(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】魚介類加工食品の風味改善方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20240826BHJP
【FI】
A23L17/00 A
A23L17/00 101Z
(21)【出願番号】P 2024058442
(22)【出願日】2024-04-01
【審査請求日】2024-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三角 禎之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 丈士
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 玄隆
(72)【発明者】
【氏名】熊木 竣佑
(72)【発明者】
【氏名】中西 啓
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-100277(JP,A)
【文献】特開平11-276162(JP,A)
【文献】特開2014-236705(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108936418(CN,A)
【文献】特開2015-107119(JP,A)
【文献】特表2011-512831(JP,A)
【文献】石井智恵美、ほか,チロシナーゼの安定性ならびに活性に及ぼす添加物の影響,文教大学教育学部紀要,1993年12月01日,27,95-100
【文献】Emanueli Backes et al.,Laccases in food processing: Current status, bottlenecks and perspectives,Trends in Food Science & Technology,2021年,115,445-460,DOI: 10.1016/j.tifs.2021.06.052
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B4
A23L17,19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エソを含むすり身にラッカーゼ処理を行う、
エソを含むすり身の風味改善方法
であって、前記風味改善が、エソ特有の魚油っぽいメタリックな臭気の低減である方法。
【請求項2】
以下の工程(A)および(B)を含む、
エソを含むすり身の風味改善方法
であって、前記風味改善が、エソ特有の魚油っぽいメタリックな臭気の低減である方法。
(A)
エソを含むすり身とラッカーゼを接触させる工程
(B)前記工程(A)後の
エソを含むすり身を加熱する工程
【請求項3】
請求項1または2に記載の
エソを含むすり身の風味改善方法において、
エソ特有の魚油っぽいメタリックな臭気が、3-オクタノン、1-オクテン-3-オール、シス-1,5-オクタジエン-3-オールおよび1-ペンテン-3-オールから選ばれる1種以上に由来する臭
気である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚介類加工食品の風味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かまぼこ等の魚介類加工品は、冷凍すり身技術の開発により、安定的に大量に供給される北洋のスケソウダラの冷凍すり身が主に使用されるようになった。しかし、スケソウダラの資源枯渇、それに伴う漁獲制限、また、地球温暖化等の理由により、他の魚介類の利用が進められている。南方系の魚、特にエソは良質なかまぼこ等の原料として知られているが、これは未凍結での加工における利用が主であり、冷凍すり身の原料としてはほとんど利用されていなかった。そこで、南方系の魚の、冷凍すり身としての利用の可能性検討が進められている。しかしながら南方系の魚、特にエソは、傷みが早く、不快臭が生成しやすいという課題があることが判明した。
【0003】
このような課題に対応するため、チロシナーゼを用いた魚介類加工品の香気の改善(特許文献1)、湯葉を練り込み風味を改良する練り製品の製造方法(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-100277号公報
