(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】資産の予後健全性分析を実行するための方法及び計算システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20240826BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20240826BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q10/20
(21)【出願番号】P 2022575460
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2021065171
(87)【国際公開番号】W WO2021249943
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタノ,パベル
(72)【発明者】
【氏名】キルシュニック,フランク
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07788205(US,B2)
【文献】特表2018-524704(JP,A)
【文献】特開2019-105927(JP,A)
【文献】特開2014-229001(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0143564(US,A1)
【文献】川口 智大, 斎藤 秀雄,Markov連鎖を用いたデータセンタHigh Availabilityシステムの信頼性評価方法,研究報告システム・アーキテクチャ(ARC) [online],日本,情報処理学会,2015年05月19日,2015-ARC-215巻 9号,1-6,[令和6年1月12日検索], インターネット<URL: https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=142101&item_no=1&pagee_id=13&block_id=8>,ISSN 2188-8574, <URL: https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_action=repository_action_common_download&item_id=142101&item_no=1&attribute_id=1&file_no=1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
資産の予後健全性分析を実行する方法であって、前記資産(11、16)は、エージェントのセット(51~53)に関連付けられる複数の資
産のセット
(11~13;16~18)に含まれ、前記エージェント(51~53)の各々は、前記資産(11~13;16~18)のセットの
うちの関連付けられる資産の予後健全性分析を実行し、前記方法は、
少なくとも1つの集積回路(
173,183)によって実行される前記エージェントのセット(51~53)
のうちのエージェント(51)によって、確率的シミュレーションを実行することによって前記資産のセット(11~13;16~18)の
うちの資産(11、16)の資産健全性状態の将来の発展の予後を判定するステップであって、前記確率的シミュレーションは、離散状態モデル(41~44)の状態間の遷移の遷移確率を使用して実行される、判定するステップと、
前記エージェント(51)によって、前記資産のセット(11~13;16~18)の
うちの少なくとも1つの資産の観測される劣化の関数である観測情報(61;67)を受信するステップと、
各々の前記エージェント(51)によって、前記予後(80)を更新するステップであって
、受信した前
記観測情報に基づいて前記遷移確率を
独立して更新することを含む、更新するステップと、
前記確率的シミュレーションの結果に基づいて出力(80;100)を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記観測情報は、別のエージェントから
受信される、及び/又は、断続的にのみ確立される通信チャネルを介して中央モジュールから受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エージェント(51)は、他のエージェント(52、53)が、確率的シミュレーションを実行するために前記他のエージェント(52、53)によって使用される遷移確率を更新する時間とは無関係である時間において前記遷移確率を更新するように動作する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エージェント(51)は
、更新
した前記遷移確率に関する情報を
、前記エージェントのセット(51~53)のうちの他のエージェント(52、53)と非同期的に共有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記観測情報(61)は、前記資産(11;16)について取得されるセンサ測定値の関数である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エージェント(51)によって、前記観測情報又は前記観測情報から導出されるデータ(64)を前記エージェントのセット(51~53)のうちの少なくとも1つの他のエージェント及び/又は中央モジュール(54)に出力することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記観測情報(67)は、前記資産(11;16)とは異なる少なくとも1つの他の資産(12、13;17、18)について取得されるセンサ測定値の関数である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記観測情報は、修正遷移確率及び/又は修正ベイズ条件付き確率を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記離散状態
モデル(41~44)は、n個の状態を有し、nは2より大きい整数であり、前記確率的シミュレーションにおいて使用される遷移行列は、n-1個の非ゼロ対角行列要素のみを有し、任意選択的に、前記観測情報は、n-1個の遷移確率からなる、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記離散状態
モデルは、
前記資産(11、16)の動作が障害によって悪影響を受けない少なくとも1つの状態(41)と、
前記資産(11、16)の動作が障害によって悪影響を受けるが、前記資産(11、16)は動作し続ける少なくとも1つの状態(42、43)と、
前記資産(11、16)が障害のために動作不能である状態(44)と
を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記確率的シミュレーションは、マルコフ連鎖モンテカルロMCMCシミュレーションである、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記エージェントのセット(51~53)の各々は、確率的シミュレーションを実行して、それぞれの前記エージェントに関連付けられる前記資産の資産健全性状態の将来の発展の予後を判
定する、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、
中央モジュール(54)によって、前記エージェント(51~53)によって更新される前記遷移確率に関する情報(64~66)を受信することと、
前記中央モジュール(54)によって、修正遷移確率を決定することと、
前記中央モジュール(54)によって、前記修正遷移確率を前記エージェントのセット(51~53)に出力することと
をさらに含み、
任意選択的に、前記修正遷移確率を決定することは、受信情報を重み付け係数によって重み付けすることを含み、さらに任意選択的に、前記重み付け係数は、前記エージェントによって決定される
、更新
した前記遷移確率に関連付けられる信頼性に依存する、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
資産のセット(11~13;16~18)に含まれる資産(11、16)の予後健全性分析を実行するように動作するコンピューティングシステムであって、前記コンピューティングシステムは、
確率的シミュレーションを実行することによって前記資産(11、16)の資産健全性状態の将来の発展の予後を判定することであって、前記確率的シミュレーションは、離散状態モデルの状態間の遷移の遷移確率を使用して実行される、判定することと、
前記資産のセット(11~13;16~18)のうちの少なくとも1つの資産(11、16)の観測された劣化に基づく観測情報を受信することと、
受信
した前記観測情報に基づいて前記遷移確率を更新することを含む、前記予後(80)を更新することと、
前記確率的シミュレーションの結果に基づいて出力を生成することと
を行うために、
前記資産(11、16)に関連付けられるエージェント(51)を実行するように動作する少なくとも1つの集積回路(
173,183)を備える、コンピューティングシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの集積回路は、別のエージェントから
前記観測情報を受信するために、及び/又は、断続的にのみ確立される通信チャネルを介して中央モジュールから前記観測情報を受信するために前記エージェント(51)を実行するように動作する、請求項14に記載のコンピューティングシステム。
【請求項16】
産業又は電力システム(10;15)であって、
資産のセット(11~13;16~18)と、
前記資産のセット(11~13;16~18)
のうちの資産(11、16)の予後資産健全性分析を実行するための、請求項14又は請求項15に記載のコンピューティングシステム(170)と
を備える、産業又は電力システム(10;15)。
【請求項17】
前記コンピューティングシステム(170)は、前記資産を制御するための前記産業又は電力システムの非集中型制御システム(20~24)である、請求項16に記載の産業又は電力システム(10;15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、資産の健全性を評価するための技法に関する。本発明は、特に、資産の健全性を予後評価するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
発電、送電及び/又は配電システムなどの電力システム、並びに産業システムは、資産を含む。変圧器、発電機、及び分散型エネルギー資源(DER)ユニットは、そのような資産の例である。資産は、動作中に劣化を受ける。計画目的、メンテナンス作業又は交換作業のスケジューリングのために、資産の残存耐用年数(RUL)を推定することが望ましい。
【0003】
シミュレーション技法を使用して、資産の時間発展をシミュレートすることができる。そのようなシミュレーション技法のパラメータは、資産のフリートについて取り込まれた履歴センサデータに基づくことができる。シミュレーションは、資産の全体的な統計的発展についての良好な見通しを提供する。多数の同一又は類似の資産が運用される場合、資産の劣化プロセスに関する新たな情報は、貴重な情報源となり得る。資産の健全性の評価において、資産のセットの動作中に利用可能になる情報を使用することが望ましい。
【0004】
米国特許第7 788 205号明細書は、複雑なシステム内の構成要素の状態遷移の確率を予測する確率モデルを利用する技法を開示している。モデルは、実行時にシステムからの出力観測値を使用して訓練される。システムの全体的な状態及び健全性は、可能な状態間の現在の構成要素状態の分布を分析することによって実行時に決定することができる。
【0005】
Sang-ri Yi他「Particle Filter Based Monitoring and Prediction of Spatiotemporal Corrosion Using Successive Measurements of Structural Responses」(SENSORS,vol.18,no.11,13 November 2018(2018-11-13),page 3909)には、補強バーの劣化を予測するための技法が開示されている。
【0006】
