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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】掘削グラップル装置及び油圧ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/36 20060101AFI20240826BHJP
   E02F 3/40 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
E02F3/36 A
E02F3/40 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023192332
(22)【出願日】2023-11-10
【審査請求日】2024-02-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508150337
【氏名又は名称】イワフジ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 勝
(72)【発明者】
【氏名】太田代 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-096599(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128895(JP,U)
【文献】実開平05-047051(JP,U)
【文献】中国実用新案第205557618(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0062522(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0142001(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/00-3/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ショベルに装着され木の把持及び土砂の掘削が可能なバケットグラップルユニットが備えられた掘削グラップル装置であって、
前記バケットグラップルユニットは、本体となるベースフレームと、前記ベースフレームに揺動可能に設けられたトングと、前記トングに対向して前記ベースフレームに揺動可能に設けられた可動トングバケットと、前記トング及び前記可動トングバケットを開閉する開閉シリンダと、前記トング及び前記可動トングバケットを連動させるリンクとを備え、
前記開閉シリンダの一端はトング部軸を介して前記トングに回動可能に接続され、前記開閉シリンダの他端はバケット部軸を介して前記可動トングバケットに回動可能に接続され、
前記リンクの一端は前記トング部軸を介して前記トングに回動可能に接続され、前記リンクの他端はリンク軸を介して前記可動トングバケットに回動可能に接続され、前記トング側は、前記開閉シリンダの軸と前記リンクの軸が前記トング部軸と共通し、前記可動トングバケット側は、前記開閉シリンダの前記バケット部軸と前記リンクの前記リンク軸が異なり、
前記可動トングバケットは、前記トングに対向する一方側に設けられ前記木を前記トングと挟むことで把持するグラップル部と、前記グラップル部の反対の他方側に設けられ前記土砂を掘削する掘削部とを備え、
前記木を掴む際に前記木を中心にして両側に前記可動トングバケットと前記トングを大きく開くことができるとともに、前記ベースフレーム、前記トング及び前記可動トングバケットで前記木の全周を囲んで把持することが可能に構成されていることを特徴とする掘削グラップル装置。
【請求項2】
請求項1記載の掘削グラップル装置であって、
前記ベースフレームは、ブラケットに旋回ベアリングを介して旋回可能に設けられ、
前記可動トングバケットのバケット底面部で地面を転圧する際に、前記ブラケットに対する前記旋回ベアリングの軸が転圧方向と一致するように構成されていることを特徴とする掘削グラップル装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の掘削グラップル装置を備えていることを特徴とする油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルに装着され山林等の木の把持及び土砂の掘削が可能な掘削グラップル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土砂を掘削する等のいわゆる道付けを含む作業は、重機や建機と呼ばれる油圧ショベルのアームの先端部にバケットを設け、このバケットで土砂を掘削したり均したりすることで行われている。
【0003】
