(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ガスケット、及び、継手構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/06 20060101AFI20240826BHJP
F16J 15/08 20060101ALI20240826BHJP
F16L 23/02 20060101ALI20240826BHJP
F16L 23/20 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F16J15/06 N
F16J15/08 K
F16L23/02 D
F16L23/20
(21)【出願番号】P 2024038620
(22)【出願日】2024-03-13
【審査請求日】2024-03-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594165734
【氏名又は名称】イハラサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【氏名又は名称】福田 光起
(74)【代理人】
【識別番号】100231038
【氏名又は名称】正村 智彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 美良
(72)【発明者】
【氏名】西田 大輔
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-133213(JP,A)
【文献】特開2002-317889(JP,A)
【文献】特開2003-343726(JP,A)
【文献】特開2009-115160(JP,A)
【文献】特開2013-185618(JP,A)
【文献】特表2016-538485(JP,A)
【文献】特表2020-523541(JP,A)
【文献】特開2022-067340(JP,A)
【文献】実開昭61-070551(JP,U)
【文献】実開昭63-129769(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0138718(US,A1)
【文献】特開2011-64222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/06-15/08
F16L 23/00-23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向するフランジ部の平面状をなすシール面間に装着される円環状をなすガスケットであって、
内側周面に連続する径方向内側の軸方向両端面(以下、径方向内側面という。)と、径方向外側の軸方向両端面(以下、径方向外側面という。)との間に段差が形成されており、
前記径方向内側面が、前記径方向外側面よりも軸方向外側に位置しており、
前記径方向内側面及び前記径方向外側面はそれぞれ、軸方向に直交する平面状をなすものであり、
前記径方向内側面が、前記シール面に接触した後に、前記径方向外側面が前記シール面に接触
し、
前記径方向内側面及び前記径方向外側面との間に、周方向に沿って溝が形成されている、ガスケット。
【請求項2】
前記段差の軸方向に沿った寸法は、0.03~0.09mmである、請求項
1に記載のガスケット。
【請求項3】
対向するフランジ部の平面状をなすシール面間に円環状をなすガスケットを挟んだ状態で前記フランジ同士を締め付けてなる継手構造であって、
前記ガスケットは、内側周面に連続する径方向内側の軸方向両端面(以下、径方向内側面という。)と、径方向外側の軸方向両端面(以下、径方向外側面という。)との間に段差が形成されており、
前記径方向内側面が、前記径方向外側面よりも軸方向外側に位置しており、
前記径方向内側面及び前記径方向外側面はそれぞれ、軸方向に直交する平面状をなすものであり、
前記径方向内側面が、前記シール面に接触した後に、前記径方向外側面が前記シール面に接触し、
前記径方向内側面及び前記径方向外側面との間に、周方向に沿って溝が形成されている、継手構造。
【請求項4】
前記フランジ部同士を締め付けた状態において、少なくとも前記径方向内側面が塑性変形し、前記径方向内側面及び前記径方向外側面が同一平面状となる、請求項
3に記載の継手構造。
【請求項5】
前記シール面には鏡面加工が施されている、請求項
3又は
