(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20240826BHJP
C08J 9/14 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/14 CES
(21)【出願番号】P 2023114866
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2019127141の分割
【原出願日】2019-07-08
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000214788
【氏名又は名称】DMノバフォーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰慶
(72)【発明者】
【氏名】八木 堂至
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/191222(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/143411(WO,A1)
【文献】特開昭60-008329(JP,A)
【文献】特開昭62-036432(JP,A)
【文献】特開2014-001346(JP,A)
【文献】特開昭62-256836(JP,A)
【文献】特開2014-208797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60、67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂を含み、
前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂が融点115~150℃の4-メチル-1-ペンテン・C
2-4α-オレフィン共重合体であり、かつ
発泡倍率が10倍以上である4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体。
【請求項2】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂を含み、
前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂が4-メチル-1-ペンテン・C
2-4α-オレフィン共重合体であり、
前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂が、融点を有する第1の4-メチル-1-ペンテン系樹脂と、融点を有さない第2の4-メチル-1-ペンテン系樹脂との組み合わせであり、かつ
発泡倍率が10倍以上である4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体。
【請求項3】
融点を有さない4-メチル-1-ペンテン系樹脂のみからなる熱可塑性樹脂を含み、
前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂がガラス転移温度-30℃~45℃の4-メチル-1-ペンテン・C
2-4α-オレフィン共重合体であり、
発泡倍率が5倍以上であり、かつ
独立気泡率が50体積%以上である4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体。
【請求項4】
前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂の135℃、デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.5~5dl/gである請求項1~3のいずれか一項に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体。
【請求項5】
前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂が0~80℃のガラス転移温度を有する請求項1または2記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体。
【請求項6】
前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂を含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する請求項1~5のいずれか一項に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-メチル-1-ペンテン系樹脂で形成された発泡体およびその製造方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂は、軽量、透明性、ガス透過性、耐薬品性とともに耐
熱性に優れた樹脂として、食品、医療、電子情報、家電、実験器具、文房具など様々な分
野で利用されている。
【0003】
WO2011/055803号(特許文献1)には、4-メチル-1-ペンテンから導
かれる構成単位5~95モル%、4-メチル-1-ペンテンを除く炭素数2~20のα-
オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα-オレフィンから導かれる構成単位5~
95モル%、非共役ポリエンから導かれる構成単位0~10モル%とからなる4-メチル
-1-ペンテン系共重合体を含む組成物を含む成形体が開示されている。前記成形体とし
ては、シート、フィルム、パイプ、チューブ、ボトル、繊維、テープ、中空成形体、積層
体、発泡体などが記載されている。実施例では、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフ
ィン共重合体を他の樹脂やプロセスオイルと混練してプレスシートを作製している。
【0004】
特開2014-208797号公報(特許文献2)には、4-メチル-1-ペンテンか
ら導かれる構成単位80~100モル%、炭素原子数2~20のα-オレフィンの少なく
とも1種から導かれる構成単位0~20モル%とからなる4-メチル-1-ペンテン系共
重合体を含む成形体が開示されている。この成形体の用途としては、健康用品、介護用品
、衝撃吸収パッド、プロテクター・保護具、スポーツ用品、スポーツ用防具、ラケット、
ボール、運搬用具、健康器具、産業用材料、自動車用衝撃吸収部材が記載され、前記産業
用資材として、制振パレット、衝撃吸収ダンパー、履物用衝撃吸収部材、衝撃吸収発泡体
、衝撃吸収フィルム・シートが例示されている。実施例では、4-メチル-1-ペンテン
系共重合体でフィルムを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2011/055803号
【文献】特開2014-208797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1および2では、成形体の一例として発泡体は記載されているものの
、4-メチル-1-ペンテン系樹脂を高い発泡倍率で発泡させるのは困難であり、発泡体
は製造されていない。
【0007】
従って、本発明の目的は、発泡倍率が高い4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体およ
びその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、体温に近い温度での応力緩和性に優れ、制振性も有している4-
メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、4-メチル-1-ペンテン
系樹脂を特定の方法で発泡することにより、高い発泡倍率で発泡できることを見出し、本
発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体は、4-メチル-1-ペン
テン系樹脂を含み、かつ発泡倍率が3倍以上(特に10倍以上)である。前記4-メチル
-1-ペンテン系樹脂の135℃、デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]は0.5~
5dl/gであってもよい。前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂は0~80℃のガラス
転移温度を有していてもよい。前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂は融点を有していて
もよい。前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂は4-メチル-1-ペンテン・C2-20
α-オレフィン共重合体(特に、4-メチル-1-ペンテン・C2-4α-オレフィン共
重合体)であってもよい。前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体の発泡倍率が10
倍以上であってもよい。
【0011】
本発明には、前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂を含む発泡性樹脂組成物を発泡成形
する前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体の製造方法も含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、4-メチル-1-ペンテン系樹脂を含んでいても高い発泡倍率を有してい
る。このような発泡体は、前記樹脂のガラス転移温度を調整することにより、体温に近い
温度での応力緩和性を向上でき、制振性も有している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[4-メチル-1-ペンテン系樹脂]
本発明の発泡体は、4-メチル-1-ペンテン系樹脂を含む。4-メチル-1-ペンテ
ン系樹脂は、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体であってもよいが、発泡性の点から
、4-メチル-1-ペンテンと他の共重合性体との共重合体が好ましい。
【0014】
他の共重合性単量体には、α-オレフィン、環状オレフィン、エチレン性不飽和カルボ
ン酸類、(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸ビニルエステル、芳香族ビニル、共役
ジエン類、非共役ジエン類などが含まれる。
【0015】
α-オレフィンとしては、4-メチル-1-ペンテン以外のα-オレフィンを利用でき
、例えば、エチレン、1-プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-
オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オク
タデセン、1-エイコセンなどのC2-20α-直鎖状オレフィン;3-メチル-1-ブ
テン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテ
ン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘ
キセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1
-ヘキセンなどのC2-20α-分岐鎖状オレフィンなどが挙げられる。
【0016】
環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、
シクロオクテンなどの環状C4-12シクロオレフィン;2-ノルボルネン、5-メチル
-2-ノルボルネン、5,5-ジメチル-2-ノルボルネンなどの多環式オレフィンなど
が挙げられる。
【0017】
エチレン性不飽和カルボン酸類としては、エチレン系不飽和カルボン酸およびその酸無
水物を利用でき、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコ
ン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸などが挙
げられる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル
、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステル、グリシジル
(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0019】
カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの
飽和カルボン酸ビニルエステルなどが挙げられる。
【0020】
芳香族ビニル類としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンな
どが挙げられる。
【0021】
共役ジエン類としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジ
メチルブタジエンなどが挙げられる。
【0022】
非共役ジエン類としては、例えば、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2
-メチル-1,5-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1
,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン
-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
【0023】
これら他の共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これら
のうち、C2-20α-オレフィンを含む単量体が好ましく、C2-10α-オレフィン
を含む単量体がさらに好ましく、C2-6α-オレフィンを含む単量体がより好ましく、
C2-4α-オレフィンを含む単量体が最も好ましい。他の共重合性単量体は、C2-4
α-オレフィンのみであってもよく、特に、プロピレンのみであってもよい。
【0024】
共重合体において、4-メチル-1-ペンテン単位と、他の共重合性単量体単位(特に
、C2-4α-オレフィン)とのモル比は、前者/後者=30/70~99/1程度の範
囲から選択でき、例えば50/50~97/3、好ましくは60/40~95/6、さら
に好ましくは70/30~90/10、より好ましくは75/25~87/13、最も好
ましくは80/20~85/15である。他の共重合性単量体の割合が少なすぎると、応
力緩和性が低下する虞があり、逆に多すぎると、発泡性が低下する虞がある。
【0025】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂は、耐久性などが要求される用途では、架橋体であっ
てもよい。架橋体は、慣用の4-メチル-1-ペンテン系樹脂架橋体、例えば、水架橋体
