(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】リニアモータおよび工作機械
(51)【国際特許分類】
H02K 41/02 20060101AFI20240826BHJP
H02K 33/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H02K41/02 Z
H02K33/00 Z
(21)【出願番号】P 2024507867
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2023003350
【審査請求日】2024-02-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】河本 道生
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-060883(JP,A)
【文献】特開2015-173536(JP,A)
【文献】特開2015-177590(JP,A)
【文献】特開2004-328921(JP,A)
【文献】特開2005-326955(JP,A)
【文献】特開平04-325865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/02
H02K 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に用いられるリニアモータであって、
複数の磁石が第1方向に並べて設けられている磁石板と、
複数のコイルが前記第1方向に並べて設けられているおり、前記磁石板に対して前記第1方向にスライド可能に構成されたスライダと、
前記磁石板の表面と平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向における前記複数のコイルの端部と、前記第2方向における前記複数の磁石の端部とを冷却するように配管されている冷却配管とを備え
、
前記冷却配管は、前記スライダにおいて前記磁石板との対向面側に設けられている、リニアモータ。
【請求項2】
前記第1方向および前記第2方向の両方に直交する第3方向から見たときに、前記冷却配管は、前記第2方向における前記複数のコイルの端部と重なるように配管されている、請求項
1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記第2方向から見たときに、前記冷却配管は、前記第2方向における前記複数の磁石の端部と重なるように配管されている、請求項1
または2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記スライダは、前記第1方向に並べて設けられている複数のティースを含み、前記複数のティースは、前記複数の磁石と対向するように前記スライダに設けられており、
前記複数のティースは、
最も外側に位置するティースであって、前記複数のコイルが巻かれていない第1ティースと、
前記第1ティースの隣に位置するティースであって、前記複数のコイルの1つが巻かれている第2ティースとを含み、
前記冷却配管は、前記第1ティースと前記第2ティースとの間を通るように配管されている、請求項1
または2に記載のリニアモータ。
【請求項5】
請求項1
または2に記載のリニアモータと、
ワークまたは工具を回転可能に保持するための主軸とを備え、
前記リニアモータは、前記主軸の位置を移動するために用いられている、工作機械。
【請求項6】
請求項1
または2に記載のリニアモータと、
ワークを載置するためのテーブルとを備え、
前記リニアモータは、前記テーブルを駆動するために用いられている、工作機械。
【請求項7】
請求項1
または2に記載のリニアモータと、
部材を搬送するためのローダとを備え、
前記リニアモータは、前記ローダを駆動するために用いられている、工作機械。
【請求項8】
工作機械に用いられるリニアモータであって、
複数の磁石が第1方向に並べて設けられている磁石板と、
複数のコイルが前記第1方向に並べて設けられているおり、前記磁石板に対して前記第1方向にスライド可能に構成されたスライダと、
前記磁石板の表面と平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向における前記複数のコイルの端部と、前記第2方向における前記複数の磁石の端部とを冷却するように配管されている冷却配管とを備える、リニアモータ。
前記スライダは、
前記第1方向に延在している第1収容部と、
前記第1方向に延在している第2収容部とを含み、
前記第1収容部および前記第2収容部は、前記第2方向において互いに対向しており、
前記磁石板は、前記第1収容部と前記第2収容部との間に設けられており、
前記冷却配管は、前記第1収容部の内部と、前記第2収容部の内部とを通るように配管されている、リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リニアモータおよび工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-042423号公報(特許文献1)は、リニアモータに関する発明を開示している。当該リニアモータは、固定子として機能する界磁部と、可動子として機能する電機子とを備える。電機子は、内部にコイルを備える。電機子は、当該コイルに電流を流すことで電磁誘導作用に伴う駆動力を発生させ、界磁部上を移動する。
【0003】
