、同時に耐衝撃性を保存またはさらに改善もしているポリマーを生成することができる添加剤および方法の必要性が依然として存在している。本出願に記載される方法および組成物は、この継続的な必要性に対処することを目指している。
[発明の簡潔な概要]
[0004]第1の態様において、本発明は、ポリマー組成物を作製するための方法であって、
(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程と;
(b)相溶化剤を準備する工程であり、相溶化剤が、3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールおよび1個以上の炭素-炭素二重結合を含む脂肪族カルボン酸から形式的に誘導されるエステル化合物を含む、工程と;
(c)ペルオキシド化合物を準備する工程と;
(d)熱可塑性ポリマー、相溶化剤およびペルオキシド化合物を溶融混合装置に供給する工程であり、ペルオキシド化合物は、熱可塑性ポリマー、相溶化剤およびペルオキシド化合物を合わせた重量に対して約10~約315ppmの活性酸素の初期濃度をもたらす量で溶融混合装置に供給し、相溶化剤は、熱可塑性ポリマー、相溶化剤およびペルオキシド化合物を合わせた重量に対して約200~約10,000ppmのエステル化合物の初期濃度をもたらす量で溶融混合装置に供給する、工程と;
(e)熱可塑性ポリマー、相溶化剤およびペルオキシド化合物を、熱可塑性ポリマーの融点を超える温度で溶融混合装置において加工して、ポリマー組成物を形成する工程と
を含む方法を提供する。
【0003】
[0005]第2の態様において、本発明は、ポリマー組成物を作製するための方法であって、
(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程と;
(b)相溶化剤を準備する工程であり、相溶化剤が、3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールおよび1個以上の炭素-炭素二重結合を含む脂肪族カルボン酸から形式的に誘導されるエステル化合物を含む、工程と;
(c)ペルオキシド化合物を準備する工程と;
(d)熱可塑性ポリマー、相溶化剤およびペルオキシド化合物を合わせて中間体組成物を生成する工程であり、ペルオキシド化合物は、中間体組成物中に約10~約315ppmの活性酸素を提供する量で熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤と合わせ、相溶化剤は、中間体組成物中に約200~約10,000ppmのエステル化合物を提供する量で熱可塑性ポリマーおよびペルオキシド化合物と合わせる、工程と;
(e)中間体組成物を、熱可塑性ポリマーの融点を超える温度に加熱する工程と;
(f)中間体組成物を混合して、ポリマー組成物を生成する工程と;
(g)ポリマー組成物を、それが凝固する温度に冷却する工程と
を含む方法を提供する。
【0004】
[0006]第3の態様において、本発明は、
(a)約140℃以下の融点を有する熱可塑性バインダと;
(b)ペルオキシド化合物と;
(c)3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールおよび1個以上の炭素-炭素二重結合を含む脂肪族カルボン酸から形式的に誘導されるエステル化合物と
を含むマスターバッチ組成物であって、
ペルオキシド化合物が、マスターバッチ組成物の総重量に対して約1wt%以上の量で組成物中に存在し、エステル化合物が、マスターバッチ組成物の総重量に対して約1wt%以上の量で組成物中に存在する、マスターバッチ組成物を提供する。
【0005】
[0007]第4の態様において、本発明は、
(a)ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物、チオール化合物、およびこれらの混合物からなる群から選択される酸化防止剤と;
(b)3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールおよび1個以上の炭素-炭素二重結合を含む脂肪族カルボン酸から形式的に誘導されるエステル化合物と
を含む濃厚組成物であって、
酸化防止剤が、濃厚組成物の総重量に対して約8wt%以上の量で濃厚組成物中に存在する、濃厚組成物を提供する。
[発明の詳細な説明]
[0008]第1の態様において、本発明は、ポリマー組成物を作製するための方法であって、(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程と;(b)相溶化剤を準備する工程と;(c)ペルオキシド化合物を準備する工程と;(d)熱可塑性ポリマー、相溶化剤およびペルオキシド化合物を溶融混合装置に供給する工程と;(e)熱可塑性ポリマー、相溶化剤およびペルオキシド化合物を、熱可塑性ポリマーの融点を超える温度で溶融混合装置において加工して、ポリマー組成物を形成する工程とを含む方法を提供する。
【0006】
[0009]本発明の方法は、任意の適切な熱可塑性ポリマーを活用することができる。好ましい態様において、熱可塑性ポリマーはポリオレフィンポリマーである。より具体的には、熱可塑性ポリマーは、好ましくは、ポリプロピレン(たとえば、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマーおよびこれらの混合物)、ポリエチレン(たとえば、高密度ポリエチレンポリマー、中密度ポリエチレンポリマー、低密度ポリエチレンポリマー、直鎖状低密度ポリエチレンポリマーおよびこれらの混合物)、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるポリオレフィンポリマーである。
【0007】
[0010]別の好ましい態様において、熱可塑性ポリマーは、連続相および不連続相を含むヘテロ相(heterophasic)熱可塑性ポリマー、たとえばポリプロピレンインパクトコポリマーである。好ましくは、連続相はプロピレンポリマー相であり、不連続相はエチレンポリマー相である。好ましい態様において、連続相は、ポリプロピレンホモポリマー、ならびにプロピレンと、最大50wt%までのエチレンおよびC~C10α-オレフィンモノマーからなる群から選択される1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択される。好ましくは、連続相のプロピレン含有量は約80wt%以上である。連続相は、好ましくは、熱可塑性ポリマーの総重量の約5wt%~約80wt%である。
【0008】
[0011]別の好ましい態様において、不連続相は、エチレンホモポリマー、ならびにエチレンと、C~C10α-オレフィンモノマーからなる群から選択されるコモノマーとのコポリマーからなる群から選択される。好ましくは、不連続相のエチレン含有量は約8wt%以上である。より好ましくは、不連続相のエチレン含有量は、約8wt%~90wt%(たとえば、約8wt%~約80wt%)である。別の好ましい態様において、ヘテロ相熱可塑性ポリマーのエチレン含有量は、約5wt%~約30wt%である。
【0009】
[0012]特に好ましい態様において、連続相は、上記に記載されたように、ポリプロピレンホモポリマー、ならびにプロピレンと、最大50wt%までのエチレンおよびC~C10α-オレフィンモノマーからなる群から選択される1種以上のコモノマーとのコポリマーからなる群から選択され、不連続相は、上記に記載されたように、エチレンホモポリマー、ならびにエチレンと、C~C10α-オレフィンモノマーからなる群から選択されるコモノマーとのコポリマーからなる群から選択される。
【0010】
[0013]改質されうるヘテロ相熱可塑性ポリマーの例は、比較的剛性のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(連続相)および微細分散相のエチレン-プロピレンゴム(EPR)粒子により特徴づけられるインパクトコポリマーである。ポリプロピレンインパクトコポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーが最初に重合化され、エチレン-プロピレンゴムが第2段階で重合化される2段階法で作製されうる。あるいは、インパクトコポリマーは3段階以上で作製されてもよく、当該技術において知られている。適切な方法は、以下の参考文献:US 5,639,822およびUS 7,649,052 B2において見出されうる。ポリプロピレンインパクトコポリマーを作製するのに適した方法の例は、Spheripol(登録商標)、Unipol(登録商標)、Mitsuiプロセス、Novolenプロセス、Spherizone(登録商標)、Catalloy(登録商標)、Chissoプロセス、Innovene(登録商標)、Borstar(登録商標)、およびSinopecプロセスである。これらの方法は、不均一または均一Ziegler-Nattaメタロセン触媒を使用して、重合反応を触媒することができる。