、化学架橋体、放射線架橋体、電子線架橋体であってもよい。これらのうち、架橋性や生
産性などの点から、水架橋体が好ましい。
【0026】
水架橋体は、水架橋可能な加水分解縮合性のシリル基(水架橋性シリル基)を有する4
-メチル-1-ペンテン系樹脂の水架橋体であればよく、主鎖を構成する単量体として、
加水分解縮合性のシリル基を有する単量体を用いて得られた重合体の架橋体であってもよ
く、4-メチル-1-ペンテン系樹脂の主鎖に加水分解縮合性のシリル基を有する単量体
をグラフト重合させた重合体であってもよい。シリル基を有する単量体としては、例えば
、特開2016-37551号公報、特開2016-37552号公報に記載の単量体な
どを利用できる。
【0027】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂の135℃、デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η
]は0.1~10dl/g程度の範囲から選択でき、例えば0.5~5dl/g、好まし
くは0.8~4dl/g、さらに好ましくは1~3.5dl/g、より好ましくは1.2
~3dl/g、最も好ましくは1.3~2dl/gである。粘度が小さすぎると、発泡体
の機械的特性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、成型加工性が低下する虞がある。
【0028】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、デカリン溶媒を用いて、135℃で測
定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0029】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は-30℃~100℃程度
の範囲から選択できるが、例えば0~80℃であってもよいが、人体の体温近くの温度で
の応力緩和性を向上できる点から、好ましくは10~55℃、さらに好ましくは15~5
0℃、より好ましくは25~45℃、最も好ましくは30~40℃である。ガラス転移温
度が小さすぎると、発泡体の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、前記応力
緩和性が低下する虞がある。
【0030】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂は融点(Tm)を有していてもよく、有していなくて
もよいが、発泡倍率の高い発泡体を製造し易い点から、融点を有しているのが好ましい。
4-メチル-1-ペンテン系樹脂の融点は100~250℃程度の範囲から選択でき、例
えば105~200℃、好ましくは110~160℃、さらに好ましくは115~150
℃、より好ましくは120~150℃、最も好ましくは125~140℃である。融点が
低すぎると、発泡体の発泡性が低下する虞があり、逆に高すぎると、発泡体の生産性が低
下する虞がある。
【0031】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ガラス転移温度および融点は、示差走
査熱量計(DSC)を用いて測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定で
きる。
【0032】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば1万~300万
、好ましくは5万~200万、さらに好ましくは10万~100万、より好ましくは20
万~50万、最も好ましくは30万~40万である。分子量が小さすぎると、発泡体の機
械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、成型加工性が低下する虞がある。
【0033】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1~10、好
ましくは1.2~5、さらに好ましくは1.3~3、最も好ましくは1.5~2.5であ
る。分子量分布が小さすぎると、重合体の生産性が低下する虞があり、逆に大きすぎると
、発泡性や機械的特性が低下する虞がある。
【0034】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、重量平均分子量および分子量分布は、
ゲル浸透クロマトグラフを用いて、ポリスチレン換算で測定でき、詳細には、後述する実
施例に記載の方法で測定できる。
【0035】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂の密度は、例えば300~2000kg/m3、好ま
しくは500~1500kg/m3、さらに好ましくは600~1200kg/m3、よ
り好ましくは700~1000kg/m3、最も好ましくは800~900kg/m3で
ある。密度が小さすぎると、機械的特性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、発泡性
が低下する虞がある。
【0036】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、密度は、JIS K6268に準拠し
て測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0037】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂の動的粘弾性について、損失正接(tanδ)のピー
ク値は0.1~10程度であってもよく、例えば0.2~8、好ましくは0.3~5、さ
らに好ましくは0.5~4、より好ましくは1~3、最も好ましくは1.5~2.5であ
る。tanδのピーク時温度は0~60℃程度であってもよいが、人体の体温近くの温度
での応力緩和性を向上できる点から、好ましくは10~55℃、さらに好ましくは20~
50℃、より好ましくは25~45℃、最も好ましくは30~40℃である。
【0038】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、動的粘弾性は、10rad/sの周波
数で-40℃から150℃までの損失正接を測定することにより求められるが、詳細には
、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
【0039】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂は、前記熱的特性、分子量、密度、動的粘弾性の異な
る複数種の重合体を組み合わせて、発泡体の特性を調整してもよい。例えば、融点を有す
る4-メチル-1-ペンテン系樹脂(第1の4-メチル-1-ペンテン系樹脂)と、融点
を有さない4-メチル-1-ペンテン系樹脂(第2の4-メチル-1-ペンテン系樹脂)
とを組み合わせて、発泡性と応力緩和性とを両立させることもできる。
【0040】
第1の4-メチル-1-ペンテン系樹脂と第2の4-メチル-1-ペンテン系樹脂との
質量割合は、前者/後者=90/10~10/90、好ましくは80/20~20/80
、さらに好ましくは70/30~30/70、最も好ましくは60/40~40/60で
ある。
【0041】
第1の4-メチル-1-ペンテン系樹脂としては、tanδのピーク値が、例えば0.
5~2.8、好ましくは1~2.5、さらに好ましくは1.2~2、最も好ましくは1.
