(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】吸着ノズル、部品移載装置および吸着ノズルの姿勢制御方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
H05K13/04 A
(21)【出願番号】P 2022567966
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2020046024
(87)【国際公開番号】W WO2022123720
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】平野 智太
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-093248(JP,A)
【文献】特開2008-300598(JP,A)
【文献】国際公開第2017/029750(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部で部品を吸着する軸状のノズル部材と、
前記ノズル部材の軸線と平行なノズル突出方向に前記ノズル部材を摺動自在に保持するホルダ部材と、
前記ノズル突出方向に前記ノズル部材を摺動させて前記ノズル部材の前記先端部を前記ホルダ部材から突出させるための付勢力を発生する付勢部材と、
前記付勢力により前記ホルダ部材から突出する前記ノズル部材を係止して前記ノズル部材の前記先端部を突出限界位置に位置決めする係止部と、を備え、
前記係止部は、前記軸線に対して非対称な第1係止位置および第2係止位置で前記ノズル部材を係止することで、前記軸線に対する前記第1係止位置および前記第2係止位置の相対関係により一義的に決まる回転方向において、前記付勢力により前記ノズル突出方向に突出する前記ノズル部材に対して回転モーメントを与えることを特徴とする吸着ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の吸着ノズルであって、
前記ノズル部材は、前記ノズル突出方向と平行に延設される第1係合部位および第2係合部位を有し、
前記係止部は、前記第1係合部位および前記第2係合部位と係合しながら前記ノズル突出方向に前記ノズル部材を摺動自在に支持することで、前記ノズル部材が前記軸線まわりに回転するのを規制する吸着ノズル。
【請求項3】
請求項2に記載の吸着ノズルであって、
前記ノズル部材は、前記先端部につながる吸引経路が内部に設けられた中空構造を有し、
前記第1係合部位および前記第2係合部位は、前記ノズル部材の側壁に対し、それぞれ前記ノズル突出方向と平行に延設された第1長穴および第2長穴であり、
前記係止部は、前記第1長穴、前記吸引経路および前記第2長穴を貫通しながら前記ホルダ部材に取り付けられる回転規制ピンであり、
前記第1長穴、前記第2長穴および前記回転規制ピンが前記軸線と直交する直交方向の一方側に偏って配置されている吸着ノズル。
【請求項4】
請求項2に記載の吸着ノズルであって、
前記ノズル部材は、前記先端部につながる吸引経路が内部に設けられた中空構造を有し、
前記第1係合部位および前記第2係合部位は、前記ノズル部材の側壁に対し、それぞれ前記ノズル突出方向と平行に延設された第1長穴および第2長穴であり、
前記係止部は、前記第1長穴、前記吸引経路および前記第2長穴を貫通しながら前記ホルダ部材に取り付けられる回転規制ピンであり、
前記第1長穴および前記第2長穴が前記軸線を挟んで対向して設けられ、
前記ノズル部材の前記先端部が前記ホルダ部材から前記ノズル突出方向に突出したときに、前記ノズル突出方向と反対の反突出方向において、前記第1長穴と前記回転規制ピンの第1係止部位とが係合して形成される前記第1係止位置と、前記第2長穴と前記回転規制ピンの第2係止部位とが係合して形成される前記第2係止位置とが相互に異なっている吸着ノズル。
【請求項5】
請求項4に記載の吸着ノズルであって、
前記回転規制ピンは、前記軸線と直交する直交方向に延設されるとともに、前記第1係止部位の外径と前記第2係止部位の外径とが同一であるとなるように仕上げられ、
前記反突出方向において前記第1長穴の内端面の位置と前記第2長穴の内端面の位置とが異なっている吸着ノズル。
【請求項6】
請求項4に記載の吸着ノズルであって、
前記反突出方向における前記第1長穴の内端面の位置と前記第2長穴の内端面の位置とを結んだ仮想線に対して前記回転規制ピンの軸線が傾斜している吸着ノズル。
【請求項7】
請求項4に記載の吸着ノズルであって、
前記反突出方向において前記第1長穴の内端面の位置と前記第2長穴の内端面の位置とは同一である一方、
前記第1係止部位の外径と、前記第2係止部位の外径とが異なっている吸着ノズル。
【請求項8】
請求項2に記載の吸着ノズルであって、
前記第1係合部位および前記第2係合部位は、それぞれ前記軸線と平行に前記ノズル部材の側壁に延設された第1溝および第2溝であり、
前記係止部は、
その一部が前記第1溝に入り込んだ状態で前記ノズル部材に対して前記ノズル突出方向に相対的に移動可能に前記ホルダ部材に取り付けられる第1回転規制部材と、
その一部が前記第2溝に入り込んだ状態で前記第2溝と係合しながら前記ノズル部材に対して前記ノズル突出方向に相対的に移動可能に前記ホルダ部材に取り付けられる第2回転規制部材とを有し、
前記第1溝および前記第2溝が前記軸線を挟んで対向して設けられ、
前記ノズル部材の前記先端部が前記ホルダ部材から前記ノズル突出方向に突出したときに、前記ノズル突出方向と反対の反突出方向において、
前記第1回転規制部材のうち前記第1溝に入り込んだ第1部位が前記第1溝と係合して形成される前記第1係止位置と、
前記第2回転規制部材のうち前記第2溝に入り込んだ第2部位が前記第2溝と係合して形成される前記第2係止位置とが相互に異なっている吸着ノズル。
【請求項9】
請求項8に記載の吸着ノズルであって、
前記第1回転規制部材および前記第2回転規制部材は前記ノズル突出方向において同一位置に配置され、
前記反突出方向において前記第1溝の内端面の位置と前記第2溝の内端面の位置とが相互に異なっている吸着ノズル。
【請求項10】
請求項8に記載の吸着ノズルであって、
前記反突出方向における前記第1溝の内端面の位置と前記第2溝の内端面の位置とを結んだ第1仮想線と、前記第1回転規制部材
の前記第1部位と前記第2回転規制部材
の前記第2部位とを結んだ
第2仮想線が交差するように、前記第1回転規制部材および前記第2回転規制部材が配置される吸着ノズル。
【請求項11】
請求項8に記載の吸着ノズルであって、
前記反突出方向において前記第1溝の内端面の位置と前記第2溝の内端面の位置とは同一である一方、
