(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】植毛バネ
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240827BHJP
F16F 1/06 20060101ALI20240827BHJP
F16F 1/12 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60N2/90
F16F1/06 C
F16F1/12 C
(21)【出願番号】P 2020558669
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(86)【国際出願番号】 CN2018112540
(87)【国際公開番号】W WO2019137068
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-10-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】201820056927.0
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201820170441.X
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520258297
【氏名又は名称】太倉▲カ▼蘭平汽車零部件有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】葛敬東
(72)【発明者】
【氏名】唐朋萬
(72)【発明者】
【氏名】唐書豪
(72)【発明者】
【氏名】趙春嘯
【合議体】
【審判長】中屋 裕一郎
【審判官】小川 恭司
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202009016861(DE,U1)
【文献】特開平6-179127(JP,A)
【文献】特開昭61-167727(JP,A)
【文献】特開2016-114137(JP,A)
【文献】特開平5-31671(JP,A)
【文献】特開平3-66957(JP,A)
【文献】実開昭59-16304(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00 - 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネ本体と植毛コーティングとを備え、
前記植毛コーティングが
前記バネ本体の外表面上に配置され、繊維が前記植毛コーティングの表面上に設けられている
植毛バネ
の製造方法であって、
前記バネ本体の圧縮高さを算出し、金属ピンと、プラグピン穴を有する金属管と、前記金属管に溶接接続された固定金属ブロックと、穴を有する金属ブロックとを備え、前記金属管の直径が前記バネ本体の内径に一致し、前記プラグピン穴から前記固定金属ブロックまでの距離が前記バネ本体の圧縮高さである、前記バネ本体の固定具、および前記固定具に対応する圧縮装置を用意し、
前記金属管および前記金属管に溶接接続された前記固定金属ブロックを前記圧縮装置に取り付け、
最初に前記バネ本体を前記金属管に装填し、次に前記穴を有する金属ブロックを前記金属管に装填し、前記圧縮装置を起動して前記バネ本体を完全な圧縮状態に圧縮し、
前記金属ピンを前記プラグピン穴に挿入し、前記圧縮装置を解放して前記圧縮状態にある前記バネ本体を収容する前記固定具を取り外し、
前記圧縮状態にある前記バネ本体を収容する前記固定具を植毛装置に入れ、前記圧縮状態にある前記バネ本体の外表面に植毛を行い、
前記植毛の後、前記固定具を取り外して前記植毛バネを取得することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
防錆コーティングを更に備え、
前記防錆コーティングは、
前記バネ本体の表面上に配置され、前記植毛コーティングは、前記防錆コーティングの外層上に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の
製造方法。
【請求項3】
前記防錆コーティングは、電着コーティング又は合金コーティングであることを特徴とする、請求項2に記載の
製造方法。
【請求項4】
前記バネ本体のワイヤの断面は、楕円形又は長円形であることを特徴とする、請求項1に記載の
製造方法。
【請求項5】
前記合金コーティングが、亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティングであることを特徴とする、請求項3に記載の
製造方法。
【請求項6】
前記亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティングは、
前記バネ本体が前記完全な圧縮状態に圧縮される前に、ディップ塗布又はスプレー塗布とベーキングの手順によって