4に記載の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット、及び、当該ガスケットを用いた継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の管継手としては、特許文献1に示すように、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材と、第1および第2の継手部材の突合せ端面間に介在させられるガスケットとを備え、第1および第2の継手部材の突合せ端面(シール面)には環状のシール突起が形成されているものがある。この管継手では、環状のシール突起がガスケットの軸方向端面に食い込むことによって、それらの間の密着性を向上させるものである。
【0003】
しかしながら、シール面に形成したシール突起でガスケットを押し潰す構造では、ガスケットの接ガス側(シール突起よりも径方向内側)において、ガスケットとシール面との間にデッドスペースができる場合がある。このデッドスペースができることにより、そのデッドスペースにガスが滞留してしまう。そうすると、例えば、半導体製造プロセスに上記構造の管継手を用いた場合には、高純度の材料ガスがガスケットとシール面との間のデッドスペースに滞留することになり、高純度の材料ガスの濃度管理に悪影響を与えてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、ガスケットとフランジ部との間のデッドスペースを確実になくすことをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係るガスケットは、対向するフランジ部の平面状をなすシール面間に装着される円環状をなすガスケットであって、内側周面に連続する径方向内側の軸方向両端面(以下、径方向内側面という。)と、径方向外側の軸方向両端面(以下、径方向外側面という。)との間に段差が形成されており、前記径方向内側面が、前記径方向外側面よりも軸方向外側に位置しており、前記径方向内側面及び前記径方向外側面はそれぞれ、軸方向に直交する平面状をなすものであり、前記径方向内側面が、前記シール面に接触した後に、前記径方向外側面が前記シール面に接触することを特徴とする。
【0007】
このように構成されたガスケットによれば、フランジ部同士を締め付けると径方向内側面がシール面に接触して塑性変形した後に、径方向外側面がシール面に接触するので、ガスケットの接ガス側(径方向内側)において最もシール性が高くなり、ガスケットとフランジ部との間のデッドスペースを確実になくすことができる。また、接ガス側が最もシール性が高い部分であることからデッドスペースができた場合にはリークが検出されることになる。そのため、デッドスペースの有無を、ヘリウムリーク試験等のリーク試験によって検知することができる。
【0008】
径方向内側面が塑性変形した際にその変形分が、径方向内側(流路側)ではなく、径方向外側に逃げるようにするためには、前記径方向内側面及び前記径方向外側面との間に、周方向に沿って溝が形成されていることが望ましい。
【0009】
ガスケットの具体的な実施の態様としては、前記段差の軸方向に沿った寸法は、0.03~0.09mmであることが望ましい。
【0010】
また、本発明に係る継手構造は、対向するフランジ部の平面状をなすシール面間に円環状をなすガスケットを挟んだ状態で前記フランジ部同士を締め付けてなる継手構造であって、前記ガスケットは、内側周面に連続する径方向内側の軸方向両端面(以下、径方向内側面という。)と、径方向外側の軸方向両端面(以下、径方向外側面という。)との間に段差が形成されており、前記径方向内側面が、前記径方向外側面よりも軸方向外側に位置しており、前記径方向内側面及び前記径方向外側面はそれぞれ、軸方向に直交する平面状をなすものであり、前記径方向内側面が、前記シール面に接触した後に、前記径方向外側面が前記シール面に接触することを特徴とする。
【0011】
ガスケットとシール面とのシール性を向上させるためには、前記フランジ部同士を締め付けた状態において、少なくとも前記径方向内側面が塑性変形し、前記径方向内側面及び前記径方向外側面が同一平面状となることが望ましい。
【0012】
ガスケットとシール面とのシール性及び繰り返し使用回数を向上させるためには、前記シール面には鏡面加工が施されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明によれば、ガスケットとフランジ部との間のデッドスペースを確実になくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における継手構造の部分断面図である。
