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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】液晶光制御装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240826BHJP
   G02F 1/1343 20060101ALI20240826BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1343
G02F1/1347
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023508952
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2022010103
(87)【国際公開番号】W WO2022202299
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2021050757
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸次朗
(72)【発明者】
【氏名】小糸 健夫
(72)【発明者】
【氏名】黒川 多惠
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0294020(US,A1)
【文献】特表2010-525388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0025657(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0154377(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1343
G02F 1/1347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液晶セルと、
2液晶セルと、
3液晶セルと、
4液晶セルと、を含み、
前記第1液晶セル、前記第2液晶セル、前記第3液晶セル、及び前記第4液晶セルのそれぞれは、
帯状のパターンを含む第1電極と第1配向膜とを含む第1基板と、
帯状のパターンを含む第2電極と第2配向膜とを含む第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間の液晶層と、を含み、
前記第1配向膜の配向方向と前記第2配向膜の配向方向とが交差するように設けられ、
前記第1電極の前記帯状のパターンの長手方向と、前記第2電極の前記帯状のパターンの長手方向とは、交差するように配置され、
前記第2電極の前記帯状のパターンの長手方向が前記第2配向膜の配向方向と交差する方向に配置され、
前記第1乃至第4液晶セルは、光が入射する側から、前記第1液晶セル、前記第2液晶セル、前記第3液晶セル、及び前記第4液晶セルがこの順番で重なるように配置され、かつ、前記第1液晶セルの第2基板と前記第2液晶セルの第1基板とが隣接し、前記第2液晶セルの第2基板と前記第3液晶セルの第1基板とが隣接し、前記第3液晶セルの第2基板と前記第4液晶セルの第1基板とが隣接するように配置され、
前記第1液晶セル及び前記第3液晶セルは、前記第2電極が前記第2配向膜の配向方向と同じ方向に横電界を発生させ、
前記第2液晶セル及び前記第4液晶セルは、前記第1電極が前記第1配向膜の配向方向と同じ方向に横電界を発生させる、ことを特徴とする液晶光制御装置。
【請求項2】
前記第1液晶セルの前記第2配向膜の配向方向と、前記第3液晶セルの前記第2配向膜の配向方向と、が交差し、
前記第2液晶セルの前記第1配向膜の配向方向と、前記第4液晶セルの前記第1配向膜の配向方向と、が交差する、請求項に記載の液晶光制御装置。
【請求項3】
前記第1電極は、前記帯状のパターンを有する少なくとも1つの第1帯状電極と、前記帯状のパターンを有する少なくとも1つの第2帯状電極と、を含み、前記少なくとも1つの第1帯状電極と前記少なくとも1つの第2帯状電極とは離隔して交互に配置され、
前記第2電極は、前記帯状のパターンを有する少なくとも1つの第3帯状電極と、前記帯状のパターンを有する少なくとも1つの第4帯状電極と、を含み、前記少なくとも1つの第3帯状電極と前記少なくとも1つの第4帯状電極とは離隔して交互に配置されている、請求項1又はに記載の液晶光制御装置。
【請求項4】
前記液晶層が、ねじれネマチック液晶である、請求項に記載の液晶光制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、液晶の電気光学効果を利用して光源から放射される光の配光を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子を用いて、光源から放射される光の配光を制御する技術が知られている。例えば、同心円状に円環電極が設けられた液晶セルによって、光源から放射される光の広がりを制御する照明装置が開示されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-230887号公報
【文献】特開2005-317879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネマチック液晶を用いた液晶素子は、入射光の偏光成分の向きを回転させる(以下、かかる現象を旋光ともいう)。また、液晶層に屈折率分布を生じさせることにより入射光を拡散させることも可能である。かかる液晶素子においては、入射光が液晶層によって拡散してから旋光されると、旋光させた光のロスが大きくなり配光パターンの形状が乱れてしまう場合がある。
【0005】
本発明の一実施形態は、光のロスを抑制し、配光パターンの乱れが抑制された液晶光制御装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置は、第1液晶セルと、第1液晶セルと重なる第2液晶セルと、第2液晶セルと重なる第3液晶セルと、第3液晶セルと重なる第4液晶セルとを含む。第1液晶セル、第2液晶セル、第3液晶セル、及び第4液晶セルのそれぞれは、第1配向膜を含む第1基板と、帯状のパターンを含む電極と第2配向膜とを含む第2基板と、第1基板と第2基板との間の液晶層とを含み、第1配向膜の配向方向と第2配向膜の配向方向とが交差するように設けられる。帯状のパターンを含む電極は、帯状のパターンの長手方向が第2配向膜の配向方向と交差する方向に配置され、第2配向膜の配向方向と同じ方向に横電界を発生させる。
【0007】
本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置は、第1液晶セルと、第1液晶セルと重なる第2液晶セルと、第2液晶セルと重なる第3液晶セルと、第3液晶セルと重なる第4液晶セルとを含む。第1液晶セル、第2液晶セル、第3液晶セル、及び第4液晶セルのそれぞれは、帯状のパターンを含む第1電極と第1配向膜とを含む第1基板と、帯状のパターンを含む第2電極と第2配向膜とを含む第2基板と、第1基板と第2基板との間の液晶層とを含み、第1配向膜の配向方向と第2配向膜の配向方向とが交差するように設けられ、第1電極の帯状のパターンの長手方向と、第2電極の帯状のパターンの長手方向とは交差するように配置され、第2電極の帯状のパターンの長手方向が第2配向膜の配向方向と交差する方向に配置される。第1液晶セル及び第3液晶セルは、第2電極が第2配向膜の配向方向と同じ方向に横電界を発生させ、第2液晶セル及び第4液晶セルは、第1電極が第1配向膜の配向方向と同じ方向に横電界を発生させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置を構成する液晶光制御素子の展開図を示す。
図3】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する第1液晶セル、第2液晶セル、第3液晶セル、及び第4液晶セルの電極の配置を示す斜視図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの第1基板に設けられる電極を示す平面図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの第2基板に設けられる電極を示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの断面構造の一例を示す図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、電圧が印加されない状態の液晶分子の配向状態を示す。
図6B】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、電圧が印加されたときの液晶分子の配向状態を示す。
図6C】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、液晶を駆動する電極に印加される制御信号の波形を示す。
図7A】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、第1電極と第2電極の配置を示す斜視図を示す。
図7B】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、第1電極に電圧が印加されたときの液晶分子の配向状態を示す。
図7C】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、第2電極に電圧が印加されたときの液晶分子の配向状態を示す。
図8】2つの液晶セルにより、第1偏光成分及び第2偏光成分が拡散される現象を模式的に示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する第1液晶セル、第2液晶セル、第3液晶セル、及び第4液晶セルの電極の配置を示す斜視図である。
図10】本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置の動作を説明する図である。
図11】本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置の動作を制御する信号を示す。
図12】本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置の動作を説明する図である。
図13】本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置の動作を説明する図である。
図14】本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置の構成を説明する図である。
図15】本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置の構成を説明する図である。
図16】本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置の動作を説明する図である。
図17A】第1実施形態に示す液晶光制御素子によって得られる配向形状の一例を示す。
図17B】参考例1に示す液晶光制御素子によって得られる配向形状の一例を示す。
図18A】第2実施形態に示す液晶光制御素子によって得られる配向形状の一例を示す。
図18B】参考例2に示す液晶光制御素子によって得られる配向形状の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0010】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0011】
本明細書において、「旋光」とは直線偏光成分が液晶層を通過する際にその偏光軸を回転させる現象をいう。
本明細書において、配向膜の「配向方向」とは、配向膜に配向規制力を付与する処理(例えば、ラビング処理)を行って配向膜上に液晶分子を配向させた場合に、液晶分子が配向する方向をいう。配向膜に行われた処理がラビング処理である場合は、配向膜の配向方向は、通常ラビング方向である。
本明細書において、帯状のパターンの「長手方向」とは、平面視で帯状のパターンを見たときに、短辺(幅)と長辺(長さ)を有するパターンの長辺が延びる方向をいう。なお、帯状のパターンは、平面視で矩形状のパターンを含み、さらに長辺の途中で少なくとも1回屈曲又は湾曲したパターンも含むものとする。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置100の斜視図を示す。液晶光制御装置100は、液晶光制御素子102及び回路基板104を含む。液晶光制御素子102は複数の液晶セルを含む。本実施形態において、液晶光制御素子102は少なくとも4つの液晶セルを含む。
【0013】
図1は、液晶光制御素子102が、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40で構成される一例を示す。第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40は平板状のパネルであり、それぞれの液晶セルの平板面が重畳するように配置されている。第1液晶セル10と第2液晶セル20の間、第2液晶セル20と第3液晶セル30の間、第3液晶セル30と第4液晶セル40の間には図示されない透明接着層が設けられている。液晶光制御素子102は、前後に隣接して配置される液晶セル同士が透明接着層で接着された構造を有する。
【0014】
回路基板104は、液晶光制御素子102を駆動する回路を含む。第1液晶セル10は第1フレキシブル配線基板F1で回路基板104と接続され、第2液晶セル20は第2フレキシブル配線基板F2で回路基板104と接続され、第3液晶セル30は第3フレキシブル配線基板F3で回路基板104と接続され、第4液晶セル40は第4フレキシブル配線基板F4で回路基板104と接続される。回路基板104は、各液晶セルに対し、フレキシブル配線基板を介して液晶の配向状態を制御する制御信号を出力する。