【0011】
[0014]ヘテロ相熱可塑性ポリマーは、2つ以上のポリマー組成物を溶融混合し、少なくとも2つの別個の相を固体状態で形成することによって形成されうる。例として、ヘテロ相熱可塑性ポリマーは、3つの別個の相を含んでもよい。ヘテロ相熱可塑性ポリマーは、2つ以上のタイプの再生ポリオレフィン組成物の溶融混合の結果としてもたらされてもよい。したがって、ここに記載されている「ヘテロ相熱可塑性ポリマー」を提供する工程は、すでにヘテロ相であるポリマー組成物を方法に利用すること、ならびに2つ以上のポリマー組成物を方法の過程で溶融混合することを含み、2つ以上のポリマー組成物はヘテロ相熱可塑性ポリマーを形成する。たとえば、ヘテロ相熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーおよびエチレン/α-オレフィンコポリマー、たとえば、エチレン/ブタジエンエラストマーを溶融混合することによって作製されうる。適切なコポリマーの例は、Engage(商標)、Exact(登録商標)、Vistamaxx(登録商標)、Versify(商標)、INFUSE(商標)、Nordel(商標)、Vistalon(登録商標)、Exxelor(商標)、およびAffinity(商標)である。さらに、ヘテロ相熱可塑性ポリマーを形成するポリオレフィンポリマー構成成分の混和性は、組成物が系の連続相の融点を超えて加熱される場合に変動することがあり、それでも系は、冷めて凝固すると2つ以上の相を形成することが理解される。ヘテロ相熱可塑性ポリマーの例は、US 8,207,272 B2およびEP 1 391 482 B1において見出すことができる。
【0012】
[0015]本発明の一態様において、本方法に使用されるヘテロ相熱可塑性ポリマーは、不飽和結合を有する如何なるポリオレフィン構成要素も有さない。特に、ヘテロ相熱可塑性ポリマーは、プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相を含有し、プロピレンポリマー相中のプロピレンポリマーとエチレンポリマー相中のエチレンポリマーの両方は、不飽和結合を含有しない。
【0013】
[0016]ヘテロ相熱可塑性ポリマーを利用するこれらの態様の別の態様において、プロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの構成成分に加えて、ヘテロ相熱可塑性ポリマーは、エラストマー、たとえば、エラストマーエチレンコポリマー、エラストマープロピレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、たとえば、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、およびスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、プラストマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、LLDPE、LDPE、VLDPE、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ならびに非晶質ポリオレフィンを含んでもよい。ゴムは、バージンまたは再生であってもよい。
【0014】
[0017]バルクヘテロ相ポリマー組成物のある特定の特徴(相溶化剤による処理の前に測定した)は、相溶化剤の組み込みを介して実現される物理的特性の改善(たとえば、衝撃強さの増加)に影響を与えることが見出されている。特に、ヘテロ相ポリマー組成物のバルク性に関して、エチレンは、好ましくは、ヘテロ相ポリマー組成物の総重量の約6wt%以上、約7wt%以上、約8wt%以上、または約9wt%以上を占める。ヘテロ相ポリマー組成物は、好ましくは、約10wt%以上、約12wt%以上、約15wt%以上、または約16wt%以上のキシレン可溶性物質または非晶質含有物を含有する。さらに、ヘテロ相ポリマー組成物中に存在するエチレンの約5モル%以上、約7モル%以上、約8モル%以上、または約9モル%以上が、好ましくはエチレントライアド(ethylene triad)(すなわち、連続して結合している3個のエチレンモノマー単位の基)に存在する。最後に、ヘテロ相ポリマー組成物中のエチレンラン(ethylene run)(連続して結合しているエチレンモノマー単位)の数平均配列長さは、好ましくは、約3以上、約3.25以上、約3.5以上、約3.75以上、または約4以上である。エチレントライアド中のエチレンのモル%およびエチレンランの数平均配列長さは、両方とも、当該技術に既知の13C核磁気共鳴(NMR)技術を使用して測定することができる。ヘテロ相ポリマー組成物は、この段落に記載されている任意の特徴を示すことができる。好ましくは、ヘテロ相ポリマー組成物は、この段落に記載されている2つ以上の特徴を示すことができる。より好ましくは、ヘテロ相ポリマー組成物は、この段落に記載されているすべての特徴を示すことができる。
【0015】
[0018]ヘテロ相ポリマー組成物のエチレン相のある特定の特徴(相溶化剤による処理の前に測定した)は、相溶化剤の組み込みを介して実現される物理的特性の改善(たとえば、衝撃強さの増加)に影響を与えることも見出されている。組成物のエチレン相の特徴は、任意の適切な技術、たとえば、得られた画分の昇温溶出分別(TREF)または13C NMR分析を使用して測定することができる。好ましい態様では、ヘテロ相ポリマー組成物の60℃のTREF画分に存在するエチレンの約30モル%以上、約40モル%以上、または約50モル%以上が、エチレントライアドに存在する。別の好ましい態様では、ヘテロ相ポリマー組成物の80℃のTREF画分に存在するエチレンの約30モル%以上、約40モル%以上、または約50モル%以上が、エチレントライアドに存在する。別の好ましい態様では、ヘテロ相ポリマー組成物の100℃のTREF画分に存在するエチレンの約5モル%以上、約10モル%以上、約15モル%以上、または約20モル%以上が、エチレントライアドに存在する。ヘテロ相ポリマー組成物の60℃のTREF画分に存在するエチレンランの数平均配列長さは、好ましくは、約3以上、約4以上、約5以上、または約6以上である。ヘテロ相ポリマー組成物の80℃のTREF画分に存在するエチレンランの数平均配列長さは、好ましくは、約7以上、約8以上、約9以上、または約10以上である。ヘテロ相ポリマー組成物の100℃のTREF画分に存在するエチレンランの数平均配列長さは、好ましくは、約10以上、約12以上、約15以上、または約16以上である。ヘテロ相ポリマー組成物は、上記に記載されたTREF画分の特徴の何れか1つ、または上記に記載されたTREF画分の特徴の任意の適切な組合せを示すことができる。好ましい態様において、ヘテロ相ポリマー組成物は、上記に記載されたTREF画分の特徴のすべて(すなわち、上記に記載された60℃、80℃、および100℃のTREF画分におけるエチレントライアドおよび数平均配列長さの特徴)を示す。
【0016】
[0019]2つの前段落に記載された特徴を示すヘテロ相ポリマー組成物では、これらの特徴を示さないヘテロ相ポリマー組成物より好ましい応答が相溶化剤の添加に対して観察されている。特に、これらの特徴を示すヘテロ相ポリマー組成物は、本発明の方法により加工されたとき、衝撃強さに大幅な改善を示し、一方、これらの特徴を示さないヘテロ相ポリマー組成物は、同じ条件下で加工されたときにあまり著しい改善を示さない。この応答および性能における差は、異なるポリマー組成物がほぼ同じ総エチレン含有量を有する(すなわち、各ポリマー組成物中のエチレンの率がほぼ同じである)場合であっても観察されている。この結果は驚くべきものであり、予想されたものではなかった。
【0017】