前記第1回転規制部材の外径および前記第2回転規制部材の外径が異なっている吸着ノズル。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の吸着ノズルと、
前記吸着ノズルのホルダ部材を保持しながら移動自在に設けられる吸着ヘッドと、を備え、
第1位置に位置する部品を前記吸着ノズルにより吸着した後で前記第1位置と異なる第2位置に前記部品を移載することを特徴とする部品移載装置。
【請求項13】
先端部で部品を吸着する軸状のノズル部材と、前記ノズル部材の軸線と平行なノズル突出方向に前記ノズル部材を摺動自在に保持するホルダ部材と、前記ノズル突出方向に前記ノズル部材を摺動させて前記ノズル部材の前記先端部を前記ホルダ部材から突出させるための付勢力を発生する付勢部材と、前記付勢力により前記ホルダ部材から突出する前記ノズル部材を係止して前記ノズル部材の前記先端部を突出限界位置に位置決めする係止部とを有する、吸着ノズルの姿勢制御方法であって、
前記付勢力により前記ホルダ部材から前記ノズル部材を前記ノズル突出方向に突出させる際に、前記ノズル部材の軸線に対して非対称な第1係止位置および第2係止位置で前記ノズル部材と係止することによって、前記軸線に対する前記第1係止位置および前記第2係止位置の相対関係により一義的に決まる回転方向において、前記ノズル部材に対して回転モーメントを与えて前記ノズル部材の姿勢を制御する
ことを特徴とする吸着ノズルの姿勢制御方法。
【請求項15】
先端部で部品を吸着する軸状のノズル部材と、前記ノズル部材の軸線と平行なノズル突出方向に前記ノズル部材を摺動自在に保持するホルダ部材と、前記ノズル部材と前記ホルダ部材との間に介在し、前記ノズル突出方向に前記ノズル部材を摺動させて前記ノズル部材の前記先端部を前記ホルダ部材から突出させるための付勢力を前記ノズル突出方向に発生する付勢部材と、前記付勢力により前記ホルダ部材から突出する前記ノズル部材を係止して前記ノズル部材の前記先端部を突出限界位置に位置決めする係止部とを有する、吸着ノズルの姿勢制御方法であって、
前記ノズル部材は、前記先端部につながる吸引経路が内部に設けられた中空構造を有し、
前記係止部は、前記軸線に対して直交する方向から挿入され、前記吸引経路を貫通して前記ホルダ部材に取り付けられる回転規制ピンを有し、
前記付勢力により前記ホルダ部材から前記ノズル部材を前記ノズル突出方向に突出させる際に、前記回転規制ピンにより前記ノズル部材の軸線に対して非対称な第1係止位置および第2係止位置で前記ノズル部材と係止することによって、前記軸線に対する前記第1係止位置および前記第2係止位置の相対関係により一義的に決まる回転方向において、前記ノズル部材に対して回転モーメントを与えて前記ノズル部材の姿勢を制御する
ことを特徴とする吸着ノズルの姿勢制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズル部材の先端部で部品を吸着する吸着ノズルの姿勢制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品実装装置では、例えば特許文献1に記載されているように、バフィング機能を有する吸着ノズルを用いて部品を移載する部品移載装置が設けられている。当該吸着ノズルでは、先端部で部品を吸着する軸状のノズル部材がホルダ部材に対して軸方向に出退自在に保持されている。また、ホルダ部材内にスプリングなどの付勢部材が設けられ、ノズル部材の先端部をホルダ部材から軸方向に突出させるように付勢し、吸着ノズルにバフィング機能を与えている。このため、軸方向の位置決めのバラツキや、部品自体の外形のバラツキ、プリント基板のそり、部品供給部におけるテープリールの浮きなどの様々な要因からなる軸方向のバラツキを吸収する。その結果、電子部品やこれが装着されるプリント基板に対して物理的なストレスが加わるのを効果的に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記吸着ノズルにおいて、ノズル部材およびホルダ部材のいずれもが設計通りに製造されていると、ホルダ部材に対するノズル部材のガタツキはなく、付勢部材の付勢力によりホルダ部材からノズル部材が突出した姿勢、つまり吸着ノズルの姿勢は常に一定に保たれる。しかしながら、ノズル部材とホルダ部材との寸法誤差は不可避であり、上記ガタツキをゼロに抑えることは困難である。このため、上記ガタツキに応じた角度だけノズル部材がホルダ部材に対して傾き、吸着ノズルの姿勢が変動することがある。ここで、ノズル部材の傾き量(角度)は、部品移載を実行する前に、予め計測することは可能である。したがって、ノズル部材の傾き方向が常に一定方向であれば、後で
図5を参照しつつ説明するように、ノズル部材の先端部がホルダ部材から突出した際の吸着ノズルの姿勢を考慮することで部品移載を高精度に行うことが可能である。
【0005】
しかしながら、従来装置では、吸着ノズルの姿勢を制御する具体的な技術がなかった。そのため、従来装置では、ノズル部材の傾き方向は一定ではなく、このことが部品移載の精度低下の主要因のひとつとなっている。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ノズル部材の先端部がホルダ部材から突出した際の吸着ノズルの姿勢を制御することができる吸着ノズルおよび吸着ノズルの姿勢制御方法、ならびに当該吸着ノズルを用いて部品を高精度で移載する部品移載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1態様は、吸着ノズルであって、先端部で部品を吸着する軸状のノズル部材と、ノズル部材の軸線と平行なノズル突出方向にノズル部材を摺動自在に保持するホルダ部材と、ノズル突出方向にノズル部材を摺動させてノズル部材の先端部をホルダ部材から突出させるための付勢力を発生する付勢部材と、付勢力によりホルダ部材から突出するノズル部材を係止してノズル部材の先端部を突出限界位置に位置決めする係止部と、を備え、係止部は、軸線に対して非対称な第1係止位置および第2係止位置でノズル部材を係止することで、軸線に対する第1係止位置および第2係止位置の相対関係により一義的に決まる回転方向において、付勢力によりノズル突出方向に突出するノズル部材に対して回転モーメントを与えることを特徴としている。
【0008】
また、この発明の第2態様は、部品移載装置であって、上記吸着ノズルと、吸着ノズルのホルダ部材を保持しながら移動自在に設けられる吸着ヘッドと、を備え、第1位置に位置する部品を吸着ノズルにより吸着した後で第1位置と異なる第2位置に部品を移載することを特徴としている。
【0009】
