(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】心臓前駆細胞の亜集団を単離する方法、及び医療分野における関連する使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/077 20100101AFI20240827BHJP
【FI】
C12N5/077
(21)【出願番号】P 2020518591
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 IB2018054057
(87)【国際公開番号】W WO2018224983
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】102017000062176
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521098308
【氏名又は名称】オロカー セラペウティクス エス.アール.エル
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ポンピリオ、ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】ガンビーニ、エリサ
(72)【発明者】
【氏名】スパルトロ、ガブリエラ
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0273113(US,A1)
【文献】特表2016-516423(JP,A)
【文献】特開2004-290056(JP,A)
【文献】J Am Heart Assoc, 2014, vol. 3, no. 5, article no. e001260 (pp. 1-10)
【文献】Transl Res, 2012, vol. 160, no. 5, pp. 363-373
【文献】Cardiovasc Res, 2011, vol. 89, no. 2, pp. 362-373 (Supplementary material pp. 1-18)
【文献】Nature, 2005 Feb 10, vol. 433, no. 7026, pp. 647-653
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)心臓細胞の集団を含む心臓組織試料をミンチすること、
b)細胞懸濁液が得られるまで、酵素混合物を用いて前記心臓組織を4回、漸進的に消化し、そして30μm~100μmの範囲内の大きさのフィルタにより濾過すること、
c)細胞懸濁液が得られるまで、酵素混合物を用いて、ステップb)で得られた残りの心臓組織を16時間さらに消化し、そして30μm~100μmの範囲内の大きさのフィルタにより濾過すること、
d)ステップb)及びステップc)で得られた細胞懸濁液に含まれる心臓細胞をプレーティングし、心臓細胞を増殖させるのに適切な培地中で心臓細胞を培養すること、
e)ステップd)で得られた心臓細胞を酵素溶液又は非酵素溶液の存在下でプレートから剥離させ、心臓細胞をプレーティングして、心臓細胞を増殖させるのに適切な培地中において心臓細胞を培養することによって心臓細胞を増殖させること、
f)ステップe)で得られた心臓細胞を酵素溶液又は非酵素溶液の存在下でプレートから剥離させ、心臓細胞をプレーティングして、心臓細胞をさらに増殖させるのに適切な培地中において心臓細胞を培養することによって心臓細胞を増殖させること、
g)心臓前駆細胞の開始集団内で発現した1又は複数の表面抗原に対するモノクローナル抗体を使用して、陽性選択及び/又は陰性選択によって、心臓細胞の1又は複数の亜集団を単離することで、CD90
-のヒト心臓前駆細胞亜集団を得ること、ここで前記モノクローナル抗体は抗CD90モノクローナル抗体を含む、
を含み、
ステップb)及びステップc)の酵素混合物が基礎培地及び酵素溶液を含み、そして該酵素溶液がコラゲナーゼを含むがプロテアーゼは含ま
ず、
ステップb)及びステップc)いずれの酵素混合物においても、前記コラゲナーゼは、0.1~3mg/mLの範囲内の濃度で存在する、
ヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
【請求項2】
ステップa)の前記心臓組織試料が、右心耳生検、左心耳生検、中隔生検、心尖生検、及び心室生検からなる群から選択される、請求項1に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
【請求項3】
ステップa)を前記ミンチすることが手動又は自動で行われる、請求項1又は請求項2に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
【請求項4】
ステップb)及びステップc)の前記酵素混合物における前記コラゲナーゼが、コラゲナーゼI、コラゲナーゼII、コラゲナーゼIV、及びコラゲナーゼAからなる群から選択される1又は複数の酵素を含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団の単離のために方法。
【請求項5】
前記基礎培地がHam’s/F12である、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
【請求項6】
ステップd)、ステップe)及びステップf)の前記心臓細胞を増殖させ、かつ拡大するのに適切な培地が、10%のウシ胎児血清、2mMのL-グルタチオン、5×10
-3U/mLのヒトエリスロポイエチン、10ng/mLの塩基性線維芽細胞成長因子及び抗生物質が補充されたHam’s/F12培地である、請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
【請求項7】
細胞増殖のためのステップe)及びステップf)の酵素溶液又は非酵素溶液が、Tryple(登録商標)Select、トリプシン及び/又はEDTAの混合物、細胞解離緩衝液、セルストリッパ、アクターゼ及びディスパーゼからなる群から選択される、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
【請求項8】
ステップg)のモノクローナル抗体が、ビオチン又は蛍光分
子で標識されている、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
【請求項9】
ステップg)のモノクローナル抗体が、FITC若しくはAPCから選択される蛍光分子で標識されている、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
【請求項10】
ステップg)の抗体が、
【表1】
からなる群から選択される1又は複数の抗原に対するモノクローナル抗体をさらに含む、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
【請求項11】
ステップg)の選択が免疫磁気分離によって行われる、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
【請求項12】
ステップg)のモノクローナル抗体が、抗CD117モノクローナル抗体及び抗CD90モノクローナル抗体である、請求項
8~請求項11のいずれか一項に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
【請求項13】
表面マーカープロファイルCD90
-、
間葉マーカーであるCD29、CD44、CD73、CD105及びCD200を発現すること、
造血マーカーであるCD34、CD45、CD14及び免疫系マーカーであるHLA-DRを発現しないこと、
を特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離方法によって抗CD90モノクローナル抗体を用いた陰性選択によってのみ得られる、ヒト心耳由来のヒト心臓前駆細胞の亜集団。
【請求項14】
単独で、又は、ヒト心臓前駆細胞の別の亜集団と組み合わせて、心臓血管疾患の治療において使用するための請求項13に記載のヒト心臓前駆細胞の亜集団。
【請求項15】
単独で、又は、ヒト心臓前駆細胞の別の亜集団と組み合わせて、心臓細胞移植及び/又は心臓組織移植において使用するための、請求項14に記載のヒト心臓前駆細胞の亜集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓組織試料からの心臓前駆細胞の亜集団を単離する方法、該方法により得られた集団、並びに、細胞治療のための医療分野、又は心臓細胞移植及び/又は心臓組織移植の分野における関連する使用に関する。
【背景技術】
【0002】
前駆体は、増殖及び分化する能力を有し、周りの細胞及び組織のための支持機能も行う全ての細胞集団である。
【0003】
前駆体は、損傷を受けた細胞の交換によって組織の機能を持続させるために生物の組織内に位置する希少細胞である。それらは、最初は、骨髄及び上皮組織などの細胞交換が最も高い組織内で発見されたが、現在では、再生能力が低い種々の組織内で生存する前駆細胞の集団があることがよく知られている。
【0004】
成人の心臓内に常在する前記前駆体の発見は、心臓が自己複製不可能な器官であるという定説を根底から変えた。
【0005】
この発見は、虚血又は他の損傷の後で心筋を再生することが可能な治療を開発することを目的とした、常在心臓前駆体の研究につながった。種々の表面マーカーを特徴とする種々の型の細胞が提案及び研究されてきており、そのいくつかは第I相臨床治験で試験され、いくつかは第II相臨床治験で試験されてきた。治験は、最初に米国のFDAによって許可され、最近では世界の残りの国々でも許可されたが、イタリアではまだ許可されていない。
【0006】
心臓前駆体についてのそのような知識は、再生医療と定義されるものに属する革新的治療を導入するために研究領域を広げてきた。
