(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】OCTシステムの正確なzオフセット較正
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
A61B1/00 526
A61B1/00 630
A61B1/00 650
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023023354
(22)【出願日】2023-02-17
【審査請求日】2023-06-21
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】ブラシェット クリストファー ダグラス
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-225599(JP,A)
【文献】国際公開第2008/044539(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61B 3/10
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉断層撮影(OCT)システム
の作動方法であって、
前記OCTシステムは、
プロセッサを含むコンピュータと、近位端から遠位端まで延びるカテーテルシースを有するカテーテル
とを備え、前記カテーテルは、前記カテーテルシース内に包囲されるイメージングコアを含み、前記イメージングコアは、前記カテーテルシースの前記遠位端からの光ビームを、前記カテーテルシースに関して公称角度を成すように誘導するように構成され、
前記方法は、
前記プロセッサが、既知の厚さを有する円筒状ファントムをスキャンするように前記イメージングコアを制御するステップと、
前記円筒状ファントムを通して前記光ビームを伝達し、前記円筒状ファントムの内表面及び外表面から反射及び/又は後方散乱された光を収集することにより、
前記プロセッサが、前記円筒状ファントムのOCT画像を取得するステップと、
前記プロセッサが、表示装置での前記円筒状ファントムの前記OCT画像
の表示を制御するステップと、
前記プロセッサが、前記OCT画像内で、前記円筒状ファントムの前記内表面の位置及び前記外表面の位置を決定するステップと、
前記プロセッサが、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記内表面の前記位置及び/又は前記外表面の前記位置を、初期zオフセット位置に設定
するステップと、
前記プロセッサが、前記設定された初期zオフセット位置に基づいて、前記カテーテルの光路長の変動を補正するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記内表面の前記位置及び前記外表面の前記位置に基づいて、前記OCT画像に示される前記円筒状ファントムの厚さを測定するステップ、
を更に含み、
前記円筒状ファントムの前記内表面の前記位置及び/又は前記外表面の前記位置を前記初期zオフセット位置に設定することは、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記測定された厚さと、前記円筒状ファントムの前記既知の厚さとの差に基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記円筒状ファントムの前記内表面から前記外表面まで前記光ビームが進んだ距離に基づいて、前記円筒状ファントムを透過した前記光ビームの角度を計算するステップ、
を更に含み、
前記円筒状ファントムの前記内表面の前記位置及び/又は前記外表面の前記位置を前記初期zオフセット位置に設定することは、前記光ビームの前記計算された角度と前記光ビームの前記公称角度との差に基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記OCT画像内で前記円筒状ファントムの前記内表面の前記位置を決定することは、前記内表面から反射及び/又は後方散乱された平均化されたOCT信号に基づいて、前記円筒状ファントムの平均内径(ID)を計算することを含み、前記OCT画像内で前記円筒状ファントムの前記外表面の前記位置を決定することは、前記外表面から反射及び/又は後方散乱された平均化されたOCT信号に基づいて、前記円筒状ファントムの平均外径(OD)を計算することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの厚さを計算するステップ、
を更に含み、
前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記厚さは、平均ODと平均IDとの数学的差である、
請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセッサが、以下の式(1):
θ
cath=arccos(L
nom*Cos(θ
nom)/(L
m-R
A)
) 式(1)
に基づいて、前記円筒状ファントムを透過した前記光ビーム
の角度を計算するステップ、
を更に含み、
式中、θ
cathは、前記円筒状ファントムを透過した前記光ビームの前記角度であり、θ
nomは、前記イメージングコアによって放射された前記光ビームの前記公称角度であり、L
nomは、前記円筒状ファントムの前記既知の厚さであり、R
Aは、前記OCTシステムの距離分解能であり、L
mは、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記計算された厚さである、
請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
光干渉断層撮影(OCT)イメージングシステムであって、
カテーテル軸に沿って近位端から遠位端まで延びるカテーテルシースを有するカテーテルと、
前記カテーテルシース内に包囲されるイメージングコアであって、前記カテーテルシースの前記遠位端からの光ビームを、前記カテーテルシースに関して公称角度を成すように誘導するように構成されたイメージングコアと、
プロセッサであって、
既知の厚さを有する円筒状ファントムをスキャンするように前記イメージングコアを制御することであって、前記イメージングコアは、前記円筒状ファントムを通して前記光ビームを伝送し、前記円筒状ファントムの内表面及び外表面から反射及び/又は後方散乱された光を収集することにより、前記円筒状ファントムのOCT画像を取得する、制御することと、
前記円筒状ファントムの前記OCT画像を表示装置に表示することと、
前記OCT画像内で、前記円筒状ファントムの前記内表面の位置及び前記外表面の位置を決定することと、
前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記内表面の前記位置及び/又は前記外表面の前記位置を、初期zオフセット位置に設定
することと、
前記設定された初期zオフセット位置に基づく前記カテーテルの光路長の変動、及び/又は、前記光ビームの前記公称角度の変動を補正することと、
を実行するように構成されたプロセッサと、
を備えるシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記内表面の前記位置及び前記外表面の前記位置に基づいて、前記円筒状ファントムの見かけの厚さを測定するように更に構成され、
前記プロセッサは、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記測定された厚さと、前記円筒状ファントムの前記既知の厚さとの差に基づいて、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記内表面の前記位置及び/又は前記外表面の前記位置を、前記初期zオフセット位置にシフトする、
請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記円筒状ファントムの前記内表面から前記外表面まで前記光ビームが進んだ距離に基づいて、前記円筒状ファントムを透過した前記光ビームの角度を計算するように更に構成され、
前記プロセッサは、前記光ビームの前記計算された角度と前記光ビームの前記公称角度との差に基づいて、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記内表面の前記位置及び/又は前記外表面の前記位置を前記初期zオフセット位置に設定する、
請求項
7に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記円筒状ファントムの前記OCT画像内で、内部カテーテル反射に対応する少なくとも1本の線を特定することと、
前記内部カテーテル反射に対応する前記少なくとも1本の線を、
フィデューシャルとして用いることと、
を実行するように更に構成される、
請求項
7に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記初期zオフセット位置を、前記イメージングコアに含まれる遠位光学系からの光反射に対応する1本以上の線を可視化するために十分な所定の距離だけシフトさせることと、
前記初期zオフセット位置が前記所定の距離だけシフトされたままの状態で、
管腔のOCT画像を取得することと、
前記遠位光学系からの光反射に対応する前記1本以上の線に対して、前記
管腔の前記OCT画像を較正することと、
前記
管腔の前記較正されたOCT画像を前記初期zオフセット位置に戻すことと、
前記遠位光学系からの光反射に対応する前記1本以上の線を含まない前記
管腔の前記OCT画像を前記表示装置に表示することと、
を実行するように更に構成される、
請求項
7に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記内表面から反射及び/又は後方散乱された平均化されたOCT信号に基づいて、前記円筒状ファントムの平均内径(ID)を計算することによって、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記内表面の前記位置を決定し、前記外表面から反射及び/又は後方散乱された平均化されたOCT信号に基づいて、前記円筒状ファントムの平均外径(OD)を計算することによって、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記外表面の前記位置を決定する、
請求項
7に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記平均ODと前記平均IDとの数学的差として、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記厚さを計算するように更に構成される、
請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、以下の式(1):
θ
cath=arccos(L
nom*Cos(θ
nom)/(L
m-R
A)
) 式(1)
に基づいて、前記円筒状ファントムを透過した前記光ビーム
の角度を計算し、
式中、θ
cathは、前記円筒状ファントムを透過した前記光ビームの前記角度であり、θ
nomは、前記イメージングコアによって放射された前記光ビームの前記公称角度であり、L
nomは、前記円筒状ファントムの前記既知の厚さであり、R
Aは、前記
システムの距離分解能であり、L
mは、前記OCT画像内の前記円筒状ファントムの前記計算された厚さである、
請求項
13に記載のシステム。
【請求項15】
前記カテーテルを滅菌状態で保持するように構成された保護フープ、
を更に備え、
前記円筒状ファントムが、前記カテーテルから放射された前記光ビームと交差するように、前記円筒状ファントムは、前記保護フープ内に一体化されるか、又は前記保護フープに取り付けられる、
請求項
7に記載のシステム。
【請求項16】
前記円筒状ファントムは、OCTイメージング下での視認性を高めるための散乱剤をドープされた又はドープされていないガラス又は透明ポリマー材料から作られ、
前記円筒状ファントムは、(a)カテーテルパッケージに組み込まれ、又は(b)前記カテーテルパッケージとは別に提供され、又は(c)前記
システム上に/前記
システムとともに恒久的に設置され、
前記円筒状ファントムは、前記カテーテルを前記カテーテルパッケージから取り出すことなく、前記カテーテルと前記
システムとの最初の接続時に前記イメージングコアによって撮像される、
請求項
7に記載のシステム。
【請求項17】
前記円筒状ファントムの前記平均IDは、前記カテーテルシースのODに実質的に等しい寸法を有し、前記円筒状ファントムの前記平均ODは、前記
システムの最大イメージング範囲に実質的に等しい、
請求項
12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
該当なし
【0002】
本開示は、概して医療機器に関する。より具体的には、本開示は、較正用ファントムを用いたOCTカテーテルのzオフセット較正のためのシステム及び方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
光干渉断層撮影(OCT)イメージングは、干渉技術を用いて、マイクロメートル(μm)の解像度で数ミリメートル(mm)の深さ範囲にわたって被写体の画像を取得する。OCTイメージングの重要な側面は、記録される干渉効果が被写体内の所望の深さに確実に対応するようにするために、サンプルアームと参照アームの光路長が一致する必要があることである。医療用途では、特定の手技に応じて、撮像される被写体は、網膜、動脈の壁、食道の裏層、その他の患者の体腔等の生体標的であり得る。
