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  • 特許-液体分離器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】液体分離器
(51)【国際特許分類】
   B01D 45/08 20060101AFI20240826BHJP
   F28F 1/10 20060101ALI20240826BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20240826BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240826BHJP
【FI】
B01D45/08 Z
F28F1/10 Z
F28F21/08 Z
H01M8/04 N
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023503176
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2021070779
(87)【国際公開番号】W WO2022023231
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】102020004533.2
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522100316
【氏名又は名称】セルセントリック・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・キブラー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ウィシャク
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン・シュマルツリート
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・マサイス
(72)【発明者】
【氏名】トビーアス・シュタルク
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・バウムガルトル
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102007023417(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012023682(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第03109240(DE,A)
【文献】欧州特許出願公開第02905158(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0101201(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0110832(KR,A)
【文献】特開2005-000740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 45/00 - 45/18
F28F 1/00 - 1/44
F28F 21/00 - 21/08
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を含む気体流のための液体分離器(17)であって、内部容積(21)を備え、前記内部容積(21)が、少なくとも1つの衝突要素(23)と、分離された液体のための液溜め領域(24)とを有する、前記液体分離器(17)において、
前記液溜め領域(24)に、熱伝導性の高い材料からなる熱伝導要素(30)が配置されており、前記熱伝導要素(30)が、前記少なくとも1つの衝突要素(23)の方向に、前記内部容積(21)内の気体流(25)の中に突出するものであり、前記衝突要素(23)が、前記熱伝導要素(30)よりも熱伝導性の低い材料から形成されていること、および
前記熱伝導要素(30)が金属から形成されており、前記少なくとも1つの衝突要素(23)がプラスチックから形成されていること、
を特徴とする、前記液体分離器(17)。
【請求項2】
前記熱伝導要素(30)と前記少なくとも1つの衝突要素(23)とが互いに接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の液体分離器(17)。
【請求項3】
前記熱伝導要素(30)が、板金要素(31)と、前記少なくとも1つの衝突要素(23)に対する接続要素(32)とから形成されていることを特徴とする、請求項またはに記載の液体分離器(17)。
