(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】半導体装置の作製方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/363 20060101AFI20240826BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20240826BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240826BHJP
H01L 21/365 20060101ALI20240826BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240826BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H01L21/363
C23C14/08 N
H01L21/31 D
H01L21/365
H01L29/78 618A
H01L29/78 618B
H01L29/78 618E
H01L29/78 620
(21)【出願番号】P 2023052598
(22)【出願日】2023-03-29
(62)【分割の表示】P 2021127485の分割
【原出願日】2017-05-19
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2016101578
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016152985
(32)【優先日】2016-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中澤 安孝
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健一
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-026526(JP,A)
【文献】特開2015-019094(JP,A)
【文献】特開2012-253363(JP,A)
【文献】特開2014-143409(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067154(WO,A1)
【文献】特開2016-063225(JP,A)
【文献】特開2015-173286(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198604(WO,A1)
【文献】特開2012-134467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/363
C23C 14/08
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の作製方法であって、
成膜室で基板を加熱する第1の工程と、
前記成膜室で第1の酸化物半導体膜を成膜する第2の工程と、
前記成膜室で前記第1の酸化物半導体膜上に第2の酸化物半導体膜を成膜する第3の工程と、を有し、
前記成膜室の内部は、水蒸気分圧が大気よりも小さい雰囲気であり、
前記第3の工程は、前記第2の工程よりも酸素分圧が高い雰囲気下であり、
前記第1の酸化物半導体膜及び前記第2の酸化物半導体膜は、100°C以上200°C以下の温度で成膜され、且つそれぞれ結晶性を有するように成膜され、
前記第2の酸化物半導体膜は、前記第1の酸化物半導体膜よりも結晶性が高く成膜される、
半導体装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の酸化物半導体膜及び前記第2の酸化物半導体膜は、酸化インジウムを有する、
半導体装置の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜を有する半導体装置に関する。または、本発明の一
態様は、上記半導体装置を有する表示装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明
の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明の一態様
は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マ
ター)に関する。特に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置
、記憶装置、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法に関する。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる
装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶
装置は、半導体装置の一態様である。撮像装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、電
気光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む)、及び電子機器は、
半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
トランジスタに適用可能な半導体材料として、酸化物半導体が注目されている。例えば
、特許文献1では、複数の酸化物半導体層を積層し、当該複数の酸化物半導体層の中で、
チャネルとなる酸化物半導体層がインジウム及びガリウムを含み、且つインジウムの割合
をガリウムの割合よりも大きくすることで、電界効果移動度(単に移動度、またはμFE
という場合がある)を高めた半導体装置が開示されている。
【0005】
また、非特許文献1では、In2O3-Ga2ZnO4-ZnO Systemの中で
固溶域(solid solution range)について述べられている。
【0006】
また、非特許文献2では、トランジスタの活性層として、インジウム亜鉛酸化物と、I
GZOとの2層積層の酸化物半導体を有する構造が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】M. Nakamura, N. Kimizuka, and T. Mohri、「The Phase Relations in the In2O3-Ga2ZnO4-ZnO System at 1350℃」、J. Solid State Chem.、1991、Vol.93, pp.298-315
【文献】John F. Wager、「Oxide TFTs:A Progress Report」、Information Display 1/16、SID 2016、 Jan/Feb 2016、Vol.32,No.1, p.16-21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献2では、チャネル保護型のボトムゲート型のトランジスタにおいて、トラン
ジスタの活性層として、インジウム亜鉛酸化物と、IGZOとの2層積層とし、チャネル
が形成されるインジウム亜鉛酸化物の膜厚を10nmとすることで、高い電界効果移動度
(μ=62cm2V-1s-1)を実現している。一方で、トランジスタ特性の一つであ
るS値(Subthreshold Swing、SSともいう)が0.41V/dec
adeと大きい。また、トランジスタ特性の一つである、しきい値電圧(Vthともいう
)が-2.9Vであり、所謂ノーマリーオンのトランジスタ特性である。
【0010】
酸化物半導体膜をチャネル領域に用いるトランジスタとしては、電界効果移動度が高い
方が好ましい。しかしながら、トランジスタの電界効果移動度を高めると、トランジスタ
の特性がノーマリーオンの特性になりやすいといった問題がある。なお、ノーマリーオン
とは、ゲート電極に電圧を印加しなくてもチャネルが存在し、トランジスタに電流が流れ
てしまう状態のことである。
【0011】
また、酸化物半導体膜をチャネル領域に用いるトランジスタにおいて、酸化物半導体膜
中に形成される酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。例えば、
酸化物半導体膜中に酸素欠損が形成されると、該酸素欠損に水素が結合し、キャリア供給
源となる。酸化物半導体膜中にキャリア供給源が生成されると、酸化物半導体膜を有する
トランジスタの電気特性の変動、代表的にはしきい値電圧のシフトが生じる。
【0012】
例えば、酸化物半導体膜中に酸素欠損が多すぎると、トランジスタのしきい値電圧がマ
イナス側にシフトしてしまい、ノーマリーオンの特性になる。よって、酸化物半導体膜中
、特にチャネル領域においては、酸素欠損が少ない、あるいはノーマリーオンの特性にな
らない程度の酸素欠損量であることが好ましい。
【0013】
上記問題に鑑み、本発明の一態様は、酸化物半導体膜を有するトランジスタにおいて、
電界効果移動度を向上させると共に信頼性を向上させることを課題の1つとする。または
、本発明の一態様は、酸化物半導体膜を有するトランジスタにおいて、電気特性の変動を
抑制すると共に、信頼性を向上させることを課題の1つとする。または、本発明の一態様
は、消費電力が低減された半導体装置を提供することを課題の1つとする。または、本発
明の一態様は、新規な半導体装置を提供することを課題の1つとする。または、本発明の
一態様は、新規な半導体装置の作製方法を提供することを課題の1つとする。または、本
発明の一態様は、比較的低温で且つ高い信頼性を有する半導体装置の作製方法を提供する
ことを課題の1つとする。
【0014】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細
書等の記載から自ずと明らかになるものであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽
出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、半導体装置の作製方法であって、作製方法は、成膜室で第1の酸化
物半導体膜を成膜する第1の工程と、成膜室で、第1の酸化物半導体膜上に第2の酸化物
半導体膜を成膜する第2の工程と、を有し、成膜室の内部は、水蒸気分圧が大気よりも小
さい雰囲気であり、第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜は、それぞれ結晶性
を有するように成膜され、第2の酸化物半導体膜は、第1の酸化物半導体膜よりも結晶性
が高く成膜される半導体装置の作製方法である。
【0016】
また、本発明の他の一態様は、半導体装置の作製方法であって、作製方法は、成膜室で
第1の酸化物半導体膜を成膜する第1の工程と、成膜室で、第1の酸化物半導体膜上に第
2の酸化物半導体膜を成膜する第2の工程と、を有し、成膜室の内部は、水蒸気分圧が大
気よりも小さい雰囲気であり、第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜は、それ
ぞれ、意図的に加熱しない温度で成膜され、且つ結晶性を有するように成膜され、第2の
酸化物半導体膜は、第1の酸化物半導体膜よりも結晶性が高く成膜される半導体装置の作
製方法である。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、半導体装置の作製方法であって、作製方法は、成膜室で
第1の酸化物半導体膜を成膜する第1の工程と、成膜室で、第1の酸化物半導体膜上に第
2の酸化物半導体膜を成膜する第2の工程と、を有し、成膜室の内部は、水蒸気分圧が大
気よりも小さい雰囲気であり、第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜は、それ
ぞれ、100℃以上200℃以下の温度で成膜され、且つ結晶性を有するように成膜され
、第2の酸化物半導体膜は、第1の酸化物半導体膜よりも結晶性が高く成膜される半導体
装置の作製方法である。
【0018】
上記態様において、第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜は、それぞれ、ス
パッタリング法により成膜されると好ましい。
【0019】
また、上記態様において、第2の酸化物半導体膜は、第1の酸化物半導体膜よりも酸素
分圧が高い雰囲気下で成膜されると好ましい。また、上記態様において、第1の酸化物半
導体膜は、0%以上30%以下の酸素流量比で成膜され、第2の酸化物半導体膜は、30
%より大きく100%以下の酸素流量比で成膜されると好ましい。
【0020】
また、上記態様において、第1の酸化物半導体膜は、ナノ結晶を有するように成膜され
、第2の酸化物半導体膜は、c軸配向性の結晶を有するように成膜されると好ましい。
【0021】
また、上記態様において、第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜は、それぞ
れ、In-M-Zn酸化物(MはGa、Al、Y、またはSn)ターゲットを用いて成膜
されると好ましい。
【0022】
また、上記態様において、In、M、及びZnの原子数比は、In:M:Zn=4:2
:4.1またはその近傍であると好ましい。
【0023】
また、上記態様において、In、M、及びZnの原子数比は、In:M:Zn=5:1
:7またはその近傍であると好ましい。
【0024】
また、上記態様において、In、M、及びZnの原子数比は、In:M:Zn=1:1
:1.2またはその近傍であると好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様により、酸化物半導体膜を有するトランジスタにおいて、電界効果移動
度を向上させると共に信頼性を向上させることができる。または、本発明の一態様により
、酸化物半導体膜を有するトランジスタにおいて、電気特性の変動を抑制すると共に、信
頼性を向上させることができる。または、本発明の一態様により、消費電力が低減された
半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な半導体装置
を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な半導体装置の作製方法
を提供することができる。または、本発明の一態様により、比較的低温で且つ高い信頼性
を有する半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0026】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】半導体装置の作製方法を説明するフローチャート。
【
図2】半導体装置の作製方法を説明するフローチャート。
【
図15】酸化物半導体膜中に拡散する酸素または過剰酸素の拡散経路を表す概念図。
【
図16】XRDスペクトルの測定結果を説明する図。
【
図17】試料のTEM像、および電子線回折パターンを説明する図。
【
図19】複合酸化物半導体の断面HAADF-STEM像を説明する図。
【
図21】複合酸化物半導体の原子数比を説明する図。
【
図23】複合酸化物半導体の作製方法を説明する工程フロー図。
【
図30】表示装置を説明するブロック図及び回路図。
【
図34】六角形の回転角を導出する方法を説明する図。
【
図35】試料の平面TEM像を画像解析した像を説明する図。
【
図37】ボロノイ領域の形状の個数、および割合を説明する図。
【
図38】実施例における、トランジスタのId-Vg特性を説明する図。
【
図39】実施例における、トランジスタの信頼性試験の結果を説明する図。
【
図40】実施例における、トランジスタの断面TEM像を説明する図。
【
図41】実施例における、試料の水素濃度を説明する図。
【
図42】実施例における、試料の炭素濃度及び窒素濃度を説明する図。
【
図43】実施例における、試料の酸素濃度を説明する図。
【
図44】実施例における、試料のスピン密度を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの
異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形
態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明
は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている
場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を
模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
【0030】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の
混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0031】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位
置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関
係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明し
た語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0032】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含
む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイ
ン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間
にチャネル領域を有しており、チャネル領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を
流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主
として流れる領域をいう。
【0033】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路
動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明
細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとす
る。
【0034】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するも
の」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するも
の」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない
。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジス
タなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有
する素子などが含まれる。
【0035】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角
度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。ま
た、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態を
いう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0036】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ
替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変
更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」
という用語に変更することが可能な場合がある。
【0037】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ
状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態と
は、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧V
gsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ゲートとソ
ースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。例えば、nチャネル
型のトランジスタのオフ電流とは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vt
hよりも低いときのドレイン電流を言う場合がある。
【0038】
トランジスタのオフ電流は、Vgsに依存する場合がある。従って、トランジスタのオ
フ電流がI以下である、とは、トランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在
することを言う場合がある。トランジスタのオフ電流は、所定のVgsにおけるオフ状態
、所定の範囲内のVgsにおけるオフ状態、または、十分に低減されたオフ電流が得られ
るVgsにおけるオフ状態、等におけるオフ電流を指す場合がある。
【0039】
一例として、しきい値電圧Vthが0.5Vであり、Vgsが0.5Vにおけるドレイ
ン電流が1×10-9Aであり、Vgsが0.1Vにおけるドレイン電流が1×10-1
3Aであり、Vgsが-0.5Vにおけるドレイン電流が1×10-19Aであり、Vg
sが-0.8Vにおけるドレイン電流が1×10-22Aであるようなnチャネル型トラ
ンジスタを想定する。当該トランジスタのドレイン電流は、Vgsが-0.5Vにおいて
、または、Vgsが-0.5V乃至-0.8Vの範囲において、1×10-19A以下で
あるから、当該トランジスタのオフ電流は1×10-19A以下である、と言う場合があ
る。当該トランジスタのドレイン電流が1×10-22A以下となるVgsが存在するた
め、当該トランジスタのオフ電流は1×10-22A以下である、と言う場合がある。
【0040】
また、本明細書等では、チャネル幅Wを有するトランジスタのオフ電流を、チャネル幅
Wあたりを流れる電流値で表す場合がある。また、所定のチャネル幅(例えば1μm)あ
たりを流れる電流値で表す場合がある。後者の場合、オフ電流の単位は、電流/長さの次
元を持つ単位(例えば、A/μm)で表される場合がある。
【0041】
トランジスタのオフ電流は、温度に依存する場合がある。本明細書において、オフ電流
は、特に記載がない場合、室温、60℃、85℃、95℃、または125℃におけるオフ
電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保
証される温度、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例
えば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)におけるオフ電流、を表す場合がある。トラ
ンジスタのオフ電流がI以下である、とは、室温、60℃、85℃、95℃、125℃、
当該トランジスタが含まれる半導体装置の信頼性が保証される温度、または、当該トラン
ジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか一
の温度)、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを
指す場合がある。
【0042】
トランジスタのオフ電流は、ドレインとソースの間の電圧Vdsに依存する場合がある
。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、Vdsが0.1V、0.8V、
1V、1.2V、1.8V、2.5V,3V、3.3V、10V、12V、16V、また
は20Vにおけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導
体装置等の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置
等において使用されるVdsにおけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ
電流がI以下である、とは、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、
2.5V,3V、3.3V、10V、12V、16V、20V、当該トランジスタが含ま
れる半導体装置の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導
体装置等において使用されるVds、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるV
gsの値が存在することを指す場合がある。
【0043】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電
流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソースを流れる電流を言う場合もある。
【0044】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。ま
た、本明細書等において、オフ電流とは、例えば、トランジスタがオフ状態にあるときに
、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0045】
また、本明細書等において、トランジスタのしきい値電圧とは、トランジスタにチャネ
ルが形成されたときのゲート電圧(Vg)を指す。具体的には、トランジスタのしきい値
電圧とは、ゲート電圧(Vg)を横軸に、ドレイン電流(Id)の平方根を縦軸にプロッ
トした曲線(Vg-√Id特性)において、最大傾きである接線を外挿したときの直線と
、ドレイン電流(Id)の平方根が0(Idが0A)との交点におけるゲート電圧(Vg
)を指す場合がある。あるいは、トランジスタのしきい値電圧とは、チャネル長をL、チ
ャネル幅をWとし、Id[A]×L[μm]/W[μm]の値が1×10-9[A]とな
るゲート電圧(Vg)を指す場合がある。
【0046】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が
十分に低い場合は、「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「
絶縁体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書
等に記載の「半導体」は、「絶縁体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本
明細書等に記載の「絶縁体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。また
は、本明細書等に記載の「絶縁体」を「半絶縁体」に言い換えることが可能な場合がある
。
【0047】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が
十分に高い場合は、「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「
導電体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書
等に記載の「半導体」は、「導電体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本
明細書等に記載の「導電体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。
【0048】
また、本明細書等において、半導体の不純物とは、半導体膜を構成する主成分以外をい
う。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることによ
り、半導体にDOS(Density of States)が形成されることや、キャ
リア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が
酸化物半導体を有する場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族
元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属
などがあり、特に、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素
、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、例えば水素などの不純物の混入に
よって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコンを有する場合、半導体の
特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、
第13族元素、第15族元素などがある。
【0049】
また、本明細書等について、In:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍とは、原子
数の総和に対して、Inが4の場合、Gaが1以上3以下(1≦Ga≦3)であり、Zn
が2以上4以下(2≦Zn≦4)とする。また、In:Ga:Zn=5:1:6またはそ
の近傍とは、原子数の総和に対して、Inが5の場合、Gaが0.1より大きく2以下(
0.1<Ga≦2)であり、Znが5以上7以下(5≦Zn≦7)とする。また、In:
Ga:Zn=1:1:1またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが1の場合、
Gaが0.1より大きく2以下(0.1<Ga≦2)であり、Znが0.1より大きく2
以下(0.1<Zn≦2)とする。
【0050】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置及び半導体装置の作製方法について、
図1乃至
図11を参照して説明する。
【0051】
本発明の一態様は、成膜室で、第1の酸化物半導体膜を成膜する第1の工程と、成膜室
で第1の酸化物半導体膜上に第2の酸化物半導体膜を成膜する第2の工程と、を有し、成
膜室の内部は、水蒸気分圧が大気よりも小さい雰囲気であり、第1の酸化物半導体膜及び
第2の酸化物半導体膜は、それぞれ結晶性を有するように成膜され、第2の酸化物半導体
膜は、第1の酸化物半導体膜よりも結晶性が高く成膜される半導体装置の作製方法である
。
【0052】
複数の酸化物半導体膜(ここでは、第1の酸化物半導体膜、及び第2の酸化物半導体膜
)を積層して形成する場合、第1の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜との界面に
おける不純物(具体的には、水素、水分など)が問題となる。
【0053】
第1の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜との界面に不純物が付着または混入す
ることにより、半導体装置の信頼性が悪くなる場合がある。したがって、第1の酸化物半
導体膜と、第2の酸化物半導体膜との界面には水素または水分などの不純物が少ないほど
好ましい。
【0054】
そこで、本発明の一態様においては、第1の酸化物半導体膜を成膜する第1の工程と、
第2の酸化物半導体膜を成膜する第2の工程と、を同じ成膜室で行い、且つ当該成膜室の
内部を水蒸気分圧が大気よりも小さい雰囲気とする。
【0055】
なお、水蒸気分圧が大気よりも小さい雰囲気とは、少なくとも大気よりも減圧の雰囲気
である。具体的には、圧力が低真空または中真空(数100Paから0.1Pa)、また
は、高真空または超高真空(0.1Paから1×10-7Pa)とすればよい。
【0056】
上記態様とすることで、第1の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜との界面に不
純物が付着または混入することを抑制することができる。
【0057】
また、第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜は、それぞれ結晶性を有するよ
うに成膜される。また、第2の酸化物半導体膜は、第1の酸化物半導体膜よりも結晶性が
高く成膜される。
【0058】
第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜の結晶性については、実施の形態3ま
たは実施の形態4で詳細に説明を行う。
【0059】
また、第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜の成膜後に、第1の酸化物半導
体膜及び第2の酸化物半導体膜中に含まれうる水素、水分などを除去する工程を行っても
よい。なお、本明細書等において、酸化物半導体膜中に含まれる水素を取り除く処理を、
脱水素化処理と呼称する場合がある。同様に、酸化物半導体膜中に含まれる水分を取り除
く処理を、脱水化処理と呼称する場合がある。
【0060】
また、本発明の一態様の半導体装置の作製方法とすることで、複数の酸化物半導体膜の
それぞれを、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜とすることができる
。
【0061】
なお、酸化物半導体膜としては、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体
膜を用いることで、優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができ好ましい
。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度
真性または実質的に高純度真性とよぶ。なお、酸化物半導体膜中の不純物としては、代表
的には水、水素などが挙げられる。
【0062】
高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少な
いため、キャリア密度を低くすることができる。従って、該酸化物半導体膜にチャネル領
域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオ
ンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である
酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく
小さく、チャネル幅が1×106μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソー
ス電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ
電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下と
いう特性を得ることができる。
【0063】
<1-1.半導体装置の作製方法>
次に、本発明の一態様の半導体装置の作製方法について、
図1及び
図2を用いて説明を
行う。なお、
図1及び
図2は、本発明の一態様の半導体装置の作製方法を説明するフロー
チャートである。
【0064】
[第1の工程:第1の酸化物半導体膜の成膜]
第1の工程は、成膜室で基板上に第1の酸化物半導体膜を成膜する工程である(
図1、
ステップS101参照)。
【0065】
なお、本実施の形態においては、基板上に第1の酸化物半導体膜を成膜する工程を例示
するがこれに限定されない。例えば、基板上に絶縁膜、半導体膜、または導電膜等の様々
な膜が形成された上に第1の酸化物半導体膜を形成してもよい。
【0066】
第1の酸化物半導体膜は、Inと、M(MはGa、Al、Y、またはSn)と、Znと
、を有すると好ましい。また、第1の酸化物半導体膜は、Inの原子数比がMの原子数比
より多い領域を有すると好ましい。一例としては、第1の酸化物半導体膜のIn、M、及
びZnの原子数の比を、In:M:Zn=4:2:3またはその近傍、あるいはIn:M
:Zn=5:1:7またはその近傍とすると好ましい。
【0067】
また、第1の酸化物半導体膜の成膜時に用いるガスとしては、不活性ガス(代表的には
アルゴン)、及び酸素ガスの少なくとも一つを用いればよい。
【0068】
例えば、第1の酸化物半導体膜を成膜する際に、アルゴンガスまたは酸素ガスのいずれ
か一方を用いる。また、第1の酸化物半導体膜の成膜する際の酸素ガス流量のガス流量全
体に占める割合(酸素流量比ともいう)としては、0%以上30%以下、好ましくは5%
以上15%以下である。上述の酸素流量比とすることで、第1の酸化物半導体膜の結晶性
を低くすることができる。また、上述の酸素流量比とすることで、第1の酸化物半導体膜
の材料構成を、後述するCAC-OSとすることができる。
【0069】
また、第1の酸化物半導体膜の形成時の基板温度としては、室温(25℃)以上200
℃以下、好ましくは室温以上130℃以下とすればよい。基板温度を上記範囲とすること
で、大面積のガラス基板を用いる場合に、基板の撓みまたは歪みを抑制することができる
。
【0070】
[第2の工程:第2の酸化物半導体膜の成膜]
第2の工程は、第1の酸化物半導体膜上に第2の酸化物半導体膜を成膜する工程である
(
図1、ステップS201参照)。
【0071】
第2の酸化物半導体膜は、Inと、M(MはGa、Al、Y、またはSn)と、Znと
、を有すると好ましい。また、第2の酸化物半導体膜は、Inの原子数比がMの原子数比
より多い領域を有すると好ましい。一例としては、第2の酸化物半導体膜のIn、M、及
びZnの原子数の比を、In:M:Zn=4:2:3またはその近傍、あるいはIn:M
:Zn=5:1:7またはその近傍とすると好ましい。
【0072】
また、第2の酸化物半導体膜の成膜時に用いるガスとしては、不活性ガス(代表的には
アルゴン)、及び酸素ガスの少なくとも一つを用いればよい。
【0073】
例えば、第2の酸化物半導体膜を成膜する際に、アルゴンガスまたは酸素ガスのいずれ
か一方を用いる。また、第2の酸化物半導体膜の成膜する際の酸素流量比としては、30
%より大きく100%以下、好ましくは50%以上100%以下、さらに好ましくは70
%以上100%以下である。上述の酸素流量比とすることで、第2の酸化物半導体膜の結
晶性を高くすることができる。
【0074】
また、第2の酸化物半導体膜の形成時の基板温度としては、室温(25℃)以上200
℃以下、好ましくは室温以上130℃以下とすればよい。基板温度を上記範囲とすること
で、大面積のガラス基板を用いる場合に、基板の撓みまたは歪みを抑制することができる
。
【0075】
また、上述した第1の工程及び第2の工程は、同じ成膜室で行われ、当該成膜室は、水
蒸気分圧が大気よりも小さい雰囲気である。よって、第1の酸化物半導体膜と、第2の酸
化物半導体膜との界面に水、水素等の不純物が混入することを抑制することができる。ま
た、同じ成膜室にて第1の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜とが成膜されるため
、製造コストを抑制することができる。
【0076】
また、第1の酸化物半導体膜の成膜(ステップS101)の前に、第3の工程として、
基板の加熱処理を行ってもよい(
図2、ステップS301)。
【0077】
第3の工程は、基板を加熱する工程である。第3の工程を行うことで、基板上に付着し
た表面吸着水などを好適に除去することができる。例えば、基板上に表面吸着水などが付
着した状態で第1の酸化物半導体膜を成膜すると、第1の酸化物半導体膜中に水分等が取
り込まれ、トランジスタ特性などに影響を与える。
【0078】
第3の工程を行う場合においては、
図2に示すように、第3の工程、第1の工程、及び
第2の工程の順で一貫して行われる。また、第1乃至第3の工程は、水蒸気分圧が大気よ
りも小さい雰囲気下で行われると好適である。
【0079】
<1-2.成膜装置の構成例>
ここで、本発明の一態様の半導体装置の作製方法に用いることができる成膜装置の構成
例について、
図3及び
図4を用いて説明する。
【0080】
図3及び
図4に示す成膜装置を用いることで、酸化物半導体膜中に入り込みうる不純物
(特に水素、水)を抑制することができる。
【0081】
図3は、枚葉式マルチチャンバーの成膜装置4000の上面図を模式的に示している。
成膜装置4000は、基板を収容するカセットポート4101と、基板のアライメントを
行うアライメントポート4102と、を備える大気側基板供給室4001と、大気側基板
供給室4001から、基板を搬送する大気側基板搬送室4002と、基板の搬入を行い、
且つ室内の圧力を大気圧から減圧、または減圧から大気圧へ切り替えるロードロック室4
003aと、基板の搬出を行い、且つ室内の圧力を減圧から大気圧、または大気圧から減
圧へ切り替えるアンロードロック室4003bと、真空中の基板の搬送を行う搬送室40
04と、基板の加熱を行う基板加熱室4005と、ターゲットが配置され成膜を行う成膜
室4006a、4006b、4006cと、を有する。
【0082】
なお、カセットポート4101は、
図3に示すように複数(
図3においては、3つ)有
していても良い。
【0083】
また、大気側基板搬送室4002は、ロードロック室4003a及びアンロードロック
室4003bと接続され、ロードロック室4003a及びアンロードロック室4003b
は、搬送室4004と接続され、搬送室4004は、基板加熱室4005、成膜室400
6a、4006b、4006cと接続する。
【0084】
なお、各室の接続部にはゲートバルブ4104が設けられており、大気側基板供給室4
001と、大気側基板搬送室4002を除き、各室を独立して真空状態に保持することが
できる。また、大気側基板搬送室4002及び搬送室4004は、搬送ロボット4103
を有し、ガラス基板を搬送することができる。
【0085】
また、基板加熱室4005は、プラズマ処理室を兼ねると好ましい。成膜装置4000
は、処理と処理の間で基板を大気暴露することなく搬送することが可能なため、基板に不