電機子は、上下に重ねて配管されている2つの冷却パイプを備える。2つの冷却パイプは、電機子が界磁部と対向している面とは反対側からコイルを冷却するように配管されている。上段の冷却パイプ内の冷媒は、下段の冷却パイプ内の冷媒と逆向きに流れている。これにより、特許文献1に開示されるリニアモータは、電機子の温度分布を均一にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイルに発生した熱は、固定側の磁石に伝わってしまうことがある。磁石の温度が上昇すると、リニアモータの性能が低下してしまう。特許文献1は、固定側の磁石を冷却することについては何ら開示していない。したがって、コイルおよび磁石の両方を冷却することが可能な技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例では、工作機械に用いられるリニアモータが提供される。上記リニアモータは、複数の磁石が第1方向に並べて設けられている磁石板と、複数のコイルが上記第1方向に並べて設けられているおり、上記磁石板に対して上記第1方向にスライド可能に構成されたスライダと、上記磁石板の表面と平行でかつ上記第1方向と直交する第2方向における上記複数のコイルの端部と、上記第2方向における上記複数の磁石の端部とを冷却するように配管されている冷却配管とを備える。
【0007】
本開示の一例では、上記冷却配管は、上記スライダに設けられている。
【0008】
本開示の一例では、上記第1方向および上記第2方向の両方に直交する第3方向から見たときに、上記冷却配管は、上記第2方向における上記複数のコイルの端部と重なるように配管されている。
【0009】
本開示の一例では、上記第2方向から見たときに、上記冷却配管は、上記第2方向における上記複数の磁石の端部と重なるように配管されている。
【0010】
本開示の一例では、上記スライダは、上記第1方向に並べて設けられている複数のティースを含む。上記複数のティースは、上記複数の磁石と対向するように上記スライダに設けられている。上記複数のティースは、最も外側に位置するティースであって、上記複数のコイルが巻かれていない第1ティースと、上記第1ティースの隣に位置するティースであって、上記複数のコイルの1つが巻かれている第2ティースとを含む。上記冷却配管は、上記第1ティースと上記第2ティースとの間を通るように配管されている。
【0011】
本開示の一例では、上記スライダは、上記第1方向に延在している第1収容部と、上記第1方向に延在している第2収容部とを含む。上記第1収容部および上記第2収容部は、上記第2方向において互いに対向している。上記磁石板は、上記第1収容部と上記第2収容部との間に設けられている。上記冷却配管は、上記第1収容部の内部と、上記第2収容部の内部とを通るように配管されている。
【0012】
本開示の他の例では、工作機械が提供される。上記工作機械は、上記リニアモータと、ワークまたは工具を回転可能に保持するための主軸とを備える。上記リニアモータは、上記主軸の位置を移動するために用いられている。
【0013】
本開示の他の例では、工作機械が提供される。上記工作機械は、上記リニアモータと、ワークを載置するためのテーブルとを備える。上記リニアモータは、上記テーブルを駆動するために用いられている。
【0014】
本開示の他の例では、工作機械が提供される。上記工作機械は、リニアモータと、部材を搬送するためのローダとを備える。前記リニアモータは、前記ローダを駆動するために用いられている。
【0015】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に従うリニアモータを斜め方向から表わす斜視図である。
【
図2】磁石とコイルと冷却配管との位置関係をZ軸方向から表わした図である。
【
図3】磁石とコイルと冷却配管との位置関係をY軸方向から表わした図である。
【
図5】
図4に示されるV-V線に沿ったスライダの断面図である。
【
図6】
図4に示されるVI-VI線に沿ったスライダの断面図である。
【
図8】工作機械の装置構成の他の例を示す図である。
【
図9】工作機械の装置構成の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0018】
<A.リニアモータ100>
まず、
図1を参照して、リニアモータ100の概要について説明する。
図1は、実施の形態に従うリニアモータ100を斜め方向から表わす斜視図である。
【0019】
図1に示されるように、リニアモータ100は、磁石板10と、スライダ50とを含む。
【0020】
磁石板10は、固定子として機能する。磁石板10には、複数の磁石12が並べられている。説明の便宜のために、以下では、磁石12が並べられている方向をX軸方向(第1方向)とも称する。磁石板10の表面と平行でかつX軸方向と直交する方向をY軸方向(第2方向)とも称する。X軸方向およびY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向(第3方向)とも称する。
【0021】
複数の磁石12の各々は、X軸方向において所定の間隔を空けて磁石板10上に配置されている。磁石12の各々は、永久磁石である。磁石12の各々は、隣接する磁石12と極性が反対になるように磁石板10上に設けられている。一例として、一の磁石12の表面がN極で、当該一の磁石12の裏面がS極であったとする。この場合、当該一の磁石12の隣に配置されている磁石12については、表面がS極で、裏面がN極となる。
【0022】
スライダ50は、可動子として機能する。スライダ50は、複数のコイル52を有する。複数のコイル52は、X軸方向に並べてスライダ50に設けられている。コイル52の各々は、スライダ50に形成されている後述のティース53(
図5参照)に長円状に巻かれている。
【0023】
複数のコイル52は、複数の磁石12と対向するようにスライダ50に設けられている。異なる言い方をすれば、複数のコイル52は、Z軸方向から見て複数の磁石12と重なるようにスライダ50に設けられている。
【0024】
