(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】残価設定月算出装置、残価設定月算出システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20230101AFI20240827BHJP
【FI】
G06Q40/02
(21)【出願番号】P 2022197481
(22)【出願日】2022-12-09
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】517340817
【氏名又は名称】大垣 尚司
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 尚司
【審査官】太田 龍一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-061508(JP,A)
【文献】大和ハウス工業,全国で残価設定型住宅ローンの紹介を開始,インターネット,2022年09月16日,検索日:2024年2月1日,<URL:https://www.daiwahouse.co.jp/about/release/house/20220915164458.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅融資の返済期間内において
、月返済額を軽減する月返済額軽減オプションが実行可能になる月である残価設定月を算出する残価設定月算出装置であって、
前記住宅融資の月返済額を含む融資条件を取得する条件取得部と、
前記返済期間の少なくとも一部を含む算出期間における各月の住宅の賃貸価値の推定値、および、前記算出期間における各月の前記住宅の処分価値の推定値の少なくとも一方の推定値に基づいて、前記算出期間における各月の前記住宅の金融価値の推定値を算出する金融価値算出部と、
前記返済期間において、前記住宅融資の返済残高が、前記住宅の前記金融価値以下となる最初の月を、前記残価設定月として算出する残価設定月算出部と
、
前記月返済額軽減オプションが実行される実行月以降の前記返済期間内の各月における、前記住宅の前記金融価値の推定値と、前記住宅融資の返済残高との差分が設定範囲内となるように、前記実行月以降における前記月返済額を再計算する返済条件計算部と
を備える
残価設定月算出装置。
【請求項2】
前記返済条件計算部は、前記返済期間の長さを再設定する
請求項
1に記載の残価設定月算出装置。
【請求項3】
前記算出期間は、前記返済期間の終了以降の期間を含む
請求項
1に記載の残価設定月算出装置。
【請求項4】
前記残価設定月算出部は、前記条件取得部が新たな前記融資条件を取得した場合に、新たな前記融資条件に応じた前記残価設定月を算出する
請求項
1に記載の残価設定月算出装置。
【請求項5】
前記設定範囲が、前記住宅の前記賃貸価値に応じて定められる
請求項1に記載の残価設定月算出装置。
【請求項6】
前記金融価値算出部は、対象の前記住宅によって想定される収入と、対象の前記住宅を維持するのに想定される支出とを1つ以上の単位キャッシュフローに分解して記憶し
、前記単位キャッシュフローに基づいて前記金融価値を算出する
請求項
1から5のいずれか一項に記載の残価設定月算出装置。
【請求項7】
前記金融価値算出部は、少なくとも1つの前記単位キャッシュフローに変動が生じた場合に、当該単位キャッシュフローを更新し、更新後の前記単位キャッシュフローに基づいて前記金融価値を算出する
請求項6に記載の残価設定月算出装置。
【請求項8】
住宅融資の返済期間内において、月返済額を軽減する月返済額軽減オプションが実行可能になる月である残価設定月を算出する残価設定月算出システムであって、
前記月返済額軽減オプションを提供する引受事業者が管理する引受事業者システムと、
前記住宅融資の顧客が管理する入力端末と、
を備え、
前記引受事業者システムは、
請求項6に記載の残価設定月算出システムと、
前記単位キャッシュフローを、前記住宅を識別する識別情報に対応付けて登録するデータベースと
を有し、
前記入力端末は、前記データベースから前記単位キャッシュフローを読み出して当該住宅の前記金融価値を算出し、入力される新たな融資条件と前記金融価値とに基づいて新たな前記残価設定月を算出する
残価設定月算出システム。
【請求項9】
コンピュータを請求項1
から5のいずれか一項に記載の残価設定月算出装置として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータを請求項8に記載の入力端末として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残価設定月算出装置、残価設定月算出システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅融資において、住宅の金融価値の推移の推定値に基づいて、月返済額の許容額を設定する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1 特許第6419280号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
住宅融資は長期間に渡るので、返済期間内において債務者の収入が減少する可能性がある。または、返済期間内において、債務者が住み替えを希望する可能性がある。このような場合に備えて、引受事業者に対して住宅の少なくとも一部の権利を移転して住宅融資の返済を引き受けてもらう買取オプション、および、月返済額を軽減する月返済額軽減オプションの少なくとも一方を付与することが考えられる。この場合、引受事業者等のリスクを低減するために、当該オプションを行使可能となる時期を精度よく設定することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、住宅融資の返済期間内においてオプションが実行可能になる月である残価設定月を算出する残価設定月算出装置であって、前記住宅融資の月返済額を含む融資条件を取得する条件取得部と、前記返済期間の少なくとも一部を含む算出期間における各月の住宅の賃貸価値の推定値、および、前記算出期間における各月の前記住宅の処分価値の推定値の少なくとも一方の推定値に基づいて、前記算出期間における各月の前記住宅の金融価値の推定値を算出する金融価値算出部と、前記返済期間において、前記住宅融資の返済残高が、前記住宅の前記金融価値以下となる最初の月を、前記残価設定月として算出する残価設定月算出部とを備え、前記オプションは、引受事業者に対して前記住宅の少なくとも一部の権利を移転して前記住宅融資の返済を引き受けてもらう買取オプション、および、前記月返済額を軽減する月返済額軽減オプションの少なくとも一方を含む残価設定月算出装置を提供する。