[0020]本方法に活用される相溶化剤は、好ましくは、3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールおよび1個以上の炭素-炭素二重結合を含む脂肪族カルボン酸から形式的に誘導されるエステル化合物を含む。ここで使用されるとき、用語「形式的に誘導される」は、IUPAC. Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book"), compiled by A. D. McNaught and A. Wilkinson. Blackwell Scientific Publications, Oxford (1997)における「エステル」の定義と同じ意味で使用される。よって、エステル化合物はポリオールと脂肪族カルボン酸との直接反応により作製される必要はない。むしろ、エステル化合物は、ポリオールまたはその誘導体(たとえば、ポリオールのハロゲン化アルキル誘導体、またはポリオールのメタンスルホニル、p-トルエンスルホニルもしくはトリフルオロメチルスルホニルエステル)と、脂肪族カルボン酸またはその誘導体(たとえば、酸塩、脂肪族カルボン酸の酸ハロゲン化誘導体、または活性エステル誘導体、たとえば、ニトロフェノール、N-ヒドロキシスクシンイミドもしくはヒドロキシベンゾトリアゾールとのエステル)との反応によって作製することができる。エステル化合物は、好ましくは、ポリオールのヒドロキシ基のそれぞれを脂肪族カルボン酸と連結させることにより形式的に誘導される。エステル化合物がそれから形式的に誘導されるポリオールは、3個以上のヒドロキシ基を含む任意の適切なポリオール、たとえば、グリセロール、2-(ヒドロキシメチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、エリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、ペンタエリトリトールおよびこれらの混合物でありうる。好ましい態様において、ポリオールは2-(ヒドロキシメチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジオールである。
【0018】
[0021]エステル化合物がそれから形式的に誘導される脂肪族カルボン酸は、1個以上の炭素-炭素二重結合を含む任意の適切な脂肪族カルボン酸、たとえば、アクリル酸でありうる。好ましくは、脂肪族カルボン酸は、C以上の脂肪族カルボン酸からなる群から選択される。より好ましくは、脂肪族カルボン酸は、C~C18脂肪族カルボン酸(たとえば、C~C16脂肪族カルボン酸)からなる群から選択される。さらにより好ましくは、脂肪族カルボン酸は、C~C10脂肪族カルボン酸からなる群から選択される。好ましい態様において、脂肪族カルボン酸は、2個以上の炭素-炭素二重結合を含む。そのような態様において、脂肪族カルボン酸における炭素-炭素二重結合のうちで少なくとも2個は、好ましくは共役している。好ましい態様において、脂肪族カルボン酸は2,4-ヘキサジエン酸である。よって、好ましい態様において、エステル化合物は2,2-ビス[(1,3-ペンタジエニルカルボニルオキシ)メチル]ブチル2,4-ヘキサジエノエートであり、これは、1当量の2-(ヒドロキシメチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジオールと3当量の2,4-ヘキサンジエン酸から形式的に誘導されうる。
【0019】
[0022]任意の適切なペルオキシド化合物を、上記に記載された方法に使用することができる。適切なペルオキシド化合物には、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3,3,6,6,9,9-ペンタメチル-3-(酢酸エチル)-1,2,4,5-テトラオキシシクロノナン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ-tert-ブチルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルジペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド;tert-ブチルヒドロキシエチルペルオキシド、ジ-tert-アミルペルオキシドおよび2,5-ジメチルヘキセン-2,5-ジペルイソノナノエート、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルネオデカノエート、tert-ブチル-ペルネオデカノエート、tert-ブチルペルピバレート、tert-アミルペルピバレート、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(2-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジスクシノイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート、ビス(4-クロロベンゾイル)ペルオキシド、tert-ブチルペリソブチレート、tert-ブチルペルマレエート、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロ-ヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルイソノナオエート、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジベンゾエート、tert-ブチルペルアセテート、tert-アミルペルベンゾエート、tert-ブチルペルベンゾエート、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)プロパン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシド、3-tert-ブチルペルオキシ-3-フェニルフタリド、ジ-tert-アミルペルオキシド、α,α’-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,5-ジメチル-1,2-ジオキソラン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキシン2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシド、3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、p-メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンモノ-α-ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、またはtert-ブチルヒドロペルオキシドが含まれるが、これらに限定されない。好ましい態様において、ペルオキシド化合物は2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンである。
【0020】
[0023]本方法では、熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を、溶融混合装置に供給する。溶融混合装置は、熱可塑性ポリマーをそれが溶融する温度に加熱し、ポリマーが溶融している間に熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を混合することができる任意の適切な装置でありうる。熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を、加熱する前に混合することができる、または熱可塑性ポリマーを所望の温度に加熱し、続いて溶化剤およびペルオキシド化合物を添加することができる。あるいは、熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤を合わせ、次いで加熱し、続いて(たとえば、混合物がポリマーの融点を超える温度に加熱されると)ペルオキシド化合物を添加することができる。適切な溶融混合装置には、押出機、往復スクリュー式射出成形機、および高剪ミキサーが含まれるが、これらに限定されない。第1の方法の好ましい態様において、溶融混合装置は押出機である。よって、溶融混合装置が押出機である態様において、本方法は、熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を押出機に供給する工程、ならびに熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を、熱可塑性ポリマーの融点を超える温度で押出機の中に通し、それによってポリマー組成物を形成する工程を含む。押出機が使用される場合、熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を、押出機の主流入口またはホッパーに同時に供給することができる。あるいは、熱可塑性ポリマーを押出機の主流入口またはホッパーに供給し、相溶化剤およびペルオキシド化合物を、1台以上のサイドフィーダー(side feeder)を介して押出機に導入することができる。別の代替案では、熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤を押出機の主流入口またはホッパーに供給し、ペルオキシド化合物を、サイドフィーダーを介して押出機に導入することができる。