【文献】特開平11-332516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、より簡便で効果の高い風味改善方法の開発が望まれていた。本発明の課題は、簡便かつ高い効果で、すり身に発生する不快臭をマスキングする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題にかんがみ、鋭意研究を行った。その結果、すり身原料にラッカーゼ処理を施すことで、その不快臭が低減し、風味が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1]魚介類加工食品の原料にラッカーゼ処理を行う、魚介類加工食品の風味改善方法。
[2]以下の工程(A)および(B)を含む、魚介類加工食品の風味改善方法。
(A)魚介類加工食品の原料とラッカーゼを接触させる工程
(B)前記工程(A)後の魚介類加工食品の原料を加熱する工程
[3]前記魚介類加工食品の原料が、魚介類のすり身である、[1]または[2]に記載の魚介類加工食品の風味改善方法。
[4]前記魚介類加工食品の原料が、南方系の魚のすり身である、[1]または[2]に記載の魚介類加工食品の風味改善方法。
[5]前記魚介類加工品の原料が、イトヨリ、グチ、キントキダイ、ヒメジ、ママカリ、レンコダイ、エソ、タチウオ、ハモおよびシイラから選ばれる1種または2種以上の魚のすり身である、[1]または[2]に記載の魚介類加工食品の風味改善方法。
[6][1]または[2]に記載の魚介類加工食品の風味改善方法において、風味改善が、不快臭の低減である方法。
[7][1]または[2]の魚介類加工食品の風味改善方法において、風味改善が、3-オクタノン、1-オクテン-3-オール、シス-1,5-オクタジエン-3-オールおよび1-ペンテン-3-オールから選ばれる1種以上に由来する臭気の低減である方法。
[8][1]または[2]の魚介類加工食品の風味改善方法において、風味改善が、好ましい風味の増強である方法。
[9][1]または[2]の魚介類加工食品の風味改善方法において、風味改善が、白身魚様の肉感の増強および/または魚介類の甘い香りの増強である方法。
[10]魚介類加工食品の原料にラッカーゼ処理を行う、風味の改善された魚介類加工食品の製造方法。
[11]以下の工程(A)および(B)を含む、風味の改善された魚介類加工食品の製造方法。
(A)魚介類加工食品の原料とラッカーゼを接触させる工程
(B)前記工程(A)後の魚介類加工食品の原料を加熱する工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便かつ高い効果で、魚介類加工品に発生する不快臭を低減し、好ましい香気を増強し、風味を改善することができ、特に、南方系の魚であるエソなどの、傷みの早い魚のすり身に対して効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明品1および比較品1のそれぞれのかまぼこを、SPMEにより香気成分を抽出し、ガスクロマトグラフィーおよび質量分析により、香気成分を測定したTICクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[魚介類]
本発明の魚介類加工品の原料となる魚介類は、魚類およびその他の食用水産動物を含む。
【0011】
[魚種]
魚類の魚種は、通常、すり身等として加工されるものに使用される魚種であれば特に限定はなく、北方系すり身の原料である魚種でも、南方系すり身の原料である魚種でも使用することができる。
【0012】
北方系の魚種として、例えば、スケトウダラ、ミナミダラ、ノーザンブルーホワイティング、パシフィックホワイティング、ホキ、ホッケ、ニシン(コノシロを含む)、アジなどが例示できる。
【0013】
一方、南方系の魚種としては、イトヨリ、グチ、キントキダイ、ヒメジ、ママカリ、レンコダイ、エソ、タチウオ、ハモ、シイラなどが例示できる。
【0014】
本発明では、例えば魚種としては南方系の魚種、北方系の魚種のいずれも使用することができる。一方、南方系の魚種の方が、北方系の魚種に比べて一般的に劣化が早く、不快臭が発生しやすい傾向があり、特に南方系の魚種の冷凍すり身に対して本発明を適用することにより、大きな効果が得られる傾向がある。
【0015】
[その他の食用水産動物]
その他の食用水産動物としては、エビやカニなどの甲殻類、貝などの貝類、イカやタコなどの頭足類などが例示できる。
