(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
A61F13/56 110
(21)【出願番号】P 2020200288
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】永橋 歩美
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-45608(JP,A)
【文献】特開2014-223216(JP,A)
【文献】特開2020-75044(JP,A)
【文献】特開2014-28000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性のトップシートと、非透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを備えた本体を有する吸収性物品であって、
装着者の身体の前後方向に対応する前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向とを有し、
前記本体から前記幅方向外側に延出する一対のウィングを備え、
前記ウィングの前記バックシート側に粘着部が形成され、
前記粘着部が、前記ウィングが展開された状態で、前記幅方向内側の強粘着部と、前記幅方向外側の弱粘着部とを有
し、
前記弱粘着部の前端が、前記強粘着部の前端よりも後方に位置するか、又は前記強粘着部の前端と前記弱粘着部の前端とが揃っており、
前記強粘着部における粘着剤の目付が、前記弱粘着部における粘着剤の目付より大きい、吸収性物品。
【請求項2】
前記強粘着部の前記幅方向の長さが、前記粘着部の前記幅方向の長さの合計の15~60%である、請求項
1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記強粘着部と前記弱粘着部とが接している、請求項1
又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記ウィングの前記幅方向の基端と、前記粘着部の幅方向内端との間隔が3mm以上5mm以下である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、失禁パッド、おりものシート等の吸収性物品においては、下着に対する位置ズレ防止のために、非肌側の面に粘着剤(本体用粘着剤)が設けられているものが多い。本体用粘着剤の構成には様々な工夫がなされており、例えば、特許文献1に記載のように、剥離音等を配慮して、2種以上の粘着剤を用いたものもある。
【0003】
特許文献1に記載の吸収性物品には、一対のウィング(吸収性物品本体の側部からそれぞれ幅方向外方に延出した一対のフラップ状部分)が設けられており、この一対のウィングの非肌側の面にも、それぞれ粘着部(ウィング用粘着部)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、本体用粘着剤の構成については様々な工夫が知られている。しかしながら、ウィング用粘着剤の構成については、まだ検討の余地が多くある。
【0006】
ウィングは、吸収性物品の装着中は下着へ確実に固定されている必要がある。より確実な固定のためには、粘着剤の粘着力を高めておけばよいが、そうすると、下着の材質等によっては、吸収性物品の取外し時にウィングが下着から剥がれにくくなることがある。その場合、各ウィングを手で持ってそれぞれ剥がした後に本体を下着から剥がす必要が生じ、吸収性物品の取外し動作が煩雑になることがある。
【0007】
上記に鑑みて、本発明の一態様は、装着中は下着へより確実に固定でき、且つ取外し時には下着から簡単に外すことができるウィングを備えた吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、透液性のトップシートと、非透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを備えた本体を有する吸収性物品であって、装着者の身体の前後方向に対応する前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向とを有し、前記本体から前記幅方向外側に延出する一対のウィングを備え、前記ウィングの前記バックシート側に粘着部が形成され、前記粘着部が、前記ウィングが展開された状態で、前記幅方向内側の強粘着部と、前記幅方向外側の弱粘着部とを有する。
【0009】
