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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】グリッド状の燃料タンク
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/03 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
B60K15/03 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022547716
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 CN2021111082
(87)【国際公開番号】W WO2023272877
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202110738457.2
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522019580
【氏名又は名称】▲統▼▲亞▼(山▲東▼)汽▲車▼科技集▲団▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TONGYA (SHANDONG) AUTOMOBILE TECHNOLOGY GROUP CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱 慶凱
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-175733(JP,A)
【文献】中国実用新案第204279054(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第110329060(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッド状の燃料タンクであって、
燃料キャビティを備えるキャビティを構成し、上部の上部シェル領域、中部の中部シェル領域及び下部の下部シェル領域を備える燃料タンクシェルを備え、
前記燃料タンクシェルは、上部シェル、中部シェル及び下部シェルを備え、前記上部シェルは前記上部シェル領域を形成し、前記中部シェルは前記中部シェル領域を形成し、前記下部シェルは前記下部シェル領域を形成し、
前記キャビティ内の前記中部シェルの高さに対応する領域に中部グリッドリブ構造が設けられ、前記中部グリッドリブ構造によって前記キャビティの中部を複数の中部グリッドキャビティに分割し、前記中部グリッドキャビティ同士は水平方向に連通せず、前記中部グリッドキャビティに含まれる第1中部グリッドキャビティ群は、底端に燃料通過口が設けられることで、互いに連通して前記燃料キャビティを形成し、前記第1中部グリッドキャビティ群は射出成形によって一体成形され、前記中部グリッドリブ構造及び前記中部シェル領域は射出成形によって一体成形されることを特徴とするグリッド状の燃料タンク。
【請求項2】
前記第1中部グリッドキャビティ群における少なくとも1つの第1中部グリッドキャビティの先端に入口が設けられ、前記入口は前記燃料タンクシェルに設けられた燃料供給口に接続され、第1中部グリッドキャビティは、底端に開口が設けられることで、互いに連通して前記燃料キャビティを形成し、
前記中部グリッドリブ構造は、複数の中間仕切り板がグリッド状に並列して接続されたものであり、前記第1中部グリッドキャビティ群は両端が開口している密封チャネル状構造であることを特徴とする請求項1に記載のグリッド状の燃料タンク。
【請求項3】
前記キャビティ内には前記下部シェル領域に対応する下部グリッドリブ構造がさらに設けられ、前記下部グリッドリブ構造は前記中部グリッドリブ構造に突き合わせられて密封接続され、
前記下部グリッドリブ構造によって前記キャビティの下部を複数の下部グリッドキャビティに分割し、前記下部グリッドキャビティは、前記第1中部グリッドキャビティ群に突き合わせられる第1下部グリッドキャビティ群を備え、前記第1中部グリッドキャビティ群における第1中部グリッドキャビティは燃料通過口を介して前記第1下部グリッドキャビティ群における第1下部グリッドキャビティに連通し、
前記第1下部グリッドキャビティ間の下部グリッドリブに設けられた燃料流動口は連通し、前記第1中部グリッドキャビティ群と前記第1下部グリッドキャビティ群によって燃料キャビティを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のグリッド状の燃料タンク。
【請求項4】
前記下部シェル領域は側壁及び底壁を備え、前記燃料流動口は前記下部グリッドリブと前記底壁との接続箇所から上方へ延在していることを特徴とする請求項3に記載のグリッド状の燃料タンク。
【請求項5】
前記中部グリッドキャビティの横断面形状は三角形、四角形、円形、五角形、六角形及び多角形から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載のグリッド状の燃料タンク。
【請求項6】
前記燃料タンクは立方体であり、前記中部グリッドリブ構造は前記燃料タンクの鉛直方向に沿って延在している複数の中間仕切り板を備え、前記中部グリッドキャビティの横断面は直角四角形であることを特徴とする請求項5に記載のグリッド状の燃料タンク。
【請求項7】
統合型燃料タンクであって、
請求項1~6のいずれか1項に記載のグリッド状の燃料タンクを備え、
前記中部グリッドキャビティは第2中部グリッドキャビティ群をさらに備え、前記第1中部グリッドキャビティ群と第2中部グリッドキャビティ群は連通せず、前記第2中部グリッドキャビティ群における中部グリッドキャビティ同士は互いに連通して尿素キャビティを形成することを特徴とする統合型燃料タンク。
【請求項8】
前記第2中部グリッドキャビティ群における第2中部グリッドキャビティの底端は密封され、前記第2中部グリッドキャビティ側壁同士は互いに連通して前記尿素キャビティを形成することを特徴とする請求項7に記載のグリッド状の燃料タンク。
【請求項9】
前記第2中部グリッドキャビティは射出成形によって一体成形されることを特徴とする請求項8に記載のグリッド状の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、グリッド状の燃料タンクに関し、自動車部品の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業の急速な発展と自動車への環境保護要件の向上に伴い、自動車部品の重要な安全部品と規制部品である自動車燃料タンクの構造の最適化と性能の向上は主要な自動車メーカーが争って議論して解決しようとする課題になっている。