【0016】
[魚介類加工品の原料]
魚介類加工品の原料とは、魚介類から頭、太い骨、内臓などを取って水洗いし、いわゆる『身』の部分を取り出したものをいう。
【0017】
魚介類加工品の原料のうち、特によく用いられるものとして、すり身および冷凍すり身が例示できる。これらはいずれも本発明に利用でき、それぞれ効果が奏されるが、これらのうち、本発明では、特にかまぼこなどへの加工の工程で、経時による劣化、不快臭の発生が生じやすい、冷凍すり身(いったん凍結後、解凍したものを含む)に対して本発明を適用することにより、大きな効果が得られる傾向がある。
【0018】
[すり身・冷凍すり身]
前記『身』の部分を取り出したものを、水に十分さらして血液などの不用な成分除去した後、脱水し、さらに、例えば任意で、砂糖やソルビトールなどの糖類、トリリン酸ナトリウムやピロリン酸ナトリウムなどの重合リン酸塩などを練り込み、粉砕しミンチ状とし、必要に応じて裏ごししたものをすり身という。また、この様にして得られたすり身を、凍結したものを冷凍すり身という。
【0019】
一般的に、北方系の魚種を用いた場合、その地理的関係から、冷凍すり身とすることが多くなるが、糖類、重合リン酸塩を用いることで、離水の防止やテクスチャーの改善を図ることができ、使用される場合が多い。
【0020】
また、エソなどの南方系魚種は、従来、主に冷凍されずに、すり身として使用されることが多かったが、近年スケソウダラの資源枯渇、それに伴う漁獲制限、また、地球温暖化等の理由により冷凍すり身として使用されることも増えてきている。
【0021】
[香味・風味]
本発明において、香味とは、香りによって変化し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚および/または味覚を含む感覚を意味し、風味という場合もある。
【0022】
[不快臭]
本発明において、不快臭とは、いわゆる生魚が古くなって傷んだときに発生する臭気をいう。主な不快臭成分としては、例えば3-オクタノン、1-オクテン-3-オール、シス-1,5-オクタジエン-3-オールおよび1-ペンテン-3-オールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
[好ましい風味]
本発明において、好ましい風味とは、白身魚様の肉感、魚介類の甘い香りなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
[ラッカーゼ]
本発明においてラッカーゼとは、国際生化学分子生物学連合により決定された酵素番号(Enzyme Commission number)がEC1.10.3.2に分類される酵素である。また、本発明において用いるラッカーゼは、食品に用いることができるラッカーゼであればいずれでもよく、ラッカーゼを含むもの、例えば、賦形剤により濃度調整された酵素製剤や他の酵素活性を含む粗酵素などであってもよい。中でも、ラッカーゼは、Trametes属に属する生物に由来するラッカーゼが好ましい。
【0025】
ラッカーゼの入手方法は、特に制限されず、ウルシなどの植物由来のラッカーゼ、各種の微生物から調製された粗酵素や商業的に入手できるものを用いることができ、市販品としては、例えば、ラッカーゼ製剤であるラッカーゼY120(Trametes sp.由来;天野エンザイム株式会社製)、ラッカーゼ(Trametes versicolor由来;SIGMA-ALDRICH社製)、Denilite(登録商標) II S(Trametes villosa由来;ノボザイムズ ジャパン株式会社製)などが使用できる。
【0026】
[ラッカーゼ処理、ラッカーゼとの接触]
本発明では、魚介類加工食品の原料にラッカーゼ処理を行うことによる、魚介類加工食品の風味改善方法を提供する。ラッカーゼ処理とは、前記魚介類加工品の原料にラッカーゼを接触させ、魚介類加工品の原料に対し、ラッカーゼによる酵素作用を及ぼさせる反応をいう。魚介類加工品の原料とラッカーゼとの接触は、魚介類加工品の原料と、例えば、固定化されたラッカーゼを接触させる方法により行うことも可能であるが、一般的には、魚介類加工品の原料にラッカーゼを混合することによって行う。
【0027】
魚介類加工品の原料にラッカーゼを混合する方法としては、例えば、ラッカーゼを含む水溶液を調製し、それを前記いわゆる『身』の部分、すり身、解凍した冷凍すり身、凍結したまま粉砕した冷凍すり身などの魚介類加工品の原料に、添加、噴霧などの適当な方法で接触させ、ニーダーなどを用いて攪拌して混合し、後に述べる温度および時間反応を行うことができる。