スライダ50は、複数のコイル52に交流電流を印加することにより発生する磁場を複数の磁石12に作用させることで推力を受け、磁石板10上をX軸方向にスライドする。交流電流は、たとえば、コイル52に電気的に接続される電源(図示しない)から供給される。
【0025】
<B.冷却配管54>
次に、
図2および
図3を参照して、リニアモータ100に設けられている冷却配管54について説明する。
図2は、磁石12とコイル52と冷却配管54との位置関係をZ軸方向から表わした図である。
図3は、磁石12とコイル52と冷却配管54との位置関係をY軸方向から表わした図である。
【0026】
リニアモータ100は、冷却配管54を備える。冷却配管54は、Y軸方向における複数の磁石12の端部と、Y軸方向における複数のコイル52の端部とを冷却するように配管されている。これにより、冷却配管54は、コイル52の端部だけでなく、磁石12の端部を冷却することができ、効率的な冷却を実現することができる。結果として、発生した熱に伴うリニアモータ100の性能の低下が抑制される。また、リニアモータ100を搭載する機械(たとえば、工作機械など)の熱変位が抑制される。
【0027】
なお、「Y軸方向における複数の磁石12の端部」とは、Y軸方向における磁石12の最端部を少なくとも含む部分を意味する。一例として、当該端部は、磁石12の最端部から長さ「d1」の範囲を表わす。
【0028】
また、「Y軸方向における複数のコイル52の端部」とは、Y軸方向におけるコイル52の最端部を少なくとも含む部分を意味する。一例として、コイル52の端部は、コイル52の最端部から長さ「d2」の範囲を表わす。
【0029】
冷却配管54は、その冷却効果が磁石12の端部とコイル52の端部との両方に及ぶ範囲にあれば任意に配管され得る。一例として、冷却配管54は、固定側の磁石板10に配管されてもよいし、可動側のスライダ50に配管されてもよい。
図2および
図3の例では、冷却配管54は、スライダ50に配管されている。冷却配管54がスライダ50に配管されることで、スライダ50内のコイル52で発生した熱が磁石板10に伝わることを防ぐことができる。また、冷却配管54がスライダ50に配管される場合には、冷却配管54が磁石板10に配管されるよりも、冷却配管54の長さが短くなる。
【0030】
冷却配管54は、たとえば、コイル52の各々の端部に沿うように配管されている。一例として、冷却配管54は、Z軸方向から見たときに、Y軸方向における複数のコイル52の端部と重なるように配管されている。これにより、冷却配管54は、コイル52の端部をより効果的に冷却することができる。
【0031】
また、冷却配管54は、磁石12の端部と平行に配管されている。一例として、冷却配管54は、Y軸方向における複数の磁石12の端部と重なるように配管されている。これにより、冷却配管54は、磁石12の端部をより効果的に冷却することができる。
【0032】
冷却配管54は、冷媒の流入口と、冷媒の流出口とを有する。当該流入口と当該流出口とは、冷却器(図示しない)に繋げられている。冷媒は、冷却配管54の流入口から冷却配管54の流出口まで流れ、磁石12およびコイル52を冷却する。流出口に到達した冷媒は、冷却器に送られ、冷やされる。その後、冷やされた冷媒は、冷却配管54の流入口に再び送られる。このように、冷媒は、スライダ50内を循環することで磁石12およびコイル52から熱を集める。冷媒は、たとえば、水などを含む液体である。
【0033】
冷却配管54は、たとえば、熱伝導性の良い金属管で構成される。一例として、冷却配管54は、銅管で構成されてもよいし、アルミニウム管で構成されてもよいし、ステンレス鋼管で構成されてもよい。
【0034】
冷却配管54の断面形状は、任意である。冷却配管54の断面形状は、たとえば、円形であってもよいし、矩形であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0035】
<C.スライダ50>
次に、
図4~
図6を参照して、上述のスライダ50についてさらに詳細に説明する。
図4は、スライダ50をZ軸方向から表わした図である。
図5は、
図4に示されるV-V線に沿ったスライダ50の断面図である。
図6は、
図4に示されるVI-VI線に沿ったスライダ50の断面図である。
【0036】
スライダ50は、その外観を成す筐体60を有する。筐体60は、たとえば、樹脂製である。筐体60の内部には、スライダコア51と、複数のコイル52と、冷却配管54と、冷却配管56と、固定用部材58とが収容されている。
【0037】
スライダコア51は、たとえば、電磁鋼板で構成されている。また、スライダコア51には、複数のティース53が形成されている。ティース53の各々は、スライダコア51の下面からZ軸方向に突き出ており、上述の複数の磁石12と対向している。異なる言い方をすれば、複数のティース53は、Z軸方向から見て複数の磁石12と重なるようにスライダコア51に形成されている。また、ティース53の各々は、Y軸方向に延在している。
【0038】
ティース53は、X軸方向の最も外側に位置するティースであって、コイル52が巻かれていない補助ティース53A(第1ティース)と、補助ティース53Aの隣に位置するティースであって、コイル52が巻かれているコイル用ティース53B(第2ティース)とを含む。上述の冷却配管54は、補助ティース53Aとコイル用ティース53Bとの間を通るように配管されている。
【0039】
補助ティース53Aとコイル用ティース53Bとの間の空間が冷却配管54の配管経路として活用されることで、デッドスペースが有効活用される。また、スライダ50がX軸方向において大型化することを防ぐことができる。
【0040】
