(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ゴム組成物、加硫物及び加硫成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 11/00 20060101AFI20240826BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240826BHJP
C08L 63/08 20060101ALI20240826BHJP
C08F 36/18 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
C08L11/00
C08K5/14
C08L63/08
C08F36/18
(21)【出願番号】P 2022558864
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2021028981
(87)【国際公開番号】W WO2022091518
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2020178695
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦典
(72)【発明者】
【氏名】藤井 信彦
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-080449(JP,A)
【文献】特開昭57-125230(JP,A)
【文献】特開2007-284542(JP,A)
【文献】特開2007-321041(JP,A)
【文献】特開昭56-034735(JP,A)
【文献】特開2019-077751(JP,A)
【文献】特表2010-540738(JP,A)
【文献】米国特許第05118546(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0071984(US,A1)
【文献】特開平07-053782(JP,A)
【文献】特開2000-281839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 11/00-11/02
C08L 63/08
C08K 5/14
C08F 36/18
C08F 136/18
C08F 236/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレン重合体100質量部と、
エポキシ基を有するジエン系重合体0質量部を超え25質量部以下と、
有機過酸化物0.3~1.8質量部と、を含有
するゴム組成物であって、
前記クロロプレン重合体がクロロプレンの共重合体を含
み、
前記ゴム組成物を160℃×40分の条件でプレス加硫することにより直径63.6mm、厚さ12.7mm、中心孔12.7mmの円環状の加硫成形体Aを作製したとき、JIS K 6264-2:2019に準拠したアクロン摩耗試験による前記加硫成形体Aの測定値が115mm
3
以下であり、
前記ゴム組成物を170℃×20分の条件でプレス加硫することにより厚さ2mmのシート状の加硫成形体Bを作製したとき、80℃の水に72時間浸漬した際の前記加硫成形体Bの体積変化率が4%以下である、ゴム組成物。
【請求項2】
クロロプレン重合体100質量部と、
エポキシ基を有するジエン系重合体0質量部を超え25質量部以下と、
有機過酸化物0.3~1.8質量部と、を含有
するゴム組成物であって、
前記クロロプレン重合体がクロロプレンの単独重合体を含
み、
前記ゴム組成物を160℃×40分の条件でプレス加硫することにより直径63.6mm、厚さ12.7mm、中心孔12.7mmの円環状の加硫成形体Aを作製したとき、JIS K 6264-2:2019に準拠したアクロン摩耗試験による前記加硫成形体Aの測定値が130mm
3
以下であり、
前記ゴム組成物を170℃×20分の条件でプレス加硫することにより厚さ2mmのシート状の加硫成形体Bを作製したとき、80℃の水に72時間浸漬した際の前記加硫成形体Bの体積変化率が4%以下である、ゴム組成物。
【請求項3】
前記クロロプレン重合体が、クロロプレンと、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン及びアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種との共重合体を含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ジエン系重合体が、下記一般式(1)で表される化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【化1】
[式中、m及びnは、それぞれ独立に4~35の整数を示す。]
【請求項5】
前記一般式(1)におけるn/mが1.5~5である、請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ジエン系重合体がポリブタジエンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記ジエン系重合体の重量平均分子量が900~2500である、請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記有機過酸化物が、ジクミルパーオキサイド、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、t-ブチルα-クミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、及び、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記有機過酸化物の含有量が前記クロロプレン重合体100質量部に対して0.3~0.8質量部である、請求項1~8のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のゴム組成物の加硫物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のゴム組成物の加硫成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、加硫物、加硫成形体等に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレン重合体は、各種特性に優れており、その特性を活かして自動車部品、接着剤、各種工業用ゴム部品等の広範囲な分野に用いられている。クロロプレン重合体を用いることが可能な技術としては、下記特許文献1~3に記載のゴム組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-23191号公報
【文献】特開2012-111899号公報
【文献】特開平9-268239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クロロプレン重合体を含有するゴム組成物に対しては、当該ゴム組成物の加硫物において各種特性を高度に両立することが求められており、優れた耐摩耗性及び耐水性を有する加硫物を与えることが求められる場合がある。
【0005】
本発明の一側面は、優れた耐摩耗性及び耐水性を有する加硫物を得ることが可能なゴム組成物を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、前記ゴム組成物の加硫物を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、前記ゴム組成物の加硫成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面の第1実施形態は、クロロプレン重合体100質量部と、エポキシ基を有するジエン系重合体0質量部を超え25質量部以下と、有機過酸化物0.3~1.8質量部と、を含有し、前記クロロプレン重合体がクロロプレンの共重合体を含む、ゴム組成物に関する。
【0007】
本発明の一側面の第2実施形態は、クロロプレン重合体100質量部と、エポキシ基を有するジエン系重合体0質量部を超え25質量部以下と、有機過酸化物0.3~1.8質量部と、を含有し、前記クロロプレン重合体がクロロプレンの単独重合体を含む、ゴム組成物に関する。
