(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】誘電体膜の形成方法、新規な前駆体、及び半導体製造におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C23C 16/18 20060101AFI20240826BHJP
C07F 9/00 20060101ALI20240826BHJP
C01G 33/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
C23C16/18
C07F9/00 A
C01G33/00 A
C07F9/00 Z CSP
(21)【出願番号】P 2023504773
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2020071293
(87)【国際公開番号】W WO2022022813
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】キム、テヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チュホ
(72)【発明者】
【氏名】ノ、ウォンテ
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2013-0049020(KR,A)
【文献】国際公開第2019/156400(WO,A1)
【文献】特開2012-048971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/00
C01G 33/00
C23C 16/00-16/58
H01L 21/205
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
M(=NR
1)(OR
2)(OR
3)
mL
(式中、M
=Nbであり;R
1
がtBuであり;R
2
~R
3=独立して
Et又はtBuであり:L=置換又は無置換のシクロペンタジエ
ンであり;m
=1である)
を有する前駆体を含む
ニオブ含有膜形成組成物。
【請求項2】
ニオブ含有膜の形成方法であって、中に基材を有する反応器に、請求項
1に記載の
ニオブ含有膜形成組成物の蒸気を導入すること;及び前記前駆体の少なくとも一部を前記基材上に堆積させること;を含む方法。
【請求項3】
反応物を前記反応器に導入することを更に含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応物が、O
2、O
3、H
2O、H
2O
2、NO、N
2O、NO
2、TMPO、それらの酸素ラジカル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記ニオブ含有膜形成組成物及び前記反応物が前記
反応器内に逐次的に導入され、前記反応器が原子層堆積用に構成される、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
前記基材がカソード活物質粉末である、請求項
2に記載の方法。
【請求項7】
前記基材が、集電体箔上に堆積されたカソード活物質粉末と、導電性炭素と、バインダー材料とからなるカソード材料である、請求項
2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ又はバナジウムの前駆体を含む金属含有膜形成組成物、及びニオブ、バナジウムを含有する膜形成組成物を使用して蒸着プロセスによって1つ以上の基材上にNb又はバナジウムを含有する膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ニオブ(Nb2O5)などの金属酸化物膜は、様々な技術分野で広く利用されている。従来、これらの酸化物は、絶縁層のためのhigh-k材料として使用される抵抗膜として利用されてきた。例えば、2つのZrO2誘電体層の間のNb2O5の薄層は、漏れ電流を大幅に低減し、ZrO2の立方晶/正方晶相を安定化するのに役立つと期待され、DRAMの現在のMIMキャパシタにおいてより高いk値を与える(Alumina,J.Vac.Sci.Technol A4(6),1986 and Microelectronic Engineering 86(2009)1789-1795)。V2O5の薄層も同様の挙動を示すことができる。
【0003】
窒化ニオブ、窒化バナジウム(NbNx、VNx、xは約1である)などの金属窒化物膜は、様々な技術分野で広く利用されてきた。従来、これらの窒化物は硬い装飾的なコーティングとして利用されてきたが、過去10年の間に、マイクロエレクトロニクスデバイスの拡散バリアや粘着/接着層としてますます使用されるようになった[Applied Surface Science 120(1997)199-212]。