さらに、この発明の第3態様は、先端部で部品を吸着する軸状のノズル部材と、ノズル部材の軸線と平行なノズル突出方向にノズル部材を摺動自在に保持するホルダ部材と、ノズル突出方向にノズル部材を摺動させてノズル部材の先端部をホルダ部材から突出させるための付勢力を発生する付勢部材と、付勢力によりホルダ部材から突出するノズル部材を係止してノズル部材の先端部を突出限界位置に位置決めする係止部とを有する、吸着ノズルの姿勢制御方法であって、付勢力によりホルダ部材からノズル部材をノズル突出方向に突出させる際に、ノズル部材の軸線に対して非対称な第1係止位置および第2係止位置でノズル部材と係止することによって、軸線に対する第1係止位置および第2係止位置の相対関係により一義的に決まる回転方向において、ノズル部材に対して回転モーメントを与えてノズル部材の姿勢を制御することを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、係止部が、第1係止位置と第2係止位置の2箇所で、付勢力によりホルダ部材から突出するノズル部材を係止する。これによって、ノズル部材の先端部が突出限界位置に位置決めされる。このとき、第1係止位置と第2係止位置は、ノズル部材の軸線に対して非対称であるため、軸線に対する第1係止位置および第2係止位置の相対関係により一義的に決まる回転方向において、付勢力によりノズル突出方向に突出するノズル部材に対して回転モーメントが付与される。その結果、ホルダ部材に対するノズル部材のガタツキが生じた場合、ノズル部材の先端部がホルダ部材から突出した際の吸着ノズルはノズル部材を上記回転方向に傾けた姿勢を取る。
【0011】
ここで、ノズル部材が、ノズル突出方向と平行に延設される第1係合部位および第2係合部位を有し、係止部が、第1係合部位および第2係合部位と係合しながらノズル突出方向にノズル部材を摺動自在に支持することで、ノズル部材が軸線まわりに回転するのを規制するように構成してもよい。つまり、吸着ノズルの姿勢制御機能を有する係止部をノズル部材の回転規制部材として機能させてもよい。このように係止部が2種類の機能を有することで、部品点数を抑えながら高機能な吸着ノズルを提供することができる。
【0012】
また、第1係合部位、第2係合部位および係止部としては、以下の構成を用いることができる。例えば先端部につながる吸引経路が内部に設けられた中空構造を有するノズル部材の側壁に対し、それぞれノズル突出方向と平行に延設された第1長穴および第2長穴を、それぞれ第1係合部位および第2係合部位として用いることができる。そして、上記第1長穴、第2長穴および回転規制ピンを、軸線と直交する直交方向の一方側に偏って配置することで、吸着ノズルの姿勢制御およびノズル部材の回転規制を同時に行うことができる(後で説明する第1実施形態参照)。
【0013】
また、上記偏り配置を採用する代わりに、以下のように第1長穴、第2長穴および回転規制ピンを設けることで、吸着ノズルの姿勢制御およびノズル部材の回転規制を同時に行うことができる。すなわち、第1長穴および第2長穴を軸線を挟んで対向して設けるとともに、ノズル部材の先端部がホルダ部材からノズル突出方向に突出したときに、ノズル突出方向と反対の反突出方向において、第1長穴と回転規制ピンの第1係止部位とが係合して形成される第1係止位置と、第2長穴と回転規制ピンの第1係止部位とが係合して形成される第2係止位置とが相互に異なるように構成してもよい(後で説明する第2実施形態参照)。また、反突出方向における第1長穴の内端面の位置と第2長穴の内端面の位置とを結んだ仮想線に対して回転規制ピンの軸線が傾斜するように取り付けてもよい(後で説明する第3実施形態参照)。また、反突出方向において第1長穴の内端面の位置と第2長穴の内端面の位置とは同一である一方、第1係止部位の外径と、第2係止部位の外径とが異なるように構成してもよい(後で説明する第4実施形態参照)。
【0014】
さらに、上記偏り配置を採用する代わりに、吸着ノズルの各部を以下のように構成することで、吸着ノズルの姿勢制御およびノズル部材の回転規制を同時に行うことができる。すなわち、2つの係合部位が、軸線と平行にノズル部材の側壁に延設された第1溝および第2溝であり、係止部が、第1溝と係合しながらノズル部材に対してノズル突出方向に相対的に移動可能にホルダ部材に取り付けられる第1回転規制部材と、第2溝と係合しながらノズル部材に対してノズル突出方向に相対的に移動可能にホルダ部材に取り付けられる第2回転規制部材とを有し、第1溝および第2溝が軸線を挟んで対向して設けられ、ノズル部材の先端部がホルダ部材からノズル突出方向に突出したときに、ノズル突出方向と反対の反突出方向において、第1溝と第1回転規制部材とが係合して形成される第1係止位置と、第2溝と第2回転規制部材とが係合して形成される第2係止位置とが相互に異なっているように構成してもよい(後で説明する第5実施形態参照)。また、第1回転規制部材および第2回転規制部材をノズル突出方向において同一位置に配置し、反突出方向において第1溝の内端面の位置と第2溝の内端面の位置とを相互に異なってもよい(後で説明する第6実施形態参照)。また、第1回転規制部材と第2回転規制部材とを結んだ仮想線が交差するように、第1回転規制部材および第2回転規制部材を配置してもよい。また、反突出方向において第1溝の内端面の位置と第2溝の内端面の位置とを同一とし、第1回転規制部材の外径および第2回転規制部材の外径とを異ならせてもよい(後で説明する第7実施形態参照)。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、ノズル部材の先端部がホルダ部材から突出した際の吸着ノズルの姿勢を制御することができる。また、このような姿勢制御可能な吸着ノズルを用いることで部品移載を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る吸着ノズルの第1実施形態を装備する部品実装装置を模式的に示す部分平面図である。
【
図4】
図2に示す吸着ノズルの断面構造を示す斜視図である。
【
図5】
図2に示す吸着ノズルを装備する実装ヘッドによる部品の移載動作を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態における吸着ノズルの断面構造を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第3実施形態における吸着ノズルの断面構造を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第4実施形態における吸着ノズルの断面構造を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第5実施形態における吸着ノズルの断面構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係る吸着ノズルの第1実施形態を装備する部品実装装置を模式的に示す部分平面図である。また、
