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特許7543411抗クロ―ディン18.2の抗体及びその使用
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  • 特許-抗クロ―ディン18.2の抗体及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】抗クロ―ディン18.2の抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20240826BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240826BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20240826BHJP
   C12N 5/20 20060101ALI20240826BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C12P21/08
C07K1/14
C12N5/20
C12N15/13
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022540843
(86)(22)【出願日】2021-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 CN2021070139
(87)【国際公開番号】W WO2021136550
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】202010006872.4
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC  C202007
【微生物の受託番号】CCTCC  C202008
(73)【特許権者】
【識別番号】522072507
【氏名又は名称】クレージュ メディカル カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CRAGE MEDICAL CO.,LIMITED
【住所又は居所原語表記】Flat/RM A 12/F,ZJ 300,300 Lock hart Road,Wan Chai,Hong Kong,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李宗海
(72)【発明者】
【氏名】王鵬
(72)【発明者】
【氏名】劉振
(72)【発明者】
【氏名】王華茂
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517476(JP,A)
【文献】米国特許第10421817(US,B1)
【文献】特表2019-531084(JP,A)
【文献】Journal of Hematology & Oncology,2017年,10:105,DOI 10.1186/s13045-017-0473-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/30
C12P 21/08
C07K 1/14
C12N 5/20
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローディン18.2に結合する抗体であって、前記抗体が、アクセッション番号CCTCCNO.C202007またはCCTCCNO.C202008で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体であり、CCTCCNO.C202007ハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体が抗体9であり、CCTCCNO.C202008ハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体が抗体7である、抗体。
【請求項2】
配列番号7(KNKKIYDGG)に示される配列を含む抗原性ペプチドを認識できる、またはクローディン18.2の配列番号7に示される配列を含むエピトープを認識できる抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、配列番号8(GFGSNTKNKKIYDGG)、9(SNTKNKKIYDGGART)もしくは10(KNKKIYDGGARTEDE)に示される配列を含む抗原性ペプチドを認識できる、または前記抗体が、クローディン18.2の配列番号8、9もしくは10に示される配列を含むエピトープを認識できる、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、ネズミ抗体であることを特徴とする、請求項2または3に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、クローディン18.2を発現する細胞に結合する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
前記クローディン18.2のアミノ酸配列は、配列番号2
MAVTACQGLGFVVSLIGIAGIIAATCMDQWSTQDLYNNPVTAVFNYQGLWRSCVRESSGFTECRGYFTLLGLPAMLQAVRALMIVGIVLGAIGLLVSIFALKCIRIGSMEDSAKANMTLTSGIMFIVSGLCAIAGVSVFANMLVTNFWMSTANMYTGMGGMVQTVQTRYTFGAALFVGWVAGGLTLIGGVMMCIACRGLAPEETNYKAVSYHASGHSVAYKPGGFKASTGFGSNTKNKKIYDGGARTEDEVQSYPSKHDYV
に示される、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が胃組織に特異的に結合する、または
前記抗体が、胃組織に特異的に結合するが、肺組織には結合しないことを特徴とする、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体及び少なくとも1つの検出可能な標識を含む、コンジュゲート。
【請求項9】
前記検出可能な標識は、蛍光標識、発色標識、発光標識、発色団標識、放射性同位体標識、同位体標識、同量同位体標識(isobaric label)、酵素標識、粒子標識、または結合剤の使用によって検出される核酸もしくはタンパク質であることを特徴とする、請求項8に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
受託アクセッション番号がCCTCCNO.C202007またはCCTCCNO.C202008である、ハイブリドーマ。
【請求項11】
検出されるサンプル中のクローディン18.2の発現を検出する又はがんを診断、検出または監視するための試薬の調製における、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体または請求項8に記載のコンジュゲートの使用であって、検出されるサンプル中のクローディン18.2の発現を検出する又はがんを診断、検出または監視することは、(i)前記検出されるサンプルを、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体または請求項8に記載のコンジュゲートに接触させること;(ii)前記抗体または前記コンジュゲートとクローディン18.2によって形成される複合体の状況を検出することを含むことを特徴とする、使用
【請求項12】
クローディン18.2を標的とする腫瘍療法によって腫瘍を治療できるかどうかを分析するための試薬の調製における、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体または請求項8に記載のコンジュゲートの使用であって、クローディン18.2を標的とする腫瘍療法によって腫瘍を治療できるかどうかを分析することは、
(i)腫瘍細胞を含むサンプルを、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体または請求項8に記載のコンジュゲートに接触させること;
(ii)前記抗体または前記コンジュゲートとクローディン18.2によって形成される複合体の量を検出することを含む、使用
【請求項13】
前記腫瘍細胞は、胃癌細胞、食道癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、結腸癌細胞、肝臓癌細胞、頭頸部癌細胞、または胆道系腫瘍細胞である、請求項12に記載の使用
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体または請求項8に記載のコンジュゲートを含む検出キット。
【請求項15】
前記クローディン18.2が、配列表の配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫学の分野に属し、より具体的には、本発明は、抗クローディン18.2抗体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クローディン18(Claudin 18、CLD18)は、上皮と内皮の密着結合(タイトジャンクション)に位置する膜内在性タンパク質であり、分子量は約27.9KDである。GenBankアクセッション番号はスプライスバリアント1(CLD18A1、CLD18.1またはクローディン18.1と呼ばれる):NP_057453、NM016369、及びスプライスバリアント2(CLD18A2、CLD18.2またはクローディン18.2と呼ばれる):NM_001002026、NP_001002026である。CLD18A1は正常な肺で選択的に発現するが、CLD18A2は正常な胃で発現し、発現は分化した胃上皮の短命細胞に限定される。しかし、CLD18A2はさまざまな腫瘍細胞で強く発現している。CLAUDIN18.2は、胃癌、食道癌、膵臓癌、肺癌(非小細胞肺癌(NSCLC)など)、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、乳癌、頭頸部癌、胆道系腫瘍(胆嚢癌、胆管癌など)及びそれらの転移、クケンバーグ腫瘍などの胃癌転移、腹膜転移、リンパ節転移で発現することが分かった。
【0003】
CLDN18は、ループ1及びループ2と呼ばれる2つの細胞外セグメントを持つ4回膜貫通タンパク質である。ヒトCLDN18A2(配列番号2)はヒトCLDN18A1(配列番号1)と相同性が高く、両者の相同性比較の結果を図1に示すように、N末端の最初の膜貫通(TM)領域とループ1のみが異なり、残りのアミノ酸配列は同じである。
【発明の開示】
【0004】
本発明では、CLDN18A2のC末端ポリペプチドを使用してマウスを免疫する。このペプチドは2つのスプライスバリアントで排列が同一であったが、CLDN18A2陽性腫瘍の臨床診断に使用できる顕著な組織特異性を持つ複数の抗体を取得した。
【0005】
第一態様では、本発明は、配列番号7(KNKKIYDGG)に示される配列を含む抗原性ペプチドを認識できる、またはクラウディン18.2の配列番号7に示される配列を含むエピトープを認識できることを特徴とする抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0006】