【0021】
[0024]相溶化剤およびペルオキシド化合物を任意の適切な量で溶融混合装置に供給することができる。好ましくは、相溶化剤は、熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を合わせた重量に対して、約200~約15,000ppmのエステル化合物の初期濃度をもたらす量で溶融混合装置に供給する。より好ましくは、相溶化剤は、熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を合わせた重量に対して、約200~約10,000pp(たとえば、約200~約8,000ppm、約200~約6,000ppm、または約200~約5,000ppm)のエステル化合物の初期濃度をもたらす量で溶融混合装置に供給する。
【0022】
[0025]好ましくは、ペルオキシド化合物は、熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を合わせた重量に対して、約10~約315ppmの活性酸素の初期濃度をもたらす量で溶融混合装置に供給する。より好ましくは、ペルオキシド化合物は、熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を合わせた重量に対して、約50~約315ppmの活性酸素の初期濃度をもたらす量で溶融混合装置に供給する。なおより好ましくは、ペルオキシド化合物は、熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を合わせた重量に対して、約50~約265ppmの活性酸素の初期濃度をもたらす量で溶融混合装置に供給する。最も好ましくは、ペルオキシド化合物は、熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物を合わせた重量に対して、約50~約215ppmの活性酸素の初期濃度をもたらす量で溶融混合装置に供給する。所定量のペルオキシド化合物により提供される活性酸素の量は、以下の方程式を使用して計算することができる。
【0023】
【数1】
【0024】
方程式において、nは、ペルオキシド化合物中のペルオキシドペルオキシド基の数であり、Pは、ペルオキシド化合物の純度であり、Cは、系に添加されたペルオキシド化合物の濃度(ppm)であり、Mは、ペルオキシド化合物のモル質量である。よって、純度95%の2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンが500ppmの初期濃度で添加される場合、ペルオキシド化合物は、52.5ppmの活性酸素の初期濃度をもたらす。
【0025】
[0026]上記に示されたように、熱可塑性ポリマー、相溶化剤およびペルオキシド化合物は、熱可塑性ポリマーの融点を超える温度で溶融混合装置において加工される。熱可塑性ポリマーがヘテロ相熱可塑性ポリマーであるこれらの態様において、これらの構成成分は、ヘテロ相熱可塑性ポリマーの連続相の融点を超える温度に加熱される。例として、構成成分は、好ましくは約160℃~約300℃の温度で溶融混合される。熱可塑性ポリマーがプロピレンインパクトコポリマーであるこれらの態様において、構成成分は、好ましくは約180℃~約290℃の温度で溶融混合される。
【0026】
[0027]第2の態様において、本発明は、ポリマー組成物を作製するための方法であって、(a)熱可塑性ポリマーを準備する工程と;(b)相溶化剤を準備する工程と;(c)ペルオキシド化合物を準備する工程と;(d)熱可塑性ポリマー、相溶化剤およびペルオキシド化合物を合わせて中間体組成物を生成する工程と;(e)中間体組成物を、熱可塑性ポリマーの融点を超える温度に加熱する工程と;(f)中間体組成物を混合して、ポリマー組成物を生成する工程と;(g)ポリマー組成物を、それが凝固する温度に冷却する工程とを含む方法を提供する。
【0027】
[0028]この第2の方法態様に使用される熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物は、本発明の第1の方法態様に関連して上記に考察された熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物の何れかであってもよく、第1の方法態様に関連して確認された好ましい熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物が含まれる。
【0028】
[0029]この第2の方法態様では、相溶化剤の任意の適切な量を使用することができる。好ましくは、相溶化剤は、中間体組成物中に約200~約15,000ppmのエステル化合物を提供する量で熱可塑性ポリマーおよびペルオキシド化合物と合わせる。より好ましくは、相溶化剤は、中間体組成物中に約200~約10,000ppm(たとえば、約200~約8,000ppm、約200~約6,000ppm、または約200~約5,000ppm)のエステル化合物を提供する量で熱可塑性ポリマーおよびペルオキシド化合物と合わせる。
【0029】
[0030]任意の適切な量のペルオキシド化合物を、この第2の方法態様に使用することができる。好ましくは、ペルオキシド化合物は、中間体組成物中に約10~約315ppmの活性酸素を提供する量で熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤と合わせる。より好ましくは、ペルオキシド化合物は、中間体組成物中に約50~約315ppmの活性酸素を提供する量で熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤と合わせる。なおより好ましくは、ペルオキシド化合物は、中間体組成物中に約50~約265ppmの活性酸素を提供する量で熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤と合わせる。最も好ましくは、ペルオキシド化合物は、中間体組成物中に約50~約215ppmの活性酸素を提供する量で熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤と合わせる。
【0030】
[0031]第2の方法態様は、熱可塑性ポリマー、相溶化剤、およびペルオキシド化合物が加熱される前に合わされる点において第1と異なっている。この方法を、構成成分が溶融加工、たとえば、ある特定の圧縮成形法の前にドライブレンドされる方法に利用することができる。第1の方法態様のように、構成成分は、熱可塑性ポリマーの融点を超える温度に加熱される。熱可塑性ポリマーがヘテロ相熱可塑性ポリマーである態様において、これらの構成成分は、ヘテロ相熱可塑性ポリマーの連続相の融点を超える温度に加熱される。例として、構成成分は、好ましくは約160℃~約300℃の温度に加熱される。熱可塑性ポリマーがプロピレンインパクトコポリマーである態様において、構成成分は、好ましくは約180℃~約290℃の温度に加熱される。
【0031】
[0032]如何なる特定の理論に束縛されることなく、上記に記載された方法は、ポリマーマトリックス内のポリマー鎖を連結させることによって熱可塑性ポリマーの物理的特性を改善すると考えられる。特に、熱可塑性ポリマーがヘテロ相熱可塑性ポリマーである場合、本方法は、連続相中のプロピレンポリマーと、不連続相中のエチレンポリマーとの間に結合を作り出すと考えられる。これらの結合は、ペルオキシド化合物がポリマー中のポリマー鎖を破壊し、このポリマー鎖の切断がポリマーのMFRの増大を生じる場合に作り出されると考えられる。さらに、エステル化合物中の炭素-炭素二重結合のうちの1つと反応して、ポリマー鎖とエステル化合物との間に新たな炭素-炭素二重結合を生成することができる炭素中心フリーラジカルを、これらの破壊されたポリマー鎖は有すると考えられる。この一連のポリマー鎖の切断およびエステル化合物へのフリーラジカルの付加が進行すると、ポリマー中のエステル化合物の少なくとも一部が反応して、ヘテロ相ポリマー中の異なるポリマー(たとえば、プロピレンポリマーとエチレンポリマー)の間に架橋または連結を提供すると考えられる。
【0032】
