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特許7543571硫黄-炭素複合体を含む正極及びこれを含むリチウムイオン二次電池
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  • 特許-硫黄-炭素複合体を含む正極及びこれを含むリチウムイオン二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】硫黄-炭素複合体を含む正極及びこれを含むリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20240826BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240826BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240826BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20240826BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01G11/86
H01G11/42
H01M4/62 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023546129
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 KR2022016764
(87)【国際公開番号】W WO2023075528
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0147386
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】イン-テ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ミョン-ジュン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-フィ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ヒョ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン-ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ラン・チェ
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-500713(JP,A)
【文献】特表2023-524354(JP,A)
【文献】特表2020-533768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M10/00-10/39
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学素子の正極活物質用硫黄-炭素複合体を製造する方法であって、
前記方法は、
(S1)マイクロ波(microwave)を用いて多孔性炭素材料を前処理するステップと、
(S2)前記(S1)の結果物および硫黄を混合するステップと、
(S3)前記(S2)の結果物を複合化するステップと、
を含み、
前記(S1)ステップでは、下記の式1によるMPPTが30超かつ3000未満の値を有するように制御される、硫黄-炭素複合体の製造方法:
[式1]
MPPT(w*sec/g)=W×(S÷Wt)
前記式1において、Wはマイクロ波の出力(w)を表し、Sはマイクロ波の照射時間(秒)を表し、Wtは炭素材料の重量(g)を表す。
【請求項2】
前記S(マイクロ波の照射時間)は、5秒以上である、請求項1に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項3】
前記(S1)の結果物は、(S2)で硫黄と混合される前に不活性気体の雰囲気下で保管される、請求項1に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項4】
前記不活性気体は、N、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、およびラドンから選ばれる1種以上を含む、請求項3に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項5】
前記(S2)ステップは、(S1)ステップを行った後の10分以内に行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項6】
前記炭素材料は、BET比表面積が1,600m/gを超える、請求項1に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項7】
前記炭素材料は、平均気孔径が10nm未満である、請求項6に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項8】
前記炭素材料は、気孔度が50vol%以上である、請求項6に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項9】
前記気孔度は、60vol%~80vol%である、請求項8に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項10】