上記第一の態様によれば、ウィングの粘着部(強粘着部及び弱粘着部)が幅方向に延在していることによって、装着時には、特にウィングの幅方向のズレが防止されて、ウィングをより確実に適切に下着に固定させることができる。また、ウィングの根元に近い位置で粘着部を強粘着部としていることで、本体の幅方向縁部とウィングとで下着を確実に挟むことができ、本体の幅方向縁部の捲れやヨレを防止できる。
【0010】
一方、吸収性物品を取り外す際には、多くの使用者は、本体の前方又は後方の端部を持って引っ張ることで本体を下着から剥がす。そして、その引張り力がウィングの粘着部に伝わるので、使用者は、ウィングに触れることなくウィングを下着から剥がすことができる。しかしながら、粘着部が幅方向に延在していると、下着の材質等によっては、本体を引っ張る力によってウィングを剥がすことが難しくなる場合がある。粘着部のうち、本体の幅方向縁部に近い部分には、上述の引張り力が伝わりやすいので比較的剥がれやすいが、本体の幅方向縁部から離れるほど粘着部に引っ張り力が伝わりにくくなり、ウィングを剥がすために大きな力を要することになる。これに対し、上記第一の態様では、粘着部のうち、本体の幅方向縁部から離れた(ウィングの根元から遠い)部分を、粘着力(剥離強度)の弱い弱粘着部としているので、本体の幅方向縁部から離れた位置で粘着部が剥がしやすくなるので、大きな力を要することなくウィングを剥がすことができる。よって、装着中に吸収性物品を確実に固定できるとともに、取外し時にはウィングを容易に下着から取外し可能な吸収性物品を得ることができる。
【0011】
本発明の第二の態様では、前記強粘着部における粘着剤の目付が、前記弱粘着部における粘着剤の目付より大きい。
【0012】
上記第二の態様によれば、強粘着部と弱粘着部とを、幅方向の内側と外側とで粘着剤の目付(単位面積当たりの粘着剤の量)を変更することによって形成できるので、強粘着部と弱粘着部との間での粘着力の調整が容易である。
【0013】
本発明の第三の態様では、前記弱粘着部の前端が、前記強粘着部の前端よりも後方に位置する。
【0014】
吸収性物品を下着から取り外す際には、多くの場合、使用者は吸収性物品の前方の端部を持って本体を引っ張るので、ウィングは前方から剥がされ、粘着部もその前端から剥がされる。そして、粘着部が剥がされ始める位置、すなわち粘着部の前端において、ウィングは大きな抵抗を受けやすいため、特に大きな力を要する。上記第三の態様によれば、粘着部の前端においては、幅方向内側に位置する強粘着部のみが存在している。すなわち、力が伝わりにくい、本体の幅方向縁部からより遠い位置にある粘着部が前端にないことで、力が伝わりやすい幅方向内側の粘着部の前端のみから剥がし始めることができる。よって、粘着部の剥離開始動作に要する力が小さくなり、吸収性物品の取り外しをより小さい力で行うことができる。
【0015】
本発明の第四の態様では、前記強粘着部の前記幅方向の長さが、前記粘着部の前記幅方向の長さの合計の15~60%である。
【0016】
上記第四の態様によれば、強粘着部の幅方向の長さを所定範囲とすることで、吸収性物品の装着中は、ウィングを下着により確実に固定できるとともに、吸収性物品の取り外し時には、ウィングを下着からより容易に剥がすことができるという上述の効果を向上させることができる。
【0017】
本発明の第五の態様では、前記強粘着部と前記弱粘着部とが接している。
【0018】
上記第五の態様によれば、強粘着部と弱粘着部との間に隙間がなく、両者が連続している若しくは実質的に連続していることで、吸収性物品の装着動作時に、ウィングが強粘着部と弱粘着部との間で折れ曲がって強粘着部と弱粘着部とが貼り付いてしまうことを防止できる。
【0019】
本発明の第六の態様は、前記ウィングの前記幅方向の基端と、前記粘着部の幅方向内端との間隔が3mm以上5mm以下である。
【0020】
上記第六の態様によれば、粘着部がウィングの幅方向の基端から所定の位置に配置されているので、吸収性物品を取り外す際に本体を引っ張る力が粘着部に伝わりやすく、ウィングをより一層容易に剥がすことができるとともに、ウィングを折り返した際にウィングのバックシート側で粘着部同士が対向して貼り付くことを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、装着中は下着へより確実に固定でき、且つ取外し時には下着から簡単に外すことができるウィングを備えた吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一形態による吸収性物品の、肌側の面から見た平面図である。
【
図3】
図1の吸収性物品を装着した状態を示す図(下着の図示は省略)である。
【
図5】ウィングに設けられた粘着部の変形例を示す。
【
図6】ウィングに設けられた粘着部の別の変形例を示す。
【