【0005】
前記残価設定月以降において前記月返済額軽減オプションが実行される場合に、前記月返済額軽減オプションが実行される実行月以降の少なくとも一部の期間における前記住宅の前記金融価値の推定値に基づいて、前記実行月以降における前記月返済額を再計算する返済条件計算部を更に備えてよい。
【0006】
前記返済条件計算部は、前記実行月以降の少なくとも一部の月における、前記住宅の前記金融価値の推定値と、前記住宅融資の返済残高との差分が設定範囲内となるように、前記実行月以降における前記月返済額を再計算してよい。
【0007】
前記返済条件計算部は、前記返済期間の長さを再設定してよい。
【0008】
前記算出期間は、前記返済期間の終了以降の期間を含んでよい。
【0009】
前記残価設定月算出部は、前記条件取得部が新たな前記融資条件を取得した場合に、新たな前記融資条件に応じた前記残価設定月を算出してよい。
【0010】
前記金融価値算出部は、対象の前記住宅によって想定される収入と、対象の前記住宅を維持するのに想定される支出とを1つ以上の単位キャッシュフローに分解して記憶し、少なくとも1つの前記単位キャッシュフローに変動が生じた場合に、当該単位キャッシュフローを更新し、更新後の前記単位キャッシュフローに基づいて前記金融価値を算出してよい。
【0011】
本発明の第2の態様においては、住宅融資の返済期間内においてオプションが実行可能になる月である残価設定月を算出する残価設定月算出システムであって、前記住宅融資の月返済額を含む融資条件を入力する1つ以上の入力端末と、それぞれの前記入力端末から前記融資条件を取得し、前記融資条件に基づいて前記残価設定月を算出する、第1の態様に係る残価設定月算出装置とを備える残価設定月算出システムを提供する。
【0012】
前記残価設定月算出装置は、算出した前記残価設定月を、対応する前記入力端末に送信してよい。
【0013】
本発明の第3の態様においては、コンピュータを、第1の態様に係る残価設定月算出装置として機能させるためのプログラムを提供する。
【0014】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る、残価設定月算出システム100の構成例を示すブロック図である。
【
図2】残価設定月算出装置110の構成例を示す図である。
【
図3】住宅の金融価値の推移の一例を説明する図である。
【
図5】オプション行使の他の例を説明する図である。
【
図6】オプション行使の他の例を説明する図である。
【
図7】融資条件ごとの残価設定月を説明する図である。
【
図8】返済期間内において融資条件が変更された場合の、残価設定月を説明する図である。
【
図9】賃貸価値算出部28の動作例を説明する図である。
【
図10】当該住宅の経費キャッシュフロー(本明細書では、経費CFと称する)の算出例を示す図である。
【
図11】当該住宅の正味運用キャッシュフロー(本明細書では、正味運用CFと称する)の算出例を示す図である。
【
図12】残価設定月算出装置110の動作例を説明するチャート図である。
【
図13】金融価値算出部120の動作例を説明する図である。
【
図14】入力端末78に入力される融資条件の一例を示す図である。
【
図15】本発明の複数の態様が全体的又は部分的に具現化されうるコンピュータ1800の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る、残価設定月算出システム100の構成例を示すブロック図である。残価設定月算出システム100は、住宅ローン等(本明細書では、住宅融資と称する)を借り入れて住宅および敷地(本明細書では、住宅および敷地を単に住宅と称する場合がある)を購入した借入者に対して所定のオプションを付与する場合において、当該オプションが実行可能になる月である残価設定月を算出する。残価設定月は、住宅融資の返済期間内のいずれかの月である。当該オプションが実行可能になる日時は、残価設定月の所定の日時に設定される。例えば残価設定月の初日の午前0時が、当該オプションが実行可能になる日時である。当該日時は引受事業者が任意に設定してもよいし、借入者が希望日時を設定してもよい。
【0018】
当該オプションは、買取オプションおよび月返済額軽減オプションの少なくとも一方を含む。当該オプションは、買取オプションおよび月返済額軽減オプションの両方を含んでもよい。本明細書では、買取オプションおよび月返済額軽減オプションの一方または両方を、単にオプションと称する。
【0019】
買取オプションは、引受事業者に対して住宅の少なくとも一部の権利を移転して住宅融資の返済を引き受けてもらうオプションである。住宅の少なくとも一部の権利とは、住宅の少なくとも一部に対する所有権もしくはこれに相当する実質的な権利である。例えば当該権利は、住宅および敷地の一部または全部を売却、貸し出しまたはその他の処分を行うことで対価を得ることができる権利である。
【0020】
月返済額軽減オプションは、将来の少なくとも一部の期間における月返済額を、現状の設定値よりも減額するオプションである。月返済額とは、住宅融資に対する毎月の返済額を指す。月返済額の現状の設定値とは、金融機関等との間で定めた、住宅融資の完済までの毎月の返済額の最新の予定である。
【0021】
住宅融資の返済期間は、35年程度の長期間に渡る場合が多い。住宅融資の借入者は、例えば70歳前後まで住宅融資を返済することもある。このため、返済期間内に、借入者が退職し、または、収入が減少する場合がある。このように、住宅融資の長期化によって、例えば50歳以降の返済負担に対する懸念が強まっており、目先の返済負担減よりも、将来の返済負担圧縮や、万が一の場合に担保を処分した場合に債務を完済できずに残債務が残るオーバーローンへの懸念の払拭が、強く意識されるようになっている。
【0022】
地球環境問題への配慮等から、長期優良住宅の普及の促進に関する法律が制定され、建築基準法が想定する標準的な住宅の耐用年数(一世代=25年~30年)の3倍程度の耐用年数を有する長寿命住宅(いわゆる「100年住宅」)の建築促進が進められている。長寿命住宅が社会資本ストックとして適切に機能するには、従来のように単に三世代の家族が一つの家に同居したり、相続によって継受していったりといった、同族による住み継ぎだけでは十分でなく、世代全体として、社会資本ストックとしての家が次の世代に受け継がれていく仕組みを確保することが好ましい。