X.Si他「A General Stochastic Degradation Modeling Approach for Prognostics of Degrading Systems With Surviving and Uncertain Measurements」(IEEE TRANSACTIONS ON RELIABILITY,IEEE SERVICE CENTER,PISCATAWAY,NJ,US,vol.68,no.3,1 September 2019,pages 1080-1100)には、残存耐用年数(RUL)を推定するための技法が開示されている。最尤推定フレームワークが、粒子フィルタリング及び平滑化方法と共に期待値最大化アルゴリズムに基づいてモデルパラメータを決定するために提供される。
【0007】
J.Z.Sikorska他「Prognostic modelling options for remaining useful life estimation by industry」(MECHANICAL SYSTEMS AND SIGNAL PROCESSING,vol.25,no.5,1 July 2011,pages 1803-1836)は、主要予測モデルクラスの長所及び短所を論じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
概要
資産劣化の発展を予測する高度な技法が必要とされている。特に、資産のセットから新たな情報が利用可能になったときに予後予測を調整することを可能にしながら、資産の健全性の劣化について予後予測を行うことを可能にする技法が必要とされている。代替的又は付加的に、非集中型システムを使用して健全性評価を実行することを可能にしながら、資産のセットのうちのいくつかの資産について取得された劣化プロセスに関する追加情報を組み合わせることができる技法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によれば、独立請求項に記載の方法及びコンピューティングシステムが提供される。従属請求項は、好ましい実施形態を定義する。
【0010】
本発明の実施形態によれば、複数のエージェントのセットが、予後資産健全性分析を実行するために使用される。複数のエージェントの各々は、資産のセットのうちの1つの資産に関連付けられ、エージェントが関連付けられるその資産の予後健全性分析を実行するように動作する。
【0011】
各エージェントは、確率的シミュレーション、特にマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を実行して、それぞれのエージェントが関連付けられる資産の発展の予後を取得することができる。確率的シミュレーションは、離散状態空間及び遷移確率を使用して実行することができる。
【0012】
新たな情報が利用可能になると、各エージェントは、そのそれぞれのシミュレーションに使用される遷移確率を更新するように動作することができる。これは様々な方法で行うことができる。例示のために、エージェントは、資産の劣化を示すセンサデータを受信することができ、その資産について、エージェントは、資産健全性状態の将来の発展についての予後を判定する。センサデータに基づいて、エージェントは、確率的シミュレーションにおいて将来使用するための更新済み遷移確率を決定することができる。
【0013】
代替的又は付加的に、エージェントは、1つ以上の他の資産の観測された劣化に基づいて、セット内の他のエージェントによって決定されているものとしての更新済み遷移確率及び/又は更新済みベイズ確率テーブルに関する情報を受信することができる。セット内の他のエージェントによって決定されているものとしての更新済み遷移確率及び/又は更新済みベイズ確率テーブルに関する受信情報に基づいて、エージェントは、確率的シミュレーションにおいて将来使用するための更新済み遷移確率を決定することができる。
【0014】
代替的又は付加的に、エージェントは、1つ以上の他の資産の観測された劣化に基づいて、中央モジュールによって決定されているものとしての更新済み遷移確率及び/又は更新済みベイズ確率テーブルに関する情報を受信することができる。中央モジュールによって決定されているものとしての更新済み遷移確率及び/又は更新済みベイズ確率テーブルに関する受信情報に基づいて、エージェントは、確率的シミュレーションにおいて将来使用するための更新済み遷移確率を決定することができる。
【0015】
一実施形態によれば、資産の予後健全性分析を実行する方法が提供される。資産は、エージェントのセットに関連付けられる複数の資産のセットに含まれる。エージェントの各々は、資産のセットのうちの関連付けられる資産の予後健全性分析を実行する。本方法は、エージェントのセットのエージェントによって、確率的シミュレーションを実行することによって資産のセットのうちの資産の資産健全性状態の将来の発展の予後を判定することを含み、確率的シミュレーションは、離散状態モデルの状態間の遷移の遷移確率を使用して実行される。本方法は、エージェントによって、資産のセットのうちの少なくとも1つの資産の観測された劣化の関数である観測情報を受信することを含む。本方法は、エージェントによって予後を更新することを含み、これは、受信観測情報に基づいて遷移確率を更新することを含む。本方法は、確率的シミュレーションの結果に基づいて出力を生成することを含む。
【0016】
エージェントは、他のエージェントが、確率的シミュレーションを実行するために他のエージェントによって使用される遷移確率を更新する時間とは無関係であり得る時間において遷移確率を更新するように動作することができる。
【0017】
遷移確率の更新は、観測情報の受信によってトリガされてもよい。
遷移確率の更新は、イベント駆動プロセスであってもよい。
【0018】
観測情報は、別のエージェントから、及び/又は通信チャネルを介して中央モジュールから受信されてもよい。
【0019】
通信チャネルは、通信時間間隔において断続的にのみ確立されてもよい。
観測情報は、通信チャネルが確立された通信時間間隔のうちの1つにおいて受信されてもよい。
【0020】
通信時間間隔は、所定の時間間隔であってもよい。
本方法は、エージェントのセットのうちの第2のエージェントによって、第2の確率的シミュレーションを実行することによって資産のセットのうちの第2の資産の資産健全性状態の将来の発展の第2の予後を判定することをさらに含んでもよく、確率的シミュレーションは、離散状態モデルの状態間の遷移の第2の遷移確率を使用して実行される。
【0021】
エージェント及び第2のエージェントは、同じ離散状態モデルを使用してもよい。
本方法は、第2のエージェントによって、第2の予後を更新することを含んでもよく、これは、第2の遷移確率を更新することを含む。
【0022】
エージェントは、更新済み遷移確率に関する情報をエージェントのセットのうちの他のエージェントと非同期的に共有することができる。
【0023】
観測情報は、エージェントが関連付けられている資産について取得されたセンサ測定値の関数であってもよい。
【0024】
センサ測定値は、電力システム資産状態パラメータなどの1つ以上の産業資産状態パラメータの測定値を含んでもよい。
【0025】
センサ測定値は、電力システム資産動作パラメータなどの1つ以上の産業資産動作パラメータの測定値を含んでもよい。
【0026】
センサ測定値は、電力システム資産動作パラメータなどの1つ以上の産業資産動作パラメータの測定値を含んでもよい。
【0027】
センサ測定値は、以下のうちの1つ、いくつか、又はすべての測定値を含んでもよい。
-温度パラメータ、
-振動パラメータ、
-音声及び/又は超音波パラメータ、
-潤滑パラメータ、
-速度パラメータ、
-流れパラメータ、
-圧力パラメータ、
-ガスパラメータ、
-水化学パラメータ、
-溶存ガス及び/又はフランパラメータ、
-電気的パラメータ(電圧、電流シグネチャ、及び抵抗を含むが、これらに限定されない)、
-上記の測定値のいずれか1つ又は任意の組み合わせから計算された導関数パラメータを含むがこれに限定されない、生センサデータから処理される導関数パラメータ。
【0028】
エージェント及び第2のエージェントは、最初は同じであってもよいが、異なる時間及び/又は異なる方法で更新される遷移確率を使用してもよい。したがって、資産及び第2の資産の進行中の動作中に時間が経過するにつれて、確率的シミュレーションを実行するためにエージェントによって使用される遷移確率及び第2のエージェントによって使用される第2の遷移確率は、互いに逸脱してもよい。
【0029】
本方法は、エージェントによって、観測情報又はそれから導出されるデータをエージェントのセットのうちの少なくとも1つの他のエージェント及び/又は中央モジュールに出力することをさらに含むことができる。
【0030】
観測情報又はそれから導出されるデータをエージェントのセットのうちの少なくとも1つの他のエージェント及び/又は中央モジュールに出力することは、観測情報の受信などのトリガイベントに応答して実行されてもよい。
【0031】
エージェントと少なくとも1つの他のエージェント及び/又は中央モジュールとの間の通信チャネルは、断続的に選択的に確立されてもよい。
【0032】
観測情報又はそれから導出されるデータをエージェントのセットのうちの少なくとも1つの他のエージェント及び/又は中央モジュールに出力することは、通信チャネルが利用可能であるときにのみ、選択的に実行されてもよい。
【0033】
観測情報から導出されるデータは、更新済み遷移確率及び/又は更新済みベイズ確率テーブルであってもよい。
【0034】
観測情報は、エージェントが関連付けられている資産とは異なる少なくとも1つの他の資産について取得されたセンサ測定値の関数であってもよい。
【0035】
センサ測定値は、電力システム資産状態パラメータなどの少なくとも1つの他の資産の1つ以上の産業資産状態パラメータの測定値、電力システム資産動作パラメータなどの少なくとも1つの他の資産の1つ以上の産業資産動作パラメータの測定値、及び/又は、電力システム資産動作パラメータなどの少なくとも1つの他の資産の1つ以上の産業資産動作パラメータの測定値を含んでもよい。センサ測定値は、エージェントが関連付けられている資産から取得されるセンサ測定値に関連して上述した測定値のいずれかを含んでもよい(センサ測定値は、エージェントが関連付けられている資産とは異なる少なくとも1つの他の資産についても取得されてもよいことが理解される)。
【0036】
観測情報は、修正遷移確率及び/又は修正ベイズ条件付き確率を含んでもよい。
修正遷移確率及び/又は修正ベイズ条件付き確率は、エージェントのセットのうちの2つ以上のエージェントによって決定された更新済み遷移確率に関する情報を受信し、組み合わせる中央モジュールから受信されてもよい。
【0037】
離散状態空間はn個の状態を有してもよく、nは2より大きい整数である。
状態間の遷移は、遷移行列によって統制されてもよい。
【0038】
遷移行列はスパース符号化されてもよい。
確率的シミュレーションにおいて使用される遷移行列は、n-1個の非ゼロ非対角行列要素のみを有し得る。
【0039】
観測情報は、n-1個の遷移確率からなってもよい。
離散状態空間は、資産の動作が障害によって悪影響を受け得ない少なくとも1つの状態を含んでもよい。
【0040】
離散状態空間は、資産の動作が障害によって悪影響を受け得ず、資産が動作し続ける少なくとも1つの状態を含んでもよい。
【0041】
離散状態空間は、資産が障害のために動作不能であり得る状態を含んでもよい。
確率的シミュレーションは、マルコフ連鎖モンテカルロMCMCシミュレーションであってもよい。
【0042】
マルコフチェーンは次数1を有してもよく、すなわち、遷移は、マルコフ連鎖モデルが現在ある状態に依存してもよく、その状態への以前の遷移とは無関係であってもよい。
【0043】
マルコフ連鎖モデルは、状態が単調に順序付けられた定性的解釈を有するようなものであってもよく、すなわち、劣化の重大度に関して2つの状態を比較することが常に可能である。
【0044】
離散状態空間の各状態は、離散状態空間の多くとも1つの他の状態への非ゼロ遷移確率を有してもよく、これはより深刻な劣化、及びそれ自体への非ゼロ遷移確率を表す。
【0045】
マルコフ連鎖モデルは、資産の障害に対応しない離散状態空間の状態が、離散状態空間のただ1つの他の状態への非ゼロ遷移確率を有するようなものであってもよい。
【0046】
マルコフ連鎖モデルは、資産の障害に対応する離散状態空間の状態が、それ自体以外の状態へのいかなる非ゼロ遷移確率も有しないようなものであってもよい。
【0047】
エージェントのセットの各々は、確率的シミュレーションを実行して、それぞれのエージェントに関連付けられている資産の資産健全性状態の将来の発展の予後を判定することができる。
【0048】
エージェントのセットのエージェントは、確率的シミュレーションにおいて使用される遷移確率を独立して更新するように動作してもよい。
【0049】
本方法は、中央モジュールによって、エージェントによって更新されている遷移確率に関する情報を受信することをさらに含んでもよい。
