(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】音響出力装置
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
H04R17/00
(21)【出願番号】P 2023511970
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 CN2022081409
(87)【国際公開番号】W WO2023173355
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521080118
【氏名又は名称】シェンツェン・ショックス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】朱 光▲遠▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 磊
(72)【発明者】
【氏名】付 峻江
(72)【発明者】
【氏名】▲齊▼ 心
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲慶▼依
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/217399(WO,A1)
【文献】特開2007-300426(JP,A)
【文献】特開2000-175298(JP,A)
【文献】特開2003-219499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動アセンブリと、質量素子と、を含み、
前記振動アセンブリは、電気信号を機械的振動に変換する圧電構造と、
前記圧電構造の第1の位置で前記圧電構造に接続され、前記機械的振動を受けて音声信号を生成する振動素子と、を含み、
前記質量素子は、前記圧電構造の第2の位置で前記圧電構造に接続され
ており、
50Hz~5000Hzの範囲内で、前記圧電構造の第1の位置での振動応答は、共振ピークと共振ディップを有し、前記質量素子は、前記共振ピークと前記共振ディップの振幅差を小さくし、
前記圧電構造は、片持ち梁構造を有し、
前記片持ち梁構造は、固定端を含み、
前記第1の位置と前記固定端は、前記片持ち梁構造の長さ方向の異なる位置に設置されている、ことを特徴とする音響出力装置。
【請求項2】
前記第1の位置と前記第2の位置は、前記
片持ち梁構造の長さ方向の異なる位置に設置され、前記
片持ち梁構造の第1の位置での振動加速度レベルと、前記固定端での振動加速度レベルとの間の差は、20dBより大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項3】
前記第2の位置と前記
片持ち梁構造の
前記固定端との間の距離と、前記
片持ち梁構造の長さとの比は、1/3より大きい、ことを特徴とする請求項
2に記載の音響出力装置。
【請求項4】
前記質量素子と前記圧電構造との間の弾性係数と、前記質量素子の質量との比は、(100π)
2~(10000π)
2の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項5】
前記質量素子の質量は、0.1~6gの範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項6】
前記質量素子と前記圧電構造との間の弾性係数は、9N/m~6×10
6N/mの範囲内にある、ことを特徴とする請求項
5に記載の音響出力装置。
【請求項7】
前記質量素子は、さらに前記音響出力装置のケースに接続され、前記質量素子と前記ケースとの間の弾性係数と、前記質量素子と前記圧電構造との間の弾性係数との比は、10より小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項8】
前記質量素子は、さらに前記音響出力装置のケースに接続され、前記質量素子と前記圧電構造との間の弾性係数は、前記質量素子と前記ケースとの間の弾性係数より小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項9】
前記振動素子の質量は、0.1~0.9gであり、前記質量素子の質量と前記振動アセンブリの質量との比は、5より小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項10】
前記振動素子の質量は、0.9~1.8gであり、前記質量素子の質量と前記振動アセンブリの質量との比は、2より小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項11】
前記振動素子の質量は、1.8~5gであり、前記質量素子の質量と前記振動アセンブリの質量との比は、1より小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項12】
前記質量素子の少なくとも一部は、弾性構造であり、前記質量素子は、前記弾性構造により前記圧電構造に弾性的に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項13】
前記弾性構造は、空隙構造を含む、ことを特徴とする請求項
12に記載の音響出力装置。
【請求項14】
前記空隙構造は、減衰材料を含む、ことを特徴とする請求項
13に記載の音響出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、音響の分野に関し、特に音響出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電セラミックス駆動型の音響出力装置は、圧電セラミックス材料の逆圧電効果により振動して外部に音波を放出する。従来の動電型音響出力装置と比較して、圧電セラミックス駆動型の音響出力装置は、電気機械変換効率が高く、エネルギー消費が低く、体積が小さく、集積度が高いなどの利点を有する。しかしながら、従来の電磁型音響出力装置と比較して、圧電セラミックス駆動型の音響出力装置は、低周波出力が不十分であり、可聴帯域内の振動モードが多いなどの問題が存在するため、音質が低い。圧電セラミックス駆動型の音響出力装置において、低周波出力能力を向上させ、低周波共振周波数を低減するために、梁構造を用いることができる。しかしながら、梁構造は、可聴帯域内に、より多くの高次モードを導入する可能性があり、特に中間周波数帯域で広帯域共振ディップが発生する可能性があるため、中間周波数出力を弱める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、可聴帯域内の高次モードを抑制し、音響出力装置の中低周波数帯域の音質を向上させることができる音響出力装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書の実施例に係る音響出力装置は、振動アセンブリと、質量素子と、を含んでもよい。前記振動アセンブリは、電気信号を機械的振動に変換することができる圧電構造と、前記圧電構造の第1の位置で前記圧電構造に接続され、前記機械的振動を受けて音声信号を生成することができる振動素子と、を含む。前記質量素子は、前記圧電構造の第2の位置で前記圧電構造に接続されてもよい。
【0005】
いくつかの実施例では、50Hz~5000Hzの範囲内で、前記圧電構造の第1の位置での振動応答は、共振ピークと共振ディップを有し、前記質量素子は、前記共振ピークと前記共振ディップの振幅差を小さくすることができる。
【0006】
いくつかの実施例では、前記圧電構造は、梁構造を有し、前記第1の位置と前記第2の位置は、前記梁構造の長さ方向の異なる位置に設置されてもよい。
【0007】
いくつかの実施例では、前記梁構造は、固定端を含み、前記梁構造の第1の位置での振動加速度レベルと、前記固定端での振動加速度レベルとの間の差は、20dBより大きくてもよい。
【0008】
いくつかの実施例では、前記第2の位置と前記梁構造の固定端との間の距離と、前記梁構造の長さとの比は、1/3より大きくてもよい。
【0009】
いくつかの実施例では、前記質量素子と前記圧電構造との間の弾性係数と、前記質量素子の質量との比は、(100π)2~(10000π)2の範囲内にあってもよい。
【0010】
いくつかの実施例では、前記質量素子の質量は、前記第2の位置に集中的に分布してもよい。
【0011】
いくつかの実施例では、前記質量素子の質量は、前記第2の位置の周囲に均一に分布する。
【0012】
いくつかの実施例では、前記質量素子の質量は、0.1~6gの範囲内にある。
【0013】
いくつかの実施例では、前記質量素子と前記圧電構造との間の弾性係数は、9N/m~6×106N/mの範囲内にある。
【0014】
いくつかの実施例では、前記質量素子は、さらに前記音響出力装置のケースに接続されてもよい。
【0015】
いくつかの実施例では、前記質量素子と前記ケースとの間の弾性係数と、前記質量素子と前記圧電構造との間の弾性係数との比は、10より小さくもよい。
【0016】
いくつかの実施例では、前記質量素子と前記圧電構造との間の弾性係数は、前記質量素子と前記ケースとの間の弾性係数より小さい。
【0017】
いくつかの実施例では、前記振動素子の質量は、0.1~0.9gであり、前記質量素子の質量と前記振動アセンブリの質量との比は、5より小さい。
【0018】
いくつかの実施例では、前記振動素子の質量は、0.9~1.8gであり、前記質量素子の質量と前記振動アセンブリの質量との比は、2より小さい。
【0019】
