(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240826BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240826BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20240826BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20240826BHJP
H10K 59/124 20230101ALI20240826BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20240826BHJP
H10K 59/80 20230101ALI20240826BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20240826BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20240826BHJP
H10K 85/00 20230101ALI20240826BHJP
【FI】
G09F9/00 342
G09F9/30 309
G09F9/30 338
G09F9/30 365
H10K50/844
H10K59/122
H10K59/124
H10K59/35
H10K59/80
H10K71/00
H10K71/60
H10K85/00
(21)【出願番号】P 2023537758
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2021027550
(87)【国際公開番号】W WO2023007549
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新崎 庸平
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-252360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0386074(US,A1)
【文献】特開2016-197581(JP,A)
【文献】特開2020-038758(JP,A)
【文献】特開2021-093322(JP,A)
【文献】特開2019-204664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F9/00-9/46
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板上に薄膜トランジスタ層を形成する薄膜トランジスタ層形成工程と、
上記薄膜トランジスタ層上に表示領域を構成する複数のサブ画素に対応して複数の第1電極、複数の発光機能層及び共通の第2電極が順に積層された発光素子層を形成する発光素子層形成工程とを備える表示装置の製造方法であって、
上記発光素子層形成工程は、
上記薄膜トランジスタ層上に上記複数の第1電極を形成する第1電極形成工程と、
上記各第1電極の周端部を覆うようにエッジカバーを形成するエッジカバー形成工程と、
上記エッジカバーから露出する上記各第1電極上に上記各発光機能層を形成する発光機能層形成工程と
上記各発光機能層及び上記エッジカバーを覆うように上記第2電極を形成する第2電極形成工程とを備え、
上記第1電極形成工程では、上記複数の第1電極を形成する際に該複数の第1電極
が形成される領域の周囲に該各第1電極と同一材料の複数のダミー電極を形成し、
上記エッジカバー形成工程では、上記エッジカバーが形成される前に上記複数のダミー電極を除去することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置の製造方法において、
上記エッジカバー形成工程は、
上記複数の第1電極を覆って該各第1電極の周端部以外に対応する部分が該各第1電極の周端部に対応する部分よりも薄い樹脂被覆材を形成する樹脂被覆材形成工程と、
上記樹脂被覆材から露出する上記複数のダミー電極を除去するダミー電極除去工程と、
上記樹脂被覆材をアッシングにより薄肉化して上記エッジカバーを形成するアッシング工程とを備えることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載された表示装置の製造方法において、
上記樹脂被覆材形成工程では、感光性樹脂膜をハーフ露光で露光することにより上記樹脂被覆材を形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載された表示装置の製造方法において、
上記第1電極形成工程では、上記複数の第1電極
が形成される領域を囲むように上記複数のダミー電極を枠状に形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載された表示装置の製造方法において、
上記第1電極形成工程では、上記複数のダミー電極を複数の列に形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された表示装置の製造方法において、
上記第1電極形成工程では、上記複数のダミー電極のパターン密度が上記複数の第1電極のパターン密度と同じになるように上記複数のダミー電極を形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1つに記載された表示装置の製造方法において、
上記発光素子層形成工程の後に、上記発光素子層上に第1無機封止膜、有機封止膜及び第2無機封止膜が順に積層された封止膜を形成する封止膜形成工程を備えることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載された表示装置の製造方法において、
