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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】3次元造形物の製造方法、及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/10 20170101AFI20240826BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240826BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240826BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240826BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20240826BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20240826BHJP
   B22F 10/12 20210101ALI20240826BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240826BHJP
   B22F 10/22 20210101ALI20240826BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20240826BHJP
   B22F 10/16 20210101ALI20240826BHJP
【FI】
B29C64/10
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/112
B29C64/124
B29C64/40
B22F10/12
B22F10/28
B22F10/22
B22F10/85
B22F10/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022563522
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2020043379
(87)【国際公開番号】W WO2022107307
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】富永 亮二郎
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/042610(WO,A1)
【文献】特開2017-217889(JP,A)
【文献】国際公開第2019/102522(WO,A1)
【文献】特開2019-196019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B29C 64/112
B29C 64/124
B29C 64/40
B22F 10/12
B22F 10/28
B22F 10/22
B22F 10/85
B22F 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付物に電子デバイスを取り付けた3次元造形物の製造方法であって、
前記電子デバイスを取り付ける取付部を有する前記被取付物を、積層造形法を用いて、第1硬化性樹脂によって造形する第1造形工程と、
積層造形法を用いて、第2硬化性樹脂によって樹脂層を造形し、金属粒子を含む流体によって導体を造形し、前記樹脂層に前記導体を有する前記電子デバイスを造形する第2造形工程と、
前記電子デバイスを前記被取付物の前記取付部に取り付ける取付工程と、
を含み、
前記第2造形工程の前記第2硬化性樹脂は、
前記第1造形工程の前記第1硬化性樹脂に比べて前記導体に対する濡れ性が低い条件、前記第1硬化性樹脂に比べて線膨張係数が低い条件、前記第1硬化性樹脂に比べて前記導体に対する密着性が高い条件のうち、少なくとも一つの条件を満たす、3次元造形物の製造方法。
【請求項2】
被取付物に電子デバイスを取り付けた3次元造形物の製造方法であって、
前記電子デバイスを取り付ける取付部を有する前記被取付物を、積層造形法を用いて、第1硬化性樹脂によって造形する第1造形工程と、
積層造形法を用いて、第2硬化性樹脂によって樹脂層を造形し、金属粒子を含む流体によって導体を造形し、前記樹脂層に前記導体を有する前記電子デバイスを造形する第2造形工程と、
前記電子デバイスを前記被取付物の前記取付部に取り付ける取付工程と、
前記第2造形工程で造形した前記電子デバイスをスキャンして、前記電子デバイスの3Dデータを作成する3Dデータ作成工程と、
を含み、
前記第1造形工程は、
前記3Dデータ作成工程で作成した前記3Dデータに基づいて、前記被取付物の設計データにおける前記取付部の形状を補正し、前記設計データに基づいて前記被取付物を造形する、3次元造形物の製造方法。
【請求項3】
前記第1造形工程は、
前記取付部が造形された段階で造形を一時中断され、前記取付工程を実行して前記取付部に前記電子デバイスを取り付けた後、前記被取付物の残りの部分の造形を再開する、請求項1又は請求項2に記載の3次元造形物の製造方法。
【請求項4】
前記第1造形工程は、
前記第1造形工程を終了した段階では、前記電子デバイスを前記第1硬化性樹脂で覆い、前記電子デバイスを前記被取付物に固定する、請求項3に記載の3次元造形物の製造方法。
【請求項5】
前記第1造形工程は、
サポート材を用いて、前記第1硬化性樹脂を硬化した造形物を前記サポート材で支持しながら前記被取付物を造形する、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の3次元造形物の製造方法。
【請求項6】
被取付物に電子デバイスを取り付けた3次元造形物を製造する製造装置であって、
前記電子デバイスを取り付ける取付部を有する前記被取付物を、積層造形法を用いて、第1硬化性樹脂によって造形する第1造形装置と、
積層造形法を用いて、第2硬化性樹脂によって樹脂層を造形し、金属粒子を含む流体によって導体を造形し、前記樹脂層に前記導体を有する前記電子デバイスを造形する第2造形装置と、
前記電子デバイスを前記被取付物の前記取付部に取り付ける取付装置と、
を有し、
前記第2造形装置が用いる前記第2硬化性樹脂は、
前記第1造形装置が用いる前記第1硬化性樹脂に比べて前記導体に対する濡れ性が低い条件、前記第1硬化性樹脂に比べて線膨張係数が低い条件、前記第1硬化性樹脂に比べて前記導体に対する密着性が高い条件のうち、少なくとも一つの条件を満たす、製造装置。
【請求項7】
被取付物に電子デバイスを取り付けた3次元造形物を製造する製造装置であって、
前記電子デバイスを取り付ける取付部を有する前記被取付物を、積層造形法を用いて、第1硬化性樹脂によって造形する第1造形装置と、
積層造形法を用いて、第2硬化性樹脂によって樹脂層を造形し、金属粒子を含む流体によって導体を造形し、前記樹脂層に前記導体を有する前記電子デバイスを造形する第2造形装置と、
前記電子デバイスを前記被取付物の前記取付部に取り付ける取付装置と、
を有し、