また、山林等で道付けする場合、木を伐倒(伐採)し、この伐倒した木を所定の長さに切断(玉切り)し、これらの木を所定の位置に移動させたりしてから土砂を掘削する。昨今では木を移動させるときも油圧ショベルが使用されており、土砂を掘削することと木を把持して移動させることが一つの掘削グラップル装置で行うことができれば便利である。このような、土砂を掘削することと木を把持して移動させることができる掘削グラップル装置として、特許文献1の油圧ショベルに備えられた掘削グラップル装置(作業機)が知られている。
【0004】
特許文献1の技術は、ショベル型掘削機である油圧ショベルのアームの先端部に作業機が取りけられており、作業機は、油圧シリンダで回動操作されるバケット本体と、このバケット本体に基端側を枢着した枠状の把持トングと、一端をバケット本体側に他端を把持トング側に取り付けて伸縮作動で把持トングをバケット本体の開口縁へ開閉操作するシリンダとで構成され、バケット本体の開口縁と把持トングの内端縁にはそれぞれ凹凸状の下刃と上刃を設け、把持トングを閉じた状態でバケットによる掘削作業を行うと共に、把持トングの開閉で切断された木を掴み上げる作業を行う。
【0005】
ところで、木を把持する際、バケット本体と把持トングが木を中心にして両側に大きく開けば、木を掴み易くできる(いわゆるグラップルを容易にできる)。また、土砂を掘削する際、土砂に最初に食い込む掘削爪(ツース)には大きな負荷が掛かるため、掘削爪を支持する部分も大きな負荷に耐えることができれば好ましい。さらに、掘削した土砂がバケットの底面部に沿って円滑にバケットの奥まで押し込むことができれば掘削爪を支持する部分への負荷も軽減できる。
【0006】
しかし、特許文献1の作業機では、把持トングがバケット本体に対して開閉するものの、バケット本体がアームの先端部に対して回動するだけであるため、バケット本体は掘削する際に必要な回動範囲までしか回動して開くことができず、木を掴む際にバケット本体と把持トングが木を中心にして両側に大きく開かず、開く角度が制限されて木を掴む作業を行い難い。
【0007】
また、土砂を掘削する掘削爪が設けられた把持トングが掘削する土砂に対して手前にあり、バケット本体が奥にあるため、土砂を掘削する際は最初に土砂に食い込む把持トングに大きな負荷が掛かる。把持トングはバケット本体に設けられた軸を支点に長く伸びて形成された部材であるため、掘削時に把持トングの軸に大きな負荷が掛かり好ましくない。さらに、把持トングが掘削する土砂に対して手前にあるため、掘削した土砂が直ぐに把持トングとバケット本体の境界部分の段差に引っ掛かり、奥にあるバケット本体に円滑に土砂を押し入れることができず掘削性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第2649703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、油圧ショベルに装着され山林等の木の把持及び土砂の掘削が可能な掘削グラップル装置であって、木を掴む際に木を中心して両側にバケット(可動トングバケット)とトングを大きく開くことができるとともに、土砂を掘削する際に大きな負荷に耐えることができ且つ土砂を円滑にバケット(可動トングバケット)の奥まで押し入れることができて掘削性が向上する掘削グラップル装置を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施例によれば、油圧ショベルに装着され木の把持及び土砂の掘削が可能なバケットグラップルユニットが備えられた掘削グラップル装置であって、
前記バケットグラップルユニットは、本体となるベースフレームと、前記ベースフレームに揺動可能に設けられたトングと、前記トングに対向して前記ベースフレームに揺動可能に設けられた可動トングバケットと、前記トング及び前記可動トングバケットを開閉する開閉シリンダと、前記トング及び前記可動トングバケットを連動させるリンクとを備え、
前記開閉シリンダの一端はトング部軸を介して前記トングに回動可能に接続され、前記開閉シリンダの他端はバケット部軸を介して前記可動トングバケットに回動可能に接続され、
前記リンクの一端は前記トング部軸を介して前記トングに回動可能に接続され、前記リンクの他端はリンク軸を介して前記可動トングバケットに回動可能に接続され、前記トング側は、前記開閉シリンダの軸と前記リンクの軸が前記トング部軸と共通し、前記可動トングバケット側は、前記開閉シリンダの前記バケット部軸と前記リンクの前記リンク軸が異なり、
前記可動トングバケットは、前記トングに対向する一方側に設けられ前記木を前記トングと挟むことで把持するグラップル部と、前記グラップル部の反対の他方側に設けられ前記土砂を掘削する掘削部とを備え、