【0015】
図1に示す液晶光制御装置100は、液晶光制御素子102の背面側に光源部106が配置される。液晶光制御装置100は、光源部106から放射される光が液晶光制御素子102を通して図面の手前側に出射されるように構成されている。液晶光制御素子102は、光源部106の側から第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、第4液晶セル40がこの順番に配置されている。
【0016】
光源部106は、白色光源を含み、必要に応じて白色光源と液晶光制御素子102との間にレンズ等の光学素子が配置されていてもよい。白色光源は自然光に近い光を放射する光源であり、昼白色、電球色と呼ばれるような調光された光を放射するものであってもよい。液晶光制御装置100は、光源部106から放射された光の拡散方向を液晶光制御素子102によって制御する機能を有する。液晶光制御素子102は、光源部106から放射される光を、四角状、十字状等の配光パターンに成形する機能を有する。
【0017】
図2は、図1に示す液晶光制御素子102の展開図を示す。液晶光制御素子102は、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40を含む。
【0018】
第1液晶セル10は、第1基板S11と、第2基板S12と、を含む。第1基板S11と第2基板S12とは間隙をもって対向して配置される。第1基板S11と第2基板S12との間隙部には、図示されない液晶層が設けられる。第1フレキシブル配線基板F1は第1基板S11に接続される。
【0019】
第2液晶セル20は、第1基板S21、第2基板S22、及び第2フレキシブル配線基板F2を含み、第1液晶セル10と同様の構成を有している。第3液晶セル30は、第1基板S31、第2基板S32、及び第3フレキシブル配線基板F3を含み、第1液晶セル10と同様の構成を有している。第4液晶セル40は、第1基板S41、第2基板S42、及び第4フレキシブル配線基板F4を含み、第1液晶セル10と同様の構成を有している。
【0020】
第1液晶セル10と第2液晶セル20との間には、第1透明接着層TA1が配置される。第1透明接着層TA1は、可視光を透過し、第1液晶セル10の第2基板S12と第2液晶セル20の第1基板S21とを接着している。第2液晶セル20と第3液晶セル30との間には、第2透明接着層TA2が配置される。第2透明接着層TA2は、可視光を透過し、第2液晶セル20の第2基板S22と第3液晶セル30の第1基板S31とを接着している。第3液晶セル30と第4液晶セル40との間には、第3透明接着層TA3が配置される。第3透明接着層TA3は、可視光を透過し、第3液晶セル30の第2基板S32と第4液晶セル40の第1基板S41とを接着している。
【0021】
第1透明接着層TA1、第2透明接着層TA2、及び第3透明接着層TA3は透過率が高く、屈折率が第1基板S11、S21、S31、S41及び第2基板S12、S22、S23、S24に近いものが好ましい。第1透明接着層TA1、第2透明接着層TA2、及び第3透明接着層TA3としては、光学弾性樹脂を用いることができ、例えば、透光性を有したアクリル樹脂を含む接着材を用いることができる。また、液晶光制御素子102は光源部106から輻射される熱で温度が上昇するため、第1透明接着層TA1、第2透明接着層TA2、第3透明接着層TA3の熱膨張係数は、第1基板及び第2基板の熱膨張係数と近い値を有していることが好ましい。
【0022】
しかし、第1透明接着層TA1、第2透明接着層TA2、及び第3透明接着層TA3の熱膨張係数は、例えば、ガラス基板より高い場合が多いので、温度上昇時の応力緩和を考慮する必要がある。第1透明接着層TA1、第2透明接着層TA2、及び第3透明接着層TA3の厚さは、温度上昇時の熱応力を緩和するため、各液晶セル(第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、第4液晶セル40)のセルギャップ(液晶層の厚さ)より厚いことが好ましい。
【0023】
後述されるように、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40は、実質的に同じ構造を有する。本実施形態に係る液晶光制御素子102は、第1液晶セル10及び第2液晶セル20に対し、第3液晶セル30及び第4液晶セル40が90度で回転した状態で重ねられた構造を有する。別言すれば、本実施形態に係る液晶光制御素子102は、複数の液晶セルを含み、少なくとも1つの液晶セルと、その少なくとも1つの液晶セルに隣接する(重なり合う)他の液晶セルが90度で回転した状態で配置された構造を含む。なお、本実施例においては、第3液晶セル30及び第4液晶セル40は第1液晶セル10及び第2液晶セル20に対して90度で回転しているが、当該回転角度は90±10度の範囲で設定可能である。
【0024】
図2は、第1液晶セル10及び第2液晶セル20の配置を基準とした場合、第3液晶セル30及び第4液晶セル40は90度で回転した状態で配置されている。一方、第3液晶セル30及び第4液晶セル40を基準とした場合、第1液晶セル10及び第2液晶セル20は90度の範囲で回転した状態で配置されているといえる。同じ電極パターンを有する液晶セルを複数枚重ね合わせ、その内の一部の液晶セルを回転させることで、電極配置に変化を与えることができ、積層された液晶セルを通過する光の拡散に変化を与えることができる。以下にその詳細を説明する。
【0025】
図3は液晶光制御素子102の構成を説明する斜視図であり、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40のそれぞれに設けられる電極の配置を示す。なお、図3は、説明のため、X軸、Y軸、及びZ軸を示す。以下の説明において、X軸方向とはX軸に沿った方向を示し、Y軸方向とはY軸に沿った方向を示し、Z軸方向とはZ軸に沿った方向を示す。
【0026】
第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40はZ軸方向に重ねて配置される。実際の液晶光制御素子102は各液晶セルが密接するように配置されるが、図3は、説明のため、各液晶セルが展開された状態で示す。
【0027】
第1液晶セル10は、第1基板S11及び第2基板S12、第1電極E11及び第2電極E12、及び第1基板S11と第2基板S12との間の第1液晶層LC1を含む。第1電極E11は第1基板S11と第1液晶層LC1との間に配置され、第2電極E12は第2基板S12と第1液晶層LC1との間に配置される。なお、上述のように第1基板S11及び第2基板S12とは互いに対向しており、当該対向面を内面とし、内面と反対側の面を外面と定義することも可能である。この場合、第1電極E11は第1基板の内面に設けられ、第2電極E12は第2基板の内面に設けられている。以下に説明する第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40についても同様である。
【0028】
第1電極E11は帯状に形成された複数の第1帯状電極E11A及び帯状に形成された複数の第2帯状電極E11Bを含み、第2電極E12は帯状に形成された複数の第3帯状電極E12A及び帯状に形成された複数の第4帯状電極E12Bを含む。複数の第1帯状電極E11Aと複数の第2帯状電極E11Bとは、櫛歯が咬み合うように離隔して交互に配置され、複数の第3帯状電極E12Aと複数の第4帯状電極E12Bとは櫛歯が咬み合うように交互に配置される。
【0029】
複数の第1帯状電極E11A及び複数の第2帯状電極E11Bの長手方向がY軸方向と平行な方向に配置され、複数の第3帯状電極E12A及び複数の第4帯状電極E12Bの長手方向がX軸方向と平行な方向に配置される。別言すれば、複数の第1帯状電極E11A及び複数の第2帯状電極E11Bと、複数の第3帯状電極E12A及び複数の第4帯状電極E12Bとは、長手方向が交差するように配置される。この交差角は、好ましくは90±10度であり、より好ましくは90度(直交)である。
【0030】
第2液晶セル20は、第1基板S21及び第2基板S22、第1電極E21及び第2電極E22、及び第1基板S21と第2基板S22との間の第2液晶層LC2とを含む。第1電極E21は第1基板S21と第2液晶層LC2との間に配置され、第2電極E22は第2基板S22と第2液晶層LC2との間に配置される。
【0031】
第1電極E21は帯状に形成された複数の第1帯状電極E21A及び帯状に形成された複数の第2帯状電極E21Bを含み、第2電極E22は帯状に形成された複数の第3帯状電極E22A及び帯状に形成された複数の第4帯状電極E22Bを含む。複数の第1帯状電極E21Aと複数の第2帯状電極E21Bとは櫛歯が咬み合うように交互に配置され、複数の第3帯状電極E22Aと複数の第4帯状電極E22Bとは櫛歯が咬み合うように交互に配置される。
【0032】
複数の第1帯状電極E21A及び複数の第2帯状電極E21Bの長手方向がY軸方向と平行な方向に配置され、複数の第3帯状電極E22A及び複数の第4帯状電極E22Bの長手方向がX軸方向と平行な方向に配置される。別言すれば、複数の第1帯状電極E21A及び複数の第2帯状電極E21Bと、複数の第3帯状電極E22A及び複数の第4帯状電極E22Bとは、長手方向が交差するように配置される。この交差角は、好ましくは90±10度であり、より好ましくは90度(直交)である。
【0033】
第3液晶セル30は、第1基板S31及び第2基板S32、第1電極E31及び第2電極E32、及び第1基板S31と第2基板S32との間の第3液晶層LC3とを含む。第1電極E31は第1基板S31と第3液晶層LC3との間に配置され、第2電極E32は第2基板S32と第3液晶層LC3との間に配置される。
【0034】
第1電極E31は帯状に形成された複数の第1帯状電極E31A及び帯状に形成された複数の第2帯状電極E31Bを含み、第2電極E32は帯状に形成された複数の第3帯状電極E32A及び帯状に形成された複数の第4帯状電極E32Bを含む。複数の第1帯状電極E31Aと複数の第2帯状電極E31Bとは櫛歯が咬み合うように交互に配置され、複数の第3帯状電極E32Aと複数の第4帯状電極E32Bとは櫛歯が咬み合うように交互に配置される。
【0035】
複数の第1帯状電極E31A及び複数の第2帯状電極E31Bの長手方向がX軸方向と平行な方向に配置され、複数の第3帯状電極E32A及び複数の第4帯状電極E32Bの長手方向がY軸方向と平行な方向に配置される。別言すれば、複数の第1帯状電極E31A及び複数の第2帯状電極E31Bと、複数の第3帯状電極E32A及び複数の第4帯状電極E32Bとは、長手方向が交差するように配置される。この交差角は、好ましくは90±10度であり、より好ましくは90度(直交)である。
【0036】
第4液晶セル40は、第1基板S41及び第2基板S42、第1電極E41及び第2電極E42、及び第1基板S41と第2基板S42との間の第4液晶層LC4とを含む。第1電極E41は第1基板S41と第4液晶層LC4との間に配置され、第2電極E42は第2基板S42と第4液晶層LC4との間に配置される。
【0037】
第1電極E41は帯状に形成された複数の第1帯状電極E41A及び帯状に形成された複数の第2帯状電極E41Bを含み、第2電極E42は帯状に形成された複数の第3帯状電極E42A及び帯状に形成された複数の第4帯状電極E42Bを含む。複数の第1帯状電極E41Aと複数の第2帯状電極E41Bとは櫛歯が咬み合うように交互に配置され、複数の第3帯状電極E42Aと複数の第4帯状電極E42Bとは櫛歯が咬み合うように交互に配置される。
【0038】
複数の第1帯状電極E41A及び複数の第2帯状電極E41Bの長手方向がX軸方向と平行な方向に配置され、複数の第3帯状電極E42A及び複数の第4帯状電極E42Bの長手方向がY軸方向と平行な方向に配置される。別言すれば、複数の第1帯状電極E41A及び複数の第2帯状電極E41Bと、複数の第3帯状電極E42A及び複数の第4帯状電極E42Bとは、長手方向が交差するように配置される。この交差角は、好ましくは90±10度であり、より好ましくは90度(直交)である。
【0039】
図3に示すように、液晶光制御素子102は、第1液晶セル10の第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの長手方向と第2液晶セル20の第1帯状電極E21A及び第2帯状電極E21Bの長手方向とが同じ方向に配置され、第3液晶セル30の第1帯状電極E31A及び第2帯状電極E31Bの長手方向と第4液晶セル40の第1帯状電極E41A及び第2帯状電極E41Bの長手方向とが同じ方向に配置される。
【0040】
そして、第1液晶セル10の第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11B並びに第2液晶セル20の第1帯状電極E21A及び第2帯状電極E21Bの長手方向と、第3液晶セル30の第1帯状電極E31A及び第2帯状電極E31B並びに第4液晶セル40の第1帯状電極E41A及び第2帯状電極E41Bの長手方向とは、交差するように配置されている。この交差角は、好ましくは90±10度であり、より好ましくは90度(直交)である。
【0041】
同様に、液晶光制御素子102は、第1液晶セル10の第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bの長手方向と第2液晶セル20の第3帯状電極E22A及び第4帯状電極E22Bの長手方向とは同じ方向に配置され、第3液晶セル30の第3帯状電極E32A及び第4帯状電極E32Bの長手方向と第4液晶セル40の第3帯状電極E42A及び第4帯状電極E42Bの長手方向とは同じ方向に配置される。