【請求項4】
前記熱伝導要素(30)が1つまたは複数の板部材を備え、前記板部材の面積が前記内部容積(21)の流通可能な断面積より小さいことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の液体分離器(17)。
【請求項5】
前記熱伝導要素(30)が、少なくとも1つの有孔板部材、複数の棒部材、および/または少なくとも1つの格子部材を備えることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の液体分離器(17)。
【請求項6】
前記内部容積(21)の周囲のハウジング(19)と前記少なくとも1つ衝突要素(23)とが一体的に形成されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の液体分離器(17)。
【請求項7】
ちょうど1つの衝突要素(23)が設けられていることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の液体分離器(17)。
【請求項8】
前記液溜め領域(24)が、排出弁(18)を備えており、または前記排出弁(18)と直接接続されており、前記液溜め領域(24)が、前記排出弁(18)を介して環境またはさらなる構成要素と切替可能に接続されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の液体分離器(17)。
【請求項9】
燃料電池システム(2)の排気流における水分離器としての、請求項1からのいずれか1項に記載の液体分離器(17)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に詳しく定義されている種類の、液体を含む気体流のための液体分離器に関する。また、本発明は、このような液体分離器の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
液体分離器または水分離器は原則的に従来技術から知られている。通常、これらの分離器は衝突要素を備え、液体を含む気体流が衝突要素に沿ってその流れ方向を急激に変えることによって液体が分離され、例えば重力に基づいて衝突板を下方へ伝っていく。これに対応する例が特許文献1に示されている。
【0003】
今では液体分離器は、燃料電池システムにおいて頻繁に使用されており、燃料電池システムでは、燃料電池の排気から水分を分離することが重要である。それは、通常は燃料電池の生産水であるこの水分は、その純度に起因して非常に容易に凍結するからである。その場合、凝固点付近の温度で既に問題、特に、構成要素および/または流路が氷によって遮断され得るので燃料電池の起動問題が生じ得る。これに関連して、例えば特許文献2に記載されている水分離器では、電熱要素と接続された熱伝導要素を介して、水分離器を必要に応じて加熱して解凍するという可能性が存在している。
【0004】
このような必要に応じての解凍は、それによって構造の機能性が確保されるものの、構造的に複雑であるとともに、通常はこのようなシステムの全体的なエネルギー収支に対して悪影響を及ぼす必要電力の増加を引き起こしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】DE 31 09 240 A1
【文献】DE 10 2007 023 417 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、これらの短所を回避し、氷生成のリスクが少なくとも運用中は低減される高効率な運用を保証する、改良された液体分離器を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題は、請求項1、ここでは特に請求項1の特徴部分に記載の特徴を備えた液体分離器によって解決される。有利な構成および発展は、請求項1に従属する下位請求項から明らかになる。また、請求項10には、このような液体分離器の特に好ましい使用が示されている。
【0008】
本発明による液体分離器は、従来技術でもそうであるように、少なくとも1つの衝突要素を有する内部容積を備える。この容積には、衝突要素の他に、分離された液体のための液溜め領域が配置されており、通常は、規定通りの使用では、この液溜め領域が重力方向において衝突要素の下方に置かれるように、または衝突要素の下側の領域に位置するように配置されているので、分離された液体が重力を利用して液溜め領域に到達する。
【0009】