【0023】
住宅の住人についても急速な長寿化が進んでおり、親が子に家を相続させる頃には、子も60歳前後となり、すでに家族住宅を必要としない世代になっていることが多い。一方、退職・引退後に30年前後の第二の人生があることが普通となる中、家族住宅と、最期を迎えるためのシニアハウジングの間に、セカンドライフを過ごすための住まいが意識されるようになっている。この結果、子育てが完了した時点において、次の住生活への切替をスムーズに行えるようにする仕組みが求められている。この場合、住み替えにあたって、住宅ローンが足かせにならないようにすることが強く求められる。
【0024】
上記の買取オプションおよび月返済額軽減オプションを借入者に付与することで、上述した将来の返済負担圧縮を実現し、オーバーローンへの懸念を払拭できる。また、社会資本ストックとしての家が次の世代に受け継がれていく仕組みを確保できる。また、ライフスタイルの変化に応じて、次の住生活への切替をスムーズに行うことができる。
【0025】
ただし、買取オプションおよび月返済額軽減オプションを無制限に行使されると、オプションの引受事業者のリスクが大きくなりすぎる。また、買取オプションおよび月返済額軽減オプションを行使できる時期を遅くしすぎると、借入者にとってのメリットが小さくなってしまう。このため、引受事業者のリスクを小さくしつつ、借入者のメリットを確保できるように、当該オプションが行使可能となる残価設定月を設定することが好ましい。
【0026】
本例の残価設定月算出システム100は、引受事業者システム10、外部ネットワーク76、および、1つ以上の入力端末78を備える。入力端末78は、例えば金融機関、住宅販売業者または住宅の購入を検討している一般顧客等が管理するコンピュータである。入力端末78は、専用線またはインターネット等の外部ネットワーク76を介して、引受事業者システム10と通信可能である。引受事業者システム10は、住宅に対して買取オプションを提供し、また、これを前提に月返済額軽減オプションを付与する金融機関に必要な情報提供を行う引受事業者がその条件や提供に伴うリスクを管理するシステムである。引受事業者は、住宅融資を設定する金融機関とは異なる事業者であってよく、同一の事業者であってもよい。
【0027】
引受事業者システム10は、残価設定月算出装置110を備える。引受事業者システム10は、サーバー70、内部ネットワーク71およびデータベース74のうちの少なくとも一つを更に備えてもよい。内部ネットワーク71は、引受事業者システム10内の各機器を接続する。内部ネットワーク71は例えばLANであるが、これに限定されない。サーバー70は、内部ネットワーク71と外部ネットワーク76との間の通信を管理する。
【0028】
残価設定月算出装置110は、住宅融資の返済期間内においてオプションが実行可能になる月である残価設定月を算出する。残価設定月算出装置110は、住宅融資の返済残高が、住宅の金融価値以下となる最初の月を、残価設定月として算出する。住宅融資の返済残高とは、住宅融資の返済完了までに、各月において返済する元本の総和である。各月における返済額は元本の額に金利を加えた額となる。
【0029】
住宅融資の返済残高の将来の推移は、現時点における元本の残高から、将来の各月の月返済額のうち元本の返済分を順次減算することで算出できる。残価設定月算出装置110は、住宅融資の返済期間および現状における月返済額の設定値を含む融資条件を取得してよい。当該融資条件は、入力端末78から引受事業者システム10に入力されてよく、引受事業者が引受事業者システム10における入力端末から入力してもよい。
【0030】
住宅の金融価値は、例えば住宅の賃貸価値および処分価値から算出できる。賃貸価値とは、住宅を貸し出した場合に想定される家賃収入に基づいて算出される価値である。住宅の処分価値とは、住宅を売却した場合に想定される売却額に基づいて算出される価値である。残価設定月算出装置110は、データベース74に記録された他の住宅の現在又は過去の家賃データ、および、他の住宅の現在又は過去の売却額データ等に基づいて、住宅の賃貸価値および処分価値を算出してよい。
【0031】
残価設定月算出装置110は、算出した残価設定月を入力端末78に送信してよい。残価設定月算出装置110は、上述したオプションを付与する旨を通知する場合に、残価設定月を合わせて通知してよい。当該オプションは、住宅融資の実行時に付与されてよい。または、残価設定月算出装置110は、オプションが付与された住宅融資の実行後に、融資条件が変更される場合に、残価設定月を再計算してもよい。残価設定月算出装置110は、住宅融資が実際に行われない場合、または、融資条件が実際には変更されない場合であっても、仮想の融資条件に対する残価設定月をシミュレーション値として算出してよい。
【0032】
図2は、残価設定月算出装置110の構成例を示す図である。本例の残価設定月算出装置110は、条件取得部24、金融価値算出部120、残価設定月算出部130、および、返済条件計算部140を備える。コンピュータにおけるCPUおよびメモリ等が、条件取得部24、金融価値算出部120、残価設定月算出部130、および、返済条件計算部140として機能してよい。コンピュータにおけるインターフェース等が、条件取得部24として機能してよい。
【0033】
条件取得部24は、住宅融資の返済期間における各月の月返済額を含む融資条件を取得する。融資条件は、住宅融資の実行時における初期条件であってよい。融資条件は、住宅融資の利率、および、返済期間における各月の元本の残高を含んでもよい。条件取得部24が取得する融資条件は、住宅融資の返済期間内において変更された、新たな条件であってもよい。条件取得部24が取得する融資条件は、仮想的な条件であってもよい。
【0034】
融資条件は、住宅融資の対象の住宅に関する情報を含んでよい。住宅に関する情報には、住宅の所在地に関する情報(例えば郵便番号、駅からの距離等)、住宅の広さに関する情報(例えば敷地面積、床面積、部屋数等)、および、住宅の耐用年数に関する情報が含まれてよい。条件取得部24は、残価設定月算出装置110の管理者が入力する融資条件を取得してよく、入力端末78等の外部装置から入力される融資条件を取得してよく、残価設定月算出装置110に予め登録されている融資条件を取得してもよい。
【0035】
