(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】連続長繊維の供給装置
(51)【国際特許分類】
B65H 51/30 20060101AFI20240826BHJP
B65H 51/06 20060101ALI20240826BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B65H51/30
B65H51/06 Z
E02D17/20 104B
(21)【出願番号】P 2023053012
(22)【出願日】2023-03-29
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永岡 藤彦
(72)【発明者】
【氏名】中田 隼
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 龍介
(72)【発明者】
【氏名】宮本 賢人
(72)【発明者】
【氏名】池田 桂
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-030023(JP,A)
【文献】実開昭63-123679(JP,U)
【文献】実開昭58-114265(JP,U)
【文献】特開2004-104022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 51/30
B65H 51/06
B65H 59/38
B65H 61/00
E02D 17/00
-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付材料に混入する連続長繊維を保持する保持手段と、前記連続長繊維を送り出す給糸手段とを有し、
前記保持手段の計量手段が備わり、
前記給糸手段に前記連続長繊維の速度制御手段が備わ
り、
前記計量手段が引張型ロードセルであり、この引張型ロードセルで得られた計測値に基づいて前記速度制御手段が制御可能とされており、
前記保持手段は、少なくとも左右のボビンが備わるクリルスタンドで構成されており、このクリルスタンドは前記引張型ロードセルによって吊り下げられており、前記引張型ロードセルは前記クリルスタンドを正面から見た場合において対称線を挟んで左右対称となるように設けられており、前記左右のボビンが前記左右対称となるロードセルのそれぞれ下方に位置するように設けられている、
ことを特徴とする連続長繊維の供給装置。
【請求項2】
前記速度制御手段は、軸心回りに回転可能な円板と、この円板から前記軸心方向に突出し、かつ前記軸心を挟んで位置する一対の突材とを有し、
この一対の突材間を前記連続長繊維が通り、前記円板の回転角度に応じて前記連続長繊維に負荷が加わる構成とされている、
請求項1に記載の連続長繊維の供給装置。
【請求項3】
前記給糸手段を構成する各機器は箱体内に収められており、この箱体内において前記速度制御手段は露出している、
請求項
2に記載の連続長繊維の供給装置。
【請求項4】
前記保持手段は前記連続長繊維が掛け回されるボビン
を複数有し、各ボビンの突出方向と前記突材の突出方向とが交わるように構成されている、
請求項
2に記載の連続長繊維の供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続長繊維の供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
法面の吹付工法等においては、降雨によって吹付材料が流亡するのを防止することなどを目的として、吹付材料にジオローブ等と呼ばれる連続長繊維を混入することがある。連続長繊維の混入は、短繊維の混入と比較して少ない混入量で広範囲にわたって流亡を防止することができるなどの利点を有している。
【0003】
連続長繊維は、連続長繊維の供給装置からデリバリーホース等を通して空気等の流体によって搬送され、ホースの先端部に備わる吹付ノズルから法面に吹き付けられる。現在、連続長繊維の供給装置としては、例えば、特許文献1に示す装置が存在する。この装置には、連続長繊維を保持するボビン、連続長繊維の速度を制御するテンサー、連続長繊維の速度を検出する速度検出手段、連続長繊維を送り出す給糸ノズル等が下流側からこの順に備わる。給糸ノズルから送り出された連続長繊維は、給糸ホースを通して搬送され、吹付ノズルから法面に吹き付けられる。
【0004】
この装置の使用は法面を安定化する等の点で何ら問題はないが、近年では、次の点が課題になっている。すなわち、近年では、吹付材料の単位時間当たりの吹付量が著しく増えており、連続長繊維の吹付量(供給量)も増加する必要に迫られている。しかしながら、従来の供給装置においては、速度検出手段がボトルネックとなり、連続長繊維の供給量を十分に増やすことができない。したがって、従来は、吹付材料の供給量を連続長繊維に合わせて減らすことで対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、単位時間当たりの供給量を増やすことができる連続長繊維の供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、
吹付材料に混入する連続長繊維を保持する保持手段と、前記連続長繊維を送り出す給糸手段とを有し、
前記保持手段の計量手段が備わり、
前記給糸手段に前記連続長繊維の速度制御手段が備わり、
前記計量手段が引張型ロードセルであり、この引張型ロードセルで得られた計測値に基づいて前記速度制御手段が制御可能とされており、