また、スライダ50は、X軸方向に延在している収容部62A,62Bを有する。収容部62A,62Bは、筐体60の一部を構成し、物体を収容可能な空間を区画形成している。収容部62A,62Bは、Y軸方向において互いに対向している。収容部62A,62Bの間には、上述の磁石板10が配置される。これにより、収容部62A,62Bは、Y軸方向におけるスライダ50の移動を抑制するとともに、X軸方向にスライダ50を導く。
【0041】
冷却配管54は、収容部62Aの内部と、収容部62Bとの内部を通るように配管されている。収容部62Aの内部の空間と、収容部62Bの内部の空間とが冷却配管54の配管経路として活用されることで、デッドスペースが有効活用される。また、スライダ50がY軸方向において大型化することを防ぐことができる。
【0042】
好ましくは、冷却配管54とは異なる他の冷却配管56がさらにスライダ50に設けられる。冷却配管54がスライダコア51の下面(すなわち、磁石板10に近い側の面)に設けられているのに対して、冷却配管56は、スライダコア51の上面(すなわち、磁石板10から離れている側の面)に設けられる。冷却配管54,56の両方が設けられることで、スライダ50の冷却効率がさらに改善する。
【0043】
より具体的には、スライダコア51の上面には、複数の溝が形成されている。各溝は、等間隔に形成され、Y軸方向に延在している。冷却配管56は、スライダコア51の上面に形成されている各溝に沿って蛇行するように配管される。
【0044】
冷却配管56は、冷媒の流入口と、冷媒の流出口とを有する。当該流入口と当該流出口とは、冷却器(図示しない)に繋げられている。冷媒は、冷却配管56の流入口から冷却配管56の流出口まで流れ、スライダ50を冷却する。流出口に到達した冷媒は、冷却器に送られ、冷やされる。その後、冷やされた冷媒は、冷却配管56の流入口に再び送られる。このように、冷媒は、スライダコア51の上面を循環することでスライダ50から排熱する。冷媒は、たとえば、水などを含む液体である。
【0045】
冷却配管56は、たとえば、熱伝導性の良い金属管で構成される。一例として、冷却配管56は、銅管で構成されてもよいし、アルミニウム管で構成されてもよいし、ステンレス鋼管で構成されてもよい。
【0046】
冷却配管56の断面形状は、任意である。冷却配管56の断面形状は、たとえば、円形であってもよいし、矩形であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0047】
また、スライダコア51には、Y軸方向に延在している貫通孔が形成されている。当該貫通孔には、固定用部材58が挿入される。固定用部材58には、Z軸方向においてねじ穴が形成されているとともに、スライダコア51にはZ軸方向に対して固定用部材58のねじ穴と連通する貫通孔が形成されている。
【0048】
固定用部材58の形状は、任意である。一例として、固定用部材58の形状は、直方体形状の角材であってもよいし、円柱形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0049】
固定用部材58は、スライダコア51とは異なる種類の部材で構成される。一例として、スライダコア51が積層鋼鈑で構成されているのに対して、固定用部材58は、積層鋼鈑以外の金属で構成される。一例として、固定用部材58は、鉄で構成されてもよいし、その他の種類の金属で構成されてもよい。
【0050】
<D.リニアモータ100の応用例>
次に、
図7~
図9を参照して、上述のリニアモータ100の応用例について説明する。リニアモータ100は、たとえば、工作機械内の様々な部品を駆動するために用いられ得る。
【0051】
ここでいう「工作機械」とは、ワークを加工する機能を備えた種々の装置を包含する概念である。工作機械200は、横形のマシニングセンタであってもよいし、立形のマシニングセンタであってもよい。あるいは、工作機械200は、旋盤であってもよいし、付加加工機であってもよいし、その他の切削機械や研削機械であってもよい。
【0052】
リニアモータ100が工作機械内で使用される場合には、固定子として機能する磁石板10が工作機械内の不動部品に取り付けられる。一方で、可動子として機能するスライダ50は、工作機械内における駆動対象の部品に取り付けられる。この場合、ボルトが駆動対象の部品を通されるとともに、当該ボルトは、スライダ50内に形成されている上述の固定用部材58に形成されているねじ穴に嵌められる。これにより、駆動対象の部品がスライダ50に固定される。
【0053】
(D1.主軸)
まず、
図7を参照して、リニアモータ100を主軸の駆動に応用する例について説明する。
図7は、工作機械200の装置構成の一例を示す図である。
【0054】
リニアモータ100は、たとえば、ワークまたは工具を回転可能に保持するための主軸250の位置を移動するために用いられる。主軸250は、ワークを回転するためのワーク主軸であってもよいし、工具を回転するための工具主軸であってもよい。
【0055】
説明の便宜のために、以下では、主軸250を基準とする座標系をX'軸,Y'軸およびZ'軸で表わす。X'軸、Y'軸およびZ'軸は、互いに直交している。
【0056】
図7に示されるように、工作機械200は、制御部200Aと、駆動部240Aと、主軸250とを含む。
【0057】
制御部200Aは、たとえば、CNC(Computer Numerical Control)装置である。CNC装置は、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのMPU(Micro Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。制御部200Aは、加工プログラムなど各種プログラムを実行することで駆動部240Aの動作を制御する。
【0058】