【0050】
中央モジュールは、受信情報に基づいて修正遷移確率を決定することができる。
中央モジュールは、修正遷移確率をエージェントのセットに出力することができる。
【0051】
修正遷移確率を決定することは、受信情報を重み付け係数によって重み付けすることを含むことができる。
【0052】
重み付け係数は、エージェントによって決定される更新済み遷移確率に関連付けられる重要度に依存してもよい。
【0053】
資産のセットのうちのすべての資産は、同じ又は類似の資産タイプであってもよい。
資産のセットのうちのすべての資産は、産業資産又は電力システム資産であってもよい。
【0054】
資産のセットのうちのすべての資産は、分散エネルギーリソース(DER)ユニット、発電機、電力変圧器、又は配電変圧器である。
【0055】
生成される出力は、残存耐用年数(RUL)曲線、障害確率(PoF)曲線、又は資産の劣化を表す他の情報であってもよい。
【0056】
生成される出力は、エージェントが関連付けられている資産を制御するために使用される制御信号であってもよい。
【0057】
生成される出力は、確率的シミュレーションに基づいて資産のダウンタイムをスケジュールするため、確率的シミュレーションに基づいて保守、検査若しくは交換作業をスケジュールするため、及び/又は確率的シミュレーションに基づいて保守若しくは検査間隔を変更するために使用される制御信号であってもよい。
【0058】
生成される出力は、エージェントによって更新される遷移確率を有する確率的シミュレーションに依存してもよい。
【0059】
本方法は、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)又は制御コマンドインターフェースを介して出力を出力することを含んでもよい。
【0060】
資産を動作させ、及び/又は、維持する方法は、一実施形態による方法を使用して資産のセットのうちの各資産の予後資産健全性分析を実行することと、予後資産健全性分析に基づいて制御又は出力措置を自動的に行うこととを含む。
【0061】
制御又は出力動作は、計算されている予後資産健全性状態発展に基づいてアラーム又は警告を生成すること、計算されている予後資産健全性状態発展に基づいて、資産の動作を制御するための制御信号を生成すること、資産健全性状態の計算された発展に基づいて資産のダウンタイムをスケジュールすること、資産健全性状態の計算されている発展に基づいて保守又は検査作業をスケジュールすること、資産健全性状態の計算されている発展に基づいて交換作業をスケジュールすること、資産健全性状態の計算されている発展に基づいて、保守又は検査間隔を変更すること、のうちの少なくとも1つを実行することを含んでもよい。
【0062】
制御又は出力動作は、動作時間の関数としての障害確率に関する情報、スケジュールされた若しくは再スケジュールされた保守作業間隔に関する情報、又はスケジュールされた交換作業間隔に関する情報を、インターフェースを介して出力することを含んでもよい。
【0063】
一実施形態によれば、資産のセットに含まれる資産の予後健全性分析を実行するように動作するコンピューティングシステムが提供される。コンピューティングシステムは、確率的シミュレーションを実行することによって資産の資産健全性状態の将来の発展の予後を判定することであって、確率的シミュレーションは、離散状態モデルの状態間の遷移の遷移確率を使用して実行される、判定することと、資産のセットのうちの少なくとも1つの資産の観測された劣化に基づいてもよい観測情報を受信することと、受信観測情報に基づいて遷移確率を更新することを含む、予後を更新することと、確率的シミュレーションの結果に基づいて出力を生成することとを行うために、エージェントを実行するように動作する少なくとも1つの集積回路を備える。
【0064】
コンピューティングシステムは、他のエージェントが、確率的シミュレーションを実行するために他のエージェントによって使用される遷移確率を更新する時間とは無関係であり得る時間において遷移確率を更新するようにエージェントが動作することができるように、動作することができる。
【0065】
コンピューティングシステムは、遷移確率の更新が、観測情報の受信によってトリガされ得るように動作することができる。
【0066】
コンピューティングシステムは、遷移確率の更新が、イベント駆動プロセスであり得るように動作することができる。
【0067】
コンピューティングシステムは、観測情報が、別のエージェントから、及び/又は通信チャネルを介して中央モジュールから受信され得るように動作することができる。
【0068】
コンピューティングシステムは、通信チャネルが、通信時間間隔において断続的にのみ確立され得るように動作することができる。
【0069】
コンピューティングシステムは、観測情報が、通信チャネルが確立された通信時間間隔のうちの1つにおいて受信され得るように動作することができる。
【0070】
コンピューティングシステムは、通信時間間隔が所定の時間間隔であり得るように動作することができる。
【0071】
コンピューティングシステムは、第2の確率的シミュレーションを実行することによって資産のセットのうちの第2の資産の資産健全性状態の将来の発展の第2の予後を判定するための第2のエージェントを実行するように動作することができ、確率的シミュレーションは、離散状態モデルの状態間の遷移の第2の遷移確率を使用して実行される。
【0072】
コンピューティングシステムは、エージェント及び第2のエージェントが同じ離散状態モデルを使用することができるように動作することができる。
【0073】
コンピューティングシステムは、第2のエージェントが、第2の予後を更新するように動作することができ、これは、第2の遷移確率を更新することを含む。
【0074】
コンピューティングシステムは、エージェントが、更新済み遷移確率に関する情報をエージェントのセットのうちの他のエージェントと非同期的に共有することができるように動作することができる。
【0075】
コンピューティングシステムは、観測情報が、エージェントが関連付けられている資産について取得されたセンサ測定値の関数であり得るように動作することができる。
【0076】
センサ測定値は、電力システム資産状態パラメータなどの1つ以上の産業資産状態パラメータの測定値を含んでもよい。
【0077】
センサ測定値は、電力システム資産動作パラメータなどの1つ以上の産業資産動作パラメータの測定値を含んでもよい。
【0078】
センサ測定値は、電力システム資産動作パラメータなどの1つ以上の産業資産動作パラメータの測定値を含んでもよい。
【0079】
センサ測定値は、以下のうちの1つ、いくつか、又はすべての測定値を含んでもよい。
-温度パラメータ、
-振動パラメータ、
-音声及び/又は超音波パラメータ、
-潤滑パラメータ、
-速度パラメータ、
-流れパラメータ、
-圧力パラメータ、
-ガスパラメータ、
-水化学パラメータ、
-溶存ガス及び/又はフランパラメータ、
-電気的パラメータ(電圧、電流シグネチャ、及び抵抗を含むが、これらに限定されない)、
上記の測定値のいずれか1つ又は任意の組み合わせから計算された導関数パラメータを含むがこれに限定されない、生センサデータから処理される導関数パラメータ。
【0080】
コンピューティングシステムは、エージェント及び第2のエージェントが、最初は同じであってもよいが、異なる時間及び/又は異なる方法で更新される遷移確率を使用することができるように動作することができる。したがって、資産及び第2の資産の進行中の動作中に時間が経過するにつれて、確率的シミュレーションを実行するためにエージェントによって使用される遷移確率及び第2のエージェントによって使用される第2の遷移確率は、互いに逸脱してもよい。
【0081】
コンピューティングシステムは、エージェントが、観測情報又はそれから導出されるデータをエージェントのセットのうちの少なくとも1つの他のエージェント及び/又は中央モジュールに出力することができるように動作することができる。
【0082】
コンピューティングシステムは、エージェントが、観測情報又はそれから導出されるデータをエージェントのセットのうちの少なくとも1つの他のエージェント及び/又は中央モジュールに、観測情報の受信などのトリガイベントに応答して出力するように動作することができる。
【0083】
コンピューティングシステムは、エージェントと少なくとも1つの他のエージェント及び/又は中央モジュールとの間の通信チャネルが、断続的に選択的に確立され得るように動作することができる。
【0084】
コンピューティングシステムは、エージェントが、観測情報又はそれから導出されるデータをエージェントのセットのうちの少なくとも1つの他のエージェント及び/又は中央モジュールに、通信チャネルが利用可能であるときにのみ、選択的に出力するように動作することができる。
【0085】
コンピューティングシステムは、観測情報から導出されるデータは、更新済み遷移確率及び/又は更新済みベイズ確率テーブルであり得るように動作することができる。
【0086】
コンピューティングシステムは、観測情報が、エージェントが関連付けられている資産とは異なる少なくとも1つの他の資産について取得されたセンサ測定値の関数であり得るように動作することができる。
【0087】
センサ測定値は、電力システム資産状態パラメータなどの少なくとも1つの他の資産の1つ以上の産業資産状態パラメータの測定値、電力システム資産動作パラメータなどの少なくとも1つの他の資産の1つ以上の産業資産動作パラメータの測定値、及び/又は、電力システム資産動作パラメータなどの少なくとも1つの他の資産の1つ以上の産業資産動作パラメータの測定値を含んでもよい。センサ測定値は、エージェントが関連付けられている資産から取得されるセンサ測定値に関連して上述した測定値のいずれかを含んでもよい(センサ測定値は、エージェントが関連付けられている資産とは異なる少なくとも1つの他の資産についても取得されてもよいことが理解される)。コンピューティングシステムは、観測情報が、修正遷移確率及び/又は修正ベイズ条件付き確率を含み得るように動作することができる。
【0088】
コンピューティングシステムは、修正遷移確率及び/又は修正ベイズ条件付き確率が、エージェントのセットのうちの2つ以上のエージェントによって決定された更新済み遷移確率に関する情報を受信し、組み合わせる中央モジュールから受信され得るように動作することができる。
【0089】
コンピューティングシステムは、離散状態空間がn個の状態を有し得るように動作することができ、nは2より大きい整数である。
【0090】
コンピューティングシステムは、コンピューティングシステムが、状態間の遷移が遷移行列によって統制され得るように動作することができるように動作することができる。
【0091】
コンピューティングシステムは、遷移行列がスパース符号化され得るように動作することができる。
【0092】
コンピューティングシステムは、確率的シミュレーションにおいて使用される遷移行列が、n-1個の非ゼロ非対角行列要素のみを有し得るように動作することができる。
【0093】
コンピューティングシステムは、観測情報が、n-1個の遷移確率からなり得るように動作することができる。
【0094】
コンピューティングシステムは、離散状態空間が、資産の動作が障害によって悪影響を受け得ない少なくとも1つの状態を含み得るように動作することができる。
【0095】
コンピューティングシステムは、離散状態空間が、資産の動作が障害によって悪影響を受け得ず、資産が動作し続ける少なくとも1つの状態を含み得るように動作することができる。
【0096】
コンピューティングシステムは、離散状態空間が、資産が障害のために動作不能であり得る状態を含み得るように動作することができる。
【0097】
コンピューティングシステムは、確率的シミュレーションが、マルコフ連鎖モンテカルロMCMCシミュレーションであり得るように動作することができる。
【0098】
コンピューティングシステムは、マルコフチェーンが次数1を有し得、すなわち、遷移が、マルコフ連鎖モデルが現在ある状態に依存し得、その状態への以前の遷移とは無関係であるように動作することができる。
【0099】
コンピューティングシステムは、マルコフ連鎖モデルが、状態が単調に順序付けられた定性的解釈を有するようなものであり得、すなわち、劣化の重大度に関して2つの状態を比較することが常に可能であるように動作することができる。
【0100】
コンピューティングシステムは、離散状態空間の各状態が、離散状態空間の多くとも1つの他の状態への非ゼロ遷移確率を有し得るように動作することができ、これはより深刻な劣化、及びそれ自体への非ゼロ遷移確率を表す。
【0101】
コンピューティングシステムは、マルコフ連鎖モデルが、資産の障害に対応しない離散状態空間の状態が、離散状態空間のただ1つの他の状態への非ゼロ遷移確率を有するようなものであり得るように動作することができる。