前記保持手段は、少なくとも左右のボビンが備わるクリルスタンドで構成されており、このクリルスタンドは前記引張型ロードセルによって吊り下げられており、前記引張型ロードセルは前記クリルスタンドを正面から見た場合において対称線を挟んで左右対称となるように設けられており、前記左右のボビンが前記左右対称となるロードセルのそれぞれ下方に位置するように設けられている、
ことを特徴とする連続長繊維の供給装置である。
【0008】
この点、従来は速度検出手段がボトルネックとなることから、速度検出手段の改良が模索されていた。しかしながら、連続長繊維の重さを計測し、この計測値に基づいて連続長繊維の供給量を調節しても供給装置としての機能に何ら問題は生じないのではないかとの考えに至った。そこで、そのようにした装置を製作し、試験したところ、何ら問題がないことが分かった。このような経緯のもと、想到するに至ったのが先に示す手段である。計量手段は従来から存在しており、本発明が完成した後から考えれば容易に想到することができるように思えるが、連続長繊維の速度を検出するという固定概念があり、連続長繊維を直接計量するということを想到することができなかったのである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、単位時間当たりの供給量を増やすことができる連続長繊維の供給装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】連続長繊維を吹付材料と共に地盤に吹き付けるシステムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0012】
本形態のシステムは、例えば、
図1に示すように、吹付材料の移送ラインAと連続長繊維(ジオローブ)の移送ラインBとからなる。吹付材料の移送ラインAにおいては、吹付材料の吹付装置4において吹付材料を調整する。この吹付材料は、例えば、モルタル、砂、現地発生土、水等を原材料とする。
【0013】
吹付材料は、コンプレッサー3によってデリバリーホース等の可撓性ホース2内を空気等の流体によって圧送する。圧送した吹付材料は、可撓性ホース2の先端に備わる吹付材料の吹付ノズル1Aから法面等の地盤Gに吹き付ける。
【0014】
一方、連続長繊維5の移送ラインBにおいては、クリルスタンド等の保持手段6によって連続超繊維5が保持されている。この連続長繊維5は、コンプレッサー3によって給糸装置10から給糸ホース19内を空気等の流体によって圧送する。圧送した連続長繊維5は、給糸ホース19の先端に備わる連続長繊維の吹付ノズル1Bから法面等の地盤Gに吹き付ける。
【0015】
本形態の保持手段は、
図2に示すように、複数のボビン6Bが備わるクリルスタンド6で構成されている。従来、このクリルスタンド6は地面等の接地面に直接載置されていたが、本形態においては引張型ロードセル6Aによって吊り下げられており、継続的に重量計測(本形態では減算計測。)されている。本形態において、ロードセル6Aによる計測値は、重量表示部6Cに表示(例えば、瞬時給糸量の表示や、積算給糸量の表示等。)される。したがって、作業員は、この表示に基づいてテンサー13を調節することで、連続長繊維5の給糸(供給)速度を調節することができる。もちろん、計測値に基づいて自動的にテンサー13が調節される自動機構とすることもできる。また、計測値は、チャート紙等に出力することもできる。
【0016】
なお、ロードセル6Aを利用した重量計測は、時系列で重量変化を把握することができるようになるとの利点を有するだけではない。本形態のようにボビン6Bが複数備わり、あるいはボビン6Bの数が施工現場によって変わる場合においては、クリルスタンド6の荷重分布が変化するため、ロードセルを使用するのが好適である。なお、クリルスタンド6の詳細については、後述する。
【0017】
クリルスタンド6から繰り出された(ボビン6Bに掛け回された)連続長繊維5は、給糸装置(手段)10に送り出される。この給糸装置10は、箱体10A内に収められている。この箱体10A内においては、連続長繊維5の流れの上流側から、速度制御手段たるテンサー13、ブレーキ14,第1握持機構15A、ガイド16、第2握持機構15B、サブノズル12,カッター(切断機構)17、及びメインノズル11が、この順に備わっている。この点、本形態の給糸装置10においては、連続長繊維5の切断検知センサー等の種々の検知機構を備えることができるが、フィーダー等からなる速度検出手段は備えていない。したがって、速度検出手段がボトルネックとなって連続長繊維5の給糸(供給)量を増やすことができないとの問題は生じない。本発明者等が試験したところによると、本形態では給糸量を従来比で25%増やせることが確認されている。
【0018】
箱体10A内において連続長繊維5は、テンサー13でテンションが調節され、速度が制御される。これにより、連続長繊維5の供給量が所定の量に保たれることになり、テンサー13は速度制御手段として機能している。
【0019】
本形態においてテンサー13は、箱体10A内で別途の箱体等に収められておらず、露出している(オープン形態)。この点、従来の形態においては、前述した文献が示すように、テンサーとしてストレージテンサー等を使用しており、詰まりが生じた場合等のリカバリーに時間を要していた。これに対し、本形態においては、テンサー13がオープンな形態であるため、リカバリーが容易であり、この点でも給糸速度の向上に資すると言える。なお、テンサーの詳細については、後述する。
【0020】
テンサー13を通り抜けた連続長繊維5は、ブレーキ14を通り抜ける。このブレーキ14は、連続長繊維5の供給中断、あるいは停止のためのものである。
【0021】
ブレーキ14を通り抜けた連続長繊維5は、一対の握持機構15A,15Bを通り抜け、サブノズル12に至る。一対の握持機構15A,15Bの間には、ガイド16が設けられている。また、一対の握持機構15A,15B、ガイド16、及びサブノズル12は可動式台座18上に載置されており、これらは一体としてメインノズル11側へスライド移動可能とされている。
