(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】120K~200Kの範囲におけるシステムを冷却するための方法
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
F25B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2022570244
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 US2021033467
(87)【国際公開番号】W WO2021236965
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-28
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(73)【特許権者】
【識別番号】318006941
【氏名又は名称】エア・リキード・アドバンスド・テクノロジーズ・ユー.エス.・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】フラヴィアン、ジル
(72)【発明者】
【氏名】ターネイ、マイケル エー.
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/083810(WO,A1)
【文献】特開平08-148044(JP,A)
【文献】特開昭48-012533(JP,A)
【文献】特開2003-086418(JP,A)
【文献】国際公開第2006/001203(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0256443(US,A1)
【文献】特表2001-508531(JP,A)
【文献】特開平01-048884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
F25D 3/10
F25D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
120K~200Kの温度範囲における不活性且つ非加圧液体寒剤により液体極低温流体ユーザを冷却するためのシステムであって、
・主極低温タンク、1つの過冷却器、及び
6.5から33barAの間の圧力で動作するように構成された再循環ポンプから少なくとも構成され
、第1の液体極低温流体で動作するように設計された一次冷却ループを備え、
・前記一次冷却ループは、前記液体極低温流体ユーザに接続される液相分離器から構成される二次冷却ループに接続され、前記液相分離器は、熱交換器を収容し、第2の液体極低温流体により
2barA未満の圧力で動作されるよう設計され、
・前記二次冷却ループは、気体バッファタンクに接続され、それによって、冷却及び/又は加温フェーズ中に前記二次冷却ループからの前記第2の液体極低温流体の追加又は除去を可能にし、
・
前記システムは、加圧された
前記第1の液体極低温流体を用いて前記第2の液体極低温流体を凝縮するよう構成され
ている、
システム。
【請求項2】
前記第1の液体極低温流体は液体窒素である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の液体極低温流体は液体クリプトンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体は四フッ化物である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体はキセノンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体は一酸化二窒素である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
120K~200Kの温度範囲における不活性且つ非加圧の液体寒剤により液体極低温流体ユーザを冷却するための方法であって、
・主極低温タンク、1つの過冷却器、及び
6.5から33barAの間の圧力で動作するように構成された再循環ポンプから少なくとも構成され
、第1の液体極低温流体で動作するように設計された一次冷却ループと、
・前記液体極低温流体ユーザに接続される液相分離器から構成される二次冷却ループであって、前記液相分離器は、熱交換器を収容し、第2の液体極低温流体により
2barA未満の圧力で動作されるよう設計された、二次冷却ループと、を備え、
前記方法は、
・前記過冷却器及び/又は前記再循環ポンプにより前記第1の液体極低温流体を第1の所定の温度範囲内に維持することと、
・前記熱交換器により前記第2の液体極低温流体を第2の所定の温度範囲内に維持することと、