金融価値算出部120は、条件取得部24が取得した融資条件に基づいて、返済期間の少なくとも一部を含む算出期間における各月の住宅の金融価値の推定値を算出する。算出期間は、現状の返済期間の全部を含んでよく、現状の返済期間が終了した後の期間を更に含んでもよい。上述したように算出期間における各月の金融価値の推定値は、算出期間における各月の住宅の賃貸価値の推定値と、算出期間における各月の住宅の処分価値の推定値の少なくとも一方から算出できる。本例の金融価値算出部120は、処分価値算出部26、賃貸価値算出部28、および、合算部29を含む。
【0036】
処分価値算出部26は、売却額データベースから現在又は過去の住宅の売却額データを取得して、算出期間における各月の住宅の処分価値の推定値を算出する。処分価値算出部26は、融資条件に含まれる住宅に関する情報に対応する、現在又は過去の住宅の売却額データを売却額データベースから抽出してよい。処分価値算出部26は、住宅の所在地に関する情報、住宅の広さに関する情報および住宅の耐用年数に関する情報の少なくとも一つに基づいて、売却額データベースから対応する住宅の売却額データを抽出してよい。
【0037】
処分価値算出部26は、融資条件に対応する1つまたは複数の住宅の現在又は過去の売却額データの平均値等に対して、管理者等により設定される係数を乗じて処分価値を算出してよい。処分価値算出部26は、住宅(ここでは敷地以外の建物部分)および敷地のそれぞれの処分価値の推定値を算出してよい。敷地の処分価値は、住宅融資設定時における敷地の所在地の路線価に基づいて算出できる。処分価値算出部26は、敷地の処分価値の推定値を、返済期間の全体に渡って一定値としてよい。住宅の処分価値の推定値は、期間経過に伴って変化(主に減少)してよい。住宅の処分価値の初期値は、住宅および敷地の販売価格から、路線価もしくはこれに一定の基準で修正を加えた修正路線価に基づいて算出される敷地の処分価値を減じることで算出できる。住宅の処分価値の経年変化は、現在又は過去の住宅の売却額データから算出できる。例えば処分価値算出部26は、現在又は過去の住宅の売却額データから、住宅の処分価値の低下速度を算出してよい。処分価値の低下速度は、例えば1年毎の処分価値の減少金額または金額の減少率である。処分価値算出部26は、当該低下速度を用いて、将来の処分価値の推定値を算出してよい。処分価値算出部26は、いわゆるスムストック査定方式を用いて、住宅の処分価値を算出してよい。スムストック査定方式の内容は、例えば下記のwebページで説明されている。
https://sumstock.jp/sale/detail.html
【0038】
賃貸価値算出部28は、家賃データベースから現在又は過去の住宅の家賃データとその経年変化にかかる推定ならびに入居期間・空室期間にかかる推定値を取得して、算出期間における各月の住宅の賃貸価値の推定値を算出する。賃貸価値算出部28は、融資条件に含まれる住宅に関する情報に対応する、現在又は過去の住宅の家賃データを、家賃データベースから抽出してよい。賃貸価値算出部28は、住宅の所在地に関する情報、住宅の広さに関する情報、および、住宅の耐用年数に関する情報の少なくとも一つに基づいて、家賃データベースから対応する住宅の家賃データを抽出してよい。月毎の賃貸価値の推定値は、算出期間内において一定値であってよく、変動する値であってもよい。住宅の賃貸価値の経年変化は、現在又は過去の住宅の家賃データから算出できる。例えば賃貸価値算出部28は、現在又は過去の住宅の家賃データから、住宅の賃貸価値の低下速度を算出してよい。賃貸価値の低下速度は、例えば1年毎の賃貸価値の減少金額または金額の減少率である。賃貸価値算出部28は、当該低下速度を用いて、将来の賃貸価値の推定値を算出してよい。
【0039】
本例では
図1に示したデータベース74が、売却額データベースおよび家賃データベースとして機能する。家賃データベースおよび売却額データベースは、地域ごとに家賃データおよび売却額データを分類して記録する。家賃データベースおよび売却額データベースは、住宅の広さ等の住宅の各種特性で家賃データベースおよび売却額データベースを分類してもよい。
【0040】
合算部29は、住宅の処分価値および賃貸価値の少なくとも一方に基づいて、住宅の金融価値を算出する。金融価値の算出例については後述する。合算部29は、返済期間内の各月に対して、当該月における住宅の金融価値を算出する。
【0041】
残価設定月算出部130は、現状の返済期間において、住宅融資の返済残高が、住宅の金融価値以下となる最初の月を、残価設定月として算出する。つまり、残価設定月算出部130は、住宅の金融価値が住宅融資の返済残高を初めて上回る月を、オプションが行使可能となる残価設定月として算出する。これにより、オプションの引受事業者のリスクを低減しつつ、借入者に対して最も早い残価設定月を提示できる。
【0042】
残価設定月算出部130は、条件取得部24が取得した融資条件に基づいて、返済期間内の各月における返済残高を算出する。例えば残価設定月算出部130は、返済期間内の各月に対して、現時点における元本の残高から、将来の各月の月返済額のうち元本の返済分を順次減算して、各月の返済残高を算出する。残価設定月算出部130は、返済期間内の各月において、返済残高と住宅の金融価値とを比較し、残価設定月を算出する。残価設定月算出部130は、算出した残価設定月を、
図1に示した入力端末78に送信してよい。
【0043】
返済条件計算部140は、残価設定月以降において月返済額軽減オプションが実行される場合に、月返済額軽減オプションが実行される実行月以降の少なくとも一部の期間における住宅の金融価値の推定値に基づいて、オプションの実行月以降の月返済額を再計算する。新たな月返済額は、変更前の月返済額よりも低額である。実行月を指定する情報は、入力端末78から入力されてよく、残価設定月算出装置110に直接入力されてよく、他の方法で入力されてもよい。
【0044】
返済条件計算部140は、実行月以降の各月における返済残高と住宅の金融価値との差分が、予め設定された設定範囲内となるように、実行月以降の月返済額を再計算してよい。当該設定範囲は住宅の賃貸価値に応じて定められてよい。当該設定範囲は、例えば各月における住宅の賃貸価値の10倍以下であってよく、5倍以下であってよく、1倍以下であってもよい。また、返済条件計算部140は、実行月以降の各月における返済残高と住宅の金融価値とが一致するように、実行月以降の月返済額を再計算してもよい。実行月以降の月返済額は、各月で均等であってよく、均等でなくてもよい。返済条件計算部140は、条件取得部24が取得した融資条件から、実行月における住宅融資の元本の残高および利率を取得し、元本の残高および利率に基づいて実行月以降の月返済額を再計算してよい。返済条件計算部140は、月返済額軽減オプションが実行される場合の、新たな返済期間を設定してよい。新たな返済期間は、変更前の返済期間よりも長期間である。返済条件計算部140は、再計算された月返済額および返済期間を含む新たな返済条件を、