【0007】
治験のための幹細胞(常在心臓前駆体を含む)の使用は、厳格な基準に従わなければならない。それらによって、医薬の製造のために用いられる同じ規制基準に従って幹細胞の翻訳(translation)が行われることが確保される。
【0008】
医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準(GMP)は、現行の参照薬局方(米国薬局方、欧州薬局方など)に従った医薬の製造のためのガイドラインである。イタリアでは、細胞治療製品(CTP)のための第I相臨床治験は、イタリア国立衛生研究所(ISS)の事前意見に従う。心臓前駆体を臨床的に使用する可能性があるという観点から、細胞治療製品についてのイタリア国立衛生研究所の2004年のガイドラインに従ってGMPを参照して心臓前駆体を調製するための手法を開発し、検証することは重要である。
【0009】
本技術分野において利用可能な単離プロトコル(参考文献[4]、[5]、[6]参照)によって、磁気選択システムを用いて研究範囲までであれば心臓前駆体集団(CD117+)を単離することが可能になる。実際のところ、GMP製品及び臨床治験のための磁気選択システムを用いて心臓前駆体の集団を選択するためには、まず第一に、選択を行うことが所望される未選択開始集団を広範に増殖させることが必要である。研究範囲の選択システムによって、約1×106、1×107の数の細胞から選択を開始することが可能になるが、現在利用可能なGMPグレードの選択システムは、そのような少数の開始細胞から開始しても機能しない。免疫磁気選択システムを機能させるためには、約1×109の開始細胞数(末梢血液細胞又は骨髄血液細胞)を選択することが必要である。すなわち、GMPグレードの条件下で前駆体集団を選択するための第1の必須条件は、1×109の細胞の量に近づくよう、選択可能な前記開始集団を最大化する戦略を採用することである。
【0010】
イタリアでは、イタリア国立衛生研究所が医薬の製造のための法制化などの第I相試験のためのGMP製造レベルをすでに要求しているが、イタリアにおける臨床治験で用いることができる心臓前駆体の製造のための方法は、これまでのところ市場に無い。
【0011】
心臓血管分野における細胞治療の観点から、細胞の型は、治療上の成功のための基本的な役割をカバーしている。細胞採取源としての心臓組織を分析することによって、3つの異なる型の細胞が現在提案されており、すでに第I相臨床治験で試験され、一部は第II相臨床試験で試験されている。
【0012】
特に、
1)CD117抗原であるc-kitの表面発現を基に選択された心臓幹細胞(CSC)の集団、[1]、
2)マーカーによってではなく、球状集合体を形成する能力を有することを基に単離されたカーディオスフェア由来細胞(CDC)[2]、
3)CSC-ckit+細胞と骨髄間葉系幹細胞(MSC)との組み合わせを使用する、併用治療手法を用いる第I相試験及び第I相治験[3]。
【0013】
上記の3つの細胞型は、どれも、細胞の型、及び当該型の細胞を得ることができる製造技術によって、メリット及びデメリットを有する。
【0014】
例えば、いかなるマーカーによっても選択されない前記カーディオスフェア由来細胞(CDC)集団には、大量に得ることが容易であるというメリットがあるが、明確に特徴づけられない不均一集団であるというデメリットもある。
【0015】
一方、前記心臓幹細胞集団は、非常によく特徴づけられた幹細胞/前駆体に富むというメリットを有し、心筋の機能的増加及び処置される患者の生活の質に関する証明された治療上の機能を有するが、上述の集団は、極めてまれな内在的集団であり、また増殖能が低いため、臨床的に重要な数を得ることが困難であるというデメリットを示す。
【0016】
細胞の組み合わせはより良好な結果を生み出すため、現在利用可能な最新の手法(心臓幹細胞及び間葉系幹細胞の併用)は、より良好な治療上の有利性を潜在的に有しうるが、同時に、改善が可能だとしてもその基礎となるメカニズムは依然不明である。さらに、細胞を組み合わせる結果、損傷を受けた心筋における有効率及び最も活性な集団を決定する上でばらつきが生じてしまう。
【発明の概要】
【0017】
ここで、本願発明者は、特に臨床的に有意義な数のhCPC及び高純度規格を得る際の効率性に関して、背景技術の単離プロセスに影響を及ぼす種々の技術的課題を解決するヒト心臓前駆細胞亜集団(hCPC)を単離する方法を開発した。
【0018】
実際、本発明に係る心臓前駆体を単離する方法によって、初代培養物から制御されたやり方で心臓細胞の種々の亜集団を増殖させることが可能であり、かつそれらの表現型特性を維持し、相当程度短縮したタイムフレームで臨床的に有意義な数の細胞を得ることができる。
【0019】
本発明に係る方法の他の目的は、心臓における任意の細胞源から得られる任意の生検(単に例として挙げるだけであるが、左右心耳生検、中隔生検、心尖生検、心室生検)から(少量の出発材料から開始する場合であっても)、細胞を単離することである。
【0020】
本発明に係る前記単離方法は、極めて多目的に使える、すなわち、表面抗原を陽性及び/又は陰性に発現する元の集団に存在する任意の亜集団の選択に適している点でも有利であり、GMP条件においても同様である。GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理に関する基準)条件は、good manufacturing practice-つまり(例えば、臨床プロトコルの中における)想定される臨床的バッチの製造について許可された医薬品工場において当該製造を行うことを可能にする試薬、用具及び技術的手段を用いて試験されるプロトコル/試薬/物質-に従った開発のレベルを意味する。
【0021】
そのようにして臨床的に有意義な数が単離された高選択亜集団は、特異的抗体を用いた検出により、表面マーカーの陽性選択又は陰性選択(又は両方)によって識別され得る。
【0022】
本発明の単離方法を用いて得ることができる細胞の集団の、興味のある治療分野は、非限定的な例を挙げられば、有効な処置が現在のところ存在しない心臓疾患である。
【0023】
ゆえに、本発明に係る前駆細胞の集団の単離方法によって、心臓前駆体の治療上の適用を多数の対象に広げることが可能である。特に、本方法は、(由来が虚血性でも非虚血性でも)進行心不全及び難治性虚血性心筋症のための極めて多用途な細胞治療手段を得る可能性を提供する。前記方法は、凍結保存後にも細胞の同一性が維持されていることを考慮して、自家細胞治療の状況及び同種異系細胞治療の状況のどちらにおいても適用可能である。
【0024】
ゆえに、本発明の主題は、以下のステップを含むヒト心臓前駆細胞(hCPC)の亜集団を単離する方法である。
a)心臓細胞の集団を含む心臓組織試料をミンチすること、
b)細胞懸濁液が得られるまで、酵素混合物を用いて前記心臓組織を4回、漸進的に消化し、そして30μm~100μmの範囲内の大きさのフィルタにより濾過すること、
c)細胞懸濁液が得られるまで、酵素混合物を用いて、ステップb)で得られた残りの心臓組織を16時間さらに消化し、そして30μm~100μmの範囲内の大きさのフィルタにより濾過すること、
d)心臓細胞を増殖させるのに適切な培地中で、ステップb)及びステップc)で得られた細胞懸濁液を培養すること、
e)心臓細胞を増殖させるのに適切な培地中において、ステップd)で得られた細胞懸濁液を酵素溶液又は非酵素溶液の存在下で予備的に増殖させること、
f)心臓細胞をさらに増殖させるのに適切な培地中において、ステップe)で得られた心臓細胞を酵素溶液又は非酵素溶液の存在下で二次的に増殖させること、
g)心臓前駆細胞の開始集団内で発現した1又は複数の表面抗原に対するモノクローナル抗体を使用して、陽性選択及び/又は陰性選択によって、心臓細胞の1又は複数の亜集団を単離すること。
【0025】
好ましくは、前記単離ステップはイムノマグネティックソーティングによって行われる。
【0026】
ステップa)における心臓組織の試料は、前駆細胞を含む心臓器官及びその付属物におけるいずれの領域に由来するものであってもよく、新鮮組織由来でも凍結組織由来でもよい。特に好ましい実施形態においては、前記心臓組織試料は生検試料である。
【0027】
好ましくは、前記心臓組織試料は、右心耳生検、左心耳生検、中隔生検、心尖生検又は心室生検に由来する心臓細胞の初代集団を含む(
図3参照)。さらに好ましくは、前記心臓組織試料は右心耳に由来する。
【0028】
上述の方法の別の実施形態によれば、前記開始心臓組織試料は、差別なく、成人対象、小児又は胎児のいずれに由来するものであってもよい。
【0029】
ステップa)のミンチステップは、手動又は自動で行うことができる。前記手動においては、殺菌条件においてピンセット又は外科用鋏を使用することも想定される。
【0030】
ステップb)は、生存細胞懸濁液を得るために、4つの酵素消化ステップで実施され得る(30分消化を4回)。ステップc)によって、ステップb)で得られた残りの心臓組織の消化を完了し、GMP条件下においてインビトロで増殖可能な生存細胞の数を最大にすることができる。好ましくは、ステップb)の消化を16時間、オーバーナイト(O/N)で行う。
図4には、本発明者によって以前に用いられた方法(参考文献[4]及び[5]参照)に使用された心臓組織の30分×4回の消化ステップのみを行った後に得られた細胞と、該消化をさらなる16時間の消化によって得られた心臓組織断片の完全な消化と組み合わせて行った後に得られた細胞との比較を示す。本発明に係る処置により、ステップb)終了時に得られる細胞数を2倍にすることができる(継代P0~P1)。
【0031】