【0102】
コンピューティングシステムは、マルコフ連鎖モデルが、資産の障害に対応する離散状態空間の状態が、それ自体以外の状態へのいかなる非ゼロ遷移確率も有しないようなものであり得るように動作することができる。
【0103】
コンピューティングシステムは、エージェントのセットを実行するように動作することができる。
【0104】
コンピューティングシステムは、エージェントのセットの各エージェントが、確率的シミュレーションを実行して、それぞれのエージェントに関連付けられている資産の資産健全性状態の将来の発展の予後を判定することができるように動作することができる。
【0105】
コンピューティングシステムは、エージェントのセットのエージェントが、確率的シミュレーションにおいて使用される遷移確率を独立して更新するように動作することができるように動作することができる。
【0106】
コンピューティングシステムは、中央モジュールを実行して、エージェントによって更新されている遷移確率に関する情報を受信するように動作することができる。
【0107】
コンピューティングシステムは、中央モジュールが、受信情報に基づいて修正遷移確率を決定することができるように動作することができる。
【0108】
コンピューティングシステムは、中央モジュールが、修正遷移確率をエージェントのセットに出力することができるように動作することができる。
【0109】
コンピューティングシステムは、中央モジュールが、受信情報を重み付け係数によって重み付けして、修正遷移確率を決定するように動作することができる。
【0110】
コンピューティングシステムは、重み付け係数が、エージェントによって決定される更新済み遷移確率に関連付けられる重要度に依存し得るように動作することができる。
【0111】
コンピューティングシステムは、資産のセットの予後健全性分析を実行するためにエージェントのセットを実行するように動作することができ、資産のセットのすべての資産は、同じ又は類似の資産タイプであってもよい。
【0112】
コンピューティングシステムは、資産のセットの予後健全性分析を実行するためにエージェントのセットを実行するように動作することができ、資産のセットのうちのすべての資産は、産業資産又は電力システム資産であってもよい。
【0113】
コンピューティングシステムは、資産のセットの予後健全性分析を実行するためにエージェントのセットを実行するように動作することができ、資産のセットのうちのすべての資産は、分散エネルギーリソース(DER)ユニット、発電機、電力変圧器、又は配電変圧器である。
【0114】
コンピューティングシステムは、生成される出力が、残存耐用年数(RUL)曲線、障害確率(PoF)曲線、又は資産の劣化を表す他の情報であり得るように動作することができる。
【0115】
コンピューティングシステムは、生成される出力が、エージェントが関連付けられている資産を制御するために使用される制御信号であり得るように動作することができる。
【0116】
コンピューティングシステムは、生成される出力が、確率的シミュレーションに基づいて資産のダウンタイムをスケジュールするため、確率的シミュレーションに基づいて保守、検査若しくは交換作業をスケジュールするため、及び/又は確率的シミュレーションに基づいて保守若しくは検査間隔を変更するために使用される制御信号であり得るように動作することができる。
【0117】
コンピューティングシステムは、生成される出力が、エージェントによって更新される遷移確率を有する確率的シミュレーションに依存し得るように動作することができる。
【0118】
コンピューティングシステムは、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)又は制御コマンドインターフェースを介して出力を出力するように動作することができる。
【0119】
コンピューティングシステムは、資産のセットを動作させ、及び/又は、制御するように動作することができ、コンピューティングシステムは、資産のセットの各資産の予後資産健全性分析を実行し、予後資産健全性分析に基づいて制御又は出力動作を自動的に行うように動作する。
【0120】
コンピューティングシステムは、制御又は出力動作が、計算されている予後資産健全性状態発展に基づいてアラーム又は警告を生成すること、計算されている予後資産健全性状態発展に基づいて、資産の動作を制御するための制御信号を生成すること、資産健全性状態の計算された発展に基づいて資産のダウンタイムをスケジュールすること、資産健全性状態の計算されている発展に基づいて保守又は検査作業をスケジュールすること、資産健全性状態の計算されている発展に基づいて交換作業をスケジュールすること、資産健全性状態の計算されている発展に基づいて、保守又は検査間隔を変更すること、のうちの少なくとも1つを実行することを含み得るように動作することができる。
【0121】
コンピューティングシステムは、制御又は出力動作が、動作時間の関数としての障害確率に関する情報、スケジュールされた若しくは再スケジュールされた保守作業間隔に関する情報、又はスケジュールされた交換作業間隔に関する情報を、インターフェースを介して出力することを含み得るように動作することができる。
【0122】
一実施形態による産業又は電力システムは、資産のセットと、資産の予後資産健全性分析を実行するためのコンピューティングシステムとを備える。
【0123】
コンピューティングシステムは、産業システム又は電力システムの非集中型制御システムであってもよい。
【0124】
様々な効果及び利点が本発明に関連する。資産健全性状態の将来の発展の予後を得るためにエージェントによって実行される確率的シミュレーションは、同等の産業又は電力システム資産から動的に到来するデータ(例えば、グリーンフィールドプロジェクトの学習曲線)を使用して更新することができる。
【0125】
いくつかの同等の産業資産の資産健全性状態分析を実行する役割を担うエージェント間の情報を効率的に転送することができる。異なる資産に関連付けられているエージェントが半独立のエージェントとして動作する場合でも、エージェント間で情報を共有することができ、それによってフリート学習を提供することができる。
【0126】
異なる資産を担当するエージェント間の情報は、完全なデータを格納及び送信する必要なしに圧縮形式で共有することができる。例示のためには、任意選択的に相対的な重要度を示す情報と共に、遷移行列の非ゼロ行列要素のみを格納及び送信することで十分であり得る。
【0127】
離散状態空間及び劣化の次の重大度に対応する離散状態空間の最大1つの他の状態への非ゼロ遷移確率を使用するとき、エージェント間及び/又はエージェントと中央モジュールとの間で更新済み遷移確率に関する情報を共有するために必要なパラメータはごく少数である。
【0128】
規範的なツール又はアプリケーションで使用することができる、RUL又はPoF曲線の分散又は信頼区間に関する定量的情報などの追加の情報を生成することができる。
【0129】
図面の簡単な説明
本発明の主題は、添付の図面に例示される好ましい例示的な実施形態を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【
図1】一実施形態によるコンピューティングシステムを有する電力システムの概略図である。
【
図2】一実施形態によるコンピューティングシステムを有する電力システムの概略図である。
【
図3】実施形態において利用されるマルコフ連鎖モデルを表す図である。
【
図4】一実施形態によるエージェントを示すブロック図である。
【
図5】一実施形態によるエージェント及び中央モジュールを示すブロック図である。
【
図6】一実施形態による方法のフローチャートである。
【
図7】一実施形態による方法及びコンピューティングシステムの動作を示すグラフ図である。
【
図8】状態占有確率の時間発展を示す棒グラフ図である。
【
図9】一実施形態によるシステム及びコンピューティングシステムによって生成される例示的な出力を示すグラフ図である。
【
図10】一実施形態による方法及びシステムの動作を示す図である。
【
図11】一実施形態による方法及びシステムの動作を示す図である。
【
図12】一実施形態によるコンピューティングシステムのブロック図である。
【
図13】一実施形態によるコンピューティングシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0131】
実施形態の詳細な説明
本発明の例示的な実施形態は、図面を参照して説明され、図面において、同一又は類似の参照符号は同一又は類似の要素を示す。いくつかの実施形態は、分散型エネルギー資源(DER)ユニット又は変圧器などの電力システムの資産の文脈で説明されるが、実施形態はそれに限定されない。実施形態の特徴は、特に明記しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0132】
図1及び
図2は、電力システム10、15の概略図である。電力システム10、15は、複数の資産を備える。資産は、分散エネルギー資源(DER)ユニット11~13、16~18などの発電機、変圧器、又は他の電力システム資産を含んでもよい。
【0133】
電力システム10、15は、各々が資産に関連付けられているローカルコントローラ21~23を備える制御システムを含む。制御システムは、中央システム20を含んでもよい。中央システム20は、ローカルコントローラと通信可能に結合することができる。中央システム20は、リモート(例えば、クラウドベース)サーバシステム24と通信可能に結合することができる。
【0134】
下記により詳細に説明するように、ローカルコントローラ21~23、中央システム20、及び/又はリモートサーバシステム24は、離散状態モデルを使用して、予後資産健全性分析を実行するように動作することができる。離散状態モデルは、マルコフ連鎖モデルであってもよい。離散モデルは、下記に説明するように、特定の構成を有することができる。
【0135】
複数のエージェントを配備することができ、各エージェントは、資産のうちの1つの予後資産健全性分析を実行することに関連付けられ、その役割を担う。各エージェントは、離散状態モデル(マルコフ連鎖モデルなど)の状態間の遷移確率をローカルに更新するように動作することができる。これは、イベント駆動方式又は時間駆動方式で行われてもよい。遷移確率の更新は、以下のうちの1つ以上に依存し得る。
【0136】
-エージェントが資産健全性状態の将来の発展の予後を判定する資産のセンサデータ、
-同じ又は類似の資産タイプの別の資産について別のエージェントによって決定される遷移確率、
-エージェントと少なくとも断続的に通信することができる中央モジュールによって決定される遷移確率。
【0137】
エージェントは「ローカルエージェント」として参照される場合もある。関連付けられている資産について取り込まれた情報を使用してエージェントによってローカルに実行される遷移確率の更新は、「ローカル更新」として参照されることもある。
【0138】
エージェントは、ローカルコントローラ21~23上で実行されてもよいが、必ずしも実行される必要はない。中央モジュールは、これに限定されることなく、中央システム20及び/又はリモートサーバシステム24上で実行されてもよい。
【0139】
ローカルコントローラ21~23、中央システム20、及び/又はリモートサーバシステム24のうちの1つ以上で実行されるエージェントは、予後資産健全性分析を実行するために、複数の独立したシミュレーション、特にマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)シミュレーションを含む確率的シミュレーションを実行するように動作することができる。
【0140】
予後資産健全性分析の結果は、ダウンタイム、保守作業、交換作業をスケジュールするため、又は制御動作を自動的に実行するために、ローカルコントローラ21~23、中央システム20、及び/又はリモートサーバシステム24によって使用されてもよい。ローカルコントローラ21~23、中央システム20、及び/又はリモートサーバシステム24は、制御データ又は出力データを生成及び出力するように動作することができる。出力は、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)26を介して提供することができる。HMIは、インターネット又は別の広域ネットワーク(WAN)を介してローカルコントローラ21~23、中央システム20、及び/又はリモートサーバシステム24に結合することができる。
【0141】
図3~
図12を参照してより詳細に説明するように、予後資産健全性分析は、資産の時間発展のシミュレーションを含むことができる。
