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特許7543403トロカールの視覚的検知及びトロカールとのドッキングのためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】トロカールの視覚的検知及びトロカールとのドッキングのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20240826BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
A61B34/35
A61B17/34
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022525368
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 US2019059896
(87)【国際公開番号】W WO2021086409
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】16/670,889
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516133124
【氏名又は名称】バーブ サージカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Verb Surgical Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ゴネンコ・ベルク
(72)【発明者】
【氏名】リュー・シン
(72)【発明者】
【氏名】コルドバ・ホセ・ルイス
(72)【発明者】
【氏名】フュルスト・ベルンハルト・エイ
(72)【発明者】
【氏名】モーゼス・デニス
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア・キルロイ・パブロ
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0321115(US,A1)
【文献】特表2018-500054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0168746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/35
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ロボットシステムであって、
外科用ロボットアームの遠位端に連結されたツール駆動部であって、前記ツール駆動部が、トロカールを受容するためのドッキングインターフェースを備え、前記ドッキングインターフェースがチャンバを画定し、1つ以上のクランプ構成要素が前記チャンバ内に配置されて、前記トロカールの取り付け部分を前記ドッキングインターフェースに固定するために移動するように構成されている、ツール駆動部と、
前記トロカールの表面特徴部を視覚的に検知するように動作可能な1つ以上のセンサと、
1つ以上のプロセッサであって、
前記トロカールの前記表面特徴部を視覚的に検知するために前記1つ以上のセンサを作動させるように構成され、
前記視覚的に検知された表面特徴部に基づいて、前記トロカールの位置及び配向を決定するように構成され、また
前記ドッキングインターフェースを前記トロカールの前記決定された配向に配向させながら、前記ロボットアームを前記トロカールの前記決定された位置に向かって誘導するように、複数のアクチュエータに信号を送るように構成された、1つ以上のプロセッサと、
前記ドッキングインターフェース上に装着されたスイッチであって、前記スイッチが作動されたに、前記1つ以上のプロセッサ
i)前記1つ以上のセンサを作動させる信号を前記1つ以上のセンサに送信し
ii)前記視覚的に検知された表面特徴部に基づいて、前記トロカールの前記位置及び前記配向を特定し、及び/又は
iii)前記トロカールの前記特定された位置及び配向に基づいて、前記ロボットアームを前記トロカールに向かって誘導するための信号を生成し、生成された前記信号を前記複数のアクチュエータに送信する、
ように構成されている、スイッチと、を備える、外科用ロボットシステム。
【請求項2】
前記1つ以上のプロセッサが、前記トロカールの前記決定された位置に対して計画された軌道を生成して、前記計画された軌道に沿って前記ロボットアームを誘導するように構成されている、請求項1に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項3】
前記1つ以上のプロセッサが、前記複数のアクチュエータを制御して前記計画された軌道に沿って前記アームを自動的に駆動することによって、前記ロボットアームを誘導するように構成されている、請求項2に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項4】
前記1つ以上のプロセッサが、前記複数のアクチュエータを制御して手動で前記ロボットアームに力を印加している操作者を支援することによって、前記ロボットアームを誘導するように構成されている、請求項2に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項5】
操作者の手動による力の印加が前記ロボットアームを前記計画された軌道から離れて方向付けている場合に、前記1つ以上のプロセッサが、前記ロボットアームへの前記操作者の手動による力の印加に抵抗するために前記複数のアクチュエータを制御するように構成されている、請求項2に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項6】
前記1つ以上のプロセッサによって制御される前記複数のアクチュエータが、前記ロボットアームと前記計画された軌道との間の距離に比例する力により、前記計画された軌道から離れた、操作者の手動での前記ロボットアームの誘導に抵抗する、請求項5に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項7】
前記計画された軌道が、患者、前記患者を載せた手術台、臨床スタッフ、ケーブル、パイプ、及びその他の外科用ロボットアームのうちの1つ以上との前記ロボットアームの衝突を回避する、請求項2に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項8】
前記ロボットアームが、操作者によって手動で作動された場合に、前記1つ以上のプロセッサが前記アクチュエータのアドミタンス制御下で前記ロボットアームを誘導する第1のモードと、前記1つ以上のプロセッサが前記アクチュエータを制御して前記ロボットアームの完全な手動での誘導を可能にする第2のモードとの間で動作モードを変更する、スイッチを備える、請求項1に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項9】
前記トロカールの前記取り付け部分が、前記トロカールの上部から延在する突出部である、請求項1に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項10】
前記ドッキングインターフェース上に支持されたレバーを更に備え、前記レバーの動きが、前記1つ以上のクランプ構成要素の動きを引き起こす、請求項1に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項11】
一方向での前記レバーの動きが前記スイッチを作動させ、また反対方向での前記レバーの動きが前記1つ以上のクランプ構成要素の動きを引き起こして、前記ドッキングインターフェースを前記トロカールに固定するように、前記スイッチが位置付けられている、請求項10に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項12】
前記1つ以上のセンサが前記ドッキングインターフェース内に配置されている、請求項1に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項13】
前記ドッキングインターフェースが、その前部に連結された滅菌アダプタを備え、前記1つ以上のセンサが前記滅菌アダプタ上に装着されている、請求項12に記載の外科用ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ロボット手術の分野に関し、より具体的には、外科用ロボットのためのドッキングシステム又は外科用ロボットアームがトロカールとドッキングされる必要があるロボット支援型外科用システムにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡手術などの低侵襲手術(MIS)は、外科手術中の組織損傷を低減することを意図した技術を伴う。例えば、腹腔鏡手術は、典型的には、患者において(例えば、腹部内で)いくつかの小さな切開を作成することと、切開を通して患者内に1つ以上のツール及び少なくとも1つの内視鏡カメラを導入することと、を伴う。次に、外科手術は、導入されたツールを使用して、カメラによって提供される視覚化補助を用いて実施される。一般に、MISは、患者の瘢痕化の低減、患者の疼痛が少なく、患者の回復期間が短く、患者の回復に関連する医療治療のコストが低下するなど、複数の利点を提供する。いくつかの実施形態では、MISは、操作者からのコマンドに基づいて外科用器具を操作するための1つ以上のロボットアームを含むロボットシステムを用いて実行されてもよい。
【0003】
MISの手順では、アクセスは、トロカールを介して患者の体腔に提供される。トロカールのカニューレの遠位端が適切に位置付けられ、例えば患者の腹壁を介して患者の内部領域内へと組織を介して挿入されると、ドッキングインターフェースがトロカールの近位端(患者の外側)上の取り付け部分(例えば、嵌合インターフェース)と整列するまで、その遠位端においてトロカールドッキングインターフェースを有する外科用ロボットアーム、又はそこへと取り付けられているツール駆動部が、操作者によって手動で操作される。次に、操作者は、手動で又は自動化された工程として、トロカールの嵌合とトロカールドッキングインターフェースとを互いにラッチし、それによって、アームをトロカールに堅固に取り付ける。このようにドッキングされると、その遠位端にエンドエフェクタを有する外科用ツール(例えば、ハサミ、把持ジョー、針、エネルギーエミッタ、又はカメラ)が、次に、カニューレの上部開口部内へと挿入され、その後、更なる外科手術がアームを遠隔制御しながらツールを用いて行われ得るように、ツールがアームに取り付けられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
MIS手順では、トロカールのカニューレが適切に位置付けられ、組織を介して患者の内部領域へと挿入されると、ロボットアーム、又はそこへと取り付けられたツール駆動部は、トロカールへのロボットアームの堅固な機械的取り付けを提供するため、トロカールにドッキングされる必要がある。ロボットアーム及びトロカールを互いにそのように取り付けることにより、ロボットアームがトロカール及び1つ以上の外科用ツールとともに移動することが可能になるが、後者は、カニューレのルーメンを介して患者の内部領域内へと挿入されている。ロボットアームの遠位ブロック上に位置する、又はアームに取り付けられたツール駆動部上に位置するドッキングインターフェースは、ドッキングインターフェースがトロカールの取り付け部分(例えば、嵌合インターフェース)と整列して位置付けられる(すなわち、患者の外側に露出される)まで、アーム内のアクチュエータの制御を介して操作される。次に、ロボットアーム/ツール駆動部のドッキングインターフェースは、トロカールの取り付け部分にラッチされ、それによって、ロボットアーム/ツール駆動部のトロカールへの堅固な機械的取り付けを提供する。
【0005】