ステップb及びステップc)の前記酵素消化は、基礎培地(好ましくはHam’s/F12)及び酵素溶液を含む酵素混合物によって起きる。好ましくは、前記酵素溶液は、コラゲナーゼ及び/又はプロテアーゼの混合物を含む。さらに好ましくは、コラゲナーゼ及び/又はプロテアーゼの前記混合物は、コラゲナーゼI、コラゲナーゼII、コラゲナーゼIV、トリプシン、EDTA、アクターゼ(accutase)、コラゲナーゼA、ディスパーゼ及びリベラーゼ(liberase)(すなわち、NB4又はNB6(GMP)、Serva)から選択される1又は複数の酵素を含む。
【0032】
好ましくは、ステップd)、ステップe)及びステップf)において心臓細胞を増加、増殖させるための理想的な前記培地は、基礎培地(好ましくはHam’s/F12)、血清(好ましくは10%ウシ胎児血清(FBS))、細胞成長のために必要な他の因子(具体的には、2mMのL-グルタチオン、5×10-3U/mLのヒトエリスロポイエチン、10ng/mLの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF又はFGF2))、並びに抗生物質(具体的には、1000U/mL以下のペニシリン及び1000μg/mL以下のストレプトマイシン)を含む。この培地は、以下ではF12Hと表される。イニシャルがF12Gのものも同じ培地を表すが、ただしGMP条件で用いられるものを指す。
【0033】
あるいは、心臓細胞集団の成長のための他の培地を用いることも可能であり、特に、基礎培地は、MEM、DMEM、Medium199、DMEM/F12、IMDM、neurobasal培地、EBM-2、α-MEM、mesencult又はHCSCEMからなる群から選択してもよい。ウシ血清に代わりにウマ血清を用いることもできる。さらに追加的な又は代替的な成長因子として、endothelial growth factor(EGF)、白血病抑制因子(LIF)、亜セレン酸ナトリウム、インスリン、アスコルビン酸、ヘパリン、ヒドロコルチゾン、トランスフェリン、2-メルカプトエタノール、L-グルタメート、B27、トランスフォーミング成長因子-β1、骨形成タンパク質2(BMP-2)及び骨形成タンパク質4(BMP-4)、インスリン様成長因子(IGF-1及びIGF-2)、アクチビンA、カルジオトロフィン-1、ウシ脳抽出物(BBE)並びにトロンビンを用いることが可能である。抗生物質として、ゲンタマイシン及びアンフォテリシンBを代わりに用いてもよい。
【0034】
さらに、細胞培養のためのプラスチックに代わるものとして、ポリリジン、フィブロネクチン又はブタゼラチンなどの種々のプラスチック上又は種々の支持体上で細胞を成長させることも可能である。
【0035】
特に好ましい実施形態によれば、前記酵素混合物は、Ham’s/F12基礎培地と、コラゲナーゼNB4 Serva又はコラゲナーゼNB6 Servaの混合物とを含む。
【0036】
好ましくは、コラゲナーゼの前記混合物は、0.1~3mg/mLの範囲内の濃度で存在する。
【0037】
前記生検試料が完全に酵素消化されるために、上述した方法によれば、既知のプロトコルと比較してより迅速かつ効率よく細胞及び細胞クローンを抽出することができる。
【0038】
細胞膜を損傷しない酵素溶液又は非酵素溶液を用いることによって、前記主要表面マーカーの発現を維持しつつ1又は複数のステップによる細胞懸濁液二重増殖ステップe)及びfを行うことができる。好ましくは、前記酵素溶液又は前記非酵素溶液は、TrypLE(商標)Select、トリプシン及び/又はEDTAの混合物、細胞解離緩衝液(GIBCO)、アクターゼ、及びディスパーゼからなる群から選択される。
【0039】
好ましくは、心臓細胞を増殖させるための適切な培地は、上述したF12Hである。
【0040】
前記主要表面マーカーの発現を維持することによって、ステップc)の初代培養物から得られた前記細胞集団を凍結保存することができる。
【0041】
非胚性前駆体/幹細胞は、培地中で非常にゆっくりと成長し、望ましくない希釈及び/又は分化を防ぐために分化細胞から前記非胚性前駆体/幹細胞を分離することが必要であると一般に考えられる。
【0042】
本発明に係る方法によれば、心臓幹細胞及び心臓前駆細胞は、それらが分化細胞の混合集団内で維持される場合、より迅速に成長する。
【0043】
予備的増殖ステップ及び二次的増殖ステップを想定するこの新しい手順の処置によって(前記背景技術説明に記載の既知方法(参考文献[1]、[4]、[5]参照)と異なり)、最後の細胞単離プロセスの前に注目する前駆体亜集団を大規模に増殖させることが可能であり(
図7参照)、最終純度を高めることが可能である。
【0044】
出発材料として平均重量が141,4±28.29mgの心耳の断片(fragmen)とし、GMPグレード条件で注目する集団を選択することを考えたとき、前記の追加的な増殖ステップによって、従来技術(参考文献[4]、
図7)と比較して10倍以上の数の開始細胞を得ることが可能である(実施例4参照)。
【0045】
選択前の開始細胞の数が増加したことによる別のメリットは、得られた細胞数が細胞治療の治験で使用する上で既に充分であるので(この分野における治験において注射される細胞の数を考慮すると)、本発明の方法は、選択された細胞に対するさらなる選択後増殖ステップを必要としないということである。このことは「品質」に関する別のメリットにつながる。なぜなら、選択後増殖ステップを回避することによって、選択された注目する集団の希釈を防止することが可能であるからである。文献から知られているように、培養は、集団自体を部分的に分化させてしまうという固有の問題を有するので、選択された注目する集団をその状態を保ったまま増殖させることはできない。
【0046】
したがって、ずっと多くの細胞(現状技術に対して10倍以上)から開始して注目する集団の単離を行うことが可能であり、このため、著しく多数の、選択された前駆細胞が単離される。
【0047】
表面抗原を認識する特異的抗体を用いることによる集団の単離に基づいた方法によれば、シグナル増幅システムのおかげで、任意の心臓細胞亜集団(たとえ存在割合の低いものであっても)を単離することが可能になる。
【0048】
上記の提案された方法は、同様の細胞集団を得るために用いられる他の方法と比較して、明らかにより迅速な方法(平均して22日間)である(
図6b参照)。実際、現状技術は、(数及び純度に関して)品質が明らかにより低い細胞製品を得るために、平均66.5日間が必要であることを示す。
【0049】
このように、本発明に係る方法によれば、1又は複数の選択表面マーカーについて高い純度の、1又は複数の心臓細胞亜集団を得ることができ、また、臨床的に有意義な量の細胞を得ることができる。
【0050】
本発明に係る方法の単離ステップg)で用いられる特異的抗体は、好ましくは(例えば、ビオチンで)標識されたモノクローナル抗体であり、より好ましくは蛍光分子で標識されたモノクローナル抗体である。
【0051】
好ましくは、前記蛍光分子は、フルオレセイン(FITC)、アロフィコシアニン(APC)、及び磁気選択システムと併用するのに適切な別の蛍光マーカーから選択される。上述の抗体の直接標識又は間接標識を行うことが可能である。
【0052】
さらに、前記抗体は一次抗体又は二次抗体(間接標識用のみ)であることができる。
【0053】
好ましい実施形態によれば、ステップg)に係る分離は免疫磁気分離であり、モノクローナル抗体は磁気ビーズに結合させられる。
【0054】
本発明に係るステップg)に従って前記分離を行うために用いることができる代替的な可能な選択システムは、Dynabeads Magnetic Separation Technology Thermo Fisher Scientific,EasySep(商標)Magnet STEMCELL又はフローサイトメトリーセルソーティング(すなわち、FacsAria BD)である。
【0055】
前記方法の好ましい実施形態によれば、心臓組織試料が右心耳又は中隔に由来する場合(FACS分析を用いた特性決定についての後述の実施例5を参照のこと)、以下の表1に列挙される抗原の群から選択される1又は複数の抗原に対するモノクローナル抗体を用いることが可能であり、該モノクローナル抗体は所望により蛍光マーカーされており、該蛍光マーカーは好ましくはビオチン、FITC及びAPCから選択される。
【0056】
【0057】
本発明に係る単離方法の好ましい実施形態によれば、本発明に係る方法のステップg)に従って注目する心臓前駆細胞亜集団を陽性選択及び/又は陰性選択するための前記モノクローナル抗体は、抗CD117及び/又は抗CD90である。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、陰性選択(実施例2参照)を用いるのか、同時二重陽性及び陰性選択(実施例3参照)を用いるのかに応じて、CD90
-とCD117
+/CD90
-とから選択される表面抗原のプロファイルによって特徴づけられるヒト心臓前駆細胞の亜集団が、上記で概要を説明した単離方法によって得られる。特に、ヒト心臓前駆細胞hCPC CD90
-の亜集団は、有意な抗炎症効果(
図22参照)に加えて、高い血管形成能及び高い心臓保護能(
図20~
図21参照)を示した。また、前記亜集団CD117
+/CD90
-も有意な抗炎症効果(
図22参照)を示した。前記hCPC CD90
-亜集団によって明らかとされたコラーゲン産生の低下のため、前記
亜集団は移植の適切な候補になる(
図23参照)。
【0059】
したがって、本発明のさらなる目的は、医療分野で用いるための、上記に概要を記載した単離方法によって選択されたヒト心臓前駆細胞CD90-及びCD117+/CD90-の亜集団である。本発明の単離方法によって得ることが可能な前記亜集団は、単独で使用してもよく、又は互いに組み合わせて使用してもよく、又は他のヒト心臓前駆細胞亜集団(例えば、CD117+、CD117-、CD90+、CD117+/CD90+、CD117-/CD90-及びCD117-/CD90+の亜集団)と組み合わせて使用してもよい。
【0060】