【0008】
本発明の他の一側面は、上述のゴム組成物の加硫物に関する。本発明の他の一側面は、上述のゴム組成物の加硫成形体に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、優れた耐摩耗性及び耐水性を有する加硫物を得ることが可能なゴム組成物を提供することが可能であり、JIS K 6264-2:2019に準拠したアクロン摩耗試験において、クロロプレンの共重合体を用いる場合に115mm3以下の耐摩耗性を得ることが可能であり、クロロプレンの単独重合体を用いる場合に130mm3以下の耐摩耗性を得ることができる。本発明の他の一側面によれば、前記ゴム組成物の加硫物を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、前記ゴム組成物の加硫成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0011】
数値範囲の「A以上」とは、A、及び、Aを超える範囲を意味する。数値範囲の「A以下」とは、A、及び、A未満の範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリル酸」等の他の類似の表現においても同様である。
【0012】
<ゴム組成物>
本実施形態(第1実施形態及び第2実施形態を包含する。以下、同様)に係るゴム組成物は、(1)クロロプレン重合体100質量部と、(2)エポキシ基を有するジエン系重合体(以下、「ジエン系重合体A」という)0質量部を超え25質量部以下と、(3)有機過酸化物0.3~1.8質量部と、を含有する。第1実施形態に係るゴム組成物においてクロロプレン重合体は、クロロプレンの共重合体を含む。第2実施形態に係るゴム組成物においてクロロプレン重合体は、クロロプレンの単独重合体を含む。クロロプレンの共重合体及びクロロプレンの単独重合体を含むクロロプレン重合体を含有するゴム組成物は、第2実施形態に係るゴム組成物に該当する。
【0013】
本実施形態に係るゴム組成物によれば、当該ゴム組成物を加硫して得られる加硫物として、優れた耐摩耗性及び耐水性を有する加硫物を得ることができる。本発明者は、鋭意研究を行った結果、酸化マグネシウムが機械的特性を向上させ得るもののその向上効果が充分でないことを見出すと共に、酸化マグネシウムが耐水性を低下させ得ることを見出した上で、酸化マグネシウムを用いて機械的特性を向上させることに代えて、クロロプレン重合体を含有するゴム組成物において、ジエン系重合体A及び有機過酸化物を特定量用いることにより、耐摩耗性及び耐水性の双方が向上することを見出した。
【0014】
第1実施形態に係るゴム組成物によれば、JIS K 6264-2:2019に準拠したアクロン摩耗試験において115mm3以下(例えば110mm3未満)の耐摩耗性を得ることができる。第2実施形態に係るゴム組成物によれば、JIS K 6264-2:2019に準拠したアクロン摩耗試験において130mm3以下(例えば125mm3未満)の耐摩耗性を得ることができる。耐水性に関して、本実施形態に係るゴム組成物によれば、80℃の水に72時間浸漬した際に4%以下(例えば2~4%)の体積変化率を有する加硫物を得ることができる。
【0015】
近年、製品の高寿命化が求められており、耐摩耗性、発熱性等の機械的特性と共に、耐水性、耐油性等の化学的特性を向上させることが求められている。本発明者は、係る要求を満たすために鋭意研究を行った結果、クロロプレン重合体を含有するゴム組成物において、ジエン系重合体A及び有機過酸化物を特定量用いることにより、耐摩耗性、発熱性等の機械的特性、及び、耐水性、耐油性等の化学的特性を同時に向上させ得ることを見出した。すなわち、本実施形態に係るゴム組成物の一態様によれば、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性(低発熱性)を有する加硫物を得ることができる。耐油性に関して、例えば、本実施形態に係るゴム組成物の一態様によれば、同一種のクロロプレン重合体を用いた場合の対比において、130℃の油に72時間浸漬した際に小さい体積変化率を有する加硫物を得ることができる。発熱性に関して、例えば、本実施形態に係るゴム組成物の一態様によれば、JIS K 6265:2018に準拠した測定(50℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1800回の条件)において低い発熱量を与える加硫物を得ることができる。
【0016】
(1)クロロプレン重合体
クロロプレン重合体は、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)を単量体単位(クロロプレンの単量体単位。単量体単位=構造単位)として有し、クロロプレン由来の単量体単位を有することができる。クロロプレン重合体としては、クロロプレンの単独重合体、クロロプレンの共重合体(クロロプレンと、クロロプレンに共重合可能な単量体との共重合体)等が挙げられ、これらの重合体の混合物を用いてもよい。クロロプレン重合体は、クロロプレン系ゴムであってよい。クロロプレン重合体のポリマー構造は、特に限定されるものではない。
【0017】
クロロプレンに共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸のエステル類((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。クロロプレンに共重合可能な単量体は1種に限定されるものではなく、例えば、クロロプレンの共重合体は、クロロプレンを含む3種以上の単量体を共重合した共重合体であってもよい。
【0018】
第1実施形態に係るゴム組成物においてクロロプレン重合体は、クロロプレンの共重合体を含む。第2実施形態に係るゴム組成物においてクロロプレン重合体は、クロロプレンの単独重合体を含む。第1実施形態に係るゴム組成物によれば、特に優れた耐摩耗性及び耐油性を得やすい。第2実施形態に係るゴム組成物においてクロロプレン重合体は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、クロロプレンと、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン及びアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種との共重合体を含んでよい。クロロプレンとアクリロニトリルとの共重合体は、クロロプレン及びアクリロニトリルを単量体単位として有し、クロロプレン由来の単量体単位とアクリロニトリル由来の単量体単位とを有することができる。
【0019】
クロロプレンの共重合体を用いる場合(第1実施形態に係るゴム組成物)、クロロプレンの単量体単位の含有量(共重合量)は、クロロプレン重合体の全質量を基準として、100質量%未満であり、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、下記の範囲であってよい。クロロプレンの単量体単位の含有量は、50質量%以上、50質量%超、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、又は、90質量%以上であってよい。クロロプレンの単量体単位の含有量は、99質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、又は、91質量%以下であってよい。これらの観点から、クロロプレンの単量体単位の含有量は、50質量%以上100質量%未満、70~99質量%、80~97質量%、又は、90~95質量%であってよい。
【0020】