いくつかの実施例では、前記振動素子の質量は、1.8~5gであり、前記質量素子の質量と前記振動アセンブリの質量との比は、1より小さい。
【0020】
いくつかの実施例では、前記質量素子は、弾性部材により前記圧電構造に弾性的に接続されてもよい。
【0021】
いくつかの実施例では、前記質量素子の少なくとも一部は、弾性構造であり、前記質量素子は、前記弾性構造により前記圧電構造に弾性的に接続される。
【0022】
いくつかの実施例では、前記弾性構造は、空隙構造を含む。
【0023】
いくつかの実施例では、前記空隙構造は、減衰材料を含む。
【0024】
いくつかの実施例では、前記音響出力装置は、圧電セラミックス駆動型の音響出力装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な音響出力装置のブロック図である。
【
図2】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な振動アセンブリの概略構成図である。
【
図3A】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な梁構造が第2の位置に位置することを示す等価概略構成図である。
【
図3B】本明細書のいくつかの実施例に係る質量素子が梁構造の第2の位置に接続されることを示す等価概略構成図である。
【
図4A】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な梁構造の振動概略図である。
【
図4B】本明細書のいくつかの実施例に係る、質量素子が接続された後に梁構造の振動概略図である。
【
図4C】本明細書のいくつかの実施例に係る梁構造に質量素子が追加される場合及び追加されない場合に第1の位置での振動応答曲線図である。
【
図5A】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な振動アセンブリの振動概略図である。
【
図5B】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な振動アセンブリの振動概略図である。
【
図5C】本明細書のいくつかの実施例に係る、質量素子が接続された後に振動アセンブリの概略図である。
【
図5D】本明細書のいくつかの実施例に係る振動アセンブリに質量素子が追加される場合及び追加されない場合に第1の位置での振動応答曲線図である。
【
図6】本明細書のいくつかの実施例に係る弾性部と質量部が融合することを示す概略構成図である。
【
図7】本明細書のいくつかの実施例に係る、梁構造には、弾性と質量が融合した質量素子が接続される場合に第1の位置での振動応答曲線図である。
【
図8】本明細書のいくつかの実施例に係る、弾性が均一に分布する質量素子が梁構造に接続されることを示す概略構成図である。
【
図9】本明細書のいくつかの実施例に係る、弾性が不均一に分布する質量素子の概略構成図である。
【
図10】本明細書のいくつかの実施例に係る、質量及び/又は減衰が均一に分布する質量素子の概略構成図である。
【
図11】本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な弾性部材が質量部に接続されることを示す概略構成図である。
【
図12】本明細書のいくつかの実施例に係る、弾性と質量が分離した質量素子が接続された梁構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
【
図13】本明細書のいくつかの実施例に係る質量素子の質量が第2の位置に集中的に分布する場合に圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
【
図14】本明細書のいくつかの実施例に係る質量素子が集中的に分布する場合、及び均一に分布する場合に圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
【
図15】本明細書のいくつかの実施例に係る圧電構造に複数の質量素子が接続されることを示す概略構成図である。
【
図16】本明細書のいくつかの実施例に係る、複数の質量素子が接続された後に圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
【
図17】本明細書のいくつかの実施例に係る質量素子が圧電構造及びケースに弾性的に接続されることを示す概略構成図である。
【
図18】本明細書のいくつかの実施例に係る、第1の弾性係数と第2の弾性係数が異なる場合に圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
【
図19】本明細書のいくつかの実施例に係る振動素子の質量が0.5gである場合に、異なるmr値に対応する圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
【
図20】本明細書のいくつかの実施例に係る振動素子の質量が1gである場合に、異なるmr値に対応する圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
【
図21】本明細書のいくつかの実施例に係る振動素子の質量が2gである場合に、異なるmr値に対応する圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書の実施例の技術手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は、単に本明細書のいくつかの例又は実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて本明細書を他の類似するシナリオに適用することができる。言語環境から明らかではないか又は明記しない限り、図面において同じ番号は、同じ構造又は操作を示す。
【0027】
本明細書で使用される「システム」、「装置」、「ユニット」及び/又は「モジュール」が、レベルの異なる様々なアセンブリ、素子、部材、部分又は組立体を区別する方法であることを理解されたい。しかしながら、他の用語が同じ目的を達成することができれば、上記用語の代わりに他の表現を用いることができる。
【0028】
本明細書及び特許請求の範囲に示すように、文脈が明確に別段の指示をしない限り、「1つ」、「1個」、「1種」及び/又は「該」などの用語は、特に単数形を意味するものではなく、複数形を含んでもよい。一般的には、用語「含む」及び「含有」は、明確に特定されたステップ及び要素を含むことを提示するものに過ぎず、これらのステップ及び要素は、排他的な羅列ではなく、方法又は機器は、また他のステップ又は要素を含む可能性がある。
【0029】
本明細書では、フローチャートを使用して、本明細書の実施例に係るシステムが実行する操作を説明する。先行又は後続の操作が必ずしも順序に従って正確に実行されるとは限らないことを理解されたい。その代わりに、各ステップを、逆の順序で、又は同時に処理してもよい。また、他の操作をこれらのプロセスに追加してもよく、これらのプロセスから1つ以上の操作を除去してもよい。
【0030】
本明細書の実施例は、音響出力装置を提供する。上記音響出力装置は、振動アセンブリと質量素子とを含んでもよい。いくつかの実施例では、上記振動アセンブリは、電気信号を機械的振動に変換する圧電構造(例えば、梁構造)と、振動素子(例えば、振動膜、振動板など)とを含んでもよい。上記振動素子は、圧電構造の第1の位置で圧電構造に機械的に接続され、上記機械的振動を受けて音声信号を生成することができる。いくつかの実施例では、質量素子は、圧電構造の第2の位置で圧電構造に接続されてもよい(例えば、弾性的に接続される)。上記第1の位置と上記第2の位置は、上記圧電構造(例えば、梁構造)の長さ方向の異なる位置に設置されてもよい。圧電構造に弾性的に接続される質量素子は、目標周波数範囲内(例えば、50Hz~5000Hz)で圧電構造の第1の位置での振動応答の共振ピークと共振ディップとの間の振幅差を小さくして、音声信号の音質を向上させることができる。同時に、上記弾性的な接続により、圧電構造に対して減衰効果を与えて、音響出力装置の目標周波数範囲内の振動応答曲線を相対的に滑らかにすることができるため、音響出力装置により生成された音声信号の音質をさらに向上させる。
【0031】
図1は、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な音響出力装置のブロック図である。
図1に示すように、音響出力装置100は、振動アセンブリ110と質量素子120とを含んでもよい。
【0032】
いくつかの実施例では、音響出力装置100は、可動コイル駆動型の音響出力装置、静電駆動型の音響出力装置、圧電駆動型の音響出力装置、バランスドアーマチュア型の音響出力装置、ガス駆動型の音響出力装置、電磁駆動型の音響出力装置など又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、音響出力装置100は、圧電セラミックス駆動型の音響出力装置を含んでもよい。いくつかの実施例では、音響出力装置100は、メガネ、スマートブレスレット、イヤホン、補聴器、スマートヘルメット、スマートウォッチ、スマート衣類、スマートバックパック、スマートアクセサリなど又はそれらの任意の組み合わせとして実装され得る。例えば、音響出力装置100は、機能型の近視用メガネ、老眼鏡、サイクリング用グラス又はサングラスなどであってもよく、(イヤホン機能を有するオーディオメガネなどの)スマートメガネであってもよい。また例えば、音響出力装置100は、ヘルメット、拡張現実(Augmented Reality、AR)装置又は仮想現実(Virtual Reality、VR)装置などのヘッドマウント装置であってもよい。いくつかの実施例では、拡張現実装置又は仮想現実装置は、仮想現実ヘルメット、仮想現実メガネ、拡張現実ヘルメット、拡張現実メガネなど又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよく、例えば、仮想現実装置及び/又は拡張現実装置は、Google Glass、Oculus Rift、Hololens、Gear VRなどを含んでもよい。