前記バネ本体の表面に形成されることを特徴とする、請求項5に記載の
製造方法。
【請求項7】
前記植毛
は、接着剤塗布、植毛、及び乾燥の手順によって
行われることを特徴とする、請求項1に記載の
製造方法。
【請求項8】
前記植毛コーティングは、少なくとも接着剤層を備える、請求項1に記載の
製造方法。
【請求項9】
前記繊維が、ナイロンPA66繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の
製造方法。
【請求項10】
前記植毛コーティングは、0.2mm~0.4mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の
製造方法。
【請求項11】
前記接着剤層の接着剤が、2500Cst~3500Cstの粘度を有することを特徴とする、請求項8に記載の
製造方法。
【請求項12】
前記防錆コーティングが、15μm~20μmの厚さを有することを特徴とする、請求項2に記載の
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動テールゲートシステム用のバネ部品の分野に関し、特に植毛加工されたバネに関する。
【背景技術】
【0002】
人々の生活の質の向上に伴い、人々はますます静かで快適な環境を追求している。電動テールゲートシステムに従来のバネを適用すると、高デシベルのノイズが発生する。このためバネ本体の表面に植毛加工(flocking)を施したものが市販されており、摩擦低減とノイズ低減の効果を実現している。
【0003】
現在、市販の電動テールゲートに適用されている植毛バネは、すべて接着剤のスプレー塗布と静電植毛とによって形成され、形成後はバネの内側と外側の両方に植毛加工が施されている。バネ本体の内側に植え付けられた繊維(flocks)は、摩擦を低減しないだけではなく、バネの内径及び外径を増大させるので、設計スペースが比較的小さい多くのテールゲートシステムでは、バネの内径及び外径の増大により、バネの設計と組み立てが非常に困難になる。
【0004】
現在、市販の電動テールゲートに適用されている植毛バネは、すべて円形断面のワイヤから作られている。しかしながら、すべての顧客は、バネの長手方向の予備スペースを最小化して、より軽量の電動テールゲートステイシステムにすることを望んでいる。長手方向のスペースが比較的小さいテールゲートシステムには、従来の円形断面のワイヤが使用されており、多くの車両モデルのテールゲートシステムは、植毛バネを使用してノイズを除去することができない。
【0005】
現在、市販の電動テールゲートに適用されている植毛バネは、下部の防錆コーティング(bottom anti-rust coating)の電着塗料表面に植毛加工されている。しかしながら、電着塗料によって生成される廃水は、環境問題を引き起こす。さらに、電着(electrophoretic)コーティングは密閉コーティングであり、一旦、コーティングが異物によって傷つけられると、錆がすぐに発生し徐々に広がる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の上記欠点に鑑みて、本発明によって解決される技術的課題は、従来技術における植毛加工はバネの内径及び外径を増大させ、設計スペースが比較的小さい多くのテールゲートシステムでは、バネの内径及び外径の増大によりバネの設計と組立が非常に困難になるという問題を解決することであり、電着塗料によって生成される廃水によって引き起こされる環境問題を解決することであり、そして、電着コーティングは密閉コーティングであるため、一旦、コーティングが異物によって傷つけられると、錆がすぐに発生し徐々に広がるという問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、当業者は、バネの内径を最大化するためにバネの外表面のみが植毛加工されているバネ製品であると共に、バネの長手方向の圧縮高さを小さくするために楕円形断面のワイヤを用いたバネ製品である植毛バネの開発に専念し、これにより電動テールゲートシステムの小型化及び軽量化を実現した。さらに、電着コーティングの代わりに亜鉛-アルミニウムマイクロシート防錆コーティングが使用される、亜鉛-アルミニウムマイクロシート植毛バネが開発された。亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティングは、陰極犠牲保護コーティングの一種であり、このコーティングは異物で傷つけられても錆びない。亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティングと植毛コーティングとの組み合わせは、防錆性能を大幅に向上させる。さらに、亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティングは、電着コーティングよりも環境に優しい。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、バネ本体と植毛コーティングとを備え、植毛コーティングがバネ本体の表面上に配置され、繊維が植毛コーティングの表面上に設けられる、植毛バネを提供する。