クロロプレンの共重合体を用いる場合(第1実施形態に係るゴム組成物)、クロロプレンに共重合可能な単量体の単量体単位の含有量(共重合量)は、クロロプレン重合体の全質量を基準として、0質量%を超え、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点、及び、これらの単量体を共重合させたことによる効果を発現しやすい観点から、下記の範囲であってよい。単量体単位の含有量は、50質量%以下、50質量%未満、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は、10質量%以下であってよい。単量体単位の含有量は、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、又は、9質量%以上であってよい。これらの観点から、単量体単位の含有量は、0質量%を超え50質量%以下、1~30質量%、3~20質量%、又は、5~10質量%であってよい。同様の観点から、アクリロニトリルの単量体単位の含有量は、クロロプレン重合体の全質量を基準としてこれらの各範囲であってよい。
【0021】
クロロプレンの共重合体を用いる場合(第1実施形態に係るゴム組成物)、クロロプレンに共重合可能な単量体の単量体単位の含有量(共重合量)は、クロロプレンの単量体単位100質量部に対して、0質量部を超え、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点、及び、これらの単量体を共重合させたことによる効果を発現しやすい観点から、下記の範囲であってよい。単量体単位の含有量は、50質量部以下、50質量部未満、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、又は、12質量部以下であってよい。単量体単位の含有量は、1質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、7質量部以上、9質量部以上、又は、10質量部以上であってよい。これらの観点から、単量体単位の含有量は、0質量部を超え50質量部以下、1~40質量部、5~30質量部、又は、10~20質量部であってよい。同様の観点から、アクリロニトリルの単量体単位の含有量は、クロロプレンの単量体単位100質量部に対してこれらの各範囲であってよい。
【0022】
クロロプレン重合体(クロロプレンの単独重合体、クロロプレンの共重合体等)は、硫黄変性クロロプレン重合体、メルカプタン変性クロロプレン重合体、キサントゲン変性クロロプレン重合体、ジチオカルボナート系クロロプレン重合体、トリチオカルボナート系クロロプレン重合体、カルバメート系クロロプレン重合体などであってよい。
【0023】
クロロプレン重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び、分子量分布(分子量の多分散度、Mw/Mn)は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、下記の範囲であってよい。
【0024】
クロロプレン重合体の重量平均分子量は、10×103g/mol以上、50×103g/mol以上、100×103g/mol以上、300×103g/mol以上、400×103g/mol以上、又は、450×103g/mol以上であってよい。クロロプレン重合体の重量平均分子量は、5000×103g/mol以下、3000×103g/mol以下、2000×103g/mol以下、1000×103g/mol以下、800×103g/mol以下、又は、500×103g/mol以下であってよい。これらの観点から、クロロプレン重合体の重量平均分子量は、10×103~5000×103g/mol、100×103~2000×103g/mol、又は、300×103~1000×103g/molであってよい。
【0025】
クロロプレン重合体の数平均分子量は、1×103g/mol以上、5×103g/mol以上、10×103g/mol以上、50×103g/mol以上、100×103g/mol以上、又は、130×103g/mol以上であってよい。クロロプレン重合体の数平均分子量は、1000×103g/mol以下、800×103g/mol以下、500×103g/mol以下、300×103g/mol以下、200×103g/mol以下、又は、150×103g/mol以下であってよい。これらの観点から、クロロプレン重合体の数平均分子量は、1×103~1000×103g/mol、10×103~500×103g/mol、又は、50×103~300×103g/molであってよい。
【0026】
クロロプレン重合体の分子量分布は、1.0以上、1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上、3.2以上、又は、3.4以上であってよい。クロロプレン重合体の分子量分布は、10以下、8.0以下、5.0以下、4.0以下、3.8以下、3.5以下、又は、3.4以下であってよい。これらの観点から、クロロプレン重合体の分子量分布は、1.0~10、2.0~5.0、又は、2.5~4.0であってよい。
【0027】
クロロプレン重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算することで得ることが可能であり、具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
【0028】
クロロプレン重合体の含有量は、ゴム組成物に含有されるゴム成分の全質量を基準として、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、50質量%以上、50質量%超、70質量%以上、90質量%以上、93質量%以上、93質量%超、95質量%以上、95質量%超、96質量%以上、98質量%以上、又は、99質量%以上であってよい。ゴム組成物に含有されるゴム成分は、クロロプレン重合体からなる(ゴム組成物に含有されるゴム成分の実質的に100質量%がクロロプレン重合体である)態様であってもよい。
【0029】
クロロプレン重合体の含有量は、ゴム組成物の全質量を基準として下記の範囲であってよい。クロロプレン重合体の含有量は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、30質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、50質量%超、54質量%以上、55質量%以上、57質量%以上、58質量%以上、又は、59質量%以上であってよい。クロロプレン重合体の含有量は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、62質量%以下、60質量%以下、又は、58質量%以下であってよい。これらの観点から、クロロプレン重合体の含有量は、30~90質量%、40~80質量%、又は、50~70質量%であってよい。
【0030】
クロロプレン重合体の製造方法は、クロロプレンを含む原料単量体を重合させる重合工程を備える。クロロプレン重合体は、例えば、乳化分散剤を用いて、重合反応の触媒、触媒活性化剤、重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下で、クロロプレンを含む原料単量体(例えば、クロロプレンを主成分とする原料単量体)を乳化重合することにより得ることができる。
【0031】
乳化分散剤としては、炭素数が6~22の飽和又は不飽和の脂肪酸のアルカリ金属塩、ロジン酸又は不均化ロジン酸のアルカリ金属塩(例えばロジン酸カリウム)、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物のアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩)等が挙げられる。
【0032】
重合反応の触媒としては、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類(例えばt-ブチルハイドロパーオキサイド)、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0033】
触媒活性化剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、酸化鉄(II)、アントラキノン、β-スルフォン酸ナトリウム、フォルムアミジンスルフォン酸、L-アスコルビン酸等が挙げられる。
【0034】
重合開始剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に用いられる公知の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、無機過酸化物(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等)、過酸化水素などが挙げられる。