【
図2】同実施形態のクランプ継手を締結した状態を軸方向から見た図である。
【
図3】同実施形態のクランプ継手を展開した状態を軸方向から見た図である。
【
図4】同実施形態のクランプ継手を展開した状態の平面図である。
【
図5】同実施形態における中央クランプ要素の斜視図である。
【
図6】同実施形態のガスケットの構成を模式的に示す断面図及び部分拡大断面である。
【
図7】同実施形態のガスケットを用いた継手構造のシールのメカニズムを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る継手構造の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0016】
本実施形態の継手構造100は、
図1に示すように、一対の管部材10をクランプ継手20により接続してなるものである。具体的に継手構造100は、一対の管部材10を対向させた状態で接続するクランプ継手20と、一対の管部材10の間に介在する環状のガスケット30とを備え、これら一対の管部材10を気密に接続する構造である。
【0017】
管部材10は、内部に直線状の流路が形成された管本体11と、管本体11の端部に設けられたフランジ部12とを有するものである。フランジ部12の先端面には、ガスケット30と密着する平面状のシール面12xが形成されている。このシール面12xは、軸方向に直交する平面状をなすものである。シール面12xには、鏡面加工が施されている。また、フランジ部12の対向面(先端面)とは反対側の裏面には、先端へ向かうに連れて径が大きくなる傾斜面14が形成されている。さらに、フランジ部12の外周面には、径寸法を小さくしてなる段部15が形成されている。この段部15には、ガスケット30を保持したホルダ50が装着される。また、段部15の外周には、防塵用の環状をなすプロテクタ60を必要に応じて装着しても良い。
【0018】
クランプ継手20は、対向させた状態のフランジ部12に外嵌されてこれらを緊締結合するものである。具体的にクランプ継手20は、
図1~
図4に示すように、内周面に凹溝211が周方向に延びるように設けられたクランプ本体21と、クランプ本体21をその内径が縮小するように締め付ける締結機構22とを有している。
【0019】
クランプ本体21は、互いに隣り合うもの同士が互いに回転可能に連結された一連のクランプ要素21a~21cを有している。具体的にクランプ本体21は、1つの中央クランプ要素21aとその両端部に回転可能に連結された一対の外側クランプ要素21b、21cとを有している。なお、各クランプ要素21a~21cは、例えばSUS630又はSUS316等のステンレス鋼から構成されている。
【0020】
各クランプ要素21a~21cの内周面には、特に
図1及び
図4に示すように、対向した一対のフランジ部12の外周縁部に外嵌させることができる幅を有した凹溝211が、周方向に延びるように形成されている。この凹溝211を形成する一対の側壁部212の内面には、フランジ部12の傾斜面14に対応した傾斜面213が形成されている。また、各クランプ要素21a~21cの凹溝211は、側壁部212の傾斜面213がフランジ部12の傾斜面14に接触した状態で、凹溝211の底面がフランジ部12の外側周面に接触しない深さを有している。
【0021】
これらクランプ要素21a~21cはヒンジピン214によって回転可能に連結されている。なお、ヒンジピン214は、例えばSUS630、SUS316又はSUS304等のステンレス鋼から構成されており、各クランプ要素21a~21cの材料と同等以上の強度を有する材料から構成されることが好ましい。
【0022】
図4に示すように、一対の外側クランプ要素21b、21cそれぞれの中央クランプ要素21aに連結される一端部には、ヒンジピン214が挿し通される挿通孔H1を有する第1連結部215が形成されている。
【0023】
この第1連結部215は、外側クランプ要素21b、21cの一端部において、中央クランプ要素21aに向かって突出した凸部により構成されている。この凸部の幅(軸方向寸法)は、凹溝211を形成する一対の側壁部212の間隔(凹溝211の底面の幅)よりも小さい寸法である(
図4参照)。