・加圧された
前記第1の液体極低温流体を用いて前記第2の液体極低温流体を再凝縮することと、を含む、
方法。
【請求項8】
前記第1の液体極低温流体は液体窒素である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の液体極低温流体は液体クリプトンである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体は四フッ化物である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体はキセノンである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体は一酸化二窒素である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年5月20日出願の米国仮特許出願第63/027,819号明細書に対する米国特許法第119条(a)項及び(b)項の下での利益を主張し、その内容の全てを引用して本明細書中に組み込む。
【背景技術】
【0002】
産業界において、不活性、低圧であり、費用効果の高い、120K~200Kに含まれる温度範囲における等温冷却のニーズが存在している。この温度範囲において、用いることができる分子(窒素、酸素、アルゴン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素、メタン、エタン・・・)は全て、それらをユーザにとって不適切なものにする価格、可燃性、高飽和圧力、又はそれらの組み合わせであることができる幾つかの制限を有している。
【0003】
かかる用途のための典型的な先行技術の一例は、ユーザによる間接的な伝熱を有する単一ループにおいて窒素等の不活性冷媒を利用している。しかし、低圧冷却に対するユーザの要求は、結果として必要以上に低い温度をもたらす。例えば、1barAのN2冷媒は、約80Kの蒸発温度を生じる。これにより、結果として80K~120K(又は悪くすると200K)の範囲にわたる無駄な冷却エネルギー入力をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
120K~200Kの温度範囲における不活性且つ非加圧液体寒剤により液体極低温流体ユーザを冷却するためのシステムを提供する。システムは、主極低温タンク、1つの過冷却器、及び再循環ポンプを少なくとも有し、圧力下の第1の液体極低温流体により動作するように設計される一次冷却ループを含む。一次冷却ループは、液体極低温流体ユーザに接続される液相分離器から構成される二次冷却ループに接続され、液相分離器は、熱交換器を収容し、第2の液体極低温流体により極めて低い圧力で動作されるよう設計される。二次冷却ループは、気体バッファタンクに接続され、それによって、冷却及び/又は加温フェーズ中に二次冷却ループからの第2の液体極低温流体の追加又は除去を可能にする。システムは、加圧された第1の液体極低温流体を用いて第2の液体極低温流体を凝縮するよう構成される。
【0005】
120K~200Kの温度範囲における不活性且つ非加圧液体寒剤により液体極低温流体ユーザを冷却するための方法を提供する。方法は、過冷却器及び/又は再循環ポンプにより第1の液体極低温流体を第1の所定の温度範囲内に維持することと、熱交換器により第2の液体極低温流体を第2の所定の温度範囲内に維持することと、加圧された第1の液体極低温流体を用いて第2の液体極低温流体を再凝縮することと、を含む。
【0006】
本発明の性質及び目的を更に理解するために、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照する必要があり、同様の構成要素には同じ又は類似の符号を付与する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の事例的な実施形態を以下で説明する。本発明は様々な改良及び代替形態の余地がある一方で、それらの特定の実施形態を、図面において例として示し、本明細書中で詳細に説明する。しかし、特定の実施形態の本明細書中の説明は開示する特定の形態に対する発明に限定する意図はなく、反対に、その意図は、添付する特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神及び適用範囲内に入る全ての変更、同等、及び代替を包含することにあることは言うまでもない。
【0009】
無論、いずれかのかかる実際の実施形態の開発において、ある実装から別の実装へと変化するシステム関連及びビジネス関連の制約への準拠等の開発者の具体的な目標を達成するために、数々の実装特有の決定が行われなければならないことは、正しく認識される。その上、かかる開発作業は複雑で時間のかかるものであるが、それにもかかわらず、この開示の利益を有する当業者にとって取り掛かる決まりきった過程であることは、正しく認識される。