図7】ウィングに設けられた粘着部のさらに別の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものである。
【0024】
(吸収性物品の基本構造)
まず、本発明の実施形態による吸収性物品の基本構造について、生理用ナプキンの例を用いて説明する。
図1に、吸収性物品1の平面図を示す。また、
図2に、
図1のI-I線断面図を示す。
【0025】
図1及び
図2に示すように、吸収性物品1は、不透液性のバックシート2と、透液性のトップシート3と、バックシート2とトップシート3との間に配置された吸収体4とを備えた、扁平状の本体(吸収性物品本体)8を有する。吸収性物品1の装着時には、トップシート3側が肌に対向する側(肌側若しくは表側)となり、バックシート2側が下着に対向する側(下着側若しくは裏側)となる。
図1の平面図は、吸収性物品1の肌側から見た図である。
【0026】
また、本明細書においては、
図1に示すように、吸収性物品1を装着した時に装着者の身体の前後方向に対応する方向を、吸収性物品1の前後方向D1とし、この前後方向D1に直交する方向を吸収性物品1の幅方向D2とする。本体8は、平面視で前後方向D1に長い細長形状を有しており、前後方向D1に所定の長さを有し、前後方向D1に直交する幅D2に所定の幅を有するものである。
【0027】
図1に示す形態では、本体8は、前後方向D1に延びる中心線(前後方向中心線)CLに対して略線対称の平面視形状を有しているが、本体8の形状は線対称でなくともよい。また、吸収性物品1全体の形状も、前後方向中心線CLに対して線対称であってもよいし、線対称でなくてもよい。さらに、吸収性物品1及び本体8の形状以外の構成(吸収体4の厚みや密度、圧搾溝の大きさ及び位置、ウィングの形状及び大きさ等を含む)は、前後方向中心線CLを対称軸として対称であってもよいし、対称でなくてもよい。
【0028】
吸収性物品1は、装着時に装着者の股間に主として対向させる中間領域Mと、中間領域Mの前方に隣接する前方領域Fと、中間領域Mの後方に隣接する後方領域Rとを有する。中間領域Mは、体液排出口対向領域Qを含む。体液排出口対向領域Qは、装着時に装着者の膣口、尿道口等の体液排出口及びその周辺領域に対向する領域である。体液排出口対向領域Qの中心は、長方向中心線上に位置し、長さ(前後方向向D1の長さ)10~50mm及び幅(幅方向D2の長さ)5~40mmの領域とすることができる。体液排出口対向領域Qは、
図1では、膣口に対向する領域として楕円状に描かれている。しかし、体液排出口対向領域Qの上述の大きさ及び形状は、本形態による吸収性物品1を説明するための例示にすぎない。
【0029】
バックシート2は、非透液性であり、少なくとも遮水性を有するシートであってよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂製のシートであってよい。また、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等を用いることができる。バックシート2は、吸収性物品1の外形形状と同じ外形形状を有するシートであってよい。
【0030】
トップシート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートとすることができる。トップシート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることもできる。
【0031】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))、及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
【0032】
また、吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用でき、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。
【0033】
吸収体4は、バックシート2及びトップシート3から前後方向D1にはみ出ない形状及び大きさを有していてよい。そして、前後方向D1の両端縁においては、バックシート2の縁部とトップシート3の縁部とが、接着剤、ヒートシール等によって接合されていてよい。また、吸収体4は、少なくともバックシート2から幅方向D2にはみ出ない形状及び大きさを有していてよい。
【0034】
吸収性物品1には、本体8の両側部、すなわち幅方向D2の両端部のトップシート3側(装着時に装着者の肌に対向する側、若しくは肌側)に、前後方向D1にわたって一対のサイドシート7、7が配置されている。サイドシート7、7はそれぞれ、トップシート3の肌側の面の側部に接合されていてよい。サイドシート7、7は、中間領域Mにおいて幅方向D2の外方へ延出し、同様に中間領域Mにおいて幅方向D2に延出したバックシート2と接合されて(