【0004】
Nbを含む混合酸化物は、例えば全固体電池やリチウムイオン電池のカソード活物質と電解質との間の薄くて高いイオン伝導性の界面層として、エネルギー貯蔵用途においても高い関心を集めている[米国特許第7993782B2号明細書]。例えば、適切な結晶相のカソード活物質上に堆積されたニオブ酸リチウムの薄層は、反応抵抗を低減し、電池出力を増加させることが報告されている[米国特許出願公開第2020/0075956A1号明細書]。ニオブ酸リチウムは、著しく高いイオン伝導性を示すため、界面層として特に注目されている[Electrochem.Commun.2007,9,1486-1490]。原子層堆積などの気相堆積は、そのような安定化界面層を低コバルトカソード材料上に堆積させるための実行可能な技術であると報告されている[ACS Appl.Mater.Interfaces 2018,10,1654-1661]。
【0005】
例えば、NbCl5は、NbNxの原子層エピタキシャル成長のニオブ源として検討されてきたが、そのプロセスには還元剤としてZnが必要とされた[Applied Surface Science 82/83(1994)468-474]。NbNx膜は、NbCl5とNH3とを使用した原子層堆積によっても堆積された[Thin Solid Films 491(2005)235-241]。500℃で堆積された膜はほとんど塩素を含まないため、塩素含有量は強い温度依存性を示したが、堆積温度が250℃ほどまで低い場合、塩素含有量は8%であった。また、NbCl5の融点が高いことからも、この前駆体を蒸着プロセスで使用することは困難である。
【0006】
VNxの例として、V(NMe2)4がVNxの化学気相成長のためのバナジウム源として検討されてきた[Chemical Vapor Deposition of Vanadium,Niobium,and Tantalum Nitride Thin Films by Fix et al.,Chem.Mater.1993, 5,614-619]。VNx膜は、V(NEtMe)4とNH3とを使用したプラズマ強化原子層堆積によっても堆積された。[Low Temperature Plasma-Enhanced Atomic Layer Deposition of Thin Vanadium Nitride Layers for Copper Diffusion Barriers by Rampelberg et al.,Appl.Phys.Lett.,102,111910(2013)]。
【0007】
Gustらは、ピラゾラト配位子を有するニオブ及びタンタルイミド錯体の合成、構造、及び特性、並びにCVDによる窒化タンタル膜の成長のためのそれらの使用可能性について開示している(Polyhedron 20(2001)805-813)。
【0008】
Elorriagaらは、アミンの触媒的グアニル化における中間体としての非対称ニオブグアニジネートを開示している(Dalton Transactions,2013,Vol.42,Issue 23 pp.8223-8230)。
【0009】
Tomsonらは、カチオン性Nb及びTaのモノメチル錯体[(BDI)MeM(NtBu)][X](BDI=2,6-iPr2C6H3-N-C(Me)CH-C(Me)-N(2,6)-iPr2C6H3);X=MeB(C6F5)3又はB(C6F5)4)の合成及び反応性について開示している(Dalton Transactions 2011 Vol.40,Issue30,pp.7718-7729)。
【0010】
DE第102006037955号明細書には、式R4R5R6M(R1NNR2R3)2(式中、MはTa又はNbであり、R1~R3=C1~12アルキル、C5~12シクロアルキル、C6~10アリール、アルケニル、C1~4トリオルガノシリルであり;R4~R6=ハロ、(シクロ)アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、BH4、アリル、インデニル、ベンジル、シクロペンタジエニル、CH2SiMe3、シリルアミド、アミド、又はイミノである)を有するタンタル化合物及びニオブ化合物が開示されている。
【0011】
Maestreらは、シクロペンタジエニルシリルアミドチタン化合物を5族金属モノシクロペンタジエニル錯体と反応させて、NbCp(NH(CH2)2-NH2)Cl3及びNbCpCl2(N-(CH2)2-N)を形成することを開示している。
【0012】
Gibsonらは、Nb(=NtBu)Cp(OiPr)2、Nb(=NtBu)Cp(OtBu)2を含むMo、Nbの錯体を用いた配位子交換反応及び速度論的研究を開示している(Dalton Transactions(2003),(23),4457-4465)。