【0010】
以下のシステムは、液体窒素の使用を説明するが、当業者は、任意の適切な極低温流体が、目標のシステムを冷却するために要求される温度レベルに応じて、同一概念(酸素、メタン等)と共に用いられてもよいことを認識するであろう。
【0011】
本発明の一実施形態を、唯一の図に略図で示す。再液化システムは、一次ループ主極低温タンク101と、液体窒素ストリーム103と、気化窒素ストリーム104と、気化窒素ストリーム104に流体的に取り付けられる通気弁105とを含む一次冷却ループ201を含んでいる。一次冷却ループはまた、過冷却器106と、高温再循環ストリーム107と、過冷却再循環ストリーム108と、再循環制御バルブ109と、再循環ポンプ110とを含んでいる。一次冷却ループはまた、液体バッファタンク111と、バッファタンク移送ストリーム112と、バッファタンク移送制御弁113とを含んでいる。液体バッファタンク111は、必要に応じて、液体窒素トラックトレーラ(図示せず)等の外部液体窒素源117から再充填されてもよい。
【0012】
再液化システムは、二次ループ主極低温タンク102と、二次ループ気体バッファタンク126と、二次ループ加熱器127と、二次ループ圧縮器128と、二次ループ主極低温タンクコイル129とを含む二次冷却ループ202を含んでいる。
【0013】
液体窒素114は、一次ループ主極低温タンク101内に飽和状態(圧力P1)で貯蔵される。窒素蒸気115は、一次ループ主極低温タンク101のヘッドスペースを占有する。通常動作中、液体窒素114の一部は、一次ループ主極低温タンク101から抽出され、二次ループ主極低温タンク102に送られる。二次ループ主極低温タンクコイル129内で、液体窒素ストリーム103は、液体窒素ストリーム103と熱交換し、従って、二次ループ主極低温タンク102に内部冷却を提供する。液体窒素ストリーム103が二次ループ主極低温タンクコイル129を通って戻るにつれて、少なくとも部分的に気化したストリーム131は少なくとも部分的に凝縮される。二次ループ主極低温タンク102は、気相/液相分離器として作用する。液体窒素ストリーム103は、従って気化し、気化した窒素ストリーム104は、一次ループ主極低温タンク101を再循環される。
【0014】
同時に、液体窒素114の一部は、一次ループ主極低温タンク101から温熱再循環ストリーム107として抽出され、再循環ポンプ110に送られる。加圧された液体窒素は、次に過冷却器106に入る。過冷却器106は、液体窒素を少なくとも数℃冷却する。これは、必要な温度レベルに達することができる当該技術において公知の任意の冷却ユニットによって達成されてもよい。過冷却再循環ストリーム108は、次いで、一次ループ主極低温タンク101に戻され、ここで、噴霧として気相115中に導入される。過冷却液体と接触すると、二次ループ主極低温タンク102から戻る気化窒素ストリーム104は冷却され、凝縮されて飽和液体114に戻る。
【0015】
過冷却器106の下流の温度が低ければ低いほど、過冷却器106への必要とされるポンプ流量は低くなる。従って、最も低い実際の下流温度を利用することにより、再循環ポンプ110によって消費される電力が低減されると共に、単に再循環ポンプ110の大きさが低減され、更にはストリーム107及び108の配管並びに内部交換器106の大きさが低減される。しかし、かかる低い過冷却温度、典型的には、内部圧力における極低温流体の凝固点よりも少なくとも1又は2℃(場合によっては少なくとも3℃)高い温度に近づくと、課題が生じる。例えば、窒素ストリーム中の不純物、特にプロセス全体を全体的に凍結及び妨害する可能性があるアルゴンが極めて少ないことを確実にするため、細心の注意を払わなければならない。窒素の凝固点よりも14℃未満、好ましくは10℃未満高い過冷却レベルに到達するために、アルゴン含有量は、一般に、2モル%未満、好ましくは0.5モル%未満である必要がある。
【0016】
一次ループ主極低温タンク101は、第1の圧力伝送器119を含んでいてもよい。第1の圧力伝送器119は、1つ以上の周辺界面コントローラ(PIC)と界面接続してもよい。第1のPIC120は、第1の圧力伝送器119及び再循環制御弁109の両方に機能的に接続される。第2のPIC121は、第1の圧力伝送器119及び通気弁105の両方に機能的に接続される。過冷却器バイパスライン118は、温熱再循環ストリーム107及び過冷却再循環ストリーム108に流体接続され、それによって、加圧された再循環ストリームの少なくとも一部が再循環ポンプ110を出て過冷却器106をバイパスすることを可能にしている。過冷却器バイパスライン118は、第2の圧力伝送器122を含んでいてもよい。第2の圧力伝送器122は、1つ以上のPICと界面接続してもよい。第3のPIC123は、第2の圧力伝送器122、バイパス制御弁125、及び再循環ポンプ110に機能的に接続される。代替として、119における圧力は、ポンプ110において可変速度駆動を用いることによって、バイパス118を介さずに制御されてもよい。
