(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】骨セメントペーストを調製するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B01F 31/441 20220101AFI20240826BHJP
A61B 17/88 20060101ALI20240826BHJP
A61F 2/28 20060101ALI20240826BHJP
B01F 23/53 20220101ALI20240826BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20240826BHJP
B01F 101/20 20220101ALN20240826BHJP
【FI】
B01F31/441
A61B17/88
A61F2/28
B01F23/53
B01F35/71
B01F101:20
(21)【出願番号】P 2023102111
(22)【出願日】2023-06-21
【審査請求日】2023-06-21
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ トーマス
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-217470(JP,A)
【文献】特開2017-64398(JP,A)
【文献】特表2013-542843(JP,A)
【文献】特開2012-17147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F
A61B 17/56 - 17/92
A61F 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの出発成分から骨セメントペースト(520)を調製するための装置(100)であって、
骨セメント粉末(500)が第1の出発成分として貯蔵される内部空間(215)を有する中空円筒形カートリッジ(210)と、前記内部空間(215)内で軸方向に変位可能であり、流体伝導に関して近位カートリッジ端部(211)で前記内部空間(215)を封止する分配プランジャ(280)と、前記分配プランジャ(280)の混合ロッドダクト(235)を介して前記内部空間(215)内に案内され、かつ前記内部空間(215)内に移動可能に取り付けられる混合ロッド(230)とを備える混合ユニット(200)と、
第2の出発成分としてのモノマー液(510)のためのリザーバ(300)であって、流体伝導に関して前記混合ユニット(200)の前記内部空間(215)を前記リザーバ(300)に接続する導管(310)を備える、リザーバ(300)と、を備え、
前記リザーバ(300)が、リザーバ容器(320)であって、流体伝導に関して封止され、アンプル本体(331)及びアンプルヘッド(332)を有する少なくとも1つのアンプル(330)が配置され、前記モノマー液(510)が前記アンプル(330)内に貯蔵される、リザーバ容器(320)と、前記アンプルヘッド(332)の領域内にキャビティ(340)と、を備え、
前記キャビティ(340)が、流体伝導に関して前記導管(310)に接続され、前記アンプル(330)への接続部(350)を備え、前記アンプルヘッド(332)が、少なくとも前記接続部(350)内の領域に配置され、前記リザーバ容器(320)が、少なくとも部分的に変形可能な領域(325)を備え、それにより、前記接続部(350)に対する枢動点(420)を中心とした前記アンプル(330)の傾斜が可能になる、装置(100)において、
前記導管(310)が、前記分配プランジャ(280)の導管ダクト(290)を通って前記内部空間(215)内に延在
し、
前記導管(310)及び前記導管ダクト(290)が、前記混合ユニット(200)と前記リザーバ(300)との間に第1のフォームクロージャ(400)を形成し、
前記リザーバ(300)が、第2のフォームクロージャ(410)を介して前記リザーバ(300)を前記混合ユニット(200)に接続するための接続要素(360)を備える、ことを特徴とする、装置(100)。
【請求項2】
前記接続要素(360)が留め金である、請求項
1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記枢動点(420)、前記第1のフォームクロージャ(400)、及び前記第2のフォームクロージャ(410)が、側面図において三角形の頂点を形成する、請求
1又は
2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記第1のフォームクロージャ(400)、前記第2のフォームクロージャ(410)、及び前記枢動点(420)がそれぞれ、前記カートリッジ(210)の長手方向軸(213)に平行に延在する直線(401、411、421)上にあり、前記直線(401、411、421)が、前記カートリッジ(210)の前記長手方向軸(213)から異なる直線距離を有する、請求項
1又は
2に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記第2のフォームクロージャ(410)が、前記接続要素(360)と前記混合ロッド(230)との間に形成される、請求項
1又は
2に記載の装置(100)。
【請求項6】
真空接続部(260)が前記分配プランジャ(280)上に配置され、前記真空接続部(260)を介して、前記内部空間(215)を、流体伝導に関して負圧源に接続することができる、請求項1
又は2に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記導管(310)が、チューブ及び/又はホースである、請求項1
又は2に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記導管(310)が、前記導管ダクト(290)内で軸方向に変位可能である、請求項
7に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記導管(310)が、前記内部空間(215)の軸方向内部長さ(216)の少なくとも70%にわたって延在する、請求項
7に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記混合ユニット(200)が、前記導管(310)を取り外した後に流体伝導に関して前記導管ダクト(290)を封止するために、ダクトクロージャ(270)を備える、請求項1
又は2に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記カートリッジ(210)が、前記近位カートリッジ端部(211)の軸方向反対側の遠位カートリッジ端部(212)にカートリッジヘッド(220)を備え、前記カートリッジヘッドが、前記遠位カートリッジ端部(212)を流体伝導に関して封止し、前記カートリッジヘッド(220)が、分配スパウト(530)を流体伝導に関して接続するためのカートリッジヘッドダクト(225)を備え、前記分配スパウト(530)を介して前記骨セメントペースト(520)を調製後に前記内部空間(215)から分配することができ、前記カートリッジ(210)及び前記カートリッジヘッド(220)が一体に設計されている、請求項1
又は2に記載の装置(100)。
【請求項12】
請求項1
又は2に記載の装置(100)による、2つの出発成分から骨セメントペースト(520)を調製するための方法(600)であって、
a.前記リザーバ容器(320)内に貯蔵される前記アンプル(330)を、前記接続部(350)に対して前記枢動点(420)を中心に傾斜させることによって、前記少なくとも1つのアンプル(330)を流体伝導に関して開封するステップ(610)と、
b.前記モノマー液(510)を前記少なくとも1つのアンプル(330)から前記キャビティ(340)内に流すステップ(620)と、
c.前記モノマー液(510)を前記キャビティ(340)から前記導管(310)を介して前記内部空間(215)に搬送するステップ(630)と、を含む、方法(600)。
【請求項13】
請求項
1又は
2に記載の装置(100)による、2つの出発成分から骨セメントペースト(520)を調製するための方法(600)であって、
a.前記リザーバ容器(320)内に貯蔵される前記アンプル(330)を、前記接続部(350)に対して前記枢動点(420)を中心に傾斜させることによって、前記少なくとも1つのアンプル(330)を流体伝導に関して開封するステップ(610)と、
b.前記モノマー液(510)を前記少なくとも1つのアンプル(330)から前記キャビティ(340)内に流すステップ(620)と、
c.前記モノマー液(510)を前記キャビティ(340)から前記導管(310)を介して前記内部空間(215)に搬送するステップ(630)と、
d.前記第2のフォームクロージャ(410)を取り外すステップ(640)と、
e.前記導管(310)を前記導管ダクト(290)から引き出すことによって前記第1のフォームクロージャ(400)を取り外すステップ(650)と、
f.流体伝導に関して、前記導管ダクト(290)を封止するステップ(660)と、
g.骨セメント粉末(500)とモノマー液(510)とを混合するステップ(670)と、を含む、方法(600)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの出発成分から骨セメントペーストを調製するための装置であって、
骨セメント粉末が第1の出発成分として貯蔵される内部空間を有する中空円筒形カートリッジと、内部空間内で軸方向に変位可能であり、流体伝導に関して近位カートリッジ端部で内部空間を封止する分配プランジャと、分配プランジャの混合ロッドダクトを介して内部空間内に案内され、内部空間内に移動可能に取り付けられる混合ロッドとを備える混合ユニットと、
第2の出発成分としてのモノマー液のためのリザーバであって、流体伝導に関して混合ユニットの内部空間をリザーバに接続する導管を備える、リザーバと、を備え、
リザーバが、リザーバ容器であって、流体伝導に関して封止され、アンプル本体及びアンプルヘッドを有する少なくとも1つのアンプルが配置され、モノマー液がアンプル内に貯蔵される、リザーバ容器と、アンプルヘッドの領域内のキャビティと、を備え、
キャビティが、流体伝導に関して導管に接続され、アンプルへの接続部を備え、アンプルヘッドが、少なくとも接続部内の領域に配置され、リザーバ容器が、少なくとも部分的に変形可能な領域を備え、それにより、接続部に対する枢動点を中心としたアンプルの傾斜が可能になる、装置に関する。
