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特許7543552バッテリー診断装置、バッテリーシステム及びバッテリー診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】バッテリー診断装置、バッテリーシステム及びバッテリー診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20240826BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20240826BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240826BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/396
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023515219
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 KR2022000255
(87)【国際公開番号】W WO2022149890
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0002849
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒュン-ジュン
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/130258(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111426955(CN,A)
【文献】国際公開第2013/140781(WO,A1)
【文献】特開2015-103283(JP,A)
【文献】特開2004-304939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0048797(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリーの各々の両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を示す電圧信号を生成する電圧測定回路と、
複数の異常類型、複数の参照時系列及び前記複数の異常類型と複数の参照時系列との所定の対応関係が記録されたデータベースと、
前記電圧信号に基づき、前記複数のバッテリーの各々の前記バッテリー電圧の変化履歴を示す複数の入力時系列を生成する制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記複数の入力時系列を互いに比較して、前記複数の入力時系列のうちで異常電圧挙動を示す異常入力時系列を抽出し、
前記異常入力時系列と各参照時系列との間の第1類似度値を算出し、
前記異常入力時系列及び各参照時系列を第1正規化された時系列及び第2正規化された時系列に各々変換し、
前記第1正規化された時系列と前記第2正規化された時系列との間の第2類似度値を算出し、
前記第1類似度値と前記第2類似度値を組み合わせることによって、前記異常入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数を決定し、
前記制御部は、
前記異常入力時系列の異常類型が、前記複数の参照時系列に対して決定された複数のマッチング指数のうちの一つに関連する参照時系列に対応する異常類型と同じであると識別する
バッテリー診断装置。
【請求項2】
複数のバッテリーの各々の両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を示す電圧信号を生成する電圧測定回路と、
複数の異常類型、複数の参照時系列及び前記複数の異常類型と複数の参照時系列との所定の対応関係が記録されたデータベースと、
前記電圧信号に基づき、前記複数のバッテリーの各々の前記バッテリー電圧の変化履歴を示す複数の入力時系列を生成する制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記複数の入力時系列を互いに比較して、前記複数の入力時系列のうちで異常電圧挙動を示す異常入力時系列を抽出し、
前記制御部は、前記複数の参照時系列の各々に対して、
ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列と各参照時系列との信号距離を示す第1類似度値を算出し、
前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列及び各参照時系列を互いに同じ時間の長さを有する第1整列された時系列及び第2整列された時系列に各々変換し、
前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列とのピアソンの相関係数を示す第2類似度値を算出し、
前記第1類似度値を前記第2類似度値で割った値を、前記異常入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数として決定し、
前記制御部は、
前記異常入力時系列の異常類型が、前記複数の参照時系列に対して決定された複数のマッチング指数のうちの一つに関連する参照時系列に対応する異常類型と同じであると識別する
バッテリー診断装置。
【請求項3】
複数のバッテリーの各々の両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を示す電圧信号を生成する電圧測定回路と、
複数の異常類型、複数の参照時系列及び前記複数の異常類型と複数の参照時系列との所定の対応関係が記録されたデータベースと、
前記電圧信号に基づき、前記複数のバッテリーの各々の前記バッテリー電圧の変化履歴を示す複数の入力時系列を生成する制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記複数の入力時系列を互いに比較して、前記複数の入力時系列のうちで異常電圧挙動を示す異常入力時系列を抽出し、
前記制御部は、前記複数の参照時系列の各々に対して、
最大-最小の正規化を用いて、前記異常入力時系列及び各参照時系列を第1正規化された時系列及び第2正規化された時系列に各々変換し、
ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記第1正規化された時系列と前記第2正規化された時系列との信号距離を示す第1類似度値を算出し、
前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記第1正規化された時系列と前記第2正規化された時系列を、互いに同じ時間の長さを有する第1整列された時系列及び第2整列された時系列に各々変換し、
前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列とのピアソンの相関係数を示す第2類似度値を算出し、