本発明は、さらに、心臓血管細胞治療における、又は、心臓細胞及び/又は心臓組織移植分野における、上記に概要を記載した単離方法によって得られたヒト心臓細胞亜集団の使用に関する。
【0061】
本発明から利益を得ることができる疾患としては、急性心臓疾患及び慢性心臓疾患、虚血由来又は非虚血由来の疾患、心筋疾患又は心筋病変、遺伝由来の心臓血管疾患、先天性心臓欠陥、弁膜性心臓疾患、悪性形態を含む不整脈、うっ血性心不全及び非うっ血性心不全、心内膜下線維症、左心室肥大又は右心室肥大、左心室の拡張、心筋急性梗塞、再狭窄、心筋炎、特発性拡張型心筋症、慢性虚血性心筋症、ジストロフィー心筋症(dystrophyc cardiomyopathy)(例えば、Duchenne型ジストロフィー又はBecker型ジストロフィー)、心膜疾患及び/又は心膜障害、難治性形態を含む狭心症、血管の疾患又は障害(アテローム性動脈硬化、動脈瘤、動脈炎、末梢動脈の狭窄及び下肢の高度の虚血を含む動脈、細動脈及び毛細管並びに関連構造の全疾患)、高血圧、自己免疫疾患が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0062】
本発明に係る上述の方法によって選択された細胞の心臓保護、免疫調節能及び心筋再生能のため、上述の方法は、創傷修復プロセス又は再生治療も含む各種疾患の処置のための適切な手段となる。
【0063】
ここで、本発明を、特に添付図面を参照して、その好ましい実施形態にしたがって、非限定的な例示的目的のために記載する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】パネルA)及びパネルB)は、洗浄、秤量及びミンチの前の、大動脈-冠状動脈バイパス手術の間に採取されたばかりの右心耳の断片の図を示す。パネルC)及びパネルD)は、縦方向の切断後の前記断片の2つの面を示す。パネルE)は、手動で切り刻んだ後で得られた前記断片を示す。パネルF)は、回収され、処理された心耳の平均重量(組織のmgで表される)を関連標準偏差と共に示す図を示す。
【
図2】研究又はGMP規格に従った酵素溶液の使用による心臓組織の消化の2つのヒストグラムを示す。研究酵素溶液及びGMP酵素溶液の使用によって、ステップ0(P0~P1)の終了時に同等の数の細胞が得られる。
【
図3】心臓組織の異なる採取源(心耳及び中隔)に由来する心臓前駆体含有細胞集団の単離の例を表す2つの図を示す。心臓の異なる領域から、同じ条件で、第1ステップ(P1~P2)の終了時に同等の数の細胞を得ることができる。
【
図4】第1消化ステップ(30分×4回)後に、まだ消化されていない心臓組織のオーバーナイト消化を加えることによって得られた前記組織の断片の完全消化によって、ステップ1(P1~P2)の終了時に得られる細胞の数が倍化する状態について示すグラフを示す。
【
図5】培養5日後のインビトロ初代培養物の光学顕微鏡下で得られた像を示す。パネルB)は、この種の培養においては非常によく見られる、単一の前駆細胞から生じたと推定されるクローンを示す。
【
図6】パネルA)は、培地における各ステップに必要な平均時間を示す図を示し、新鮮試料及び凍結試料を比較している。パネルA)から、どちらの場合も、成長時間に対する統計的に有意な変化無しに手法が再現できることが明らかと考えられる。パネルB)は、新鮮試料及び凍結処理試料の両方における、初代培養から注目する集団(P3)の選択までの日数の合計を示し、ここで日数はステップ毎に細分している。凍結が可能であることは、注目する表現型の維持についても証明された。パネルC)は、非選択集団の凍結の前後における抗原c-kit(CD117)の発現を示す図を示す。
【
図7】ステップ2(P2~P3)の終了時までに、心臓組織(右心耳)の4つの試料の完全な増殖から得られた細胞の数を示すグラフを示す。
【
図8】種々のステップの期間における注目する前駆細胞の割合を報告する細胞蛍光測定分析を示す。パネルA)は、ステップP2及びステップP3の期間における選択されない集団におけるc-kit(CD117)の割合の維持を示すグラフを示す。パネルB)は、前記培養ステップP2及び前記培養ステップP3における前記抗原c-kitの発現を示す図を含む。
【
図9】前記抗原c-kitについての陽性選択の例を示す。示された図は、物理的パラメータによって同定された対象集団を示し、注目する抗原の発現が蛍光抗体を用いて強調されている。パネルA)は、物理的パラメータによって同定された、分析された集団を示す図を含み、注目する抗原の発現が蛍光抗体を用いて強調されている。パネルB)は、非特異的標識の陰性対照として用いられる、選択前における、APCと結合したアイソタイプのみで標識された集団を表す画像を示し(ゲートR2の内側)、パネルC)は、選択前の集団のマーカーの発現を示し(ゲートR3の内側)、パネルD)は、選択後の陽性集団の選択を示す(ゲートR3の内側)。
【
図10】抗原CD90についての陰性選択の例を示す。示された図は、物理的パラメータによって同定された、分析された集団を示し(パネルA)、注目する抗原の発現は二次蛍光抗体に結合したビオチン化抗体を用いて強調されている。パネルB)は、選択前における、二次抗体(FITCで標識された抗ビオチン)のみで標識された集団を表す画像を示す(ゲートHの内側)。パネルC)は、選択前の集団におけるマーカーの発現を示し(ゲートHの内側)、パネルD)は、選択後の陰性集団の選択を示す(ゲートHの内側)。
【
図11】一方のマーカー(CD90)については陰性集団であり、かつ別のマーカー(c-kit)については陽性である集団の二重選択の例を示す。示された図は、パネルA)において、分析され、物理的パラメータによって同定された集団を示し、パネルB)は、選択前における、非特異的標識の陰性対照として用いられるFITCと結合したアイソタイプのみで標識された集団を表す画像を示し、また、APCと結合したアイソタイプのみで標識された集団を表す画像を示し(パネルC)、パネルD)及びパネルE)は、注目する抗原、すなわち、蛍光色素FITCと結合したCD90(パネルD)及び蛍光色素APCと結合したc-kit(パネルE)の発現を示す。特に、パネルD)は、陰性選択についての注目する集団を示し(ゲート≪-≫の内側)、パネルE)は、陽性選択についての注目する集団を示し(ゲート≪+≫の内側)、パネルF)は、選択後における、2つのマーカーの発現によって同定される集団の選択を示す(ゲート≪L-+≫の内側)。
【
図12】注目する抗原(c-kit)を発現する集団であって、中程度又は低い平均蛍光強度を特徴とする集団も選択することを可能とする本発明に係る単離方法の図を示す(パネルA)。パネルB)は、本発明に係る方法によって得られた細胞集団の細胞数、純度及び細胞生存度を従来技術[4]と比較した表を示す。
【
図13】パネルA)は、物理的に分離されるが、選択後に成長が可能ならば成長のための同じ培地を共有する異なる細胞型の同時成長を可能にするTranswell(登録商標)培養インサートを備えたプレート内に細胞を播種するプロセスの図を示す。例示された場合においては、選択された細胞をTranswell(登録商標)インサート内の上側チャンバ内にプレーティングし、支持された細胞を下側のチャンバ内にプレーティングする。パネルB)は、選択された細胞の培養物のいくつかの例を示す。前記細胞は、培養内に戻すと、生存可能であり、かつ再び成長を開始し、クローンも形成する(前駆体/幹細胞の特異な性質である)。
【
図14】選択(この例では、ゲートIの内側に見られる陰性選択)直後における注目する抗原CD90の維持、及び選択された細胞を継代培養した後における注目する抗原CD90の維持を示すグラフ(イムノソーティング)を示す。
【
図15】選択の直後、並びに凍結及び解凍後における、選択のために用いられたマーカーの維持の例を示す。この例においては、表面マーカーCD90について陽性選択を行い、単離の直後では集団の98.67%でCD90が発現しており、細胞の解凍後では集団の97.32%でCD90が発現している。
【
図16】抗c-kit APCヒト抗体(灰色の破線)及びAPCで標識された抗ビオチン抗体(淡い実線)という標識選択肢の両方によって評価された、GMP条件におけるc-kit陽性を特徴とする選択を行った後における心臓前駆体の集団を示す図である。陰性対照としてアイソタイプAPC(ヒストグラム全体)を用いた。
【
図17】心耳及び中隔の心臓組織の試料において評価される表面抗原の表を示す。
【
図18】Cultrexアッセイによって評価されたhCPC亜集団の内皮分化を示す。結果は、Cultrex膜上におけるhCPC-ns、hCPC-CD117
+、hCPC-CD90
+及びhCPC-CD90
-における管構造形成を示す。パネルA)の棒グラフは、顕微鏡1視野当たりの管状構造の定量化を示し、パネルB)の棒グラフは、管状構造間の分岐点の数を示す。これらの条件で、hCPC-CD90
-亜集団は、4時間で、検討した他の亜集団(hCPC-ns)よりも有意に多い管状構造を産生する((n=4)
*p<0.05、
**p<0.05、
***p<0.001)。
【
図19】FACS分析によって評価されたhCPC亜集団の内皮分化を示す。棒グラフは、血管新生促進EGM-2培地での培養後のhCPC-CD117
+細胞及びhCPC-CD90
-細胞におけるVE-カドヘリン/CD144
+、CD146
+及びVEGFR-2/KDR
+細胞の間の比較を示す。これらの条件で、hCPC-CD90-細胞は、内皮マーカーCD144及び内皮マーカーKDRについて、有意に高い発現を示した。(n=4)
*p<0.05。
【
図20】hCPC亜集団における成長因子及びサイトカインの発現プロファイルを示す。棒グラフは、非選択集団(hCPC-ns)と比較した、種々のhCPC亜集団(hCPC-CD117
+、hCPC-CD90
-及びhCPC-CD90
+)におけるサイトカイン及び成長因子の放出の増加を示す。前記比較から、hCPC-CD90
-亜集団は、多くの因子について増大した分泌プロファイルを示し、IL-6及びIL-8については、hCPC-CD117