本発明は更に、そのような装置を使用して骨セメントペーストを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨セメントペーストを簡単に、確実に、かつ迅速に調製することができる、骨セメントペーストを調製するための装置及び方法を特定するために、多大な努力がなされている。骨セメントペーストを調製する1つの重要な態様は、骨セメント中の空気混入、例えば気泡を回避することである。これを回避するために、複数の真空セメンティングシステムが記載されており、その例として、米国特許第6,033,105(A)号明細書、同第5,624,184(A)号明細書、同4,671,263(A)、同4,973,168(A)号明細書、同5,100,241(A)号明細書、国際公開第99/67015(A1)号明細書、欧州特許第1020167(A2)号明細書、米国特許第5,586,821(A)号明細書、欧州特許第1016452(A2)号明細書、独国特許第3640279(A1)号明細書、国際公開第94/26403(A1)号明細書、欧州特許第1005901(A2)号明細書、欧州特許第1886647(A1)号明細書、米国特許第5,344,232(A)号明細書、が挙げられる。
【0003】
1つの開発は、両方の出発成分が混合システムの別個の領域に貯蔵され、セメンティング適用の直前にセメンティングシステムにおいて互いに混合されるだけであるセメンティングシステムを開発することからなる。このような封止された、いわゆる完全プレパックシステムは、以下の文献、欧州特許第0,692,229(A1)号明細書、独国特許第10,2009,031,178(B3)号明細書、米国特許第5,997,544(A)号明細書、米国特許第6,709,149(B1)号明細書、独国特許第698,12,726(T2)号明細書、欧州特許第0,796,653(A2)号明細書、米国特許第5,588,745(A)号明細書、に記載されている。
【0004】
国際公開第2012/038002(A1)号明細書には、モノマー液が導管を介して容器からカートリッジヘッドを通って、骨セメント粉末が充填されたカートリッジの内部空間内に案内され、それにより、カートリッジ内で混合によって骨セメントペーストを調製することができる装置が記載されている。導管及びカートリッジは、フォームクロージャを介して互いに接続される。例えばバルブを開くことによって容器を開封した後、モノマー液は導管を介して内部に流れる。装置の開示された構造の欠点は、カートリッジへの容器の比較的不安定な接続のために、容器の開口部のタイプが制限される可能性があることである。例えば、容器を開封すると、アンプルの傾斜により導管が座屈する可能性がある。
装置の別の欠点は、カートリッジヘッドがモノマー液の導入と骨セメントペーストの混合の両方に使用されるため、カートリッジヘッドの構造が複雑であることである。カートリッジヘッドは、更に、ねじ山を介してカートリッジに接続され、これにより、装置の構造的完全性を弱化させる可能性がある。
【0005】
欧州特許第2,404,864(A1)号明細書には、アンプルを開封するための装置であって、アンプル本体とアンプルヘッドとを有する、流体伝導に関して封止されたアンプルが配置された外側容器と、キャビティとを備え、キャビティが、アンプルへの接続部を備え、アンプルヘッドが、少なくとも接続部の領域に配置されている、装置が記載されている。外側容器の壁は、少なくとも1つの変形可能な領域を備え、それにより、接続部に対するアンプルの傾斜が可能になり、流体伝導に関してアンプルが開封される。
【0006】
欧州特許第3,093,067(A1)号明細書は、モノマー液及び骨セメント粉末から骨セメントペーストを調製するための装置を記載しており、装置は、欧州特許第2,404,864(A1)号明細書による、モノマー液で充填されたアンプルを開封するための装置を備える。流体伝導に関してアンプルを開封した後、モノマー液は、導管を介して開口部を通って、骨セメント粉末で充填されたカートリッジの内部空間内に搬送され、そこで、開口部の軸方向反対側の分配プランジャを通って延在する混合装置によって骨セメント粉末と混合されて、骨セメントペーストを形成する。装置の欠点は、記載された装置がその操作モードに起因して比較的かさばる構造を有することである。加えて、モノマー液をカートリッジの片側に導入し、軸方向反対側のカートリッジの側を介して骨セメントペーストを混合することは、装置の扱いやすさを低減し、装置及びその取り扱いの複雑さの増加を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
市場では、骨セメントペーストを調製するための装置を更に簡略化したいという要望がある。
【0008】
本発明の目的は、従来技術から生じる欠点のうちの1つ又は複数を少なくとも部分的に克服することである。
【0009】
本発明は、特に、骨セメントペーストの単純で迅速かつ適用安全な調製のためのモノマー液を有する1つ又は複数のアンプル、特にガラスアンプルの単純かつ適用安全な開封を可能にする装置を提供するという目標に基づく。特に、1つ又は複数のアンプルの開封は、可能な限り少ない労力で、かつ更なる別個のツールを回避して行われるべきである。更に、可能な限り少ない構成要素でアンプルの開封が可能にされるべきである。更に、モノマー液は、骨セメントペーストの調製のために可能な限り損失なく提供されるべきである。装置はまた、可能な限りコンパクトな構造で可能な限り高い構造的完全性を有するべきである。
【0010】
本発明の更なる目的は、骨セメントが2つの出発成分から調製され得る方法を提供することであり、それによって、既に記載された目的の少なくともいくつかが少なくとも部分的に達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
独立請求項の特徴は、上述の目的のうちの少なくとも1つを少なくとも部分的に達成することに寄与する。従属請求項は、目的の少なくとも1つを少なくとも部分的に達成することに寄与する好ましい実施形態を提供する。
【0012】
本発明の第1の実施形態は、2つの出発成分から骨セメントペーストを調製するための装置であって、
骨セメント粉末が第1の出発成分として貯蔵される内部空間を有する中空円筒形カートリッジと、内部空間内で軸方向に変位可能であり、流体伝導に関して近位カートリッジ端部で内部空間を封止する分配プランジャと、分配プランジャの混合ロッドダクトを介して内部空間内に案内され、内部空間内で移動可能に、特に軸方向に変位可能に、かつ内部空間内で混合ロッドの長手方向軸を中心に回転可能に取り付けられる混合ロッドとを備える混合ユニットと、
第2の出発成分としてのモノマー液のためのリザーバであって、流体伝導に関して混合ユニットの内部空間をリザーバに接続する導管を備える、リザーバと、を備え、
リザーバが、リザーバ容器であって、流体伝導に関して封止され、アンプル本体及びアンプルヘッドを有する少なくとも1つのアンプルが配置され、モノマー液がアンプル内に貯蔵される、リザーバ容器と、アンプルヘッドの領域内のキャビティと、を備え、
キャビティが、流体伝導に関して導管に接続され、アンプルへの接続部を備え、アンプルヘッドが、少なくとも接続部の領域に配置され、リザーバ容器が、少なくとも部分的に変形可能な領域を備え、それにより、接続部に対する枢動点を中心としたアンプルの傾斜が可能になる、装置において、
導管が、分配プランジャの導管ダクトを通って内部空間内に延在することを特徴とする、装置である。
【0013】
装置の一実施形態では、導管及び導管ダクトは、混合ユニットとリザーバとの間に第1のフォームクロージャ、好ましくは可逆的な第1のフォームクロージャを形成する。本実施形態は、好ましくは本発明の第1の実施形態に従属する、本発明の第2の実施形態である。
【0014】
装置の一実施形態では、リザーバは、第2のフォームクロージャを介して、好ましくは可逆的な第2のフォームクロージャを介してリザーバを混合ユニットに接続するために、接続要素を備える。本実施形態は、好ましくは本発明の第2の実施形態に従属する、本発明の第3の実施形態である。
【0015】
装置の一実施形態では、接続要素は留め金である。本実施形態は、好ましくは本発明の第3の実施形態に従属する、本発明の第4の実施形態である。
【0016】
装置の一実施形態では、側面図において、枢動点、第1のフォームクロージャ、及び第2のフォームクロージャは、三角形の頂点を形成する。本実施形態は、好ましくは本発明の第3又は第4の実施形態に従属する、本発明の第5の実施形態である。
【0017】
装置の一実施形態では、第1のフォームクロージャ、第2のフォームクロージャ、及び枢動点はそれぞれ、カートリッジの長手方向軸に平行に延在する直線上にあり、直線は、カートリッジの長手方向軸から異なる直線距離を有する。本実施形態は、好ましくは本発明の第3~第5の実施形態に従属する、本発明の第6の実施形態である。
【0018】
装置の一実施形態では、第2のフォームクロージャは、接続要素と混合ロッドとの間に形成される。本実施形態は、好ましくは本発明の第3~第6の実施形態に従属する、本発明の第7の実施形態である。
【0019】
装置の一実施形態では、真空接続部が分配プランジャ上に配置され、真空接続部を介して、内部空間を、流体伝導に関して、真空ポンプなどの負圧源に接続することができる。本実施形態は、好ましくは本発明の第1~第7の実施形態のうちのいずれか1つに従属する、本発明の第8の実施形態である。
【0020】
装置の一実施形態では、導管は、チューブ、ホース、又はチューブ及びホースである。本実施形態は、好ましくは本発明の第1~第8の実施形態のうちのいずれか1つに従属する、本発明の第9の実施形態である。
【0021】
装置の一実施形態では、導管は導管ダクト内で軸方向に変位可能である。本実施形態は、好ましくは本発明の第9の実施形態に従属する、本発明の第10の実施形態である。
【0022】
装置の一実施形態では、導管は、内部空間の軸方向内部長さの少なくとも70%にわたって、好ましくは少なくとも80%にわたって、より好ましくは少なくとも90%にわたって延在する。本実施形態は、好ましくは本発明の第9又は第10の実施形態に従属する、本発明の第11の実施形態である。
【0023】
装置の一実施形態では、混合ユニットは、導管を取り外した後に流体伝導に関して導管ダクトを封止するために、好ましくは別個に存在するダクトクロージャを備える。本実施形態は、好ましくは本発明の第1~第11の実施形態のうちのいずれか1つに従属する、本発明の第12の実施形態である。