【0013】
現在、液体又は低融点(標準圧力で50℃未満)であり、熱安定性が高く、高温での厚さと組成が制御された気相膜堆積に適したニオブ及びバナジウムを含む前駆体分子を提供することが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、特定の前駆体が、ALDプロセスによるNb及びVを含有する薄膜の堆積に適しており、以下の利点を有することが見出された:
・これらは室温で液体であるか、50℃未満の融点を有する、
・これらは熱的に安定であるため、粒子を生成せずに適切な分配(気相又は直接液体注入)が可能である、
・これらは、広い自己律速的なALDウィンドウを可能にするように熱的に安定であり、共反応物の1つ又は組み合わせを使用することによって、様々なNb及びVを含有する膜の堆積が可能である。共反応物は、典型的には、O2、O3、H2O、H2O2などの酸化剤、アルコール、又はアンモニア、アミン、ポリアミン、ヒドラジン、NOなどの窒化剤から選択することができる。このような共反応物は、プラズマで活性化されていてもいなくてもよい。
【0015】
これらは、混合膜を堆積するために別の前駆体と組み合わせて使用することもできる。より具体的には、これらの前駆体は、IV族及び他のV族元素の前駆体、並びに例えばエネルギー貯蔵用途のためのリン又はリチウム化合物と共に使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ニオブtブチルイミドシクロペンタジエニルエトキシ、Nb(=NtBu)Cp(OEt)
2の温度上昇に伴う重量パーセント割合を示す熱重量分析(TGA)グラフである。
【
図2】ニオブtブチルイミドシクロペンタジエニルtブトキシ、Nb(=NtBu)Cp(OtBu)
2の温度上昇に伴う重量パーセント割合を示す熱重量分析(TGA)グラフである。
【
図3】ニオブtブチルイミドシクロペンタジエニルsブトキシNb(=NtBu)Cp(OsBu)
2の温度上昇に伴う重量パーセント割合を示す熱重量分析(TGA)グラフである。
【
図4】ニオブtブチルイミドシクロペンタジエニルエトキシ、Nb(=NtBu)Cp(OEt)
2の示差走査熱量測定(DSC)である。
【
図5】ニオブtブチルイミドシクロペンタジエニルtブトキシ、Nb(=NtBu)Cp(OtBu)
2の示差走査熱量測定(DSC)である。
【
図6】ニオブtブチルイミドシクロペンタジエニルsブトキシNb(=NtBu)Cp(OsBu)
2の示差走査熱量測定(DSC)である。
【
図7】ニオブtブチルイミドシクロペンタジエニルジメチルアミド、Nb(=NtBu)Cp(NMe
2)
2の温度上昇に伴う重量パーセント割合を示す熱重量分析(TGA)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の実施形態によれば、本発明は、式:
M(=NR1)(OR2)(OR3)mL
(式中、M=V又はNb又はTaであり;R1~R3=独立してH又はC1~C10アルキル基であり:L=置換又は無置換のシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、フルオレン、インデン、縮環系、プロペン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエンであり;m=0又は1である)
を有する前駆体を含む金属含有膜形成組成物に関する。
【0018】
別の特定の実施形態によれば、本発明は、以下のものに関する:
・R
1がHであり、R
2がtBuであり、R
3とR
4がEtである、上で定義した金属含有膜形成組成物。
・R
1がHであり、R
2、R
3、及びR
4がtBuである、上で定義した金属含有膜形成組成物。
・R
1がHであり、R
2がtBuであり、R
3とR
4がsBuである、上で定義した金属含有膜形成組成物。
・Mがバナジウムである、上で定義した金属含有膜形成組成物。
・Mがニオブである、上で定義した金属含有膜形成組成物。
・下記式の金属含有膜形成組成物:
【化1】
(式中、各R
4は、H又はC1~C10アルキル基又はフルオロ基であり;n≦5である)。
・下記式の金属含有膜形成組成物:
【化2】
(式中、各R
4~R
10は、独立して、H又はC1~C10アルキル基又はフルオロ基である)。
・下記式の金属含有膜形成組成物:
【化3】
(式中、各R
4~R
6は、独立して、H又はC1~C10アルキル基又はフルオロ基である)。
・下記式の金属含有膜形成組成物:
【化4】
(式中、各R
4~R
6は、独立して、H又はC1~C10アルキル基又はフルオロ基である)。
・金属含有膜の形成方法であって、中に基材を有する反応器に、上で定義した金属含有膜形成組成物の蒸気を導入すること;及び前駆体の少なくとも一部を基材上に堆積させること;を含む方法。