+亜集団と比較して統計的有意性に達している(n=3)
*p<0.05。
【
図21】hCPC亜集団の心臓保護能を示す。棒グラフは、ジストロフィー心筋症(Duchenne型及びBecker型)の患者に由来するiPSから誘導された心筋細胞(CM-d-hiPSC)における心筋トロポニンアイソフォームI(cTnI)の放出を示す。hCPC-CD90
-亜集団は、両方のCM-d-hiPSC集団に対し、最も高く、有意な心臓保護効果を示すことが明らかであり、最も低いトロポニン放出を誘導する。(n=6)
*p<0.05、
**p<0.05、
***p<0.001。
【
図22】hCPC亜集団の抗炎症効果を示す。棒グラフは、ジストロフィー心筋症の患者のiPSから誘導された心筋細胞(CM-d-hiPSC)におけるTNF-αの放出を示す。パネルA):hCPC-ns、hCPC-CD117
+、hCPC-CD90
+及びhCPC-CD90
-の存在下で共培養された(Duchenne型患者由来の)CM-d-hiPSC上清における、共培養開始から3日後のTNF-α放出。これらの条件下で、hCPC-CD90
-亜集団は、有意な抗炎症効果を示し、TNF-α放出を減少させる(n=4)。パネルB:hCPC-ns、hCPC-CD117
+、hCPC-CD90
+及びhCPCCD90
-で共培養された(Becker型患者由来の)CM-d-hiPSC上清における、共培養開始から7日後のTNF-α放出。これらの条件下で、hCPC-CD90
-亜集団及びhCPC-CD117
+/CD90
-亜集団は、有意な抗炎症効果を示す(n=6)。
*p<0.05、
**p<0.05、
***p<0.001。
【
図23】5日間のTGF-β1処置後における、インビトロでのコラーゲン産生によって評価されたhCPC亜集団の筋線維芽細胞分化を示す。前記比較は、hCPC-CD90
-亜集団が、検討した他の集団(hCPC-ns、hCPC-CD117
+及びhCPC-CD90
+)と比較してコラーゲンを産生する能力が最も低いことを示す。(n=3)
*p<0。
【発明を実施するための形態】
【0065】
実施例1:陽性選択によるヒト心臓前駆細胞の集団を単離する方法
MATERIALS AND METHODS
(初代培養)
36.8~631.8mgの範囲内の重量のヒト心耳の試料(
図1参照)を手術室で採取し、その脱水を防ぐため、直ちに少なくとも1種の殺菌した溶液(リン酸塩緩衝食塩水、PBS又は生理的溶液)、好ましくは前記組織の生存度も維持する溶液(例えば、任意の培地)を含む殺菌した容器内に移す
【0066】
あるいは、ウシ血清アルブミン(BSA)若しくはヒト血清アルブミン(HSA)又はウシ胎児血清(FBS)を含む別の溶液を用いることも可能である。その時点から前記試料を制御された温度(+4℃)で保持し、48時間以内に処理することができ、又はFBS及びDMSOを少なくとも含む溶液中の液体窒素内で凍結させることができる。凍結は、培養が得られるのかどうかに対して影響を及ぼさないからである(
図6a~
図6b参照)。処理のために、特に心外膜除去プロセスを参照した適切な調製の後、前記断片を秤量し、顕微手術用ピンセット及び微細手術用鋏を用いて約1~2mm
3の断片にミンチし、消化溶液(一般的には、出発組織100mgにつき1.7mLの溶液)と共にチューブ内に移す。消化溶液は基礎培地を含み、基礎培地は好ましくは3mg/mLの濃度でコラゲナーゼNB4(SERVA)を含むHam’s/F12である(
図2参照)。
【0067】
(断片の消化)
1.前記組織断片を含む(1又は複数の)前記チューブを、回転振動機内に移す。回転振動機により、前記溶液が前記断片自体の有効な消化により濁る(一般的には、30~40分間又は最高4時間)まで、37℃の温度で前記チューブの内部で前記断片を動かすことができる。
2.前記(1又は複数の)チューブを回収する。まだ消化されていない断片をチューブの底部に堆積させることができる。(細胞を含む)「消化された」溶液を回収し、チューブ内に移し、PBSの添加後、チューブを遠心分離して細胞を底部に堆積させる(チューブは、4℃で、400g10分間又は800g5分間遠心分離する)。
3.前記上清を除去し、完全培地中で前記細胞を再懸濁し、氷中に置かれた前記細胞を含むチューブを移し、後に行われる消化を待つ。特定の場合において、前記完全培地は、10%のウシ胎児血清(FBS)、2mMのL-グルタチオン及び5×10-3U/mLのヒトエリスロポイエチン、10ng/mLの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF又はFGF2)及び抗生物質(1000U/mL以下のペニシリン及び1000ug/mL以下のストレプトマイシン)を含むHam’s/F12からなる(F12H)。
【0068】
ここで、まだ消化されない組織の断片を含むチューブに新しい消化溶液を加え、上記のステップ1~3を合計4回繰り返す。
【0069】
氷中で保存された4つの消化物を回収し、シリンジフィルタ(好ましくは70μMのシリンジフィルタ)に接続されたシリンジに移し、新しいチューブへと濾過する。完全培地を有する前記4つのチューブを洗浄し、洗浄液も濾過のために同じシリンジ内に移す。
【0070】
特定の場合においては、10%のウシ胎児血清(FBS)、2mMのL-グルタチオン及び5×10-3U/mLのヒトエリスロポイエチン、10ng/mLの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF又はFGF2)及び抗生物質(1000U/mL以下のペニシリン及び1000ug/mL以下のストレプトマイシン)を含むHam’s/F12培地を用いる(F12H)。
【0071】
濾過された溶液を、ペトリ皿などの殺菌した培養皿(一般的には、元々の培地100mgにつき直径100mmのプレート1つ)内にプレーティングする(Day1)。
【0072】
前記(1又は複数の)チューブ内にまだ存在する断片の全体消化を行うために、新しい消化溶液を加えるが、好ましくは0.3mg/mL以下の濃度で該消化溶液を加える。
【0073】
組織の断片を含む(1又は複数の)前記チューブを、回転振動機内に移す。該回転振動機は、一晩中(約16時間)37℃の温度でチューブの内部での前記断片の移動を可能にする。
【0074】
消化された前記溶液を、ナイロンメッシュフィルタ(好ましくは70μMのナイロンメッシュフィルタ)を用いて濾過し、濾液を回収する。同じフィルタをPBSで洗浄し、濾過された溶液を遠心分離して、細胞を底部上に沈降させる。
【0075】
上清を除去し、細胞を完全培地F12H中に再懸濁し、ペトリ皿などの殺菌した培養皿(一般的には、元々の培地100mgにつき直径100mmのプレート1つ)内にプレーティングする。前記チューブは完全培地F12Hで洗浄してもよく、まだチューブ内に存在する細胞を回収するために、洗浄液を同じペトリ皿内に移してもよい(Day2)。
【0076】
培養48時間後(30分×4回の消化の場合はDay3、一晩中消化された断片の場合はDay4)、デトリタス、死滅した細胞又は付着しなかった細胞を含む培地を完全に除去し、プレートをPBSで洗浄し、新しい新鮮な培地F12Hを加える(
図4)。
【0077】
前記培地を換えるが、好ましくは2日毎に換える。
【0078】
顕微鏡下で細胞の成長を検査し、約70%のコンフルエンスに達した場合、又は存在するクローンが過度にコンフルエントになる場合、細胞の増幅を行う(
図5)。
【0079】
(非選択集団の増幅)
4.培地を除去し、細胞がプレーティングされるペトリ皿の表面をPBSで洗浄し、プラスチックから細胞を剥離させる溶液を加える。ペトリ皿は、細胞懸濁液を得るために必要な時間、37℃に制御された温度でインキュベートされる。このプロセスのために、酵素溶液(トリプシン)又は非酵素溶液(Tryple Select、EDTA、細胞解離緩衝液又はセルストリッパ)を用いることが可能である。
5.FBS(酵素溶液を用いた場合)又はPBS(非酵素溶液を用いた場合)を含有する溶液の添加によって、前記反応を中断する。チューブ内の細胞を含む溶液を遠心分離する。
6.細胞を計数し、1:10の希釈率で、又は、好ましくは1200~1500個/cm2の濃度で、F12H培地内に再度プレーティングする。培地を換えるが、好ましくは2日毎に換える。
【0080】
顕微鏡下で細胞の成長を検査し、70%のコンフルエンスに達した場合、(ステップ4~ステップ6を繰り返すことによって)細胞のさらなる増幅を行う。実際、前記さらなるステップは、後に選択される注目する集団を同定する、注目する抗原の頻度を損なわない(
図8)。あるいは、凍結保存は、後に選択される注目する集団を同定する、注目する抗原の頻度を損なわないので、得られた細胞集団を凍結保存して、後日、単離を完了することも可能である(
図6c参照)。
【0081】
(陽性選択による注目する集団の単離)
単離すべき集団を非酵素的方法を用いてペトリ皿から剥離し(「非選択集団の増幅」の項参照)、細胞を計数し、再懸濁する(好ましくは冷たい単離緩衝液(Wash Buffer、WB)中に再懸濁する)。特定の場合においては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びウシ血清アルブミン(BSA又はHSA)を含有するPBSを用いる。細胞は、100μLあたり1×106個の濃度で再懸濁した。
【0082】
選択前に蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析のために一部の細胞(100,000個の細胞)を用いる。
【0083】
細胞を、注目する集団を認識する抗体に結合する蛍光分子と同じ蛍光分子(この例ではAPC)に結合したIgGアイソタイプイムノグロブリンで標識して周囲温度において暗所で15分間インキュベートするか、又は、APCで標識した抗ビオチン抗体で標識して+4℃で暗所で15分間インキュベートした。標識後、前記細胞をWBで洗浄し、FACSによって分析した(アイソタイプとして同定されるチューブ)(