【0024】
装置の一実施形態では、カートリッジは、近位カートリッジ端部の軸方向反対側の遠位カートリッジ端部にカートリッジヘッドを備え、カートリッジヘッドは、遠位カートリッジ端部を流体伝導に関して封止し、カートリッジヘッドは、分配スパウトを流体伝導に関して接続するためのカートリッジヘッドダクトを備え、分配スパウトを介して骨セメントペーストを調製後に内部空間から分配することができ、カートリッジ及びカートリッジヘッドは一体に設計されている。本実施形態は、好ましくは本発明の第1~第12の実施形態のうちのいずれか1つに従属する、本発明の第13の実施形態である。
【0025】
本発明の第14の実施形態は、本発明の第1~第13の実施形態のうちのいずれか1つによる装置による、2つの出発成分から骨セメントペーストを調製するための方法であって、
a.リザーバ容器内に貯蔵されるアンプルを、接続部に対して枢動点を中心として傾斜することによって、少なくとも1つのアンプルを流体伝導に関して開封するステップと、
b.モノマー液を少なくとも1つのアンプルからキャビティ内に流すステップと、
c.モノマー液をキャビティから導管を介して内部空間に搬送するステップと、を含む、方法である。
【0026】
本発明の第3~第13の実施形態による装置による方法の一実施形態では、本方法は、
d.第2のフォームクロージャを取り外すステップと、
e.導管を導管ダクトから引き出すことによって第1のフォームクロージャを取り外すステップと、
f.流体伝導に関して、導管ダクトを封止するステップと、
g.骨セメント粉末とモノマー液とを混合するステップと、を更に含む。
【0027】
本実施形態は、好ましくは本発明の第14の実施形態に従属する、本発明の第15の実施形態である。
【0028】
一般
本明細書において、範囲の指定は、限界として指定される値も含む。したがって、変数Aに関する「XからYまでの範囲内」というタイプの指定は、Aが値X、Y、及びXとYとの間の値をとることができることを意味する。したがって、変数Aに関する「Yまで」というタイプの片側に区切られた範囲は、値としてY及びY未満を意味する。
【0029】
記載された特徴のいくつかは、「実質的に」という用語と関連している。「実質的に」という用語は、実際の条件及び製造技法の下で、「重なり合う」、「垂直」、「直径」、又は「平行性」などの用語の数学的に厳密な解釈は厳密には行われ得ず、特定の製造関連誤差許容範囲内でのみ行われるように理解されるべきである。例えば、「実質的に垂直な軸」は、互いに対して85度~95度の角度を描き、「実質的に同一の体積」は、5体積%までの偏差を含む。「実質的にプラスチック材料からなる装置」は、例えば、95重量%以上100重量%以下のプラスチック含有量を含む。「実質的に体積Bの全てを添加する」は、例えば、Bの総体積の95体積%以上100体積%以下を添加することを含む。「実質的に成分Cの全てを搬送する」は、例えば、Cの総体積の90体積%以上100体積%以下、特に95体積%以上100体積%以下を搬送することを含む。
【0030】
「近位」及び「遠位」という用語は、装置又は装置の他の構造ユニットの空間的に対向する端部を指定するためにのみ使用され、装置のユーザなどの人体に対する配向に関するいかなる推論も可能にしない。「~に対して遠位に」及び「~に対して近位に」又は同様の表現は、対応して、装置の2つの構造ユニットの互いに対する空間的配置のみを表す。
【0031】
発明の詳細
本発明の第1の主題は、2つの出発成分から骨セメントペーストを調製するための装置であって、
骨セメント粉末が第1の出発成分として貯蔵される内部空間を有する中空円筒形カートリッジと、内部空間内で軸方向に変位可能であり、流体伝導に関して近位カートリッジ端部で内部空間を封止する分配プランジャと、分配プランジャの混合ロッドダクトを介して内部空間内に案内され、内部空間内で移動可能に、特に軸方向に変位可能に、かつ内部空間内で混合ロッドの長手方向軸を中心に回転可能に取り付けられる混合ロッドとを備える混合ユニットと、
第2の出発成分としてのモノマー液のためのリザーバであって、流体伝導に関して混合ユニットの内部空間をリザーバに接続する導管を備える、リザーバと、を備え、
リザーバが、リザーバ容器であって、流体伝導に関して封止され、アンプル本体及びアンプルヘッドを有する少なくとも1つのアンプルが配置され、モノマー液がアンプル内に貯蔵される、リザーバ容器と、アンプルヘッドの領域内のキャビティと、を備え、
キャビティが、流体伝導に関して導管に接続され、アンプルへの接続部を備え、アンプルヘッドが、少なくとも接続部の領域に配置され、リザーバ容器が、少なくとも部分的に変形可能な領域を備え、それにより、接続部に対する枢動点を中心としたアンプルの傾斜が可能になる、装置において、
導管が、分配プランジャの導管ダクトを通って内部空間内に延在することを特徴とする、装置、に関する。
【0032】
装置は、骨セメント粉末からの骨セメントペーストとモノマー液とを混合する働きをし、混合前に、骨セメント粉末は装置の混合ユニット内に貯蔵され、モノマー液は装置のリザーバ内に貯蔵される。
【0033】
リザーバは、混合ユニット内で骨セメント粉末と混合することによって骨セメントペーストを調製する前に、モノマー液を貯蔵する働きをする。この目的のために、リザーバは、モノマー液で充填され、アンプルヘッド及びアンプル本体を備える、流体伝導に関して封止された1つ又は複数の、好ましくは2つのアンプル、特にガラスアンプルを受け入れるためのリザーバ容器を備える。リザーバ容器は、少なくとも1つのアンプル、特に少なくともアンプル本体を取り囲み、それにより、アンプルは、使用されるまでリザーバ内に確実に貯蔵することができる。リザーバ容器は、例えば、少なくとも1つのアンプルが挿入される中空円筒の形態で存在することができ、装置の改善された輸送能力のために、リザーバ容器は、例えば、カバーを備えるリザーバ容器によって、アンプルが装置から、特にリザーバから意図せずに漏れることができないように成形される。リザーバ容器は、好ましくは、2つのアンプル、特に互いに隣接する2つのアンプルを、好ましくは実質的に平行な長手方向軸でリザーバ内に貯蔵することができるように成形される。
更に、リザーバは、流体伝導に関して、少なくとも1つのアンプルを開封するように働く。この目的のために、リザーバは、リザーバ容器内に配置されたアンプルに接続部を介して接続されたキャビティを含む。アンプルは、アンプルヘッドがキャビティの方向を向く一方で、アンプル本体が少なくとも部分的に、好ましくは完全にリザーバ容器内に配置されるようにリザーバ内に貯蔵される。接続部は、キャビティとリザーバ容器との間に延在し、実際には、アンプルヘッドが少なくとも接続部の領域に配置されるように延在する。この目的のために、接続部は、アンプルヘッドが少なくとも部分的に接続部に挿入されることを可能にする接続部直径を有する。一実施形態では、接続部は、アンプルヘッドが接続部に完全に挿入されることを可能にする接続部直径を有する。接続部直径は、アンプル本体が接続部に挿入できないように、アンプル本体の直径よりも小さいことが好ましい。例えば、接続部はリング又は中空円筒として設計され、アンプルヘッドは、リング又は中空円筒によって少なくとも部分的に取り囲まれる。接続部は、アンプルの構造的完全性を超える構造的完全性を有するので、アンプルは接続部に対して押圧されたときに破損する可能性がある。
アンプル、又は2つ以上のアンプルが存在する場合には全てのアンプルを開封するために、リザーバ容器は、少なくとも部分的に、特にアンプルのアンプルヘッドからアンプル本体への移行部に隣接して、変形可能な領域を含む。一実施形態では、リザーバ容器は完全に変形可能である。変形可能な領域は、接続部に対して枢動点を中心としたアンプルの傾斜を可能にする。接続部直径は、この場合、傾斜中に、少なくともアンプルヘッドから外方に面するアンプル本体端部が枢動点を中心として傾斜される一方で、少なくともアンプル本体から外方に面するアンプルヘッド端部が接続部内に留まるように、アンプルヘッドに適合され、それにより、アンプルは、特にアンプルヘッドとアンプル本体との間のアンプルネックの領域において、アンプルの少なくとも部分的な破裂によって流体伝導に関して開封される。この場合の接続部は、主に、枢動点を中心としたアンプルの傾斜移動に対してアンプルヘッドを固定する働きをする。例えば、接続部直径は、アンプルヘッドの直径よりも10%以上大きくないので、アンプルの比較的わずかな傾斜が既に流体伝導に関してその開口部につながる。
流体伝導に関して少なくとも1つのアンプルを開封した後、モノマー液は、アンプルからキャビティ内に流出することができる。キャビティは、導管を介して混合ユニットに、特に骨セメント粉末が貯蔵される混合ユニットのカートリッジの内部に、流体伝導に関して接続される。キャビティから混合ユニットへの導管を介したモノマー液の搬送は、例えば、重力によって、混合ユニット内、特にカートリッジの内部の負圧を介して、又はそれらを組み合わせて引き起こされる可能性がある。
リザーバは、広範囲の材料又は材料の組み合わせからなることができる。例として、リザーバはポリマーからなってもよい。このようにして、ユーザは、使用中に、リザーバの適切な機能、特に、少なくとも1つのアンプルからのモノマー液の流出を視覚的に監視することができるので、ポリマーは透明ポリマーであることが好ましい。
【0034】
混合ユニットは、モノマー液を混合ユニット、特に混合ユニットの内部に搬送した後に、骨セメント粉末からの骨セメントペーストとモノマー液とを混合する働きをする。
【0035】
混合ユニットは、骨セメント粉末が貯蔵される中空円筒形カートリッジを備える。中空円筒形カートリッジは、内部空間と、内部空間を取り囲むカートリッジ壁とを備えるチューブ状容器として理解されるべきである。カートリッジの断面は、任意の形状をとることができる。装置は製造が容易であり、使用が安全であるので、断面、好ましくは内部空間の断面も円形設計である。これは、ユーザにとって容易な取り扱いを可能にし、縁部が存在しないことに起因して、可動部分が装置内に割り込むリスクを低減する。
【0036】
混合ユニット、特にカートリッジは、広範囲の材料又は材料の組み合わせからなることができる。例えば、混合ユニット、特にカートリッジは、ポリマーからなることができる。このようにして、ユーザは、使用中に混合ユニットの適切な機能を視覚的に監視することができるので、ポリマーは、好ましくは透明ポリマーである。