【0033】
振動アセンブリ110は、音声情報を含む信号を音声信号に変換することができる。いくつかの実施例では、音声情報を含む信号は、電気信号、光信号など含んでもよい。いくつかの実施例では、音声信号は、骨伝導音波又は空気伝導音波を含んでもよく、上記音波は、骨伝導又は空気伝導の方式で人の耳に伝達することができる。例えば、振動アセンブリ110は、電気信号を受信して、機械的振動を発生させることで、音波を出力することができる。いくつかの実施例では、振動アセンブリ110は、音声情報を含む信号を機械的振動に変換する変換構造を含んでもよい。例示的な変換構造は、可動コイル構造、静電構造、圧電構造、バランスドアーマチュア構造、空気圧構造、電磁構造など又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、振動アセンブリ110は、機械的振動を音声信号に変換する振動素子(例えば、振動膜、振動板)を含んでもよい。単なる例として、振動アセンブリ110は、音声情報を含む信号を機械的振動に変換する圧電構造と、圧電構造の第1の位置で上記圧電構造に接続され、上記機械的振動を受けて音声信号を生成する振動素子とを含んでもよい。振動アセンブリに関するより多くの説明は、本明細書の他の箇所、例えば、
図2及びその関連説明を参照することができる。
【0034】
質量素子120は、振動アセンブリ110による機械的振動に質量を与えることができ、該質量は、振動アセンブリ110により発生する機械的振動の共振ピークと共振ディップとの間の振幅差を変更する。圧電構造を例として説明すると、質量素子120は、圧電構造の第2の位置で上記圧電構造に接続されてもよい。いくつかの実施例では、圧電構造は、梁構造(例えば、片持ち梁)を有してもよい。第1の位置と第2の位置は、梁構造の長さ方向の異なる位置に設置されてもよい。いくつかの実施例では、梁構造は、固定端を含んでもよい。ここでの固定端は、梁構造上の振動加速度又は加速度レベルが振動加速度閾値より小さい位置であってもよい。単なる例として、上記固定端の振動加速度レベルは、5dB、3dB、1dB、0.8dB、0.6dB、0.4dB、0.2dB、又は0.05dBなどより小さくてもよい。いくつかの実施例では、上記梁構造の第1の位置での振動加速度レベルと、固定端での振動加速度レベルとの間の差は、5dB、10dB、20dB、30dB、40dB、又は50dBなどより大きくてもよい。いくつかの実施例では、目標周波数範囲内で、圧電構造の第1の位置での振動応答は、共振ピークと共振ディップを有する。質量素子120は、上記共振ピークと共振ディップとの間の振幅差を小さくすることができる。単なる例として、目標周波数範囲は、50Hz~5000Hz、100Hz~5000Hz、200Hz~4000Hz、500Hz~4000Hz、500Hz~3000Hz、500Hz~2000Hz、又は1000Hz~2000Hzなどを含んでもよい。
【0035】
いくつかの実施例では、目標周波数範囲内で、質量素子120が上記共振ピークと共振ディップとの間の振幅差を小さくすることができるように、第2の位置を設置してもよい。単なる例として、第2の位置と固定端との間の距離と、梁構造の長さとの比は、1/3、2/5、2/3などより大きくてもよい。いくつかの実施例では、目標周波数範囲内で、質量素子120が上記共振ピークと共振ディップとの間の振幅差を小さくすることができるように、質量素子120の質量を設置してもよい。いくつかの実施例では、質量素子120の質量は、第2の位置に集中的に分布してもよいし、第2の位置の周囲に均一に分布してもよい。いくつかの実施例では、質量素子120の質量は、目標質量範囲内に設定されてもよい。単なる例として、上記目標質量範囲は、0.01~50g、0.0.2~40g、0.03~30g、0.04~20g、0.05~10g、0.07~8g、0.09~6g、0.1~6g、0.2~6g、0.5~6g、又は1~5gなどを含んでもよい。いくつかの実施例では、質量素子120の質量は、振動アセンブリ110の質量に関連してもよい。振動アセンブリ110の質量は、圧電構造と振動素子の総質量であってもよい。単なる例として、振動素子の質量が一定である場合、質量素子120の質量と振動アセンブリ110の質量との比は、予め設定された比率範囲内にあってもよい。例えば、振動素子の質量は、0.1~0.9gであってもよく、質量素子120の質量と振動アセンブリ110の質量との比は、5より小さくてもよい。また例えば、振動素子の質量は、0.9~1.8gであってもよく、質量素子120の質量と振動アセンブリ110の質量との比は、2より小さくてもよい。さらに例えば、振動素子の質量は、1.8~5gであってもよく、質量素子120の質量と振動アセンブリ110の質量との比は、1より小さくでもよい。
【0036】
いくつかの実施例では、質量素子120と圧電構造との間の接続は、弾性的な接続を含んでもよい。例えば、音響出力装置100又は質量素子120は、弾性部材(図示せず)を含んでもよく、質量素子120は、上記弾性部材により圧電構造の第2の位置で上記圧電構造に弾性的に接続されてもよい。また例えば、質量素子120の少なくとも一部は、弾性構造であってもよく、質量素子120は、該弾性構造により圧電構造の第2の位置で上記圧電構造に弾性的に接続されてもよい。いくつかの実施例では、目標周波数範囲内で、質量素子120が上記共振ピークと共振ディップとの間の振幅差を小さくすることができるように、質量素子120と圧電構造との間の第1の弾性係数を設定してもよい。単なる例として、質量素子120と圧電構造との間の第1の弾性係数は、9N/m~6×106N/m、50N/m~6×106N/m、100N/m~6×106N/m、1000N/m~6×106N/m、104N/m~6×106N/m、5×104N/m~6×106N/m、5×105N/m~6×106N/m、9×105N/m~6×106N/m、又は106N/m~6×106N/mなどの範囲内に設定されてもよい。
【0037】
いくつかの更なる実施例では、質量素子120は、音響出力装置100のケースに接続されてもよい。上記接続は、弾性的な接続を含んでもよい。例えば、音響出力装置100又は質量素子120は、弾性部材(図示せず)を含んでもよく、質量素子120は、上記弾性部材により音響出力装置100のケースに弾性的に接続されてもよい。また例えば、質量素子120の少なくとも一部は、弾性構造であってもよく、質量素子120は、該弾性構造により音響出力装置100のケースに弾性的に接続されてもよい。質量素子120とケースとの間の弾性的な接続は、第2の弾性係数があってもよい。いくつかの実施例では、第1の弾性係数は、第2の弾性係数より小さくてもよい。いくつかの実施例では、第2の弾性係数と第1の弾性係数との間の比は、予め設定された閾値より小さくてもよい。単なる例として、第2の弾性係数と第1の弾性係数との間の比は、10より小さくてもよい。
【0038】
いくつかの実施例では、質量素子120は、任意の形状であってもよく、例えば、円柱体、直方体、円錐、円錐台、球体などの規則的な構造体又は不規則な構造体である。いくつかの実施例では、質量素子120の材質は、プラスチック、木質、金属などの一定の剛性を有する任意の材質を含んでもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施例では、質量素子120の材質は、音響出力装置100のオーディオ帯域の拡大に役立つ負剛性材料、立方剛性材料などのメタマテリアルをさらに含んでもよい。いくつかの実施例では、質量素子120は、さらに振動アセンブリ110の機械的振動に減衰を与えることができ、該減衰は、低周波数帯域の応答曲線を滑らかにする。例えば、質量素子120自体は、振動アセンブリ110に減衰を与えることができる。また例えば、質量素子120は、振動アセンブリ110に減衰を与えることができる減衰部を含んでもよい。いくつかの実施例では、質量素子120は、振動アセンブリ110に弾性的に接続されることで、振動アセンブリ110の機械的振動に減衰を与える。質量素子120に関するより多くの説明は、本明細書の他の箇所、例えば、
図3及びその関連説明を参照することができる。
【0039】
図1に記載の音響出力装置100の説明は、説明の目的で提供されるものに過ぎず、本明細書の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。当業者であれば、本明細書の示唆で様々な変更及び修正を行うことができる。これらの変形及び修正は、いずれも本明細書の保護範囲内にある。いくつかの実施例では、図に示したアセンブリは、実際の状況に応じて調整してもよい。例えば、音響出力装置100は、複数の質量素子を含んでもよい。また例えば、音響出力装置100は、質量素子と振動アセンブリとの間に弾性を与える弾性素子含んでもよい。
【0040】
図2は、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な振動アセンブリの概略構成図である。