【0004】
心血管OCTでは、数メートルにもなるイメージングカテーテルを血管腔から導入して、血管壁を撮影する。カテーテルは、カテーテルの遠位端から放射状に放射される近赤外光(NIR)のビームを血管壁に照射する。光は血管壁に侵入し、血管壁の組織層によって反射(後方散乱)されて、カテーテルの遠位端で再び収集される。血管壁の360度像を取得するために、カテーテルはイメージングコアを用いる。イメージングコアは、光ファイバ回転継手(FORJ)によって回転し、回転中に同時に長手方向に移動(並進)するので、光は、一連の線としてらせんパターンの形で検出される。イメージングコアの長手方向の動きは、一般に、先端(遠位端)からカテーテルの近位端に向かってイメージングコアを機械的に引き戻すことによって行われる。したがって、このプロセスは「プルバック」操作と呼ばれる。らせん状にスキャンされた一連の線をデジタル化し、画面に表示される2次元(2D)又は3次元の(3D)OCT画像を形成するには、コンピュータプロセッサ等のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)が用いられる。
【0005】
正確なOCT画像を形成することの課題のひとつは、サンプルアームと参照アームの光路長(OPL)を一致させることの難しさである。OCTでは、慣例により、x-y-zベクトルによって定義されるデカルト3D空間が極座標で表現され、角度と径方向距離はx-y平面上に表現され、管腔長さはz軸に沿って表現される。イメージング手技では、カテーテルを体腔に挿入するとき、カテーテルシースの外表面を基準点として用い、その基準位置から外側に、カテーテルと血管組織との距離を測定する。画像再構成時は、スキャンした線をカテーテルの中心を起点とするものとして扱い、また、カテーテルシースを基準点として用いて、イメージング深さを測定するが、これは、カテーテルを通る光の経路長が不変であるという仮定に基づく。しかしながら、カテーテルが患者の体内に挿入されると、カテーテル内の繊細な光学系にストレスがかかり、光路長が歪む可能性がある。例えば、室温と体温(患者の体の外側と内側)の変化により、撮像中に光ファイバが1ミリメートル程度伸びることがある。当然のことながら、これによって基準点が変わるので、その画像上で直径を測定すると、2ミリメートルもの誤りが生じることになる。また、OCTシステムでは、1回の手技中に異なる寸法のカテーテルが必要となることがある。この場合も、使用されるカテーテルによって基準点が変わることになる。
【0006】
様々なカテーテル機器間のカテーテル長さのばらつきを考慮するために、又は、1つのカテーテルの経路長の変動を考慮するために、「zオフセット較正」と呼ばれる較正ステップを行って、参照アームの長さをサンプルアーム(カテーテルとサンプル)の長さに一致するように調整する。この較正ステップを実現するために、現在の市販のOCTシステムでは、カテーテルシースに組み込まれた較正用フィデューシャル(例えば放射線不透過性マーカ)を使用し、フィデューシャル(例えばシースの外表面)からの反射と参照アームからの反射が指定の公称寸法内で一致するように、参照アームの光路長を調整する。カテーテルシースや他の反射面からのフィデューシャル反射を用いるzオフセット較正の例は、いくつかの特許、例えば米国特許第9702762号(Friedman)、第9596993号、第9301687号及び第8395781号(Kemp)、第7813609号及び第8116605号(Petersen)、並びに第11147453号(Yamada)に開示されており、これらは全て、あらゆる目的で参照により本明細書に援用される。
【0007】
zオフセット較正にカテーテルシースを使用することは、業界標準となっている。カテーテルシースの反射性のフィデューシャルや層を使用することにより、zオフセット較正を達成するのに便利な方法が提供されるが、この技術でも、シース外径(OD)の公差や、OCT画像におけるシース外観の変化、非一様回転歪み(NURD)、シースの非同心性、カテーテルによって放射される光のビーム角度の変動性、OCTシステムの距離分解能の限界、ユーザエラー又はアルゴリズムエラーによってOCT画像内で意図したフィデューシャル以外のエッジが特定されること、それらの組合わせから生じる誤差にさらされる可能性がある。言い換えれば、カテーテル本体に恒久的に内蔵又は取付けされた構造からの反射性フィデューシャルの使用は、本質的に、先に挙げた理由のうちの1つ以上による測定誤差の影響を受けやすい。
【0008】
したがって、依然として、OCTカテーテルの正確なzオフセット較正のためのシステム及び方法を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、カテーテル本体に取り付けられない(すなわち、カテーテル本体とは別に設けられる)較正用ファントムを用いて、カテーテルが患者内で使用される前に室温較正を実行することにより、OCTカテーテルの正確なzオフセット較正のための改良されたシステム及び方法を提供する。更に、本開示は、管腔内イメージング手技中の継続的な(連続)較正のための改良されたシステム及び方法を提供する。こららの新規のシステム及び方法は、較正誤差の1つ以上の原因に対処し、それにより、より正確なOCT画像が生成される。
【0010】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、光干渉断層撮影(OCT)システムは、以下を備える:近位端から遠位端まで延びるカテーテル本体;厚さを有し、カテーテル本体の遠位端のイメージングウィンドウと光学的にアライメントされるように配置される較正用ファントム;及び、カテーテル本体に作動的に接続されたプロセッサ。カテーテル本体は、イメージングウィンドウを通してカテーテル本体に関して公称角度を成すように光ビームを放射するように構成されたイメージングコアを含む。プロセッサは、イメージングプローブを制御して、較正用ファントムに光ビームを照射し、較正用ファントムの表面からの後方散乱光を収集することにより、較正用ファントムのOCT画像を取得させるように構成される。プロセッサは、(a)OCT画像において較正用ファントムの表面の位置を決定し、(b)OCT画像内の較正用ファントムの表面の位置を既知の公称値に設定することによって、zオフセット較正を実行するように更に構成される。
【0011】
プロセッサは、(i)OCT画像内の較正用ファントムの厚さを測定し、(ii)較正用ファントムを透過した光ビームの角度を計算するように更に構成される。較正用ファントムが、内径(ID)及び外径(OD)を有する円筒状チューブである場合、プロセッサは、OCT画像内の較正用ファントムの厚さを、ODからIDを差し引いた差として測定する。次に、プロセッサは、以下の方程式(1)に従って、ファントム屈折率とファントムの既知の厚さによって修正された公称ビーム角度を、OCT画像内の較正用ファントムの測定された厚さからシステムの距離分解能の影響を差し引いた値と比較することに基づいて、較正用ファントムを透過した光ビームの角度を計算する:
【0012】
θcath=arccos(Lnom*Cos(θnom)/(Lm-RA))
【0013】
式中、θnomとLnomは、ファントムインデックスの公称ビーム角度と、既知のファントム厚さ(システムに保存された指定値)であり、RAはシステムの距離分解能であり、Lmは、OCT画像内のファントムの計算された厚さである。“arccos”という表現は、与えられた変数の逆余弦関数である数式Arc Cosineを意味する。カテーテルシースのような単一表面の代わりにファントムの平均厚さを用いることにより、測定に対するNURDの影響が排除されるので、較正誤差の原因が1つ以上減る。ファントムの測定された厚さから距離分解能を差し引くことにより、左右で分解能セルの半分によってファントムの明るい信号がぼやけることが考慮される。
【0014】
プロセッサは、標準的なOCT zオフセット較正のように、ファントムの測定IDを公称値に一致させるようにOCT画像を調整することによって、zオフセット較正を実行するように構成されるが、シースの代わりにファントムIDを用いる。このように、カテーテルが室温空気について較正される。
【0015】
カテーテルが室温空気について較正された後、ユーザは、カテーテルを患者の体腔に導入することができる。カテーテルが患者の体内に入り、フラッシング媒体(血管造影剤や生理食塩水)を介して管腔をスキャンすると、カテーテルは、zオフセットについてのみ再較正することができる。ビーム角度は、管腔内のフラッシング媒体と気温ファントム較正との間の既知の屈折率比によって、わずかに変化することがある;この変化は、システムの媒体設定によって考慮することができる。管腔内のzオフセット較正は、手動で行うこともできるし、シースに対する較正のための標準的なz較正方法を用いて自動で行うこともできる。
【0016】
少なくとも一部の実施形態では、システムは、連続zオフセット較正用に構成することができる。カテーテルがファントムから取り外された後の継続的な較正を自動化するために、システムは、生体イメージング中に存在し続けるカテーテル自体の新しい較正用フィデューシャルを標的にするように構成される。新しい較正用フィデューシャルには、当技術分野で従来から知られている任意のフィデューシャルを用いることができる。例えば、カテーテルシースODを使用することができるが、患者の体外で実行される初期ファントム較正を用いて、体内でのフィデューシャル較正を改善することによって、より正確な較正を達成することができる。これは、公称シース直径を用いる代わりにカテーテルシースを用いて、初期較正後にファントム内のシースのODを測定し、次に、後続の画像上でシースをその値に調整することによって行うことができる。このプロセスにより、シース直径の変動性による較正誤差が除去される。
【0017】
カテーテル構造のレンズや他のコンポーネント内の表面からのシグネチャ信号を用いて、より正確な連続較正を達成することができる。ただし、この場合、カテーテル内の既知の実際の直径又は場所を有する予め選択された表面を使用する代わりに、システムソフトウェアは、ファントムによって較正された状態の実際の見た目でレンズ内の全ての表面及び信号のスナップショットを効果的に取得し、次に表面と信号のパターンを一致させて、各OCT画像フレームでの連続較正を維持するように構成(プログラム)することができる。この実施形態では、先に説明したように、較正用ファントムを用いて初期較正が行われ、次にシステムが、患者の体内の生体内での後続の較正のために、レンズその他の反射面からのシグネチャ信号にキーインするように訓練される。ユーザ入力なしで完全に自動化された連続較正を実現するために、システムは、生体内で取得された信号又は信号のパターンを、ファントムを用いて行われた初期較正時に取得された信号と比較するように構成することができる。
【0018】
標準的なzオフセット較正では、画像内の表面を既知の公称値に設定することにより、カテーテルからカテーテルへの光路長の変動を調節するが、本開示は、更に高い精度を達成するために、ファントムの2つの既知の表面を用いて追加の自由度を加え、カテーテルの長さだけでなくカテーテルの角度の変動も補正するように較正を行うことを提案する。そして、新たに提案する連続較正の方法により、2自由度較正の利点が、ファントムを使用しない生体内イメージングに適用される。
【0019】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された特許請求の範囲と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本開示に係る、zオフセット較正を要するカテーテル160を有するOCTシステム100の図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る、カテーテルハンドル150及び較正用ファントム180を備えたカテーテル160の例を示す。
【
図3A】
図3Aは、本開示の実施形態に係る、イメージングコアの遠位光学系166が較正用ファントム180と光学的にアライメントされるように配置されたカテーテル160の遠位端の例示の表現を図示する。
【
図3B】
図3Bは、本開示の実施形態に係る、カテーテル160がサンプル170を連続的な位置でスキャンして、サンプル170(血管等)の画像を取得するという例示のプルバック動作を図示する。
【
図4-1】
図4Aは、粗較正後に取得された較正用ファントムの画像の例を示す。
図4Bは、システムが較正用ファントム180の厚さ(TH)を正確に測定する方法の例を示す。
【
図4-2】
図4C及び
図4Dは、本開示の実施形態に係る、距離分解能に関連するぼやけによってファントム180の厚さの測定がどのような影響を受けるのかの例を図示する。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係る、較正用ファントムを用いた初期較正時に取得された信号を用いた連続較正の概念を図示するための一連のOCT画像を示す。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係る、手動補正を伴う1回の較正の例示の較正アルゴリズムを示す。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係る、自動連続較正の例示の較正アルゴリズムを示す。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係る、極座標での例示のOCT Bスキャンフレームを図示し、zオフセット較正をより正確に実行するために、OCT信号が半径の量Δrだけシフトされている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