前記炭素材料は、直径が1nm以下の微細気孔の割合が、炭素の全気孔体積100vol%に対して40vol%以上である、請求項6に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月29日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0147386号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、高エネルギー密度を有し、かつポリスルフィド(多硫化物)の溶出を抑制することにより、初期低い不可逆特性を改善したリチウムイオン二次電池及び前記電池用正極に関する。
【背景技術】
【0003】
既存のカソライト(catholyte)システムを活用するリチウム硫黄(Li-S)電池は、Liの形の中間生成物であるポリスルフィド(polysulfide:多硫化物)生成による液相反応(catholyte type:カソライト型)に依存して硫黄(Sulfur)の高い理論放電容量(1675mAh/g)を十分に活用せず、ポリスルフィド溶出による電池劣化により電池の寿命特性が低下するという問題がある。
【0004】
近年、ポリスルフィドの溶出を抑制する難溶性電解質(sparingly solvating electrolyte、SSE)システムが開発されており、1,500(m/g)を超える高比表面積の炭素素材を適用した場合、理論容量の90%以上を活用できることが確認された。しかしながら、当該炭素素材の場合、高い比表面積のために水分などの不純物が比較的多く含まれているので、素材活用率が低いという問題がある。既存の温度を高める方法(オーブンなど)は、時間が長くかかり、不純物を効果的に除去することが困難であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高比表面積の炭素材料を用いて、400Wh/kg以上、600Wh/L以上の高いエネルギー密度を有する電池システム用の正極活物質およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、前記正極活物質を含むリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明の他の目的及び利点が、特許請求の範囲に記載された手段または方法及びその組み合わせによって実現できることは容易に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1側面は、電気化学素子の正極活物質用硫黄-炭素複合体を製造する方法であって、
前記方法は、
(S1)マイクロ波(microwave)を用いて多孔性炭素材料を前処理するステップと、
(S2)前記(S1)の結果物及び硫黄を混合するステップと、
(S3)前記(S2)の結果物を複合化するステップと、
を含み、
前記(S1)ステップでは、下記の式1によるMPPTが30超かつ3000未満の値を有するように制御される。
【0009】
[式1]
MPPT(W*sec/g)=W×(S÷Wt)
前記式1において、Wはマイクロ波の出力を表し、Sはマイクロ波の照射時間(秒)を表し、Wtは炭素材料の重量(g)を表す。
【0010】
本発明の第2側面では、前記第1側面において、前記S(マイクロ波の照射時間)は、5秒以上である。
【0011】
本発明の第3側面では、前記第1又は第2側面において、前記(S1)の結果物は、(S2)で硫黄と混合される前に不活性気体の雰囲気下で保管される。
【0012】
本発明の第4側面では、前記第3側面において、前記不活性気体は、N、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、およびラドンから選ばれる1種以上を含む。
【0013】
本発明の第5側面では、前記第1から第4側面のいずれか1つにおいて、前記(S2)ステップは、(S1)ステップを行った後の10分以内に行われる。
【0014】
本発明の第6側面では、前記第1から第5側面のいずれか1つにおいて、前記炭素材料は、BET比表面積が1,600m/gを超える。
【0015】
本発明の第7側面では、前記第6側面において、前記炭素材料は、平均気孔径が10nm未満である。
【0016】
本発明の第8側面では、前記第6又は第7側面において、前記炭素材料は、気孔度が50vol%以上である。
【0017】
本発明の第9側面では、前記第6から第8側面のいずれか一つにおいて、前記気孔度が60vol%~80vol%である。
【0018】
本発明の第10側面では、前記第6から第9側面のいずれか1つにおいて、前記炭素材料は、直径が1nm以下の微細気孔の割合が、炭素の全気孔体積100vol%に対して40vol%以上である。
【発明の効果】
【0019】
本発明による製造方法によれば、炭素材料の水分、その他の不純物が効果的に除去されるので、前記方法によって製造された硫黄-炭素複合体をリチウム-硫黄電池の正極活物質に適用した場合、リチウム-硫黄電池の硫黄の担持能力及び過電圧性能を改善することができる。また、正極活物質の初期不可逆容量が減少し、出力特性及び寿命特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例1、比較例1及び比較例2のTGA分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0023】
本明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」または「備える」としたとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外するわけではなく、他の構成要素をさらに含んでいたり備えていたりしてもよいことを意味する。
【0024】