混合ユニットは、分配プランジャを備え、分配プランジャは、内部空間内で軸方向に変位可能であり、好ましくは、可逆的に軸方向に変位可能であり、カートリッジの内部空間を近位カートリッジ端部で流体伝導に関して封止し、それにより、骨セメント粉末が近位カートリッジ端部から意図せずに漏れることができない。分配プランジャは、近位カートリッジ端部の軸方向反対側の遠位カートリッジ端部の方向に前進することができるように、内部空間内に取り付けられる。これは、例えば、装置内で、特に混合ユニットの内部空間内で調製された骨セメントペーストを遠位カートリッジ端部から分配する働きをすることができる。
分配プランジャは、好ましくは中心に混合ロッドダクトを備え、混合ロッドダクトは、分配プランジャを通って軸方向に延在し、混合ロッドダクト内に混合ロッドが配置される。この場合、混合ロッドは、骨セメント粉末又は骨セメントペーストが混合ロッドダクトから漏れることができないように、混合ロッドダクトで終端する。
混合ロッドは、骨セメントペーストを調製するために骨セメント粉末とモノマー液とを混合する働きをする。この目的のために、混合ロッドは、移動可能に、特に内部空間内で軸方向に変位可能に、好ましくは混合ロッドダクト内でそれ自体の軸を中心に回転可能に、混合ロッドダクトを通って内部空間内に延在する。混合ロッドは、好ましくは、内部空間の内部長さよりも長い混合ロッド長さを有し、それにより、混合ロッドが内部長さ全体にわたって出発成分を混合することができ、同時に混合ユニットの外側からユーザによって混合ロッドが操作されることを可能にする。
【0037】
可能であれば、内部空間の断面全体にわたって出発成分を完全に混合することができるように、混合ロッドは、内部空間内に突出する遠位混合ロッド端部に混合要素を備えることが好ましい。例えば、混合要素は、混合ディスクを通って軸方向に延在する複数の、例えば2つから6つの混合ディスクダクトを有する混合ディスクとして形成される。混合ロッドは、好ましくは、カートリッジの直径に実質的に対応する直径を有し、これは、出発成分の完全な混合を容易にする。
【0038】
ユーザが混合ユニットの外側から操作することを容易にするために、混合ロッドは、内部空間に取り付けられていない近位混合ロッド端部にハンドルを備えることが好ましい。
骨セメントペーストが調製された後、混合ロッドは、装置の更なる使用のためにもはや必要とされない。したがって、一実施形態では、混合ロッドは、制御された方法で混合ロッドを破断することができる所定の破断点を有し、それにより、混合ロッドがもはや分配プランジャから突出しない。好ましくは、遠位混合ロッド端部から所定の破断点までの距離は、分配プランジャの軸方向の延在にほぼ対応する。結果として、混合要素が分配プランジャに遠位に当接するまで混合ロッドが内部空間から引き出された後、所定の破断点は、内部空間から外方に面する近位分配プランジャ側の領域に位置し、これは、混合ユニットから突出する混合ロッドの部分の完全な破断を実質的に可能にする。同時に、混合要素はそれによって分配プランジャ上に直接配置され、それにより、遠位カートリッジ端部の方向への分配プランジャの前進は、混合ロッド及び/又は混合要素によって妨げられない。
【0039】
混合ユニットは、流体伝導に関してリザーバに、特にリザーバのキャビティに、導管を介して接続され、導管は、近位カートリッジ端部において分配プランジャの導管ダクトを通って延在する。「流体伝導に関して」とは、液体、特にモノマー液、及び気体が、導管を介してリザーバと混合ユニットとの間で交換され得ることを意味する。フィルタ手段、特に、例えば焼結ポリプロピレン粒子、焼結又は圧縮ポリエチレン繊維、セルロースフェルト、又は板紙で作られた有孔ディスクが、導管内に配置されることが好ましく、フィルタ手段は導管を固体に対して不透過性にする。これにより、少なくとも1つのアンプルの断片が内部に入り込むことが防止される。フィルタ手段は、キャビティとは反対側の導管の端部に配置されることが好ましく、それにより、骨セメント粉末が導管内に侵入することができず、したがって、導管は、モノマー液と接触して骨セメントペーストを形成する際に流体伝導に関して封止することができる。1つのそのようなフィルタ手段はまた、空間的な観点では、導管の前に、少なくとも1つのアンプルの可能な断片を既に捕捉するために、キャビティ内に配置され得る。
【0040】
モノマー液の搬送及び骨セメント粉末と搬送されたモノマー液との混合の両方が、分配プランジャによって空間的に可能になる。これは、装置の可能な最も単純で最もコンパクトな設計を可能にする。同時に、近位カートリッジ端部の領域における骨セメントペーストを調製するために必要とされる成分のこの広範な濃度は、装置の他の領域が高い安定性に向けて標的化された方法で配向され得るので、可能な限り高い構造的完全性を有する装置を可能にする。
【0041】
装置の一実施形態は、導管及び導管ダクトが、混合ユニットとリザーバとの間に、第1の、好ましくは可逆的な、フォームクロージャを形成することを特徴とする。これは、モノマー液が、装置のユーザのために、リザーバから混合ユニットの内部空間へと、適用安全かつ制御された方法で搬送されることを可能にする。
【0042】
装置の一実施形態は、リザーバが、リザーバを混合ユニットに、好ましくは可逆的に、第2のフォームクロージャを介して接続するための接続要素を備えることを特徴とする。
本実施形態では、混合ユニット及びリザーバは、少なくとも2つのフォームクロージャを介して互いに接続される。第1のフォームクロージャは、混合ユニットの導管ダクトとリザーバの導管との間に形成され、第2のフォームクロージャは、リザーバの接続要素と混合ユニットとの間に形成される。
【0043】
接続部に対して枢動点を中心として傾斜させることによって、少なくとも1つのアンプルを開封する際、アンプルの構造的完全性を克服するために、十分に大きい力がアンプルに及ぼされなければならない。この力は、2つ以上のアンプル、好ましくは2つのアンプルなどを使用する場合に、これらのアンプルが、好ましくは接続部に対して枢動点を中心として傾斜することによって同時に開封される場合に、更に増加する。この力は、リザーバ及び混合ユニットの接触点に伝達されるように作用する。
リザーバと混合ユニットとが第1のフォームクロージャのみを介して接続されている場合、少なくとも1つのアンプルを開封するための力は、導管に完全に作用することになり、導管の座屈又は引き剥がしが生じる可能性があり、それにより、リザーバから混合ユニット、特に内部空間へのモノマー液の実質的に完全な搬送が妨げられる、又は防止されることさえある。
【0044】
接続要素と混合ユニットとの間の第2のフォームクロージャは、少なくとも1つのアンプルを開封するのに必要な力の2つのフォームクロージャへの力分配を保証し、それにより、少なくとも1つのアンプルを傾斜することによって開封する際に装置が損傷するリスクが低減される。
【0045】
2つのフォームクロージャを介して、リザーバは、少なくとも1つのアンプルが、装置を損傷することなく、かつ少なくとも1つのアンプルを開封するために装置に加えて更なる補助具を必要とすることなく、接続部に対して枢動点を中心として傾斜することによって開封することができるように、混合ユニットに安定して接続される。
【0046】
一実施形態では、接続要素は、リザーバの残りの部分、特に接続部、キャビティ、及び/又はリザーバ容器に一体的に接続される。更なる実施形態では、接続手段は、リザーバの残りの部分、特に接続部、キャビティ、及び/又はリザーバ容器に取り外し可能に接続することができる。
【0047】
2つのフォームクロージャは、リザーバと混合ユニットとの可逆的な、特に非破壊的な分離が不可能であるように設計されてもよい。
【0048】
装置の一実施形態は、第1のフォームクロージャ及び第2のフォームクロージャが取り外し可能に設計されていることを特徴とする。これにより、リザーバと混合ユニットとを単純に、好ましくは可逆的に、非破壊的に分離することができ、それにより、モノマー液を少なくとも1つのカートリッジから導管を介してカートリッジの内部に搬送した後、リザーバを混合ユニットから簡単に分離することができる。モノマー液を混合ユニットに搬送した後は、リザーバはもはや必要とされないので、例えば混合ユニットの取り扱いを改善することによって、ユーザのための骨セメントペーストの調製を容易にすることができる。
【0049】
接続要素は、リザーバと混合ユニットとの間に第2のフォームクロージャを形成するために異なるように設計することができる。
【0050】
装置の一実施形態は、接続要素が留め金であることを特徴とする。留め金は、好ましくは、リザーバ外面、例えばリザーバ容器、キャビティ又は接続部の外面上の2つの留め金ノッチから、及び可逆的に取り外し可能な留め金要素から形成され、留め金要素は、留め金が混合ユニット、好ましくは混合ユニットの混合ロッドをカラー状に取り囲み、したがって第1のフォームクロージャを形成するように、2つの留め金ノッチに挿入することができる2つの突起を含む。これにより、安定しており、枢動点を中心として傾斜することによって少なくとも1つのアンプルの安全な開封を可能にする、迅速かつ簡単に設計された取り外し可能な第2のフォームクロージャが可能になる。
【0051】
枢動点並びに第1のフォームクロージャ及び第2のフォームクロージャは、互いに対して空間的に異なる方法で配置されてもよい。
【0052】
装置の一実施形態は、側面図において、特に装置の側面図において、枢動点、第1のフォームクロージャ、及び第2のフォームクロージャが、三角形の頂点を形成することを特徴とする。本実施形態では、枢動点及び2つのフォームクロージャは、共通の平面内にあるが、平面内を延在する直線上に配置されない。カートリッジの長手方向軸は、好ましくは、平面内にあるか、又は平面に少なくとも平行に延在する。三角形の形態の配置は、流体伝導に関して、少なくとも1つのアンプルの開口部に必要な力の力分配を改善し、特に、この目的のために使用される、三角形の平面内の又はそれに平行な枢動点を中心とするアンプルの傾斜移動が与えられる。更に、そのような配置は、平面内で枢動点を固定し、変位させず、これは、少なくとも1つのアンプルの再現可能な開封を容易にする。
【0053】
枢動点並びに第1のフォームクロージャ及び第2のフォームクロージャは、互いに異なる距離を有してもよい。
【0054】
装置の一実施形態は、第2のフォームクロージャが、枢動点よりも第1のフォームクロージャから短い距離を有することを特徴とする。したがって、本実施形態では、枢動点と第1のフォームクロージャとの間の距離は、第2のフォームクロージャと第1のフォームクロージャとの間の距離よりも大きい。特に、枢動点と2つのフォームクロージャとが三角形の形態で配置される場合、これは、アンプルを開封するために傾斜中に必要とされる力の2つのフォームクロージャへの改善された力分配と、同時に、装置の最適な省スペース設計との両方を可能にする。後者は、特に、ユーザによる装置の取り扱いを容易にする。