図2)、ウィング10、10を形成している。
【0035】
ウィング10、10は、おおよそ体液排出口対向領域Qを含む領域若しくは中間領域Mの両側部にそれぞれ形成されていてよい。なお、前方領域Fは、ウィング10の前端から吸収性物品1の前端縁までの領域であってよく、また後方領域Rは、ウィング10の後端から吸収性物品1の後端縁までの領域であってよい。なお、本形態においては、ウィング10の前端及び後端では、吸収性物品1の幅がそれぞれ極小になっている。
【0036】
また、吸収性物品本体8には、トップシート3側からバックシート2側へと凹む圧搾溝若しくはエンボスが形成されていてもよい。圧搾溝は、装着時に吸収性物品本体8の変形を促したり、体液の移動をコントロールしたりする機能を有する。
【0037】
(ウィング用粘着部)
図1及び
図2に示すように、一対のウィング10、10の非肌側(バックシート2側)にはそれぞれ、粘着部20、20が形成されている。そして、本形態では、各粘着部20は、ウィング10、10が広げられた状態(
図1)で見て、幅方向D2内側に形成された強粘着部21と、強粘着部21よりも幅方向D2外側に形成された弱粘着部22とを含む。1つのウィング10に形成されている粘着部20(強粘着部21及び弱粘着部22を含む)は、平面視面積がおおよそ75~1000m
2程度のものである。
【0038】
図3に、
図1及び
図2に示す吸収性物品1が下着に装着された状態を、本体8のバックシート2側から見た図を示す。但し、
図3においては、下着の図示は省略する。
図3に示すように、吸収性物品1を装着する際には、ウィング10、10をそれぞれ下着の非肌側の面へと折り返す。その際、ウィング10、10のバックシート2側に形成されている粘着部20、20がそれぞれ下着の非肌側の面に接触するので、ウィング10、10は粘着部20、20を介してそれぞれ下着に固定され得る。
図3に示すように、吸収性物品1の装着中、すなわちウィング10、10が折り返された状態では、強粘着部21は幅方向D2の外側に、弱粘着部22は、強粘着部21よりも幅方向D2の内側に位置する。別の言い方をすると、強粘着部21はウィング10の根元若しくは基端(幅方向D2で本体8に接続されている方の端)に近い位置にあり、弱粘着部22はウィングの自由端(幅方向D2で本体8から幅れている方の端)に近い位置にある。
【0039】
なお、本明細書において、「強粘着部」若しくは「強粘着」、及び「弱粘着部」若しくは「弱粘着」という語は、粘着力の相対的な強さを表す語であって、粘着力の所定値を意味するものではない。
【0040】
本形態では、粘着部20は幅方向D2に並んで配置された強粘着部21と弱粘着部22とを有する。粘着部20がある程度の幅で幅方向D2に延在しているので、ウィング10を、特に幅方向D2に動かないように下着に固定でき、本体8も幅方向D2に安定的に固定できる。また、ウィング10の根元に近い位置に強粘着部21があるので、ウィング10の根元、下着、及び本体8の幅方向D2の縁部が厚み方向に確実に固定でき、本体8の幅方向D2の縁部の捲れやヨレを防止できる。
【0041】
また、本形態によれば、下着への確実な固定が可能になるとともに、吸収性物品1の下着からの取外し動作も容易になる。通常、吸収性物品1を下着から取り外す場合には、使用者は吸収性物品1の本体8の前方又は後方の端部を持って引っ張ることで、本体8を下着から剥がす。そして、その際の引張り力によって、ウィング10、10に触れることなくウィング10、10を下着から剥がすことが多い。しかし、従来の構成では、下着の材質、粘着剤の種類等によっては、通常の引っ張り力でウィング10、10が下着に粘着したままで剥がれないこともある。その場合、ウィング10、10を直接持って下着の裏側から剥がす必要があったり、或いは無理やりに引っ張ってウィング10、10が破損したりすることもある。これに対し、本形態では、粘着部20、20のうち、本体8の幅方向D2の縁部から離れた位置(ウィング10、10の自由端に近い位置)に弱粘着部22が形成されていることで、ウィング10、10の取り外しが容易になる。
【0042】
より具体的に説明すると、例えば吸収性物品1の前方の端部を持って本体8を引っ張った場合、その引張り力がウィング10、10にも伝わり、ウィング10、10は