図2は吸着ノズルの外観構成を示す図である。この部品実装装置1は、部品供給位置において部品を吸着ノズルにより吸着した後、基板の表面における搭載位置に部品を移載する、いわゆる部品移載装置として機能を有している。これらの図面および以下の図では、鉛直方向に平行なZ方向、それぞれ水平方向に平行なX方向およびY方向からなるXYZ直交座標を適宜示す。
【0018】
この部品実装装置1は、基台11の上に設けられた一対のコンベア12、12を備える。部品実装装置1は、コンベア12によりX方向(基板搬送方向)の上流側から作業位置(
図1の基板2の位置)に搬入した基板2に対してヘッドユニット3により部品Pを実装し、部品実装を完了した基板2をコンベア12により作業位置からX方向の下流側へ搬出する。
【0019】
部品実装装置1は、2個のヘッドユニット3それぞれをXY方向に個別に駆動するXY駆動機構4を備える。このXY駆動機構4は、それぞれX方向に平行に延設されてヘッドユニット3をX方向に移動可能に支持する一対のXビーム41、41を有する。各Xビーム41には、X方向に平行に延設されたボールネジ42と、ボールネジ42を回転駆動するXモーター43とが取り付けられている。Xモーター43は、ここの例ではサーボモーターである。そして、ボールネジ42のナットにヘッドユニット3が取り付けられている。さらに、XY駆動機構4は、それぞれY方向に平行に延設された一対のYビーム44、44を有する。各Xビーム41の一端は一方のYビーム44によりY方向に移動可能に支持され、各Xビーム41の他端は他方のYビーム44によりY方向に移動可能に支持される。各Yビーム44には、Xビーム41、41をY方向に駆動するYモーター45が取り付けられている。各Yモーター45は、ここの例ではリニアモーターであり、Xビーム41、41の端に取り付けられた可動子451、451と、Y方向に平行に延設された固定子452とを有する。そして、可動子451と固定子452との間に働く磁力によって可動子451とともにXビーム41がY方向に駆動される。かかるXY駆動機構4によれば、Xモーター43およびYモーター45によって、ヘッドユニット3をXY方向に移動させることができる。
【0020】
部品供給部5は、一対のコンベア12、12のY方向の両側のそれぞれに配設されている。部品供給部5では、X方向に並ぶ複数のテープフィーダー51(以下、単に「フィーダー51」と称する)が着脱可能に装着されている。各フィーダー51は集積回路、トランジスター、コンデンサ等の小片状の部品P(チップ部品)を所定間隔おきに収納したテープ(
図5中の符号52)をY方向に間欠的に送り出すことによって、テープ内の部品Pを部品供給位置に供給する。
【0021】
ヘッドユニット3は、X方向に平行に配列された複数の実装ヘッド31を有している。各実装ヘッド31はZ方向(鉛直方向)に延びた長尺形状を有している。実装ヘッド31の下端に、本発明の第1実施形態に係る吸着ノズル32A(
図2)が設けられている。吸着ノズル32Aは、実装ヘッド31の下端部に着脱自在に装着されるホルダノズル33と、当該ホルダノズル33に対して係脱可能に取り付けられる軸状のシャフトノズル34とを有している。吸着ノズル32Aでは、ホルダノズル33に対し、部品Pに適合するシャフトノズル34が選択的取り付けられ、部品Pを吸着・保持可能となっている。このため、ヘッドユニット3はフィーダー51の上方へ移動して、フィーダー51により供給される部品Pを吸着ノズル32Aで吸着して保持する。それに続いて、ヘッドユニット3は作業位置の基板2の上方に移動して部品Pの吸着を解除することで、基板2に部品Pを実装する。なお、吸着ノズル32Aの詳しい構成および動作については、後で詳述する。
【0022】
ヘッドユニット3には、基板2に付されたフィデューシャルマークを鉛直上方から撮像する基板認識カメラ(図示省略)が取り付けられている。したがって、基板認識カメラに撮像された基板2の画像から基板2の位置ずれを認識することが可能となっている。また、本実施形態では、基板認識カメラは、基板2以外にも、ノズル保管部7を鉛直上方から撮像可能となっている。そして、基板認識カメラに撮像されたノズル保管部7の画像に基づいてノズルおよび/またはノズルの収納部の配置に関するストッカ側配置情報が取得可能となっている。
【0023】
また、部品供給部5とコンベア12との間には、部品認識カメラ6およびノズル保管部7が配置されている。部品認識カメラ6は、部品供給部5において吸着ノズル32Aにより吸着された部品Pを撮像し、部品情報および位置ずれ情報を取得するための画像情報を提供する。この部品撮像は、部品供給部5から基板2への移動中にヘッドユニット3が部品認識カメラ6の上方を通過することで実行される。こうして取得された画像を解析することで、吸着された部品PのXY平面における位置ずれ量および回転角度を求めることが可能となっている。また、本実施形態では、部品認識カメラ6は、部品P以外にも、ヘッドユニット3の下面を鉛直下方から撮像可能となっている。
【0024】
ノズル保管部7は、複数の吸着ノズル32Aを保管するノズルストッカを有している。そして、部品Pに対応した吸着ノズル32Aを取り付けるように指示された場合、ヘッドユニット3がノズルストッカの上方まで移動した後に実装ヘッド31が鉛直方向Zに昇降してノズルストッカにアクセスする。これによって、吸着ノズル32Aが交換される。
【0025】
図3は
図2に示す吸着ノズルの断面図であり、同図の左欄に(+Y)方向から見た断面図を示すとともに同図の右欄に(-Y)方向から見た断面図を示している。また、
図4は
図2に示す吸着ノズルの断面構造を示す斜視図である。さらに、
図5は
図2に示す吸着ノズルを装備する実装ヘッドによる部品の移載動作を模式的に示す図であり、同図中の(a)および(b)は部品供給位置での部品のピックアップ動作を示し、(c)は基板への部品の実装動作を示している。
【0026】
実装ヘッド31は、ヘッドユニット3に対して昇降駆動および回転駆動されるヘッド本体(図示省略)を有している。ヘッド本体の内部には、次のように構成された吸着ノズル32Aに対して部品吸着用の負圧等を供給するための負圧通路が構成されている。
【0027】
吸着ノズル32Aは、ヘッド本体に対して着脱自在に装着される部分であるホルダノズル33と、シャフトノズル34と、圧縮コイルバネ35と、回転規制ピン36と、オーリング37と、を有している。ホルダノズル33は、ヘッド本体の下端部を受け入れるための装着用孔部331と、前記シャフトノズル34を保持するための保持用孔部332とが鉛直方向Zに連続した筒型構造を有している。
【0028】