この場合、枢動点及び2つのフォームクロージャは、好ましくは、側面図において三角形の頂点を形成し、枢動点及び第2のフォームクロージャは、上述の点の間の3つの可能な距離のうちの最小値を有する。これにより、2つのフォームクロージャへの力分配が更に改善され、装置の更なる省スペース設計が可能になる。
【0055】
装置の一実施形態は、第1のフォームクロージャ、第2のフォームクロージャ、及び枢動点がそれぞれ、カートリッジの長手方向軸に平行に延在する直線上にあり、直線がカートリッジの長手方向軸から異なる直線距離を有することを特徴とする。この配置は、アンプルを開封するために傾斜している間に必要とされる力の2つのフォームクロージャへの力分配を改善し、同時に、装置の最適な省スペース設計も可能にする。後者は、特に、ユーザによる装置の取り扱いを容易にする。
この場合、枢動点及び2つのフォームクロージャは、好ましくは、三角形の頂点を形成し、三角形は、カートリッジの長手方向軸もある平面内にあるか、又はカートリッジの長手方向軸が少なくとも平行に延在する平面内にある。
【0056】
リザーバ、特にリザーバの接続要素と混合ユニットとの間の第2のフォームクロージャは、混合ユニットの異なる点で行うことができる。
【0057】
装置の一実施形態は、第2のフォームクロージャが、接続要素と混合ロッドとの間に形成されることを特徴とする。これは、内部空間の反対側の分配プランジャの側面へのリザーバの取り付けを容易にし、したがって、導管を通した内部空間へのモノマー液の搬送を容易にする。後者は、モノマー液を搬送するために重力を利用する場合に特に容易になる。加えて、第2のフォームクロージャのそのような配置は、装置の最適に単純で省スペースの設計を可能にする。
【0058】
分配プランジャの望ましくない前進を防止するために、キャッチ手段を分配プランジャに配置して、キャッチ手段が装置のユーザによって能動的に取り外されるまで、分配プランジャがカートリッジ、特にカートリッジ壁と係合するようにすることができる。
【0059】
装置の一実施形態は、真空接続部が分配プランジャ上に配置され、真空接続部を介して、内部空間を真空ポンプなどの負圧源に流体伝導に関して接続することができることを特徴とする。したがって、真空接続部は、内部に負圧を印加することを可能にし、負圧は、例えば、モノマー液をリザーバから、特にリザーバのキャビティから導管を通して内部に搬送するために使用されてもよい。これは、モノマー液の内部への単純かつ迅速な搬送を可能にする。更に、内部の負圧は、2つの出発成分からの骨セメントペーストの混合中に印加又は維持することができる。これにより、硬化した骨セメントに悪影響を及ぼす可能性がある骨セメントペースト中の空気混入を低減又は回避することができる。
【0060】
導管は、モノマー液を混合ユニットのカートリッジの内部に伝導するために異なるように設計することができる。
【0061】
装置の一実施形態は、導管がチューブ、ホース、又はチューブとホースの組み合わせであることを特徴とする。これにより、製造が単純になるとともに、内部に導管を容易かつ省スペースに配置することが可能になる。導管は、好ましくはチューブである。
【0062】
特にチューブ及び/又はホースの形態の導管は、0.5mm~2mmの範囲内、好ましくは0.5mm~1.5mmの範囲内の流体伝導内部導管直径を有することが好ましい。直径が小さいほど、モノマー液の搬送が遅くなる。直径が大きくなると、導管内の毛細管効果が低下するため、基本的に全てのモノマー液を搬送することがより困難になる。
【0063】
装置の一実施形態は、導管が、導管ダクト内で、好ましくはカートリッジの内部空間内で軸方向に変位可能であることを特徴とする。これにより、導管を導管ダクトから引き出すことによって、第1のフォームクロージャを単純に取り外すことを可能にする。導管ダクトは、好ましくはカラー状に導管を取り囲み、導管は好ましくはチューブである。これは、導管を導管ダクトから引き出すことによって制御された単純な方法で取り外すことができる安定した第1のフォームクロージャを表す。導管を導管ダクトから引き出すことによって第1のフォームクロージャの取り外しを容易にするために、導管が可撓性チューブであることがより好ましい。
【0064】
導管は、導管ダクト内に又は導管ダクトを通って延在し、カートリッジの内部空間内に異なる範囲まで、特に軸方向に延在することができる。一実施形態では、導管は導管ダクトを通って延在し、内部空間の側で導管ダクトと面一に終端する。本実施形態では、導管は内部に延在しない。
【0065】
装置の一実施形態は、導管が、内部空間の軸方向内部長さの少なくとも70%にわたって、好ましくは少なくとも80%にわたって、より好ましくは少なくとも90%にわたって延在することを特徴とする。骨セメント粉末が遠位カートリッジ端部の近傍に貯蔵されるように、近位カートリッジ端部を上向きにし、それに対応して遠位カートリッジ端部を下向きにして装置を空間的に配向すると、内部に貯蔵され、好ましくはカートリッジの内部全体を充填せず、例えば内部の全体積の20~70体積%のみを充填する骨セメント粉末にモノマー液を直接搬送することが可能になる。これに関して、骨セメント粉末の量は、カートリッジヘッドを上向きにしたカートリッジの垂直配向において、導管がモノマー液を少なくとも骨セメント粉末の表面上に、好ましくは骨セメント粉末の少なくとも1cmの深さに案内することができるように選択されることが好ましい。これは、骨セメントペーストの出発成分の混合を容易にする。更に、モノマー液は、それによって、内部空間内の遠位カートリッジ端部の空間的近傍で、したがって、存在する場合、分配プランジャ上の真空接続部から比較的大きい空間的距離で放出される。これにより、負圧が真空接続部に印加されたときに、モノマー液が真空接続部内に吸引され、したがって骨セメント粉末との混合に利用できなくなることが防止される。
【0066】
装置の一実施形態は、混合ユニットが、好ましくは導管を導管ダクトから引き出すことによって導管を取り外した後に流体伝導に関して導管ダクトを封止するために、ダクトクロージャを備えることを特徴とする。ダクトクロージャは、別個の構成要素として存在することができ、又は分配プランジャ若しくはカートリッジの一部分として設計されることができる。一実施形態では、ダクトクロージャは、導管ダクト内に挿入することができる、特に近位分配プランジャ側から挿入することができるプラグとして設計される。更なる実施形態では、ダクトクロージャは、挿入によって導管ダクトを流体伝導に関して封止するスライダとして形成される。
ダクトクロージャを通して、混合ユニット内で、特にカートリッジの内部空間において、真空接続部に負圧が印加された状態で、出発成分からの骨セメントの混合が可能になる。これにより、硬化した骨セメントに悪影響を及ぼす可能性がある骨セメントペースト中の空気混入を低減又は回避することができる。
【0067】
遠位カートリッジ端部は、骨セメントペーストが内部空間内で調製されることを可能にするために、異なって設計され得る。例えば、遠位カートリッジ端部は、骨セメントペーストが内部空間内で調製されるまで、カバーで流体伝導に関して封止することができる。この目的のために、カバーは、内部空間の直径に実質的に対応する直径を有し、それにより、カバーは、遠位カートリッジ端部における流体伝導に関して内部空間を完全に封止することができる。カバーは、例えば、カートリッジに、特に可逆的に、ねじ接続を介して、又はバヨネット接続を介して接続可能であり得る。骨セメントペーストを調製した後、骨セメントペーストを内部空間から分配するために、カバーを取り外すことができることが好ましい。
【0068】
装置の一実施形態は、カートリッジが、遠位カートリッジ端部にカートリッジヘッドを備え、カートリッジヘッドが、流体伝導に関して遠位カートリッジ端部を封止し、カートリッジヘッドが、分配スパウトを流体伝導に関して接続するためのカートリッジヘッドダクトを備え、分配スパウトを介して骨セメントペーストを内部空間から分配することができ、カートリッジ及びカートリッジヘッドが一体に設計されていることを特徴とする。可能な限り高い構造的完全性を有する装置を提供するために、カートリッジ及びカートリッジヘッドは一体に設計されている。これにより、カートリッジへの、例えば、ねじ接続によるカートリッジヘッドの締結が省かれ、それにより、装置の構造的完全性の弱化が低減される。
【0069】
カートリッジヘッドはカートリッジヘッドダクトを備え、カートリッジヘッドダクトは、流体伝導に関して、混合ユニットを分配スパウト、すなわち内部空間からの骨セメントの制御された分配のためのチューブ状の細長い構成要素に接続することを可能にする。カートリッジヘッドダクトは、好ましくは、流体伝導に関して分配スパウトを内部空間に接続するために、分配スパウトの雄ねじと螺合してねじ接続を形成することができる雌ねじを備える。カートリッジヘッドダクトは、内部空間の直径よりも小さい直径を有する。例えば、カートリッジヘッドダクトは、内部空間の直径の5~25%に相当する直径を有する。
カートリッジヘッドダクトは、好ましくは、カートリッジヘッドダクトの雌ねじとフォームクロージャ及び/又はフォースクロージャの方式で相互作用し、したがってカートリッジヘッドダクト内にカートリッジヘッドクロージャを可逆的に固定する雄ねじを有するカートリッジヘッドクロージャを介して、分配スパウトの取り付け前に流体伝導に関して封止されることが好ましい。
【0070】
本発明の更なる主題は、本発明の前述の実施形態のうちの1つによる装置によって2つの出発成分から骨セメントペーストを調製するための方法であって、
a.リザーバ容器内に貯蔵されるアンプルを、接続部に対して枢動点を中心として傾斜することによって、少なくとも1つのアンプルを流体伝導に関して開封するステップと、
b.モノマー液を少なくとも1つのアンプルからキャビティ内に流すステップと、
c.モノマー液をキャビティから導管を介して内部空間に搬送するステップと、を含む、方法に関する。
【0071】
ステップaにおいて、少なくとも1つのアンプル(1つ又は2つのアンプルが好ましい)は、リザーバ容器内に貯蔵されたアンプルを接続部に対して枢動点を中心として傾斜することによって、流体伝導に関して開封される。傾斜は、少なくとも部分的に変形可能なリザーバ容器の領域によって可能になる。少なくとも1つのアンプルは、アンプルヘッドが少なくともリザーバの接続部の領域に配置されるようにリザーバ内に貯蔵され、それにより、リザーバ容器内のアンプル、特にアンプル本体の枢動点を中心とした傾斜中に、アンプルヘッドが接続部に押圧され、したがってその構造的完全性が克服され、モノマー液が少なくとも1つのアンプルから流出することができる。開封時に、アンプルは、アンプルヘッドとアンプル本体との間のアンプルネックの領域で破断することが好ましい。