【0003】
車両の走行中に、でこぼこの路面に遭ったり、発停したり、曲がったりする時に、その燃料タンク内の燃料が揺れて前後に急上昇し、燃料タンク本体に衝撃を与え、燃料タンクの変形又は燃料タンクの溶接箇所にクラックが発生して油漏れをもたらし、走行安全に影響を与え、また、燃料のサージは車両全体の重心ずれを引き起こし、走行安全に直接影響し、さらに燃料のオーバーフロー現象が発生し、且つ燃料サージがタンク内壁を叩くことが一定の騒音を生じるので、人々の運転体験を大幅に低下させる。
【0004】
現在、燃料タンク内の燃料による衝撃力を低減させるために、通常、燃料タンク内部に仕切り板が設けられ、従来技術において、通常、仕切り板と燃料タンク壁とが溶接され、中央部に穴が開けられて燃料を通過させ、しかし、このような溶接構造では、仕切り板とタンク本体との溶接シームに応力が集中しやすく、車両の走行中に、燃料のサージは仕切り板とタンク本体の溶接位置のクラックを引き起こし、サージ防止効果が不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題を解決するために、本願はグリッド状の燃料タンクを提供する。該グリッド状の燃料タンクは、キャビティ中部を複数の中部グリッドキャビティに分割することにより、各中部グリッドキャビティの側壁に燃料流動による衝撃力を分散させ、従って、サージ防止仕切り板を単独で設計する必要がなく、燃料のサージ現象を大幅に低減することができ、また、中部グリッドリブは燃料タンクの全体剛性を増加し、タンク本体が衝撃力を受けた時に変形やクラックの発生を防止することができ、また、第1中部グリッドキャビティ群は底端に燃料通過口が設けられることで互いに連通して燃料タンクを形成し、燃料が下部シェル領域内を流動することで、燃料流動による衝撃力を大幅に減らし、燃料の「サージ」現象の発生を低減させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の一態様によれば、燃料キャビティを備えるキャビティを構成し、上部の上部シェル領域、中部の中部シェル領域及び下部の下部シェル領域を備える燃料タンクシェルを備え、
前記キャビティ内の前記中部シェルの高さに対応する領域に中部グリッドリブ構造が設けられ、前記中部グリッドリブ構造によって前記キャビティの中部を複数の中部グリッドキャビティに分割し、前記中部グリッドキャビティ同士は径方向に連通せず、前記中部グリッドキャビティに含まれる第1中部グリッドキャビティ群は底端に燃料通過口が設けられることで互いに連通して前記燃料キャビティを形成するグリッド状の燃料タンクを提供する。
【0007】
選択可能に、前記第1中部グリッドキャビティ群における少なくとも1つの第1中部グリッドキャビティの先端に入口が設けられ、前記入口は前記燃料タンクシェルに設けられた燃料供給口に接続され、第1中部グリッドキャビティは底端に開口が設けられることで互いに連通して前記燃料キャビティを形成し、
前記中部グリッドリブ構造は、複数の中間仕切り板がグリッド状に並列して接続されたものであり、前記第1中部グリッドキャビティ群は両端が開口している密封チャネル状構造である。
【0008】
選択可能に、前記キャビティ内には前記下部シェル領域に対応する下部グリッドリブ構造がさらに設けられ、前記下部グリッドリブ構造は前記中部グリッドリブ構造に突き合わせられて密封接続され、
前記下部グリッドリブ構造によって前記キャビティの下部を複数の下部グリッドキャビティに分割し、前記下部グリッドキャビティは、前記第1中部グリッドキャビティ群に突き合わせられる第1下部グリッドキャビティ群を備え、前記第1中部グリッドキャビティ群における第1中部グリッドキャビティは燃料通過口を介して前記第1下部グリッドキャビティ群における第1下部グリッドキャビティに連通し、
前記第1下部グリッドキャビティ間の下部グリッドリブに設けられた燃料流動口は連通し、前記第1中部グリッドキャビティ群と前記第1下部グリッドキャビティ群によって燃料キャビティを形成する。
【0009】
選択可能に、前記下部シェル領域は側壁及び底壁を備え、前記燃料流動口は前記下部グリッドリブと前記底壁との接続箇所から上方へ延在している。
【0010】
選択可能に、前記中部グリッドキャビティの横断面形状は三角形、四角形、円形、五角形、六角形及び多角形から選択される少なくとも1つである。
【0011】
選択可能に、前記燃料タンクは立方体であり、前記中部グリッドリブは前記燃料タンクの軸方向に沿って延在している複数の中間仕切り板を備え、前記中部グリッドキャビティの横断面は直角四角形である。
【0012】
選択可能に、前記燃料タンクシェルはブロー・ロール成形によって一体成形され、又は溶接形成される。
【0013】
本願の別の態様によれば、上記いずれか1項に記載のグリッド状の燃料タンクを備え、前記中部グリッドキャビティは第2中部グリッドキャビティ群をさらに備え、前記第1中部グリッドキャビティ群と第2中部グリッドキャビティ群は連通せず、前記第2中部グリッドキャビティ群における中部グリッドキャビティ同士は互いに連通して尿素キャビティを形成する統合型燃料タンクを提供する。
【0014】
選択可能に、前記第2中部グリッドキャビティ群における第2中部グリッドキャビティの底端は密封され、前記第2中部グリッドキャビティ側壁同士は互いに連通して前記尿素キャビティを形成する。
【0015】
選択可能に、前記第2中部グリッドキャビティは射出成形によって一体成形される。
【発明の効果】
【0016】
本願が奏する有益な効果は、以下のことを含むが、これらに限定されない。
【0017】
1.本願に係るグリッド状の燃料タンクでは、中部グリッドリブ構造が設けられることで、キャビティ中部を複数の中部グリッドキャビティに分割し、中部グリッドキャビティ同士は径方向に連通せず、各第1中部グリッドキャビティ内に燃料が充填されており、このようにして、各中部グリッドキャビティの側壁に燃料流動による衝撃力を分散させ、従って、サージ防止仕切り板を単独で設計する必要がなく、燃料のサージ現象を大幅に低減することができ、また、中部グリッドリブは、燃料タンクの全体剛性を増加し、タンク本体が衝撃外力を受けた時に変形やクラックの発生を防止することができ、また、自動車の走行中において燃料が衝突する頻度が最も高く、衝撃力が最も大きい領域は主に燃料タンクの中央部に集中し、従って、第1中部グリッドキャビティ群は底端に燃料通過口が設けられることで互いに連通して燃料タンクを形成し、燃料が下部シェル領域内を流動することで、燃料流動による衝撃力を大幅に減らし、燃料の「サージ」現象の発生を低減させる。
【0018】