トロカールドッキングのいくつかの様式によって提示される課題を除去する、ロボットアームをトロカールにドッキングするシステム及び方法が必要とされている。一態様では、視覚センサシステム又は撮像システム、例えば、ツール駆動部上又はロボットアーム上のその他の場所に位置付けられた1つ以上のカメラは、トロカールを捕捉するデジタル画像シーケンスを生成する。これらの画像は、データプロセッサによって処理されて、カメラ及びツール駆動部の位置及び配向に対するトロカールの位置及び配向、すなわち、トロカールの姿勢を決定する。これに応答して、ロボットアームは、ドッキングインターフェースがトロカールと位置合わせされ、トロカールの位置にあるまで、外科用ロボットアーム制御システムによって誘導される(そのアクチュエータが駆動される)が、その時点で、その二つの機械的連結が達成され得る。
【0006】
一態様では、外科用ロボットシステムは、いくつかの関節部及び関連する関節アクチュエータを有するロボットアームと、ロボットアームの遠位端に連結されたツール駆動部と、を有する。ツール駆動部は、トロカールの取り付け部分を受容するためのドッキングインターフェースを有する。システムはまた、トロカールの表面特徴部を視覚的に検知するように動作可能である1つ以上のセンサを有する。1つ以上のセンサは、例えば、撮像システムの一部、例えばカメラとして、撮像センサを含み得る。一変形形態では、撮像センサは、ドッキングインターフェースのチャンバ内に配置され得る。別の変形形態では、滅菌アダプタは、ドッキングインターフェースの前部に連結され、撮像センサは、滅菌アダプタ上に装着される。
【0007】
1つ以上のプロセッサは、トロカールの検知された表面特徴部を解釈することによって、トロカールの位置及び配向を決定するように構成されている。言い換えれば、プロセッサは、撮像センサによって生成された画像シーケンスのデジタル画像処理(パターン認識を含む)に基づいて、トロカールの検知された姿勢を決定する。一変形形態では、トロカールの表面特徴部は、トロカールの検知された姿勢を示すものとして検出及び解釈されるコード化データペイロードである。
【0008】
トロカールの検知された姿勢が決定されると、プロセッサは、ロボットアームアクチュエータを制御して、ドッキングインターフェースがトロカールの取り付け部分に向かって移動する際にアームを誘導する。アームは、アクチュエータを駆動するプロセッサによって誘導され、ドッキングインターフェースをトロカールの取り付け部分の決定された配向に向ける。一態様では、アームはまた、ドッキングインターフェースをトロカールの取り付け部分の決定された位置に移動させるように、アクチュエータを駆動する1つ以上のプロセッサによって誘導される。
【0009】
1つ以上のプロセッサは、ツール駆動部のドッキングインターフェースの現在の位置と、1つ以上のトロカールの検知された位置及びトロカールの検知された配向との間の、計画された軌道を生成するように構成され得る。計画された軌道は、ドッキングインターフェースの姿勢がトロカールの検知された姿勢と一致する(ドッキングされた状態をもたらす)まで、(アームが制御システムによって誘導される際に)ツール駆動部のドッキングインターフェースがそれ自体を移動及び再配向し得る経路である。
【0010】
一変形形態では、ロボットアームは、(1つ以上のプロセッサによって制御される)アクチュエータによって、計画された軌道に沿って自動的かつ完全に駆動される。その場合、操作者が(軌道に沿って移動させるために)アームに手動で力を印加する必要はない。別の変形形態では、ロボットアームは、(1つ以上のプロセッサによって制御される)アクチュエータによって支援されながら、手動で誘導される(操作者の手によって動かされる)。更に別の変形形態では、ロボットアームは、計画された軌道に沿って操作者によって手動で誘導され、1つ以上のプロセッサによって制御されるアクチュエータは、操作者の手動での誘導が、ロボットアームが計画された軌道から離れて逸脱するように方向付けられる、又は逸脱を発生させる(特にドッキングインターフェース)場合はいつでも、操作者による手動でのロボットアームの誘導に抵抗する。その場合、アクチュエータは、ドッキングインターフェースと計画された軌道との間の距離(又は、ドッキングインターフェースが計画された軌道からどれくらい離れているか)に比例し得る力で、操作者による手動でのロボットアームの誘導に抵抗する。これは、本明細書では、仮想ばね動作モードとも称される。
【0011】
ドッキングインターフェースは、チャンバと、チャンバ内に位置付けられた1つ以上のクランプ構成要素間の受容空間と、を画定し得る。一変形形態では、1つ以上のクランプ構成要素は、ドッキングインターフェースに移動可能に連結され、ドッキングインターフェースのチャンバ内で、上部突出部などのトロカールの取り付け部分を固定するために移動するように構成されている。別の変形形態では、レバーはドッキングインターフェース上に支持され、(例えば、操作者の手によって動かされる)レバーの動きは、トロカールの取り付け部分をドッキングインターフェースに堅固に固定するロック位置又はロック解除位置に向かった1つ以上のクランプ構成要素の動きを発生させる。更に別の変形形態では、作動された場合、プロセッサに、1つ以上のセンサを作動させる、及び/又はトロカールの検知された表面特徴部に基づいてトロカールの位置及び配向を決定し、次に、ドッキングインターフェースをトロカールの決定された配向及び位置に向かって誘導するためにアクチュエータを駆動する信号を送るスイッチが提供される。スイッチは、ドッキングインターフェースをトロカールにラッチするために使用される同じレバーの動きもまたスイッチを作動させるように、位置付けられ得る。
【0012】
本開示によれば、外科用ロボットシステムのロボットアームをトロカールにドッキングするための方法は、(1つ以上のプロセッサによって部分的に実行される)以下の動作を含む。ロボットアームに連結された(例えば、アームのツール駆動部のドッキングインターフェースに連結された)センサによって捕捉されたトロカール上の表面特徴部の画像が受信される。一変形形態では、表面特徴部は、コード化データペイロードであり得る。プロセッサは、画像のデジタル画像処理(例えば、検知された表面特徴部の検出及び解釈)に基づいて、トロカールの検知された姿勢を決定する。検知された姿勢は、トロカールの位置及び配向、例えば、位置に関して3つのDOFを含む6自由度(DOF)及び配向に関して3つのDOFを含んでもよい。検知されたトロカール姿勢は、ドッキングインターフェースの周知の姿勢に関連して計算されてもよく、後者は、センサを使用して決定されてもよく、かつアームの以前の動きの履歴を使用して決定されてもよい。
【0013】
加えて、1つ以上のプロセッサは、ドッキングインターフェースが、検知されたトロカール姿勢と一致するまで移動し回転するための計画された軌道を計算する。次に、1つ以上のプロセッサは、ロボットアーム内のアクチュエータを駆動して、計画された軌道に沿って、ロボットアーム(そのドッキングインターフェース)をトロカールの検知された姿勢に向かって誘導する。ロボットアームは、異なる方法でプロセッサ制御下で誘導され得る。例えば、誘導は、アーム(そのドッキングインターフェース)がトロカールとドッキングされるまで、完全に自動であり得る(アームを動かす操作者を必要としない)。あるいは、プロセッサ制御は、アームを移動させるために必要な操作者の作業を低減するためにアームに印加される操作者の手動力を支援し得る、又はアームが計画された軌道を離れる場合は常に操作者の手動力に抵抗し得る。
【0014】
一変形形態では、プロセッサは、ドッキングインターフェースから計画された軌道までの距離を決定する。この距離に基づいて、プロセッサはロボットアームのアクチュエータを駆動して、ロボットアームを計画された軌道に向けて誘導する(例えば、ドッキングインターフェースを計画された軌道に戻すが、本明細書ではコース補正とも称される)。ロボットアームを計画された軌道に向かって戻すことは、プロセッサによってモデル化された仮想ばねに従って開始し得るが、(プロセッサの制御下で)アクチュエータによってロボットアームに印加される力は、ドッキングインターフェースから計画された軌道への距離に比例する。
【0015】
本開示の一態様では、プロセッサは、計画された軌道に沿って操作者によってロボットアームに印加される手動力の構成要素を、例えば、ロボットアーム内の力センサ及び/又はトルクセンサから受信された信号を介して決定する。次に、ロボットアーム内のアクチュエータは、計画された軌道に沿って操作者によって印加された手動力のこの構成要素に基づいて、ロボットアームが計画された軌道に沿って誘導されるように駆動され、それによって、操作者の手動力を支援する。一変形形態では、アクチュエータは、計画された軌道及び所定のスカラ値に沿って操作者によって印加される手動力の構成要素の結果に基づいて、プロセッサによって決定される力でロボットアームが誘導されるように駆動される。
【0016】
本開示の別の態様では、プロセッサは、操作者によってロボットアームに印加され、計画された軌道から離れるように方向付けられる(再びアーム内の力センサ/トルクセンサから受信された信号によって検出される)操作者の手動力の構成要素を決定する。次に、ロボットアーム内のアクチュエータは、(計画された軌道から離れるように方向付けられた)手動力にアームが抵抗するように、この構成要素に基づいて駆動される。言い換えれば、アクチュエータは、アーム上に手動力に対向する力を生成するように駆動されるが、それは、軌道及び所定のスカラ値から離れて、操作者によって印加される手動力の構成要素の結果を計算することによって、プロセッサにより決定されてもよい。
【0017】
上記の概要は、本発明の全ての態様の網羅的なリストを含まない。本発明は、上記に要約された種々の態様の全ての好適な組み合わせから実施することができる全てのシステム及び方法、並びに以下の「発明を実施するための形態」に開示されているもの、特に本出願と共に提出された「特許請求の範囲」において指摘されているものを含むことが企図される。このような組み合わせは、上記の概要に具体的に記載されていない特定の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施形態は、添付図面の図において、限定としてではなく例として示され、同様の参照記号は、類似の要素を示す。本開示における本発明の「1つの(an)」又は「1つの(one)」実施形態への言及は、必ずしも同じ実施形態に対するものではなく、それらは、少なくとも1つを意味することに留意されたい。また、簡潔さ及び図の総数を減らす目的で、所与の図が、本発明の1つより多くの実施形態の特徴を例示するために使用され得、図中の全ての要素が、所与の実施形態に必要とされるわけではない場合がある。
図1】外科用ロボットシステムを備えた手術室配置の概略図である。
図2】本開示の一態様による、ロボットアームの一部の斜視図である。
図3図2のロボットアームのツール駆動部の概略的斜視図である。
図4図3のツール駆動部のドッキングインターフェースの断面の斜視図であり、センサシステムを含む。
図5】本開示の一変形形態による、図3のツール駆動部のドッキングインターフェースの斜視図であり、センサシステムを含む。
図6】本開示の一態様による、外科用ロボットシステムのロボットアームに取り付けられたツール駆動部をトロカールにドッキングするための方法の動作の描写図である。
図7】本開示の一態様による、外科用ロボットシステムのロボットアームに取り付けられたツール駆動部をトロカールにドッキングするための方法の動作の描写図である。
図8】本開示の一態様による、外科用ロボットシステムのロボットアームに取り付けられたツール駆動部をトロカールにドッキングするための方法の動作の描写図である。
図9図6に特定されている領域9の拡大概略図である。
図10】本開示の一態様による、外科用ロボットシステムのロボットアームに取り付けられたツール駆動部をトロカールにドッキングするための方法のプロセスフローである。
図11】本開示の一態様による、外科用ロボットシステムのロボットアームに取り付けられたツール駆動部をトロカールにドッキングするための方法のプロセスの流れの、プロセスフローである。
図12A】本開示の一態様による、外科用ロボットシステムのロボットアームに取り付けられたツール駆動部をトロカールにドッキングするための方法のプロセスフローである。