上記表示領域の周囲には、額縁領域が設けられ、
上記薄膜トランジスタ層は、上記表示領域において上記発光素子層側に平坦化膜が設けられ、
上記額縁領域には、上記表示領域を囲んで上記有機封止膜の周端部に重なるように第1堰き止め壁が設けられていると共に、該第1堰き止め壁を囲むように第2堰き止め壁が設けられ、
上記第1堰き止め壁及び上記第2堰き止め壁は、上記平坦化膜と同一材料により同一層に形成された下層樹脂層と、上記エッジカバーと同一材料により同一層に形成された上層樹脂層と、上記下層樹脂層及び上記上層樹脂層の間で上記各第1電極と同一材料により同一層に形成された金属層とを備えていることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1~
8の何れか1つに記載された表示装置の製造方法において、
上記各発光機能層は、有機エレクトロルミネッセンス層であることを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置に代わる表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(electroluminescence、以下、「EL」とも称する)素子を用いた自発光型の有機EL表示装置が注目されている。ここで、トップエミッション構造の有機EL表示装置は、画像表示を行う表示領域を構成する複数のサブ画素に対応して複数の第1電極(反射電極)、複数の有機EL層及び共通の第2電極(透明電極)が順に積層された有機EL素子層を備えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、モリブデンを含む積層構造の反射電極を形成する際に、硝酸、酢酸及びリン酸を含有する水溶液(弱酸性エッチング液)で一括エッチングした後に、オゾン水溶液で選択的にエッチングして、反射電極の外縁形状を均一化する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、有機EL表示装置では、表示領域の周囲に額縁領域が設けられ、表示領域において、複数の第1電極がマトリクス状に配置されているものの、額縁領域側の第1電極は、設計した大きさよりも小さく形成されることがある。そうなると、表示ムラとして視認されることにより、表示品位が低下してしまう。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表示領域に配置された第1電極の大きさのばらつきを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る表示装置の製造方法は、ベース基板上に薄膜トランジスタ層を形成する薄膜トランジスタ層形成工程と、上記薄膜トランジスタ層上に表示領域を構成する複数のサブ画素に対応して複数の第1電極、複数の発光機能層及び共通の第2電極が順に積層された発光素子層を形成する発光素子層形成工程とを備える表示装置の製造方法であって、上記発光素子層形成工程は、上記薄膜トランジスタ層上に上記複数の第1電極を形成する第1電極形成工程と、上記各第1電極の周端部を覆うようにエッジカバーを形成するエッジカバー形成工程と、上記エッジカバーから露出する上記各第1電極上に上記各発光機能層を形成する発光機能層形成工程と上記各発光機能層及び上記エッジカバーを覆うように上記第2電極を形成する第2電極形成工程とを備え、上記第1電極形成工程では、上記複数の第1電極を形成する際に該複数の第1電極の周囲に該各第1電極と同一材料の複数のダミー電極を形成し、上記エッジカバー形成工程では、上記エッジカバーが形成される前に上記複数のダミー電極を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表示領域に配置された第1電極の大きさのばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の表示領域の平面図である。
【
図3】
図3は、
図1中のIII-III線に沿った有機EL表示装置の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置を構成する薄膜トランジスタ層の等価回路図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置を構成する有機EL層の断面図である。
【
図6】
図6は、
図1中のVI-VI線に沿った有機EL表示装置の額縁領域の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置を製造する方法を構成する有機EL素子層工程におけるエッジカバー形成工程の樹脂被覆材形成工程を概略的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に続くエッジカバー形成工程のダミー電極除去工程を概略的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図8に続くエッジカバー形成工程のアッシング工程を概略的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法の実施例の実験結果を示す表である。
【
図11】
図11は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法の比較例の実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0011】
《第1の実施形態》
図1~