また、本明細書の全般にわたって使用される用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値において、またはその数値に近づいた意味として使われ、本発明の理解への一助となるために正確な、あるいは絶対的な数値が言及された開示の内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防ぐために使用される。
【0025】
本明細書の全般にわたって、「A及び/又はB」という記載は、「AまたはBまたはこれらの両方」を意味する。
【0026】
本発明において「比表面積」は、BET法によって測定したものであり、具体的には、BEL Japan社のBELSORP-mino IIを用いて液体窒素温度(77K)下での窒素ガス吸着量から算出することができる。
【0027】
本明細書で使用される用語「ポリスルフィド(多硫化物)」は、「ポリスルフィドイオン(S 2-、x=8、6、4、2))」及び「リチウムポリスルフィド(LiまたはLiS 、x=8、6、4、2)」の両方を含む概念である。
【0028】
本明細書で使用される用語「複合体(composite)」とは、2つの以上の材料が組み合わせられて物理的・化学的に互いに異なる相(phase)を形成しながら、より有効な機能を発現する物質を意味する。
【0029】
本明細書で使用される用語「気孔度(porosity)」は、ある構造体において全体積に対して気孔が占める体積の割合を意味し、その単位として%を使い、空隙率(孔隙率)、多孔度などの用語と相互交換して使用し得る。
【0030】
本発明において、「粒径D50」は、測定対象の粒子粉末の体積累積粒度分布の50%基準での粒径を意味する。前記粒径D50は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定され得る。例えば、測定対象の粒子粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入し、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、体積累積粒度分布グラフを得、その後、体積累積量の50%に相当する粒径を得ることにより測定され得る。
【0031】
また、説明の便宜から、図面に示された各構成要素の大きさや厚さを任意に示しており、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。図面において複数の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。また、図面において、説明の便宜上、一部の層および領域の厚さを誇張して示した。
【0032】
また、明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0033】
本発明は、電気化学素子の正極活物質用硫黄-炭素複合体の製造方法に関する。また、前記方法によって製造された硫黄炭素複合体を含む正極に関する。本発明において、前記電気化学素子は、電気化学反応をするすべての素子を含み得る。具体的な例としては、すべての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池、またはスーパーキャパシタ素子などのキャパシタ(capacitor)などがある。特に、前記電気化学素子は二次電池であり得、前記二次電池はリチウムイオン二次電池であり得る。前記リチウムイオン二次電池の例としては、リチウム-金属電池、リチウム-硫黄電池、全固体電池、リチウムポリマー電池などが挙げられ、中でもリチウム-硫黄電池が好ましい。
【0034】
本発明において、前記正極活物質は硫黄-炭素複合体を含み、前記硫黄-炭素複合体は多孔性炭素材料を含む。
【0035】
リチウム-硫黄電池は、各種二次電池の中でも高い放電容量及び理論エネルギー密度を有するだけでなく、正極活物質として使用される硫黄の埋蔵量が豊富で安価であるため、電池の製造コストを下げることができ、環境に優しいという利点により次世代の二次電池として脚光を浴びている。
【0036】
リチウム-硫黄電池における正極活物質である硫黄は不導体であるので、低い電気伝導度を補完するために伝導性物質である炭素材料と複合化した硫黄-炭素複合体が一般的に使われている。
【0037】
しかしながら、硫黄担持体として使われる炭素材料の場合、比表面積が高いために水分などの不純物が比較的多く含まれており、硫黄の担持効率が低いことで素材活用率が低いという問題がある。従来は、炭素材料の前処理方法としてオーブンなどの加熱装置を用いる方法が試みられていたが、加熱による前処理方法は時間が長くかかり、不純物を効果的に除去することが困難であった。
【0038】
そこで、本発明では、マイクロ波を用い、MPPTによる数値が特定の範囲に制御された炭素材料の前処理方法を提案する。このような前処理方法により処理された炭素材料を硫黄-炭素複合体の硫黄担持体として適用することにより、硫黄の利用率が向上し、電池の容量特性及び寿命特性を改善するという効果を達成することができる。
【0039】
具体的に、本発明による硫黄-炭素複合体の製造方法は、
(S1)マイクロ波(microwave)を用いて多孔性炭素材料を前処理するステップと、
(S2)前記(S1)の結果物および硫黄を混合するステップと、
(S3)前記(S2)の結果物を複合化するステップと、
を含む。
【0040】
ここで、前記(S1)ステップは、下記の式1によるMPPTが30超かつ3000未満の値を有するように制御される。
【0041】
[式1]
MPPT(W*sec/g)=W×(S÷Wt)
前記式1において、Wはマイクロ波の出力(w)を表し、Sはマイクロ波の照射時間(秒)を表し、Wtは炭素材料の重量(g)を表す。
【0042】