【0142】
本明細書に記載の技法は、予後資産健全性分析がエージェントによって実行される特定の資産にとって利用可能なセンサデータがない場合に使用することができる。例示のために、資産11、16などの資産について、たとえその資産11、16にとってセンサデータが(まだ)利用可能でない場合であっても、残存耐用年数(RUL)曲線又は他の予後資産健全性予測を計算することができる。資産11、16の寿命動作中に検出された類似又は同一の資産12、13、17、18の劣化に関する情報を使用して、確率的シミュレーションにおいて使用される遷移確率を動的に更新することができる。
【0143】
したがって、動作中に動的に利用可能になるにつれて劣化に関する情報を利用することができるエージェントのセットを使用して、資産のセット11~13、16~18の資産健全性状態の将来の発展の予後を更新するために情報を使用することを可能にするフリート学習を実施することができる。
【0144】
エージェント間及び/又はエージェントと中央モジュールとの間で交換される必要があるデータの量を減らすために、離散状態のセット及び特別に設計された遷移確率を有する特定の離散状態モデルを使用することができる。
【0145】
図3は、実施形態による方法及びコンピューティングシステムにおいて使用することができるマルコフ連鎖モデルのグラフである。マルコフ連鎖モデルの状態空間は、n個の状態S1、....、Snのセットからなる。本事例において、n=4である。ただし、状態の数が異なる(例えば、n=3又はn=5又はn>5)状態空間が、代わりに使用されてもよい。
【0146】
状態空間の状態は、資産健全性の劣化の重大度がS1からS2、S2からS3などに増大するように順序付けられてもよい。すなわち、マルコフ連鎖モデルの最後の状態を除くすべての状態の後に、より深刻な劣化を表す別の状態が続き得る。マルコフ連鎖モデルの最後の状態は、最も深刻な劣化を表し得る。
【0147】
マルコフ連鎖モデルは、第1の状態、第2の状態、...第(n-1)の状態41~43が、状態空間のただ1つの他の状態への非ゼロ遷移確率p12、p23、p34を有するように設定されてもよい。第nの状態44は、自身以外の状態への非ゼロ遷移確率を有しない。
【0148】
例示のために、マルコフ連鎖モデルは、第1の状態41から第2の状態42への有限の遷移確率p12があるが、第2の状態42から第1の状態41に戻るゼロの遷移確率があるようなものであってもよい。確率1-p12では、第1の状態41は確率的シミュレーションの反復において維持される。
【0149】
マルコフ連鎖モデルは、第2の状態42から第3の状態43への有限の遷移確率p23があるが、第3の状態43から第2の状態42に戻るゼロの遷移確率があるようなものであってもよい。確率1-p23では、第2の状態42は確率的シミュレーションの反復において維持される。
【0150】
マルコフ連鎖モデルは、第3の状態43から第4の状態44への有限の遷移確率p34があるが、第4の状態44から第3の状態43に戻るゼロの遷移確率があるようなものであってもよい。確率1-p34では、第3の状態43は確率的シミュレーションの反復において維持される。
【0151】
マルコフ連鎖モデルの最後の状態44は、資産がもはや動作することができない程度に故障した状態に対応してもよい。
【0152】
状態空間の他の状態41~43は、異なる劣化度に対応してもよい。
例示のために、第1の状態41(「未知」状態S1としてされる場合もある)は、資産動作に影響を与える既知の劣化が存在しない資産状態に対応し得る。例示のために、第1の状態41は、障害が記録されていないか、又は障害を記録することができない状態に対応してもよい。
【0153】
第2の状態42(「初期」状態S2として参照される場合もある)は、資産の性能に直ちに影響を与えない程度の軽微な重大度の検出可能な障害に対応してもよい。そのような初期障害は、通常、平均修復時間(MTTR)が短く、修復コストが低く、全体的な性能への影響が低いことを特徴とする。適切に維持されない場合、初期障害は、より深刻な劣化障害に発展する可能性がある。
【0154】
第3の状態43(「劣化」状態S3として参照される場合もある)は、システムの性能を大幅に低下させるが、即時の資産停止にはつながらない障害を表すモードに対応してもよい。通常、このような障害は、部品の劣化によって引き起こされる。未処置のままにすると、劣化は最終的に重大な障害につながる。
【0155】
第4の状態44(「重大な」状態S4として参照される場合もある)は、資産の即時かつ完全な停止を引き起こす最も深刻な障害モードに対応してもよい。それは、通常、(完全な生産損失のために)長くコストのかかるMTTRを特徴とする。
【0156】
マルコフ連鎖モデルの初期遷移確率は、人間の専門家からユーザインターフェースを介して受信されてもよく、又は履歴データを使用して決定されてもよい。遷移確率p12、p23、p34の様々なセットを使用することができる。例示のために、遷移確率p12、p23、p34のN>1、特に特にN>2の異なるセットを使用して、異なる周囲及び/又は動作条件下での資産健全性状態の発展をシミュレートすることができる。
【0157】
上記で説明したように(すなわち、1からnまで漸進的に深刻になる劣化の順序で)構成されたn=4個の状態を有する離散状態空間について、モデルの遷移行列は、以下のように定義することができる。
【0158】
【0159】
一般に、上記で説明したように(すなわち、1からnまで漸進的に深刻になる劣化の順序で)構成されたn個の状態を有する離散状態空間について、モデルの遷移行列は、以下のように定義することができる。
【0160】
【0161】
遷移行列Tは、疎行列であってもよい。遷移行列Tは、行列の対角の下に配置されたn-1個の非ゼロ非対角行列要素のみを有することができる。遷移行列Tは、n-1個の遷移確率p12、p23、...、pn-1,nによって完全に定義される。これらのn-1個の遷移確率は、離散状態モデルの異なる状態間の可能な遷移を完全に定義する。
【0162】
同一又は類似の資産のセットについて動態が決定される場合であっても、遷移行列Tは資産に依存し得ることが理解されよう。すなわち異なるエージェントは、少なくとも遷移確率が動作中に更新されているため、異なる遷移確率p12、p23、...pn-1,nを使用し得る。
【0163】
図4は、一実施形態によるシステムを示すブロック図である。エージェント51、52、53のセットが配備される。エージェント51、52、53の各々は、資産に関連付けられ、その特定の資産の資産健全性状態の将来の発展の予後を判定する役割を担う。
【0164】
エージェント51、52、53は、異なるローカルコントローラ21~23上で実行されてもよい。エージェント51、52、53は、中央システム20及び/又はリモートサーバシステム24上で実行されてもよい。
【0165】
第1のエージェント51は、確率的シミュレーション(例えば、MCMC)を実行して、第1の資産11、16の劣化プロセスをシミュレートする。第1のエージェント51は、遷移行列T1を使用する。遷移行列T1は、すべてのエージェント51~53について同一に初期化されてもよい。動作中、第1のエージェント51は、時間依存方式で遷移行列T1を更新してもよい。
【0166】
第1のエージェント51は、イベント駆動方式で遷移行列T1を更新してもよい。例示のために、遷移行列T1は、第1の観測情報61の受信に応答して、及び/又はプッシュ/プル機構を介した第1の観測情報61の受信のための通信チャネルの断続的な確立に応答して更新されてもよい。第1の観測情報61は、以下のいずれか1つ又は任意の組合せであってもよく、又はそれを含んでもよい。
【0167】
-第1のエージェント51が資産健全性状態の将来の発展の予後を判定する第1の資産11、16のセンサデータ。
【0168】
-第1の資産11、16と同じ又は類似の資産タイプの別の資産12、13、17、18について別のエージェント52、53によって決定される遷移確率p12、p23、...、pn-1,n、又はベイズ確率テーブルデータ。
【0169】
-
図5を参照してより詳細に説明するような、第1のエージェント51と少なくとも断続的に通信することができる中央モジュールによって決定される遷移確率。
【0170】
第2のエージェント52は、確率的シミュレーション(例えば、MCMC)を実行して、第2の資産12、17の劣化プロセスをシミュレートする。第2のエージェント52は、遷移行列T2を使用する。遷移行列T2は、すべてのエージェント52~53について同一に初期化されてもよい。動作中、第2のエージェント52は、時間依存方式で遷移行列T2を更新してもよい。遷移行列T2は、第1のエージェント51によって使用される遷移行列T1の時間発展とは異なる時間発展を有してもよい。
【0171】
第2のエージェント52は、イベント駆動方式で遷移行列T2を更新してもよい。例示のために、遷移行列T2は、第2の観測情報62の受信に応答して、及び/又はプッシュ/プル機構を介した第2の観測情報62の受信のための通信チャネルの断続的な確立に応答して更新されてもよい。第2の観測情報62は、以下のいずれか1つ又は任意の組合せであってもよく、又はそれを含んでもよい。
【0172】
-第2のエージェント52が資産健全性状態の将来の発展の予後を判定する第2の資産12、17のセンサデータ。
【0173】
-第2の資産12、17と同じ又は類似の資産タイプの別の資産11、13、16、18について別のエージェント52、53によって決定される遷移確率p12、p23、...、pn-1,n、又はベイズ確率テーブルデータ。
【0174】
-
図5を参照してより詳細に説明するような、第2のエージェント52と少なくとも断続的に通信することができる中央モジュールによって決定される遷移確率。
【0175】
第3のエージェント53は、確率的シミュレーション(例えば、MCMC)を実行して、第3の資産13、18の劣化プロセスをシミュレートする。第3のエージェント53は、遷移行列T3を使用する。遷移行列T3は、すべてのエージェント53~53について同一に初期化されてもよい。動作中、第3のエージェント53は、時間依存方式で遷移行列T3を更新してもよい。遷移行列T3は、第1のエージェント51によって使用される遷移行列T1の時間発展及び/又は第2のエージェント52によって使用される遷移行列T2の時間発展とは異なる時間発展を有してもよい。
【0176】
第3のエージェント53は、イベント駆動方式で遷移行列T3を更新してもよい。例示のために、遷移行列T3は、第3の観測情報63の受信に応答して、及び/又はプッシュ/プル機構を介した第3の観測情報63の受信のための通信チャネルの断続的な確立に応答して更新されてもよい。第3の観測情報63は、以下のいずれか1つ又は任意の組合せであってもよく、又はそれを含んでもよい。
【0177】
-第3のエージェント53が資産健全性状態の将来の発展の予後を判定する第3の資産13、18のセンサデータ。
【0178】
-第3の資産13、18と同じ又は類似の資産タイプの別の資産11、12、16、17について別のエージェント53、53によって決定される遷移確率p12、p23、...、pn-1,n、又はベイズ確率テーブルデータ。
【0179】
-
図5を参照してより詳細に説明するような、第3のエージェント53と少なくとも断続的に通信することができる中央モジュールによって決定される遷移確率。
【0180】
エージェント51~53は、非同期的にそれらの遷移行列を更新してもよい。更新済み遷移行列は、少なくとも更新時以降のシミュレーションに使用することができる。任意選択的に、確率的シミュレーションは、更新済み遷移行列の生成前の過去について繰り返されてもよく、それにより、将来だけでなく過去についても予後が再計算される。
【0181】
エージェント51~53は、直接的に又は中央モジュールを介してのいずれかで、更新済み遷移行列に関する情報をシステムの他のエージェントに提供することができる。遷移行列が疎行列である場合、非常に少数のパラメータ(例えば、n-1個のみの独立した遷移確率p12、p23、...、pn-1,n)のみが送信される必要がある。
【0182】
更新の重要度に関する情報が計算されてもよい。重要度に関する情報は、更新を実行するエージェント51~53が更新済み遷移確率p12、p23、...、pn-1,nを考慮するのをどの程度信頼できるかを定量化することができる。
【0183】
図5は、一実施形態によるシステムを示すブロック図である。エージェント51、52、53のセットが配備される。エージェント51、52、53の各々は、資産に関連付けられ、その特定の資産の資産健全性状態の将来の発展の予後を判定する役割を担う。
【0184】
エージェント51、52、53は、異なるローカルコントローラ21~23上で実行されてもよい。エージェント51、52、53は、中央システム20及び/又はリモートサーバシステム24上で実行されてもよい。