2.本願に係るグリッド状の燃料タンクでは、第1中部グリッドキャビティにおける少なくとも1つの第1中部グリッドキャビティの先端に入口が設けられ、入口は燃料タンクシェルに設けられた燃料供給口に接続され、第1中部グリッドキャビティの底端に開口が設けられ、このようにして、燃料が燃料供給口を介して少なくとも1つの第1中部グリッドキャビティに入った後、第1中部グリッドキャビティの底端の開口を介して他の第1中部グリッドキャビティに流動し、それにより、各第1中部グリッドキャビティ内の燃料のレベルを同じにし、すなわち、各第1中部グリッドキャビティの側壁が受けた燃料による衝撃力を均一にし、それにより、応力の不均一さによる燃料タンクの変形やクラックの発生をさらに防止することができる。
【0019】
3.本願に係るグリッド状の燃料タンクでは、下部シェル領域内には下部グリッドリブ構造が設けられることにより、燃料タンクの下部シェル領域に対応するシェルが受けた燃料による衝撃力をさらに減らし、燃料タンクの下部シェル領域に対応するシェルの強度を向上させ、その変形の発生を防止し、第1下部グリッドキャビティ間の下部グリッドリブに設けられた燃料流動口を連通させ、燃料を下部シェル領域内で流動させることにより、燃料が各第1下部グリッドキャビティ間で流動することを実現し、さらに各第1中部グリッドキャビティ間の燃料の流動を実現できるだけでなく、中間仕切り板が受けた燃料による衝撃力を減らし、衝撃力が大きすぎることによる燃料タンクの変形やクラックの発生を防止することができる。
【0020】
4.本願に係るグリッド状の燃料タンクでは、中部グリッドキャビティの横断面を直角四角形にすることにより、中部グリッドキャビティの構造安定性をさらに向上させ、燃料タンクの強度を増加させ、燃料タンクの変形の発生を防止する。
【0021】
5.本願に係る統合型燃料タンクでは、第2中部グリッドキャビティ群が設けられ、且つ第2中部グリッドキャビティ群と第1中部グリッドキャビティ群が連通しないことにより、燃料キャビティと尿素キャビティィを一体化し、統合型燃料タンクの体積を減らし、両者の重量総合を軽減し、車両をより軽量化し、また、燃料キャビティと尿素キャビティを一体化することにより、燃料キャビティの熱で尿素キャビティ内を加熱し、熱の再利用を実現し、尿素キャビティ内の尿素液の結晶化を回避する。
【0022】
6.本願に係る統合型燃料タンクでは、第2中部グリッドキャビティ群における第2中部グリッドキャビティの底端が密封されるように構成されることにより、第1中部グリッドキャビティ群と第2中部グリッドキャビティ群が連通しないことを実現し、且つ燃料が第2中部グリッドキャビティ群の下方で連通して流動するようにし、燃料の流動抵抗を減らす。
【図面の簡単な説明】
【0023】
ここで説明される図面は、本願をさらに理解するために提供され、本願の一部となり、本願の例示的な実施例及びその説明は、本願を解釈するためのものであり、本願を不適切に限定するものではない。
図1】本願の実施例1及び2に係るグリッド状の燃料タンクの概略斜視図である。
図2】本願の実施例1及び2に係るグリッド状の燃料タンクの概略正面図である。
図3】本願の実施例1及び2に係るグリッド状の燃料タンクのA-A断面図である。
図4】本願の実施例1及び2に係るグリッド状の燃料タンクの上部シェルの模式図である。
図5】本願の実施例1及び2に係るグリッド状の燃料タンクの中部シェルの模式図である。
図6】本願の実施例1及び2に係るグリッド状の燃料タンクの中部シェルの上面図である。
図7】本願の実施例1及び2に係るグリッド状の燃料タンクのB-B断面図である。
図8】本願の実施例1及び2に係るグリッド状の燃料タンクのC-C断面図である。
図9】本願の実施例1及び2に係る下部シェルと中部シェルを組み合わせたグリッド状の燃料タンクの模式図である。
図10】本願の実施例1及び2に係るグリッド状の燃料タンクの上部シェルの模式図である。
図11】本願の実施例3に係るグリッド状の燃料タンクの正面断面図である。
図12図11のA部拡大図である。
図13】本願の実施例3に係るグリッド状の燃料タンクの中部シェルの模式図である。
図14】本願の実施例3に係るグリッド状の燃料タンクの中部シェルの上面図である。
図15】本願の実施例3に係るグリッド状の燃料タンクのD-D断面図である。
図16】本願の実施例3に係るグリッド状の燃料タンクのE-E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願の全体構想をより明らかに説明するために、以下、明細書の図面を参照して例示的に詳細に説明する。
【0025】
本願の上記目的、特徴及び利点をより明確に理解するために、以下、図面と具体的な実施形態を組み合わせて本願をさらに詳細に説明する。また、矛盾しない場合に、本願の実施例及び実施例における特徴を互いに組み合わせることができる。
【0026】
以下の説明では、本願を十分に理解するために多くの詳細を説明するが、本願は、ここで説明されるものと異なる他の形態によって実施してもよいため、本願の保護範囲は以下で開示された具体的な実施例によって制限されない。
【0027】
なお、本願の説明では、「中心」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などの用語により示される方位又は位置関係は図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、本願を容易に説明し、説明を簡素化するためのものに過ぎず、係る装置又は素子が特定の方位を有したり、特定の方位で構造、操作されたりする必要があることを指示したり示唆したりするものではなく、従って、本願を制限するものとして理解されるべきではない。
【0028】
また、「第1」、「第2」という用語は、説明の目的のみに使用され、相対的な重要性を指示したり示唆したり、示された技術的特徴の数を暗黙的に示したりするものとして理解すべきではない。それにより、「第1」、「第2」で限定された特徴は、1つ又は複数のこの特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。本願の説明では、「複数」は、特に明記しない限り、2つ以上を意味する。
【0029】
本願では、特に明確な規定や限定がない限り、「取り付ける」、「繋がる」、「接続」、「固定」等の用語は広義に理解すべきであり、例えば、固定接続、取り外し可能な接続、又は一体接続であってもよいし、機械的接続、電気的接続又は通信であってもよいし、直接接続、又は中間媒体を介した間接接続であってもよいし、2つの素子内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて本願における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0030】