前記第1類似度値を前記第2類似度値で割った値を、前記異常入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数として決定し、
前記制御部は、
前記異常入力時系列の異常類型が、前記複数の参照時系列に対して決定された複数のマッチング指数のうちの一つに関連する参照時系列に対応する異常類型と同じであると識別する、
バッテリー診断装置。
【請求項4】
複数のバッテリーの各々の両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を示す電圧信号を生成する電圧測定回路と、
複数の異常類型、複数の参照時系列及び前記複数の異常類型と複数の参照時系列との所定の対応関係が記録されたデータベースと、
前記電圧信号に基づき、前記複数のバッテリーの各々の前記バッテリー電圧の変化履歴を示す複数の入力時系列を生成する制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記複数の入力時系列を互いに比較して、前記複数の入力時系列のうちで異常電圧挙動を示す異常入力時系列を抽出し、
前記制御部は、前記複数の参照時系列の各々に対し、
ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列と各参照時系列との信号距離を示す第1類似度値を算出し、
前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列及び各参照時系列を互いに同じ時間の長さを有する第1整列された時系列及び第2整列された時系列に各々変換し、
前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列とのピアソンの相関係数を示す第2類似度値を算出し、
最大-最小の正規化を用いて、前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列を第1正規化された時系列及び第2正規化された時系列に各々変換し、
前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記第1正規化された時系列と前記第2正規化された時系列との信号距離を示す第3類似度値を算出し、
前記第1正規化された時系列と第2正規化された時系列とのピアソンの相関係数を示す第4類似度値を算出し、
前記第1類似度値と前記第3類似度値のうちのいずれか一つまたは二つの積を前記第2類似度値と前記第4類似度値のうちのいずれか一つまたは二つの積で割り、前記異常入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数を決定し、
前記制御部は、
前記異常入力時系列の異常類型が、前記複数の参照時系列に対して決定された複数のマッチング指数のうちの一つに関連する参照時系列に対応する異常類型と同じであると識別する、
バッテリー診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記異常入力時系列の異常類型が、前記複数のマッチング指数のうちで最小マッチング指数に関連する参照時系列に対応する異常類型と同じであると識別する、請求項2に記載のバッテリー診断装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記異常入力時系列の異常類型が、前記複数のマッチング指数のうちで最小マッチング指数に関連する参照時系列に対応する異常類型と同じであると識別する、請求項に記載のバッテリー診断装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記異常入力時系列の異常類型が、前記複数のマッチング指数のうちで最小マッチング指数に関連する参照時系列に対応する異常類型と同じであると識別する、請求項1または4に記載のバッテリー診断装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記異常入力時系列を前記識別された異常類型に対応する新しい参照時系列として前記データベースに追加する、請求項1から7のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の前記バッテリー診断装置を含む、バッテリーシステム。
【請求項10】
バッテリー診断方法であって、
複数のバッテリーの各々の両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を示す電圧信号を収集する段階と、
前記電圧信号に基づき、前記複数のバッテリーの各々の前記バッテリー電圧の変化履歴を示す複数の入力時系列を生成する段階と、
前記複数の入力時系列を互いに比較して、前記複数の入力時系列のうちで異常電圧挙動を示す異常入力時系列を抽出する段階と、
前記異常入力時系列を複数の参照時系列と比較して、前記複数の参照時系列と所定の対応関係を有する複数の異常類型のうちで前記異常入力時系列の異常類型を識別する段階と、を含み、
前記識別する段階は、
前記異常入力時系列と各参照時系列との間の第1類似度値を算出する段階と、
前記異常入力時系列及び各参照時系列を第1正規化された時系列及び第2正規化された時系列に各々変換する段階と、
前記第1正規化された時系列と前記第2正規化された時系列との間の第2類似度値を算出する段階と、
前記第1類似度値と前記第2類似度値を組み合わせることによって、前記異常入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数を決定する段階と、
前記異常入力時系列の異常類型が、前記複数の参照時系列に対して決定された複数のマッチング指数のうちの一つに関連する参照時系列に対応する異常類型と同じであると識別する段階と、を含む
バッテリー診断方法。
【請求項11】
バッテリー診断方法であって、
複数のバッテリーの各々の両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を示す電圧信号を収集する段階と、
前記電圧信号に基づき、前記複数のバッテリーの各々の前記バッテリー電圧の変化履歴を示す複数の入力時系列を生成する段階と、
前記複数の入力時系列を互いに比較して、前記複数の入力時系列のうちで異常電圧挙動を示す異常入力時系列を抽出する段階と、
前記異常入力時系列を複数の参照時系列と比較して、前記複数の参照時系列と所定の対応関係を有する複数の異常類型のうちで前記異常入力時系列の異常類型を識別する段階と、を含み、
前記識別する段階は、
ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列と各参照時系列との信号距離を示す第1類似度値を算出する段階と、
前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列及び各参照時系列を互いに同じ時間の長さを有する第1整列された時系列及び第2整列された時系列に各々変換する段階と、