シャフトノズル34は、軸体構造、より詳しくは鉛直方向Zに貫通する吸引経路341を備えた略円筒状の中空構造を有している。このシャフトノズル34は、ホルダノズル33の保持用孔部332に挿入され、シャフトノズル34の軸線AXと平行な方向Dにおいてホルダノズル33に対して摺動可能となっている。
【0029】
また、吸着ノズル32Aに対してバフィング機能を付加させるために、本発明の「付勢部材」の一例として圧縮コイルバネ35が設けられている。すなわち、ホルダノズル33は、外周に上下2段の鍔部334、335を有している。また、シャフトノズル34は外周に鍔部342を備えている。そして、鉛直方向Zにおいて互いに対向する鍔部334、342の間に介在するように、圧縮コイルバネ35がホルダノズル33およびシャフトノズル34に外挿されている。このため、シャフトノズル34は、圧縮コイルバネ35の弾発力によりホルダノズル33に対して離間する方向(同図では下側)に付勢されている。
図2ないし
図5に示すように、実装ヘッド31がフィーダー51から部品Pを受け取る時や基板2に部品Pを実装する時を除き、シャフトノズル34はホルダノズル33からノズル突出方向D1に突出している。一方、部品受取時や部品実装時には、シャフトノズル34の先端(下端)が部品Pの上面と当接した状態で実装ヘッド31が鉛直下方、つまり(-Z)方向に下降するのに伴って、圧縮コイルバネ35の弾発力に抗いながらシャフトノズル34はホルダノズル33に対してノズル突出方向D1と反対の反突出方向D2に後退する。このように、ホルダノズル33に対してシャフトノズル34が弾性変位することで、部品Pに対するシャフトノズル34の衝突加重が圧縮コイルバネ35により吸収される。
【0030】
上記したようにホルダノズル33に対するシャフトノズル34の摺動が許容される一方で、ホルダノズル33に対する回転(軸線AXまわりの回転)を回転規制ピン36により規制する回転規制構造が吸着ノズル32Aに設けられている。より具体的には、略円筒状に仕上げられたシャフトノズル34の側壁に対し、ノズル突出方向D1と平行に第1長穴343および第2長穴344が設けられている。これらの長穴343、344はシャフトノズル34の軸線AXと直交する直交方向Xの(-X)方向側に偏って設けられている。しかも、これらの長穴343、344の反突出方向D2側の端部は、
図3ないし
図5に示すように、鍔部334、335の間に形成される円環状の溝部336と同じ高さ位置に達している。
【0031】
この溝部336には、長穴343、344に対向する位置に貫通穴(図示省略)が設けられている。そして、一方の貫通穴から丸棒状の回転規制ピン36が挿入され、第1長穴343、吸引経路341および第2長穴344を貫通し、他方の貫通穴に達している。こうして、回転規制ピン36がシャフトノズル34の軸線AXに対して(-X)方向に偏って配置された状態でホルダノズル33に取り付けられる。このため、回転規制ピン36が長穴343、344の内壁面に係合した状態で、ホルダノズル33に対するシャフトノズル34の摺動は実行される。つまり、回転規制ピン36により回転規制を受けた状態でシャフトノズル34の先端部34aは弾発力によりホルダノズル33から突出する。しかも、その突出は、回転規制ピン36に長穴343、344の反突出方向D2側の内端面が係止されることで停止する。つまり、回転規制ピン36が、シャフトノズル34の先端部34aをホルダノズル33から突出する限界位置(つまり突出限界位置)に位置決めし、本発明の「係止部」の一例に相当している。
【0032】
さらに、上記溝部336に貫通穴を設けたことに伴って、溝部336に対してオーリング37が装着されている。これによって、吸引経路341に向かって空気が流入するのを抑制し、吸着ノズル32Aの吸着性能の低下を防止している。
【0033】
次に、上記のように構成された吸着ノズル32Aによる部品吸着動作、部品搬送動作および部品実装動作について、
図5を参照しつつ説明する。同図の(a)に示すように、フィーダー51により部品Pを収納したテープ52が部品供給位置P1に供給される。当該部品Pをピックアップするために、吸着ノズル32Aが部品供給位置P1の上方に位置するように実装ヘッド31が移動される。このとき、シャフトノズル34の先端部34aは弾発力によりホルダノズル33から突出している。ここで、ホルダノズル33およびシャフトノズル34が設計通りの寸法を有している場合、ホルダノズル33に対するシャフトノズル34のガタツキがなく、ノズル突出方向D1は鉛直下方、つまり(-Z)方向と平行となっている。これに対し、上記ガタツキが生じると、ノズル突出方向D1は鉛直方向Zに対して傾き、吸着ノズル32Aの姿勢が変動する。従来装置では、既述のように、吸着ノズル32Aの姿勢を制御するための構成を含んでおらず、傾き方向はランダムであった。
【0034】
これに対し、第1実施形態では、ホルダノズル33に対するシャフトノズル34の回転(軸回りの回転)を規制する回転規制構造が上記のように構成されている。つまり、回転規制ピン36は、軸線AXに対して(-X)方向側で長穴343、344と係合しながらノズル突出方向D1にシャフトノズル34を摺動自在に支持することで、シャフトノズル34が軸線AXまわりに回転するのを規制している。しかも、シャフトノズル34の先端部34aが突出限界位置に位置決めされた状態では、回転規制ピン36は、長穴343、344の反突出方向D2側の内端面を係止しており、長穴343の係止位置(第1係止位置LP1)および長穴344の係止位置(第2係止位置LP2)はいずれも軸線AXに対して(-X)方向側に偏っている。その結果、
図5の(a)に示すように、ノズル突出方向D1は紙面において反時計回りに傾いており、ノズル突出方向D1の弾発力を受けているシャフトノズル34に対して同図中の点線で示す回転モーメントMが加わり、シャフトノズル34の先端面345のうち(+X)方向側の端部346が(-X)方向側の端部347よりも低く位置している。したがって、部品Pをピックアップするために、同図の(a)中での実線矢印で示すように、実装ヘッド31が(-Z)方向に下降すると、シャフトノズル34の端部346が最初に部品Pに当接する。そして、実装ヘッド31のさらなる下降によってシャフトノズル34の先端面345の全体が部品Pの上面と当接して部品Pをしっかりと吸着する。
【0035】
部品吸着動作が完了すると、実装ヘッド31が(+Z)方向に上昇されるが、この上昇に伴って弾発力によってシャフトノズル34の先端部34aがホルダノズル33に対して相対的にノズル突出方向D1に突出する。そして、吸着ノズル32Aに吸着された部品Pがテープ52から上方に離れると、同図の(b)に示すように、部品吸着動作前と同様にノズル突出方向D1は紙面において反時計回りに傾いている。そのため、吸着された部品Pも同様に傾いており、その状態のまま基板2の上方に搬送される(部品搬送動作)。
【0036】