[0033]上記に記載された方法を使用して、任意の従来のポリマー加工技術、たとえば、射出成形、薄肉射出成形、一軸スクリュー配合、二軸スクリュー配合、Banbury混合、共混練機混合、二本ロール練り、シート押出、ファイバー押出、フィルム押出、パイプ押出、異型押出(profile extrusion)、押出コーティング、押出ブロー成形、射出ブロー成形、射出延伸ブロー成形(injection stretch blow molding)、圧縮成形、押出圧縮成形、圧縮ブロー成形、圧縮延伸ブロー成形(compression stretch blow forming)、熱成形、および回転成形(rotomolding)を使用して最終形態にされるポリマー組成物を生成することができる。これらの方法により形成されるポリマー組成物を使用して作製された熱可塑性ポリマー物品を多重層で構成することができ、多重層のうちの1つ、または任意の適切な数は、これらの方法により形成されるポリマー組成物を含有する。例として、典型的な最終用途製品には、容器、パッケージ、自動車部品、ボトル、拡張または発泡物品、家庭電気器具部品、クロージャー、コップ、家具、家庭用品、バッテーリーケース、クレート、パレット、フィルム、シート、ファイバー、パイプ、および回転成形品が含まれる。
【0033】
[0034]第3の態様において、本発明は、(a)熱可塑性バインダ、(b)ペルオキシド化合物、および(c)エステル化合物を含むマスターバッチ組成物を提供する。マスターバッチ組成物が、ここに記載されているペルオキシド化合物とエステル化合物の両方を含有するので、マスターバッチ組成物は、ここに記載される方法の実施に使用するのに十分に適していると考えられる。そのような使用では、マスターバッチ組成物を、ペルオキシド化合物とエステル化合物の両方の所望の初期濃度を提供する量で熱可塑性ポリマー(たとえば、ヘテロ相ポリプロピレンインパクトコポリマー)と合わせることができる。
【0034】
[0035]マスターバッチ組成物中の熱可塑性バインダは、マスターバッチ組成物の構成成分を一緒に結合することができる任意の熱可塑性物質でありうる。熱可塑性バインダは、好ましくは約140℃以下、約130℃以下、約120℃以下、より好ましくは約110℃以下、約100℃以下、約90℃以下、約80℃以下、約70℃以下、約60℃以下、または約50℃以下の融点を有する。適切な熱可塑性バインダには、ポロプロピレン、ポロプロピレンワックス、低密度ポリエチレン、ポリエチレンワックス、プロピレン/エチレンコポリマー(たとえば、ExxonMobil Chemicalにより名称「Vistamaxx」で販売されているもの)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
[0036]マスターバッチ組成物中のペルオキシド化合物およびエステル化合物は、本発明の第1の方法態様に関連して上記に考察されたペルオキシド化合物およびエステル化合物の何れかであってもよく、第1の方法態様に関連して確認された好ましいペルオキシド化合物およびエステル化合物が含まれる。よって、好ましい態様において、エステル化合物は、2,2-ビス[(1,3-ペンタジエニルカルボニルオキシ)メチル]ブチル2,4-ヘキサジエノエートである。別の好ましい態様において、ペルオキシド化合物は2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンである。最後に、マスターバッチ組成物の特に好ましい態様において、エステル化合物は、2,2-ビス[(1,3-ペンタジエニルカルボニルオキシ)メチル]ブチル2,4-ヘキサジエノエートであり、ペルオキシド化合物は2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンである。
【0036】
[0037]ペルオキシド化合物は、任意の適切な量でマスターバッチ組成物中に存在することができる。好ましくは、ペルオキシド化合物は、マスターバッチ組成物の総重量に対して約1wt%以上の量でマスターバッチ組成物中に存在する。より好ましくは、ペルオキシド化合物は、マスターバッチ組成物の総重量に対して、約2wt%以上、約3wt%以上、約4wt%以上、約5wt%以上、約6wt%以上、約7wt%以上、約8wt%以上、約9wt%以上、または約10wt%以上の量でマスターバッチ組成物中に存在する。好ましくは、ペルオキシド化合物は、マスターバッチ組成物の総重量に対して約40wt%以下の量でマスターバッチ組成物中に存在する。よって、一連の好ましい態様において、ペルオキシド化合物は、マスターバッチ組成物の総重量に対して、約1wt%~約40wt%、約2wt%~約40wt%、約3wt%~約40wt%、約4wt%~約40wt%、約5wt%~約40wt%、約6wt%~約40wt%、約7wt%~約40wt%、約8wt%~約40wt%、約9wt%~約40wt%、または約10wt%~約40wt%の量でマスターバッチ組成物中に存在する。
【0037】
[0038]エステル化合物は、任意の適切な量でマスターバッチ組成物中に存在することができる。好ましくは、エステル化合物は、マスターバッチ組成物の総重量に対して約1wt%以上の量でマスターバッチ組成物中に存在する。より好ましくは、エステル化合物は、マスターバッチ組成物の総重量に対して、約2wt%以上、約3wt%以上、約4wt%以上、約5wt%以上、約6wt%以上、約7wt%以上、約8wt%以上、約9wt%以上、または約10wt%以上の量でマスターバッチ組成物中に存在する。好ましくは、エステル化合物は、マスターバッチ組成物の総重量に対して約40wt%以下の量でマスターバッチ組成物中に存在する。よって、一連の好ましい態様において、エステル化合物は、マスターバッチ組成物の総重量に対して、約1wt%~約40wt%、約2wt%~約40wt%、約3wt%~約40wt%、約4wt%~約40wt%、約5wt%~約40wt%、約6wt%~約40wt%、約7wt%~約40wt%、約8wt%~約40wt%、約9wt%~約40wt%、または約10wt%~約40wt%の量でマスターバッチ組成物中に存在する。
【0038】
[0039]マスターバッチ組成物は、ペルオキシド化合物およびエステル化合物に加えて他のポリマー添加剤を含有することができる。適切な追加のポリマー添加剤には、酸化防止剤(たとえば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、およびこれらの組合せ)、ブロッキング防止剤(たとえば、非晶質シリカおよび珪藻土)、顔料(たとえば、有機顔料および無機顔料)ならびに他の着色剤(たとえば、染料およびポリマー着色剤)、充填剤および補強剤(たとえば、ガラス、ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、およびオキシ硫酸マグネシウムウィスカー)、核剤、清澄剤、酸捕捉剤(たとえば、脂肪酸の金属塩、たとえば、ステアリン酸の金属塩およびジヒドロタルサイト)、ポリマー加工添加剤(たとえば、フルオロポリマーポリマー加工添加剤)、ポリマー架橋剤、スリップ剤(たとえば、脂肪酸とアンモニアとの、またはアミン含有化合物との反応から誘導される脂肪酸アミド化合物)、脂肪酸エステル化合物(たとえば、脂肪酸とヒドロキシル含有化合物との反応から誘導される脂肪酸エステル化合物、たとえば、グリセロール、ジグリセロール、およびこれらの組合せ)、ならびに前述の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