前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列とのピアソンの相関係数を示す第2類似度値を算出する段階と、
前記第1類似度値を前記第2類似度値で割った値を、前記異常入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数として決定する段階と、
前記異常入力時系列の異常類型が、前記複数の参照時系列に対して決定された複数のマッチング指数のうちの一つに関連する参照時系列に対応する異常類型と同じであると識別する段階と、を含む
バッテリー診断方法。
【請求項12】
バッテリー診断方法であって、
複数のバッテリーの各々の両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を示す電圧信号を収集する段階と、
前記電圧信号に基づき、前記複数のバッテリーの各々の前記バッテリー電圧の変化履歴を示す複数の入力時系列を生成する段階と、
前記複数の入力時系列を互いに比較して、前記複数の入力時系列のうちで異常電圧挙動を示す異常入力時系列を抽出する段階と、
前記異常入力時系列を複数の参照時系列と比較して、前記複数の参照時系列と所定の対応関係を有する複数の異常類型のうちで前記異常入力時系列の異常類型を識別する段階と、を含み、
前記識別する段階は、
最大-最小の正規化を用いて、前記異常入力時系列及び各参照時系列を第1正規化された時系列及び第2正規化された時系列に各々変換する段階と、
ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記第1正規化された時系列と前記第2正規化された時系列との信号距離を示す第1類似度値を算出する段階と、
前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記第1正規化された時系列と前記第2正規化された時系列を、互いに同じ時間の長さを有する第1整列された時系列及び第2整列された時系列に各々変換する段階と、
前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列とのピアソンの相関係数を示す第2類似度値を算出する段階と、
前記第1類似度値を前記第2類似度値で割った値を、前記異常入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数として決定する段階と、
前記異常入力時系列の異常類型が、前記複数の参照時系列に対して決定された複数のマッチング指数のうちの一つに関連する参照時系列に対応する異常類型と同じであると識別する段階と、を含む
バッテリー診断方法。
【請求項13】
バッテリー診断方法であって、
複数のバッテリーの各々の両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を示す電圧信号を収集する段階と、
前記電圧信号に基づき、前記複数のバッテリーの各々の前記バッテリー電圧の変化履歴を示す複数の入力時系列を生成する段階と、
前記複数の入力時系列を互いに比較して、前記複数の入力時系列のうちで異常電圧挙動を示す異常入力時系列を抽出する段階と、
前記異常入力時系列を複数の参照時系列と比較して、前記複数の参照時系列と所定の対応関係を有する複数の異常類型のうちで前記異常入力時系列の異常類型を識別する段階と、を含み、
前記識別する段階は、
ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列と各参照時系列との信号距離を示す第1類似度値を算出する段階と、
前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列及び各参照時系列を互いに同じ時間の長さを有する第1整列された時系列及び第2整列された時系列に各々変換する段階と、
前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列とのピアソンの相関係数を示す第2類似度値を算出する段階と、
最大-最小の正規化を用いて、前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列を第1正規化された時系列及び第2正規化された時系列に各々変換する段階と、
前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記第1正規化された時系列と前記第2正規化された時系列との信号距離を示す第3類似度値を算出する段階と、
前記第1正規化された時系列と第2正規化された時系列とのピアソンの相関係数を示す第4類似度値を算出する段階と、
前記第1類似度値と前記第3類似度値のうちのいずれか一つまたは二つの積を前記第2類似度値と前記第4類似度値のうちのいずれか一つまたは二つの積で割り、前記異常入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数を決定する段階と、
前記異常入力時系列の異常類型が、前記複数の参照時系列に対して決定された複数のマッチング指数のうちの一つに関連する参照時系列に対応する異常類型と同じであると識別する段階と、を含む
バッテリー診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの異常を診断する技術に関し、より詳しくは、バッテリーの異常電圧挙動を誘発している異常類型が識別可能なバッテリー診断装置、バッテリーシステム及びバッテリー診断方法に関する。
【0002】
本出願は、2021年01月08日出願の韓国特許出願第10-2021-0002849号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、ノートブックPC、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯用電子製品の需要が急増し、電気車両、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれ、反復的な充放電の可能な高性能バッテリーについての研究が活発に進行しつつある。
【0004】
現在、商用化したバッテリーとしては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどがあり、このうち、リチウムバッテリーは、ニッケル系のバッテリーに比べてメモリー効果がほとんど起こらず、充放電が自由で、自己放電率が非常に低くてエネルギー密度が高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
高電圧が要求されるアプリケーションが広く普及されるにつれ、複数のバッテリーを直列に接続した構造を採用するバッテリーシステムが広く用いられている。バッテリーシステムに含まれたバッテリーの個数が多くなるほど、バッテリーの異常の発生頻度も高くなるしかない。そこで、バッテリーの異常を正確に検出可能な診断技術の必要性が増大しつつある。
【0006】
最近、バッテリーに関連する複数のパラメーター(例えば、バッテリーの電圧、電流、温度など)を含むバッテリー情報及びバッテリーの使用状態(例えば、充電、放電、休止)に基づいてバッテリーの異常有無を検出する方式が広く活用されている。