【0072】
ステップbにおいて、モノマー液は、ステップaにおいて開封されたアンプルからリザーバのキャビティ内に流れる。アンプルからの流出を容易にするために、装置は、好ましくは、少なくとも1つのアンプルが地表に対して15~35°の範囲の角度をとるように保持される。接続部直径の実施形態に応じて、アンプルヘッドは、ステップaにおけるアンプルの開封時にリザーバのキャビティ内に落下することができる。キャビティは、好ましくは、アンプルヘッドがキャビティ内に完全に収容されることができ、アンプルヘッドが更にキャビティ内で回転可能であるような寸法である。したがって、アンプルヘッド内に存在する可能性のあるモノマー液は、重力によってキャビティ内に流出することができ、したがって骨セメントペーストを調製するために利用可能である。
【0073】
ステップcにおいて、モノマー液は、導管を介してキャビティから内部に搬送される。本方法の一実施形態では、重力を利用してモノマー液を内部に搬送する。本方法の更なる好ましい実施形態では、搬送は、内部空間内の負圧によって引き起こされ、内部空間内の負圧は、例えば、流体伝導に関して、分配プランジャ上の真空接続部を真空ポンプなどの負圧源に接続することによって負圧を印加することによって生成されることが好ましい。本実施形態では、モノマー液は、好ましくは、導管によって骨セメント粉末に直接導入され、それにより、真空接続部を介して内部から負圧源へのモノマー液の吸引が回避される。
【0074】
本方法の一実施形態は、本方法が、
d.第2のフォームクロージャを取り外すステップと、
e.導管を導管ダクトから引き出すことによって第1のフォームクロージャを取り外すステップと、
f.流体伝導に関して、導管ダクトを封止するステップと、
g.骨セメント粉末とモノマー液とを混合するステップと、を更に含むことを特徴とする。
【0075】
方法の本実施形態は、第2のフォームクロージャを介してリザーバを混合ユニットに接続するための接続要素を備える装置の上述の実施形態のうちの1つによって行われる。
【0076】
モノマー液が混合ユニット内に搬送された後、2つのフォームクロージャを介してリザーバを混合ユニットに接続したままにする必要はもはやない。
【0077】
ステップdにおいて、リザーバ、好ましくはリザーバの接続要素と、混合ユニットとの間、好ましくは混合ユニットの接続要素と混合ロッドとの間の第2のフォームクロージャが取り外される。
【0078】
ステップeにおいて、第1のフォームクロージャは、導管を導管ダクトから引き出すことによって取り外される。
【0079】
ステップd、及びeは、任意の順序で行われてもよく、ステップeにおける導管の引き出しは、第2のフォームクロージャが既に取り外されているときに、容易になるので、最初にステップd、次いでステップeを行うことが好ましい。
【0080】
ステップfにおいて、導管ダクトは、導管が引き出された後に流体伝導に関して封止され、それにより、骨セメントペーストは、印加された負圧を与えられて混合され得る。流体伝導に関するカートリッジヘッドダクトの封止は、ダクトクロージャを使用することによって行われることが好ましい。
【0081】
ステップgにおいて、骨セメントペーストを調製するために、骨セメント粉末とモノマー液との混合が行われる。混合は、好ましくは内部に負圧を印加して行われる。より好ましくは、混合ロッドが上下に移動されている間に混合が行われる。
【0082】
調製された骨セメントペーストは、様々な方法で装置から排出することができる。例えば、骨セメントペーストは、スパチュラを用いて内部から回収されてもよい。
【0083】
本方法の一実施形態は、骨セメントペーストが混合された後、分配スパウトが、カートリッジヘッドダクト内の流体伝導に関して混合ユニットのカートリッジヘッドに取り付けられ、カートリッジヘッドの方向に分配プランジャを前進させることによって、骨セメントペーストが分配スパウトを通して分配されることを特徴とする。これは、装置からの骨セメントペーストの標的化され制御された分配を可能にする。
【0084】
装置から骨セメントペーストを分配するために、装置は、好ましくは分配補助具、特に分配ガンに接続され、分配ガンは、分配プランジャをカートリッジヘッドの方向に変位させ、したがって内部空間から骨セメントペーストを分配する。
【0085】
装置は、2つの出発成分から骨セメントペーストを調製することを特徴とする。骨セメントペーストは、股関節及び膝関節などの人工関節と骨材料との間の安定した接続を作り出すための医療技術の分野において適切な物質を意味すると理解される。硬化により、骨セメントペーストは骨セメントになる。これらの骨セメントは、好ましくはポリメチルメタクリレート骨セメント(PMMA骨セメント)である。PMMA骨セメントは、医療用途において長い間使用されてきており、Sir Charnleyの研究(Charnley,J.,Anchorage of the femoral head prosthesis of the shaft of the femur.J.Bone Joint Surg.1960;42,28-30、を参照)に基づいている。それにより、PMMA骨セメントは、第1の出発成分としての骨セメント粉末と、第2の出発成分としてのモノマー液とから生成することができる。適切な組成物では、2つの出発成分は、互いに別個に貯蔵安定的であり得る。2つの出発成分を互いに接触させると、骨セメント粉末のポリマー成分の膨潤によって、塑性変形可能な骨セメントペーストが生成される。この場合、ラジカルによるモノマーの重合が開始される。モノマーの重合が進行するにつれて、骨セメントペーストの粘度は、完全に硬化するまで増加する。
骨セメント粉末は、少なくとも1つの粒子状ポリメチルメタクリレート及び/又は粒子状ポリメチルメタクリレートコポリマーを含む粉末を意味すると理解される。コポリマーの例は、スチレン及び/又はアクリル酸メチルである。一実施形態では、骨セメント粉末は、骨セメント粉末内のモノマー液の分配を支援する親水性添加剤を更に含むことができる。更なる実施形態では、骨セメント粉末は、重合を開始する開始剤を更に含むことができる。更なる実施形態では、骨セメント粉末は、放射線不透過性材料を更に含むことができる。更に別の実施形態では、骨セメント粉末は、抗生物質などの薬学的に活性な物質を更に含むことができる。
骨セメント粉末は、好ましくは、親水性添加剤として、少なくとも1つの粒子状ポリメチルメタクリレート及び/又は粒子状ポリメチルメタクリレートコポリマー、開始剤、及び放射線不透過性材料を含むか、又はこれらの成分からなる。より好ましくは、骨セメント粉末は、少なくとも1つの粒子状ポリメチルメタクリレート及び/又は粒子状ポリメチルメタクリレートコポリマー、開始剤、放射線不透過性材料、及び親水性添加剤を含むか、又はこれらの成分からなる。最も好ましくは、骨セメント粉末は、少なくとも1つの粒子状ポリメチルメタクリレート及び/又は粒子状ポリメチルメタクリレートコポリマー、開始剤、放射線不透過性材料、親水性添加剤、及び抗生物質を含むか、又はこれらの成分からなる。
本発明によれば、ふるい分級物の骨セメント粉末の粒子状ポリメチルメタクリレート及び/又は粒子状ポリメチルメタクリレートコポリマーの粒径は、150μm未満、好ましくは100μm未満に相当し得る。
【0086】
本発明によれば、親水性添加剤は、粒子状及び/又は繊維状の形態で設計することができる。更なる実施形態では、親水性添加剤は、メチルメタクリレートにわずかに可溶性、好ましくは不溶性であり得る。更なる実施形態では、親水性添加剤は、親水性添加剤1グラム当たり少なくとも0.6gのメチルメタクリレートの吸水能力を有することができる。更なる実施形態では、親水性添加剤は、少なくとも1つのOH基を含む化学物質を含むことができる。この場合、親水性添加剤は、その表面に共有結合したOH基を有し得ることが好ましい。そのような好ましい親水性添加剤の例は、セルロース、酸化セルロース、デンプン、二酸化チタン、及び二酸化ケイ素を含む群から選択される添加剤であり得、熱分解法二酸化ケイ素が特に好ましい。一実施形態では、親水性添加剤の粒径は、100μm未満、好ましくは50μm未満、最も好ましくは10μm未満のふるい分級物に相当し得る。親水性添加剤は、骨セメント粉末の総重量に基づいて0.1~2.5重量%の量で含有され得る。
本発明によれば、開始剤は、ジベンゾイルペルオキシドを含有するか、又はジベンゾイルペルオキシドからなることができる。
本発明によれば、放射線不透過性材料は、診断用X線画像上で骨セメントを可視化することを可能にする物質を意味すると理解される。放射線不透過性材料の例としては、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、及び炭酸カルシウムを挙げることができる。
本発明によれば、薬学的に活性な物質は、1つ又は複数の抗生物質と、任意選択で、1つ又は複数の抗生物質のための添加された補因子とを含むことができる。好ましくは、薬学的に活性な物質は、1つ又は複数の抗生物質、及び、任意選択で、1つ又は複数の抗生物質のための添加された補因子からなる。抗生物質の例としては、とりわけゲンタマイシン、クリンダマイシン、及びバンコマイシンが挙げられる。
本発明によれば、モノマー液は、モノマーメチルメタクリレートを含むか、又はメチルメタクリレートからなることができる。一実施形態では、モノマー液は、モノマーに加えて、その中に溶解されたN,N-ジメチル-p-トルイジンなどの活性化剤を含むか、又はメチルメタクリレート及びN,N-ジメチル-p-トルイジンからなる。
【0087】
装置に関して開示された特徴は、方法に関しても開示され、逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
以下において、本発明は、例として図によって更に説明される。本発明は、図面に限定されない。
【0089】
【
図1】
図1は、混合ユニットと、モノマー液が充填されたアンプルを有するリザーバとを備える、骨セメントペーストを調製するための装置の概略縦断面図を示す。
【
図3】
図3は、第1のフォームクロージャ、第2のフォームクロージャ、及び枢動点が示されている、
図1及び
図2の装置を示す。
【
図4】