【0042】
そして、第1液晶セル10の第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12B並びに第2液晶セル20の第3帯状電極E22A及び第4帯状電極E22Bの長手方向と、第3液晶セル30の第3帯状電極E32A及び第4帯状電極E32B並びに第4液晶セル40の第3帯状電極E42A及び第4帯状電極E42Bの長手方向とは、交差するように配置されている。この交差角は、好ましくは90±10度であり、より好ましくは90度(直交)である。
【0043】
このように、本実施形態に係る液晶光制御素子102は、第1液晶セル10及び第2液晶セル20の第1電極E11、E21が、複数の帯状のパターンが並んだ電極形状を有し、その長手方向がY軸方向と平行な方向に配置されている。また、第3液晶セル30及び第4液晶セル40の第1電極E31、E41が、複数の帯状のパターンが並んだ電極形状を有し、その長手方向がX軸方向と平行な方向に配置されている。そして、第1液晶セル10及び第2液晶セル20の第1電極E11、E21の帯状のパターンの長手方向と、第3液晶セル30及び第4液晶セル40の第1電極E31、E41の帯状のパターンの長手方向とは、その長手方向が交差するように配置されている。このときの交差角は上記のように、90±10度の範囲であることが好ましく、直交(90度)していることがより好ましい。
【0044】
第1液晶セル10に設けられる第1電極E11及び第2電極E12、第2液晶セル20に設けられる第1電極E21及び第2電極E22、第3液晶セル30に設けられる第1電極E31及び第2電極E32、及び第4液晶セル40に設けられる第1電極E41及び第2電極E42は、平面視において略同一の大きさを有している。図3には図示されないが、光源部106は、第1液晶セル10の下方側に配置される。光源部106から放射され、液晶光制御素子102に入射する光は、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40の全てを通過して出射される。
【0045】
第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40は、実質的に同様の構成を有しているが、以下、代表して第1液晶セル10についてより具体的に説明する。
【0046】
図4Aは、第1基板S11の平面図を示し、図4Bは、第2基板S12の平面図を示す。より具体的には、図4Aは、第1基板S11の内面の平面図を示し、図4Bは、第2基板S12の内面の平面図を示す。
【0047】
図4Aに示すように、第1電極E11が第1基板S11に設けられる。第1電極E11は複数の第1帯状電極E11Aと複数の第2帯状電極E11Bとを含む。複数の第1帯状電極E11A及び複数の第2帯状電極E11Bは帯状のパターンを有する。図4Aに示すように、複数の第1帯状電極E11Aと複数の第2帯状電極E11Bとは所定の間隔で離隔され交互に配置される。
【0048】
複数の第1帯状電極E11Aのそれぞれは第1給電線PL11と接続され、複数の第2帯状電極E11Bのそれぞれは第2給電線PL12と接続される。第1給電線PL11は第1接続端子T11と接続され、第2給電線PL12は第2接続端子T12と接続される。第1接続端子T11と第2接続端子T12は第1基板S11の端部の一辺に沿って設けられる。
【0049】
第3接続端子T13が第1接続端子T11に隣接して設けられ、第4接続端子T14が第2接続端子T12に隣接して設けられる。第3接続端子T13は第5給電線PL15と接続される。第5給電線PL15は第1給電端子PT11と接続される。第1給電端子PT11は第1基板S11の面内の所定の位置に設けられる。第4接続端子T14は第6給電線PL16と接続される。第6給電線PL16は第2給電端子PT12と接続される。第2給電端子PT12は第1基板S11の面内の所定の位置に設けられる。
【0050】
第1給電線PL11に接続された複数の第1帯状電極E11Aと第2給電線PL12に接続された複数の第2帯状電極E11Bとには、異なる電圧又は同一の電圧が印加される。複数の第1帯状電極E11Aと複数の第2帯状電極E11Bとにそれぞれ異なるレベルの電圧が印加されると、両電極間の電位差により電界(横電界)が発生する。
【0051】
図4Bに示すように、第2電極E12が第2基板S12に設けられる。第2電極E12は複数の第3帯状電極E12Aと複数の第4帯状電極E12Bとを含む。複数の第3帯状電極E12A及び複数の第4帯状電極E12Bは帯状のパターンを有する。図4Bに示すように、複数の第3帯状電極E12Aと複数の第4帯状電極E12Bとは所定の間隔で離隔され交互に配置される。
【0052】
複数の第3帯状電極E12Aのそれぞれは第3給電線PL13と接続され、複数の第4帯状電極E12Bのそれぞれは第4給電線PL14と接続される。第3給電線PL13は第3給電端子PT13と接続され、第4給電線PL14は第4給電端子PT14と接続される。第3給電端子PT13は第1基板S11側の第1給電端子PT11に対応する位置に設けられ、第4給電端子PT14は第1基板S11側の第2給電端子PT12に対応する位置に設けられる。
【0053】
第3給電線PL13に接続された複数の第3帯状電極E12Aと第4給電線PL14に接続された複数の第4帯状電極E12Bとには、異なる電圧又は同一の電圧が印加される。複数の第3帯状電極E12Aと複数の第4帯状電極E12Bとにそれぞれ異なるレベルの電圧が印加されると、両電極間の電位差により電界(横電界)が発生する。
【0054】
第1基板S11に設けられる第1接続端子T11、第2接続端子T12、第3接続端子T13、及び第4接続端子T14は、図示されないフレキシブル配線基板と接続される。第2基板S12側にはフレキシブル配線基板と接続される端子が設けられないが、導電性材料により、第3給電端子PT13が第1給電端子PT11と電気的に接続され、第4給電端子PT14が第2給電端子PT12と電気的に接続される。
【0055】
図5は、図4A及び図4Bに示すA1-A2線に対応する第1液晶セル10の断面構造を示す。
【0056】
第1液晶セル10は、入射光を偏光し、拡散することが可能な有効領域AAを有する。第1電極E11及び第2電極E12は有効領域AAの中に配置される。第1基板S11と第2基板S12とは、第1電極E11と第2電極E12とが対向するように配置され、有効領域AAの外側に設けられたシール材SEによって接着される。第1液晶層LC1は、第1基板S11と第2基板S12に挟まれ、シール材SEに囲まれた領域に形成される。
【0057】
第1基板S11側の第1電極E11は、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bを含み、第2基板S12側の第2電極E12は第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bを含む。図5は、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの長手方向と第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bの長手方向とが交差するように配置される態様を示す。
【0058】
第1配向膜AL11が第1基板S11に設けられ、第2配向膜AL12が第2基板S12に設けられる。第1配向膜AL11は第1電極E11を覆うように設けられ、第2配向膜AL12は第2電極E12を覆うように設けられる。
【0059】
第1給電端子PT11及び第3給電端子PT13がシール材SEの外側に配置される。第1給電端子PT11と第3給電端子PT13とは第1導電性部材CP11により電気的に接続される。第1導電性部材CP11は導電性のペースト材で形成され、例えば、銀ペースト、カーボンペーストが用いられる。なお、図5には示されないが、第2給電端子PT12と第4給電端子PT14とも同様に導電性部材で電気的に接続される。
【0060】
第1基板S11及び第2基板S12は透光性を有する基板であり、例えば、ガラス基板、樹脂基板である。第1電極E11及び第2電極E12は、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料によって形成された透明電極である。給電線(第1給電線PL11、第2給電線PL12、第3給電線PL13、第4給電線PL14、第5給電線PL15、第6給電線PL16)、接続端子(第1接続端子T11、第2接続端子T12、第3接続端子T13、第4接続端子T14)、及び給電端子(第1給電端子PT11、第2給電端子PT12、第3給電端子PT13、第4給電端子PT14)は、アルミニウム、チタン、モリブデン、タングステンなどの金属材料によって形成される。なお、給電線(第1給電線PL11、第2給電線PL12、第3給電線PL13、第4給電線PL14、第5給電線PL15、第6給電線PL16)は、第1電極E11及び第2電極E12と同じ透明導電膜で形成されてもよい。第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2は、基板の主平面に略平行な配向規制力を有する水平配向膜で形成される。第1液晶層LC1は、例えば、ねじれネマチック液晶(TN(Twisted Nematic)液晶)が用いられる。なお、図5には図示されないが、第1基板S11と第2基板S12との間には、両基板の間隔を一定に保つためのスペーサが設けられていてもよい。
【0061】
次に、図6乃至図8を参照して、第1液晶セル10における電気光学効果について説明する。なお、図6乃至図8においては、説明に必要な構成のみを図示している。
【0062】
図6A及び図6Bは、第1液晶セル10の部分的な断面模式構造を示す。図6Aは、第1基板S11側の第1配向膜AL11と第2基板S12側の第2配向膜AL12の配向方向が異なることを示す。具体的には、第1配向膜AL11の配向方向ALD1が紙面の法線方向に向けられており、第2配向膜AL12の配向方向ALD2が紙面の左右方向に向けられている。第1電極E11は第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bを含み、その長手方向が配向方向ALD1と直交するように配置されている。第2電極E12は第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bを含み、その長手方向が配向方向ALD2と直交するように配置されている。なお、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2の配向処理としては、ラビング処理でもよいし、光配向処理であってもよい。また、第1配向膜AL1の配向方向ALD1と第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bとが交差する角度、及び第2配向膜AL2の配向方向ALD2と第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bとが交差する角度は、直交に限定されず90度±10度の範囲で設定可能である。
【0063】
第1液晶層LC1としてTN液晶が用いられる。第1配向膜AL11の配向方向ALD1と第2配向膜AL12の配向方向ALD2とは直交するため、第1液晶層LC1の液晶分子は、外部電場の作用を受けない状態で第1配向膜AL11から第2配向膜AL12にかけて、液晶分子の長軸方向が90度捩れるように配向する。図6Aは、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bに電圧が印加されない状態を示し、液晶分子の長軸方向が90度捩れて配向している状態を示す。具体的には、第1配向膜AL11側で液晶分子の長軸方向が紙面の法線方向に配向し、第2配向膜AL12側で液晶分子の長軸方向が紙面の左右方向に配向している。
【0064】
なお、図6Aは、第1液晶層LC1がポジ型のねじれネマチック液晶(TN液晶)で形成され、液晶分子の長軸が配向膜の配向方向と同じ方向に配向する例を示すが、配向膜の配向方向を90度回転させる、すなわち、各配向膜AL11、AL12の配向方向を第1基板S11の第1電極E11、及び第2基板S12の第2電極E12の延在方向に沿わせることにより、ネガ型の液晶を用いることができる。液晶には、液晶分子にねじれを付与するカイラル剤が含まれていることが好ましい。
【0065】
図6Bは、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bが同電位(例えば、接地電位)に固定され、第3帯状電極E12Aにローレベルの電圧VLが印加され、第4帯状電極E12Bにハイレベルの電圧VHが印加された状態を示す。この状態では、第1基板S11側には電界が発生せず、第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bとの間に横方向の電界が発生する。図6Bに示すように、第2基板S12側の液晶分子は横電界の影響を受けて配向方向が変化する。すなわち、第2基板S12側の液晶分子は、長軸方向が電界の方向と平行な方向に向くように配向が変化する。
【0066】
第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bに印加されるローレベルの電圧VL及びハイレベルの電圧VHの値は適宜設定される。例えば、ローレベルの電圧VL1として0Vが印加され、ハイレベルの電圧VH1として5~30Vの電圧が印加される。第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bには、ローレベルの電圧VLとハイレベルの電圧VHが交互に入れ替わる電圧が印加される。例えば、図6Cに示すように、ある一定期間において、第3帯状電極E12Aにローレベルの電圧VLが印加され第4帯状電極E12Bにハイレベルの電圧VHが印加され、次の一定期間では、第3帯状電極E12Aにハイレベルの電圧VHが印加され第4帯状電極E12Bにローベルの電圧VLが印加されるように、2つの電極間で電圧のレベルが同期して周期的に変化するように電圧を印加してもよい。