・反応物を反応器に導入することを更に含む、上で定義した方法。
・反応物が、O
2、O
3、H
2O、H
2O
2、NO、N
2O、NO
2、TMPO、それらの酸素ラジカル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、上で定義した方法。
・M=Nbであり、ニオブ含有膜形成組成物及び反応物がチャンバー内に逐次的に導入され、反応器が原子層堆積用に構成される、上で定義した方法。
・基材がカソード活物質粉末である、上で定義した方法。
・基材が、集電体箔上に堆積されたカソード活物質粉末と、導電性炭素と、バインダー材料とからなるカソード材料である、上で定義した方法。
・基材がZrO
2であり、ニオブ含有膜形成組成物がDRAMキャパシタの形成のために使用される、上で定義した方法。
・反応物をプラズマ処理することを更に含む方法。
・別の実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン又は全固体電池デバイスの中に薄い界面層を製造する方法に関する。薄膜は、下記式:
Nb(=NR
1)(OR
2)(OR
3)
mL
(式中、R
1~R
3=独立してH又はC1~C10アルキル基であり;L=置換又は無置換のシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、フルオレン、インデン、縮環系、プロペン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエンであり;m=0又は1である)
を有する本発明のNb前駆体と、共反応物とを使用する原子層堆積によって粉末形態のカソード活物質上又はカソード上に堆積されたニオブ含有酸化物層である。共反応物は、O
2、O
3、H
2O、H
2O
2、NO、NO
2、H
2O、又はNOx、リン酸トリメチル、アミドリン酸ジエチル、硫酸塩、又は任意の他の酸素含有種からなるリストから選択することができる。薄層は、LiNbO、LiNb(M)O、NbMOなどのニオブ含有三元又は四元酸化物であることができ、Mは、Zr、Ti、Co、W、Ta、V、Sr、Ba、La、Y、Sc、Mn、Ni、Moからなるリストから選択される。薄い界面層は、例えば流動床ALD反応器内でカソード活物質上に直接堆積することができる。カソード活物質は、カソード電池セルの組成における主要な要素である。カソード材料は、例えば、層状構造などの結晶構造のコバルト、ニッケル、及びマンガンであり、リチウムが挿入された複合金属酸化物材料を形成する。カソード活物質は、好ましくは、「NMC」(リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物)、NCA(リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物)、LNO(リチウムニッケル酸化物)、LMNO(リチウムマンガンニッケル酸化物)、又はLFP(リン酸鉄リチウム)であってよい。例えば、カソード活物質は、NMC622又はNMC811であってよい。薄い界面層は、電極活物質粉末上、電極活物質多孔質体上、異なる形状の電極活物質上、又は電極活物質が導電性炭素及び/若しくはバインダーと既に結びついていていてもよく集電箔によって既に支持されていてもよい、予め形成された電極で行うことができる。
【0019】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態の例示であり、限定ではない。
【実施例】
【0020】
実施例1
ニオブtブチルイミドシクロペンタジエニルエトキシ、Nb(=NtBu)Cp(OEt)2の合成
-78℃のトルエン30mL中のNb(=NtBu)Cp(NMe2)2(2g、6.3mmol)の溶液に、エチルアルコール(0.58g、12.6mmol)の溶液を滴下した。混合物を室温で12時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去することで黄色のオイルを得た。次いで、この物質を25mTorrで100℃まで蒸留することによって精製することで、1.34g(66.6%)の黄色オイルを得た。この物質は、NMR 1H(δ,ppm,C6D6)によってキャラクタリゼーションした:6.18(s,5H)、4.54(q,4H)、1.28(t,6H)、1.16(s,9H)。
【0021】
精製された生成物は、窒素を200mL/分で流す雰囲気中、10℃/分の昇温速度で測定されるオープンカップTGA分析中に2.1%の残留質量を残した。これらの結果を
図1に示す。これは昇温時の重量パーセント割合を示すTGAグラフである。生成物の融解開始温度(-3.8℃)と分解開始温度(317.3℃)は示差走査熱量計(DSC)で測定した。それらは