本発明において、前記MPPTは、単位炭素素材が受けるマイクロ波のエネルギー値であり、不純物除去効果に関わるものである。前記MPPTが30に及ばない場合には、不純物の除去効果が微々たるものであり、一方、MPPTが3000を超える場合には、前処理過程中に材料が発火するなどの安全性が悪い。
【0043】
次に、本発明の硫黄-炭素製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0044】
まず、マイクロ波(microwave)を用いて多孔性炭素材料を前処理する(S1)
【0045】
前記炭素材料は、硫黄が均一かつ安定的に固定化できる骨格を提供する担持体の役割をし、硫黄の低い電気伝導度を補完して電気化学反応が円滑に行われるようにする。特に、硫黄-炭素複合体は、硫黄の担持体の役割をする炭素材料のBET比表面積が大きく、適正な直径サイズを有することから、硫黄の担持量が多いながらも不可逆容量が少なく、エネルギー密度が高い。すなわち、電気化学的反応の際の硫黄の利用率を高めることができる構造を有する。
【0046】
本発明の硫黄-炭素複合体において、硫黄の担持体として用いられる炭素材料は、一般に、様々な炭素材質の前駆体を炭化させることにより製造され得る。
【0047】
前記炭素材料は、表面及び内部で一定ではない多数の気孔を含み得る。本発明の具体的な一実施形態において、前記炭素材料は、BET比表面積が1600m/gを超えるものである。本発明の一実施形態において、前記BET比表面積は、2000m/g以上であり得る。また、前記炭素材料に含まれる気孔の直径は10nm未満であることが好ましい。
【0048】
一方、本発明の一実施形態において、前記炭素材料は、50vol%以上である。好ましくは、気孔度が60vol%~80vol%である。気孔度が60vol%に及ばない場合には、本発明による前処理効果が微々たることがあり、80vol%を超える場合には、前処理工程進行中に火災が発生する可能性が高くなり得る。
【0049】
また、本発明の一実施形態において、前記炭素材料は、直径1nm以下の微細気孔の割合が全体気孔100vol%に対して40vol%以上であることが好ましい。
【0050】
前記炭素材料は、それぞれ球状、棒状、針状、板状、チューブ状またはバルク状でリチウム-硫黄二次電池に通常用いられるものであれば制限なく用いることができる。
【0051】
前記炭素材料は、多孔性及び導電性を有する炭素系物質であって当業界で通常使用されているものであれば、いかなるものでもよい。例えば、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単一壁カーボンナノチューブ(SWCNT)、多壁カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛などの黒鉛;カーボンナノリボン;カーボンナノベルト、カーボンナノロッド;及び活性炭素(activated carbon)よりなる群から選ばれる1種以上を含み得る。好ましくは、前記炭素材料は、活性炭素を含み得る。本発明の一実施形態において、前記炭素材料100wt%に対して95wt%以上、好ましくは99wt%以上の活性炭素を含み得る。例えば、前記炭素材料は、活性炭のみで構成され得る。
【0052】
上記のように炭素材料が準備されれば、これをマイクロ波照射装置に配置してマイクロ波を照射する。この際、マイクロ波照射は、下記の式1によるMPPT値によって制御されるものであり、MPPTは、30超かつ3000未満である。
【0053】
[式1]
MPPT(W*sec/g)=W×(S÷Wt)
前記式1において、Wはマイクロ波の出力(w)を表し、Sはマイクロ波の照射時間(秒)を表し、Wtは炭素材料の重量(g)を表す。
【0054】
前記式1によれば、マイクロ波の出力及び時間は、特定のMPPT値によって制御される範囲で炭素材料の重量に依存する。
【0055】
前記マイクロ波の照射時間が5秒未満であれば、マイクロ波照射による前処理の効果が微々たるものであるため、本発明の一実施形態において、前記時間(秒)は5秒以上であることが好ましい。
【0056】
一方、本発明の一実施様態において、前記(S1)ステップの後に前処理された炭素材料は、10分以内で硫黄と混合されることが望ましい。また、硫黄と混合される前には、前記前処理された炭素材料は、不活性気体雰囲気下で保持されることが好ましい。このように速やかに硫黄と混合したり、不活性気体雰囲気下で保管されたりすることにより、水分などの不純物の再吸着を防止することができる。本発明の一実施形態において、前記不活性気体は、N、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、およびラドンから選ばれる1種以上を含み得る。
【0057】
一方、本発明の一実施形態において、前記マイクロ波の出力は、500w~2000wの範囲を有し得、前記MPPTの設定範囲内で適切に調節され得る。
【0058】
次に、前記(S2)ステップで前処理された炭素材料と硫黄とを混合する。
【0059】
前記(S2)ステップの混合は、硫黄と炭素材料との混合率を高めるためのものであって、当業界で通常使用されている機械的ミリング装置などの撹拌装置を用いて行われ得る。このとき、混合時間及び速度を原料の含量及び条件に応じて選択的に調節し得る。本発明の一実施形態において、前記混合において、硫黄と多孔性炭素材料との重量比は5:5~9:1であり得る。万が一、前記硫黄の含量が前記重量比範囲未満であれば、多孔性炭素材料の含量が増加するほど、正極スラリーを製造するために必要なバインダーの添加量が増加する。このようなバインダー添加量の増加は、結果として電極の面抵抗を増加させ、電子移動(electron pass)を防ぐ絶縁体の役目を果たすことで、セル性能を低下させることがある。逆に、硫黄の含量が前記重量比の範囲を超えると、硫黄同士が凝集して電子を受けることが難しくなり、電極反応に直接関与しにくくなることがある。