図12B】本開示の一態様による、外科用ロボットシステムのロボットアームに取り付けられたツール駆動部をトロカールにドッキングするための方法のプロセスフローである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで添付の図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。実施形態に記載される部分の形状、相対位置、及びその他の態様が明示的に定義されていない場合はいつでも、本発明の範囲は、図示された部分にのみ限定されるものではなく、これは単に例示の目的を意図するものである。また、数多くの詳細が記載されているが、本発明のいくつかの実施形態は、これらの詳細なしに実施され得ることが理解される。その他の場合では、周知の回路、構造、及び技術は、本説明の理解を不明瞭にしないように詳細には示されていない。
【0020】
図1を参照すると、これは、手術室内の例示的な外科用ロボットシステム1の描写図である。ロボットシステム1は、ユーザコンソール2と、制御タワー3と、外科用ロボットプラットフォーム5、例えば手術台、ベッドなどにある1つ以上の外科用ロボットアーム4と、を含む。システム1は、患者6に対して手術を行うために使用される任意の数のデバイス、ツール、又は付属品を組み込み得る。例えば、システム1は、手術を行うために使用される1つ以上の外科用ツール7を含んでもよい。外科用ツール7は、外科手術を実行するために外科用ロボットアーム4の遠位端に取り付けられたエンドエフェクタであってもよい。
【0021】
各外科用ツール7は、手術中に、手動で、ロボットで、又はその両方で操作されてもよい。例えば、外科用ツール7は、患者6の内部解剖学的構造に入る、それを見る、又は操作するために使用されるツールであってもよい。一実施形態では、外科用ツール7は、患者の組織を把持し得る把持器具である。外科用ツール7は、ベッドのそばの操作者8によって手動で制御されてもよい、又はそれが取り付けられた外科用ロボットアーム4の作動運動によってロボット制御されてもよい。ロボットアーム4は、手術台に装着されたシステムとして示されているが、その他の構成では、アーム4は、カート、天井、若しくは側壁、又は別の好適な構造的支持体上に装着されてもよい。
【0022】
一般に、外科医などの遠隔操作者9は、ユーザコンソール2を使用して、アーム4及び/又は取り付けられた外科用ツール7を遠隔操作(例えば、遠距離操作)してもよい。ユーザコンソール2は、図1に示すように、システム1の残りの部分と同じ手術室内に位置してもよい。しかしながら、その他の環境では、ユーザコンソール2は、隣接する部屋若しくは近くの部屋に位置してもよい、又は遠隔位置、例えば、異なる建物、都市、若しくは国にあってもよい。ユーザコンソール2は、シート10と、足踏み式制御部13と、1つ以上のハンドヘルドユーザ入力デバイス、UID14と、例えば、患者6内の手術部位の視野を表示するように構成された、少なくとも1つのユーザディスプレイ15と、を備えてもよい。例示的なユーザコンソール2では、遠隔操作者9は、アーム4及び(アーム4の遠位端に装着された)外科用ツール7を遠隔制御するために、足踏み式制御部13及びハンドヘルドUID14を操作しながら、シート10に座ってユーザディスプレイ15を見ている。
【0023】
いくつかの変形形態では、ベッドのそばの操作者8はまた、ベッドのそばの操作者8がここで患者6の側面にいて、例えば、片手に保持したハンドヘルドUID14でロボット駆動型ツール(アーム4に取り付けられたエンドエフェクタ)を、手動腹腔鏡ツールと同時に操作している、「ベッド対面」モードでシステム1を操作してもよい。例えば、ベッドのそばの操作者の左手は、ロボット構成要素を制御するためにハンドヘルドUIDを操作していてもよいが、一方で、ベッドのそばの操作者の右手は、手動腹腔鏡ツールを操作していてもよい。したがって、これらの変形形態では、ベッドのそばの操作者8は、患者6に対してロボット支援型低侵襲手術及び手動腹腔鏡手術の両方を行ってもよい。
【0024】
例示的な手順(手術)の間、外科用ロボットシステム1で手術を開始する前に、外科チームは術前セットアップを実行し得る。術前セットアップ中、外科用ロボットシステムの主要な構成要素(プラットフォーム5及びロボットアーム4、制御塔3、及びユーザコンソール2)が手術室に位置付けられ、接続され、電力が供給される。ロボットアーム4は、保管及び/又は輸送の目的のために、プラットフォーム5の下のアーム4を有する完全に収納された構成にあってもよい。外科チームは、滅菌ドレーピングのためにそれらの収納位置からアーム4を延在させ得るが、例えば、アーム4の部分などのシステム1の1つ以上の部分を滅菌バリアで覆い、病原体の伝達を最小限にする、抑制する、又は防止する。ドレーピング後、使用に必要になるまで、アーム4を部分的に引き込み得る。次に、患者の体内へのトロカール配置及び吹入を含む、いくつかの従来の腹腔鏡工程を実施してもよい。例えば、各トロカールは、閉塞具の助けを借りて、小さな切開部に、かつ体壁を介して挿入され得る。スリーブ及び閉塞具は、挿入中の組織層の視覚化のための光学的入口を可能にして、配置中の損傷のリスクを最小限に抑える。内視鏡は、典型的には、最初に配置されて、その他のトロカール又はその他のツール若しくは機器の配置のための手持ち型カメラの視覚化を提供する。
【0025】
一実施形態では、遠隔操作者9は、UID14を保持して移動させることにより、遠距離操作ために、ロボットシステム1の1つ以上のロボットアームアクチュエータ17を駆動するための入力コマンドを提供する。UID14は、例えば、コンソールコンピュータシステム16を介して、ロボットシステム1の残りの部分に通信可能に連結されてもよい。UID14は、UID14の移動、例えば、UIDのハンドヘルドハウジングの位置及び配向に対応する空間状態信号を生成し得るが、空間状態信号は、ロボットアームアクチュエータ17の動きを制御するための入力信号であってもよい。ロボットシステム1は、空間状態信号から導出された制御信号を使用して、アクチュエータ17の比例運動を制御してもよい。一実施形態では、コンソールコンピュータシステム16のコンソールプロセッサは、空間状態信号を受信し、対応する制御信号を生成する。アーム4のセグメント又はリンクを駆動させるためにアクチュエータ17がどのように通電されるかを制御する、これらの制御信号に基づいて、アームに取り付けられた対応する外科用ツールの移動は、UID14の移動を模倣し得る。同様に、遠隔操作者9とUID14との間の相互作用により、例えば、外科用ツール7の把持器具の顎部を閉鎖させて患者6の組織を把持させる、把持制御信号を生成し得る。
【0026】
外科用ロボットシステム1は、各UIDについてそれぞれのアーム4のアクチュエータ及び外科用ツール(エンドエフェクタ)を制御するそれぞれの制御信号が生成される、いくつかのUID14を含んでもよい。例えば、遠隔操作者9は、第1のUID14を移動させて、左ロボットアーム内にあるアクチュエータ17の動きを制御してもよく、アクチュエータは、そのアーム4内の連結部、ギアなどを移動させることによって応答する。同様に、遠隔操作者9による第2のUID14の移動は、別のアクチュエータ17の動きを制御するが、これは、次にロボットシステム1のその他の連結部、ギアなどを駆動させる。ロボットシステム1は、患者の右側にベッド又は手術台に固定された右アーム4と、患者の左側にある左アーム4と、を含んでもよい。アクチュエータ17は、例えば、患者に対して、そのアームに取り付けられた外科用ツール7の内視鏡又は把持器具の配向を変化させるために、アーム4の関節部の回転を駆動するように制御される、1つ以上のモータを含んでもよい。同じアーム4内のいくつかのアクチュエータ17の動きは、特定のUID14から生成された空間状態信号によって制御し得る。UID14はまた、それぞれの外科用ツール把持器具の動きを制御し得る。例えば、各UID14は、患者6内の組織を把持するために外科用ツール7の遠位端にある把持器具の顎部を開放及び閉鎖するアクチュエータ、例えば線形アクチュエータの動きを制御するための、それぞれの把持信号を生成し得る。
【0027】
いくつかの態様では、プラットフォーム5とユーザコンソール2との間の通信は、制御タワー3を介してもよいが、これは、ユーザコンソール2から(より具体的には、コンソールコンピュータシステム16から)受信したユーザコマンドをロボットプラットフォーム5上のアーム4に送信されるロボット制御コマンドに変換してもよい。制御タワー3はまた、プラットフォーム5からユーザコンソール2に状態及びフィードバックを送信して戻してもよい。ロボットプラットフォーム5、ユーザコンソール2、及び制御タワー3間の通信接続は、種々のデータ通信プロトコルの任意の好適なものを使用して、有線及び/又は無線リンクを介してもよい。任意の有線接続が、手術室の床及び/又は壁若しくは天井に任意選択的に内蔵されていてもよい。ロボットシステム1は、手術室内のディスプレイ、並びにインターネット又はその他のネットワークを介してアクセス可能である遠隔ディスプレイを含む、1つ以上のディスプレイにビデオ出力を提供してもよい。ビデオ出力又はフィードはまた、プライバシーを確保するために暗号化されてもよく、ビデオ出力の全て又は部分は、サーバ又は電子医療記録システムに保存されてもよい。
【0028】
上記のように、患者6への外科用器具の導入を可能にするためのポートを作成するために、トロカールアセンブリを患者の切開点又は入口点(例えば、腹壁内)を介して患者に挿入してもよい。トロカールアセンブリは、カニューレ又はトロカール63(図6)、閉塞具、及び/又は封止部を含んでもよい。いくつかの変形形態では、トロカールアセンブリは、患者の皮膚を貫通するための鋭利な先端部を有する針などの閉塞具を含み得る。本明細書に記載されるトロカール63は、少なくともカニューレを含み、任意選択で、閉塞具又はその他の構成要素を含み得ることが理解されよう。閉塞具は、患者6内へと挿入された場合にトロカール63のルーメン内に配置されてもよく、次に、外科用器具がトロカール63のルーメンを介して挿入され得るように、トロカール63から取り外され得る。患者6の本体内に位置付けられると、トロカール63は、患者6内の体腔又はその他の部位の内部に1つ以上の外科用ツールをその中に保持するためのチャネルを提供し、ドッキングされたアーム4については、遠距離操作中にツールを移動させてもよい。
【0029】
図2を参照すると、本開示の一態様による、例示的なロボットアーム4の一部が示されている。ロボットアーム4は、複数のリンク(例えば、リンク20A~20E)と、複数のリンクを互いに対して作動させるための複数のジョイントモジュール(例えば、関節部21A~21E)と、を含み得る。ジョイントモジュールは、ピッチジョイント又はロールジョイントなどの種々のジョイントタイプを含み得るが、それらのいずれも手動で又はロボットアームアクチュエータ17によって作動され得、それらのいずれも、その他の軸に対する特定の軸の周りの隣接するリンクの動きを実質的に制約する場合がある。また示されるように、ツール駆動部23は、ロボットアーム4の遠位端に取り付けられている。本明細書に記載されるように、ツール駆動部23は、トロカール63が次にロボットアーム4に堅固に固定され得るように、トロカール63の取り付け部分(例えば、嵌合インターフェース)を受容するためのドッキングインターフェース27で構成され得る。その状態では、1つ以上の外科用器具(例えば、内視鏡、ステープラ等)の遠位の細長い部分を、トロカール63のカニューレのルーメンを介して誘導し得るが、器具は、ツール駆動部に取り付けられ得る。次に、ロボットアーム4の複数のジョイントモジュール21A~21Eを制御システムの制御下で作動させて、ロボット手術中の遠距離操作のために、アーム4、ツール駆動部23、したがって取り付けられた外科手術器具を位置決め及び配向し得る。
【0030】
図3は、対象技術の態様による、ツール7が装填されていない代表的なツール駆動部23を示す概略図である。一変形形態では、ツール駆動部23は、長手方向トラック25と、長手方向トラック25と摺動可能に係合されるツールキャリッジ26と、を有する、細長い基部(又は「ステージ」)24を含んでもよい。ステージ24は、ロボットアーム4の遠位端に連結するように構成されてもよく、これによって、ロボットアーム4の関節運動は、ツール駆動部23を空間内に位置決め及び/又は配向する。ツールキャリッジ26は、(その遠位部分がトロカール63を介して挿入されることになる)ツール7を受容するように構成されてもよい。ツール7がツールキャリッジ26に取り付けられると、後者は、制御システムによって駆動されるツールキャリッジ26内のアクチュエータによって、任意の好適な機械的伝達、例えば、ケーブル又はワイヤ及び/又はギアのシステムを介して、(エンドエフェクタとして)ツール7の関節運動した動きのセットを作動させてもよい。