【0007】
しかし、上記のような検出方式は、バッテリー診断装置が多様なセンサーを用いてバッテリー情報をモニターする過程が必須であるため、各バッテリーの異常を検出するのに多い演算量と長い時間が求められるという短所がある。
【0008】
一方、電圧以外の残りのパラメーターは排除したまま、特定の時点または一定の時間単位で、複数のバッテリーから取得された複数のバッテリー電圧を互いに比較することで各バッテリーの異常電圧挙動を検出しようとする試みがあった。しかし、電圧に基づく異常検出は、各バッテリーが異常電圧挙動を示すか否かのみが検出可能であり、異常電圧挙動が如何なる理由で現れているかについての情報までは提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、バッテリー電圧の外に他のパラメーターをモニターしなくても、電圧に基づく異常検出によって異常電圧挙動を示すものとして抽出された各バッテリーの入力時系列を、相異なる複数の異常類型に一対一に関連する複数の参照時系列と比較することで、各バッテリーの異常電圧挙動を誘発している異常類型を識別可能なバッテリー診断装置、バッテリーシステム及びバッテリー診断方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに理解されるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一面によるバッテリー診断装置は、複数のバッテリーの各々の両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を示す電圧信号を生成するように構成される電圧測定回路と、複数の異常類型、複数の参照時系列及び前記複数の異常類型と複数の参照時系列との所定の対応関係が記録されたデータベースと、前記電圧信号に基づき、前記複数のバッテリーの各々の前記バッテリー電圧の変化履歴を示す複数の入力時系列を生成するように構成される制御部と、を含む。前記制御部は、前記複数の入力時系列を互いに比較して、前記複数の入力時系列のうちで異常電圧挙動を示す異常入力時系列を抽出するように構成される。前記制御部は、前記異常入力時系列を前記複数の参照時系列と一回ずつ比較して、前記複数の異常類型のうちで前記異常入力時系列の異常類型を識別するように構成される。
【0012】
前記制御部は、前記複数の参照時系列の各々に対して、ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列と各参照時系列との信号距離を示す第1類似度値を算出し、前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列及び各参照時系列を互いに同じ時間の長さを有する第1整列された時系列及び第2整列された時系列に各々変換し、前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列とのピアソンの相関係数を示す第2類似度値を算出するように構成され得る。前記制御部は、前記第1類似度値を前記第2類似度値で割った値と同じく、前記異常入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数を決定するように構成され得る。前記制御部は、前記複数の参照時系列に対して決定された複数のマッチング指数のうちの一つに関連する参照時系列に対応する異常類型と同じく前記異常入力時系列の異常類型を識別するように構成され得る。
【0013】
前記制御部は、前記複数のマッチング指数のうちで最小マッチング指数に関連する参照時系列に対応する異常類型と同じく前記異常入力時系列の異常類型を識別するように構成され得る。
【0014】
前記制御部は、前記複数の参照時系列の各々に対して、最大-最小の正規化を用いて、前記異常入力時系列及び各参照時系列を第1正規化された時系列及び第2正規化された時系列に各々変換し、ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記第1正規化された時系列と前記第2正規化された時系列との信号距離を示す第1類似度値を算出し、前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記第1正規化された時系列と前記第2正規化された時系列を、互いに同じ時間の長さを有する第1整列された時系列及び第2整列された時系列に各々変換し、前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列とのピアソンの相関係数を示す第2類似度値を算出するように構成され得る。前記制御部は、前記第1類似度値を前記第2類似度値で割った値と同じく、前記異常入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数を決定され得る。前記制御部は、前記複数の参照時系列に対して決定された複数のマッチング指数のうちで一つに関連する参照時系列に対応する異常類型と同じく前記異常入力時系列の異常類型を識別するように構成され得る。
【0015】
前記制御部は、前記複数のマッチング指数のうちで最小マッチング指数に関連する参照時系列に対応する異常類型と同じく前記異常入力時系列の異常類型を識別するように構成され得る。
【0016】
前記制御部は、前記複数の参照時系列の各々に対し、ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列と各参照時系列との信号距離を示す第1類似度値を算出し、前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記異常入力時系列及び各参照時系列を互いに同じ時間の長さを有する第1整列された時系列及び第2整列された時系列に各々変換し、前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列とのピアソンの相関係数を示す第2類似度値を算出し、最大-最小の正規化を用いて、前記第1整列された時系列と前記第2整列された時系列を第1正規化された時系列及び第2正規化された時系列に各々変換し、前記ダイナミックタイムワーピングを用いて、前記第1正規化された時系列と前記第2正規化された時系列との信号距離を示す第3類似度値を算出し、前記第1正規化された時系列と第2正規化された時系列とのピアソンの相関係数を示す第4類似度値を算出するように構成され得る。前記制御部は、前記第1類似度値と前記第3類似度値のうちのいずれか一つまたは二つの積を前記第2類似度値と前記第4類似度値のうちのいずれか一つまたは二つの積で割り、前記異常入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数を決定するように構成され得る。前記制御部は、前記複数の参照時系列に対して決定された複数のマッチング指数のうちで一つに関連する参照時系列に対応する異常類型と同一であるか否かによって前記異常入力時系列の異常類型を識別するように構成され得る。