本発明によれば、液溜め領域には、熱伝導性の高い材料からなる熱伝導要素が配置されていることが企図されている。熱伝導要素は、衝突要素の方向に、容積内の気体流の中に突出する。衝突要素自体は、熱伝導要素よりも熱伝導性の低い材料から形成されている。そのため、一般的な液体分離器と同様に、衝突要素に沿って液体が分離されることになる。その後、液体は、例えば重力に従って下方へ滴り、液溜め領域内に滴下または流入する。液溜め領域には、熱伝導要素が液体と接触して位置しており、熱伝導要素は液溜め領域から気体流の方向に、したがって衝突要素の方向に突出している。その機能性は、液滴を含む流体が衝突要素に衝突した際に液体が分離されて下方へ滴下するというものである。衝突要素の熱伝導性がやや低いことから、分離された液体は比較的温かいままである。続いて、液滴が十分に取り除かれた気体流が、少なくとも部分的に熱伝導要素に沿って流れて気体流に含まれる熱を熱伝導要素に放出し、熱伝導要素が液溜め領域およびそこに溜まった液体にこの熱を伝達する。したがって、熱は分離された液滴からも熱伝導要素からも液溜め領域に移動される。それによって、この液溜め領域を、外部の加熱なしで、または、もちろん当然ながら補完的なものとしてさらに可能であり考えられる、熱媒体が流通する熱交換器等の電熱要素への接続なしで、受動的に既に非常に良好に加熱することができる。したがって、液体の固化、例えば液体が水である場合には氷生成を、十分に防止する、または従来技術からの構造と比較して少なくとも大幅に抑制することができる。
【0010】
この場合、この考案の非常に好都合な発展によれば、熱伝導要素が衝突要素と接続されているので、いかなる場合にも、気体流の大部分または好適には気体流の全体が熱伝導要素と接触して熱を熱伝導要素に放出することができることが企図されている。
【0011】
この場合、衝突要素まで突出する熱伝導要素と、それに対応する、熱伝導性の高い熱伝導要素および熱伝導性の低い衝突要素を含む構成とをもつこの構造は、液溜め領域に熱を伝達する点において特に好都合であることが示されている。この接続によって、気体の体積流全体が十分に熱伝導要素と接触することが確実になる。他方では、衝突要素とはその材料および熱伝導性において異なるように具現化されていることによって、熱伝導要素が衝突要素を含む場合より、熱伝導要素をその全長が大幅に短くなるように構成することができる。それによって、比較的短い距離での液溜め領域への良好な熱伝達が保証される。仮に衝突要素も同様に熱伝導性の高い金属から構成されていれば、前もって吸収されていた、および/または液滴から取り除かれていた熱が途中で既に気体流に再び放出されてしまうであろう。その結果、この構造の本来の目標である液溜め領域への入熱は、熱伝導性の高い熱伝導要素および熱伝導性の低い衝突要素を備えた説明している構造の場合よりもかなり悪化するであろう。特に各要素が以下に説明する構造に従って形成されている場合が特に好都合である。
【0012】
すなわち、本発明による液体分離器の非常に好都合な発展によれば、熱伝導要素が金属、好適には熱伝導性の高い合金、例えばアルミニウム合金から製造されていることが企図されている。衝突要素は、相応に熱伝導要素の金属よりも熱伝導性が著しく低いプラスチックから形成されていてもよい。これによって、上述の利点を理想的に利用することができる。
【0013】
熱伝導要素が衝突要素と接続されている、液体分離器の変形例のさらなるとても有利な構成では、さらに、熱伝導要素が2つの部分から構成されることを企図し得る。例えば、熱伝導要素は、液溜め領域の領域内に配置されている板金部材と、この熱伝導要素と衝突要素との間の接続要素とから構成される。この接続要素は、例えば差込接続またはクリップ接続によって衝突要素と接続されていてもよい。
【0014】
この場合、本発明による液体分離器のさらなるとても好都合な構成では、さらに、熱伝導要素が、または先ほど説明した実施変形例によれば少なくとも接続要素が、1つまたは複数の板部材を備え、板部材の面積が容積の流通可能な断面積より小さい。この構造によって、熱伝導要素として重厚な板部材で間に合わせることが可能になる。この重厚な板部材は、比較的多くの熱を吸収することができる。この板部材は、気体が流通するための断面の、全体ではないが大部分を占めるように構成されている。そうすれば、気体は、この板部材に沿って流れなければならず、それに対応して方向転換された後、液体分離器から流出する。これによって、一方では熱伝導要素の板部材への理想的な入熱が達成され、他方では板部材の周囲を流れる際に気体流が再度方向転換することによってまだ気体内に存在しているかもしれない残留液体が分離される。
【0015】