【0185】
中央モジュール54は、中央システム20及び/又はリモートサーバシステム24上で実行されてもよい。
【0186】
エージェント51、52、53及び中央モジュール54は、通信可能に結合されてもよい。エージェント51、52、53と中央モジュール54との間の通信チャネルは、永続的な通信チャネルであってもよいが、必ずしもそうである必要はない。通信チャネルは、断続的に確立されてもよい。例示のために、通信チャネルは、イベント駆動方式又は周期的方式で確立されてもよい。
【0187】
第1のエージェント51は、利用可能なローカル情報61に基づいて第1のエージェントによって実行される確率的シミュレーションにおいて使用される遷移確率を更新すると、更新済み遷移確率に関する情報64を中央モジュール54に提供することができる。中央モジュール54は、情報64を処理することができ、任意選択的に、他のエージェント52、53によって実行される遷移確率の更新に関する情報を用いてそれを集約することができる。中央モジュール54は、第2のエージェント52及び第3のエージェント53への遷移確率を計算するために使用される、遷移確率及び/又はベイズ確率に関する、更新済みの、より信頼性の高い情報をデータ68、69として提供することができる。データ68、69はまた、産業又は電力システムの実際の動作中に観測される劣化に基づくため、本出願の意味における「観測情報」の形態をも表す。
【0188】
第2のエージェント52は、利用可能なローカル情報62に基づいて第2のエージェントによって実行される確率的シミュレーションにおいて使用される遷移確率を更新すると、更新済み遷移確率に関する情報65を中央モジュール54に提供することができる。中央モジュール54は、情報65を処理することができ、任意選択的に、他のエージェント51、53によって実行される遷移確率の更新に関する情報を用いてそれを集約することができる。中央モジュール54は、第1のエージェント51及び第3のエージェント53への遷移確率を計算するために使用される、遷移確率及び/又はベイズ確率に関する、更新済みの、より信頼性の高い情報をデータ67、69として提供することができる。上述したように、データ67、69は、産業又は電力システムの実際の動作中に観測される劣化に基づくため、本出願の意味における「観測情報」の形態を表す。
【0189】
第3のエージェント53は、利用可能なローカル情報63に基づいて第3のエージェントによって実行される確率的シミュレーションにおいて使用される遷移確率を更新すると、更新済み遷移確率に関する情報66を中央モジュール54に提供することができる。中央モジュール54は、情報65を処理することができ、任意選択的に、他のエージェント51、52によって実行される遷移確率の更新に関する情報を用いてそれを集約することができる。中央モジュール54は、第1のエージェント51及び第2のエージェント52への遷移確率を計算するために使用される、遷移確率及び/又はベイズ確率に関する、更新済みの、より信頼性の高い情報をデータ67、68として提供することができる。上述したように、データ67、68はまた、産業又は電力システムの実際の動作中に観測される劣化に基づくため、本出願の意味における「観測情報」の形態をも表す。
【0190】
図6は、一実施形態による方法70のフローチャートである。方法70は、ローカルコントローラ21~23、中央システム20、及び/又はリモートサーバシステム24内の1つ以上のICによって実行されてもよいエージェント51~53の各々によって自動的に実行されてもよい。異なるエージェント51~53は、互いに独立して方法70を実行することができる。
【0191】
ステップ71において、マルコフ連鎖モデルのMCMCシミュレーション又は他の確率的シミュレーションが実行される。ステップ71は、100を超える、1000を超える、2000を超える、5000を超えるシミュレーション、10000を超えるシミュレーション、50000を超えるシミュレーション、100000を超えるシミュレーション、500000を超えるシミュレーション、又は百万以上のシミュレーションを実行することを含んでもよい。計算能力を増大させることによって、シミュレーションの数に上限がなくなる。シミュレーションは並列に実行されてもよい。
【0192】
マルコフ連鎖モデルの遷移確率p12、p23、...pn-1,nの任意のセットに対して、多数のシミュレーション(例えば、100超又は1000超)を実施してもよいが、同じエージェントが実施するすべてのシミュレーションについて遷移確率が同じである必要はない。遷移確率p12、p23、...pn-1,nの異なるセットを使用して、異なる動作条件及び/又は周囲条件の影響を定量的に評価することができる。
【0193】
シミュレーションは、ある計画対象期間にわたって実行されてもよい。計画対象期間は、特定の資産に依存し得る。変圧器などの電力システム資産の場合、典型的な寿命は10年を超え、20年を超え、又はさらにより長い。したがって、確率的シミュレーションは、10年を超え、20年を超え、又はさらに長い計画対象期間にわたって実行され得る。計画対象期間はまた、資産に応じてより短い場合もある。例示のために、予後計画対象期間は、1週間以上、1ヶ月以上などであってもよい。予後計画対象期間は、複数のサイクル、例えば、特定の数の飛行サイクル、船舶ルートサイクル、列車ルートサイクルなどにおいて測定されてもよく、それらを含んでもよい。
【0194】
シミュレーションの初期状態は、利用可能な資産に関する情報に応じて選択されてもよい。資産に関する情報が利用できない場合、シミュレーションはすべて、検出可能な障害に関する情報がない第1の状態41によって開始し得る。資産に関する情報、例えば設置後に収集されたセンサデータが利用可能な場合、このセンサデータはシミュレーションを初期化するために使用することができる。様々なMCMC又は他の確率的シミュレーションの初期状態の分布は、すでに収集されたセンサデータが、資産性能に影響を及ぼす認識可能な障害がないことを示すか否か、又は資産性能に影響を及ぼす検出可能な問題があるか否かに応じて選択されてもよい。
【0195】
さらに、初期化は確率的であり得る。例示のために、利用可能な情報が、資産が状態41にあるか状態42にあるかを、これらの状態のいずれかにある可能性が等しいことによって決定的でない場合、システムは、資産が状態41にある確率が50%に等しく、資産が状態42にある確率が50%に等しくなるように、ベイズ事前分布によって初期化することができる。より多くの状態及び異なる確率を有する他の確率的開始も可能であり得る。
【0196】
ステップ72において、遷移確率を更新するためのトリガイベントが満たされるか否かが判定される。トリガイベントは、観測情報の受信であってもよく、観測情報は、進行中の動作中に資産について取り込まれたセンサデータに基づいてもよく、及び/又は、同じ又は類似のタイプの他の資産の観測に依存してもよい。
【0197】
遷移確率を変更するためのトリガイベントが満たされない場合、方法はステップ71に戻ることができる。遷移確率を変更するためのトリガイベントが満たされない場合、方法はステップ73において継続することができる。
【0198】
ステップ73において、遷移確率を更新することができる。遷移確率の更新は、MCMCシミュレーションに基づいて予測される動態と比較しての、1つ以上の資産11~13、16~18の観測された劣化動態に基づいて実行されてもよい。ステップ73において遷移確率を更新することは、資産11~13、16~18の観測された劣化から導出され得るベイズ条件付き確率に基づいて遷移確率を再計算することを含んでもよい。
【0199】
ステップ74において、更新済み遷移確率に関する情報を他のエージェント及び/又は中央モジュール74に提供することができる。(例えば、更新済み遷移確率の計算に使用されるセンサデータの量に基づいて)更新の相対的な重要度を定量化する重要度情報はまた、ステップ74において他のエージェント及び/又は中央モジュール74に提供されてもよい。
【0200】
本方法は、マルコフ連鎖モデルが動作不能資産に対応する臨界状態に発展した確率を、計画対象期間にわたる時間の関数として計算することをさらに含むことができる。本方法は、予後計画対象期間中の任意の時間について、マルコフ連鎖モデルがマルコフ連鎖モデルの第1の状態、第2の状態、...第nの状態41~44にある確率に依存する健全性指標の時間発展を計算することを含むことができる。本方法は、RUL曲線、PoF曲線、又は資産障害の確率を動作時間の関数として示す別の出力を計算することを含むことができる。
【0201】
本方法は、出力を生成することをさらに含むことができる。出力は、時間の関数としての資産の残存耐用年数に関する情報を含んでもよい。出力は、時間の関数としての資産の障害確率に関する情報を含んでもよい。出力は、資産の検査、保守、又は交換作業のスケジュールなど、シミュレーション結果のさらなる処理によって得られる制御及び/又は出力データを含んでもよい。
【0202】
図7は、自動的に生成及び出力され得る出力80の概略図である。出力80は、マルコフ連鎖モデルが動作不能資産に対応する臨界状態に発展している確率を示すことができる。出力80は、マルコフ連鎖モデルが状態空間の臨界状態S4にあるシミュレーションの割合を、計画対象期間にわたる複数の時間の各々について計算することによって決定することができる。
【0203】
図7に示すように、確率的シミュレーションにおいて使用される遷移確率は、時間82における資産劣化に関するより信頼性の高い情報の受信に応答して更新される。少なくとも時間82以降、更新済み遷移確率を使用して、資産健全性状態の将来の発展の予後が計算される。任意選択的に、時間82より前の時間について発展を再計算することもできる。
【0204】
比較のために、
図7は、遷移確率が更新されなかった場合に得られることになる曲線81も示している。
【0205】
追加又は代替の出力が生成されてもよい。例示のために、RUL曲線又は資産の劣化を示す他の情報を処理して、検査、保守、又は交換作業を自動的にスケジュールし、スケジュール情報をオペレータに出力し、及び/又はダウンタイムを自動的にスケジュールすることができる。
【0206】
代替的又は付加的に、RUL曲線又は資産の劣化を示す他の情報を、閾値比較又は他のトリガを使用して処理して、アラーム、警告、又は他の信号をオペレータに出力するか否か、及びいつ出力するかを決定することができる。
【0207】
図8は、マルコフ連鎖モデルの状態空間の様々な状態S1~S4の母集団の確率分布81~84を示す。分布81は、マルコフ連鎖モデルシミュレーションのほとんどが、検出可能な劣化のない資産に対応する状態S1のままである第1の時間に対応する。分布82、83は、初期又はより進行した劣化に対応する状態S2及びS3がより多くポピュレートされるようになった後の第2の時間及び第3の時間に対応する。分布84は、資産停止に対応する重要状態S4が最もポピュレートされるさらに後の第4の時間に対応し、その時間までに資産が動作状態よりも動作不能状態になる可能性が高いことを反映している。
【0208】
関連する予後資産健全性予測は、資産がマルコフ連鎖モデルの最終状態である臨界状態S4にある確率から取得することができるが、確率的シミュレーションの結果が処理される出力は、確率的シミュレーションによって決定されるように、マルコフ連鎖モデルがそれぞれの第1の状態、第2の状態、...第nの状態にあるすべての確率p1、p2、...pnに依存し得る。
【0209】
例示のために、確率的シミュレーションが実行される計画対象期間のうちの任意の時間jについて、以下のスカラ関数を計算することができ、
【0210】
【0211】
式中、pi(j)は、確率的シミュレーションによって決定されるように、マルコフ連鎖モデルが時間jにおいて第iの状態にある確率を指定し、miは、状態ラベルiの単調な、特に厳密に単調な関数であるスカラ値を表す。例示のために、すべてのmiは、m1≦m2≦...≦mnとなるような間隔、特にm1<m2<...<mnとなるような間隔から選択されてもよい。
【0212】
関数d(j)又はそれから導出される情報を出力することにより、資産がまだ臨界状態S4に到達していなくても、RULの低減をもたらす劣化をより適切に反映することができる。
【0213】
関数d(j)は、劣化を示し、d(j)が0~1の値をとるように制約される場合、h(j)=1-d(j)によって健全性指標h(j)に関連付けることができる。
【0214】