様々な実施形態が更に詳細に説明される前に、本開示は特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。また、当然のことながら、本明細書において用いられる用語は、例示の実施形態を説明する目的のものにすぎず、限定することを意図するものではない。
【0022】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。更に、同封の図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲から逸脱することなく、説明される例示の実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。図面はいくつかの可能な構成及びアプローチを表すが、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本開示の特定の態様をより分かりやすく図示及び説明するために、特定の特徴が誇張、削除又は部分的に切断される場合がある。本明細書に記載の説明は、網羅的であること、そうでなければ、図面に示され以下の詳細な説明に開示される正確な形態及び構成に特許請求の範囲を限定又は制限することを意図するものではない。
【0023】
当業者には当然のことながら、一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、概して、“オープン”な用語として意図されている(例えば、「含む(including)」という用語は「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」は「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきである、等)。更に、当業者には当然のことながら、導入された請求項記載の具体的な数字が意図されている場合、そのような意図は特許請求の範囲に明示的に記載され、また、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しない。例えば、理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項記載を導入するために、「少なくとも1つの」や「1つ以上の」という導入句の使用を含む場合がある。ただし、そのような語句の使用は、同じ請求項に「1つ以上の」又は「少なくとも1つの」との導入句と、“a”又は“an”等の不定冠詞とが含まれている場合でも、不定冠詞“a”又は“an”による請求項記載の導入により、そのような導入された請求項記載を含む特定の請求項が、そのような記載を1つだけ含む請求項に限定されることを意味すると解釈されるべきではない(例えば、“a”及び/又は“an”は、典型的には、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」を意味すると解釈されるべきである)。請求項記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても、同じことが言える。
【0024】
更に、導入された請求項記載の具体的な数字が明示的に記載されている場合であっても、当業者には当然のことながら、そのような記載は、典型的には、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきである(例えば、他の修飾語を伴わずに「2つの記載」とだけ記載される場合、典型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B及びC等のうちの少なくとも1つ」に類似した規定が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者が該規定を理解し得るという意味で意図されている(例えば、「A、B及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独で、B単独で、C単独で、AとBを併せて、AとCを併せて、BとCを併せて、かつ/又は、A、B及びCを併せて有するシステム等を含み得る)。「A、B又はC等のうちの少なくとも1つ」に類似した規定が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者が該規定を理解し得るという意味で意図されている(例えば、「A、B又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独で、B単独で、C単独で、AとBを併せて、AとCを併せて、BとCを併せて、かつ/又は、A、B及びCを併せて有するシステム等を含み得る)。更に、当業者には当然のことながら、典型的には、離接語、及び/又は2つ以上の代替用語を表す語句(明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても)は、文脈上別段の指示がない限り、該用語の一方、該用語のいずれか、又は該用語の両方を含む可能性を企図するものと理解されるべきである。例えば、「A又はB」という表現は、典型的には、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解される。
【0025】
本明細書において、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上」にあるとして言及されるとき、それは、当該他の特徴又は要素の直上に存在してよく、又は、介在する特徴及び/又は要素も存在してよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直上」にあるとして言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。また、当然のことながら、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続される」、「取り付けられる」、「結合される」等として言及されるとき、それは、当該他の特徴に直接的に接続されてよく、取り付けられてよく、又は結合されてよく、又は、介在する特徴又は要素が存在してもよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接的に接続される」、「直接的に取り付けられる」又は「直接的に結合される」として言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して説明又は図示したが、一実施形態においてそのように説明又は図示された特徴及び要素は、他の実施形態に適用することができる。また、当業者であれば理解できるように、別の特徴に「隣接」して配置されている構造又は特徴への言及は、当該隣接する特徴にオーバーラップするかその下にある部分をもつ場合がある。
【0026】
本明細書では、様々な要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分を説明するために、第1、第2、第3等の用語が使用される場合がある。当然のことながら、これらの要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分はこれらの指定の用語によって限定されない。これらの指定の用語は、ある要素、コンポーネント、領域、部品又は部分を別の領域、部品又は部分から区別するためにのみ使用されている。よって、後述する第1の要素、コンポーネント、領域、部品又は部分は、単に区別を目的として、しかし限定をすることなく、また、構造的又は機能的な意味から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、部品又は部分と呼ぶことができる。
【0027】
本明細書において用いられる場合、単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むことを意図している。更に、当然のことながら、「含む」、「備える」、「成る」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、明示的に記載されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。更に、本開示では、「~から成る」という移行句は、クレームで指定されていないいかなる要素、ステップ又はコンポーネントも除外する。更に、留意すべきこととして、一部のクレーム又はクレームの一部の特徴は、任意の要素を除外するように起草される場合があり、このようなクレームは、クレーム要素の記載に関連して「単独で」、「~のみ」等の排他的な用語を使用する場合があり、又は、「否定的な」限定を使用する場合がある。
【0028】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、例えば10%以内、5%以内又はそれ未満を意味する。一部の実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することがある。これに関して、説明され又はクレームされる際に、用語が明示的に表示されていなくても、全ての数値は「約」又は「およそ」という語が前置されているかのように読まれてよい。「約」又は「およそ」という語句は、大きさ及び/又は位置を記述するとき、記載の値及び/又は位置が値及び/又は位置の妥当な予想範囲内にあることを示すために使用されることがある。例えば、数値は、記述された値(又は値の範囲)の±0.1%、記述された値(又は値の範囲)の±1%、記述された値(又は値の範囲)の±2%、記述された値(又は値の範囲)の±5%、記述された値(又は値の範囲)の±10%等である値を含み得る。本明細書に記載されている場合、あらゆる数値範囲は、具体的に別段の記載がない限り、終了値を含むことを意図しており、そこに属する全ての部分範囲を含む。本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は、意図された目的に悪影響を及ぼさない、記述子からの逸脱を許容することを意味する。例えば、測定値の限定に由来する逸脱、製造公差内の差異、又は5%未満の変動は、実質的に同じ範囲内にあると見なすことができる。指定された記述子は、絶対値(例えば、実質的に球形、実質的に垂直、実質的に同心等)又は相対語(例えば、実質的に類似、実質的に同じ等)であり得る。
【0029】
具体的に別段の記載がない限り、以下の開示から明らかであるように、本開示を通して、「処理する」、「コンピュータで計算する」、「計算する」、「決定する」、「表示する」等の用語を用いた議論は、コンピュータシステム、又は同様の電子コンピューティングデバイス、又は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理(電子)量として表されるデータを操作し、同様にコンピュータシステムのメモリ又はレジスタ又は他のそのような情報の記憶、伝送又は表示用のデバイス内の物理量として表される他のデータに変換するデータ処理デバイスの、動作及びプロセスを指すものと理解される。本明細書に記載されているか、若しくは添付の特許請求の範囲に記載されているコンピュータ動作又は電子動作は、文脈上別段の指示がない限り、一般に、任意の順序で実行することができる。また、様々な動作フロー図が順番に提示されているが、当然のことながら、各種動作は、図示又は特許請求されている順序以外の順序で実行することができ、或いは、動作を同時に実行することができる。そのような代替の順序付けの例としては、文脈上別段の指示がない限り、重複、インターリーブ、中断、再順序付け、増分、準備、補足、同時、逆、又は他の変形の順序付けが挙げられる。更に、「~に応答して」、「~に応えて」、「~に関連して」、「~に基づいて」等の用語、又は他の同様の過去形容詞は、文脈上別段の指示がない限り、通常、そのような変形を除外することを意図していない。
【0030】
本開示は、概して医療機器に関し、分光装置(例えば内視鏡)、光干渉断層法(OCT)装置、又はそのような装置の組合せ(例えばマルチモダリティ光プローブ)に適用可能である光プローブの実施形態を例示する。光プローブ及びその部分の実施形態を、三次元空間におけるそれらの状態に関して説明する。本明細書で用いられる場合、「位置」という用語は、3次元空間における物体又は物体の一部の位置(例えばデカルトX、Y、Z座標に沿った3自由度の並進自由度)を指し、「向き」という用語は、物体又は物体の一部の回転配置(回転の3自由度―例えばロール、ピッチ、ヨー)を指し、「姿勢」という用語は、少なくとも1つの並進自由度にある物体又は物体の一部の位置と、少なくとも1つの回転自由度にある物体又は一部の物体の向きとを指し(合計で最大6つの自由度)、「形状」という用語は、物体の長尺体に沿って測定された一連の姿勢、位置及び/又は方向を指す。
【0031】