駆動部240Aは、主軸250を駆動するための機構である。駆動部240Aの装置構成は、任意である。駆動部240Aは、単体の駆動ユニットで構成されてもよし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。
図7の例では、駆動部240Aは、モータドライバ241A~241Cと、リニアモータ242A~242Cと、エンコーダ243A~243Cとで構成されている。リニアモータ242A~242Cの各々は、上述のリニアモータ100に対応する。
【0059】
モータドライバ241Aは、主軸250のX'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Aは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Aに出力する。
【0060】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Aに逐次的に出力する。モータドライバ241Aは、エンコーダ243Aのフィードバック信号から主軸250の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Aに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Aは、X'軸方向の任意の位置に主軸250を移動する。
【0061】
モータドライバ241Bは、主軸250のY'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Bは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Bに出力する。
【0062】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Bに逐次的に出力する。モータドライバ241Bは、エンコーダ243Bのフィードバック信号から主軸250の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Bに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Bは、Y'軸方向の任意の位置に主軸250を移動する。
【0063】
モータドライバ241Cは、主軸250のZ'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Cは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Cに出力する。
【0064】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Cに逐次的に出力する。モータドライバ241Cは、エンコーダ243Cのフィードバック信号から主軸250の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Cに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Cは、Z'軸方向の任意の位置に主軸250を移動する。
【0065】
(D2.テーブル)
次に、
図8を参照して、リニアモータ100をテーブルの駆動に応用する例について説明する。
図8は、工作機械200の装置構成の他の例を示す図である。
【0066】
リニアモータ100は、たとえば、工作機械内に設けられているテーブル260を駆動するために用いられる。テーブル260は、加工対象のワークを載置するための台である。
【0067】
図8に示されるように、工作機械200は、制御部200Aと、駆動部240Bと、テーブル260とを含む。
【0068】
駆動部240Bは、テーブル260を駆動するための機構である。駆動部240Bの装置構成は、任意である。駆動部240Bは、単体の駆動ユニットで構成されてもよし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。
図8の例では、駆動部240Bは、モータドライバ241D,241Eと、リニアモータ242D,242Eと、エンコーダ243D,243Eとで構成されている。リニアモータ242D,242Eの各々は、上述のリニアモータ100に対応する。
【0069】
モータドライバ241Dは、テーブル260のX'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Dは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Dに出力する。
【0070】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Dに逐次的に出力する。モータドライバ241Dは、エンコーダ243Dのフィードバック信号からテーブル260の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Dに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Dは、X'軸方向の任意の位置にテーブル260を移動する。
【0071】
モータドライバ241Eは、テーブル260のY'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Eは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Eに出力する。
【0072】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Eに逐次的に出力する。モータドライバ241Eは、エンコーダ243Eのフィードバック信号からテーブル260の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Eに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Eは、Y'軸方向の任意の位置にテーブル260を移動する。