【0060】
本発明において、硫黄は単独では電気伝導性を有しないため、上記の炭素材料と複合化して正極活物質として使用される。前記硫黄は、無機硫黄(S)、Li(n≧1)、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(2,5-dimercapto-1,3,4-thiadiazole)、1,3,5-トリチオシアヌル酸(1,3,5-trithiocyanuic acid)などのジスルフィド化合物、有機硫黄化合物、及び炭素-硫黄ポリマー((C、x=2.5~50、n≧2)よりなる群から選ばれる1種以上であり得る。好ましくは、無機硫黄(S)を含み得る。
【0061】
次に、前記(S2)ステップで得られた硫黄と炭素との混合物を複合化する。前記複合化方法は、本発明において特に限定されず、当業界で通常使用されている方法を採用し得る。例えば、乾式複合化またはスプレーコーティングなどの湿式複合化など、当業界で通常使用されている方法を採用し得る。一例としては、混合後に得られた硫黄と炭素材料との混合物をボールミリングして粉砕した後、120~160℃のオーブンに20分~1時間置いて、溶融した硫黄を第1炭素材料の内面及び外面に均一にコーティングできる方法を採用し得る。
【0062】
前述した製造方法により製造された硫黄-炭素複合体は、比表面積が高いながら硫黄の担持量が多く硫黄の利用率が改善される構造を有するため、硫黄の電気化学的反応性を改善するだけでなく、電解液の接近性及び接触性を向上させることでリチウム-硫黄電池の容量及び寿命特性を向上させることができる。
【0063】
また、本発明は、前記製造方法により製造された硫黄-炭素複合体に関する。
【0064】
本発明による硫黄-炭素複合体において、前記硫黄は、前記炭素材料の気孔の内面及び外面のうちの少なくともどちらか一方に位置し、この場合、前記炭素材料の内面及び外面全体100%未満、好ましくは1~95%、より好ましくは60~90%の領域に存在し得る。前記硫黄が上記の範囲内で炭素材料の表面に存在する場合、電子伝達面積及び電解液の濡れ性の面で最大の効果を示すことができる。具体的に、前記範囲の領域では、硫黄が炭素材料の表面に薄く均一に含浸されるので、充放電過程で電子伝達接触面積を増加させることができる。もし、前記硫黄が炭素材料の全表面の100%領域に位置する場合、前記炭素材料が完全に硫黄で覆われるため、電解液の濡れ性が低下し、電極内に含まれる導電材との接触性が低下して、炭素材料は電子伝達を受けることができず反応に関与しなくなる。
【0065】
前記硫黄-炭素複合体は、前記硫黄と炭素材料とを単純に混合することによって複合化されてもよく、コア-シェル構造のコーティング形態または担持形態を有してもよい。前記コア-シェル構造のコーティング形態は、硫黄および炭素材料のいずれか一方が他方をコーティングしたもので、例えば、炭素材料の表面を硫黄で覆っていてもよいし、逆もまた同様である。また、担持形態は、炭素材料の内部、炭素材料の気孔に硫黄が充填された形態であり得る。前記硫黄-炭素複合体の形態は、前記提示した硫黄系化合物と炭素材料との含量比を満たすものであれば、いかなる形態でも使用可能であり、本発明で限定しない。
【0066】
本発明の他の側面は、前記硫黄-炭素複合体を含む正極に関する。前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一方の面に形成された正極活物質層と、を含み、前記正極活物質層は、正極活物質、導電材及びバインダー樹脂を含む。
【0067】
本発明の一実施形態において、前記正極活物質は、正極活物質100wt%に対して、前述した特徴を有する硫黄-炭素複合体が50wt%以上、70wt%以上、90wt%以上または95wt%以上であり得る。本発明の一実施形態において、前記正極活物質は、前記硫黄-炭素複合体のみからなることができる。
【0068】
本発明において、前記正極活物質は、前述した硫黄-炭素複合体を含む。本発明の一実施形態において、前記正極活物質は、前述した硫黄-炭素複合体を総重量100wt%に対して70wt%以上、または90wt%以上含み得る。また、前記硫黄-炭素複合体に加えて、遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これらの元素の硫黄化合物、及びこれらの元素と硫黄との合金から選ばれる1種以上の添加剤をさらに含み得る。
【0069】
本発明の具体的な一実施形態において、前記正極活物質層は、下記の化学式1で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含み得る。
【0070】
[化学式1]
LiNiCo
前記化学式1において、Mは、Mn、Alまたはこれらの組み合わせであり得、好ましくはMn、またはMnおよびAlであり得る。
【0071】
前記Mは、Zr、W、Y、Ba、Ca、Ti、Mg、TaおよびNbよりなる群から選ばれる1種以上であり、好ましくはZr、Y、MgおよびTiよりなる群から選ばれる1種以上であり得、より好ましくはZr、Yまたはこれらの組み合わせであり得る。M元素は、必ずしも含まれるものではないが、適量に含まれる場合、焼成時の粒成長を促進したり、結晶構造の安定性を向上させたりするのに役立ち得る。
【0072】
一方、前記正極集電体としては、当該技術分野で用いられる多様な正極集電体が使用され得る。例えば、前記正極集電体としては、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。前記正極集電体は、通常3~500μmの厚さを有し得る、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高め得る。前記正極集電体は、例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用され得る。