医療機器の分野において既知であるように、「近位」及び「遠位」という用語は、ユーザから手術部位又は診断部位まで延びる器具の端部の操作に関して用いられる。これに関して、「近位」という用語は、器具のユーザに近い部分(例えばハンドル)を指し、「遠位」という用語は、ユーザから離れており外科部位又は診断部位に近い器具の部分(先端)を指す。更に、当然のことながら、便宜上簡潔にするために、本明細書では、図面に関して「垂直」、「平行」、「上」、「下」等の空間用語が用いられる場合がある。ただし、手術器具は多くの向きと位置で使用されるものであり、これらの用語は限定的かつ/又は絶対的であることを意図していない。
【0032】
本明細書で用いられる場合、「カテーテル」との用語は、概して、広範囲の医療機能を実行するために、狭い開口を通して体腔(例えば血管)の中に挿入されるように設計された、医療グレードの材料から作られる軟性の薄い管状器具を指す。より具体的な「光学カテーテル」との用語は、医療グレード材料から作られた保護シース内に配置され光学イメージング機能をもつ1つ以上の軟性の光伝導ファイバの細長い束を含む医用器具を指す。光学カテーテルの特定の例は、シース、コイル、プロテクタ及び光学プローブを備える光ファイバカテーテルである。一部の用途では、カテーテルは、シースと同様に機能する「ガイドカテーテル」を含み得る。
【0033】
本開示では、「光ファイバ」又は単に「ファイバ」等の用語は、全反射として知られる効果によって一端から他端に光を伝導することができる、細長い軟性の光伝導管を指す。「導光コンポーネント」又は「導波管」との用語も、光ファイバを指す場合があり、又は光ファイバの機能をもつ場合がある。「ファイバ」との用語は、1つ以上の光伝導ファイバを指す場合がある。光ファイバは、一般に透明で均質なコアをもち、それを通して光が誘導され、また、コアは均質なクラッディングによって囲まれている。コアの屈折率は、クラッディングの屈折率よりも大きい。設計上の選択に応じて、一部のファイバは、コアを囲む複数のクラッディングをもつことができる。
【0034】
本開示の一態様によれば、正確なOCT画像を生成するために、自動zオフセット較正手順が提案される。更に正確な較正を達成するために、光学特性を指定したファントムを用いて、OCTシステムのイメージング範囲にまたがる信頼性の高い較正用フィデューシャルを提供することができる。一実施形態では、正確な内径(ID)及び外径(OD)をもつ円形断面と既知の屈折率とを有するファントムが、カテーテルパッケージに組み込まれる。ファントムは、カテーテルをOCTシステムに最初に接続したときに撮像される。次に、システムは、ファントムの特性パラメータ(既知の厚さと屈折率)に関してzオフセット較正を実行する。ここで、ファントムの撮像と初期zオフセット較正は、カテーテルをその保護パッケージフープから取り出す前に行うこともできる。従来のように1つのフィデューシャル(シースOD)に対して1自由度で較正を行う代わりに、本開示に係るシステムは、ファントムのID及びODによって提供される2つの安定フィデューシャルに対して、2自由度(zオフセットとビーム角度)で較正を行うことができる。この革新により、測定誤差のリスクを最小限に抑え、較正の自動化を容易にし、較正誤差の1つ以上の原因を抑制又は低減(例えば角度誤差を低減)することができ、その結果、全ての直径で較正精度が向上する。
【0035】
<OCTシステム>
図1は、本開示に係る、zオフセット較正を要するカテーテル160を有するOCTシステム100の例示の実施形態を図示する。OCTシステム100は、システムコンソール110、患者インタフェースユニット(PIU)120及びカテーテル160を含む。システムコンソール110は、システム全体の動作を制御し、カテーテル160を用いてシステムによって取得されたOCT画像データを処理するように構成(プログラム)される。本明細書に開示されるシステム及び方法は、マイケルソン干渉計等の従来の干渉計を有するOCTシステムを採用し、サンプルアームのOPLと参照アームのOPLは、ほぼ等しい光路長を有するように整合される。OCTシステム100は、時間領域光干渉断層撮影(TD-OCT)や周波数領域光干渉断層撮影(FD-OCT)等の様々な既知のOCT原理に従って実装することができる。FD-OCTは、スペクトル領域OCT(SD-OCT)や波長掃引型OCT(SS-OCT)を含み得る。
【0036】
簡単に説明すると、OCTシステム100では、光源(図示なし)からの光が、ビームスプリッタ(例えば50/50スプリッタ)に向けられ、2つの光ビームに分割される。一方のビームは撮像対象のサンプルに入射し、他方のビームは、経路長や時間遅延を変えることのできる参照経路を進む。可変の経路長と時間遅延は、例えば米国特許第10782117号(あらゆる目的で参照により本明細書に援用される)に開示されるような、電動光遅延ライン(MDL)によって実装された可変光遅延ライン(VDL)や、ファイバベースの光遅延ライン(ODL)によって実現することができる。サンプルからの後方散乱光は、参照アームからの反射光と干渉し、干渉計の出力で光検出器によって検出される。光源がコヒーレントである場合(例えば連続波レーザ)、相対的な経路長を変化させると干渉縞が観察される。光源が低コヒーレンスであったり、短い光パルスを発したりする場合、サンプルアームと参照アームから反射される光の干渉は、2つの光路長が光源のコヒーレンス長内で一致するときにのみ発生し得る。参照経路長をスキャンしながら干渉計の干渉出力を検出及び復調することによって、サンプル内の部位からの後方散乱光のエコー時間遅延と強度を測定することができる。
【0037】
カテーテル160は、概して、カテーテルハンドル150と、患者の体腔に挿入されるように構成された軟性シース162(カテーテル本体又は管状体)とを備える。カテーテルハンドル150は、カテーテルコネクタ151を介してPUI120に接続する。シース162はイメージングコア190を包囲し、イメージングコア190は、トルクコイル161、光ファイバ163、遠位光学系アセンブリ166及び缶167を含む(
図3Aに図示されるように)。少なくとも一部の実施形態では、カテーテル160は、例えば血液クリアランスを目的とした造影剤(フラッシング媒体)を注入するための、1つ以上のアクセスポート152を含んでもよい。
【0038】
PIU120は、ケーブル束119を用いて、カテーテル160をコンソール110に接続する。システムコンソール110はとりわけ、コンピュータ200、ユーザインタフェース210、及び1つ以上のディスプレイ300を含む。システムコンソール110は、光源や光ファイバ、1つ以上の光学センサ、光遅延ライン等、カテーテルベースのOCTイメージングに必要な他の機械的、電子的及び/又は光学的なコンポーネントを含んでもよい。光源の一例はレーザ源(波長掃引型)であり、光学センサの一例はフォトダイオードである。コンピュータ200は、コンピュータプログラムロジックとともに、1つ以上のプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ等)を備えた中央処理装置(CPU)を含んでよい。例示のイメージング手技では、コンピュータ200は、PIU120を介してイメージングコア190を制御して、患者の心血管等の生体管腔のOCT画像を取得させる。
【0039】
PIU120は、カテーテル160とシステムコンソール110の間の主要インタフェースである。システムコンソール110とPIU120は、ケーブル束119によって互いに接続される。ケーブル束119は、PIUに電力を送るためのケーブルと、PIUとコンソールの間で電子信号を伝送するためのケーブルを含む。また、ケーブル束119は、カテーテル160への光/カテーテル160からの光を伝送するための光ファイバを含む。PIU120は、滅菌野からカテーテルのイメージング機能を制御するための、使用可能なボタンやスイッチ(図示なし)等のユーザインタフェースを提供することができる。PIU120は、ビームコンバイナ(図示なし)と、光ファイバ回転継手(FORJ)121と、回転モータ(M)122及びリニアステージ(L)121を含むプルバック部と、から成る。PIU120は、その内部コンポーネントとともに、多用途の非滅菌コンポーネントである。一方、カテーテル160及びそのハンドル150は、単回使用又は限定使用の操作用に構成された滅菌コンポーネントであることが意図される。したがって、OCTシステム100の使用中、滅菌ドレープ又はバッグ(図示なし)によってPIU120全体が覆われ、カテーテル160の近位端は、ユーザがカテーテルハンドル150及び/又はカテーテルコネクタ151を操作することにより、PIU120に手動接続される。ユーザがカテーテル160をPIU120に取り付けるときに、システムが較正プロセスを実行する。
【0040】
<較正用ファントム>
図2は、ハンドル150及び較正用ファントム180を備えたカテーテル160の例を示す。医療用途では、カテーテル160及びそのハンドル150は、一般に、箱やパウチ、トレー、型抜きカード等の滅菌パッケージに入れられた状態で提供される。カテーテルのアウターシースは、使い捨てのフープ181に包囲されている。本開示の1つ以上の実施形態によれば、精確な寸法と既知の均質な屈折率を有するガラス若しくはガラス様材料、又は透明ポリマーから、ファントム180が作製される。ファントム180は、その内径(ID)及び外径(OD)がOCTシステムのプルバック距離をカバーするのに十分な短い長さにまたがるように設計される。ファントムIDはカテーテルシースの外径(OD)に近く、ファントムODは、OCTシステムの最大差イメージング範囲(合焦距離)に近い。例えば、直径5mmまでの血管で使用される、シースODが0.8ミリメートル(mm)である典型的なOCTカテーテルの場合、較正用ファントム180のIDはおよそ1.0mmであり、ODはおよそ5.0mmであり得る。すなわち、本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、較正用ファントム180のIDは、カテーテルシースのODとほぼ等しいか、又はカテーテルシースのODよりも約10~20%大きい場合があり、較正用ファントム180のODは、撮像対象の体腔のIDにほぼ等しいか、又は体腔のIDよりも大きい場合がある。また、別の言い方をすれば、ファントム180は、OCTシステムのイメージング範囲と実質的に等しい厚さを有することができる。
【0041】
ここで、ファントムODに関して、OCTイメージングシステムの“最大範囲”は、いくつかの異なる方法で考えることができる。OCTシステムには視野(FOV)があり、これにより、システムのディスプレイで見ることのできる最大オブジェクトサイズが決まる。FOVは、カテーテルの設計上の選択事項であり、解像度とトレードオフの関係にある。冠動脈OCTカテーテルの場合、例えば、FOVは通常7~10mm程度に設定されるので、較正用ファントムODをFOV限界にすることがひとつの選択肢になり得る。また、OCTシステムには通常、特定の使用の適応がある。市販の冠動脈OCTシステムは、直径1.5~5.0mmの範囲の血管に適応する。したがって、OCTシステムの分解能を同様の範囲に合わせる必要があり、ファントムODは、このようなパラメータに基づいて設計する必要がある。これは通常、設計検証時に較正の精度をどの範囲で証明する必要があるのかに基づくことになる。“最大範囲”を考慮する別の方法は、実際の臨床上の限界について考えることである。冠動脈は、一般に2~4mm程度であり、左主幹では6mmになることもある。当業者であれば、冠動脈のどこにも6mm超の血管があるとは思わないので、血管直径の予想最大寸法を、ODファントムサイズの基準として使用することもできる。したがって、カテーテルの設計と用途に基づいて、新しいカテーテルごとに較正用ファントム180を具体的に設計することができる。少なくとも一部の実施形態では、較正用ファントム180は、OCTシステムの最大範囲や、撮像される生体管腔の最小/最大サイズを考慮して、様々なタイプのカテーテルに適合するように設計することができる。
【0042】
ファントム180を作製するための材料は、OCTイメージング下でファントム180が他の信号よりも特に明るく見えるように選択することができる。そのために、ファントム材料としては、酸化チタン(TiO2)や硫酸バリウム(BaSo4)等の散乱材がドープされたガラスが挙げられる。一部の実施形態では、ファントム材料は、ドーピング有り又は無し(非ドープ)のFEP、PET、PTFE、ナイロン及び/又はそれらの組合わせ等の周知のポリマーを含んでよい。FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン:テトラフルオロエチレンの合成フッ素ポリマー)及びFEP(ポリエチレンテレフタレート)は、材料特性が類似し、生体適合性があるので医療機器に広く使用されている。ファントム180は、
図2に示されるように、カテーテルパッケージフープ181に組み込まれてよい。或いは、ファントム180は、カテーテルのパッケージの他の場所に別個のものとして提供されてもよい。更なる代替として、ファントム180は、OCTシステムに/OCTシステムとともに恒久的に設置されてよく(例えばコンソール110又はPIU120に取り付けられる)、そのID内にカテーテルシースの遠位端を受け入れるように構成されてよい(パッケージフープ181の有無に関係なく)。少なくとも1つの実施形態では、ファントムを様々なサイズのカテーテルと併用できるように、較正用ファントム180の直径は調節可能であってよい。ファントム180が、OCTシステムに設置された別個のコンポーネントとして設けられる場合、ユーザは、較正ルーチンを開始する前に、ファントム180とアライメントされるようにカテーテルレンズを手動で配置することを求められる。ファントム180が滅菌フープ181の一部として設けられる場合、ファントムは、カテーテルのイメージングウィンドウと既に光学的にアライメントされている場合があるので、カテーテルが滅菌フープ181から取り外される前に室温較正を行うことができる。