純物が吸着することを抑制できる。また、成膜や加熱処理などの順番を自由に構築するこ
とができる。なお、搬送室、成膜室、ロードロック室、アンロードロック室および基板加
熱室は、上述の数に限定されず、設置スペースやプロセス条件に合わせて、適宜最適な数
を設けることができる。
【0086】
次に、
図3に示す成膜装置4000の一点鎖線A1-A2、B1-B2、及びB2-B
3の切断面に相当する断面を
図4に示す。
【0087】
図4(A)は、基板加熱室4005と、搬送室4004の断面図である。
図4(A)に
示す基板加熱室4005は、基板を格納することができる複数の加熱ステージ4105を
有する。
【0088】
なお、
図4(A)において、加熱ステージ4105は、7段の構成について示すが、こ
れに限定されず、1段以上7段未満の構成や8段以上の構成としてもよい。加熱ステージ
4105の段数を増やすことで複数の基板を同時に加熱処理できるため、生産性が向上す
るため好ましい。また、基板加熱室4005は、バルブを介して真空ポンプ4200と接
続されている。真空ポンプ4200としては、例えば、ドライポンプ、およびメカニカル
ブースターポンプ等を用いることができる。
【0089】
また、基板加熱室4005に用いることのできる加熱機構としては、例えば、抵抗発熱
体などを用いて加熱する加熱機構としてもよい。または、加熱されたガスなどの媒体から
の熱伝導または熱輻射によって、加熱する加熱機構としてもよい。例えば、GRTA(G
as Rapid Thermal Anneal)、LRTA(Lamp Rapid
Thermal Anneal)などのRTA(Rapid Thermal Ann
eal)を用いることができる。LRTAは、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、
キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプ
などのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する。GRTAは、
高温のガスを用いて熱処理を行う。ガスとしては、不活性ガスが用いられる。
【0090】
また、基板加熱室4005は、マスフローコントローラ4300を介して、精製機43
01と接続される。なお、マスフローコントローラ4300及び精製機4301は、ガス
種の数だけ設けられるが、簡単のため一つのみを示す。基板加熱室4005に導入される
ガスは、露点が-80℃以下、好ましくは-100℃以下であるガスを用いることができ
、例えば、酸素ガス、窒素ガス、及び希ガス(アルゴンガスなど)を用いる。
【0091】
搬送室4004は、搬送ロボット4103を有している。搬送ロボット4103は、複
数の可動部と、基板を保持するアームと、を有し、各室へ基板を搬送することができる。
また、搬送室4004は、バルブを介して真空ポンプ4200と、クライオポンプ420
1と、接続されている。このような構成とすることで、搬送室4004は、大気圧から低
真空または中真空(数100Paから0.1Pa程度)まで真空ポンプ4200を用いて
排気され、バルブを切り替えて中真空から高真空または超高真空(0.1Paから1×1
0-7Pa程度)まではクライオポンプ4201を用いて排気される。
【0092】
また、例えば、クライオポンプ4201は、搬送室4004に対して2台以上並列に接
続しても良い。このような構成とすることで、1台のクライオポンプがリジェネ中であっ
ても、残りのクライオポンプを使って排気することが可能となる。なお、上述したリジェ
ネとは、クライオポンプ内にため込まれた分子(または原子)を放出する処理をいう。ク
ライオポンプは、分子(または原子)をため込みすぎると排気能力が低下してくるため、
定期的にリジェネが行われる。
【0093】
図4(B)は、成膜室4006bと、搬送室4004と、ロードロック室4003aの
断面図である。
図4(B)を用いて、成膜室(スパッタリング室)の詳細について説明す
る。
【0094】
図4(B)に示す成膜室4006bは、ターゲット4106と、防着板4107と、基
板ステージ4108と、を有する。なお、ここでは基板ステージ4108には、基板41
09が設置されている。基板ステージ4108は、図示しないが、基板4109を保持す
る基板保持機構や、基板4109を裏面から加熱する裏面ヒーター等を備えていても良い
。
【0095】
なお、基板ステージ4108は、成膜時に床面に対して概略垂直状態に保持され、基板
受け渡し時には床面に対して概略水平状態に保持される。なお、
図4(B)中において、
破線で示す箇所が基板受け渡し時の基板ステージ4108の保持される位置となる。この
ような構成とすることで成膜時に混入しうるゴミまたはパーティクルが基板4109に付
着する確率を、水平状態に保持するよりも抑制することができる。ただし、基板ステージ
4108を床面に対して垂直(90°)状態に保持すると、基板4109が落下する可能
性があるため、基板ステージ4108の床面に対する角度は、80°以上90°未満とす
ることが好ましい。
【0096】
また、防着板4107は、ターゲット4106からスパッタリングされる粒子が不要な
領域に堆積することを抑制できる。また、防着板4107は、累積されたスパッタリング
粒子が剥離しないように、加工することが望ましい。例えば、表面粗さを増加させるブラ
スト処理、または防着板4107の表面に凹凸を設けても良い。
【0097】
また、成膜室4006bは、ガス加熱機構4302を介してマスフローコントローラ4
300と接続され、ガス加熱機構4302はマスフローコントローラ4300を介して精
製機4301と接続される。ガス加熱機構4302により、成膜室4006bに導入され
るガスを40℃以上400℃以下、好ましくは50℃以上200℃以下に加熱することが
できる。なお、ガス加熱機構4302、マスフローコントローラ4300、および精製機
4301は、ガス種の数だけ設けられるが、簡単のため一つのみを示す。成膜室4006
bに導入されるガスは、露点が-80℃以下、好ましくは-100℃以下であるガスを用
いることができ、例えば、酸素ガス、窒素ガス、及び希ガス(アルゴンガスなど)を用い
る。
【0098】
また、成膜室4006bは、バルブを介してターボ分子ポンプ4202および真空ポン
プ4200と接続される。
【0099】
また、成膜室4006bは、クライオトラップ4110が設けられる。
【0100】
クライオトラップ4110は、水などの比較的融点の高い分子(または原子)を吸着す
ることができる機構である。ターボ分子ポンプ4202は大きいサイズの分子(または原
子)を安定して排気し、かつメンテナンスの頻度が低いため、生産性に優れる一方、水素
や水の排気能力が低い。そこで、水などに対する排気能力を高めるため、クライオトラッ
プ4110が成膜室4006bに接続された構成としている。クライオトラップ4110
の冷凍機の温度は100K以下、好ましくは80K以下とする。また、クライオトラップ
4110が複数の冷凍機を有する場合、冷凍機ごとに温度を変えると、効率的に排気する
ことが可能となるため好ましい。例えば、1段目の冷凍機の温度を100K以下とし、2
段目の冷凍機の温度を20K以下とすればよい。
【0101】
なお、成膜室4006bの排気方法は、これに限定されず、先の搬送室4004に示す
排気方法(クライオポンプと真空ポンプとの排気方法)と同様の構成としてもよい。もち
ろん、搬送室4004の排気方法を成膜室4006bと同様の構成(ターボ分子ポンプと
真空ポンプとの排気方法)としてもよい。
【0102】
なお、上述した搬送室4004、基板加熱室4005、及び成膜室4006bの背圧(
全圧)、ならびに各気体分子(原子)の分圧は、以下の通りとすると好ましい。とくに、
成膜室4006bの背圧、ならびに各気体分子(原子)の分圧は、形成される膜中に不純
物が混入され得る可能性があるので、注意する必要がある。
【0103】
上述した各室の背圧(全圧)は、1×10-4Pa以下、好ましくは3×10-5Pa
以下、さらに好ましくは1×10-5Pa以下である。上述した各室の質量電荷比(m/
z)が18である気体分子(原子)の分圧は、3×10-5Pa以下、好ましくは1×1
0-5Pa以下、さらに好ましくは3×10-6Pa以下である。また、上述した各室の
m/zが28である気体分子(原子)の分圧は、3×10-5Pa以下、好ましくは1×
10-5Pa以下、さらに好ましくは3×10-6Pa以下である。また、上述した各室
のm/zが44である気体分子(原子)の分圧は、3×10-5Pa以下、好ましくは1
×10-5Pa以下、さらに好ましくは3×10-6Pa以下である。
【0104】
なお、真空チャンバー内の全圧および分圧は、質量分析計を用いて測定することができ
る。例えば、株式会社アルバック製四重極形質量分析計(Q-massともいう。)Qu
lee CGM-051を用いればよい。
【0105】
次に、
図4(B)に示す搬送室4004、及びロードロック室4003aと、
図4(C
)に示す大気側基板搬送室4002、及び大気側基板供給室4001の詳細について説明
を行う。なお、
図4(C)は、大気側基板搬送室4002、及び大気側基板供給室400
1の断面図である。
【0106】
図4(B)に示す搬送室4004については、
図4(A)に示す搬送室4004の記載
を参酌することができる。
【0107】
ロードロック室4003aは、基板受け渡しステージ4111を有する。ロードロック
室4003aは、減圧状態から大気まで圧力を上昇させ、ロードロック室4003aの圧
力が大気圧になった時に、大気側基板搬送室4002に設けられている搬送ロボット41
03から基板受け渡しステージ4111が基板を受け取る。その後、ロードロック室40
03aを真空引きし、減圧状態としたのち、搬送室4004に設けられている搬送ロボッ
ト4103が基板受け渡しステージ4111から基板を受け取る。
【0108】
また、ロードロック室4003aは、バルブを介して真空ポンプ4200、及びクライ
オポンプ4201と接続されている。真空ポンプ4200、及びクライオポンプ4201
の排気系の接続方法は、搬送室4004の接続方法を参酌することで接続できるため、こ
こでの説明は省略する。なお、
図3に示すアンロードロック室4003bは、ロードロッ
ク室4003aと同様の構成とすることができる。
【0109】
大気側基板搬送室4002は、搬送ロボット4103を有する。搬送ロボット4103
により、カセットポート4101とロードロック室4003aとの基板の受け渡しを行う
ことができる。また、大気側基板搬送室4002、及び大気側基板供給室4001の上方
にHEPAフィルター(High Efficiency Particulate A
ir Filter)等のゴミまたはパーティクルの混入を抑制するための機構を設けて
もよい。
【0110】
大気側基板供給室4001は、複数のカセットポート4101を有する。カセットポー
ト4101は、複数の基板を格納することができる。
【0111】
上記の成膜装置を用いて、酸化物半導体膜を成膜することで、酸化物半導体膜への不純
物の入り込みを抑制できる。さらには、上記の成膜装置を用いて、酸化物半導体膜に接す
る膜を成膜することで、酸化物半導体膜に接する膜から酸化物半導体膜へ不純物の入り込
みを抑制できる。
【0112】
例えば、
図3及び
図4に示す成膜装置を用いて、本発明の一態様の半導体装置を作製す
る場合、以下の順で行うことができる。
【0113】
成膜室4006bにて第1の酸化物半導体膜を成膜する。続いて、成膜室4006bに
て第2の酸化物半導体膜を成膜する。なお、先の説明の通り、第1の酸化物半導体膜と、
第2の酸化物半導体膜とは、成膜時の酸素ガスの流量を変えることで、酸化物半導体膜の
結晶性または酸化物半導体膜の材料構成を変えることができる。
【0114】
または、基板加熱室4005にて基板を加熱する。続いて、成膜室4006bにて第1
の酸化物半導体膜を成膜する。続いて、成膜室4006bにて第2の酸化物半導体膜を成
膜する。このように、第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜は、同一の成膜室
4006b、及び同一のスパッタリングターゲットを用いて、同一基板上に形成される。
別言すると、第1の酸化物半導体膜と、第2の酸化物半導体膜とは、同じ材料を用いて形
成され、材料構成が異なる酸化物半導体膜となる。
【0115】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0116】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置及び半導体装置の作製方法について、
図5乃至15を用いて説明を行う。
【0117】
<2-1.半導体装置の構成例1>
図5(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の上面図であり
、
図5(B)は、
図5(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相当
し、
図5(C)は、
図5(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に相
当する。なお、
図5(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ100
の構成要素の一部(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。ま
た、一点鎖線X1-X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1-Y2方向をチャネル幅方
向と呼称する場合がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面において
も
図5(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
【0118】
トランジスタ100は、基板102上の導電膜104と、基板102及び導電膜104
上の絶縁膜106と、絶縁膜106上の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108
上の導電膜112aと、酸化物半導体膜108上の導電膜112bと、を有する。また、
トランジスタ100上、具体的には、酸化物半導体膜108、導電膜112a、及び導電
膜112b上には、絶縁膜114と、絶縁膜114上の絶縁膜116と、絶縁膜116上
の絶縁膜118とが形成されている。
【0119】
なお、トランジスタ100は、所謂チャネルエッチ型のトランジスタである。
【0120】
また、酸化物半導体膜108は、絶縁膜106上の酸化物半導体膜108_1と、酸化
物半導体膜108_1上の酸化物半導体膜108_2と、を有する。なお、酸化物半導体
膜108_1は、実施の形態1で説明した第1の酸化物半導体膜に相当し、酸化物半導体
膜108_2は、実施の形態1で説明した第2の酸化物半導体膜に相当する。すなわち、
酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2は、それぞれ独立に、Inの
原子数比がMの原子数比より多い領域を有する。
【0121】
酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2が、それぞれ独立に、In
の原子数比がMの原子数比より多い領域を有することで、トランジスタ100の電界効果
移動度を高くすることができる。具体的には、トランジスタ100の電界効果移動度が5
0cm2/Vsを超える、さらに好ましくはトランジスタ100の電界効果移動度が10
0cm2/Vsを超えることが可能となる。
【0122】
例えば、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、ゲート信号を生成するゲートド
ライバに用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)表示装置を提供することができ
る。また、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、表示装置が有する信号線からの
信号の供給を行うソースドライバ(とくに、ソースドライバが有するシフトレジスタの出
力端子に接続されるデマルチプレクサ)に用いることで、表示装置に接続される配線数が
少ない表示装置を提供することができる。
【0123】
一方で、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2が、それぞれ独立
に、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有していても、酸化物半導体膜108
_1、及び酸化物半導体膜108_2それぞれの結晶性が高い場合、電界効果移動度が低
くなる場合がある。
【0124】
しかしながら、本実施の形態においては、酸化物半導体膜108_1は、酸化物半導体
膜108_2よりも結晶性が低い領域を有する。なお、酸化物半導体膜108の結晶性と
しては、例えば、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)を用いて分
析する、あるいは、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elect
ron Microscope)を用いて分析することで解析できる。
【0125】
酸化物半導体膜108_1が結晶性の低い領域を有する場合、以下の優れた効果を有す
る。
【0126】
まず、酸化物半導体膜108中に形成されうる酸素欠損について説明を行う。
【0127】
酸化物半導体膜108に形成される酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与えるため
問題となる。例えば、酸化物半導体膜108中に酸素欠損が形成されると、該酸素欠損に
水素が結合し、キャリア供給源となる。酸化物半導体膜108中にキャリア供給源が生成
されると、酸化物半導体膜108を有するトランジスタ100の電気特性の変動、代表的
にはしきい値電圧のシフトが生じる。したがって、酸化物半導体膜108においては、酸
素欠損が少ないほど好ましい。
【0128】
そこで、本発明の一態様においては、酸化物半導体膜108近傍の絶縁膜、具体的には
、酸化物半導体膜108の上方に形成される絶縁膜114、116が過剰酸素を含有する
構成である。絶縁膜114、116から酸化物半導体膜108へ酸素または過剰酸素を移
動させることで、酸化物半導体膜中の酸素欠損を低減することが可能となる。
【0129】
ここで、
図15(A)(B)を用いて、酸化物半導体膜108中に拡散する酸素または
過剰酸素の経路について説明する。
図15(A)(B)は、酸化物半導体膜108中に拡
散する酸素または過剰酸素の拡散経路を表す概念図であり、
図15(A)はチャネル長方
向の概念図であり、
図15(B)はチャネル幅方向の概念図である。
【0130】
絶縁膜114、116が有する酸素または過剰酸素は、上方側から、すなわち酸化物半
導体膜108_2を通過して、酸化物半導体膜108_1に拡散する(
図15(A)(B
)に示すRoute 1)。
【0131】
あるいは、絶縁膜114、116が有する酸素または過剰酸素は、酸化物半導体膜10
8_1、及び酸化物半導体膜108_2それぞれの側面から酸化物半導体膜108中に拡
散する(
図15(B)に示すRoute 2)。
【0132】
例えば、
図15(A)(B)に示すRoute 1の場合、酸化物半導体膜108_2
の結晶性が高い場合、酸素または過剰酸素の拡散を阻害する場合がある。一方で、
図15
(B)に示すRoute 2の場合、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜1
08_2それぞれの側面から、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_
2に酸素または過剰酸素を拡散させることが可能となる。
【0133】
また、
図15(B)に示すRoute 2の場合、酸化物半導体膜108_1の結晶性
が、酸化物半導体膜108_2の結晶性よりも低い領域を有するため、当該領域が過剰酸
素の拡散経路となり、酸化物半導体膜108_1よりも結晶性の高い酸化物半導体膜10
8_2にも過剰酸素を拡散させることができる。なお、
図15(A)(B)中には、図示
しないが、絶縁膜106が酸素または過剰酸素を有する場合、絶縁膜106からも酸化物
半導体膜108中に酸素または過剰酸素が拡散しうる。
【0134】
また、
図15(A)(B)中には、図示しないが、酸化物半導体膜108_2の成膜時
に酸素ガスを用いる場合、当該酸素ガスが酸化物半導体膜108_1中に添加することが
できる。また、酸化物半導体膜108_1の膜厚が薄い、例えば、酸化物半導体膜108
_1の膜厚が、5nm以上40nm以下、または10nm以上20nm以下の場合、酸化
物半導体膜108_2の成膜時の酸素ガスを、酸化物半導体膜108_1の膜中に添加さ
せることができるため好適である。
【0135】
このように、本発明の一態様の半導体装置においては、結晶構造が異なる酸化物半導体
膜の積層構造とし、結晶性の低い領域を過剰酸素の拡散経路とすることで、信頼性の高い
半導体装置を提供することができる。
【0136】
なお、酸化物半導体膜108を結晶性が低い酸化物半導体膜のみで構成する場合、バッ
クチャネル側、すなわち酸化物半導体膜108_2に相当する領域に不純物(例えば、水
素または水分など)の付着、または不純物が混入することにより、信頼性が悪くなる場合
がある。
【0137】
酸化物半導体膜108に混入する水素または水分などの不純物は、トランジスタ特性に
影響を与えるため問題となる。したがって、酸化物半導体膜108においては、水素また
は水分などの不純物が少ないほど好ましい。
【0138】
そこで、本発明の一態様において、酸化物半導体膜の上層の酸化物半導体膜の結晶性を
高めることで、酸化物半導体膜108に混入しうる不純物を抑制することができる。特に
、酸化物半導体膜108_2の結晶性を高めることで、導電膜112a、112bを加工
する際のダメージを抑制することができる。酸化物半導体膜108の表面、すなわち酸化
物半導体膜108_2の表面は、導電膜112a、112bの加工の際のエッチャントま
たはエッチングガスに曝される。しかしながら、酸化物半導体膜108_2は、結晶性が
高い領域を有するため、結晶性が低い酸化物半導体膜108_1と比較してエッチング耐
性に優れる。したがって、酸化物半導体膜108_2は、エッチングストッパとして機能
する。
【0139】
また、酸化物半導体膜108_1は、酸化物半導体膜108_2よりも結晶性が低い領
域を有することで、キャリア密度が高くなる場合がある。
【0140】
また、酸化物半導体膜108_1のキャリア密度が高くなると、酸化物半導体膜108
_1の伝導帯に対してフェルミ準位が相対的に高くなる場合がある。これにより、酸化物
半導体膜108_1の伝導帯の下端が低くなり、酸化物半導体膜108_1の伝導帯下端
と、ゲート絶縁膜(ここでは、絶縁膜106)中に形成されうるトラップ準位とのエネル
ギー差が大きくなる場合がある。該エネルギー差が大きくなることにより、ゲート絶縁膜
中にトラップされる電荷が少なくなり、トランジスタのしきい値電圧の変動を小さくでき
る場合がある。また、酸化物半導体膜108_1のキャリア密度が高くなると、酸化物半
導体膜108の電界効果移動度を高めることができる。
【0141】
また、酸化物半導体膜108_1は、複合酸化物半導体であると好適である。当該複合
酸化物半導体については、実施の形態4にて詳細に説明する。
【0142】
なお、
図5(A)(B)(C)に示すトランジスタ100において、絶縁膜106は、
トランジスタ100のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜114、116、118
は、トランジスタ100の保護絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ100
において、導電膜104は、ゲート電極としての機能を有し、導電膜112aは、ソース
電極としての機能を有し、導電膜112bは、ドレイン電極としての機能を有する。なお
、本明細書等において、絶縁膜106を第1の絶縁膜と、絶縁膜114、116を第2の
絶縁膜と、絶縁膜118を第3の絶縁膜と、それぞれ呼称する場合がある。
【0143】
<2-2.半導体装置の構成要素>
次に、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0144】
[基板]
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度
の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サ
ファイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンを材
料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体
基板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けら
れたものを、基板102として用いてもよい。なお、基板102として、ガラス基板を用
いる場合、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×220
0mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×280
0mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、
大型の表示装置を作製することができる。
【0145】
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ10
0を形成してもよい。または、基板102とトランジスタ100の間に剥離層を設けても
よい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より
分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ100は耐
熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0146】
[導電膜]
ゲート電極として機能する導電膜104、ソース電極として機能する導電膜112a、
ドレイン電極として機能する導電膜112bとしては、クロム(Cr)、銅(Cu)、ア
ルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タ
ンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニッケル(
Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)から選ばれた金属元素、または上述した金属元素
を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成する
ことができる。
【0147】
また、導電膜104、112a、112bには、インジウムと錫とを有する酸化物(I
n-Sn酸化物)、インジウムとタングステンとを有する酸化物(In-W酸化物)、イ
ンジウムとタングステンと亜鉛とを有する酸化物(In-W-Zn酸化物)、インジウム
とチタンとを有する酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムとチタンと錫とを有する酸
化物(In-Ti-Sn酸化物)、インジウムと亜鉛とを有する酸化物(In-Zn酸化
物)、インジウムと錫とシリコンとを有する酸化物(In-Sn-Si酸化物)、インジ
ウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物(In-Ga-Zn酸化物)等の酸化物導電体ま
たは酸化物半導体を適用することもできる。
【0148】
ここで、酸化物導電体について説明を行う。本明細書等において、酸化物導電体をOC
(Oxide Conductor)と呼称してもよい。酸化物導電体としては、例えば
、酸化物半導体に酸素欠損を形成し、該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナ
ー準位が形成される。この結果、酸化物半導体は、導電性が高くなり導電体化する。導電
体化された酸化物半導体を、酸化物導電体ということができる。一般に、酸化物半導体は
、エネルギーギャップが大きいため、可視光に対して透光性を有する。一方、酸化物導電
体は、伝導帯近傍にドナー準位を有する酸化物半導体である。したがって、酸化物導電体
は、ドナー準位による吸収の影響は小さく、可視光に対して酸化物半導体と同程度の透光
性を有する。
【0149】
また、導電膜104、112a、112bには、Cu-X合金膜(Xは、Mn、Ni、
Cr、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu-X合金膜を用い
ることで、ウエットエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが
可能となる。
【0150】
また、導電膜112a、112bには、上述の金属元素の中でも、特に銅、チタン、タ
ングステン、タンタル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有す
ると好適である。特に、導電膜112a、112bとしては、窒化タンタル膜を用いると
好適である。当該窒化タンタル膜は、導電性を有し、且つ、銅または水素に対して、高い
バリア性を有する。また、窒化タンタル膜は、さらに自身からの水素の放出が少ないため
、酸化物半導体膜108と接する導電膜、または酸化物半導体膜108の近傍の導電膜と
して、最も好適に用いることができる。また、導電膜112a、112bとして、銅膜を
用いると、導電膜112a、112bの抵抗を低くすることができるため好適である。
【0151】
また、導電膜112a、112bを、無電解めっき法により形成することができる。当
該無電解めっき法により形成できる材料としては、例えば、Cu、Ni、Al、Au、S
n、Co、Ag、及びPdの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を用いることが可能
である。特に、CuまたはAgを用いると、導電膜の抵抗を低くすることができるため、
好適である。
【0152】
[ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜]
トランジスタ100のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106としては、プラズマ化
学気相堆積(PECVD:(Plasma Enhanced Chemical Va
por Deposition))法、スパッタリング法等により、酸化シリコン膜、酸
化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハ
フニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル
膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種
以上含む絶縁層を用いることができる。なお、絶縁膜106を、積層構造、または3層以
上の積層構造としてもよい。
【0153】
また、トランジスタ100のチャネル領域として機能する酸化物半導体膜108と接す
る絶縁膜106は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸
素を含有する領域(過剰酸素領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜1
06は、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。なお、絶縁膜106に過剰酸素領域
を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜106を形成する、もしくは成膜後の絶
縁膜106を酸素雰囲気下で熱処理すればよい。
【0154】
また、絶縁膜106として、酸化ハフニウムを用いる場合、以下の効果を奏する。酸化
ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。したがって、
酸化シリコンを用いた場合と比べて、絶縁膜106の膜厚を大きくできるため、トンネル
電流によるリーク電流を小さくすることができる。すなわち、オフ電流の小さいトランジ
スタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフニウムは、非晶質構造
を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがって、オフ電流の小さい
トランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを用いることが好ましい
。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。ただし、本発明の一態
様は、これらに限定されない。
【0155】
なお、本実施の形態では、絶縁膜106として、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜との
積層膜を形成する。窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電率が高く、酸化
シリコン膜と同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、トランジスタ100の
ゲート絶縁膜として、窒化シリコン膜を含むことで絶縁膜を厚膜化することができる。よ
って、トランジスタ100の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向上させて、ト
ランジスタ100の静電破壊を抑制することができる。
【0156】
[酸化物半導体膜]
酸化物半導体膜108としては、先に示す材料を用いることができる。
【0157】
酸化物半導体膜108がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜す
るために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In>Mを満たすこ
とが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In
:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.
1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:
1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5等が挙げられる。
【0158】
また、酸化物半導体膜108が、In-M-Zn酸化物の場合、スパッタリングターゲ
ットとしては、多結晶のIn-M-Zn酸化物を含むターゲットを用いると好ましい。多
結晶のIn-M-Zn酸化物を含むターゲットを用いることで、結晶性を有する酸化物半
導体膜108を形成しやすくなる。なお、成膜される酸化物半導体膜108の原子数比は
、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40
%の変動を含む。例えば、酸化物半導体膜108に用いるスパッタリングターゲットの組
成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の場合、成膜される酸化物半導体膜
108の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の近傍となる場合がある。
【0159】
また、酸化物半導体膜108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5
eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、
トランジスタ100のオフ電流を低減することができる。
【0160】
また、酸化物半導体膜108は、非単結晶構造であると好ましい。非単結晶構造は、例
えば、後述するCAAC-OS(C Axis Aligned Crystallin
e Oxide Semiconductor)、多結晶構造、微結晶構造、または非晶
質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC
-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0161】
[保護絶縁膜として機能する絶縁膜 1]
絶縁膜114、116は、トランジスタ100の保護絶縁膜としての機能を有する。ま
た、絶縁膜114、116は、酸化物半導体膜108に酸素を供給する機能を有する。す
なわち、絶縁膜114、116は、酸素を有する。また、絶縁膜114は、酸素を透過す
ることのできる絶縁膜である。なお、絶縁膜114は、後に形成する絶縁膜116を形成
する際の、酸化物半導体膜108へのダメージ緩和膜としても機能する。
【0162】
絶縁膜114としては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50
nm以下の酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0163】
また、絶縁膜114は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定によ
り、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度
が3×1017spins/cm3以下であることが好ましい。これは、絶縁膜114に
含まれる欠陥密度が多いと、該欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁膜114における酸素
の透過性が減少してしまう。
【0164】
なお、絶縁膜114においては、外部から絶縁膜114に入った酸素が全て絶縁膜11
4の外部に移動せず、絶縁膜114にとどまる酸素もある。また、絶縁膜114に酸素が
入ると共に、絶縁膜114に含まれる酸素が絶縁膜114の外部へ移動することで、絶縁
膜114において酸素の移動が生じる場合もある。絶縁膜114として酸素を透過するこ
とができる酸化物絶縁膜を形成すると、絶縁膜114上に設けられる、絶縁膜116から
脱離する酸素を、絶縁膜114を介して酸化物半導体膜108に移動させることができる
。
【0165】
また、絶縁膜114は、窒素酸化物に起因する準位密度が低い酸化物絶縁膜を用いて形
成することができる。なお、当該窒素酸化物に起因する準位密度は、酸化物半導体膜の価
電子帯の上端のエネルギー(Ev_os)と酸化物半導体膜の伝導帯の下端のエネルギー
(Ec_os)の間に形成され得る場合がある。上記酸化物絶縁膜として、窒素酸化物の
放出量が少ない酸化窒化シリコン膜、または窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化アルミ
ニウム膜等を用いることができる。
【0166】
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法(TD
S:Thermal Desorption Spectroscopy)において、窒
素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出
量が1×1018分子cm-3以上5×1019分子cm-3以下である。なお、アンモ
ニアの放出量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上550
℃以下の加熱処理による放出量とする。
【0167】
窒素酸化物(NOx、xは0よりも大きく2以下、好ましくは1以上2以下)、代表的
にはNO2またはNOは、絶縁膜114などに準位を形成する。当該準位は、酸化物半導
体膜108のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、絶縁膜114
及び酸化物半導体膜108の界面に拡散すると、当該準位が絶縁膜114側において電子
をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁膜114及び酸化物
半導体膜108界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフ
トさせてしまう。
【0168】
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応する。絶縁膜114
に含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁膜116に含まれるアンモニアと反応
するため、絶縁膜114に含まれる窒素酸化物が低減される。このため、絶縁膜114及
び酸化物半導体膜108の界面において、電子がトラップされにくい。
【0169】
絶縁膜114として、上記酸化物絶縁膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧
のシフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することが
できる。
【0170】
なお、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上350℃未満の加
熱処理により、絶縁膜114は、100K以下のESRで測定して得られたスペクトルに
おいてg値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2
.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグ
ナルが観測される。なお、第1のシグナル及び第2のシグナルのスプリット幅、並びに第
2のシグナル及び第3のシグナルのスプリット幅は、XバンドのESR測定において約5
mTである。また、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.