【0017】
前記制御部は、前記複数のマッチング指数のうちで最小マッチング指数に関連する参照時系列に対応する異常類型と同一であるか否かによって前記異常入力時系列の異常類型を識別するように構成され得る。
【0018】
前記制御部は、前記異常入力時系列を前記識別された異常類型に対応する新しい参照時系列として前記データベースに追加するように構成され得る。
【0019】
なお、本発明の他面によるバッテリーシステムは、前記バッテリー診断装置を含む。
【0020】
本発明のさらに他面によるバッテリー診断方法は、前記バッテリー診断装置によって実行可能である。前記バッテリー診断方法は、複数のバッテリーの各々の両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を示す電圧信号を収集する段階と、前記電圧信号に基づき、前記複数のバッテリーの各々の前記バッテリー電圧の変化履歴を示す複数の入力時系列を生成する段階と、前記複数の入力時系列を互いに比較して、前記複数の入力時系列のうちで異常電圧挙動を示す異常入力時系列を抽出する段階と、前記異常入力時系列を複数の参照時系列と一回ずつ比較して、前記複数の参照時系列と所定の対応関係を有する複数の異常類型のうちで前記異常入力時系列の異常類型を識別する段階と、を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施例の少なくとも一つによると、バッテリー電圧の外に他のパラメーターをモニターしなくても、電圧に基づく異常検出によって異常電圧挙動を示すものとして抽出された各バッテリーの入力時系列を相異なる複数の異常類型に一対一に関連する複数の参照時系列と比較することで、各バッテリーの異常電圧挙動を誘発している異常類型を識別することができる。
【0022】
また、本発明の実施例の少なくとも一つによると、入力時系列と各参照時系列の対に対し、ダイナミックタイムワーピング及びピアソンの相関係数によって決定される二つの類似値を組み合わせることで、入力時系列と各参照時系列とのマッチング指数を決定し得る。その後、複数の参照時系列と複数のマッチング指数と複数の異常類型との一対一の対応関係から、異常電圧挙動を示すバッテリーの異常類型を識別することができる。
【0023】
本発明の効果は上述した効果に制限されず、言及されていない本発明の他の効果は請求範囲の記載から当業者により明らかに理解されるだろう。
【0024】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明によるバッテリーシステムの構成を示した図である。
【0026】
図2】正常のバッテリーのバッテリー電圧と異常のバッテリーのバッテリー電圧を、同じ使用条件を有する時間区間にわたって取得した結果を示した図である。
【0027】
図3】異常入力時系列と複数の参照時系列との比較過程を説明するのに参照される例示的なグラフである。
【0028】
図4】異常入力時系列と複数の参照時系列との比較過程を説明するのに参照される例示的なグラフである。
【0029】
図5】本発明によるバッテリー診断方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0031】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0032】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素のうちいずれか一つを残りと区別する目的として使用され、このような用語によって構成要素が限定されることではない。
【0033】
なお、明細書の全体にかけて、ある部分が、ある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、明細書に記載の「制御部」のような用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を示し、これはハードウェアやソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの結合せにより具現され得る。
【0034】
さらに、明細書の全体に亘って、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されているとするとき、これは、「直接的に連結(接続)」されている場合のみならず、その中間に他の素子を介して「間接的に連結(接続)」されている場合も含む。
【0035】
図1は、本発明によるバッテリーシステムの構成を示した図である。
【0036】
図1を参照すると、バッテリーシステム1は、電気車両などのようにバッテリーの放電電力を用いて駆動される電気負荷を含む電力装置であり得る。または、バッテリーシステム1は、バッテリー製造に用いられるものであって、製造工程でバッテリーの性能を検査するように提供される充放電テスト装置であり得る。
【0037】
バッテリーシステム1は、バッテリーアセンブリー10、スイッチ20、充放電回路30、上位コントローラー2及びバッテリー診断装置100を含む。上位コントローラー2は、バッテリーアセンブリー10の全般的な充放電過程を主導的に管掌する。即ち、上位コントローラー2は、予め決められた充放電スケジュールに従って、直接的にまたはバッテリー診断装置100を介して間接的に充放電回路30を制御する。
【0038】
バッテリーアセンブリー10は、複数のバッテリーB~B(nは、2以上の自然数である。)を含む。
【0039】
複数のバッテリーB~Bは単一のグループであって、互いに電気的に直列に接続され得る。または、複数のバッテリーB~Bは、互いに独立的に充放電可能に二つ以上にグループ化され得る。以下では、複数のバッテリーB~Bの共通内容を説明するに際し、バッテリーを参照符号「B」として指称する。バッテリーBは、例えば、リチウムイオンバッテリーのように、反復的な充放電が可能なものであれば、その種類は特に限定されない。
【0040】
スイッチ20は、バッテリーアセンブリー10の電力入出力端子と充放電回路30の電力入出力端子を連結する電力ラインPLに設けられる。スイッチ20がオンされている間に、バッテリーアセンブリー10と充放電回路30のいずれか一つから他の一つへの電力伝達が可能である。スイッチ20は、リレー、 電界効果トランジスター(FET:Field Effect Transistor)などのような公知のスイチングデバイスのいずれか一つまたは二つ以上を組み合わせることで具現され得る。制御部130は、バッテリーアセンブリー10の状態に応じてスイッチ20をオンオフ制御し得る。
【0041】
充放電回路30は、上位コントローラー2を介してバッテリー診断装置100に動作可能に結合する。二つの構成が動作可能に結合するということは、単方向または双方向に信号を送受信可能に二つの構成が接続されていることを意味する。充放電回路30は、外部電源によって供給される交流電力からバッテリーアセンブリー10の各グループの充電のための直流電力を生成し得る。充放電回路30は、バッテリーアセンブリー10の各グループからの直流電力を交流電力及び/または他の電圧レベルを有する直流電力へ変換し、電気負荷(図示せず)に伝達し得る。