図2に示すように、振動アセンブリは、圧電構造211と振動素子212を含んでもよい。振動素子212は、圧電構造211に接続されてもよい。上記接続は、ボルト接続、リベット接合、締り嵌め、係止、接着、射出成形、溶接、磁気吸着など又はそれらの任意の組み合わせの接続方式を含んでもよい。
【0041】
圧電構造211は、電気信号を機械的振動に変換することができる。いくつかの実施例では、圧電構造は、圧電材料を含んでもよい。例示的な圧電材料は、圧電結晶、圧電セラミックス、圧電ポリマーなどを含んでもよい。
図2に示すように、圧電構造211は、梁構造(例えば、片持ち梁)を有してもよく、上記梁構造は、圧電材料層2111と基板2112を含んでもよい。金属基板2112は、梁構造の長さ方向に沿って延伸する。梁構造の長さ方向(例えば、
図2に示した長さ方向L)に垂直な方向に、金属基板2112は、圧電材料層2111と重なるように設置される。いくつかの実施例では、梁構造は、n層(nは、1より大きい正の整数である)の圧電材料層2111とn-1層の金属基板2112を含んでもよく、梁構造の長さ方向に垂直な方向に、金属基板2112は、圧電材料層2111と重なるように設置されてもよい。
【0042】
梁構造は、固定端2113と自由端2114を含んでもよい。ここでの固定端は、梁構造上の振動加速度又は加速度レベルが振動加速度閾値より小さい位置であってもよい。単なる例として、上記固定端2113の振動加速度レベルは、5dB、3dB、1dB、0.8dB、0.6dB、0.4dB、0.2dB、又は0.05dBなどより小さくてもよい。いくつかの実施例では、固定端2113は、音響出力装置上の固定位置又は構造に接続されてもよい。ここでの固定位置又は構造は、音響出力装置上の振動加速度又は加速度レベルが振動加速度閾値より小さい位置又は構造であってもよい。例えば、音響出力装置は、ケース(
図2において図示せず)を含んでもよく、梁構造は、ケース内に設置されてもよく、その固定端2113は、ケースに固定的に接続されてもよい。また例えば、音響出力装置は、カウンタウェイトを含んでもよく、梁構造の固定端2113は、カウンタウェイトに固定的に接続されてもよい。自由端2114は、梁構造上の自由に振動可能な一端であってもよい。
【0043】
振動素子212は、機械的振動を受け、かつ音声信号に変換して出力する。いくつかの実施例では、振動素子212は、圧電構造211(又は梁構造)の第1の位置で圧電構造211(又は梁構造)に接続されて圧電構造211により発生する機械的振動を受けてもよい。いくつかの実施例では、第1の位置は、梁構造上の機械的振動の振幅が大きい位置に設置されてもよい。梁構造の第1の位置での振動加速度レベルと、固定端2113での振動加速度レベルとの間の差は、差の閾値より大きくてもよい。例えば、第1の位置での振動加速度レベルと、固定端2113での振動加速度レベルとの間の差は、5dB、10dB、20dB、30dB、40dB、又は50dBなどより大きくてもよい。単なる例として、振動素子212と接続された第1の位置は、自由端2114であってもよい。いくつかの実施例では、音響出力装置が空気伝導音響出力装置である場合、振動素子212は、振動膜であってもよい。上記振動膜は、圧電構造211により発生する機械的振動を受け、かつさらに空気を振動させて音声信号を生成することができる。いくつかの実施例では、音響出力装置が骨伝導音響出力装置である場合、振動素子212は、振動板であってもよく、振動板は、人体と接触して振動を伝達することで、音声信号を生成することができる。
【0044】
質量素子(
図2において図示せず)は、圧電構造211の第2の位置で圧電構造211に接続されてもよい。いくつかの実施例では、第1の位置と第2の位置は、梁構造上の長さ方向の異なる位置に設置されてもよい。いくつかの実施例では、第2の位置は、梁構造の固定端2113と第1の位置との間に位置してもよい。いくつかの実施例では、第2の位置と梁構造の固定端2113との間の距離と、上記梁構造の長さとの比は、1/3、2/5よ、又は2/3などより大きくてもよい。いくつかの実施例では、圧電構造211は、電気信号を機械的振動に変換する場合に共振する可能性がある。よって、圧電構造211の第1の位置での振動応答は、共振ピークと共振ディップを有する。例えば、目標周波数範囲内で、圧電構造211の第1の位置での振動応答は、共振ピークと共振ディップを有する。例示的な目標周波数範囲は、50Hz~5000Hz、100Hz~5000Hz、200Hz~4000Hz、500Hz~4000Hz、500Hz~3000Hz、500Hz~2000Hz、又は1000Hz~2000Hzなどを含んでもよい。質量素子は、第1の位置での振動素子の振動波形を比較的緩やかにするように、第1の位置での共振ピークと共振ディップが出現する位置及び振幅差を小さくしてもよい。いくつかの実施例では、第2の位置は、梁構造の特定の周波数での機械的振動の波腹(すなわち、振幅の最も大きい位置)に位置してもよく、このように、波腹領域(振幅の最も大きい位置から左向き及び/又は右向きの一定の範囲内の振動波領域)の該特定の周波数での機械的振動が質量素子により抑制されて振動エネルギーが第1の位置に部分的に転移することができ、それにより第1の位置の該特定の周波数での機械的振動が強化される。上記特定の周波数は、圧電構造の第1の位置に共振ディップが出現する場合に対応する周波数であってもよい。圧電構造の第1の位置の共振ディップでの振動が強化され、かつ質量素子からの減衰により共振ピークでの振動が低減されるため、圧電構造の第1の位置での振動モードをより緩やかにすることができ、それにより音質を効果的に向上させることができる。
【0045】
以下、
図3A及び
図3Bを参照して質量素子が圧電構造の振動形態を変更する原理を例示的に説明する。
図3Aは、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な梁構造が第2の位置に位置することを示す等価概略構成図である。
図3Bは、本明細書のいくつかの実施例に係る質量素子が梁構造の第2の位置に接続されることを示す等価概略構成図である。
【0046】
図3Aに示すように、機械的振動状態で、梁構造の第2の位置での振動は、一自由度システムの強制振動と等価にすることができ、その振動方程は、下式のように示すことができる(システム内の減衰による影響を考慮しない)。
【0047】
【数1】
ここで、m
1は、梁構造の第2の位置(すなわち、波腹領域)での質量を示し、k
1は、第2の位置での等価弾性係数を示し、ξは、第2の位置での振動変位を示し、Fは、起振力の大きさを示し、ωは、起振力の角周波数を示し、Fcosωtは、起振力の第2の位置の振動方向に沿った分力を示す。式(1)の特解は、以下のとおりである。
【0048】
【数2】
ここで、
【数3】
は、第2の位置での固有角周波数を示す。減衰を考慮しない場合、起振力の角周波数ωが第2の位置の固有角周波数ω
0と等しい場合、第2の位置に共振が発生し、振幅(変位ξ)が無限大である。実際の減衰の効果を考慮すると、振幅は、ここでピークが出現し、すなわち、第2の位置(又は波腹領域)は、梁構造の長さ方向に垂直な方向での変位の最も大きい箇所である。
【0049】
いくつかの実施例では、質量素子は、圧電構造に弾性的に接続されてもよい。例えば、質量素子は、弾性部材(例えば、質量素子に対して独立して設置された弾性部材)により圧電構造に弾性的に接続されてもよい。また例えば、質量素子は、それ自体が有する弾性構造(例えば、質量素子と一体に融合する弾性構造)により圧電構造に弾性的に接続されてもよい。いくつかの実施例では、質量素子は、梁構造の第2の位置に弾性的に接続されてもよい。質量素子が設置された後に、梁構造の第2の位置での振動を
図3Bに示した二自由度システムの強制振動と等価にすることができる。
図3Bに示した質量m
2を有する質量部と弾性係数k
2を有する弾性部は、梁構造に弾性的に接続された質量素子を示し、その振動方程は、下式のように示すことができる(システム内の減衰による影響を考慮しない)。
【0050】
【数4】
ここで、ξ
2は、質量素子の振動変位を示し、残りの符号の意味は、式(1)及びその関連説明を参照することができる(ξ
1は、ξと同じ)。式(3)の特解は、以下のとおりである。
【0051】
【数5】
ここで、
【数6】
は、質量素子の固有角周波数を示し、α=m
2/m
1は、質量素子と第2の位置での質量との比である。これにより分かるように、質量素子の固有角周波数ω
rと起振力の角周波数ωが等しいように調整することで、第2の位置での振動変位ξ
1をゼロにすることができ、この場合、質量素子の振動方程は、以下のとおりである。
【0052】
【数7】
式(5)は、以下のように変形することができる。
【0053】
【数8】
式(6)により分かるように、質量素子の弾性係数k
2と梁構造の第2の位置で受けられた起振力Fcosωtとの合力がゼロであるため、減衰を考慮しない場合、梁構造の第2の位置に質量素子を追加することで、波腹の振動を質量素子に転移させることができ、梁構造の第2の位置での大幅な振動を除去することができ、実際の減衰の効果を考慮すると、梁構造の第2の位置に質量素子を追加することで梁構造の第2の位置での振動モードを明らかに抑制するか又は破壊することができる。この場合、第1の位置での振幅を増加させ、振動モードをより緩やかにするように、梁構造により発生する機械的振動を第1の位置に伝達することができ、それにより音響出力装置が出力した音質を効果的に向上させる。
【0054】