001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下
である第3のシグナルのスピンの密度の合計が1×1018spins/cm3未満であ
り、代表的には1×1017spins/cm3以上1×1018spins/cm3未
満である。
【0171】
なお、100K以下のESRスペクトルにおいて、g値が2.037以上2.039以
下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値
が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのスピンの密度の合計は、窒素酸
化物(NOx、xは0より大きく2以下、好ましくは1以上2以下)起因のシグナルのス
ピン密度の合計に相当する。窒素酸化物の代表例としては、一酸化窒素、二酸化窒素等が
ある。即ち、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001
以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下である
第3のシグナルのスピンの密度の合計が少ないほど、酸化物絶縁膜に含まれる窒素酸化物
の含有量が少ないといえる。
【0172】
また、上記酸化物絶縁膜は、SIMSで測定される窒素濃度が6×1020atoms
/cm3以下である。
【0173】
基板温度が220℃以上350℃以下であり、シラン及び一酸化二窒素を用いたPEC
VD法を用いて、上記酸化物絶縁膜を形成することで、緻密であり、且つ硬度の高い膜を
形成することができる。
【0174】
絶縁膜116は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜で
ある。上記の酸化物絶縁膜は、加熱により酸素の一部が脱離する。なお、TDSにおいて
、上記の酸化物絶縁膜は、酸素の放出量が1.0×1019atoms/cm3以上、好
ましくは3.0×1020atoms/cm3以上の領域を有する。また、上記の酸素の
放出量は、TDSにおける加熱処理の温度が50℃以上650℃以下、または50℃以上
550℃以下の範囲での総量である。また、上記の酸素の放出量は、TDSにおける酸素
原子に換算しての総量である。
【0175】
絶縁膜116としては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上
400nm以下の、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0176】
また、絶縁膜116は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定によ
り、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度
が1.5×1018spins/cm3未満、さらには1×1018spins/cm3
以下であることが好ましい。なお、絶縁膜116は、絶縁膜114と比較して酸化物半導
体膜108から離れているため、絶縁膜114より、欠陥密度が多くともよい。
【0177】
また、絶縁膜114、116は、同種の材料の絶縁膜を用いることができるため、絶縁
膜114と絶縁膜116の界面が明確に確認できない場合がある。したがって、本実施の
形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の界面は、破線で図示している。なお、本
実施の形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の2層構造について説明したが、こ
れに限定されず、例えば、絶縁膜114の単層構造、あるいは3層以上の積層構造として
もよい。
【0178】
[保護絶縁膜として機能する絶縁膜 2]
絶縁膜118は、トランジスタ100の保護絶縁膜として機能する。
【0179】
絶縁膜118は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。または、絶縁膜1
18は、窒素及びシリコンを有する。また、絶縁膜118は、酸素、水素、水、アルカリ
金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する。絶縁膜118を設けるこ
とで、酸化物半導体膜108からの酸素の外部への拡散と、絶縁膜114、116に含ま
れる酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜108への水素、水等の入り込みを
防ぐことができる。
【0180】
絶縁膜118としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜
としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム
等がある。
【0181】
なお、上記記載の、導電膜、絶縁膜、酸化物半導体膜、金属膜などの様々な膜としては
、スパッタリング法やPECVD法により形成することができるが、他の方法、例えば、
熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成しても
よい。熱CVD法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemica
l Vapor Deposition)法、またはALD(Atomic Layer
Deposition)法などが挙げられる。
【0182】
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生
成されることが無いという利点を有する。また、熱CVD法としては、原料ガスをチャン
バー内に送り、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、基板上に膜を堆積させればよい
。
【0183】
また、ALD法としては、原料ガスをチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧また
は減圧下とし、基板上に膜を堆積させればよい。
【0184】
<2-3.半導体装置の構成例2>
次に、
図5(A)(B)(C)に示すトランジスタ100の変形例について、
図6乃至
図10を用いて説明する。
【0185】
図6(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Aの上面図であ
り、
図6(B)は、
図6(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相
当し、
図6(C)は、
図6(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に
相当する。
【0186】
図6(A)(B)に示すトランジスタ100Aは、所謂チャネル保護型のトランジスタ
構造である。このように、本発明の一態様の半導体装置は、チャネルエッチ型、及びチャ
ネル保護型の双方のトランジスタ構造とすることができる。
【0187】
なお、トランジスタ100Aにおいては、絶縁膜114、116は、開口部141a、
141bを有する。また、開口部141a、141bを介して酸化物半導体膜108と導
電膜112a、112bとが接続されている。また、導電膜112a、112b上に絶縁
膜118が形成されている。また、絶縁膜114、116は、所謂チャネル保護膜として
の機能を有する。なお、トランジスタ100Aのその他の構成は、先に示すトランジスタ
100と同様であり、同様の効果を奏する。
【0188】
また、
図7(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Bの上面
図であり、
図7(B)は、
図7(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面
図に相当し、
図7(C)は、
図7(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断
面図に相当する。
【0189】
トランジスタ100Bは、基板102上の導電膜104と、基板102及び導電膜10
4上の絶縁膜106と、絶縁膜106上の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜10
8上の導電膜112aと、酸化物半導体膜108上の導電膜112bと、酸化物半導体膜
108、導電膜112a、及び導電膜112b上の絶縁膜114と、絶縁膜114上の絶
縁膜116と、絶縁膜116上の導電膜120aと、絶縁膜116上の導電膜120bと
、絶縁膜116、導電膜120a、及び導電膜120b上の絶縁膜118と、を有する。
【0190】
また、絶縁膜114、116は、開口部142aを有する。また、絶縁膜106、11
4、116は、開口部142bを有する。導電膜120aは、開口部142bを介して、
導電膜104と電気的に接続される。また、導電膜120bは、開口部142aを介して
、導電膜112bと電気的に接続される。
【0191】
なお、トランジスタ100Bにおいて、絶縁膜106は、トランジスタ100Bの第1
のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜114、116は、トランジスタ100Bの
第2のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜118は、トランジスタ100Bの保護
絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ100Bにおいて、導電膜104は、
第1のゲート電極としての機能を有し、導電膜112aは、ソース電極としての機能を有
し、導電膜112bは、ドレイン電極としての機能を有する。また、トランジスタ100
Bにおいて、導電膜120aは、第2のゲート電極としての機能を有し、導電膜120b
は、表示装置の画素電極としての機能を有する。
【0192】
なお、
図7(C)に示すように、導電膜120aは、開口部142bを介して導電膜1
04と電気的に接続される。よって、導電膜104と、導電膜120aとは、同じ電位が
与えられる。
【0193】
また、
図7(C)に示すように、酸化物半導体膜108は、導電膜104、及び導電膜
120aと対向するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれてい
る。導電膜120aのチャネル長方向の長さ、及び導電膜120aのチャネル幅方向の長
さは、酸化物半導体膜108のチャネル長方向の長さ、及び酸化物半導体膜108のチャ
ネル幅方向の長さよりもそれぞれ長く、酸化物半導体膜108の全体は、絶縁膜114、
116を介して導電膜120aに覆われている。
【0194】
別言すると、導電膜104及び導電膜120aは、絶縁膜106、114、116に設
けられる開口部において接続され、且つ酸化物半導体膜108の側端部よりも外側に位置
する領域を有する。
【0195】
このような構成を有することで、トランジスタ100Bに含まれる酸化物半導体膜10
8を、導電膜104及び導電膜120aの電界によって電気的に囲むことができる。トラ
ンジスタ100Bのように、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チ
ャネル領域が形成される酸化物半導体膜を、電気的に囲むトランジスタのデバイス構造を
Surrounded Channel(S-Channel)構造と呼ぶことができる
。
【0196】
トランジスタ100Bは、S-channel構造を有するため、第1のゲート電極と
して機能する導電膜104によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に酸化物半
導体膜108に印加することができるため、トランジスタ100Bの電流駆動能力が向上
し、高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能で
あるため、トランジスタ100Bを微細化することが可能となる。また、トランジスタ1
00Bは、酸化物半導体膜108が、第1のゲート電極として機能する導電膜104及び
第2のゲート電極として機能する導電膜120aによって囲まれた構造を有するため、ト
ランジスタ100Bの機械的強度を高めることができる。
【0197】
なお、導電膜120a、120bとしては、先に示す導電膜104、112a、112
bに列挙した材料と同様の材料を用いることができる。特に導電膜120a、120bと
しては、酸化物導電膜(OC)が好ましい。導電膜120a、120bに酸化物導電膜を
用いることで、絶縁膜114、116中に酸素を添加することができる。
【0198】
なお、トランジスタ100Bのその他の構成は、先に示すトランジスタ100と同様で
あり、同様の効果を奏する。
【0199】
また、
図8(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Cの上面
図であり、
図8(B)は、
図8(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面
図に相当し、
図8(C)は、
図8(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断
面図に相当する。
【0200】
トランジスタ100Cは、先に示すトランジスタ100Bが有する導電膜112a、1
12bを3層の積層構造とした構成である。
【0201】
トランジスタ100Cが有する導電膜112aは、導電膜112a_1と、導電膜11
2a_1上の導電膜112a_2と、導電膜112a_2上の導電膜112a_3と、を
有する。また、トランジスタ100Cが有する導電膜112bは、導電膜112b_1と
、導電膜112b_1上の導電膜112b_2と、導電膜112b_2上の導電膜112
b_3と、を有する。
【0202】
例えば、導電膜112a_1、導電膜112b_1、導電膜112a_3、及び導電膜
112b_3としては、チタン、タングステン、タンタル、モリブデン、インジウム、ガ
リウム、錫、及び亜鉛の中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。
また、導電膜112a_2及び導電膜112b_2としては、銅、アルミニウム、及び銀
の中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。
【0203】
より具体的には、導電膜112a_1、導電膜112b_1、導電膜112a_3、及
び導電膜112b_3にIn-Sn酸化物またはIn-Zn酸化物を用い、導電膜112
a_2及び導電膜112b_2に銅を用いることができる。
【0204】
上記構成とすることで、導電膜112a、112bの配線抵抗を低くし、且つ酸化物半
導体膜108への銅の拡散を抑制できるため好適である。また、上記構成とすることで、
導電膜112bと、導電膜120bとの接続抵抗を低くすることができるため好適である
。なお、トランジスタ100Cのその他の構成は、先に示すトランジスタ100と同様で
あり、同様の効果を奏する。
【0205】
また、
図9(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Dの上面
図であり、
図9(B)は、
図9(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面
図に相当し、
図9(C)は、
図9(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断
面図に相当する。
【0206】
トランジスタ100Dは、先に示すトランジスタ100Bが有する導電膜112a、1
12bを3層の積層構造とした構成である。また、トランジスタ100Dは、先に示すト
ランジスタ100Cが有する導電膜112a、112bと導電膜112a、112bの形
状が異なる。
【0207】
トランジスタ100Dが有する導電膜112aは、導電膜112a_1と、導電膜11
2a_1上の導電膜112a_2と、導電膜112a_2上の導電膜112a_3と、を
有する。また、トランジスタ100Cが有する導電膜112bは、導電膜112b_1と
、導電膜112b_1上の導電膜112b_2と、導電膜112b_2上の導電膜112
b_3と、を有する。なお、導電膜112a_1、導電膜112a_2、導電膜112a
_3、導電膜112b_1、導電膜112b_2、及び導電膜112b_3としては、先
に示す材料を用いることができる。
【0208】
また、導電膜112a_1の端部は、導電膜112a_2の端部よりも外側に位置する
領域を有し、導電膜112a_3は、導電膜112a_2の上面及び側面を覆い、且つ導
電膜112a_1と接する領域を有する。また、導電膜112b_1の端部は、導電膜1
12b_2の端部よりも外側に位置する領域を有し、導電膜112b_3は、導電膜11
2b_2の上面及び側面を覆い、且つ導電膜112b_1と接する領域を有する。
【0209】
上記構成とすることで、導電膜112a、112bの配線抵抗を低くし、且つ酸化物半
導体膜108への銅の拡散を抑制できるため好適である。なお、先に示すトランジスタ1
00Cよりもトランジスタ100Dに示す構造とした方が、銅の拡散を好適に抑制するこ
とができる。また、上記構成とすることで、導電膜112bと、導電膜120bとの接続
抵抗を低くすることができるため好適である。なお、トランジスタ100Dのその他の構
成は、先に示すトランジスタ100と同様であり、同様の効果を奏する。
【0210】
また、
図10(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Eの上
面図であり、
図10(B)は、
図10(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面
の断面図に相当し、
図10(C)は、
図10(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における
切断面の断面図に相当する。
【0211】
トランジスタ100Eは、先に示すトランジスタ100Dと、導電膜120a、120
bの位置が異なる。具体的には、トランジスタ100Eの導電膜120a、120bは、
絶縁膜118上に位置する。なお、トランジスタ100Eのその他の構成は、先に示すト
ランジスタ100Dと同様であり、同様の効果を奏する。
【0212】
また、本実施の形態に係るトランジスタは、上記の構造のトランジスタを、それぞれ自
由に組み合わせることが可能である。
【0213】
<2-4.半導体装置の作製方法>
次に、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Bの作製方法について、
図11乃至
図14を用いて説明する。
【0214】
【0215】
まず、基板102上に導電膜を形成し、該導電膜をリソグラフィ工程及びエッチング工
程を行い加工して、第1のゲート電極として機能する導電膜104を形成する。次に、導
電膜104上に第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106を形成する(
図11(A
)参照)。
【0216】
本実施の形態では、基板102としてガラス基板を用い、第1のゲート電極として機能
する導電膜104として、厚さ50nmのチタン膜と、厚さ200nmの銅膜とを、それ
ぞれスパッタリング法により形成する。また、絶縁膜106として厚さ400nmの窒化
シリコン膜と、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜とをPECVD法により形成する。
【0217】
なお、上記窒化シリコン膜は、第1の窒化シリコン膜と、第2の窒化シリコン膜と、第
3の窒化シリコン膜とを有する、3層積層構造である。該3層積層構造の一例としては、
以下のように形成することができる。
【0218】
第1の窒化シリコン膜としては、例えば、流量200sccmのシラン、流量2000
sccmの窒素、及び流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPE-CV
D装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高
周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すれば
よい。
【0219】
第2の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、流量2000sccm
の窒素、及び流量2000sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD装置の
反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源
を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが300nmとなるように形成すればよい。
【0220】
第3の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、及び流量5000sc
cmの窒素を原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100
Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚
さが50nmとなるように形成すればよい。
【0221】
なお、上記第1の窒化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、及び第3の窒化シリコン膜
形成時の基板温度は350℃以下とすることができる。
【0222】
窒化シリコン膜を上述の3層の積層構造とすることで、例えば、導電膜104に銅を含
む導電膜を用いる場合において、以下の効果を奏する。
【0223】
第1の窒化シリコン膜は、導電膜104からの銅元素の拡散を抑制することができる。
第2の窒化シリコン膜は、水素を放出する機能を有し、ゲート絶縁膜として機能する絶縁
膜の耐圧を向上させることができる。第3の窒化シリコン膜は、第3の窒化シリコン膜か
らの水素放出が少なく、且つ第2の窒化シリコン膜からの放出される水素の拡散を抑制す
ることができる。
【0224】
次に、絶縁膜106上に酸化物半導体膜108_1_0、及び酸化物半導体膜108_
2_0を形成する(
図11(B)(C)参照)。
【0225】
なお、
図11(B)は、絶縁膜106上に酸化物半導体膜108_1_0、及び酸化物
半導体膜108_2_0を形成する際の成膜装置内部の断面模式図である。
図11(B)
では、成膜装置としてスパッタリング装置を用い、当該スパッタリング装置内部に設置さ
れたターゲット191と、ターゲット191の下方に形成されるプラズマ192とが、模
式的に表されている。
【0226】
なお、
図11(B)において、絶縁膜106に添加される酸素または過剰酸素を模式的
に破線の矢印で表している。例えば、酸化物半導体膜108_1_0を成膜時に酸素ガス
を用いる場合、絶縁膜106中に好適に酸素を添加することができる。
【0227】
まず、絶縁膜106上に酸化物半導体膜108_1_0を形成する。酸化物半導体膜1
08_1_0の厚さとしては、1nm以上25nm以下、好ましくは5nm以上20nm
以下とすればよい。また、酸化物半導体膜108_1_0は、不活性ガス(代表的にはA
rガス)及び酸素ガスのいずれか一方または双方を用いて形成される。なお、酸化物半導
体膜108_1_0を形成する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合(以下、酸素流
量比ともいう)としては、0%以上30%以下、好ましくは5%以上15%以下である。
【0228】
上記範囲の酸素流量比で酸化物半導体膜108_1_0を形成することで、酸化物半導
体膜108_1_0の結晶性を低くすることができる。
【0229】
続いて、酸化物半導体膜108_1_0上に酸化物半導体膜108_2_0を形成する
。なお、酸化物半導体膜108_2_0を形成する際に、酸素ガスを含む雰囲気にてプラ
ズマを放電させる。その際に、酸化物半導体膜108_2_0の被形成面となる酸化物半
導体膜108_1_0中に酸素が添加される。なお、酸化物半導体膜108_2_0を形
成する際の酸素流量比としては、30%より大きく100%以下、好ましくは50%以上
100%以下、さらに好ましくは70%以上100%以下である。
【0230】
また、酸化物半導体膜108_2_0の厚さとしては、20nm以上100nm以下、
好ましくは20nm以上50nm以下とすればよい。
【0231】
なお、上述したように酸化物半導体膜108_2_0の形成条件としては、酸化物半導
体膜108_1_0よりも酸素流量比を高めると好ましい。別言すると、酸化物半導体膜
108_1_0は、酸化物半導体膜108_2_0のよりも低い酸素分圧で形成されると
好ましい。
【0232】
また、酸化物半導体膜108_1_0、及び酸化物半導体膜108_2_0の形成時の
基板温度としては、室温(25℃)以上200℃以下、好ましくは室温以上130℃以下
とすればよい。なお、酸化物半導体膜108_1_0、及び酸化物半導体膜108_2_
0を真空中で連続して形成することで、各界面に不純物が取り込まれないため、より好適
である。
【0233】
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとし
て用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、よ
り好ましくは-100℃以下、より好ましくは-120℃以下にまで高純度化したガスを
用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる
。
【0234】
また、スパッタリング法で酸化物半導体膜を成膜する場合、スパッタリング装置におけ
るチャンバーは、酸化物半導体膜にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクラ
イオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて、高真空(5×10-7Paから1
×10-4Pa程度まで)に排気することが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機
時における、チャンバー内のH2Oに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分
子)の分圧を1×10-4Pa以下、好ましく5×10-5Pa以下とすることが好まし
い。
【0235】
本実施の形態では、酸化物半導体膜108_1_0の形成条件としては、In-Ga-
Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、ス
パッタリング法により形成する。また、酸化物半導体膜108_1_0の形成時の基板温
度を室温とし、成膜ガスとして流量180sccmのアルゴンガスと、流量20sccm
の酸素ガスを用いる(酸素流量比10%)。
【0236】
また、酸化物半導体膜108_2_0の形成条件としては、In-Ga-Zn酸化物タ
ーゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング
法により形成する。また、酸化物半導体膜108_2_0の形成時の基板温度を室温とし
、成膜ガスとして流量200sccmの酸素ガスを用いる(酸素流量比100%)。
【0237】
酸化物半導体膜108_1_0と、酸化物半導体膜108_2_0との成膜時の酸素流
量比を変えることで、結晶性の異なる積層膜を形成することができる。
【0238】
次に、酸化物半導体膜108_1_0、及び酸化物半導体膜108_2_0を所望の形
状に加工することで、島状の酸化物半導体膜108_1、及び島状の酸化物半導体膜10
8_2を形成する。なお、本実施の形態においては、酸化物半導体膜108_1、及び酸
化物半導体膜108_2により、島状の酸化物半導体膜108が構成される(
図12(A
)参照)。
【0239】
また、酸化物半導体膜108を形成した後に、加熱処理(以下、第1の加熱処理とする
)を行うと好適である。第1の加熱処理により、酸化物半導体膜108に含まれる水素、
水等を低減することができる。なお、水素、水等の低減を目的とした加熱処理は、酸化物
半導体膜108を島状に加工する前に行ってもよい。なお、第1の加熱処理は、酸化物半
導体膜の高純度化処理の一つである。
【0240】
第1の加熱処理としては、例えば、150℃以上基板の歪み点未満、好ましくは200
℃以上450℃以下、さらに好ましくは250℃以上350℃以下とする。
【0241】
また、第1の加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を
用いることで、短時間に限り基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。その
ため、加熱時間を短縮することが可能となる。また、第1の加熱処理は、窒素、酸素、超
乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10pp
b以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお
、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい
。また、窒素または希ガス雰囲気で加熱処理した後、酸素または超乾燥空気雰囲気で加熱
してもよい。この結果、酸化物半導体膜中に含まれる水素、水等を脱離させると共に、酸
化物半導体膜中に酸素を供給することができる。この結果、酸化物半導体膜中に含まれる
酸素欠損を低減することができる。
【0242】
次に、絶縁膜106、及び酸化物半導体膜108上に導電膜112を形成する(
図12
(B)参照)。
【0243】
本実施の形態では、導電膜112として、厚さ30nmのチタン膜と、厚さ200nm
の銅膜と、厚さ10nmのチタン膜とを、それぞれ順に、スパッタリング法により成膜す
る。
【0244】
次に、導電膜112を所望の形状に加工することで、島状の導電膜112aと、島状の
導電膜112bと、を形成する(
図12(C)参照)。
【0245】
なお、本実施の形態においては、ウエットエッチング装置を用い、導電膜112を加工
する。ただし、導電膜112の加工方法としては、これに限定されず、例えば、ドライエ
ッチング装置を用いてもよい。
【0246】
また、導電膜112a、112bの形成後に、酸化物半導体膜108(より具体的には
酸化物半導体膜108_3)の表面(バックチャネル側)を洗浄してもよい。当該洗浄方
法としては、例えば、リン酸等の薬液を用いた洗浄が挙げられる。リン酸等の薬液を用い
て洗浄を行うことで、酸化物半導体膜108_3の表面に付着した不純物(例えば、導電
膜112a、112bに含まれる元素等)を除去することができる。なお、当該洗浄を必
ずしも行う必要はなく、場合によっては、洗浄を行わなくてもよい。
【0247】
また、導電膜112a、112bを形成する工程、及び上記洗浄工程のいずれか一方ま
たは双方において、酸化物半導体膜108の導電膜112a、112bから露出した領域
が、薄くなる場合がある。
【0248】
なお、本発明の一態様の半導体装置においては、導電膜112a、112bから露出し
た領域、すなわち、酸化物半導体膜109_2は結晶性が高められた酸化物半導体膜であ
る。結晶性が高い酸化物半導体膜は、不純物、特に導電膜112a、112bに用いる構
成元素が膜中に拡散しにくい構成である。したがって、信頼性の高い半導体装置を提供す
ることができる。
【0249】
また、
図12(C)において、導電膜112a、112bから露出した酸化物半導体膜
108の表面、すなわち酸化物半導体膜108_2の表面に凹部が形成される場合につい
て例示したが、これに限定されず、導電膜112a、112bから露出した酸化物半導体
膜108の表面は、凹部を有していなくてもよい。
【0250】
次に、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に絶縁膜114、及び
絶縁膜116を形成する(
図13(A)参照)。
【0251】
なお、絶縁膜114を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に絶縁膜116を形成
することが好ましい。絶縁膜114を形成後、大気開放せず、原料ガスの流量、圧力、高
周波電力及び基板温度の一以上を調整して、絶縁膜116を連続的に形成することで、絶
縁膜114と絶縁膜116との界面において大気成分由来の不純物濃度を低減することが
できる。
【0252】
例えば、絶縁膜114として、PECVD法を用いて、酸化窒化シリコン膜を形成する
ことができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体
を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラ
ン、トリシラン、フッ化シラン等がある。
【0253】
本実施の形態においては、絶縁膜114として、基板102を保持する温度を220℃
とし、流量50sccmのシラン及び流量2000sccmの一酸化二窒素を原料ガスと
し、処理室内の圧力を20Paとし、平行平板電極に供給する高周波電力を13.56M
Hz、100W(電力密度としては1.6×10-2W/cm2)とするPECVD法を
用いて、酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0254】
絶縁膜116としては、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を
180℃以上350℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力
を100Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし
、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm2以上0.5W/cm2以下、さらに好
ましくは0.25W/cm2以上0.35W/cm2以下の高周波電力を供給する条件に
より、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0255】
絶縁膜116の成膜条件として、上記圧力の反応室において上記パワー密度の高周波電
力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し
、原料ガスの酸化が進むため、絶縁膜116中における酸素含有量が化学量論的組成より
も多くなる。一方、基板温度が、上記温度で形成された膜では、シリコンと酸素の結合力
が弱いため、後の工程の加熱処理により膜中の酸素の一部が脱離する。この結果、化学量
論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化物
絶縁膜を形成することができる。
【0256】
なお、絶縁膜116の形成工程において、絶縁膜114が酸化物半導体膜108の保護
膜となる。したがって、酸化物半導体膜108へのダメージを低減しつつ、パワー密度の
高い高周波電力を用いて絶縁膜116を形成することができる。
【0257】
なお、絶縁膜116の成膜条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積性気
体の流量を増加することで、絶縁膜116の欠陥量を低減することが可能である。代表的
には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現
れる信号のスピン密度が6×1017spins/cm3未満、好ましくは3×1017
spins/cm3以下、好ましくは1.5×1017spins/cm3以下である欠
陥量の少ない酸化物絶縁膜を形成することができる。この結果、トランジスタ100の信
頼性を高めることができる。
【0258】
また、絶縁膜114、116を成膜した後に、加熱処理(以下、第2の加熱処理とする
)を行うと好適である。第2の加熱処理により、絶縁膜114、116に含まれる窒素酸
化物を低減することができる。または、第2の加熱処理により、絶縁膜114、116に
含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜108に移動させ、酸化物半導体膜108に含まれ
る酸素欠損を低減することができる。
【0259】
第2の加熱処理の温度は、代表的には、400℃未満、好ましくは375℃未満、さら
に好ましくは、150℃以上350℃以下とする。第2の加熱処理は、窒素、酸素、超乾
燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb
以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、
上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい該
加熱処理には、電気炉、RTA等を用いることができる。
【0260】
次に、絶縁膜114、116の所望の領域に開口部142a、142bを形成する(図
13(B)参照)。
【0261】
本実施の形態においては、開口部142a、142bを、ドライエッチング装置を用い
て形成する。なお、開口部142aは、導電膜112bに達し、開口部142bは、導電
膜104に達する。
【0262】
次に、絶縁膜116上に導電膜120を形成する(
図13(C)及び
図14(A)参照
)。
【0263】
なお、
図13(C)は、絶縁膜116上に導電膜120を形成する際の成膜装置内部の
断面模式図である。
図13(C)では、成膜装置としてスパッタリング装置を用い、当該
スパッタリング装置内部に設置されたターゲット193と、ターゲット193の下方に形
成されるプラズマ194とが、模式的に表されている。
【0264】
まず、導電膜120を形成する際に、酸素ガスを含む雰囲気にてプラズマを放電させる
。その際に、導電膜120の被形成面となる絶縁膜116中に、酸素が添加される。また
、導電膜120を形成する際に、酸素ガスの他に、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス、
アルゴンガス、キセノンガスなど)を混合させてもよい。
【0265】
酸素ガスとしては、少なくとも導電膜120を形成する際に含まれていればよく、導電
膜120を形成する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合としては、0%より大きく
100%以下、好ましくは10%以上100%以下、さらに好ましくは30%以上100
%以下である。
【0266】
なお、
図13(C)において、絶縁膜116に添加される酸素または過剰酸素を模式的
に破線の矢印で表している。
【0267】
本実施の形態では、In-Ga-Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:
4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法により導電膜120を形成する。
【0268】
なお、本実施の形態では、導電膜120を成膜する際に、絶縁膜116に酸素を添加す
る方法について例示したがこれに限定されない。例えば、導電膜120を形成後に、さら
に絶縁膜116に酸素を添加してもよい。
【0269】
絶縁膜116に酸素を添加する方法としては、例えば、インジウムと、錫と、シリコン
とを有する酸化物(In-Sn-Si酸化物、ITSOともいう)ターゲット(In2O
3:SnO2:SiO2=85:10:5[重量%])を用いて、膜厚5nmのITSO
膜を形成すればよい。この場合、ITSO膜の膜厚としては、1nm以上20nm以下、
または2nm以上10nm以下とすると好適に酸素を透過し、且つ酸素の放出を抑制でき
るため好ましい。その後、ITSO膜を通過させて、絶縁膜116に酸素を添加する。酸
素の添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等が挙げら
れる。また、酸素を添加する際に、基板側にバイアス電圧を印加することで効果的に酸素
を絶縁膜116に添加することができる。上記バイアス電圧としては、例えば、アッシン
グ装置を用い、該アッシング装置の基板側に印加するバイアス電圧の電力密度を1W/c
m2以上5W/cm2以下とすればよい。また、酸素を添加する際の基板温度としては、
室温以上300℃以下、好ましくは、100℃以上250℃以下とすることで、絶縁膜1
16に効率よく酸素を添加することができる。
【0270】
次に、導電膜120を所望の形状に加工することで、島状の導電膜120aと、島状の
導電膜120bと、を形成する(
図14(B)参照)。
【0271】
本実施の形態においては、ウエットエッチング装置を用い、導電膜120を加工する。
【0272】
次に、絶縁膜116、及び導電膜120a、120b上に絶縁膜118を形成する(図
14(C)参照)。
【0273】
絶縁膜118は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。絶縁膜118とし
ては、例えば、窒化シリコン膜を用いると好適である。また、絶縁膜118としては、例
えば、スパッタリング法またはPECVD法を用いて形成することができる。例えば、絶
縁膜118をPECVD法で成膜する場合、基板温度は400℃未満、好ましくは375
℃未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下である。絶縁膜118を成膜する場
合の基板温度を、上述の範囲にすることで、緻密な膜を形成できるため好ましい。また、
絶縁膜118を成膜する場合の基板温度を、上述の範囲にすることで、絶縁膜114、1
16中の酸素または過剰酸素を、酸化物半導体膜108に移動させることが可能となる。
【0274】
また、絶縁膜118としてPECVD法により窒化シリコン膜を形成する場合、シリコ
ンを含む堆積性気体、窒素、及びアンモニアを原料ガスとして用いることが好ましい。窒
素と比較して少量のアンモニアを用いることで、プラズマ中でアンモニアが解離し、活性
種が発生する。該活性種が、シリコンを含む堆積性気体に含まれるシリコン及び水素の結
合、及び窒素の三重結合を切断する。この結果、シリコン及び窒素の結合が促進され、シ
リコン及び水素の結合が少なく、欠陥が少なく、緻密な窒化シリコン膜を形成することが
できる。一方、窒素に対するアンモニアの量が多いと、シリコンを含む堆積性気体及び窒
素の分解が進まず、シリコン及び水素結合が残存してしまい、欠陥が増大した、且つ粗な
窒化シリコン膜が形成されてしまう。これらのため、原料ガスにおいて、アンモニアに対
する窒素の流量比を5倍以上50倍以下、10倍以上50倍以下とすることが好ましい。
【0275】