図9a~
図9b参照)。
【0084】
残りの細胞を選択のための抗体で標識した。細胞を撹拌しながら、+4℃で20分間、1×106個の細胞につき2μgの濃度で、ビオチン標識した抗ヒトCD117抗体で標識した。
【0085】
標識後、細胞をWBで(好ましくは冷たいWBで)洗浄し、遠心分離した。上清を除去し、160μLあたり1×106個の濃度で細胞をWB中に再懸濁した。
【0086】
選択前に、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析のために一部の細胞(100,000個の細胞)を用いる。細胞を、APC標識抗ビオチン抗体で標識し、+4℃で暗所で15分間インキュベートした。標識後、細胞をWBで洗浄し、FACSによって分析した(Markedとして同定されるチューブ)(
図9c参照)。
【0087】
残りの細胞を前記二次抗体で標識した。40μLに1×107個の濃度で抗ビオチン抗体と共にマイクロスフェアを用い、細胞を撹拌しながら+4℃で15~20分間標識した。
【0088】
標識後、細胞を、WB(好ましくは冷たいWB)で洗浄し、遠心分離した。上清を除去し、細胞を冷たいWB中に再懸濁した。細胞を、次に行う磁気分離のために、1.5×106個以下の細胞については体積500μL中に、又は15×107個以下の細胞については体積1mL中に再懸濁した。
【0089】
(磁気分離)
磁気分離は、例えばMiltenyi社製のカラム及び磁石を用いて行うことができる。WB(好ましくは冷たいWB)(MSカラムについては500μL、またLSカラムについては1mL)を用いてカラムを活性化する。陰性集団はチューブ内に回収する(NEG)。前記細胞を前記磁気カラム内に移す(前記MSカラム内には1.5×106個以下の細胞、又は前記LSカラム内には15~30×107個以下の細胞)。WB(好ましくは冷たいWB)を加えて(前記MSカラムに対しては500μL、前記LSカラムに対しては1mL)、前記カラムを3回洗浄する。陽性集団(POS)は、磁石からはがした後でカラムの内容物をチューブ内に絞り出し、WB(好ましくは冷たいWB)を加える(前記MSカラムに対しては1mL、また前記LSカラムに対しては2mL)ことによって回収する。選択純度を増加させるために、選択された陽性細胞(POS)を、予想される数に基づいて、新しいMS磁気カラム又はLS磁気カラムに通すことができる。選択された陽性細胞の数を増加させるために、開始数に基づいて、前記NEGチューブの細胞を新しいMS磁気カラム又はLS磁気カラムに通すことが可能である。前記陽性(POS)細胞及び前記陰性(NEG)細胞を遠心分離し、F12H培地中に再懸濁し、計数した。
【0090】
また、この場合、選択後に一部の細胞(100,000個の細胞)を、その純度を確認するために蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析(
図9d)に用いる。細胞を、APCで標識した抗ビオチン抗体で標識し、+4℃で暗所で15分間インキュベートした(Miltenyi)。標識後、細胞をWBで洗浄し、FACSによって分析した。
【0091】
選択後、細胞を凍結してもよく、又はプレーティングしてもよい。特に、物理的に分離されるが、同じ培地を共有する異なる細胞型の同時培養を可能にする培養インサートを備えた特定のTranswell(登録商標)プレート内にプレーティングしてもよい(
図13)。特に、陽性細胞を、4,000~20,000個/cm
2の範囲内の濃度で前記培養プレートの底部上のF12H培地内にプレーティングし、陰性細胞を、3,000~10,000個/cm
2の範囲内の濃度でTranswell(登録商標)インサート上にプレーティングしたが、逆でもよい。
【0092】
(実施例2:)陰性選択によるヒト心臓前駆細胞の集団を単離する方法
選択前における、断片の消化ステップ、初代培養及び増殖は、実施例1の場合と同様である。
【0093】
(陰性選択による注目する集団の単離)
非酵素的方法(「非選択集団の増幅」の項参照)を用いて、単離すべき前記集団を前記ペトリ皿から剥離し、前記細胞を計数し、冷たい単離緩衝液(WB)中に再懸濁する。細胞を、100μLあたり1×107個の濃度で再懸濁した。
【0094】
陰性選択前に、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析のために一部の細胞(100,000個)を用いる。細胞を、注目する集団を認識する抗体(1μLの抗体)に結合する蛍光分子(この例ではFITC、BD)と同じ蛍光分子に結合したイムノグロブリン(アイソタイプIgG)で標識し、周囲温度で暗所内で15分間インキュベートするか、又は、抗ビオチンFITC(Miltenyi)抗体(10μLの抗体)で標識し、+4℃で暗所内で15分間インキュベートした。
【0095】
標識後、細胞をWBで洗浄し、FACSによって分析した(Isotype同定チューブ、
図10a~
図10b参照)。
【0096】
残りの細胞を選択のための抗体で標識した。細胞を、+4℃で、又は氷中において、10分間、1×107個の細胞につき10μLの濃度で、ビオチンに結合した抗ヒトCD90抗体(Miltenyi)で標識した。
【0097】
標識後、細胞を冷たいWBで洗浄し、遠心分離した。上清を除去し、細胞を、160μLあたり1×106個の濃度で、WB中に再懸濁した。
【0098】
選択前に、一部の細胞0,000個)を光活性化細胞ソーティング(FACS)分析に用いる。細胞を、FITCで標識した抗ビオチン抗体(Miltenyi)(10μLの抗体)で標識し、+4℃で暗所で15分間インキュベートした。標識後、細胞をWBで洗浄し、FACSによって分析した(Markedとして同定されるチューブ、
図10c)。
【0099】
残りの細胞を二次抗体で標識した。1×107個の細胞につき40μLの濃度で、ビオチン抗体(Miltenyi)と共にマイクロスフェアを用い、細胞を撹拌しながら、+4℃で15~20分間標識した。
【0100】
標識後、細胞を冷たいWBで洗浄し、遠心分離した。上清を除去し、細胞を冷たいWB中に再懸濁した。細胞を、次の磁気分離のために、500μLあたり30×107個以下の細胞濃度で再懸濁した。
【0101】
(磁気分離)
磁気分離は、Miltenyi社製のカラム及び磁石を用いて行うことができる。冷たいWB(LDカラムについては2mL)を用いてカラムを活性化する。細胞を磁気カラム内に移した(LDカラム一本に30×107個以下の細胞)。毎回冷たいWBを加えて(前記LDカラムに対して1mL)カラムを2回洗浄した。陰性集団はチューブ内に回収する(NEG)。選択純度を増加させるために、選択された陰性細胞(NEG)を、予想される数に基づいて、新しいMS磁気カラム又はLS磁気カラムに通した。この場合、細胞を、予め活性化されたカラムに(冷たいWBを用いて)通過させた後、続いてカラム自体を洗浄すること無しに陰性集団を回収した。陽性集団も回収する場合、それを磁石からはがして、冷たいWBを加え、その後に15mLのチューブ内にカラムの内容物を絞り出すことによって、陽性集団を回収する(POS)。選択純度を増加させるために、選択された陽性細胞(POS)を、予想される数に基づいて、新しいMS磁気カラム又はLS磁気カラムに通した。陽性(POS)細胞及び前記陰性(NEG)細胞を遠心分離し、F12H培地中に再懸濁し、計数した。
【0102】
選択後に、一部の細胞(100,000個の細胞)を、その純度を確認するために、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析に用いる。細胞を抗ビオチン抗体FITC(Miltenyi)(10μLの抗体)で標識し、+4℃で暗所内で15分間インキュベートした。標識後、細胞をWBで洗浄し、FACSによって分析した(
図10d)。
【0103】
選択後、細胞の選択された表現型が変化しないこと(
図14)を考慮すると、細胞を凍結してもよく(陽性選択の例については
図15を参照のこと)、又は3000~5000個/cm
2の範囲内の濃度でプレーティングすることができる。
【0104】
実施例3:陽性選択及び陰性選択の組み合わせによるヒト心臓前駆細胞の集団を単離する方法
選択前における、断片の消化ステップ、初代培養及び増殖は、実施例1の場合と同様である。
【0105】
(陽性選択及び陰性選択の組み合わせによる注目する集団の単離)
非酵素的方法(「非選択集団の増幅」の項参照)を用いて、単離すべき集団をペトリ皿から剥離し、細胞を計数し、冷たい単離緩衝液(WB)中に再懸濁する。細胞は、100μLあたり1×107個の濃度では再懸濁しなかった。
【0106】
選択前に、一部の細胞(400,000個)を蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析のために用いる(
図11A~
図11E)。続いて、細胞を4つの別々のチューブに分けた。
【0107】
第1のチューブ(Isotype FITCとして同定される)を、注目する集団を認識する抗体(1μLの抗体)に結合した蛍光分子と同じ蛍光分子(この例においてはFITC、BD)に結合したイムノグロブリン(アイソタイプIgG)で標識し、周囲温度で暗所において15分間インキュベートし、第2のチューブ(Isotype APCとして同定される(
図11C参照))を、注目する集団を認識する前記抗体に結合した蛍光分子と同じ蛍光分子(この例においてはAPC、BD)に結合したイムノグロブリンで標識し、第3のチューブ及び第4のチューブ(それぞれCD90 FITC及びc-kitAPCとして同定される(
図11D及び
図11E参照))を、それぞれの特異的な抗体(CD90 FITC及びc-kitAPC、BD)(5μL以下の抗体)で標識し、周囲温度で暗所で15分間インキュベートした。標識後、細胞をWBで洗浄し、FACSによって分析した。