より好ましい形態では、前記抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号6(KNKKIYDGGART)に示される配列を含むペプチドを認識できる、または前記抗体または抗原結合フラグメントは、クラウディン18.2の配列番号6に示される配列を含むエピトープを認識できる。
【0007】
より好ましい形態では、前記抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号8(GFGSNTKNKKIYDGG)、9(SNTKNKKIYDGGART)もしくは10(KNKKIYDGGARTEDE)に示される配列を含む抗原性ペプチドを認識できる、または前記抗体または抗原結合フラグメントは、クラウディン18.2の配列番号8、9もしくは10に示される配列を含むエピトープを認識でき、
好ましくは、前記抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号9もしくは10に示される配列を含む抗原性ペプチドを認識できる、または前記抗体または抗原結合フラグメントが、クラウディン18.2の配列番号9もしくは10に示される配列を含むエピトープを認識できる。
【0008】
より好ましい形態では、前記抗体が、アクセッション番号CCTCCNO.C202007またはCCTCCNO.C202008で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体であり、CCTCCNO.C202007ハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体が抗体9であり、CCTCCNO.C202008ハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体が抗体7である。
【0009】
より好ましい形態では、前記抗体または抗原結合フラグメントが、ネズミ抗体(murine antibody)、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体である。
【0010】
より好ましい形態では、前記抗体または抗原結合フラグメントが、アクセッション番号CCTCCNO.C202007(抗体9)またはCCTCCNO.C202008(抗体7)で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生されるヒト化抗体またはキメラ抗体である。
【0011】
より好ましい形態では、前記抗体または抗原結合フラグメントが、アクセッション番号CCTCCNO.C202007またはCCTCCNO.C202008で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体の変異体であり、CCTCCNO.C202007ハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体が抗体9であり、CCTCCNO.C202008ハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体が抗体7であり、
好ましくは、前記変異体が、アクセッション番号CCTCCNO.C202007またはCCTCCNO.C202008で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有する。
【0012】
より好ましい形態では、前記抗体フラグメントが、アクセッション番号CCTCCNO.C202007またはCCTCCNO.C202008で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体の抗体フラグメントであり、
好ましくは、前記抗体フラグメントが、scFv、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、F(ab’)2フラグメント、または単一ドメイン抗体であり、
CCTCCNO.C202007ハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体が抗体9であり、CCTCCNO.C202008ハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体が抗体7である。
【0013】
より好ましい形態では、前記抗体または抗原結合フラグメントが、クロ―ディン18.2を発現する細胞に結合し、好ましくは、前記クロ―ディン18.2のアミノ酸配列は、配列番号2
MAVTACQGLGFVVSLIGIAGIIAATCMDQWSTQDLYNNPVTAVFNYQGLWRSCVRESSGFTECRGYFTLLGLPAMLQAVRALMIVGIVLGAIGLLVSIFALKCIRIGSMEDSAKANMTLTSGIMFIVSGLCAIAGVSVFANMLVTNFWMSTANMYTGMGGMVQTVQTRYTFGAALFVGWVAGGLTLIGGVMMCIACRGLAPEETNYKAVSYHASGHSVAYKPGGFKASTGFGSNTKNKKIYDGGARTEDEVQSYPSKHDYV
に示される。
【0014】
より好ましい形態では、前記抗体または抗原結合フラグメントが胃組織に特異的に結合し、
好ましくは、前記抗体または抗原結合フラグメントは、胃組織に特異的に結合するが、肺組織には結合しない。
【0015】
本発明の第二の態様では、上記いずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント、及び少なくとも1つの検出可能な標識を含むことを特徴とするコンジュゲートが提供され、
好ましくは、前記検出可能な標識は、蛍光標識、発色標識、発光標識、発色団標識、放射性同位体標識、同位体標識、同量同位体標識(isobaric label)、酵素標識、粒子標識、または結合剤の使用によって検出された核酸もしくはタンパク質である。
【0016】
本発明の第三の態様では、本発明の上記の抗体を産生することができるハイブリドーマが提供される。
【0017】
より好ましい形態では、前記ハイブリドーマは、受託アクセッション番号がCCTCCNO.C202007またはCCTCCNO.C202008である。
【0018】
本発明の第四の態様では、検出されるサンプル中のクローディン18.2の発現を検出するための方法が提供され、前記方法は、前記検出されるサンプルを、本発明のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、または上記本発明に記載のコンジュゲートに接触すること;前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、または前記コンジュゲートとクローディン18.2によって形成される複合体の状況を検出することを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の第四の態様では、がんを診断、検出または監視するための方法が提供され、前記方法は、
検出されるサンプルを、上記本発明に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、または本発明の上記のコンジュゲートに接触すること;前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、または前記コンジュゲートとクローディン18.2によって形成される複合体の量を検出することを含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の第四の態様では、クロ―ディン18.2を標的とする腫瘍治療法によって腫瘍を治療できるかどうかを分析するための方法が提供され、前記方法は、
(i)腫瘍細胞を含むサンプルを、上記本発明に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、または上記本発明に記載のコンジュゲートに接触すること;
(ii)前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、または前記コンジュゲートとクローディン18.2によって形成される複合体の量を検出することを含むことを特徴とし、
好ましくは、前記腫瘍細胞は、胃癌細胞、食道癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、結腸癌細胞、肝臓癌細胞、頭頸部癌細胞、または胆道系腫瘍細胞であり、
より好ましくは、前記腫瘍細胞は、胃癌細胞、食道癌細胞、膵臓癌細胞、または胆道系腫瘍細胞である。
【0021】
本発明の第五の態様では、上記本発明に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、または上記本発明に記載のコンジュゲートを含む検出キットが提供される。
【0022】
より好ましい形態では、前記クローディン18.2は、配列表の配列番号2のアミノ酸配列またはその変異体を含む。
【0023】
本発明の第六の態様では、クロ―ディン18.2を標的とするモノクローナル抗体を産生する方法が提供され、前記方法は、配列番号6、7、8、9もしくは10に示される配列を含むポリペプチドを免疫原として使用し、または配列番号6、7、8、9もしくは10に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有するポリペプチドを免疫原として使用し、動物を免疫した後、動物のB細胞を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を得てモノクローナル抗体を産生することを含むことを特徴とし、
好ましくは、前記動物はネズミであり、
好ましくは、前記B細胞は脾細胞に由来する。
【0024】
より好ましい形態では、前記ハイブリドーマ細胞から前記モノクローナル抗体を単離することをさらに含む。
【0025】
より好ましい形態では、配列番号3(MMCIACRGLAPEETNYKAVSYHASGHSVAYKPGGFKASTGFGSNTKNKKIYDGGARTEDEVQSYPSKHDYV)に示されるポリペプチドを免疫原として使用する。
【0026】
より好ましい形態では、前記モノクローナル抗体が前記抗原に特異的に結合する。
【0027】
より好ましい形態では、前記抗原への特異的結合を保持する前記モノクローナル抗体の修飾形態を産生することをさらに含む。
【0028】
より好ましい形態では、前記モノクローナル抗体の修飾形態がヒト化抗体である。
【0029】
本明細書に記載されているすべての開示、特許及び特許出願は、個々の開示、特許または特許出願を参照により具体的かつ個別に組み込んだと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、クローディン18.2とクローディン18.1の配列相同性の比較結果を示す図である。
図2図2Aは、293T-クローディン18.1細胞溶解物に結合する抗体のウエスタンブロット同定結果を示す図である。図2Bは、293T-クローディン18.2細胞溶解物に結合する抗体のウエスタンブロット同定結果を示す図である。
図3図3は、胃癌サンプルF163060A1に対する抗体7と抗体9の染色結果を示す図である。
図4図4は、胃癌サンプル2018-50829Eに対する抗体7と抗体9の染色結果を示す図である。