【0031】
更に図4及び図5を参照すると、トロカール63は、例えば図4にも見られるように、細長い基部24の遠位ブロックに位置するドッキングステーション又はドッキングインターフェース27で、ツール駆動部23又は外科用ロボットシステム1の別の構成要素に連結され得る。ドッキングインターフェース27は、ドッキングインターフェース27がトロカールドッキングインターフェース、トロカール取り付けデバイス、又はトロカール装着デバイスとして構成されるように、トロカール63の一部を受容するように構成されている。ドッキングインターフェース27は、トロカール63を外科用ロボットアーム4に取り付けるための信頼できる迅速な方法を提供し得る。
【0032】
図4に見られるように、ドッキングインターフェース27は、ドッキングインターフェース27のその口部又は前面開口部31(図5を参照)を介してアクセス可能なチャンバ29を画定し得るが、これは、トロカール63の一部(例えば、カニューレの近位部分に位置するカニューレの取り付け部分などの、嵌合インターフェース)を受容するための、その内部に受容空間38を画定するレシーバ37の周囲に配置された、第1のクランプ構成要素33と第2のクランプ構成要素35(例えば、アーム、プレート、レバー、部材)と、を含み得る。クランプ構成要素33、35のうちの少なくとも1つは、開位置と閉位置との間で枢動可能であってもよく、閉位置において、トロカール63の取り付け部分69(図6を参照)(クランプ構成要素33、35の間の受容空間38に挿入されている)は、第1のクランプ構成要素33及び第2のクランプ構成要素35によって少なくとも部分的に所定の位置に保持される。
【0033】
一変形形態では、ドッキングインターフェース27は、クランプ構成要素33と機械的に協働するレバー45又はその他の適切なロック構成要素を含み、例えば、ピン及びスロット配置を介して、又は開位置と閉位置との間の別の旋回可能な接続又は可動接続を介して、オーバーセンター機構を含んでも良い。レバー45は、例えば、ドッキングインターフェース27の本体又はハウジング内に画定されたトラック又はスロットに沿って、前方ロック位置(例えば、ロックオーバーセンター位置)と後方ロック解除位置との間で移動可能であり得る。レバー43がロック位置に向かって動いた場合、レバー45は、クランプ構成要素33を受容空間38に向かって下向きに付勢し、クランプ構成要素33を閉鎖位置にロックするが、これによって、トロカール63の一部が第1のクランプ構成要素33と第2のクランプ構成要素35との間にしっかりと保持され得る。いくつかの変形形態では、第2のクランプ構成要素35は、静止し得るか、又は固定され得る。一変形形態では、レバー45は、電気モータ又はアクチュエータ(プロセッサによって制御されるか、又は操作者の手動制御下にあるスイッチ)によって駆動され得る、又は操作者の手の手動力によって駆動されてもよい。
【0034】
図5に見られるように、ドッキングインターフェース27はまた、トロカール63などの滅菌構成要素と、第1のクランプ構成要素33及び第2のクランプ構成要素35(又は外科用システムのその他の非滅菌構成要素)などの非滅菌構成要素との間に、滅菌バリアを提供してもよい。滅菌バリアは、例えば、外科用グレードポリマー又はトロカール63と第1のクランプ構成要素33及び第2のクランプ構成要素35との間に挿入されるその他の外科用グレード材料で形成された滅菌アダプタ44によって、提供されてもよい。この点に関して言えば、滅菌アダプタ44は、図5に見られるように、滅菌アダプタ44の穴がドッキングインターフェース27の前面開口部31の口部と整列するように、ドッキングインターフェース27の前部に連結し得る。トロカールの取り付け部分69(図6参照)は、チャンバ37の受容空間38の内に位置付けられる前に、その穴を通過し、次に、前面開口部31を通過する。
【0035】
センサシステムは、例えば、チャンバ29内に少なくとも部分的に窪んでいてもよい、又はドッキングインターフェース27に別様に連結され得るか、又はそれによって支持され得る、図4及び図5に見られるようなドッキングインターフェース27内に提供される。センサシステムは、撮像センサ49及びレンズ51を含み得る。センサシステムは、示されるように、ドッキングインターフェース27の前のレンズ51の視野内のシーンを捕捉するデジタル画像(例えば、ビデオ)のシーケンスを生成し得る。レンズ51は、例えば、流体、微粒子、又は操作者若しくは外科用機器との偶発的な接触から撮像センサ49に保護を提供し得るポリマー要素又は複合要素であってもよい。イメージングセンサ49、及び任意選択で、レンズ51は、追加の衝撃保護又は振動保護、微粒子抵抗若しくは流体抵抗等を提供するために追加のエンクロージャ(図示せず)内に提供され得る。図5に見られるように、センサシステムは、可視光に対して透明な保護カバー部分43がレンズ51の前面上に位置付けられる(センサシステムがドッキングインターフェース27の前のシーンを見ることを可能にする)滅菌アダプタ44によって覆われてもよい。
【0036】
センサシステムは、レンズ51がチャンバ29内に完全に位置付けられるように位置付けられ得る(したがって、ドッキングインターフェース27の最も前の平面から突出しない。センサシステムは、ドッキングインターフェース27のその他の動作、例えば、上述のように、レバー45の動き及びクランプ構成要素33、35の1つ以上の動き、並びにトロカール63の1つ以上の部分の受容を妨げないか、又は妨害しないように、ドッキングインターフェース27に装着されるべきである。
【0037】
図5には示されていないが、ドッキングインターフェース27から離間した部分でロボットアーム4に取り付けられ、ドッキングインターフェース27を覆って、トロカール63に滅菌バリアを維持し、ドッキングインターフェース27の前のシーンの遮られていない視野を有するセンサシステムを提供するために、レンズ51の撮像経路表面と整列された可視光部分を有する、滅菌ドレープ又はバリアもまた存在する場合がある。
【0038】
制御塔3の一部であり得るプロセッサ又はコントローラ(図1参照)は、ドッキングインターフェース27の動きを方向付けるために、センサシステムによって生成されたデジタル画像シーケンスを処理して、(駆動コマンド、例えば、アーム4の種々のアクチュエータ17への力又は速度コマンドを提供することによって)アーム4を誘導する方法を決定する。このようなプロセッサは、外科用ロボットシステム1のその他の部分の一部であり得、センサシステム47は、このようなプロセッサのうちの1つ以上と電気的に通信することが理解されよう。また、このような処理は、例えば、ツール駆動部23上、例えば、特に図5に示されるようにドッキングインターフェース27上に、アーム4上に装着されたスイッチ61又はその他のユーザ選択可能制御部の作動によって誘発されてもよい。その場合のスイッチ61は、本明細書で更に説明するように、レバー45がスイッチ61へと付勢されて接触し、それによって、スイッチ61を作動させ得るような位置で、レバー45の後ろに位置付けられる。スイッチ61は、制御塔3内のプロセッサと電気的に通信し、作動された場合に、プロセッサは、センサシステムを通電又は起動するために、及び/又はセンサシステムによって生成された画像データの処理を開始して、ロボットアーム4(及びその取り付けられたツール駆動部23)を誘導するための計画された軌道を決定するために、本明細書で更に説明するようにアルゴリズムに従ってトロカール63に向けて信号を送る。スイッチ61は、一般に、本明細書では、例えば、瞬間的な機械的スイッチ、近接センサ、タッチスクリーン若しくはタッチパッドの一部としての仮想スイッチ等によって誘発され得る任意の好適な機構を意味するために使用される。ドッキングインターフェース27上又はその近くのスイッチ61の配置は、別個の制御インターフェースを必要とせずに、アーム4に近接している間だけ、(例えば、ロボットアーム4からかなり離れて配置されてはいるが、ユーザコンソール2に座っている操作者にとってドッキングインターフェース27がトロカール63に向かってどのように動いているかの確認を可能にし得る、ユーザコンソール2を介して)操作者がセンサシステムを作動させてドッキングインターフェース27を誘導することを確実にする。
【0039】
更に図6図9を参照すると、ツール駆動部23のドッキングインターフェース27と、患者6内へと少なくとも部分的に挿入される(また、好ましくは、一定の姿勢でそこに保持される)トロカール63との誘導及びドッキングが、本開示の一態様に従って例示される。トロカール63は、示されるように、フランジ付き上部部分又はヘッド67を備えた一般に管状本体64と、ドッキングインターフェース27と嵌合するためにヘッド67から突出する取り付け部分69と、を含む。一変形形態では、取り付け部分69は、例えば、ノーズ又はカラー又はピン様配置を有するように構成され得、ドッキングインターフェース27のレシーバ37と相互係合するために、1つ以上の表面特徴部、例えば、ノッチ、隆起部、突出部、角度、フック等を有し得る。トロカール63は、本開示から逸脱することなく、異なる配置を有し得る。標的マーキング又は表面特徴部71、例えば、テクスチャ表面、マーキング、印刷、又はその他の可視表示は、トロカール63の上部、例えば、トロカール63のヘッド67の側面に提供され得る。表面特徴部71は、例えば、エッチング、刻印、印刷、又はステッカー若しくはラベルなどの取り付け具として提供され得、コード化データペイロードに対応する配置を有し得る。例えば、表面特徴部71は、数値データ、英数字データ、バイト/バイナリデータ、又はその他のデータなどのデータを含み得るバーコード又は二次元バーコード又はマトリックスバーコードの配置を有し得る。一変形形態では、表面特徴部は、ロボットアーム4及びそのドッキングインターフェース27をトロカール63に向かって誘導又は駆動するための特定のアルゴリズムに関連付けられた情報に対応するか、又はそれにリンクを提供し得る。制御システムは、表面特徴部を検出することに応答してこのようなアルゴリズムをロードし、ロボットアーム4及びそのドッキングインターフェース27をトロカール23に向かって誘導するためのアルゴリズムを実行してもよい。トロカール63及びその表面特徴部71は、本開示から逸脱することなく、異なる配置を有し得る。例えば、別の変形形態では、表面特徴部71自体は、トロカール63の1つ以上の部分の外部構造の可視属性、例えば、その形状、寸法等であり得る。
【0040】
ロボットアーム4のドッキングインターフェース27は、第1の姿勢(例えば、待機姿勢、又は未知の姿勢)から、トロカール63に近接しているが物理的に分離された図6に示される第2の姿勢へと誘導され得る。このような誘導は、例えば、操作者による手動による力の印加であり得るか、又はロボットアームアクチュエータ17によって駆動され得る。第2の姿勢では、ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27は、トロカール63がセンサシステム47の視野V内にあるように位置付けられる。視野Vは、トロカール63の少なくとも一部への直接視線を含み得る。一変形形態では、トロカール63に対するロボットアーム4/ドッキングインターフェース27の適切な近接又は配置は、例えば、可聴ビープ若しくは可聴アラーム、インジケータ光又はその他の視覚的指標、及び/又はロボットアーム4の一部上の触覚フィードバック若しくは振動フィードバックなどの触覚インジケータとして、操作者に(プロセッサによって)示され得る。この点に関して言えば、撮像センサ49は、ロボットアーム4/ツール駆動部23を第2の姿勢に位置付ける前に、例えば、ロボットアーム4及びツール駆動部23の最初の設定又は準備時に、又は操作者による入力を介して、プロセッサによって作動され得る。ドッキングインターフェース27が(トロカール63を包囲する視野Vを確立することに対して)センサシステム47に適切に近接していない場合、次に、ロボットアーム4は、トロカール63がセンサシステム47の視野内に位置付けられているとプロセッサによって決定されるまで、例えば、操作者による手動による力の印加によって、プロセッサの制御下で自動誘導によって、又はこれらのいくつかの組み合わせによって、トロカール63に向かって更に誘導され得る。図7は、アーム4が(図6の初期姿勢と比較して)どのようにトロカール63の近くに移動したかを示す。