図4は、流体伝導に関して、アンプルの開封中、及びモノマー液の混合ユニットへの搬送中の
図1~
図3の装置を示す。
【
図5】
図5は、リザーバが混合ユニットから分離され、骨セメントペーストが混合ユニット内で調製される、
図1~
図4の装置を示す。
【
図6】
図6は、混合ユニットから骨セメントペーストを分配する間の
図1~
図5の装置を示す。
【
図7】
図7は、骨セメントペーストを調製するための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図1は、初期状態における、2つの出発成分から骨セメントペーストを調製するための装置100の例示的な実施形態の側面図の概略縦断面図を示す。装置100は、2つのフォームクロージャを介して互いに接続された混合ユニット200及びリザーバ300を備える(
図3も参照)。
混合ユニット200は、チューブのように構成され、内部215を有する中空円筒形カートリッジ210を備え、その中に骨セメント粉末500が第1の出発成分として貯蔵される。カートリッジ210の近位カートリッジ端部211は、内部空間215内で軸方向に変位することができる分配プランジャ280で封止され、近位カートリッジ端部211の軸方向反対側の遠位カートリッジ端部212は、カートリッジヘッド220で封止される。図示の実施形態では、カートリッジ210とカートリッジヘッド220とが一体に設計されている。分配プランジャ280は、骨セメントペーストの調製中に遠位カートリッジ端部212の方向への分配プランジャの意図しない前進を防止するために、近位カートリッジ端部211に可逆的に係合する。
カートリッジヘッド220は、カートリッジヘッドクロージャ226で可逆的に封止されるカートリッジヘッドダクト225を備える。この目的のために、カートリッジヘッド220は、カートリッジヘッドダクト225の領域に雌ねじを含み、雌ねじは、カートリッジヘッドクロージャ226の雄ねじとフォームクロージャ及び/又はフォースクロージャで係合する。
分配プランジャ280は、分配プランジャ280を通って軸方向に延在し、混合ロッド230が軸方向に変位可能かつそれ自体を中心に回転可能に配置される混合ロッドダクト235を備える。混合ロッド230は、骨セメント粉末500が混合ロッドダクト235を通ってカートリッジ210から意図せずに漏れることができないように、混合ロッドダクト235を封止する。
内部空間215から外方に面する混合ロッド230の端部において、混合ロッド230はハンドル250を備える。ハンドル250は、内部空間215内での混合ロッド230の軸方向移動を容易にすることによって、ユーザが装置100を取り扱うことをより容易にする。ハンドル250の軸方向反対側の端部において、混合ロッド230は、内部空間215内での混合ロッド230の軸方向変位を介して内部空間215内の骨セメントペーストの混合を容易にする混合ディスクの形態の混合要素245を備える。
真空接続部260が分配プランジャ280に取り付けられており、真空接続部を介して、内部空間215を流体伝導に関して負圧源(図示せず)に接続することができる。
リザーバ300は、アンプル330、特にガラスアンプルが貯蔵されるチューブ状リザーバ容器320を備える。図示されていない更なる実施形態では、2つ以上のアンプル330、好ましくは互いに隣接する2つのアンプル330をリザーバ300内に貯蔵することができる。アンプル330は、アンプル本体331と、混合ユニット200に面するアンプルヘッド332と、アンプル本体331とアンプルヘッド332との間にあり、アンプル330のための所定の破断点として作用するアンプルネック333とを備える。モノマー液510は、骨セメントペーストの第2の出発成分としてアンプル330内に貯蔵される。アンプル330のアンプルヘッド332は、リザーバ300のキャビティ340をアンプル330に接続する接続部350内に部分的に配置される。接続部350は、アンプルヘッド332の直径よりも約5%大きい接続部直径355を含み、接続部350がアンプルヘッド332を図面平面内での傾斜に対して固定するようになっている。リザーバ容器320は、接続部350に対するアンプル330、特にアンプルヘッド332の傾斜を可能にするために、接続部350からアンプル本体331への移行部の領域に変形可能な領域325を含み、示された実施形態では、傾斜は図面平面内で可能である。
キャビティ340内では、フィルタ要素345がリザーバ300内に配置され、それにより、アンプル330が流体接続に関して開封された後、その断片は、キャビティ340を介して混合ユニット200内に入り込むことができず、むしろフィルタ要素345上に保持される。
キャビティ340は、チューブの形態の導管310を介してカートリッジ210の内部215に流体伝導に関して接続される。この目的のために、導管310は、分配プランジャ280の導管ダクト290を通って内部空間215内に延在している。導管は、内部空間215の内部長さ216の約95%にわたって延在し、それにより、装置100の示された配向が与えられると、モノマー液510は、導管310を介して骨セメント粉末500内に直接搬送されることができ、混合ユニット200の真空接続部260から十分に大きい距離を有し、それにより、モノマー液510が内部空間215から真空接続部260を通って導管310から直接吸引されるリスクが低減される。
導管ダクト290及び導管310は、混合ユニット200及びリザーバ300が互いに接続される第1のフォームクロージャ(
図3も参照)を形成する。
リザーバ300は、混合ロッド230の周りにカラー状に配置され、混合ユニット200とリザーバ300との間に第2のフォームクロージャ(
図3も参照)を形成する留め金(
図2も参照)の形態の接続要素360を更に備える。
【0091】
図2は、
図1の装置100の一部分の概略側面図を示す。
図2では、接続要素360が、リザーバ300の外面上の2つの留め金ノッチ361と、2つの留め金ノッチ361から取り外すことができる留め金要素362とから形成されていることが分かる。留め金要素は、2つの留め金ノッチ261に挿入することができる2つの突起(図示せず)を含み、それにより、接続要素360は、混合ユニット200とリザーバ300との間に第2のフォームクロージャを安定して確実に形成するために、混合ロッド230の周りにカラー状に可逆的に封止することができる。図示された実施形態では、2つの留め金ノッチ361及び留め金要素362の2つの突起は、三角形の設計であり、突起の外径は、留め金ノッチ261のそれぞれの内径に実質的に対応する。
示された図では、ホース450が真空接続部260(視認不可)上に配置され、装置100を真空ポンプなどの負圧源(図示せず)に流体伝導に関して接続可能にする。
【0092】
図3は、
図1及び
図2の装置100を示し、第1のフォームクロージャ400と、第2のフォームクロージャ410と、変形可能な領域325に起因してアンプル330が接続部350(
図1参照)に対して傾斜することによって押圧され得る枢動点420とが、黒丸によって示されている。
装置100の示された側面図では、第1のフォームクロージャ400、第2のフォームクロージャ410、及び枢動点420は、(黒丸の間の接続線によって示される)三角形を形成する。アンプル330、特にアンプルヘッド332(
図1参照)が接続部350(
図1参照)に対して押圧されるように、アンプル330が枢動点420を中心に傾斜するとき、流体伝導に関してアンプル330を開封するためにこの場合に必要とされる力は、第1のフォームクロージャ400及び第2のフォームクロージャ410に分配される。有利な力分配は、第1のフォームクロージャ400、第2のフォームクロージャ410、及び枢動点420を三角形の形態で配置することによって達成される。特に、それによって、導管310、導管の座屈又は破断のリスクを低減することができる。
第1のフォームクロージャ400、第2のフォームクロージャ410、及び枢動点420は、第2のフォームクロージャ410が枢動点420よりも第1のフォームクロージャ400から短い距離を有するように互いに対して配置される。したがって、枢動点420及び第1のフォームクロージャ400は、第1のフォームクロージャ400及び第2のフォームクロージャ410よりも互いに遠く離間している。これにより、アンプル330を開封するために枢動点420を中心として傾斜する際に必要とされる力の、2つのフォームクロージャ400、410への改善された力分配が保証され、同時に、装置100の最適な省スペース設計も保証される。後者は、特に、ユーザによる装置100の取り扱いを容易にする。
第1のフォームクロージャ400は、カートリッジ210の長手方向軸213に平行に延在する直線401上にあり、第2のフォームクロージャ410は、カートリッジ210の長手方向軸213に平行に延在する更なる直線411上にあり、長手方向軸213及び直線411は、第2のフォームクロージャ410を通して実質的に一致し、枢動点420は、カートリッジ210の長手方向軸213に平行に延在する更なる直線421上にあり、直線401、411、421は全て、カートリッジ210の長手方向軸213から異なる直線距離を有する。示される実施形態では、枢動点420を通る直線421と長手方向軸213との間の直線距離が最大であり、第1のフォームクロージャ400を通る直線401と長手方向軸213との間の直線距離がそれに続く。異なる直線距離は、アンプル330を開封するために枢動点420を中心として傾斜する間に必要とされる力の、2つのフォームクロージャ400、410への力分配を改善し、同時に、装置100の最適な省スペース設計を可能にする。後者は、特に、ユーザによる装置100の取り扱いを容易にする。
【0093】
図4は、アンプル330が枢動点420を中心に傾斜した状態の
図1~
図3の装置100を示す(
図3参照)。この目的のために、リザーバ容器320は、アンプルヘッド332が接続部350に対して押圧され、アンプル330がアンプルネックの領域における流体伝導に関して開封されるように、変形可能な領域325において屈曲された(
図1参照)。流体伝導に関して開封されたアンプル330内に貯蔵されたモノマー液510は、既に大部分がアンプル330からキャビティ340内に流出している。アンプルヘッド332は、接続部350からキャビティ340内に完全に搬送される。この場合、アンプルヘッド332はフィルタ要素345によって捕捉されているので、アンプルヘッド又はアンプルヘッドの断片は導管310を通過することができない。キャビティ340は、アンプルヘッド332がその中で完全に回転可能であるように取り付けられ得るような寸法であり、それにより、アンプル330の開封後にアンプルヘッド332内に依然として存在する可能性があるモノマー液510は、キャビティ340内に流出することができる。これは、アンプルヘッド332を用いて