図1に示した入力端末78に送信してよい。
【0045】
図3は、住宅の金融価値の推移の一例を説明する図である。上述したように、住宅の金融価値は、住宅の処分価値および賃貸価値の少なくとも一方から定められる。
図3においては、横軸は時期(月)を示し、縦軸は金額を示している。金融価値算出部120は、予め設定された算出期間(月0~月Z)の各月における、住宅の処分価値および賃貸価値を算出する。
【0046】
本例の処分価値算出部26は、建物部分の処分価値と、敷地の処分価値とから住宅の処分価値を算出する。本例において敷地の処分価値は、時期によらず一定値V0であってよい。本例において敷地の処分価値は、修正路線価に一定の担保掛け目を乗じて算出した金額から取引コストを減じた金額V0であってよい。敷地の処分価値は、敷地の売却額から、建物部分を除去して更地の状態にする費用を減じた金額であってよい。本例において建物部分の処分価値は、時期の経過に応じて減少する。本例の住宅の処分価値は、建物部分の処分価値と、敷地の処分価値との和である。このため本例の住宅の処分価値は、建物部分の処分価値が0となる時期Mbまでは徐々に減衰し、時期Mb以降は一定値V0となる。
【0047】
住宅の賃貸価値は、時期によらず一定値であってよく、時期の経過に応じて変化(主に減少)してもよい。賃貸価値算出部28は、それぞれの住宅に対して、賃貸可能な運用可能期間を設定してよい。運用可能期間は、住宅の属性(場所、間取り、集合住宅か一軒家か等)に応じて設定されてよい。
図3では、運用可能期間の末月をMcとする。賃貸価値算出部28は、月Mcより後の月において、住宅の賃貸価値を0と評価してよい。
【0048】
本例の合算部29は、住宅の処分価値と、運用可能期間内における各月の賃貸価値の総額との和から、住宅の金融価値を算出する。例えば合算部29は、所定の月Maにおける住宅の金融価値を、月Ma以降における賃貸価値の総額V1と、月Mcにおける処分価値V0との和V0+V1とする。合算部29は、月Maにおける住宅の処分価値Vaが、V0+V1より大きい場合、処分価値Vaを金融価値としてもよい。合算部29は、算出期間(月0~月Z)の各月に対して、月Maと同様に住宅の金融価値を算出する。
【0049】
図4は、オプション行使の一例を説明する図である。
図4の上段のグラフは、オプションを行使しない場合の返済残高の推移を示し、中段のグラフは、オプションを行使した場合の月返済額の推移を示し、下段のグラフは、オプションを行使した場合の返済残高の推移を示す。また
図4においては、住宅の金融価値の推移を破線で示している。
【0050】
上段のグラフに示すように、オプションを行使しない場合、住宅融資の返済残高は、返済期間の初月0から末月M2まで徐々に減少する。残価設定月算出部130は、返済残高が金融価値以下となる最初の月を、残価設定月M1として算出する。
【0051】
本例では、残価設定月M1において、月返済額軽減オプションが行使される。これにより、月返済額が小さくなる。オプション行使後の月返済額は、オプションの実行月(本例ではM1)以降の住宅の金融価値に応じて定められる。上述したように、本例の返済条件計算部140は、実行月M1以降の各月において、返済残高と金融価値との差分が所定の設定範囲内となるように、実行月M1以降の月返済額を再計算する。これにより、下段のグラフに示すように住宅融資の返済残高が、概ね金融価値と一致しながら推移する。このため、月返済額軽減オプションを実行した後に、何らかの理由で借入者による住宅融資の返済が困難になっても、引受事業者が住宅を処分または運用することで住宅融資を返済できる。返済条件計算部140は、新たな月返済額による、新たな返済期間の末月M3(すなわち、返済期間の長さ)を設定してよい。返済条件計算部140は、実行月M1の時点における、元本の残高、利率、および、月返済額から末月M3を算出してよい。
【0052】
図5は、オプション行使の他の例を説明する図である。
図5における各グラフは、
図4における各グラフと同様である。ただし
図5では、実行月M5において、買取オプションが実行されている。本例では、買取オプションが実行されると、引受事業者が実行月M5以降の返済を行う。このため借入者による月返済額および返済残高は0となる。引受事業者は、実行月M5以降において、住宅を処分してもよいし、賃貸により住宅を運用してもよい。
【0053】
図6は、オプション行使の他の例を説明する図である。
図6における各グラフは、
図4における各グラフと同様である。ただし
図6では、最初の月返済額軽減オプションの実行月M1の後の実行月M5において、買取オプションを実行している。本例では、月M1から月M5までの月返済額および返済残高の推移は
図4の例と同様であり、月M5以降は
図5の例と同様である。
【0054】
図7は、融資条件ごとの残価設定月を説明する図である。本例の残価設定月算出装置110は、同一の住宅に対応する複数の融資条件に対して、それぞれ残価設定月を算出する。融資条件に応じて、算出期間内における返済残高の推移が異なる。本例の残価設定月算出装置110は、2つの融資条件に対応する2つの返済残高(A、B)のそれぞれに対して、残価設定月M1A、M1Bを算出する。このような動作により、融資条件毎の残価設定月を借入者に提示できる。
【0055】
図8は、返済期間内において融資条件が変更された場合の、残価設定月を説明する図である。本例の残価設定月算出部は、返済期間内において条件取得部24が新たな融資条件を取得した場合に、新たな融資条件に応じた残価設定月M1Cを算出する。
【0056】
返済期間内において、金利の変動、繰り上げ返済等の要因で、融資条件(または返済残高)が変更される場合がある。このような場合、残価設定月算出装置110は、新たな融資条件による新たな返済残高Cに基づいて、新たな残価設定月M1Cを算出する。
図8の例では、月M6において、繰り上げ返済等により返済残高が減少している。
図8では、繰り上げ返済が無かった場合の返済残高の推移を一点鎖線で示している。残価設定月算出装置110は、変更前の残価設定月M1に代えて、新たな残価設定月M6を算出し、入力端末78等に通知してよい。
【0057】