【0067】
第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bに交互にローレベルの電圧VLとハイレベルの電圧VHを印加することにより、交番電界を発生させ、第1液晶層LC1の劣化を抑制することができる。なお、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bに印加する電圧の周波数は、液晶分子が電界の変化に追従できる周波数であればよく、例えば、15~100Hzの範囲の周波数が選択される。なお、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bに印可される電位は、上記ローレベル電圧の電位とハイレベル電圧の電位の中間電位であっても構わない。
【0068】
図7Aは、第1液晶セル10の部分的な斜視図であり、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11B、第1配向膜AL1、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12B、第2配向膜AL2、並びに第1液晶層LC1を示す。図7B及び図7Cは第1液晶セル10の断面模式図を示す。図7Bは、図7Aに示す第1液晶セル10を図中に示すA側からみたときの断面模式図を示し、図7Cは、図7Aに示すB側からみたときの断面模式図を示す。なお、図7B及び図7Cは、第1配向膜AL11の配向方向ALD1と第2配向膜AL12の配向方向ALD2とが交差することを示す。
【0069】
図7B及び図7Cに示すように、第1帯状電極E11Aと第2帯状電極E11Bとは中心間距離Wで配置され、第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bとは同様に中心間距離Wで配置される。この中心間距離Wは、図7Aに示す第1帯状電極E11Aの幅a、第1帯状電極E11Aの端部から第2帯状電極E11Bの端部までの間隔bに対して、W=a+bの関係を有する。また、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bと、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bとは離隔し、互いに直交した状態で対向配置されている。第1基板S11と第2基板S12は間隔Dで対向して配置されており、間隔Dは、実質的に第1液晶層LC1の厚さに相当する。実際には、第1基板S11に第1帯状電極E11A及び第1配向膜AL11が設けられ、第2基板S12には第3帯状電極E12A及び第2配向膜AL12等が設けられるが、これらの電極及び配向膜の厚さは、間隔Dの大きさに比べて十分に小さいので、第1液晶層LC1の厚さは間隔Dと同視することができる。
【0070】
第1液晶セル10において、間隔Dは、帯状電極の中心間距離Wに対して同じか、それ以上の大きさを有していることが好ましい。すなわち、間隔Dは、中心間距離Wの1倍以上の長さを有することが好ましい。例えば、間隔Dは、帯状電極の中心間距離Wに対して2倍以上の大きさを有していることが好ましい。第1帯状電極E11Aの幅が5μmであり、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの幅aが5μmであり、第1帯状電極E11Aの端部から第2帯状電極E11Bの端部までの間隔bが5μmである場合、帯状電極の中心間距離Wは10μmとなる。これに対し、間隔Dは10μm以上の大きさを有していることが好ましい。
【0071】
帯状電極の中心間距離Wと上記の間隔Dとがこのような関係を有することで、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11B側の電界と第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12B側の電界との相互干渉を抑制することが可能となる。すなわち、図7B及び図7Cに示すように、第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bとの間に生成される電界によって、その近傍にある液晶分子の配向を制御するとき、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの近傍にある液晶分子の配向に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0072】
ところで、液晶は配向状態により屈折率が変化することが知られている。図6Aに示すように、第1液晶層LC1に電界が作用していないオフ(OFF)状態では、液晶分子の長軸方向が基板の表面に水平に配向し、かつ第1基板S11側から第2基板S12側にかけて90度捩れた状態で配向している。液晶層LC1は、この配向状態でほぼ均一な屈折率分布を有している。このため、第1液晶セル10へ入射した光の第1偏光成分(PL1)及び第1偏光成分(PL1)に直交する第2偏光成分(PL2)は、液晶分子の初期配向の影響を受けて旋光するものの、ほとんど屈折(あるいは散乱)されることなく第1液晶層LC1を透過する。ここで、第1偏光成分(PL1)とは、自然光のうち、例えばP偏光に相当し、第2偏光成分(PL2)とは、例えばS偏光に相当するものとする。
【0073】
一方、図6Bに示すように、第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bに電圧が印加され電界が形成されたオン(ON)状態では、第1液晶層LC1が正の誘電率異方性を有している場合、液晶分子は長軸が電界に沿うように配向する。その結果、図6Bに示すように、液晶分子が、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bの上方でほぼ垂直に立ち上がる領域、第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bとの間で電界の分布に沿って斜めに配向する領域、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bから離れた領域で初期配向状態が維持される領域が形成される。
【0074】
図6Bに示すように、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bの電極間においては、液晶分子の長軸が電界の発生する方向に沿って凸円弧状に配向される。すなわち、図6A及び図6Bに示すように、液晶分子の初期配向の方向と、第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bとの間に生じる横電界の方向が同じであり、図6Bに模式的に示すように、両電極間の略中央に位置する液晶分子の配向方向はほとんど変化しないものとなるが、中央部からそれぞれの電極側に位置する液晶分子は電界の強度分布に従って第2基板S12の表面に対し法線方向に傾いて(チルトして)配向する。したがって、第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bとの間で液晶分子が円弧状に配向する。
【0075】
図7B及び図7Cを参照して説明したように、液晶層LC1の厚さが十分に厚いため、第2基板S12側で液晶分子の配向が変化する場合でも、第1基板S11側の液晶分子は初期配向の状態が維持される。
【0076】
液晶分子は、屈折率異方性Δnを有している。このため、オン状態の第1液晶層LC1は、液晶分子の配向状態に応じた屈折率分布、あるいは、リタデーション分布を有する。ここでのリタデーションとは、第1液晶層LC1の厚さをdとしたとき、Δn・dで表されるものである。オン状態では、第1偏光成分PL1は、第1液晶層LC1を透過する際に、第1液晶層LC1の屈折率分布の影響を受けて拡散される。液晶層LC1には円弧状の誘電率分布が形成されるので、入射した光(液晶分子の初期配向の方向と平行な偏光成分)が放射状に拡散することになる。
【0077】
図8は、第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2が液晶層によって拡散される現象を模式的に示す。ここでは、説明のために使用するX軸、Y軸、Z軸の各方向が図8に示す関係にあるものとする。すなわち、図8では、X軸が紙面の左右方向、Y軸が紙面に対して法線方向、Z軸が紙面の上下方向にあるものとする。
【0078】
図8は、第1液晶セル10と第2液晶セル20が積層された状態を示し、それぞれの液晶セルの第1基板S11、S21、第2基板S12、S22、第1帯状電極E11A、E21A、第2帯状電極E11B、E21B、第1配向膜AL11、AL21、第2配向膜AL12、AL22、第1液晶層LC1、第2液晶層LC2を示す。ここで、第1液晶セル10と第2液晶セル20との間に設けられる第1透明接着層TA1は省略されている。
【0079】
なお、第1液晶セル10の第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11B、第2液晶セル20の第1帯状電極E21A及び第2帯状電極E21Bは、長手方向がX軸方向に配置されており、第1液晶セル10の第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12B、第2液晶セル20の第3帯状電極E22A及び第4帯状電極E22Bは、長手方向がY軸方向に配向されているものとする。また、第1配向膜AL11、AL21の配向方向ALD1がY軸方向と同じ方向であり、第2配向膜AL12、AL22の配向方向ALD2がX軸方向と同じ方向であるものとする。したがって、配向膜によって配向方向が規制される第1液晶層LC1及び第2液晶層LC2の液晶分子は、第1基板S11、S21側で長軸がY軸方向を向いて配向しており、第2基板S12、S22側で長軸がX軸方向を向いて配向している。
【0080】
図8は、第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2を含む光が第1液晶セル10の側から入射して、第2液晶セル20から出射されるまでの過程を模式的に示す。ここで、第1偏光成分PL1は偏光軸がX軸方向と同じ方向にあり、第2偏光成分PL2は偏光軸がY軸方向と同じ方向にある。別言すれば、第1偏光成分PL1の偏光軸は、第1配向膜AL11、AL21の配向方向ALD1と直交する方向にあり、第2配向膜AL12、AL22の配向方向ALD2と平行な方向にあり、第2偏光成分PL2の偏光軸は、第1配向膜AL11、AL21の配向方向ALD1と平行な方向にあり、第2配向膜AL12、AL22の配向方向ALD2と直交する方向にある。
【0081】
図8は、第1液晶セル10の第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11B、が同じ電位を有しており(又は両帯状電極に同じ電圧が印加されており)、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bの一方にローレベルの電圧VLが印加され他方にハイレベルの電圧VHが印加された状態を示す。第2液晶セル20も同様であり、第1帯状電極E21A及び第2帯状電極E21B、が同じ電位を有しており(又は両帯状電極に同じ電圧が印加されており)、第3帯状電極E22A及び第4帯状電極E22Bの一方にローレベルの電圧VLが印加され他方にハイレベルの電圧VHが印加された状態を示す。
【0082】
第1液晶セル10の第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bにより生成される電界の作用により、第1液晶層LC1の第2基板S12側の液晶分子は垂直に立ち上がる領域、電界の分布に沿って斜めに配向する領域、初期配向状態が維持される領域等が形成される。同様に、第2液晶セル20の第3帯状電極E22A及び第4帯状電極E22Bにより生成される電界の作用により、第2液晶層LC2の第2基板S22側の液晶分子は垂直に立ち上がる領域、電界の分布に沿って斜めに配向する領域、初期配向状態が維持される領域等が形成される。一方、第1液晶セル10の第1基板S11側の液晶分子、及び第2液晶セル20の第1基板S21側の液晶分子は初期配向の状態が維持されている。
【0083】
次に、このような状態の第1液晶セル10及び第2液晶セル20を第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2が通過するときに、第1液晶層LC1及び第2液晶層LC2から受ける作用について説明する。
【0084】
第1液晶セル10に入射した第1偏光成分PL1は、第1液晶層LC1により旋光されて偏光軸がX軸方向からY軸方向に変化する(第1偏光成分PL1が第2偏光成分PL2に変化するとも言える)。第1液晶層LC1は、第2基板S12側で第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bにより形成される横電界の影響を受けて、図7Cを参照して説明したように液晶分子の長軸が凸円弧状に配向している。しかし、第1偏光成分PL1から第2偏光成分PL2に旋光された偏光成分の偏光軸がY軸方向であるのに対し、第2基板S12側の液晶分子の配向方向がX軸方向であるため、この偏光成分は拡散されずに第1液晶層LC1を透過する。
【0085】