部品Pが基板2の表面のうち実装すべき部品実装位置P2の上方に位置決めされると、上記部品搬送動作は停止され、部品実装動作に移る。このとき、部品Pの姿勢は常に部品吸着動作時の吸着ノズル32Aの姿勢に対応している。例えば
図5の(b)、(c)に示すように、部品吸着後に吸着ノズル32Aを水平方向に移動させて部品実装位置P2の上方に搬送させた時点では、ノズル突出方向D1は紙面において反時計回りに傾いており、吸着ノズル32Aは部品Pの下方のうち(+X)方向側の端部P(+X)が(-X)方向側の端部P(-X)よりも低く位置している。なお、必要に応じて部品実装を実行する前に実装ヘッド31を回転させることがあるが、回転後の吸着ノズル32Aで吸着保持されている部品Pは部品吸着動作時の姿勢に対応した方向に傾いている。それに続いて、当該部品Pを基板2に実装すべく、実装ヘッド31が下降されると、例えば
図5の(c)に示すように、部品Pの端部P(+X)が最初に部品実装位置P2に載置される。そして、実装ヘッド31のさらなる下降によって吸着ノズル32Aに吸着された部品P全体が基板2の表面に載置される。それに続いて、吸着ノズル32Aによる吸着保持が解除されることで当該部品Pの実装が完了する。
【0037】
以上のように、第1実施形態では、シャフトノズル34は、圧縮コイルバネ35の弾発力によって先端部34aをホルダノズル33に対して相対的にノズル突出方向D1に突出する。しかも、軸線AXに対して第1係止位置LP1および第2係止位置LP2が非対称に設けられている。したがって、(-Z)方向に対するノズル突出方向D1の傾き方向は、軸線AXに対する第1係止位置LP1および第2係止位置LP2の相対関係により一義的に決まる。つまり、シャフトノズル34の先端部34aがホルダノズル33から突出した際の吸着ノズル32Aは、常にシャフトノズル34を上記回転方向に傾けた姿勢を取る。したがって、ガタツキに起因する部品吸着時の部品姿勢の傾きに対応した搭載時のズレ量を予め求めておくことで、吸着ノズル32Aの個体差による影響を受けることなく、部品Pを部品供給位置P1から部品実装位置P2に高精度に移載することができる。
【0038】
また、第1実施形態では、シャフトノズル34の側壁に対し、ノズル突出方向D1と平行に延設される長穴343、344が設けられる。そして、これらの長穴343、344と係合しながら、回転規制ピン36がノズル突出方向D1にシャフトノズル34を摺動自在に支持して軸線AXまわりにおけるシャフトノズル34の回転を規制している。このように、回転規制ピン36が、吸着ノズル32Aの姿勢制御機能と、シャフトノズル34の回転規制機能とを兼ね備えている。その結果、少ない部品点数で高機能な吸着ノズル32Aが得られる。
【0039】
上記したように、第1実施形態では、シャフトノズル34およびホルダノズル33がそれぞれ本発明の「ノズル部材」および「ホルダ部材」の一例に相当している。また、長穴343が本発明の「第1係合部位」および「第1長穴」の一例に相当し、長穴344が本発明の「第2係合部位」および「第2長穴」の一例に相当している。また、圧縮コイルバネ35の弾発力が本発明の「付勢力」の一例に相当している。また、実装ヘッド31が本発明の「吸着ヘッド」の一例に相当している。
【0040】
図6は、本発明の第2実施形態における吸着ノズルの断面構造を示す斜視図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、長穴343、344および回転規制ピン36の構成であり、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
第2実施形態にかかる吸着ノズル32Bでは、
図6に示すように、Y方向において長穴343、344は互いに軸線AXを挟んで対向して設けられている。これら長穴343、344の方向Dにおける長さH1、H2は不等式(H1<H2)を満足している。そして、反突出方向D2における長穴343の内端面の位置(以下「第1内端面位置」という)が反突出方向D2における長穴344の内端面の位置(以下「第2内端面位置」という)よりも低くなるように、長穴343、344はシャフトノズル34の側壁に配設されている。
【0042】
また、溝部336に対し、2つの貫通穴が穿設されている。これら2つの貫通穴はY方向において軸線AXを挟んで対向するように設けられている。そして、一方の貫通穴から丸棒状の回転規制ピン36が挿入され、第1長穴343、吸引経路341および第2長穴344を貫通し、他方の貫通穴に達している。したがって、回転規制ピン36の両端部の外径が同一である一方、反突出方向D2において第1内端面位置が第2内端面位置よりも低いため、回転規制ピン36によるシャフトノズル34の係止位置がY方向において相違する。より詳しくは、シャフトノズル34が、圧縮コイルバネ35の弾発力によって先端部34aをホルダノズル33に対して相対的にノズル突出方向D1に突出するとき、同図に示すように、回転規制ピン36の(-Y)方向側の係止部位が第1内端面位置と係合して第1係止位置LP1を形成する。この第1係止位置LP1で(-Y)方向側でのシャフトノズル34の移動が規制される。これから少し遅れて、回転規制ピン36の(+Y)方向側の係止部位が第2内端面位置と係合して第2係止位置LP2を形成する。この第2係止位置LP2で(+Y)方向側でのシャフトノズル34の移動が規制される。これによって、シャフトノズル34の先端部34aが突出限界位置に位置決めされる。
【0043】
以上のように、第2実施形態において軸線AXに対して第1係止位置LP1および第2係止位置LP2が非対称となっている。より詳しくは、方向Dにおいて、第2係止位置LP2が第1係止位置LP1よりも所定距離(=H2-H1)だけ反突出方向D2に位置している。このため、第1実施形態と同様に、ホルダノズル33に対するシャフトノズル34のガタツキが生じている場合、軸線AXに対する第1係止位置LP1および第2係止位置LP2の相対関係により一義的に決まる回転方向において回転モーメントMが加わる。したがって、シャフトノズル34の先端部34aがホルダノズル33から突出した際の吸着ノズル32Bは、常にシャフトノズル34を上記回転方向に傾けた姿勢を取る。その結果、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0044】
なお、第2実施形態において、回転規制ピン36の(-Y)方向側の係止部位が本発明の「第1係止部位」の一例に相当するとともに、(+Y)方向側の係止部位が本発明の「第2係止部位」の一例に相当している。
【0045】
図7は、本発明の第3実施形態における吸着ノズルの断面構造を示す斜視図である。この第3実施形態が第2実施形態と大きく相違する点は、長穴343、344および回転規制ピン36の構成であり、その他の構成は基本的に第2実施形態と同一である。以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
