(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】井戸管理方法
(51)【国際特許分類】
E03B 3/08 20060101AFI20240826BHJP
E03B 3/15 20060101ALI20240826BHJP
F04B 51/00 20060101ALI20240826BHJP
F04B 49/10 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
E03B3/08 Z
E03B3/15
F04B51/00
F04B49/10 311
(21)【出願番号】P 2023186847
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2023137378
(32)【優先日】2023-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523325510
【氏名又は名称】岩渕 哲行
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 哲行
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037817(JP,A)
【文献】特開2022-017701(JP,A)
【文献】登録実用新案第3196925(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 1/00-11/16
F04B 51/00
F04B 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の井戸管理システムを用いた井戸管理方法であって、前記揚水量計測手段により前記揚水ポンプの揚水量を計算して、前記揚水量が前記揚水ポンプの揚水能力の70%以下となった場合、
前記ポンプ作動時間計測手段により計測された前記揚水ポンプの作動時間,前記ポンプ作動回数計測手段により計測された前記揚水ポンプの作動回数及び前記揚水ポンプに供給される電源の周波数の変化に基づき、前記揚水ポンプを修理若しくは交換
し、また、前記水位計測手段により前記ケーシング体内の水位を計測して前記揚水ポンプ位置が水深150m以上を維持するように管理することを特徴とする井戸管理方法。
記
地盤の掘削孔に設けられストレーナ部を有するケーシング体と、このケーシング体内に設けられる揚水ポンプとを備えた井戸の管理システムであって、前記揚水ポンプの揚水量を計測する揚水量計測手段と、前記ケーシング体内の水位を計測する水位計測手段と、前記ケーシング体内への地下水導入量を計測する地下水導入量計測手段とを具備
し、また、前記揚水ポンプは、揚水量が設定量に達した場合、一旦停止した後、所定の作動開始条件に至った場合に作動開始するように構成され、前記揚水ポンプの作動時間を計測するポンプ作動時間計測手段及び前記揚水ポンプの作動回数を計測するポンプ作動回数計測手段を具備し、更に、前記揚水ポンプはモーターポンプであり、この揚水ポンプに供給される電源の周波数を可変するインバータを有する井戸管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の井戸管理方法において、前記地下水導入量計測手段により計測される前記ケーシング体内への地下水導入量が45L/min以下となった場合、前記ケーシング体を交換するか否かの基準若しくは前記掘削孔を継続使用するか否かの基準とすることを特徴とする井戸管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の掘削孔に設けられストレーナ部を有するケーシング体と、このケーシング体内に設けられる揚水ポンプとを備えた井戸の管理は、任意のタイミング(例えば使用年月)で揚水ポンプを引き上げて点検したり、ケーシング体(ストレーナ部)を洗浄(特許文献1,2参照)したりなど、主にその井戸を管理する管理者の経験や勘に基づき行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-74092号公報