本実施の形態においては、絶縁膜118として、PECVD装置を用いて、シラン、窒
素、及びアンモニアを原料ガスとして用いて、厚さ50nmの窒化シリコン膜を形成する
。流量は、シランが50sccm、窒素が5000sccmであり、アンモニアが100
sccmである。処理室の圧力を100Pa、基板温度を350℃とし、27.12MH
zの高周波電源を用いて1000Wの高周波電力を平行平板電極に供給する。PECVD
装置は電極面積が6000cm2である平行平板型のPECVD装置であり、供給した電
力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると1.7×10-1W/cm2である
。
【0276】
なお、導電膜120a、120bとして、In-Ga-Zn酸化物ターゲット(In:
Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて導電膜を形成した場合、絶縁膜11
8が形成されることで、絶縁膜118が有する水素及び窒素のいずれか一方または双方が
、導電膜120a、120b中に入り込む場合がある。この場合、導電膜120a、12
0b中の酸素欠損と、水素及び窒素のいずれか一方または双方が結合することで、導電膜
120a、120bの抵抗が低くなる場合がある。
【0277】
また、絶縁膜118形成後に、先に記載の第1の加熱処理及び第2の加熱処理と同等の
加熱処理(以下、第3の加熱処理とする)を行ってもよい。
【0278】
第3の加熱処理を行うことで、絶縁膜116が有する酸素は、酸化物半導体膜108中
に移動し、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填する。
【0279】
以上の工程で
図7(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Bを作製することがで
きる。
【0280】
なお、
図5(A)(B)(C)に示すトランジスタ100としては、
図13(A)に示
す工程を行った後に、絶縁膜118を形成することで、作製することができる。また、図
6(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Aとしては、導電膜112a、112b
と、絶縁膜114、116の形成順を変えて、且つ絶縁膜114、116に開口部141
a、141bを形成する工程を追加することで、作製することができる。
【0281】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0282】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の酸化物半導体膜が有するCAC(Cloud-A
ligned Composite)-OSの構成について説明する。
【0283】
<3-1.CACの構成>
CACとは、酸化物半導体膜を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好まし
くは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。
なお、以下では、酸化物半導体膜において、一つあるいはそれ以上の金属元素が、0.5
nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで
混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0284】
例えば、In-Ga-Zn酸化物(以下、IGZOともいう。)におけるCAC-IG
ZOとは、インジウム酸化物(以下、InOX1(X1は0よりも大きい実数。))、ま
たはインジウム亜鉛酸化物(以下、InX2ZnY2OZ2(X2、Y2、およびZ2は
0よりも大きい実数。))と、ガリウム酸化物(以下、GaOX3(X3は0よりも大き
い実数。))、またはガリウム亜鉛酸化物(以下、GaX4ZnY4OZ4(X4、Y4
、およびZ4は0よりも大きい実数。))などと、材料が分離することでモザイク状とな
り、モザイク状のInOX1、またはInX2ZnY2OZ2が、酸化物半導体膜中に分
布した構成(クラウド状ともいう)である。
【0285】
つまり、CAC-IGZOは、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分で
ある領域と、GaOX3が主成分である領域とが、偏在し混合している構造を有する複合
酸化物半導体膜である。また、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分であ
る領域と、GaOX3が主成分である領域とは、周辺部が不明瞭である(ボケている)た
め、それぞれの境界は明確には観察できない場合がある。
【0286】
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、およびOによる1つの化合物をいう
場合がある。代表例として、InGaO3(ZnO)m1(m1は自然数)、またはIn
(1+x0)Ga(1-x0)O3(ZnO)m0(-1≦x0≦1、m0は任意数)で
表される結晶性の化合物が挙げられる。
【0287】
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、またはCAAC構造を有する。なお
、CAAC構造とは、複数のIGZOナノ結晶がc軸配向を有し、かつa-b面において
は配向せずに連結した結晶構造である。
【0288】
一方、CACは、材料構成に関する。CACとは、In、Ga、Zn、およびOを含む
材料構成において、Gaを主成分とする複数の領域と、Inを主成分とする複数の領域と
が、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。従って、CACにおいて
、結晶構造は副次的な要素である。なお、Gaを主成分とする領域と、Inを主成分とす
る領域とは、EDXマッピングで評価することができる。なお、Gaを主成分とする領域
、及びInを主成分とする領域を、それぞれナノ粒子と呼称してもよい。当該ナノ粒子は
、粒子の径が0.5nm以上10nm以下、代表的には1nm以上2nm以下である。ま
た、上記ナノ粒子は、周辺部が不明瞭である(ボケている)ため、明確な境界が観察でき
ない場合がある。
【0289】
なお、CACは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。例え
ば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まない
。
【0290】
なお、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1
が主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。例えば、領域の中心部
から周辺部にかけて、主成分である元素の密度は、徐々に小さくなる。例えば、断面写真
のEDXマッピングにおいて、EDXマッピングでカウントできる元素の個数(以下、存
在量ともいう)に傾斜を有するため、領域の周辺部が不明瞭な(ボケた)状態で観察され
る。具体的には、GaOX3が主成分である領域では、Ga原子は、中心部から周辺部に
かけて徐々に減少し、代わりに、Zn原子が増加することで、GaXZnYOZが主成分
である領域へと段階的に変化する。従って、EDXマッピングにおいて、GaOX3が主
成分である領域の周辺部は不明瞭な(ボケた)状態で観察される。
【0291】
<3-2.CAC-IGZOの解析>
続いて、各種測定方法を用い、基板上に成膜した酸化物半導体膜について測定を行った
結果について説明する。
【0292】
[試料の構成と作製方法]
以下では、本発明の一態様に係る9個の試料について説明する。各試料は、それぞれ、
酸化物半導体膜を成膜する際の基板温度、および酸素ガス流量比を異なる条件で作製する
。なお、試料は、基板と、基板上の酸化物半導体膜と、を有する構造である。
【0293】
各試料の作製方法について、説明する。
【0294】
まず、基板として、ガラス基板を用いる。続いて、スパッタリング装置を用いて、ガラ
ス基板上に酸化物半導体膜として、100nmのIn-Ga-Zn酸化物を形成する。成
膜条件は、チャンバー内の圧力を0.6Paとし、ターゲットには、金属酸化物ターゲッ
ト(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いる。また、スパッタリング
装置内に設置された金属酸化物ターゲットに2500WのAC電力を供給する。
【0295】
なお、酸化物を成膜する際の条件として、基板温度を、意図的に加熱しない温度(以下
、R.T.ともいう。)、130℃、または170℃とした。また、Arと酸素の混合ガ
スに対する酸素ガスの流量比(酸素ガス流量比ともいう)を、10%、30%、または1
00%とすることで、9個の試料を作製する。
【0296】
[X線回折による解析]
本項目では、9個の試料に対し、X線回折(XRD:X-ray diffracti
on)測定を行った結果について説明する。なお、XRD装置として、Bruker社製
D8 ADVANCEを用いた。また、条件は、Out-of-plane法によるθ/
2θスキャンにて、走査範囲を15deg.乃至50deg.、ステップ幅を0.02d
eg.、走査速度を3.0deg./分とした。
【0297】
図16にOut-of-plane法を用いてXRDスペクトルを測定した結果を示す
。なお、
図16において、上段には成膜時の基板温度条件が170℃の試料における測定
結果、中段には成膜時の基板温度条件が130℃の試料における測定結果、下段には成膜
時の基板温度条件がR.T.の試料における測定結果を示す。また、左側の列には酸素ガ
ス流量比の条件が10%の試料における測定結果、中央の列には酸素ガス流量比の条件が
30%の試料における測定結果、右側の列には酸素ガス流量比の条件が100%の試料に
おける測定結果、を示す。
【0298】
図16に示すXRDスペクトルは、成膜時の基板温度を高くする、または、成膜時の酸
素ガス流量比の割合を大きくすることで、2θ=31°付近のピーク強度が高くなる。な
お、2θ=31°付近のピークは、被形成面または上面に略垂直方向に対してc軸に配向
した結晶性IGZO化合物(CAAC(c-axis aligned crystal
line)-IGZOともいう)であることに由来することが分かっている。
【0299】
また、
図16に示すXRDスペクトルは、成膜時の基板温度が低い、または、酸素ガス
流量比が小さいほど、明確なピークが現れなかった。従って、成膜時の基板温度が低い、
または、酸素ガス流量比が小さい試料は、測定領域のa-b面方向、およびc軸方向の配
向は見られないことが分かる。
【0300】
なお、実施の形態1で説明した第1の酸化物半導体膜としては、
図16に示すXRDス
ペクトルで明確なピークが現れない条件を用いればよい。例えば、
図16に示す9個の試
料のうち、基板温度をR.T.とし、酸素ガス流量比を10%とした条件、基板温度をR
.T.とし、酸素ガス流量比を30%とした条件、または基板温度を130℃とし、酸素
ガス流量比を10%とした条件で行えばよい。
【0301】
また、実施の形態1で説明した第2の酸化物半導体膜としては、
図16に示すXRDス
ペクトルで2θ=31°近傍に明確なピークが見られる条件を用いればよい。例えば、図
16に示す9個の試料のうち、基板温度を130℃とし、酸素ガス流量比を100%とし
た条件、基板温度を170℃とし、酸素ガス流量比を30%とした条件、または基板温度
を170℃とし、酸素ガス流量比を100%とした条件で行えばよい。
【0302】
[電子顕微鏡による解析]
本項目では、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料
を、HAADF(High-Angle Annular Dark Field)-S
TEM(Scanning Transmission Electron Micro
scope)によって観察、および解析した結果について説明する(以下、HAADF-
STEMによって取得した像は、TEM像ともいう。)。
【0303】
HAADF-STEMによって取得した平面像(平面TEM像ともいう。)、および断
面像(断面TEM像ともいう。)の画像解析を行った結果について説明する。なお、TE
M像は、球面収差補正機能を用いて観察した。なお、HAADF-STEM像の撮影には
、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fを用いて、加速
電圧200kV、ビーム径約0.1nmφの電子線を照射して行った。
【0304】
図17(A)は、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した
試料の平面TEM像である。
図17(B)は、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガ
ス流量比10%で作製した試料の断面TEM像である。
【0305】
[電子線回折パターンの解析]
本項目では、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料
に、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう。)を照射することで、電
子線回折パターンを取得した結果について説明する。
【0306】
図17(A)に示す、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製
した試料の平面TEM像において、黒点a1、黒点a2、黒点a3、黒点a4、および黒
点a5で示す電子線回折パターンを観察する。なお、電子線回折パターンの観察は、電子
線を照射しながら0秒の位置から35秒の位置まで一定の速度で移動させながら行う。黒
点a1の結果を
図17(C)、黒点a2の結果を
図17(D)、黒点a3の結果を
図17
(E)、黒点a4の結果を
図17(F)、および黒点a5の結果を
図17(G)に示す。
【0307】
図17(C)、
図17(D)、
図17(E)、
図17(F)、および
図17(G)より
、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測できる。また、リング状の領域に
複数のスポットが観測できる。
【0308】
また、
図17(B)に示す、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%
で作製した試料の断面TEM像において、黒点b1、黒点b2、黒点b3、黒点b4、お
よび黒点b5で示す電子線回折パターンを観察する。黒点b1の結果を
図17(H)、黒
点b2の結果を
図17(I)、黒点b3の結果を
図17(J)、黒点b4の結果を
図17
(K)、および黒点b5の結果を
図17(L)に示す。
【0309】
図17(H)、
図17(I)、
図17(J)、
図17(K)、および
図17(L)より
、リング状に輝度の高い領域が観測できる。また、リング状の領域に複数のスポットが観
測できる。
【0310】
ここで、例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC-OSに対し、試料面に平
行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、InGaZnO4の結晶の(00
9)面に起因するスポットが含まれる回折パターンが見られる。つまり、CAAC-OS
は、c軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることがわ
かる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射さ
せると、リング状の回折パターンが確認される。つまり、CAAC-OSは、a軸および
b軸は配向性を有さないことがわかる。
【0311】
また、微結晶を有する酸化物半導体膜(nano crystalline oxid
e semiconductor。以下、nc-OSという。)に対し、大きいプローブ
径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折を行うと、ハローパターンのよう
な回折パターンが観測される。また、nc-OSに対し、小さいプローブ径の電子線(例
えば50nm未満)を用いるナノビーム電子線回折を行うと、輝点(スポット)が観測さ
れる。また、nc-OSに対しナノビーム電子線回折を行うと、円を描くように(リング
状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。さらに、リング状の領域に複数の輝点が
観測される場合がある。
【0312】
成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料の電子線回折
パターンは、リング状に輝度の高い領域と、該リング領域に複数の輝点を有する。従って
、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料は、電子線回
折パターンが、nc-OSになり、平面方向、および断面方向において、配向性は有さな
い。
【0313】
以上より、成膜時の基板温度が低い、または、酸素ガス流量比が小さい酸化物半導体膜
は、アモルファス構造の酸化物半導体膜とも、単結晶構造の酸化物半導体膜とも明確に異
なる性質を有すると推定できる。
【0314】
[元素分析]
本項目では、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersi
ve X-ray spectroscopy)を用い、EDXマッピングを取得し、評
価することによって、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製し
た試料の元素分析を行った結果について説明する。なお、EDX測定には、元素分析装置
として日本電子株式会社製エネルギー分散型X線分析装置JED-2300Tを用いる。
なお、試料から放出されたX線の検出にはSiドリフト検出器を用いる。
【0315】
EDX測定では、試料の分析対象領域の各点に電子線照射を行い、これにより発生する
試料の特性X線のエネルギーと発生回数を測定し、各点に対応するEDXスペクトルを得
る。本実施例では、各点のEDXスペクトルのピークを、In原子のL殻への電子遷移、
Ga原子のK殻への電子遷移、Zn原子のK殻への電子遷移及びO原子のK殻への電子遷
移に帰属させ、各点におけるそれぞれの原子の比率を算出する。これを試料の分析対象領
域について行うことにより、各原子の比率の分布が示されたEDXマッピングを得ること
ができる。
【0316】
図18には、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料
の断面におけるEDXマッピングを示す。
図18(A)は、Ga原子のEDXマッピング
(全原子に対するGa原子の比率は1.18乃至18.64[atomic%]の範囲と
する。)である。
図18(B)は、In原子のEDXマッピング(全原子に対するIn原
子の比率は9.28乃至33.74[atomic%]の範囲とする。)である。
図18
(C)は、Zn原子のEDXマッピング(全原子に対するZn原子の比率は6.69乃至
24.99[atomic%]の範囲とする。)である。また、
図18(A)、
図18(
B)、および
図18(C)は、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%
で作製した試料の断面において、同範囲の領域を示している。なお、EDXマッピングは
、範囲における、測定元素が多いほど明るくなり、測定元素が少ないほど暗くになるよう
に、明暗で元素の割合を示している。また、
図18に示すEDXマッピングの倍率は72
0万倍である。
【0317】
図18(A)、
図18(B)、および
図18(C)に示すEDXマッピングでは、画像
に相対的な明暗の分布が見られ、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10
%で作製した試料において、各原子が分布を持って存在している様子が確認できる。ここ
で、
図18(A)、
図18(B)、および
図18(C)に示す実線で囲む範囲と破線で囲
む範囲に注目する。
【0318】
図18(A)では、実線で囲む範囲は、相対的に暗い領域を多く含み、破線で囲む範囲
は、相対的に明るい領域を多く含む。また、
図18(B)では実線で囲む範囲は、相対的
に明るい領域を多く含み、破線で囲む範囲は、相対的に暗い領域を多く含む。
【0319】
つまり、実線で囲む範囲はIn原子が相対的に多い領域であり、破線で囲む範囲はIn
原子が相対的に少ない領域である。ここで、
図18(C)では、実線で囲む範囲において
、右側は相対的に明るい領域であり、左側は相対的に暗い領域である。従って、実線で囲
む範囲は、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1などが主成分である領域である。
【0320】
また、実線で囲む範囲はGa原子が相対的に少ない領域であり、破線で囲む範囲はGa
原子が相対的に多い領域である。
図18(C)では、破線で囲む範囲において、左上の領
域は、相対的に明るい領域であり、右下側の領域は、相対的に暗い領域である。従って、
破線で囲む範囲は、GaO
X3、またはGa
X4Zn
Y4O
Z4などが主成分である領域
である。
【0321】
また、
図18(A)、
図18(B)、および
図18(C)より、In原子の分布は、G
a原子よりも、比較的、均一に分布しており、InO
X1が主成分である領域は、In
X
2Zn
Y2O
Z2が主成分となる領域を介して、互いに繋がって形成されているように見
える。このように、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域は、
クラウド状に広がって形成されている。
【0322】
このように、GaOが主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX
1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有するIn-Ga-Zn酸化物
を、CAC-IGZOと呼称することができる。
【0323】
また、
図18(A)、
図18(B)、および
図18(C)より、GaO
X3が主成分で
ある領域、及びIn
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域のサイズ
は、0.5nm以上10nm以下、または0.3nm以上3nm以下で観察される。なお
、好ましくは、EDXマッピングにおいて、各金属元素が主成分である領域の径は、1n
m以上2nm以下とする。
【0324】
以上より、CAC-IGZOは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる
構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、CAC-IGZOは、Ga
OX3などが主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分
である領域と、を有する。従って、CAC-IGZOを半導体素子に用いた場合、GaO
X3などに起因する性質と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1に起因する性質
とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(Ion)、および高い電界効果移動
度(μ)を実現することができる。
【0325】
なお、CAC-IGZOを半導体素子に用いた場合に、高いオン電流(Ion)、およ
び高い電界効果移動度(μ)を実現する伝導メカニズムは、パーコレーション理論の1つ
であるランダム抵抗網モデルにより、推定することができる。
【0326】
また、CAC-IGZOを用いた半導体素子は、信頼性が高い。従って、CAC-IG
ZOは、ディスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
【0327】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0328】
(実施の形態4)
本実施の形態においては、本発明の一態様の酸化物半導体膜について、
図19乃至
図2
4を用いて説明を行う。
【0329】
<4-1.酸化物半導体膜>
酸化物半導体膜は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウムおよ
び亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、ガリウム、アルミニウム、イット
リウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン
、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオ
ジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種
、または複数種が含まれていてもよい。
【0330】
ここで、酸化物半導体膜が、インジウム、元素M及び亜鉛を有する場合を考える。なお
、元素Mは、ガリウム、アルミニウム、イットリウムまたはスズなどとする。その他の元
素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウ
ム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル
、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組
み合わせても構わない。なお、以下の説明において、酸化物半導体膜が有するインジウム
、元素M、及び亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[M]、および[Zn]とす
る場合がある。
【0331】
<4-2.酸化物半導体膜の結晶構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分け
られる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis al
igned crystalline oxide semiconductor)、多
結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide sem
iconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorph
ous-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導
体などがある。
【0332】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連
結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、CAAC-OSは格子配列
の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇
所を指す。
【0333】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合
がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの多角形のナノ結晶を有する場
合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界を確認
することはできない。即ち、格子配列を歪ませることによって結晶粒界の形成を抑制して
いることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が
稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによ
って、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0334】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元
素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶
構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置
換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換し、(In,M,Zn)層と
表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換し、(In,M)層と表す
こともできる。
【0335】
nc-OSは、微小な領域(例えば、0.5nm以上10nm以下の領域、特に1nm
以上2nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異な
るナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない
。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物
半導体と区別が付かない場合がある。
【0336】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物
半導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a-lik
e OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、不安定な構造である。
【0337】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様
の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、n
c-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0338】
また、本発明の一態様における酸化物半導体膜は、複合酸化物半導体を有する。したが
って、以下の説明では、酸化物半導体膜を複合酸化物半導体として表す場合がある。複合
酸化物半導体を用いることで、電界効果移動度の高いトランジスタを得ることができる。
【0339】
<4-3.複合酸化物半導体>
次に、本発明の一態様における、複合酸化物半導体についての説明を行う。以下では、
酸化物半導体膜が形成された試料を作製して評価を行った結果について説明する。
【0340】
[試料の構成と作製方法]
本発明の一態様に係る2つの試料を作製して評価する。各試料は、それぞれ、酸化物半
導体膜を成膜する際の基板温度、および酸素ガス流量比を異なる条件で作製する。なお、
以下の説明においては、上記2つの試料を便宜的にSample A1及びSample
A2として説明を行う。
【0341】
Sample A1及びSample A2は、それぞれ基板と、基板上の酸化物半導
体膜と、を有する構造である。
【0342】
[Sample A1]
まず、Sample A1の作製方法を説明する。基板として、ガラス基板を用いる。
続いて、スパッタリング装置を用いて、ガラス基板上に酸化物半導体膜として、100n
mのIn-Ga-Zn酸化物を形成する。成膜条件は、チャンバー内の圧力を0.6Pa
とし、ターゲットには、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原
子数比])を用いる。また、スパッタリング装置内に設置された金属酸化物ターゲットに
2500WのAC電力を供給する。なお、酸化物を成膜する際の条件として、基板温度を
、意図的に加熱しない温度(以下、R.T.ともいう。)、とした。また、Arガスを2
70sccmとし、酸素ガスを30sccmとして、成膜室に混合ガスを供給して成膜す
る。すなわち、Arと酸素の混合ガスに対する酸素ガスの流量比(酸素ガス流量比ともい
う)を10%とした。
【0343】
[Sample A2]
次に、Sample A2の作製方法を説明する。基板として、ガラス基板を用いる。
続いて、スパッタリング装置を用いて、ガラス基板上に酸化物半導体膜として、100n
mのIn-Ga-Zn酸化物を形成する。成膜条件は、チャンバー内の圧力を0.6Pa
とし、ターゲットには、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原
子数比])を用いる。また、スパッタリング装置内に設置された金属酸化物ターゲットに
2500WのAC電力を供給する。なお、酸化物を成膜する際の条件として、基板温度を
、170℃とした。また、酸素ガスを300sccmとして、成膜室に酸素ガスを供給し
て成膜する。すなわち、成膜時における全てのガスに対する酸素ガスの流量比(酸素ガス
流量比ともいう)を100%とした。
【0344】
[断面HAADF-STEM]
次に、上記作製したSample A1及びSample A2の断面観察についての
説明を行う。断面観察としては、HAADF(High-Angle Annular
Dark Field)-STEM観察とした。なお、HAADF-STEM観察には、
日本電子製 JEM-ARM200Fを用い、加速電圧を200kVとした。Sampl
e A1のHAADF-STEM像を
図19(A)に、Sample A2のHAADF
-STEM像を
図19(B)に、それぞれ示す。
【0345】
図19(A)に示すように、Sample A1のHAADF-STEM像においては
、明確な配向性が確認されない。一方で、
図19(B)に示すように、Sample A
2のHAADF-STEM像においては、c軸方向に層状の配向性が確認される。
【0346】
ここで、
図19(A)に示すSample A1の断面における概念図を
図20に示す
。
【0347】
図20は、基板Sub.上に酸化物半導体膜が形成された断面(ここでは、c軸方向と
呼ぶ)の概念図である。なお、
図20においては、基板上に酸化物半導体膜が形成される
場合について例示したが、これに限定されず、基板と酸化物半導体膜との間に下地膜また
は層間膜などの絶縁膜、あるいは酸化物半導体膜などの他の半導体膜が形成されていても
よい。
【0348】
本発明の一態様の酸化物半導体膜は、
図20に示すように、領域A1と、領域B1と、
領域C1とが、混合している構造を有する複合酸化物半導体である。
【0349】
図20に示す領域A1は、[In]:[M]:[Zn]=x:y:z(x>0、y≧0
、z≧0)となるInを有する領域である。また、領域B1は、[In]:[M]:[Z
n]=a:b:c(a≧0、b>0、c≧0)となるGaを有する領域である。また、領
域C1は、[In]:[M]:[Zn]=α:β:γ(α≧0、β≧0、γ>0)となる
Znを有する領域である。
【0350】
なお、本明細書において、領域A1の元素Mに対するInの原子数比が、領域B1の元
素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、領域A1は、領域B1と比較して、I
nの濃度が高いとする。従って、本明細書において、領域A1をIn-richな領域、
また、領域B1をIn-poorな領域、ともいう。
【0351】
例えば、領域A1は、領域B1よりも、Inの濃度が1.1倍以上、好ましくは2倍以
上10倍以下であるとよい。また、領域A1は、少なくともInを有する酸化物であれば
よく、元素M、およびZnは、必ずしも含まれなくともよい。
【0352】
本発明の一態様の酸化物半導体膜において、領域A1と、領域B1と、領域C1とが、
複合体を形成している。つまり、領域A1では、キャリア移動が生じやすく、領域B1で
は、キャリア移動が生じにくい。そのため、本発明の一態様の酸化物半導体は、キャリア
移動度が高く、かつ、スイッチング特性が高い、半導体特性が良好な材料として用いるこ
とができる。なお、領域C1は、インジウム亜鉛酸化物、ガリウム亜鉛酸化物、またはイ
ンジウムガリウム亜鉛酸化物である。したがって、領域C1は、キャリア移動度への寄与
と、スイッチング特性への寄与との双方がありうる。
【0353】
また、領域A1は、領域B1よりも半導体性が低く、且つ導電性が高い領域であると言
うこともできる。一方、領域B1は、領域A1よりも半導体性が高く、且つ導電性が低い
領域であるということもできる。ここで、半導体性が高いとは、バンドギャップが広い、
スイッチング特性が良好、i型半導体に近い、などと言い換えることができる。
【0354】
一例として、
図20に示すように、領域A1は、c軸方向において、粒状(クラスタと
もいう)に、複数存在する。なお、クラスタは、不規則に偏在していてもよい。また、複
数のクラスタは、重畳した、または連なった状態となる場合がある。例えば、一つのクラ
スタが、他のクラスタと、重畳した形状が連なり、領域A1がクラウド状に広がって観察
される場合がある。
【0355】
別言すると、領域A1に含まれるクラスタ(第1のクラスタともいう)は、領域B1に
含まれるクラスタ(第2のクラスタともいう)よりも半導体性が低く、且つ導電性が高い
、と言うこともできる。一方、領域B1に含まれるクラスタは、領域A1に含まれるクラ
スタよりも半導体性が高く、且つ導電性が低い領域であるということもできる。この構成
の場合、領域B1は、第2のクラスタを複数有し、複数の第2のクラスタが、それぞれ互
いに繋がる部分を有する。別言すると、領域A1が有する複数の第1のクラスタは、クラ
ウド状にそれぞれ互いに繋がる部分を有し、領域B1が有する複数の第2のクラスタは、
それぞれ互いに繋がる部分を有する。
【0356】
このように、本発明の一態様の複合酸化物半導体は、Inが高濃度の第1の領域(領域
A1)と、Inが低濃度の第2の領域(領域B1)と、有し、第1の領域と、第2の領域
とが、領域C1を介してクラウド状に繋がっている。あるいは、本発明の一態様の複合酸
化物半導体は、Inが高濃度に広がっている第1の領域と、Inが高濃度に広がっていな
い第2の領域と、を有し、第1の領域と、第2の領域とがクラウド状に繋がっている。
【0357】
図20に示すように、領域A1が互いに連結することで、領域A1が電流の経路となり
うる。これにより、酸化物半導体膜の導電性を高めることができ、これを用いたトランジ
スタの電界効果移動度を高めることができる。
【0358】
また、
図20に示す領域B1は、領域A1内に、点在しているとも言える。従って、領
域B1は、領域A1に立体的にはさまれている状態で存在しうる。換言すると、領域B1
は、領域A1に取り囲まれた状態で存在しうる。つまり、領域B1は、領域A1に内包さ
れている構造である。
【0359】
なお、領域A1が点在する割合は、複合酸化物半導体の作製条件、または組成により、
調節することができる。例えば、領域A1の割合が少ない複合酸化物半導体、または、領
域A1の割合が多い複合酸化物半導体を形成することができる。また、本発明の一態様の
複合酸化物半導体は、領域B1に対し、領域A1の割合が小さいとは限らない。領域A1
の割合が非常に大きい複合酸化物半導体では、観察する範囲により、領域A1内に領域B
1が形成されている場合もある。また、例えば、領域A1が形成する粒状の領域のサイズ
は、複合酸化物半導体の作製条件、または組成により、適宜調節することができる。
【0360】
また、領域A1、領域B1、及び領域C1は、それぞれ明確な領界が観察できない場合
がある。なお、領域A1、領域B1、領域C1のサイズは、エネルギー分散型X線分光法
(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscop
y)を用いた、EDXマッピングにて評価することができる。例えば、領域A1のクラス
タは、断面写真、または平面写真のEDXマッピングにおいて、クラスタの径が、0.5
nm以上10nm以下で観察される場合がある。なお、好ましくはクラスタの径が、1n
m以上2nm以下とする。
【0361】
このように、本発明の一態様の酸化物半導体は、領域A1と領域B1とが混合している
複合酸化物半導体であり、且つ領域A1の機能と、領域B1の機能とがそれぞれ異なり、
領域A1と領域B1とが相補的に機能している。
【0362】
一方で、例えば、領域A1と領域B1とが層状で積層された構成の場合、領域A1と領
域B1との間には相互作用がない、または相互作用が起きにくいため、領域A1の機能と
領域B1の機能とが、それぞれ独立に機能する場合がある。この場合、層状の領域A1に
よって、キャリア移動度を高くすることが出来たとしても、トランジスタのオフ電流が高
くなる場合がある。したがって、本発明の一態様の複合酸化物半導体とすることで、キャ
リア移動度が高い機能と、スイッチング特性が良好である機能と、を同時に兼ね備えるこ
とが出来る。これは、本発明の一態様の複合体酸化物半導体で得られる優れた効果である
。
【0363】
<4-4.複合酸化物半導体の原子数比>
次に、本発明の一態様の複合酸化物半導体が有する元素の原子数比について説明する。
【0364】
複合酸化物半導体において、例えば、領域A1が、In、元素M、およびZnを有する
場合に、各元素の原子数比は
図21に示す相図を用いて示すことができる。In、元素M
、およびZnの原子数比を、x、y、およびzを用いて、x:y:zと表す。ここで原子
数比は座標(x:y:z)として図中に表すことができる。なお、
図21には、酸素の原
子数比については記載しない。
【0365】
図21において、破線は、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):1
の原子数比(-1≦α≦1)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):
(1-α):2の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(
1-α):3の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1
-α):4の原子数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=(1+α):
(1-α):5の原子数比となるラインを表す。
【0366】
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比(β≧0)と
なるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:2:βの原子数比となるライン、[In
]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn
]=1:4:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:7:βの原
子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原子数比となるライン