【0041】
ドッキングインターフェース27及び特にセンサシステム47は、視野Vから光を受け取るように位置決め及び配向され、それに応答して、制御塔3内のプロセッサに通信される対応する画像データ電気信号を生成する。プロセッサは、例えば、物体認識アルゴリズムに従ってトロカール63の表面特徴部71を特定する際に、画像データを分析することによって、ドッキングインターフェース27に対してトロカール63の位置及び配向を計算する。例えば、スイッチ61を起動することによって、このようなアルゴリズムの初期化又は開始を促し得る。一変形形態では、スイッチ61は、レバー45がスイッチ61に接触して作動するように、レバー45をロック解除(後方)位置へと後方に移動させることによって作動され得る。したがって、制御塔3内のプロセッサは、スイッチ61によって信号通信されて、ドッキングインターフェース27に対するトロカール63の取り付け部分69の姿勢、例えば、空間位置及び配向を決定するためのアルゴリズムを適用する。したがって、プロセッサは、変換体、例えば、ロボットアーム4、及びそこへと取り付けられたツール駆動部23のドッキングインターフェース27を、トロカール63に向かって誘導又は駆動するために使用され得る、変換マトリックスを計算してもよい。この点に関して言えば、プロセッサは、ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27が移動して、センサシステム47によって検知されたトロカール63の姿勢と一致する姿勢(図8に見られるように、ドッキングインターフェース27がトロカール63のヘッド67の内側に到着するか、又はドッキングされているものとして示されている)に到達するように再配向されるべき、ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27のための計画された軌道を発生させる。本開示で使用される「一致する(matching)」とは、正確に同じであるという意味ではなく、むしろ許容範囲内であることを意味すると、留意されたい。アルゴリズムは、例えば、コンピュータプログラム製品、ファームウェア等の一部として、制御塔3のプロセッサによって処理するための非一時的コンピュータ可読媒体に記憶され得、また本明細書のアルゴリズムと総称される、コンピュータ実装命令のセットであり得る。プロセッサによるアルゴリズムの初期化は、ロボットアーム4又は取り付けられたツール駆動部23のドッキング手順の開始と見なされ得る。
【0042】
プロセッサによって適用される物体認識アルゴリズムは、例えば、センサシステム47の視野V内の表面特徴部71又はトロカール63のその他の特徴を認識する機能ベースアルゴリズム又はオブジェクト認識アルゴリズムであり得る。このようなアルゴリズムは、例えば、Harris affine領域検出器又はスケール不変特徴変換(SIFT)を含み得る。一変形形態では、複数のトロカールの存在下で、プロセッサは、アルゴリズムに従って表面特徴部71の特定を介してトロカール63を個別に特定し区別し得るが、各トロカールは独特の表面特徴部を備えている。複数のロボットアームを有する環境では、各ロボットアーム4を指定して、所定の表面特徴部71を特定し得る。一態様では、プロセッサは、センサシステム47によって出力された画像データを分析して、トロカール63とドッキングインターフェース27との間の1つ以上の深さ距離、例えば、X軸距離と、トロカール63とドッキングインターフェース27との間の水平距離、例えば、Y軸距離と、トロカール63とドッキングインターフェース27との間の垂直距離、例えば、Z軸距離と、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ以上の周囲の回転の配向と、を決定することによって、トロカール63の取り付け部分69の姿勢を決定する。
【0043】
表面特徴部71が特定されて、それを基準としてトロカール63の姿勢が計算されると、トロカール63の取り付け部分69に向かって続く、ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27のための追跡経路又は計画された軌道Tが、制御塔3内のプロセッサによって生成され得る。計画された軌道Tは、少なくともセンサシステム47から受信された画像データに基づいて、プロセッサによって生成され得る。一変形形態では、計画された軌道Tの少なくとも一部は、センサシステム47からの画像データとは独立して生成された所定の経路を含み得る。この点に関して言えば、計画された軌道Tは、ドッキングインターフェース27の周知の姿勢から開始されてもよく、従来の動きのログ、F/Tセンサ73から受信された信号、又はその他の入力に基づいて計算され得る。計画された軌道Tは、ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27とトロカール63との間にあり得る1つ以上の物体の周りを探査して、ドッキングインターフェース27がトロカール63の検知された姿勢に一致することを可能にするように設計されてもよい。この点に関して言えば、計画された軌道Tは、例えば、一巡することにより、患者の解剖学的構造の部分、患者を載せた外科用プラットフォーム、臨床スタッフ、ケーブル若しくはパイプ、追加のロボットアーム、又は動作環境におけるその他の外科用機器若しくはその他の人員との衝突を回避する経路を提供し得る。計画された軌道Tは、相互に垂直なX軸、Y軸、及びZ軸のシステムなどの3軸座標系と共に提供され得るが、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ以上に沿った並進運動、並びにX軸、Y軸、及びZ軸のうちの1つ以上の周囲で、例えば、ロール、ピッチ、及びヨーの回転配向を含み得る。計画された軌道Tは、図中の曲線として示されているが、計画された軌道Tは、1つ以上の直線、角度、又は不連続部分を含み得、1つ以上の区分又は段階で提供され得ることが理解されよう。
【0044】
本明細書に記載されるように、計画された軌道Tに沿ったトロカール63に向かうロボットアーム4の誘導は、いくつかの様式に従って達成され得る。例えば、一変形形態では、ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27は、制御塔3内のプロセッサがロボットアームアクチュエータ17を駆動して、操作者による手動による力の印加又は誘導を検知することに応答してロボットアーム4/ドッキングインターフェース27を誘導する、少なくとも部分的に自動化されたプロセス下でトロカール63とドッキングするように誘導される。このような誘導は、ロボットアーム4に及ぼされる外力(例えば、重力、及び操作者の手動力)が検知されるアドミタンス制御を含み得る制御アルゴリズムを使用して達成されてもよく、ロボットアームアクチュエータ17を駆動するコマンドを決定するためにアルゴリズムによってフィードバックが使用される際に、測定されたジョイント位置及びジョイント速度と一緒になっている。この点に関して言えば、ロボットアーム4は、操作者によってロボットアーム4に手動で及ぼされた力又はトルクを入力信号として受信し、制御塔3内のプロセッサに出力信号として対応する電気信号を生成する、F/T(力/トルク)センサ73を含み得る。F/Tセンサ73はまた、入力信号として、ロボットアームアクチュエータ17によってロボットアーム4に及ぼされた力を受信し得る。したがって、F/Tセンサ73は、入力信号として、線形力又は回転力、例えばトルクを受信するように構成され得る。F/Tセンサ73は、ロボットアーム4の特定のジョイントに装着又は統合されているように概略的に示されているが、本開示から逸脱することなく、ロボットアーム4の種々のジョイント又はその他の部分に統合され得る2つ以上のこのようなF/Tセンサ73が存在し得る。
【0045】
本明細書に記載されるように、トロカール63に向かうロボットアーム4/ドッキングインターフェース27の誘導は、少なくとも部分的に、操作者によって手動で力を印加され得る。しかしながら、ロボットアーム4を操作するのに必要な(例えば、重量、摩擦等故の)一般に大きな力により、操作者による手動での誘導は、プロセッサ制御下でロボットアームアクチュエータ17によって支援される。一変形形態では、プロセッサは、計画された軌道Tから逸脱する方向の任意の手動による力の印加を補正又はそれに抵抗する誘導制御アルゴリズムの仮想ばねを生成又はモデル化し得る。プロセッサによって生成されるこのような仮想バネは、所定の仮想ばね定数(k)に従って、所定の軌道Tとの整列に向かってロボットアーム4/ドッキングインターフェース27を戻す傾向のある、ロボットアーム4上に必要な力の量及び方向を決定する。これらの力は、(ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27のそれぞれの部分によって)計画された軌道Tから離れて移動する距離に比例するように生じ得る。この点に関して言えば、仮想ばね定数(k)は、入力信号として、計画された軌道Tから離れるツール駆動部のドッキングインターフェース27の距離及び方向を受信する、既定の関数である。一変形形態では、プロセッサは、計画された軌道Tから離れる方向であるロボットアーム4/ドッキングインターフェース27の任意の手動による力の印加の影響を弱めるように、ロボットアームアクチュエータ17に信号を送り得る。
【0046】
この点に関して言えば、操作者は、プロセッサによって生成された仮想ばねに従って、ロボットアームアクチュエータ17によって印加される抵抗力に遭遇する可能性があり、これによって、抵抗力が、計画された軌道Tからの距離の増加とともに増加する。この点に関して言えば、制御塔3内のプロセッサは、仮想固定具として計画された軌道Tを提供するが、そこからの逸脱により、ロボットアームアクチュエータ17によるロボットアーム4の補正運動及びロボットアームアクチュエータ17によってロボットアーム4に及ぼされる力をもたらすが、これは、ロボットアーム19/ドッキングインターフェース27を計画された軌道Tとの整列に向かって戻す傾向がある。
【0047】
追加的又は代替的に、計画された軌道Tに沿ったロボットアーム4/ドッキングインターフェース27の手動での誘導は、ロボットアームアクチュエータ17によって、例えば、増加、増幅、強化等、支援され得る。例えば、計画された軌道Tに沿った方向の、操作者によるロボットアーム4/ドッキングインターフェース27の手動による力の印加は、例えば、計画された軌道Tに沿って、又は計画された軌道Tに近接して(所定の許容範囲内で)、ロボットアームアクチュエータ17によって支援され得る。その場合、プロセッサは、操作者によってロボットアーム4に印加された力に対応するF/Tセンサ73からの信号を、入力信号として受信し、それに応答して、ロボットアームアクチュエータ17を駆動して、手動での誘導を支援する。プロセッサ制御下でロボットアームアクチュエータ17によって提供されるロボットアーム4/ドッキングインターフェース27に対するこのような補助力は、本明細書で更に説明するように、ばね定数(k)と一致し得る、又は異なる要因に少なくとも部分的に基づき得る。
【0048】
プロセッサによって、前述の計画された軌道T/仮想固定具及び関連する仮想ばねを提供することにより、ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27をトロカール63に向かって誘導すること、及びロボットアーム4/ドッキングインターフェース27と計画された軌道との整列を維持することにおける操作者による労力を、著しく低減し得る。2つの仮想固定具アプローチが以下に説明され、ドッキングプロセスを容易にし得る。
【0049】