【文献】特許第7204253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来から行われている井戸の管理は、揚水ポンプを異常が無いにも関わらず引き上げて点検するという無駄が生じたり、その反対に、揚水ポンプが井戸(ケーシング体)内の水位低下に起因するキャビテーションを起こしたり(井戸内の水の上方領域には土壌から発生するガスから成る気泡が充満している)、機能が低下しているなどの異常に気付かないまま継続作動させることで故障し、揚水ポンプが突然停止してしまう場合や、ケーシング体(ストレーナ部)に目詰まりが生じたまま放置され、井戸における地下水の需給バランスが崩れるのは勿論、ストレーナ部に汚れが強固に付着して洗浄しても目詰まりが解消されずにケーシング体の交換が必要となってしまう場合があるなど、井戸の現状に対応した適切な管理が行われていないのが現状である。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、従来に無い非常に実用的な井戸管理方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
下記の井戸管理システムを用いた井戸管理方法であって、前記揚水量計測手段により前記揚水ポンプ3の揚水量を計算して、前記揚水量が前記揚水ポンプ3の揚水能力の70%以下となった場合、前記ポンプ作動時間計測手段により計測された前記揚水ポンプ3の作動時間,前記ポンプ作動回数計測手段により計測された前記揚水ポンプ3の作動回数及び前記揚水ポンプ3に供給される電源の周波数の変化に基づき、前記揚水ポンプ3を修理若しくは交換し、また、前記水位計測手段により前記ケーシング体2内の水位を計測して前記揚水ポンプ3位置が水深150m以上を維持するように管理することを特徴とする井戸管理方法に係るものである。
【0008】
記
地盤の掘削孔50に設けられストレーナ部2aを有するケーシング体2と、このケーシング体2内に設けられる揚水ポンプ3とを備えた井戸1の管理システムであって、前記揚水ポンプ3の揚水量を計測する揚水量計測手段と、前記ケーシング体2内の水位を計測する水位計測手段と、前記ケーシング体2内への地下水導入量を計測する地下水導入量計測手段とを具備し、また、前記揚水ポンプ3は、揚水量が設定量に達した場合、一旦停止した後、所定の作動開始条件に至った場合に作動開始するように構成され、前記揚水ポンプ3の作動時間を計測するポンプ作動時間計測手段及び前記揚水ポンプ3の作動回数を計測するポンプ作動回数計測手段を具備し、更に、前記揚水ポンプ3はモーターポンプであり、この揚水ポンプ3に供給される電源の周波数を可変するインバータを有する井戸管理システム。
【0009】
また、請求項1記載の井戸管理方法において、前記地下水導入量計測手段により計測される前記ケーシング体2内への地下水導入量が45L/min以下となった場合、前記ケーシング体2を交換するか否かの基準若しくは前記掘削孔50を継続使用するか否かの基準とすることを特徴とする井戸管理方法に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように構成したから、井戸の管理が簡易且つ良好に行えるなど、従来に無い非常に実用的な井戸管理方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本実施例に係る井戸管理システムを用いた井戸管理方法を示すフローチャート図である。
【
図3】本実施例に係る井戸管理システムを用いた井戸管理方法を示すフローチャート図である。
【
図4】本実施例に係る井戸1の揚水量を示すグラフ図である。
【
図5】本実施例に係る井戸1の揚水量を示すグラフ図である。
【
図6】本実施例に係る井戸1の水位を示すグラフ図である。
【
図7】本実施例に係る揚水ポンプ3の作動時間を示すグラフ図である。
【
図8】本実施例に係る揚水ポンプ3の作動回数を示すグラフ図である。
【
図9】本実施例に係る揚水ポンプ3の周波数を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0013】
本発明は、揚水量計測手段により揚水ポンプ3の揚水量を計測し、水位計測手段によりケーシング体2内の水位を計測し、地下水導入量計測手段によりケーシング体2内への地下水導入量を計測し、これら計測手段による計測結果により、地上にて井戸1(主に揚水ポンプ3及びケーシング体2)の現状を把握して確実に対応することができる。
【0014】
具体的には、揚水ポンプ3の揚水量の計測結果は、揚水ポンプ3が正常か否かを確認する指標となり、また、ケーシング体2内の水位の計測結果は、揚水ポンプ3の作動に適した環境(キャビテーションが起きない環境)か否かを確認する指標となり、また、ケーシング体2内の水位の計測結果は、ケーシング体2(ストレーナ部)に目詰まりが生じているか否かを確認する指標となり、また、ケーシング体2内への地下水の導入量の計測結果は、掘削孔50の健全性を確認する指標となる。