第3実施形態にかかる吸着ノズル32Cでは、
図7に示すように、Y方向において長穴343、344は互いに軸線AXを挟んで対向して設けられている。これら長穴343、344の方向Dにおける長さHは同一であり、しかも方向Dにおいて同一高さに設けられている。したがって、第1内端面位置および第2内端面位置も方向Dにおいて同一高さに位置している。
【0047】
また、溝部336に対して2つの貫通穴が穿設されるとともに当該貫通穴を利用して丸棒状の回転規制ピン36が挿入される点で第2実施形態と同一であるが、次の点で大きく相違している。すなわち、方向Zにおいて(-Y)方向側の貫通穴が(+Y)方向側の貫通穴よりも低い位置に配置されている。このため、一方の貫通穴から丸棒状の回転規制ピン36が挿入され、第1長穴343、吸引経路341および第2長穴344を貫通し、他方の貫通穴に達している。そのため、回転規制ピン36は、その軸線が第1内端面位置と第2内端面位置とを結んだ仮想線VL(第3実施形態ではY方向と平行な線)に対して傾斜するように、ホルダノズル33に取り付けられている。したがって、回転規制ピン36の両端部の外径が同一であるが、方向Zにおいて回転規制ピン36の(-Y)方向側の係止部位が(+Y)方向側の係止部位よりも低く位置している。この第3実施形態では、シャフトノズル34が、圧縮コイルバネ35の弾発力によって先端部34aをホルダノズル33に対して相対的にノズル突出方向D1に突出するとき、同図に示すように、回転規制ピン36の(+Y)方向側の係止部位が第2内端面位置と係合して第2係止位置LP2を形成する。この第2係止位置LP2で(+Y)方向側でのシャフトノズル34の移動が規制される。これから少し遅れて、回転規制ピン36の(-Y)方向側の係止部位が第1内端面位置と係合して第1係止位置LP1を形成する。この第1係止位置LP1で(-Y)方向側でのシャフトノズル34の移動が規制される。これによって、シャフトノズル34の先端部34aが突出限界位置に位置決めされる。
【0048】
以上のように、第3実施形態においても、軸線AXに対して第1係止位置LP1および第2係止位置LP2が非対称となっている。より詳しくは、方向Dにおいて、第2係止位置LP2が第1係止位置LP1よりも回転規制ピン36が仮想線VLから傾いた分だけ反突出方向D2に位置している。このため、第2実施形態と同様に、ホルダノズル33に対するシャフトノズル34のガタツキが生じている場合、軸線AXに対する第1係止位置LP1および第2係止位置LP2の相対関係により一義的に決まる回転方向において回転モーメントMが加わる。したがって、シャフトノズル34の先端部34aがホルダノズル33から突出した際の吸着ノズル32Cは、常にシャフトノズル34を上記回転方向に傾けた姿勢を取る。その結果、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0049】
図8は、本発明の第4実施形態における吸着ノズルの断面構造を示す斜視図である。この第4実施形態が第2実施形態と大きく相違する点は、長穴343、344および回転規制ピン36の構成であり、その他の構成は基本的に第2実施形態と同一である。以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
第4実施形態にかかる吸着ノズル32Dでは、
図8に示すように、Y方向において長穴343、344は互いに軸線AXを挟んで対向して設けられている。これら長穴343、344の方向Dにおける長さHは同一であり、しかも方向Dにおいて同一高さに設けられている。したがって、第1内端面位置および第2内端面位置も方向Dにおいて同一高さに位置している。
【0051】
また、溝部336に対して2つの貫通穴が穿設されるとともに当該貫通穴を利用して回転規制ピン36が挿入される点で第2実施形態と同一であるが、次の点で大きく相違している。すなわち、方向Zにおいて(-Y)方向側の貫通穴の内径が(+Y)方向側の貫通穴の内径よりも大きく、それに対応した外径を有する段付丸棒状の回転規制ピン36が挿入されている。すなわち、大口径の(-Y)方向側の貫通穴から回転規制ピン36の(+Y)方向側の小外径係止部位が挿入され、第1長穴343、吸引経路341および第2長穴344を貫通し、小口径の(+Y)方向側の貫通穴に達している。こうして回転規制ピン36が挿入されると、同図に示すように、回転規制ピン36の(-Y)方向側の大外径係止部位が第1長穴343に位置するとともに、回転規制ピン36の(+Y)方向側の小外径係止部位が第2長穴344に位置している。
【0052】
この第4実施形態では、シャフトノズル34が、圧縮コイルバネ35の弾発力によって先端部34aをホルダノズル33に対して相対的にノズル突出方向D1に突出するとき、同図に示すように、回転規制ピン36の(-Y)方向側の係止部位が第1内端面位置と係合して第1係止位置LP1を形成する。この第1係止位置LP1で(-Y)方向側でのシャフトノズル34の移動が規制される。これから少し遅れて、回転規制ピン36の(+Y)方向側の係止部位が第2内端面位置と係合して第2係止位置LP2を形成する。この第2係止位置LP2で(+Y)方向側でのシャフトノズル34の移動が規制される。これによって、シャフトノズル34の先端部34aが突出限界位置に位置決めされる。
【0053】
以上のように、第4実施形態においても、軸線AXに対して第1係止位置LP1および第2係止位置LP2が非対称となっている。より詳しくは、方向Dにおいて、第2係止位置LP2が第1係止位置LP1よりも回転規制ピン36が小外径係止部位および大外径係止部位の外径差の半分だけ反突出方向D2に位置している。このため、第2実施形態と同様に、ホルダノズル33に対するシャフトノズル34のガタツキが生じている場合、軸線AXに対する第1係止位置LP1および第2係止位置LP2の相対関係により一義的に決まる回転方向において回転モーメントMが加わる。したがって、シャフトノズル34の先端部34aがホルダノズル33から突出した際の吸着ノズル32Dは、常にシャフトノズル34を上記回転方向に傾けた姿勢を取る。その結果、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば上記第1実施形態ないし第4実施形態では、シャフトノズル34の回転を規制するために、2つの長穴343、344と、1つの回転規制ピン36とを組み合わせた吸着ノズル32A~32Dに対して本発明を適用している。回転規制のための構成はこれに限定されるものではなく、例えば特開2008-300598号公報に記載されているように係合溝とピンとを組み合わせた構成を有するものがあり、当該構成を有する吸着ノズルに対しては、上記第2実施形態ないし第4実施形態に含まれる技術事項を適用することができる。以下、係合溝とピンとを組み合わせてシャフトノズル34の回転を規制するとともに吸着ノズルの姿勢を制御することができる、第5実施形態について