図11は、本発明に係る表示装置の製造方法の第1の実施形態を示している。なお、以下の各実施形態では、発光素子層を備えた表示装置として、有機EL素子層を備えた有機EL表示装置を例示する。ここで、
図1は、本実施形態の有機EL表示装置50の概略構成を示す平面図である。また、
図2は、有機EL表示装置50の表示領域Dの平面図である。また、
図3は、
図1中のIII-III線に沿った有機EL表示装置50の断面図である。また、
図4は、有機EL表示装置50を構成する薄膜トランジスタ層20の等価回路図である。また、
図5は、有機EL表示装置50を構成する有機EL層23の断面図である。また、
図6は、
図1中のVI-VI線に沿った有機EL表示装置50の額縁領域Fの断面図である。
【0012】
有機EL表示装置50は、
図1に示すように、例えば、矩形状に設けられた画像表示を行う表示領域Dと、表示領域Dの周囲に矩形枠状に設けられた額縁領域Fとを備えている。なお、本実施形態では、矩形状の表示領域Dを例示したが、この矩形状には、例えば、辺が円弧状になった形状、角部が円弧状になった形状、辺の一部に切り欠きがある形状等の略矩形状も含まれる。
【0013】
表示領域Dには、
図2に示すように、複数のサブ画素Pがマトリクス状に配列されている。また、表示領域Dでは、
図2に示すように、例えば、赤色の表示を行うための赤色発光領域Lrを有するサブ画素P、緑色の表示を行うための緑色発光領域Lgを有するサブ画素P、及び青色の表示を行うための青色発光領域Lbを有するサブ画素Pが互いに隣り合うように設けられている。なお、表示領域Dでは、例えば、赤色発光領域Lr、緑色発光領域Lg及び青色発光領域Lbを有する隣り合う3つのサブ画素Pにより、1つの画素が構成されている。
【0014】
額縁領域Fの
図1中の右端部には、端子部Tが一方向(図中の縦方向)に延びるように設けられている。また、額縁領域Fにおいて、
図1に示すように、表示領域D及び端子部Tの間には、図中の縦方向を折り曲げの軸として、例えば、180°に(U字状に)折り曲げ可能な折り曲げ部Bが一方向(図中の縦方向)に延びるように設けられている。また、額縁領域Fにおいて、後述する平坦化膜19aには、
図1、
図3及び
図6に示すように、平面視で略C状のトレンチGが平坦化膜19aを貫通するように設けられている。ここで、トレンチGは、
図1に示すように、平面視で端子部T側が開口するように略C字状に設けられている。
【0015】
有機EL表示装置50は、
図3及び
図6に示すように、ベース基板として設けられた樹脂基板層10と、樹脂基板層10上に設けられた薄膜トランジスタ(thin film transistor、以下、「TFT」とも称する)層20と、TFT層20上に発光素子層として設けられた有機EL素子層30と、有機EL素子層30上に設けられた封止膜40とを備えている。
【0016】
樹脂基板層10は、例えば、ポリイミド樹脂等により構成されている。
【0017】
TFT層20は、
図3に示すように、樹脂基板層10上に設けられたベースコート膜11と、ベースコート膜11上に設けられた複数の第1TFT9a、複数の第2TFT9b及び複数のキャパシタ9cと、各第1TFT9a、各第2TFT9b及び各キャパシタ9c上に設けられた平坦化膜19aとを備えている。ここで、TFT層20では、
図2及び
図4に示すように、図中の横方向に互いに平行に延びるように複数のゲート線14gが設けられている。また、TFT層20では、
図2及び
図4に示すように、図中の縦方向に互いに平行に延びるように複数のソース線18fが設けられている。また、TFT層20では、
図2及び
図4に示すように、図中の縦方向に互いに平行に延びるように複数の電源線18gが設けられている。そして、各電源線18gは、
図2に示すように、各ソース線18fと隣り合うように設けられている。また、TFT層20では、
図4に示すように、サブ画素P毎に、第1TFT9a、第2TFT9b及びキャパシタ9cが設けられている。
【0018】
ベースコート膜11、後述するゲート絶縁膜13、第1層間絶縁膜15及び第2層間絶縁膜17は、例えば、窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコン等の無機絶縁膜の単層膜又は積層膜により構成されている。
【0019】
第1TFT9aは、
図4に示すように、各サブ画素Pにおいて、対応するゲート線14g及びソース線18fに電気的に接続されている。また、第1TFT9aは、
図3に示すように、ベースコート膜11上に順に設けられた半導体層12a、ゲート絶縁膜13、ゲート電極14a、第1層間絶縁膜15、第2層間絶縁膜17、並びにソース電極18a及びドレイン電極18bを備えている。ここで、半導体層12aは、例えば、LTPS(low temperature polysilicon)等のポリシリコン膜により、
図3に示すように、ベースコート膜11上に島状に設けられ、チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を有している。また、ゲート絶縁膜13は、
図3に示すように、半導体層12aを覆うように設けられている。また、ゲート電極14aは、
図3に示すように、ゲート絶縁膜13上に半導体層12aのチャネル領域と重なるように設けられている。また、第1層間絶縁膜15及び第2層間絶縁膜17は、
図3に示すように、ゲート電極14aを覆うように順に設けられている。また、ソース電極18a及びドレイン電極18bは、
図3に示すように、第2層間絶縁膜17上に互いに離間するように設けられている。また、ソース電極18a及びドレイン電極18bは、