本願では、特に明確な規定や限定がない限り、第1特徴が第2特徴の「上」又は「下」に位置するとは、第1及び第2特徴の直接接触であってもよいし、第1及び第2特徴の中間媒体を介した間接接触であってもよい。本明細書の説明では、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」、又は「いくつかの例」などの参照用語は、該実施例又は例を組み合わせて説明した具体的な特徴、構造、材料又は特性が本願の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを指す。本明細書において、上記の用語の例示的な表現は必ずしも同じ実施例又は例を指す必要がない。さらに、説明される具体的な特徴、構造、材料又は特性は任意の1つ又は複数の実施例又は例において適切な方式で組み合わせられてもよい。
【0031】
本願によるグリッド状の燃料タンクは、燃料タンクとしてのみ使用してもよく、燃料タンクと尿素タンクを統合したものとして使用してもよく、燃料タンクを他の機能性キャビティと統合したものとしてもよい。グリッド状の燃料タンクは機動車の燃料貯蔵部材に使用できるが、これに限定されない。以下の実施例における図面には、燃料タンクと尿素タンクを統合したものを例としてグリッド状の燃料タンクを説明するが、燃料タンクと尿素タンクを統合したものに限定されない。
【0032】
一実施形態として、図1を参照し、燃料タンクと尿素タンクを統合したものであるグリッド状の燃料タンクは、燃料タンクシェルを備え、燃料タンクシェル内に尿素キャビティと燃料キャビティを有し、燃料タンクシェルに尿素充填口15と燃料供給口12が設けられ、前記グリッド状の燃料タンクは、尿素キャビティにそれぞれ連通する尿素センサー58及び尿素ポンプ、燃料キャビティにそれぞれ連通する燃料レベルセンサー及び燃料ポンプをさらに備える。燃料はガソリン、ディーゼルなどに限定されない。
<実施例1>
【0033】
図1~10に示すように、本願の実施例1はグリッド状の燃料タンクを開示し、該グリッド状の燃料タンクは、燃料タンクシェルを備え、燃料タンクシェルは、燃料キャビティを備えるキャビティを構成し、上部の上部シェル領域、中部の中部シェル領域及び下部の下部シェル領域を備える。キャビティ内の中部シェル31の高さに対応する領域に中部グリッドリブ32構造が設けられ、中部グリッドリブ構造32によってキャビティ中部を複数の中部グリッドキャビティに分割し、中部グリッドキャビティ同士は径方向に連通せず、中部グリッドキャビティに含まれる第1中部グリッドキャビティ群は底端に燃料通過口が設けられることで互いに連通して燃料キャビティを形成する。中部グリッドリブ32の構造が設けられることで、キャビティ中部を複数の中部グリッドキャビティに分割し、中部グリッドキャビティ同士は径方向に連通せず、第1中部グリッドキャビティ群における各第1中部グリッドキャビティ33内に燃料が充填され、このようにして、各中部グリッドキャビティの側壁に燃料流動による衝撃力を分散させ、従って、サージ防止仕切り板を単独で設計する必要がなく、燃料のサージ現象を大幅に低減することができ、また、中部グリッドリブ32は燃料タンクの全体剛性を増加し、タンク本体が衝撃外力を受けた時に変形やクラックの発生を防止することができ、また、自動車の走行中において、燃料が衝突する頻度が最も高く、衝撃力が最も大きい領域は主に燃料タンクの中央部に集中し、従って、第1中部グリッドキャビティ群は底端に燃料通過口が設けられることで互いに連通して燃料タンクを形成し、燃料が下部シェル領域内を流動することで、燃料流動による衝撃力を大幅に減らし、燃料の「サージ」現象の発生を低減させる。
【0034】
具体的には、上部シェル領域、中部シェル領域及び下部シェル領域の高さの比率は(0.8~1.2):(4~6):(0.8~1.2)である。好ましくは、上部シェル領域、中部シェル領域及び下部シェル領域の高さの比率は1:5:1である。このような構成により、燃料が下部シェル領域内をスムーズに流動することを確保することができ、且つ燃料による衝撃力をさらに低減することができ、燃料タンクが受けた衝撃力を大幅に減らし、燃料タンクの耐用年数を延長させる。
【0035】
具体的には、燃料タンクシェルは、任意の加工方式で加工されたものであってもよく、例えばブロー成形によって一体成形されたものであってもよく、複数のシェルをそれぞれ射出成形したものを溶接したものであってもよい。理解できるものとして、任意の加工方式で加工された燃料タンクシェルは、いずれも上部の上部シェル領域、中部の中部シェル領域及び下部の下部シェル領域を備える。具体的には、第1中部グリッドキャビティ群の強度を向上させ、中部グリッドリブ32の構造の肉厚均一性をさらに向上させるために、第1中部グリッドキャビティ群は射出成形によって一体成形される。
【0036】
一実施形態として、燃料タンクシェルは、上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51を備え、上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51は別々に溶接されて、燃料キャビティを備えるキャビティを形成する。該燃料タンクシェルは、射出成形されたものを溶接で成形したものとすることで、シェルの肉厚が均一であり、機械的強度が高いだけでなく、上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51の3つのシェルを別々に溶接するように構成することにより、溶接の応力をシェルの上端と下端に分散させ、それにより、シェルの溶接箇所の応力集中を低減させ、溶接箇所のクラックを回避する一方で、シェルの中部領域が燃料などの液体の揺れによる最大の流動衝撃力に耐えるため、シェルの中央部位に溶接シームを設けることを避けることにより、シェル全体の強度を高め、衝撃力によるシェル溶接箇所のクラックを回避し、燃料タンクの耐用年数を延長させる。
【0037】
具体的には、上部シェル11は上部シェル領域を形成し、中部シェル31は中部シェル領域を形成し、下部シェル51は下部シェル領域を形成する。
【0038】
一実施形態として、中部シェル31の高さはシェルの全高の1/3を超える。中部シェル31の高さをシェルの全高の1/3より大きく設定することにより、中部シェル31と上部シェル11の溶接シーム、中部シェル31と下部シェル51の溶接シームをシェルの上端と下端に設け、これにより、溶接シームはシェルの最大衝撃力を受けた領域から離れるようにし、溶接応力をシェルの上端と下端に分散させ、溶接シームでの応力集中によるクラックを回避する。
【0039】