図3の矢印A、Aで示すように斜め方向に引っ張られる。この際の引張り力は、本体8の幅方向D2の縁部に近い位置には伝わりやすいが、本体8の幅方向D2の縁部から離れた位置(ウィング10が折り返された状態で前後方向中心線CLに近い位置)には伝わりにくい。そのため、本体8の幅方向D2の縁部から離れた位置の粘着部を弱粘着部22としておくことで、伝わる引張り力が弱くとも粘着が容易に解除でき、ウィング10を下着から容易に剥がすことができる。よって、吸収性物品1の取外し時に、ウィング10、10を直接手で持って開くというステップは必要ないので、取外し動作が煩雑になることはない。
【0043】
このように、本形態によれば、装着中の吸収性物品の確実な固定と、取外し時の取外し容易性とを両立させることができる。
【0044】
強粘着部21及び弱粘着部22はいずれも、粘着剤の層によって形成されている。流動物である粘着剤が塗布されるか、又は予め形成された粘着剤の層(粘着テープ等)が被着されることによって形成されている。強粘着部21及び弱粘着部22に用いられる粘着剤は、本体用又はウィング用の粘着部として従来用いられている公知の粘着剤、例えばホットメルトタイプの粘着剤を用いることができる。その主成分としては、スチレン系ポリマー、粘着付与剤、及び可塑剤、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0045】
スチレン系ポリマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。
【0046】
また、粘着付与剤及び可塑剤としては、常温で固体のものを用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステル等のポリマー可塑剤が挙げられる。
【0047】
強粘着部21には、比較的大きい粘着力若しくは剥離強度を有する粘着剤が用いられ、弱粘着部22には、比較的小さい粘着力が若しくは剥離強度を有する粘着剤が用いられている。強粘着部21に用いられる粘着剤と、弱粘着部22に用いられる粘着剤とは、粘着力が異なっているのであれば、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0048】
また、強粘着部21に付与されている粘着剤と、弱粘着部22に付与されている粘着剤とでは、目付(単位面積当たりの塗布量)を相違させてもよい。すなわち、強粘着部21における粘着剤の目付(G1)が、弱粘着部22における粘着部の目付(G2)より大きくなっていてよい。強粘着部21における粘着剤の目付(G1)は、好ましくは23~26g/m2であってよく、また弱粘着部22における粘着部の目付(G2)は、好ましくは20~22g/m2であってよい。また、弱粘着部22における粘着部の目付(G2)に対する強粘着部21における粘着剤の目付(G1)(すなわちG1/G2)は、好ましくは0.96~1.30、より好ましくは1.09~1.18であってよい。
【0049】
図4に、1つのウィング10の、バックシート2側から見た拡大図を示す。
図4からも明らかであるように、強粘着部21及び弱粘着部22はいずれも、前後方向D1に沿って延在しており、幅(幅方向D2の長さ)がほぼ一定の帯状の部分として形成されている。このような帯状の強粘着部21及び弱粘着部22は、個装吸収性物品の製造ライン上で、ベルトコンベア等によって搬送されるウィング剥離紙に対して、位置固定された塗布ユニットから粘着剤を吐出させ、ウィング剥離紙に帯状に塗布された粘着剤を、帯状の粘着剤の長手方向が吸収性物品の前後方向D1に対応する向きで、ウィングのバックシートに転写させることによって形成できる。例えば、幅方向D2に並設された2つの塗布ユニットを用い、それらの塗布ユニットの各ノズルから、粘着力の異なる異種の粘着剤をそれぞれ吐出するか、又は同じ粘着剤であっても異なる目付で粘着剤をそれぞれ吐出させることができる。
【0050】
図4に示すように、強粘着部21と弱粘着部22とは接しており、両者が連続して若しくは実質的に連続して形成されている。そのため、粘着部20全体が折れ曲がりにくくなる。よって、例えば、吸収性物品1の装着時に、強粘着部21と弱粘着部22との間で折れ曲がって両者が貼り付いてしまう不都合等を回避できる。なお、「実質的に連続」とは、強粘着部21と弱粘着部22との間に局所的に1mm以下の隙間があってもよいことを指す。
【0051】
また、粘着部20は、本体8からあまり離れていないことが好ましい。例えば、ウィング10の幅方向D2の基端(本体8とウィング10との境界)と、粘着部20との間の間隔d(
図4)は、3mm以上5mm以下であると好ましい。間隔dが3mm以上であることで、ウィング10を折り返した際にウィング10のバックシート2側で粘着部20同士が対向して貼り付くことを防止できる。一方、間隔dが5mm以下であることで、ウィング10をその根元付近で下着に固定できるので、ウィング10のヨレや下着からの浮きを防止できる。また、装着中に変形しやすい本体8の幅方向D2の縁部を、より確実に下着に固定させることができるので、本体8の幅方向D2の縁部の捲れやヨレの防止効果が高まる。