【0015】
従って、揚水ポンプ3の点検や修理を最適なタイミングで行うことができて該揚水ポンプ3の長寿命化を奏することができ、且つ、地下水の使用先(例えば温泉施設)の運営に影響せぬよう揚水ポンプ3の交換を最適なタイミングで行うことができ、しかも、井戸1(ケーシング体2)を洗浄するか否かの判断と掘削孔50の健全性の判断が行え、且つ、井戸(掘削孔50)を新設する時期の判断が行える。
【実施例】
【0016】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0017】
本実施例は、地盤の掘削孔50に設けられストレーナ部2aを有するケーシング体2と、このケーシング体2内に設けられる揚水ポンプ3とを備えた井戸1(井戸装置)の管理システムである。
【0018】
本実施例では、
図1に図示したように洗浄対象となる井戸1は温泉井戸(地下水の使用先は温泉施設)であり、約1500mの掘削孔50に直径約25cm(断面積0.0490625m
2)の管部材2’を多数継合して成るケーシング体2を配設して構成され、このケーシング体2の下端部位及び途中部位(水源となる部位)に該ケーシング体2の長手方向に長さを有する複数本のスリット状の通水孔2a’(幅約6~12mm,長さ約10~30cm)が周方向に並設された管部材2’を配したストレーナ部2a(ケーシング体2における地下800m~1,500mの範囲に合計約400mの長さのストレーナ部2a)が設けられ、更に、このケーシング体2内に揚水ポンプ3(モーターポンプ)を下端部に設けられた揚水パイプ4を配して構成されている。尚、揚水ポンプ3は地下300mに配されている。
【0019】
また、本実施例で使用する揚水ポンプ3の仕様は、5.5kw×50Hz×3φ×200V(27.5A)/最大揚水量(105L/min)×最大揚程(139mH)である。
【0020】
本実施例では、井戸1の掘削時の最大可能揚水量の70%以下の揚水量を維持するように揚水ポンプ3を作動させ、且つ、常に揚水ポンプ3が井戸1(ケーシング体2)内におけるキャビテーションを起こさない水深位置(所謂かぶせ水位150m以上)となるように管理される。前述したように井戸1内の水の上方領域(本実施例の場合、水深140m程度までの領域)には土壌から発生するガスから成る気泡が充満しており、この領域に揚水ポンプ3が配されるとキャビテーションが起き易い状態となる。
【0021】
また、本実施例は、揚水ポンプ3の作動を制御する制御装置(コンピュータシステム)を有しており、この制御装置の制御により、揚水ポンプ3は、揚水量が設定量(使用先の条件に応じた設定量)に達した場合、即ち、貯水タンク内の貯水量が所定量まで増量した場合に停止し、その後、作動停止後における作動開始条件に至った場合、即ち、貯水タンク内の貯水量が所定量以下まで減った後、作動開始するように構成されている。尚、前述した作動開始条件に関し、予め設定しておいた所定時間が経過した後に作動開始するように構成しても良い。
【0022】
また、この制御装置にはインバータ(インバータ回路)が設けられている。
【0023】
このインバータは、揚水ポンプ3に供給される電源(直流電圧)を所定の周波数の交流電圧に変換して揚水ポンプ3の駆動電力として出力するものである。
【0024】
従って、インバータを備えることで、必要な揚水量に応じて揚水ポンプ3の周波数(回転数)を任意の数値に設定することができ、電気の使用量を必要最小限に抑制し、コスト安な作動が可能となり、しかも、揚水ポンプ3の長寿命化が達成される。
【0025】
本実施例では、通常作動時の周波数は25Hz(揚水ポンプ3のモーター回転数は1500rpm)に設定される。勿論、通常作動時は上記のみに限られるものではない。
【0026】
また、本実施例は、揚水量計測手段と、水位計測手段と、地下水導入量計測手段と、ポンプ作動時間計測手段と、ポンプ作動回数計測手段とを具備しており、これら各計測手段から計測されるデータは前述した制御装置5で処理され、この制御装置5での処理結果を基に各計器類は作動制御される。
【0027】
揚水量計測手段は、揚水パイプ3図示省略の水量測定器(例えば羽根車式、電磁式、差圧式、渦流式など)を設け、定期的に揚水ポンプ3の単位時間当たりの揚水量を計測するように構成されている。この揚水量計測手段での計測結果は制御装置へ送られて処理(
図4,5のように時系列でグラフ化)される。
【0028】
水位計測手段は、揚水ポンプ3に水位計を設け、定期的にケーシング体2内の水位を計測するように構成されている。この水位計測手段での計測結果は制御装置へ送られて処理(