【0042】
バッテリー診断装置100は、相互に動作可能に結合する電圧測定回路110、データベース120及び制御部130を含む。バッテリー診断装置100は、インターフェース部140をさらに含み得る。
【0043】
電圧測定回路110は、各バッテリーBの正極端子と負極端子に電気的に接続可能に提供される。電圧測定回路110は、各バッテリーBの両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を測定し、測定されたバッテリー電圧を示す電圧信号を生成するように構成される。
【0044】
データベース120は、複数の異常類型、複数の参照時系列及び前記複数の異常類型と複数の参照時系列との所定の対応関係を記録している。複数の参照時系列は、相異なる複数の異常類型に一対一または多対一に連関される。
【0045】
複数の異常類型は、バッテリーBの異常電圧挙動を誘発する原因であって、バッテリーBの内部構造、製造方式、電極材料などに依存し得る。例えば、負極表面における金属リチウムの析出、正極タブの部分的な破れ、正極及び/または負極タブの断線、負極タブの反り、分離膜を介する正極板と負極板の短絡回路など、各々が異常類型として設定され得る。
【0046】
各参照時系列は、それに対応する異常類型を有するバッテリーから予め取得しておいた、バッテリー電圧の時間的変化を示すデータセットである。
【0047】
データベース120には、後述する実施例によるバッテリー診断方法を行うのに必要なプログラム及び各種データが予め保存され得る。データベース120は、例えば、メモリーデバイスは、フラッシュメモリー(登録商標)タイプ(flash memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk type)、SSDタイプ(Solid State Disk type,ソリッドステートディスクタイプ)、SDDタイプ(Silicon Disk Drive type,シリコンディスクドライブタイプ)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card micro type)、RAM(random access memory,ランダムアクセスメモリー)、SRAM(static random access memory,スタティックランダムアクセスメモリー)、ROM(read‐only memory,リードオンリーメモリー)、EEPROM(electrically erasable programmable read‐only memory,エレクトリカリーイレーサブルプログラマブルリードオンリーメモリー)、PROM(programmable read‐only memory,プログラマブルリードオンリーメモリー)の少なくとも一つのタイプの保存媒体を含み得る。
【0048】
制御部130は、ハードウェア的に、ASIC( application specific integrated circuit,特定用途向け集積回路)、DSP(digital signal processor,デジタルシグナルプロセッサ)、DSPD(digital signal processing device,デジタル信号処理デバイス)、PLD(programmable logic device,プログラマブルロジックデバイス)、FPGA(field programmable gate array,フィールドプログラマブルゲートアレイ)、マイクロプロセッサ(microprocessor)、その他の機能遂行のための電気的ユニットの少なくとも一つを用いて具現され得る。
【0049】
制御部130は、スイッチ20、及び/またはインターフェース部140に追加的に動作可能に結合し得る。
【0050】
インターフェース部140は、バッテリーシステム1の上位コントローラー2と通信可能に結合し得る。インターフェース部140は、上位コントローラー2からのメッセージを制御部130へ伝送し、制御部130からのメッセージを上位コントローラー2へ伝送し得る。制御部130からのメッセージは、各バッテリーBの異常を通知するための情報を含み得る。インターフェース部140と上位コントローラー2との間の通信には、例えば、LAN(local area network,ローカルエリア・ネットワーク)、CAN(controller area network,コントローラ・エリア・ネットワーク)、デージチェーンのような有線ネットワーク及び/またはブルートゥース(登録商標)、ジグビー(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などの近距離無線ネットワークが活用され得る。インターフェース部140は、制御部130及び/または上位コントローラー2から受信された情報を使用者が認識可能な形態で提供する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー)を含み得る。上位コントローラー2は、バッテリー診断装置100との通信によって収集されるバッテリー情報(例えば、異常電圧挙動)に基づき、充放電回路30を制御し得る。
【0051】
制御部130は、動作中において、常時または上位コントローラー2からの要請に応じて、複数のバッテリーB~Bの異常を検出するための診断モードを実行し得る。
【0052】
以下、図2図5を参照して、診断モードの実行中における制御部130の動作について説明する。
【0053】
図2は、正常のバッテリーのバッテリー電圧と異常のバッテリーのバッテリー電圧を同じ使用条件を有する時間区間にわたって取得した結果を例示する図である。
【0054】
制御部130は、単位時間毎に、電圧測定回路110からの電圧信号を収集する。単位時間は予め決められたものであって、例えば、電圧測定回路110によって電圧信号が生成される時間間隔の整数倍であり得る。
【0055】
制御部130は、電圧測定回路110から収集された電圧信号に基づき、複数のバッテリーB~Bに関連する複数の入力時系列を生成する。複数の入力時系列の生成は、所定の単位時間毎に反復され得る。
【0056】
制御部130は、複数のバッテリーB~Bが同じ使用条件(例えば、充電電流、充電電圧、放電電流、放電電圧、温度など)で、充電、放電または休止される時間区間にわたって収集された電圧信号に基づき、複数の入力時系列を生成し得る。
【0057】
複数のバッテリーB~Bが互いに直列に接続されて単一のグループを形成する場合、複数のバッテリーB~Bは全て同じ使用条件を有するものとして看做し得る。
【0058】