【0009】
また、植毛バネは、防錆コーティングを更に備え、防錆コーティングは、バネ本体の表面上に配置され、植毛コーティングは、防錆コーティングの外層上に配置されている。
【0010】
また、防錆コーティングは、電着コーティング又は合金コーティングである。
【0011】
また、植毛コーティングは、バネ本体の外表面上にのみ配置される。
【0012】
また、バネは、圧縮状態で、植毛のために植毛装置内に配置される。
【0013】
また、バネ本体のワイヤは、楕円形断面のワイヤ又は長円形断面のワイヤである。
【0014】
また、合金コーティングは、亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティングである。
【0015】
また、亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティングは、ディップ塗布又はスプレー塗布とベーキングの手順によって形成される。
【0016】
また、バネの表面上の植毛コーティングは、接着剤塗布、植毛、及び乾燥の手順によって植毛加工される。
【0017】
また、バネの表面上の植毛コーティングは、接着剤層及び繊維を含む。
【0018】
また、繊維は、ナイロンPA66繊維である。
【0019】
また、繊維の種類は、3.3dtex(デシテックス)である。
【0020】
また、植毛コーティングは、0.2mm~0.4mmの厚さを有する。
【0021】
また、接着剤は、2500Cst~3500Cst(センチストークス)の粘度を有する。
【0022】
また、防錆コーティングは、15μm~20μmの厚さを有する。
【0023】
その一方で、本発明は、植毛バネを製造するための固定具を提供する。この固定具は、金属ピンと、プラグピン穴を有するステンレス鋼管と、ステンレス鋼管に溶接接続された固定金属ブロックと、穴を有する金属ブロックとを備え、金属管の直径がバネの内径と一致し、プラグピン穴から固定金属ブロックまでの距離がバネの圧縮高さである。
【0024】
本発明によれば、従来の電動テールゲートバネの防錆と騒音低減とを維持することに基づいて、バネの外表面のみが植毛加工され、バネの側面が植毛加工されるのを回避する。本発明によれば、円形ワイヤの代わりに楕円形ワイヤ又は長円形ワイヤが使用されるので、バネの長手方向の圧縮高さが低減され、元々小さい電気テールゲートシステムでも植毛バネを使用することができ、それによってノイズの問題を解決する。本発明によれば、円形ワイヤの代わりに楕円形ワイヤが使用されるので、バネの長手方向の圧縮高さが低減され、元々小さい電動テールゲートシステムでも植毛バネを使用することができ、それによってノイズの問題を解決する。本発明によれば、電着コーティングの代わりに、亜鉛-アルミニウムマイクロシート防錆コーティングが使用される。これにより、コーティングが通常損傷を受けていない状態、及び表面が傷つけられている状態で、コーティングの防錆性能が大幅に改善され、同時に環境汚染が低減される。
【0025】
以下、本発明の目的、特徴及び効果を十分に理解するために、図面を参照して本発明の概念、具体的な構成及びその技術的効果について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の1つの好ましい実施形態に係るバネであり、バネの外表面のみが植毛加工されている。
【
図2】本発明の1つの好ましい実施形態に係る、楕円形断面のワイヤを有する電動テールゲートバネの斜視図である;
【
図3】本発明の1つの好ましい実施形態に係る、楕円形断面のワイヤを有する電動テールゲートバネの断面図である。
【
図4】本発明の1つの好ましい実施形態に係る、植毛コーティングと組み合わされた亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティングを有するバネのワイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について、その技術的内容をより明確かつ理解しやすくするために、図面を参照しながら説明する。本発明は、様々な形態の実施形態で具現化することができ、本発明の保護範囲は、本明細書に記載された実施形態に限定されない。
【0028】
図面において、同一の参照番号は、同一の構造を有する構成要素を示し、同様の参照番号は、全体を通して同様の構造又は機能を有するアセンブリを示す。図示されている各アセンブリのサイズ及び厚さは任意に示されており、本発明は各アセンブリのサイズ及び厚さを規定していない。図を分かり易くするために、図面の一部の構成要素の厚さは適切に誇張されている。
【0029】
(第1の実施形態)