図6のように時系列でグラフ化)される。
【0029】
地下水導入量計測手段は、後述する計測方法により定期的にケーシング体2内への地下水導入量(湧水量)を計測するように構成されている。
【0030】
このケーシング体2内への地下水導入量(L/min)は、揚水ポンプ3の水位計を利用し、ケーシング体2内の地下水を汲み上げる揚水ポンプ3のポンプ作動時における動水位からポンプ停止後の所定時間(sec)における所定上昇水位までの水の体積(m3)を基準に計測され、この所定上昇水位としては例えば自然水位である。尚、この所定上昇水位としては自然水位以外の任意の水位でも良い。
【0031】
また、ケーシング体2内への地下水導入量(L/min)の計測は、前述した計測方法の他、例えば揚水管や揚水ポンプ3に流量計を付設して流量を計測するようにしても良い。
【0032】
尚、本実施例では、後述の通り、地下水導入量として45L/minを必要量とし、これをミニマム数値として管理している。
【0033】
ポンプ作動時間計測手段は、制御装置5に設けられ、前述した揚水ポンプ3の作動時間を計測し、これを時系列でグラフ化(
図7参照)するように構成されている。
【0034】
本実施例の揚水ポンプ3は、使用先(温泉施設)の使用状況により停止したり作動したりする、即ち、前述したように貯水タンク内の貯水量が所定量まで増量した場合に停止し、その後、作動停止後における作動開始条件に至った場合、即ち、貯水タンク内の貯水量が所定量以下まで減った後、作動開始するように構成されているが、通常、揚水ポンプ3に異常が無く必要量だけ揚水されていれば1日における作動時間はほぼ一定になる。
【0035】
従って、定期的に揚水ポンプ3の作動時間を計測し、これを時系列でグラフ化して作動時間が多い傾向に傾いていれば、揚水ポンプ3の揚水能力の低下が判断される。つまり、作動時間が多い場合、後述する揚水ポンプ3の作動回数との組み合わせにより、揚水ポンプ3のベアリングやインペラー(羽根車)や駆動軸などの摩耗による機能低下が考えられ、部品交換などの修理や新品交換の判断が行われる。
【0036】
ポンプ作動回数計測手段は、制御装置5に設けられ、前述した揚水ポンプ3の作動回数を計測(記録保存)し、これを時系列でグラフ化(
図8参照)するように構成されている。
【0037】
従って、ポンプ作動時間計測手段と同様、定期的に揚水ポンプ3の作動回数を計測し、これを時系列でグラフ化して作動回数(停止回数)が少ない傾向に傾いていれば、揚水ポンプ3の揚水能力の低下が判断される。つまり、揚水ポンプ3の作動回数が少ない場合、前述した揚水ポンプ3の作動時間との組み合わせにより、揚水ポンプ3のベアリングやインペラー(羽根車)や駆動軸などの摩耗による機能低下が考えられ、部品交換などの修理や新品交換の判断が行われる。
【0038】
また、本実施例は、揚水ポンプ3の周波数をインバータにより変更可能であり、必要な揚水量を得るための周波数の変化を時系列でグラフ化(
図9参照)して、周波数が高い傾向に傾いていれば、揚水ポンプ3の揚水能力の低下が判断される。つまり、揚水ポンプ3の周波数が高い場合、前述した揚水ポンプ3の作動時間及び作動回数との組み合わせにより、揚水ポンプ3のベアリングやインペラー(羽根車)や駆動軸などの摩耗による機能低下が考えられ、部品交換などの修理や新品交換の判断が行われる。
【0039】
以上の構成から成る本実施例に係る井戸管理システムを用いた井戸管理方法について説明する。
【0040】
揚水量計測手段により揚水ポンプ3の揚水量を計測し、水位計測手段によりケーシング体2内の水位を計測し、地下水導入量計測手段によりケーシング体2内への地下水導入量を計測し、ポンプ作動回数計測手段によりポンプ作動停止制御手段における揚水ポンプ3の作動回数を計測し、ポンプ作動時間計測手段により揚水ポンプ3の作動時間を計測し、これら計測手段による計測結果により、地上にて井戸1(主に揚水ポンプ3,ケーシング体2及び掘削孔50)の現状を把握して確実に対応することができる。
【0041】
以下、本実施例の揚水ポンプ3及びケーシング体2の現状を確認する作業(検査)の流れについて、
図2,3のフローチャート図に基づき説明する。
【0042】
先ず、揚水量計測手段による揚水ポンプ3の揚水量の計測結果は、揚水ポンプ3が正常か否かを確認する指標となる。
【0043】
揚水量計測手段により揚水ポンプ3の揚水量を計算して(ステップ100)、前記揚水量が揚水ポンプ3の揚水能力(ポンプ設計上の揚水能力)の70%以上だった場合、揚水ポンプ3は異常なし(Y)としてステップ101へ進む。
【0044】