前記第2造形装置により造形した前記電子デバイスをスキャンして、前記電子デバイスの3Dデータを作成し、
作成した前記3Dデータに基づいて、前記被取付物の設計データにおける前記取付部の形状を補正し、前記設計データに基づいて前記第1造形装置により前記被取付物を造形する、製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層造形法を用いて3次元造形物を製造する製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導体を有する3次元造形物を、積層造形法により製造する技術が開発されている。例えば、下記特許文献1の3次元造形物の製造方法では、まず、UV硬化性組成物をインクジェットプリンタから吐出した後、吐出したUV硬化性組成物にUVを照射して硬化させている。次に、硬化させたUV硬化性組成物の表面上に、インクジェットプリンタから導電性金属インク組成物を吐出し、吐出した導電性金属インク組成物を加熱することで導電トレースを造形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-015311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載の技術では、導体を有する3次元造形物を製造する。しかしながら、導電トレースのような導体を造形する場合、一般的な造形とは異なり、造形上の制限が生じる場合がある。具体的には、導電トレースの電気的特性などに与える影響を考慮して、UV硬化性組成物、例えば、紫外線硬化樹脂の物性が制限される問題がある。
【0005】
本開示は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、電子デバイスを有する3次元造形物を、積層造形法を用いて製造する場合に、使用する硬化性樹脂の制限を緩和できる3次元造形物の製造方法、及び製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、被取付物に電子デバイスを取り付けた3次元造形物の製造方法であって、前記電子デバイスを取り付ける取付部を有する前記被取付物を、積層造形法を用いて、第1硬化性樹脂によって造形する第1造形工程と、積層造形法を用いて、第2硬化性樹脂によって樹脂層を造形し、金属粒子を含む流体によって導体を造形し、前記樹脂層に前記導体を有する前記電子デバイスを造形する第2造形工程と、前記電子デバイスを前記被取付物の前記取付部に取り付ける取付工程と、を含み、前記第2造形工程の前記第2硬化性樹脂は、前記第1造形工程の前記第1硬化性樹脂に比べて前記導体に対する濡れ性が低い条件、前記第1硬化性樹脂に比べて線膨張係数が低い条件、前記第1硬化性樹脂に比べて前記導体に対する密着性が高い条件のうち、少なくとも一つの条件を満たす、3次元造形物の製造方法を開示する。
また、本開示は、被取付物に電子デバイスを取り付けた3次元造形物の製造方法であって、前記電子デバイスを取り付ける取付部を有する前記被取付物を、積層造形法を用いて、第1硬化性樹脂によって造形する第1造形工程と、積層造形法を用いて、第2硬化性樹脂によって樹脂層を造形し、金属粒子を含む流体によって導体を造形し、前記樹脂層に前記導体を有する前記電子デバイスを造形する第2造形工程と、前記電子デバイスを前記被取付物の前記取付部に取り付ける取付工程と、前記第2造形工程で造形した前記電子デバイスをスキャンして、前記電子デバイスの3Dデータを作成する3Dデータ作成工程と、を含み、前記第1造形工程は、前記3Dデータ作成工程で作成した前記3Dデータに基づいて、前記被取付物の設計データにおける前記取付部の形状を補正し、前記設計データに基づいて前記被取付物を造形する、3次元造形物の製造方法を開示する。
尚、本開示の内容は、3次元造形物の製造方法としての実施に限らず、種々の形態により実施することができる。例えば、本開示の内容は、3次元造形物を製造する製造装置として実施しても有益である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の3次元造形物の製造方法、3次元造形物を製造する製造装置によれば、電子デバイスを、第2造形工程で造形しておき、別の第1造形工程で造形した被取付物に取り付ける。換言すれば、電子デバイスを取り付ける被取付物を、電子デバイスとは別工程で製造することができる。従って、第1製造工程で用いる第1硬化性樹脂は、第2造形工程に用いる第2硬化性樹脂に要求される物性の制限がなくなる。第1硬化性樹脂に要求される物性の制限を緩和でき、第1硬化性樹脂を選択する自由度が向上する。また、第1硬化性樹脂を選択する自由度が向上するため、3次元造形物を製造する製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る電子デバイス製造装置を平面視した状態を模式的に示す平面図である。
図2】制御装置を示すブロック図である。
図3】制御装置を示すブロック図である。
図4】電子デバイス製造装置で製造する造形物を示す図である。
図5】ベース部材の上に製造した電子デバイスを示す図である。
図6】各実施形態の第1造形ユニットと第2造形ユニットの造形方法の違いを示す図である。
図7】造形物の製造工程を示すフローチャートである。
図8】造形物の製造工程を示す図である。
図9】第2実施形態の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1.電子デバイス製造装置の構成)
以下、本開示の内容を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本実施形態の電子デバイス製造装置10を平面視した状態を模式的に示す平面図である。図1に示すように、電子デバイス製造装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット23と、装着ユニット24と、組立ユニット25と、スキャンユニット26と、制御装置27(図2図3参照)を備える。それら搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット23、装着ユニット24、組立ユニット25、スキャンユニット26は、電子デバイス製造装置10のベース28の上に配置されている。ベース28は、平面視において概して長方形状をなしている。以下の説明では、ベース28の長手方向をX軸方向、ベース28の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0010】
電子デバイス製造装置(以下、製造装置と省略する)10は、第1造形ユニット22で造形した被取付物に、第2造形ユニット23及び装着ユニット24で製造した電子デバイスを取り付けた造形物を製造する装置である。製造装置10は、例えば、図4に示すように、人型の被取付物11に電子デバイス12を内蔵した造形物13を製造する。以下の説明では、一例として、造形物として図4に示す造形物13を製造する場合について説明する。
【0011】