【0035】
連鎖移動剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に使用される公知の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類;ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン化合物;ヨードホルム;ベンジル1-ピロールジチオカルバメート(別名ベンジル1-ピロールカルボジチオエート)、ベンジルフェニルカルボジチオエート、1-ベンジル-N,N-ジメチル-4-アミノジチオベンゾエート、1-ベンジル-4-メトキシジチオベンゾエート、1-フェニルエチルイミダゾールジチオカルバメート(別名1-フェニルエチルイミダゾールカルボジチオエート)、ベンジル-1-(2-ピロリジノン)ジチオカルバメート(別名ベンジル-1-(2-ピロリジノン)カルボジチオエート)、ベンジルフタルイミジルジチオカルバメート(別名ベンジルフタルイミジルカルボジチオエート)、2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート(別名2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート)、2-シアノブト-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート(別名2-シアノブト-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート)、ベンジル-1-イミダゾールジチオカルバメート(別名ベンジル-1-イミダゾールカルボジチオエート)、2-シアノプロプ-2-イル-N,N-ジメチルジチオカルバメート、ベンジル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、シアノメチル-1-(2-ピロリドン)ジチオカルバメート、2-(エトキシカルボニルベンジル)プロプ-2-イル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、1-フェニルエチルジチオベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イルジチオベンゾエート、1-酢酸-1-イル-エチルジチオベンゾエート、1-(4-メトキシフェニル)エチルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、エトキシカルボニルメチルジチオアセタート、2-(エトキシカルボニル)プロプ-2-イルジチオベンゾエート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート、t-ブチルジチオベンゾエート、2,4,4-トリメチルペンタ-2-イルジチオベンゾエート、2-(4-クロロフェニル)-プロプ-2-イルジチオベンゾエート、3-ビニルベンジルジチオベンゾエート、4-ビニルベンジルジチオベンゾエート、ベンジルジエトキシホスフィニルジチオフォルマート、t-ブチルトリチオペルベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、ナフタレン-1-カルボン酸-1-メチル-1-フェニル-エチルエステル、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸、ジベンジルテトラチオテレフタラート、カルボキシメチルジチオベンゾエート、ジチオベンゾエート末端基を有するポリ(酸化エチレン)、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸末端基を有するポリ(酸化エチレン)、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]プロパン酸、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]コハク酸、3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエートカリウム、シアノメチル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル-(フェニル)ジチオカルバメート、ベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルメチル-4-クロロジチオベンゾエート、4-ニトロベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、1-シアノ-1-メチルエチル-4-クロロジチオベンゾエート、3-クロロ-2-ブテニル-4-クロロジチオベンゾエート、2-クロロ-2-ブテニルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、3-クロロ-2-ブテニル-1H-ピロール-1-ジチオカルボン酸、2-シアノブタン-2-イル-4-クロロ-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエート、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナート、ジベンジルトリチオカルボナート、ブチルベンジルトリチオカルボナート、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]-2-メチルプロピオン酸、2,2’-[カルボノチオイルビス(チオ)]ビス[2-メチルプロピオン酸]、2-アミノ-1-メチル-2-オキソエチルブチルトリチオカルボナート、ベンジル-2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-メチル-2-オキソエチルトリチオカルボナート、3-[[[(t-ブチル)チオ]チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、シアノメチルドデシルトリチオカルボナート、ジエチルアミノベンジルトリチオカルボナート、ジブチルアミノベンジルトリチオカルボナート等のチオカルボニル化合物などが挙げられる。
【0036】
クロロプレン重合体の重合温度は、特に限定されるものではなく、一般に乳化重合が行われる温度として、0~50℃、又は、20~50℃であってよい。上述の重合工程で得られるクロロプレン重合体の最終重合率は、特に限定されるものではなく、30~100%の範囲内で任意に調節することができる。最終転化率を調整するためには、所望する転化率になった時に、重合反応を停止させる重合停止剤を添加して重合を停止させることができる。
【0037】
重合停止剤としては、特に限定されるものではなく、通常用いられている重合停止剤を使用することができる。重合停止剤としては、チオジフェニルアミン(別名フェノチアジン)、4-t-ブチルカテコール、2,2-メチレンビス-4-メチル-6-t-ブチルフェノール等が挙げられる。
【0038】
クロロプレン重合体の製造方法では、重合工程により得られた重合液から未反応の単量体の除去を行うことができる。その方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スチームストリッピング法が挙げられる。その後、pHを調整し、常法の凍結凝固、水洗、熱風乾燥等の工程を経てクロロプレン重合体を得ることができる。
【0039】
(2)ジエン系重合体A
本実施形態に係るゴム組成物は、エポキシ基を有するジエン系重合体A(クロロプレン重合体に該当する化合物を除く)を含有する。ジエン系重合体Aがエポキシ基を有することにより極性が高まるため、クロロプレン重合体とジエン系重合体Aとの相溶性が向上することにより耐摩耗性が向上しやすい。また、クロロプレン重合体から発生し得る塩酸をエポキシ基が捕捉することにより、耐水性を低下させる金属塩化物の生成を抑制しやすい。これらにより、優れた耐摩耗性及び耐水性を有する加硫物を得やすいと推察される。但し、このような加硫物が得られる要因は上述の要因に限定されない。