一方、揚水量が揚水ポンプ3の揚水能力の70%以下だった場合、揚水ポンプ3は異常あり(N)としてステップ102へ進み、処理装置で得たグラフによる「揚水ポンプ作動時間把握の確認」,「揚水ポンプ作動回数の確認」及び「揚水ポンプ作動周波数の確認」を行い、確認項目にて全てクリア(Y)となった場合には、揚水ポンプ3の故障内容が判断できてそのほとんどが修理にて対応できる状況であるため修理で対応し(ステップ103)、ステップ101へ進み、一方、クリアしない(N)となった場合には、揚水ポンプ3を新品に交換し(ステップ104)、ステップ101へ進む。
【0045】
次に、ケーシング体2内の地下水の水位を計測し(ステップ101)、揚水ポンプ3の作動に適した環境(キャビテーションが起きない水深150m以上の環境)であることを確認した場合、揚水ポンプ3が水深150m以上で異常なし(Y)としてステップ105へ進む。
【0046】
一方、揚水ポンプ3の作動に適さない環境(キャビテーションが起き易い水深150mない環境)であることを確認した場合、揚水ポンプ3が水深150mなくて異常あり(N)、即ち、ケーシング体2(ストレーナ部2a)に目詰まりが有ると判断してストレーナ部2aを特開2023-74092や特許第7204253号で洗浄し(ステップ106)、再びケーシング体2内の地下水の水位を計測し(ステップ107)、揚水ポンプ3の作動に適した環境(キャビテーションが起きない水深150m以上の環境)であることを確認した場合、揚水ポンプ3が水深150m以上で異常なし(Y)としてステップ105へ進み、それでも改善されない場合には、別の掘削孔50を掘って井戸1を新設(ステップ108)若しくはケーシング体2の交換が必要と判断する。
【0047】
次に、地下水導入量計測手段によりケーシング体2内への地下水導入量を計測し(ステップ105)、湧水量が所定量(45L/min)以上であった場合、掘削孔50は異常なし(Y)と判断して検査を終了し、湧水量が所定量(45L/min)よりも少なかった場合、掘削孔50は異常あり(N)と判断し、別の掘削孔50を掘って井戸1を新設(ステップ108)若しくはケーシング体2の交換が必要と判断する。つまり、ケーシング体2内への地下水の導入量の計測結果は、ケーシング体2(ストレーナ部2a)に目詰まりが生じているか否かを確認する指標にもなる。
【0048】
本実施例は上述のように構成したから、揚水ポンプ3の点検や修理を最適なタイミングで行うことができて該揚水ポンプ3の長寿命化を奏することができ、且つ、地下水の使用先(例えば温泉施設)の運営に影響せぬよう揚水ポンプ3の交換を最適なタイミングで行うことができ、しかも、井戸1(ケーシング体2)を洗浄するか否かの判断と掘削孔50の健全性の判断が行え、且つ、井戸(掘削孔50)を新設する時期の判断が行える。
【0049】
また、本実施例は、揚水ポンプ3は、揚水量が設定量に達した場合、一旦停止した後における作動開始条件に至った場合に作動開始するように構成されており、揚水ポンプ3の作動時間を計測するポンプ作動時間計測手段を具備するから、揚水ポンプ3の状況判断が行える。
【0050】
また、本実施例は、揚水ポンプ3は、揚水量が設定量に達した場合、一旦停止した後における作動開始条件に至った場合に作動開始するように構成されており、揚水ポンプ3の作動回数を計測するポンプ作動回数計測手段を具備するから、この点においても揚水ポンプ3の状況判断が行える。
【0051】
また、本実施例は、揚水ポンプ3はモーターポンプであり、この揚水ポンプ3に供給される電源の周波数を可変するインバータを有するものであるから、この点においても揚水ポンプ3の状況判断が行える。
【0052】
尚、本実施例は、井戸1から揚水される地下水の使用先(温泉施設)とのマテリアルバランスも考慮することで、揚水ポンプ3について検討するなどの管理が可能となる。
【0053】
具体的には、揚水ポンプ3の作動時間の変化が無い時に揚水量が低下した時に何が原因かを特定する。
【0054】
周波数別の揚水ポンプ3の揚水量の把握にて判別が可能である(インバータでの作動管理をしていない場合でもその把握は可能である。)。
【0055】
揚水ポンプ3の作動時間の変化がある時は、別の要因が考えられる。
【0056】
揚水された地下水の使用先(温泉施設)のバランスが乱れている時は使用先のバランスを図る。
【0057】
対策として、揚水された温泉の使用先のマテリアルバランスを安定させることが不可能な場合は、揚水ポンプ3の交換を検討する。
【0058】