関数d(j)又は健全性指標h(j)はまた、センサ測定値に基づいて離散状態モデルの異なる状態間の遷移を識別するために使用されてもよい。例示のために、センサ測定値は、劣化関数d(j)又は健全性指標h(j)に処理することができる。この処理には、発見的教授法を用いることができる。劣化関数d(j)又は健全性指標h(j)の値は、センサ測定値のセットにおいて観測される資産状態を、離散状態モデルの離散状態S1、...、Snのうちの1つに割り当てるために、1つ以上の閾値比較を受けることができる。センサ測定値を劣化関数d(j)又は健全性指標h(j)に処理することは、様々な方法で行うことができる。スカラ関数は、様々な時間に取り込まれるセンサ測定値を入力として取得し、それらを、健全性指標h又は劣化指標dによって反映されるものとしての、観測された資産健全性の発展を表すスカラ関数に処理することができる。
【0215】
様々な技法を使用して、離散状態間の遷移を識別するために使用されるスカラ関数を計算することができる。例示のために、センサ測定値は、動作値の範囲と比較されてもよい。範囲外の各センサ測定値に対して、ペナルティが課される場合がある。センサ測定値の重み付け係数と、センサ測定の正常動作値範囲からの逸脱に依存する値との積を組み合わせる加重和又は他の処理が使用されてもよい。重み付け係数は、それぞれのセンサに依存し、資産健全性に関する測定の重要度を示す。
【0216】
回路遮断器、バッテリ(リチウムイオンバッテリなど)、又は変圧器を含むがこれらに限定されない多種多様な資産のための連続的な健全性又は劣化関数へのセンサ測定値のマッピングを提供するツールが知られている。例示のために、Ellipse APM又はRelCareツールなどのツールは、センサ測定値を処理して、連続範囲内の値を有し、資産健全性を示す関数を提供する。正規化を使用して、健全性又は劣化関数を所望の範囲(0~1など)に正規化することができる。
【0217】
使用されるセンサ測定値は、1つ以上の産業資産状態パラメータ(電力システム資産状態パラメータなど)、1つ以上の産業資産動作パラメータ(電力システム資産動作パラメータなど))、1つ以上の産業資産動作パラメータ(電力システム資産動作パラメータなど)を含んでもよい。
【0218】
使用されているセンサ測定値の形式及びタイプは、特定の資産及び/又は健全性若しくは劣化関数の実施態様に依存し得る。そのような既知の技法の例は上述されている。
【0219】
連続健全性又は劣化関数は、状態監視パラメータとして参照されることもある、状態監視関数であってもよく、又は状態監視機能を含んでもよい。
【0220】
連続健全性又は劣化関数は、特定の時間ウィンドウ(例えば、1時間、1日、1週間など)にわたって記録される所与のデバイスの生センサ測定値(SCADAシステムに記録され得る)を入力引数としてとる導関数であってもよい。生センサ測定には、データ処理技法(データクリーニング、外れ値除去、フィルタリング、次元縮小、相関分析などのうちの1つ以上など)が適用されてもよい。処理されたデータを使用して、デバイス内の物理的プロセスの動態(例えば、摩耗、経年劣化、材料劣化など)に関する洞察を与えることができる傾向を計算することができる。本明細書においてより詳細に開示されるように、マルコフ連鎖のある状態から別の状態への遷移確率が、本発明の実施形態において使用されてもよい。
【0221】
連続健全性又は劣化関数は、障害関数のシグネチャであってもよく、又はそれを含んでもよい。障害関数のシグネチャは、異なる動作状態に対する障害の条件付き確率を計算するために、(i)センサの1つのグループからの入力をとる状態監視関数の出力を、(ii)センサの別のグループによって記録され得るイベントログと相関させることができる。
【0222】
使用されているセンサ測定値の形式及びタイプは、特定の資産及び/又は健全性若しくは劣化関数の実施態様に依存し得る。例示のために、Ellipse APM又はRelCareツールなどのツールがセンサ測定値を処理し、これらのツールに必要なセンサ測定値がツールに供給される。
【0223】
単に例示のために、限定するものではないが、センサ測定値は、以下のうちの1つ、いくつか、又はすべてを含んでもよい。
【0224】
-温度パラメータ(例えば、資産、資産の構成要素、資産によって処理される媒体、資産において使用される媒体(作動流体、冷却流体、及び/又は絶縁流体など)、周囲条件などに関連し得る)、
-振動パラメータ(時間ドメイン、応力波を含む周波数範囲、及び/又は位相におけるものであってもよい)、伝送線路振動又は回転機械振動は、そのようなパラメータの例である、
-音声及び/又は超音波パラメータ、
-潤滑パラメータ(グリース、油又は水などの潤滑剤に関する情報を含んでもよい。潤滑パラメータは、潤滑剤又はフィルタ屑に見られる粒子の冶金を含んでもよい)、
-速度パラメータ(例えば、風速、シャフト回転など)、
-流れパラメータ(気体若しくは液体であってもよい処理される媒体の流れパラメータ、又は、作動流体、冷却流体、及び/若しくは絶縁流体として使用される1つ以上の流体の流れパラメータなど)、
-圧力パラメータ(気体若しくは液体であってもよい、処理される媒体の静水圧、動圧、及び/若しくは全圧、又は、作動流体、冷却流体、及び/若しくは絶縁流体として使用される1つ以上の流体の静水圧、動圧、及び/若しくは全圧など)、
-ガスパラメータ(例えばバイオガス施設の入力ガス、プロセスガス及び排気ガスに関連し得る)、
-水化学パラメータ(例えば、ボイラ管腐食に関連し得る)、
-溶存ガス及び/又はフランパラメータ(例えば、変圧器状態監視のための)、
-電気的パラメータ(電圧、電流シグネチャ、及び抵抗を含んでもよいが、これらに限定されない)、
-生センサデータの関数である計算されたパラメータ(導関数パラメータ、操作された特徴、又は仮想センサとしても参照される)。
【0225】
本明細書において開示される技法は、任意選択の正規化及び閾値比較を使用して、任意の健全性又は劣化関数を状態モデルの離散状態にマッピングすることを可能にする。
【0226】
例示的な実施態様では、遷移確率は、条件付き確率に基づいて決定されてもよい。例示のために、第iの状態から第(i+1)の状態(1≦i≦n-1)への遷移の時間jにおける遷移確率は、以下のように決定されてもよい。
【0227】
【0228】
式(4)において、分子は、時間jにおいて第iの状態にあり、時間j+1において第(i+1)の状態に遷移した資産の数を表す。分母は、時間jにおいて第iの状態にあった資産の数を表す。
【0229】
均一マルコフ連鎖モデルの確率を得るために、平均化又は他の処理が実行されてもよい。
【0230】
同じ資産タイプ(例えば、特定の出力定格範囲を有する光起電力パネル、特定の出力定格範囲を有する風力タービン発電機、一定間隔内の定格の変圧器)を有するが、異なる動作条件及び/又は周囲条件を受ける資産の異なるグループについてセンサデータが利用可能である場合、遷移確率はグループごとに独立して更新することができる。
【0231】
図9は、確率的シミュレーションによって決定される、資産の劣化を時間の関数として示す曲線100の出力を示す。曲線100は、確率的シミュレーションによって決定されるものとしての、マルコフ連鎖モデルがそれぞれの第1の状態、第2の状態、...第nの状態にあるすべての確率p
1、p
2、...p
nの時間発展に依存し得る。
【0232】
マルコフ連鎖モデルの様々な状態は、複数の区間111~114に関連付けられ得る。例示のために、区間111のうちの健全性指標hについて、資産は、既知の劣化がない状態S1にあると判定され得る。区間112内の健全性指標hについて、資産は、性能に影響を及ぼさない初期劣化がない状態S2にあると判定され得る。区間113内の健全性指標hについて、資産は、性能に影響を及ぼすより深刻な劣化があるが、即時の資産停止には至らない状態S3にあると判定され得る。区間114内の健全性指標hについて、資産は、状態が危機的であり、即時の資産停止につながる状態S4にあると判定されてもよい。
【0233】
閾値TH1、...THn-1は、区間111~114の上限及び下限を規定することができる。資産の確率的シミュレーションを初期化するときに、閾値TH1、...THn-1との比較を使用することができる。例示のために、資産の利用可能なセンサデータは、資産の健全性指標h又は劣化指標d=1-hを表すスカラに処理することができ、スカラを閾値TH1、...THn-1と比較して、シミュレーションをどのように初期化するかを決定することができる。
【0234】
MCMCなどの確率的シミュレーションを実行することにより、資産の健全性状態の発展だけでなく、決定された発展に関連付けられている信頼性も自動的に決定して出力することができる。
【0235】
信頼性に関する情報は、様々な形態を取ってもよい。例示のために、曲線80、100の周りの信頼区間の発展は、予後計画対象期間にわたる時間の関数として決定することができる。信頼区間の時間発展は、予後計画対象期間の任意の時間jについて、重大な障害の確率80又は健全性指標hの下限及び上限を示すことができる。上限及び下限は、少なくとも特定の割合(例えば、少なくとも70%、80%、90%、又は95%)の確率的シミュレーションが、上限と下限との間の範囲内の重大な障害の確率80又は健全性指標hを生じさせるように決定することができる。信頼区間の時間発展を示す例示的な上限101及び下限102を
図7に示す。
【0236】
代替的又は付加的に、上限101及び下限102は、資産が受ける可能性がある動作条件及び/又は周囲条件の変動を反映することができる。例示のために、曲線100、101、102は各々、
図3を参照して説明したようなものであるが、遷移確率のセットは異なるマルコフ連鎖モデルを使用して複数の確率的シミュレーションを実行することによって得ることができる。
【0237】
図10は、一実施形態によるシステムの動作を時間の関数として示す図である。
異なるエージェント51、52、53が配備される。エージェント51、52、53の各々は、資産健全性状態の将来の発展の予後を判定する役割を担う。資産は同一であるか又は類似している。
【0238】
すべてのエージェント51、52、53は、確率的シミュレーションを実行するために状態S1、...、Snの同じセットを使用することができる。状態S1、...、Snは、劣化の重大度がある状態から次の状態へと増大するように順序付けられてもよい。
【0239】
エージェント51、52、53は、初期遷移確率121、131、141を受信することができる。初期遷移確率121、131、141は、ユーザ入力に基づいて、又は例えば式(4)を使用して履歴データに基づいて決定することができる。初期遷移確率121、131、141は同じであってもよい。初期遷移確率121、131、141は、例えば、エージェント51、52、53が予後健全性分析を実行する様々な資産について動作条件及び/又は周囲条件が異なるときは、異なり得る。
【0240】
初期化後、第1のエージェント51は、遷移行列T1,1内に配置され得る初期遷移確率を使用して確率的シミュレーション122を実行する。確率的シミュレーション122は、ある時間間隔中に実行されてもよいが、遷移行列T1,1が確率的シミュレーションにおいて使用される時間間隔よりも長くてもよい予後計画対象期間にわたって延長してもよい。
【0241】
第1の観測情報125は、第1の更新時間t1において第1のエージェント51によって受信される。観測情報125は、他のエージェント52、53及び/又は中央モジュール54によって決定される予後健全性分析及び/又は遷移確率及び/又はベイズ遷移確率を第1のエージェント51が実行する資産のセンサデータを含んでもよい。
【0242】
第1の観測情報125の受信は、遷移行列のT2,1への更新123をトリガする。続いて、第1のエージェント51は、T2,1への更新済み遷移行列を使用して、少なくとも第1の更新時間t1よりも後の時間にわたって確率的シミュレーション124を再実行することができる。これにより、資産健全性状態の発展についての更新済み予後が取得される。
【0243】
初期化後、第iのエージェント52は、遷移行列T1,i内に配置され得る初期遷移確率を使用して確率的シミュレーション132を実行する。確率的シミュレーション132は、ある時間間隔中に実行されてもよいが、遷移行列T1,iが確率的シミュレーションにおいて使用される時間間隔よりも長くてもよい予後計画対象期間にわたって延長してもよい。
【0244】
観測情報135の第iのセットは、第iの更新時間tiにおいて第iのエージェント52によって受信される。観測情報135は、他のエージェント51、53及び/又は中央モジュール54によって決定される予後健全性分析及び/又は遷移確率及び/又はベイズ遷移確率を第iのエージェント52が実行する資産のセンサデータを含んでもよい。
【0245】
第iの観測情報135の受信は、遷移行列のT2,iへの更新133をトリガする。続いて、第iのエージェント52は、T2,iへの更新済み遷移行列を使用して、少なくとも第iの更新時間tiよりも後の時間にわたって確率的シミュレーション134を再実行することができる。これにより、資産健全性状態の発展についての更新済み予後が取得される。