図3に示すように、ゲート絶縁膜13、第1層間絶縁膜15及び第2層間絶縁膜17の積層膜に形成された各コンタクトホールを介して、半導体層12aのソース領域及びドレイン領域にそれぞれ電気的に接続されている。なお、ソース電極18a及びドレイン電極18b、並びに後述するソース電極18c及びドレイン電極18dは、ソース線18f及び電源線18gと同一材料により同一層に形成されている。
【0020】
第2TFT9bは、
図4に示すように、各サブ画素Pにおいて、対応する第1TFT9a及び電源線18gに電気的に接続されている。また、第2TFT9bは、
図3に示すように、ベースコート膜11上に順に設けられた半導体層12b、ゲート絶縁膜13、ゲート電極14b、第1層間絶縁膜15、第2層間絶縁膜17、並びにソース電極18c及びドレイン電極18dを備えている。ここで、半導体層12bは、例えば、LTPS等のポリシリコン膜により、
図3に示すように、ベースコート膜11上に島状に設けられ、チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を有している。また、ゲート絶縁膜13は、
図3に示すように、半導体層12bを覆うように設けられている。また、ゲート電極14bは、
図3に示すように、ゲート絶縁膜13上に半導体層12bのチャネル領域と重なるように設けられている。また、第1層間絶縁膜15及び第2層間絶縁膜17は、
図3に示すように、ゲート電極14bを覆うように順に設けられている。また、ソース電極18c及びドレイン電極18dは、
図3に示すように、第2層間絶縁膜17上に互いに離間するように設けられている。また、ソース電極18c及びドレイン電極18dは、
図3に示すように、ゲート絶縁膜13、第1層間絶縁膜15及び第2層間絶縁膜17の積層膜に形成された各コンタクトホールを介して、半導体層12bのソース領域及びドレイン領域にそれぞれ電気的に接続されている。
【0021】
なお、本実施形態では、トップゲート型の第1TFT9a及び第2TFT9bを例示したが、第1TFT9a及び第2TFT9bは、ボトムゲート型のTFTであってもよい。
【0022】
キャパシタ9cは、
図4に示すように、各サブ画素Pにおいて、対応する第1TFT9a及び電源線18gに電気的に接続されている。ここで、キャパシタ9cは、
図3に示すように、ゲート線14g、ゲート電極14a及び14bと同一材料により同一層に形成された下側導電層14cと、下側導電層14cを覆うように設けられた第1層間絶縁膜15と、第1層間絶縁膜15上に下側導電層14cと重なるように設けられた上側導電層16cとを備えている。なお、上側導電層16cは、
図3に示すように、第2層間絶縁膜17に形成されたコンタクトホールを介して電源線18gに電気的に接続されている。
【0023】
平坦化膜19aは、表示領域Dにおいて、平坦な表面を有し、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等の有機樹脂材料、又はポリシロキサン系のSOG(spin on glass)材料等により構成されている。
【0024】
有機EL素子層30は、
図3に示すように、複数のサブ画素Pに対応して、マトリクス状に配列するように複数の発光素子として設けられた複数の有機EL素子25と、各有機EL素子25の後述する第1電極21aの周端部を覆うように全てのサブ画素Pに共通して格子状に設けられたエッジカバー22aとを備えている。
【0025】
有機EL素子25は、
図3に示すように、各サブ画素Pにおいて、TFT層20の平坦化膜19a上に設けられた第1電極21aと、第1電極21a上に発光機能層として設けられた有機EL層23と、有機EL層23上に設けられた第2電極24とを備えている。
【0026】
第1電極21aは、
図3に示すように、平坦化膜19aに形成されたコンタクトホールを介して、各サブ画素Pの第2TFT9bのドレイン電極18dに電気的に接続されている。また、第1電極21aは、有機EL層23にホール(正孔)を注入する機能を有している。また、第1電極21aは、有機EL層23への正孔注入効率を向上させるために、仕事関数の大きな材料で形成するのがより好ましい。ここで、第1電極21aを構成する材料としては、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、金(Au)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、マンガン(Mn)、インジウム(In)、イッテルビウム(Yb)、フッ化リチウム(LiF)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、イリジウム(Ir)、スズ(Sn)等の金属材料が挙げられる。また、第1電極21aを構成する材料は、例えば、アスタチン(At)/酸化アスタチン(AtO
2)等の合金であっても構わない。さらに、第1電極21aを構成する材料は、例えば、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような導電性酸化物等であってもよい。また、第1電極21aは、上記材料からなる層を複数積層して形成されていてもよい。なお、仕事関数の大きな化合物材料としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等が挙げられる。
【0027】
有機EL層23は、
図5に示すように、第1電極21a上に順に設けられた正孔注入層1、正孔輸送層2、発光層3、電子輸送層4及び電子注入層5を備えている。
【0028】
正孔注入層1は、陽極バッファ層とも呼ばれ、第1電極21aと有機EL層23とのエネルギーレベルを近づけ、第1電極21aから有機EL層23への正孔注入効率を改善する機能を有している。ここで、正孔注入層1を構成する材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体等が挙げられる。