複数のバッテリーB~Bが複数のグループに分けられている場合、複数のグループの各々の使用条件の履歴に基づき、複数のグループが同じ使用条件を有する複数の時間区間を識別し、識別された各時間区間にわたって収集された電圧信号に基づき、複数の入力時系列を生成し得る。一例で、充放電回路30が特定日の10時00分から10時03分までの第1時間区間にわたって特定の使用条件で第1グループに対して充放電イベントを行い、充放電回路30が同じ特定日の11時00分から10時03分までの第2時間区間にわたって同じ使用条件で第2グループに対して充放電イベントを行った場合、制御部130は、第1グループの各バッテリーBに対しては、第1時間区間に関連する入力時系列を生成し、第2グループの各バッテリーBに対しては第2時間区間に関連する入力時系列を生成し得る。制御部130は、第1グループの各バッテリーBから第1時間区間にわたって取得された入力時系列と、第2グループの各バッテリーBから第2時間区間にわたって取得された入力時系列を、同じ比較群として取得し得る。
【0059】
入力時系列の生成には、ムービングウィンドウが活用され得る。ムービングウィンドウは、所定の時間サイズを有するものであって、開始点は特定の時点から所定の時間サイズだけ先立つ時点であり、終了点は、特定の時点であり得る。入力時系列の信号の長さは、ムービングウィンドウの時間サイズに対応する。例えば、単位時間が0.1秒であり、ムービングウィンドウが10超である場合、入力時系列の信号の長さは10秒/0.1秒=100であり得る。即ち、入力時系列は、順次に測定されたバッテリー電圧の変化を示す100個の電圧値が時間軸に整列されたベクトルであり得る。単位時間毎に、ムービングウィンドウの開始点と終了点は各々、単位時間だけ増加し得る。各入力時系列は、それに関連するバッテリーBのバッテリー電圧の時間的変化を示すデータセットである。
【0060】
図2において、横軸は時間であり、縦軸はバッテリー電圧であり、tとtは、各々同じ使用条件を有するものとして抽出された時間区間の開始点と終了点である。カーブ220は、正常のバッテリーの入力時系列に対応し、カーブ210は、異常のバッテリーの入力時系列に対応する。通常の場合、複数のバッテリーB~Bのうち、正常のバッテリーBの個数が異常のバッテリーBの個数よりも多い。この点に着眼して、制御部130は、複数の入力時系列を互いに比較することで、複数の入力時系列から異常入力時系列210を抽出する。異常入力時系列210は、複数の入力時系列の全般的な電圧挙動(例えば、平均)から一定の水準を超える異常電圧挙動を示す各入力時系列を称する。異常電圧挙動は、特定の時点または所定の時間の間、各バッテリーの入力時系列が所定の値を超える電圧降下(または電圧上昇)を有するか否か、各バッテリーの入力時系列が複数の入力時系列の平均(または中央値)から所定の値を超過する差を有するか否かなどのように多様な方式のうちで少なくとも一つを用いて判定可能であるので、具体的な説明は省略する。
【0061】
図3及び図4は、異常入力時系列と複数の参照時系列との比較過程を説明するために示したグラフである。図3において、横軸は時間であり、縦軸はバッテリー電圧である。
【0062】
制御部130は、異常入力時系列210を複数の参照時系列と一回ずつ比較することで、予め与えられた複数の異常類型のうちで異常入力時系列の異常類型を識別し得る。一例で、制御部130は、複数の参照時系列に対して予め付与された順序に合わせて、複数の参照時系列を順番に一つずつ異常入力時系列210と比較し得る。他の例で、制御部130は、複数の参照時系列のうちで二つ以上を同時に異常入力時系列210と比較し、残りの参照時系列に対しても同様に異常入力時系列210と比較し得る。異常類型の識別とは、異常入力時系列に関連するバッテリーBが如何なる故障状態を有しているかの判定を意味する。
【0063】
図3において、カーブ210は、図2のカーブ210と同一であり、カーブ320は、複数の参照時系列のうちで任意の一つの参照時系列に対応する。図3において、tは、異常入力時系列210と参照時系列320の各々の開始点を一致させたときの参照時系列320の終了点である。即ち、図3は、異常入力時系列210が参照時系列320よりも短いことを例示している。
【0064】
制御部130は、ダイナミックタイムワーピングを用いて、異常入力時系列210と参照時系列320との信号距離を示す類似度値DA1を算出し得る。異常入力時系列210が参照時系列320と類似であるほど、類似度値DA1は1に近くなり、異常入力時系列210が参照時系列320と完全に同一であれば、類似度値DA1は0である。制御部130は、ダイナミックタイムワーピングを用いて、異常入力時系列210と参照時系列320を互いに同じ信号の長さを有する整列された時系列310及び整列された時系列321に各々変換し得る。即ち、ダイナミックタイムワーピングによって、異常入力時系列210と参照時系列320のうちより短いもの210がより長いもの320の信号の長さに一致するように、より短いもの210の時間軸が伸び得る。前述したように、図3は、参照時系列320が異常入力時系列210よりも長いことを例示していることから、整列された時系列321は、参照時系列320と同じものとして示されている。ダイナミックタイムワーピングによる二つの信号間の距離及び二つの信号の時間軸の整列は公知であるので、具体的な説明は省略する。
【0065】
制御部130は、整列された時系列310と整列された時系列321とのピアソンの相関係数を示す類似度値DB1を算出し得る。整列された時系列310が、整列された時系列321と類似であるほど類似度値DB1は1に近くなり、整列された時系列310が整列された時系列321と完全に同一であれば、類似度値DB1は1である。
【0066】
図4を参照すると、カーブ410は、図3のカーブ210に対する最大-最小正規化の結果である正規化された時系列を示し、カーブ420は、図3のカーブ320、321に対する最大-最小正規化の結果である正規化された時系列を示している。図4において、横軸は時間であり、縦軸は正規化されたバッテリー電圧であって、0~1の範囲を有する。制御部130は、最大-最小正規化を用いて、異常入力時系列210と参照時系列320を正規化された時系列410及び正規化された時系列420に各々変換し得る。
【0067】
制御部130は、ダイナミックタイムワーピングを用いて、正規化された時系列410と正規化された時系列420との信号距離を示す類似度値DA2を算出し得る。制御部130は、ダイナミックタイムワーピングを用いて、正規化された時系列410と正規化された時系列420を互いに同じ時間の長さを有する整列された時系列411及び整列された時系列421に各々変換し得る。即ち、ダイナミックタイムワーピングによって、正規化された時系列410と正規化された時系列420のうちでより短いもの410がより長いもの420の信号の長さに一致するように、より短いもの410の時間軸が伸び得る。前述したように、図3は、参照時系列320が異常入力時系列210より長いことを示していることから、整列された時系列421は、正規化された時系列420と同じものとして図4に示しされている。または、制御部130、最第-最小正規化を用いて図3のカーブ310を正規化することで、整列された時系列411を取得することも可能である。
【0068】