3~1.8である重合体を利用してもよい。第2の4-メチル-1-ペンテン系樹脂とし
ては、tanδのピーク値が、例えば1.5~5、好ましくは2~4、さらに好ましくは
2.5~3.5、最も好ましくは2.6~3である重合体を利用してもよい。
【0042】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂は、オレフィン重合用触媒を用いた慣用の方法によっ
て製造でき、例えば、特許文献1および2に記載の方法で製造できる。
【0043】
[発泡剤]
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体は、前記4-メチル-1-ペンテン系
樹脂を含む発泡性樹脂組成物を発泡して得られ、発泡性樹脂組成物は、発泡剤を含んでい
てもよい。
【0044】
発泡剤としては、慣用の発泡剤を使用でき、分解性発泡剤(化学発泡剤)であってもよ
いが、簡便な方法で、発泡倍率を向上できる点から、揮発性発泡剤(物理発泡剤)が好ま
しい。揮発性発泡剤としては、例えば、無機系発泡剤(窒素、二酸化炭素、酸素、空気、
水など)、有機系発泡剤(脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化炭
化水素、フッ化炭化水素、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類など)な
どが挙げられる。これらのうち、安価で毒性が低い点から、ブタン(n-ブタン、イソブ
タン)やペンタン(n-ペンタン、イソペンタンなど)などの低級脂肪族炭化水素が汎用
される。
【0045】
発泡剤の割合は、4-メチル-1-ペンテン系樹脂100質量部に対して、例えば、0
.01~30質量部、好ましくは0.1~25質量部、さらに好ましくは1~20質量部
、最も好ましくは5~15質量部である。
【0046】
[発泡核剤]
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体は、発泡核剤をさらに含んでいてもよ
い。発泡核剤としては、例えば、ケイ素化合物(タルク、シリカ、ゼオライトなど)、無
機酸塩(重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、
炭酸アンモニウムなどの炭酸塩または炭酸水素塩など)、有機酸またはその塩(クエン酸
、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリ
ン酸亜鉛など)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、金属水
酸化物(水酸化アルミニウムなど)などが挙げられる。これらの発泡核剤は、単独でまた
は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0047】
発泡核剤の割合は、4-メチル-1-ペンテン系樹脂100質量部に対して、例えば0
.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量
部、最も好ましくは0.5~2質量部である。
【0048】
[収縮防止剤]
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体は、収縮防止剤をさらに含んでいても
よい。収縮防止剤としては、例えば、脂肪酸エステル(パルミチン酸モノ乃至トリグリセ
リド、ステアリン酸モノ乃至トリグリセリドなどのC8-24脂肪酸と多価アルコールと
のエステルなど)、脂肪酸アミド(パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどのC8
-24脂肪酸アミドなど)などが挙げられる。これらの収縮防止剤は、単独で又は二種以
上組み合わせて使用できる。
【0049】
収縮防止剤の割合は、4-メチル-1-ペンテン系樹脂100質量部に対して、例えば
0.01~30質量部、好ましくは0.05~20質量部、さらに好ましくは0.1~1
0質量部、最も好ましくは1~5質量部である。
【0050】
[他の熱可塑性樹脂]
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂として、4-メチル
-1-ペンテン系樹脂以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂)をさらに含んでいてもよ
い。
【0051】
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、4-メチル-1-ペンテン系樹脂以外のオレフィ
ン系樹脂(他のオレフィン系樹脂)、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系
樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエス
テル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、これらの樹脂の構成成分を含む
熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独または二種以上組
み合わせてもよい。
【0052】
これらのうち、他のオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、熱可塑性エラストマー(例え
ば、4-メチル-1-ペンテン系樹脂以外のオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレ
ン系熱可塑性エラストマーなど)が好ましく、4-メチル-1-ペンテン系樹脂との相容
性、柔軟性や弾性などの機械的特性にも優れる点から、他のオレフィン系樹脂(特に、ポ
リエチレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリエチレン系樹脂)、4-メチル-