【0108】
残りの細胞を選択(陰性選択)のための第1の抗体で標識した。細胞を、+4℃で又は氷中で、10分間、1×107個の細胞につき10μLの濃度で、ビオチンに結合した抗ヒトCD90抗体(Miltenyi)で標識した。
【0109】
標識後、細胞を冷たいWBで洗浄し、遠心分離した。上清を除去し、細胞を、160μLあたり1×106個の濃度でWB中に再懸濁した。
【0110】
細胞を二次抗体で標識した。抗ビオチン抗体(Miltenyi)と共にマイクロスフェアを1×107個の細胞につき40μLの濃度で用い、細胞を撹拌しながら、+4℃で15~20分間標識した。標識後、細胞を冷たいWBで洗浄し、遠心分離した。上清を除去し、細胞を冷たいWB中に再懸濁した。細胞を、次の磁気分離のために、500μLあたり30×107個以下の濃度で再懸濁した。
【0111】
(陰性磁気分離)
磁気分離は、Miltenyi社製のカラム及び磁石を用いて行うことができる。冷たいWB(LDカラムについては2mL)を用いて前記カラムを活性化する。細胞を磁気カラム内に移す(LDカラム内に30×107個以下の細胞)。毎回冷たいWBを加えて(LDカラムに対して1mL)、カラムを2回洗浄した。陰性集団はチューブ内に回収する(NEG)。選択純度を増加させるために、選択された陰性細胞(POS)を、予想される数に基づいて、新しいMS磁気カラム又はLS磁気カラムに通した。この場合、細胞を、予め活性化されたカラムに(冷たいWBを用いて)通過させた後、続いてカラム自体を洗浄すること無しに陰性集団を回収した。陽性集団も回収する場合、それを磁石からはがして、冷たいWBを加え、その後にチューブ内にカラムの内容物を絞り出すことによって、陽性集団を回収する(POS)。選択純度を増加させるために、選択された陽性細胞(POS)を、予想される数に基づいて、新しいMS磁気カラム又はLS磁気カラムに通すことができる。
【0112】
前記陰性細胞(NEG)を遠心分離し、冷たいWB中で再懸濁し、計数した。前記細胞を、100μLあたり1×106個の濃度で再懸濁しなかった。
【0113】
前記細胞を選択(陽性選択)のための抗体で標識した。細胞を撹拌しながら、+4℃で20分間、1×106個の細胞につき2μgの濃度で、ビオチンに結合した抗ヒトCD117抗体(Biolegend)で標識した。
【0114】
標識後、細胞を冷たいWBで洗浄し、遠心分離した。上清を除去し、細胞を、160μLあたり1×106個の濃度でWB中に再懸濁し、二次抗体で標識した。1×107個の細胞につき40μLの濃度で、抗ビオチン抗体(Miltenyi)と共にマイクロスフェアを用い、細胞を撹拌下で、+4℃で15~20分間標識した。
【0115】
標識後、細胞を冷たいWBで洗浄し、遠心分離した。上清を除去し、細胞を冷たいWB中に再懸濁した。細胞を、次の磁気分離のために、1.5×106個以下の細胞については500μLの濃度で、また15×107個以下の細胞については1mLの濃度で再懸濁した。
【0116】
(陽性磁気分離)
磁気分離は、Miltenyi社製のカラム及び磁石を用いて行うことができる。冷たいWB(MSカラムについては500μL、及びLSカラムについては1mL)を用いてカラムを活性化する。陰性集団をチューブ内に回収する(NEG-NEG)。細胞を磁気カラム内に移す(MSカラム内には1.5×106個以下の細胞、またLSカラム内には30×107個以下の細胞)。毎回冷たいWBを加えて(前記MSカラムに対しては500μL、前記LSカラムに対しては1mL)、カラムを3回洗浄する。陽性集団を磁石からはがした後で、カラムの内容物をチューブ内に絞り出し、冷たいWBを加える(前記MSカラムに対しては1mL、及び前記LSカラムに対しては2mL)ことによって陽性集団を回収した(POS)。選択純度を増加させるために、選択された陽性細胞(NEG-POS)を、予想される数に基づいて、新しいMS磁気カラム又はLS磁気カラムに通した。選択された陽性細胞の数を増加させるために、開始数に基づいて、NEG-NEGチューブの細胞を新しいMS磁気カラム又はLS磁気カラム内に通した。陽性(NEG-POS)細胞及び陰性(NEG-NEG)細胞を遠心分離し、F12H培地中に再懸濁し、計数した。
【0117】
選択後に、一部の細胞(200,000個の細胞)を、その純度を確認するために蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析に用いた(
図11F参照)。細胞を、APCで標識したマウス抗体である抗ヒトCD117(BD、5μL以下)及びFITCで標識した抗体である抗ヒトCD90(BD、1μL)で標識した。
【0118】
選択後、細胞は凍結してもよく、又はプレーティングしてもよい。特に、物理的に分離されるが、同じ培地を共有する異なる細胞型の同時培養を可能にする培養インサートを備えた特定のTranswell(登録商標)プレート内にプレーティングしてもよい。特に、前記二重選択細胞(一つのマーカーに対しては陽性、かつ別のマーカーに対しては陰性)を、4,000~20,000個/cm
2の範囲内の濃度で前記培養プレートの底部上のF12H培地内にプレーティングし、同じ患者の細胞を、3,000~10,000個/cm
2の範囲内の濃度でTranswell(登録商標)インサート上にプレーティングしたが、逆でもよい(
図13)。
【0119】
実施例4:GMP条件における心臓前駆細胞を単離する方法の実施
MATERIALS AND METHODS
(初代培養)
ヒト心耳の試料(36.8~631.8mgの範囲内の重量)を手術室で採取し、その脱水を防ぐため、直ちに、殺菌した溶液(リン酸塩緩衝食塩水、PBS、生理的溶液)、好ましくは前記組織の生存度も維持する溶液(すなわち、任意の培地)を含む殺菌した容器内に移す。
【0120】
あるいは、ウシ血清アルブミン(BSA)又はウシ胎児血清(FBS)を含む別の溶液を用いることも可能である。
【0121】
その時点から前記試料を制御された温度(+4℃)で保持し、好ましくは48時間以内に処理する、又は凍結保存に適切な溶液中において液体窒素で凍結させることができる。処理のために、次いで前記断片を機械的にミンチする。ミンチが心耳を覆う心外膜の心耳を先に清浄化することを想定している場合、秤量前に前記断片を清浄化し、それ以外の場合、前記断片の洗浄化を必要としないプロトコルについては、依然として心耳をカバーする心外膜と共に心耳を秤量する。
【0122】
機械的なミンチのためには、継代を自動化することができる異なる機器を用いることができる。例えば、Medimachine(BD)及びGentleMACS(Miltenyi)といった機械を用いた。
【0123】
(断片の消化)
次いで、コラゲナーゼNB-6(GMPグレード)を用いて、すでに基礎研究のために開発されている方法を採用して、ミンチされた組織を消化する(
図2)。
1.前記組織断片を含む(1又は複数の)前記チューブを、回転振動機内に移す。回転振動機により、前記溶液が前記断片自体の有効な消化により濁る(一般的には、30~40分間又は最高4時間)まで、37℃の温度で前記チューブの内部で前記断片を動かすことができる。
2.前記(1又は複数の)チューブを回収する。まだ消化されていない断片をチューブの底部に堆積させることができる。(細胞を含む)「消化された」溶液を回収し、チューブ内に移し、PBSの添加後、チューブを4℃で遠心分離して、細胞を底部に沈降させる。
3.前記上清を除去し、完全培地中で前記細胞を再懸濁する。特定の場合において、10%のGMPグレードウシ胎児血清(FBS)、2mMのL-グルタチオン及び5×10
-3U/mLのヒトエリスロポイエチン、10ng/mLの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF又はFGF2)及び抗生物質(1000U/mL以下のペニシリン及び1000ug/mL以下のストレプトマイシン)を含むHam’s/F12培地(F12G)を用い、氷中に置かれた前記細胞を含むチューブを移し、後に行われる消化を待つ。
【0124】
ここで、まだ消化されない組織の断片を含むチューブに新しい消化溶液を加え、上記のステップ1~3を合計4回繰り返す。
【0125】
氷中で保存された消化物を回収し、好ましくは70μMのシリンジフィルタに接続されたシリンジに移し、新しいチューブ内において濾過する。完全培地F12Gを有する前記チューブを洗浄し、洗浄液も濾過のために同じシリンジ内に移す。
【0126】
濾過された溶液を、ペトリ皿などの殺菌した培養皿(一般的には、元々の培地100mgにつき直径100mmのプレート1つ)内にプレーティングする(Day1)。
【0127】
前記(1又は複数の)チューブ内にまだ存在する断片の全体消化を行うために、新しい消化溶液を加えるが、好ましくは0.3mg/mL以下の濃度で該消化溶液を加える。
【0128】
組織の断片を含む(1又は複数の)前記チューブを、回転振動機内に移す。該回転振動機は、一晩中(約16時間)37℃の温度でチューブの内部での前記断片の移動を可能にする。
【0129】
消化された前記溶液を、ナイロンメッシュフィルタ(好ましくは70μMのナイロンメッシュフィルタ)を用いて濾過し、濾液を回収する。同じフィルタをPBSで洗浄し、濾過された溶液を遠心分離して、細胞を底部上に沈降させる。
【0130】
上清を除去し、細胞を完全培地F12G中に再懸濁し、ペトリ皿などの殺菌した培養皿(一般的には、元々の培地100mgにつき直径100mmのプレート1つ)内にプレーティングする。前記チューブは完全培地F12Gで洗浄してもよく、まだチューブ内に存在する細胞を回収するために、洗浄液を同じペトリ皿内に移してもよい(Day2)。
【0131】
培養48時間後(30分×4回の消化の場合はDay3、一晩中消化された断片の場合はDay4)、デトリタス、死滅した細胞又は付着しなかった細胞をを含む培地を完全に除去し、プレートをPBSで洗浄し、新しい新鮮な培地F12Gを加える(