【0052】
なお、本形態において図示は省略するが、本体8のバックシート2側にも、公知の方式で粘着剤が配置されていてよい。本体用の粘着剤は、ウィング用の粘着剤(強粘着部の粘着剤又は弱粘着部の粘着剤)と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。
【0053】
また、吸収性物品1の取外し時におけるウィング10の剥がしやすさをさらに向上させるために、本形態では、前方領域Fの側部の外形輪郭が、長手方向D1とほぼ平行になっていることが好ましい。また、前方領域Fの輪郭形状が、ウィング10の前端付近で括れを有さないことが好ましい。括れが小さい又はないことで、吸収性物品1の取外し時に本体8の前方の端部を持って引っ張った際に、ウィング10の前端に応力が過度に集中してウィング10が根元で破断する可能性を低減できる。前方領域Fにおける最も幅広の位置と、前方領域Fと中間領域Mとの境界位置(ウィング10の前端)とを結んだ直線と、前後方向D1又は前後方向中心線CLとのなす角度α(
図1)が、10°以下又は0°であることが好ましい。
【0054】
(粘着部の変形例)
図5に、粘着部20の変形例を示す。
図5(a)に示す例では、
図4の例と同様に、帯状の強粘着部21及び弱粘着部22が形成されているが、強粘着部21の前端21aが、弱粘着部22の前端22aよりも前方に位置している。この構成により、吸収性物品1を取り外す際、ウィング10を下着からより容易に剥がすことができる。
【0055】
上述のように、吸収性物品1を取り外す際には、大抵の使用者は、吸収性物品1の本体8の前方の端部を持って、前から後ろへと引っ張ることによって、本体8を下着から剥がしていく。そのため、ウィング10も前方から剥がされ、粘着部20の剥離もその前端から始まる。剥離開始時にはウィング10は特に大きな抵抗を受けるため、剥がすために力が必要になるので、粘着部20の前端での剥離がスムーズにできることが好ましい。
図5(a)の例では、粘着部20の前端においては、幅方向D2の外側に位置する弱粘着部22が存在せず、幅方向D2の内側に位置する強粘着部21のみが存在している。このように、粘着部20の全体において、力が伝わりにくく剥がしにくい幅方向D2の外側の部分がないことで、粘着部20の剥離開始時に要する力が小さくなり、粘着部20の剥離をスムーズに開始できる。よって、吸収性物品1の下着からの取り外しをより一層容易に行うことができる。
【0056】
なお、強粘着部21の前後方向D1の長さL1は、15~50mm程度であってよく、弱粘着部22の前後方向の長さL2は、12~47mm程度であってよい。また、強粘着部21の前後方向D1の長さL1の、ウィング10の基端(本体8とウィング10との境界線)における前後方向D1の長さLWに対する割合(L1/LW×100)は、35~80%であると好ましい。また、弱粘着部22の前後方向D1の長さL2の、ウィング10の基端における前後方向D1の長さLWに対する割合(L2/LW×100)は、30~75%であると好ましい。
【0057】
さらに、
図5(b)に示すように、強粘着部21と弱粘着部22とでは、互いに幅方向D2の長さが異なっていてもよい。強粘着部21の幅方向D2の長さ(幅)W
1は、3~10mm程度であってよく、弱粘着部22の幅方向D2の長さ(幅)W
2は、2~10mm程度であってよい。また、粘着部20の幅方向D2の長さ(W
1+W
2)は、5~20mm程度であってよい。
【0058】
また、粘着部20の幅方向D2の長さの合計(W1+W2)に対する、強粘着部21の幅方向D2の長さ(幅)W1の割合(W1/(W1+W2)×100)は、15~60%であると好ましい。強粘着部21の幅W1が上記範囲にあることで、装着中の強粘着部21の下着に対する確実な固定機能を発揮できるとともに、取外し時に強粘着部21全体に力が伝わりやすく、ウィングの取り外しが容易になる。
【0059】
なお、好ましくは、ウィング10の幅方向D2の長さ(ウィング10の基端から自由端までの長さ)WWに対する、強粘着部21の幅方向D2の長さ(幅)W1の割合(W1/WW×100)は、5~45%であってよい。また、ウィング10の幅方向D2の長さWWに対する、弱粘着部22の幅方向D2の長さ(幅)W2の割合(W2/WW×100)は55~95%であってよい。
【0060】
図6に、粘着部20の別の変形例を示す。
図6(a)に示す例においても、粘着部20は、強粘着部21と弱粘着部22とを含むが、