1-ペンテン系樹脂以外のオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0053】
4-メチル-1-ペンテン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との質量割合は、4-メチル-1
-ペンテン系樹脂/他の熱可塑性樹脂=100/0~10/90(例えば100/0~5
0/50)程度の範囲から選択でき、両樹脂を組み合わせる場合、4-メチル-1-ペン
テン系樹脂/他の熱可塑性樹脂=99/1~30/70、好ましくは98/2~50/5
0、さらに好ましくは95/5~70/30、より好ましくは93/7~80/20であ
る。熱可塑性樹脂が4-メチル-1-ペンテン系樹脂単独であるのが最も好ましい。4-
メチル-1-ペンテン系樹脂の割合が少なすぎると、応力緩和性や制振動性が低下する虞
がある。
【0054】
[他の添加剤]
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体は、他の添加剤として、慣用の添加剤
をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、着色剤(染料や顔料など)、表面平
滑剤、気泡調整剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤など)、粘度調節剤
、相溶化剤、分散剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、充填剤(炭酸カルシウ
ム、炭素繊維など)、滑剤、離型剤、潤滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、難燃剤、バイオサイ
ド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、消臭剤などが挙げられる。これ
ら慣用の添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0055】
他の添加剤の割合は、4-メチル-1-ペンテン系樹脂100質量部に対して、例えば
0.01~30質量部、好ましくは0.05~20質量部、さらに好ましくは0.1~1
0質量部、最も好ましくは1~5質量部である。
【0056】
[4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体の特性]
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂の主成分が発泡性を
向上させるのが困難な4-メチル-1-ペンテン系樹脂であるにも拘わらず、発泡性を向
上できる。具体的な発泡倍率は、3倍以上(特に10倍以上)であればよく、例えば3~
80倍、好ましくは5~70倍、さらに好ましくは10~60倍、より好ましくは20~
50倍、最も好ましくは30~40倍である。発泡倍率が低すぎると、緩衝性が低下する
虞がある。
【0057】
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体は、独立気泡および/または連続気泡
構造を有しており、少なくとも独立気泡構造を含むのが好ましく、気泡全体(連続気泡と
独立気泡との合計)に対する独立気泡の割合である独立気泡率は50体積%以上であって
もよく、例えば85~100体積%、好ましくは90~100体積%(例えば90~99
体積%)、さらに好ましくは93~100体積%(例えば93~99体積%)、最も好ま
しくは100体積%である。独立気泡率が低すぎると、発泡体の機械的特性が低下する虞
がある。
【0058】
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体の平均気泡径は、例えば0.2~2m
m、好ましくは0.3~1.8mm、さらに好ましくは0.4~1.5mm、最も好まし
くは0.5~1.2mmである。平均気泡径が小さすぎると、発泡倍率を高くするのが困
難となる虞があり、大きすぎると、機械的特性が低下する虞がある。
【0059】
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体は、表面にスキン層を有するのが好ま
しく、全表面に対するスキン層の被覆率は60面積%以上(特に80面積%以上)であっ
てもよく、好ましくは90面積%以上であってもよく、100面積%(全表面がスキン層
)であってもよい。スキン層は、4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体の表面において
、略均一な厚みで延びる非発泡層を意味する。
【0060】
スキン層の平均厚みは、0.001~1mm程度の範囲から選択でき、例えば0.00
5~0.1mm、好ましくは0.008~0.05mm、さらに好ましくは0.01~0
.03mm、最も好ましくは0.012~0.025mmである。スキン層の平均厚みが
薄すぎると、取り扱い性が低下する虞があり、逆に厚すぎると、発泡性が低下する虞があ
る。
【0061】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、発泡倍率、連続気泡率、平均気泡径お
よびスキン層の平均厚みは、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0062】
[4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体の製造方法]
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体の製造方法は、4-メチル-1-ペン
テン系樹脂を含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する方法であればよく、慣用の方法を利用