、及び[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比となるラインを表す。
【0367】
また、
図21(A)(B)(C)に示す、[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の
原子数比またはその近傍値の酸化物半導体は、スピネル型の結晶構造となる傾向がある。
【0368】
図21で示す領域A2は、領域A1が有するインジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比
の好ましい範囲の一例について示している。なお、領域A2は、[In]:[M]:[Z
n]=(1+γ):0:(1-γ)の原子数比(-1≦γ≦1)となるライン上も含むも
のとする。
【0369】
図21で示す領域B2は、領域B1が有するインジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比
の好ましい範囲の一例について示している。なお、領域B2は、[In]:[M]:[Z
n]=4:2:3から4.1、およびその近傍値を含む。近傍値には、例えば、原子数比
が[In]:[M]:[Zn]=5:3:4が含まれる。また、領域B2は、[In]:
[M]:[Zn]=5:1:6、およびその近傍値を含む。
【0370】
領域A2は、Inの濃度が高いため、領域B2よりも、導電性が高くなり、キャリア移
動度(電界効果移動度)を高める機能を有する。したがって、領域A1を有する酸化物半
導体膜を用いたトランジスタのオン電流及びキャリア移動度を高めることができる。
【0371】
一方、領域B2は、Inの濃度が低いため、領域A2よりも、導電性が低く、リーク電
流を低減する機能を有する。したがって、領域B1を有する酸化物半導体膜を用いたトラ
ンジスタのオフ電流を低くすることができる。
【0372】
例えば、領域A1は、非単結晶であることが好ましい。なお、領域A1が結晶性を有す
る場合、領域A1が、インジウムでは、正方晶系となる傾向がある。また、領域A1が、
酸化インジウム([In]:[M]:[Zn]=x:0:0(x>0))では、ビックス
バイト型の結晶構造となる傾向がある。また、領域A1が、In-Zn酸化物([In]
:[M]:[Zn]=x:0:z(x>0、z>0))では、層状の結晶構造となる傾向
がある。
【0373】
また例えば、領域B1は、非単結晶であることが好ましい。また領域B1はCAAC-
OSを有することが好ましい。ただし、領域B1はCAAC-OSのみからなる必要はな
く、多結晶酸化物半導体、およびnc-OS等の領域を有していてもよい。
【0374】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な
結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こり
にくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって
低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化
物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有することで、複合酸化物半導体として
の物理的性質が安定するため、熱に強く、信頼性が高い複合酸化物半導体を提供すること
ができる。
【0375】
なお、酸化物半導体をスパッタリング装置にて成膜する場合、ターゲットの原子数比か
らずれた原子数比の膜が形成される。特に、成膜時の基板温度によっては、[Zn]にお
いて、ターゲットの原子数比よりも膜の原子数比が小さくなる場合がある。
【0376】
また、本発明の一態様である複合酸化物半導体の特性は、原子数比によって一義的に定
まらない。従って、図示する領域は、複合酸化物半導体が有する領域A1、および領域B
1が有する好ましい原子数比を示す領域であり、境界は厳密ではない。
【0377】
<4-5.複合酸化物半導体の作製方法>
ここで、
図20に示す複合酸化物半導体の作製方法の一例について説明する。本発明の
一態様の複合酸化物半導体は、スパッタリング装置を用いて形成することができる。
【0378】
[スパッタリング装置]
図22(A)は、スパッタリング装置が有する成膜室2501を説明する断面図であり
、
図22(B)は、スパッタリング装置が有するマグネットユニット2530a、及びマ
グネットユニット2530bの平面図である。
【0379】
図22(A)に示す成膜室2501は、ターゲットホルダ2520aと、ターゲットホ
ルダ2520bと、バッキングプレート2510aと、バッキングプレート2510bと
、ターゲット2502aと、ターゲット2502bと、部材2542と、基板ホルダ25
70と、を有する。なお、ターゲット2502aは、バッキングプレート2510a上に
配置される。また、バッキングプレート2510aは、ターゲットホルダ2520a上に
配置される。また、マグネットユニット2530aは、バッキングプレート2510aを
介してターゲット2502a下に配置される。また、ターゲット2502bは、バッキン
グプレート2510b上に配置される。また、バッキングプレート2510bは、ターゲ
ットホルダ2520b上に配置される。また、マグネットユニット2530bは、バッキ
ングプレート2510bを介してターゲット2502b下に配置される。
【0380】
図22(A)、および
図22(B)に示すように、マグネットユニット2530aは、
マグネット2530N1と、マグネット2530N2と、マグネット2530Sと、マグ
ネットホルダ2532と、を有する。なお、マグネットユニット2530aにおいて、マ
グネット2530N1、マグネット2530N2及びマグネット2530Sは、マグネッ
トホルダ2532上に配置される。また、マグネット2530N1及びマグネット253
0N2は、マグネット2530Sと間隔を空けて配置される。なお、マグネットユニット
2530bは、マグネットユニット2530aと同様の構造を有する。なお、成膜室25
01に基板2560を搬入する場合、基板2560は基板ホルダ2570に接して配置さ
れる。
【0381】
ターゲット2502a、バッキングプレート2510a及びターゲットホルダ2520
aと、ターゲット2502b、バッキングプレート2510b及びターゲットホルダ25
20bと、は部材2542によって離間されている。なお、部材2542は絶縁体である
ことが好ましい。ただし、部材2542が導電体または半導体であっても構わない。また
、部材2542が、導電体または半導体の表面を絶縁体で覆ったものであっても構わない
。
【0382】
ターゲットホルダ2520aとバッキングプレート2510aとは、ネジ(ボルトなど
)を用いて固定されており、等電位となる。また、ターゲットホルダ2520aは、バッ
キングプレート2510aを介してターゲット2502aを支持する機能を有する。また
、ターゲットホルダ2520bとバッキングプレート2510bとは、ネジ(ボルトなど
)を用いて固定されており、等電位となる。また、ターゲットホルダ2520bは、バッ
キングプレート2510bを介してターゲット2502bを支持する機能を有する。
【0383】
バッキングプレート2510aは、ターゲット2502aを固定する機能を有する。ま
た、バッキングプレート2510bは、ターゲット2502bを固定する機能を有する。
【0384】
なお、
図22(A)には、マグネットユニット2530aによって形成される磁力線2
580a、2580bが明示されている。
【0385】
また、
図22(B)に示すように、マグネットユニット2530aは、長方形または略
長方形のマグネット2530N1と、長方形または略長方形のマグネット2530N2と
、長方形または略長方形のマグネット2530Sと、がマグネットホルダ2532に固定
されている構成を有する。そして、マグネットユニット2530aを、
図22(B)に示
す矢印のように左右に揺動させることができる。例えば、マグネットユニット2530a
を、0.1Hz以上1kHz以下のビートで揺動させればよい。
【0386】
ターゲット2502a上の磁場は、マグネットユニット2530aの揺動とともに変化
する。磁場の強い領域は高密度プラズマ領域となるため、その近傍においてターゲット2
502aのスパッタリング現象が起こりやすい。これは、マグネットユニット2530b
についても同様である。
【0387】
<4-6.複合酸化物半導体の作製フロー>
次に、複合酸化物半導体の作製方法について説明する。
図23は、複合酸化物半導体の
作製方法を説明する工程フロー図である。
【0388】
図20に示す複合酸化物半導体は、少なくとも
図23に示す第1乃至第4の工程を経て
作製される。
【0389】
[第1の工程:成膜室に基板を配置する工程]
第1の工程は、成膜室に基板を配置する工程を有する(
図23ステップS102参照)
。
【0390】
第1の工程としては、例えば、
図22に示す成膜室2501が有する基板ホルダ257
0に基板2560を配置する。
【0391】
成膜時の基板2560の温度は、複合酸化物半導体の電気的な性質に影響する。基板温
度が高いほど、複合酸化物半導体の結晶性を高め、信頼性を高めることができる。一方、
基板温度が低いほど、複合酸化物半導体の結晶性を低くし、キャリア移動度を高めること
ができる。特に、成膜時の基板温度が低いほど、複合酸化物半導体を有するトランジスタ
において、低いゲート電圧(例えば0Vより大きく2V以下)における電界効果移動度の
向上が顕著となる。
【0392】
基板2560の温度としては、室温(25℃)以上200℃以下、好ましくは室温以上
170℃以下、より好ましくは室温以上130℃以下とすればよい。基板温度を上記範囲
とすることで、大面積のガラス基板(例えば、先に記載の第8世代乃至第10世代のガラ
ス基板)を用いる場合に好適である。特に、複合酸化物半導体の成膜時における基板温度
を室温、別言すると意図的に加熱しない状態とすることで、基板の撓みまたは歪みを抑制
することができるため好適である。
【0393】
また、基板ホルダ2570に冷却機構等を設け、基板2560を冷却する構成としても
よい。
【0394】
また、基板2560の温度を100℃以上130℃以下とすることにより、複合酸化物
半導体中の水を除去することができる。このように不純物である水を除去することで、電
界効果移動度の向上を図りながら、信頼性の向上を図ることができる。
【0395】
また、基板2560の温度を100℃以上130℃以下として水を除去することにより
、スパッタリング装置に、過剰な熱による歪みが生じることを防ぐことができる。これに
より、半導体装置の生産性向上を図ることができる。よって、生産性が安定するため、大
規模な生産装置を導入しやすいので、大面積の基板を用いた大型の表示装置を容易に製造
することができる。
【0396】
また、基板2560の温度を高くすることで、複合酸化物半導体中の水をより効果的に
除去することができるだけでなく、複合酸化物半導体の結晶性を高めることができる。例
えば基板2560の温度を80℃以上200℃以下、好ましくは100℃以上170℃以
下の温度とすることで、結晶性の高い複合酸化物半導体を成膜できる。
【0397】
[第2の工程:成膜室にガスを導入する工程]
第2の工程は、成膜室にガスを導入する工程を有する(
図23ステップS202参照)
。
【0398】
第2の工程としては、例えば、
図22に示す成膜室2501にガスを導入する。当該ガ
スとしては、アルゴンガス及び酸素ガスのいずれか一方または双方を導入すればよい。な
お、アルゴンガスに代えてヘリウム、キセノン、クリプトン等の不活性ガスを用いてもよ
い。
【0399】
酸素ガスを用いて複合酸化物半導体を成膜する際の酸素流量比としては、以下の傾向を
示す。酸素流量比が大きいほど、複合酸化物半導体の結晶性を高め、信頼性を高めること
ができる。一方、酸素流量比が小さいほど、複合酸化物半導体の結晶性を低くし、キャリ
ア移動度を高めることができる。特に、酸素流量比が小さいほど、複合酸化物半導体を有
するトランジスタにおいて、低いゲート電圧(例えば0Vより大きく2V以下の範囲)に
おける電界効果移動度の向上が顕著となる。
【0400】
酸素流量比は、複合酸化物半導体の用途に応じた好ましい特性を得るために、0%以上
100%以下の範囲で適宜設定することができる。
【0401】
例えば、電界効果移動度の高いトランジスタの半導体層に用いる場合には、複合酸化物
半導体の成膜時における酸素流量比として、0%以上30%以下、好ましくは5%以上3
0%以下、さらに好ましくは7%以上15%以下とする。
【0402】
また、高い電界効果移動度と、高い信頼性が両立したトランジスタを得るためには、複
合酸化物半導体の成膜時における酸素流量比を30%より大きく70%未満、好ましくは
30%より大きく50%以下とする。または、複合酸化物半導体の成膜時における酸素流
量比を10%以上50%以下、好ましくは30%より大きく50%以下とする。
【0403】
また、高い信頼性を有するトランジスタを得るためには、複合酸化物半導体の成膜時に
おける酸素流量比を70%以上100%以下とする。
【0404】
このように、成膜時の基板温度と酸素流量比を制御することにより、所望の電気特性を
実現する複合酸化物半導体を成膜することができる。例えば、基板温度を下げる(上げる
)ことと、酸素流量比を下げる(上げる)ことは、それぞれ電界効果移動度に対する寄与
が同等である場合がある。したがって、例えば装置上の制約から、基板温度を十分に上げ
ることができない場合であっても、酸素流量比を高めることで、同等の電界効果移動度を
有するトランジスタを実現することもできる。
【0405】
また、実施の形態1に示す方法により酸化物半導体膜中の不純物の低減を図ることによ
り、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0406】
[第3の工程:ターゲットに電圧を印加する工程]
第3の工程は、ターゲットに電圧を印加する工程を有する(
図23ステップS302参
照)。
【0407】
第3の工程としては、例えば、
図22に示すターゲットホルダ2520a及びターゲッ
トホルダ2520bに電圧を印加する。一例としては、ターゲットホルダ2520aに接
続する端子V1に印加される電位を、基板ホルダ2570に接続する端子V2に印加され
る電位よりも低い電位とする。また、ターゲットホルダ2520bに接続する端子V4に
印加される電位を、基板ホルダ2570に接続する端子V2よりも低い電位とする。また
、基板ホルダ2570に接続する端子V2に印加される電位を、接地電位とする。また、
マグネットホルダ2532に接続する端子V3に印加される電位を、接地電位とする。
【0408】
なお、端子V1、端子V2、端子V3、及び端子V4に印加される電位は上記の電位に
限定されない。また、ターゲットホルダ2520、基板ホルダ2570、マグネットホル
ダ2532の全てに電位が印加されなくても構わない。例えば、基板ホルダ2570が電
気的にフローティング状態であってもよい。なお、端子V1には、印加する電位の制御が
可能な電源が電気的に接続されているものとする。電源には、DC電源、AC電源、また
はRF電源を用いればよい。
【0409】
また、ターゲット2502a、及びターゲット2502bとしては、インジウム、元素
M(MはGa、Al、Y、またはSn)、亜鉛、及び酸素を有するターゲットを用いると
好ましい。ターゲット2502a、及びターゲット2502bの一例としては、In-G
a-Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])、I
n-Ga-Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=5:1:7[原子数比])な
どを用いることができる。以下では、In-Ga-Zn金属酸化物ターゲット(In:G
a:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いる場合について説明する。
【0410】
[第4の工程:基板上に複合酸化物半導体を堆積する工程]
第4の工程は、ターゲットから基板上に複合酸化物半導体を堆積する工程を有する(図
23ステップS402参照)。
【0411】
第4の工程としては、例えば、
図22に示す成膜室2501中で、アルゴンガスまたは
酸素ガスが電離し、陽イオンと電子とに分かれてプラズマを形成する。その後、プラズマ
中の陽イオンは、ターゲットホルダ2520a、2520bに印加された電位によって、
ターゲット2502a、2502bに向けて加速される。陽イオンがIn-Ga-Zn金
属酸化物ターゲットに衝突することで、スパッタ粒子が生成され、基板2560にスパッ
タ粒子が堆積する。
【0412】
なお、ターゲット2502a、2502bとして、原子数比がIn:Ga:Zn=4:
2:4.1または原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:7のIn-Ga-Zn金属酸化
物ターゲットを用いると、ターゲット中に組成の異なる複数の結晶粒を有している場合が
ある。例えば、当該複数の結晶粒は、径が10μm以下である場合が多い。また、例えば
、In-Ga-Zn金属酸化物ターゲット中に、Inの割合が多い結晶粒を含む場合に、
先に説明の領域A1が形成される割合が増える場合がある。
【0413】
<4-7.成膜モデル>
次に、第4の工程において、
図24(A)(B)(C)に示す成膜モデルを考えことが
できる。
【0414】
図24(A)(B)(C)は、
図22に示すターゲット2502a近傍の断面模式図で
ある。なお、
図24(A)は使用前のターゲットの状態を表し、
図24(B)は成膜前の
ターゲットの状態を表し、
図24(C)は、成膜中のターゲットの状態を表す。また、図
24(A)(B)(C)には、ターゲット2502a、プラズマ2190、陽イオン21
92、スパッタ粒子2504a、2506a等が明示されている。
【0415】
図24(A)においては、ターゲット2502aの表面が比較的平坦であり、且つ組成
(例えば、In、Ga及びZnの組成)が一様である。一方、
図24(B)においては、
事前に行うスパッタリング処理等によって、ターゲット2502aの表面に凹凸が形成さ
れ、且つ組成に偏析が生じている。当該凹凸及び当該偏析としては、事前に行うスパッタ
リング処理でのプラズマ(例えばArプラズマなど)によって生じうる。なお、
図24(
B)には、偏析領域2504、及び偏析領域2506を示している。ここでは、偏析領域
2504がGa及びZnを多く含む領域(Ga,Zn-Rich領域)とし、偏析領域2
506がInを多く含む領域(In-Rich領域)とする。なお、Gaが多く含まれる
偏析領域2504が形成される理由としては、GaはInよりも融点の低い材料であるた
め、プラズマ処理中にターゲット2502aが受ける熱により、その一部が溶解し、凝集
することで偏析領域2504が形成されるためと考えられる。
【0416】
[第1のステップ]
図24(C)では、アルゴンガスまたは酸素ガスが電離し、陽イオン2192と電子(
図示しない)とに分かれてプラズマ2190を形成する。その後、プラズマ2190中の
陽イオン2192は、ターゲット2502a(ここではIn-Ga-Zn酸化物ターゲッ
ト)に向けて加速する。陽イオン2192がIn-Ga-Zn酸化物ターゲットに衝突す
ることで、スパッタ粒子2504a、2506aが生成され、In-Ga-Zn酸化物タ
ーゲットから、スパッタ粒子2504a、2506aが弾き出される。なお、スパッタ粒
子2504aは、偏析領域2504から弾き出されるため、Ga,Zn-Richなクラ
スタを形成している場合がある。また、スパッタ粒子2506aは、偏析領域2506か
ら弾き出されるため、In-Richなクラスタを形成している場合がある。
【0417】
また、In-Ga-Zn酸化物ターゲットにおいては、最初に偏析領域2504からス
パッタ粒子2504aが優先的にスパッタリングされると考えられる。これは、陽イオン
2192がIn-Ga-Zn酸化物ターゲットに衝突することで、相対原子質量が、In
よりもGa及びZnの方が軽いため、In-Ga-Zn酸化物ターゲットから優先的に弾
き出されるためである。弾き出されたスパッタ粒子2504aが基板上に堆積することで
、
図20に示す領域B1が形成される。
【0418】
[第2のステップ]
続いて、
図24(C)に示すように、偏析領域2506からスパッタ粒子2506aが
スパッタリングされる。基板上に先に成膜された領域B1上にスパッタ粒子2506aが
衝突し、
図20に示す領域A1が形成される。
【0419】
また、
図24(C)に示すように、ターゲット2502aは、成膜中にはスパッタされ
続けるため、偏析領域2504の生成と、偏析領域2504の消滅とが、断続的に発生す
る。
【0420】
上記第1のステップと、第2のステップとの成膜モデルを繰り返すことで、
図20に示
す本発明の一態様の複合酸化物半導体を得ることができる。
【0421】
すなわち、In-Richな偏析領域2506と、Ga,Zn-Richな偏析領域2
504から、個別にスパッタ粒子(2504a及び2506a)が、それぞれ飛び出して
基板上に堆積する。基板上では、In-Richな領域同士がクラウド状に繋がることで
図19(A)(B)に示すような、本発明の一態様の複合酸化物半導体が形成されうる。
複合酸化物半導体の膜中で、In-Richな領域同士がクラウド状に繋がることで、当
該複合酸化物半導体を用いたトランジスタは、高いオン電流(Ion)、及び高い電界効
果移動度(μFE)を有する。
【0422】
このように、高いオン電流(Ion)及び高い電界効果移動度(μFE)を満たすトラ
ンジスタにおいては、Inが重要であり、その他の金属(例えば、Gaなど)は必ずしも
必要ない。
【0423】
なお、上記においては、アルゴンガスを用いて、複合酸化物半導体を成膜するモデルに
ついて例示している。この場合、複合酸化物半導体中に酸素欠損が多く含まれうる。複合
酸化物半導体中に酸素欠損が多く含まれると、当該複合酸化物半導体中に浅い欠陥準位(
sDOSともいう)が形成される場合がある。複合酸化物半導体中にsDOSが形成され
ると、当該sDOSがキャリアトラップとなり、オン電流及び電界効果移動度が低下して
しまう。
【0424】
したがって、アルゴンガスを用いて複合酸化物半導体を形成した場合においては、複合
酸化物半導体の形成後に、複合酸化物半導体中に酸素を供給することによって、複合酸化
物半導体中の酸素欠損を補填しsDOSを低減すると好ましい。
【0425】
上記酸素の供給方法としては、例えば、複合酸化物半導体後に、酸素を含む雰囲気下で
熱処理を行う方法、または酸素を含む雰囲気下でプラズマ処理を行う方法などが挙げられ
る。あるいは、複合酸化物半導体に接する絶縁膜、または複合酸化物半導体の近傍の絶縁
膜に過剰酸素を有する構成とすればよい。絶縁膜が過剰酸素を有する構成については、実
施の形態2を参照すればよい。
【0426】
なお、ここではスパッタリング法による作製方法について説明したが、これに限定され
ず、パルスレーザー堆積(PLD)法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法、熱CV
D(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic
Layer Deposition)法、真空蒸着法などを用いてもよい。熱CVD法
の例としては、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapo
r Deposition)法が挙げられる。
【0427】
<4-8.酸化物半導体膜を有するトランジスタ>
次に、酸化物半導体膜をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0428】
なお、上記複合酸化物半導体をトランジスタに用いることで、キャリア移動度が高く、
かつ、スイッチング特性が高いトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高
いトランジスタを実現することができる。
【0429】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体膜を用いることが好ましい
。例えば、酸化物半導体膜は、キャリア密度が8×1011/cm3未満、好ましくは1
×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10
-9/cm3以上とすればよい。
【0430】
本発明の一態様の酸化物半導体膜は、先の説明の通り、高純度真性または実質的に高純
度真性である。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア
発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。また、高純度真性または実
質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度
も低くなる場合がある。
【0431】
また、酸化物半導体膜のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間
が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の
高い酸化物半導体にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる
場合がある。
【0432】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体膜中の不純物濃
度を低減することが有効である。また、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減するために
は、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素
、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0433】
ここで、酸化物半導体膜中における各不純物の影響について説明する。
【0434】
酸化物半導体膜において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸
化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや
炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析
法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)に
より得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017
atoms/cm3以下とする。
【0435】
また、酸化物半導体膜にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位
を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金
属が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやす
い。このため、酸化物半導体膜中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減す
ることが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体膜中のアルカリ金
属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは
2×1016atoms/cm3以下とする。
【0436】
また、酸化物半導体膜において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャ
リア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導
体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体に
おいて、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒
素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1
018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、
さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
【0437】
また、酸化物半導体膜に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になる
ため、酸素欠損(Vo)を形成する場合がある。該酸素欠損(Vo)に水素が入ることで
、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する
酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれてい
る酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸
化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半
導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未
満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018at
oms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
【0438】
なお、酸化物半導体膜中の酸素欠損(Vo)は、酸素を酸化物半導体膜に導入すること
で、低減することができる。つまり、酸化物半導体膜中の酸素欠損(Vo)に、酸素が補
填されることで、酸素欠損(Vo)は消失する。従って、酸化物半導体膜中に、酸素を拡
散させることで、トランジスタの酸素欠損(Vo)を低減し、信頼性を向上させることが
できる。
【0439】
なお、酸素を酸化物半導体膜に導入する方法として、例えば、酸化物半導体に接して、
化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を設けることができる。つま
り、酸化物には、化学量論的組成よりも酸素が過剰に存在する領域(以下、過剰酸素領域
ともいう)が形成されていることが好ましい。特に、トランジスタに酸化物半導体膜を用
いる場合、トランジスタ近傍の下地膜や、層間膜などに、過剰酸素領域を有する酸化物を
設けることで、トランジスタの酸素欠損を低減し、信頼性を向上させることができる。
【0440】
不純物が十分に低減された酸化物半導体膜をトランジスタのチャネル形成領域に用いる
ことで、安定した電気特性を付与することができる。
【0441】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0442】
(実施の形態5)
本実施の形態においては、先の実施の形態で例示したトランジスタを有する表示装置の
一例について、
図25乃至
図27を用いて以下説明を行う。
【0443】
図25は、表示装置の一例を示す上面図である。
図25に示す表示装置700は、第1
の基板701上に設けられた画素部702と、第1の基板701に設けられたソースドラ
イバ回路部704及びゲートドライバ回路部706と、画素部702、ソースドライバ回
路部704、及びゲートドライバ回路部706を囲むように配置されるシール材712と
、第1の基板701に対向するように設けられる第2の基板705と、を有する。なお、
第1の基板701と第2の基板705は、シール材712によって封止されている。すな
わち、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706は
、第1の基板701とシール材712と第2の基板705によって封止されている。なお
、
図25には図示しないが、第1の基板701と第2の基板705の間には表示素子が設
けられる。
【0444】
また、表示装置700は、第1の基板701上のシール材712によって囲まれている
領域とは異なる領域に、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回
路部706、及びゲートドライバ回路部706と、それぞれ電気的に接続されるFPC端
子部708(FPC:Flexible printed circuit)が設けられ
る。また、FPC端子部708には、FPC716が接続され、FPC716によって画
素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706に各種信号
等が供給される。また、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回
路部706、及びFPC端子部708には、信号線710が各々接続されている。FPC
716により供給される各種信号等は、信号線710を介して、画素部702、ソースド
ライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708に与えられ
る。
【0445】
また、表示装置700にゲートドライバ回路部706を複数設けてもよい。また、表示
装置700としては、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を
画素部702と同じ第1の基板701に形成している例を示しているが、この構成に限定
されない。例えば、ゲートドライバ回路部706のみを第1の基板701に形成しても良
い、またはソースドライバ回路部704のみを第1の基板701に形成しても良い。この
場合、ソースドライバ回路またはゲートドライバ回路等が形成された基板(例えば、単結
晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板701に形成す
る構成としても良い。なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるも
のではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法など
を用いることができる。
【0446】
また、表示装置700が有する画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲート
ドライバ回路部706は、複数のトランジスタを有しており、本発明の一態様の半導体装
置であるトランジスタを適用することができる。
【0447】
また、表示装置700は、様々な素子を有することが出来る。該素子の一例としては、
例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有
機EL素子、無機EL素子、LEDなど)、発光トランジスタ素子(電流に応じて発光す
るトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク素子、電気泳動素子、エレクト
ロウェッティング素子、プラズマディスプレイパネル(PDP)、MEMS(マイクロ・
エレクトロ・メカニカル・システム)ディスプレイ(例えば、グレーティングライトバル
ブ(GLV)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、デジタル・マイクロ・シャ
ッター(DMS)素子、インターフェロメトリック・モジュレーション(IMOD)素子
など)、圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。
【0448】
また、EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子
放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FE
D)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conductio
n Electron-emitter Display)などがある。液晶素子を用い
た表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶
ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプ
レイ)などがある。電子インク素子又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、
電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを
実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するよ
うにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを
有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路
を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
【0449】
なお、表示装置700における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式
等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、R
GB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、Rの画素とGの
画素とBの画素とW(白)の画素の四画素から構成されてもよい。または、ペンタイル配
列のように、RGBのうちの2色分で一つの色要素を構成し、色要素によって、異なる2
色を選択して構成してもよい。またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以
上追加してもよい。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよ
い。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ
表示の表示装置に適用することもできる。
【0450】
また、バックライト(有機EL素子、無機EL素子、LED、蛍光灯など)に白色発光
(W)を用いて表示装置をフルカラー表示させるために、着色層(カラーフィルタともい
う。)を用いてもよい。着色層は、例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B
)、イエロー(Y)などを適宜組み合わせて用いることができる。着色層を用いることで
、着色層を用いない場合と比べて色の再現性を高くすることができる。このとき、着色層
を有する領域と、着色層を有さない領域と、を配置することによって、着色層を有さない
領域における白色光を直接表示に利用しても構わない。一部に着色層を有さない領域を配
置することで、明るい表示の際に、着色層による輝度の低下を少なくでき、消費電力を2
割から3割程度低減できる場合がある。ただし、有機EL素子や無機EL素子などの自発
光素子を用いてフルカラー表示する場合、R、G、B、Y、Wを、それぞれの発光色を有
する素子から発光させても構わない。自発光素子を用いることで、着色層を用いた場合よ
りも、さらに消費電力を低減できる場合がある。
【0451】
また、カラー化方式としては、上述の白色発光からの発光の一部をカラーフィルタを通
すことで赤色、緑色、青色に変換する方式(カラーフィルタ方式)の他、赤色、緑色、青
色の発光をそれぞれ用いる方式(3色方式)、または青色発光からの発光の一部を赤色や
緑色に変換する方式(色変換方式、量子ドット方式)を適用してもよい。
【0452】
本実施の形態においては、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について
、
図26及び
図27を用いて説明する。なお、
図26は、
図25に示す一点鎖線Q-Rに
おける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、
図27は、図
25に示す一点鎖線Q-Rにおける断面図であり、表示素子としてEL素子を用いた構成
である。
【0453】
まず、
図26及び
図27に示す共通部分について最初に説明し、次に異なる部分につい
て以下説明する。
【0454】
<5-1.表示装置の共通部分に関する説明>
図26及び
図27に示す表示装置700は、引き回し配線部711と、画素部702と
、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。また、引き回し配
線部711は、信号線710を有する。また、画素部702は、トランジスタ750及び
容量素子790を有する。また、ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を
有する。
【0455】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、先に示すトランジスタ100Dと同様
の構成である。なお、トランジスタ750及びトランジスタ752の構成については、先
の実施の形態に示す、その他のトランジスタを用いてもよい。
【0456】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物
半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ電流を低くすることができる。よって、画像
信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長
く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電
力を抑制する効果を奏する。
【0457】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるた
め、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表
示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するド
ライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路とし
て、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置
の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトラン
ジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0458】
容量素子790は、トランジスタ750が有する第1のゲート電極と機能する導電膜と
同一の導電膜を加工する工程を経て形成される下部電極と、トランジスタ750が有する
ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と同一の導電膜を加工する工程を経て
形成される上部電極と、を有する。また、下部電極と上部電極との間には、トランジスタ
750が有する第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜と同一の絶縁膜を形成する工程
を経て形成される絶縁膜が設けられる。すなわち、容量素子790は、一対の電極間に誘
電体膜として機能する絶縁膜が挟持された積層型の構造である。
【0459】
また、
図26及び
図27において、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容
量素子790上に平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0460】
平坦化絶縁膜770としては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリイミドアミド樹脂
、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性を有する有機材料
を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで
、平坦化絶縁膜770を形成してもよい。また、平坦化絶縁膜770を設けない構成とし
てもよい。
【0461】
また、
図26及び
図27においては、画素部702が有するトランジスタ750と、ソ
ースドライバ回路部704が有するトランジスタ752と、を同じ構造のトランジスタを
用いる構成について例示したが、これに限定されない。例えば、画素部702と、ソース
ドライバ回路部704とは、異なるトランジスタを用いてもよい。具体的には、画素部7
02にスタガ型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704に実施の形態1に示
す逆スタガ型のトランジスタを用いる構成、あるいは画素部702に実施の形態1に示す
逆スタガ型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704にスタガ型のトランジス
タを用いる構成などが挙げられる。なお、上記のソースドライバ回路部704を、ゲート
ドライバ回路部と読み替えてもよい。
【0462】
また、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極と
して機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。信号線710として、例えば、銅元素
を含む材料を用いた場合、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可
能となる。
【0463】
また、FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC71
6を有する。なお、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びド
レイン電極として機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。また、接続電極760は
、FPC716が有する端子と異方性導電膜780を介して、電気的に接続される。
【0464】
また、第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板を用いるこ
とができる。また、第1の基板701及び第2の基板705として、可撓性を有する基板
を用いてもよい。該可撓性を有する基板としては、例えばプラスチック基板等が挙げられ
る。
【0465】
また、第1の基板701と第2の基板705の間には、構造体778が設けられる。構
造体778は、絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、
第1の基板701と第2の基板705の間の距離(セルギャップ)を制御するために設け
られる。なお、構造体778として、球状のスペーサを用いていても良い。
【0466】
また、第2の基板705側には、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜738と、
カラーフィルタとして機能する着色膜736と、遮光膜738及び着色膜736に接する
絶縁膜734が設けられる。
【0467】
<5-2.表示装置が有する入出力装置の構成例>
また、
図26及び
図27に示す表示装置700には入出力装置として、タッチパネル7
91が設けられている。なお、表示装置700にタッチパネル791を設けない構成とし
てもよい。
【0468】
図26及び
図27に示すタッチパネル791は、第2の基板705と着色膜736との
間に設けられる、所謂インセル型のタッチパネルである。タッチパネル791は、着色膜
736を形成する前に、第2の基板705側に形成すればよい。
【0469】
なお、タッチパネル791は、遮光膜738と、絶縁膜792と、電極793と、電極
794と、絶縁膜795と、電極796と、絶縁膜797と、を有する。例えば、指やス
タイラスなどの被検知体が近接することで、電極793と、電極794との間の相互容量
の変化を検知することができる。
【0470】
また、
図26及び
図27に示すトランジスタ750の上方においては、電極793と、
電極794との交差部を明示している。電極796は、絶縁膜795に設けられた開口部
を介して、電極794を挟む2つの電極793と電気的に接続されている。なお、
図26
及び
図27においては、電極796が設けられる領域を画素部702に設ける構成を例示
したが、これに限定されず、例えば、ソースドライバ回路部704に形成してもよい。
【0471】
電極793及び電極794は、遮光膜738と重なる領域に設けられる。また、
図26
に示すように、電極793は、発光素子782と重ならないように設けられると好ましい
。また、
図27に示すように、電極793は、液晶素子775と重ならないように設けら
れると好ましい。別言すると、電極793は、発光素子782及び液晶素子775と重な
る領域に開口部を有する。すなわち、電極793はメッシュ形状を有する。このような構
成とすることで、電極793は、発光素子782が射出する光を遮らない構成とすること
ができる。または、電極793は、液晶素子775を透過する光を遮らない構成とするこ
とができる。したがって、タッチパネル791を配置することによる輝度の低下が極めて
少ないため、視認性が高く、且つ消費電力が低減された表示装置を実現できる。なお、電
極794も同様の構成とすればよい。
【0472】
また、電極793及び電極794が発光素子782と重ならないため、電極793及び
電極794には、可視光の透過率が低い金属材料を用いることができる。または、電極7
93及び電極794が液晶素子775と重ならないため、電極793及び電極794には
、可視光の透過率が低い金属材料を用いることができる。
【0473】
そのため、可視光の透過率が高い酸化物材料を用いた電極と比較して、電極793及び
電極794の抵抗を低くすることが可能となり、タッチパネルのセンサ感度を向上させる
ことができる。
【0474】
例えば、電極793、794、796には、導電性のナノワイヤを用いてもよい。当該
ナノワイヤは、直径の平均値が1nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上50n
m以下、より好ましくは5nm以上25nm以下の大きさとすればよい。また、上記ナノ
ワイヤとしては、Agナノワイヤ、Cuナノワイヤ、またはAlナノワイヤ等の金属ナノ
ワイヤ、あるいは、カーボンナノチューブなどを用いればよい。例えば、電極664、6
65、667のいずれか一つあるいは全部にAgナノワイヤを用いる場合、可視光におけ
る光透過率を89%以上、シート抵抗値を40Ω/□以上100Ω/□以下とすることが
できる。
【0475】
また、
図26及び
図27においては、インセル型のタッチパネルの構成について例示し
たが、これに限定されない。例えば、表示装置700上に形成する、所謂オンセル型のタ
ッチパネルや、表示装置700に貼り合わせて用いる、所謂アウトセル型のタッチパネル
としてもよい。このように、本発明の一態様の表示装置700は、様々な形態のタッチパ
ネルと組み合わせて用いることができる。
【0476】
<5-3.発光素子を用いる表示装置>
図26に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電膜
772、EL層786、及び導電膜788を有する。
図26に示す表示装置700は、発
光素子782が有するEL層786が発光することによって、画像を表示することができ
る。なお、EL層786は、有機化合物、または量子ドットなどの無機化合物を有する。
【0477】
有機化合物に用いることのできる材料としては、蛍光性材料または燐光性材料などが挙
げられる。また、量子ドットに用いることのできる材料としては、コロイド状量子ドット
材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料、
などが挙げられる。また、12族と16族、13族と15族、または14族と16族の元
素グループを含む材料を用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、
亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(P
b)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子
ドット材料を用いてもよい。
【0478】
また、
図26に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770及び導電膜772上に絶
縁膜730が設けられる。絶縁膜730は、導電膜772の一部を覆う。なお、発光素子
782はトップエミッション構造である。したがって、導電膜788は透光性を有し、E
L層786が発する光を透過する。なお、本実施の形態においては、トップエミッション
構造について、例示するが、これに限定されない。例えば、導電膜772側に光を射出す
るボトムエミッション構造や、導電膜772及び導電膜788の双方に光を射出するデュ
アルエミッション構造にも適用することができる。
【0479】
また、発光素子782と重なる位置に、着色膜736が設けられ、絶縁膜730と重な
る位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に遮光膜738が設け
られている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。ま
た、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、
図26
に示す表示装置700においては、着色膜736を設ける構成について例示したが、これ
に限定されない。例えば、EL層786を塗り分けにより形成する場合においては、着色
膜736を設けない構成としてもよい。
【0480】
<5-4.液晶素子を用いる表示装置の構成例>
図27に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電膜
772、絶縁膜773、導電膜774、及び液晶層776を有する。導電膜774は、共
通電極(コモン電極ともいう)としての機能を有し、絶縁膜773を介して、導電膜77
2と導電膜774との間に生じる電界によって、液晶層776の配向状態を制御すること
ができる。
図27に示す表示装置700は、導電膜772と導電膜774に印加される電
圧によって、液晶層776の配向状態が変わることによって光の透過、非透過が制御され
画像を表示することができる。
【0481】
また、導電膜772は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極とし
て機能する導電膜と電気的に接続される。導電膜772は、平坦化絶縁膜770上に形成
され画素電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。
【0482】
導電膜772としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反
射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、
例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材
料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム
、または銀を含む材料を用いるとよい。本実施の形態においては、導電膜772として、
可視光において、反射性のある導電膜を用いる。
【0483】
なお、
図27においては、導電膜772をトランジスタ750のドレイン電極として機
能する導電膜に接続する構成について例示したが、これに限定されない。例えば、接続電
極として機能する導電膜を間に挟んでトランジスタ750のドレイン電極として機能する
導電膜と電気的に接続させる構成としてもよい。
【0484】
また、
図27において図示しないが、液晶層776と接する位置に、配向膜を設ける構
成としてもよい。また、
図27において図示しないが、偏光部材、位相差部材、反射防止
部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位相差
基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを
用いてもよい。
【0485】
表示素子として液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液
晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これら
の液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイ
ラルネマチック相、等方相等を示す。
【0486】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよ
い。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリ
ック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発
現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組
成物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速
度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要である。また配向膜を設けなくてもよ
いのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を
防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。
また、ブルー相を示す液晶材料は、視野角依存性が小さい。
【0487】
また、表示素子として液晶素子を用いる場合、TN(Twisted Nematic
)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Frin
ge Field Switching)モード、ASM(Axially Symme
tric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optical
Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroe
lectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerr
oelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる
。
【0488】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用し
た透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが
、例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment
)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モー
ド、ASVモードなどを用いることができる。
【0489】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0490】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いた表示装置の表示部等に用いる
ことのできる表示パネルの一例について、
図28及び
図29を用いて説明する。以下で例
示する表示パネルは、反射型の液晶素子と、発光素子との双方を有し、透過モードと反射
モードの両方の表示を行うことのできる、表示パネルである。
【0491】
<6-1.表示パネルの構成例>
図28は、本発明の一態様の表示パネル600の斜視概略図である。表示パネル600
は、基板651と基板661とが貼り合わされた構成を有する。
図28では、基板661
を破線で明示している。
【0492】
表示パネル600は、表示部662、回路659、配線666等を有する。基板651
には、例えば回路659、配線666、及び画素電極として機能する導電膜663等が設
けられる。また
図28では基板651上にIC673とFPC672が実装されている例
を示している。そのため、
図28に示す構成は、表示パネル600とFPC672及びI
C673を有する表示モジュールと言うこともできる。
【0493】
回路659は、例えば走査線駆動回路として機能する回路を用いることができる。
【0494】
配線666は、表示部や回路659に信号や電力を供給する機能を有する。当該信号や
電力は、FPC672を介して外部、またはIC673から配線666に入力される。
【0495】
また、
図28では、COG(Chip On Glass)方式等により、基板651
にIC673が設けられている例を示している。IC673は、例えば走査線駆動回路、
または信号線駆動回路などとしての機能を有するICを適用できる。なお表示パネル60
0が走査線駆動回路及び信号線駆動回路として機能する回路を備える場合や、走査線駆動
回路や信号線駆動回路として機能する回路を外部に設け、FPC672を介して表示パネ
ル600を駆動するための信号を入力する場合などでは、IC673を設けない構成とし
てもよい。また、IC673を、COF(Chip On Film)方式等により、F
PC672に実装してもよい。
【0496】
図28には、表示部662の一部の拡大図を示している。表示部662には、複数の表
示素子が有する導電膜663がマトリクス状に配置されている。導電膜663は、可視光
を反射する機能を有し、後述する液晶素子640の反射電極として機能する。
【0497】
また、
図28に示すように、導電膜663は開口を有する。さらに導電膜663よりも
基板651側に、発光素子660を有する。発光素子660からの光は、導電膜663の
開口を介して基板661側に射出される。
【0498】
<6-2.断面構成例>
図29に、
図28で例示した表示パネルの、FPC672を含む領域の一部、回路65
9を含む領域の一部、及び表示部662を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面
の一例を示す。
【0499】
表示パネルは、基板651と基板661の間に、絶縁膜620を有する。また基板65
1と絶縁膜620の間に、発光素子660、トランジスタ601、トランジスタ605、
トランジスタ606、着色層634等を有する。また絶縁膜620と基板661の間に、
液晶素子640、着色層631等を有する。また基板661と絶縁膜620は接着層64
1を介して接着され、基板651と絶縁膜620は接着層642を介して接着されている
。
【0500】
トランジスタ606は、液晶素子640と電気的に接続し、トランジスタ605は、発
光素子660と電気的に接続する。トランジスタ605とトランジスタ606は、いずれ
も絶縁膜620の基板651側の面上に形成されているため、これらを同一の工程を用い
て作製することができる。
【0501】
基板661には、着色層631、遮光膜632、絶縁膜621、及び液晶素子640の
共通電極として機能する導電膜613、配向膜633b、絶縁膜617等が設けられてい
る。絶縁膜617は、液晶素子640のセルギャップを保持するためのスペーサとして機
能する。
【0502】
絶縁膜620の基板651側には、絶縁膜681、絶縁膜682、絶縁膜683、絶縁
膜684、絶縁膜685等の絶縁層が設けられている。絶縁膜681は、その一部が各ト
ランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁膜682、絶縁膜683、及び絶縁膜6
84は、各トランジスタを覆って設けられている。また絶縁膜684を覆って絶縁膜68
5が設けられている。絶縁膜684及び絶縁膜685は、平坦化層としての機能を有する
。なお、ここではトランジスタ等を覆う絶縁層として、絶縁膜682、絶縁膜683、絶
縁膜684の3層を有する場合について示しているが、これに限られず4層以上であって
もよいし、単層、または2層であってもよい。また平坦化層として機能する絶縁膜684
は、不要であれば設けなくてもよい。
【0503】
また、トランジスタ601、トランジスタ605、及びトランジスタ606は、一部が
ゲートとして機能する導電膜654、一部がソース又はドレインとして機能する導電膜6
52、半導体膜653を有する。ここでは、同一の導電膜を加工して得られる複数の層に
、同じハッチングパターンを付している。
【0504】
液晶素子640は反射型の液晶素子である。液晶素子640は、導電膜635、液晶層
612、導電膜613が積層された積層構造を有する。また導電膜635の基板651側
に接して、可視光を反射する導電膜663が設けられている。導電膜663は開口655
を有する。また導電膜635及び導電膜613は可視光を透過する材料を含む。また液晶
層612と導電膜635の間に配向膜633aが設けられ、液晶層612と導電膜613
の間に配向膜633bが設けられている。また、基板661の外側の面には、偏光板65
6を有する。
【0505】
液晶素子640において、導電膜663は可視光を反射する機能を有し、導電膜613
は可視光を透過する機能を有する。基板661側から入射した光は、偏光板656により
偏光され、導電膜613、液晶層612を透過し、導電膜663で反射する。そして液晶
層612及び導電膜613を再度透過して、偏光板656に達する。このとき、導電膜6
63と導電膜613の間に与える電圧によって液晶の配向を制御し、光の光学変調を制御
することができる。すなわち、偏光板656を介して射出される光の強度を制御すること
ができる。また光は着色層631によって特定の波長領域以外の光が吸収されることによ
り、取り出される光は、例えば赤色を呈する光となる。
【0506】
発光素子660は、ボトムエミッション型の発光素子である。発光素子660は、絶縁
膜620側から導電膜643、EL層644、及び導電膜645bの順に積層された積層
構造を有する。また導電膜645bを覆って導電膜645aが設けられている。導電膜6
45bは可視光を反射する材料を含み、導電膜643及び導電膜645aは可視光を透過
する材料を含む。発光素子660が発する光は、着色層634、絶縁膜620、開口65
5、導電膜613等を介して、基板661側に射出される。
【0507】
ここで、
図29に示すように、開口655には可視光を透過する導電膜635が設けら
れていることが好ましい。これにより、開口655と重なる領域においてもそれ以外の領
域と同様に液晶が配向するため、これらの領域の境界部で液晶の配向不良が生じ、意図し
ない光が漏れてしまうことを抑制できる。
【0508】
ここで、基板661の外側の面に配置する偏光板656として直線偏光板を用いてもよ
いが、円偏光板を用いることもできる。円偏光板としては、例えば直線偏光板と1/4波
長位相差板を積層したものを用いることができる。これにより、外光反射を抑制すること
ができる。また、偏光板の種類に応じて、液晶素子640に用いる液晶素子のセルギャッ
プ、配向、駆動電圧等を調整することで、所望のコントラストが実現されるようにすれば
よい。
【0509】
また導電膜643の端部を覆う絶縁膜646上には、絶縁膜647が設けられている。
絶縁膜647は、絶縁膜620と基板651が必要以上に接近することを抑制するスペー
サとしての機能を有する。またEL層644や導電膜645aを遮蔽マスク(メタルマス
ク)を用いて形成する場合には、当該遮蔽マスクが被形成面に接触することを抑制する機
能を有していてもよい。なお、絶縁膜647は不要であれば設けなくてもよい。
【0510】
トランジスタ605のソース又はドレインの一方は、導電膜648を介して発光素子6
60の導電膜643と電気的に接続されている。
【0511】
トランジスタ606のソース又はドレインの一方は、接続部607を介して導電膜66
3と電気的に接続されている。導電膜663と導電膜635は接して設けられ、これらは
電気的に接続されている。ここで、接続部607は、絶縁膜620に設けられた開口を介
して、絶縁膜620の両面に設けられる導電層同士を接続する部分である。
【0512】
基板651と基板661が重ならない領域には、接続部604が設けられている。接続
部604は、接続層649を介してFPC672と電気的に接続されている。接続部60
4は接続部607と同様の構成を有している。接続部604の上面は、導電膜635と同
一の導電膜を加工して得られた導電層が露出している。これにより、接続部604とFP
C672とを接続層649を介して電気的に接続することができる。
【0513】
接着層641が設けられる一部の領域には、接続部687が設けられている。接続部6
87において、導電膜635と同一の導電膜を加工して得られた導電層と、導電膜613
の一部が、接続体686により電気的に接続されている。したがって、基板661側に形
成された導電膜613に、基板651側に接続されたFPC672から入力される信号ま
たは電位を、接続部687を介して供給することができる。
【0514】
接続体686としては、例えば導電性の粒子を用いることができる。導電性の粒子とし
ては、有機樹脂またはシリカなどの粒子の表面を金属材料で被覆したものを用いることが
できる。金属材料としてニッケルや金を用いると接触抵抗を低減できるため好ましい。ま
たニッケルをさらに金で被覆するなど、2種類以上の金属材料を層状に被覆させた粒子を
用いることが好ましい。また接続体686として、弾性変形、または塑性変形する材料を
用いることが好ましい。このとき導電性の粒子である接続体686は、
図29に示すよう
に上下方向に潰れた形状となる場合がある。こうすることで、接続体686と、これと電
気的に接続する導電層との接触面積が増大し、接触抵抗を低減できるほか、接続不良など
の不具合の発生を抑制することができる。
【0515】
接続体686は、接着層641に覆われるように配置することが好ましい。例えば、硬
化前の接着層641に接続体686を分散させておけばよい。
【0516】
図29では、回路659の例としてトランジスタ601が設けられている例を示してい
る。
【0517】
図29では、トランジスタ601及びトランジスタ605の例として、チャネルが形成
される半導体膜653を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。一方のゲートは
導電膜654により、他方のゲートは絶縁膜682を介して半導体膜653と重なる導電
膜623により構成されている。このような構成とすることで、トランジスタのしきい値
電圧を制御することができる。このとき、2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を
供給することによりトランジスタを駆動してもよい。このようなトランジスタは他のトラ
ンジスタと比較して電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させるこ
とができる。その結果、高速駆動が可能な回路を作製することができる。さらには、回路
部の占有面積を縮小することが可能となる。オン電流の大きなトランジスタを適用するこ
とで、表示パネルを大型化、または高精細化したときに配線数が増大したとしても、各配
線における信号遅延を低減することが可能であり、表示ムラを抑制することができる。
【0518】
なお、回路659が有するトランジスタと、表示部662が有するトランジスタは、同
じ構造であってもよい。また回路659が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造で
あってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いてもよい。また、表示部
662が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のト
ランジスタを組み合わせて用いてもよい。
【0519】
各トランジスタを覆う絶縁膜682、絶縁膜683のうち少なくとも一方は、水や水素
などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。すなわち、絶縁膜682また
は絶縁膜683はバリア膜として機能させることができる。このような構成とすることで
、トランジスタに対して外部から不純物が拡散することを効果的に抑制することが可能と
なり、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0520】
基板661側において、着色層631、遮光膜632を覆って絶縁膜621が設けられ
ている。絶縁膜621は、平坦化層としての機能を有していてもよい。絶縁膜621によ
り、導電膜613の表面を概略平坦にできるため、液晶層612の配向状態を均一にでき
る。
【0521】
表示パネル600を作製する方法の一例について説明する。例えば剥離層を有する支持
基板上に、導電膜635、導電膜663、絶縁膜620を順に形成し、その後、トランジ
スタ605、トランジスタ606、発光素子660等を形成した後、接着層642を用い
て基板651と支持基板を貼り合せる。その後、剥離層と絶縁膜620、及び剥離層と導
電膜635のそれぞれの界面で剥離することにより、支持基板及び剥離層を除去する。ま
たこれとは別に、着色層631、遮光膜632、導電膜613等をあらかじめ形成した基
板661を準備する。そして基板651または基板661に液晶を滴下し、接着層641
により基板651と基板661を貼り合せることで、表示パネル600を作製することが
できる。
【0522】
剥離層としては、絶縁膜620及び導電膜635との界面で剥離が生じる材料を適宜選
択することができる。特に、剥離層としてタングステンなどの高融点金属材料を含む層と
当該金属材料の酸化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁膜620として、窒化シ
リコンや酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン等を複数積層した層を用いることが好まし
い。剥離層に高融点金属材料を用いると、これよりも後に形成する層の形成温度を高める
ことが可能で、不純物の濃度が低減され、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0523】
導電膜635としては、金属酸化物、金属窒化物、または低抵抗化された酸化物半導体
等の酸化物または窒化物を用いることが好ましい。酸化物半導体を用いる場合には、水素
、ボロン、リン、窒素、及びその他の不純物の濃度、並びに酸素欠損量の少なくとも一が
、トランジスタに用いる半導体層に比べて高められた材料を、導電膜635に用いればよ
い。
【0524】
<6-3.各構成要素について>
以下では、上記に示す各構成要素について説明する。なお、先の実施の形態に示す機能
と同様の機能を有する構成についての説明は省略する。
【0525】
〔接着層〕
接着層としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着
剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としては
エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミ
ド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、E
VA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性
が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を
用いてもよい。
【0526】
また、上記樹脂に乾燥剤を含んでいてもよい。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸
化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸着する物質を用い
ることができる。または、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を
吸着する物質を用いてもよい。乾燥剤が含まれていると、水分などの不純物が素子に侵入
することを抑制でき、表示パネルの信頼性が向上するため好ましい。
【0527】
また、上記樹脂に屈折率の高いフィラーや光散乱部材を混合することにより、光取り出
し効率を向上させることができる。例えば、酸化チタン、酸化バリウム、ゼオライト、ジ
ルコニウム等を用いることができる。
【0528】
〔接続層〕
接続層としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Condu
ctive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic C
onductive Paste)などを用いることができる。
【0529】
〔着色層〕
着色層に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料または染料が含
まれた樹脂材料などが挙げられる。
【0530】
〔遮光層〕
遮光層として用いることのできる材料としては、カーボンブラック、チタンブラック、
金属、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等が挙げられる。遮光層
は、樹脂材料を含む膜であってもよいし、金属などの無機材料の薄膜であってもよい。ま
た、遮光層に、着色層の材料を含む膜の積層膜を用いることもできる。例えば、ある色の
光を透過する着色層に用いる材料を含む膜と、他の色の光を透過する着色層に用いる材料
を含む膜との積層構造を用いることができる。着色層と遮光層の材料を共通化することで
、装置を共通化できるほか工程を簡略化できるため好ましい。
【0531】
以上が各構成要素についての説明である。
【0532】
<6-4.作製方法例>
ここでは、可撓性を有する基板を用いた表示パネルの作製方法の例について説明する。
【0533】
ここでは、表示素子、回路、配線、電極、着色層や遮光層などの光学部材、及び絶縁層
等が含まれる層をまとめて素子層と呼ぶこととする。例えば、素子層は表示素子を含み、
表示素子の他に表示素子と電気的に接続する配線、画素や回路に用いるトランジスタなど
の素子を備えていてもよい。
【0534】
また、ここでは、表示素子が完成した(作製工程が終了した)段階において、素子層を
支持し、可撓性を有する部材のことを、基板と呼ぶこととする。例えば、基板には、厚さ
が10nm以上300μm以下の、極めて薄いフィルム等も含まれる。
【0535】
可撓性を有し、絶縁表面を備える基板上に素子層を形成する方法としては、代表的には
以下に挙げる2つの方法がある。一つは、基板上に直接、素子層を形成する方法である。
もう一つは、基板とは異なる支持基板上に素子層を形成した後、素子層と支持基材を剥離
し、素子層を基板に転置する方法である。なお、ここでは詳細に説明しないが、上記2つ
の方法に加え、可撓性を有さない基板上に素子層を形成し、当該基板を研磨等により薄く
することで可撓性を持たせる方法もある。
【0536】
基板を構成する材料が、素子層の形成工程にかかる熱に対して耐熱性を有する場合には
、基板上に直接、素子層を形成すると、工程が簡略化されるため好ましい。このとき、基
板を支持基材に固定した状態で素子層を形成すると、装置内、及び装置間における搬送が
容易になるため好ましい。
【0537】
また、素子層を支持基材上に形成した後に、基板に転置する方法を用いる場合、まず支
持基材上に剥離層と絶縁層を積層し、当該絶縁層上に素子層を形成する。続いて、支持基
材と素子層の間で剥離し、素子層を基板に転置する。このとき、支持基材と剥離層の界面
、剥離層と絶縁層の界面、または剥離層中で剥離が生じるような材料を選択すればよい。
この方法では、支持基材や剥離層に耐熱性の高い材料を用いることで、素子層を形成する
際にかかる温度の上限を高めることができ、より信頼性の高い素子を有する素子層を形成
できるため、好ましい。
【0538】
例えば剥離層として、タングステンなどの高融点金属材料を含む層と、当該金属材料の
酸化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁層として、酸化シリコン、窒化シリコン
、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを複数積層した層を用いることが好ましい。
【0539】
素子層と支持基材とを剥離する方法としては、機械的な力を加えることや、剥離層をエ
ッチングすること、または剥離界面に液体を浸透させることなどが、一例として挙げられ
る。または、剥離界面を形成する2層の熱膨張の違いを利用し、加熱または冷却すること
により剥離を行ってもよい。
【0540】
また、支持基材と絶縁層の界面で剥離が可能な場合には、剥離層を設けなくてもよい。
【0541】
例えば、支持基材としてガラスを用い、絶縁層としてポリイミドなどの有機樹脂を用い
ることができる。このとき、レーザ光等を用いて有機樹脂の一部を局所的に加熱する、ま
たは鋭利な部材により物理的に有機樹脂の一部を切断、または貫通すること等により剥離
の起点を形成し、ガラスと有機樹脂の界面で剥離を行ってもよい。また、上記の有機樹脂
としては、感光性の材料を用いると、開口部などの形状を容易に作製しやすいため好適で
ある。また、上記のレーザ光としては、例えば、可視光線から紫外線の波長領域の光であ
ることが好ましい。例えば波長が200nm以上400nm以下の光、好ましくは波長が
250nm以上350nm以下の光を用いることができる。特に、波長308nmのエキ
シマレーザを用いると、生産性に優れるため好ましい。また、Nd:YAGレーザの第三
高調波である波長355nmのUVレーザなどの固体UVレーザ(半導体UVレーザとも
いう)を用いてもよい。
【0542】
または、支持基材と有機樹脂からなる絶縁層の間に発熱層を設け、当該発熱層を加熱す
ることにより、当該発熱層と絶縁層の界面で剥離を行ってもよい。発熱層としては、電流
を流すことにより発熱する材料、光を吸収することにより発熱する材料、磁場を印加する
ことにより発熱する材料など、様々な材料を用いることができる。例えば発熱層としては
、半導体、金属、絶縁体から選択して用いることができる。
【0543】
なお、上述した方法において、有機樹脂からなる絶縁層は、剥離後に基板として用いる
ことができる。
【0544】
以上が可撓性を有する表示パネルを作製する方法についての説明である。
【0545】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0546】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、
図30を
用いて説明を行う。
【0547】
<7.表示装置の回路構成>
図30(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部502と
いう)と、画素部502の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(
以下、駆動回路部504という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路50
6という)と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成とし
てもよい。
【0548】
駆動回路部504の一部、または全部は、画素部502と同一基板上に形成されている
ことが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部504
の一部、または全部が、画素部502と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回
路部504の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated B
onding)によって、実装することができる。
【0549】
画素部502は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置され
た複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路501という)を有し、駆動回
路部504は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、ゲートドライバ
504aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するため
の回路(以下、ソースドライバ504b)などの駆動回路を有する。
【0550】
ゲートドライバ504aは、シフトレジスタ等を有する。ゲートドライバ504aは、
端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力す
る。例えば、ゲートドライバ504aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力さ
れ、パルス信号を出力する。ゲートドライバ504aは、走査信号が与えられる配線(以
下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、ゲート