この場合、熱伝導要素、または上述の構造の場合には好適にはやはり熱伝導要素の接続要素は、有孔板部材、棒部材、格子部材等を備えてもよい。これらの部材によって、一方では気体流内に部材を配置することが可能になるので、その部材によって熱を吸収することができ、他方では気体が相応に通過することができるので、気体は断面全体をいわば「満たす」ことができる。この構成は、構造的に、また組み込みの点で相応にシンプルであり、他方では、孔、格子構造、または、互いに交差して交差点において互いに接触する棒部材として形成されていてもよい棒部材の間の間隔を通って、気体が確実に通過することができる。
【0016】
その他、本発明による液体分離器のさらなるとても好都合な構成では、内部容積の周囲の液体分離器のハウジングと衝突要素とが一体的に具現化されていることを企図し得る。この構造は、製造および取付が特にシンプルで効率的である。例えば、この構造では、衝突要素およびハウジングの両方がプラスチックから実現されていることを企図し得る。その場合、ハウジングを例えば比較的容易に実現される射出成形部品として形成することができ、この部品内に、熱伝導要素が例えば板金部材の形でクリップ留めされ、またはこのハウジングにねじ留めされることによって、上述の機能を果たし、好適には液溜め領域を衝突要素と接続することができる。
【0017】
本発明による液体分離器のさらなる非常に好都合な構成では、さらに、内部容積にちょうど1つの衝突要素が設けられていることを企図し得る。衝突要素を1つだけ備えたこの構造は、例えば適した構造の燃料電池システムのアノード・サイクルにおける水の分離のような多くの用途には十分であり、したがって非常にシンプルでコンパクトな、製造の費用効率が高い構造を保証することができる。
【0018】
本発明による液体分離器のさらなるとても有利な変形例では、補完的に、液溜め領域が排出弁を介して環境またはさらなる構成要素と接続されていることを企図し得る。このような排出弁は、特にそれが液溜め領域に直接接続して形成されている、場合によっては液体分離器および液溜め領域に組み込まれて、または少なくとも熱的に接続されて形成されている場合、これによって、比較的大きく、重く、熱容量の高い構成部品が液溜め領域に配置されるというさらなる利点がある。この構成部品は、同様に熱伝導要素を介した加熱を利用することによって凍結を防止することができ、この領域の熱をある程度まで蓄えるのに役立つ。また、この構成部品によって、例えば、測定された、シミュレーションに基づいて算出された、または同等の方法で決定された液位に応じて、液体を特定的に排出することが可能になる。
【0019】
本発明による液体分離器は相応にシンプルかつ効率的に実現および製造することができる。この液体分離器は特に、それが組み込まれる設備の運用において、不利な外部条件下であっても追加的な加熱を伴わない運転を保証することができる。というのは、液体が溜まる領域への熱の伝達によって、この液体の固化を十分に排除可能であるからである。このことは、例えば水の場合、特に凝固点付近の温度で既に非常に凍結しやすい超純水の場合にも当てはまる。熱伝導要素および液溜め領域の加熱を含む構造によって、これを確実に防止することができる。そのため、本発明による液体分離器は、特に水分離器、ここでは特に、燃料電池の生産水として相応に凍結しやすい純水が生じる、燃料電池の排気流における水分離器として適している。燃料電池が例えば燃料電池システムとして、この燃料電池が電力を供給する車両に設置されれば、車両が凝固点を下回る温度で走行中であるという状況は排除できない。したがって、本発明による液体分離器は特にこの種の用途に適しているが、その用途がこれに限定されるわけではない。
【0020】
本発明による液体分離器およびその使用のさらなる有利な構成は、以下に図面を参照しながら詳しく説明される実施例からも明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による液体分離器を水分離器として含む燃料電池システムを備えた例示的な車両の図である。
図2】本発明による液体分離器の可能な構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1の描写において、極めて簡略化して示された車両1を認識することができる。車両1は、電力を供給するため、特に車両の電気的駆動力を供給するために設けられている燃料電池システム2を備える。燃料電池システム2の中核をなすのは、通常は単セルの積層体として形成されている燃料電池3である。以下ではこの構造体を、燃料電池積層体または燃料電池スタックとも呼ぶ。この構造体は、例えば電解質としてのプロトン伝導性の膜を含んで形成されていてもよく、すなわち、いわゆるPEM燃料電池を備え得る。燃料電池積層体3は、送風装置4、例えば流体圧縮機からの空気がカソード側6に供給される。この空気は、吸気管5および気体・気体加湿器10を介して、この図示の実施例では燃料電池積層体3のカソード側6に流入する。酸素が欠乏した空気は、排気管7を介して再び気体・気体加湿器10を通って燃料電池積層体3のカソード側6から流出する。その際、湿気が加湿器10を介して吸気管5内の吸気に放出される。その後、排気は排気タービン8に到達し、そこで緩和されることによって熱エネルギーおよび圧力エネルギーが回収される。電気機械11が、一方ではこの排気タービン8と、他方では流体圧縮機4と作用結合されている。電動ターボチャージャ20またはモータ駆動ターボチャージャとも呼ばれるこの構造は、燃料電池システム2の効率的な空気供給に役立ち、これ以上詳しく説明する必要がないほど従来技術から知られている。