図5図5は、肺癌サンプル2018-55164Fに対する抗体7と抗体9の染色結果を示す図である。
図6図6は、エピトープELISA分析の結果を示す図である。
【発明の詳細】
【0031】
以下の詳細な説明は、本明細書に開示される実施形態を詳細に説明する。本明細書は、ここに開示される特定の実施形態に限定されることを意図するものではなく、変更できることを理解されたい。当業者は、本明細書に開示されるものには複数の変更または変形があり得、それらはすべて本開示の範囲及び原理の範囲内であることを理解するであろう。特に明記しない限り、各実施形態は、他の任意の実施形態と任意に組み合わせることができる。
【0032】
本明細書に開示される特定の実施形態は、数値範囲を包含し、本発明の特定の態様は、範囲に関して説明することができる。特に明記しない限り、数値範囲または範囲の説明は、簡潔さと便宜のためにのみ使用されており、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではないことを理解されたい。したがって、範囲に関する説明は、あたかもそのようなサブ範囲及び数値ポイントが本明細書に明示的に書かれているかのように、その範囲内のすべての可能なサブ範囲及びすべての可能な特定の数値点を具体的に開示することを考慮すべきである。たとえば、1~6の範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのサブ範囲、及びこれら範囲内の1、2、3、4、5、6などの特定の数値ポイントを具体的に開示すると見なすべきである。上記の原則は、記載されている数値の幅に関係なく等しく適用される。範囲が記述されている場合、その範囲には範囲の端点が含まれる。
【0033】
量、一時的持続時間などの測定可能な値を指す場合、「約」という用語は、指定された値の±20%、場合によっては±10%、場合によっては±5%、、場合によっては±1%、あるいは場合によっては±0.1%の変化を含むことを意味する。
【0034】
本明細書における「抗体」という用語は、完全抗体および抗原結合フラグメントを含む。天然に存在する「抗体」は、ジスルフィド結合によって連結された少なくとも2つの重鎖(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の3つのドメインで構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)および軽鎖定常領域からなる。
【0035】
軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成されている。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる変動性の高い領域にさらに細分化できる。これらの領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域によって離間される。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された3つのCDRと4つのFRで構成されている。重鎖および軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれている。抗体は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、およびヒトを含むがこれらに限定されない、異なる種に由来し得る。抗体は、ある種(好ましくはヒト)からの抗体定常領域および別の種からの抗原結合部位を有するキメラ抗体も含む。抗体は、非ヒト種由来の抗体の抗原結合部位と、ヒト由来の定常領域およびフレームワーク領域を有するヒト化抗体も含む。本明細書に記載の抗体は、モノクローナル抗体、すなわち、単一の分子組成を有する抗体分子の調製物であり得る。モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを産生するためのシステムは、好ましくはマウスシステムである。融合のために免疫化された脾細胞を単離するための免疫学的手順および技術は、当技術分野で知られている。マウス骨髄腫細胞とマウス脾細胞の融合のプロトコルも知られている。モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを作製するための他のシステムは、好ましくは、ラットおよびウサギシステムである(例えば、Spieker-Polet et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:9348(1995)に記載されるように)。本明細書に記載の抗体は、組換え抗体、すなわち、組換え手段によって調製、発現、産生、または単離されたすべての抗体であり得、例えば、(a)免疫グロブリン遺伝子がトランスジェニックまたはトランス染色体である動物(例えばマウス)から単離された抗体、またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞(例えば、トランスフェクトーマ)から単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む他の手段によって調製、発現、産生または単離された抗体であり得る。抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)のハイブリドーマ技術などの様々な技術によって産生することができ、またはモノクローナル抗体を産生するための他の技術、例えばファージディスプレイ技術を使用して産生することができる。
【0036】
ハイブリドーマの重鎖および軽鎖転写物からのヌクレオチド配列を使用して、合成オリゴヌクレオチドの重複セットを設計し、天然配列と同じアミノ酸コード能力を有する合成V配列を生成する。合成された重鎖およびカッパ鎖配列は、3つの態様、すなわち、オリゴヌクレオチド合成およびPCR増幅を容易にするためにヌクレオチド塩基の繰り返しストリングを中断すること;Kozakの規則に従って最適な翻訳開始部位に従って組み込むこと(Kozak,1991,J.Biol.Chem.266:19867-19870);および翻訳開始部位の上流にある操作されたHindIII部位で天然配列と異なり得る。
【0037】
重鎖および軽鎖可変領域の場合、コーディング鎖および対応する非コーディング鎖の最適化された配列は、対応する非コーディングオリゴヌクレオチドのほぼ中間点で30~50ヌクレオチドに分割される。したがって、各鎖について、前記オリゴヌクレオチドは、150~400ヌクレオチドのセグメントにまたがる重複する二重鎖セットに組み立てることができる。次に、このライブラリーをテンプレートとして使用して、150~400ヌクレオチドのPCR増幅産物を生成する。通常、単一の可変領域オリゴヌクレオチドセットは2つのライブラリーに分割され、それぞれが増幅されて2つの重複するPCR産物が生成される。次に、これらの重複する産物をPCR増幅によって組み合わせて、完全な可変領域を形成する。重鎖または軽鎖定常領域の重複フラグメントもまた、発現ベクターに容易にクローン化される構築物フラグメントを生成するために、PCR増幅に含まれ得る。そして、再構築されたキメラまたはヒト化重鎖および軽鎖可変領域を、クローン化されたプロモーター配列、リーダー配列、翻訳開始配列、定常領域配列、3’非翻訳配列、ポリアデニル化配列および転写終結配列と組み合わせて、発現ベクター構築物を形成する。重鎖および軽鎖の発現構築物を組み合わせて単一のベクターにするか、宿主細胞に同時トランスフェクトするか、連続的にトランスフェクトするか、または別々にトランスフェクトし、次に融合して両方の鎖を発現する宿主細胞を形成することができる。ヒトIgGκ発現ベクターを構築するためのプラスミドにより、PCR増幅されたV重鎖およびVκ軽鎖cDNA配列を、完全な重鎖および軽鎖ミニ遺伝子(minigene)の再構築に使用することができる。これらのプラスミドは、完全ヒト抗体またはキメラIgG1κまたはIgG4κ抗体を発現させるために使用できる。他の重鎖アイソタイプを発現するため、またはλ軽鎖を含む抗体を発現させるために、同様のプラスミドを構築することができる。
【0038】
「抗原結合フラグメント」という用語は、特異的抗原結合能力を保持する抗体の1つまたは複数のフラグメントを指し、包含される結合フラグメントには、(i)VL、VH、CL、およびCHドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)VHおよびCHドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体ワンアームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなる単一ドメイン抗体フラグメント;(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、および(vii)任意選択で、合成リンカーによって連結された2つ以上の単離されたCDRの組み合わせが含まれる。また、組換え法を使用して、Fvフラグメントの2つのドメインVLとVHを合成リンカーを介して結合し、単鎖抗体(または単鎖Fv(scFv)ともいう)を形成することも含まれる。
【0039】
本発明の抗体または抗原結合フラグメントの標的抗原であるクローディン18.2への結合は、当技術分野で知られている任意の方法によって特徴付けまたは表れることができ、例えば、結合は、結合親和性によって特徴付けることができる。結合親和性は、ELISA、ウエスタンブロット、免疫蛍光抗体法およびフローサイトメトリー分析などの当技術分野で知られている任意の方法によって測定することができる。フローサイトメトリーは、免疫化されたマウスの血清中の抗体の存在、またはモノクローナル抗体の生細胞への結合を示すことができる。抗原を天然に発現するまたはトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株及び抗原発現を欠く陰性対照(標準的な増殖条件下で増殖)をハイブリドーマ上清または1%FBS含有PBSにおけるさまざまな濃度のモノクローナル抗体と混合し、4℃で30分間インキュベートする。洗浄後、APCまたはAlexa647で標識した抗IgG抗体を、一次抗体染色と同じ条件下で抗原結合モノクローナル抗体に結合させる。サンプルをFACS装置で分析し、光散乱および側方散乱特性を使用して単一の生細胞をゲーティング(gate)する。抗原特異的モノクローナル抗体は、共トランスフェクションを使用した1回の測定で非特異的結合物と区別できる。抗原および蛍光マーカーをコードするプラスミドで一過性にトランスフェクトされた細胞を上記のように染色する。トランスフェクトした細胞は、抗体で染色された細胞とは異なる蛍光チャネルで検出できる。ほとんどのトランスフェクト細胞は両方の導入遺伝子を同時に発現するため、抗原特異的モノクローナル抗体は蛍光標識を発現する細胞に優先的に結合し、非特異的抗体はトランスフェクトされていない細胞にかなりの比率で結合する。細胞は、上記のように染色するか、蛍光顕微鏡で調べることができる。
【0040】