好ましくは、上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51の高さの比率は(0.8~1.2):(4~6):(0.8~1.2)であり、より好ましくは、上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51の高さの比率は1:5:1であり、前記上部シェルと前記下部シェルの高さはいずれも50~80mmである。上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51の高さの比率を設定することにより、射出成形の特性による製品の変形量を制御することを容易にし、また、タンクの応力が主に中部シェル31に集中するため、中部シェル31の高さを適切に制御し、応力をシェルの各領域に分散させるようにする必要があり、それにより、シェル全体の強度を向上させ、燃料タンクの耐用年数を延長させる。
【0040】
一実施形態として、上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51はそれぞれ射出成形後に熱溶融によって溶接される。上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51をそれぞれ射出成形することにより、上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51のそれぞれの肉厚の均一性を向上させ、その機械的強度を向上させ、燃料タンクの耐用年数をさらに延長させる。
【0041】
一実施形態として、上部シェル11と下部シェル51の溶接面の幅を中部シェル31の溶接面の幅よりも大きくするように、上部シェル11と下部シェル51の厚さを中部シェル31の厚さよりも大きくする。上部シェル11の厚さを中部シェル31の厚さより大きく設定することにより、上部シェル11の溶接面の幅を中部シェル31の溶接面の幅より大きくし、これにより、上部シェル11と中部シェル31との間の溶接面積を増やすことができ、中部シェル31の溶接面と上部シェル11の溶接面を完全に一体に溶接し、中部シェル31と下部シェル51との間の溶接漏れなどの現象の発生を防止し、また、上部シェル11を厚くすることで上部シェル11の支持力を高め、電装品への支持による上部シェル11の変形を防止することができ、下部シェル51の厚さを中部シェル31の厚さより大きく設定することにより、下部シェル51の溶接面の幅を中部シェル31の溶接面の幅より大きくし、下部シェル51と中部シェル31との間の溶接面積を増やし、下部シェル51と中部シェル31との間の溶接強度を向上させ、また、下部シェル51はシェルの底部にあるため、下部シェル51の底部を厚くすることで下部シェル51の耐荷能力を向上させ、下部シェル51の変形の発生を防止することができ、中部シェル31の厚さを上部シェル11と下部シェル51の厚さより小さく設定することにより、シェルの重量を軽減し、車両をより軽量化することもできる。
【0042】
具体的には、上部シェル11と下部シェル51の厚さは同じであり、中部シェル31の厚さはシェルの目標厚さの値である。この設定方法はシェルの完全性の向上に有利である。
【0043】
好ましくは、中部シェル31の厚さは4mm以下であり、上部シェル11と下部シェル51の厚さは5mm以上であり、好ましくは、中部シェル31の厚さは4mmであり、上部シェル11と下部シェル51の厚さは5mmである。上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51の厚さを設定することにより、中部シェル31と上部シェル11との間又は中部シェル31と下部シェル51との間の溶接面積を増やし、シェルの溶接強度を向上させ、衝撃力を受けることによる溶接シームのクラックを防止することができると同時に、シェルが重すぎるのを防止し、車両をより軽量化する。
【0044】
一実施形態として、溶接前に、上部シェル11の下端溶接面と、上部シェル11の下端溶接面に対応する中部シェル31の上端溶接面とにおいて、溶接材料製の環状凸起が少なくとも1つ設けられ、溶接材料製の環状凸起の熱溶融によって形成された溶接面を広くする。溶接前に上部シェル11の下端溶接面及び/又は中部シェル31の上端溶接面に溶接材料製の環状凸起が少なくとも1つ設けられることにより、溶接材料製の環状凸起が溶接時に加熱されて溶融し、形成された溶接面を広くし、中部シェル31の上端溶接面において外向きのフランジ構造を形成し、上部シェル11と中部シェル31との間の溶接強度をさらに向上させる。
【0045】
一実施形態として、溶接前に、下部シェル51の上端溶接面と、下部シェル51の上端溶接面に対応する中部シェル31の下端溶接面とにおいて、溶接材料製の環状凸起が少なくとも1つ設けられ、形成された溶接面を広くする。溶接前に、下部シェル51の上端溶接面及び/又は中部シェル31の下端溶接面において溶接材料製の環状凸起が少なくとも1つ設けられることにより、溶接材料製の環状凸起が溶接時に加熱されて溶融し、形成された溶接面を広くし、中部シェル31の下端溶接面において外向きのフランジ構造を形成し、下部シェル51と中部シェル31との間の溶接強度をさらに向上させる。
【0046】
具体的には、溶接前に、上部シェル11の下端溶接面、中部シェル31の上端溶接面、中部シェル31の下端溶接面、下部シェル51の上端溶接面のいずれにも溶接ボスリングが設けられ、各溶接ボスリングは複数の溶接ボスを備える。
【0047】
一実施形態として、第1中部グリッドキャビティ群における少なくとも1つの第1中部グリッドキャビティ33の先端に入口が設けられ、入口は燃料タンクシェルに設けられた燃料供給口12に接続され、第1中部グリッドキャビティ33は底端に開口が設けられることで互いに連通して燃料キャビティを形成し、中部グリッドリブ32の構造は複数の中間仕切り板がグリッド状に並列して接続されたものであり、第1中部グリッドキャビティ群は両端が開口している密封チャネル状構造である。第1中部グリッドキャビティ33のうちの少なくとも1つの第1中部グリッドキャビティ33の先端に入口が設けられ、入口は燃料タンクシェルに設けられた燃料供給口12に接続され、第1中部グリッドキャビティ33の底端に開口が設けられ、このようにして、燃料が燃料供給口12を介して少なくとも1つの第1中部グリッドキャビティ33に入った後、第1中部グリッドキャビティ33の底端の開口を介して他の第1中部グリッドキャビティ33に流れ、それにより、各第1中部グリッドキャビティ33内の燃料のレベルを同じにし、即ち各第1中部グリッドキャビティ33の側壁が受けた燃料による衝撃力を均一にし、それにより、応力の不均一さによる燃料タンクの変形やクラックの発生をさらに防止する。
【0048】
具体的には、各第1中部グリッドキャビティ33の先端に入口が設けられ、そのうちの1つの入口は燃料タンクシェルに設けられた燃料供給口12に接続される。各第1中部グリッドキャビティ33の先端に入口が設けられることにより、各第1中部グリッドキャビティ33の先端を連通させ、それにより、燃料が第1中部グリッドキャビティ33の上方を流動することを実現し、また、燃料によるオイルガスの気相が流動するチャネルを提供する。