まず、図1に示す搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。X軸スライド機構30は、X軸スライドレール34と、X軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。X軸スライド機構30は、電磁モータ38(図2参照)を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36をX軸方向の任意の位置に移動させる。
【0012】
また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール41と、ステージ43とを有している。Y軸スライドレール41は、Y軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。Y軸スライドレール41の一端部は、X軸スライダ36に連結されている。そのため、Y軸スライドレール41は、X軸方向に移動可能とされている。ステージ43は、Y軸スライドレール41によって、Y軸方向にスライド可能に保持されている。Y軸スライド機構32は、電磁モータ39(図2参照)を有しており、電磁モータ39の駆動により、ステージ43をY軸方向の任意の位置に移動させる。これにより、ステージ43は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース28上の任意の位置に移動する。
【0013】
ステージ43は、基台51と、保持装置52と、昇降装置53とを有している。基台51は、平板状に形成され、上面にベース部材55が載置される。保持装置52は、X軸方向における基台51の両側部に設けられている。保持装置52は、基台51に載置されたベース部材55のX軸方向の両縁部を挟むことで、基台51に対してベース部材55を固定的に保持する。また、昇降装置53は、基台51の下方に配設されており、基台51をZ軸方向で昇降させる。
【0014】
第1造形ユニット22は、基台51に載置されたベース部材55の上に被取付物11(図4参照)を造形するユニットであり、第1印刷部61と、硬化部62と、第2印刷部63と、除去部64とを有している。第1印刷部61は、例えば、インクジェット方式により造形を行なうユニットであり、基台51に載置されたベース部材55の上に、インクジェットヘッドから紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する樹脂である。尚、第1印刷部61が紫外線硬化樹脂を吐出する方式は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でも良い。
【0015】
硬化部62は、平坦化装置67(図2参照)と、照射装置68(図2参照)とを有している。平坦化装置67は、第1印刷部61によってベース部材55の上に吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものである。平坦化装置67は、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一にさせる。また、照射装置68は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、ベース部材55の上に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、ベース部材55の上に吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂層を形成することができる。
【0016】
第2印刷部63は、例えば、ベース部材55の上にサポート材料を、インクジェット方式で吐出し、被取付物11を造形するサポート材15(図4参照)を造形する装置である。サポート材料としては、例えば、水、薬品等の特定の液体で溶解する材(ワックス系の材料や樹脂系の材料など)を用いることができる。あるいは、サポート材料としては、熱によって溶融する材料を用いることができる。また、サポート材料としては、紫外線などの光を照射して硬化するもの、熱を加えることで硬化するもの、吐出後に時間の経過にともなって自然と硬化するものなどを用いることができる。例えば、サポート材料を硬化させたサポート材15の一部に沿って、紫外線硬化樹脂を吐出し硬化させることで、サポート材15の形状に沿った被取付物11を造形することができる(図4参照)。そして、サポート材15と被取付物11の一体物から薬品等を用いてサポート材15を除去することで、オーバーハング部(例えば、図4の腕の部分)等を有する被取付物11を造形することが可能である。
【0017】
第2印刷部63は、上記した第1印刷部61と同様に、圧電素子を用いたピエゾ方式によってサポート材料を吐出する構成でも良く、サーマル方式によってサポート材料を吐出する構成でも良い。また、紫外線硬化樹脂、サポート材料、後述する金属インク、導電性樹脂ペースト等を吐出する印刷装置としては、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドに限らず、例えば、1つのノズルを備えたディスペンサーでも良い。また、第1造形ユニット22は、紫外線硬化樹脂を吐出するインクジェットヘッドと、サポート材料を吐出するインクジェットヘッドとして同一のものを使用し、吐出する硬化性粘性流体を切り替えても良い。後述する金属インク、導電性樹脂ペーストについても同様である。
【0018】
また、除去部64は、第2印刷部63によって造形したサポート材15を除去するユニットである。除去部64は、例えば、サポート材15が水に溶解する材料である場合、ステージ43上に造形したサポート材15付きの造形物13を水槽に浸すロボットアームや、サポート材15に対して水を拭きかけるノズル装置を有する。また、除去部64は、例えば、サポート材15が熱により溶融する材料である場合、サポート材15に対して熱を付加するヒータやマイクロ波発生装置などを備える構成でも良い。このため、除去部64の構成は、サポート材料の種類に応じて適宜変更される。
【0019】
図5は、ベース部材55の上に製造した電子デバイス12を示している。図5に示すように、本実施形態の製造装置10は、ベース部材55の上面に、例えば、熱によって剥離可能な剥離フィルム85を貼り付けた状態で、その剥離フィルム85の上に電子デバイス12を製造する。剥離フィルム85は、例えば、所定温度以上まで加熱されることで、ベース部材55から剥離する部材である。剥離フィルム85をベース部材55から剥離させることで、電子デバイス12をベース部材55から分離することができる。尚、ベース部材55と電子デバイス12を分離する方法は、剥離フィルム85を用いる方法に限らない。例えば、ベース部材55と電子デバイス12の間に、図4に示すようなサポート材15を配置し、サポート材15を溶かして分離しても良い。また、剥離フィルム85などの分離する部材を用いずに、ベース部材55の上に直接、電子デバイス12を製造しても良い。
【0020】
図5に示すように、電子デバイス12は、回路基板83に電子部品81が実装されている。図1に示す第2造形ユニット23は、回路基板83を造形するユニットであり、第3印刷部71と、硬化部72と、第4印刷部73と、焼成部74とを有している。以下の説明では、第1造形ユニット22と同様の内容については、その説明を適宜省略する。