外科手術計画が周知であると仮定すると、例えば、手術の種類、患者の寸法、手術台上の患者の位置及び配向、及び患者の身体内へと挿入されるトロカールの位置、次に、その取り付け部分69を含むトロカールのヘッドの位置が、(物理的モードを使用してプロセッサによって計算されるように)推定され得る。このような場合、プロセッサは、例えば、図6に示される第2の姿勢に到達するまで、ロボットアーム4をトロカール63の近くに誘導し得る。あるいは、プロセッサは、操作者が、図6に示す位置へとアーム4に手動で力を印加することを可能にするモードで、(アーム4のジョイントの摩擦を克服するための能動的な重力補償及びバック駆動のみで)動作してもよい。ロボットアーム4が図6に示される位置にあると、次に、任意の好適な検知方法がプロセッサによって実行されて、アーム4(特に、そのドッキングインターフェース27)に対するトロカール63(特に、その取り付け部分69)の位置をより正確に推定し得る。ここでの可能な検知方法は、磁気検知、構造光カメラ検知、及び本明細書に記載されるように、可視光カメラから画像データを分析することによる検知を含む。トロカールの位置をより正確に推定する(トロカール63の「検知された姿勢又は測定された姿勢」を計算する)のに有効であると予想される検知方法の適切な位置に、ロボットアーム4が達すると、プロセッサは、種々の技術のいずれかを使用して、前述のようなシステムの操作者に警告又はフィードバックを提供することによって、応答してもよい。この時点で、操作者は、制御システムが操作者のアームの手動での誘導を支援して、ドッキングにより近いロボットアーム4/ドッキングインターフェース27の姿勢を「微調整」し、次に、(アーム4のアクチュエータ17を駆動して手動での誘導を支援することによって)実際のドッキングを「微調整」するために、少なくとも2つの仮想固定具動作モードのうちの1つを選択するオプションを有する。
【0050】
2つの仮想固定具モード間の選択は、アーム4のボタンスイッチ又はプラットフォーム5のフットペダルスイッチを押圧する臨床操作者8によって行われてもよいが、これは、仮想固定具モードの所定の1つを作動させ得るか、又はそれらの間でトグルし得る。図10は、プロセッサが、計画された軌道Tに沿って、アーム4のアクチュエータ17を適切に駆動して、計画された軌道Tに沿ったアーム4の動きに影響を与えることによって、アーム4を自動的に誘導する、能動仮想固定具モードのプロセスフローである。本明細書では完全自動と称される1つのサブモードでは、プロセッサは、操作者によるいかなる手動による力の印加も必要とせずに、ドッキングインターフェース27が(軌道Tに沿って)自動で駆動してトロカール63に接近して、それとドッキングするように、アクチュエータ17を制御する。このサブモードは、ドッキングの近くで、ドッキングインターフェース27の姿勢の微調整を可能にするために有用である。能動仮想固定具モードの別のサブモードでは、プロセッサは、操作者の手動での誘導を支援するのに必要な程度だけ、アクチュエータ17を制御してアーム4を駆動する(アーム4の動きを生成する)-プロセッサは、アクチュエータ17を制御して、操作者がアーム4の手動による力の印加を停止したことを検出するのに応答して、アーム4をその最後の位置に一時停止させる。
【0051】
図10を参照すると、能動仮想固定具動作モードのプロセスフローが示されている。能動仮想固定具動作モードでは、制御システムは、計画された軌道Tに沿って前方にアーム4の動きを生成又は駆動する。プロセッサは、ジョイントレベルで、又はタスクレベルで計画されるアルゴリズムに従って、計画された軌道Tを生成する(図10、ブロック101)。このアルゴリズムは、図8に示されるように、トロカール63の検知された姿勢又は測定された姿勢に到達するために、ドッキングインターフェース27が追従するための適切な経路を決定する。トロカールの検知された姿勢又は測定された姿勢は、センサシステム47から画像データを分析するプロセッサによって決定されてもよい、又は任意のその他のセンサシステムによって生成されたその他のセンサデータを(図6の初期姿勢で)プロセッサが分析することによって、決定されてもよい。計画された軌道Tは、例えば、近くの物体を検出する近接センサなどのその他のセンサ、加速度計からの信号として、並びに(例えば、ユーザコンソール2を介した)操作者によって提供される情報として、並びに患者6の特性(例えば、患者の寸法及び形状)及び患者6を支えるプラットフォーム5の特性などの手術環境と関連付けられたパラメータとして等、1つ以上の入力信号に基づいてもよい。一変形形態では、計画された軌道Tは、ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27の現在の姿勢から開始されてもよいが、これは、F/Tセンサ73又はその他のセンサ入力信号から受信された信号を介してプロセッサによって決定され得るか、又はこれは、例えば、先の動きのログから決定されるように、周知の値であり得る。
【0052】
計画された軌道Tは、制御塔3内のプロセッサからの出力信号として説明されてきたが、計画された軌道Tの1つ以上の部分は、例えば、タッチスクリーンを介して受信されるなど、操作者によって手動で入力され得ることが理解されよう。
【0053】
更に図10を参照すると、ブロック103において、プロセッサは、例えば、ドッキングインターフェース27の決定された現在の姿勢に基づいて、ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27が計画された軌道Tに沿って位置付けられているかどうかを決定する。そうでない場合、プロセッサは、計画された軌道Tからのドッキングインターフェース27の距離及び方向を、例えば、計画された軌道Tに沿った最も近い点からの距離及び方向として決定する(ブロック105)。計画された軌道Tは、一連の漸増的に離間した点として提供されてもよい。距離及び方向は、X構成要素、Y構成要素、若しくはZ構成要素、又はベクトルのシーケンスのうちの1つ以上を有するコース補正ベクトルと称されてもよく、ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27が、計画された軌道Tの最も近い点と整列するように移動し得る経路を表すことができる。
【0054】
ブロック107において、制御塔3内のプロセッサは、コース補正ベクトルと計画された軌道Tの計画された軌道ベクトルとの合計に基づいて、ロボットアーム4に適用される仮想力ベクトル/仮想トルクベクトルを決定する。この結果として生じる合計ベクトルは、プロセッサによってモデル化又は生成される仮想ばねのばね定数に基づいて、ブロック108において基準化されてもよい。このような動作は、(ロボットアームアクチュエータ17を駆動することによって)ロボットアーム4に適用される仮想力ベクトル/仮想トルクベクトルを提供するが、このような仮想力ベクトル/仮想トルクベクトルは、計画された軌道Tとの整列に向かってロボットアーム4/ドッキングインターフェース27を誘導する。
【0055】
ブロック103に戻ると、ロボットアーム4/ドッキングインターフェース27が、プロセッサによって計画された軌道Tに沿って(すなわち、許容可能な許容範囲内)位置付けられると決定される場合、プロセッサは、ロボットアーム4に適用されるコース補正ベクトルがブロック109において無視できるかゼロであるべきであると決定する。
【0056】
次に、ブロック111に到達すると、i)ブロック108において、プロセッサにより決定されるような仮想力ベクトル/仮想トルクベクトルと、ii)(例えば、ブロック113として示される1つ以上のF/Tセンサ73からの信号に基づいて、プロセッサによって検出されるような)ロボットアーム4上で操作者によって適用される、検出された手動での力ベクトル/トルクベクトルと、の合計が、(プロセッサによって)実施される。手動での力ベクトル/トルクベクトルの1つ以上の構成要素は、負の値、例えば、計画された軌道Tから離れる方向又は仮想力ベクトル/仮想トルクベクトルから離れる方向にある力構成要素によって表され得ることが、理解されよう。
【0057】
ブロック111の合計は、アドミタンス制御を介してロボットアームアクチュエータ17に適用される入力力ベクトル/トルクベクトルのプロセッサによる決定をもたらす(ブロック115。)アドミタンス制御は、アーム4/ドッキングインターフェース27を誘導するために、制御塔3内のプロセッサによって実装されるフィードバック制御アルゴリズムである。それは、ブロック111において生成された合計を入力信号として受信し、アーム4の力センサ/トルクセンサからのフィードバックに基づいて、ロボットアームアクチュエータ17に速度コマンドを発行して、ロボットアーム4の1つ以上の部分(ジョイント又はリンクなど)を駆動する。速度コマンドは、アドミタンス制御アルゴリズムによって計算されるように補償を含んでもよく、アーム/ドッキングインターフェースが、計画された軌道Tとの整列及び移動に向かって駆動される際に更新される。一変形形態では、アドミタンス制御下でプロセッサによってロボットアームアクチュエータ17に提供される信号は、力コマンド又はトルクコマンドを含み得る。ロボットアームアクチュエータ17のプロセッサ制御作動を介したロボットアーム4の前述のアドミタンス制御(ブロック103~111を含む)は、例えば、プロセッサによって合計されてロボットアームのアドミタンス制御を達成するための仮想力ベクトル/仮想トルクベクトル及び手動での力ベクトル/トルクベクトルの入力信号が、例えば、所定の間隔で繰り返し更新されて、更新された信号を提供して、時間の経過とともに力ベクトル/トルクベクトルの入力信号の変化を反映するロボットアームアクチュエータ17を駆動し得るように、反復プロセスとして実施され得る。
【0058】
操作者の力による手動での誘導のみに起因するロボットアーム4の移動である、別の動作モードが存在するが、本質的に、ロボットアーム4の動きは、計画された軌道に沿って(及びプロセッサ制御下で)ロボットアームアクチュエータ17によって影響されない。このモードは、(ブロック115の代わりに)アドミタンス制御モードのいずれかの代替であり得るが、操作者によって所望されるように、ドッキングプロセス中の任意の時点で操作者によって選択されてもよい。例えば、操作者は、計画された軌道Tから逸脱することを望む場合がある、又はいくつかの理由で自動誘導を停止し、操作者のみの力若しくは完全に手動の動作モードに変更することを所望する場合がある。ロボットアーム4のアドミタンス制御と完全な手動制御との間の切り替えは、ドッキングインターフェース27上又はその近くに位置するボタン75(例えば、図6を参照)によって誘発され得る、又は選択され得る。ボタン75は、プロセッサと電気的に接続したスイッチ(図示せず)を作動させてもよい。ボタン75は、例えば、2つのモード間をトグルするために、操作者の手又は足によって選択可能な任意の好適な手動制御インターフェースを一般的に意味するために使用される。例えば、プラットフォーム5に配置されたフットペダルであってもよい(図1を参照)。ボタン75は、押圧されるか、又はその他の方法で選択された場合に、制御塔3内のプロセッサに信号を送信して、ロボットアームアクチュエータ17のアドミタンス制御の駆動を停止させ得るが、代わりに、操作者の手動力のみがロボットアーム4を移動させることを可能にする別の動作モードを入力し得、更に計画された軌道から逸脱してもよい。そのモードでは、ロボットアーム4は、操作者によって誘導され、所望する場合、計画された軌道Tから逸脱していると言われる。しかしながら、この完全に手動での動作モードであっても、プロセッサは、アクチュエータ17を駆動して、(アーム4がスムーズに動いて操作者の手に応答するが、操作者によって力が印加されていない場合に、依然として静止しているままであるように、アーム4の種々のジョイントにおける重力及びギア列摩擦を克服するために)能動重力補償及び能動後退駆動を実行することを必要とする場合があることに、留意されたい。別の変形形態では、ボタン75は、ロボットアームアクチュエータ17を直接係合解除又は停止する機械的制御又は電気機械的制御であり得る。
【0059】