【0040】
「ジエン系重合体」は、共役二重結合を有する共役ジエン単量体を重合させることにより得ることが可能な重合体であり、当該重合体の水素添加物であってもよい。ジエン系重合体Aとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の脂肪族共役ジエン重合体;スチレン-ブタジエン重合体(SBR)等の芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体;アクリロニトリル-ブタジエン重合体(NBR)等のシアン化ビニル-共役ジエン共重合体;水素化SBR;水素化NBRなどが挙げられる。ジエン系重合体Aは、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、脂肪族共役ジエン重合体を含んでよく、ポリブタジエンを含んでよい。ジエン系重合体Aとしては、25℃において液状のエポキシ化ポリブタジエンを用いてよい。
【0041】
ジエン系重合体Aは、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、下記一般式(1)で表される化合物を含んでよい。
【化1】
[式中、m及びnは、それぞれ独立に4~35の整数を示す。]
【0042】
一般式(1)におけるmは、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、下記の範囲であってよい。mは、5以上、6以上、7以上、又は、8以上であってよい。mは、32以下、30以下、27以下、25以下、24以下、23以下、21以下、20以下、18以下、15以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、又は、7以下であってよい。mは、4~30、4~23、4~20、4~10、5~10、6~10、4~8、4~7、7~11、又は、8~11であってよい。同様の観点から、ゴム組成物に含まれるジエン系重合体Aの全体において、一般式(1)におけるmの平均値は、これらの範囲であってよい。
【0043】
一般式(1)におけるnは、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、下記の範囲であってよい。nは、5以上、6以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、15以上、17以上、18以上、20以上、21以上、24以上、25以上、又は、27以上であってよい。nは、32以下、30以下、27以下、25以下、24以下、21以下、20以下、又は、18以下であってよい。nは、6~35、10~35、17~32、10~30、12~21、20~35、又は、27~35であってよい。同様の観点から、ゴム組成物に含まれるジエン系重合体Aの全体において、一般式(1)におけるnの平均値は、これらの範囲であってよい。
【0044】
一般式(1)におけるn/mは、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、下記の範囲であってよい。n/mは、1.5以上、2.0以上、2.5以上、2.8以上、3.0以上、又は、3.2以上であってよい。n/mは、5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.2以下、3.0以下、又は、2.8以下であってよい。これらの観点から、n/mは、1.5~5、2.5~4.0、又は、2.8~3.2であってよい。同様の観点から、ゴム組成物に含まれるジエン系重合体Aの全体において、一般式(1)におけるn/mの平均値は、これらの範囲であってよい。
【0045】
ジエン系重合体Aのエポキシ当量は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、下記の範囲であってよい。エポキシ当量は、100g/eq以上、120g/eq以上、150g/eq以上、180g/eq以上、190g/eq以上、200g/eq以上、又は、210g/eq以上であってよい。エポキシ当量は、300g/eq以下、280g/eq以下、250g/eq以下、240g/eq以下、又は、210g/eq以下であってよい。これらの観点から、エポキシ当量は、100~300g/eq、190~240g/eq、190~210g/eq、又は、210~240g/eqであってよい。
【0046】
ジエン系重合体Aの重量平均分子量は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、下記の範囲であってよい。重量平均分子量は、500以上、900以上、1000以上、1200以上、1300以上、1500以上、1800以上、2000以上、又は、2200以上であってよい。重量平均分子量は、3000以下、2500以下、2200以下、2000以下、1800以下、1500以下、又は、1300以下であってよい。これらの観点から、重量平均分子量は、500~3000、900~2500、又は、1300~2200であってよい。ジエン系重合体Aの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算することで得ることが可能であり、クロロプレン重合体の重量平均分子量と同様の方法により測定できる。
【0047】
ジエン系重合体Aの含有量は、優れた耐摩耗性及び耐水性を有する加硫物を得る観点から、クロロプレン重合体100質量部に対して0質量部を超え25質量部以下である。ジエン系重合体Aの含有量は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、クロロプレン重合体100質量部に対して下記の範囲であってよい。ジエン系重合体Aの含有量は、1質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、5質量部以上、8質量部以上、10質量部以上、12質量部以上、13質量部以上、15質量部以上、又は、20質量部以上であってよい。ジエン系重合体Aの含有量は、22質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、13質量部以下、12質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、5質量部以下、又は、4質量部以下であってよい。これらの観点から、ジエン系重合体Aの含有量は、1~22質量部、4~20質量部、8~15質量部、又は、10~13質量部であってよい。
【0048】
ジエン系重合体Aの含有量は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、ゴム組成物の全質量を基準として下記の範囲であってよい。ジエン系重合体Aの含有量は、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、又は、10質量%以上であってよい。ジエン系重合体Aの含有量は、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、又は、3質量%以下であってよい。これらの観点から、ジエン系重合体Aの含有量は、1~20質量%、2~12質量%、又は、5~10質量%であってよい。
【0049】
(3)有機過酸化物
本実施形態に係るゴム組成物は、有機過酸化物(クロロプレン重合体又はジエン系重合体Aに該当する化合物を除く)を含有する。有機過酸化物は、加硫剤として用いることができる。有機過酸化物としては、クロロプレン重合体に対する加硫剤として用いられる公知の化合物を用いることができる。
【0050】
有機過酸化物としては、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル等が挙げられる。有機過酸化物は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、ジアルキルパーオキサイドを含んでよい。
【0051】