ドライバ504aを複数設け、複数のゲートドライバ504aにより、走査線GL_1乃
至GL_Xを分割して制御してもよい。または、ゲートドライバ504aは、初期化信号
を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ゲートドライバ50
4aは、別の信号を供給することも可能である。
【0551】
ソースドライバ504bは、シフトレジスタ等を有する。ソースドライバ504bは、
端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元とな
る信号(画像信号)が入力される。ソースドライバ504bは、画像信号を元に画素回路
501に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、ソースドライバ504bは
、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信
号の出力を制御する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、データ信号が与え
られる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有す
る。または、ソースドライバ504bは、初期化信号を供給することができる機能を有す
る。ただし、これに限定されず、ソースドライバ504bは、別の信号を供給することも
可能である。
【0552】
ソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。
ソースドライバ504bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、
画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを
用いてソースドライバ504bを構成してもよい。
【0553】
複数の画素回路501のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを
介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介し
てデータ信号が入力される。また、複数の画素回路501のそれぞれは、ゲートドライバ
504aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列
目の画素回路501は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介してゲートドライバ
504aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(
nはY以下の自然数)を介してソースドライバ504bからデータ信号が入力される。
【0554】
図30(A)に示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路5
01の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路506は、ソースドラ
イバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保
護回路506は、ゲートドライバ504aと端子部507との間の配線に接続することが
できる。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと端子部507との間の配
線に接続することができる。なお、端子部507は、外部の回路から表示装置に電源及び
制御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0555】
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該
配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
【0556】
図30(A)に示すように、画素部502と駆動回路部504にそれぞれ保護回路50
6を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:
静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。
ただし、保護回路506の構成はこれに限定されず、例えば、ゲートドライバ504aに
保護回路506を接続した構成、またはソースドライバ504bに保護回路506を接続
した構成とすることもできる。あるいは、端子部507に保護回路506を接続した構成
とすることもできる。
【0557】
また、
図30(A)においては、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bに
よって駆動回路部504を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例
えば、ゲートドライバ504aのみを形成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成
された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実
装する構成としても良い。
【0558】
また、
図30(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、
図30(B)に示す構成
とすることができる。
【0559】
図30(B)に示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容
量素子560と、を有する。トランジスタ550に先の実施の形態に示すトランジスタを
適用することができる。
【0560】
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定
される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複
数の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位
(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の
電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0561】
例えば、液晶素子570を備える表示装置の駆動方法としては、TNモード、STNモ
ード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned M
icro-cell)モード、OCB(Optically Compensated
Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqu
id Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Li
quid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Ve
rtical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、又はTBA
(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。
また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electric
ally Controlled Birefringence)モード、PDLC(P
olymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC
(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホ
ストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様
々なものを用いることができる。
【0562】
m行n列目の画素回路501において、トランジスタ550のソース電極またはドレイ
ン電極の一方は、データ線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子570の一対の
電極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ550のゲート電極は、走査線G
L_mに電気的に接続される。トランジスタ550は、オン状態またはオフ状態になるこ
とにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0563】
容量素子560の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、電位供給線VL
)に電気的に接続され、他方は、液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続され
る。なお、電位供給線VLの電位の値は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される
。容量素子560は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0564】
例えば、
図30(B)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、
図30(A)
に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ
550をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0565】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ550がオフ状態になることで
保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0566】
また、
図30(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、
図30(C)に示す構成
とすることができる。
【0567】
また、
図30(C)に示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、容量素
子562と、発光素子572と、を有する。トランジスタ552及びトランジスタ554
のいずれか一方または双方に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる
。
【0568】
トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる
配線(以下、信号線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ55
2のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという)に電気
的に接続される。
【0569】
トランジスタ552は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデー
タの書き込みを制御する機能を有する。
【0570】
容量素子562の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL
_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ552のソース電極及びドレイ
ン電極の他方に電気的に接続される。
【0571】
容量素子562は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0572】
トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電
気的に接続される。さらに、トランジスタ554のゲート電極は、トランジスタ552の
ソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0573】
発光素子572のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続
され、他方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続
される。
【0574】
発光素子572としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子とも
いう)などを用いることができる。ただし、発光素子572としては、これに限定されず
、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0575】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与
えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0576】
図30(C)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、
図30(A)に示すゲ
ートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ552を
オン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0577】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ552がオフ状態になることで
保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ554の
ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子572は、流れる電
流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0578】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0579】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示モジュール及び電子機器
について、
図31乃至
図33を用いて説明を行う。
【0580】
<8-1.表示モジュール>
図31に示す表示モジュール7000は、上部カバー7001と下部カバー7002と
の間に、FPC7003に接続されたタッチパネル7004、FPC7005に接続され
た表示パネル7006、バックライト7007、フレーム7009、プリント基板701
0、バッテリ7011を有する。
【0581】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル7006に用いることができる。
【0582】
上部カバー7001及び下部カバー7002は、タッチパネル7004及び表示パネル
7006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0583】
タッチパネル7004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル
7006に重畳して用いることができる。また、表示パネル7006の対向基板(封止基
板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル7
006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
【0584】
バックライト7007は、光源7008を有する。なお、
図31において、バックライ
ト7007上に光源7008を配置する構成について例示したが、これに限定さない。例
えば、バックライト7007の端部に光源7008を配置し、さらに光拡散板を用いる構
成としてもよい。なお、有機EL素子等の自発光型の発光素子を用いる場合、または反射
型パネル等の場合においては、バックライト7007を設けない構成としてもよい。
【0585】
フレーム7009は、表示パネル7006の保護機能の他、プリント基板7010の動
作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレ
ーム7009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0586】
プリント基板7010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信
号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であって
も良いし、別途設けたバッテリ7011による電源であってもよい。バッテリ7011は
、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0587】
また、表示モジュール7000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追
加して設けてもよい。
【0588】
<8-2.電子機器1>
次に、
図32(A)乃至
図32(E)に電子機器の一例を示す。
【0589】
図32(A)は、ファインダー8100を取り付けた状態のカメラ8000の外観を示
す図である。
【0590】
カメラ8000は、筐体8001、表示部8002、操作ボタン8003、シャッター
ボタン8004等を有する。またカメラ8000には、着脱可能なレンズ8006が取り
付けられている。
【0591】
ここではカメラ8000として、レンズ8006を筐体8001から取り外して交換す
ることが可能な構成としたが、レンズ8006と筐体が一体となっていてもよい。
【0592】
カメラ8000は、シャッターボタン8004を押すことにより、撮像することができ
る。また、表示部8002はタッチパネルとしての機能を有し、表示部8002をタッチ
することにより撮像することも可能である。
【0593】
カメラ8000の筐体8001は、電極を有するマウントを有し、ファインダー810
0のほか、ストロボ装置等を接続することができる。
【0594】
ファインダー8100は、筐体8101、表示部8102、ボタン8103等を有する
。
【0595】
筐体8101は、カメラ8000のマウントと係合するマウントを有しており、ファイ
ンダー8100をカメラ8000に取り付けることができる。また当該マウントには電極
を有し、当該電極を介してカメラ8000から受信した映像等を表示部8102に表示さ
せることができる。
【0596】
ボタン8103は、電源ボタンとしての機能を有する。ボタン8103により、表示部
8102の表示のオン・オフを切り替えることができる。
【0597】
カメラ8000の表示部8002、及びファインダー8100の表示部8102に、本
発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0598】
なお、
図32(A)では、カメラ8000とファインダー8100とを別の電子機器と
し、これらを脱着可能な構成としたが、カメラ8000の筐体8001に、表示装置を備
えるファインダーが内蔵されていてもよい。
【0599】
図32(B)は、ヘッドマウントディスプレイ8200の外観を示す図である。
【0600】
ヘッドマウントディスプレイ8200は、装着部8201、レンズ8202、本体82
03、表示部8204、ケーブル8205等を有している。また装着部8201には、バ
ッテリ8206が内蔵されている。
【0601】
ケーブル8205は、バッテリ8206から本体8203に電力を供給する。本体82
03は無線受信機等を備え、受信した画像データ等の映像情報を表示部8204に表示さ
せることができる。また、本体8203に設けられたカメラで使用者の眼球やまぶたの動
きを捉え、その情報をもとに使用者の視点の座標を算出することにより、使用者の視点を
入力手段として用いることができる。
【0602】
また、装着部8201には、使用者に触れる位置に複数の電極が設けられていてもよい
。本体8203は使用者の眼球の動きに伴って電極に流れる電流を検知することにより、
使用者の視点を認識する機能を有していてもよい。また、当該電極に流れる電流を検知す
ることにより、使用者の脈拍をモニタする機能を有していてもよい。また、装着部820
1には、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ等の各種センサを有していてもよく、使
用者の生体情報を表示部8204に表示する機能を有していてもよい。また、使用者の頭
部の動きなどを検出し、表示部8204に表示する映像をその動きに合わせて変化させて
もよい。
【0603】
表示部8204に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0604】
図32(C)(D)(E)は、ヘッドマウントディスプレイ8300の外観を示す図で
ある。ヘッドマウントディスプレイ8300は、筐体8301と、表示部8302と、バ
ンド状の固定具8304と、一対のレンズ8305と、を有する。
【0605】
使用者は、レンズ8305を通して、表示部8302の表示を視認することができる。
なお、表示部8302を湾曲して配置させる好適である。表示部8302を湾曲して配置
することで、使用者が高い臨場感を感じることができる。なお、本実施の形態においては
、表示部8302を1つ設ける構成について例示したが、これに限定されず、例えば、表
示部8302を2つ設ける構成としてもよい。この場合、使用者の片方の目に1つの表示
部が配置されるような構成とすると、視差を用いた3次元表示等を行うことも可能となる
。
【0606】
なお、表示部8302に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。本発明
の一態様の半導体装置を有する表示装置は、極めて精細度が高いため、
図32(E)のよ
うにレンズ8305を用いて拡大したとしても、使用者に画素が視認されることなく、よ
り現実感の高い映像を表示することができる。
【0607】
<8-3.電子機器2>
次に、
図32(A)乃至
図32(E)に示す電子機器と、異なる電子機器の一例を
図3
3(A)乃至
図33(G)に示す。
【0608】
図33(A)乃至
図33(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、ス
ピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端
子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、
光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、
流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォ
ン9008、等を有する。
【0609】
図33(A)乃至
図33(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々
な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能
、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)
によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータ
ネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行
う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示す
る機能、等を有することができる。なお、
図33(A)乃至
図33(G)に示す電子機器
が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。ま
た、
図33(A)乃至
図33(G)には図示していないが、電子機器には、複数の表示部
を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を撮影する機能
、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する
機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0610】
図33(A)乃至
図33(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0611】
図33(A)は、テレビジョン装置9100を示す斜視図である。テレビジョン装置9
100は、表示部9001を大画面、例えば、50インチ以上、または100インチ以上
の表示部9001を組み込むことが可能である。
【0612】
図33(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は
、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具
体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、
スピーカ、接続端子、センサ等を設けてもよい。また、携帯情報端末9101は、文字や
画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3つの操作ボタン9050(
操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部9001の一の面に表示することが
できる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示すること
ができる。なお、情報9051の一例としては、電子メールやSNS(ソーシャル・ネッ
トワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示、電子メールやSNSなどの
題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、アンテナ受信
の強度などがある。または、情報9051が表示されている位置に、情報9051の代わ
りに、操作ボタン9050などを表示してもよい。
【0613】
図33(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は
、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、
情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携
帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状
態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信し
た電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位
置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示
を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
【0614】
図33(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末
9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信
、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表
示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うこと
ができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行するこ
とが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハン
ズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を
有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。ま
た接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子900
6を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0615】
図33(E)(F)(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図であ
る。また、
図33(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、
図33
(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変
化する途中の状態の斜視図であり、
図33(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状
態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開し
た状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末92
01が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000
に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることによ
り、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させるこ
とができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲
げることができる。
【0616】
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有す
ることを特徴とする。ただし、本発明の一態様の半導体装置は、表示部を有さない電子機
器にも適用することができる。
【0617】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【実施例1】
【0618】
本実施例では、本発明の一態様の半導体装置に用いることのできる酸化物半導体膜を作
製し、評価を行った。なお、本実施例では、Sample B1及びSample B2
を作製し、それぞれHAADF-STEMによって観察および解析した。
【0619】
<1-1.Sample条件>
Sample B1については、実施の形態4に示すSample A1と同様の条件
で作製した。また、Sample B2については、実施の形態4に示すSample
A2と同様の条件で作製した。
【0620】
<1-2.TEM像の画像解析>
次に、Sample B1及びSample B2の平面TEM像の画像解析を行った
。なお、平面TEM像は、球面収差補正機能を用いて観察した。なお、平面TEM像の撮
影には、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fを用いて
、加速電圧200kV、ビーム径約0.1nmφの電子線を照射して行った。
【0621】
その後、Sample B1及びSample B2の平面TEM像を、それぞれ画像
処理及び画像解析を行った。
【0622】
画像処理としては、平面TEM像を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fouri
er Transform)処理することでFFT像を取得した。次に、取得したFFT
像を、2.8nm-1から5.0nm-1の範囲を残してマスク処理を行った。次に、マ
スク処理したFFT像を、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast
Fourier Transform)処理することでFFTフィルタリング像を取得し
た。
【0623】
画像解析としては、FFTフィルタリング像から格子点を抽出した。格子点の抽出は、
以下の手順で行った。まず、FFTフィルタリング像のノイズを除去する処理を行った。
ノイズを除去する処理として、半径0.05nmの範囲における輝度を下式によって平滑
化した。
【0624】
【0625】
ここで、S_Int(x,y)は座標(x,y)における平滑化された輝度を示し、r
は座標(x,y)と座標(x’,y’)との距離を示し、Int(x’,y’)は、座標
(x’,y’)における輝度を示す。なお、rが0のときは、rを1として計算した。
【0626】
次に、格子点の探索を行った。格子点の条件は、半径0.22nm内で全ての格子点候
補よりも輝度が高い座標とした。ここでは、格子点候補が抽出された。なお、半径0.2
2nm内であれば、ノイズによる格子点の誤検出の頻度を小さくすることができる。また
、TEM像では格子点間に一定の距離があるため、半径0.22nm内には二つ以上の格
子点が含まれる可能性は低い。
【0627】
次に、抽出された格子点候補を中心に、半径0.22nm内で最も輝度の高い座標を抽
出し、格子点候補を更新した。格子点候補の抽出を繰り返し、新たな格子点候補が現れな
くなったときの座標を格子点として認定した。同様に、認定された格子点から0.22n
mよりも離れた位置において、新たな格子点の認定を行うことで、全ての範囲で格子点を
認定した。得られた複数の格子点は、まとめて格子点群と呼ぶ。
【0628】
次に、抽出した格子点群から六角形格子の角度を導出する方法について、
図34(A)
(B)(C)に示す模式図、及び
図34(D)に示すフローチャートを用いて説明する。
【0629】
まず、基準格子点を定め、その最近接である6点の近接格子点を結び、六角形格子を形
成した(
図34(A)、
図34(D)ステップS111参照。)。その後、該六角形格子
の中心点である基準格子点から頂点である各格子点までの距離の平均値Rを導出した。算
出したRを各頂点までの距離とし、基準格子点を中心点とした正六角形を形成した(
図3
4(D)ステップS112参照。)。このとき、正六角形の各頂点と、それぞれに最も近
い近接格子点との距離を距離d1、距離d2、距離d3、距離d4、距離d5および距離
d6とする(
図34(D)ステップS113参照。)。次に、正六角形を、中心点を基準
に0.1°刻みで0°から60°まで回転させ、回転した正六角形と六角形格子との平均
のずれ[D=(d1+d2+d3+d4+d5+d6)/6]を算出した(
図34(D)
ステップS114参照。)。そして、平均のずれDが最小となるときの正六角形の回転角
度θを求め、六角形格子の角度とした(
図34(D)ステップS115)。
【0630】
次に、平面TEM像の観察範囲において、六角形格子の角度が30°となる割合が最も
高くなるように調整した。ここで、半径1nmの範囲において、六角形格子の角度の平均
値を算出した。続いて、画像処理を経て得られた平面TEM像を、領域が有する六角形格
子の角度に応じ、濃淡で表示した。
【0631】
図35(A)にSample B1の平面TEM像を画像処理した結果を、
図35(B
)にSample B2の平面TEM像を画像処理した結果を、それぞれ示す。
【0632】
図35(A)(B)に示す平面TEM像を画像処理した像は、六角形格子の角度に応じ
た濃淡を示した像である。つまり平面TEM像を画像処理した像は、平面TEM像のFF
Tフィルタリング像において、特定波数領域を分割し、当該領域に濃淡をつけることによ
り、各特定波数領域の格子点から形成されるボロノイ領域の向きを抽出した画像である。
【0633】
図35(A)に示す結果より、Sample B1では、六角形の向きがランダムであ
り、ncがモザイク状に分布している様子が分かる。また、
図35(B)に示す結果より
、Sample B2では、六角形の向きが同じ向きを示す領域が数十nmの広範囲にわ
たって存在する様子が分かる。当該広範囲にわたって存在する領域は、あたかも1つの大
きいグレインを形成しているようにも見える。ただし、当該グレインとグレインとの間の
領域には、Sample B1と同様に六角形の向きがランダムである、ncがモザイク
状に分布し、グレインとグレインとを連続的に結合させているようにも見える。
【0634】
したがって、
図35(A)(B)に示す結果より、酸化物半導体膜の成膜時の基板温度
が低い、または成膜時の酸素ガス流量比が小さいほど、六角形の向きがランダムであり、
且つモザイク状に分布している領域が形成されやすいことが示唆される。
【0635】
このように、平面TEM像を画像解析することによって、六角形格子の角度が変化する
境界部を評価することが可能となる。
【0636】
<1-3.ボロノイ解析>
次に、Sample B1及びSample B2のボロノイ図を作製し、当該ボロノ
イ図の解析を行った。
【0637】
ボロノイ図は、格子点群を含む領域で分割した図である。それぞれの格子点は、格子点
を囲む領域から最も近い。以下では、
図36(A)(B)(C)(D)に示す模式図、及
び
図36(E)に示すフローチャートを用いて、ボロノイ図の作成方法の詳細を説明する
。
【0638】
まず、
図34に示した方法などによって格子点群を抽出した(
図36(A)および
図3
6(E)ステップS121参照。)。次に、近接する格子点間を線分で結んだ(
図36(
B)および
図36(E)ステップS122参照。)。次に、各線分の垂直二等分線を引い
た(
図36(C)および
図36(E)ステップS123参照。)。次に、3つの垂直二等
分線が交わる点を抽出した(
図36(E)ステップS124参照。)。この点をボロノイ
点と呼ぶ。次に、近接するボロノイ点間を線分で結んだ(
図36(D)および
図36(E
)ステップS125参照。)。このとき、線分に囲まれた多角形領域をボロノイ領域と呼
ぶ。以上の方法によって、ボロノイ図を作成することができる。
【0639】
次に、上記作成したボロノイ図を基にボロノイ解析を行った。
【0640】
図37(A)にSample B1のボロノイ解析結果を、
図37(B)にSampl
e B2のボロノイ解析結果を、それぞれ示す。
【0641】
図37(A)(B)において、Sample B1及びSample B2におけるボ
ロノイ領域の形状が、四角形乃至九角形のいずれかである個数及び割合を示す。棒グラフ
に、各試料のボロノイ領域の形状が四角形乃至九角形のいずれかである個数を示した。ま
た、表に各試料のボロノイ領域の形状が四角形乃至九角形のいずれかである割合を示した
。
【0642】
図37(A)に示す結果より、Sample B1では、六角形の割合が53.55%
であった。また、
図37(B)に示す結果より、Sample B2では、六角形の割合
が76.70%であった。
【0643】
図37(A)(B)に示す結果より、酸化物半導体膜の成膜条件の違いにより、酸化物
の結晶状態は大きくことなることが確認された。すなわち、酸化物半導体膜の成膜時の基
板温度が低い、または成膜時の酸素ガス流量比が小さいほど、六角形の割合が低くなるこ
とが示唆された。
【0644】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合
わせて実施することができる。
【実施例2】
【0645】
本実施例では、本発明の一態様の半導体装置に用いることのできる酸化物半導体膜を作
製し、当該酸化物半導体膜のウエットエッチングレートについて評価を行った。
【0646】
なお、本実施例では、酸化物半導体膜の成膜時の基板温度を2水準(Tsub.=13
0℃、及びTsub.=170℃)とし、酸化物半導体膜の成膜時の酸素流量比を5水準
(O2=10%、30%、50%、70%、及び100%)として、合計10水準の条件
を作製した。なお、上記10水準の酸化物半導体膜の組成としては、In:Ga:Zn=
4:2:4.1[原子数比]の金属酸化物ターゲットを用い、厚さ100nmとなるよう
に形成した。また、酸化物半導体膜のエッチングには、エッチャント(濃度85%のリン
酸水溶液に対して、純水で100倍に希釈)を用い、処理時間を60秒とした。
【0647】
<2.ウエットエッチングレート>
上記作製した10水準の酸化物半導体膜のウエットエッチングレートを表1に示す。
【0648】
【0649】
表1に示すように、酸化物半導体膜の成膜時の基板温度が高い方が、ウエットエッチン
グレートが遅く、酸化物半導体膜の成膜時の酸素流量比が小さい方が、ウエットエッチン
グレートが早い結果が得られた。
【0650】
このように、酸化物半導体膜の成膜時の基板温度、及び成膜時の酸素流量比を変えるこ
とで、ウエットエッチングレートの異なる酸化物半導体膜が成膜できることが確認できた
。
【0651】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合
わせて実施することができる。
【実施例3】
【0652】
本実施例においては、
図10に示すトランジスタ100Eに相当するトランジスタを作
製し、該トランジスタのId-Vg特性の評価、信頼性評価、及び断面観察を行った。
【0653】
なお、本実施例で作製した試料は、チャネル長L=2μm、チャネル幅W=50μmの
トランジスタと、チャネル長L=3μm、チャネル幅W=50μmのトランジスタと、チ
ャネル長L=6μm、チャネル幅W=50μmとの合計3種類のトランジスタである。ま
た、上記3種類のトランジスタを、それぞれ10個形成した。
【0654】
本実施例で作製した試料について、以下説明を行う。なお、以下の説明において、
図1
0に示すトランジスタ100Eに付記した符号を用いて説明する。
【0655】
<3-1.試料の作製方法>
まず、基板102上に導電膜104を形成した。基板102としては、ガラス基板を用
いた。また、導電膜104としては、厚さ100nmのタングステン膜を、スパッタリン
グ装置を用いて形成した。
【0656】
次に、基板102及び導電膜104上に絶縁膜106を形成した。絶縁膜106として
は、厚さ400nmの窒化シリコン膜と、厚さ15nmの酸化窒化シリコン膜とを、PE
CVD装置を用いて形成した。
【0657】
次に、絶縁膜106上に酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2を
形成した。酸化物半導体膜108_1及び酸化物半導体膜108_2は、それぞれ、スパ
ッタリング装置を用いて、In-Ga-Zn酸化物を形成した。
【0658】
また、酸化物半導体膜108_1は、厚さ10nmのIn-Ga-Zn酸化物とし、酸
化物半導体膜108_2は、厚さ25nmのIn-Ga-Zn酸化物とした。なお、酸化
物半導体膜108_1の成膜条件としては、基板温度を130℃とし、流量180scc
mのアルゴンガスと、流量20sccmの酸素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を0.