【0022】
サブノズル12を経た連続長繊維5は、切断機構17を経てメインノズル11に至る。切断機構17は、連続長繊維5の供給中断,あるいは停止の際に、連続長繊維5を切断するのに使用される。この切断機構17としては、例えば、ヒートカッター、回転刃、ハサミ、ギロチンカッター等を使用することができる。
【0023】
メインノズル11から送り出された連続長繊維5は、給糸ホース19内を通り、吹付ノズル1Bから吐出される。吹付ノズル1Bから吐出された連続長繊維5は、吹付材料と混合され、地盤Gに吹き付けられる。
【0024】
(クリルスタンド6及びテンサー13)
以下、クリルスタンド6及びテンサー13について特筆すべき点を説明する。
本形態のクリルスタンド6は、
図3に示すように、ロードセル6Aによって架台6Dに吊り下げられている。ロードセル6Aの設置数や設置場所としては、種々考えることができる。ただし、本形態においてロードセル6Aは、クリルスタンド6を正面から見た場合において対称線Lを挟んで左右対称となるよう2カ所に設けている。
【0025】
一方、本形態においては、ボビン6Bを9つ設けている。具体的には、上下に3段、各段にそれぞれ3カ所であり、中央のボビン6Bが左右のボビン6Bよりも若干上方に位置するように設けている。そして、重要なのは、左右のボビン6Bが一対の(左右の)ロードセル6Aのそれぞれ下方に位置するように設けている。この配置によると、重量の偏在を抑制することができるのはもちろんであるが、振動抑制効果が極めて高く、テンサー13での速度制御効果が極めて精確なものとなる。
【0026】
この点、本形態においては、
図4に示すように、テンサー13は、軸心(回転軸)回りに回転可能な円板13Aと、この円板13Aから軸心方向に突出し、かつ軸心を挟んで対称となる場所に位置する一対の突材13Bとを有する。連続長繊維5は、この一対の突材13B間を通っており、円板13Aの回転角度に応じて連続長繊維5に負荷が加わる構成となっている。
【0027】
具体的には、
図4の(1)に示すように、円板13Aの回転角が相対的に小さい場合は、連続長繊維5に加わる負荷が相対的に小さくなる。他方、
図4の(2)に示すように、円板13Aの回転角が相対的に大きい場合は、連続長繊維5に加わる負荷が相対的に大きくなる。この形態を採用すると、従来例のようにストレージテンサーを使用した場合と比較して連続長繊維5が詰まりづらくなり、また、詰まった場合におけるリカバリーがし易くなる。特にこのリカバリー容易であるとの効果は、テンサー13がオープン(露出している)ことと相まって、無視できないものとなる。
【0028】
ここで本形態においては、
図5に示すように、テンサー13に備わる突材13Bの突出方向とボビン6Bの突出方向とが交わるように構成されている。この形態によると、ボビン6Bから引き出される連続長繊維5の糸振れがテンサー13で吸収され易くなる。もちろん、ボビン6Bからテンサー13に至るまでの間には、適宜ガイド等が設置されるが、ガイド等は連続長繊維5の大きな流れを誘導するものであり、糸振れを原因とする小さな振動は吸収することができない。しかしながら、テンサー13においては、突材13Bがある程度の長さを有するため、かかる微妙な振動は、テンサー13において吸収される。ちなみに、突材13の長さは、好ましくは2~10cmである。
【0029】
(その他)
本形態においては、連続長繊維5として9つのボビン6Bを使用し、9本の糸を合糸して用いる例を示している。ただし、糸の本数は必要に応じ増減が可能であり、1本又は2本以上の複数本とすることができる。この点を糸の供給量に換算すると、0.01~2kg/分である。
【0030】
デリバリーホース2や給糸ホース19等のホース類は管状形態を損なわない範囲での可撓性を有していればよい。ただし、制電性、平滑性等の機能を付与させておけば、連続長繊維5のホース内における摩擦帯電や、摩擦による糸詰まりを防止することができる。この観点からは、ホースを繋ぐ接続パイプやノズル1A,1B等は、内周面においてホース2,19と面一になっているのがよい。また、接続パイプやノズル1A,1B等は、塩ビ製とするよりもステンレス製等の金属製とし、摩耗による摩擦抵抗の増加等を極力防ぐように設計するのが好ましい。なお、金属製とすると、厚さ(肉厚)を薄くすることができるため、内周面を面一とするのに適する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、連続長繊維の供給装置として利用可能であり、例えば、ロービングウォール工法、ロービングソイル工法、ロービングショット工法等の地盤安定化工法や、緑化工法等において利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1A,1B 吹付ノズル
2 デリバリーホース
3 コンプレッサー
4 吹付材料の吹付装置
5 連続長繊維
6 クリルスタンド
6A ロードセル
6B ボビン
6C 重量表示部
6D 架台
10 給糸装置(手段)
10A 箱体
11 メインノズル
12 サブノズル
13 テンサー
14 ブレーキ
15A,15B 握持機構
16 ガイド
17 切断機構
18 台座
19 給糸ホース
【要約】
【課題】単位時間当たりの供給量を増やすことができる連続長繊維の供給装置とする。
【解決手段】吹付材料に混入する連続長繊維5を保持する保持手段6と、連続長繊維5を送り出す給糸手段10とを有し、保持手段6の計量手段6Aが備わり、給糸手段10に連続長繊維5の速度制御手段13が備わることを特徴とする。
【選択図】
図1