有機過酸化物の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロへキシル)プロパン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル-4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルα-クミルペルオキシド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド等が挙げられる。有機過酸化物は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、ジクミルパーオキサイド、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、t-ブチルα-クミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、及び、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、特に優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性が得られやすい観点から、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼンを含んでよい。
【0052】
有機過酸化物の含有量は、優れた耐摩耗性及び耐水性を有する加硫物を得る観点から、クロロプレン重合体100質量部に対して0.3~1.8質量部である。
【0053】
有機過酸化物の含有量、又は、ジアルキルパーオキサイドの含有量として、含有量C1は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、クロロプレン重合体100質量部に対して下記の範囲であってよい。含有量C1は、0.4質量部以上、0.5質量部以上、0.8質量部以上、1質量部以上、1.2質量部以上、又は、1.4質量部以上であってよい。含有量C1は、1.5質量部以下、1.4質量部以下、1.2質量部以下、1質量部以下、0.8質量部以下、0.5質量部以下、又は、0.4質量部以下であってよい。これらの観点から、含有量C1は、0.3~1.5質量部、0.4~1.2質量部、又は、0.5~1質量部であってよい。
【0054】
有機過酸化物の含有量、又は、ジアルキルパーオキサイドの含有量として、含有量C2は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、ジエン系重合体A100質量部に対して下記の範囲であってよい。含有量C2は、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、5質量部以上、8質量部以上、10質量部以上、12質量部以上、14質量部以上、15質量部以上、又は、20質量部以上であってよい。含有量C2は、100質量部以下、100質量部未満、80質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、25質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、14質量部以下、12質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、5質量部以下、又は、4質量部以下であってよい。これらの観点から、含有量C2は、1~100質量部、5~20質量部、又は、8~15質量部であってよい。
【0055】
有機過酸化物の含有量、又は、ジアルキルパーオキサイドの含有量として、含有量C3は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、ゴム組成物の全質量を基準として下記の範囲であってよい。含有量C3は、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.45質量%以上、0.47質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、又は、0.75質量%以上であってよい。含有量C3は、2質量%以下、1.5質量%以下、1.2質量%以下、1質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.5質量%以下、0.48質量%以下、0.45質量%以下、0.4質量%以下、又は、0.3質量%以下であってよい。これらの観点から、含有量C3は、0.1~2質量%、0.3~0.8質量%、又は、0.4~0.7質量%であってよい。
【0056】
(4)その他の成分
本実施形態に係るゴム組成物は、上述のクロロプレン重合体、ジエン系重合体A及び有機過酸化物とは異なる成分として、ゴム成分(クロロプレン重合体を除く);加硫剤;加硫促進剤;可塑剤;充填材(補強材);加工助剤;老化防止剤等を含有してよい。本実施形態に係るゴム組成物は、これらの少なくとも一種の成分を含有しなくてもよい。
【0057】
有機過酸化物に該当しない加硫剤としては、金属酸化物等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛、四酸化三鉛、三酸化鉄、二酸化チタン、酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0058】
加硫剤の含有量、酸化亜鉛の含有量、酸化マグネシウムの含有量、又は、ハイドロタルサイトの含有量は、ゴム組成物に含有されるゴム成分100質量部、又は、クロロプレン重合体100質量部に対して、0質量部を超えてよく、0質量部であってもよい。加硫剤の含有量、酸化亜鉛の含有量、酸化マグネシウムの含有量、又は、ハイドロタルサイトの含有量は、優れた耐摩耗性を得やすい観点から、ゴム組成物に含有されるゴム成分100質量部、又は、クロロプレン重合体100質量部に対して、10質量部以下、5質量部以下、4質量部以下、4質量部未満、2質量部以下、2質量部未満、1質量部以下、0.1質量部以下、0.01質量部以下、又は、0.001質量部以下であってよい。加硫剤の含有量、酸化亜鉛の含有量、酸化マグネシウムの含有量、又は、ハイドロタルサイトの含有量は、ゴム組成物の全質量を基準として、0.1質量%以下、0.01質量%以下、0.001質量%以下、又は、0質量%であってよい。
【0059】
加硫促進剤としては、グアニジン系、チウラム系、チアゾール系等の加硫促進剤;ジメチルアンモニウムハイドロジェンイソフタレート;1,2-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体などが挙げられる。グアニジン化合物、チウラム化合物又はチアゾール化合物の含有量は、クロロプレン重合体100質量部に対して、0.1質量部以下、0.1質量部未満、0.01質量部以下、0.001質量部以下、又は、0質量部であってよい。
【0060】
可塑剤としては、クロロプレン重合体と相溶性のある可塑剤を使用可能であり、植物油(菜種油等)、フタレート系可塑剤、DOS、DOA、エステル系可塑剤、ポリエーテルエステル系可塑剤、チオエーテル系可塑剤、アロマ系オイル、ナフテン系オイルなどが挙げられる。可塑剤の含有量は、優れた耐摩耗性、耐水性、耐油性及び発熱性がバランスよく得られやすい観点から、クロロプレン重合体100質量部に対して、50質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、又は、10質量部以下であってよい。
【0061】
充填材(補強材)としては、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム等が挙げられる。充填材の含有量は、優れた耐熱性を得る観点から、クロロプレン重合体100質量部に対して5~100質量部であってよい。シリカの含有量は、ゴム組成物に含有されるゴム成分100質量部、又は、クロロプレン重合体100質量部に対して、20質量部以下、20質量部未満、10質量部以下、5質量部以下、3質量部以下、3質量部未満、1質量部以下、0.1質量部以下、又は、0質量部であってよい。
【0062】
加工助剤としては、ステアリン酸等の脂肪酸;ポリエチレン等のパラフィン系加工助剤;脂肪酸アミドなどが挙げられる。加工助剤の含有量は、クロロプレン重合体100質量部に対して0.5~5質量部であってよい。
【0063】