【0021】
図5に示すように、回路基板83は、例えば、絶縁層87、絶縁層87の各層に配設された配線89、各層の配線89を互いに接続するスルーホール91、電子部品81を配線89に接続する接続端子93などを備えている。第3印刷部71は、例えば、インクジェット方式によりベース部材55の上に紫外線硬化樹脂を吐出する装置である。硬化部72は、第3印刷部71から吐出された紫外線硬化樹脂を平坦化する平坦化装置101(図2参照)と、第3印刷部71から吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して硬化させる照射装置103(図2参照)とを有している。第2造形ユニット23は、第3印刷部71による吐出、平坦化装置101よる平坦化、照射装置103による硬化を繰り返し実行することで、ベース部材55の上に絶縁層87を造形する。
【0022】
第4印刷部73は、例えば、インクジェットヘッド方式により、ベース部材55の上、絶縁層87の各層の上、絶縁層87の各層に形成されたスルーホール用の穴、絶縁層87の表面などに、金属インクを吐出する装置である。ここでいう金属インクとは、例えば、主成分としてナノメートルサイズの金属(銀など)の微粒子を溶媒中に分散させたものを含み、熱により焼成されることで硬化するものである。金属インクは、例えば、数百ナノメートル以下のサイズの金属ナノ粒子を含んでいる。金属ナノ粒子の表面は、例えば、分散剤によりコーティングされており、溶媒中での凝集が抑制されている。
【0023】
また、第4印刷部73は、例えば、ディスペンサー(図示略)により、絶縁層87の表面や配線89の上等に、導電性樹脂ペーストを吐出する装置である。導電性樹脂ペーストとは、例えば、加熱により硬化する樹脂性の接着材に、マイクロメートルサイズの金属粒子(銀など)が分散されたものである。金属粒子は、例えば、フレーク状とされている。接着剤は、例えば、エポキシ系の樹脂を主成分として含んでいる。導電性樹脂ペーストは、熱を加えられることで硬化して樹脂が収縮し、その樹脂に分散されたフレーク状の金属粒子が互いに接触する。これにより、導電性樹脂ペーストが導電性を発揮する。
【0024】
導電性ペーストは、加熱されることで接着剤(樹脂など)が硬化し、フレーク状の金属同士が接触した状態で硬化する。一方、金属インクは、例えば、加熱によって金属ナノ粒子同士が融着することで一体化した金属となり、金属ナノ粒子同士が接触しているだけの状態に比べて導電率が高くなる。また、導電性樹脂ペーストで形成した導体は、例えば、金属インクで形成した導体に比べて導電率が低い一方、樹脂の硬化により接着力が強く、密着性に優れている。従って、製造装置10は、例えば、導電率の高い金属インクと、密着性の高い導電性樹脂ペーストを使い分けることで用途に合った導体を造形する。製造装置10は、例えば、接着力が要求される接続端子93に導電性樹脂ペーストを用い、導電率を要求される配線89やスルーホール91に金属インクを用いる。
【0025】
尚、第4印刷部73は、インクジェットヘッドやディスペンサー以外の方法で、金属インクや導電性樹脂ペーストを吐出・塗布等しても良い。金属インクや導電性樹脂ペーストに含まれる金属の種類は、銀に限らず、銅、金等でも良く、複数種類でも良い。また、第3印刷部71は、金属インク又は導電性樹脂ペーストのどちらか一方のみを使用する構成でも良い。
【0026】
焼成部74は、例えば、赤外線ヒータにより、第4印刷部73から吐出された金属インクや導電性樹脂ペーストを加熱する装置である。金属インクや導電性樹脂ペーストは、赤外線ヒータから熱を付与されることで焼成され、配線89等を形成する。ここでいう焼成とは、例えば、金属インクに熱を付与することによって、溶媒の気化や金属ナノ粒子の保護膜、つまり、分散剤の分解等が行われ、金属ナノ粒子が接触又は融着することで、導電率が高くなる現象である。あるいは、焼成とは、導電性樹脂ペーストに熱を加えることで、樹脂を収縮させ、樹脂に分散されたフレーク状の金属粒子を互いに接触して固定させる現象である。尚、金属インクや導電性樹脂ペーストを加熱する装置は、赤外線ヒータに限らない。例えば、製造装置10は、金属インクや導電性樹脂ペーストを加熱する装置として、赤外線ランプ、レーザ照射装置、あるいは金属インクや導電性樹脂ペーストを炉内に入れて加熱する電気炉を備えても良い。
【0027】
また、装着ユニット24は、基台51に載置されたベース部材55の上に、電子部品81を配置するユニットであり、供給部105と、装着部106とを有している。供給部105は、テーピング化された電子部品を1つずつ送り出すテープフィーダ107(図3参照)を複数有しており、各供給位置において、電子部品81を供給する。電子部品81は、例えば、温度センサ等のセンサ素子である。尚、供給部105は、テープフィーダ107から電子部品81を供給する装置に限らず、トレイから電子部品81をピックアップして供給するトレイ型の供給装置でもよい。
【0028】
装着部106は、装着ヘッド108(図3参照)と、移動装置109(図3参照)とを有している。装着ヘッド108は、電子部品81を吸着保持するための吸着ノズルを有している。また、移動装置109は、テープフィーダ107の供給位置と、基台51に載置されたベース部材55との間で、装着ヘッド108を移動させる。これにより、装着部106は、装着ヘッド108により電子部品81を保持し、装着ヘッド108によって保持した電子部品81を、ベース部材55の上に配置する。
【0029】
組立ユニット25は、被取付物11の取付部11A(図4参照)に電子デバイス12を取り付ける装置である。組立ユニット25は、例えば、電子デバイス12を把持するロボットアーム111を備えている。組立ユニット25は、例えば、第2造形ユニット23や装着ユニット24によってベース部材55の上に製造した電子デバイス12を、ロボットアーム111によって把持してベース部材55から取り外す。また、組立ユニット25は、電子デバイス12をロボットアーム111により把持して被取付物11に取り付ける。
【0030】
スキャンユニット26は、3Dデータを作成するための装置である。スキャンユニット26は、例えば、可動式のカメラを備えており、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各方向から電子デバイス12等を撮像する。製造装置10は、スキャンユニット26で撮像した撮像データに基づいて、電子デバイス12の3Dデータ112を作成し、製造装置10の記憶装置119へ記憶する(図3参照)。尚、3Dデータ112を作成するための方法は、カメラで撮像する方法に限らず、赤外線によるスキャンなど、他の方法を用いても良い。また、3Dデータ112を作成する対象は、電子デバイス12に限らず、被取付物11でも良い。また、製造装置10は、スキャンユニット26の撮像データを、3Dデータ112の作成以外の目的で使用しても良い。例えば、製造装置10は、スキャンユニット26の撮像データに基づいて、造形物13の検査を実行しても良い。
【0031】