本明細書に開示される抗原結合部分の結合親和性は、クロ―ディン18.2発現細胞を使用するインビトロ結合アッセイでアッセイされるときに確定し得る。受験抗原結合部分の結合親和性は、抗体とそのそれぞれの抗原との間の平衡解離定数であるKdを用いて表すことができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、クロ―ディン18.2に対するヒトモノクローナル抗体は、HuMAbマウスおよびKMマウスとそれぞれ呼ばれるマウスを含む、マウスシステムではなくヒト免疫システムの一部を保有するトランスジェニックまたはトランス染色体マウスを使用して生成し得る。いくつかの実施形態において、マウスは、CLAUDIN18.2配列からの担体結合ペプチド、組換え発現されたCLAUDIN18.2抗原またはそのフラグメントの濃縮調製物、および/またはCLAUDIN18.2もしくはそのフラグメントを発現する細胞で免疫化される。マウスは、完全長のヒトCLAUDIN18.2またはそのフラグメントをコードするDNAで免疫化することもできる。抗体を産生せずに精製または濃縮されたCLAUDIN18.2抗原調製物で免疫する場合、マウスをCLAUDIN18.2を発現する細胞(例えば、細胞株)で免疫して免疫応答を促進することができる。免疫応答は、尾静脈または眼窩後出血から得られた血漿および血清サンプルを使用して、免疫化の過程全体を通して監視することができる。十分な力価の抗CLAUDIN18.2免疫グロブリンマウスを融合に使用することができる。マウスを殺処分して脾臓を摘出する3~5日前に、特異的抗体を分泌するハイブリドーマの割合を増やすために、CLAUDIN18.2発現細胞による腹腔内または静脈内ブースト免疫を行うことができる。いくつかの実施形態において、CLAUDIN18.2モノクローナル抗体のハイブリドーマを調製するために、免疫化マウスのリンパ節、脾臓、または骨髄から細胞を単離し、適切な無限増殖細胞株(例えば、マウス骨髄腫細胞株)と融合し、そして、抗原に対する特異的抗体についてスクリーニングしてハイブリドーマを生成することができる。次に、抗体分泌ハイブリドーマをELISAによってスクリーニングする。CLAUDIN18.2に特異的に結合する抗体は、蛍光抗体法またはFACS分析によって同定する。この抗体を分泌するハイブリドーマは、再プレートし、再度スクリーニングし、抗CLAUDIN18.2モノクローナル抗体がまだ陽性である場合、限界希釈によってサブクローン化することができる。安定したサブクローンをインビトロで増殖させて、特性評価のために組織培養培地で抗体を産生する。いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、当技術分野で周知の組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法(Morrison,S.(1985)Science 229:1202)の組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生される。
【0042】
いくつかの実施形態において、目的の遺伝子(例えば、抗体遺伝子)は、発現ベクター(例えば、真核生物発現プラスミド)に連結し得る。クローン化された抗体遺伝子を保有する精製プラスミドは、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293T細胞またはHEK293細胞などの真核生物宿主細胞、または植物由来の細胞、真菌または酵母細胞などの他の真核生物細胞に導入することができる。これらの遺伝子を導入するために使用される方法は、エレクトロポレーション、リポフェクチン(lipofectine)、リポフェクタミン(lipofectamine)など、当技術分野ですでに記載されているものであり得る。これらの抗体遺伝子を宿主細胞に導入した後、抗体を発現する細胞を同定および選択することができる。組換え抗体は、これらの培養上清および/または細胞から単離および精製することができる。抗体遺伝子は、大腸菌(E.coli)などの微生物などの原核細胞を含む他の発現系でも発現させることができる。さらに、抗体は、非ヒトトランスジェニック動物、例えば、ヒツジやウサギの乳汁、卵、またはトランスジェニック植物などでも産生され得る。例えば、Verma,R.,et al.,(1998)J.Immunol.Meth.216:165-181;Pollock,et al.,(1999)J.Immunol.Meth.231:147-157、及びFischer,R.,et al.,(1999)Biol.Chem.380:825-839を参照されたい。
【0043】
本明細書で使用される場合、「抗原」は、免疫応答を誘発および/または生成し得るエピトープを含む物質を指す。抗原は、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、多糖類、および脂質、それらの一部、およびそれらの組み合わせを含み得る。非限定的な例示的な抗原は、腫瘍抗原または病原体抗原を含む。「抗原」はまた、免疫応答を誘発する分子を指すこともある。この免疫応答には、抗体産生または特定の免疫活性細胞の活性化、あるいはその両方が含まれる場合がある。当業者は、事実上任意のタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として役立つことができることを理解するであろう。
【0044】
「エピトープ」という用語は、分子内の抗原決定基、すなわち、免疫系によって(例えば、抗体によって)認識される分子の部分を指す。
【0045】
クローディンは密着結合の最も重要な構成要素であるタンパク質ファミリーであり、上皮細胞間の細胞間空間における分子の流れを制御する傍細胞バリアを構成する。クローディンは、4回膜貫通型タンパク質であり、そのN末端とC末端の両方が細胞質に位置する。いくつかの実施形態において、「クローディン18」または「CLDN18」または「Claudin 18」または「CLD18」という用語は、ヒトCLDN18を指し、任意のスプライス変異体、例えば、CLDN18のクローディン18.1およびクローディン18.2を含む。いくつかの実施形態において、クローディン18.1は、GenBankアクセッション番号NP_057453(mRNA:NM_016369)を有するペプチドである。いくつかの実施形態では、クロ―ディン18.1は、配列番号1(MSTTTCQVVAFLLSILGLAGCIAATGMDMWSTQDLYDNPVTSVFQYEGLWRSCVRQSSGFTECRPYFTILGLPAMLQAVRALMIVGIVLGAIGLLVSIFALKCIRIGSMEDSAKANMTLTSGIMFIVSGLCAIAGVSVFANMLVTNFWMSTANMYTGMGGMVQTVQTRYTFGAALFVGWVAGGLTLIGGVMMCIACRGLAPEETNYKAVSYHASGHSVAYKPGGFKASTGFGSNTKNKKIYDGGARTEDEVQSYPSKHDYV)のアミノ酸配列を含むペプチド、または前記アミノ酸配列変異体のタンパク質/ペプチドである。前記クロ―ディン18.2は、GenBankアクセッション番号NP_001002026(mRNA:NM_001002026)を有するペプチドである。いくつかの実施形態では、前記クロ―ディン18.2は、配列番号2(MAVTACQGLGFVVSLIGIAGIIAATCMDQWSTQDLYNNPVTAVFNYQGLWRSCVRESSGFTECRGYFTLLGLPAMLQAVRALMIVGIVLGAIGLLVSIFALKCIRIGSMEDSAKANMTLTSGIMFIVSGLCAIAGVSVFANMLVTNFWMSTANMYTGMGGMVQTVQTRYTFGAALFVGWVAGGLTLIGGVMMCIACRGLAPEETNYKAVSYHASGHSVAYKPGGFKASTGFGSNTKNKKIYDGGARTEDEVQSYPSKHDYV)のアミノ酸配列を含むペプチド、または前記アミノ酸配列変異体のタンパク質/ペプチドである。「変異体」という用語は、突然変異体、スプライス変異体、コンフォメーション、アイソフォーム、対立遺伝子変異体、種変異体(species variant)および種相同体(species homolog)、特に天然に存在する変異体を指す。対立遺伝子変異体は、遺伝子の正常な配列の変化を伴い、その顕著性は通常明らかではない。全ゲノムシーケンシングは通常、所定の遺伝子の多数の対立遺伝子変異体を同定する。種間ホモログは、所定の核酸またはアミノ酸配列とは異なる種起源を有する核酸またはアミノ酸配列である。「CLDN」、「CLDN18」、「クローディン18.1」および「クローディン18.2」という用語は、翻訳後修飾された変異体およびコンフォメーション変異体を包含するものとする。クローディン18.1とクローディン18.2は、最初の膜貫通(TM)領域とループ1を含むN末端部分が異なるが、C末端タンパク質の一次配列は同じである。
【0046】
CLAUDIN18.2は、正常な胃粘膜上皮細胞で選択的に発現する。CLAUDIN18.2の発現は、分化した胃上皮の短命細胞に限定されており、さまざまな腫瘍細胞で発現している。いくつかの実施形態では、原発腫瘍は、胃癌、食道癌、膵臓癌、肺癌、例えば、非小細胞肺、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、胆道系癌などを指す。いくつかの実施形態において、CLAUDIN18.2を発現する細胞は腫瘍細胞を指し、特に胃癌細胞、食道癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、結腸癌細胞、肝臓癌細胞、頭頸部癌細胞、および胆道系癌細胞から選択される。いくつかの実施形態において、CLAUDIN18.2を発現する細胞は、CLAUDIN18.2が細胞膜に局在化または結合している細胞を指す。
【0047】
免疫組織化学(IHC)は、組織切片の細胞内の抗原(タンパク質など)を検出する方法であり、腫瘍細胞などの異常細胞を検出するために広く使用されている。使用される検出抗体は、発色反応を触媒するペルオキシダーゼなどの酵素に結合し得る。検出抗体は、フルオレセインやローダミンなどのフルオロフォアで標識することもできる。本発明において、細胞におけるCLAUDIN18.2発現は、免疫組織化学によって測定される。腫瘍患者の通常の手術から得られた非癌性組織または癌性組織サンプルのパラホルムアルデヒドまたはアセトン固定凍結切片またはパラホルムアルデヒド固定パラフィン包埋組織切片、またはCLAUDIN18.2を発現するマウス異種移植腫瘍マウスからの切片を使用する。前記切片をCLAUDIN18.2抗体、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼと結合したヤギ抗マウスまたはヤギ抗ウサギ抗体とともにインキュベートして免疫染色を行う。このアッセイでは、サンプルの準備は、細胞の形態、組織構造、および標的エピトープの抗原性を維持するために重要である。通常、パラホルムアルデヒドを使用して組織を固定する。実験の目的と実験サンプルの厚さに応じて、固定組織から薄い(約4~40μm)切片を切り取るか、組織があまり厚くなく貫通可能な場合は全体を使用できる。切片は通常ミクロトームを使用して作成され、切片はスライドに載せる。サンプルには、脱パラフィンや抗原修復など、最適化された処理が必要な場合がある。通常、界面活性剤(Triton X-100など)は、表面張力を低下させるために免疫組織化学で使用され、関連する試薬は、サンプルのより良い、より均一な被覆を提供することができる。免疫組織化学的染色では、染色された抗原に直接結合する標識抗体を使用できる。免疫組織化学的染色は、検出される抗原に対する抗体と一次抗体に対する二次標識抗体を使用する間接的な方法がより一般的に使用される。サンプルをブロッキング緩衝液(例えば、正常血清、脱脂粉乳、BSAまたはゼラチン、および市販のブロッキング緩衝液)でインキュベートすることにより、反応部位をブロックしてIHCのバックグラウンド染色を低減する。一次抗体は標的抗原に対するものであり、通常は標識されておらず、二次抗体は一次抗体の免疫グロブリンに対するものである。二次抗体は通常、リンカー分子(ビオチンなど)に結合し、リンカー分子がレポーター分子を動員するか、二次抗体がレポーター分子自体に直接結合する。最も一般的に使用される検出方法は、それぞれ酵素を介した発色検出とフルオロフォアを介した蛍光検出である。酵素マーカーは基質と反応して、通常の光学顕微鏡で分析できる濃い色の生成物を生成する。アルカリホスファターゼ(AP)と西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、タンパク質検出の標識物として最も広く使用されている酵素の2つである。DABまたはBCIP/NBTを含む、さまざまな発色性、蛍光性、および化学発光基質を酵素とともに使用できる。蛍光レポーター分子は、IHC検出に使用される小さな有機分子である。発色および蛍光検出法の場合、シグナルのデンシトメトリー分析により、レポーターシグナルのレベルをタンパク質の発現または局在化のレベルと相関させる半定量的および完全に定量的なデータをそれぞれ提供できる。標的抗原の免疫組織化学的染色の後、通常、最初の染色を強調するのに寄与するコントラストを提供するために、第二の染色(例えば、ヘマトキシリン、ヘキスト染色、およびDAPI)を行う。