前記木を掴む際に前記木を中心にして両側に前記可動トングバケットと前記トングを大きく開くことができるとともに、前記ベースフレーム、前記トング及び前記可動トングバケットで前記木の全周を囲んで把持することが可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、掘削グラップル装置のバケットグラップルユニットは、ベースフレームに揺動可能に設けられたトングと、トングに対向してベースフレームに揺動可能に設けられた可動トングバケットとを備えているので、掘削グラップル装置自体がアームに対して角度を変えることができることに加えて、ベースフレームに対してトングと可動トングバケットをそれぞれ開くことができる。このため、油圧ショベルに装着され山林等の木の把持及び土砂の掘削が可能な掘削グラップル装置であって、木を掴む際に木を中心して両側にバケット(可動トングバケット)とトングを大きく開くことができる
【0012】
さらに、掘削グラップル装置のバケットグラップルユニットは、ベースフレームに揺動可能に設けられたトングと、ベースフレームに揺動可能に設けられた可動トングバケットとを備えているので、可動トングバケットを閉じることで、細長く形成されたトングではなく容量の大きい可動トングバケットから先に土砂に食い込ませて掘削させるので、土砂を掘削する際に大きな負荷に耐えることができ且つ土砂を円滑に可動トングバケットの奥まで押し入れることができて掘削性が向上する。
【0014】
かかる構成によれば、可動トングバケットは、トングに対向する一方側に設けられ木をトングと挟むことで把持するグラップル部を備えているので、木を把持する際は木を把持するための専用のグラップル部とトングで把持することができ、木の把持作業性を向上させることができる。
【0015】
さらに、可動トングバケットは、グラップル部の反対の他方側に設けられ土砂を掘削する掘削部を備えているので、土砂を掘削する際は土砂を掘削するための専用の掘削部で掘削することができ、土砂の掘削作業性を向上させることができる。
【0016】
好ましくは、前記掘削グラップル装置を備えている油圧ショベルであることを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、掘削グラップル装置を備えている油圧ショベルであるので、木を掴む際に木を中心して両側にバケット(可動トングバケット)とトングを大きく開くことができるとともに、土砂を掘削する際に大きな負荷に耐えることができ且つ土砂を円滑にバケット(可動トングバケット)の奥まで押し入れることができて掘削性が向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
油圧ショベルに装着され山林等の木の把持及び土砂の掘削が可能な掘削グラップル装置であって、木を掴む際に木を中心して両側に可動トングバケットとトングを大きく開くことができるとともに、土砂を掘削する際に大きな負荷に耐えることができ且つ土砂を円滑に可動トングバケットの奥まで押し入れることができて掘削性が向上する掘削グラップル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例に係る掘削グラップル装置が取り付けられた油圧ショベルの側面図である。
図2】実施例に係る掘削グラップル装置の正面図である。
図3】実施例に係る掘削グラップル装置の右側面図である。
図4】実施例に係る掘削グラップル装置の平面図である。
図5】実施例に係る掘削グラップル装置の木を掴んでの切断及び転圧の作用図である。
図6】実施例に係る掘削グラップル装置の可動トングバケットとトングの開閉の作用図である。
図7】実施例に係る掘削グラップル装置の道付け(掘削、放土)の作用図である。
図8】実施例に係る掘削グラップル装置の伐倒の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、作用図は、掘削グラップル装置を概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例
【0021】
図1に示されるように、移動機体である油圧ショベル10に掘削グラップル装置30が取り付けられており、その一例として、油圧ショベル10は建設機械である。油圧ショベル(移動機体、建設機械)10は、下部走行体11と、下部走行体11上に旋回軸12を介して旋回可能に設けられた上部旋回体13と、上部旋回体13に設けられた作業装置14とを備えている。上部旋回体13の前部には操作室(キャブ)15が搭載され、上部旋回体13の後部には機械室16に配置されたエンジンやカウンタウエイト17が搭載されている。
【0022】