【0073】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、通常、正極活物質層の総重量に対して1~30wt%、好ましくは1~20wt%、より好ましくは1~10wt%で含まれ得る。
【0074】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を果たすものであって、具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidenefluoride、ポリフッ化ビニリデン、PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して1~30wt%、好ましくは1~20wt%、より好ましくは1~10wt%で含まれ得る。
【0075】
前記正極は、当技術分野で周知の通常の方法で製造され得る。
【0076】
例えば、本発明の正極を製造する方法について詳細に説明すると、まず、スラリーを製造するための溶媒に前記バインダーを溶解させた後、導電材を分散させる。スラリーを製造するための溶媒としては、正極活物質、バインダー及び導電材を均一に分散させることができ、容易に蒸発されるものを使用することが好ましく、代表例として、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどを使用し得る。次に、正極活物質を、または選択的に添加剤とともに、前記導電材が分散された溶媒に再び均一に分散させて正極スラリーを製造する。スラリーに含まれる溶媒、正極活物質、または選択的に添加剤の量は、本願において特に重要な意味を有さず、単にスラリーのコーティングを容易にするために適切な粘度を有すれば十分である。
【0077】
このようにして製造されたスラリーを集電体に塗布し、真空乾燥して正極を形成する。スラリーの粘度及び形成しようとする正極の厚さに応じて、前記スラリーを集電体に適切な厚さにコーティングすることができる。
【0078】
前記塗布は、当業界に通常公知の方法により行われ得、例えば、前記正極活物質スラリーを前記正極集電体の一側上面に分配した後、ドクターブレード(doctor blade)などを用いて均一に分散させて行われ得る。その他にも、ダイカスト(die casting)、コンマコーティング(comma coating)、スクリーン印刷(screen printing)などの方法により行われ得る。
【0079】
前記乾燥は、特に制限されないが、50℃~200℃の真空オーブンで1日以内に行われ得る。
【0080】
また、本発明は、前述した硫黄-炭素複合体を有する正極を含む電極組立体、及び電解液を含むリチウム-硫黄電池を提供する。前記電極組立体は、正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在する分離膜を含む。
【0081】
前記電極組立体は、例えば、分離膜が負極と正極との間に介在した状態で積層されて、スタック型もしくはスタック/フォールディング型の構造体を形成してもよく、あるいは、巻き取られてジェリーロール型の構造体を形成してもよい。また、ジェリーロール型の構造体を形成する際に、負極と正極との接触を防止するために外側に分離膜をさらに配置し得る。
【0082】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一方の面に形成された負極活物質層と、を含み、前記負極活物質層は、負極活物質、導電材及びバインダーを含む。
【0083】
次に、前記負極についてさらに詳細に説明する。
【0084】
前記負極は、長尺シート状の負極集電体の片面又は両面に負極活物質層が形成された構造を有し得、前記負極活物質層は、負極活物質、導電材及びバインダーを含み得る。
【0085】
具体的には、前記負極は、長尺シート状の負極集電体の片面又は両面に、負極活物質、導電材およびバインダーを、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)、水などの溶媒に分散させて製造された負極スラリーを塗布し、乾燥工程を経て負極スラリーの溶媒を除去した後、圧延することにより製造され得る。一方、前記負極スラリーの塗布時に、負極集電体の一部領域、例えば、負極集電体の一方の端部に負極スラリーが塗布されない無地部を含む負極を製造し得る。
【0086】
前記負極活物質は、リチウムイオン(Li)を可逆的に挿入(intercalation、吸蔵)または脱挿入(deintercalation、脱離、放出)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含み得る。
前記リチウムイオンを可逆的に挿入または脱挿入できる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であり得、具体的には、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素、軟化炭素(soft carbon)、硬化炭素(hard carbon)などが例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記リチウムイオンと反応してリチウム含有化合物を可逆的に形成できる物質は、例えば、酸化スズ、硝酸チタン(Titanium nitrate)またはシリコン系化合物であり得る。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)およびスズ(Sn)よりなる群から選ばれる金属の合金であり得る。好ましくは、前記負極活物質はリチウム金属であり得、具体的には、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態であり得る。前記シリコン系負極活物質は、Si、Si-Me合金(ここで、Meは、Al、Sn、Mg、Cu、Fe、Pb、Zn、Mn、Cr、TiおよびNiよりなる群から選ばれる1種以上)、SiOy(ここで、0<y<2)、Si-C複合体、またはこれらの組み合わせであり得、好ましくは、SiOy(ここで、0<y<2)であり得る。シリコン系負極活物質は高い理論容量を有するので、シリコン系負極活物質を含む場合、容量特性を向上させることができる。