【0049】
具体的には、燃料供給口12において逆止め弁が設けられる。
【0050】
一実施形態として、キャビティ内には下部シェル領域に対応する下部グリッドリブ52構造がさらに接続され、下部グリッドリブ52構造は中部グリッドリブ32構造に突き合わせられて密封接続され、下部グリッドリブ52構造によってキャビティの下部を複数の下部グリッドキャビティに分割し、下部グリッドキャビティは、第1中部グリッドキャビティ群に突き合わせられる第1下部グリッドキャビティ54群を備え、第1中部グリッドキャビティ群における第1中部グリッドキャビティ33は燃料通過口を介して第1下部グリッドキャビティ54群における第1下部グリッドキャビティ54に連通し、第1下部グリッドキャビティ54間の下部グリッドリブ52に設けられた燃料流動口53は連通し、第1中部グリッドキャビティ群と第1下部グリッドキャビティ54群は燃料キャビティに形成される。下部シェル領域内には下部グリッドリブ52構造が設けられることにより、燃料タンクの下部シェル領域に対応するシェルが受けた燃料による衝撃力をさらに減らし、燃料タンクの下部シェル領域に対応するシェルの強度を向上させ、変形の発生を防止し、第1下部グリッドキャビティ54の間の下部グリッドリブ52に設けられた燃料流動口53を連通させ、燃料が下部シェル51内を流動することによって、各第1下部グリッドキャビティ54間の燃料の流動を実現し、さらに各第1中部グリッドキャビティ33間の燃料の流動を実現できるだけでなく、中間仕切り板が受けた燃料による衝撃力を減らし、衝撃力が大きすぎることによる燃料タンクの変形やクラックの発生を防止することができる。
【0051】
好ましくは、中部シェル31と中部グリッドリブ32は一次射出成形される。中部シェル31と中部グリッドリブ32は一次射出成形されるように構成されることにより、中部グリッドリブ32の厚さの均一性を確保し、中部シェル31と中部グリッドリブ32との間の接続強度を向上させ、タンク本体の機械的強度を向上させることができる。
【0052】
一実施形態として、下部シェル領域は側壁と底壁を備え、燃料流動口53は下部グリッドリブ52と底壁との接続箇所から上方へ延在している。この構成によれば、燃料が流動口53からスムーズに流動することを確保できる。
【0053】
具体的には、下部グリッドリブ52構造は複数の下部仕切り板がグリッド状に並列して接続されたものとすることにより、第1下部グリッドキャビティ54の一端の開口が第1中部グリッドキャビティ33に連通し、他端が下部シェル領域の底壁に接続される。
【0054】
具体的には、そのうち、1つの第1中部グリッドキャビティ33の下方にある下部シェル51にボスが設けられ、該ボスには、燃料ドレン口である燃料ドレンボルト56が取り付けられる。
【0055】
具体的には、そのうち、1つの第1中部グリッドキャビティ33の上方にある上部シェル11にボスが設けられ、該ボスは燃料センサーを取り付けるために使用される。
【0056】
具体的には、本実施例では、燃料流動口53の形状は限定されず、例えば、円形、三角形、四角形や多角形などであってもよく、多角形は五角形、六角形、七角形、八角形などであってもよく、燃料の流動を実現すればよい。本実施例における燃料流動口53の形状は長方形である。
【0057】
一実施形態として、中部グリッドキャビティの断面形状は円形、三角形、四角形、及び多角形から選ばれる少なくとも1種である。多角形は五角形、六角形、七角形、八角形などであってもよい。具体的には、燃料タンクは立方体であり、中部グリッドリブ32は燃料タンクの軸方向に沿って延在している複数の中間仕切り板を備え、中部グリッドキャビティの断面は直角四角形である。中部グリッドキャビティの断面を直角四角形にすることにより、中部グリッドキャビティの構造安定性をさらに向上させ、燃料タンクの強度を高め、燃料タンクの変形の発生を防止する。
【0058】
具体的には、第1中部グリッドキャビティ群と第2中部グリッドキャビティ群の両方によって形成された中部グリッドキャビティはマトリックス状構造であり、マトリックス状構造の行と列の数は両方とも奇数であり、且つ尿素タンク及び燃料タンクアセンブリの2つの中心線は両方とも第1中部グリッドキャビティ33又は第2中部グリッドキャビティ34の内部を通っており、それにより、中部の応力が中部グリッドリブ32に集中するのを避け、さらに応力を分散させ、且つマトリックス状構造の行と列の数は両方とも奇数であるので、離型の均一性を容易にし、中部グリッドキャビティの反り変形量を均一にし、製品の成形精度を向上させる。
【0059】
好ましくは、マトリックス状構造は3×5マトリックス又は5×7マトリックスである。
【0060】
具体的には、本実施例では、燃料流動口53の面積は制限されず、燃料が流動できればよい。さらに、燃料流動口53の高さは下部シェル51領域の高さと同じであり、幅と第1下部グリッドキャビティ54の辺長との比率は0.25~0.35:1であり、好ましくは0.3:1であり、より好ましくは、燃料流動口の幅は30mmである。このような構成によれば、燃料の流動抵抗を減らし、過度の抵抗による下部仕切り板の変形の発生を防止できるとともに、下部グリッドリブ52と下部シェル51との間の十分な溶接面積を確保し、溶接強度を向上させる。
【0061】
一実施形態として、燃料タンクシェルはブロー・ロール成形によって一体成形され、又は溶接形成される。好ましくは、燃料タンクシェルは上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51をそれぞれ射出成形した後に熱溶融によって溶接したものである。
【0062】
一実施形態として、上部シェル11領域内に中部グリッドリブ32に突き合わせられて設けられた上部グリッドリブ13が設けられ、上部グリッドリブ13は中部グリッドリブ32に溶接され、上部グリッドリブ13と下部グリッドリブ52の厚さは中部グリッドリブ32の厚さよりも大きい。上部シェル11内に下部グリッドリブ52が設けられることにより、燃料タンクの上部シェル11が受けた燃料による衝撃力を減らし、燃料タンクの上部シェル11の強度を向上させ、変形の発生を防止し、上部グリッドリブ13と下部グリッドリブ52の厚さを中部グリッドリブ32の厚さより大きく設定することにより、上部グリッドリブ13と下部グリッドリブ52の溶接面の幅を中部シェル31の溶接面の幅より大きくし、それにより、上部シェル11と中部シェル31、下部シェル51と中部シェル31との間の溶接面積を増やし、上部シェル11と中部シェル31、下部シェル51と中部シェル31との間の溶接強度を向上させ、また、下部グリッドリブ52と下部グリッドリブ52の耐荷能力を高め、下部シェル51に対する下部グリッドリブ52の支持力及び上部シェル11に対する上部グリッドリブ13の支持力を向上させ、下部シェル51と上部シェル11の変形をさらに防止し、また、中部グリッドリブ32の厚さを上部グリッドリブ13と下部グリッドリブ52の厚さより小さく設定することにより、シェルの重量を軽減し、シェルをより軽量化することができる。