上部旋回体13には、ブーム21及びこのブーム21を回動するブームシリンダ(アクチュエータ)22が回動可能に軸支されている。ブームシリンダ22の先端部はピンを介してブーム21に回動可能に連結されている。ブーム21の先端には、アーム23がアームシリンダ(アクチュエータ)24により回動されるように軸支されている。作業装置14は、ブーム21と、アーム23とを含んでいる。アーム23には、アタッチメントである掘削グラップル装置30がリンク部25を介してアタッチメントシリンダ(アクチュエータ)26により回動されるように軸支されている。
【0023】
次に掘削グラップル装置30について説明する。
図1図6に示されるように、掘削グラップル装置30は、油圧ショベル10に装着され木を把持するとともに土砂を掘削するバケットグラップルユニット31と、バケットグラップルユニット31に格納可能に設けられ木をチェーンソー52で切断するチェーンソーユニット51とを備えている。
【0024】
なお、実施例では、掘削グラップル装置30に木を切断するチェーンソーユニット51を設けたが、これに限定されず、掘削グラップル装置30にチェーンソーユニット51を設けずにバケットグラップルユニット31のみで構成しても差し支えない。
【0025】
次にバケットグラップルユニット31について説明する。
バケットグラップルユニット31は、アーム23及びリンク部25に設けられたブラケット32と、このブラケット32に旋回ベアリング33を介して旋回可能に設けられた本体となるベースフレーム34と、このベースフレーム34に軸35を介して揺動可能に設けられたトング36と、このトング36に対向してベースフレーム34に軸42を介して揺動可能に設けられた可動トングバケット41とを備えている。
【0026】
図6に示されるように、バケットグラップルユニット31は、トング36及び可動トングバケット41を開閉する開閉シリンダ38と、トング36及び可動トングバケット41を連動させるリンク39とを備えている。開閉シリンダ38の一端はトング部軸37を介してトング36に回動可能に接続され、開閉シリンダ38の他端はバケット部軸43を介して可動トングバケット41に回動可能に接続されている。
【0027】
リンク39の一端はトング部軸37を介してトング36に回動可能に接続され、リンク39の他端はリンク軸47を介して可動トングバケット41に回動可能に接続されている。なお、トング36側は、開閉シリンダ38とリンク39の軸(トング軸37)が共通するが、可動トングバケット41側は、開閉シリンダ38とリンク39の軸(バケット部軸43、リンク軸47)が異なる。
【0028】
開閉シリンダ38が伸びると図6(B)に示すトング36と可動トングバケット41が閉じた状態となる(図2の実線で示すトング36と可動トングバケット41の状態となる)。開閉シリンダ38が縮むと図6(C)に示すトング36と可動トングバケット41が開いた状態となる(図2の想像線で示すトング36と可動トングバケット41の状態となる)。トング36と可動トングバケット41を閉じると、図2で示されるように、細い木71を本体部34、トング36及び可動トングバケット41で把持することができる。
【0029】
図1図6に示されるように、ブラケット32及びベースフレーム34内には、ブラケット32に対してベースフレーム34を旋回又は停止させる旋回機構(不図示)が設けられている。トング36は、左右2つの内方に湾曲した側板部36aと、これら2つの側板部36aの先端部分を掛け渡すように連結する連結板36bとを備えている。なお、実施例ではトング36の形状を湾曲した形状としたが、これに限定されず、トング36の形状はストレート形状や、山谷が連続した所謂ノコギリ歯形状など、木71を掴むことができれば形状はいずれの形状であってもよい。
【0030】
可動トングバケット41は、閉じた状態で、ベースフレーム34及びトング36によって、土砂を掘削して積み上げることができるように容器状に形成され、2つのバケット側面部44と、これら2つのバケット側面部44の下端部を接続するするとともに可動トングバケット41の底を形成するバケット底面部45と、バケット底面部45の掘削側の端部に設けられた掘削爪46と、バケット底面部45のトング36側の端部に設けられた補強板49とを備えている。
【0031】
また、可動トングバケット41は、開いた状態で、トング36に対向する一方側に設けられ木71をトング36と挟むことで把持するグラップル部48と、グラップル部48の反対の他方側に設けられ土砂72を掘削する掘削部41aとを備えており、トング36側にはトング側開口48aが形成されている。なお、境界線44aの外側が厚板であり、境界線44aの内側が軽量化のための薄板である。グラップル部48は、掘削爪46の反対側に凹型に形成されており、凹型に形成されることで、木71を抱え込んで容易に把持することができる。
【0032】
さらに、可動トングバケット41は、掘削部41aの開口を広げるために、図2に示す正面視で支点となる軸42がトング36の軸35よりもブラケット32よりに近くなるように、軸35と軸42を通る線が傾いて設けられている。