ロボットアーム4の完全な手動による誘導中に、計画された軌道Tに対するロボットアーム4/ドッキングインターフェース27の位置決めに対するフィードバックを、操作者に提供し得る。このようなフィードバックは、例えば、(例えば、アーム4が計画された軌道Tから逸脱する場合は常に)可聴ビープ若しくは可聴アラーム、(例えば、アームが計画された軌道Tに残る限り、緑色になる)表示灯若しくはその他の視覚的表示、プラットフォーム5に隣接したディスプレイ上若しくはユーザコンソール2にあるユーザディスプレイ15上に示されるグラフィック表示、ロボットアーム4の一部上の触覚フィードバック若しくは振動フィードバックなどの触覚表示、又は手動による誘導がどのように進行するかについて操作者フィードバックを与えるためのその他の適切な技術、の形態であってもよい。
【0060】
ここで図11を参照すると、受動的な仮想固定具動作モードのプロセスフローが示されているが、プロセッサは、ロボットアーム4を計画された軌道Tに拘束して、操作者が、アーム4に(計画された軌道Tの方向で)手動力を印加していることを検出した場合に、計画された軌道Tに沿ってアーム4を前方のみに駆動する。ブロック101において、計画された軌道Tは、上述のように、センサシステム47から受信された信号に応答して、又は手動による入力により、プロセッサによって発生する。ブロック113において、操作者によってロボットアーム4に適用される手動での力ベクトル/トルクベクトルは、上述のように、F/Tセンサ73から受信された信号からプロセッサによって検出されるが、ブロック117において、計画された軌道Tのドット積及び手動での力ベクトル/トルクベクトルがプロセッサによって計算されて、ブロック119において、計画された軌道Tに平行な、又はその他の方法で、計画された軌道Tに沿って操作者によって提供される、手動での力ベクトル/トルクベクトルの構成要素(以後、「F」)を決定する。ブロック121において、計画された軌道Tに沿った、手動での力ベクトル/トルクベクトルの構成要素Fは、F/Tセンサ73によって測定されるように、操作者によってロボットアーム4に適用された手動での力ベクトル/トルクベクトルから差し引かれ、ブロック123において計画された軌道Tに垂直な手動での力ベクトル/トルクベクトルの構成要素(以後、「F」)を提供する。
【0061】
その後、ブロック125において、プロセッサは、スカラ値、例えば、1を超えるのスカラ値(以後、「スカラ値N1」とし、ブロック127において示される)によって、手動での力ベクトル/トルクベクトルの平行な構成要素Fを乗算するが、これによって、この平行な手動での力ベクトル/トルクベクトルの構成要素Fが増幅するか、又は別の方法で値が増加する。ブロック129において、手動での力ベクトル/トルクベクトルの垂直構成要素Fはまた、スカラ値、例えば、1未満のスカラ値(以後、「N2」とし、ブロック131において示される)によって乗算されるが、これによって、この垂直の手動での力ベクトル/トルクベクトルの構成要素Fが減衰するか、又は別の方法で値が減少する。
【0062】
スカラ値N1、N2は、上述のように、プロセッサによってモデル化又は生成されるばね定数(k)に関連し得るが、プロセッサによって決定されるか、又は操作者によって手動で提供され得る所定の値又は入力信号であり得ることが、理解されよう。一変形形態では、N2は1未満(減少又はスケールダウン)であるが、N1は1より大きい(増加又はスケールアップ)。これは、操作者がアーム4を軌道Tに沿って動かすことを「容易に」感じることを意味するが、操作者は、アーム4を軌道Tから離れる方向に引っ張るか、又は押す場合に抵抗を感じるであろう。別の変形形態では、スカラ値N1、N2の一方又は両方は、プロセッサによって決定されるそれぞれの手動での力ベクトル/トルクベクトルの構成要素F、Fの値がプロセッサによって修正されないように、1の値であり得る。
【0063】
ブロック133において、それぞれのスカラ値N1、N2によって乗算されてきた力ベクトル/トルクベクトルの構成要素FX、は、上述のように、プロセッサによって合計されて、ブロック115においてプロセッサの制御下で、ロボットアームアクチュエータ17によってロボットアーム4のアドミタンス制御をもたらす信号を、ロボットアームアクチュエータ17に対して発生させる。
【0064】
この点に関して言えば、プロセッサの制御下でのロボットアームアクチュエータ17は、計画された軌道Tに対する、操作者によってロボットアーム4に適用された手動での力ベクトル/トルクベクトルのベクトル構成要素の変調を介するなどの、計画された軌道Tに沿った操作者によるロボットアーム4の手動での誘導を支援し得るが、これによって、計画された軌道Tに沿った、操作者によるロボットアーム4の手動による力の印加を支援し、また計画された軌道Tから離れた操作者によるロボットアーム4の手動による力の印加に抵抗する。一変形形態では、スカラ値N2はゼロの値であり得るが、これによって、力ベクトル/トルクベクトル構成要素Fはゼロの値に減衰するか、又は打ち消され、例えば、操作者による計画された軌道Tから離れたロボットアーム4の手動での誘導が、プロセッサの制御下で、ロボットアームアクチュエータ17の作用によって実質的に阻止又は防止される。
【0065】
図11によるロボットアームアクチュエータ17のプロセッサ制御作動を介したロボットアーム4のアドミタンス制御は、それぞれのスカラ値N1、N2を介した、手動での力ベクトル/トルクベクトルの平行構成要素F及び手動での力ベクトル/トルクベクトルの垂直構成要素Fの前述の変調を含む反復プロセスとして実行されて、ロボットアーム19のアドミタンス制御をもたらし得る。この点に関して言えば、アドミタンス制御への入力(ブロック115は)、例えば、所定の間隔で、繰り返しブロック113~133を実行して、時間の経過とともに手動での入力力ベクトル/入力トルクベクトルの変化に応答して、ロボットアームアクチュエータ17に更新された信号を提供することによって更新され得る。
【0066】
図12Aは、ロボットアームアクチュエータ17による(計画された軌道Tに基づく)ロボットアーム4の誘導又は駆動中の状況において、ツール駆動部をトロカールにドッキングするための方法のプロセスフローを示すが、例えば、ドッキングインターフェース27の配向が入口の姿勢と一致するかどうか、すなわち、単なる直線並進運動でのトロカール63の配向及び姿勢がドッキングを達成するかどうかを確認するために、プロセッサがドッキングインターフェース27の姿勢を確認する(ブロック135)。プロセッサにより、ドッキングインターフェース27がトロカール63の決定された配向と一致しないと決定された場合、プロセッサは、ロボットアームアクチュエータ17を制御して、ロボットアーム4をこのような配向に向かって更に駆動又は誘導し得る(ブロック137)。ドッキングインターフェース27の配向がトロカール63の配向と一致すると、プロセッサは、ロボットアームアクチュエータ17を駆動して、例えば、並進運動でのみ(ドッキングインターフェース27の姿勢又は配向をここで変更する必要はない)、ツール駆動部23がトロカール63とドッキングするまで、ロボットアーム4を更に駆動又は誘導し得る(ブロック139)。このようなプロセスでは、計画された軌道Tに沿った誘導中のドッキングインターフェース127の配向は、入口の姿勢に到達するまでトロカール63のものと一致する必要はない。
【0067】
図12Bは、外科用ロボットシステムのロボットアームに取り付けられたツール駆動部をトロカールにドッキングするための方法の別の代表的なプロセスフローを示す。プロセスは、計画された軌道Tを決定することから開始される(ブロック101)。プロセッサはまた、トロカール63の姿勢を決定し、次に、ドッキングインターフェース27の現在の姿勢がトロカール63の現在の姿勢と一致するかどうか(例えば、ドッキングインターフェース27の直線並進がトロカール63のヘッドとドッキングするのに十分である、ドッキングインターフェース27の姿勢である「入口の姿勢」)を決定する。そうでない場合、プロセッサは、(アーム4のアクチュエータ17を適切に駆動することによって)ドッキングインターフェースの配向を調整し、これによって、入口の姿勢が一致する。その時点で、計画された軌道Tに沿ったアームの誘導を、開始又は再開し得る(ブロック141)。プロセッサは、例えば、誘導中にドッキングインターフェース27が入口の姿勢と一致するかどうかを確認するために、アーム4を誘導しながら、ドッキングインターフェース27の姿勢を繰り返し、例えば定期的にチェックし得る(ブロック141)。そうでない場合、次に、プロセッサは、ドッキングインターフェース27の配向をどのように調整するかを決定し、それに応じてアーム4内のアクチュエータ17を駆動するが(ブロック141)、一方で、上述のように、計画された軌道Tに沿ってアームを誘導し続ける。これは、ドッキングインターフェースがトロカール63のヘッドの配向に到達して一致するまで、例えば、トロカール63の取り付け部分69がレシーバ37の受容空間38内に少なくとも部分的に取り囲まれるか、又はそこに受容されるまで継続されるが、これによって、ドッキングインターフェース27及びトロカール63は、すなわち許容範囲内で、同じ姿勢、例えば、同じ位置及び同じ配向を有する(ブロック143)。ドッキングインターフェース27の配向及びその位置がトロカール63の配向及び位置と一致すると、プロセッサは、ドッキング状態(及びプロセス終了)を宣言し得る。一変形形態では、ドッキングインターフェース27のトロカール63とのドッキングされた係合は、操作者によって視覚的に確認され得る。プロセッサによって、ドッキングインターフェース27がトロカール63とドッキングされていると決定された場合、アルゴリズムが完了すると見なされてもよく、また1つの変形形態では、視覚的、可聴的、又は触覚的確認が、プロセッサによって操作者に提供され得る。プロセッサによって、ドッキングインターフェース27がトロカール63とドッキングされていないと決定された場合、プロセッサは、ロボットアームアクチュエータ17に信号を送って、ツール駆動部23のトロカール63とのドッキングが達成されるまで、ロボットアーム4を更に誘導又は駆動し得る。
【0068】
ロボットアーム19のトロカール63とのドッキング係合へのこのような誘導又は駆動はまた、上述の仮想バネに従って、操作者による手動でのロボットアーム19の誘導のロボットアームアクチュエータ17によって、プロセッサ制御支援又は抵抗を介して実行され得る、又は上述のように、操作者によって完全に手動で誘導され得る。
【0069】
ドッキングされた姿勢では、ドッキングインターフェース27は、以下で更に説明するように、例えば、クランプ構成要素33、35を介して、トロカール63と、例えば、堅固に機械的に結合されるようにロックされ得る。一変形形態では、トロカール63の取り付け部分69が少なくとも部分的に取り囲まれているか、又はレシーバ37の受容空間38内で受容されている状態は、ドッキング準備完了状態と見なされ得、またドッキングインターフェース27のロック済み係合又は機械的な連結係合は、ドッキング状態又は最終的にドッキングされた状態であると見なされ得る。
【0070】
ドッキングインターフェース27のレシーバ37の受容空間38内にトロカール63の取り付け部分69を位置決めすると、レバー45は、例えば、手動で又はプロセッサ制御下でアクチュエータを介して、トロカール63の取り付け部分69との圧締可能な係合へとクランプ構成要素33を付勢するために、前方ロック位置に移動し得るが(図4)、これによって、例えば、ドッキング位置のドッキングインターフェース27にラッチされ、クランプされるか、又はロックされるように、取り付け部分69が固定される。更に、レバー45は、ロック解除位置へと後方に移動されて、クランプ構成要素33を取り付け部分69から係合解除して、ロボットアーム19/ドッキングインターフェース27をトロカール63から連結解除し得る。
【0071】