【0063】
具体的には、中部グリッドリブ32の厚さは4mm以下であり、上部グリッドリブ13と下部グリッドリブ52の厚さは5mm以上であり、より好ましくは、中部グリッドリブ32の厚さは4mmであり、上部グリッドリブ13と下部グリッドリブ52の厚さはいずれも5mmである。
【0064】
一実施形態として、上部シェル11は側壁及び頂壁を備え、上部グリッドリブ13にオイルガス貫通穴14を設け、オイルガス貫通穴14は上部グリッドリブ13と頂壁との接続箇所から下方へ延在している。オイルガス貫通穴14が設けられることにより、燃料用の上部チャネルを提供するのを確保でき、また、オイルガスが流動するチャネルを提供することもできる。
【0065】
具体的には、上部シェル11と上部グリッドリブ13は一次射出成形される。上部シェル11と上部グリッドリブ13は一次射出成形されるように構成されることにより、下部グリッドリブ52の厚さの均一性を確保し、上部シェル11と上部グリッドリブ13との間の接続強度を向上させ、タンクの機械的強度を向上させることができる。
【0066】
一実施形態として、溶接前に、中部グリッドリブ32の下端溶接面及び/又は下部グリッドリブ52の上端溶接面に溶接材料製の環状凸起が設けられ、溶接材料製の環状凸起の熱溶融によって形成された溶接面を広くする。溶接前に中部グリッドリブ32の下端溶接面及び/又は下部グリッドリブ52の上端溶接面に溶接材料製の環状凸起が設けられることにより、溶接材料製の環状凸起が溶接時に加熱されて溶融し、形成された溶接面を広くし、中部グリッドリブ32と下部グリッドリブ52との間の溶接強度をさらに向上させる。
【0067】
一実施形態として、溶接前に、中部グリッドリブ32の上端溶接面及び/又は上部グリッドリブ13の下端溶接面に溶接材料製の環状凸起が設けられ、溶接材料製の環状凸起の熱溶融によって形成された溶接面を広くする。溶接前に中部グリッドリブ32の上端溶接面及び/又は上部グリッドリブ13の下端溶接面に溶接材料製の環状凸起が設けられることにより、溶接材料製の環状凸起が溶接時に加熱されて溶融し、形成された溶接面を広くし、中部グリッドリブ32と上部グリッドリブ13との間の溶接強度をさらに向上させる。
<実施例2>
【0068】
図1~10に示すように、本出願の実施例2は統合型燃料タンクを提供し、該統合型燃料タンクは、実施例1におけるグリッド状の燃料タンクを備え、中部グリッドキャビティは、第2中部グリッドキャビティ群をさらに備え、第1中部グリッドキャビティ群と第2中部グリッドキャビティ群は連通せず、第2中部グリッドキャビティ群における中部グリッドキャビティ同士は互いに連通して尿素キャビティを形成する。第2中部グリッドキャビティ群が設けられ、且つ第2中部グリッドキャビティ群と第1中部グリッドキャビティ群が連通しないことにより、燃料キャビティと尿素キャビティィを一体化し、統合型燃料タンクの体積を減らし、両者の重量総合を軽減し、車両をより軽量化し、また、燃料キャビティと尿素キャビティを一体化することにより、燃料キャビティの熱で尿素キャビティ内を加熱し、熱の再利用を実現し、尿素キャビティ内の尿素液の結晶化を回避する。
【0069】
具体的には、第2中部グリッドキャビティ群内の中部グリッドリブ32に尿素流動口37が設けられることで、各第2中部グリッドキャビティ344内の尿素液を互いに連通させる。具体的には、本実施例は尿素流動口37の形状を限定せず、例えば円形、三角形、四角形及び多角形などであってもよく、そのうち、多角形は五角型、六角型、七角型、八角形などであってもよく、尿素の流通が可能であればよく、本実施例では、尿素流動口37は長方形である。
【0070】
具体的には、本実施例は尿素流動口37の位置を限定するものではなく、例えば第2中部グリッドキャビティ群における中部グリッドリブ32の下部又は中部に設けられてもよく、好ましくは下部である。
【0071】
具体的には、本実施例は、第1中部グリッドキャビティ群及び第2中部グリッドキャビティ群の設置方法を限定せず、第1中部グリッドキャビティ群と第2中部グリッドキャビティ群が連通しないことを実現できればよい。好ましくは、第2中部グリッドキャビティ群における第2中部グリッドキャビティ34は対称に設けられ、好ましくは、第2中部グリッドキャビティ34は対角に沿って設けられ、これにより、重力分布の均一性を確保し、さらにタンク本体の受けた力の不均一さによる変形の発生を防止し、該設置方法では、加工が容易になり、肉厚が均一である。
【0072】
具体的には、第2中部グリッドキャビティ群における少なくとも1つの第2中部グリッドキャビティ34の先端に入口が設けられ、該入口は燃料タンクシェルに設けられた尿素充填口15に連通し、このように、尿素キャビティに尿素を補充しやすくする。
【0073】
具体的には、尿素充填口15に逆止弁が設けられる。
【0074】
一実施形態として、第2中部グリッドキャビティ群における第2中部グリッドキャビティ34の底端は密封され、第2中部グリッドキャビティ34の側壁同士は互いに連通して尿素キャビティを形成する。第2中部グリッドキャビティ群における第2中部グリッドキャビティ34の底端が密封されるように構成されることにより、第1中部グリッドキャビティ群と第2中部グリッドキャビティ群が連通しないことを実現し、燃料が第2中部グリッドキャビティ群の下方に連通して流動し、燃料の流動抵抗を減らす。
【0075】
一実施形態として、第2中部グリッドキャビティ34の底壁と中部シェル31との接続面及び/又は第2中部グリッドキャビティ3の底壁と中部グリッドリブ32との接続面は、いずれも、中部シェル31の下端の溶接面及び/又は中部グリッドリブ32の下端の溶接面よりも高い。第2中部グリッドキャビティ34の底壁と中部グリッドリブ32は射出成形によって一体成形される。この構成によれば、尿素液と燃料が互いに浸透することを実現でき、燃料が溶接シームを介して尿素キャビティに浸透して尿素液を汚染することを防止しつつ、尿素液が燃料キャビティに浸透してエンジンに損害を与えることを防止する。
【0076】
一実施形態として、第2中部グリッドキャビティ34は射出成形によって一体成形される。第2中部グリッドキャビティ34が射出成形によって一体成形されることにより、第2中部グリッドキャビティ34の中部グリッドリブ32の肉厚が均一であることを確保し、第2中部グリッドキャビティ34の強度を向上させる。