次に、製造装置10の制御装置27の構成について説明する。図2及び図3に示すように、制御装置27は、コントローラ117、複数の駆動回路118、記憶装置119を備えている。複数の駆動回路118は、上記電磁モータ38,39、保持装置52、昇降装置53、第1造形ユニット22、第2造形ユニット23、装着ユニット24、組立ユニット25、スキャンユニット26に接続されている。
【0032】
コントローラ117は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路118に接続されている。記憶装置119は、RAM、ROM、ハードディスク等を備えており、上記した3Dデータ112を記憶するのに用いられる。また、記憶装置119には、制御プログラム113、設計データ114が記憶されている。制御プログラム113は、製造装置10の制御を行うプログラムである。コントローラ117は、制御プログラム113をCPUで実行することで、搬送装置20、第1造形ユニット22等の動作を制御可能となっている。以下の説明では、コントローラ117が、制御プログラム113を実行して各装置を制御することを、単に「装置が」と記載する場合がある。例えば、「コントローラ117がステージ43を移動させる」とは、「コントローラ117が、CPUで制御プログラム113を実行し、駆動回路118を介して搬送装置20の動作を制御して、搬送装置20の動作によってステージ43を移動させる」ことを意味している。
【0033】
設計データ114は、完成品の造形物13(電子デバイス12や被取付物11)をスライスした各層の3Dデータである。コントローラ117は、記憶装置119の設計データ114に基づいて紫外線硬化樹脂の吐出位置等を判断し、造形物13を造形する。また、コントローラ117は、設計データ114に基づいて電子部品81を配置する層や位置を判断し、電子部品81を回路基板83に実装する。
【0034】
(2.第1造形ユニット22と第2造形ユニット23の造形方法の違い)
上記したように、本実施形態の製造装置10は、第2造形ユニット23で回路基板83を造形し、第1造形ユニット22において電子デバイス12を取り付ける被取付物11を造形する。配線89、スルーホール91、接続端子93のような導体を造形する場合、造形上の制限が生じる。
【0035】
具体的には、図6は、各実施形態の第1造形ユニット22と第2造形ユニット23の造形方法の違いを示している。例えば、第3印刷部71が使用する紫外線硬化樹脂は、第1印刷部61が使用する紫外線硬化樹脂に比べて導体に対する濡れ性が低くなっている。ここでいう濡れ性とは、例えば、固体の表面での液体の親和性を示すものである。そして、濡れ性が高くなると親和性が良くなり、液体は固体の表面で濡れ広がり易くなる。一方、濡れ性が低くなると親和性が悪くなり、液体は固体の表面で濡れ広がり難くなる。仮に、紫外線硬化樹脂の濡れ性が高い場合、配線89、スルーホール91、接続端子93等の上に吐出された紫外線硬化樹脂が、設計データ114で規定された位置を越えて塗れ広がってしまう虞がある。その結果、配線89の導通性などが低下し、電気的特性の低下を招く虞がある。このため、第3印刷部71が使用する紫外線硬化樹脂として、より濡れ性の低い樹脂を使用する。これにより、紫外線硬化樹脂の塗れ広がりを抑え、設計データ114により近い形で造形でき、導体の電気的特性を向上できる。
【0036】
また、例えば、第2造形ユニット23の第3印刷部71が使用する紫外線硬化樹脂の線膨張係数は、第1造形ユニット22の第1印刷部61が使用する紫外線硬化樹脂の線膨張係数に比べて小さくなっている。配線89や接続端子93の製造では、金属インクや導電性樹脂ペーストを焼成する際に、金属インク等の下の絶縁層87にも熱が加わる。絶縁層87は、加熱されることで、絶縁層87を構成する紫外線硬化樹脂の線膨張係数に応じて膨張する。絶縁層87が膨張することで、絶縁層87の上に形成される配線89等の一部が膨れる、あるいは割れる虞がある。そこで、例えば、第3印刷部71が使用する紫外線硬化樹脂として、より線膨張係数が小さい樹脂を使用する。あるいは、例えば、第3印刷部71が使用する紫外線硬化樹脂として、焼成部74によって焼成する際の加熱温度に比べてガラス転移点がより高い樹脂を使用しても良い。これにより、焼成する際の絶縁層87の膨張を抑え、配線89の割れ等を抑制することができる。
【0037】
また、例えば、第3印刷部71が使用する紫外線硬化樹脂は、第1印刷部61が使用する紫外線硬化樹脂に比べて導体に対する密着性が高くなっている。ここでいう密着性とは、例えば、導体に対する紫外線硬化樹脂の密着力の高さを示すものである。密着性は、例えば、配線89などの導体の上に紫外線硬化樹脂の液滴を吐出した場合に、吐出直後の導体に対する密着力の程度である。この場合、例えば、吐出後から所定時間の密着力で密着性を評価することができる。あるいは、密着性とは、導体の上に紫外線硬化樹脂の液滴を吐出し硬化した後の導体に対する絶縁層87の密着力の程度である。この場合、例えば、紫外線で硬化した後から所定時間の密着力で密着性を評価することができる。また、密着性とは、絶縁層87に対する金属インクや導電性樹脂ペーストの密着力でも評価することができる。即ち、本開示の密着性とは、紫外線硬化樹脂(絶縁層87)と、金属インク、導電性樹脂ペースト(導体)との密着力の高さである。
【0038】
密着力の低い紫外線硬化樹脂を用いると、絶縁層87の上に配設した導体や、絶縁層87内に配設した導体が絶縁層87から剥離する可能性がある。その結果、回路基板83の一部に隙間が形成される可能性や、回路基板83の一部が剥離してしまう可能性がある。このため、第3印刷部71が使用する紫外線硬化樹脂として、より密着性の高い樹脂を使用する。これにより、導体と絶縁層87との密着性を高め、導体や絶縁層87の剥離を抑制することができる。
【0039】
一方、第1印刷部61が使用する紫外線硬化樹脂としては、上記したような線膨張係数、ガラス転移点、濡れ性、密着性などの制限を設けることなく、様々な樹脂を広く採用することができる。低い線膨張係数、高いガラス転移点、低い濡れ性、高い密着性などを要求すればするほど、使用できる紫外線硬化樹脂の価格は相対的に高くなる可能性がある。低い線膨張係数等の紫外線硬化樹脂を造形物13の全体に使用すると、造形物13の製造コストの増大を招く。そこで、本実施形態の製造装置10は、第1造形ユニット22と第2造形ユニット23で使用する紫外線硬化樹脂として、物性の異なる紫外線硬化樹脂を用いる。
【0040】
従って、本実施形態の電子デバイス12に用いる紫外線硬化樹脂(本開示の第2硬化性樹脂の一例)は、被取付物11の造形に用いる紫外線硬化樹脂(本開示の第1硬化性樹脂の一例)に比べて配線89や接続端子93といった導体に対する濡れ性が低い条件、電子デバイス12に用いる紫外線硬化樹脂に比べて線膨張係数が低い条件、及び電子デバイス12に用いる紫外線硬化樹脂に比べて密着性が高い条件を満たしている。
【0041】