トロカール63がドッキングインターフェース27にロックされた場合、1つ以上の外科用ツールをツール駆動部23に連結し、トロカール63を介して挿入して、患者6の体腔にアクセスし(その内部で、その後の外科手術操作を行う)ことができる。外科用ロボットシステム1は、それが取り付けられて、例えば、ユーザコンソール2におけるディスプレイ15上にツールタイプとアーム位置を表示するとすぐに各ツール(内視鏡及び外科用器具)を個別に特定する、能力を有する。次に、対応するツール機能を有効にして、UID14及び足踏み式制御部13を使用して起動させ得る。患者側のアシスタント、例えば、臨床操作者8は、手順を通して必要に応じて、ツールを取り付けたり取り外すことができる。ユーザコンソール2に着座している外科医(操作者9)は、操作者9がUID14及び足踏み式制御部13の操作を介して制御するツールを使用して、手術を開始し得る。システム1は、外科用ツールの正確な実時間の動きのために、UID14及び足踏み式制御部13を介して、外科医の手、手首、及び指の動きを並進させる。
【0072】
センサシステム47及びロボットアーム4の前述の配置は、少なくともセンサシステム47からの入力、及び任意選択で、臨床操作者8によってロボットアーム4に印加された手動での力/トルクをアルゴリズム的に制御し、アーム4の滑らかで少なくとも部分的にプロセッサ制御された誘導を提供して、トロカール63とドッキングする。ドッキングされると、トロカール63と、ロボットアーム4/ツール駆動部23のドッキングインターフェース27との間の、剛性の機械的接続又は安定した機械的接続は、ラッチ機構によって(例えば、手動での操作者制御下で)なされ得る。
【0073】
別の態様では、受動的な仮想固定具モード又は能動仮想固定具モードのいずれかでドッキングプロセスを実行する場合には、アーム4は依然として、視覚的追跡の喪失を引き起こし得る位置又は配向に移動する場合がある。これは、例えば、トロカール63がアームの撮像システムの視野を離れる場合に起こり得るか、又はアームの撮像センサからトロカール63への視線を別の物体が妨害する場合があるが、これによって、その計画された軌道Tがトロカールとのドッキングをもたらすのに十分な信頼性を、制御システムが有しない可能性がある。この追跡喪失の問題を回避するために、仮想固定具の別の層を使用して、計画された軌道に沿ったアームの動きを介して、アームの検知範囲内にトロカールの検知された表面特徴部を保持し得る。例えば、上述のようにアーム上に統合されたカメラでトロカールを視覚的に追跡する場合、制御システムは、トロカール上の検知された(追跡された)表面特徴部とアームの検知範囲の中心(例えば、図6に示すようなカメラの視野の中央)との間に仮想バネを生成し得る。その仮想ばねは、計画された軌道に従う場合に、追跡された/検知された表面特徴部がカメラ視野の中心近くに維持されることを確実にする。結果として、これは、ドッキングプロセス全体を通してロボットアームの動き中に、検知された表面特徴部が撮像システムの検知範囲から外れることを防止する。計画された軌道に沿ってトロカールに向かってアームを引っ張る又は誘導するための上述の能動的/受動的な仮想固定具は、この第2の仮想固定具と重ね合わされ得る。後者は、検知された表面特徴部がアーム撮像システムの検知範囲から外れるようにするアームのいずれかの運動に抵抗し、それによって、より信頼性が高く中断されていないドッキングプロセスを確実にする。
【0074】
前述の説明は、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために特定の専門用語を使用した。しかしながら、本発明を実施するために特定の詳細が必要ではないことは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の特定の実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されるものである。それらは、包括的であることも、開示されたまさにその形態に本発明を限定することも意図していない。明らかに、上記の教示の観点から、多くの修正及び変形形態が可能である。本発明の原理及びその実際的な用途の最良の説明のために、本実施形態が選択され記載されており、それによって、企図される特定の用途に適するように、その他の当業者による、本発明及び種々の修正を伴った種々の実施形態の最良の利用が可能となる。
【0075】
〔実施の態様〕
(1) 外科用ロボットシステムであって、
外科用ロボットアームの遠位端に連結されたツール駆動部であって、前記ツール駆動部が、トロカールを受容するためのドッキングインターフェースを備え、前記ドッキングインターフェースがチャンバを画定し、1つ以上のクランプ構成要素が前記チャンバ内に配置されて、前記トロカールの取り付け部分を前記ドッキングインターフェースに固定するために移動するように構成されている、ツール駆動部と、
前記トロカールの表面特徴部を視覚的に検知するように動作可能な1つ以上のセンサと、
1つ以上のプロセッサであって、
前記視覚的に検知された表面特徴部に基づいて、前記トロカールの位置及び配向を決定するように構成され、また
前記ドッキングインターフェースを前記トロカールの前記決定された配向に配向させながら、前記ロボットアームを前記トロカールの前記決定された位置に向かって誘導するように、複数のアクチュエータに信号を送るように構成された、1つ以上のプロセッサと、を備える、外科用ロボットシステム。
(2) 前記1つ以上のプロセッサが、前記トロカールの前記決定された位置に対して計画された軌道を生成して、前記計画された軌道に沿って前記ロボットアームを誘導するように構成されている、実施態様1に記載の外科用ロボットシステム。
(3) 前記1つ以上のプロセッサが、前記複数のアクチュエータを制御して前記計画された軌道に沿って前記アームを自動的に駆動することによって、前記ロボットアームを誘導するように構成されている、実施態様2に記載の外科用ロボットシステム。
(4) 前記1つ以上のプロセッサが、前記複数のアクチュエータを制御して手動で前記アームに力を印加している操作者を支援することによって、前記ロボットアームを誘導するように構成されている、実施態様2に記載の外科用ロボットシステム。
(5) 操作者の手動による力の印加が前記ロボットアームを前記計画された軌道から離れて方向付けている場合に、前記1つ以上のプロセッサが、前記ロボットアームへの前記操作者の手動による力の印加に抵抗するために前記複数のアクチュエータを制御するように構成されている、実施態様2に記載の外科用ロボットシステム。
【0076】
(6) 前記1つ以上のプロセッサによって制御される前記アクチュエータが、前記ロボットアームと前記計画された軌道との間の距離に比例する力により、前記計画された軌道から離れた、操作者の手動での前記ロボットアームの誘導に抵抗する、実施態様5に記載の外科用ロボットシステム。
(7) 前記計画された軌道が、患者、前記患者を載せた手術台、臨床スタッフ、ケーブル、パイプ、及びその他の外科用ロボットアームのうちの1つ以上との前記ロボットアームの衝突を回避する、実施態様2に記載の外科用ロボットシステム。
(8) 前記アームが、操作者によって手動で作動された場合に、前記1つ以上のプロセッサが前記アクチュエータのアドミタンス制御下で前記ロボットアームを誘導する第1のモードと、前記1つ以上のプロセッサが前記アクチュエータを制御して前記ロボットアームの完全な手動での誘導を可能にする第2のモードとの間で動作モードを変更する、スイッチを備える、実施態様1に記載の外科用ロボットシステム。
(9) 前記トロカールの前記取り付け部分が、前記トロカールの上部から延在する突出部である、実施態様1に記載の外科用ロボットシステム。
(10) 前記ドッキングインターフェース上に支持されたレバーを更に備え、前記レバーの動きが、前記1つ以上のクランプ構成要素の動きを引き起こす、実施態様1に記載の外科用ロボットシステム。
【0077】
(11) 作動された場合に、前記プロセッサに、i)前記1つ以上のセンサを作動させる信号、ii)前記視覚的に検知された表面特徴部に基づいて、前記トロカールの前記位置及び前記配向を決定する信号、又はiii)前記ロボットアームを前記トロカールの前記決定された位置に向かって誘導する信号、を送る、前記ドッキングインターフェース上に装着されたスイッチを更に備え、一方向での前記レバーの動きが前記スイッチを作動させ、また反対方向での前記レバーの動きが前記1つ以上のクランプ構成要素の動きを引き起こして、前記ドッキングインターフェースを前記トロカールに固定するように、前記スイッチが位置付けられている、実施態様1に記載の外科用ロボットシステム。
(12) 前記1つ以上のセンサが前記ドッキングインターフェース内に配置されている、実施態様1に記載の外科用ロボットシステム。
(13) 前記ドッキングインターフェースが、その前部に連結された滅菌アダプタを備え、前記1つ以上のセンサが前記滅菌アダプタ上に装着されている、実施態様12に記載の外科用ロボットシステム。
(14) 外科用ロボットシステムのロボットアームをトロカールにドッキングするための方法であって、
前記ロボットアームに連結されたツール駆動部のドッキングインターフェースに連結された1つ以上のセンサによって、前記トロカール上にある表面特徴部の画像を生成することと、
1つ以上のプロセッサによって、前記表面特徴部の前記画像に基づいて、前記トロカールの検知された姿勢を決定することであって、前記検知された姿勢が、前記トロカールの位置及び配向を含む、前記トロカールの検知された姿勢を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記トロカールの前記検知された姿勢に対する計画された軌道を計算することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記ロボットアーム内の複数のアクチュエータを駆動して、前記計画された軌道に沿って前記ロボットアームの前記ドッキングインターフェースを前記トロカールの前記検知された姿勢に誘導することと、を含む、方法。
(15) 前記1つ以上のプロセッサによって、前記ドッキングインターフェースと前記計画された軌道との間の距離を決定することと、前記距離に基づいて前記ロボットアームを前記計画された軌道に向かって誘導するように、前記ロボットアーム内の前記複数のアクチュエータを制御することと、を更に含む、実施態様14に記載の方法。
【0078】
(16) 前記プロセッサによって、前記計画された軌道の方向で操作者により前記ロボットアームに印加された手動力の構成要素を決定することと、前記計画された軌道に沿って前記操作者により印加された前記手動力の前記構成要素に基づいて、前記ロボットアームを前記計画された軌道に沿って誘導するように前記ロボットアーム内の前記複数のアクチュエータを制御することと、を更に含む、実施態様14に記載の方法。
(17) 前記プロセッサが、前記ロボットアーム内の前記複数のアクチュエータを制御して、i)前記計画された軌道に沿って前記操作者によって印加された前記手動力の前記構成要素と、ii)所定のスカラ値と、の積によって決定された力を用いて、前記計画された軌道に沿って前記ロボットアームを誘導する、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記プロセッサによって、前記計画された軌道の方向から離れる方向で操作者によって前記ロボットアームに印加された手動力の構成要素を決定することと、前記計画された軌道から離れる前記方向で前記操作者によって印加された前記手動力の前記構成要素に基づいて、前記ロボットアームを前記計画された軌道に向かって駆動するように前記ロボットアーム内の前記複数のアクチュエータを制御することと、を更に含む、実施態様14に記載の方法。
(19) 前記プロセッサが、前記ロボットアーム内の前記複数のアクチュエータを制御して、i)前記計画された軌道から離れる前記方向で、前記操作者によって印加された前記手動力の前記構成要素と、ii)所定のスカラ値と、の積によって決定された力を用いて、前記計画された軌道に向かって前記ロボットアームを駆動する、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記1つ以上のセンサが前記アーム上のカメラの一部であり、前記アームが前記計画された軌道に沿って移動する間、前記表面特徴部を前記カメラの視野の中心に維持するように、前記1つ以上のプロセッサが前記ロボットアーム内の前記複数のアクチュエータを制御する、実施態様14に記載の方法。
図1
図2
図3
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図12A
図12B