制御部130は、整列された時系列411と整列された時系列421とのピアソンの相関係数を示す類似度値DB2を算出し得る。整列された時系列411が、整列された時系列421と類似であるほど類似度値DB2は1に近くなり、整列された時系列411が、整列された時系列421と完全に同一であれば、類似度値DB2は1である。
【0069】
これまで制御部130が、異常入力時系列210と参照時系列220との比較結果として、信号距離を示す二つの類似度値DA1、DA2と、ピアソンの相関係数を示す二つの類似度値DB1、DB2を算出可能であることを説明した。勿論、制御部130は、信号距離を示す二つの類似度値DA1、DA2を両方とも算出するとか、または二つの類似度値DA1、DA2のうちで一つのみを算出し、他の一つの算出は省略し得る。同様に、制御部130は、ピアソンの相関係数を示す二つの類似度値DB1、DB2を両方とも算出するか、または二つの類似度値DB1、DB2のうちで一つのみを算出し、他の一つの算出は省略し得る。
【0070】
制御部130は、二つの類似度値DA1、DA2のうち少なくとも一つと二つの類似度値DB1、DB2のうちで少なくとも一つに基づき、異常入力時系列210と参照時系列320とのマッチング指数を決定し得る。マッチング指数は、異常入力時系列210が参照時系列320と類似であるほどその値が減少するように予め与えられた関数から取得され得る。一例で、制御部130は、類似度値DA1を類似度値DB1で割った値と同じく、マッチング指数を決定し得る。
【0071】
他の例で、制御部130は、類似度値DA1を類似度値DB2で割った値と同じくマッチング指数を決定し得る。
【0072】
さらに他の例で、制御部130は、類似度値DA2を類似度値DB1で割った値と同じくマッチング指数を決定し得る。
【0073】
さらに他の例で、制御部130は、類似度値DA2を類似度値DB2で割った値と同じくマッチング指数を決定し得る。
【0074】
さらに他の例で、制御部130は、類似度値DA1と類似度値DA2の積を類似度値DB1で割った値と同じく、マッチング指数を決定し得る。
【0075】
さらに他の例で、制御部130は、類似度値DA1と類似度値DA2の積を類似度値DB2で割った値と同じく、マッチング指数を決定し得る。
【0076】
さらに他の例で、制御部130は、類似度値DA1を類似度値DB1と類似度値DB2の積で割った値と同じく、マッチング指数を決定し得る。
【0077】
さらに他の例で、制御部130は、類似度値DA2を類似度値DB1と類似度値DB2の積で割った値と同じく、マッチング指数を決定し得る。
【0078】
さらに他の例で、制御部130は、類似度値DA1と類似度値DA2の積を類似度値DB1と類似度値DB2の積で割った値と同じく、マッチング指数を決定し得る。
【0079】
因みに、同じ異常類型であるとしても、バッテリー電圧は、バッテリーBの他のパラメーター(例えば、電流、温度、SOC(State Of Charge)及びSOH(State Of Health)など)から影響を受け得る。最大-最小正規化は、他のパラメーターによって誘発された異常入力時系列210と参照時系列320との非類似性を一部減少させ得る。したがって、各参照時系列に関連するマッチング指数を決定することにおいて、類似度値DA1、DB1のうちで少なくとも一つに対して類似度値DA2、DB2のうちで少なくとも一つを組み合わせる場合、より正確な異常類型の識別が可能である。
【0080】
制御部130は、複数の参照時系列を一回ずつ異常入力時系列210と比較することで、複数の参照時系列に一対一に対応する複数のマッチング指数を決定し得る。その後、制御部130は、複数のマッチング指数のうちで最小マッチング指数を決定し、複数の異常類型のうちで最小マッチング指数の参照時系列に対応する異常類型をデータベース120から取得し、取得された異常類型と同じく異常入力時系列210の異常類型を識別し得る。
【0081】
図5は、本発明によるバッテリー診断方法を例示するフローチャートである。図5の方法は、図1に示したバッテリー診断装置100によって実行可能である。
【0082】
図1図5を参照すると、段階S510で、制御部130は、複数のバッテリーB~Bの各々の両端にかかる電圧であるバッテリー電圧を示す電圧信号を電圧測定回路110から収集する。
【0083】
段階S520で、制御部130は、電圧信号に基づいて、複数のバッテリーB~Bが同じ使用条件を有する時間区間にわたる、複数のバッテリーB~Bの各々のバッテリー電圧の変化履歴を示す複数の入力時系列を生成する。
【0084】
段階S530で、制御部130は、複数の入力時系列を互いに比較して、複数の入力時系列のうちで異常電圧挙動を示す異常入力時系列210を抽出する。
【0085】
段階S540で、制御部130は、異常入力時系列210を複数の参照時系列と一回ずつ比較して、複数の参照時系列と所定の対応関係を有する複数の異常類型のうちで異常入力時系列210の異常類型を識別する。制御部130は、複数の参照時系列の各々に対して、二つの類似度値DA1、DA2の少なくとも一つと二つの類似度値DB1、DB2の少なくとも一つを算出し、算出された値を組み合わせることで、複数の参照時系列に一対一に対応する複数のマッチング指数を決定する。その後、制御部130は、複数のマッチング指数のうちで最小マッチング指数に関連する参照時系列に対応する異常類型と同じく異常入力時系列210の異常類型を識別する。
【0086】
段階S550で、制御部130は、異常入力時系列210を段階S540で識別された異常類型に対応する新しい参照時系列としてデータベース120に追加し得る。これによって、複数の参照時系列を活用した異常類型の識別性能が強化され得る。追加的に、制御部130は、異常入力時系列210の異常類型を上位コントローラー2に伝送するか、または異常入力時系列210の異常類型を通知する視覚的及び/または聴覚的フィードバックをインターフェース部140を介して使用者に出力し得る。
【0087】
以上で説明した本発明の実施例は、必ずしも装置及び方法を通じて具現されることではなく、本発明の実施例の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を通じて具現され得、このような具現は、本発明が属する技術分野における専門家であれば、前述した実施例の記載から容易に具現できるはずである。
【0088】
以上、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0089】
また、上述の本発明は、本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想から脱しない範囲内で多様な置換、変形及び変更が可能であるため、上述の実施例及び添付された図面によって限定されず、多様な変形が行われるように各実施例の全部または一部を選択的に組み合わせて構成可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 バッテリーシステム
10 バッテリーアセンブリー
20 スイッチ
30 充放電回路
100 バッテリー診断装置
110 電圧測定回路
120 データベース
130 制御部
B バッテリー
図1
図2
図3
図4
図5