いくつかの実施例では、質量素子の固有角周波数ω
rは、
【数9】
と示すことができる。これにより、質量素子が目標周波数で第1の位置での共振ピークと上記共振ディップとの間の振幅差を小さくすることができるように、質量素子と圧電構造との間の弾性係数及び/又は質量素子の質量を設定して、質量素子の固有角周波数ω
rを設定してもよい。例えば、質量素子の固有角周波数ω
rと予め設定された目標周波数を同一又は類似させるように、弾性係数及び/又は質量素子の質量を設定してもよく、それにより目標周波数で第1の位置での共振ピークと上記共振ディップとの間の振幅差を小さくする。単なる例として、目標周波数範囲は、50Hz~5000Hzの範囲内にあってもよい。よって、質量素子と圧電構造との間の弾性係数と、質量素子の質量との比が(100π)
2~(10000π)
2の範囲内にあるように、弾性係数及び/又は質量素子の質量を設定してもよい。いくつかの実施例では、質量素子の質量は、目標質量範囲内に設定されてもよい。単なる例として、上記目標質量範囲は、0.01~50g、0.0.2~40g、0.03~30g、0.04~20g、0.05~10g、0.07~8g、0.09~6g、0.1~6g、0.2~6g、0.5~6g、又は1~5gなどを含んでもよい。よって、目標周波数範囲内で、質量素子が上記共振ピークと共振ディップとの間の振幅差を小さくすることができるように、質量素子と圧電構造との間の弾性係数を9N/m~6×10
6N/mの範囲内で設定してもよい。
【0055】
上記振動アセンブリと質量素子に関する説明は、例示及び説明のためのものにすぎず、本明細書の適用範囲を限定するものではないことを理解されたい。当業者であれば、本明細書の示唆に基づいて、振動アセンブリと質量素子に対して様々な修正及び変更を行うことができる。しかしながら、これらの修正及び変更は、依然として本明細書の範囲内にある。例えば、
図2に示した固定端2113は、梁構造の端部に位置する。なお、固定端2113は、また梁構造上の他の位置に設置されてもよい。また例えば、質量素子は、単独して設置された複数の質量ブロックを含んでもよい。
【0056】
以下、
図4A~
図4C及び
図5A~
図5Cを参照して質量素子の梁構造の振動状態に対する影響を説明する。
図4Aは、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な梁構造の振動概略図である。
図4Bは、本明細書のいくつかの実施例に係る、質量素子が接続された後に梁構造の振動概略図である。
図4Cは、本明細書のいくつかの実施例に係る梁構造に質量素子が追加される場合及び追加されない場合に第1の位置での振動応答曲線図である。
【0057】
図4Aに示した梁構造411aは、機械的振動の場合(例えば、機械的振動の角周波数又は周波数が、梁構造411aのこの振動モードでの角周波数又は周波数に等しい場合)に共振する。この場合、梁構造411aの中部の振幅が最も大きく、少ない機械的振動が自由端(すなわち、第1の位置)に伝達されるため、第1の位置の振幅が小さい。よって、梁構造411aの第1の位置での振動応答は、共振ディップが発生する。梁構造411aの第1の位置での振動応答曲線は、
図4Cにおける破線で示される。
図4Cに示すように、梁構造411aの第1の位置での振動応答曲線は、100Hz~1000Hzの範囲(すなわち、中低周波数帯域)内で明らかな共振ピーク430と共振ディップ440が出現するため、音響出力装置の中低周波数帯域での振動の出力が弱められ、それにより出力された音声の音質に影響を与える。
【0058】
第1の位置での振幅を大きくすることで、音響出力装置の該中間周波数帯域での振動の出力を向上させることができる。
図4Bに示すように、梁構造411aの機械的振動の波腹領域(すなわち、第2の位置)に質量素子420が弾性的に接続される。質量素子420は、梁構造が緩やかな振動応答曲線を出力することができるように、波腹領域の振動モードを抑制して第1の位置の振動モードを変更することができるため、音響出力装置の該中間周波数帯域での振動の出力を向上させる。質量素子420が接続された後の梁構造411aの第1の位置での振動応答曲線は、
図4Cにおける実線で示される。
図4Cに示すように、100Hz~1000Hzの範囲内で(例えば、500Hz左右)、梁構造411aの第1の位置での振動応答曲線は、共振ピーク450が発生する。質量素子がない状況と比較して、第1の位置での振動応答曲線の共振ピークと共振ディップとの間の振幅差が明らかに小さくなり、中低周波数帯域の応答曲線が相対的に緩やかであるため、音響出力装置の中低周波数帯域の音質を向上させる。いくつかの実施例では、質量素子と梁構造411aとの間の弾性的な接続は、一定の減衰の効果を達成することができるため、中低周波数帯域の共振ピークと共振ディップが滑らかな遷移を実現し、遷移転換が鋭くなりすぎず、音質の向上に役立つ。
【0059】
図5A及び
図5Bは、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な振動アセンブリの振動概略図である。
図5Cは、本明細書のいくつかの実施例に係る、質量素子が接続された後に振動アセンブリの概略図である。
図5Dは、本明細書のいくつかの実施例に係る振動アセンブリに質量素子が追加される場合及び追加されない場合に第1の位置での振動応答曲線図である。
【0060】
図5A及び
図5Bに示した振動アセンブリは、梁構造511a及び振動素子512aを含む。振動素子512aは、梁構造511aの自由端(すなわち、第1の位置)に接続される。
図5Aと
図5Bに示した振動アセンブリは、それぞれ梁構造の異なる周波数での振動モードに対応する。
図5Aと
図5Bに対応する振動モードで、梁構造上の第1の位置での振幅が小さく、他の位置での振幅が大きい。例えば、
図5Aに示すように、梁構造511aの位置Aでの振幅が最も大きく、少ない機械的振動が自由端(すなわち、第1の位置)に伝達されるため、第1の位置での振幅が小さい。梁構造511aの第1の位置での振動応答曲線は、
図5Dにおける破線で示される。
図5Dを参照して、500Hz~1000Hzの範囲内で、振動アセンブリの第1の位置での振動応答曲線に共振ディップ530が出現する。また例えば、
図5Bに示すように、梁構造511aの位置Bでの振幅が最も大きく、少ない機械的振動が自由端(すなわち、第1の位置)に伝達されるため、第1の位置での振幅が小さい。
図5Dを参照して、1000Hz~2000Hzの範囲内で、振動アセンブリの第1の位置での振動応答曲線に共振ディップ540が出現する。いくつかの実施例では、
図5Aに示した500Hz~1000Hzの範囲内の共振ディップ530は、二次ディップと称されてもよく、
図5Bに示した1000Hz~2000Hzの範囲内の共振ディップ540は、三次ディップと称されてもよい。
【0061】
二次ディップと三次ディップを浅くするために、
図5Cに示すように、梁構造511aの機械的振動の三次ディップの波腹領域(すなわち、位置Bの所在領域)に質量素子520が弾性的に接続される。質量素子520は、波腹領域の振動モードを抑制して、梁構造511aの第1の位置での振動モードを変更することができる。質量素子520が接続された後の振動アセンブリの第1の位置での振動応答曲線は、
図5Dにおける実線の曲線に示すとおりであり、
図5Dに示すように、500Hz~2000Hzの範囲(すなわち、中低周波数帯域)内の元の二次ディップと元の三次ディップが明らかに浅くなる。質量素子がない状況と比較して、共振ピークと共振ディップとの間の振幅差が明らかに小さくなり、中低周波数帯域の応答曲線が相対的に緩やかであるため、音響出力装置の中低周波数帯域の音質を向上させる。
【0062】
いくつかの実施例では、質量素子は、質量を有する質量部と、弾性を有する弾性部とを含んでもよい。質量素子は、その弾性部により圧電構造との弾性的な接続を実現することができる。いくつかの実施例では、質量素子は、圧電構造の振動減衰を増加する減衰部をさらに含んでもよく、減衰部は、振動応答曲線を滑らかに遷移させる作用を果たすことができる。いくつかの実施例では、質量部は、金属又は非金属材料などを含んでもよい。上記材料の密度は、予め設定された密度範囲内にあってもよい。上記予め設定された密度範囲は、0.01~100g/cm3、0.05~80g/cm3、0.1~60g/cm3、0.2~50g/cm3、0.3~40g/cm3、0.4~30g/cm3、又は0.5~20g/cm3などを含んでもよい。いくつかの実施例では、減衰部は、減衰材料、例えばゴムなどとして実現されてもよい。
【0063】
いくつかの実施例では、弾性部は、質量部と一体に融合してもよい。又は、弾性部は、質量素子の少なくとも一部であってもよい。例えば、質量素子の少なくとも一部は、弾性構造であってもよい。質量素子は、上記弾性構造により圧電構造に弾性的に接続されてもよい。例示的な弾性構造は、バネ構造を含んでもよい。いくつかの実施例では、弾性構造は、弾性材料で製造されてもよい。例示的な弾性材料は、ゴム、ラテックス、シリコーンゴム、スポンジなど又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、弾性構造は、同時に弾性部と質量部として機能してもよい。例えば、弾性構造は、質量及び/又は密度が高い金属ゴムを含んでもよい。また例えば、弾性構造に質量がより大きい材料を添加してもよく、例えば、金属粉末をスポンジに添加する。いくつかの実施例では、弾性構造は、減衰部を含んでもよい。例えば、減衰材料(例えば、ブチロニトリル)を用いて弾性構造を製造してもよい。また例えば、弾性構造に減衰材料を添加してもよく、例えば、減衰塗料を弾性構造の表面に塗布するか又は弾性構造の内部に浸透させる。