[0040]上記に示されたように、マスターバッチ組成物は、上記に記載された他の構成成分に加えて核剤および/または清澄剤を含有することができる。適切な核剤には、安息香酸塩(たとえば、安息香酸ナトリウムおよび4-tert-ブチル安息香酸アルミニウム)、2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸塩(たとえば、2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸ナトリウムまたは2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸アルミニウム)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸塩(たとえば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸ニナトリウムまたはビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸カルシウム)、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸塩(たとえば、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸カルシウム、一塩基性シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸アルミニウム、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸二リチウム、またはシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ストロンチウム)、ならびにこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸塩およびシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸塩では、カルボン酸塩部分はシスまたはトランス立体配置の何れかに配置されてもよく、シス立体配置が好ましい。適切な清澄剤には、多価アルコールと芳香族アルデヒドとの縮合生成物であるトリスアミドおよびアセタール化合物が含まれるが、これらに限定されない。適切なトリスアミド清澄剤には、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸のアミド誘導体、1,3,5-ベンゼントリアミンのアミド誘導体、N-(3,5-ビス-ホルミルアミノ-フェニル)-ホルムアミドの誘導体(たとえば、N-[3,5-ビス-(2,2-ジメチル-プロピオニルアミノ)-フェニル]-2,2-ジメチル-プロピオンアミド)、2-カルバモイル-マロンアミドの誘導体(たとえば、N,N’-ビス-(2-メチル-シクロヘキシル)-2-(2-メチル-シクロヘキシルカルバモイル)-マロンアミド)、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。上記に示されたように、清澄剤は、多価アルコールと芳香族アルデヒドとの縮合生成物であるアセタール化合物でありうる。適切な多価アルコールには、非環式ポリオール、たとえば、キシリトールおよびソルビトール、ならびに非環式デオキシポリオール(たとえば、1,2,3-トリデオキシノニトールまたは1,2,3-トリデオキシノン-1-エニトール)が含まれる。適切な芳香族アルデヒドは、典型的には単一アルデヒド基を含有し、芳香族環の残りの位置は無置換であるか、または置換されている。したがって、適切な芳香族アルデヒドには、ベンズアルデヒドおよび置換ベンズアルデヒド(たとえば、3,4-ジメチルベンズアルデヒド、3,4-ジクロロベンズアルデヒド、または4-プロピルベンズアルデヒド)が含まれる。前述の反応により生成されるアセタール化合物は、モノアセタール、ジアセタール、またはトリアセタール化合物(すなわち、それぞれ1、2または3個のアセタール基を含有する化合物)であってもよく、ジアセタール化合物が好ましい。アセタールに基づいた適切な清澄剤には、米国特許5,049,605;7,157,510;および7,262,236に開示されている清澄剤含まれるが、これらに限定されない。一部の特に好ましい清澄剤には、1,3:2,4-ビス-O-(フェニルメチレン)-D-グルシトール、1,3:2,4-ビス-O-[(4-メチルフェニル)メチレン]-D-グルシトール、1,3:2,4-ビス-O-[(3,4-ジメチルフェニル)メチレン]-D-グルシトール、1,3:2,4-ビス-O-[(3,4-ジクロロフェニル)メチレン]-D-グルシトール、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン]ノニトール、およびこれらの混合物が含まれる。
【0040】
[0041]マスターバッチ組成物中に存在する場合、核剤および/または清澄剤は、任意の適切な量で存在することができる。好ましくは、核剤および/または清澄剤は、マスターバッチ組成物の総重量に対して約1wt%以上の量で存在する。より好ましくは、核剤および/または清澄剤は、マスターバッチ組成物の総重量に対して、約2wt%以上、約3wt%以上、約4wt%以上、約5wt%以上、約6wt%以上、約7wt%以上、約8wt%以上、約9wt%以上、または約10wt%以上の量でマスターバッチ組成物中に存在する。好ましくは、核剤および/または清澄剤は、マスターバッチ組成物の総重量に対して約40wt%以下の量でマスターバッチ組成物中に存在する。よって、一連の好ましい態様において、核剤および/または清澄剤は、マスターバッチ組成物の総重量に対して、約1wt%~約40wt%、約2wt%~約40wt%、約3wt%~約40wt%、約4wt%~約40wt%、約5wt%~約40wt%、約6wt%~約40wt%、約7wt%~約40wt%、約8wt%~約40wt%、約9wt%~約40wt%、または約10wt%~約40wt%の量でマスターバッチ組成物中に存在する。マスターバッチ組成物が2個以上の核剤および/または清澄剤を含む場合、両方を合わせた量は、好ましくは、上記に列挙された範囲内のものである。
【0041】
[0042]第4の態様において、本発明は、(a)酸化防止剤、および(b)エステル化合物を含む濃厚組成物を提供する。濃厚組成物は、取り扱いが容易になるように周囲温度(たとえば、およそ25℃の温度)で好ましくは固体(または、半固体)である。この態様の濃厚組成物を、エステル化合物の導入手段として上記に記載された方法に使用することができる。
【0042】
[0043]濃厚組成物は、任意の適切な酸化防止剤または酸化防止剤の混合物を含有することができる。好ましくは、濃厚組成物は、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物、チオール化合物、およびこれらの混合物からなる群から選択される酸化防止剤を含む。適切な酸化防止剤化合物には、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(CAS No.6683-19-8)、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(CAS No.2082-79-3)、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(CAS No.31570-04-4)、3,9-ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノキシ]-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(CAS No.26741-53-7)、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(CAS No.129757-67-1)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート(CAS No.41556-26-7)、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(CAS No.82919-37-7)、ジドデシル-3,3’-チオジプロピオネート(CAS No.123-28-4)、3,3’-チオジプロピオン酸ジオクタデシルエステル(CAS No.693-36-7)、およびテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレンジホスホネート(CAS No.119345-01-6)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい態様において、濃厚組成物は、ヒンダードフェノール酸化防止剤、より好ましくは2,6-ジ-tert-ブチルフェノール化合物(すなわち、少なくとも1個の2,6-ジ-tert-ブチルフェノール部分を含む化合物)を含む。
【0043】