【0246】
初期化後、第nのエージェント53は、遷移行列T1,n内に配置され得る初期遷移確率を使用して確率的シミュレーション142を実行する。確率的シミュレーション142は、ある時間間隔中に実行されてもよいが、遷移行列T1,nが確率的シミュレーションにおいて使用される時間間隔よりも長くてもよい予後計画対象期間にわたって延長してもよい。
【0247】
第nの観測情報145は、第nの更新時間tnにおいて第nのエージェント53によって受信される。観測情報145は、他のエージェント51、52及び/又は中央モジュール54によって決定される予後健全性分析及び/又は遷移確率及び/又はベイズ遷移確率を第nのエージェント53が実行する資産のセンサデータを含んでもよい。
【0248】
第nの観測情報145の受信は、遷移行列のT2,nへの更新143をトリガする。続いて、第nのエージェント53は、T2,nへの更新済み遷移行列を使用して、少なくとも第nの更新時間tnよりも後の時間にわたって確率的シミュレーション144を再実行することができる。これにより、資産健全性状態の発展についての更新済み予後が取得される。
【0249】
様々なエージェント51~53は、非同期的に動作してもよい。更新123、133、143は、異なる時間に実行されてもよく、時間は互いに独立している。更新123、133、143は、イベントトリガ更新として実行されてもよい。
【0250】
図11は、一実施形態によるシステムの動作を時間の関数として示す図である。
異なるエージェント51、52、53が配備される。エージェント51、52、53の各々は、資産健全性状態の将来の発展の予後を判定する役割を担う。資産は同一であるか又は類似している。
【0251】
すべてのエージェント51、52、53は、確率的シミュレーションを実行するために状態S1、...、Snの同じセットを使用することができる。状態S1、...、Snは、劣化の重大度がある状態から次の状態へと増大するように順序付けられてもよい。
【0252】
エージェント51、52、53は、確率的シミュレーション(
図11には示さず)を実行して、資産健全性状態の将来の発展の予後を判定する。エージェント51、52、53の各々は、動作中に劣化プロセスに関するより信頼性の高い情報が利用可能になるにつれて、確率的シミュレーションにおいてエージェントによって使用される遷移確率を変更するために更新151、152、153を実行することができる。
【0253】
中央モジュール54は、更新151、152、153に関する情報を受信することができる。例示のために、更新151、151、152、153においてエージェント51、52、53によって計算される更新済み遷移確率に関する情報を中央モジュールに提供することができる。(例えば、更新済み遷移確率を生成するために使用されるセンサデータの量に基づいて)更新の重要度又は信頼性を定量化することができる重要度情報も、中央モジュール54によって受信することができる。
【0254】
中央モジュール54は、異なるエージェント51、52、53によって実行された更新151、152、153からの情報を組み合わせるために、組み合わせ処理を実行することができる。中央モジュール54は、エージェント51、52、53の一部又はすべてによって更新されているものとしての遷移確率を組み合わせて修正遷移確率を計算する確率融合プロセスを実行することができる。
【0255】
修正遷移確率は、その後、エージェント51、52、53に提供され、更新161~163をトリガすることができる。修正遷移確率は、異なるエージェント51、52、53に同期して提供される必要はなく、非同期的に中央モジュール54によって提供されてもよい。
【0256】
確率的シミュレーションの結果は、様々な方法で使用されてもよい。制御及び/又は出力動作は、更新済み遷移確率、又は他の予後資産健全性分析を用いて、確率的シミュレーションの結果に基づいて自動的に実行されてもよい。
【0257】
例示のために、RUL又はPoF曲線が出力されてもよい。信頼区間又は分散の時間発展に関する情報が、同時に出力されてもよい。
【0258】
代替的又は付加的に、資産の動作点は、資産に関連付けられているローカルコントローラ21~23によって自動的に調整されてもよい。
【0259】
代替的又は付加的に、検査、保守、及び/又は交換作業は自動的にスケジュールされてもよい。
【0260】
代替的又は付加的に、検査、保守、及び/又は交換作業のためのダウンタイムは自動的にスケジュールされてもよい。
【0261】
代替的又は付加的に、アラーム、警告、又は他の出力が、RUL曲線、PoF曲線、又は他の予後予測資産健全性状態発展に応じて、HMIを介して出力するために生成されてもよい。
【0262】
図12は、コンピューティングシステム170の概略図である。コンピューティングシステム170は、1つ以上のIC(複数可)173を備えることができる。IC(複数可)は、特定用途向け集積回路(ASIC)、プロセッサ、コントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FGPA)、又は複数のそのような集積回路の組み合わせを含んでもよい。
【0263】
IC(複数可)173は、中央システム20、ローカルコントローラ21~23のうちの1つ、サーバシステム24内に存在してもよく、又はこれらのエンティティにわたって分散されてもよい。IC(複数可)173は、エージェント51~53のうちの1つ以上を実行するように動作することができる。
【0264】
IC(複数可)173は、マルコフ連鎖モデルの時間依存発展をシミュレートするために確率的シミュレーションエンジン174を実行するように動作することができる。確率的シミュレーションエンジン174は、MCMCシミュレーションを実行するように動作することができる。
【0265】
確率的シミュレーションエンジン174によって使用されるマルコフ連鎖モデルの遷移確率の初期値は、インターフェース171を介して受信することができる(例えば、IC(複数可)173がローカルコントローラ21~23のうちの1つの中に存在し、中央システム20が初期遷移確率を計算するとき)。遷移確率は、資産の進行中の動作中にインターフェース171を介して受信された観測情報に基づいて、IC(複数可)173によって更新することができる。観測情報は、以下のいずれか1つ又は任意の組合せを含んでもよい。
【0266】
-IC(複数可)173によって実行されるエージェントが資産健全性状態の将来の発展の予後を判定する資産のセンサデータ、
-同じ又は類似の資産タイプの別の資産について別のエージェントによって決定される遷移確率p12、p23、...、pn-1,n、又はベイズ確率テーブルデータ。
【0267】
-中央モジュール54によって決定される遷移確率又はベイズ確率テーブルデータ。
IC(複数可)173は、遷移確率更新エンジン175を実行するように動作することができる。遷移確率更新エンジン175は、インターフェース171における観測情報の受信によって呼び出されてもよく、これにより、遷移確率更新エンジン175は、確率的シミュレーションを実行するためにローカルに使用される遷移確率を更新する。
【0268】
IC(複数可)173は、出力エンジン176を実行するように動作することができる。出力エンジン176は、遷移確率更新エンジン175によって実行される更新に関する情報を共有するための出力を生成するように動作することができる。
【0269】
出力エンジン176はまた、HMIを制御するため、及び/又は、資産若しくは資産が使用されているシステムの制御動作を実施するための出力データ又は出力信号を生成することもできる。例示のために、出力エンジン176は、RUL又はPoF曲線が出力されるように、データを生成してHMIに出力するように動作することができる。出力エンジン176は、信頼区間又は分散の時間発展に関する情報が同時に出力され得るように、データを生成してHMIに出力するように動作することができる。
【0270】
代替的又は付加的に、出力エンジン176は、遷移確率エンジン175によって更新されているものとしての遷移確率を用いて、確率的シミュレーションに応答して資産の動作点を自動的に調整するように動作することができる。
【0271】
代替的又は付加的に、出力エンジン176は、検査、保守、及び/又は交換作業に関する情報を自動的に生成及び出力するように動作することができる。
【0272】
代替的又は付加的に、出力エンジン176は、検査、保守、及び/又は交換作業のためのダウンタイムに関する情報を自動的に生成及び出力するように動作することができ、自動的にスケジュールすることができる。
【0273】
代替的又は付加的に、出力エンジン176は、RUL若しくはPoF曲線、又は他の予後予測資産健全性状態発展に応じて、HMIを介して出力するために生成され得るアラーム、警告、又は他の出力を、自動的に生成及び出力するように動作することができる。
【0274】
図13は、コンピューティングシステム180の概略図である。コンピューティングシステム180は、1つ以上のIC(複数可)183を備えることができる。IC(複数可)は、特定用途向け集積回路(ASIC)、プロセッサ、コントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FGPA)、又は複数のそのような集積回路の組み合わせを含んでもよい。
【0275】
IC(複数可)183は、中央システム20又はサーバシステム24内に存在してもよく、又はこれらのエンティティにわたって分散されてもよい。IC(複数可)183は、中央モジュール54を実行するように動作することができる。
【0276】
IC(複数可)183は、遷移確率融合エンジン184を実行するように動作することができる。遷移確率融合エンジン184は、任意選択的に更新の相対情報を定量化する重要度情報を使用して、いくつかのエージェント51、52、53によって更新されているものとしての遷移確率を組み合わせて、修正遷移確率を計算することができる。
【0277】
いくつかのエージェント51、52、53によって更新されている遷移確率は、インターフェース181を介して受信することができる。エージェント51、52、53を初期化するために使用される初期遷移確率を決定するために使用される履歴データなどの追加のデータを、データ記憶装置182に記憶することができ、修正遷移確率を決定するために使用することができる。
【0278】
IC(複数可)183は、いくつかのエージェントからの更新を融合することによって得られる修正遷移確率をエージェントに出力する出力制御部185を実行するように動作することができる。出力制御部185は、修正遷移確率を異なる時間において異なるエージェント51、52、53に出力するように動作することができる。出力制御部185は、例えば、異なるエージェント51、52、53との通信チャネルの確立に応答してなど、イベントトリガ方式で修正遷移確率を異なるエージェント51、52、53に出力するように動作することができる。
【0279】
様々な効果及び利点が本発明に関連する。資産健全性状態の将来の発展の予後を得るためにエージェントによって実行される確率的シミュレーションは、同等の産業又は電力システム資産から動的に到来するデータを使用して更新することができる。関連する情報交換は、少数のパラメータのみがエージェント間及び/又は中央モジュールとエージェントとの間で交換されることを必要とする。異なるエージェントは非同期的に動作することができる。
【0280】
本発明による方法及びシステムは、限定されることなく、発電、配電及び/若しくは送電システムの資産などの電力システム資産、又は産業システムの資産に関連して使用されてもよい。
【0281】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に説明されてきたが、そのような説明は、実例又は例示であって限定ではないと考えられるべきである。開示された実施形態に対する変更は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から当業者によって理解され、請求された発明を実施することができる。特許請求の範囲において、「備える(comprising)」という単語は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。特定の要素又はステップが別個の特許請求項に記載されているというだけの事実は、これらの要素又はステップの組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではなく、具体的には、実際の特許請求項の従属性に加えて、任意のさらなる意味のある特許請求項の組み合わせが開示されていると考えられるべきである。