金属インクや導電性樹脂ペーストで造形した導体の上に、紫外線硬化樹脂を吐出等した場合、紫外線硬化樹脂が塗れ広がることで、導体の導通性が悪化する虞がある。このため、設計データ114により近い位置までで塗れ広がりを抑えるために、電子デバイス12に用いる紫外線硬化樹脂には、低い濡れ性が要求される。また、金属インク等を加熱する際に絶縁層87が膨張すると、導体に割れや切断が発生する可能性がある。また、紫外線硬化樹脂の導体に対する密着性が低いと、導体が絶縁層87から剥離してしまう可能性がある。このため、電子デバイス12に用いる紫外線硬化樹脂には、低い線膨張係数や高い密着性が要求される。後述するように、回路基板83の製造工程を、被取付物11の製造工程と分けることで、被取付物11に用いる紫外線硬化樹脂に対する上記した制限を緩和することができる。
【0042】
尚、電子デバイス12に用いる紫外線硬化樹脂は、上記した3つの条件のうち、少なくとも一つの条件を満たす紫外線硬化樹脂でも良く、3つの条件とも満たさなくとも良い。例えば、被取付物11に用いる紫外線硬化樹脂は、電子デバイス12に用いる紫外線硬化樹脂に比べて、色彩の変更が容易である条件や、造形速度が速い条件などを満たす樹脂でも良い。従って、被取付物11に用いる紫外線硬化樹脂は、被取付物11が一般的な樹脂造形物であり、導体や電子部品81を備えていないため、選択の自由度高い。
【0043】
また、上記したように配線89等の導体の造形では、焼成部74による焼成処理において金属インク等の温度が上昇する。その結果、仮に、サポート材15で支持した状態で導体の焼成を実行するとサポート材15が溶けてしまう虞がある。このような場合、第2造形ユニット23の造形では、サポート材15を使用できない制限が発生する。そこで、本実施形態の製造装置10では、第2造形ユニット23における造形ではサポート材15を使用せず、第1造形ユニット22における造形でサポート材15を使用する。これにより、サポート材15を用いてオーバーハング部等を造形しつつ、積層造形法で導体を造形した造形物13を製造することができる。
【0044】
(3.製造装置の動作)
次に、図4に示す電子デバイス12を取り付けた造形物13の製造工程について説明する。図7は、造形物13の製造工程を示すフローチャートである。尚、図7に示す製造工程の各工程の内容、順番等は、一例である。また、記憶装置119の設計データ114には、例えば、完成時の造形物13をスライスした各層の3Dデータが設定されている。コントローラ117は、CPUで制御プログラム113を実行し、設計データ114に基づいて第1造形ユニット22等を制御することで、図7に示す制御を実行する。
【0045】
まず、図7のステップ(以下、単にSと記載する)11において、コントローラ117は、電子デバイス12の製造を実行する。コントローラ117は、ステージ43の基台51にベース部材55がセットされると、ステージ43を移動させつつ、ベース部材55の上に電子デバイス12を製造する。コントローラ117は、搬送装置20を制御して、ステージ43を第2造形ユニット23や装着ユニット24へ移動させる。第2造形ユニット23は、コントローラ117の制御に基づいて第3印刷部71から紫外線硬化樹脂を吐出し、硬化部72で硬化することで絶縁層87を造形する。また、第2造形ユニット23は、絶縁層87を造形する過程で、第4印刷部73から金属インクや導電性樹脂ペーストを吐出し焼成部74で焼成することで、配線89等の導体を造形する。図5に示すように、コントローラ117は、ベース部材55に貼り付けられた剥離フィルム85の上に回路基板83を造形する。尚、剥離フィルム85の貼り付けは、人が手作業で実行しても良く、組立ユニット25のロボットアーム111によって実行しても良い。
【0046】
また、装着ユニット24は、上記した回路基板83の造形において、電子部品81の装着を実行する。コントローラ117は、設計データ114に基づいて、例えば、接続端子93の位置に合せて第4印刷部73から導電性樹脂ペーストを吐出した後、装着ユニット24によって電子部品81を装着する。コントローラ117は、図5に示すように、電子部品81の端子82が接続端子93を介して配線89と接続されるように、装着部106を制御して電子部品81を装着させる。コントローラ117は、電子部品81を装着した後、焼成部74によって導電性樹脂ペーストを焼成することで接続端子93を造形し、電子部品81を回路基板83に実装する。コントローラ117は、上記した各工程を適宜実行しながら図5に示す電子デバイス12を製造する。
【0047】
コントローラ117は、S11で電子デバイス12の製造を終了させると、ステージ43をスキャンユニット26へ移動させ、製造した電子デバイス12のスキャンを実行する(S13)。コントローラ117は、ベース部材55の上に製造した電子デバイス12をスキャンユニット26によって撮像する。コントローラ117は、スキャンユニット26の撮像データに基づいて、電子デバイス12の3Dデータ112を作成し、記憶装置119へ記憶する(S13)。
【0048】
ここで、積層造形では、紫外線硬化樹脂などの造形に用いる媒体の膨張や収縮が発生することで、実際に造形される造形物の大きさや形状が、設計データ114と異なる可能性がある。例えば、実際に造形される造形物は、設計データ114に比べて数十μmほど膨張又は収縮する。電子デバイス12の大きさや形状に誤差が生じると、電子デバイス12を被取付物11の取付部11Aに取り付ける際に、電子デバイス12が取付部11Aと干渉する、あるいは電子デバイス12と取付部11Aの内壁との間に隙間が形成される等の不具合が発生する。
【0049】
コントローラ117は、S13を実行した後、S13で作成した3Dデータ112に基づいて、設計データ114の取付部11Aの大きさや形状を補正する(S15)。これにより、実際に製造された電子デバイス12の大きさや形状に合った、即ち、造形上の誤差を補正した取付部11Aの設計データ114に補正することができる。コントローラ117は、例えば、3Dデータ112の形状に合わせた取付部11Aとなるように、設計データ114における取付部11Aの造形位置の値・吐出量等を補正する(S15)。
【0050】
尚、電子デバイス12の造形と同様に、被取付物11の造形においても紫外線硬化樹脂の膨張や収縮が発生する可能性がある。このため、コントローラ117は、被取付物11自体の設計誤差に基づいて、被取付物11の設計データ114を補正しても良い。例えば、コントローラ117は、電子デバイス12の膨張量や収縮量、即ち、電子デバイス12の造形上の誤差と同等の量だけ、被取付物11の設計データ114を補正しても良い。例えば、電子デバイス12が設計データ114よりも10μmだけ膨張していた場合、取付部11Aも10μmだけ膨張すると想定し、取付部11Aの穴を20μmだけ大きくしても良い。即ち、電子デバイス12と同様に取付部11Aも膨張すると想定して、2倍の量だけ取付部11Aの形状を補正しても良い。
【0051】
あるいは、コントローラ117は、電子デバイス12と同様に、被取付物11を一度造形してスキャンし、被取付物11の3Dデータ112を作成して設計データ114を補正しても良い。また、コントローラ117は、電子デバイス12をスキャンして、次に製造する電子デバイス12の設計データ114を補正しても良い。また、コントローラ117は、電子デバイス12をスキャンせずに、先に被取付物11を造形して被取付物11をスキャンし、電子デバイス12の設計データ114を補正しても良い。