【0064】
図6は、本明細書のいくつかの実施例に係る弾性部と質量部が融合することを示す概略構成図である。
図6に示すように、いくつかの実施例では、質量の大きい材料が弾性構造621aに均一に分布してもよい。例えば、シリコーンゴムに一定の質量の金属粉末を均一にドープした後に一体成形してもよい。いくつかの実施例では、質量の大きい材料6211bは、弾性構造621bの中心位置に設置されてもよい。いくつかの実施例では、質量の大きい材料6211cは、弾性構造621cの複数の位置に設置されてもよい。
【0065】
図7は、本明細書のいくつかの実施例に係る、梁構造には、弾性と質量が融合した質量素子が接続される場合に第1の位置での振動応答曲線図である。
図7に示すように、「M_r2=5.1722E-4kg、E_r=1E6Pa」は、質量素子の総質量が0.51722gで、質量素子と梁構造との間の弾性率が10
6Paである場合に第1の位置での振動応答曲線を示す。
図7から分かるように、100Hz~1000Hzの範囲内で、異なる質量素子を追加した後に梁構造の第1の位置での共振ディップ720は、いずれも効果的に浅くなり、共振ピーク710と共振ディップ720との間の振幅差が小さくなる。したがって、弾性部と質量部が一体に融合する質量素子を圧電構造に接続することで、目標範囲内で圧電構造の第1の位置での共振ピークと共振ディップとの間の振幅差を小さくすることができる。また、質量素子の質量が徐々に増大することにともない、低周波数帯域(例えば、80Hz~300Hz)の範囲内に出現した共振ピークは、徐々に横座標のゼロ点に近づく。よって、音響出力装置の低周波数に対する感度が徐々に低下する。いくつかの実施例では、音響出力装置の低周波数に対する感度を保証するために、弾性部と質量部が分離して設置された質量素子の総質量は、目標質量範囲内にあってもよい。単なる例として、上記目標質量範囲は、0.01~50g、0.0.2~40g、0.03~30g、0.04~20g、0.05~10g、0.07~8g、0.09~6g、0.1~6g、0.2~6g、0.5~6g、又は1~5gなどを含んでもよい。
【0066】
単なる例として、
図8~
図10は、弾性部と質量部が一体に融合した質量素子が梁構造に接続されたいくつかの実施例を示す。
図8は、本明細書のいくつかの実施例に係る、弾性が均一に分布する質量素子が梁構造に接続されることを示す概略構成図である。
図9は、本明細書のいくつかの実施例に係る、弾性が不均一に分布する質量素子の概略構成図である。
図10は、本明細書のいくつかの実施例に係る、質量及び/又は減衰が均一に分布する質量素子の概略構成図である。
【0067】
図8に示すように、質量素子は、弾性構造821を含んでもよい。弾性構造821は、梁構造811の長さ方向に沿って延伸してもよい。弾性構造821内に質量部822が複数あってもよい。いくつかの実施例では、弾性構造821の弾性は、梁構造811の長さ方向に沿って均一に分布してもよい。弾性構造821内の質量部822は、梁構造811の長さ方向に沿って不均一に分布してもよい。例えば、
図8に示すように、梁構造811の異なる周波数帯域での振動モードは、図における破線で示され得る。弾性構造821内の質量部822は、複数の第2の位置に分布してもよい。上記複数の第2の位置は、それぞれ異なる周波数帯域で梁構造811の振動の波腹領域に設置され、それにより複数の周波数帯域で第1の位置での共振ピークと共振ディップとの振幅差を小さくして、音響出力装置の周波数帯域の音質を向上させることができる。
【0068】
図9に示すように、質量素子は、弾性構造921を含んでもよい。弾性構造921は、梁構造911の長さ方向に沿って延伸してもよく、弾性構造921内に質量部922が複数あってもよい。いくつかの実施例では、弾性構造921は、梁構造911の長さ方向に沿って不均一に分布してもよい。例えば、質量部922がない領域と比較して、弾性構造921上の質量部922がある領域は、より高い弾性を持つことができる。また例えば、質量がより小さい質量部922がある領域と比較して、弾性構造921上の質量がより大きい質量部922がある領域は、より高い弾性を持つことができる。
【0069】
図10に示すように、弾性構造1021は、空隙構造1023を含んでもよく、空隙構造1023は、少なくとも1つの空隙を含んでもよい。いくつかの実施例では、空隙構造は、弾性構造1021に均一に分布してもよい。いくつかの実施例では、空隙構造1023は、減衰材料を含んでもよい。上記減衰材料により音響出力装置の振動応答曲線を滑らかに遷移させて、音質を効果的に向上させることができる。
【0070】
いくつかの実施例では、弾性部は、質量部と分離して設置されてもよい。例えば、弾性部は、弾性部材を含んでもよく、質量素子は、該弾性部材により圧電構造に弾性的に接続されてもよい。例示的な弾性部材は、ウレタンフォーム、シリコーンゴム、バネ、圧縮バネなど又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、質量部は、金属又は非金属材料などとして実現されてもよい。上記材料の密度は、予め設定された密度範囲内にあってもよい。上記予め設定された密度範囲は、0.01~100g/cm3、0.05~80g/cm3、0.1~60g/cm3、0.2~50g/cm3、0.3~40g/cm3、0.4~30g/cm3、又は0.5~20g/cm3などを含んでもよい。いくつかの実施例では、質量部は、金属(例えば、鉄、銅又は金属合金など)ブロック、封止用液体など又は音響出力装置の電池、回路基板などの素子として実現されてもよい。いくつかの実施例では、質量部は、弾性部材に接続されてもよい。例示的な接続方式は、ボルト接続、リベット接合、締り嵌め、係止、接着、射出成形、溶接、磁気吸着など又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、質量部と弾性部材は、いずれも任意の形状であってもよく、例えば、円柱体、直方体、円錐、円錐台、球体などの規則的な構造体又は不規則な構造体である。
【0071】
図11は、本明細書のいくつかの実施例に係る例示的な弾性部材が質量部に接続されることを示す概略構成図である。
図11に示すように、質量部1122は、弾性部材1121の一端に接続される。弾性部材1121の他端は、さらに圧電構造(
図6において図示せず)に接続されてもよい。
【0072】
図12は、本明細書のいくつかの実施例に係る、弾性と質量が分離した質量素子が接続された梁構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
図12に示すように、「M_r2=2.3889E-4kg、E_r=1E6Pa」は、質量素子の総質量が0.23889gで、質量素子と梁構造との間の弾性率が10
6Paである場合に第1の位置での振動応答曲線を示す。
図12から分かるように、100Hz~1000Hzの範囲内で、質量と弾性が分離した異なる質量素子を追加する場合、梁構造の第1の位置での振動応答の共振ディップ1220は、いずれも効果的に浅くなり、共振ピーク1210と共振ディップ1220との間の振幅差が小さくなる。また、質量素子の質量が徐々に増大することにともない、低周波数帯域(例えば、80Hz~300Hz)の範囲内に出現した共振ピークは、徐々に横座標のゼロ点に近づく。よって、音響出力装置の低周波数に対する感度が徐々に低下する。いくつかの実施例では、音響出力装置の低周波数に対する感度を保証するために、弾性部と質量部が分離して設置された質量素子の総質量は、目標質量範囲内にあってもよい。単なる例として、上記目標質量範囲は、0.01~50g、0.0.2~40g、0.03~30g、0.04~20g、0.05~10g、0.07~8g、0.09~6g、0.1~6g、0.2~6g、0.5~6g、又は1~5gなどを含んでもよい。いくつかの実施例では、
図7及び
図12から分かるように、同じ周波数で、共振ディップが浅くなるという類似の効果を達成するために、質量と弾性が分離する場合に必要な質量は、質量と弾性が融合する場合に必要な質量より小さい。いくつかの実施例では、音響出力装置の携帯性及び人体装着の快適さを考慮し、同じ音質改善効果を達成し、かつ音響出力装置の重量を低減するために、質量部と弾性部が分離して設置された質量素子を用いてもよい。
【0073】
図6~
図12に示された例は、説明の目的で提供されるものに過ぎず、本明細書の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。当業者であれば、本明細書の示唆で様々な変更及び修正を行うことができ、例えば、空隙構造1023は、弾性構造内で不均一に分布してもよい。また例えば、質量部と弾性部が分離して設置された質量素子において、質量部は、弾性部の側面に設置されてもよい。これらの変形及び修正は、いずれも本明細書の保護範囲内にある。
【0074】
いくつかの実施例では、質量素子の質量は、圧電構造の第2の位置に集中的に分布してもよい。ここでの集中的に分布することは、質量素子の質量が第2の位置の所在領域(例えば、第2の位置を幾何学的中心とする領域)内に集中することを指してもよい。いくつかの実施例では、上記領域のサイズ(例えば、面積、辺長、直径など)は、予め設定された値より小さくてもよい。例えば、上記領域は、正方形領域であってもよく、上記正方形領域の辺長は、25mm、20mm、18mm、16mm、又は12mmなどより小さくてもよい。また例えば、上記領域は、円形領域であってもよく、上記円形領域の直径は、25mm、20mm、18mm、16mm、又は12mmなどより小さくてもよい。