【0048】
本発明は、サンプル中のCLAUDIN18.2抗原の存在を検出する方法、またはサンプル中のCLAUDIN18.2抗原の量を測定する方法を提供する。抗体がCLAUDIN18.2抗原と複合体を形成する場合、前記サンプル(または対照サンプル)は、CLAUDIN18.2抗原に結合した本発明の抗体と接触させる。次に、複合体の形成を検出し、サンプルで形成された複合体と対照サンプルで形成された複合体との差を比較することにより、CLAUDIN18.2抗原が前記サンプル中に存在するかどうかを判断する。本発明の検出方法は、腫瘍などのCLAUDIN18.2関連疾患の診断に特に有用である。いくつかの実施形態において、サンプル中のCLAUDIN18.2抗原の量が、参照または対照サンプル中のCLAUDIN18.2抗原の量よりも多いことは、前記サンプルが由来する個体(特にヒト)がCLAUDIN18.2関連疾患、例えば、腫瘍を有することを示す。いくつかの実施形態では、前記測定サンプルは、細胞サンプル、例えば、細胞(例えば、腫瘍細胞)を含むサンプルである。前記複合体は、本発明の抗体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートと、上記のサンプル中の細胞によって発現されたCLAUDIN18.2との間で形成される。
【0049】
本発明における「参照」(例えば、参照サンプルまたは参照生体)は、本発明の方法によって得られた受験サンプルまたは受験生体からの結果を相関および比較するために使用することができる。前記参照生体は、一般に健康な生体、特に疾患(例えば、腫瘍)に罹患していない生体である。「参照値」または「参照レベル」は、十分な数の参照物を測定することにより、参照物から経験的に決定することができる。好ましくは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つ、好ましくは少なくとも8つ、好ましくは少なくとも12つ、好ましくは少なくとも20つ、好ましくは少なくとも30つ、好ましくは少なくとも50つまたは好ましくは少なくとも100の参照物を測定することによって参照値を決定する。
【0050】
「核酸」という用語は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え的に調製された、または化学的に合成された分子を含む、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を指す。核酸は、一本鎖または二本鎖分子の形をとることができ、また、線状または共有結合的にリングに閉じることもできる。RNAには、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離されたRNA(例えば、部分的に精製されたRNA)、実質的に純粋なRNA、合成RNA、組換えにより産生されたRNA、および1つまたは複数のヌクレオチドの付加、削除、置換、及び/または変更によって天然RNAとは異なる変更されたRNAが含まれる。RNAは、配列の安定化、キャッピング、およびポリアデニル化によって修飾できる。「転写」という用語は、DNA配列の遺伝暗号をRNAに転写するプロセスを指す。「核酸分子によりコードする」、「コードDNA配列」、および「コードDNA」は、デオキシリボ核酸鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順番または配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順番は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順番を決定する。したがって、核酸配列はアミノ酸配列をコードする。「相同」という用語は、機能的に自然に連結されている核酸を指し、一方、「異種」という用語は、核酸が機能的に自然に連結されていないことを指す。いくつかの実施形態において、核酸は、相同または異種の発現制御配列に機能的に連結され得る。
【0051】
「発現」という用語は、RNAまたはRNAおよびタンパク質/ペプチドの産生を含む。RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、特にペプチドまたはタンパク質の産生を指す。発現は一時的または安定的であり得る。発現には、さらに異常な発現または非正常な発現、すなわち参照と比較して(特定のタンパク質(例えば、腫瘍関連抗原)の異常な発現または非正常な発現に関連する疾患に罹患していない個体など)発現が変える(例えば、増加)ことがある。発現の増加は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、または少なくとも100%またはそれ以上の増加を意味する。一実施形態では、発現は罹患組織でのみ見られるが、健康な組織での発現は抑制される。特異的発現とは、タンパク質が実質的に特定の組織または器官でのみ発現されることを意味する。例えば、胃粘膜で特異的に発現される腫瘍関連抗原は、タンパク質が主に胃粘膜で発現され、他の組織では発現されないか、または他の組織または器官タイプで有意に発現されないことを意味する。いくつかの実施形態において、腫瘍関連抗原は、2つ以上の正常な組織タイプまたは器官(例えば、3つ以下の異なる組織または器官タイプ)で特異的に発現されると、腫瘍関連抗原は、これらの器官に特異的に発現されると見なすことができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、細胞または他の成分から分離されていることを指し、これらの成分において、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはそれらのフラグメントが通常その天然状態で関連している。天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはそれらのフラグメントは、天然に存在する対応物と区別するために「単離」する必要はない。単離された核酸とは、核酸が(i)インビトロで、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅される、(ii)クローニングによって組換え的に生成される、(iii)精製される、例えば、切断およびゲル電気泳動的に分画され、精製される、または(iv)例えば化学合成によって合成される。単離された核酸は、組換えDNA技術によって操作できるものである。単離されたタンパク質または単離されたペプチドは、その自然環境から単離されたタンパク質またはペプチドを指し、自然界またはインビボで結合する他の物質を実質的に含まない。さらに、「濃縮された」、「単離された」、または「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはそれらのフラグメントは、体積あたりの分子の濃度または量がその天然に存在する対応物の濃度よりも大きい(「濃縮された」)または小さい(「希釈された」)ため、その天然に存在する対応物と区別できる。いくつかの実施形態では、本発明の技術構成は、好ましくは、より高度の濃縮を有する。したがって、例えば、2倍の濃縮が好ましく、10倍の濃縮がより好ましく、100倍の濃縮がより好ましく、1000倍の濃縮がさらに好ましい。「単離された」物質はまた、化学合成または組換え発現などによる人工的な組み立ての方法によって提供することができる。
【0053】
「変異体」という用語には、突然変異体、スプライス変異体、コンフォメーション、アイソフォーム、対立遺伝子変異体、種変異体、および種相同体、特に自然界に存在するものが含まれる。対立遺伝子変異体は、遺伝子の正常な配列の変化を指し、その顕著性は通常は明らかではない。全ゲノムシーケンシングは通常、所定の遺伝子の大量の対立遺伝子変異体を同定する。種間相同体は、異なる種に由来する所定の核酸またはアミノ酸配列を指す。
【0054】
「アミノ酸修飾」(または修飾アミノ酸、アミノ酸配列の変異体)という用語は、特定のアミノ酸配列へのアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含み、前記特定の配列と機能的に同等の配列をもたらす。いくつかの実施形態において、アミノ酸修飾抗体は依然としてその標的抗原に結合する。したがって、本発明の抗体のCDR領域またはフレームワーク領域の1つまたは複数のアミノ酸残基を、他の同様の側鎖のアミノ酸残基で置き換えることができる。好ましくは、抗体のCDR配列、超可変領域および可変領域の配列は、標的抗原に結合する能力を失うことなく修飾される。当業者は、アミノ酸変異体を組換えRNA操作によって容易に調製することができる。例えば、置換、付加、挿入または欠失を伴うタンパク質およびペプチドを調製するためのDNA配列操作は、Sambrookら(1989)に詳細に記載されている。さらに、本明細書に記載のペプチドおよびアミノ酸変異体は、既知のペプチド合成技術(例えば、固相合成及び類似方法)によって容易に調製することができる。例えば、1から5、1から4、1から3、または1または2の高度に相同であると見なされるもののみが置換される。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体と呼ばれる。アミノ酸付加変異体は、1つまたは複数のアミノ酸、例えば、1、2、3、5、10、20、30、50またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合物を含む。アミノ酸欠失変異体は、配列から1つまたは複数のアミノ酸が欠失したものである(例えば、1、2、3、5、10、20、30、50またはそれ以上のアミノ酸が除去される)。アミノ酸置換変異体は、配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その場所に別のアミノ酸残基が挿入されているものである。