【0029】
正孔輸送層2は、第1電極21aから有機EL層23への正孔の輸送効率を向上させる機能を有している。ここで、正孔輸送層2を構成する材料としては、例えば、ポルフィリン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリ-p-フェニレンビニレン、ポリシラン、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミン置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、水素化アモルファスシリコン、水素化アモルファス炭化シリコン、硫化亜鉛、セレン化亜鉛等が挙げられる。
【0030】
発光層3は、第1電極21a及び第2電極24による電圧印加の際に、第1電極21a及び第2電極24から正孔及び電子がそれぞれ注入されると共に、正孔及び電子が再結合する領域である。ここで、発光層3は、発光効率が高い材料により形成されている。そして、発光層3を構成する材料としては、例えば、金属オキシノイド化合物[8-ヒドロキシキノリン金属錯体]、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ジフェニルエチレン誘導体、ビニルアセトン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ブタジエン誘導体、クマリン誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、スチリル誘導体、スチリルアミン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、トリススチリルベンゼン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、アミノピレン誘導体、ピリジン誘導体、ローダミン誘導体、アクイジン誘導体、フェノキサゾン、キナクリドン誘導体、ルブレン、ポリ-p-フェニレンビニレン、ポリシラン等が挙げられる。
【0031】
電子輸送層4は、電子を発光層3まで効率良く移動させる機能を有している。ここで、電子輸送層4を構成する材料としては、例えば、有機化合物として、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体、シロール誘導体、金属オキシノイド化合物等が挙げられる。
【0032】
電子注入層5は、第2電極24と有機EL層23とのエネルギーレベルを近づけ、第2電極24から有機EL層23へ電子が注入される効率を向上させる機能を有し、この機能により、有機EL素子25の駆動電圧を下げることができる。なお、電子注入層5は、陰極バッファ層とも呼ばれている。ここで、電子注入層5を構成する材料としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、フッ化バリウム(BaF2)のような無機アルカリ化合物、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ストロンチウム(SrO)等が挙げられる。
【0033】
第2電極24は、
図3に示すように、各有機EL層23及びエッジカバー22aを覆うように設けられている。また、第2電極24は、有機EL層23に電子を注入する機能を有している。また、第2電極24は、有機EL層23への電子注入効率を向上させるために、仕事関数の小さな材料で構成するのがより好ましい。ここで、第2電極24を構成する材料としては、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、金(Au)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、ナトリウム(Na)、ルテニウム(Ru)、マンガン(Mn)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、イッテルビウム(Yb)、フッ化リチウム(LiF)等が挙げられる。また、第2電極24は、例えば、マグネシウム(Mg)/銅(Cu)、マグネシウム(Mg)/銀(Ag)、ナトリウム(Na)/カリウム(K)、アスタチン(At)/酸化アスタチン(AtO
2)、リチウム(Li)/アルミニウム(Al)、リチウム(Li)/カルシウム(Ca)/アルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)/カルシウム(Ca)/アルミニウム(Al)等の合金により形成されていてもよい。また、第2電極24は、例えば、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等の導電性酸化物により形成されていてもよい。また、第2電極24は、上記材料からなる層を複数積層して形成されていてもよい。なお、仕事関数が小さい材料としては、例えば、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、フッ化リチウム(LiF)、マグネシウム(Mg)/銅(Cu)、マグネシウム(Mg)/銀(Ag)、ナトリウム(Na)/カリウム(K)、リチウム(Li)/アルミニウム(Al)、リチウム(Li)/カルシウム(Ca)/アルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)/カルシウム(Ca)/アルミニウム(Al)等が挙げられる。
【0034】