【0017】
二次ループ主極低温タンク102との界面における液体窒素ストリーム103の送出圧力は、一次ループ主極低温タンク101内の圧力と連結していてもよい。一次ループ主極低温タンク101内の圧力は、主に、過冷却器106を出る過冷却再循環ストリーム108上の再循環制御弁109によって制御される。第1のPIC120は、第1の圧力伝送器119が一次ループ主極低温タンク101内の圧力が低いことを示した場合に、再循環制御弁109を開く。第1のPIC120は、第1の圧力伝送器119が一次ループ主極低温タンク101内の圧力が高いことを示した場合に、再循環制御弁109を閉じる。過冷却器106の冷却能力は、出口の温度に応じて調整される。過冷却器106の出口温度は、下流の再循環制御弁109の開位置によって直接影響を受ける。再循環制御弁109が開く量が大きいほど(一次ループ主極低温タンク101の圧力が高いことを意味する)、下流過冷却器106の温度が上昇する傾向が大きくなる。これにより、過冷却器106の冷却能力が向上する。
【0018】
再循環ポンプ110は、可変周波数駆動(VFD)型ポンプであってもよい。再循環ポンプ110の速度は、過冷却ライン内の第2の圧力伝送器122によって読み取られた圧力が低い(過冷却流が増加していることを意味する)場合にポンプを加速する第3のPIC123によって制御される。
【0019】
過冷却器106が、二次ループ主極低温タンク102によって要求される冷却負荷を補償するのに十分な冷却能力を提供することができない場合、冷却ループ内の圧力は増加する。二次ループ主極低温タンク102に影響を与える可能性のある所望又は所定のレベルを超えて圧力が上昇することを防止するために、通気弁105が、二次ループ主極低温タンク102から一次ループ主極低温タンク101に戻る気化窒素ストリーム104上に設置される。第1の圧力伝送器119からフィードバックを得ると、第2のPIC121は、一次ループ主極低温タンク101内の圧力を低減及び/又は調整するために、通気弁105に開放するように命令する。通気弁105は、一次ループ主極低温タンク101のみに、又は気化窒素ストリーム104のみに接続されるよう、2つの弁(図示せず)の間に設置されてもよい。
【0020】
過冷却システムは、ユーザからの熱負荷を必ずしも完全に補償しない。それは、設計によって熱負荷よりも低い容量のものであることができるか、故障又は保守のために性能不足であるか若しくは停止することができるか、又は、電気消費コスト対液体窒素の利用可能性の間のトレードオフが興味深いものになる場合には、目的に応じて減速させることができる。
【0021】
過冷却再循環ストリーム106又は温熱再循環ストリーム107における流れが低減又は停止されると、二次ループ主極低温タンク102への液体極低温流体ストリーム103は、一次ループ主極低温タンク101によって維持される。液体極低温流体ストリーム103及び気化極低温流体ストリーム104内の圧力は、過冷却器106によって補償されないユーザからの冷却負荷に起因して増大する傾向がある。通気弁105は、所望の一定のタンク圧力を維持するよう、必要に応じて開く。
【0022】
液体バッファタンク111は、外部液体窒素源117(ループに装填するトレーラ等)からの液体窒素移送によって生成される摂動から冷却ループ(即ち、過冷却再循環ストリーム106又は温熱再循環ストリーム107)を隔離するために用いられる。この液体バッファタンク111内の液体窒素在庫は、また、過冷却システムを通る流れが低減又は停止される場合に、過冷却再循環ストリーム106及び温熱再循環ストリーム107内の液体窒素供給を維持するために用いることができる。液体バッファタンク111内の圧力は、加圧コイル(図示せず)によって制御される一方で、液体窒素は、一次ループ主極低温タンク101に移送される。
【0023】
本発明の一実施形態において、冷却能力は、120K~200Kの範囲における所望の温度内で低圧の不活性液体によって液体極低温流体ユーザ116に提供される。これは、所望の温度よりも低温を供給することを回避し、従って、非効率的な冷却を提供する。従って、全体的な冷却効率が改善される。
【0024】