一実施形態では、相同タンパク質またはペプチド間の非保存アミノ酸残基は、同様の特性のアミノ酸残基に修飾される及び/または置き換えられる。好ましくは、アミノ酸配列とそのアミノ酸配列変異体のアミノ酸配列との間の類似性同一性は、好ましくは少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。好ましくは、類似性または同一性の対象となるアミノ酸領域は、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%である。例えば、参照アミノ酸配列が200アミノ酸からなる場合、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180または約200アミノ酸に対して類似性または同一性、好ましくは連続アミノ酸を与える。いくつかの好ましい実施形態において、類似性または同一性は、完全長の参照アミノ酸配列に与えられる。配列類似性(好ましくは配列同一性)を決定するためのアラインメントは、当技術分野で知られているツールを使用して、好ましくは最適な配列アラインメント、例えばAlignを使用し、標準設定を使用し、好ましくはEMBOSS:needle;Matrix:Blosum62;Gap Open 10.0;Gap Extend 0.5を使用して行うことができる。配列類似性とは、同一であるか、または保存的なアミノ酸置換を表すアミノ酸のパーセンテージを指す。2つのアミノ酸配列の同一性とは、2つの配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを指し、そのパーセンテージは純粋に統計的であり、2つの配列間の差異はそれらの全長にわたってランダムに分布している。配列のアラインメントは、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482のローカルホモロジーアルゴリズム、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443のローカルホモロジーアルゴリズム、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法またはこれらのアルゴリズムを使用したコンピュータープログラム(Wisconsin Geneticsソフトウェアバッグ中のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA、Genetics Computer Group,575ScienceDrive,Madison,Wis.)によって行ることができる。
【0055】
「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドとポリペプチドの両方を含み、ペプチド結合によって共有結合された2つ以上、好ましくは3つ以上、好ましくは4つ以上、好ましくは6つ以上、好ましくは8つ以上、好ましくは9つ以上、好ましくは10つ以上、好ましくは13以上、好ましくは16以上、好ましくは21以上、および8、10、20、30、40または50(特に100)アミノ酸までの物質を指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは100を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指す。一般に、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は同義であり、本明細書では交換可能に使用され得る。
【0056】
タンパク質およびペプチドの「誘導体」は、タンパク質およびペプチドの修飾形態である。そのような修飾には、任意の化学修飾が含まれ、タンパク質またはペプチドに関連する任意の分子(例えば、炭水化物、脂質および/またはタンパク質またはペプチド)の単一または複数の置換、欠失および/または付加が含まれる。タンパク質またはペプチドの「誘導体」には、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミトイル化、ミリストイル化、プレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護/ブロッキング基の導入、タンパク質加水分解切断、または抗体もしくは他の細胞リガンドに結合する修飾類似体、およびすべての機能的化学同等物が含まれる。いくつかの実施形態において、修飾ペプチドの安定性および/または免疫原性は増加する。
【0057】
「細胞」という用語は、無傷の膜を有する、その正常な細胞内成分(例えば、酵素、細胞小器官または遺伝物質)を放出していない細胞、好ましくは生存細胞(viable cell)、すなわちその正常な代謝機能を実行することができる生細胞(living cell)を指す。原核細胞(例えば、E.coli)または真核細胞(例えば、樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、HEK293細胞、HELA細胞、酵母細胞、および昆虫細胞)が含まれる。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギおよび霊長類からの細胞などの哺乳動物細胞が好ましい。細胞は多くの組織タイプに由来し得、初代細胞および細胞株を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、非がん細胞およびがん細胞を含む。標的細胞とは、本特許に記載されている腫瘍細胞など、免疫応答の標的となる細胞を指す。いくつかの実施形態において、標的細胞は、CLAUDIN18.2を発現する細胞である。いくつかの実施形態において、CLAUDIN18.2を発現する細胞は、典型的にはがん細胞を含む。
【0058】
本特許の試薬、組成物および方法は、個体が病気を患っているかどうかを診断するために使用することができる。診断できる疾患には、CLAUDIN18.2を発現するすべての疾患が含まれ、好ましくは、胃癌、膵臓癌、食道癌、卵巣癌、胆道系癌などの腫瘍を指す。
【0059】
「疾患」という用語は、任意の病的状態を指し、腫瘍、特に本明細書に記載の腫瘍のタイプを含む。
【0060】
「正常組織」または「正常状態」という用語における「正常」という用語は、健康な組織または健康な個体の状態、すなわち非病的状態を指し、「健康」は好ましくは非腫瘍性を意味する。
【0061】
本明細書において、「CLAUDIN18.2関連疾患」は、健康な組織または器官と比較して、罹患した組織または器官の細胞におけるCLAUDIN18.2の発現の増加を指す。前記増加は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも1000%またはそれ以上の増加を指す。本発明において、CLAUDIN18.2関連疾患は、腫瘍、特に本明細書に記載されるタイプの腫瘍を含む。
【0062】
本明細書で使用される場合、「減少」とは、前のアッセイの時点での細胞におけるCLAUDIN18.2の発現より、少なくとも5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上減少する能力を指す。「阻害」という用語は、完全または実質的に完全な阻害、すなわち、ゼロへの減少または実質的にゼロへの減少を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「がん」および「腫瘍」という用語は、交換可能に使用でき、細胞が制御されない増殖、および/または浸潤、および/または転移を示す疾患を指す。例えば、白血病、黒色腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌、脳癌、子宮頸癌、腸癌、肝臓癌、結腸癌、胃癌、腸癌、頭頸部癌、胃腸癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、耳鼻喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、肺癌、およびその転移が挙げられる。
【0064】
「転移」という用語は、がん細胞が元の部位から体の他の部分に広がることを指す。転移の形成は非常に複雑なプロセスであり、悪性細胞に頼って原発腫瘍から剥離され、細胞外マトリックスを浸潤し、内皮基底膜を浸透して体腔および血管に入り、その後血液輸送されて標的器官を浸潤する。最後に、標的部位での新しい腫瘍(すなわち、二次腫瘍または転移性腫瘍)の成長は、血管新生に依存している。腫瘍細胞または成分が残り、転移の可能性を発展する可能性があるため、腫瘍転移は、原発腫瘍の切除後でもしばしば発生する。一実施形態では、転移は、遠隔転移、すなわち、原発腫瘍および/または局所リンパ節系から離れた転移を指す。続発性または転移性腫瘍の細胞は、元の腫瘍の細胞に似ている。
【0065】
「再発」という用語は、個体が過去の疾患状態によって再び影響を受ける場合を指す。たとえば、個体がある疾患に罹患し、治療によって治癒し、前記疾患を再び患る場合、疾患の新たな発症は再発と見なされることができる。腫瘍の再発は、元の腫瘍とは異なる部位および元の腫瘍の部位での腫瘍の発生を含む。
【0066】
「治療」という用語は、疾患を予防または排除するための個体への化合物または組成物の投与を指し、個体の疾患のサイズまたは数を減らすこと、個体の疾患の進行を阻止または遅らせること、個体における新たな疾患の発症を阻害または遅らせること、現在その疾患に罹患している、または以前に罹患していた個体における症状および/または再発の頻度または重症度を低減すること、および/または個体の寿命を延ばす(すなわち、増加させる)ことを含む。いくつかの実施形態において、疾患の治療は、疾患またはその症状の治癒、持続期間の短縮、進行または悪化の緩和、予防、遅延または阻害、または発症の予防または遅延を含む。
【0067】
本文中で、「対象」、「個体」、「生物」または「患者」という用語は交換可能に使用でき、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を含む。本発明において、哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、家畜(例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、豚、馬など)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ギニアブタなど)および飼育下の動物(動物園の動物など)である。本明細書で使用される「動物」という用語は、ヒトも含む。「対象」、「個体」という用語は、患者、すなわち、罹患した動物、好ましくはヒトを含む。
【0068】
「サンプル」という用語は、生物学的サンプルを含む、本発明に従って使用可能な任意のサンプルであり得、例えば、手術または組織生検(パンチ生検を含む)、及び、血液、気管支吸引物、痰、尿、糞便(排泄物)、または他の体液を収集するなどの従来の方法によって得られる組織サンプル(体液を含む)および/または細胞サンプルが挙げられる。本発明によれば、「サンプル」という用語は、生物学的サンプルまたは分離物、例えば、核酸およびペプチド/タンパク質分離物、及びホルマリン処理パラフィン包埋組織などの処理されたサンプルを含む。好ましくは、サンプルは、検出される(例えば、がんと診断される)器官の細胞または組織を含む。例えば、診断されるがんが肺癌である場合、サンプルは、肺から得られた細胞または組織を含み得る。サンプルは、血液、体液、原発腫瘍または腫瘍転移から得られた組織サンプル、または腫瘍細胞もしくはがん細胞を含む他の組織サンプルを含む、腫瘍細胞または癌細胞を含むまたは含むと疑われる患者からの組織サンプルであり得る。