【0052】
コントローラ117は、S15を実行した後、ステージ43を第1造形ユニット22に移動させ、被取付物11の造形を開始する(S17)。コントローラ117は、例えば、電子デバイス12を造形したステージ43を焼成部74に移動させ、焼成部74によって剥離フィルム85に熱を加えて剥離させる。コントローラ117は、ステージ43を組立ユニット25に移動させ、ベース部材55から電子デバイス12や剥離フィルム85を取り外し、組立ユニット25の作業台(図示略)等に、取り外した電子デバイス12を配置する。コントローラ117は、剥離フィルム85及び電子デバイス12を取り除いたベース部材55の上に、被取付物11を造形する。尚、コントローラ117は、保持装置52の固定を解除し、電子デバイス12を載せたベース部材55ごとステージ43から取り外し、新たなベース部材55をステージ43に取り付けて被取付物11を造形しても良い。
【0053】
図8は、造形物13の造形工程を示している。図8に示すように、コントローラ117は、例えば、第2印刷部63を制御し、第2印刷部63のインクジェットヘッド121からベース部材55の上にサポート材料122を吐出し、サポート材料122を硬化させてサポート材15を造形する。サポート材15には、被取付物11を造形するための型が造形される。次に、コントローラ117は、第1印刷部61のインクジェット125からサポート材15の上に紫外線硬化樹脂126を吐出する。この紫外線硬化樹脂126は、例えば、上記した造形物13の絶縁層87を造形した紫外線硬化樹脂に比べて線膨張係数が高い樹脂、濡れ性が高い樹脂、あるいは密着性が低い樹脂等である。コントローラ117は、第1印刷部61による紫外線硬化樹脂126の吐出と、硬化部62による紫外線硬化樹脂126の硬化を繰り返し実行し、被取付物11を造形する。
【0054】
一方、図7に示すように、コントローラ117は、S17を実行し、被取付物11の造形を開始した後、取付部11Aの造形が完了したか否かを判断する(S19)。コントローラ117は、取付部11Aの造形が完了するまでの間(S19:NO)、被取付物11の造形を継続する。コントローラ117は、取付部11Aの造形が完了すると(S19:YES)、被取付物11の造形を中断する(S21)。
【0055】
従って、コントローラ117は、S11で製造した電子デバイス12をスキャンし、電子デバイス12の3Dデータ112を作成する(S13)。そして、コントローラ117は、作成した3Dデータ112に基づいて、被取付物11の設計データ114における取付部11Aの形状を補正し、補正した設計データ114に基づいて被取付物11を造形する(S17)。
【0056】
積層造形法で造形する場合、設計データ114と、実際に造形される造形物13との間に、形状や大きさの誤差が生じる。そこで、実際に造形した電子デバイス12をスキャンした3Dデータ112に基づいて、設計データ114の取付部11Aの形状を補正する。これにより、取付部11Aの形状を、実際に造形した電子デバイス12の形状に合わせることができ、電子デバイス12を取付部11Aに干渉等させずに取り付けることができる。
【0057】
コントローラ117は、ステージ43を組立ユニット25に移動させ、取付部11Aに電子デバイス12を取り付ける作業を実行する(S23)。図8に示すように、コントローラ117は、組立ユニット25のロボットアーム111を制御して、S11で製造した電子デバイス12を取付部11Aに取り付ける。例えば、ロボットアーム111は、電子デバイス12を吸着ノズルで吸着して取付部11A内に配置した後、アームにより電子デバイス12を取付部11A内に押し込んで、電子デバイス12の取付を実行する。
【0058】
コントローラ117は、S23で電子デバイス12の取付を完了させると、ステージ43を、再度、第1造形ユニット22に移動させ、被取付物11の造形を再開する(S25)。図8に示すように、例えば、コントローラ117は、第1印刷部61のインクジェット125から、取付部11Aに取り付けた電子デバイス12の上に紫外線硬化樹脂126を吐出して硬化させる。コントローラ117は、被取付物11の造形が完了するまで、第1造形ユニット22による造形を実行する(S25)。
【0059】
そして、コントローラ117は、被取付物11の造形が全て完了すると、ステージ43を除去部64へ移動させ、サポート材15の除去を実行する(S27)。例えば、除去部64は、ベース部材55の上に完成した造形物13及びサポート材15を、水や薬品の水槽に入れてサポート材15を除去する。これにより、電子デバイス12を取り付けた造形物13を製造することができる。
【0060】
尚、上記した製造方法は、一例である。例えば、製造装置10は、2つの搬送装置20を備え、電子デバイス12の製造と、被取付物11の製造を並行して実施しても良い。また、製造装置10は、造形物13を製造するごとに電子デバイス12をスキャンしても良く、3Dデータ112に基づいて設計データ114を一度補正した後は、その設計データ114を用いてその後に造形する被取付物11(取付部11A)を造形しても良い。
【0061】
(4.第2実施形態)
また、上記第1実施形態では、第1造形ユニット22と第2造形ユニット23とは、積層造形法として、ともにインクジェット方を用いたがこれに限らない。例えば、積層造形法としては、光造形法(SLA)、熱溶融積層法(FDM)、粉末焼結積層造形法(SLS)などを採用することができる。以下の説明では、第2実施形態として、第1造形ユニット22で引き下げ式の光造形法を用いる場合について説明する(図6参照)。
【0062】
図9は、第2実施形態の造形物13の製造工程を示している。第2実施形態の造形物13の構造は、第1実施形態の造形物13と同一である。図9に示すように、第2実施形態では、例えば、液体状の紫外線硬化樹脂131を溜めた浴槽133内でベース部材55を下降させながら被取付物11の造形を実行する。浴槽133内には、例えば、ベース部材55を載せて昇降させる昇降装置135が設けられている。コントローラ117は、露光装置137から浴槽133内の紫外線硬化樹脂131へ紫外線を照射して硬化させる。露光装置137は、例えば、光源、ポリゴンミラー、反射鏡等を備え、浴槽133内に貯留した紫外線硬化樹脂131の任意の位置に紫外線を照射することができる。
【0063】
コントローラ117は、第2印刷部63によりベース部材55の上にサポート材15を造形した後、サポート材15を造形したベース部材55を昇降装置135に配置する。尚、ベース部材55を昇降装置135に配置する作業は、人が手作業で実行しても良く、ロボットアーム等によりコントローラ117が実行しても良い。コントローラ117は、ベース部材55を昇降装置135にセットすると、露光装置137を制御して1層分の紫外線硬化樹脂131を硬化するごとに、昇降装置135を制御してベース部材55を下降させ、硬化した紫外線硬化樹脂131を積層して被取付物11を造形する(S31)。コントローラ117は、取付部11Aの造形が完了するまで、露光装置137による硬化作業や昇降装置135による下降作業を継続する。尚、コントローラ117は、上記した第1実施形態と同様に、予め造形した電子デバイス12をスキャンした3Dデータ112に基づいて、取付部11Aの設計データ114を補正しても良い。