図9を参照しつつ説明する。
【0055】
図9は、本発明の第5実施形態における吸着ノズルの断面構造を示す斜視図である。この第5実施形態が第2実施形態と大きく相違する点は、長穴343、344の代わりに第1溝348および第2溝349がそれぞれシャフトノズル34の外側面に設けられている点と、鍔部334に対して2つの貫通穴334a、334bがX方向に設けられている点と、貫通穴334a、334bに対してX方向に延設された丸棒状の回転規制ピン36a、36bがそれぞれ挿入されている点とであり、その他の構成は基本的に第2実施形態と同一である。以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
第5実施形態にかかる吸着ノズル32Eでは、
図9に示すように、Y方向において第1溝348および第2溝349が互いに軸線AXを挟んで対向しながら方向Dにおいて長さH1、H2(>H1)でそれぞれノズル突出方向D1に延設されている。また、反突出方向D2における溝348の内端面の位置(以下「第3内端面位置」という)が反突出方向D2における溝349の内端面の位置(以下「第4内端面位置」という)よりも低くなるように、第1溝348および第2溝349がシャフトノズル34の側壁に配設されている。
【0057】
第1溝348は、
図9に示すように、貫通穴334aと部分的に交差している。このため、第1溝348に回転規制ピン36aが挿入されてホルダノズル33に取り付けられると、回転規制ピン36aの側面の一部が第1溝348に向かって入り込んでいる。一方、第2溝349は、貫通穴334bと部分的に交差している。このため、第2溝349に回転規制ピン36bが挿入されてホルダノズル33に取り付けられると、回転規制ピン36bの側面の一部が第2溝349に向かって入り込んでいる。このため、シャフトノズル34が、圧縮コイルバネ35の弾発力によって先端部34aをホルダノズル33に対して相対的にノズル突出方向D1に突出するとき、同図に示すように、回転規制ピン36aの側面が第3内端面位置と係合して第1係止位置LP1を形成する。この第1係止位置LP1で(-Y)方向側でのシャフトノズル34の移動が規制される。これから少し遅れて、回転規制ピン36bの側面が第4内端面位置と係合して第2係止位置LP2を形成する。この第2係止位置LP2で(+Y)方向側でのシャフトノズル34の移動が規制される。これによって、シャフトノズル34の先端部34aが突出限界位置に位置決めされる。
【0058】
以上のように、第5実施形態においても、軸線AXに対して第1係止位置LP1および第2係止位置LP2が非対称となっている。より詳しくは、方向Dにおいて、第2係止位置LP2が第1係止位置LP1よりも所定距離(=H2-H1)だけ反突出方向D2に位置している。このため、第2実施形態と同様に、ホルダノズル33に対するシャフトノズル34のガタツキが生じている場合、軸線AXに対する第1係止位置LP1および第2係止位置LP2の相対関係により一義的に決まる回転方向において回転モーメントMが加わる。したがって、シャフトノズル34の先端部34aがホルダノズル33から突出した際の吸着ノズル32Bは、常にシャフトノズル34を上記回転方向に傾けた姿勢を取る。その結果、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0059】
このように第5実施形態では、回転規制ピン36a、36bがそれぞれ本発明の「第1回転規制部材」および「第2回転規制部材」の一例に相当しており、本発明の「係止部」として機能している。
【0060】
第3内端面位置が方向Dにおいて第4内端面位置よりも低くする代わりに、第3実施形態や第4実施形態と同様に構成してもよい。つまり、第3内端面位置と第4内端面位置とが方向Dにおいて同一高さとなるように溝348、349を設けるとともに、鉛直方向Zにおいて貫通穴334aを貫通穴334bよりも低い位置に設けてもよい。このように構成することで第3内端面位置と第4内端面位置との高低差分だけ、方向Dにおいて、第2係止位置LP2が第1係止位置LP1よりも反突出方向D2に位置して第3実施形態と同様の作用効果が得られる(第6実施形態)。
【0061】
また、第3内端面位置と第4内端面位置とが方向Dにおいて同一高さとなるように溝348、349を設けるとともに、回転規制ピン36aの外径を回転規制ピン36bの外径よりも大きくしてもよい。このように構成することで回転規制ピン36a、36bの外径差分だけ、方向Dにおいて、第2係止位置LP2が第1係止位置LP1よりも反突出方向D2に位置して第4実施形態と同様の作用効果が得られる(第7実施形態)。
【0062】
さらに、上記第5実施形態ないし第7実施形態では、本発明の「第1回転規制部材」および「第2回転規制部材」として、回転規制ピン36a、36bを用いているが、第1回転規制部材および第2回転規制部材の形状については、丸棒形状に限定されるものではなく、その他の形状、例えば球形状であってもよい。
【0063】
さらに、上記実施形態では、部品移載装置として機能する部品実装装置1に対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、他の部品移載装置(例えばICハンドラーや部品試験機など)に対しても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ノズル部材の先端部で部品を吸着する吸着ノズル、当該吸着ノズルを用いて部品移載を行う部品移載装置全般、および吸着ノズルの姿勢制御技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…部品実装装置(部品移載装置)
2…基板
31…実装ヘッド(吸着ヘッド)
32A~32E…吸着ノズル
33…ホルダノズル(ホルダ部材)
34…シャフトノズル(ノズル部材)
34a…(ノズル部材の)先端部
35…圧縮コイルバネ(付勢部材)
36…回転規制ピン(係止部)
36a…回転規制ピン(第1回転規制部材、係止部)
36b…回転規制ピン(第2回転規制部材、係止部)
341…吸引経路
343…第1長穴(第1係合部位)
344…第2長穴(第2係合部位)
348…第1溝(第1係合部位)
349…第2溝(第1係合部位)
AX…軸線
D1…ノズル突出方向
D2…反突出方向
LP1…第1係止位置
LP2…第2係止位置
M…回転モーメント
P…部品
P1…部品供給位置(第1位置)
P2…部品実装位置(第2位置)
VL…仮想線
X…直交方向
Z…鉛直方向