【0069】
一態様では、本発明は、配列番号7(KNKKIYDGG)に示される配列を含む抗原性ペプチドを認識できる抗体または抗原結合フラグメント、及びクラウディン18.2の配列番号7に示される配列を含むエピトープを認識できる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0070】
一態様では、本発明は、配列番号6(KNKKIYDGGART)に示される配列を含む抗原性ペプチドを認識できる抗体または抗原結合フラグメント、及びクラウディン18.2の配列番号6に示される配列を含むエピトープを認識できる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0071】
一態様では、本発明は、アクセッション番号CCTCCNO.C202007またはCCTCCNO.C202008で寄託されたハイブリドーマ細胞株(ハイブリドーマ細胞株9G5とも呼ばれる)によって産生される抗体である。CCTCCNO.C202007で寄託されたハイブリドーマ細胞株(ハイブリドーマ細胞株14F8とも呼ばれる)によって産生される抗体が抗体9であり、CCTCCNO.C202008で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体が抗体7であり、寄託日はいずれも2020年1月3日であり、寄託場所は中国タイプカルチャーコレクションであり、連絡先は中国武漢の武漢大学、郵便番号430072である。
【0072】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメント、あるいは抗体および/または抗原結合フラグメントの組み合わせを含む組成物(例えば、診断組成物)または検出キットを提供する。当該診断用組成物または検出キットは、本発明の方法、例えば、診断、検出、または監視のための本発明の方法で使用することができる。これらのキットは、インジケーター酵素、放射性標識、フルオロフォア、常磁性粒子などの検出可能な標識を任意選択で含み得る。前記キットは、情報マニュアル、例えば、本明細書に開示される方法を実施するために試薬を使用する方法を説明するマニュアルを含み得る。
【0073】
上記の方法で使用される場合、本明細書に記載の抗体は、以下のように機能する標識を提供することができる:(i)検出可能なシグナルを提供する;(ii)FRET(蛍光共鳴エネルギー転移、Fluorescence Resonance Energy Transfer)など、第2の標識と相互作用して第1または第2の標識によって提供される検出可能なシグナルを修飾する;(iii)電荷、疎水性、形状、またはその他の物理的パラメーターを介して移動度(電気泳動移動度など)に影響を与える、または(iv)親和性、抗体/抗原またはイオン複合体などの捕捉部分を提供する。
【0074】
標識として適しているのは、以下の構造:例えば、蛍光標識、発光標識、発色団標識、放射性同位体標識、同位体標識、好ましくは安定した同位体標識、同量同位体標識(isobaric label)、酵素標識、粒子標識(特に金属粒子標識、磁性粒子標識、ポリマー粒子標識)、小さい有機分子(例えば、ビオチン、受容体のリガンド、または結合分子(例えば、細胞接着タンパク質またはレクチン))、結合剤を用いて検出できる核酸および/またはアミノ酸残基を含む標識配列などである。標識は、硫酸バリウム、イオセタミン酸(iocetamic acid)、イオパン酸、イポド酸カルシウム(calcium ipodate)、ジアトリゾ酸ナトリウム、メグルミンメグルミン、メグルミンメグルミン、チロパネートナトリウム、および放射線診断薬(ポジトロンエミッター(例えば、フッ素-18およびカーボン-11)、ガンマエミッター(例えば、ヨウ素-123、テクネチウム-99m、ヨウ素-131、およびインジウム-111)、NMR核種(例えば、フッ素およびガドリニウム)を含む)を含むが、これらに限定されない。
【0075】
「リスクがあること」とは、一般ヒト集団と比較して、疾患(例えば、がん)を発症する通常の可能性よりも高い対象(すなわち、患者)として識別されることを意味する。さらに、疾患(特にがん)を患っている対象、または現在患っている対象は、疾患を発症し続ける可能性が高いため、疾患を発症するリスクが高い対象である。現在がんを患っている、またはがんを患ったことがある対象はまた、がん転移のリスクが高い。
【0076】
本明細書はまた、がんを診断、検出または監視するための方法に関し、その方法が、検出されるサンプルを本発明の抗体または抗原結合フラグメント、またはコンジュゲートに接触すること;前記抗体もしくは抗原結合フラグメント、または前記コンジュゲートとクローディン18.2によって形成される複合体の量を検出することを含む。この方法は、対象が腫瘍を患っているかどうか、または腫瘍を発症するリスクがあるかどうか、またはがん性疾患を患っているかどうか、またはがん疾患を発症するリスクがあるかどうかを検出するために使用することができる。一実施形態では、検出されるサンプルは組織または細胞サンプルであり、例えば、細胞(腫瘍細胞など)を含むサンプルである。前記複合体は、本発明の抗体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートと、上記のサンプル中の細胞によって発現されたCLAUDIN18.2との間で形成される。
【0077】
本明細書に記載のがんを診断および検出する方法において、本発明の抗体または抗原結合フラグメント、または前記コンジュゲートを使用して、対象から採取された細胞サンプル、正常サンプル(または対照サンプル)とそれぞれ反応する。受験者の細胞サンプルと反応して得られた複合体の量が、正常サンプル(または対照サンプル)と反応して得られた複合体の量よりも有意に多い場合、受験者はがんに罹患している可能性があることが示唆される。正常なサンプルおよび大幅に増加したことは、上記のように定義される。
【0078】
本明細書に記載のがんを監視する方法において、受験者について、ある期間によって隔てられた2つの時点で、例えば、それぞれ第1の時点及び第2の時点で、受験者からの第1のサンプル(第1の時点で得られた)及び第2のサンプル(第2の時点で得られた)における、クロ―ディン18.2を発現する細胞と前記抗体または抗原結合フラグメント、または前記コンジュゲートとからなる複合体の量をそれぞれ検出し、そして、2回検出した複合体の量の差によって、退行、進行などの受験者のがん疾患の変化を評価する。
【0079】
例えば、第1の時点に採取した第1のサンプルと比較して、検出結果は、第2のサンプルで形成された複合体が大幅に減少していることを示すと、受験者にがんまたは腫瘍の退行または発症するリスクの低下を示唆し得る。たとえば、第1の時点に取得した第1のサンプルと比較して、検出結果は、第2のサンプルで形成された複合体が大幅に増加していることを示すと、受験者のがんまたは腫瘍の転移、再発、または疾患のリスクが高いことを示し得る。
【0080】
本明細書はまた、クローディン18.2を標的とする腫瘍療法によって腫瘍を治療できるかどうかを分析するための方法にも関し、この方法は、(i)腫瘍細胞を含むサンプルを本明細書の抗体または抗原結合フラグメント、または本明細書のコンジュゲートに接触させること;(ii)前記抗体または抗原結合フラグメント、または前記コンジュゲートとクローディン18.2によって形成される複合体の量を検出することを含むことを特徴する。
【0081】
ここで、特定の実施形態では、前記腫瘍細胞は、胃癌細胞、食道癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、結腸癌細胞、肝臓癌細胞、頭頸部癌細胞、または胆道系癌細胞である。好ましくは、腫瘍細胞は、胃癌細胞、食道癌細胞、膵臓癌細胞、または胆道癌細胞である。一実施形態では、前記複合体は、抗前記体、抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートと、受験者からのサンプル中のがん細胞によって発現されるクローディン18.2との間で形成される。
【0082】
本明細書に記載の分析方法では、同じ受験者について、治療する前と標的治療を行った後との2つの時点、例えば、第1の時点(標的療法前)および第2の時点(標的療法後)に、それぞれ受験者からの第1のサンプル(第1の時点で得られた)及び第2のサンプル(第2の時点で得られた)における、クロ―ディン18.2を発現する細胞と前記抗体または抗原結合フラグメント、あるいは前記コンジュゲートによって形成される複合体の量を検出し、2回検出した複合体の量の差によって、受験者がクローディン18.2を標的とする腫瘍療法によって治療できるかどうかを評価する。
【0083】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメント、あるいは抗体および/または抗原結合フラグメントの組み合わせを含むキットを提供する。当該キットは、本発明の方法、例えば、診断、検出、または監視のための本発明の方法で使用することができる。これらのキットは、インジケーター酵素、放射性標識、フルオロフォア、常磁性粒子などの検出可能な標識を任意選択で含む場合がある。前記キットは、情報マニュアル、例えば、本明細書に開示される方法を実施するために試薬を使用する方法を説明するマニュアルを含み得る。
【実施例
【0084】
本発明は、特定の実施例を参照して以下でさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例で特定の条件を示さない実験方法は、通常、J.Sambrook et al.,Molecular Cloning Experiment Guide,3rd Edition、Science Press,2002に記載されているような従来の条件に基づいているか、またはメーカーが提案した条件に従う。
【0085】
実施例1、抗体のスクリーニング
クロ―ディン18.2 C末端ポリペプチド(メチオニン191-バリン261、配列番号3を参照)は、免疫原としてインビトロで合成した。
【0086】
配列番号3の配列は次の通りである。
MMCIACRGLAPEETNYKAVSYHASGHSVAYKPGGFKASTGFGSNTKNKKIYDGGARTEDEVQSYPSKHDYV
【0087】
次に、6~8週齢の雌のBalb/Cマウスを選択して免疫化した。免疫原をフロイントアジュバントまたはGerbu MMアジュバントと1:1で混合し、免疫化用量は(50~100μg)/匹、皮下または腹腔内で、隔週または2週間ごとに免疫し、合計3または4回の免疫化をした。脾臓摘出術の2日前にマウスを追加免疫した。免疫化されたマウスから脾細胞を単離し、開示された標準プロトコル(Kohler、Milstein、1975)に従ってマウス骨髄腫細胞SP2/0(ATCC、CRL1581)と融合させた。HAT培地でのスクリーニングおよび培養後、ハイブリドーマ上清をELISAで検出し、合計139個の陽性クローンが得られ、そのうち11個が強い陽性クローンであった。