図9は、賃貸価値算出部28の動作例を説明する図である。賃貸価値算出部28は、家賃データベースから家賃データを取得して、対象住宅の想定家賃を算出する(S602)。上述したように、賃貸価値算出部28は、対応する地域等における現在又は過去の家賃データを取得する。想定家賃は、対応する家賃データの平均値等から算出してよい。
【0058】
賃貸価値算出部28には、想定家賃倍率、家賃上限、家賃下限、家賃減少設定値の少なくとも一つが設定されてよい。想定家賃倍率は、使用する家賃データに乗算する係数である。例えば家賃データが実績値である場合、想定家賃倍率は1未満の係数であり、家賃データが最低保証家賃額のデータである場合、想定家賃倍率は1以上の係数である。家賃データベースは、賃貸住宅についての現在又は過去の最低保証家賃のデータを記録してよい。これらの係数は、引受事業者システム10の管理者等により予め設定された値を用いてよい。これらの係数は、リスク前提テーブル810に登録されていてよい。
【0059】
家賃上限、家賃下限は、管理者等により予め定められた値を用いてよい。賃貸価値算出部28が算出する想定家賃が、設定された家賃上限および家賃下限の範囲内にない場合、賃貸価値算出部28は、設定された家賃上限または家賃下限を想定家賃としてよい。
【0060】
家賃減少設定値は、返済期間内における家賃の経年減少の設定値である。家賃減少設定値は、管理者等により設定されてよく、家賃データベースに記録された現在又は過去のデータに基づいて、賃貸価値算出部28が算出してもよい。
【0061】
賃貸価値算出部28は、算出した想定家賃に基づいて、家賃キャッシュフロー(本明細書では、家賃CFと称する)を算出する(S604)。家賃CFは、当該住宅を賃貸市場に出した場合に想定される、一月当たりの家賃収入の期待値を示している。賃貸価値算出部28は、家賃CFを、当該住宅の賃貸価値として用いてよい。賃貸価値算出部28は、当初募集期間、再募集期間および入居期間の少なくとも一つに基づいて、家賃CFを算出する。家賃データベースは、賃貸住宅についての、当初募集期間および再募集期間(すなわち空室期間)と、入居期間とを記録してよい。
【0062】
当初募集期間は、当該住宅を最初に賃貸市場に出してから、入居者が入居するまでの期間の推定値である。再募集期間は、当該住宅の入居者が退去してから、次の入居者が入居するまでの期間の推定値である。入居期間は、当該住宅に入居者が入居してから退去するまでの期間の推定値である。これらの推定値は、家賃データベースの現在又は過去データに基づいて、賃貸価値算出部28が算出してよい。これらの期間には加算値が設定されてよい。当該加算値は、管理者等が設定してよく、リスク前提テーブル810に登録されていてもよい。加算値が設定されている場合、賃貸価値算出部28は、推定値に加算値を加算した期間を用いる。
【0063】
賃貸価値算出部28は、これらの期間に基づいて、当該住宅から家賃収入が得られる期間と、家賃収入が得られない期間との割合を算出する。賃貸価値算出部28は、当該割合に想定家賃を乗算することで、家賃CFを算出してよい。
【0064】
図10は、当該住宅の経費キャッシュフロー(本明細書では、経費CFと称する)の算出例を示す図である。経費CFは、オプションの実行月から本件住宅の売却までの期間で、住宅の維持に要する経費の一月あたりの期待値を示す。経費CFは、
図13において後述するように複数の単位キャッシュフローに分割して算出してよい。賃貸価値算出部28が、経費CFを算出してよい。
【0065】
賃貸価値算出部28には、経費率が設定されてよい。賃貸価値算出部28は、S602において算出した想定家賃に経費率を乗算することで、管理費等の経費を算出する。経費率は、管理者等が設定してよく、リスク前提テーブル810に登録されていてもよい。
【0066】
賃貸価値算出部28には、住宅、敷地その他の償却資産に課される固定資産税を算出するためのデータが設定されてよい。当該データは、土地および建物の課税評価額、固定資産税率、償却資産の評価額等の設定値、固定資産税の軽減率、軽減期間等の設定値を含む。これらのデータは、管理者等が設定してよく、当該住宅の情報に基づいて顧客等の端末から入力されてもよい。賃貸価値算出部28は、これらのデータに基づいて、経費CFを算出する(S702)。
【0067】
図11は、当該住宅の正味運用キャッシュフロー(本明細書では、正味運用CFと称する)の算出例を示す図である。正味運用CFは、オプションの実行月から、住宅の運用可能期間の末月までの期間で、住宅の家賃収入の期待値から、経費の期待値を減じた一月あたりの利益の期待値を示す。賃貸価値算出部28は、家賃CFに代えて、正味運用CFを住宅の金融価値として用いてもよい。本例の賃貸価値算出部28は、家賃CF(A1)から、経費CF(A2)を減じることで、正味運用CFを算出する(S801)。
【0068】
図12は、残価設定月算出装置110の動作例を説明するチャート図である。残価設定月算出装置110は、融資条件テーブル808に、対象となる住宅融資の融資条件を登録する。残価設定月算出装置110は、算出期間の各月における返済残高を、融資条件テーブル808に登録してよい。残価設定月算出装置110は、対象となる住宅に関する情報を、融資条件テーブル808に登録してよい。
【0069】
残価設定月算出装置110は、実際に実行される融資、または、実行された融資の融資条件を記憶した記憶部806から、融資条件を取得してよい。記憶部806は、残価設定月算出装置110に設けられた記憶媒体であってよく、入力端末78に設けられた記憶媒体であってよく、他の記憶媒体であってもよい。残価設定月算出装置110は、仮想的な融資に関する融資条件を、融資条件テーブル808に登録してもよい。残価設定月算出装置110は、ステップS802において、融資額、利率、返済期間、住宅に関する情報等の融資条件の前提データを取得してよい。残価設定月算出装置110は、ステップS804において、融資条件の前提データから、算出期間の各月mにおける返済残高Bmを算出して、融資条件テーブル808に登録してよい。
【0070】
住宅条件テーブル812は、売却額データベースおよび家賃データベースとして機能する。金融価値算出部120は、融資条件に含まれる住宅に対応するデータを、住宅条件テーブル812から抽出し、算出期間の各月mにおける住宅の金融価値FinVmを算出する。
【0071】
金融価値算出部120は、
図9において説明したように、リスク前提テーブル810を参照して、算出期間の各月mにおける住宅の金融価値FinV
mを補正してもよい。リスク前提テーブル810には、住宅の属性ごとに、住宅の金融価値FinV