できるが、通常、前記樹脂組成物を溶融混練し、発泡成形する方法である。
【0063】
溶融混練は、慣用の溶融混練機、例えば、一軸またはベント式二軸押出機などを用いて
溶融混錬してもよい。また、溶融混練に先だって、慣用の方法、例えば、混合機(タンブ
ラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノ
ケミカル装置、押出混合機など)を用いて、4-メチル-1-ペンテン系樹脂と他の成分
(発泡剤および必要に応じて発泡核剤、添加剤など)とを予備混合してもよい。
【0064】
発泡成形法としては、慣用の方法、例えば、押出成形法(例えば、Tダイ法、インフレ
ーション法など)、射出成形法などが使用できる。これらのうち、高い発泡性を有する発
泡体を高い生産性で製造できる点から、押出成形法が好ましい。
【0065】
押出成形法において、押出機としては、例えば、単軸押出機(例えば、ベント式押出機
など)、二軸押出機(例えば、同方向二軸押出機、異方向二軸押出機など)などが利用で
き、発泡条件を調整し易く、高発泡率を実現できる点から、タンデム押出機などの多段押
出機が好ましい。
【0066】
押出成形法において、発泡剤を導入する方法は特に限定されず、分解性発泡剤(化学発
泡剤)を予め発泡性樹脂組成物に配合してもよいが、簡便な方法で、発泡倍率を向上でき
る点から、押出機において揮発性発泡剤(物理発泡剤)を導入するのが好ましい。
【0067】
口金の吐出口(ダイのリップ)の形状は、特に制限されず目的の形態に応じて選択でき
、例えば、棒状、紐状などの一次元的形状、シート状、フィルム状、二次元網目(ネット
)状などの二次元的形状、ブロック状、板状、柱状、スリット状、L字状、コ型状、パイ
プ状またはリング状などの三次元的形状であってもよい。
【0068】
発泡成形温度は、4-メチル-1-ペンテン系樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも高
い温度で成形され、例えば(Tg+10)℃~(Tg+100℃)、好ましくは(Tg+
30)℃~(Tg+90)℃、さらに好ましくは(Tg+40)℃~(Tg+75)℃、
より好ましくは(Tg+50)℃~(Tg+80)℃、最も好ましくは(Tg+50)℃
~(Tg+70)℃である。また、融点を有する4-メチル-1-ペンテン系樹脂の発泡
成形温度は、4-メチル-1-ペンテン系樹脂の融点(Tm)よりも高い温度で成形され
、例えば(Tm-60)℃~(Tm-5)℃、好ましくは(Tm-50)℃~(Tm-1
0)℃、さらに好ましくは(Tm-40)℃~(Tm-20)℃である。本発明では、比
較的低温で発泡成形し、発泡倍率を向上できる。発泡成形温度が低すぎると、発泡成形体
の生産性が低下する虞があり、逆に高すぎると、発泡性が低下する虞がある。
【0069】
押出発泡された発泡体は、慣用の方法、例えば、冷却器を用いた冷却方法で冷却しても
よい。冷却器を用いた冷却方法において、冷却媒体としては、圧縮エアー、水(冷却水)
、空気(ブロア)などの冷却媒体が挙げられる。冷却方法としては、圧縮エアーを噴射す
る方法、ブロアで冷却する方法、水を噴霧して冷却する方法、冷却ジャケットを用いて冷
却する方法などが挙げられる。冷却媒体の温度は、例えば0~60℃、好ましくは5~5
5℃、さらに好ましくは10~50℃である。
【0070】
圧縮エアーを噴射する方法において、エアーの圧力は、例えば0.1~10MPa、好
ましくは0.2~5MPa、さらに好ましくは0.3~1MPaである。圧縮エアーの噴
射量は、例えば100~1000リットル/分、好ましくは200~500リットル/分
、さらに好ましくは250~400リットル/分である。
【0071】
また、必要により、得られた4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体(特に、シート状
発泡体)を二次加工[例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、マッチモールド成形
などの熱成形(例えば、金型を用いる熱成形)]してもよい。
【0072】
なお、二次加工または成形温度は、例えば70~300℃、好ましくは80~280℃
、さらに好ましくは85~260℃程度であってもよい。
【0073】
発泡体の形状は、用途に応じて任意の形状に適宜選択でき、例えば、棒状、シート状、
三次元形状などであってもよい。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に
よって限定されるものではない。得られた発泡体の特性は以下の方法で評価した。
【0075】
[重合体中の4-メチル-1-ペンテン、プロピレン含量]
核磁気共鳴装置(日本電子(株)製「ECP500型」)を用い、溶媒としてオルトジ
クロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料濃度55mg/0.6
ml、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパル
スプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5
.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として、得
られた重合体の13C-NMRスペクトルを測定した。得られた13C-NMRスペクト
ルにより、重合体中の4-メチル-1-ペンテン、α-オレフィンの組成を定量化した。
【0076】
[重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)]
得られた重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、Water
s社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC-2000型を用い、以下のよ