【0023】
燃料電池積層体3のアノード側12には、圧縮ガス貯蔵装置13からの水素が圧力制御・絞り弁14を介して供給される。未使用の水素は、再循環管16を介して燃料電池積層体3のアノード側12から再循環促進装置としてのガス噴射ポンプ15へ戻り、ガス噴射ポンプ15の推進噴流としても使用される新しい水素と混ざり合い、アノード側12へ再度供給される。このガス噴射ポンプ15の代替として、またはこれを補完するものとして、ここでは再循環送風機を設けることができる。再循環管16、あるいはアノード・ループと呼ばれる未使用の水素を再循環するための構造には、排出弁18を介してこの図示の実施例では環境と接続されている液体分離器17が位置している。例えば排気タービン8の前方で、または特に後方で排気管7に接続することも同様に十分考えられる。これらの全てのことは、これ以上説明する必要がないほど燃料電池システムの専門家には明らかである。
【0024】
以下では特に液体分離器あるいは水分離器17についてより詳しく説明する。図2の描写には、その構造が断面図で簡略的に表されている。水分離器17は、例えば射出成形部品としてプラスチックから製造される、符号19が付されたハウジングを備える。排出弁18が、内部容積21を取り囲むハウジング19と直接接触して位置している。液体分離器17の機能性にとっては、再循環管16からの液体を含む気体流のための流通断面の全体を塞ぐ衝突要素23が、上流側で再循環管16と接続されている流入口22の後に続くことが重要である。この衝突要素23は、好適にはハウジング19と一体的に、同様にプラスチックから形成されていてもよい。したがって、再循環管16から流入口22を通って内部容積21に流入する液滴を含む流体は、この衝突要素23に衝突して急激に方向転換させられる。流体に含まれている水分は衝突要素23上に集まり、液体分離器17の規定通りの使用においては、図示されているように重力gの方向に下方へハウジング19の一部に沿って、内部容積21において気体が流通する内部容積21の部分の下方に配置された、排出弁18と接続されている液溜め領域24に滴下する。その後、液体が完全にまたは十分に取り除かれた気体は、符号25が付された矢印に従って、液体分離器17の内部容積21を流通し、流出口26を通って上流側に、再び再循環管16内へ流出する。
【0025】
液溜め領域24には、矢印25に従った気体流の方向にこの液溜め領域24上にそびえ立つように、例えばアルミニウム合金から製造されている熱伝導要素30が位置する。熱伝導要素30は第一の板金部材31によって構成されており、第一の板金部材31は、少なくとも部分的に液溜め領域24に配置されており、ここでは液体レベルによって示された液溜め領域24に溜まった液体内に突出している。同様にアルミニウム合金からなり好適には板金部材31と一体的に具現化されている、または少なくとも板金部材31と非常に良好に熱伝導するように接続されている、例えば溶接されている接続要素32が、衝突要素23の方向に突出しており、好適には衝突要素23と、例えばクリップ留め、リベット留め、ねじ留め、接着等によって機械的に接続されている。接続要素32は原則的に、有孔板部材として、特定の数の棒部材として、格子部材等として具現化されていてもよい。内部容積21の流通断面を図面の平面に対して垂直に、十分にまたは完全に塞ぐ1つまたは複数の板部材からなる構造も考えられる。複数の衝突要素23の場合には、それに対応して複数の接続要素32またはこれらの全てを互いに接続する1つの接続要素32も考えられる。
【0026】
接続要素32および部分的には熱伝導要素30の板部材31は、矢印25に従って流れる気体流の熱を吸収する。衝突要素23はプラスチック製であり熱伝導性が低いので、液滴内に残留している熱とともに、熱が熱伝導要素30の比較的短い経路で、しかも液体自体に既に含まれている熱に加えて、液溜め領域24に伝達される。その結果、液体分離器あるいは水分離器17の運用において液溜め領域24の液体が非常に良好に加熱されるので、氷生成のリスクを回避する、または少なくとも最小限に抑えることができる。

図1
図2