第1液晶セル10を透過することによって偏光軸が90度旋光され、第2偏光成分PL2となった偏光成分は、第2液晶セル20を透過するとき第2液晶層LC2の作用を受けて偏光軸の方向が再び90度回転して第1偏光成分PL1となる。第2液晶セル20では、第2液晶層LC2の第2基板S22側の液晶分子の長軸が凸円弧状に配向している。第2液晶層LC2は、液晶分子の配向状態に応じた屈折率分布を有しているため、液晶分子の配向方向と同じ方向の偏光成分は、液晶分子の屈折率分布の変化に応じてX軸方向に拡散する。すなわち、第2偏光成分PL2から第1偏光成分PL1に旋光された偏光成分の偏光軸がX軸方向であり、第2基板S22側の液晶分子の配向方向もX軸方向であるため、この偏光成分は第2液晶層LC2を透過するときX軸方向に拡散される。
【0086】
一方、第1液晶セル10に入射した第2偏光成分PL2は、第1液晶層LC1により旋光されて偏光軸がY軸方向からX軸方向に変化する(第2偏光成分PL2が第1偏光成分PL1に変化するとも言える。)。第1液晶層LC1は、第2基板S12側で第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bにより形成される横電界の影響を受けて、液晶分子の長軸が凸円弧状に配向している。第1液晶層LC1は、液晶分子の配向状態に応じた屈折率分布を有しているため、液晶分子の配向方向と同じ方向の偏光成分は、液晶分子の屈折率分布の変化に応じてX軸方向に拡散する。すなわち、第2偏光成分PL2から第1偏光成分PL1に旋光された偏光成分の偏光軸と、第2基板S12側の液晶分子の長軸の配向方向が同じX軸方向にあるため、この偏光成分は第1液晶層LC1を透過するとき第2基板S12側でX軸方向に拡散される。
【0087】
第1液晶セル10を透過することによって偏光軸が90度旋光され、第2偏光成分PL2から第1偏光成分PL1に変化した偏光成分は、第2液晶セル20を透過するとき第2液晶層LC2の作用を受けて偏光軸の方向が再び90度回転して第2偏光成分PL2となる。第2液晶セル20では、第2液晶層LC2の第2基板S22側の液晶分子の長軸が凸円弧状に配向している。第2液晶層LC2によって第1偏光成分PL1から第2偏光成分PL2に旋光された偏光成分の偏光軸がY軸方向であり、第2基板S22側の液晶分子の配向方向がX軸方向であるため、この偏光成分は第2液晶層LC2を拡散されないで透過する。
【0088】
このように、第1偏光成分PL1は、第1液晶セル10及び第2液晶セル20を透過するとき2回旋光され、第2基板S22側で1回X軸方向に拡散される。第2偏光成分PL2は、第1液晶セル10及び第2液晶セル20を透過するとき2回旋光され、第2基板S12側で1回X軸方向に拡散される。別言すれば、第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2は第1基板S11、S21側では拡散されず、液晶層で旋光された後、第2基板S12又は第2基板S22側でX軸方向に拡散される。
【0089】
このように、それぞれの偏光成分が液晶層で旋光されてから拡散されることで、旋光時の光のロスを低減することができる。別言すれば、それぞれの偏光成分を旋光する前に拡散しないようにすることで、拡散しながらの旋光を無くすことができ、旋光時の光のロスを低減し、配光パターンの形状の乱れを抑制することができる。
【0090】
以上から明らかなように、同じ構造を有する2つの液晶セルを積層させ、この2つの液晶セルを通過する光の偏光方向を2度にわたって変化させ、その結果、入射前と出射後での偏光方向が変わらない状態とすることができる。一方、それぞれの液晶セルの第2基板側(光入射側とは反対側)に凸円弧状の屈折率分布を形成することにより、透過する光を拡散することができる。具体的には、第1液晶セル10により、第2偏光成分PL2の光を旋光させた後X軸方向に拡散させ、第2液晶セル20により、第1偏光成分PL1の光を旋光させた後X軸方向に拡散させることができる。すなわち、第1液晶セル10及び第2液晶セル20を積層させ、各液晶セルの第2基板側(光入射側とは反対側)の液晶層に屈折率分布を形成することにより、光の偏光状態を変えることなく光を拡散することができる。
【0091】
以上のように、同一構造を有する2つの液晶セルを積層させることにより、入射光の偏光方向を2回変化させ、2つの液晶セルを通過する前後で偏光方向が変わらないようにすることができる。一方、液晶層の光入射側とは反対側となる基板上に横電界を作用させ屈折率分布を形成することで、通過する光を特定の方向に屈折させることができる。より具体的には、第1液晶セル10が第2偏光成分PL2の光を旋光させた後X軸方向に拡散させ、第2液晶セル20が第1偏光成分PL1の光を旋光させた後X軸方向に拡散させることができる。
【0092】
このように、第1液晶層LC1及び第2液晶層LC2を通過する入射光は、第1偏光成分PL1が第2液晶層LC2で拡散され、第2偏光成分PL2が第1液晶層LC1で拡散される。また、第1液晶層LC1及び第2液晶層LC2を通過する入射光は、第1液晶層LC1及び第2液晶層LC2でそれぞれ90度旋光される。別言すれば、第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2を含む入射光は、第1液晶セル10で第2偏光成分PL2が拡散され、第2液晶セル20で第1偏光成分PL1が拡散される。すなわち、第1液晶セル10と第2液晶セル20を重ねることで、特定の偏光成分の拡散を個別に制御することができ、光源から放射される光の配光を制御することができる。
【0093】
なお、図3は、第1液晶セル10に関して、第1電極E11と第2電極E12が同じ構成の帯状電極を有する例を示すが、第1電極E11の構成はこの例に限定されない。例えば、図9に示すように、第1電極E11が第1液晶層LC1の略全面に対応する平板状の電極(ベタ電極)で形成されていてもよい。第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40についても同様である。本実施形態に係る液晶光制御素子102は、光入射側に配置される第1電極によって凸円弧状の屈折率分布を形成しないため、第1電極が平板状の電極(ベタ電極)で形成されていても同様の作用効果を得ることができる。
【0094】
ところで、光は異なる媒質の境界面で屈折するが、屈折角は光の波長により変わることが知られている。屈折率分布が形成された液晶層に光が入射する場合、波長毎に屈折角が異なるため、光源の種類や照射する対象物との距離によっては、液晶光制御素子102に光を透過させることによって形成される配光パターンの周辺部分に色割れが視認されることがある。
【0095】
これに対し、本実施形態に係る液晶光制御素子102は、図3及び図9に示すように、4つの液晶セルを光源の光路上で重ね合わせ、4つの液晶セルの内、少なくとも2つの液晶セルを他の液晶セルに対して90度回転させて配置することにより色割れを抑制している。すなわち、本実施形態に係る液晶光制御素子102は、旋光時の光ロスを低減し配光パターンの乱れを抑制できるだけでなく、配光パターンの色割れを抑制することができる。
【0096】
以下に、本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子102の構成と動作を、複数の実施形態に分けて詳細に説明する。
【0097】
第1実施形態:
図10は、第1実施形態に係る液晶光制御素子102の各液晶セルにおける帯状電極の配置と、入射光の偏光状態及び拡散が各液晶セルによって制御される態様を示す。本実施形態において、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40における各電極の配置は、図3に示す構造と同様である。
【0098】
液晶光制御素子102は、第1液晶セル10及び第2液晶セル20の液晶の配向方向が同じであり、第1電極E11、E21における帯状電極(E11A、E11B、E21A、E21B)の長手方向が同じ方向に向けられており、これらの電極に交差する第2電極E12、E22における帯状電極(E12A、E12B、E22A、E22B)の長手方向が同じ方向に向けられている。また、第3液晶セル30及び第4液晶セル40の液晶の配向方向が同じであり、第1電極E31、E41における帯状電極(E31A、E31B、E41A、E41B)の長手方向が同じ方向に向けられており、これらの電極に交差する第2電極E32、E42における帯状電極(E32A、E32B、E42A、E42B)の長手方向が同じ方向に向けられている。そして、第1液晶セル10及び第2液晶セル20における第2電極E12、E22の帯状電極(E12A、E12B、E22A、E22B)の長手方向と、第3液晶セル30及び第4液晶セル40における第2電極E32、E42の帯状電極(E32A、E32B、E42A、E42B)の長手方向とは90の角度で交差している。
【0099】
また、各液晶セルの第1電極(E11、E21、E31、E41)と第2電極(E12、E22、E32、E42)とは互いの延在方向を直交させている。後述する図13図14、及び図15に示す実施形態についても同様である。なお、第1液晶セル10及び第2液晶セル20に対して、第3液晶セル30及び第4液晶セル40を90度±10度の範囲で回転させた状態で積層する構成も採用可能である。また、各液晶セルの第1電極(E11、E21、E31、E41)と第2電極(E12、E22、E32、E42)の延在方向を90度±10度の範囲で設定する構成も採用可能である。
【0100】
図10は、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40における電極の配置、配向膜による配向方向(矢印)、液晶分子の初期配向を示す。液晶層はポジ型の液晶で形成されており、各液晶セルに制御信号が入力されない初期状態では液晶の長軸方向が帯状電極と交差する方向(直交する方向)に配向している。すなわち、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30,及び第4液晶セル40の第1基板S11、S21、S31、S41側の配向膜(第1配向膜)の配向方向と、帯状のパターンを有する第1電極E11、E21、E31、E41の長手方向が交差するように配置され、第2基板S12、S22、S32、S42側の配向膜(第2配向膜)の配向方向と、帯状のパターンを有する第2電極E12、E22、E32、E42の長手方向が交差するように配置されている。
【0101】
図10に示す配置に従えば、第1液晶セル10及び第2液晶セル20の第1基板S11、S21側の配向膜(図示されず)の配向方向がX軸方向に平行な方向に向いており、第2基板S12、S22側の配向膜(図示されず)の配向方向がY軸方向と平行な方向に向いている。したがって、第1液晶セル10及び第2液晶セル20の第1電極E11、E21の帯状のパターンの長手方向がY軸方向と平行な方向に向けられており、第2電極E12、E22の帯状のパターンの長手方向がX軸方向と平行な方向に向けられている。また、第3液晶セル30及び第4液晶セル40の第1基板S31、S41側の配向膜(図示されず)の配向方向がY軸方向に平行な方向に向いており、第2基板S32、S42側の配向膜(図示されず)の配向方向がX軸方向と平行な方向に向いている。したがって、第3液晶セル30及び第4液晶セル40の第1電極E31、E41の帯状のパターンの長手方向がX軸方向と平行な方向に向けられており、第2電極E32、E42の帯状のパターンの長手方向がY軸方向と平行な方向に向けられている。なお、配向膜の配向方向は、本実施形態においては、X軸方向及びY軸方向の定義に従えば帯状のパターンを有する電極の延在方向に対し90度の方向で設定されるが、90±10度の方向についても設定可能である。
【0102】
以下の説明において、第1偏光成分PL1の偏光方向と同じ方向をY軸方向、第2偏光成分PL2の偏光方向と同じ方向をX軸方向とする。また、図10の表中に示される(拡散光1X)とは、当該位置に至るまでに偏光成分がX軸方向に1度拡散したことを示し、(拡散光1X1Y)とは、当該位置に至るまでに偏光成分がX軸方向に1度拡散し、且つ、Y軸方向にも1度拡散したことを示す。図12乃至図15についても同様である。
【0103】
図10は、横電界を形成している電極をハッチングで示す。また、図10には表が挿入されており、第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2を含む光が各液晶セルの第1電極、液晶層、第2電極を通過するときのそれぞれの偏光成分の状態を、透過、旋光、拡散という用語によって示す。ここで「透過」とは偏光成分が拡散や旋光等されることなくそのまま通過することを示す。また、「旋光」とは、偏光成分がその偏光方向を90度遷移させたことを示す。また、「拡散」とは、当該偏光成分が液晶分子の屈折率分布の影響を受けて拡散していることを示す。したがって、図表中、例えば第1電極にて「透過」とあるのは、液晶層の第1電極近傍にて上記「透過」の現象が生じていることを示す。また、液晶層にて「旋光」とあるのは、偏光成分が液晶層を第1基板側から第2基板側に向かう過程で偏光方向を90度遷移させていることを示す。
【0104】
液晶光制御素子102は、光入射側から、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、第4液晶セル40がこの順番に配置されている。液晶光制御素子102に入射する光は、第1偏光成分PL1及び第1偏光成分PL1に直交する第2偏光成分PL2を含む。
【0105】
図10に示すように、第1液晶セル10の第2電極E12と第2液晶セル20の第2電極E22は長手方向が同じ方向に配置されており、第1偏光成分PL1をY軸方向に拡散することができる。また、第3液晶セル30の第2電極E32と第4液晶セル40の第2電極E42は長手方向が同じ方向に配置されており、第2偏光成分PL2をX軸方向に拡散することができる。