老化防止剤としては、アミン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、フェノール系老化防止剤、ワックス等が挙げられる。耐熱性の改良効果の大きいアミン系老化防止剤としては、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン等が挙げられ、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンの耐熱性の改良効果が特に大きい。
【0064】
本実施形態に係るゴム組成物は、上述のクロロプレン重合体、ジエン系重合体A及び有機過酸化物とは異なる成分として、イミダゾール化合物、マレイミド化合物、トリアジン化合物、アクリレート系多官能性モノマー及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してよく、イミダゾール化合物、マレイミド化合物、トリアジン化合物、アクリレート系多官能性モノマー及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有しなくてもよい。イミダゾール化合物、マレイミド化合物、トリアジン化合物、アクリレート系多官能性モノマー及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の含有量は、ゴム組成物に含有されるゴム成分100質量部、又は、クロロプレン重合体100質量部に対して、0.5質量部以下、0.5質量部未満、0.3質量部以下、0.3質量部未満、0.1質量部以下、0.1質量部未満、0.01質量部以下、又は、0質量部であってよい。
【0065】
本実施形態に係るゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、ゴム組成物の加工性を維持しやすい観点から、下記の範囲であってよい。ムーニー粘度は、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、又は、40以上であってよい。ムーニー粘度は、90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、65以下、60以下、又は、55以下であってよい。これらの観点から、ムーニー粘度は、10~90、又は、20~80であってよい。
【0066】
本実施形態に係るゴム組成物は、上述の成分をその加硫温度以下の温度で混練することで得ることができる。混練装置としては、ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール等を用いることができる。
【0067】
<未加硫成形体、加硫物及び加硫成形体>
本実施形態に係る未加硫成形体は、本実施形態に係るゴム組成物を用いており、本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)の成形体(成形品)である。本実施形態に係る未加硫成形体の製造方法は、本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)を成形する工程を備える。本実施形態に係る未加硫成形体は、本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)からなる。
【0068】
本実施形態に係る加硫物は、本実施形態に係るゴム組成物の加硫物である。本実施形態に係る加硫物の製造方法は、本実施形態に係るゴム組成物を加硫する工程を備える。
【0069】
本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係るゴム組成物の加硫成形体である。本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係る加硫物を用いており、本実施形態に係る加硫物の成形体(成形品)である。本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係る加硫物からなる。
【0070】
本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)を加硫して得られる加硫物を成形することにより得ることが可能であり、本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)を成形して得られる成形体を加硫することにより得ることもできる。本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係るゴム組成物を成形後又は成形時に加硫することにより得ることができる。本実施形態に係る加硫成形体の製造方法は、本実施形態に係る加硫物を成形する工程、又は、本実施形態に係る未加硫成形体を加硫する工程を備える。
【0071】
本実施形態に係る未加硫成形体、加硫物及び加硫成形体は、建築物、構築物、船舶、鉄道、炭鉱、自動車等の各種工業分野のゴム部品として利用可能であり、自動車用ゴム部材(例えば自動車用シール材)、ホース材、ゴム型物、ガスケット、ゴムロール、産業用ケーブル、産業用コンベアベルト等のゴム部品として利用することができる。
【0072】
本実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)及び加硫物を成形する方法としては、プレス成形、押出成形、カレンダー成形等が挙げられる。ゴム組成物を加硫する温度は、ゴム組成物の組成に合わせて適宜設定すればよく、140~220℃、又は、160~190℃であってよい。ゴム組成物を加硫する加硫時間は、ゴム組成物の組成、未加硫成形体の形状等によって適宜設定すればよく、10~60分であってよい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
<クロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴムの作製>
加熱冷却ジャケット及び攪拌機を備えた内容積3Lの重合缶に、クロロプレン(単量体)24質量部、アクリロニトリル(単量体)24質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、及び、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。次に、重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加した後、重合温度40℃にて窒素気流下で乳化重合を行った。上述のクロロプレンは、重合開始20秒後から分添し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。クロロプレン及びアクリロニトリルの合計量に対する重合率が50%となった時点で、重合停止剤であるフェノチアジン0.02質量部を加えて重合を停止させた。その後、減圧下で反応溶液中の未反応の単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックスを得た。
【0075】
クロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックスの上述の重合率[%]は、クロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックスを風乾したときの乾燥質量から算出した。具体的には、下記式(A)より計算した。式中、「固形分濃度」とは、サンプリングしたクロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックス2gを130℃で加熱して、溶媒(水)、揮発性薬品、原料等の揮発成分を除いた固形分の濃度[質量%]である。「総仕込み量」とは、重合開始からある時刻までに重合缶に仕込んだ原料、試薬及び溶媒(水)の総量[g]である。「蒸発残分」とは、重合開始からある時刻までに仕込んだ薬品及び原料のうち、130℃の条件下で揮発せずにポリマーと共に固形分として残留する薬品の質量[g]である。「単量体の仕込み量」とは、重合缶に初期に仕込んだ単量体、及び、重合開始からある時刻までに分添した単量体の量の合計[g]である。なお、ここでいう「単量体」とは、クロロプレン及びアクリロニトリルの合計量である。
重合率={[(総仕込み量×固形分濃度/100)-蒸発残分]/単量体の仕込み量}×100 ・・・(A)