エッジカバー22aは、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等の有機樹脂材料、又はポリシロキサン系のSOG材料等により構成されている。ここで、エッジカバー22aの表面の一部は、
図3に示すように、図中の上方に突出して、島状に設けられた画素フォトスペーサになっている。
【0035】
封止膜40は、
図3及び
図6に示すように、第2電極24を覆うように設けられた第1無機封止膜36と、第1無機封止膜36上に設けられた有機封止膜37と、有機封止膜37を覆うように設けられた第2無機封止膜38を備え、有機EL層23を水分や酸素等から保護する機能を有している。ここで、第1無機封止膜36及び第2無機封止膜38は、例えば、酸化シリコン(SiO
2)や酸化アルミニウム(Al
2O
3)、四窒化三ケイ素(Si
3N
4)のような窒化シリコン(SiNx(xは正数))、炭窒化ケイ素(SiCN)等の無機材料により構成されている。また、有機封止膜37は、例えば、アクリル樹脂、ポリ尿素樹脂、パリレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の有機材料により構成されている。
【0036】
また、有機EL表示装置50は、
図1に示すように、額縁領域Fにおいて、表示領域Dを囲んで有機封止膜37の周端部に重なるように枠状に設けられた第1堰き止め壁Waと、第1堰き止め壁Waを囲むように枠状に設けられた第2堰き止め壁Wbとを備えている。
【0037】
第1堰き止め壁Waは、
図6に示すように、平坦化膜19aと同一材料により同一層に形成された下層樹脂層19bと、下層樹脂層19b上に設けられ、エッジカバー22aと同一材料により同一層に形成された上層樹脂層22cと、下層樹脂層19b及び上層樹脂層22cの間に設けられた金属層21bとを備えている。ここで、金属層21bは、
図6に示すように、額縁領域Fにおいて、トレンチG、第1堰き止め壁Wa及び第2堰き止め壁Wbと重なるように、略C字状に設けられている。なお、金属層21bは、第1電極21aと同一材料により同一層に形成されている。
【0038】
第2堰き止め壁Wbは、
図6に示すように、平坦化膜19aと同一材料により同一層に形成された下層樹脂層19cと、下層樹脂層19c上に設けられ、エッジカバー22aと同一材料により同一層に形成された上層樹脂層22dと、下層樹脂層19c及び上層樹脂層22dの間に設けられた金属層21bとを備えている。
【0039】
また、有機EL表示装置50は、
図1に示すように、額縁領域Fにおいて、トレンチGの開口した部分で幅広に延び、表示領域D側がトレンチGの内側に線状に延び、表示領域Dの反対側の両端部が端子部Tに延びる第1額縁配線18hを備えている。ここで、第1額縁配線18hは、額縁領域Fの表示領域D側で電源線18gに電気的に接続され、端子部Tで高電源電圧(ELVDD)が入力されるように構成されている。また、第1額縁配線18h及び後述する第2額縁配線18iは、ソース線18f及び電源線18gと同一材料により同一層に形成されている。
【0040】
また、有機EL表示装置50は、
図1に示すように、額縁領域Fにおいて、第1堰き止め壁Wa及び第2堰き止め壁Wbと重なるように、トレンチGの外側に略C状に設けられ、両端部が端子部Tに延びる第2額縁配線18iを備えている。ここで、第2額縁配線18iは、
図6に示すように、トレンチGに形成された金属層21bを介して、第2電極24に電気的に接続され、端子部Tで低電源電圧(ELVSS)が入力されるように構成されている。
【0041】
また、有機EL表示装置50は、
図3及び
図6に示すように、額縁領域Fにおいて、図中の上方に突出するように、周辺フォトスペーサSを備えている。ここで、周辺フォトスペーサSは、
図3及び
図6に示すように、平坦化膜19aと同一材料により同一層に形成された下層樹脂層19dと、下層樹脂層19d上に設けられ、エッジカバー22aと同一材料により同一層に形成された複数の上層樹脂層22bと、下層樹脂層19d及び各上層樹脂層22bの間に設けられた金属層21bとを備えている。
【0042】
上述した有機EL表示装置50は、各サブ画素Pにおいて、ゲート線14gを介して第1TFT9aにゲート信号を入力することにより、第1TFT9aをオン状態にし、ソース線18fを介して第2TFT9bのゲート電極14b及びキャパシタ9cにデータ信号を書き込み、第2TFT9bのゲート電圧に応じた電源線18gからの電流が有機EL素子25の有機EL層23に供給されることにより、有機EL層23の発光層3が発光して、画像表示を行うように構成されている。なお、有機EL表示装置50では、第1TFT9aがオフ状態になっても、第2TFT9bのゲート電圧がキャパシタ9cによって保持されるので、次のフレームのゲート信号が入力されるまで発光層3による発光が維持される。
【0043】
次に、本実施形態の有機EL表示装置50の製造方法について説明する。なお、本実施形態の有機EL表示装置50の製造方法は、TFT層形成工程と、第1電極形成工程、エッジカバー形成工程、有機EL層形成工程及び第2電極形成工程を含む有機EL素子層形成工程と、封止膜形成工程とを備える。ここで、
図7は、有機EL素子層工程におけるエッジカバー形成工程の樹脂被覆材形成工程を概略的に示す断面図である。また、
図8は、
図7に続くエッジカバー形成工程のダミー電極除去工程を概略的に示す断面図である。また、
図9は、
図8に続くエッジカバー形成工程のアッシング工程を概略的に示す断面図である。
【0044】
<TFT層形成工程>
例えば、ガラス基板上に形成した樹脂基板層10の表面に、周知の方法を用いて、ベースコート膜11、第1TFT9a、第2TFT9b、キャパシタ9c、及び平坦化膜19aを形成して、TFT層20を形成する。
【0045】