図6(a)の例では、弱粘着部22が、第1弱粘着部221と、第2弱粘着部222とを有する。第1弱粘着部221及び第2弱粘着部222は、いずれも強粘着部21よりも粘着力が小さいが、第1弱粘着部221は、第2弱粘着部222よりも粘着力が大きくなっている。よって、例えば、第1弱粘着部221における粘着剤の目付が、第2弱粘着部222における粘着剤の目付より大きくなっていてよい。これにより、ウィング10、10が展開された状態で見て幅方向D2の内側から外側に向かって、強粘着部21、第1弱粘着部221、及び第2弱粘着部222が並んで配置され、内側から外側に向かって粘着力が段階的に小さくなっている。
【0061】
このように、粘着部20が、幅方向D2で見て粘着力が段階的に変化する3つ以上の部分を有する形態では、ウィング10の自由端に向かって(本体8の幅方向D2の縁部から離れる方向に)粘着力を緩やかに変化させることができる。よって、例えば、目付の違いによって粘着力を相違させる形態で、用いる粘着剤によっては強粘着部21と弱粘着部22とで厚みに差が生じて、粘着部20の下着への貼り付けが十分にできない可能性もあるが、本例によればそのような状況を回避できる。
【0062】
本例のように、弱粘着部22が、粘着力の異なる複数の部分から形成されている場合、
図6(a)に示すように、強粘着部21の前端21aより第1弱粘着部221の前端221aが後方に位置し、第1弱粘着部221の前端221aより第2弱粘着部222の前端222aが後方に位置することが好ましい。このように、粘着部20の前端が、ウィング10の幅方向D2の内側から外側に近づくほど、後方に位置するようになっていることで、ウィング10を取り外す際の上述の効果、すなわち粘着部20の剥離開始時の動作がスムーズになるという効果を向上させることができる。
【0063】
また、
図6(b)に示すように、粘着部20が、強粘着部21、第1弱粘着部221、及び第2弱粘着部222から構成されている場合、各部分の後端の位置が異なっていてもよい。より具体的には、強粘着部21の後端21bより第1弱粘着部221の後端221bが前方に位置し、第1弱粘着部221の後端221bより第2弱粘着部222の後端222bが前方に位置していてよい。
図6(b)に示すように各部分の後端の位置が異なっていることにより、吸収性物品1の取外し時に本体8の後方の端部を持って剥がした場合でも、ウィング10、10の取り外しを容易にできる。
【0064】
このように、粘着部20の各部分の前端が、幅方向D2の外側に近づくほどウィング10の前後方向D1の前端から離れるように、且つ粘着部20の各部分の後端が、幅方向D2の外側に向かうほどウィング10の前後方向D1の後端から離れるように、構成されていると、吸収性物品1の取外し時に前方及び後方のどちらから剥がしても、ウィング10、10を容易に取り外すことができる。また、本体8の構成及び吸収性物品1全体の外形が前後対称である形態の場合には、前後方向D1のどちらの端部を前にして使用しても、ウィング10、10を前方から容易に取り外すことができる。
【0065】
なお、
図6の例では、弱粘着部22を、幅方向D2に並んだ粘着力の異なる2つの部分から形成しているが、弱粘着部22が、幅方向D2の内側から外側に向かって粘着力が段階的に小さくなる3つ以上の部分から形成されていてもよい。
【0066】
図7に、粘着部20のさらに別の変形例を示す。
図1~
図6を参照して説明した例では、強粘着部21及び弱粘着部22は帯状であり、ほぼ長方形であった。一方、
図7に示す例では、強粘着部21及び弱粘着部22はいずれも帯状ではあるが、長方形ではない。
図7(a)に示す例では、粘着部20全体の平面視形状が台形であり、
図7(b)に示す例では、粘着部20全体の平面視形状が三角形となっている。いずれの例でも、強粘着部21の前端21aが、弱粘着部22の前端22aより前方に位置し、且つ強粘着部21の後端21bが、弱粘着部22の後端22bより後方に位置しているので、吸収性物品1を下着から取り外す際に、本体8を前方から剥がしても後方から剥がしても、剥がしやすい構成となっている。
【0067】
図7に示すような、前端及び/又は後端が幅方向D2に平行でない粘着部は、所定の形状に形成された強粘着部21の層及び弱粘着部22の層を、ウィング10に被着することによって形成することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 吸収性物品
2 バックシート
3 トップシート
4 吸収体
7 サイドシート
8 吸収性物品本体
10 ウィング
20 粘着部
21 強粘着部
22 弱粘着部
221 第1弱粘着部
222 第2弱粘着部
CL 前後方向中心線
D1 前後方向
D2 幅方向
F 前方領域
M 中間領域
R 後方領域
Q 体液排出口対向領域