【0024】
また、中央クランプ要素21aの両端部それぞれには、外側クランプ要素21b、21cの第1連結部215を挟むとともに、ヒンジピン214が固定される固定孔H2を有する一対の第2連結部216が形成されている。なお、固定孔H2には、ヒンジピン214がカシメ加工又は圧入加工等により固定される。
【0025】
この一対の第2連結部216は、第1連結部215である凸部を軸方向の両側から若干の隙間を介して挟むものである。中央クランプ要素21aの両端部それぞれには、第1連結部215である凸部が若干の隙間を介して嵌まり込む凹部が形成されており、この凹部を形成する軸方向に沿った壁部が第2連結部216となる。なお、一対の第2連結部216は、周方向において、凹溝211を形成する一対の側壁部212の延長線上に位置している(
図4参照)。
【0026】
そして、
図2~
図5に示すように、中央クランプ要素21aに設けられた一対の側壁部212の上面部212aが、周方向において一端側の一対の第2連結部216から他端側の一対の第2連結部216に至るまで形成されている。つまり、側壁部212の上面部212aが一端側の第2連結部216及び他端側の第2連結部216の両方に接続されるように、側壁部212が形成されている。本実施形態では、軸方向から見て、第2連結部216の上面部216aと側壁部212の上面部212aとが直線状に連続している。また、中央クランプ要素21aの一対の側壁部212の内面全体には、フランジ部12の傾斜面14に対応した傾斜面213が形成されている。
【0027】
さらに、中央クランプ要素21aと外側クランプ要素21b、21cとの関係でいうと、中央クランプ要素21aの側壁部212と、外側クランプ要素21b、21cの側壁部との干渉を避ける形状が従来とは異なる。本実施形態では、中央クランプ要素21aの側壁部212と、外側クランプ要素21b、21cの側壁部との間に形成される隙間は、ヒンジピン214から軸中心に向かって延びる構成ではなく、軸中心からの径方向に直交する方向(
図2では左右方向であり、2つのヒンジピン214の配列方向)に沿って延びる構成となる。
【0028】
締結機構22は、一対の外側クランプ要素21b、21cの自由端部同士を締め付けるものである。具体的に締結機構22は、
図1~
図4に示すように、一方の外側クランプ要素21bの自由端部に形成された貫通孔H3に回転自在に設けられたボルト部材221と、他方の外側クランプ要素21cの自由端部に形成された雌ネジ孔222とを有している。そして、ボルト部材221を雌ネジ孔222に螺合させることによって、一対の外側クランプ要素21b、21cが連結されるとともに、クランプ本体21の内周径を拡縮することができる。なお、ボルト部材221は、例えばSUS304又はSUS316等のステンレス鋼から構成されている。
【0029】
一方の外側クランプ要素21bの自由端部に形成された貫通孔H3は、特に
図4に示すように、径方向に沿って延びる長円形状をなすものである。この長円形状の貫通孔H3により、ボルト部材221を雌ネジ孔222に螺合させる際のボルト部材221の一方の外側クランプ要素21bに対する傾きを吸収する構成としている。また、ボルト部材221は、ストッパリング223によって、貫通孔H3から抜脱しないようにされている。
【0030】
また、一対の外側クランプ要素21b、21cの自由端部同士を締め付けた際に、ストッパリング223が他方の外側クランプ要素21cに接触しないように構成されている(
図2参照)。具体的には、一対の外側クランプ要素21b、21cの自由端部同士を締め付けた際に、それらの自由端部の間に形成される隙間の寸法よりも、ストッパリング223の厚みが小さい構成としてある。この構成により、ボルト部材221の締め込み代を確保して、ボルト部材221のトルク管理が可能となる。
【0031】
ガスケット30は、対向するフランジ部12の平面状をなすシール面12x間に装着されるものであり、一対の管部材10の流路内径と同一又は若干大きい内径を有する円環状をなしている。なお、ガスケット30は、例えばSUS316又はSUS316L等の高清浄度ステンレス鋼から構成されている。
【0032】
具体的にガスケット30は、
図6に示すように、内側周面30aに連続する径方向内側の軸方向両端面(以下、径方向内側面30bという。)と、径方向外側の軸方向両端面(以下、径方向外側面30cという。)と、それらの間に形成された段差30dとを有している。