提案する解決策は、熱的に一体化される2つの冷却ループ201/202を用いることからなる。一次冷却ループ201は、可燃性であってもよく、より高い圧力下で維持されてもよい極低温流体を用いてもよい。これにより、例えば、窒素又はメタン等の比較的安価な流体を用いることが可能となる。一次冷却ループ201は、一次ループ主極低温タンクと、液体寒剤を過冷却する少なくとも1つの過冷却器106とから構成される。
【0025】
一次冷却ループ内で生じる加圧された過冷却液体寒剤108は、次いで、二次冷却ループ202と熱交換する二次ループ主寒剤タンクコイル129に導入される。加圧された過冷却液体寒剤の熱交換器への移送は、移送ポンプを用いることによって、又は単に重力によってのどちらか一方で行うことができる。二次冷却ループ202は、通常、二次ループ主極低温タンク102を有し、二次ループ主極低温タンクコイル129を収容し、液体極低温流体ユーザ116に冷媒を提供する、はるかに小さい閉回路からなる。
【0026】
二次ループ202で用いられる特定の寒剤は、低圧で120K~200Kの範囲に含まれる飽和温度を有する、より高価な不活性寒剤の中から選択されてもよい。以下の表には、可能性のある寒剤の組み合わせ及びプロセス条件を列挙する。
【0027】
【0028】
非限定的な例として、メタンが一次冷却ループ流体として用いられ、キセノンが二次冷却ループ流体として用いられる以下のシステムを考える。
【0029】
冷却フェーズを開始するよう設定すると、一次ループ主極低温タンク101は、メタンを完全飽和相に維持するために、15.5barA(+5bar)よりわずかに高い圧力で、所定量のメタンで充填される。二次ループ主極低温タンク102は、キセノンを完全飽和相に維持するために、1barA(+1bar)よりわずかに高い圧力で、所定量のキセノンで充填される。
【0030】
上で説明したように、飽和メタンの第1の部分は、温熱再循環ストリーム107として一次ループ主極低温タンク101を出て、再循環ポンプ110内で加圧され、所望の温度を維持するよう必要に応じて、過冷却器バイパスライン118を通って過冷却器106をバイパスするか、又は過冷却器106を通過するかのどちらか一方を行う。過冷却されたメタンは、過冷却された再循環ストリーム108を通って過冷却器106を出て、極低温流体蒸気空間115内に噴霧される際に一次ループ主極低温タンク101内に再投入される。
【0031】
飽和メタンの第2の部分は、再度温熱再循環ストリーム107として一次ループ主極低温タンク101を出るが、この部分は、液体極低温ストリーム103Aを通過し、次いで二次ループ主極低温タンクコイル129に入る。液体極低温ストリーム103Aが二次ループ主極低温タンクコイル129を通過するにつれて、二次ループ主極低温タンク102に収容されているキセノンが冷却され、キセノン自体が加温され、通常は気化する104。気化した極低温流体ストリーム104は、次いで、一次ループ主極低温タンク101に戻され、そこで、極低温流体蒸気空間115内に噴霧される際に過冷却再循環ストリーム108と直接熱交換する。
【0032】
熱が液体極低温流体ストリーム103Aに伝達されるにつれて、二次ループ主極低温タンク102内の飽和温度(従って、飽和圧力)が達成及び/又は維持される。低温の二次ストリーム130の一部は、液体極低温流体ユーザ116に向けられる。液体窒素ユーザ116は、内部冷却目的のために低温二次ストリーム130を利用する。低温の二次ストリーム130は、従って、加温され、通常は気化する。加温された二次ストリーム131は、二次ループ主極低温タンク102に再循環される。
【0033】
加温フェーズを開始するよう設定すると、二次ループ主極低温タンクコイル129を通って流れていた飽和状態の第2の部分の流量が減少し、次いで停止する。二次ループ主極低温タンク102から熱が伝達されないため、二次ループ主極低温タンク102内の飽和温度はもはや維持されない。低温二次ストリーム130の一部が液体極低温流体ユーザ116に向けられ続けるにつれて、加温された二次ストリーム131は、ここで二次ループ気体バッファタンク126内に再度向けられる。加温された二次流131は、二次ループ加熱器127を通過し、そこで完全に気化及び/又は過熱され、次いで二次ループ圧縮器128を通過し、それによりストリーム圧力を上昇させ、それを二次ループ気体バッファタンク126に導入することが可能となる。従って、二次ループ主極低温タンク102内に最初に保持されていたキセノンの所定量の飽和液体供給が枯渇し、二次ループ気体バッファタンク126内に移送される。
【0034】
本発明の本質を説明するために本明細書中に説明した詳細、材料、ステップ、及び部品の配置における多くの追加の変更は、添付特許請求の範囲に表されるような本発明の原理及び適用範囲内で当業者によって行われてもよいことが理解されるであろう。従って、本発明は、上記で与えた実施例における特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。