【0033】
また、ベースフレーム34は、旋回ベアリング33のスラスト方向の面(軸軌道盤)と対向するように設けられたベース上部34aと、このベース上部34aから垂直に延びるリブ壁34bと、リブ壁34bの途中に設けられたベース底部34cとを備えている。
【0034】
次にチェーンソーユニット51について説明する。
図3に示されるように、図左側のリブ壁34bはベース上部34aの略中央部(または、中央より一方側寄り)に設けられており、ベース上部34a、リブ壁34b及びベース底部34cからなる窪みにより、チェーンソーユニット51が格納される格納スペースが形成されている。実線で示すチェーンソーユニット51が格納状態であり、想像線で示すチェーンソーユニット51が使用状態である。
【0035】
図5に示されるように、チェーンソーユニット51は、木を切断するチェーンソー52と、チェーンソーユニット51を格納スペースに格納するときに木の切断位置から格納位置に移動させる格納移動機構(不図示)を備えている。
【0036】
チェーンソー52は、チェーンソー52自体を支持するチェーンソー支持部材に設けられ駆動する駆動部(不図示)と、この駆動部に設けられたガイドバー55と、このガイドバー55の外縁に移動可能に設けられ駆動部により回転されるチェーン56と、チェーンソー52を切断位置に移動させるアクチュエータ(不図示)とを備えている。
【0037】
次に掘削グラップル装置30の木71を掴んでの切断の作用を説明する。
トング36と可動トングバケット41で木71を把持し、チェーンソーユニット51を使用位置に移動させ(図3の想像線で示すチェーンソーユニット51)、チェーンソー52を矢印(1)のように移動させることで木71を切断する(いわゆる玉切り)。
【0038】
次に掘削グラップル装置30の地面等の転圧の作用を説明する。
チェーンソーユニット51を格納し、トング36と可動トングバケット41で木71を把持すると、ブラケット32に対する旋回ベアリング33の軸が転圧方向と一致する。この状態で矢印(2)のように掘削グラップル装置30を移動させると、可動トングバケット41のバケット底面部45で容易に転圧することができる。なお、実施例では、トング36と可動トングバケット41で木71を把持したが、これに限定されず、木71を把持せずに、トング36と可動トングバケット41を半開きの状態することでも、ブラケット32に対する旋回ベアリング33の軸が転圧方向と一致し、可動トングバケット41のバケット底面部45で容易に転圧することができる。
【0039】
次に掘削グラップル装置30の道付け(掘削、放土)の作用を説明する。
図7(A)は一般的な放土の作用と同様であり、トング36と可動トングバケット41を閉じた状態であり、作業装置14(図1参照)を動かし、掘削グラップル装置30自体の角度を変えることで掘削した土砂72を掘削部41aから下方へ放土する。
【0040】
図7(B)は実施例特有の放土の作用であり、トング36と可動トングバケット41を閉じた状態で土砂72を掘削し、掘削グラップル装置30自体の角度を変えずに(略水平の状態)、矢印(3)のようにトング36と可動トングバケット41を開き、可動トングバケット41のトング側開口48aから矢印(4)のように下方へ放土する。
【0041】
なお、トング36と可動トングバケット41を閉じた状態では、いわゆるバケットとして使用でき、トング36と可動トングバケット41を半開きにした状態では、隙間、穴が拡大していわゆるスケルトンバケットとして使用することができる。
【0042】
次に掘削グラップル装置30の伐倒の作用を説明する。
図8(A)に示されるように、木71を正面し、トング36と可動トングバケット41を横方向に開き、掘削グラップル装置30を前進させる。図8(B)に示されるように、トング36と可動トングバケット41を閉じ、木71を把持した状態にてチェーンソー52で切断して前方へ押し倒すことで、木71が伐倒される。トング36と可動トングバケット41が木71を中心にして大きく開くため、運転席(操作室15)から遠い方向となる油圧ショベル10の機体前方に伐倒できる。
【0043】
次に以上に述べた実施例の掘削グラップル装置30の作用、効果を説明する。
本発明の実施例は、掘削グラップル装置30のバケットグラップルユニット31は、ベースフレーム34に揺動可能に設けられたトング36と、トング36に対向してベースフレーム34に揺動可能に設けられた可動トングバケット41とを備えているので、掘削グラップル装置30自体がアーム23に対して角度を変えることができることに加えて、ベースフレーム34に対してトング36と可動トングバケット41をそれぞれ開くことができる。このため、油圧ショベル10に装着され山林等の木71の把持及び土砂72の掘削が可能な掘削グラップル装置30であって、木71を掴む際に木71を中心して両側に可動トングバケット41とトング36を大きく開くことができる。