図4に示されている。
【0022】
実施例2
ニオブtブチルイミドシクロペンタジエニルtブトキシ、Nb(=NtBu)Cp(OtBu)2の合成
-78℃のトルエン30mL中のNb(=NtBu)Cp(NMe2)2(2g、6.3mmol)の溶液に、tert-ブチルアルコール(0.93g、12.6mmol)の溶液を滴下した。混合物を室温で12時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去することで黄色のオイルを得た。次いで、この物質を25mTorrで100℃まで蒸留することによって精製することで、2.0g(84.6%)の黄色オイルを得た。この物質は、NMR 1H(δ,ppm,C6D6)によってキャラクタリゼーションした:6.17(s,5H)、1.32(s,18H)、1.21(s,9H)。
【0023】
精製された生成物は、窒素を200mL/分で流す雰囲気中、10℃/分の昇温速度で測定されるオープンカップTGA分析中に0.6%の残留質量を残した。これらの結果を
図2に示す。これは昇温時の重量パーセント割合を示すTGAグラフである。生成物の融解開始温度(34.5℃)と分解開始温度(285.1℃)は示差走査熱量計(DSC)で測定した。それらは
図5に示されている。
【0024】
実施例3
ニオブtブチルイミドシクロペンタジエニルsブトキシNb(=NtBu)Cp(OsBu)2の合成
-78℃のトルエン30mL中のNb(=NtBu)Cp(NMe2)2(2g,6.3mmol)の溶液に、sec-ブチルアルコール(0.93g,12.6mmol)の溶液を滴下した。混合物を室温で12時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去することで黄色のオイルを得た。次いで、この物質を25mTorrで125℃まで蒸留することによって精製することで、1.75g(74%)の黄色オイルを得た。この物質は、NMR 1H(δ,ppm,C6D6)によってキャラクタリゼーションした:6.19(s,5H)、4.49(m,2H)、1.61(m,2H)、1.49(m,2H)、1.31(d,3H)、1.26(d,3H)、1.18(s,9H)、0.99(t,6H)。
【0025】
精製された生成物は、窒素を200mL/分で流す雰囲気中、10℃/分の昇温速度で測定されるオープンカップTGA分析中に1.3%の残留質量を残した。これらの結果を
図3に示す。これは昇温時の重量パーセント割合を示すTGAグラフである。生成物分解開始温度(318.6℃)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した。これは
図6に示されている。
【0026】
その他の実施例:
1.Nb(=NtBu)(RCp)(OEt)2は以下の方法で合成することができる。
(R=H又はC1~C10アルキル基)
-78℃のトルエン中のNb(=NtBu)(RCp)(NMe2)2の溶液に、エチルアルコールの溶液を滴下した。混合物を室温で12時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。その後、この物質を蒸留又は昇華することによって精製することで最終生成物を得た。
2.Nb(=NR)(Cp)(OEt)2は以下の方法で合成することができる。
(R=H又はC1~C10アルキル基)
-78℃のトルエン中のNb(=NR)Cp(NMe2)2の溶液に、エチルアルコールの溶液(12.6mmol)を滴下した。混合物を室温で12時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。その後、この物質を蒸留又は昇華することによって精製することで最終生成物を得た。
3.V(=NtBu)(Cp)(OEt)2は以下の方法で合成することができる。
-78℃のトルエン中のV(=NtBu)Cp(NMe2)2の溶液に、エチルアルコールの溶液(12.6mmol)を滴下した。混合物を室温で12時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。その後、この物質を蒸留又は昇華することによって精製することで最終生成物を得た。
【0027】
更に、
図7は、ニオブtブチルイミドシクロペンタジエニルジメチルアミド、Nb(=NtBu)Cp(NMe
2)
2の温度上昇に伴う重量パーセント割合を示す熱重量分析(TGA)グラフを表す。これは、先行技術の基準として選択された前駆体である。
【0028】
以下の表は、以下の前駆体の特性の比較を示す:
【0029】
【0030】
結論:
開示された前駆体化合物は、Nb(=NtBu)Cp(NMe2)2と比較した場合に、高い熱安定性、高い揮発性、及び低い粘度を提供する。これらの特性のため、より効果的且つ有効な蒸着プロセスが可能になる。