6Paとし、金属酸化物スパッタリングターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1
[原子数比])に2500WのAC電力を投入して成膜した。また、酸化物半導体膜10
8_2の成膜条件としては、基板温度を130℃とし、流量100sccmの酸素ガスを
チャンバー内に導入し、圧力を0.6Paとし、金属酸化物スパッタリングターゲット(
In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])に2500WのAC電力を投入して成
膜した。なお、酸化物半導体膜108_1と酸化物半導体膜108_2とは、スパッタリ
ング装置の真空チャンバー内で連続して形成した。
【0659】
次に、絶縁膜106及び酸化物半導体膜108_2上に導電膜112a、112bを形
成した。導電膜112a、112bとしては、厚さ30nmのチタン膜と、厚さ200n
mの銅膜と、厚さ50nmのチタン膜とを、スパッタリング装置を用いて真空中で連続し
て形成した。
【0660】
次に、絶縁膜106、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に絶縁
膜114及び絶縁膜116を形成した。絶縁膜114としては、厚さ30nmの酸化窒化
シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。また、絶縁膜116としては、厚さ4
00nmの酸化窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。なお、絶縁膜11
4及び絶縁膜116としては、PECVD装置により真空中で連続して形成した。
【0661】
次に、第1の熱処理を行った。該第1の熱処理としては、窒素ガス雰囲気下で350℃
1時間とした。
【0662】
次に、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成した。絶縁膜118としては、厚さ100
nmの窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。
【0663】
次に、導電膜112bに達する開口部142a及び、導電膜104に達する開口部14
2bを形成した。開口部142a、142bとしては、ドライエッチング装置を用いて形
成した。
【0664】
次に、開口部142a、142bを覆うように絶縁膜118上に導電膜を形成し、該導
電膜を加工することで導電膜120a、120bを形成した。導電膜120a、120b
としては、厚さ100nmのIn-Sn-Si酸化物を、スパッタリング装置を用いて形
成した。
【0665】
次に、第2の熱処理を行った。該第2の熱処理としては、窒素ガス雰囲気下で250℃
1時間とした。
【0666】
以上の工程で本実施例の試料を作製した。
【0667】
<3-2.Id-Vg特性>
次に、上記作製した試料のId-Vg特性を測定した。本実施例における試料のId-
Vg特性結果を、
図38(A)(B)(C)に示す。
【0668】
なお、
図38(A)は、チャネル長L=2μm、チャネル幅W=50μmのトランジス
タのId-Vg特性結果であり、
図38(B)は、チャネル長L=3μm、チャネル幅W
=50μmのトランジスタのId-Vg特性結果であり、
図38(C)は、チャネル長L
=6μm、チャネル幅W=50μmのトランジスタのId-Vg特性結果である。また、
図38(A)(B)(C)において、10個のトランジスタのId-Vg特性結果を、そ
れぞれ重ねて示している。
【0669】
また、トランジスタ100Eの第1のゲート電極として機能する導電膜104に印加す
る電圧(以下、ゲート電圧(Vg)ともいう。)、及び第2のゲート電極として機能する
導電膜120aに印加する電圧(Vbg)としては、-15Vから+20Vまで0.25
Vのステップで印加した。また、ソース電極として機能する導電膜112aに印加する電
圧(以下、ソース電圧(VS)ともいう。)を0V(comm)とし、ドレイン電極とし
て機能する導電膜112bに印加する電圧(以下、ドレイン電圧(VD)ともいう。)を
1Vまたは10Vとした。
【0670】
図38(A)(B)(C)に示す結果から、本実施例で作製した試料は、良好な電気特
性を示すことが確認された。
【0671】
<3-3.信頼性評価>
次に、上記作製した試料の信頼性評価を行った。信頼性評価としては、バイアス-熱ス
トレス試験(以下、GBT試験と呼ぶ。)を用いた。
【0672】
本実施例でのGBT試験条件としては、ゲート電圧(VG)を±30V、とし、ドレイ
ン電圧(VD)とソース電圧(VS)を0V(COMMON)とし、ストレス温度を60
℃とし、ストレス印加時間を1時間とし、測定環境をダーク環境及び光照射環境(白色L
EDにて約10000lxの光を照射)の2つの環境で、それぞれ行った。すなわち、ト
ランジスタのソース電極とドレイン電極を同電位とし、ゲート電極にはソース電極及びド
レイン電極とは異なる電位を一定時間(ここでは1時間)印加した。また、ゲート電極に
与える電位がソース電極及びドレイン電極の電位よりも高い場合をポジティブストレスと
し、ゲート電極に与える電位がソース電極及びドレイン電極の電位よりも低い場合をネガ
ティブストレスとした。したがって、測定環境と合わせて、ポジティブBTストレス(P
BTS)、ネガティブBTストレス(NBTS)、光照射ポジティブBTストレス(PB
ITS)、及び光照射ネガティブBTストレス(NBITS)の合計4条件にて信頼性評
価を実施した。
【0673】
BT試験結果を
図39に示す。
図39において、縦軸がトランジスタのしきい値電圧の
変化量(ΔVth)を、横軸が条件を、それぞれ示す。
【0674】
図39に示す結果から、本実施例で作製した試料は、しきい値電圧の変動量が各条件で
±1.5V以内と良好な信頼性を有する。
【0675】
<3-4.断面観察>
次に、上記作製した試料の断面観察を行った。断面観察としては、透過型電子顕微鏡(
TEM:Transmission Electron Microscope)を用い
た。
【0676】
試料の断面TEM像を
図40(A)(B)に示す。なお、
図40(A)は、トランジス
タ100Eのチャネル幅方向を50,000倍の倍率で観察した断面TEM像であり、図
40(B)は、酸化物半導体膜108_1及び酸化物半導体膜108_2近傍を200,
000倍の倍率で観察した断面TEM像である。
図40(A)(B)に示すように、本実
施例で作製した試料は、良好な断面形状であることが確認された。特に、酸化物半導体膜
108_1及び酸化物半導体膜108_2の断面形状が良好である様子が分かる。
【0677】
なお、本実施例に示す構成は、他の実施の形態、または実施例と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【実施例4】
【0678】
本実施例では、本発明の一態様の半導体装置に用いることのできる酸化物半導体膜を作
製し、当該酸化物半導体膜の膜中の不純物について評価を行った。
【0679】
<4-1.試料の作製方法>
まず、本実施例では、以下に示すsample D1及びsample D2を作製し
た。各試料の作製方法について説明を行う。
【0680】
[sample D1]
sample D1としては、ガラス基板上に酸化物半導体膜108_1と、酸化物半
導体膜108_1上に酸化物半導体膜108_2と、を形成した。また、酸化物半導体膜
108_1は、厚さ100nmのIn-Ga-Zn酸化物とし、酸化物半導体膜108_
2は、厚さ100nmのIn-Ga-Zn酸化物とした。なお、酸化物半導体膜108_
1の成膜条件としては、基板温度を130℃とし、流量180sccmのアルゴンガスと
、流量20sccmの酸素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を0.6Paとし、金属酸
化物スパッタリングターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])に2
500WのAC電力を投入して成膜した。また、酸化物半導体膜108_2の成膜条件と
しては、基板温度を130℃とし、流量100sccmの酸素ガスをチャンバー内に導入
し、圧力を0.6Paとし、金属酸化物スパッタリングターゲット(In:Ga:Zn=
4:2:4.1[原子数比])に2500WのAC電力を投入して成膜した。なお、酸化
物半導体膜108_1と酸化物半導体膜108_2とは、スパッタリング装置の真空チャ
ンバー内で連続して形成した。
【0681】
[sample D2]
sample D2としては、ガラス基板上に酸化物半導体膜108_1と、酸化物半
導体膜108_1上に酸化物半導体膜108_2と、を形成した。また、酸化物半導体膜
108_1は、厚さ100nmのIn-Ga-Zn酸化物とし、酸化物半導体膜108_
2は、厚さ100nmのIn-Ga-Zn酸化物とした。なお、酸化物半導体膜108_
1の成膜条件としては、基板温度を130℃とし、流量180sccmのアルゴンガスと
、流量20sccmの酸素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を0.6Paとし、金属酸
化物スパッタリングターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])に2
500WのAC電力を投入して成膜した。また、酸化物半導体膜108_2の成膜条件と
しては、基板温度を170℃とし、流量50sccmのアルゴンガスと、流量50scc
mの酸素ガスとをチャンバー内に導入し、圧力を0.2Paとし、金属酸化物スパッタリ
ングターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比])に500WのAC電
力を投入して成膜した。
【0682】
また、酸化物半導体膜の膜中の不純物分析としては、SIMS測定により行った。また
、SIMS測定に用いた装置は、アルバック・ファイ社製四重極型質量分析装置(ADE
PT1010特型)とした。
【0683】
<4-2.SIMS分析>
次に、本実施例における、酸化物半導体膜の膜中の不純物の分析結果を、
図41、及び
図42(A)(B)に、それぞれ示す。
【0684】
なお、
図41は、酸化物半導体膜中の水素濃度を説明する図であり、
図42(A)は、
酸化物半導体膜中の炭素濃度を説明する図であり、
図42(B)は、酸化物半導体膜中の
窒素濃度を説明する図である。
【0685】
図41、及び
図42(A)(B)に示す結果より、sample D1とsample
D2とを比較すると、sample D1の酸化物半導体膜108_1と、酸化物半導
体膜108_2との界面の不純物(水素、炭素、及び窒素)濃度が低いことがわかる。s
ample D1は、同じ組成の金属酸化物ターゲットを用い、同じ真空チャンバーで連
続して形成しているため、酸化物半導体膜108_1と、酸化物半導体膜108_2との
界面における不純物濃度を抑制することが可能となる。
【0686】
なお、本実施例に示す構成は、他の実施の形態、または実施例と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【実施例5】
【0687】
本実施例では、本発明の一態様の半導体装置に用いることのできる酸化物半導体膜を作
製し、当該酸化物半導体膜の膜中の構成元素の分析、及び酸化物半導体膜の欠陥準位につ
いて評価を行った。
【0688】
<5-1.試料の作製方法>
まず、本実施例では、以下に示すsample E1及びsample E2を作製し
た。各試料の作製方法について説明を行う。
【0689】
[sample E1]
sample E1は、ガラス基板上に厚さ100nmの第1の酸化窒化シリコン膜と
、当該第1の酸化窒化シリコン膜上の厚さ100nmの酸化物半導体膜(以下、酸化物半
導体膜108_1と示す)と、酸化物半導体膜108_1上の酸化物半導体膜(以下、酸
化物半導体膜108_2と示す)と、酸化物半導体膜108_2上の第2の酸化窒化シリ
コン膜と、を有する。
【0690】
第1の酸化窒化シリコン膜は、PECVD装置を用いて形成した。なお、第1の酸化窒
化シリコン膜の成膜時における基板温度は350℃とした。
【0691】
また、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2は、それぞれIn-
Ga-Zn酸化物とした。なお、酸化物半導体膜108_1の成膜条件としては、基板温
度を130℃とし、流量180sccmのアルゴンガスと、流量20sccmの酸素(1
6O)ガスをチャンバー内に導入し、圧力を0.6Paとし、金属酸化物スパッタリング
ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])に2500WのAC電力
を投入して成膜した。また、酸化物半導体膜108_2の成膜条件としては、基板温度を
130℃とし、流量100sccmの酸素(18O)ガスをチャンバー内に導入し、圧力
を0.6Paとし、金属酸化物スパッタリングターゲット(In:Ga:Zn=4:2:
4.1[原子数比])に2500WのAC電力を投入して成膜した。
【0692】
第2の酸化窒化シリコン膜は、PECVD装置を用いて形成した。なお、第2の酸化窒
化シリコン膜の成膜時における基板温度は220℃とした。
【0693】
[sample E2]
sample E2は、sample E1と同様の構成とし、酸化物半導体膜108
_2の成膜条件をsample E1と異なる条件とした。
【0694】
sample E2の酸化物半導体膜108_2の成膜条件としては、基板温度を13
0℃とし、流量180sccmのアルゴンガスと、流量20sccmの酸素(18O)ガ
スをチャンバー内に導入し、圧力を0.6Paとし、金属酸化物スパッタリングターゲッ
ト(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])に2500WのAC電力を投入し
て成膜した。
【0695】
なお、本実施例では、sample E1及びsample E2ともに、酸化物半導
体膜108_2の成膜時における、成膜ガスの酸素としては、18Oを用いている。18
Oを用いた理由としては、酸化物半導体膜108_1及び酸化物半導体膜108_2中に
は、酸素(16O)が主成分レベルで含有されているため、酸化物半導体膜108_2の
成膜時における酸素(18O)が、酸化物半導体膜108_1中に取り込まれる量を測定
するためである。
【0696】
また、酸化物半導体膜の膜中の不純物分析としては、SIMS測定により行った。また
、SIMS測定に用いた装置は、アルバック・ファイ社製四重極型質量分析装置(ADE
PT1010特型)とした。
【0697】
<5-2.SIMS分析>
次に、本実施例における、酸化物半導体膜の膜中のSIMS分析結果を、
図43に示す
。なお、
図43は、酸化物半導体膜中の酸素(
18O)濃度を説明する図である。
【0698】
図43に示す結果より、sample E1とsample E2とを比較すると、s
ampleE2よりもsample E1の酸化物半導体膜108_1と、酸化物半導体
膜108_2との界面、及び酸化物半導体膜108_1中に取り込まれる
18O濃度が高
いことがわかる。また、sampleE1及びsample E2ともに、酸化物半導体
膜108_1中には、
18Oが概ね15nm入り込んでいることが分かる。
【0699】
<5-3.酸化物半導体膜中の欠陥評価>
次に、上記作製したsample E1及びsample E2の相当する試料の酸化
物半導体膜中の欠陥について評価を行った。本実施例では、ESRを用いて、g=1.9
3に現れる信号に由来するスピン密度を測定した。なお、g=1.93に現れる信号に由
来するスピン密度は、酸化物半導体膜中に含まれ得る酸素欠損(Vo)、または当該酸素
欠損に水素が入り込んだ(VoH)に起因する。
【0700】
sample E1及びsample E2に相当する試料のESR測定結果を
図44
に示す。
【0701】
図44に示すように、sampleE1とsample E2とを比較すると、sam
ple E1の方が、酸化物半導体膜108_1及び酸化物半導体膜108_2の積層構
造における、g=1.93に現れる信号に由来するスピン密度が低くなることがわかる。
これは、酸化物半導体膜108_2の成膜時における酸素流量比を高めることで、酸化物
半導体膜108_1及び酸化物半導体膜108_2中の酸素欠損が補填されるためだと示
唆される。
【0702】
なお、本実施例に示す構成は、他の実施の形態、または実施例と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【符号の説明】
【0703】
100 トランジスタ
100A トランジスタ
100B トランジスタ
100C トランジスタ
100D トランジスタ
100E トランジスタ
102 基板
104 導電膜
106 絶縁膜
108 酸化物半導体膜
108_1 酸化物半導体膜
108_1_0 酸化物半導体膜
108_2 酸化物半導体膜
108_2_0 酸化物半導体膜
108_3 酸化物半導体膜
109_2 酸化物半導体膜
112 導電膜
112a 導電膜
112a_1 導電膜
112a_2 導電膜
112a_3 導電膜
112b 導電膜
112b_1 導電膜
112b_2 導電膜
112b_3 導電膜
114 絶縁膜
116 絶縁膜
118 絶縁膜
120 導電膜
120a 導電膜
120b 導電膜
141a 開口部
141b 開口部
142a 開口部
142b 開口部
191 ターゲット
192 プラズマ
193 ターゲット
194 プラズマ
501 画素回路
502 画素部
504 駆動回路部
504a ゲートドライバ
504b ソースドライバ
506 保護回路
507 端子部
550 トランジスタ
552 トランジスタ
554 トランジスタ
560 容量素子
562 容量素子
570 液晶素子
572 発光素子
600 表示パネル
601 トランジスタ
604 接続部
605 トランジスタ
606 トランジスタ
607 接続部
612 液晶層
613 導電膜
617 絶縁膜
620 絶縁膜
621 絶縁膜
623 導電膜
631 着色層
632 遮光膜
633a 配向膜
633b 配向膜
634 着色層
635 導電膜
640 液晶素子
641 接着層
642 接着層
643 導電膜
644 EL層
645a 導電膜
645b 導電膜
646 絶縁膜
647 絶縁膜
648 導電膜
649 接続層
651 基板
652 導電膜
653 半導体膜
654 導電膜
655 開口
656 偏光板
659 回路
660 発光素子
661 基板
662 表示部
663 導電膜
664 電極
665 電極
666 配線
667 電極
672 FPC
673 IC
681 絶縁膜
682 絶縁膜
683 絶縁膜
684 絶縁膜
685 絶縁膜
686 接続体
687 接続部
700 表示装置
701 基板
702 画素部
704 ソースドライバ回路部
705 基板
706 ゲートドライバ回路部
708 FPC端子部
710 信号線
711 配線部
712 シール材
716 FPC
730 絶縁膜
732 封止膜
734 絶縁膜
736 着色膜
738 遮光膜
750 トランジスタ
752 トランジスタ
760 接続電極
770 平坦化絶縁膜
772 導電膜
773 絶縁膜
774 導電膜
775 液晶素子
776 液晶層
778 構造体
780 異方性導電膜
782 発光素子
786 EL層
788 導電膜
790 容量素子
791 タッチパネル
792 絶縁膜
793 電極
794 電極
795 絶縁膜
796 電極
797 絶縁膜
2190 プラズマ
2192 陽イオン
2501 成膜室
2502a ターゲット
2502b ターゲット
2504 偏析領域
2504a スパッタ粒子
2506 偏析領域
2506a スパッタ粒子
2510a バッキングプレート
2510b バッキングプレート
2520 ターゲットホルダ
2520a ターゲットホルダ
2520b ターゲットホルダ
2530a マグネットユニット
2530b マグネットユニット
2530N1 マグネット
2530N2 マグネット
2530S マグネット
2532 マグネットホルダ
2542 部材
2560 基板
2570 基板ホルダ
2580a 磁力線
2580b 磁力線
4000 成膜装置
4001 大気側基板供給室
4002 大気側基板搬送室
4003a ロードロック室
4003b アンロードロック室
4004 搬送室
4005 基板加熱室
4006a 成膜室
4006b 成膜室
4006c 成膜室
4101 カセットポート
4102 アライメントポート
4103 搬送ロボット
4104 ゲートバルブ
4105 加熱ステージ
4106 ターゲット
4107 防着板
4108 基板ステージ
4109 基板
4110 クライオトラップ
4111 ステージ
4200 真空ポンプ
4201 クライオポンプ
4202 ターボ分子ポンプ
4300 マスフローコントローラ
4301 精製機
4302 ガス加熱機構
7000 表示モジュール
7001 上部カバー
7002 下部カバー
7003 FPC
7004 タッチパネル
7005 FPC
7006 表示パネル
7007 バックライト
7008 光源
7009 フレーム
7010 プリント基板
7011 バッテリ
8000 カメラ
8001 筐体
8002 表示部
8003 操作ボタン
8004 シャッターボタン
8006 レンズ
8100 ファインダー
8101 筐体
8102 表示部
8103 ボタン
8200 ヘッドマウントディスプレイ
8201 装着部
8202 レンズ
8203 本体
8204 表示部
8205 ケーブル
8206 バッテリ
8300 ヘッドマウントディスプレイ
8301 筐体
8302 表示部
8304 固定具
8305 レンズ
9000 筐体
9001 表示部
9003 スピーカ
9005 操作キー
9006 接続端子
9007 センサ
9008 マイクロフォン
9050 操作ボタン
9051 情報
9052 情報
9053 情報
9054 情報
9055 ヒンジ
9100 テレビジョン装置
9101 携帯情報端末
9102 携帯情報端末
9200 携帯情報端末
9201 携帯情報端末