揚水ポンプ3の作動時間の変化が無い時に揚水量が低下した時に、揚水ポンプ3の作動時間及び揚水量を確認し、揚水ポンプ3の周波数別揚水量の結果を確認する(揚水される揚水ポンプ3の周波数別揚水量を確認し、揚水量の経時変化を確認する。)。
【0059】
揚水される揚水ポンプ3の周波別揚水量を確認し、揚水量の低下を確認し、経時変化を確認し、揚水ポンプ3の交換を検討する。
【0060】
また、揚水ポンプ3の作動回数(作動発停回数)を確認する。
【0061】
揚水ポンプ3の作動数のバランスが乱れている場合(揚水された温泉の使用先のマテリアルバランスが乱れている時は使用先のバランスを図る)は、使用先のバランスを図るための協議をする。
【0062】
以下、本実施例を構成する各項目について詳述する。
【0063】
<揚水ポンプ3の作動時間の把握の方法>
単に揚水ポンプ3の作動時間の把握ではなく、そこから得られる情報から展開し更なる活動の情報源とする。
また、揚水ポンプ3の作動時間の把握から、揚水ポンプの能力の減衰を把握する。
また、揚水ポンプ3の能力の減衰をポンプ設置時のポンプ性能曲線との対比をできるようにする。
【0064】
<揚水ポンプ3の作動回数の確認>
揚水ポンプ3の作動回数は、温泉水の後の貯水タンクの状況により揚水ポンプ3の動作がなされているが、通常、揚水ポンプ3の取り扱い説明では揚水ポンプ3の作動ができる限り少なくするようにとの記載がされているが、本実施例では、揚水ポンプ3の運転管理方法として、揚水ポンプ3の運転管理方法としてインバーターを採用することで対応している。
【0065】
<揚水ポンプの作動周波数の確認>
揚水ポンプ3の作動周波数は、単に下げるのみでなく、適正な周波数を確立するために種々試したところ、省エネ量がどこにあるかを把握し得ることが出来るようになった。
【0066】
<井戸水位が揚水ポンプ3の設置位置から上位150mの位置>
地下水位が揚水ポンプ3の上位の150mとした根拠は、一般的な地下水位は、揚水ポンプ3の上位100mが一般的な管理方法であるとされているが、その井戸の水位によりその部分の見直しを行った結果、揚水ポンプ3の上位150mの水位に含まれるメタンガス等の問題もクリアーする事が可能であることが、その判断をするに至った。
【0067】
<井戸におけるストレーナ部2a(井戸湧水ストレーナ)の清掃>
ストレーナ部2の洗浄方法は、従来の方法では、ストレーナ部2aの洗浄時に、ケーシング体2が負圧になることが原因であることを何ら疑問を感じずに実施されてきたが、本発明者はその原因を解明し、ストレーナ部2の洗浄時に、特許第7204253号, 号及び特許第7311195号に開示される技術を実施している。
【0068】
<揚水量(湧水量)が45L/minの必要量の把握>
井戸1のマテリアルバランスとの関係に着目し、必要な揚水を可能とする方法を確立することが可能となった。
また、井戸1のマテリアルバランスとの関係に着目し、揚水ポンプ3の月間揚水量の把握から必要な揚水量を把握し、井戸1の負荷軽減に努めることにより、井戸1の適正揚水量を把握することが可能となった。
【0069】
<井戸1の水位(m)>
井戸1の水位が、150m以上で安定して推移しているが、これは井戸の湧水負荷を軽減することが可能となった。
【0070】
<時間当たりの揚水量(L/min)>
揚水ポンプ3との関係性を考慮し、適正な方法で管理することで安定した揚水が可能となった。
【0071】
時間当たりの揚水量(L/min)の求め方は、揚水ポンプ3の月間運転時間から揚水ポンプ3の運転時間から求められることが可能と判断し、揚水ポンプ3の運転管理の一助とした。
【0072】
<揚水量(m3/m),稼働時間(時間),周波数(Hz)及び作動回数(揚水運転回数/月)>
揚水ポンプ3との関係性を考慮し、適正な方法で管理することで揚水の安定性が明確になった。
【0073】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0074】
1 井戸
2 ケーシング体
2a ストレーナ部
3 揚水ポンプ
50 掘削孔
【要約】
【課題】本発明は、従来に無い非常に実用的な井戸管理システム及び井戸管理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】地盤の掘削孔50に設けられストレーナ部2aを有するケーシング体2と、このケーシング体2内に設けられる揚水ポンプ3とを備えた井戸1の管理システムであって、前記揚水ポンプ3の揚水量を計測する揚水量計測手段と、前記ケーシング体2内の水位を計測する水位計測手段と、前記ケーシング体2内への地下水導入量を計測する地下水導入量計測手段とを具備するものである。
【選択図】
図1