【0106】
液晶光制御素子102が入射光の偏光状態及び拡散状態を制御するために、各液晶セルに制御信号が入力される。図11は各液晶セルの電極に印加される制御信号の波形の一例を示す。各液晶セルには、図11に示す制御信号A、制御信号B、制御信号Eのいずれかの信号が入力される。制御信号A、Bにおいて、VL1はローレベルの電圧、VH1はハイレベルの電圧を意味する。例えば、VL1は0V又は-15Vの電圧であり、VH1は(0Vに対して)30V又は(-15Vに対して)15Vである。制御信号Aと制御信号Bは同期しており、制御信号AがVL1のレベルにあるとき制御信号BはVH1のレベルにあり、制御信号AがVH1のレベルに変化すると制御信号BはVL1のレベルに変化する。制御信号A、Bの周期は15~100Hz程度である。一方、制御信号Eは一定電圧の信号であり、例えば、制御信号EはVL1とVH1の中間電圧であり、VL1=0V、VH1=30Vの場合にはVE=15Vであり、VL1=-15V、VH1=+15Vの場合にはVE=0Vとなる。
【0107】
液晶光制御装置100は、液晶光制御素子102の各液晶セルに印加する制御信号の選択により、光源部(106)から放射される光の配光パターンを様々に制御することができる。本実施形態は、液晶光制御素子102によって光源部(106)から放射される光を四角形状の配光パターンに制御する一例を示す。
【0108】
表1は、図10に示す液晶光制御素子102の各液晶セルに印加される制御信号を示す。なお、表1に示す制御信号A、B、Eは、図11に示す制御信号に対応している。
【表1】
【0109】
図10及び表1に示すように液晶光制御素子102の各液晶セルに制御信号が入力される。第1液晶セル10の第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bに制御信号Eが入力され、第3帯状電極E12Aに制御信号Aが入力され、第4帯状電極E12Bに制御信号Bが入力される。表1に示すように、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40についても、第1液晶セル10と同様に制御信号A、B、Eが入力される。すなわち、図10に示す液晶光制御素子102は、各液晶セルの第1電極に制御信号Eが印加され、第2電極に制御信号A、Bが印加され、第2基板側でのみ横電界が発生している。
【0110】
液晶光制御素子102の動作時には、各液晶セルの各帯状電極に表1に示す制御信号が入力される。第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40に対し、表1に示す制御信号が入力されると、各液晶セルは図7Cに示すように第2基板側の液晶分子が横電界の影響を受けて配向状態が変化する。
【0111】
図10において第1偏光成分PL1に着目すると、第1液晶セル10に入射する第1偏光成分PL1の偏光軸の方向は、第1液晶層LC1の第1基板S11側の液晶分子の長軸方向に対し交差する方向(直交する方向)にある。第1電極E11は横電界を発生させていないため、第1偏光成分PL1は拡散されずそのまま第2基板S12側に向かう。また、第1偏光成分PL1は、第1液晶層LC1を第1基板S11側から第2基板S12側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第1偏光成分PL1は第2偏光成分PL2に遷移する。第2基板S12側では、第2電極E12が横電界を発生させているが、第2偏光成分PL2の偏光軸の方向は第2基板S12側の液晶分子の長軸方向と交差する方向にある。このため、第2基板S12側の液晶分子が第2電極E12によって生じる電界によって屈折率分布を変化させているものの、第2偏光成分PL2はその影響を受けずそのまま透過する。すなわち、第1偏光成分PL1は、第1液晶セル10を通過する過程で第2偏光成分PL2に遷移する一方、拡散等はされないで第2基板S12側から出射される。
【0112】
そして、第1液晶セル10から出射された第2偏光成分PL2が第2液晶セル20に入射する。当該第2偏光成分PL2は、その偏光軸の方向が第2液晶層LC2の第1基板S21側の液晶分子の長軸方向と平行な方向にある。しかし、第1電極E21は横電界を発生させていないため、第2偏光成分PL2は拡散されずそのまま第2基板S22側に向かう。また、第2偏光成分PL2は、第2液晶層LC2を第1基板S21側から第2基板S22側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第2偏光成分PL2は第1偏光成分PL1に遷移する。ここで、第1偏光成分PL1の偏光軸は第2基板S22側の液晶分子の長軸方向と平行な方向にある。第2基板S22側の液晶分子は第2電極E22によって生じる横電界によって屈折率分布を変化させているため、当該第1偏光成分PL1はY軸方向に拡散され、その後、第2液晶セル20から出射される。すなわち、第2液晶セル20に入射した第2偏光成分PL2は、当該第2液晶セル20を通過する過程で第1偏光成分PL1に遷移してY軸方向に拡散する。
【0113】
このように、入射光の内、第1偏光成分PL1は第1液晶セル10に入射し第2液晶セル20から出射されるまでに、第2偏光成分PL2に一度遷移してから再び第1偏光成分PL1に遷移し、且つ、第2液晶セル20にてY軸方向に1回拡散される。
【0114】
第3液晶セル30は、第1電極E31の長手方向が第1液晶セル10の第1電極E11及び第2液晶セル20の第1電極E21と90度の角度で交差し、第2電極E32の長手方向が第1液晶セル10の第2電極E12及び第2液晶セル20の第2電極E22と90度の角度で交差している。また、第4液晶セル40も同様に、第1電極E41の長手方向が第1液晶セル10の第1電極E11及び第2液晶セル20の第1電極E21と90度の角度で交差し、第2電極E42の長手方向が第1液晶セル10の第2電極E12及び第2液晶セル20の第2電極E22と90度の角度で交差している。したがって、これら第3液晶セルと第4液晶セルにおいては、各偏光成分に対して、第1液晶セル10及び第2液晶セル20で生じた現象が逆転する。なお、当該交差角度は90±10度の範囲で設定可能である。
【0115】
第2液晶セル20を通過しY軸方向に1回拡散された第1偏光成分PL1(拡散光1Y)が第3液晶セル30に入射すると、当該第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は、その偏光軸の方向が第3液晶層LC3の第1基板S31側の液晶分子の長軸方向と平行な方向となる。しかし、第1電極E31は横電界を発生させていないため、第3液晶セル30に入射した第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は拡散されず、第3液晶層LC3を第1基板S31側から第2基板S32側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は第2偏光成分PL2(拡散光1Y)に遷移する。ここで、第2偏光成分PL2(拡散光1Y)の偏光軸は第2基板S32側の液晶分子の長軸方向と平行な方向にある。第2基板S32側の液晶分子は第2電極E32によって生じる横電界によって屈折率分布を変化させているため、当該第2偏光成分PL2(拡散光1Y)はX軸方向に拡散され、その後、第3液晶セル30から出射される。すなわち、第3液晶セル30に入射した第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は、当該第3液晶セル30を通過する過程で第2偏光成分PL2に遷移してX軸方向に拡散する(拡散光1X1Y)。
【0116】
第3液晶セル30から出射され、第4液晶セル40に入射した第2偏光成分PL2(拡散光1X1Y)の偏光軸の方向は、第4液晶層LC4の第1基板S41側の液晶分子の長軸方向に対し交差する方向にある。しかし、第1電極E41は横電界を発生させていないため、第4液晶セル40に入射した第2偏光成分PL2(拡散光1X1Y)は拡散されず、第4液晶層LC4を第1基板S41側から第2基板S42側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第2偏光成分PL2(拡散光1X1Y)は第1偏光成分PL1(拡散光1X1Y)に遷移する。また、第1偏光成分PL1(拡散光1X1Y)の偏光軸の方向は第2基板S42側の液晶分子の長軸方向と交差する方向にある。このため、第2基板S42側の液晶分子が第2電極E42によって生じる横電界によって屈折率分布を変化させているものの、第1偏光成分PL1(拡散光1X1Y)はその影響を受けず、そのまま透過する。すなわち、第2偏光成分PL2(拡散光1X1Y)は、第4液晶セル40を通過する過程で第1偏光成分PL1(拡散光1X1Y)に遷移する一方、拡散等はされないで第4液晶セル40から出射される。
【0117】
このように、第3液晶セル30に入射する第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は、第4液晶セル40から出射されるまでに、第3液晶層LC3及び第4液晶層LC4でそれぞれ90度旋光され、かつ第3液晶セル30でX軸方向に拡散され、第1偏光成分PL1(拡散光1X1Y)として第4液晶セル40から出射される。
【0118】
したがって、光源から出射される第1偏光成分PL1は、第1液晶セル10に入射して第4液晶セル40から出射されるまでの間に、偏光軸が90度の角度で4回旋光され、X軸方向に1回及びY軸方向に1回拡散される。
【0119】
一方、第1液晶セル10に入射する第2偏光成分PL2の偏光成分は、その偏光軸の方向が第1液晶層LC1の第1基板S11側の液晶分子の長軸方向に対し平行な方向である。しかし、第1電極E11は横電界を発生させていないため、第2偏光成分PL2は拡散されずそのまま第2基板S12側に向かう。また、第2偏光成分PL2は、第1液晶層LC1を第1基板S11側から第2基板S12側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第2偏光成分PL2は第1偏光成分PL1に遷移する。第1偏光成分PL1の偏光軸の方向は第2基板S12側の液晶分子の長軸方向と平行な方向にある。第2基板S12側の液晶分子が第2電極E12によって生じる電界によって屈折率分布を変化させているので、第1液晶層LC1によって遷移された第1偏光成分PL1は、第2基板S12側の液晶分子により形成される屈折率分布によりY軸方向に拡散される。すなわち、第1液晶セル10に入射した第2偏光成分PL2は、第1液晶セル10を通過する過程で第1偏光成分PL1に遷移してY方向に拡散する(拡散光1Y)。
【0120】
そして、第1液晶セル10から出射された第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は、第2液晶セル20に入射する。第2液晶セル20に入射する第1偏光成分PL1(拡散光1Y)の偏光軸の方向は、第2液晶層LC2の第1基板S21側の液晶分子の長軸方向に対し交差する方向(直交する方向)にある。しかし、第1電極E21は横電界を発生させていないため、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は拡散されずそのまま第2基板S22側に向かう。また、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は、第2液晶層LC2を第1基板S21側から第2基板S22側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は第2偏光成分PL2(拡散光1Y)に遷移する。第2偏光成分PL2の偏光軸の方向は第2基板S22側の液晶分子の長軸方向と交差する方向にある。このため、第2基板S22側の液晶分子が第2電極E22によって生じる電界によって屈折率分布を変化させているものの、第2偏光成分PL2(拡散光1Y)はその影響を受けず、そのまま透過する。すなわち、第2液晶セル20に入射した第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は、第2液晶セル20を通過する過程で第2偏光成分PL2(拡散光1Y)に遷移するものの、拡散されずに透過する。
【0121】
このように、入射光の内、第2偏光成分PL2は第1液晶セル10に入射し第2液晶セル20から出射されるまでに、第1偏光成分PL1に一度遷移してから再び第2偏光成分PL2に遷移し、且つ、第1液晶セル10にてY軸方向に1回拡散される。
【0122】
第1液晶セル10及び第2液晶セル20でそれぞれ90度旋光され、かつ第1液晶セル10でY軸方向に1回拡散された第2偏光成分PL2(拡散光1Y)が第3液晶セル30に入射する。第3液晶セル30に入射する第2偏光成分PL2(拡散光1Y)の偏光方向は、第3液晶層LC3の第1基板S31側の液晶分子の長軸方向に対し交差する方向(直交する方向)にある。第1電極E31は横電界を発生させていないため、第3液晶セル30に入射した第2偏光成分PL2(拡散光1Y)は拡散されず、第3液晶層LC3を第1基板S31側から第2基板S32側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第2偏光成分PL2(拡散光1Y)は第1偏光成分PL1(拡散光1Y)に遷移する。また、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)の偏光方向は第2基板S32側の液晶分子の長軸方向と交差する方向にある。このため、第2基板S32側の液晶分子が第2電極E32によって生じる電界によって屈折率分布を変化させているものの、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)はその影響を受けず、そのまま透過する。すなわち、第3液晶セル30に入射した第2偏光成分PL2(拡散光1Y)は、第3液晶セル30を通過する過程で第1偏光成分PL1(拡散光1Y)に遷移するものの、拡散されずに透過する。