【0043】
少なくとも1つの実施形態では、較正用ファントム180は、Dadismanが米国特許第8100893号(参照により本明細書に援用される)に記載したハウジング構造に類似するものであってよい。Dadismanは、較正の補助として使用するために、物理的な寸法をもつカテーテルパッケージに組み込まれたハウジング固定具を開示している。Dadismanによれば、レーザ源のパワーを較正するために、ユーザはハウジングを使って、カテーテルレンズを検出器から一定の距離に保持する。本開示のOCTシステムは、類似のハウジング構造を用いて、該ハウジングの表面を撮像及び測定できるように、カテーテルのイメージングコアのレンズをハウジングと光学的にアライメントされた状態で保持することができる。そして、システムは、その測定値に基づいてzオフセットを較正することができる。ただし、OCTイメージングの改良に必要な精度を達成するために、距離と厚さの測定は、本明細書に開示される新規の技術に従って実行される。より具体的には、本開示は、Dadismanによって開示されるようなハウジング固定具の代わりに、壁厚を制御した円筒状ファントムを使用する。
【0044】
円筒状ファントムは、非常に精密な寸法をもつように押出成形又は機械加工することができるので、壁厚測定を用いてNURDを補償することができる。ファントムの壁の厚さを更に容易かつ精確に検出するために、較正用ファントムを、散乱及び/又は蛍光の効果を高めるように構成された材料でドープすることができる。更に、初期較正の実行に追加のステップを必要としないように、本開示のファントムは、レンズ開始位置の保護フープ181に容易に組み込むことができる。製造コストを最低限に抑えるために、少なくとも一部の実施形態では、ファントム180は、その円筒体の一部のみ(例えば約45~180度の弧)が、散乱剤及び/又は蛍光剤がドープされたガラス又はポリマーから作られるように、変更されてよい。或いは、フープ181は、較正用ファントム180として、そのような散乱剤/蛍光剤をドープされたガラス又はポリマーから作られた半円筒形の窓を含んでよい。カテーテルがファントム180の内表面と外表面をスキャンし、システムが後方散乱信号を用いて、ファントムの壁厚を効果的に測定できる限り、ファントムの形状は円筒に限定されない。断面が円形のものであれば、円錐のような他の形状であっても問題ないであろう。円形は基本的なzオフセットステップに重要であるので、新しいファントムでは、使用される断面に少なくとも1つの円形の基準と壁厚が必要である。
【0045】
<較正用ファントムを用いた初期較正と手動補正>
一実施形態では、初期較正において、外部パッケージ(箱やパウチ、トレー、型抜きカード等)からカテーテル160の少なくとも一部(例えばハンドル150)が取り出され、PIU120に接続される一方、カテーテル先端は保護フープ181内に残ったままである。
図2に示されるように、ファントム180が保護フープ181に既に取り付けられているか、又は一体化された状態で提供される場合、カテーテルレンズ164が接続後の開始位置においてファントム180の内側に位置するように、イメージングコアを制御することができる。そして、OCTシステムがカテーテルへの接続シーケンスを完了すると、コンピュータ200は、PIU120を自動的に制御して直ちにイメージングを開始させ、また、サンプルアームの光路長が参照アームの光路長と一致するように自動較正プロセスを実行することができる。このように、カテーテルが滅菌包装フープ181から取り出される前であっても、初期z較正プロセスを実行することができる。
【0046】
図3Aは、遠位光学系166の1つ以上のコンポーネントが較正用ファントム180とアライメントされるように配置されたカテーテル160の遠位端の例示の表現を図示する。
図3Aに図示されるように、カテーテル160は、イメージングコア190を包囲するシース162(アウターシース)を有する。カテーテル160は、その近位端で、カテーテルハンドル150及びコネクタ151(
図1に示される)を介してPIU120に接続される。コンピュータ200は、イメージングコア190を制御して、カテーテル軸に関して角度を成すようにカテーテルの遠位端から光ビーム10を放射させる。イメージングコア190は、トルクコイル161、遠位光学系アセンブリ166及び缶167を含む。缶167は、透明なインナーシース、又は、透明な窓を備えた金属缶を含み得る。遠位光学系アセンブリ166は、光ファイバ163(例えばダブルクラッドファイバ(DCF))の遠位端と、レンズ164(例えばGRINレンズやボールレンズ)と、ビーム指向コンポーネント165(例えば、鏡等の反射表面や、回折格子等の回折表面)と、を含む。遠位光学系アセンブリ166の作製は、イメージングコアの機械的強度と安定性を満たすように、特殊なスプライシング、クリービング及び/又はエッチングの技術によって実施することができる。例えば、本願の譲受人が所有する米国特許第10791923号を参照されたい(その開示は参照により援用される)。
【0047】
患者に対するイメージング工程が開始される前に、ユーザによってカテーテルハンドル150が把持され、PIU120に機械的に接続されるので、コネクタ151がトルク源に接続される。具体的には、ユーザがカテーテルハンドル150を掴み、新しいカテーテル160の近位端(コネクタ151)をPIU120に接続するときに、カテーテルハンドル接続が発生する。カテーテルがPIU120に接続されると、タッチセンサや光学センサ、磁気センサ及び/又は圧力センサ(図示なし)等のセンサを用いて、コンソール110によって接続が検出される。センサ(図示なし)によって検出された機械的接続は電気信号に変換され、電気信号は、コンソール110に(例えばケーブル束119を介して)伝送される。システムは、コンピュータ200のCPUでソフトウェア命令を実行することにより、カテーテルハンドルの接続を認識する。PIUに対する新しいカテーテルの取付けを検出するプロセスの例は、本出願人の米国特許第10743749号の公報(あらゆる目的で参照により本明細書に援用される)に記載されている。コンピュータ200により、カテーテル160がPIU120に接続された(挿入された)と決定されると、コンピュータ200は、プルバック部121を制御して、レンズ164その他の反射性コンポーネントが確実にファントム180と光学的にアライメントされるようにする。そのために、例えば、レンズがファントム180とアライメントされるように配置され、ファントムの画像がディスプレイ300で観察されるようになるまで、コンピュータ200は、リニアステージ121を制御してイメージングコア190を移動させる。追加又は代替として、ファントムによって反射又は後方散乱された光の適切なOCT信号(干渉信号)がカテーテルによって取得されるようになるまで、システムは、参照アームのMDLを制御して、参照アームのOPLを調整させる。
【0048】
カテーテルの取付けと、レンズとファントムのアライメントのプロセスは、ユーザによって手動で行われてもよい。一実施形態では、まず、システムによって粗較正ステップが実行されて、ファントム180のイメージング範囲内にレンズ164が収められる。残りの較正(zオフセット較正)は、ユーザによって反復的に手動で行われてよい。ファントム180の存在により、カテーテルシースからのシグネチャ反射のみがフィデューシャルとして使用される場合に生じる誤差を回避したり最小限に抑えたりすることができるので、較正プロセスが容易になる。
【0049】
カテーテルのシースからの反射を利用した場合に生じるOCT誤差は、この文脈では、以下のように3つに分類することができる:
【0050】
1)較正誤差:これは、zオフセット較正機能自体に起因する誤差である。これはオフセット誤差であり、較正に用いられるシース寸法の公差、シースの非同心性、或いは、振動によって生じるシースの歪み又はNURD(これにより、シースが想定とは異なるサイズや形状なったり見えたりする)によって発生する。この誤差は、(ドープされたフィデューシャルを用いる場合であっても)シースがイメージングプローブの固定部分であるという理由から、ほとんど避けることができない。具体的には、シース(又は、シースに取り付けられた専用反射器等の他の基準表面)の公差や非同心性から生じる誤差は不可避であるが、NURDのような歪みから生じる誤差は、回避したり補正したりすることが可能である場合がある。本明細書に開示される較正は、ファントムの厚さと、ファントムを透過するビームの角度とを用いることによって2つの自由度を提供し、例えばNURD誤差を軽減する。
【0051】
2)測定誤差:この誤差もオフセット誤差であるが、測定を行うユーザ又はアルゴリズムに起因する。この誤差は、システムの距離分解能のせいで画像内の特徴がぼやけることが主な原因であるが、較正時に誤った較正用フィデューシャルが特定された場合にも発生し得る。例えば、シースの外表面に対する較正を意図しているときに内表面に対して較正が行われる場合に、測定誤差が発生する。先に言及したFriedman、Kent、Petersenは、このタイプの誤差に対処するための技術を提案している。本願は、光路長の変動とビーム角度の変動の両方を考慮するために、2つ以上のフィデューシャルを備えた較正用ファントムを用いることにより、このような従来技術を改良する。これにより、OCT較正の自由度が増す。
【0052】
3)角度誤差:角度誤差は、主にカテーテルビーム角度のばらつきに起因するスケーリング誤差である。これは、大口径の測定において主要な誤差要因となる可能性があり、従来のzオフセット較正技術では全く対処できない。更に、他の誤差(較正誤差や測定誤差、NURD)が適切に対処されないと、角度誤差が悪化し、補正が更に困難になってしまう。この場合、ファントムでの較正後、システムは、ファントムの代わりにカテーテル構造から新しいフィデューシャルを使用して(較正に一般に使用されるシースODであってもよいが、今回はカテーテルの公称ODを使用するのではなく、システムは、較正状態で実際に測定されたODを使用することにする)、そのフィデューシャルを、手技全体を通して継続的補正に使用する。
【0053】
図3Aでは、最も一般的な誤差(較正誤差、測定誤差及び/又は角度誤差)の1つ以上を未然に防ぐために、ファントム180の特定の寸法が事前に知られており、ファントムを通る光路長がOCT画像から正確に測定される。ファントムはカテーテルシースから独立した要素であるので、システムは、較正用ファントムのパラメータを用いて、カテーテルコンポーネントに起因する誤差(例えばカテーテルの楕円化やNURD、zオフセット、不正確なサンプルアームの光路長測定、及び/又はビーム角度の変動によって生じる)を補正することができる。
【0054】
より具体的には、再び
図3Aを参照すると、較正用ファントム180がない場合、光ビーム10は、作動距離(WD)に位置する被写体の表面をスキャンできると考えられる。既知の厚さLを有するファントム180がカテーテルシース162を囲むように配置される場合、光ビーム10は、ファントムを通って距離L
mだけ進む。ビーム10がファントム内を進む距離は、L
m=t
m×[c/n]によって与えられ、t
mは測定時間であり、cは光の速さであり、nはファントムの屈折率である。ただし、ビーム角度を考慮すると、ファントム180の実際の厚さは、L=L
m×Cos(θ)で与えられる。作動距離WDに位置する被写体の画像を再構成するために、システムは、光ビーム10の角度と進行距離だけでなく、システムの距離分解能も考慮する必要がある。
【0055】
この場合、光のビームが約19~25度の角度シータ(θ)を成して放射されるとすると、表1に示される誤差の1つ以上により、かつ/又は、システムの距離分解能の限界により、被写体がぼやける。これらの誤差の原因が全てぼやけの原因になるわけではないが、距離分解能は特にぼやけの原因となり、正確なエッジポイントを不明瞭にするので、誤差原因のひとつになり得る。シースOD又はビーム角度がずれていると、そのような誤差によって画像がシフトするので、測定値が少しずれるが、必ずしもぼやけるわけではない。これに対して、エッジポイントの正確な位置がぼやけることにより、距離分解能によって測定誤差が生じる。
【表1】
【0056】
距離分解能は、レーザのコヒーレンス長や帯域幅等のOCT光源のパラメータに関連する。距離分解能と視野(FOV)の間にはトレードオフの関係があり、これは画像のぼやけに関する。距離分解能とは、基本的に、点光源が画像内でどの程度の幅で見えるのかを測定するものである。つまり、距離分解能が20ミクロンである場合、点光源は、実際には直径20ミクロンの円として見えることになる。ぼやけた画像で測定を行うと、20ミクロンの円のどこに測定線を置くかでユーザの意見が分かれることになり、最大で20ミクロンの測定誤差が発生するおそれがある。
【0057】
ビーム角度について、システムは、測定時にカテーテルが公称ビーム角度にあると想定しなければならない。システムが行う全ての測定は、公称角度の余弦を乗じることによって、このビーム角度を考慮するように変換される。しかし、撮像中に機器の実際のビーム角度が変化すると、全ての測定にスケーリング誤差が生じることになる。
【0058】
これらの誤差の1つ以上を回避するために、カテーテルから放射されファントム180を透過する光のビーム角度が、以下の方程式(1)を用いて計算される:
【0059】
θcath=arccos(Lnom*Cos(θnom)/(Lm-RA)) 式(1)