図4で既に行われている。装置100の示された実施形態では、導管310、特に導管310の直径は、その表面張力のために、モノマー液510が重力のみによって導管310を通ってカートリッジ210の内部空間215に流入することができないように設計される。したがって、アンプル330から流出したモノマー液510は、装置100のユーザが能動的に介入するまで、最初にキャビティ340内に集まる。モノマー液510をキャビティ340から内部空間215に搬送するために、装置100、特に真空接続部260は、ホース450を介して真空ポンプの形態の負圧源460に流体伝導に関して接続される。ホース450及び真空接続部260を介して、負圧源460は、内部空間215内に負圧を生成し、負圧は、モノマー液510をキャビティ340から導管310を介して混合ユニット200内に吸引する。導管310の軸方向の延在により、モノマー液510は骨セメント粉末500内に直接導入され、これにより、当該モノマー液が真空接続部260を通って負圧源460内に吸引されるリスクが低減される。内部215内の負圧は、少なくともモノマー液510が実質的に完全に混合ユニット200に搬送されるまで維持される。
【0094】
図5は、骨セメントペースト520が混合ユニット200の内部空間215内で2つの出発成分から混合されるときの
図1から
図4の装置100を示しており、リザーバ300は、より良好な取り扱いのために混合前に取り外されている。リザーバ300を取り外すために、混合ユニット200とリザーバ300との間の第1のフォームクロージャ400及び第2のフォームクロージャ410を取り外した(
図1~
図4参照)。第2のフォームクロージャ410を取り外すために、留め金要素362が2つの留め金ノッチ261から引き出されており(
図2参照)、第1のフォームクロージャ400を取り外すために、導管310が導管ダクト290から引き出されている(
図1~
図4参照)。より単純な取り扱いのために、最初に第2のフォームクロージャ410、次いで第1のフォームクロージャ400(
図3参照)が取り外された。リザーバ300を取り外した後、導管ダクト290は、プラグの形態の別個のダクトクロージャ270を挿入することによって流体伝導に関して封止され、それにより、骨セメントペースト520の混合は、内部空間215内に印加された負圧で行うことができる。
骨セメントペースト520を混合するために、混合ロッド230を混合要素240と共に内部空間215内で軸方向に繰り返し上下に移動させた。
【0095】
図6は、骨セメントペースト520の分配中の
図1~
図5の装置100を示す。この目的のために、以前に近位カートリッジ端部211で係合された分配プランジャ280が取り外され、遠位カートリッジ端部212でカートリッジヘッド220の方向に分配ガン(部分的にのみ示される)の形態の分配補助具550によって前進させられた。特に分配補助具550を使用するときに、分配プランジャ280の前進を容易にするために、混合要素240が分配プランジャ280に当接し、分配プランジャ280から突出する混合ロッド230の一部分がハンドル250と共に、その後、分配プランジャ230の領域内の所定の破断点で破断する程度まで、混合ロッド230が内部空間215から予め引き出されている。
更に、カートリッジヘッドクロージャ226を取り外し、分配スパウト530と交換した。分配スパウト530は、流体伝導に関して分配スパウト530を内部空間215に接続するために、カートリッジヘッドの雌ねじとフォームクロージャ及び/又はフォースクロージャの方法で相互作用する雄ねじを備える。分配スパウト530は、装置100からの骨セメントペースト530の制御された正確な分配を容易にする。
【0096】
図7は、
図1~
図6による装置100によって2つの出発成分から骨セメントペースト520を調製するための方法600のフローチャートを示しており、ステップ610~630、好ましくは610~670、及び任意選択的にステップ680も含む。
【0097】
ステップ610において、リザーバ300内の少なくとも1つのアンプル330は、接続部350に対して枢動点420を中心として傾斜することによって、流体伝導に関して開封される。この目的のために必要な力は、好ましくは、導管310の座屈が防止されるように、2つのフォームクロージャ400、410上に分配される。
【0098】
ステップ620において、モノマー液510は、ステップ610において流体伝導に関して開封された少なくとも1つのアンプル330からリザーバ300のキャビティ340内に流れる。モノマー液510の流出は、好ましくは重力によって引き起こされる。モノマー液510の流出中、アンプルヘッド332、少なくとも1つのアンプル332の更なる断片又は他の断片は、好ましくは、フィルタ要素345によってキャビティ340内に保持され、それにより、導管310内に侵入することができない。
【0099】
ステップ630において、モノマー液510は、キャビティ340から導管310を介してカートリッジ210の内部215に、そして骨セメント粉末500に搬送される。一実施形態では、モノマー液510を搬送するために重力が利用される。更なる実施形態では、内部215に印加される負圧が、モノマー液510を搬送するために使用され、負圧は、好ましくは、真空接続部260に接続された負圧源460、例えば真空ポンプを介して提供される。モノマー液510の搬送は、好ましくは骨セメント粉末500内に直接行われ、これにより、より良好な混合能力をもたらすことができ、同時に、負圧が印加されたときにモノマー液510が真空接続部260を介して内部空間215から吸引されるリスクを低減又は防止することができる。
【0100】
ステップ640において、第2のフォームクロージャ410の取り外しが行われることが好ましい。接続要素360は、第2のフォームクロージャ410を取り外すために、留め金要素362が2つの留め金ノッチ361から引き出されるように、留め金であることがより好ましい。
【0101】
ステップ650において、第1のフォームクロージャ400の取り外しは、好ましくは、カートリッジヘッドダクト225から導管310を引き出すことによって行われる。
【0102】
2つのフォームクロージャ400、410を取り外す640、650ことによって、リザーバ300は、混合ユニット200から分離され、取り外すことができる。これにより、混合ユニット200の取り扱いが容易になる。
【0103】
2つのフォームクロージャ400、410は、任意の順序で又は同時に取り外すことができる。第1の代替形態では、ステップ640は、時系列にステップ650の前に行われる。第2の代替形態では、ステップ650は、時系列にステップ640の前に行われる。
【0104】
導管310は、好ましくは、内部215の軸方向内部長さ216の少なくとも70%にわたって内部215内に延在するチューブとして設計されるので、より単純な取り扱いの理由から、第1の代替形態が好ましい。
【0105】
ステップ660において、特に時系列にステップ650における導管310を取り外した後に、流体伝導に関してカートリッジヘッドダクト225の封止が行われることが好ましい。これにより、骨セメント粉末500とモノマー液510とを負圧下で混合することができ、骨セメントペースト520中の空気混入を低減することができる。
【0106】
カートリッジヘッドダクト225は、ダクトクロージャ270によって封止されることが好ましい。
【0107】
ステップ670において、骨セメント粉末500とモノマー液510との混合は、好ましくは、混合ユニット200のカートリッジ210の内部空間215内で行われる。この目的のために、負圧が印加されたときに、モノマー液510が混合ロッド230によって骨セメント粉末500と混合されて骨セメントペースト520を形成することが好ましい。混合ロッド230は、混合を容易にするために、好ましくは混合ディスクの形態の混合要素240を備えることが好ましい。負圧を印加して混合することにより、調製された骨セメントペースト520中の空気混入が低減される。
【0108】
調製された骨セメントペースト520を装置100から所望の位置に適用するために、任意選択のステップ680において、混合ロッド230は、混合要素240が分配プランジャ280に遠位で当接するまで、内部空間215から混合ロッドダクト235から遠くに引き出され、分配プランジャ280から近位に突出する混合ロッド230の部分は、その後、所定の破断点で破断され、分配プランジャ280は、骨セメントペーストが分配される間、カートリッジヘッドクロージャ220の方向に装置100から前進させられることが好ましい。カートリッジヘッドクロージャ220の方向への分配プランジャ280の前進は、好ましくは、分配ガンなどの分配補助具550を用いて引き起こされる。これは、ユーザが装置100を使用することをより容易にする。
【符号の説明】
【0109】
100 装置
200 混合ユニット
210 中空円筒形カートリッジ
211 近位カートリッジ端部
212 遠位カートリッジ端部
213 カートリッジの長手方向軸
215 カートリッジの内部空間
216 内部長さ
220 カートリッジヘッド
225 カートリッジヘッドダクト
226 カートリッジヘッドクロージャ
230 混合ロッド
235 混合ロッドダクト
240 混合要素
250 ハンドル
260 真空接続部
270 ダクトクロージャ
280 分配プランジャ
290 導管ダクト
300 リザーバ
310 導管
320 リザーバ容器
325 変形可能な領域
330 アンプル
331 アンプル本体
332 アンプルヘッド
333 アンプルネック
340 キャビティ
345 フィルタ要素
350 接続部
355 接続部直径
360 接続要素
361 留め金ノッチ
362 留め金要素
400 第1のフォームクロージャ
401 第1のフォームクロージャを通る直線
410 第2のフォームクロージャ
411 第2のフォームクロージャを通る直線
420 枢動点
421 枢動点を通る直線
450 チューブ
460 負圧源
500 骨セメント粉末
510 モノマー液
520 骨セメントペースト
530 分配スパウト
550 分配補助具
600 方法
610 流体伝導に関する開口部
620 流れ
630 搬送
640 第2のフォームクロージャの取り外し
650 第1のフォームクロージャの取り外し
660 流体伝導に関する封止
670 混合
680 分配