【0123】
第3液晶セル30を通過し、Y方向に1回拡散され、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30でそれぞれ90度旋光された第1偏光成分PL1(拡散光1Y)が第4液晶セル40に入射すると、当該第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は、その偏光方向が第4液晶層LC4の第1基板S41側の液晶分子の長軸方向と平行な方向となっている。しかし、第1電極E41は横電界を発生させていないため、第4液晶セル40に入射した第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は拡散されず、第4液晶層LC4を第1基板S41側から第2基板S42側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は再び第2偏光成分PL2(拡散光1Y)に遷移する。この第2偏光成分PL2(拡散光1Y)の偏光方向は第2基板S42側の液晶分子の長軸方向と平行である。ここで、第2基板S42側の液晶分子は第2電極E42によって生じる横電界によって屈折率分布を変化させているため、この第2偏光成分PL2(拡散光1Y)は当該液晶分子の屈折率分布の影響を受けてX軸方向に拡散されて第4液晶セル40から第2偏光成分(拡散光1X1Y)として出射される。
【0124】
このように、第3液晶セル30に入射する第2偏光成分PL2(拡散光1Y)は、第4液晶セル40から出射されるまでに、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)に一度遷移してから再び第2偏光成分PL2(拡散光1Y)に遷移し、且つ、第4液晶セル40にてX軸方向1回拡散され、第2偏光成分PL2(拡散光1X1Y)として出射される。
【0125】
したがって、光源から出射される第2偏光成分PL2は、第1液晶セル10に入射して第4液晶セル40から出射されるまでの間に、偏光軸が90度の角度で4回旋光され、X軸方向に1回及びY軸方向に1回拡散される。
【0126】
図10に示す液晶光制御素子102の動作によれば、光源部106から出射された光の第1偏光成分PL1がX軸方向に1回及びY軸方向に1回拡散され、第2偏光成分PL2がX軸方向に1回及びY軸方向に1回拡散されることにより、四角形状の配光パターンが成形される。第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2は、いずれも液晶層で旋光された後にX軸方向及びY軸方向に拡散されるので、旋光時の光のロスを低減することができる。別言すれば、第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2を最初に旋光する前に拡散しないようにすることで、かかる過程における拡散しながらの旋光を無くすことができ、旋光時の光のロスを低減することができる。これにより、液晶光制御素子102によって光源の配光パターンを制御するとき、配光パターンの形状の乱れを抑制することができる。
【0127】
また、図10に示す構成の液晶光制御素子102によれば、異なる液晶セルに設けられ、かつ液晶層を挟んで光入射側とは反対側に配置される電極によって、一つの偏光成分をX軸方向及びY軸方向に拡散させることで、色割れを防止することができる。
【0128】
図10に示す液晶光制御素子102の動作モードは、各液晶セルの第1電極で横電界を発生させないため、図9及び図12に示す構成の液晶光制御素子によっても同様に四角形状の配光パターンを形成することができる。図9及び図12は、各液晶セルの第1電極が平板状の電極(ベタ電極)で形成されている場合の例を示す。図9及び図12において、各液晶セルの液晶分子の配向方向、第2電極(E12、E22、E32、E42)の配置、及び第2電極に印加される制御信号は、図10に示す例と同じである(図12参照)。
【0129】
図12に挿入された表に示されるように、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40を透過する第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2の遷移は、図10に示す実施形態と同一であり詳細な説明は省略する。図12に示すように第1電極を平板状の電極(ベタ電極)に置き換えたとしても、光源部(106)から出射された光の第1偏光成分PL1をX軸方向に1回及びY軸方向に1回拡散し、第2偏光成分PL2をX軸方向に1回及びY軸方向に1回拡散することができ、四角形状の配光パターンを形成することができる。
【0130】
第2実施形態:
本実施形態は、光源部から放射される光を十字形状に配光することのできる液晶光制御素子102の構成と動作の一例を示す。図13は、本実施形態に係る液晶光制御素子102の各液晶セルにおける帯状電極の配置と、入射光の偏光状態及び拡散が各液晶セルによって制御される態様を示す。図13に示す第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40における帯状電極の配置は第1実施形態と同様である。
【0131】
表2は、図13に示す液晶光制御素子102において、各液晶セルに印加される制御信号を示す。なお、表2に示す制御信号A、B、Eは、図11に示す制御信号に対応するものである。
【表2】
【0132】
図13及び表2に示すように液晶光制御素子102の各液晶セルに制御信号が入力される。第1液晶セル10の第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bに制御信号Eが入力され、第3帯状電極E12Aに制御信号Aが入力され、第4帯状電極E12Bに制御信号Bが入力される。表2に示すように第3液晶セル30も第1液晶セル10と同様に制御信号が入力される。但し、第3液晶セル30は、帯状電極の長手方向の向き、配向膜の配向方向及び液晶分子の長軸方向の配向が第1液晶セル10と異なっている。第2液晶セル20の第1帯状電極E21Aに制御信号Aが入力され、第2帯状電極E21Bに制御信号Bが入力され、第3帯状電極E22A及び第4帯状電極E22Bに制御信号Eが入力される。表2に示すように第4液晶セル40も第2液晶セル20と同様に制御信号が入力される。但し、第4液晶セル40は、帯状電極の長手方向の向き、配向膜の配向方向及び液晶分子の長軸方向の配向が第1液晶セル10と異なっている。このように、図13に示す液晶光制御素子102は、第1液晶セル10及び第3液晶セル30では第2基板S12、S32側で横電界が発生し、第2液晶セル20及び第4液晶セル40では第1基板S21、S41側で横電界が発生する構成を有している。
【0133】
液晶光制御素子102の動作時には、各液晶セルの各帯状電極に表2に示す制御信号が入力される。表2に示す制御信号が各液晶セルに入力されると、第1液晶セル10及び第3液晶セル30では第2基板S12、S32側に横電界が発生し、第2液晶セル20及び第4液晶セル40では第1基板S21、S41側に横電界が発生し、液晶分子が横電界の影響を受けて配向状態が変化する。
【0134】
図13において第1偏光成分PL1に着目すると、第1偏光成分PL1は、第1実施形態と同様に第1液晶セル10を通過する過程で第2偏光成分PL2に遷移し、拡散はされないで第2基板S12側から出射される。
【0135】
そして、第1液晶セル10から出射された第2偏光成分PL2が第2液晶セル20に入射する。当該第2偏光成分PL2は、その偏光軸の方向が第2液晶層LC2の第1基板S21側の液晶分子の長軸方向と平行な方向にある。第1基板S21側の液晶分子は第1電極E21によって生じる横電界によって屈折率分布を変化させているため、当該第2偏光成分PL2はX軸方向に拡散される。また、第2偏光成分PL2は、第2液晶層LC2を第1基板S21側から第2基板S22側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、X軸方向に拡散された第2偏光成分PL2(拡散光1X)は第1偏光成分PL1に遷移する。第2電極E22は横電界を発生させていないため、第1偏光成分PL1(拡散光1X)は拡散されずそのまま第2基板S22を透過して第2液晶セル20から出射される。すなわち、第2液晶セル20に入射した第2偏光成分PL2は、当該第2液晶セル20を通過する過程でX軸方向に拡散され、第1偏光成分PL1(拡散光1X)に遷移して出射される。
【0136】
このように、入射光の内、第1偏光成分PL1は第1液晶セル10に入射し第2液晶セル20から出射されるまでに、第2偏光成分PL2に一度遷移してから再び第1偏光成分PL1に遷移し、且つ、第2液晶セル20にてX軸方向に1回拡散される。
【0137】
第1実施形態と同様に、第3液晶セル30は、第1電極E31の長手方向が第1液晶セル10の第1電極E11及び第2液晶セル20の第1電極E21と90度の角度で交差し、第2電極E32の長手方向が第1液晶セル10の第2電極E12及び第2液晶セル20の第2電極E22と90度の角度で交差している。また、第4液晶セル40も同様に、第1電極E41の長手方向が第1液晶セル10の第1電極E11及び第2液晶セル20の第1電極E21と90度の角度で交差し、第2電極E42の長手方向が第1液晶セル10の第2電極E12及び第2液晶セル20の第2電極E22と90度の角度で交差している。したがって、第3液晶セル及び第4液晶セルにおいては、各偏光成分に対して、第1液晶セル10及び第2液晶セル20で生じた現象が逆転する。なお、当該交差角度は90±10度の範囲で設定可能である。
【0138】
第2液晶セル20を通過しX軸方向に1回拡散された第1偏光成分PL1(拡散光1X)が第3液晶セル30に入射すると、当該第1偏光成分PL1(拡散光1X)は、その偏光軸の方向が第3液晶層LC3の第1基板S31側の液晶分子の長軸方向と平行な方向となる。しかし、第1電極E31は横電界を発生させていないため、第3液晶セル30に入射した第1偏光成分PL1(拡散光1X)は拡散されず、第3液晶層LC3を第1基板S31側から第2基板S32側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第1偏光成分PL1(拡散光1X)は第2偏光成分PL2(拡散光1X)に遷移する。ここで、第2偏光成分PL2(拡散光1X)の偏光軸は第2基板S32側の液晶分子の長軸方向と平行な方向にある。第2基板S32側の液晶分子は第2電極E32によって生じる横電界によって屈折率分布を変化させているため、当該第2偏光成分PL2(拡散光1X)はX軸方向に拡散され、その後、第3液晶セル30から出射される。すなわち、第3液晶セル30に入射した第1偏光成分PL1(拡散光1X)は、当該第3液晶セル30を通過する過程で第2偏光成分PL2(拡散光1X)に遷移してさらにX軸方向に拡散する。
【0139】
第4液晶セル40は第1電極E41が横電界を発生させており、第1基板S41側の液晶分子が第1電極E41によって生じる横電界によって屈折率分布を変化させている。しかし、第4液晶セル40に入射した第2偏光成分PL2(拡散光2X)の偏光軸の方向は、第4液晶層LC4の第1基板S41側の液晶分子の長軸方向に対し交差する方向にあるため拡散されず、第4液晶層LC4を第1基板S41側から第2基板S42側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第2偏光成分PL2(拡散光2X)は第1偏光成分PL1(拡散光2X)に遷移する。第2電極E42は横電界を発生させていないため、第1偏光成分PL1(拡散光2X)は拡散されずそのまま第2基板S42を透過して第4液晶セル40から出射される。すなわち、第4液晶セル40に入射した第2偏光成分PL2(拡散光2X)は、当該第4液晶セル40を通過する過程で拡散されず第1偏光成分PL1(拡散光2X)に遷移して出射される。
【0140】
このように、第3液晶セル30に入射する第1偏光成分PL1(拡散光1X)は、第4液晶セル40から出射されるまでに、第3液晶層LC3及び第4液晶層LC4でそれぞれ90度旋光され、かつ第3液晶セル30でX軸方向に拡散され、第1偏光成分PL1(拡散光2X)として第4液晶セル40から出射される。
【0141】
したがって、光源から出射される第1偏光成分PL1は、第1液晶セル10に入射して第4液晶セル40から出射されるまでの間に、偏光軸が90度の角度で4回旋光され、X軸方向に2回拡散される。
【0142】
次に、図13において第2偏光成分PL2に着目すると、第2偏光成分PL2は、第1実施形態と同様に第1液晶セル10を通過する過程で第1偏光成分PL1に遷移し、第2基板S12側でY軸方向に拡散されて第2基板S12側から出射される。
【0143】
第2液晶セル20は第1電極E21が横電界を発生させており、第1基板S21側の液晶分子が第1電極E21によって生じる横電界によって屈折率分布を変化させている。しかし、第2液晶セル20に入射する第1偏光成分PL1(拡散光1Y)の偏光軸の方向は、第2液晶層LC2の第1基板S21側の液晶分子の長軸方向に対し交差する方向(直交する方向)にあるため拡散されず、第2液晶層LC2を第1基板S21側から第2基板S22側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は第2偏光成分PL2(拡散光1Y)に遷移する。第2電極E22は横電界を発生させていないため、第2偏光成分PL2(拡散光1Y)は拡散されずそのまま第2基板S22を透過して第2液晶セル20から出射される。すなわち、第2液晶セル20に入射した第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は、当該第2液晶セル20を通過する過程で拡散されず第2偏光成分PL2(拡散光1Y)に遷移して出射される。