【0033】
径方向内側面30bは、円環状をなすものであり、軸方向に直交する平面状をなしている。また、径方向外側面30cは、径方向内側面30bよりも大きい円環状をなすものであり、軸方向に直交する平面状をなしている。そして、径方向内側面30bが、径方向外側面30cよりも軸方向外側に位置している。つまり、径方向内側面30bが、径方向外側面30cに対して軸方向外側に突出している。本実施形態では、径方向内側面30bが、径方向外側面30cに対して軸方向に沿って0.03~0.09mm外側に突出している。
【0034】
さらに、段差30dは、径方向内側面30bと径方向外側面30cとの間に形成された円環状をなすものである。この段差30dの軸方向に沿った寸法は、0.03~0.09mmである。本実施形態の段差30d、つまり、径方向内側面30b及び径方向外側面30cとの間には、周方向に沿って環状の溝30Mが形成されている。この溝30Mは、塑性変形する径方向内側面30bの変形部分を吸収できるものである。この溝30Mの軸方向に直交する断面形状は、円弧形状に限られず、V字形状であっても良いし、矩形状であっても良い。
【0035】
次に、本実施形態のクランプ継手20による一対の管部材10の接続方法、及び、ガスケット30を用いた継手構造のシールのメカニズムを、
図7を参照して説明する。
【0036】
一対の管部材10のフランジ部12を、ガスケット30を挟んだ状態で対向させる。このとき、
図7(a)に示すように、一方の管部材10のフランジ部12に形成された段部15に対して、ガスケット30を保持したホルダ50を装着する。そして、他方の管部材10のフランジ部12との間でガスケット30を挟む。
【0037】
この状態で、クランプ本体21を一対のフランジ部12を取り囲むように装着する。このとき、各クランプ要素21a~21cの凹溝211が一対のフランジ部12の外周縁部に外嵌する。そして、ボルト部材221を雌ネジ孔222に螺合させることによって、一対の外側クランプ要素21b、21cの自由端部同士を締め付ける。これにより、クランプ本体21の内周径が縮小し、各クランプ要素21a~21cの傾斜面213がフランジ部12の傾斜面14を押圧し、その際に生じる軸方向の分力によりフランジ部12同士が圧着結合される。
【0038】
フランジ部12同士が圧着結合されると、
図7(b)に示すように、まずは、フランジ部12のシール面12xがガスケット30の径方向内側面30bに面接触する。その後、フランジ部12同士が圧着結合されるに連れて、
図7(c)に示すように、径方向内側面30bは、シール面12xに面接触した状態のまま塑性変形する。この塑性変形により変形した部分は、段差30dに形成された溝30Mに入り込む。また、フランジ部12のシール面12xは、ガスケット30の径方向内側面30bに面接触するだけでなく、ガスケット30の径方向外側面30cに面接触する。これにより、フランジ部12同士を締め付けた状態において、径方向内側面30b及び径方向外側面30cが同一平面状となる。
【0039】
このように締結機構22の締め付けにより、径方向内側面30bは径方向外側面30cと同一平面状となるまで塑性変形し、ガスケット30はシール面12xの略全面に密着する。塑性変形した径方向内側面30bの面圧は、径方向外側面30cよりも大きく、シール部(径方向内側面30bとシール面12xの間)を隙間なく完全にシールする。また、ガスケット30の内側周面30aと、各管部材10の流路が形成する内側周面とは略面一となる。本実施形態の継手構造100では、締結機構22の締め付けにより、径方向内側面30bの面圧σをσ=350N/mm2とし、径方向外側面30cの面圧σをσ=250N/mm2として、メタルフラットシール必要面圧σ>180N/mm2(JIS規格)にてシール性を確保している。
【0040】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のクランプ継手20によれば、フランジ部12を締め付けると、径方向内側面30bがシール面12xに面接触して塑性変形した後に、径方向外側面30cがシール面12xに接触するので、フランジ部12同士を締め付けると、ガスケット30の接ガス側(径方向内側)において最もシール性が高くなり、ガスケット30とフランジ部のシール面12xとの間のデッドスペースを確実になくすことができる。また、接ガス側が最もシール性が高い部分であることからデッドスペースができた場合にはリークが検出されることになる。そのため、デッドスペースの有無を、ヘリウムリーク試験等のリーク試験によって検知することができる。