【0087】
前記負極集電体としては、当該技術分野で一般的に使用される負極集電体が使用され得、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化することができる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用され得る。
【0088】
前記導電材は、負極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、通常、負極活物質層の総重量に対して1wt%~30wt%、好ましくは1~20wt%、より好ましくは1~10wt%で含まれ得る。
【0089】
前記バインダーは、負極活物質粒子等間の付着及び負極活物質と負極集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、負極活物質層の総重量に対して1~30wt%、好ましくは1~20wt%、より好ましくは1~10wt%で含まれ得る。
【0090】
一方、前記電極組立体は、分離膜をさらに含み、前記分離膜は、負極と正極との間に介在するように電極組立体内に配置される。前記分離膜は、負極と正極とを分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池のセパレーターとして用いられるものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記分離膜としては、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用され得る。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質を含むコーティングされた分離膜が使用され得る。
【0091】
本発明のさらに他の側面は、前記電極組立体を含む電気化学素子に関する。前記電気化学素子は、電極組立体と電解液とが共に電池ケースに収容されており、前記電池ケースとして、パウチ型や金属缶型などの当該技術分野で通常使用されるものであれば、特に制限なく適切なものが選択できる。
【0092】
本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池に使用可能な種々の電解質、例えば、有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが使用され得、その種類は特に限定されない。
【0093】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含み得る。
【0094】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質として機能し得るものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate,DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate,DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate,MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate,EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、C2~C20の直鎖状、分枝状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含み得る)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用され得る。
【0095】
一方、本発明の一実施形態において、前記電解液の非水溶媒は、電池の充放電性能を高める観点から、エーテル系溶媒を含むことが好ましい。このようなエーテル系溶媒としては、環状エーテル(例えば、1,3-ジオキソラン(1,3-dioxolane)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、テトラヒドロピラン(tetrahydropyran)など)、鎖状エーテル化合物(例えば、1,2-ジメトキシエタンなど)、低粘度のフッ化エーテル(例えば、1H,1H,2’H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル(1H,1H,2’H,3H-Decafluorodipropyl ether)、ジフルオロメチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(Difluoromethyl 2,2,2-trifluoroethyl ether)、1,2,2,2-テトラフルオロエチルトリフルオロメチルエーテル(1,2,2,2-Tetrafluoroethyl trifluoromethyl ether)、1,1,2,3,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル(1,1,2,3,3,3-Hexafluoropropyl