<有機EL素子層形成工程(発光素子層形成工程)>
まず、上記TFT層形成工程で形成されたTFT層20の平坦化膜19a上に、例えば、スパッタリング法により、銀膜等の金属反射膜を成膜した後に、その金属反射膜に対して、フォトリソグラフィ処理、リン酸、硝酸及び酢酸を含むエッチャントによるエッチング処理、並びにレジストの剥離処理を行うことにより、表示領域Dに複数の第1電極21aをマトリクス状に形成すると共に、額縁領域Fに複数の第1電極21aを囲むように複数のダミー電極21dを枠状に形成する(第1電極形成工程)。ここで、複数のダミー電極21dは、例えば、4列等の複数列に設けられている。なお、第1電極形成工程では、複数のダミー電極21dのパターン密度が複数の第1電極21aのパターン密度と同じになるように複数のダミー電極21dを形成する。また、複数のダミー電極21dは、例えば、
図3の断面図でいえば、額縁領域Fの第1額縁配線18hと重なる領域において、平坦化膜19a上に設けられている。
【0046】
続いて、複数の第1電極21a及び複数のダミー電極21dが形成された基板表面に、例えば、スピンコート法やスリットコート法により、ポリイミド系の感光性樹脂膜22を塗布した後に、その感光性樹脂膜22に対して、プリベーク、ハーフ露光、現像及びポストベークを行うことにより、
図7に示すように、樹脂被覆材22eを形成する(樹脂被覆材形成工程/エッジカバー形成工程)。ここで、樹脂被覆材22eは、
図7に示すように、複数の第1電極21aを覆い且つ複数のダミー電極21dを露出するように設けられ、各第1電極21aの周端部以外に対応する部分が各第1電極21aの周端部に対応する部分よりも薄くなっている。なお、樹脂被覆材22eは、ハーフトーンマスクやグレイトーンマスクを用いて、感光性樹脂膜22をハーフ露光で露光することにより、形成することができる。
【0047】
その後、リン酸、硝酸及び酢酸を含むエッチャントによるエッチング処理により、
図8に示すように、樹脂被覆材22eから露出する複数のダミー電極21dを除去する(ダミー電極除去工程/エッジカバー形成工程)。
【0048】
さらに、樹脂被覆材22eをアッシングにより薄肉化することにより、
図9に示すように、エッジカバー22aを形成する(アッシング工程/エッジカバー形成工程)。
【0049】
続いて、エッジカバー22aから露出する各第1電極21a上に、例えば、真空蒸着法により、有機EL層23(正孔注入層1、正孔輸送層2、発光層3、電子輸送層4、電子注入層5)を形成する(有機EL層形成工程(発光機能層形成工程))。
【0050】
最後に、各有機EL層23及びエッジカバーを覆うように、例えば、真空蒸着法により、ITO膜を成膜して、第2電極24を形成する(第2電極形成工程)。
【0051】
以上のようにして、有機EL素子層30を形成することができる。
【0052】
<封止膜形成工程>
まず、上記有機EL素子層形成工程で形成された有機EL素子層30が形成された基板表面に、マスクを用いて、例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜等の無機絶縁膜をプラズマCVD(chemical vapor deposition)法により成膜して、第1無機封止膜36を形成する。
【0053】
続いて、第1無機封止膜36が形成された基板表面に、例えば、インクジェット法により、アクリル樹脂等の有機樹脂材料を成膜して、有機封止膜37を形成する。
【0054】
さらに、有機封止膜37が形成された基板表面に、マスクを用いて、例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜等の無機絶縁膜をプラズマCVD法により成膜して、第2無機封止膜38を形成することにより、封止膜40を形成する。
【0055】
最後に、封止膜40が形成された基板表面に保護シート(不図示)を貼付した後に、樹脂基板層10のガラス基板側からレーザー光を照射することにより、樹脂基板層10の下面からガラス基板を剥離させ、さらに、ガラス基板を剥離させた樹脂基板層10の下面に保護シート(不図示)を貼付する。
【0056】
以上のようにして、本実施形態の有機EL表示装置50を製造することができる。
【0057】
次に、本実施形態の有機EL表示装置50の製造方法について具体的に行った実験について説明する。ここで、
図10及び
図11は、有機EL表示装置50の製造方法の実施例及び比較例の実験結果を示す表である。
【0058】
具体的に実施例では、上述した有機EL表示装置50の製造方法を用いて、2.13型の有機EL表示装置を試作した。ここで、実施例では、第1電極の設計寸法を縦39.2μm×横42.7μmとし、その設計ピッチを縦44.0μm×横49.0μmとし、4列で形成したダミー電極は、第1電極と同様に、その設計寸法を縦39.2μm×横42.7μmとし、その設計ピッチを縦44.0μm×横49.0μmとした。
【0059】
また、比較例では、上記第1電極形成工程でダミー電極21dの形成を省略し、上記エッジカバー形成工程形成の樹脂被覆材形成工程の感光性樹脂膜22に対して、プリベーク、フル露光、現像及びポストベークを行うことにより、エッジカバー22aを1段階で形成した。なお、第1電極は、実施例と同様に、その設計寸法を縦39.2μm×横42.7μmとし、その設計ピッチを縦44.0μm×横49.0μmとした。
【0060】
そして、実施例及び比較例で試作した有機EL表示装置(パネル)において、第1電極の縦方向及び横方向の大きさをレーザー顕微鏡により測定して、第1電極の大きさのばらつきを評価した。なお、大きさの測定点については、平面視で長方形の2.13型のパネルにおいて、一対の長辺の一方の長辺における端から1/4程度の位置(表中の外周部の丸数字1)、端から1/2程度の位置(表中の外周部の丸数字2)、及び端から3/4程度の位置(表中の外周部の丸数字3)であり、一対の長辺の間の中間に位置する中間線における端から1/4程度の位置(表中の中央部の丸数字1)、1/2程度の位置(表中の中央部の丸数字2)、及び端から3/4程度の位置(表中の中央部の丸数字3)である。