【0064】
コントローラ117は、取付部11Aの造形が完了すると、被取付物11の造形作業を中断し、電子デバイス12を取付部11Aに取り付ける(S33)。電子デバイス12を取り付ける作業は、人が手作業で実施しても良く、第1実施形態と同様に、ロボットアーム111等により実行しても良い。そして、コントローラ117は、電子デバイス12の取付作業が完了すると、露光装置137による硬化作業を再開し、被取付物11の造形を最後まで実行する(S35)。このような光造形法を用いた場合でも、被取付物11の造形工程と、電子デバイス12の造形工程を分けることで、浴槽133に貯留させる紫外線硬化樹脂131に要求される物性の制限を緩和することができる。
【0065】
従って、上記した各実施形態では、被取付物11の造形において、取付部11Aが造形された段階で造形を一時中断し、取付部11Aに電子デバイス12を取り付けた後、被取付物11の残りの部分の造形を再開する。これによれば、造形物13のうち、電子デバイス12を除く部分(被取付物11)を、1つの造形工程で造形することができる。被取付物11の設計データ114の作成や、被取付物11の造形を比較的容易に実施することができる。
【0066】
また、被取付物11の造形を全て終了した段階では、電子デバイス12を紫外線硬化樹脂126,131で覆い、電子デバイス12を被取付物11に内蔵して固定する。これによれば、電子デバイス12を被取付物11に固定する造形物13を、被取付物11を造形する紫外線硬化樹脂に対する制限を緩和して製造することができる。
【0067】
また、被取付物11の造形では、サポート材15を用いて、紫外線硬化樹脂126,131を硬化した造形物をサポート材15で支持しながら被取付物11を造形している。サポート材15の中には、金属インク等を焼成する加熱温度で溶けてしまうものが存在する。このため、被取付物11の取付部11Aに、電子デバイス12を直接造形しようとすると、焼成時にサポート材15が溶けてしまう可能性がある。その結果、造形できる被取付物11の形状が制限される虞がある。これに対し、被取付物11の造形工程と、電子デバイス12の造形工程に分けることで、サポート材15を使用しながら被取付物11を造形でき、被取付物11の形状の自由度を向上できる。
【0068】
因みに、上記各実施例において、電子デバイス製造装置10は、製造装置の一例である。造形物13は、3次元造形物の一例である。第1造形ユニット22は、第1造形装置の一例である。第2造形ユニット23は、第2造形装置の一例である。組立ユニット25は、取付装置の一例である。絶縁層87は、樹脂層の一例である。配線89、スルーホール91、接続端子93は、導体の一例である。紫外線硬化樹脂126,131は、第1硬化性樹脂の一例である。S11は、第2造形工程の一例である。S17、S25は、第1造形工程の一例である。S23は、取付工程の一例である。金属インク、導電性樹脂ペーストは、金属粒子を含む流体の一例である。S13は、3Dデータ作成工程の一例である。
【0069】
以上、上記した各実施形態によれば以下の効果を奏する。
実施形態のコントローラ117は、紫外線硬化樹脂126,131とは異なる物性の紫外線硬化樹脂によって絶縁層87を造形し、金属インクや導電性樹脂ペーストによって配線89等を造形し、電子デバイス12を造形する(S11)。また、コントローラ117は、取付部11Aを有する被取付物11を、紫外線硬化樹脂126,131によって造形する(S17、S25、S31、S35)。そして、コントローラ117は、電子デバイス12を被取付物11の取付部11Aに取り付ける(S23)。
【0070】
これによれば、電子デバイス12を、S11で造形しておき、別の工程(S17、S25)で造形した被取付物11に取り付ける。換言すれば、電子デバイス12を取り付ける被取付物11を、電子デバイス12とは別工程で造形することができる。従って、S17等で用いる紫外線硬化樹脂126,131は、S11で用いる紫外線硬化樹脂に要求される物性の制限がなくなる。紫外線硬化樹脂126,131に要求される物性の制限を緩和でき、紫外線硬化樹脂126,131を選択する自由度が向上する。また、紫外線硬化樹脂126,131を選択する自由度が向上するため、造形物13を製造する製造コストを抑制することができる。
【0071】
(5.その他)
尚、本開示は、上記各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記した製造装置10の構成は、一例である。被取付物11を造形する造形装置と、電子デバイス12を製造する製造装置とは、別々の装置でも良い。また、製造装置10は、被取付物11を造形するステージ43(搬送装置20)とは別に、電子デバイス12を製造するための搬送装置を備えても良い。そして、製造装置10は、別々のステージ43に、被取付物11と電子デバイス12を造形等する作業を並列に実行しても良い。
また、被取付物11に対する電子デバイス12の取付を、人が手作業で実施しても良い。
図4に示す造形物13の構造等は一例である。例えば、被取付物11は、人型以外の形でも良い。造形物13は、2以上の複数個の電子デバイス12を備えても良い。電子デバイス12は、電子部品81を備えない構成でも良い。
また、製造装置10は、硬化部62又は硬化部72の一方を備える構成でも良い。即ち、製造装置10は、共用できる装置を1つだけ備える構成でも良い。例えば、サポート材15を熱で溶かす場合、製造装置10は、焼成部74によってサポート材15を溶かしても良い。この場合、製造装置10は、除去部64を備えなくとも良い。
第1印刷部61の紫外線硬化樹脂と、第3印刷部71の紫外線硬化樹脂は、同じ物性の紫外線硬化樹脂でも良い。
【0072】
また、上記実施例では、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化樹脂が採用されているが、熱により硬化する熱硬化樹脂等の種々の硬化性樹脂を採用することが可能である。
また、本開示における3次元積層造形の方法としては、インクジェット方式や光造形法(SL:Stereo Lithography)に限らず、例えば、熱溶解積層法(FDM:Fused Deposition Molding)などの他の方法を採用できる。
【符号の説明】
【0073】
10 電子デバイス製造装置(製造装置)、11 被取付物、11A 取付部、12 電子デバイス、13 造形物(3次元造形物)、15 サポート材、22 第1造形ユニット(第1造形装置)、23 第2造形ユニット(第2造形装置)、25 組立ユニット(取付装置)、87 絶縁層(樹脂層)、89 配線(導体)、91 スルーホール(導体)、93 接続端子(導体)、112 3Dデータ、114 設計データ、126,131 紫外線硬化樹脂(第1硬化性樹脂)。
図1
図2
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図9