【0088】
11の候補抗体を無血清培養で発現させ、プロテインGで精製して、後続の検出のために抗体1、抗体2、抗体3、抗体4、抗体5、抗体6、抗体7、抗体8、抗体9、抗体10、抗体11と名付けたこれらの11の候補抗体を調製した。得られた11の抗体をウエスタンブロットで同定し、293T-Claudin18.2および293T-Claudin18.1細胞溶解物への結合を検出した。ウエスタンステップは次のとおりである。293T-claudin18.1および293T-claudin18.2細胞をRIPA溶解バッファー(強力)で総タンパク質(Biyuntian、P0013B)を抽出し、タンパク質を定量して、30μg/ウェルでロードし、12%分離ゲルで一定の圧力で流し、200mAhの一定の流速で1時間メンブレンに転写し、5%の無脂肪乳粉でブロックし、そして一次抗体(10μg/mL)Claudin18ポリクローナル抗体を加えて1:200で希釈し(Thermo Fisher、CAT38-8000またはanti-flag-HRP1:500で希釈またはAnti-Claudin18.2抗体[EPR19202-244]1:200で希釈(Abeam、ab222512)、二次抗体(ヤギ抗マウスIgG-HRP 1:1000、ヤギ抗ウサギIgG-HRP 1:1000)でインキュベーションし、膜を十分に洗浄した後、化学発光イメージャーで画像化して写真を撮った。B-アクチンを内部参照対象とした。検出結果を図2Aおよび図2Bに示す。
【0089】
検出結果によって、7つの候補抗体を選択して免疫組織化学的方法によるさらなるスクリーニングをした。さらに、抗体7と抗体9との2つのハイブリドーマを選択して株寄託した。寄託情報は次のとおりである。2つのハイブリドーマは、中国タイプカルチャーコレクションセンター(中国、武漢)に寄託され、その名前及びアクセッション番号は、抗体7(抗体9G5とも呼ばれる)、寄託番号:CCTCCNO.C202008、寄託日:2020年1月3日;抗体9(抗体14F8とも呼ばれる)、寄託番号:CCTCCNO.C202007、寄託日:2020年1月3日である。
【0090】
実施例2、組織学的分析
これら11の抗体から7つの抗体(抗体5、抗体6、抗体9、抗体11、抗体4、抗体8、抗体7)をスクリーニングし、ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)における抗原への結合能力の組織特異性を免疫組織化学により評価した。
【0091】
対照抗体H-43-14A_2(本明細書では43-14A2とも呼ばれる)の配列は特許CN104321345Aに由来し、軽鎖可変領域の配列は配列番号4(divmtqaafsipvtlgtsasiscrssknllhsdgitylywylqrpgqspqlliyrvsnlasgvpnrfsgsesgtdftlrisrveaedvgvyycvqvlelpftfgggtkleikr)に示され、重鎖可変領域の配列は配列番号5(iqlvqsgpelkkfgetvkisckasgytftdysihwvkqapgkglkwmgwintetgvptyaddfkgrfafsletsastaylqinnlknedtatyfcarrtgfdywgqgttltvss)に示される。抗体の軽鎖および重鎖の可変領域を含むマウスモノクローナル抗体は、インビトロでの組換え発現によって調製した。対照抗体EPR19202-244はAbcamからのものであった。
【0092】
免疫組織化学的方法:免疫組織化学(IHC)は、ホルマリン固定パラフィン包埋サンプルスライドで実施した。スライドを脱パラフィンした後、室温で3%過酸化水素でインキュベートした後、沸騰したpH9.0Tris緩衝液に入れ、マイクロ波オーブンで10分間加熱して抗原を回収し、続いて0.2~2μg/mLのClaudin18.2抗体(抗体4、抗体5、抗体6、抗体7、抗体8、抗体9、および抗体11)および43-14A2を4℃で一晩インキュベートした。ポリマーベースの抗体(Dako REAL(商標)EnVision(商標)Detection System、ペルオキシダーゼ/DAB+、ウサギ/マウス)および基質発色液(Dako REAL(商標)EnVision(商標)Detection System、ペルオキシダーゼ/DAB+)を使用し、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した第2の抗体を用いて抗体結合を視覚化した。次に、ヘマトキシリンで再び染色し、評価者によって評価した。
【0093】
抗体4、抗体5、抗体6、抗体7、抗体8、抗体9、抗体11、および43-14A2は、アカゲザル(Rhosmus GenBankアクセッション番号XP_001114708.1、ヒトCLDN18.2の配列(NP_001002026.1)との相同性は98.85%)の胃および肺組織切片を染色して、染色結果の特異性を評価した;免疫組織化学的染色を正常なヒト組織チップで実施して、正常なヒト組織の染色結果に対する抗体の特異性を確認した。免疫組織化学反応をヒト胃癌および肺癌切片で実施して、ヒト腫瘍組織に対する抗体の特異性および感受性を確認した;免疫組織化学的染色をヒト胃癌組織チップで実施して、抗体の感受性を評価した。
【0094】
組織学的評価:染色結果は、染色強度および陽性腫瘍細胞%の2つの面から評価した。染色強度:細胞膜または細胞質染色の任意の強度は陽性染色と見なされ、染色強度は陰性(-)、弱い陽性(1+)、陽性(2+)、および強い陽性(3+)に分けられた。
【0095】
1、抗体によるアカゲザルの胃および肺組織切片の染色
アカゲザルの胃と肺組織の抗体染色の結果を表1に示す。抗体4、抗体5、抗体6、抗体7、抗体8、抗体9、および抗体11は、アカゲザルの胃粘膜上皮細胞に対する染色の程度が異なり、染色強度は1+から3+まで変化し、個別の抗体は非特異的染色/バックグラウンド染色を生成する;アカゲザルの肺組織に対して陰性および陽性反応がある。抗体4、抗体5、抗体7、抗体8および抗体9は胃組織を特異的に染色したが、肺組織を染色しなかった。対照抗体43-14A2は肺組織を非特異的に染色したが、対照抗体EPR19202-244はプロトコルに推奨された0.37μg/mLの作業濃度では、胃組織に対する特異的染色強度が高く、肺組織に対しては染色はなかった。
【0096】
【0097】
2、抗体9による正常なヒト組織の染色
0.2μg/mLの作業濃度の抗体9と0.37μg/mLの作業濃度の対照抗体EPR19202-244を使用し、正常者7例由来の正常臓器合計24種類、各種2~6例、各例1点の組織チップ(上海Xinchao、チップ番号:HorgN090PT02)をそれぞれ染色した。抗体9は胃粘膜上皮細胞でのみ陽性染色を示し、他の組織は陰性染色であったが、EPR19202-244は骨格筋および心臓筋組織に明らかなバックグラウンド染色を示した。6例の胃粘膜の胃粘膜上皮細胞では、抗体9とEPR19202-244はいずれも強い陽性染色を示した;EPR19202-244抗体は3例の心筋のうちの1例、及び7例の骨格筋のうちの1例でバックグラウンド染色を示したが、抗体9はすべて陰性染色であった。残りの甲状腺4例、舌3例、食道上皮4例、十二指腸粘膜2例、空腸粘膜6例、回腸粘膜3例、虫垂5例、結腸粘膜4例、直腸粘膜2例、肝臓2例、膵臓2例、気管3例、肺5例、皮膚3例、精嚢1例、前立腺3例、精巣7例、膀胱4例、延髄1例、終脳2例、小脳2例、脳幹1例、脾臓2例では、2つの抗体は陰性染色であった。
【0098】
3、抗体によるヒト胃癌/肺癌組織の染色
0.2μg/ mLの作業濃度の抗体7、抗体9、対照抗体43-14A2、及びプロトコルに推奨された0.37μg/mLの作業濃度の対照抗体Abcam EPR19202-244を使用して、ヒトの胃癌または肺癌組織サンプルを染色した。染色の主なステップとして、組織切片を脱パラフィンおよび抗原賦活化し、CLDN18A2抗体でインキュベートし、ブロッキング緩衝液でサンプルをインキュベートし、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識二次抗体とインキュベートし、最後に発色基質を加えて発色させた。
【0099】
胃癌サンプルF163060A1(桂林パンスペクトラムから購入)の染色結果を図3に示す。胃癌サンプル2018-50829E(桂林パンスペクトラムから購入)の染色結果を図4に示す。肺癌サンプル2018-55164F(桂林パンスペクトラムから購入)の染色結果を図5に示す。染色の統計結果を表2に示す。
【0100】
【0101】
4、抗体9による胃癌組織チップの染色
抗体9を選択して胃癌および傍癌性組織のチップ染色分析をした。それぞれ0.2μg/mLの作業濃度の抗体9および0.37μg/mLの推奨作業濃度のAbcam EPR19202-244を使用して、75例の胃癌および傍癌性組織チップ(上海Xinchao、チップ番号:HStm-Ade150CS4-01)を染色した。具体的なデータを表3に、染色結果の統計を表4に示す。
【0102】
がん組織の場合、抗体9の検出率は60.0%(45/75)であり、41.3%(31/75)は2+以上の染色度であり、Abcam EPR19202-244の検出率は41.3%(31/75)であり、17.3%(13/75)のみが2+以上の染色度であった。
【0103】
傍癌性組織の場合、抗体9の検出率は100%(75/75)であり、90.6%(68/75)は2+以上の染色度であり、AbcamEPR19202-244の検出率は98.6%(74/75)であり、89.3で %(67/75)は2+以上の染色度であった。
【0104】
これから見ると、抗体9は、特異性と感受度の両方でAbcam EPR19202-244よりも優れている。
【0105】
【0106】
【0107】
実施例4、エピトープ分析
ELISA法:抗体7及び抗体9の、抗原の異なるペプチドセグメントへの結合を検出することにより、抗体が結合したエピトープを分析する。
【0108】
免疫原(Claudin18.2 C末端ポリペプチド)の配列に基づいて、長さ15aaおよび重複12aaの原理に従って21のペプチドセグメントに分割し、対応するペプチドセグメントを化学的に合成し、N末端でビオチンで修飾した。各ペプチドセグメントをニュートラアビジンプレート(CAT:15128 Invitrogen)で捕捉し、10μg/mLのClaudin18.2抗体(抗体7および抗体9)でインキュベートした。二次抗体はHRP標識ヤギ抗マウス(CAT:A0168 SIGMA)であり、基質発色液を使用して5分間発色させた後、2M H2SO4を添加して発色を停止させ、OD450nmでの吸光度を測定することにより各ペプチドへの抗体の結合を定性的に決定した。
【0109】
ELISAの結果を図6に示す。抗体9の結合ペプチドの配列特性を配列番号6:KNKKIYDGGARTに示し、抗体7の結合ペプチドの配列特性を配列番号7:KNKKIYDGGに示す。
【0110】
本発明に記載されているすべての文献は、各文献を参照により個別に個別に組み込んだように、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態もまた、本願の添付の特許請求の範囲によって規定される範囲内にあることを理解されたい。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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