【0073】
(D3.ローダ)
次に、
図9を参照して、リニアモータ100をローダの駆動に応用する例について説明する。
図9は、工作機械200の装置構成の他の例を示す図である。
【0074】
リニアモータ100は、たとえば、部材を搬送するためのローダ270を駆動するために用いられる。当該部材は、加工前または加工後のワークであってもよいし、工具であってもよい。
【0075】
図9に示されるように、工作機械200は、制御部200Aと、駆動部240Cと、ローダ270とを含む。
【0076】
駆動部240Cは、ローダ270を駆動するための機構である。駆動部240Cの装置構成は、任意である。駆動部240Cは、単体の駆動ユニットで構成されてもよし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。
図9の例では、駆動部240Cは、モータドライバ241F,241G,241Hと、リニアモータ242F,242G,242Hと、エンコーダ243F,243G,243Hとで構成されている。リニアモータ242F,242G,242Hの各々は、上述のリニアモータ100に対応する。
【0077】
モータドライバ241Fは、ローダ270のX'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Fは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Fに出力する。
【0078】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Fに逐次的に出力する。モータドライバ241Fは、エンコーダ243Fのフィードバック信号からローダ270の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Fに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Fは、X'軸方向の任意の位置にローダ270を移動する。
【0079】
モータドライバ241Gは、ローダ270のY'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Gは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Gに出力する。
【0080】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Gに逐次的に出力する。モータドライバ241Gは、エンコーダ243Gのフィードバック信号からローダ270の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Gに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Gは、Y'軸方向の任意の位置にローダ270を移動する。
【0081】
モータドライバ241Hは、ローダ270のZ'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Hは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Hに出力する。
【0082】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Hに逐次的に出力する。モータドライバ241Hは、エンコーダ243Hのフィードバック信号からローダ270の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Hに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Hは、Z'軸方向の任意の位置にローダ270を移動する。
【0083】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
10 磁石板、12 磁石、50 スライダ、51 スライダコア、52 コイル、53 ティース、53A 補助ティース、53B コイル用ティース、54 冷却配管、56 冷却配管、58 固定用部材、60 筐体、62A 収容部、62B 収容部、100 リニアモータ、200 工作機械、200A 制御部、240A 駆動部、240B 駆動部、240C 駆動部、241A モータドライバ、241B モータドライバ、241C モータドライバ、241D モータドライバ、241E モータドライバ、241F モータドライバ、241G モータドライバ、241H モータドライバ、242A リニアモータ、242B リニアモータ、242C リニアモータ、242D リニアモータ、242E リニアモータ、242F リニアモータ、242G リニアモータ、242H リニアモータ、243A エンコーダ、243B エンコーダ、243C エンコーダ、243D エンコーダ、243E エンコーダ、243F エンコーダ、243G エンコーダ、243H エンコーダ、250 主軸、260 テーブル、270 ローダ。
【要約】
工作機械に用いられるリニアモータ(100)は、複数の磁石(12)が第1方向に並べて設けられている磁石板(10)と、複数のコイル(52)が第1方向に並べて設けられているおり、磁石板(10)に対して第1方向にスライド可能に構成されたスライダ(50)と、磁石板(10)の表面と平行でかつ第1方向と直交する第2方向における複数のコイル(52)の端部と、第2方向における複数の磁石(12)の端部とを冷却するように配管されている冷却配管(54)とを備える。