【0028】
本発明において、ラッカーゼの添加量は、前記処理温度および処理時間により適宜変更することができるが、例えば、酵素製剤として、魚介類加工品の原料を基準として、下限としては、0.001質量%、0.002質量%、0.005質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.05質量%、0.1質量%などが例示でき、上限としては5質量%、2質量%、1質量%、0.5質量%、0.2質量%、0.1質量%などが例示できる。また、酵素添加量の範囲としては例えば、通常0.001質量%~5質量%、好ましくは0.005質量%~2質量%を例示できる。
【0029】
[ラッカーゼによる酵素反応]
ラッカーゼによる酵素処理、すなわち酵素反応の温度は、例えば、通常10~80℃、好ましくは20~70℃、より好ましくは30~65℃の範囲を例示できる。また、酵素処理の時間は、例えば、通常5分間~72時間、好ましくは10分間~48時間、より好ましくは20分間~36時間を例示できる。
【0030】
また、ラッカーゼの至適pHは、通常pH2~8であり、好ましくはpH3~6である。したがって、必要に応じて、ラッカーゼ処理の前にpH調整を行ってもよい。pH調整には、pH調整剤として一般に食品に利用されているものを用いることができ、例えば、塩酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が例示できる。
【0031】
魚介類加工品の製造においては、すり身などの魚介類加工品の原料に食塩、でんぷん、糖類、着色料などの副原料を加え、良く練り込んだ後、特定の型、容器、袋などに詰める工程(いわゆる「ケーシング工程」)を行った後、40℃程度の温度で放置する工程(いわゆる「すわり工程」)を行うことが多いが、前記副原料を加える工程にてラッカーゼを添加し、「すわり工程」の時間を酵素反応の時間とすることにより、効率よく作業を行うことができる。
【0032】
[加熱]
ラッカーゼによる酵素反応後は、ラッカーゼを失活させ、また、同時に加熱殺菌することにより微生物的に安定な状態とすることができる。加熱の温度としては通常80℃~180℃、好ましくは85℃~140℃、より好ましくは90℃~120℃、さらに好ましくは95℃~110℃で、加熱時間は通常30秒~60分、好ましくは1分~30分、より好ましくは2分~15分を例示することができる。
【0033】
魚介類加工品の製造においては、前記「すわり工程」の後、例えば、焼き、蒸し、茹で、揚げなどにより加熱を行うことが多いが、この焼き、蒸し、茹で、揚げなどの工程を酵素反応後の加熱失活、加熱殺菌にあてることにより、効率よく作業を行うことができる。
【0034】
[ラッカーゼ処理による香味の変化]
本発明のラッカーゼ処理を行うことにより、魚介類加工食品の風味が改善される。
【0035】
具体的には、魚介類加工品の好ましい風味はほとんど~あまり変化させずに、不快な風味を大きく低減し、かつ、好ましい風味を増強することができる。
【0036】
不快な風味の原因となる物質は、前述の通り、特に限定されるわけではないが、例えば3-オクタノン、1-オクテン-3-オール、1,5-オクタジエン-3-オールおよび1-ペンテン-3-オールなどが挙げられる。
【0037】
また、好ましい風味としては、前述の通り、特に限定されるものではないが、白身魚様の肉感、魚介類の甘い香りなどが挙げられる。
【0038】
[魚介類加工食品]
本発明で魚介類加工食品とは、前記魚介類加工食品の原料を加工または配合して得られる加工食品をいう。魚介類加工食品の代表的なものとしては、例えば、魚介類練り製品が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0039】
魚介類練り製品の製造方法としては、例えば、すり身または冷凍すり身を加熱して得られる製品が挙げられる。また、加熱方法としては、例えば、焼き、蒸し、茹で、揚げなどが挙げられる。「焼き」によって加工される魚介類練り製品としては、例えば、ちくわ、笹かまぼこ、伊達巻などが例示できる。「蒸し」によって加工される魚介類練り製品としては、例えば、かまぼこ(カニカマ、すじかまぼこ、および、簀巻き)、魚介類ソーセージなどが例示できる。「茹で」によって加工される魚介類練り製品としては、例えば、はんぺん、つみれ、および、鳴門巻きなどが例示できる。「揚げ」によって加工される魚介類練り製品としては、例えば、揚げかまぼこ(さつまあげ、テンプラ、つけあげ、えび天、じゃこ天、がんすなど)、フィッシュカツ(魚ロッケ)、爆弾(沖縄県糸満市)などが例示できる。