従来の電動テールゲートバネは、その内表面、外表面、及び側面がすべて植毛されており、より多くの取り付けスペースを必要とするため、スペースが限られている多くの電動テールゲートシステムでは、植毛バネを使用してノイズ低減効果を達成することができない。この従来の電動テールゲートバネを改良するために、本発明は、現在の植毛バネに対し、小さなスペースに取り付けることができ、同じ取り付けスペースという条件下でもバネのせん断応力を低下させて疲労寿命を長くできる、植毛バネの解決手段を設計する。本発明の主な技術的解決手段は、以下の通りである。
【0030】
図1及び
図3に示すように、本発明の植毛バネは、バネ本体1と、電着コーティング4と、バネの外表面の植毛層2とを備えている。バネ本体1は、システム内のバネの機械的特性及び疲労寿命を決定し、電着コーティング4は、バネの耐食性を決定し、バネの外表面の植毛層2は、接着剤層5上に繊維6を植毛することによって、バネ本体1の金属とバネの外管との間の直接摩擦を分離し、それによってバネ本体と外管との間の摩擦による摩擦ノイズを除去する。
【0031】
本発明の植毛バネは、バネ全体の内表面及び外表面の両方に植毛するという従来の考え方を打破し、バネの側面での植毛を回避しバネの外表面のみに植毛することで、バネが完全に圧縮されたときに圧縮高さが大幅に低減され、システムに取り付けることができなかったバネを既存のスペースに取り付けることができるため、システムの構造を変更することなく、植毛加工とノイズ低減とを実現することができる。
【0032】
本発明の植毛バネは、バネ全体の全表面に植毛するという従来の考え方を打破し、バネの内表面での植毛を回避しバネの外表面のみに植毛することで、システムの同じ取り付けスペースという条件下でも、バネのワイヤの直径を大きくすることができると共に、バネのせん断応力を小さくすることができるため、バネの疲労寿命を長くすることができる。
【0033】
本発明の処理方法は、以下の通りである。バネの圧縮高さ(圧縮バネは、ワイヤ間の隙間がゼロである状態に相当する)を算出した後に、特定のバネ固定具と、固定具に対応する圧縮装置とが、圧縮高さに応じて作製される。固定具は、金属ピンと、プラグピン穴を有するステンレス鋼管と、ステンレス鋼管に溶接接続された固定金属ブロックと、穴を有する金属ブロックとを備え、金属管の直径はバネの内径に一致し、プラグピン穴から固定金属ブロックまでの距離はバネの圧縮高さである。まず、固定具の金属管及び金属管に溶接された金属ブロックが圧縮装置に取り付けられ、次に、バネが金属管に装填され、次に、穴を有する金属ブロックが金属管に装填され、圧縮装置が起動されてバネを完全に圧縮状態に圧縮し、次に、ピンがプラグピン穴に挿入され、次に、圧縮装置が解放され、圧縮されたバネを収容する固定具が取り外される。
【0034】
バネが圧縮された後で、固定具とバネとが植毛装置に一緒に入れられる。バネが圧縮されているため、バネの内表面と側面には植毛することができず、バネの外表面のみに植毛することができる。植毛後、固定具を再び圧縮装置に装填し、バネを解放することにより、外表面のみが植毛加工されたバネが得られる。
【0035】
(第2の実施形態)
従来の電動テールゲートバネは、円形ワイヤで作られており、より多くの取り付けスペースを必要とするため、スペースが限られている多くの電動テールゲートシステムでは、植毛バネを使用してノイズ低減効果を達成することができない。この従来の電動テールゲートバネを改良するために、本発明は、現在の植毛バネに対し、小さなスペースに取り付けることができ、システムの同じ取り付けスペースという条件下でもバネのせん断応力を低下させて疲労寿命を長くできる、植毛バネの解決手段を設計する。本発明の主な技術的解決手段は、以下の通りである。
【0036】
図1、
図2及び
図3に示すように、本発明の植毛バネは、バネ本体1と、電着コーティング4と、バネの表面の植毛層2とを備えている。バネ本体1は、システム内のバネの機械的特性及び疲労寿命を決定し、電着コーティング4は、バネの耐食性を決定し、バネの表面の植毛層2は、接着剤層5上に繊維6を植毛することによって、バネ本体1の金属とバネの外管との間の直接摩擦を分離し、それによってバネ本体1と外管との間の摩擦による摩擦ノイズを除去する。
【0037】
本発明の植毛バネは、電動テールゲートバネが円形ワイヤで作られているという従来の考え方を打破して、楕円形ワイヤ又は楕円形ワイヤが使用されるものであり、バネが完全に圧縮されたときに、圧縮高さが大幅に低減され、システムに取り付けることができなかったバネを既存のスペースに取り付けることができ、システムの構造を変更することなく、植毛加工とノイズ低減とを実現することができる。
【0038】
本発明の植毛バネは、電動テールゲートバネが円形ワイヤで作られているという従来の考え方を打破して、楕円形ワイヤ又は長円形ワイヤが使用されるものであり、同じ取り付けスペースという条件下で、バネのワイヤの直径を大きくすることができると共に、バネのせん断応力を小さくすることができ、それによりバネの疲労寿命を長くすることができる。