【0060】
式中、θnomとLnomは、それぞれ公称ビーム角度と公称ファントム厚さであり、RAは、システムの距離分解能であり、Lmは、ファントムの測定厚さである。ファントムインデックスの公称ビーム角度θnomと、公称ファントム厚さLnomは、製造業者から知らされシステムのメモリに保存された指定値であってよい。
【0061】
カテーテルの先端には角度付きミラーがあり、光を外方向に反射し、ビーム角度を設定する。このミラーの実際の物理的角度は、ビームを空気中で透過させると仮定した場合の公称ビーム角度(θnom)に対応する。ビームが血管内の水やフラッシング媒体、血液等の他の媒体や、ファントム材料(ポリマー又はガラス)に当たると、ビーム角度は、屈折率及びスネルの法則(n1/n2=sinα2/sinα1)に基づいて変化する。物理的なミラー角度には仕様があり、当該ビーム角度の公称値は、パラメータとしてOCTソフトウェアに提供される。OCTシステムは、撮像される媒体の屈折率も、パラメータとして加味することができる。ファントムの屈折率が分かっており、OCTシステムをその屈折率に設定すると、システムは、そのファントムでの公称ビーム角度をどのようにすべきかを知ることができる。そのファントムの公称角度に合ったミラーを有するカテーテルがあれば、ビーム角度に関しては全てが正確なものになる。しかし、カテーテルのビーム角度が公称角度と異なる場合、システムがファントムの厚さのような何かを測定しようとすると、システムは、角度(すなわち公称角度と測定角度)の比によって厚さを間違えてしまう。式(1)において、Lnomとの用語は、ファントムの既知の実際の厚さであり、システムはこれを、画像内で測定された厚さと比較して、角度誤差があるかどうかを確認することになる。したがって、システムは、カテーテル角度θcathを計算して、ビーム角度の起こり得る誤差を取り除く。なお、OPL調整は、ファントムの厚さを使用せず、ファントムの厚さに影響を与えない。むしろ、ファントムの厚さにより、カテーテルの角度(θcath)に関する何か(基本的に画像のピクセルのサイズを設定するもの)が分かる。次いで、1つの表面を既知の位置に合わせるようにOPLが調整される。第1の表面のビーム角度と媒体が正しく設定(較正)されると、ファントムの第2の表面も正しい位置にあるはずである。
【0062】
図4Aは、粗較正後に取得されたナイロンファントムの画像の例を示す。スクリーンディスプレイ300にファントム画像が表示された状態で、システムは次に、ファントムのID及びODを検出する。そして、システムは、画像内のファントムの見かけの厚さ(TH)を、ODとIDの間の距離として正確に測定する。精度を高めるために、システムは、OCT画像のいくつかのフレームを平均化することにより、平均ODから平均IDを差し引いた差としてファントム厚さ(TH)を測定することができる。
図4Bは、較正用ファントム180のOCT画像を示しており、ID及びODの反射をより明確に示すために、OCT画像のいくつかのフレームが平均化され、それにより、ファントム厚さTHのより正確な測定が可能となる。また、システムは、平均ODと平均IDの平均を計算して、較正用の基準として用いるように構成されてもよい。そして、システムは、平均OD、平均ID及び/又はそれらの平均を、3つの別々のフィデューシャルとして用いて、較正精度を高めることができる。
【0063】
カテーテルシースの表面のような1つの表面ではなく、ファントムの厚さを用いる(すなわち2つの表面を用いる)ことにより、測定に対するNURDの影響が除去され、これにより、較正誤差の少なくとも1つの原因が減少又は排除される。更に、ファントムの測定された厚さから距離分解能を差し引くことにより、画像の左右で分解能セルの半分によってファントムの明るい信号がぼやけることが考慮される。
【0064】
より具体的には、ファントムの表面は、OCTイメージングの点光源として機能する。したがって、カテーテルがファントムをスキャンする間に、ファントム表面から反射された光を検出し、点像を円に並べることによって、ファントムの画像が形成される。しかし、ファントムの画像では、縁に沿った各点で、距離分解能に等しい直径をもつ円が敷かれ、その結果、ファントムの画像の全周に太い線が描かれる。ファントムの実際の縁は、左右に分解能セルの半分を広げるこの太い線の中心にある。しかし、画像を読むユーザは、分解能セルの半分だけずれた太い線の外縁にファントムの縁があると認識する。これにより、それぞれ分解能セル1個分だけODは大きめになり、IDは小さめになり、ファントムの厚さはセル1個分だけ大きめになる。0.1mm以上の精度が求められるシステムでは、OCT画像は、距離分解能による誤差を含むことがある。
【0065】
図4C及び
図4Dは、距離分解能に関連するぼやけによってファントム180の測定がどのような影響を受けるのかの例を図示する。
図4Cは、内径が2mm、外径が4mm、壁厚が2mmである実際のファントム180を示す。
図4Dは、20ミクロン(0.02mm)の距離分解能をもつOCTシステムによってファントムの画像を取得した場合の、ファントム180の画像に対するぼやけ効果を示す。
図4Dでは、実際のファントム180のID及びODの縁に沿った各点が20ミクロンの点として撮像されるので、
図4Dに示されるファントム180の画像では、見かけのID=1.98mm、見かけのOD=4.02mm、見かけの厚さTH=2.02mmである。よって、ファントムの知覚(測定)画像に20ミクロンの誤差が生じる。
【0066】
本願におけるzオフセットは、標準的なOCT zオフセット較正と同様に、ファントムの測定されたIDを公称値に一致させるように正確に調整することができる。ただし、カテーテルのシースODではなくファントムIDを用いることにより、シースのサイズ及び/又は形状の予期せぬ変化による1つ以上の測定誤差が回避される。したがって、カテーテルが患者に挿入される前に室温空気に対して較正されることが有利である。
【0067】
カテーテルが患者の体内に入り、フラッシング媒体(血管造影剤や生理食塩水)を介して画像が取得されると、システムは、zオフセットについてのみ再較正される必要がある。角度は、フラッシュ媒体と組織との既知のインデックス比によって変化するが、この角度変化は、システムの媒体設定の屈折率を通して考慮することができる。したがって、カテーテルが患者の体内に入った後のzオフセット較正は、手動で行うこともできるし、シースODに対する較正用の既知の標準的な方法を用いて自動で行うこともできる。しかし、今回はカテーテルの公称ODを使用するのではなく、システムは、較正状態での実際の測定されたODを使用し、そのフィデューシャルを、手技全体を通した継続的補正に使用することができる。
【0068】
図3Bに戻ると、血管等の生体管腔170の画像を取得するために、カテーテル160が連続位置で生体管腔170をスキャンする例示のプルバック動作が図示されている。
図3Bに示されるように、イメージングコア190は側視イメージング用に構成されており、カテーテル160の遠位端から、カテーテル本体に関して角度シータ(θ)を成して光ビーム10が放射される。カテーテルがカテーテル軸Oxに平行な方向に移動されているときに、光ビーム10が生体管腔170に入射する。ここで、生体管腔(例えば血管壁)に光ビーム10が照射されるとき、イメージングコアは、カテーテル軸Oxを中心に回転又は振動し(矢印Rで示されるように)、静止したままのシース162内で(方向Pに)引き戻される。遠位光学系アセンブリ166は、イメージングコア190が連続的に回転して方向Pに後退する間に、生体管腔170の長さに沿った複数の位置から後方散乱光12を収集する。このように、カテーテル160は、連続した回転を通して、光ビーム10で生体管腔170をヘリカル方式で連続的にスキャンすることができる。光ビーム10からの後方散乱光と参照ビーム(図示なし)からの参照光を組み合わせると、サンプルアームと参照アームの両方の光がほぼ同じ光学距離を進んだ場合にのみ、干渉信号のパターンが生じる(「ほぼ同じ光学距離」とは、光源のコヒーレンス長以下の差を指す)。生体管腔のうちより多くの光を反射する領域は、反射する光が少ない領域よりも強い干渉信号を生じることになる。コヒーレンス長を超える光は、干渉信号に寄与しない。反射光の強度プロファイルは、Aスキャン又はAラインスキャンとも呼ばれ、生体管腔内の構造の空間寸法や深さ位置に関する情報を含む。
【0069】
室温較正でzオフセット及びビーム角度が決定されると、カテーテルは、全ての測定で正確になる。簡略化のため、そして本開示の目的のために、生体管腔170は、実質的に円筒形の管腔として考えることができる。しかし、前述したように、体腔内でのカテーテルの生体内使用時に、カテーテルの光路長が変化する可能性がある。光路長は、初めの体内への挿入時の気温上昇によって変化する可能性があり、曲げからの伸びや、回転及び並進時の力からの伸びに基づいて、刻々とわずかに変化する可能性がある。そこで、連続較正の必要性が生じる。本開示では、
図7を参照して説明するように、管腔内インターベンション前に較正用ファントムを用いて得られた初期zオフセット較正を用いて、インターベンション中の自動連続較正のために内部カテーテル反射を露出させる。
【0070】
<OCT画像較正用の遠位光学系シグネチャ>
カテーテルがファントムから除去され、生体管腔に挿入された後の継続的な較正を自動化するために、システムは、生体内に存在し続けるカテーテル自体の新しい較正用フィデューシャルを標的にする必要がある。本開示では、Friedmanによって記載された従来の方法と同様に、シースODを使用することができる。しかしながら、従来の較正フィデューシャルを改善するために、初期ファントム較正を使用することによって、より正確な較正を達成することができる。本開示によれば、カテーテルシースを用いて、カテーテルが初期較正後にファントム内にある間にシースのODを測定することによって、継続的補正の改善が達成される。この場合、公称シース直径を用いる代わりに、シースの測定されたODがシステムに保存され、次に、後続の画像においてシースがその値に調整される。このプロセスにより、シース直径の変動性による較正誤差が除去される。
【0071】
カテーテル内のイメージングプローブの遠位光学系の他の反射面を用いることにより、更に正確な連続較正を達成することができる。この場合、実際の直径が既知である予め選択された表面を用いる代わりに、システムは、カテーテルがファントムによって較正された状態の実際の見た目でレンズ内の全ての表面及び信号のスナップショットを効果的にキャプチャするように構成することができる。次に、生体内での管腔内イメージング時に、システムは、初期較正時に取得されたパターンを一致させて、OCT画像の各Aラインスキャン及び/又は各Bスキャン(フレーム)での連続較正を維持するように構成される。
【0072】
図5は、ファントムを用いた初期較正時に取得された特徴又は特徴のパターンを用いたzオフセット較正の概念を図示するための一連のOCT画像を示す。一実施形態によれば、ファントム180での初期較正が達成された後、参照アームを固定量(例えば0.5mm等)だけシフトさせることができ、これにより、OCT画像上でシースが拡張する(シース線が移動する)。これにより、レンズ及び/又は光ファイバ端面内で近位の更なる表面からの追加のリング/反射が露出する可能性があり、そうでなければ画像から取り除かれる。システムは、初期較正時に取得されたカテーテルのこのような追加のリング/反射を、代理のフィデューシャルとして使用する。zオフセットがシフトされた状態でイメージングが実行され、較正では内部リング/反射がフィデューシャルとして使用され、最終画像表示は、画像を、そのような内部フィデューシャルが存在しない適切な較正状態に移行する。
【0073】
図5の画像5A1は、第1のカテーテルによって取得されたOCT画像を示し、画像5B1は、第1のカテーテルとは異なる第2のカテーテルによって取得されたOCT画像を示す。第1のカテーテルは、室温空気下で画像5A1を取得し、第2のカテーテルは、フラッシング媒体下で画像5B1を取得した可能性がある。両方のOCT画像は、既知の従来の方式で較正される。画像5A1において、最も内側の円又はリングは、レンズの外表面から反射された光(レンズ表面反射400)の強度を表し、中間の円又はリングは、カテーテルシースから反射された光(シース反射401)の強度を表し、最も外側の円又はリングは、シースからのゴースト反射(ゴースト反射402)の強度を表す。同様に、画像5B1において、最も内側の円又はリングは、レンズの外表面から反射された光(レンズ表面反射500)の強度を表し、中間の円又はリングは、カテーテルシースから反射された光(カテーテル反射501)の強度を表し、最も外側の円又はリングは、シースからのゴースト反射(ゴースト反射502)の強度を表す。
【0074】
従来、zオフセット較正に最も一般的に使用される表面は、カテーテルシースからの反射(すなわちシース反射401又はシース反射501)に対応する信号である。しかしながら、シースからのゴースト反射により、シース表面に対して正確な較正を行うことが難しくなる。更に、カテーテルを取り囲む媒体に応じて、シース画像は外観及び/又はサイズが変化する可能性がある。例えば、画像5B1では、画像5A1の対応する信号よりもシース反射501とゴースト反射502がぼやけている。このような状況では、シース表面が較正用に正確に定義されないので、較正プロセスが最適ではなくなるおそれがある。したがって、Kemp(米国特許第10206585号)やPetersen(米国特許第8116605号)によって記述されたような先行文献では、更に精度を高めるための代替の較正表面として、シース以外の表面に対してカテーテルを較正することが提案されている。しかしながら、このような先行文献では、較正表面はカテーテル自体に組み込まれるので、依然として誤差が生じるおそれがある。