【0041】
また、本実施形態では、中央クランプ要素21aに設けられた一対の側壁部212の上面部212aが、周方向において一端側の一対の第2連結部216から他端側の一対の第2連結部216に至るまで形成されているので、クランプ継手20における中央クランプ要素21aの機械的強度を向上させることができる。その結果、クランプ継手20全体の機械的強度を向上させることができ、径方向内側面30bを塑性変形させるまで締め付けたとしても、クランプ継手20が破損する恐れがない。また、中央クランプ要素21aの固定孔にヒンジピン214を例えばカシメ加工や圧入加工等により固定することによっても、中央クランプ要素21aの機械的強度を向上させることができる。その結果、クランプ継手20のより一層の安全性を実現することができる。
【0042】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0043】
例えば、前記実施形態では、中央クランプ要素21aの側壁部212の内面全体に傾斜面213が形成されていたが、中央クランプ要素21aの側壁部212の内面の一部に傾斜面213が形成された構成であっても良い。
【0044】
また、前記実施形態では、軸方向から見て、第2連結部216の上面部216aと側壁部212の上面部212aとが直線状に連続していたが、側壁部212の上面部212aが第2連結部216に連続する構成であれば、それらの上面部212a、216aが直線状に連続していなくても良い。
【0045】
さらに、締結機構22は、ボルト部材221を外側クランプ要素21cに形成した雌ネジ孔222に螺合させる構成のほか、他方の外側クランプ要素21cの自由端部にボルト部材221が挿し通される貫通孔を形成し、当該貫通孔から延び出たボルト部材221にナット部材を螺合させる構成であっても良い。
【0046】
前記実施形態のガスケット30は、段差30dに溝30Mを有する構成であったが、段差30dに溝30Mを有さない構成としても良い。
【0047】
前記実施形態の接続構造100は、クランプ継手20によりフランジ部12同士を締め付ける構成であったが、
図7に示すように、管継手が、一方の管部材10の外周に嵌め込まれて、外周面に雄ねじ部が形成された第1ナット部材71と、他方の管部材10の外周に嵌め込まれて、内周部に雄ねじ部と螺合する雌ねじ部が形成された第2ナット部材72とを具備し、第1ナット部材71の雄ねじ部と第2ナット部材72の雌ねじ部を螺合させることにより、一対の管部材10を接続するものであっても良い。
【0048】
より具体的に説明すると、第1ナット部材71は、その先端部711が一方の管部材10のフランジ12を裏側から押し込むものである。また、第2ナット部材72は、一対の管部材10それぞれのフランジ12を収容する収容凹部721が設けられたものであり、この収容凹部721の底面により他方の管部材10のフランジ12を裏側から受けるように構成されている。かかる構成により、第1ナット部材71の雄ねじ部と第2ナット部材72の雌ねじ部を螺合させることで、第1ナット部材71が一方の管部材10のフランジ12を裏側から押し込むとともに、第2ナット部材72が他方の管部材10のフランジ12を裏側から受け、シール面12xが前記実施形態と同様に、ガスケット30に面接触して一対の管部材10が気密に接続される。
【0049】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
100・・・継手構造
12 ・・・フランジ部
12x・・・シール面
30 ・・・ガスケット
30a・・・内側周面
30b・・・径方向内側面
30c・・・径方向外側面
30d・・・段差
30M・・・溝
【要約】 (修正有)
【課題】ガスケットとフランジとの間のデッドスペースをなくす。
【解決手段】対向するフランジ部12の平面状をなすシール面12x間に装着される円環状をなすガスケット30であって、内側周面に連続する径方向内側面30bと径方向外側面30cとの間に段差が形成されており、径方向内側面30bが、径方向外側面30cよりも軸方向外側に位置しており、径方向内側面30b及び径方向外側面30cはそれぞれ、軸方向に直交する平面状をなすものであり、径方向内側面30bが、シール面12xに接触した後に、径方向外側面30cがシール面12xに接触する。
【選択図】
図7