【0044】
さらに、掘削グラップル装置30のバケットグラップルユニット31は、ベースフレーム34に揺動可能に設けられたトング36と、ベースフレーム34に揺動可能に設けられた可動トングバケット41とを備えているので、可動トングバケット41を閉じることで、細長く形成されたトング36ではなく容量の大きい可動トングバケット41から先に土砂72に食い込ませて掘削させるので、土砂72を掘削する際に大きな負荷に耐えることができ且つ土砂72を円滑に可動トングバケット41の奥まで押し入れることができて掘削性が向上する。
【0045】
さらに、可動トングバケット41は、トング36に対向する一方側に設けられ木71をトング36と挟むことで把持するグラップル部48を備えているので、木71を把持する際は木71を把持するための専用のグラップル部48とトング36で把持することができ、木71の把持作業性を向上させることができる。
【0046】
さらに、可動トングバケット41は、グラップル部48の反対の他方側に設けられ土砂72を掘削する掘削部41aを備えているので、土砂72を掘削する際は土砂72を掘削するための専用の掘削部41aで掘削することができ、土砂72の掘削作業性を向上させることができる。
【0047】
さらに、実施例の掘削グラップル装置30は、チェーンソーユニット51も備えているので、土砂72を掘削することと木71を把持して移動させることだけでなく、山林等に立っている木を伐倒することもできるので、1つの掘削グラップル装置30で木71の伐倒、伐倒された木71を把持しての移動、切断、さらには、土砂72の掘削、転圧を行うことができ作業効率が向上する。
【0048】
掘削グラップル装置30を備えている油圧ショベル10であるので、木71を掴む際に木71を中心して両側にバケット(可動トングバケット41)とトング36を大きく開くことができるとともに、土砂72を掘削する際に大きな負荷に耐えることができ且つ土砂72を円滑にバケット(可動トングバケット41)の奥まで押し入れることができて掘削性が向上することができる。
【0049】
尚、実施例では、トング36は、左右2つの内方に湾曲した側板部36aと、これら2つの側板部36aの先端部分を掛け渡すように連結する連結板36bとを備えて中程が開口したものとしたが、これに限定されず、2つの側板部36aと連結板36bの間に格子を設けて振るい作業を可能としてもよい。
【0050】
尚、実施例では、バケットグラップルユニット31にチェーンソーユニット51を設けたが、木71を切断する手段としてチェーンソー52だけでなく、鉈のような刃を採用してもよく、木71を切断できれば切断手段は問わない。さらには、チェーンソーユニット51が無くても差し支えない。
【0051】
また、実施例では、掘削グラップル装置30を移動機体としての油圧ショベル10に装着したが、これに限定されず、トラクターのような車両に装着してもよく、掘削グラップル装置30が装着できれば移動機体の形式は問わない。
【0052】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の技術は、油圧ショベルに装着され山林等の木の把持及び土砂の掘削が可能な掘削グラップル装置に好適である。
【符号の説明】
【0054】
10…油圧ショベル(移動機体、建設機械、車両)、30…掘削グラップル装置(作業機)、31…バケットグラップルユニット、35…軸、36…トング、37…トング部軸、38…開閉シリンダ、39…リンク、41…可動トングバケット、41a…掘削部、42…軸、43…バケット部軸、44…バケット側面部、47…リンク軸、48…グラップル部、48a…トング側開口、51…チェーンソーユニット、52…チェーンソー、71…木(木材)、72…土砂(土、地面)。
【要約】
【課題】油圧ショベルに装着され山林等の木の把持及び土砂の掘削が可能な掘削グラップル装置であって、木を掴む際に木を中心して両側にバケットとトングを大きく開くことができるとともに、土砂を掘削する際に大きな負荷に耐えることができ且つ土砂を円滑にバケットの奥まで押し入れることができて掘削性が向上する掘削グラップル装置を提供すること。
【解決手段】掘削グラップル装置30のバケットグラップルユニット31は、アーム及びリンク部に設けられたブラケット32と、このブラケット32に旋回ベアリング33を介して旋回可能に設けられた本体となるベースフレーム34と、このベースフレーム34に軸35を介して揺動可能に設けられたトング36と、このトング36に対向してベースフレーム34に軸42を介して揺動可能に設けられた可動トングバケット41とを備えている。
【選択図】図2

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