【0075】
本開示によれば、ファントム内の室温での初期較正が達成された後、参照アームを固定量(0.5mm等)だけシフトさせることができ、これにより、OCT画像上でシースが拡張(移動)する。これにより、遠位光学系(レンズ/光ファイバ)内の更に近位からのリング/表面等の追加の特徴が露出する可能性があり、そうでなければ画像から取り除かれる。次にシステムは、これらの追加の特徴を用いて継続的較正を実行することができる。
【0076】
図5の画像5A2は、参照アームが所定量(例えば0.05mm)だけシフトされた後に第1のカテーテルによって取得された第1のOCT画像を図示している。画像5B2は、参照アームが0.5mmだけシフトされた後に第2のカテーテルによって取得された第2のOCT画像を図示している。画像5A2は、zオフセットを0.5mmシフトさせたOCT画像であり、新しい最も内側のリング405によって新しい表面が表されている。図示されているように、画像5A2は、誤って較正された画像であり、今や新たな表面反射が現れている。この表面は、原点又は原点の内側にあり、先に較正された画像5A1では見えなかった。このzオフセットシフトを用いて適所でイメージングが実行される場合、最も内側のリング405を、新たな代替の較正用表面として用いることができる。最終的に、イメージング完了後に画像を原点に戻すことができ、この表面は消えることになる。
【0077】
画像5B2は、カテーテルを取り囲む媒体による外観の変動を示すために、異なるカテーテルでの画像5A2と同じプロセスを示す。ここでは、外側のシース表面がよりぼやけて見え、シース表面に対する較正がより困難である。しかしながら、この場合、内部反射505(イメージング光学系の1つ以上の反射面に対応する)の位置と振幅により、カテーテルの安定したシグネチャが提供される。すなわち、内部反射リング505は、OCT画像の取得時に介するフラッシング媒体とは無関係の安定した(不変の)シグネチャである。
【0078】
したがって、少なくとも1つの実施形態では、システムは、この拡張較正状態での所与のカテーテルの特定のパターンを認識するように訓練されてよい。そして、後続のイメージングは、温度や媒体の変化を通して拡張較正を維持するために用いられるパターンにより、この拡張状態で実行することができる。全ての画像フレームが個別に較正されると、画像を極座標で内側にシフトして、0.5mmのシフト/拡張を除去し、初期ファントム較正の精度を維持しながら正確な較正を復元することができる。言い換えれば、システムは、光反射信号を可視化するために基準を調節し、そのようなデータを取得し、可視化された信号を各フレームの較正に使用し、そして、重要なこととして、シフトを逆転して、画像を適切な較正状態に復元することができる。
【0079】
<較正アルゴリズム>
一実施形態によれば、較正用ファントム180を用いた室温空気での較正のみを達成するために、
図6に示されるフローチャートに従って初期較正が行われる。室温での初期較正後、標準的なzオフセット較正方法によって、例えばシースODを用いて公称カテーテルODに対して較正を行うことによって、患者の体内での再較正を達成することができる。この解決策では、角度誤差の減少と、較正用ファントムによって提供される安定した基準シグネチャの使用により、従来の標準的な較正よりも正確な結果が得られる。
【0080】
図6のフローチャートによれば、ステップS502において、手動補正を伴う1回の較正が開始される。ステップS502では、ユーザが、新しいカテーテル160の少なくとも一部(例えばハンドル150)をアウターパッケージから取り出す(例えば、ユーザが、型抜きカードやプラスチックボックス、収縮包装等の少なくとも一部を除去して、少なくともハンドル150を露出させる)。ステップS504では、ユーザが、カテーテル160(プロービング部分)を保護フープ181に入れたままで、カテーテルコネクタ151をPIU120に取り付ける。ステップS504では、システムが、カテーテルハンドルの取付けを検出する。ステップS506では、PIUに対するカテーテルの取付けを検出すると、システムが、光接続ルーチンを自動的に開始して、イメージングプローブをプルバック部に係合し、イメージングを開始する。ステップS508では、イメージングプローブのレンズがファントム180とアライメントされるように、システムが、参照アームの光路長(OPL)を調節する。ステップS508では、システムは、画像から又はシステムによって検出された後方散乱信号からファントム180が特定されるまで、参照アームのOPLを反復的に調節するようにプログラムされてよい。先に述べたように、ファントム180は、OCTイメージングに特有の波長又は波長範囲を有する光の後方散乱を増強するために、TiO2等のドープ粒子を含むポリマーから作ることができる。
【0081】
先に述べたように、参照アームのOPLを調節するために、システムは光遅延ラインを備えてよい。実施形態では、光遅延ラインは、参照アームの直線走査型ガルバノメータに配置されたミラーを含み得る。他の実施形態では、光遅延ラインは、参照アームの光路長をサンプルアームの光路長に一致させるために、参照アームに配置された固定長の参照ファイバコイル(例えば光ファイバのセグメント)であってよい。
【0082】
ステップS510では、システムが、OCT画像及び/又は後方散乱信号においてファントムが検出されたかどうかを決定する。OCT画像内でファントムが検出されない場合(S510でNO)、システムは、ファントムが検出されるまでMDLの移動の制御を継続する。この例では、システムは、ファントム180がイメージングコア190のイメージング範囲内にあるようにファントム180を移動させるよう、ユーザに促すことができる。ファントムが検出された場合(S510でYES)、ステップS511において、システムがファントムの画像を保存する。その後、プロセスはステップS512に進む。ステップS512では、システムが、OCT画像内のファントムの内径及び外径を検出する。また、システムは、OCT画像から検出されたID及び/又はODに基づいて、OCT画像内のファントム壁厚を決定(計算)する。次に、システムは、ビーム角度を調節して較正する。ここで留意すべきこととして、ビーム角度に対して壁厚を調整するのではなく、OCT画像内で測定された壁厚から実際のビーム角度を計算する。全ての後続の測定では、予めプログラムされた公称ビーム角度の代わりに、新たに決定された実際のビーム角度が使用される。先に述べたように、ファントム180の製造厚さと屈折率は、システムのメモリに保存することができる。しかしながら、OCT画像内のファントム壁厚(TH)を正確に測定(計算)するために、システムは、式(1)を、ファントムの実際の画像から得られた平均ODと平均IDの差(
図4Aと
図4Bに示されるように)と組み合わせて用いることにより、ビーム角度を考慮に入れることができる。
【0083】
ステップS514では、システムが、OCT画像内のファントムIDを既知の公称値に設定することによって、zオフセットを調節する。すなわち、標準的なOCTzオフセット較正のように、画像内のファントムの測定されたIDを既知の公称値に合わせるようにzオフセットが調節されるが、シースODの代わりにファントムIDが使用される。この時点で、カテーテルは、室温条件下で正しく較正される。ここで、“既知の公称値”とは、ファントムIDの既知の値である。ファントムは、よく制御された既知のID及びODと既知の屈折率をもつ製造物である。システムがファントムの画像内のID及びODを測定し、OCTでのファントム厚さを計算すると(全て公称ビーム角度を用いる)、次にシステムは、ファントムの測定/計算された厚さと既知の実際の厚さとの差に基づいて、実際のビーム角度を計算する。新しいビーム角度設定では、画像全体のスケールが変わることになるが、実際のビーム角度が分かるようになる。ここから、システムは、標準的なzオフセットのように、ファントムIDをその正確な寸法に設定している。
【0084】
ステップS516では、ユーザが、保護フープ181からカテーテルを取り外し、滅菌カテーテル160を患者の生体管腔に挿入する。このステップS516は、従来の方法で実行することができる。しかしながら、室温較正が終了すると、システムは、較正されたパラメータをシステムのメモリに記録することになり、また、患者内でカテーテルを使用する前に、較正用ファントムを除去するようユーザに促すことができる。
【0085】
ステップS518では、システムが、Aラインスキャンごとに、カテーテルシースのODに対応するシグネチャ特徴(ピーク信号)を検出する。ステップS520では、システムが、検出されたシースの平均半径を計算する。ステップS522では、カテーテルが患者の体内に入り、フラッシュ媒体(血管造影剤や生理食塩水)を介して画像を取得するので、システムは、zオフセットについてのみ再較正を行うことになる。
【0086】
体内での再較正は、カテーテルODを用いて公称ODに対して較正を行う標準の方法によって達成することができる。体温での再較正は、ファントムを用いた室温での較正の後に行われるので、再較正では、角度誤差の減少により、標準の較正よりも正確な結果が得られる。
【0087】
<自動連続OCT画像較正>
一実施形態では、
図6のステップS502~S510に従って初期較正が行われた後、システムは、ユーザ入力を伴わない完全に自動化された連続較正を達成するために、後続の較正のためにレンズからの信号にキーインするように訓練される。自動連続較正のプロセスのフローチャートを、
図7に図示する。
【0088】
図7において、ステップS602は、較正用ファントム180を用いた室温較正のためのステップS502~S514のプロセスに対応する。ステップS604では、ユーザが、ファントム180を除去し、カテーテル160を患者の体腔に挿入する。カテーテルの遠位先端が所望の位置にあるときに、フラッシングとプルバックが既知の方法でトリガされる。ステップS606では、システムが、フラッシュ媒体(画像造影剤や生理食塩水)を介して初期OCT画像を取得する。ステップS608では、システムが、参照アームを調節して、シースを所定の距離(Δr)だけシフト(拡張)する。実施形態では、シースは、遠位光学系からの反射に対応する1本以上の特徴的な線(例えばファイバ端面、レンズ表面及び/又はビーム指向表面によって反射された光に対応する線)を可視化するのに十分な距離だけ拡張(シフト)される。ステップS610では、システムが、遠位光学系の1本以上の線の特性に基づいて、シグネチャ関数を導出する。シグネチャ関数は、振幅のピーク、厚さ、及び/又は検出された信号からの線の分離を検出し、較正に使用できる最も顕著な信号又は所望の信号を平均化することによって、導出することができる。
【0089】
ステップS612~S620では、システムが、連続較正を伴うプルバック動作時に、管腔サンプルの生体内OCTイメージングを実行する。より具体的には、ステップS612では、システムは、シースが所定の距離(+Δr)だけ拡張した状態でOCT画像の取得を開始する。ステップS614では、システムが、OCT画像の各Aライン及び/又は各フレーム(Bフレーム)に対してzオフセット較正を実行する。ここで、各フレームで、レンズ内でシグネチャ基準円を見て、そのフレームに対して必要に応じてzオフセットを調節して、当該円を、ファントム内にカテーテルがあった時に当該円があった位置に一致する所定の位置に置くことによって、zオフセット較正が行われる。そのために、
図5に示されるような円を用いることができる。
【0090】
ステップS616では、システムが、所定の距離に等しいが逆方向の量(-Δr)だけシースを縮小/シフトさせることにより、OCT画像の各Aライン又は各フレームを画像の中心に戻す。ステップS618では、システムが、正しく較正されたAライン、又は正しく較正されたBフレームを、システムのメモリに保存する。ステップS620では、システムが、連続較正が完了したかどうか(例えば、全てのフレームが較正されたかどうか)を決定する。ステップS612~S620のプロセスは、全てのOCTフレームが正しく較正及び処理されるまで、繰り返される。ステップS622では、システムが、補正されたOCT画像をディスプレイ300の画面に出力する。
【0091】
図8は、極座標でのOCT Bスキャンフレームの例を示す図であり、OCT信号が半径の量+Δrだけシフトされている。横軸は、カテーテルの中心からの径方向距離を表し、縦軸は、0~2πラジアン(0~360度)の角度方向を表す。
図8では、シグネチャ特徴又はシグネチャ信号702は、遠位光学系アセンブリ166の1つ以上の表面(ファイバ端面、レンズ、ビーム指向コンポーネント)からの反射に対応し、シース信号704は、アウターカテーテルシース162(例えばアウターシースの内径)からの反射に対応し、ファントム信号706は、較正用ファントム180から反射又は後方散乱された光に対応する。例えば、ファントム信号706は、較正用ファントム180の内表面に対応する。
図8に示されるタイプのOCT画像は、(室温空気での)初期較正時に取得及び記録し、その後、体内での連続較正時に基準として使用することができる。
【0092】