【0040】
また、これらの魚介類加工品の原料を主体としたもののみならず、前記魚介類加工品が一部配合されていれば、ハムやソーセージなどのいわゆる畜肉加工食品も、本発明でいう魚介類加工品に含めることができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明の具体的態様を詳しく説明するが、本発明の本質は前記開示した技術的思想にあるのであり、実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の記載中に割合を示す数字がある場合は、質量基準の割合を意味する。
【0042】
(実施例1)エソ冷凍すり身によるかまぼこ(ラッカーゼ処理品)の調製
以下の原料を用いて、かまぼこを調製した。
【0043】
エソ100%冷凍すり身 800g
氷水 140.8g
食塩 24g
氷水 35.2g
ラッカーゼY120(天野エンザイム株式会社製) 10g
合計 1010g
調製方法:
【0044】
上記、エソ100%冷凍すり身800gを秤り取り、凍ったままミキサーにて粉砕した。そこに氷水140.8gを加え、攪拌し、さらに食塩24gと氷水35.2gを混合したスラリーを加えよく攪拌混合した。次いで、ラッカーゼ10gを加え、攪拌混合した後、ケーシングに充填し、40℃(湿度100%)にて40分間、すわり工程を行った。その後、90℃(湿度100%)にて40分間、蒸し工程を行い、冷却し、エソ(100%)かまぼこを調製した(本発明品1)。
【0045】
(比較例1)エソ冷凍すり身によるかまぼこ(ラッカーゼ処理なし)の調製
前記実施例1において、ラッカーゼを使用しない以外は、実施例1と全く同じ操作を行い、エソ(100%)かまぼこを調製した(比較品1)。
【0046】
(実施例2)官能評価
本発明品1および比較品1のそれぞれのかまぼこを20g程度に切り分け、よく訓練されたパネリスト10名により食して、香気および呈味について評価した。
【0047】
評価は本発明品1および比較品1について、両者の対比において、香気について、エソ特有のメタリックな魚油っぽい香気の強さ、白身魚様の肉感、魚介類の甘い香りについて、また、呈味について、甘味、旨味、塩味それぞれの強さおよびどちらが好ましいかについて評価した。
【0048】
その結果10名全員が、香気について、比較品1はエソ特有のメタリックな魚油っぽい香気が強く不快な臭気が感じられるが、本発明品1はそのような香気がなく良好な香気である、また、本発明品1は比較品1と比べ、白身魚様の肉感および魚介類の甘い香りが強く、好ましい香気が改善していると評価した。また、呈味については10名全員が、甘味、旨味、塩味それぞれの強さについては、両者はほとんど差がないが、好ましさという点では明らかに本発明品1の方が好ましいという評価であった。
【0049】
(実施例3)香気分析
本発明品1および比較品1のそれぞれのかまぼこを、SPMEにより香気成分を抽出し、ガスクロマトグラフィーおよび質量分析により、香気成分を測定した。そのTICクロマトグラムを
図1に示す。
【0050】
図1に示す通り比較品1に対し、本発明品1は3-オクタノン、1-オクテン-3-オール、シス-1,5-オクタジエン-3-オールおよび1-ペンテン-3-オールが減少していることが認められた。
【0051】
なお、これらの化合物の、それぞれの香気のかまぼこにおける特徴は表1に示した通りであり、いずれも、比較品1のエソ特有の魚油っぽいメタリックな臭気に寄与していることが認められた。
【0052】
【0053】
以上より、本発明によれば、魚のすり身等の魚介類加工品の不快な臭気を低減させ風味を改善できることが確認された。
【要約】
【課題】簡便かつ高い効果で、魚介類加工食品の風味改善を行う方法を提供すること。特に、傷みが早く、不快臭が生成しやすい、エソなどの南方系の魚の冷凍すり身を使用した魚介類加工食品の風味改善に対して効果がある風味改善方法を提供する。
【解決手段】以下の、工程(A)および(B)を含む、魚介類加工食品の風味改善方法。
(A)魚介類加工食品の原料とラッカーゼを接触させる工程、
(B)前記工程(A)後の魚介類加工食品の原料を加熱する工程
【選択図】
図1