difluoromethyl ether)、1H,1H,2’H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル(1H,2’H,3H-Decafluorodipropyl ether Pentafluoroethyl 2-trifluoroethyl ether 2’H-Perfluorodipropyl ether)、ペンタフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(Pentafluoroethyl 2,2,2-trifluoroethyl ether)、1H,1H,2’H-パーフルオロジプロピルエーテル(1H,1H,2’H-Perfluorodipropyl ether))が挙げられ、これらのうちの1種以上の混合物を非水溶媒として含み得る。
【0096】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的に、前記リチウム塩としては、LiPF,LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAl0、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用され得る。前記リチウム塩は、0.1~5.0M、好ましくは0.1~3,0Mの濃度で使用され得る。リチウム塩が前記濃度範囲に含まれる場合、電解質が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0097】
前記電解質には、前記電解質の構成成分に加えて、電池の寿命特性の向上、電池容量の減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として添加剤をさらに含み得る。例えば、前記添加剤としては、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどを単独または混合して使用し得るが、これらに限定されない。前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~10wt%、好ましくは0.1~5wt%で含まれ得る。
【0098】
前記リチウム-硫黄電池の形状は特に限定されるものではなく、円筒型、積層型、コイン型などの種々の形状とすることができる。
【0099】
また、本発明は、前記リチウム-硫黄電池を単位電池として含む電池モジュールを提供する。前記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などを要する中大型デバイスの電源として使用され得る。
【0100】
前記中大型デバイスの例としては、電池的モータによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle;EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle;HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(plug-in hybrid electric vehicle;PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明白なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0102】
[実施例1から比較例3]
活性炭素をガラス製ジャー(jar)に入れ、N気体でパージした。その後、前記活性炭素をマイクロ波照射装置に移し、前記活性炭素にマイクロ波を照射した。このとき、マイクロ波出力、炭素材料の含量、照射時間および前記式1によるMPPTの値を、下記の表1に示した。
【0103】
[比較例1から比較例2]
活性炭素をガラス製ジャー(jar)に入れ、N気体でパージした。その後、前記活性炭素をマイクロ波照射装置に移し、前記活性炭素にマイクロ波を照射した。このとき、マイクロ波出力、炭素材料の含量、照射時間および前記式1によるMPPTの値を、下記の表1に示した。
【0104】
[比較例3]
前処理工程を行っていない状態の活性炭素を準備した。
【0105】
[比較例4]
活性炭素を150℃のオーブンで2時間保持し、前処理した。
【0106】
【表1】
【0107】
実験例1.熱重量分析結果
前記表1によれば、実施例1~3の場合、不純物の除去率は6%以上であって、比較例に比べて高いことが確認された。比較例1では、不純物除去率が2.9%と非常に低く、比較例2では、MPPT値が高すぎて炭素材料が前処理過程中に発火した。一方、単純加熱処理した比較例4では、比較例1よりも不純物除去率が高いものの、本発明による前処理方法に比べて劣位の結果を示した。図1は、実施例1、比較例1および実施例2のTGA測定結果をグラフで示したものである。一方、実施例3の方法で前処理して得られた炭素材料を常温で10分間放置後、熱重量を分析した結果、不純物除去率が5.0%に低下した。これは、炭素材料の多孔性の特性上、空気中の水分などの不純物が速やかに再吸着し、不純物除去率が低下したからである。したがって、本発明による硫黄-炭素複合体の製造方法では、炭素材料の前処理後に硫黄と速やかに混合することが好ましい。
【0108】
一方、前記不純物除去率は、数式{(前処理前の質量-前処理後の質量)÷前処理前の質量}×100(%)によって算出した。一方、熱重量分析器(TGA、製造社:Metter Toledo)を用いて10℃/分の昇温速度で25℃~900℃まで昇温して熱重量分析を行い、各実施例及び比較例の試料の質量変化を観察した。
図1