図8では、シース信号704は領域705を示し、ここでは、シース表面に対応する線が、例えばNURDやシース非同心性によって直径について変動している。これに対して、ファントム信号706は、ほぼ真っ直ぐであり、縦軸に平行であるので、較正用ファントムに対応する信号(ファントム信号706)を、OCTフレーム内でライン単位で容易に識別することができる。したがって、極座標でのOCT画像を用いて正確な較正を行うこともでき、シースが所定の距離(+Δr)だけ拡張されたOCT画像を、フレーム単位で(又はAライン単位で)処理することができる。較正のために画像の各フレーム(又は線)が処理された後、システムは、所定の距離に等しいが逆方向の量(-Δr)だけシース信号704を縮小/シフトさせることにより、OCT画像の各フレーム(又はライン)を画像の中心に向かって後退させる。このように、ファントムでの較正後、システムは、zオフセットシフトを実行して、内部カテーテル反射(そうでなければ視野の外にあり得る)を露出させ、そのような内部カテーテル反射を代理フィデューシャルとして使用することができる。zオフセットがシフトされた状態でイメージングが実行され、較正では、内部カテーテル反射がフィデューシャルとして使用され、最終画像表示は、そのような内部カテーテル反射が表示されない適切な較正状態に移行する。
【0093】
<追加の較正因子>
追加の実施形態は、以下を含む更なる最適化を達成するために、ファントム較正プロセスに追加の特徴を追加することができる。
【0094】
ドーピング濃度が制御された1つ以上のファントム、又は、均質なOCT外観をもつポリマーを用いて、表示設定又はシステム出力ゲインを調節して、カテーテルを通る光の収集効率又は伝送の変動を考慮し、較正された明るさ又は最適化された信号対雑音比をもつ画像を生成することができる。カテーテルは、収集効率に基づいて明るさが変動する可能性がある。TiO2ドーピングの濃度が精密に制御されたファントムの場合、カテーテルの効率が同等であれば、ファントムは、OCT画像上では常に同じ明るさに見える(ファントム画像の全ピクセルの平均信号強度が同じ)ことが期待される。しかし、収集効率の低いカテーテルでは、画像がより薄暗く見えるであろう。ファントム画像の見かけの明るさに一貫性をもたせるために、ファントム較正ステップ時にシステム表示の明るさを調節することができる。これにより、生体内イメージング時に、より一貫した画像外観が得られる。
【0095】
近赤外蛍光(NIRF)や近赤外自家蛍光(NIRAF)、分光法(例えば共焦点分光法)等の機能モダリティとOCTイメージングをコレジストレーションするデュアルモダリティ又はマルチモダリティのイメージングシステムの第2のイメージングモダリティを較正するために、他の添加物(フルオロフォア等)や、特定の分光成分を含む材料を用いた1つ以上のファントムを用いることができる。
【0096】
ID又はODに規則的に繰り返すパターンをもつ1つ以上のファントム(パターンは、OCT画像内で可視であり、特に区別できるように設計される)を用いて、NURDからの歪みや、振動その他のアーチファクトを品質チェックとして検出して、患者での機器の使用前に滅菌パッケージから十分に機能しない機器を選別することができる。例えば、マルチモダリティOCT(MMOCT)では、OCT信号の検出に第1の光チャネルが用いられ、組織からの蛍光信号の検出に第2の光チャネルが用いられる。MMOCTシステムでは、カテーテルは、NIRAFでの変化を検出する上で非常に感度が高く、直線性が高いが、収集効率が変動するので、実際の基礎となるNIRAF強度を定量化する精度は高くない。この場合、例えば、システムは、OCT下で撮像される特定のレベル又はタイプのドーピングを有する第1のファントムと、第1のファントムの2倍の蛍光強度を提供する異なるレベル又はタイプのドーピングを有する第2のファントムとを含む、2つのファントムを備えることができる。2つの異なるカテーテルを用いて2つのファントムを撮像する場合、システムは一貫して、画像内で一方を他方の2倍の明るさで確認することになるが、2つのカテーテル間の生値には、±25%程度の差が生じ得る。蛍光量が精密に制御されたファントムを用いることにより、システムは、どのカテーテルでもファントム内で同じNIRAFの生値を与えるようにゲインを調節することができ、これにより、全てのNIRAF測定がより正確で再現性の高いものになる。
【0097】
まとめると、更に正確な較正技術を提供するために、本願は、システムのイメージング範囲にまたがる追加の較正フィデューシャルを提供するために使用できる、光学特性を指定したファントムを提案する。一実施形態では、正確なID及びODと既知の屈折率を有する円形ファントムが、カテーテルパッケージに組み込まれ、また、カテーテルがパッケージから取り出されない状態で、OCTシステムへの最初の接続後にカテーテルによって撮像される。他の実施形態では、ファントムは、別個に(例えば、システムに恒久的に取り付けられて)提供されてよい。従来の慣習のように、1つのフィデューシャル(シースOD)に対して1自由度(zオフセット)で較正を行う代わりに、本明細書に開示されるシステムは、2つのフィデューシャル(ファントムのID及びOD)を用いて2自由度(zオフセットとビーム角度)で較正を行うことができる。この新規の技術により、測定誤差のリスクを最小限に抑え、連続較正を自動化するために較正を容易にし、較正誤差の1つ以上の原因を減らし、ビーム角度誤差を特に減らすことができ、その結果、最も一般的に使用されるカテーテルの全ての直径で精度が向上する。
【0098】
<ソフトウェア関連の開示>
本明細書に開示される例示の実施形態の少なくとも特定の態様は、記憶媒体(「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」と呼ばれる場合もある)に記録されたコンピュータ実行可能命令(例えば1つ以上のプログラム又は実行可能コード)を読み出して実行して、前述した1つ以上のブロック図又はフローチャートの機能を実行するシステム又は装置のコンピュータによって実現することができる。例えば、
図6、
図7及び
図8によって表されるプロセス又は機能の少なくとも一部は、コンピュータ200によって実施することができる。
【0099】
コンピュータは、当業者に知られている各種コンポーネントを含んでよい。例えば、コンピュータは、例えば、コンピュータ実行可能命令を記憶媒体から読み出して実行して、前述した実施形態のうちの1つ以上の機能を実行することにより、かつ/又は、前述した実施形態のうちの1つ以上の機能を実行するための1つ以上の回路を制御することにより、前述した実施形態のうちの1つ以上の機能を実行するための1つ以上の回路(例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)や特定用途向け集積回路(ASIC))によって実装される信号プロセッサを含んでよい。コンピュータは、1つ以上のプロセッサ(例えば中央処理装置(CPU)、マイクロ処理ユニット(MPU))を含んでよく、コンピュータ実行可能命令を読み出して実行するための別個のコンピュータ又は別個のプロセッサのネットワークを含んでよい。コンピュータ実行可能命令は、例えばクラウドベースのネットワークから、又は記憶媒体から、コンピュータに提供することができる。記憶媒体は、例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、分散コンピューティングシステムのストレージ、光ディスク(コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)又はBlu-ray Disc(BD)(商標)等)、フラッシュメモリデバイス、メモリカード等のうち1つ以上を含んでよい。コンピュータは、入出力デバイスに対して通信信号(データ)を送受信するために入出力(I/O)インタフェースを含んでよく、入出力デバイスとしては、キーボード、ディスプレイ、マウス、タッチスクリーン、タッチレスインタフェース(例えばジェスチャー認識デバイス)、印刷デバイス、ライトペン、光学式ストレージデバイス、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、ドライブ、通信ケーブル及びネットワーク(有線又は無線)が挙げられる。
【0100】
前述の実施形態は、既知の標準的なzオフセット較正技術に優る多くの利点を提供する。従来の較正技術が、光路長の変動を考慮してzオフセットを調節するために、1つの直径を有する内蔵フィデューシャル表面、又は、2つの表面をもつ内蔵反射器に依拠しているのに対し、本願の発明者は、OCTカテーテルもビーム角度が変動することを認識しており、これは従来対処されていない。なお、本願のzオフセット較正方法は、特別なドープカテーテルシース設計に依拠せず、また、カテーテルの固定構造にも依拠しない。
【0101】
本開示の実施形態によれば、OCTシステムは、光路長の基礎較正を改善するために、システムの全視野に少なくとも等しい距離をカバーする2つの表面を有する較正用ファントムを使用する。特に、較正用ファントムはカテーテルの一部ではなく、カテーテル長さやカテーテル角度の変動に影響されない安定したフィデューシャルとして、2つの表面が使用される。本開示の実施形態によれば、光路長の変動とビーム角度の変動の両方を考慮するために、OCTシステムは、2つ以上のフィデューシャルの間に既知の距離(厚さ)が存在するファントムを用いる。この新しいタイプのOCT較正により、自由度が増し、より良好な較正精度が達成される。
【0102】
本開示の更なる実施形態によれば、ファントムでの較正後、システムは、カテーテル上の新しいフィデューシャル(較正に一般に使用されるシースODであってもよいが、今回はカテーテルの公称ODを使用するのではなく、システムは、較正状態で実際に測定されたODを使用できる)を特定することができ、そのフィデューシャルを、手技全体を通した継続的補正においてファントムの代理として使用することができる。本開示の更なる実施形態によれば、ファントムでの較正後、システムは、zオフセットシフトを実行して、内部カテーテル反射(そうでなければ視野の外にあり得る)を露出させ、そのような内部カテーテル反射を、ファントムの代理フィデューシャルとして使用することができる。zオフセットがシフトされた状態でイメージングが実行され、次いで、較正では内部フィデューシャルが使用され、最終画像表示は、そのような内部フィデューシャルが存在しない適切な較正状態に移行する。
【0103】
実施形態によれば、本開示は、既存のOCTシステムのための新規のzオフセット較正を提供する(すなわち、較正用ファントムは、市販のOCTシステムに大きな変更を加えることなく実装することができる)。OCTシステムのスケーリング較正を提供する。ファントムは、使いやすさと安全性のために、カテーテルパッケージに組み込まれてもよいし、保護フープに一体化されてもよい。一部の実施形態では、ファントムは、カテーテルパッケージとは別個のコンポーネントとして提供されてよい。そのような実施形態では、ファントムは、システムコンソール又は患者インタフェースユニット(PIU)に設置又は取付けされてよい。様々な実施形態の中でも、少なくとも1つの実施形態は、生体内イメージングでの自動連続較正用の非可変基準を提供する。較正用ファントムは、カテーテルシースのサイズ及び/又は形状の変動を排除することによって、較正誤差を回避する。少なくとも1つの実施形態は、NURDを制御することにより、シースの歪みによる較正誤差を回避し、又は少なくとも最小限に抑える。少なくとも1つの実施形態は、プルバックにわたる連続較正のための手段を提供する。少なくとも1つの実施形態は、カテーテル長さのばらつきを考慮して、特に血管直径が小さい場合に正確な測定値を提供する。少なくとも1つの実施形態は、カテーテルビーム角度のばらつきを考慮して、特に直径の大きいカテーテルの場合に正確な測定値を提供する。少なくとも1つの実施形態によれば、カテーテルが滅菌パッケージから取り出されていない状態であっても、接続時に自動的にzオフセット較正を実行することができる。少なくとも1つの実施形態によれば、zオフセット較正は、ユーザ入力の有無に関わらず、接続時にシステム側で行うことができる。少なくとも1つの実施形態によれば、システムは連続較正に不変の特徴を使用できるので、システムは、温度及び/又はフラッシング媒体の変化に関わらず、手技全体を通して較正精度を維持する。
【0104】
説明に言及する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されない。本明細書において別段の定義がされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。その点に関して、本開示の広さ及び範囲は、明細書又は図面によって限定されるのではなく、むしろ、採用される特許請求の範囲の用語の平易な意味によってのみ限定される。
【0105】
図面に示された例示の実施形態を説明する際、分かりやすくするために、具体的な専門用語が使用される。しかしながら、本特許明細書の開示はそのように選択された具体的な専門用語に限定されることを意図するものではなく、当然ながら、具体的な要素の各々は、同様に機能する技術的な均等物を全て含む。そのために、以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い解釈が与えられるべきである。
【0106】
本明細書において参照により援用されるとされる特許、付与前特許公報、又は他の開示の全部又は一部は、援用される資料が、標準的な定義や用語、或いは本開示に記載された記述及び説明と矛盾しない範囲でのみ、援用される。そのため、必要な範囲で、本明細書に明示的に記載された開示は、参照により援用される矛盾する資料に優先する。