【0039】
本発明の解決手段は、以下の通りである。顧客によって定義されたシステムの境界条件によれば、バネは従来の円形ワイヤを使用して設計されている。次に、直径を有する円形ワイヤを、断面積換算によって同じ断面積を有する楕円形ワイヤに変換する。これによりバネの圧縮高さが大幅に低減された(この状態は、ワイヤ間のギャップがゼロである状態に対応する)バネ解決手段を得て、長手方向のスペースが小さいことに起因して本来は植毛加工の利用によりノイズを低減することができなかった電動テールゲートシステムの雑音問題を、いかなるパラメータを変更することなく解決する。
【0040】
(第3の実施形態)
多くの電動テールゲートシステムの耐用年数がバネの塩水噴霧能力によって制限されるように、従来の電動テールゲートバネは、電着コーティングの損傷により塩水噴霧効果が弱められていることが多い。この従来の電動テールゲートバネを改良するために、本発明は、現在の電着植毛バネに対して、より防錆性能に優れ、より環境に優しい下部の防錆コーティングを設計する。これは、外力によってコーティングの表面が傷ついても腐食されることがない、自己保護機能を有する。本発明の主な技術的解決手段は、以下の通りである。
【0041】
図1及び
図4に示すように、本発明の植毛バネは、バネ本体1と、亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティング7と、バネの表面の植毛コーティング2とを備えている。バネ本体1は、システム内のバネの機械的特性及び疲労寿命を決定し、亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティング7は、バネの耐食性能を決定し、バネの表面の植毛コーティング2は、接着剤層5上に繊維6を植毛することによって、バネ本体の金属とバネの外管との間の直接摩擦を分離し、それによってバネ本体と外管との間の摩擦による摩擦ノイズを除去する。
【0042】
本発明の植毛バネは、電着植毛バネの従来の考え方を打破して、電着コーティング4の使用を回避し、コーティングが傷つけられることによって塩水噴霧効果が損なわれる可能性を防止する。亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティング7を下部の防錆コーティングとして用いることにより、コーティング表面の損傷に対する通常の保護と、コーティング表面が不用意に傷ついた後の耐食効果とが大幅に改善され、バネの防錆性能が不十分なために電動テールゲートシステム全体を事前に交換する必要があるという問題が解決される。これにより電動テールゲートシステムの耐用年数を延長する。
【0043】
本発明の植毛バネは、電着植毛バネの従来の考え方を打破して、バネの表面の唯一の防錆コーティングとして使用され、廃水、排ガス及び廃棄残渣を生成して環境を汚染するプロセスによって生成される電着コーティングの使用を回避する。しかしながら、亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティングは、バネの表面上にディップ塗布又はスプレー塗布されるマイクロシートコーティングの一種であり、これは、より環境に優しく、処理が容易である。
【0044】
本発明の処理方法は、以下の通りである。前処理のために研磨された後で、バネ本体1は、亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティング7の処理ラインに直接入れられ、まずディップ塗布又はスプレー塗布を行い、続いてベーキングすることによって亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティング7を形成する。次に、亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティング7を有するバネは、後続の植毛コーティング2の生産ラインに入れられ、接着剤塗布、植毛、及び乾燥によって植毛コーティングを形成する。その結果、強力な耐食性能を有し、システムのノイズを除去することができる亜鉛-アルミニウム植毛バネが得られる。
【0045】
以上、本発明の具体的で好適な実施形態ついて詳細に説明した。当業者であれば、いかなる発明的努力を伴うことなく、本発明の概念に従って修正及び変形を行うことができることを理解されたい。したがって、当業者が、従来技術に基づき、本発明の概念に従って、論理分析、推論、又は限定された試行によって得ることができる任意の技術的解決手段は、特許請求の範囲の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0046】
1 バネ本体
2 バネの外表面の植毛層
3 ワイヤ
4 電着コーティング
5 接着剤層
6 繊維
7 亜鉛-アルミニウムマイクロシートコーティング