[0044]酸化防止剤は、任意の適切な量で濃厚組成物中に存在することができる。好ましくは、酸化防止剤は、濃厚組成物の総重量に対して約5wt%以上の量で濃厚組成物中に存在する。より好ましくは、酸化防止剤は、濃厚組成物の総重量に対して、約8wt%以上または約10wt%以上の量で濃厚組成物中に存在する。好ましくは、酸化防止剤は、濃厚組成物の総重量に対して、約85wt%以下(たとえば、約80wt%以下、約70wt%以下、約60wt%以下、または約50wt%以下)の量で濃厚組成物中に存在する。よって、一連の好ましい態様において、酸化防止剤は、約5wt%~約85wt%(たとえば、約5wt%~約80wt%、約5wt%~約70wt%、約5wt%~約60wt%、もしくは約5wt%~約50wt%)、約8wt%~約85wt%(たとえば、約8wt%~約80wt%、約8wt%~約70wt%、約8wt%~約60wt%、もしくは約80wt%~約50wt%)、または約10wt%~約85wt%(たとえば、約10wt%~約80wt%、約10wt%~約70wt%、約10wt%~約60wt%、もしくは約10wt%~約50wt%)の量で濃厚組成物中に存在することができる。濃厚組成物が2種以上の酸化防止剤を含む場合、両方の酸化防止剤を合わせた量は、好ましくは、上記に列挙された範囲内のものである。
【0044】
[0045]上記に示されたように、濃厚組成物はエステル化合物を含む。濃厚組成物中のエステル化合物は、本発明の第1の方法態様に関連して上記に考察されたエステル化合物の何れかであってもよく、第1の方法態様に関連して確認された好ましいエステル化合物が含まれる。濃厚組成物は、任意の適切な量のエステル化合物を含有することができる。好ましくは、エステル化合物は、濃厚組成物の総重量に対して約1wt%以上の量で濃厚組成物中に存在する。より好ましくは、エステル化合物は、濃厚組成物の総重量に対して、約2wt%以上、約3wt%以上、約4wt%以上、約5wt%以上、約6wt%以上、約7wt%以上、約8wt%以上、約9wt%以上、または約10wt%以上の量で濃厚組成物中に存在する。好ましくは、エステル化合物は、濃厚組成物の総重量に対して、約85wt%以下(たとえば、約80wt%以下、約70wt%以下、約60wt%以下、約50wt%以下、または約40wt%以下)の量で濃厚組成物中に存在する。よって、一連の好ましい態様において、エステル化合物は、濃厚組成物の総重量に対して、約1wt%~約85wt%、約2wt%~約85wt%、約3wt%~約85wt%、約4wt%~約85wt%、約5wt%~約85wt%、約6wt%~約85wt%、約7wt%~約85wt%、約8wt%~約85wt%、約9wt%~約85wt%、または約10wt%~約85wt%の量で濃厚組成物中に存在する。
【0045】
[0046]マスターバッチ組成物と同様に、濃厚組成物は、酸化防止剤およびエステル化合物に加えて他のポリマー添加剤を含有することができる。適切な追加のポリマー添加剤には、本発明のマスターバッチ組成物に関連して上記に考察されたもの、たとえば、核剤および清澄剤が含まれる。これらのポリマー添加剤は、任意の適切な量で濃厚組成物中に存在することができる。たとえば、濃厚組成物中に存在する場合、核剤および/または清澄剤は、濃厚組成物の総重量に対して約1wt%以上の量で存在することができる。より好ましくは、核剤および/または清澄剤は、濃厚組成物の総重量に対して、約2wt%以上、約3wt%以上、約4wt%以上、約5wt%以上、約6wt%以上、約7wt%以上、約8wt%以上、約9wt%以上、または約10wt%以上の量で濃厚組成物中に存在する。好ましくは、核剤および/または清澄剤は、濃厚組成物の総重量に対して約80wt%以下の量で濃厚組成物中に存在する。よって、一連の好ましい態様において、核剤および/または清澄剤は、濃厚組成物の総重量に対して、約1wt%~約80wt%、約2wt%~約80wt%、約3wt%~約80wt%、約4wt%~約80wt%、約5wt%~約80wt%、約6wt%~約80wt%、約7wt%~80wt%、約8wt%~約80wt%、約9wt%~約80wt%、または約10wt%~約80wt%の量で濃厚組成物中に存在する。濃厚組成物が2種以上の核剤および/または清澄剤を含む場合、両方を合わせた量は、好ましくは、上記に列挙された範囲内のものである。
【0046】
[0047]以下の例は、上記に記載された主題をさらに説明するが、当然のことながら、その範囲をいかようにも制限するものとして解釈されるべきではない。
【0047】
例1
[0048]この例は、異なるエステル化合物により作製されたポリマー組成物の物理的特性における差を実証する。
【0048】
[0049]5個のポリマー組成物(試料1-1~1-5)を、下記の表1に記載された配合を使用して生成した。試料1-3~1-5は、それぞれソルビン酸エステル化合物を含有した。試料1-3はラウリルソルベート(LS)を含有し、試料1-4は1,6-ヘサンジオールジソルベート(HDS)を含有し、試料1-5は2,2-ビス[(1,3-ペンタジエニルカルボニルオキシ)メチル]ブチル2,4-ヘキサジエノエート(CAS NO.347377-00-8、以降「BPCMBH」)を含有した。それぞれのポリマー組成物に使用されたソルビン酸エステル化合物の量は、押し出される前の初期組成物中のソルビン酸エステル部分とほぼ同じ当量を提供するように選択した。ポリマー組成物を生成するため、ソルビン酸エステル化合物(使用される場合)をアセトンに溶解して、透明な溶液を得て、それを指定量のPro-fax SG702インパクトコポリマーペレット(LyondellBasell)に噴霧した。次いで、アセトンをペレットから蒸発させた。指定量の2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DBPH)をペレットに添加し、バッグの中で一緒に混合した。
【0049】
【表1】
【0050】
[0050]それぞれのポリマー組成物を生成するため、表1に列挙された組合せ成分をPrism二軸スクリュー押出機により押し出してペレットにした。回転速度を400rpmに設定し、チャンバの温度を230℃に維持した。次いで、それぞれのポリマー組成物で得られたペレットの一部分を使用して、メルトフローレートを230℃で測定した(ASTM D1238)。またそれぞれのポリマー組成物のペレットを成形して、物理的特性試験、たとえば、下記に記載されるノッチ付きアイゾッド衝撃(ISO178)および移行試験用の試験片を生成した。
【0051】
[0051]試料1-3~1-5を評価して、特定の条件下でポリマーの外へ移行したエステル化合物の量を決定した。高レベルの移動は、ソルビン酸エステル化合物が、たとえば食品容器中でポリマーと接触する物質(たとえば、食品)を汚染する可能性のために望ましくない。それぞれのポリマー組成物では、3個の三角片を、ダイカッターを使用して50ミルプラークから切断した。それぞれの三角片を別々の40mlバイアルに入れ、20mlの95%エタノールを、容積計量式ディスペンサー(volumetric dispenser)を使用してそれぞれのバイアルに添加した。バイアルを66℃に加熱し、66℃で2時間維持し、次いで室温に冷ました。プラークをバイアルから取り出し、エタノールを分析して、エタノールに移行したソルビン酸エステル化合物の量を決定した。次いで、エタノール中のソルビン酸エステル化合物の測定濃度を使用して、プラスチックの外へ移行したソルビン酸エステル化合物のパーセンテージを決定した。移行、メルトフローレート(MFR)、およびノッチ付きアイゾット衝撃試験の結果を下記の表2に記載する。
【0052】
【表2】
【0053】
[0052]1,000ppmのDBPHの添加は、ノッチ付きアイゾット衝撃における12.8から5.0kJ/mへの大幅な減少という犠牲を払って、MFRを18.3から109.1g/10分へ劇的に増大させる。試料1-3~1-5のデータに示されているように、ソルビン酸エステル化合物の添加は、ペルオキシドのみの試料(試料1-2)と比べてMFRを低減し、同時にノッチ付きアイゾット衝撃を増加している。事実、試料1-5は、ポリマー組成物のMFRがバージン樹脂のMFRより3倍大きいにもかかわらず、バージン樹脂(試料1-1)と比べて衝撃におよそ50%の増加を示した。MFRと衝撃との間には通常逆関係があり、MFRが増加すると衝撃は典型的には減少することを考慮すると、この結果は有意である。
【0054】
[0053]表1のデータは、少なくとも3個のヒドロキシ基を有するポリオールから誘導されたエステル化合物(すなわち、試料1-5に使用されたBPCMBH)が、1または2個のヒドロキシ基を有するポリオールから誘導されたエステル化合物(すなわち、試料1-3および1-4に各々使用されているLSおよびHDS)より劇的に低い移行を示したことも示す。事実、BPCMBHを用いて作製された試料は、HDSを用いて作製された試料より規模の小さな移行を示した。組成物間の実質的な差が2個の化合物の構造に僅かな差しかないことを考慮すると、移行(すなわち、2個のエステル部分から3個のエステル部分への移動)の大幅な低減は驚くべきことである。この劇的に低減された移行は、三官能性エステル化合物(すなわち、3個以上のヒドロキシ基を有するポリオールから作製されるエステル化合物)を、移行が懸念される用途(たとえば、食品接触用途)における使用にとりわけ好適にすると考えられる。