mを補正する補正係数が登録されていてよい。例えば補正係数は1以下の正の実数であり、金融価値FinV
mに乗算される。リスク前提テーブル810には、住宅の処分価値を補正する補正係数および賃貸価値を補正する補正係数の少なくとも一方が登録されてもよい。
【0072】
残価設定月算出部130は、ステップS814からS824の処理により、残価設定月を算出する。具体的には残価設定月算出部130は、ステップS816からS822までの各月mに対する処理を、m=0からm=Zまで順番に繰り返す。
【0073】
ステップS816およびS818において、残価設定月算出部130は、月mに対する返済残高Bmを取得し、金融価値FinVmを取得する。ステップS820において、残価設定月算出部130は、算出期間の月mについて、金融価値FinVmと返済残高Bmとの差分Defm=FinVm-Bmを算出する。次にステップS822において、残価設定月算出部130は、月mについて、Defm-1が0より大きく、Defmが0以下であるかを判定する。
【0074】
ステップS822の判定が否(N)の場合、S814においてmを1だけ加算し、S816以降の処理を繰り返す。ステップS822の判定が正(Y)の場合、当該月mにおいて、返済残高Bmが初めて金融価値FinVm以下となったことになる。このため、ステップS824において、残価設定月算出部130は、当該月mを、残価設定月M1として、残価査定テーブル826に設定する。残価査定テーブル826に設定された残価設定月M1は、入力端末78等により読み出し可能であってよい。このような処理により、残価設定月M1を設定できる。
【0075】
図13は、金融価値算出部120の動作例を説明する図である。本例の金融価値算出部120は、算出した金融価値FinV
mを、対象の住宅によって想定される収入と、対象の住宅を維持するのに想定される支出とを1つ以上の単位キャッシュフローに分解して記憶する。収入に係る単位キャッシュフローは、例えば
図13に示すように、各月mにおける賃貸可能期限までの賃貸価値の総和、各月mにおける土地の処分価格、および、各月mにおける建物の処分価格等である。支出に係る単位キャッシュフローは、例えば
図13に示すように、面積当たりの土地固定資産税、面積当たりの建物固定資産税、建物の修繕費、敷地を更地にするための土地復帰費用等である。金融価値算出部120は、融資条件に含まれる住宅の属性毎に、予め単位キャッシュフローを算出してもよい。金融価値算出部120は、算出した単位キャッシュフローを、当該住宅を識別する識別情報に対応付けてデータベース74に登録してよい。
【0076】
住宅の金融価値は、データベース74に登録された単位キャッシュフローを、足し合わせることで算出できる。金融価値算出部120は、データベース74に登録された単位キャッシュフローに変動が生じた場合に、当該単位キャッシュフローを更新し、更新後の単位キャッシュフローに基づいて当該住宅の金融価値を算出してよい。残価設定月算出部130は、住宅の金融価値が変動した場合に、新たな残価設定月M1を算出してよい。
【0077】
本例によれば、いずれかの単位キャッシュフローに変動が生じた場合に、他の単位キャッシュフローについては再計算する必要がなくなる。このため、最初に金融価値FinVmを単位キャッシュフローに分解した後は、金融価値FinVmの更新を高速に演算できる。それぞれの単位キャッシュフローは、土地の面積または建物の床面積の単位量に対して算出されてよい。当該単位キャッシュフローに、土地の面積または建物の床面積を乗じることで、それぞれの土地および建物の面積に応じたキャッシュフローを算出できる。
【0078】
住宅の金融価値は、土地条件に基づく部分は大きな前提変化がない限り不変だが、建物の床面積等については、時に数ヶ月に及ぶ商談の過程でプラン変更等により変動する。また住宅融資の融資条件は利用者の意向により大きく変化しうる。本例では、当初の融資条件で残価設定月を算出した後は、単位キャッシュフローを用いて簡単な演算で新たな融資条件に対応する残価設定月を算出できる。新たな残価設定月は、入力端末78で算出されてもよい。
【0079】
例えば入力端末78には、データベース74から単位キャッシュフローを読み出して、入力端末78に入力される土地の面積または建物の床面積等の単位量を乗算して住宅の金融価値を算出するためのソフトウェア(例えばスプレッドシートソフト等)が記憶されていてよい。当該ソフトウェアは、データベース74または入力される融資条件から各月の返済残高を取得し、各月の住宅の金融価値と比較することで、新たな残価設定月を算出してもよい。
【0080】
図14は、入力端末78に入力される融資条件の一例を示す図である。
図14では、融資の返済予定に関する融資条件を示し、住宅に関する情報等の他の条件を省略している。入力端末78は、仮想専用線(VPN)で引受事業者システム10と接続された、金融機関の専用端末であってよい。入力端末78には、融資実行済みの住宅融資について、将来の各月の返済額等の返済予定を含む融資条件が入力される。融資条件は、csv等のファイル形式であってよい。
【0081】
残価設定月算出装置110は、当該融資条件を用いて残価設定月等を算出する。融資実行前の仮の融資条件を用いて仮の残価設定月等を算出して通知していた場合、残価設定月算出装置110は、融資実行後の当該融資条件を用いた残価設定月等を、確定的な残価設定月等として入力端末78等に通知してよい。
【0082】
引受事業者システム10は、
図14に示したような融資条件を、定期的に、または、融資条件に変更が生じた場合に取得してよい。引受事業者システム10は、融資条件を取得する毎に、残価設定月や、オプション行使後の融資条件等を再計算して、入力端末78等に通知してよい。
【0083】
図15は、本発明の複数の態様が全体的又は部分的に具現化されうるコンピュータ1800の例を示す。コンピュータ1800にインストールされたプログラムは、コンピュータ1800を、残価設定月算出装置110として機能させる。当該プログラムは、コンピュータ1800を、本発明の実施形態に係る装置の1つ又は複数の「部」若しくはモジュールとして機能させ、又は、コンピュータ1800に、本発明の実施形態に係る各処理または計算を実行させることができる。このようなプログラムは、コンピュータ1800に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定の処理を実行させるべく、CPU1812によって実行されてよい。
【0084】