図13は、本明細書のいくつかの実施例に係る質量素子の質量が第2の位置に集中的に分布する場合に圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
図13は、質量素子の質量が第2の位置に集中的に分布する場合、質量素子と圧電構造との間の弾性係数が異なる場合に第1の位置での振動応答曲線を示す。例えば、「7.5*1col」は、質量素子が、長さが7.5mmの単一列の矩形のウレタンフォームにより圧電構造に接続される場合に第1の位置での応答曲線を示し、「15*2col」は、質量素子が、長さが15mmの二列の矩形のウレタンフォームにより圧電構造に接続される場合に第1の位置での応答曲線を示す。矩形のウレタンフォームの長さは、矩形のウレタンフォームの圧電構造(又は梁構造)の長さ方向に沿ったサイズであってもよい。異なる長さの矩形のウレタンフォームは、幅及び厚さが同じである。矩形のウレタンフォームの長さ及び/又は列数の増加に伴い、質量素子と圧電構造との間の弾性係数が増加する。
図13から分かるように、質量素子の質量が第2の位置に集中的に分布する場合、質量素子と圧電構造との間の弾性係数が異なる場合、圧電構造の第1の位置での共振ディップ1310は、いずれも効果的に浅くなる。また、弾性係数の増大に伴い、中間周波数帯域で質量素子に対応する共振ピーク1320は、横座標に沿って右へ移動し、減衰による滑らかな遷移の効果が高まる。したがって、いくつかの実施例では、質量素子の弾性の大きさを設定することにより、音響出力装置の中間周波数ピークに対応する周波数及び音響出力装置の中間周波数帯域での感度を調整することができる。
【0075】
いくつかの実施例では、質量素子の質量は、第2の位置の周囲に均一に分布してもよい。ここでの均一に分布することは、質量が第2の位置の周囲の領域に均一に分布することを指してもよい。いくつかの実施例では、上記周囲領域の面積は、予め設定された面積の範囲内にあってもよい。例えば、上記予め設定された面積の範囲は、0.1*0.1mm
2~50*50mm
2、0.5*0.5mm
2~40*40mm
2、0.5*1mm
2~35*35mm
2、1*1mm
2~30*30mm
2、1*2mm
2~30*20mm
2、2*2mm
2~30*15mm
2、又は3*3mm
2~30*10mm
2などを含んでもよい。
図14は、本明細書のいくつかの実施例に係る質量素子が集中的に分布する場合、及び均一に分布する場合に圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
図14は、質量素子と圧電構造との間の弾性係数が同じである場合、異なる質量が第2の位置に集中的に分布するか又は均一に分布する場合に第1の位置での振動応答曲線を示す。例えば、「15*2col+1.5g」は、質量素子が、長さが15mmの二列の矩形のウレタンフォームにより圧電構造に接続され、質量素子が1.5gであり、かつ集中的に分布する場合に第1の位置での応答曲線を示し、「15*2col+distributed1.5g」は、質量素子が、長さが15mmの二列の矩形のウレタンフォームにより圧電構造に接続され、質量素子が1.5gであり、かつ均一に分布する場合に第1の位置での応答曲線を示す。
図14に示すように、集中的に分布する場合と比較して、均一に分布する場合に第1の位置での振動の共振ピーク1410が出現する頻度が増大し、かつ減衰効果が向上する。均一に分布する質量に集中的に分布する質量を追加する場合、第1の位置での振動の共振ピーク1410が出現する頻度が減少し、かつ減衰効果が変化しない。したがって、いくつかの実施例では、質量素子の質量の分布方式を設定することで、音響出力装置の中間周波数ピークに対応する周波数を調整することができる。いくつかの実施例では、質量素子の質量が一定であるという前提で、質量が圧電構造の第2の位置に集中的に分布することと比較して、質量が圧電構造の第2の位置を中心として分布することで、音響出力装置の中間周波数ピークに対応する周波数を増大させ、中間周波数帯域での感度を向上させることができる。
【0076】
図15は、本明細書のいくつかの実施例に係る圧電構造に複数の質量素子が接続されることを示す概略構成図である。いくつかの実施例では、
図15に示すように、圧電構造1511に第2の位置が複数あってもよく、振動素子1512は、圧電構造1511の第1の位置で圧電構造1511に接続されてもよい。示された複数の第2の位置にそれぞれ質量素子1520が接続される。圧電構造1511の異なる目標周波数範囲内での振動モードに基づいて圧電構造1511上の複数の第2の位置を決定してもよい。例えば、
図3A及び
図3B並びにそれらの説明を参照して、一定の目標周波数範囲内で、第2の位置は、圧電構造1511が該目標周波数範囲内で共振する場合の波腹の位置に設置されてもよい。
図16は、本明細書のいくつかの実施例に係る、複数の質量素子が接続された後に圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
図16に示すように、「シリコーンゴム-三次ディップEsi1=5.5255E6Pa」は、三次ディップに対応する周波数での梁構造の波腹領域に、弾性率が5.5255*10
6Paの質量素子が接続される場合、第1の位置での振動応答曲線を示す。
図5D及び
図16を参照して、二次ディップ、三次ディップに対応する周波数での梁構造の波腹領域にそれぞれ質量素子が接続された後に、圧電構造1511の第1の位置での振動の二次ディップ1610と三次ディップ1620は、いずれも浅くなる。また、減衰を含む質量素子は、第1の位置での振動応答曲線をより平坦にすることができるため、音響出力装置の音質を向上させることができる。したがって、圧電構造に複数の質量素子を追加することで、音響出力装置の複数の周波数帯域での出力を向上させることができるため、全周波数帯域の音質の向上に役立つ。
【0077】
いくつかの実施例では、質量素子を音響出力装置の他のアセンブリ(例えば、電池、ケースなど)に接続することで、質量素子の固定を実現することができる。いくつかの実施例では、質量素子を固定することで、質量素子自体の振動が振動アセンブリの振動モードに影響を与えることを避けることができる。いくつかの実施例では、質量素子と音響出力装置との間の接続は、弾性的な接続であってもよい。上記弾性的な接続により、音響出力装置の振動が質量素子により振動アセンブリの振動に影響を与えることを低減することができ、同時に質量素子と音響出力装置との接続が質量素子の振動に影響を与えることを低減することができる。いくつかの実施例では、質量素子は、音響出力装置のケースに弾性的に接続される。いくつかの実施例では、質量素子とケースとの間の弾性的な接続方式は、質量素子と圧電構造との間の弾性的な接続方式と類似してもよく、ここでは説明を省略する。
図17は、本明細書のいくつかの実施例に係る質量素子が圧電構造及びケースに弾性的に接続されることを示す概略構成図である。
図17に示すように、質量素子1720の一側は、弾性構造又は弾性部材により圧電構造1711に弾性的に接続されてもよく、質量素子1720の他側は、弾性構造又は弾性部材によりケース(
図17において図示せず)に弾性的に接続されてもよい。
【0078】
いくつかの実施例では、質量素子と圧電構造との間の弾性及び質量素子とケースとの間の弾性を設定することで、質量素子による圧電構造の第1の位置での振動膜モードの調整制御を実現することができる。いくつかの実施例では、目標周波数範囲内で第1の位置での振動の共振ピークと共振ディップとの間の振幅差が小さくなり、第1の位置での振動応答曲線をより緩やかにするように、質量素子と圧電構造との間の弾性係数(すなわち、第1の弾性係数)は、質量素子とケースとの間の弾性係数(すなわち、第2の弾性係数)より小さくてもよい。
図18は、本明細書のいくつかの実施例に係る、第1の弾性係数と第2の弾性係数が異なる場合に圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
図18に対応する弾性は、矩形のウレタンフォームにより実現されてもよい。n1は、質量素子と圧電構造との間の矩形のウレタンフォームの層数を示し、n2は、質量素子とケースとの間の矩形のウレタンフォームの層数を示す。矩形のウレタンフォームの層数が多ければ多いほど、その対応する弾性係数が小さい。
図18に示すように、第1の弾性係数を第2の弾性係数より大きくするか又は小さくすることで、いずれも中低周波数帯域内で第1の位置での振動の共振ピーク1810と共振ディップ1820との間の振幅差を小さくすることができる。また、第1の弾性係数を第2の弾性係数より小さくすることで、第1の位置での振動応答曲線をより緩やかにすることができ、音響出力装置の音質の向上に役立つ。いくつかの実施例では、第2の弾性係数と第1の弾性係数との間の比は、予め設定された閾値より小さくてもよい。例えば、第2の弾性係数と第1の弾性係数との間の比は、50より小さくてもよい。また例えば、第2の弾性係数と第1の弾性係数との間の比は、40より小さくてもよい。また例えば、第2の弾性係数と第1の弾性係数との間の比は、30より小さくてもよい。また例えば、第2の弾性係数と第1の弾性係数との間の比は、20より小さくてもよい。また例えば、第2の弾性係数と第1の弾性係数との間の比は、10より小さくてもよい。さらに例えば、第2の弾性係数と第1の弾性係数との間の比は、5より小さくてもよい。