【0055】
例2
[0054]この例は、本発明により生成されるいくつかのポリマー組成物の物理的特性を実証する。
【0056】
[0055]いくつかのポリマー組成物を、下記の表3に記載されている配合を使用して市販のポリプロピレンインパクトコポリマー(Pro-fax SG702インパクトコポリマー(LyondellBasell))から生成した。一部のポリマー組成物を、本発明による相溶化剤を使用して作成し、これらは2,2-ビス[(1,3-ペンタジエニルカルボニルオキシ)メチル]ブチル2,4-ヘキサジエノエート(BPCMBH)を含有した。使用されるとき、相溶化剤をアセトンに溶解して、透明な溶液を得た。次いで、得られた溶液を指定量のポリマーペレットに噴霧し、アセトンをペレットから蒸発させた。指定量の2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DBPH)をペレットに添加し、バッグの中で一緒に混合した。これらのポリマー組成物の作製に使用したDBPHは、95%の純度を有した。
【0057】
[0056]それぞれのポリマー組成物を生成するため、表3に列挙された組合せ成分を、例1に記載された条件と同様の条件を使用してPrism二軸スクリュー押出機により押し出してペレットにした。次いで、それぞれのポリマー組成物で得られたペレットの一部分を使用して、メルトフローレートを230℃で測定し(ASTM D1238)、またそれぞれのポリマー組成物のペレットを成形して、ノッチ付きアイゾッド衝撃試験(ISO178)用の試験片を生成した。これらの測定の結果を表3に含める。
【0058】
[0057]本発明による相溶化剤の添加に起因する物理的特性の変化の決定を容易にするため、Pro-fax SG702インパクトコポリマーのMFRとアイゾッド衝撃との関係を調査した。特に、如何なる相溶化剤も含有しないポリマー組成物(すなわち、試料2-1、2-2、2-3、2-19、2-34、2-45、および2-56)のMFRおよびアイゾッド衝撃値をプロットし、趨勢線をプロットに当てはめて、ポリマーのMFRとアイゾット衝撃との間に観察された関係性を表す数式を生成した。趨勢線の当てはめは、以下の数式を生じた。
【0059】
I=1.897+12.795×e(-0.0121×MFR)
式中、Iはアイゾット衝撃値(kJ/m)であり、MFRはメルトフローレート(g/10分)である。趨勢線のR値は0.996であり、趨勢線がデータに非常に良好に当てはまっていることを示した。適合度(quality of the fit)は、このポリマーを含有する組成物のMFRが測定されると、式を使用して予測アイゾット衝撃値を計算できることも示している。この意味において、「予測アイゾット衝撃値」は、粘性破壊(vis-broken)ポリマーが如何なる相溶化剤の非存在下で所定のMFRを示すと予測される値である。相溶化剤が使用される場合には、この予測アイゾット衝撃値を測定アイゾット衝撃値と比較して、ポリマーの耐衝撃性への相溶化剤の効果を確認および定量化することができる(すなわち、下記の表3に報告されている「アイゾット衝撃の変化」)。
【0060】
【表3-1】
【0061】
【表3-2】
【0062】
【表3-3】
【0063】
【表3-4】
【0064】
[0058]表3のデータから分かるように、ペルオキシドの添加は、バージン樹脂と比べて(試料2-2、2-3、2-19、2-34、2-45および2-56を試料2-1と比較して)、樹脂のMFRの増大およびノッチ付きアイゾット衝撃の減少をもたらす。これらの変化の規模は、添加されたペルオキシドの量に正比例しており、最大の変化が3,000ppmのDBPH(315ppmの活性酸素の初期濃度をもたらす)を用いて作製された配合物で観察された。
【0065】
[0059]本発明による相溶化剤(エステル化合物BPCMBHを含有する)の添加は、ノッチ付きアイゾット衝撃へのペルオキシドの負の効果を逆転した。事実、相溶化剤に含有されているすべての構成成分は、同じMFRを有する樹脂に予測されるより高いノッチ付きアイゾット衝撃を示した(すなわち、組成物はすべて正の「アイゾット衝撃の変化」を示した)。ノッチ付きアイゾット衝撃への有益な効果は、少なくとも200ppmのBPCMBHを用いて作製された組成物において一般に観察され、変化は少なくとも500ppmのBPCMBHを用いて作製された組成物においてとりわけ顕著であった。高い添加量(たとえば、262.5ppmの活性酸素)のペルオキシドでは、ノッチ付きアイゾット衝撃の増加は、BPCMBH濃度が10,000ppmを超えるので減少すると思われる。これらの範囲内で、ノッチ付きアイゾット衝撃に最大の増加を生じる必要があるBPCMBHの量は、ペルオキシドの量/活性酸素の量に正比例している。よって、活性酸素の量が増加すると、ノッチ付きアイゾット衝撃の最高値を生じるため、より多くの量のBPCMBHを使用する必要があった。さらに、本発明による相溶化剤を用いて作製された組成物は、バージンポリマーと比べてMFRの増大を一般に維持した。しかし、この結果は、10,000ppmを超えるBPCMBHを含有した組成物の大部分では観察されず、典型的には、バージンポリマーと比較してMFRに望ましくない減少を示した。
【0066】
[0060]試料2-57~2-66および試料2-46~2-55の「アイゾット衝撃の変化」値の比較から分かるように、315ppmの活性酸素を用いて作製された組成物は、添加されたBPCMBHの量にかかわらず、262.5ppmの活性酸素を用いて作製された組成物と比べて衝撃において小さな改善を示した。如何なる特定の理論に束縛されることなく、このことは、高いペルオキシド添加量により引き起こされた過剰なポリマー鎖切断が原因であると考えられる。よって、315ppmを超える活性酸素濃度は、本発明の所望の効果を達成するには適していないと考えられる。
【0067】
[0061]ここに引用された公報、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、まるでそれぞれの参考文献がここに参照として組み込まれるため個別および特定的に示され、その全体が記載されているのと同じ程度で参照としてここに組み込まれる。
【0068】
[0062]本出願の主題を記載する文脈(とりわけ、以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」および「an」および「the」、ならびに同様の参照の使用は、ここで特に指示のない限り、または文脈により明確に否定されない限り、単数形と複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含まれる(including)」および「含有する(containing)」は、特に示されない限り、開放型用語(すなわち、「含まれるが、これらに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。ここにおける値の範囲の列挙は、単に、ここで特に指示のない限り、範囲内にあるそれぞれ別々の値を個別に参照する簡潔な方法として機能することが意図され、特に指定のない限り、それぞれ別々の値は、これがここに個別に引用されるかのように明細書に組み込まれる。ここに記載されるすべての方法は、ここで特に指示のない限り、または文脈により明確に否定されない限り、任意の適切な順番で実施することができる。ここに提供されるあらゆるすべての例、または例示的言語(たとえば、「たとえば(such as)」)は、本出願の主題をより良く解明することだけが意図され、特に主張されない限り、主題の範囲に制限を課すことはない。本明細書における言語には、任意の非クレーム要素が、ここに記載される主題の実施に必須であることを示すと解釈されるべきものはない。
【0069】
[0063]本出願の主題の好ましい態様がここに記載されており、主張される主題を実行するための本発明者たちに既知の最良の様式が含まれる。これらの好ましい態様の変形は、前述の記載を読むことによって当業者に明らかとなりうる。発明者たちは、当業者がそのような変形を適宜利用することを予測し、本発明者たちは、ここに記載された主題がここに具体的に記載された以外の方法で実施されることを意図している。したがって、本開示は、適用される法律が認める限り、添付の特許請求の範囲に引用される主題のすべての変更および等価物を含む。さらに、上記に記載された要素のすべての可能な変形の任意の組合せは、ここで特に指示のない限り、そうでなければ文脈により明確に否定されない限り、本開示に包含される。