本実施形態によるコンピュータ1800は、CPU1812、RAM1814、グラフィックコントローラ1816、及びディスプレイデバイス1818を含み、これらはホストコントローラ1810によって相互に接続される。コンピュータ1800はまた、通信インターフェース1822、ハードディスクドライブ1824、DVD-ROMドライブ1826、及びICカードドライブのような入出力ユニットを含み、これらは入出力コントローラ1820を介してホストコントローラ1810に接続される。コンピュータはまた、ROM1830及びキーボード1842のようなレガシの入出力ユニットを含み、これらは入出力チップ1840を介して入出力コントローラ1820に接続される。
【0085】
CPU1812は、ROM1830及びRAM1814内に格納されたプログラムに従い動作し、これにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ1816は、RAM1814内に提供されるフレームバッファ等又は当該グラフィックコントローラ1816自体の中に、CPU1812によって生成されるイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス1818上に表示させる。
【0086】
通信インターフェース1822は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ1824は、コンピュータ1800内のCPU1812によって使用されるプログラム及びデータを格納する。DVD-ROMドライブ1826は、プログラム又はデータをDVD-ROM1801から読み取り、ハードディスクドライブ1824にRAM1814を介してプログラム又はデータを提供する。ICカードドライブは、プログラム及びデータをICカードから読み取り、及び/又はプログラム及びデータをICカードに書き込む。
【0087】
ROM1830は、内部に、アクティブ化時にコンピュータ1800によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ1800のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ1840はまた、様々な入出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ1820に接続してよい。
【0088】
プログラムが、DVD-ROM1801又はICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体から読み取られ、コンピュータ可読記憶媒体の例でもあるハードディスクドライブ1824、RAM1814、又はROM1830にインストールされ、CPU1812によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1800に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ1800の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0089】
例えば、通信がコンピュータ1800及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1812は、RAM1814にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェース1822に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェース1822は、CPU1812の制御の下、RAM1814、ハードディスクドライブ1824、DVD-ROM1801、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0090】
CPU1812は、ハードディスクドライブ1824、DVD-ROMドライブ1826(DVD-ROM1801)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM1814に読み取られるようにし、RAM1814上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1812は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0091】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような、様々なタイプの情報が、情報処理されるべく、記録媒体に格納されてよい。CPU1812は、RAM1814から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1814に対しライトバックする。また、CPU1812は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。
【0092】
以上の説明によるプログラム又はソフトウェアモジュールは、コンピュータ1800上又はコンピュータ1800近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、これにより、プログラムをコンピュータ1800にネットワークを介して提供する。
【0093】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0094】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0095】
10・・・引受事業者システム、24・・・条件取得部、26・・・処分価値算出部、28・・・賃貸価値算出部、29・・・合算部、70・・・サーバー、71・・・内部ネットワーク、74・・・データベース、76・・・外部ネットワーク、78・・・入力端末、100・・・残価設定月算出システム、110・・・残価設定月算出装置、120・・・金融価値算出部、130・・・残価設定月算出部、140・・・返済条件計算部、1800・・・コンピュータ、1801・・・DVD-ROM、1810・・・ホストコントローラ、1812・・・CPU、1814・・・RAM、1816・・・グラフィックコントローラ、1818・・・ディスプレイデバイス、1820・・・入出力コントローラ、1822・・・通信インターフェース、1824・・・ハードディスクドライブ、1826・・・DVD-ROMドライブ、1830・・・ROM、1840・・・入出力チップ、1842・・・キーボード