【0077】
具体的には、上部シェル11に凹溝が設けられ、該凹溝は尿素センサー58を取り付けるために用いられ、尿素センサー58の先端が凹溝の先端を超えないようにし、これは、尿素センサー58を保護することに有利であり、タンクの容積を増大させる。
<実施例3>
【0078】
図11~16に示すように、実施例3では、実施例2との相違点は次のとおりである。一実施形態として、そのうちの1つの第2中部グリッドキャビティ34の底壁が下部グリッドキャビティ内まで沈下し、沈下キャビティ35が構成され、沈下キャビティ35とその上方の第2中部グリッドキャビティ34は尿素センサー58を取り付けるために使用され、沈下キャビティ35の底壁に尿素ドレン口が開設され、尿素ドレン口に尿素ドレンボルト57が取り付けられる。沈下キャビティ35が下部グリッドキャビティ内まで沈下するように構成されることにより、尿素センサー58を取り付けるのに必要な高さを残すだけでなく、尿素キャビティの容積を増やすことができ、沈下キャビティ35内で一定のレベルの尿素液を残し、これにより、尿素フィルターエレメントを尿素液に浸すことを確保し、尿素がフィルターエレメントで結晶化してフィルターエレメントの目詰まりを引き起こすことを防止する。
【0079】
具体的には、沈下キャビティ35の側壁は下部グリッドリブ52であってもよいし、射出成形によって中部グリッドリブ32に一体成形されてもよく、沈下キャビティ35の底壁は下部シェル51であってもよいし、射出成形によって中部グリッドリブ32に一体成形されてもよい。本実施例では、沈下キャビティ35の側壁及び底壁は両方とも射出成形によって中部グリッドリブ32に一体成形される。沈下キャビティ35の開口に環状ボス36が設けられ、沈下キャビティ35は環状ボス36を介して中部シェル31の側壁及び/又は中部グリッドリブ32に接続される。この構成によれば、沈下キャビティ35と中部シェル31及び/又は中部グリッドリブ32との接続箇所が溶接シームから離れることを確保でき、溶接シームで尿素液と燃料が互いに浸透することをさらに避ける。
【0080】
具体的には、沈下キャビティ35は第2中部グリッドキャビティ群の対角線上に位置し、タンク本体の均一な重力分布をさらに確保する。
【0081】
具体的には、下部グリッドキャビティは、第2中部グリッドキャビティ群に突き合わせられる第2下部グリッドキャビティ55群を備え、第2下部グリッドキャビティ55群において、沈下キャビティ35に対応する第2下部グリッドキャビティ55以外の第2下部グリッドキャビティ55はいずれも第1下部グリッドキャビティ54群に連通し、燃料が第2下部グリッドキャビティ55と第1下部グリッドキャビティ54群の間を流動するようにする。
<実施例4>
【0082】
燃料タンクと尿素タンクを統合したものは、上部シェル11部分、中部シェル31部分、及び下部シェル51部分をそれぞれ射出成形した後に、上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51を順次溶接することによって製造される。燃料タンクと尿素タンクを統合したものの材質は、樹脂、特に不浸透性のポリアミド、ポリエチレン、ポリスチレンなど、強度要件及び耐油性を満たす任意の材料であってもよい。
【0083】
本実施例は、グリッド状の燃料タンク又は統合型燃料タンクを製造するための製造プロセスを提供し、グリッド状の燃料タンク又は統合型燃料タンクは実施例1におけるグリッド状の燃料タンク又は実施例2における統合型燃料タンクリであり、該製造プロセスは以下のステップを含む。
【0084】
(1)原料を溶融するステップ
ナイロン(登録商標)とポリエチレンを含む原料に、相溶化剤、強化剤、酸化防止剤などの補助添加剤を加えてもよく、相溶化剤は無水マレイン酸でグラフト化するものであってもよく、強化剤はPOEであってもよい。
【0085】
(2)射出成形によって上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51を製造するステップ
射出成形には、高精度サーボ射出成形機を使用して、材料の融点に応じて射出圧力、射出速度、成形温度を制御し、注射圧力を90MPa以下、成形温度を原料の融点よりも高く且つ280℃未満、保圧時間を5sよりも長く、冷却時間を30sよりも長くする。
【0086】
(3)溶接するステップ
上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51を溶接で接続し、1つのシェルにし、溶接は赤外線溶接を採用し、熱溶融深さは0.8mm以上、溶接温度は270℃以上、熱溶融時間は50s以上、硬化時間は20s以上とする。
【0087】
本実施例で使用されるシェルの材料は、上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51が優れた力学的性質、耐熱性及び耐摩耗性を備えることを確保でき、そして、低温耐衝撃性に優れ、製品が寒冷地で衝突されても、漏れないことを確保し、しかも、射出成形と溶接プロセスによって、上部シェル11、中部シェル31、下部シェル51、上部グリッドリブ13、中部グリッドリブ32及び下部グリッドリブ52の厚さを均一にし、且つ溶接シームの接続強度を高くし、変形抵抗能力の強い上部シェル11、中部シェル31及び下部シェル51が製造される。
【0088】
本明細書における各実施例は漸進的に説明されており、各実施例の間の同じ又は類似の部分を互いに参照することができ、各実施例は他の実施例との違いに焦点を合わせて説明される。特に、システム実施例については、方法実施例とほぼ同じであるため、簡単に説明され、関連する部分に関しては、方法実施例の対応する部分の説明を参照すればよい。
【0089】
以上は本願の実施例に過ぎず、本願を限定するためのものではない。当業者にとって、本願は様々な変形と変化が可能である。本願の精神と原理から逸脱しない限り、行われたいずれの修正、等価置換、改良なども本願の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0090】
11、上部シェル
12、燃料供給口
13、上部グリッドリブ
14、オイルガス貫通穴(燃料タンクベント)
15、尿素充填口
31、中部シェル
32、中部グリッドリブ
33、第1中部グリッドキャビティ
34、第2中部グリッドキャビティ
35、沈下キャビティ
36、環状ボス
37、尿素流動口
51、下部シェル
52、下部グリッドリブ
53、燃料流動口
54、第1下部グリッドキャビティ
55、第2下部グリッドキャビティ
56、燃料ドレンボルト
57、尿素ドレンボルト
58、燃料センサー
59、尿素センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16