【0079】
いくつかの実施例では、質量素子が目標周波数範囲内で第1の位置での振動応答の共振ピークと共振ディップとの間の振幅差を小さくすることができるように、質量素子と振動アセンブリとの質量比mrを設定してもよい。いくつかの実施例では、目標周波数範囲以外の周波数帯域領域(例えば、質量素子に対応する共振ピークの後の領域)での振動応答曲線を緩やかにするように、質量素子と振動アセンブリとの質量比mrを設定してもよく、それにより対応する周波数帯域領域の音質の向上に役立つ。振動アセンブリの質量は、圧電構造と振動素子の総質量であってもよい。
【0080】
図19は、本明細書のいくつかの実施例に係る振動素子の質量が0.5gである場合に、異なるmr値に対応する圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
図19に示すように、「M_z=5E-4kg、mr=0.1」は、振動素子の質量が0.5gであり、mrが0.1である場合に第1の位置での振動応答曲線図を示す。
図19に示すように、いくつかの実施例では、振動素子の質量が0.1~0.9gである場合、mrが5より小さくてもよい。いくつかの実施例では、振動素子の質量が0.1~0.9gである場合、mrが2より小さくてもよい。いくつかの実施例では、振動素子の質量が0.1~0.9gである場合、mrが1より小さくてもよい。いくつかの実施例では、質量素子に対応する共振ピーク1910の後の中間周波数帯域での振動応答曲線を緩やかにするために、mrは、1より大きくてもよい。
【0081】
図20は、本明細書のいくつかの実施例に係る振動素子の質量が1gである場合に、異なるmr値に対応する圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
図19に示すように、いくつかの実施例では、振動素子の質量が0.9~1.8gである場合、mrが2より小さくてもよい。いくつかの実施例では、振動素子の質量が0.9~1.8gである場合、mrが1.5より小さくてもよい。いくつかの実施例では、振動素子の質量が0.9~1.8gである場合、mrが0.8より小さくてもよい。いくつかの実施例では、振動素子の質量が0.9~1.8gである場合、質量素子に対応する共振ピーク2010の後の中間周波数帯域での振動応答曲線を緩やかにするために、mrは、0.8より大きくてもよい。
図21は、本明細書のいくつかの実施例に係る振動素子の質量が2gである場合に、異なるmr値に対応する圧電構造の第1の位置での振動応答曲線図である。
図19に示すように、いくつかの実施例では、振動素子の質量が1.8~5gである場合、mrが1より小さくてもよい。いくつかの実施例では、振動素子の質量が1.8~5gである場合、mrが0.5より小さくてもよい。いくつかの実施例では、振動素子の質量が1.8~5gである場合、mrが0.2より小さくてもよい。いくつかの実施例では、振動素子の質量が1.8~5gである場合、質量素子に対応する共振ピーク2110の後の中間周波数帯域での振動応答曲線を緩やかにするために、mrは、0.2より大きくてもよい。
【0082】
なお、実施例によって、達成可能な作用効果が異なるが、異なる実施例では、達成可能な作用効果は、以上のいずれかの1種又は複数の組み合わせであってもよく、他の任意の達成可能な作用効果であってもよく、例えば、質量素子と振動アセンブリとの質量比mr及び質量素子の質量の第2の位置での分布方式を同時に設定することで、音響出力装置の音質改善構造を最適化することができる。
【0083】
上記で基本概念を説明してきたが、当業者にとっては、上記詳細な開示は、単なる例として提示されているものに過ぎず、本明細書を限定するものではないことは明らかである。本明細書において明確に記載されていないが、当業者は、本明細書に対して様々な変更、改良及び修正を行うことができる。これらの変更、改良及び修正は、本明細書によって示唆されることが意図されているため、本明細書の例示的な実施例の趣旨及び範囲内にある。
【0084】
さらに、本明細書の実施例を説明するために、本明細書において特定の用語が使用されている。例えば、「1つの実施例」、「一実施例」、及び/又は「いくつかの実施例」は、本明細書の少なくとも1つの実施例に関連した特定の特徴、構造又は特性を意味する。したがって、本明細書の様々な部分における「一実施例」又は「1つの実施例」又は「1つの代替的な実施例」の2つ以上の言及は、必ずしもすべてが同一の実施例を指すとは限らないことを強調し、理解されたい。また、本明細書の1つ以上の実施例における特定の特徴、構造又は特性は、適切に組み合わせられてもよい。
【0085】
また、特許請求の範囲に明確に記載されていない限り、本明細書に記載の処理要素又はシーケンスの列挙した順序、英数字の使用、又は他の名称の使用は、本明細書の手順及び方法の順序を限定するものではない。上記開示において、発明の様々な有用な実施例であると現在考えられるものを様々な例を通して説明しているが、そのような詳細は、単に説明のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲は、開示される実施例に限定されないが、逆に、本明細書の実施例の趣旨及び範囲内にあるすべての修正及び等価な組み合わせをカバーするように意図されることを理解されたい。例えば、上述したシステムアセンブリは、ハードウェアデバイスにより実装されてもよいが、ソフトウェアのみのソリューション、例えば、既存のサーバ又はモバイルデバイスに説明されたシステムをインストールすることにより実装されてもよい。
【0086】
同様に、本明細書の実施例の前述の説明では、本明細書を簡略化して、1つ以上の発明の実施例への理解を助ける目的で、様々な特徴が1つの実施例、図面又はその説明にまとめられることがあることを理解されたい。しかしながら、このような開示方法は、特許請求される主題が各請求項で列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。実際に、実施例の特徴は、上記開示された単一の実施例のすべての特徴よりも少ない場合がある。
【0087】
いくつかの実施例において、成分及び属性の数を説明する数字が使用されており、このような実施例を説明するための数字は、いくつかの例において修飾語「約」、「ほぼ」又は「概ね」によって修飾されるものであることを理解されたい。特に明記しない限り、「約」、「ほぼ」又は「概ね」は、上記数字の±20%の変動が許容されることを意味する。よって、いくつかの実施例において、明細書及び特許請求の範囲に使用されている数値パラメータは、いずれも個別の実施例に必要な特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施例において、数値パラメータについては、規定された有効桁数を考慮すると共に、通常の丸め手法を適用すべきである。本明細書のいくつかの実施例において、その範囲を決定するための数値範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体的な実施例において、このような数値は、可能な限り正確に設定される。
【0088】
本明細書において参照されているすべての特許、特許明細書、公開特許公報、及び、論文、書籍、仕様書、刊行物、文書などの他の資料は、本明細書の内容と一致しないか又は矛盾する明細書経過文書、及び(現在又は後に本明細書に関連する)本明細書の請求項の最も広い範囲に関して限定的な影響を有し得る文書を除いて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。なお、本明細書の添付資料における説明、定義、及び/又は用語の使用が本明細書に記載の内容と一致しないか又は矛盾する場合、本明細書における説明、定義、及び/又は用語の使用を優先するものとする。
【0089】
最後に、本明細書に記載の実施例は、単に本明細書の実施例の原理を説明するものであることを理解されたい。他の変形例も本明細書の範囲内にある可能性がある。したがって、限定するものではなく、例として、本明細書の実施例の代替構成は、本明細書の教示と一致するように見なされてもよい。よって、本明細書の実施例は、本明細書において明確に紹介して説明された実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0090】
100 音響出力装置
110 振動アセンブリ
120 質量素子
211 圧電構造
212 振動素子
2111 圧電材料層
2112 基板
2113 固定端
2114 自由端
411a 梁構造
430 共振ピーク
440 共振ディップ
420 質量素子
450 共振ピーク
511a 梁構造
512a 振動素子
530 共振ディップ
540 共振ディップ
520 質量素子
621a 弾性構造
621b 弾性構造
6211b 質量の大きい材料
621c 弾性構造
6211c 質量の大きい材料
720 共振ディップ
710 共振ピーク
821 弾性構造
811 梁構造
822 質量部
921 弾性構造
911 梁構造
922 質量部
1021 弾性構造
1023 空隙構造
1122 質量部
1121 弾性部材
1220 共振ディップ
1210 共振ピーク
1310 共振ディップ
1320 共振ピーク
1410 共振ピーク
1511 圧電構造
1520 質量素子
1512 振動素子
1610 二次ディップ
1620 三次ディップ
1720 質量素子
1711 圧電構造
1810 共振ピーク
1820 共振ディップ
1910 共振ピーク
2010 共振ピーク
2110 共振ピーク