【0144】
このように、入射光の内、第2偏光成分PL2は第1液晶セル10に入射し第2液晶セル20から出射されるまでに、第1偏光成分PL1に一度遷移してY軸方向に1回拡散され、第2液晶セル20で再び第2偏光成分PL2(拡散光1Y)に遷移する。
【0145】
第1液晶セル10及び第2液晶セル20でそれぞれ90度旋光され、かつ第1液晶セル10でY軸方向に1回拡散された第2偏光成分PL2(拡散光1Y)が第3液晶セル30に入射する。第3液晶セル30に入射する第2偏光成分PL2(拡散光1Y)の偏光方向は、第3液晶層LC3の第1基板S31側の液晶分子の長軸方向に対し交差する方向(直交する方向)にある。第1電極E31は横電界を発生させていないため、第3液晶セル30に入射した第2偏光成分PL2(拡散光1Y)は拡散されず、第3液晶層LC3を第1基板S31側から第2基板S32側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、第2偏光成分PL2(拡散光1Y)は第1偏光成分PL1(拡散光1Y)に遷移する。また、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)の偏光方向は第2基板S32側の液晶分子の長軸方向と交差する方向にある。このため、第2基板S32側の液晶分子が第2電極E32によって生じる電界によって屈折率分布を変化させているものの、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)はその影響を受けず、そのまま透過する。すなわち、第3液晶セル30に入射した第2偏光成分PL2(拡散光1Y)は、第3液晶セル30を通過する過程で第1偏光成分PL1(拡散光1Y)に遷移するものの、拡散されずに透過する。
【0146】
第3液晶セル30を透過して、Y軸方向に1回拡散され、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30でそれぞれ90度旋光された第1偏光成分PL1(拡散光1Y)が第4液晶セル40に入射すると、当該第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は、その偏光方向が第4液晶層LC4の第1基板S41側の液晶分子の長軸方向と平行な方向となっている。第1基板S41側の液晶分子は第1電極E41によって生じる横電界によって屈折率分布を変化させているため、当該第1偏光成分PL1(拡散光1Y)はY軸方向に拡散される。また、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)は、第4液晶層LC4を第1基板S41側から第2基板S42側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って90度旋光される。これにより、Y軸方向に拡散された第1偏光成分PL1(拡散光2Y)は、第2偏光成分PL2(拡散光2Y)に遷移して第4液晶セル40から出射される。
【0147】
このように、第3液晶セル30に入射する第2偏光成分PL2(拡散光1Y)は、第4液晶セル40から出射されるまでに、第1偏光成分PL1(拡散光1Y)に一度遷移してから第4液晶セル40にてY軸方向に1回拡散され、再び第2偏光成分PL2(拡散光2Y)に遷移して出射される。
【0148】
したがって、光源から出射される第2偏光成分PL2は、第1液晶セル10に入射して第4液晶セル40から出射されるまでの間に、偏光軸が90度の角度で4回旋光され、Y軸方向に2回拡散される。
【0149】
図13に示す液晶光制御素子102によれば、光源部106から出射された光の第1偏光成分PL1がX軸方向に2回拡散され、第2偏光成分PL2がY軸方向の2回拡散されることにより、十字形状の配光パターンが成形される。2つの偏光成分の内、第2偏光成分PL2は液晶層で旋光された後にY軸方向に拡散されるので、旋光時の光のロスを低減することができる。別言すれば、第2偏光成分PL2を旋光する前に拡散しないようにすることで、拡散しながらの旋光を無くすことができ、旋光時の光のロスを低減することができる。これにより、液晶光制御素子102によって光源の配光パターンを制御するとき、配光パターンの形状の乱れを抑制することができる。
【0150】
また、図13に示す構成の液晶光制御素子102によれば、異なる液晶セルに設けられ、かつ液晶層を挟んで光入射側とは反対側に配置される電極によって、一つの偏光成分をX軸方向又はY軸方向に拡散させることで、色割れを防止することができる。
【0151】
第3実施形態:
本実施形態は、液晶光制御素子102の第3の構成例を示す。図14は、本実施形態に係る液晶光制御素子102の各液晶セルにおける帯状電極の配置を示す。図14に示す第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40における帯状電極の配置は第1実施形態と同様であるが、第2液晶セル20の第2液晶層LC2N及び第4液晶セル40の第4液晶層LC4Nにネガ型液晶が用いられている点で相違する。
【0152】
複数の液晶セルのうち、少なくとも1つの液晶セルにネガ型液晶を用い、他の液晶セルにポジ型液晶を用いることによっても、光源部から放射される光の配光パターンを制御することができる。なお、本実施形態において、第1液晶セル10の第1電極E11、第2液晶セル20の第1電極E21、第3液晶セル30の第1電極E31、及び第4液晶セル40の第1電極E41は、第1実施形態において図12に示す平板状の電極(ベタ電極)に置き換えることができる。
【0153】
第4実施形態:
本実施形態は、液晶光制御素子102の第4の構成例を示す。図15は、本実施形態に係る液晶光制御素子102の各液晶セルにおける帯状電極の配置を示す。図15に示す第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40における帯状電極の配置は第1実施形態と同様であるが、第2液晶セル20の配向膜(図示されず)の配向方向及び第4液晶セル40の配向膜(図示されず)の配向方向が、第1液晶セル10及び第3液晶セル30と異なっている。すなわち、第1液晶セル10及び第3液晶セル30の配向膜(図示されず)の配向方向が帯状電極の長手方向に交差する方向であるのに対し、第2液晶セル20及び第4液晶セル40の配向膜(図示されず)の配向膜の配向方向は帯状電極の長手方向と同じ方向に向けられている。すなわち、図15に模式的に示すように、第1液晶セル10及び第3液晶セル30の液晶層の液晶分子の長軸が第1電極E11、E31及び第2電極E12、E32の長手方向と交差する方向に配向しているのに対し、第2液晶セル20及び第4液晶セル40の液晶層の液晶分子の長軸は、第1電極E21、E41及び第2電極E22、E42の長手方向と平行な方向に配向している点で第1実施形態と相違する。
【0154】
図15に示す配置に従えば、第1液晶セル10及び第4液晶セル40の第1基板S11、S41側の配向膜(図示されず)の配向方向がX軸方向に平行な方向に向いており、第2基板S12、S42側の配向膜(図示されず)の配向方向がY軸方向と平行な方向に向いている。第1液晶セル10の第1電極E11の帯状のパターンの長手方向がY軸方向と平行な方向に向いており、第2電極E12の帯状のパターンの長手方向がX軸方向と平行な方向に向いており、第4液晶セル40の第1電極E41の帯状のパターンの長手方向がX軸方向と平行な方向に向いており、第2電極E42の帯状のパターンの長手方向がY軸方向と平行な方向に向いている。
【0155】
また、第2液晶セル20及び第3液晶セル30の第1基板S21、S31側の配向膜(図示されず)の配向方向がY軸方向に平行な方向に向いており、第2基板S22、S32側の配向膜(図示されず)の配向方向がX軸方向と平行な方向に向いている。そして、第2液晶セル20の第1電極E21の帯状のパターンの長手方向がY軸方向と平行な方向に向いており、第2電極E22の帯状のパターンの長手方向がX軸方向と平行な方向に向いており、第3液晶セル30の第1電極E31の帯状のパターンの長手方向がX軸方向と平行な方向に向いており、第2電極E32の帯状のパターンの長手方向がY軸方向と平行な方向に向いている。なお、配向膜の配向方向は、本実施形態においては、X軸方向及びY軸方向の定義に従えば帯状のパターンを有する電極の延在方向に対し90度の方向で設定されるが、90±10度の方向についても設定可能である。
【0156】
表3は、図15に示す液晶光制御素子102において、各液晶セルに印加される制御信号の一例を示す。なお、表3に示す制御信号A、B、Eは、図11に示す制御信号に対応するものである。また、表3において配向方向が交差又は平行とあるのは上記の液晶分子の配向に対応するものである。
【表3】
【0157】
図15及び表3に示すように、液晶光制御素子102の各液晶セルには第1実施形態と同様に制御信号が入力される。液晶光制御素子102の動作時には、各液晶セルの各帯状電極に表3に示す制御信号が入力される。
【0158】
なお、本実施形態において、第1液晶セル10の第1電極E11、第2液晶セル20の第1電極E21、第3液晶セル30の第1電極E31、及び第4液晶セル40の第1電極E41は、第1実施形態において図12に示す平板状の電極(ベタ電極)に置き換えることができる。
【0159】
第5実施形態:
第1実施形態に示す液晶光制御素子102において、第1液晶セル10の第1電極E11のみを図9に示すような平板状の電極(ベタ電極)としてもよい。図16は、第1実施形態に示す液晶光制御素子102の第1電極E11を平板状電極E11にした構成を示す。このような電極構成としても、第1実施形態に示す液晶光制御素子102と同様の動作をすることができる。なお、当該構成に限らず、第1液晶セルから第4液晶セルのいずれか1つまたは複数の第1基板側の電極を上記平板状電極とする構成も採用可能である。
【0160】
第6実施形態:
本実施形態は、第1実施形態に示す液晶光制御素子及び第2実施形態に示す液晶光制御素子の配向形状を示す。
【0161】
図17Aは、第1実施形態に示す液晶光制御素子によって得られる配向形状を示す。図17Aに示すように、第1実施形態に示す液晶光制御素子及びその駆動条件によれば、正方形の配向形状を得ることができる。
【0162】
図17Bは、参考例1を示す。参考例1は、液晶セルの電極配置が第1実施形態に示す液晶光制御素子と同じであるが、駆動条件が異なっており、各液晶セルの第1電極の側に電圧を印加し、第2電極の側には横電界を発生させない条件で駆動された結果を示す。図17Bに示すように、参考例1の場合でも正方形に近い配向形状が得られているものの、図17Aに示す結果と比較すると、輪郭が歪んでいることがわかる。
【0163】
図18Aは、第2実施形態に示す液晶光制御素子によって得られる配向形状を示す。図18Aに示すように、第1実施形態に示す液晶光制御素子及びその駆動条件によれば、十字形状の配向形状を得ることができる。
【0164】
図18Bは、参考例2を示す。参考例2は、液晶セルの電極配置が第2実施形態に示す液晶光制御素子と駆動条件が逆であり、第1液晶セル10の第1電極E11、第2液晶セル20の第2電極E22、第3液晶セル30の第1電極E31、第4液晶セル40の第2電極E42で横電界を発生させた場合を示す。図18Bに示すように、参考例1の場合でも十字形状に近い配向形状が得られているが、図18Aの結果と比較すると、第2実施形態に示すものの方が、十字形状がシャープであることがわかる。
【0165】
図17A及び図17B図18A及び図18Bの結果から明らかなように、一つの液晶セルで片側の電極(第1基板側又は第2基板側の電極)だけで横電界を発生せる場合には、第1実施形態及び第2実施形態に示すように、光源部の側の液晶セルでは、光入射側とは反対側の電極(第2基板の第2電極)で拡散させるようにした方が、シャープな配向形状が得られることがわかる。
【0166】
すなわち、上記の本実施形態で示すように、少なくとも第1液晶セル10に入射する光を旋光する前に拡散させないようにすることで、拡散しながらの旋光を防ぐことができ、旋光時の光のロスを低減し、配光パターンの形状の乱れを抑制することができる。
【符号の説明】
【0167】
10:第1液晶セル、20:第2液晶セル、30:第3液晶セル、40:第4液晶セル、100:液晶光制御装置、102:液晶光制御素子、104:回路基板、106:光源部、S11、S21、S31、S41:第1基板、S12、S22、S32、S42:第2基板、F1:第1フレキシブル配線基板、F2:第2フレキシブル配線基板、F3:第3フレキシブル配線基板、F4:第4フレキシブル配線基板、TA1:第1透明接着層、TA2:第2透明接着層、TA3:第3透明接着層、LC1:第1液晶層、LC2:第2液晶層、LC3:第3液晶層、LC4:第4液晶層、E11、E21、E31、E41:第1電極、E11A、E21A、E31A、E41A:第1帯状電極、E11B、E21B、E31B、E41B:第2帯状電極、E12、E22、E32、E42:第2電極、E12A、E22A、E32A、E42A:第3帯状電極、E12B、E22B、E32B、E42B:第4帯状電極、PL11:第1給電線、PL12:第2給電線、PL13:第3給電線、PL14:第4給電線、PL15:第5給電線、PL16:第6給電線、T11:第1接続端子、T12:第2接続端子、T13:第3接続端子、T14:第4接続端子、PT11:第1給電端子、PT12:第2給電端子、PT13:第3給電端子、PT14:第4給電端子、AL11:第1配向膜、AL12:第2配向膜、SE:シール材、CP11:第1導電性部材
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B