【0076】
上述のクロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックスのpHを、酢酸又は水酸化ナトリウムを用いて7.0に調整した後、-20℃に冷やした金属板上でクロロプレン-アクリロニトリル共重合体ラテックスを凍結凝固させることで乳化破壊することによりシートを得た。このシートを水洗した後、130℃で15分間乾燥させることにより固形状のクロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴム(クロロプレン-アクリロニトリル共重合体)を得た。
【0077】
上述のクロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴムをTHFでサンプル調整濃度0.1質量%の溶液とした後、高速GPC装置(TOSOH HLC-8320GPC:東ソー株式会社製)によりクロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴムの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した(標準ポリスチレン換算)。その際、プレカラムとしてTSKガードカラムHHR-Hを使用し、分析カラムとしてHSKgelGMHHR-Hを3本使用し、サンプルポンプ圧8.0~9.5MPa、流量1mL/min、40℃で流出させ、示差屈折計で検出した。
【0078】
流出時間及び分子量は、以下に挙げる分子量既知の標準ポリスチレンサンプル計9点を測定して作成した校正曲線を用いて得た。
Mw=8.42×106、1.09×106、7.06×105、4.27×105、1.90×105、9.64×104、3.79×104、1.74×104、2.63×103
【0079】
クロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴムの重量平均分子量(Mw)は473×103g/molであり、数平均分子量(Mn)は138×103g/molであり、分子量分布(Mw/Mn)は3.4であった。
【0080】
クロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴムに含まれるアクリロニトリルの単量体単位の含有量を、クロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴム中の窒素原子の含有量から算出した。具体的には、元素分析装置(スミグラフ220F:株式会社住化分析センター製)を用いて、100mgのクロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴム中における窒素原子の含有量を測定し、アクリロニトリルの単量体単位の含有量を算出した。アクリロニトリルの単量体単位の含有量は9.9質量%であった。
【0081】
上述の元素分析は次のとおり行った。電気炉温度として反応炉900℃、還元炉600℃、カラム温度70℃、検出器温度100℃に設定し、燃焼用ガスとして酸素ガスを0.2mL/min、キャリアーガスとしてヘリウムガスを80mL/minフローした。検量線は、窒素含有量が既知のアスパラギン酸(10.52%)を標準物質として用いて作成した。
【0082】
<ゴム組成物の作製>
表1又は表2に記載の成分と、可塑剤10質量部と、加工助剤1質量部と、充填材50質量部と、耐熱老化防止剤3質量部と、を8インチオープンロールで混練することにより実施例及び比較例のゴム組成物を得た。
【0083】
ゴム組成物を得るために用いた各成分は以下のとおりである。
クロロプレン重合体1:上述のクロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴム
クロロプレン重合体2:クロロプレンゴム(クロロプレンの単独重合体)、デンカ株式会社製「S-40V」
エポキシ基含有ポリブタジエンゴム1:上述の式(1)で表される化合物、m=4~7(平均値:6)、n=12~21(平均値:17)、n/m=2.8(平均値)、重量平均分子量=1300、エポキシ当量=190~210g/eq、日本曹達株式会社製「JP-100」
エポキシ基含有ポリブタジエンゴム2:上述の式(1)で表される化合物、m=8~11(平均値:10)、n=27~35(平均値:32)、n/m=3.2(平均値)、重量平均分子量=2200、エポキシ当量=210~240g/eq、日本曹達株式会社製「JP-200」
エポキシ基非含有ポリブタジエンゴム:株式会社クラレ製「LBR-307」
有機過酸化物1:1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、日油株式会社製「パーブチルP」
有機過酸化物2:2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、日油株式会社製「パーヘキシン25B」
酸化マグネシウム:協和化学工業株式会社製「キョーワマグ(登録商標)150」
可塑剤:ポリエーテルエステル系可塑剤、株式会社ADEKA製「アデカサイザー(登録商標)RS-700」
加工助剤:ステアリン酸、新日本理化株式会社製「ステアリン酸50S」
充填材:カーボンブラック(FEF)、旭カーボン株式会社製「旭#60U」
耐熱老化防止剤:4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、大内新興化学工業株式会社製「ノクラック(登録商標)CD」
【0084】
<ムーニー粘度の測定>
上述のゴム組成物について、JIS K 6300-1に準拠して、L型ロータの予熱時間1分、回転時間4分、試験温度100℃にてムーニー粘度(ML1+4)の測定を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0085】
<加硫成形体の作製>
上述のゴム組成物を160℃×40分の条件でプレス加硫することにより直径63.6mm、厚さ12.7mm、中心孔12.7mmの円環状の加硫成形体Aを作製した。上述のゴム組成物を170℃×20分の条件でプレス加硫することにより厚さ2mmのシート状の加硫成形体Bを作製した。上述のゴム組成物を160℃×40分の条件でプレス加硫することにより直径15mm、高さ25mmの円柱状の加硫成形体Cを作製した。
【0086】
<加硫成形体の評価>
上述の加硫成形体の評価を以下のとおり行った。結果を表1及び表2に示す。
【0087】
(耐摩耗性)
上述の円環状の加硫成形体Aについて、JIS K 6264-2:2019に準拠してアクロン摩耗試験(1000回摩耗、ΔV、単位:mm3)を行った。クロロプレンの共重合体を用いる場合において115mm3以下の場合を良好であると判断し、クロロプレンの単独重合体を用いる場合において130mm3以下の場合を良好であると判断した。
【0088】
(耐水性)
上述のシート状の加硫成形体Bを用いて幅20mm、長さ50mm、厚さ2mmの試験片を得た。80℃の水に試験片を72時間浸漬した後、試験の前後で試験片の体積を測定することにより体積変化率を測定した。体積変化率は、試験片の試験前の体積をW1、試験後の体積をW2としたとき、「体積変化率(%)=100×(W2-W1)/W1」で与えられる。体積変化率が4%以下である場合を良好であると判断した。
【0089】
(耐油性)
JIS K 6258に準拠して、上述のシート状の加硫成形体Bを縦15cm、横15cmに成形することにより試験片を得た。130℃の試験油(自動車用高潤滑油、ASTM No.3、IRM 903 oil)に試験片を72時間浸漬した後、試験の前後で試験片の体積を測定することにより体積変化率を算出した。体積変化率は耐水性と同様の上述の式により算出できる。
【0090】
(発熱性)
上述の円柱状の加硫成形体Cについて、JIS K 6265:2018に準拠して、50℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1800回の条件で発熱量(ΔT、単位:℃)を測定した。
【0091】
【0092】
【0093】
表1及び表2に示した結果から、実施例のゴム組成物によれば、優れた耐摩耗性及び耐水性を有する加硫物を得ることができる。このような加硫物は、ゴムロール用途等の成形品として好適に使用できる。