【0061】
実験結果としては、実施例では、
図10の表に示すように、中央部と外周部との差が縦で0.20μmとなり、横で0.24μmとなり、比較例では、
図11の表に示すように、中央部と外周部との差が縦で1.24μmとなり、横で1.41μmとなった。そのため、実施例では、中央部と外周部との差が縦方向で比較例の16.1%になり、横方向で比較例の17.0%になり、第1電極の大きさのばらつきについて、改善効果が確認された。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の有機EL表示装置50の製造方法によれば、第1電極形成工程では、複数の第1電極21aを形成する際に複数の第1電極21aの周囲に各第1電極21aと同一材料の複数のダミー電極21dを形成し、エッジカバー形成工程では、エッジカバー22aが形成される前に複数のダミー電極21dを除去する。そのため、第1電極形成工程において、銀膜等の金属反射膜をエッチングでパターニングすることにより、表示領域Dに複数の第1電極21aがマトリクス状に形成されると共に、複数の第1電極21aの周囲に複数のダミー電極21dが枠状に形成される。ここで、第1電極形成工程において、金属反射膜をエッチングする際には、パターン密度の差異によりエッチングレートに差異が生じてしまうものの、最外のパターン形成層が外周部の第1電極21aでなくその周囲のダミー電極21dになるので、パターン密度の差異が相対的に小さい中央部の第1電極21aと外周部の第1電極21aとの間の大きさの差異は、パターン密度の差異が相対的に大きい中央部の第1電極21aとダミー電極21dとの間の大きさの差異よりも小さくなる。なお、パターン密度の差異が大きくなると、エッチングレートの差異が大きくなり、パターン密度の差異が小さくなると、エッチングレートの差異が小さくなる傾向にある。これにより、表示領域Dにおいて、中央部の第1電極21aと外周部の第1電極21aとの間でエッチングレートの差異が小さくなるので、表示領域Dに配置された第1電極21aの大きさのばらつきを抑制することができ、表示ムラの発生が抑制され、表示品位を確保することができる。
【0063】
また、本実施形態の有機EL表示装置50の製造方法によれば、エッジカバー形成工程は、感光性樹脂膜22をハーフ露光で露光して複数の第1電極21aを覆って各第1電極21aの周端部以外に対応する部分が各第1電極21aの周端部に対応する部分よりも薄い樹脂被覆材22eを形成する工程と、樹脂被覆材22aから露出する複数のダミー電極21dを除去する工程と、樹脂被覆材22eをアッシングにより薄肉化してエッジカバー22aを形成する工程とを備える。これにより、フォトマスクを追加することなく、樹脂被覆材22eを形成し、樹脂被覆材22eを変成してエッジカバー22aを形成するので、第1電極21aの大きさのばらつきが抑制された有機EL表示装置50を低コストで製造することができる。
【0064】
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層の5層積層構造の有機EL層を例示したが、有機EL層は、例えば、正孔注入層兼正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層兼電子注入層の3層積層構造であってもよい。
【0065】
また、上記各実施形態では、第1電極を陽極とし、第2電極を陰極とした有機EL表示装置を例示したが、本発明は、有機EL層の積層構造を反転させ、第1電極を陰極とし、第2電極を陽極とした有機EL表示装置にも適用することができる。
【0066】
また、上記各実施形態では、第1電極に接続されたTFTの電極をドレイン電極とした有機EL表示装置を例示したが、本発明は、第1電極に接続されたTFTの電極をソース電極と呼ぶ有機EL表示装置にも適用することができる。
【0067】
また、上記各実施形態では、表示装置として有機EL表示装置を例示したが、本発明は、例えば、アクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置等の表示装置にも適用することができる。
【0068】
また、上記各実施形態では、表示装置として有機EL表示装置を例に挙げて説明したが、本発明は、電流によって駆動される複数の発光素子を備えた表示装置に適用することができ、例えば、量子ドット含有層を用いた発光素子であるQLED(Quantum-dot light emitting diode)を備えた表示装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明は、フレキシブルな表示装置について有用である。
【符号の説明】
【0070】
D 表示領域
F 額縁領域
P サブ画素
S 周辺フォトスペーサ
Wa 第1堰き止め壁
Wb 第2堰き止め壁
10 樹脂基板層(ベース基板)
19a 平坦化膜
19b,19c,19d 下層樹脂層
20 TFT層(薄膜トランジスタ層)
21a 第1電極
21b 金属層
21d ダミー電極
22 感光性樹脂膜
22a エッジカバー
22b,22c,22d 上層樹脂層
22e 樹脂被覆材
23 有機EL層(有機エレクトロルミネッセンス層、発光機能層)
24 第2電極
30 有機EL素子層(発光素子層)
36 第1無機封止膜
37 有機封止膜
38 第2無機封止膜
40 封止膜
50 有機EL表示装置