【符号の説明】
【0035】
101 一次ループ主極低温タンク
102 二次ループ主極低温タンク/液相分離器
103 液体極低温流体ストリーム
104 気化した極低温流体ストリーム
105 通気弁
106 過冷却器
107 温熱再循環ストリーム
108 過冷却再循環ストリーム
109 再循環制御弁
110 再循環ポンプ
111 液体バッファタンク
112 バッファタンク移送ストリーム
113 バッファタンク移送制御弁
114 液体極低温流体(主極低温タンク内)
115 極低温流体蒸気(主極低温タンク内)
116 液体極低温流体ユーザ
117 外部液体極低温流体源
118 過冷却器バイパスライン
119 第1の圧力伝送器(一次ループ主極低温タンク内)
120 第1の周辺界面コントローラ
121 第2の周辺界面コントローラ
122 第2の圧力伝送器(過冷却器バイパスライン内)
123 第3の周辺界面コントローラ
124 第4の周辺界面コントローラ
125 バイパス制御弁
126 二次ループ気体バッファタンク
127 二次ループ加熱器
128 二次ループ圧縮器
129 二次ループ主極低温タンクコイル/熱交換器
130 低温の二次ストリーム
131 加温された二次ストリーム
201 一次冷却ループ
202 二次冷却ループ
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 120K~200Kの温度範囲における不活性且つ非加圧液体寒剤により液体極低温流体ユーザを冷却するためのシステムであって、
・主極低温タンク、1つの過冷却器、及び再循環ポンプから少なくとも構成され、圧力下の第1の液体極低温流体により動作するように設計される一次冷却ループを備え、
・前記一次冷却ループは、前記液体極低温流体ユーザに接続される液相分離器から構成される二次冷却ループに接続され、前記液相分離器は、熱交換器を収容し、第2の液体極低温流体により極めて低い圧力で動作されるよう設計され、
・前記二次冷却ループは、気体バッファタンクに接続され、それによって、冷却及び/又は加温フェーズ中に前記二次冷却ループからの前記第2の液体極低温流体の追加又は除去を可能にし、
・前記加圧された第1の液体極低温流体を用いて前記第2の液体極低温流体を凝縮するよう構成される、
システム。
[2] 前記第1の液体極低温流体は液体窒素である、[1]に記載のシステム。
[3] 前記第2の液体極低温流体は液体クリプトンである、[1]に記載のシステム。
[4] 前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体は四フッ化物である、[1]に記載のシステム。
[5] 前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体はキセノンである、[1]に記載のシステム。
[6] 前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体は一酸化二窒素である、[1]に記載のシステム。
[7] 120K~200Kの温度範囲における不活性且つ非加圧の液体寒剤により液体極低温流体ユーザを冷却するための方法であって、
・主極低温タンク、1つの過冷却器、及び再循環ポンプから少なくとも構成され、圧力下の第1の液体極低温流体により動作するように設計される一次冷却ループと、
・前記液体極低温流体ユーザに接続される液相分離器から構成される二次冷却ループであって、前記液相分離器は、熱交換器を収容し、第2の液体極低温流体により極めて低い圧力で動作されるよう設計される、二次冷却ループと、を備え、
前記方法は、
・前記過冷却器及び/又は前記再循環ポンプにより前記第1の液体極低温流体を第1の所定の温度範囲内に維持することと、
・前記熱交換器により前記第2の液体極低温流体を第2の所定の温度範囲内に維持することと、
・前記加圧された第1の液体極低温流体を用いて前記第2の液体極低温流体を再凝縮することと、を含む、
方法。
[8] 前記第1の液体極低温流体は液体窒素である、[7]に記載の方法。
[9] 前記第2の液体極低温流体は液体クリプトンである、[7]に記載の方法。
[10] 前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体は四フッ化物である、[7]に記載の方法。
[11] 前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体はキセノンである、[7]に記載の方法。
[12] 前記第1の液体極低温流体はメタンであり、前記第2の液体極低温流体は一酸化二窒素である、[7]に記載の方法。