うにして測定した。
【0077】
分離カラムは、TSKgel GNH6-HTを2本およびTSKgel GNH6-
HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、
カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼンおよび酸化防止剤としてB
HT(ジブチルヒドロキシトルエン)0.025質量%を用い、1.0ml/分で移動さ
せ、試料濃度は15mg/10mlとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検
出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、プレッシャーケミカル社製を用い
た。
【0078】
[重合体のガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)]
得られた重合体のガラス転移温度(Tg)およびの融点(Tm)は、DSC測定装置(
セイコーインスツルメンツ社製「DSC220C」)を用い、測定用アルミパンに約5m
gの試料をつめて、10℃/分で250℃まで昇温し、250℃で5分間保持した後、1
0℃/分で-50℃まで降温させた後に、10℃/分で250℃まで昇温させた際のグラ
フからガラス転移温度(Tg)を算出するとともに、結晶溶融ピークのピーク頂点から融
点(Tm)を算出した。重合体が複数のピークを有する場合は、最も高温側に位置するピ
ークの頂点を融点(Tm)として定義した。
【0079】
[重合体の極限粘度]
極限粘度[η]は、重合体約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイル
バス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希
釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式
(1)に示すように、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求
めた。
【0080】
[η]=lim(ηsp/C)(C→0) (1)
【0081】
[重合体の密度]
得られた重合体を200~260℃に設定した油圧式熱プレス機((株)神藤金属工業
所製「NS-50」)を用い、ゲージ圧10MPaでシート成形した。得られた1mm厚
プレスシートを30mm角に切り取り、JIS K6268に準拠して、電子比重計を用
いて水中置換方法で測定した。
【0082】
[重合体の動的粘弾性]
密度の測定と同様の方法で得られた3mm厚プレスシートを45mm×10mmに切り
取り、動的粘弾性測定装置(ANTONPaar社製「MCR301」)を用いて、10
rad/sの周波数で-40~150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、tan
δピーク値とピーク温度を求めた。
【0083】
[発泡体の目付]
発泡体を1mで切断し、電子比重計(ミラージュ貿易社製「MD200S」)を用い、
測定した(n=3)。
【0084】
[発泡体の発泡倍率]
発泡倍率は、以下の式に基づいて算出した。
【0085】
発泡倍率(倍)=発泡体用樹脂組成物の密度/発泡体の見掛密度。
【0086】
[発泡体の連続気泡率]
得られた発泡体を、予め重量を測定し、水中に静置した後、-400mmHgの減圧下
に1分間放置して、連続気泡構造の中に水を浸透させた。減圧状態から大気圧力に戻し、
発泡体の表面に付着した水を除去して重量を測定した後、下記式(2)により算出した。
【0087】
連続気泡率(%)={(w2-w1)/d3}/(w1/d1-w1/d2) ×100 (2)
(式中、w2は吸水後の発泡体重量、w1は吸水前の発泡体重量、d1は発泡体の見掛密
度、d2は発泡体に使用されている樹脂組成物の見掛密度、d3は測定時の水の密度を示
す)。
【0088】
[発泡体の気泡径(セルサイズ)]
得られた発泡体の断面を走査型電子顕微鏡又はデジタル顕微鏡(スカラ(株)製)で観
察し、TD方向及びMD方向の気泡径を任意の10箇所で測定し、平均値を気泡径とした
。また、各々の気泡径は、長径と短径との平均値とした。
【0089】
[発泡体のスキン層の平均厚み]
電子顕微鏡(スカラ(株)製)及びファイリング&2次元計測ソフトウェア((株)ア
ートレイ製「AR-CNVMF」)を用いて、TD方向のスキン層の厚みを任意の10箇
所で測定し、平均値をスキン層の平均厚みとした。
【0090】
[発泡体の圧縮硬さ]
引張試験機((株)島津アクセス製)を用いて、JIS K 6767-1999に準
拠して測定した。試験条件は荷重:102kgf(1kN)、圧子:100.2mm、速
度:10mm/min、温度:15℃、20℃、25℃である。測定方法は、以下の通り
である。
【0091】
(1)サンプルをカットして試験機にセットし(試験片:50mm角、高さが25mm
になるように重ねる)、
(2)サンプル接触面までアッパー(UPPER)を下げ、試験力を0にしてから3N
荷重をかけ、高さ(厚み)を測定し、
(3)試験速度10mm/minで(2)で測定した高さの25%まで圧縮して20秒
間維持し(この時のピーク値を最大荷重とする)、
(4)圧縮硬さ(N/cm2)を求める。
【0092】
実施例1
(第1の4-メチル-1-ペンテン系樹脂の製造)
窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノル
マルヘキサン300ml、4-メチル-1-ペンテンを450ml装入した。このオート
クレーブに、トリイソブチルアルミニウムの1mmol/mlトルエン溶液を0.75m
l装入し、攪拌機を回した。次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.
19MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、メチルアルミノキ
サンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シク
ロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重
合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重
合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オー
トクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。得られた
溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた重合体
の物性を測定した結果、以下の通りであった。
【0093】
4-メチル-1-ペンテン含量:84.1モル%
プロピレン含量:15.9モル%
重量平均分子量(Mw):34万
分子量分布(Mw/Mn):2.1
ガラス転移温度(Tg):40℃
融点(Tm):132℃
極限粘度[η]:1.5dl/g
密度:838kg/m3
tanδピーク値:1.6
tanδピーク時の温度:39℃。
【0094】
(発泡体の製造)
第1の4-メチル-1-ペンテン系樹脂100質量部、発泡核剤であるタルク(日本タ
ルク(株)製「ミクロエースK-1」、平均粒子径7.4μm)1.7質量部および収縮
防止剤(ベーリンガーインゲルハイムケミカルズ(株)製「アクティベックス325」)
3.0質量部をタンデム押出機(プラ技研(株)製、スクリュー径90mm、L/D=3
5)に供給し、温度100℃(押出機出口直後のヘッド内の温度)、圧力12MPaの条
件で、溶融混練し、この押出機の途中からイソブタンガス8.0質量部を注入した後、発
泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けた金型(リングダイ)の口金から押出発泡し、ネ
ット状発泡体を得た。得られた発泡体は、表1に示すように、幅423mm、厚み(表中
の厚みW)9.9mmの筒状であり、目付92.4g/m、発泡倍率27.5倍、ネット
状発泡体の網目のピッチ98mm、厚み(表中の厚みS)9.9mm、連続気泡率1.7
体積%、気泡径0.46mm、スキン層の平均厚み0.017mmであった。
【0095】
実施例2~4
目付および形状を表1のように変更する以外は実施例1と同様の方法でネット状発泡体
を製造した。
【0096】
実施例1~4で得られたネット状発泡体の評価結果を表1および表2に示す。
【0097】
【0098】
【0099】
実施例1~4で得られた発泡体は、発泡倍率も高く、温度が上昇して体温に近づくに伴
って圧縮硬さが低下した。
【0100】
実施例5
(第2の4-メチル-1-ペンテン系樹脂)
加圧するプロピレンの全圧0.19MPaを全圧0.4MPaに変更する以外は、第1
の重合体と製造と同様の方法で乾燥したパウダー状重合体を得た。得られた重合体の物性
を測定した結果、以下の通りであった。
【0101】
4-メチル-1-ペンテン含量:72.5モル%
プロピレン含量:27.5モル%
重量平均分子量(Mw):33.7万
分子量分布(Mw/Mn):2.1
ガラス転移温度(Tg):30℃
融点(Tm):なし
極限粘度[η]:1.5dl/g
密度:839kg/m3
tanδピーク値:2.8
tanδピーク時の温度:31℃。
【0102】
(発泡体の製造)
第1の4-メチル-1-ペンテン系樹脂の代わりに第2の4-メチル-1-ペンテン系
樹脂を用いる以外は実施例1と同様の方法でネット状発泡体を得た。養生前の発泡体の発
泡倍率は20倍であった。
【0103】
実施例6~9
第1の4-メチル-1-ペンテン系樹脂100質量部の代わりに、第1の4-メチル-
1-ペンテン系樹脂46質量部および第2の4-メチル-1-ペンテン系樹脂54質量部
を用いる以外は実施例1と同様にしてネット状発泡体を製造した。得られたネット状発泡
体の特性を表3に示し、評価結果を表4に示す。
【0104】
【0105】
【0106】
実施例6~9で得られたネット状発泡体は、発泡倍率も高く、温度が上昇して体温に近
づくに伴って圧縮硬さが低下した。
【0107】
実施例10~12
第1の4-メチル-1-ペンテン系樹脂46質量部、第2の4-メチル-1-ペンテン
系樹脂54質量部、発泡核剤発であるタルク、日本タルク(株)製「ミクロエースK-1
」、平均粒子径7.4μm、1.7重量部および収縮防止剤(アクティベックス325)
3.0質量部をタンデム押出機(プラ技研(株)製、スクリュー径90mm、L/D=3
5)に供給し、温度100℃(押出機出口直後のヘッド内の温度)、圧力11.0MPa
の条件で、溶融混練し、この押出機の途中からイソブタンガス7.0質量部を注入した後
、発泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けたリング形状の金型から押出し、発泡体を得
た。得られた発泡体は、幅85mm、厚み4.8mmの筒状であり、目付52g/m、発
泡倍率12倍、連続気泡率2.25%、セルサイズ(気泡径)1.36mm、スキン層の
平均厚み0.019mmであった。実施例10~12で得られた発泡体の特性を表5に示
し、評価結果を表6に示す。
【0108】
【0109】
【0110】
実施例10~12で得られたシート状発泡体は、発泡倍率も高く、温度が上昇して体温
に近づくに伴って圧縮硬さが低下した。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の4-メチル-1-ペンテン系樹脂発泡体は、健康用品、介護用品(例えば、転
倒防止フィルム・マット・シート、褥瘡予防など)、医療用品(例えば義足などの装着部
)、衝撃吸収パッド、プロテクター・保護具(例えば、ヘルメット、ガードなど)、スポ
ーツ用品(例えば、スポーツ用グリップなど)、スポーツ用防具、ラケット、ボール、自
転車用品(例えばサドルクッション、ベビーシート用)運搬用具(例えば、運搬用衝撃吸
収グリップ、衝撃吸収シートなど)、健康器具、産業用材料(例えば、制振パレット、衝
撃吸収ダンパー、履物用衝撃吸収部材、衝撃吸収発泡体、衝撃吸収フィルム・シートなど
)、自動車用衝撃吸収部材(例えば、バンパー衝撃吸収部材、クッション部材など)など
に利用できる。