図4)。
【0132】
前記培地を換えるが、好ましくは2日毎に換える。
【0133】
顕微鏡下で細胞の成長を検査し、約70%のコンフルエンスに達した場合、又は存在するクローンが過度にコンフルエントになる場合、細胞の増幅を行う(
図5)。
【0134】
(非選択集団の増幅)
4.培地を除去し、細胞がプレーティングされるペトリ皿の表面をPBSで洗浄し、プラスチックから前記細胞を剥離することができる非酵素溶液(TrypLE Select、Life Technologies)を加える。前記非酵素溶液を、細胞懸濁液を得るために必要な時間(約3~10分間)、約37℃に制御された温度で細胞と共にインキュベートする。
5.PBSを加えることによって前記溶液を不活性化する。チューブ内の細胞を含む溶液を遠心分離する。
6.細胞を計数し、1:10の希釈率で、又は、好ましくは1200~1500個/cm2の濃度で、F12G培地内に再度プレーティングする。培地を換えるが、好ましくは2日毎に換える。
【0135】
顕微鏡下で細胞の成長を計数し、約70%のコンフルエンスに達した場合、さらなる細胞の増幅を行う(ステップ4~ステップ6参照)。5つの層(3180cm2)を有するセルスタックなど、大規模な増幅のために、3層(525cm2)を有するマルチフラスコ、5層(875cm2)を有するマルチフラスコを用いた。
【0136】
(陽性選択による注目する集団の単離)
前記非酵素的方法を用いて(「非選択集団の増幅」の項参照)、単離すべき集団を前記マルチフラスコ/セルスタックから剥離し、細胞を計数し、好ましくは冷たい単離緩衝液(WB)(好ましくは冷たい単離緩衝液(WB))中に再懸濁する。特定の場合においては、EDTA及びHSAを含有するPBSを用いる。細胞は、100μLあたり1×106個の濃度で再懸濁した。
【0137】
選択前に、一部の細胞(100,000個)を蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析のために用いる。細胞を、注目する集団を認識する抗体に結合する蛍光分子と同じ蛍光分子(この例ではAPC)に結合したイムノグロブリン(IgGアイソタイプ)で標識し、周囲温度で暗所内で15分間インキュベートするか、又は、APCで標識した抗ビオチン抗体(Miltenyi)で標識し、+4℃で暗所内で15分間インキュベートした。標識後、細胞をWBで洗浄し、FACSによって分析した(アイソタイプとして同定されるチューブ)。
【0138】
残りの細胞を選択のための抗体で標識した。細胞を撹拌しながら、+4℃で約20分間、1×106個の細胞につき2μgの濃度で、ビオチンで標識した抗ヒトCD117抗体(Biolegend)で標識した。
【0139】
標識後、細胞を冷たいWBで洗浄し、遠心分離した。上清を除去し、細胞を、160μLあたり1×106個の濃度で、WB中に再懸濁した。
【0140】
選択前に、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析のために一部の細胞(100,000個)を用いる。細胞を、APC標識抗ビオチン抗体(Miltenyi)(10μLの抗体)で標識し、+4℃で暗所で15分間インキュベートした。標識後、細胞をWBで洗浄し、FACSによって分析した(Markedとして同定されるチューブ)。
【0141】
残りの細胞を二次抗体で標識した。1×107個の細胞につき40μLの濃度で、CliniMACS抗ビオチン抗体(Miltenyi)と共にマイクロスフェアを用い、細胞を撹拌しながら約+4℃で15~20分間標識した。
【0142】
標識後、細胞を、冷たいWBで洗浄し、遠心分離した。上清を除去し、細胞を冷たいWB中に再懸濁した。細胞を、次に行う磁気分離のために、1.6×106個の細胞につき1mLの体積に再懸濁した。
【0143】
(磁気分離)
臨床用を意図した磁気選択用機器を用いて磁気分離を行う。Miltenyi社製CliniMACS Plusを用いた。陰性細胞の場合と同様に、関連プログラムを用いて、陽性細胞を使用し、当初の集団から分離し、関連バッグ内に回収した。
【0144】
選択後に一部の細胞(100,000個)を、その純度を確認するために蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析に用いる。細胞を、APCで標識した抗ビオチン抗体(Miltenyi)(10μLの抗体)で標識し、+4℃で暗所で15分間インキュベートした。標識後、細胞をWBで洗浄し、FACSによって分析した(
図16)。
【0145】
選択後、細胞は、それを基に当該細胞を選択したマーカー発現を喪失することなく凍結することが可能であり(
図15におけるCD90陽性を参照)、次いで、細胞治療又は細胞移植のための臨床的使用にすぐに用いることができる。
【0146】
実施例5:心臓細胞の2つの異なる採取源において選択可能な表面マーカーの同定
MATERIALS AND METHODS
選択前における、断片の消化ステップ、初代培養及び増殖は、実施例1の場合と同様である。
【0147】
本実施例においては、3つの異なる心耳試料及び3つの異なる中隔試料を用いた。
【0148】
第3継代の終わりに、3つの心耳を計数し、単一の試料に合体させ、V450チャネル内の全ての細胞を蛍光にする蛍光マーカーVioBlue450で標識した。同様にして、中隔に由来する3つの試料を計数し、単一の試料に合体させ、FITCチャネル内の全ての細胞を蛍光にする蛍光マーカーCFSEで標識した。
【0149】
用いられた標識に基づいて、フローサイトメーターを用いて、前記2つの細胞集団を同定し、続いて、前記2つの細胞集団を用いて表面抗原のパネルを評価した。
【0150】
心耳心臓組織及び中隔心臓組織の試料において評価された表面抗原を
図17に示す表に示す。
【0151】
市販のキット(LEGENDScreen(商標)Lyophilized Antibody Panel Human Cell Screening(PE) Kit (BioLegend))の製造業者の説明書に従って、前記標識を行った。
【0152】
適切なゲート戦略を用いて、
図17に示される全ての表面抗原について、前記2つの細胞集団を特性決定した。
【0153】
表2は、前記2つの異なる細胞集団によって発現された表面抗原と、前記2つの細胞採取源における各抗原の平均発現とを表す。用いられた前記2つの細胞源の少なくとも1つによって発現された全ての抗原を、陽性選択(実施例1参照)及び陰性選択(実施例2参照)のどちらにおける使用のためにも選択することができ、又は、適当ならば、2つ以上のマーカーの複合選択と組み合わせて(例えば実施例3に示されるように)用いるのに選択してもよい。
【0154】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【0155】
実施例6:従来技術の心臓細胞単離方法に対する比較研究
本発明に係る方法によって得られた細胞集団の細胞数、純度及び細胞生存度を、従来技術[4]と比較した。
【0156】
背景技術部において、[4]では、Facs Cell Sorter(例えば、機器FacsAria BDを用いて)を用いて選択を行う。しかし、この場合、選択のために用いられる抗原を高レベルで発現する細胞の集団(明るい集団)を選択することが可能であるだけであり、一方、低レベルでしか注目する抗原を発現しない陽性細胞(陽性Dim集団)を得ることはできない。
【0157】
本発明に係る方法によれば、発現レベルに関係なく、注目する抗原を発現する細胞の全てを選択することが可能である。
【0158】
図12は、中程度又は低い平均蛍光強度を特徴とする、注目する抗原(c-kit)を発現する集団をも選択することを可能とする本発明に係る単離方法の図を示す(パネルa)。パネルb)は、本発明に係る方法によって得られた細胞集団の細胞数、純度及び細胞生存度を従来技術[4]に対し比較した表を示す。
【0159】
(実施例7):本発明の方法により得られたヒト心臓前駆細胞CD90-
亜集団及びCD117+/CD90-亜集団の表現型及び機能性の特性決定
MATERIALS AND METHODS
(患者及び組織試料)
待機的心臓外科手術を受けている患者からヒト右心耳試料を得た。前もって地域の倫理委員会によって承認されたインフォームドコンセントを、ヘルシンキ宣言に従って各患者について得た。
【0160】
(フローサイトメトリー(FACS))
hCPC-CD90-細胞に対する多色フローサイトメトリーを用いて、間葉マーカー、造血マーカー及び炎症マーカーの免疫表現型分析を行った。非酵素溶液を用いた剥離の後、細胞を、0.1%のBSA(Gibco、米国)及び2mMのEDTA(Gibco、米国)を含むPBS中に再懸濁し、以下のモノクローナル抗体又は対応するアイソタイプ(CD29-PE、CD44-PE、CD73-PE、CD105-APC、CD14 FITC、CD34-FITC、CD45-PE、HLA-DR-FITC、CD146-FITC(BD Pharmingen、イタリア)、CD200-FITC、KDR-PE(R&D Systems、米国)及びCD144-Alexa700(16B1クローン;eBioscience))の適切な組み合わせと共に、15分間、暗所でインキュベートした。次いで、該試料を1mLのウオッシュバッファーで洗浄し、4℃で400×gで10分間遠心分離して、非結合抗体を除去した。細胞を250μLのウオッシュバッファー中に再懸濁し、前記フローサイトメーターで分析した。
【0161】
(内皮機能性アッセイ及び分化)
hCPC-ns細胞及びそこから誘導された異なる亜集団がインビトロで血管構造を形成する能力を評価するために、Cultrex(Trevigen、米国)の基底膜上に前記細胞を播種した。Cultrexを、37℃、5%CO2で30分間、48ウェルプレート上で重合させた。細胞を非酵素溶液を用いて剥離し、計数し、完全内皮成長培地-2(EGM-2、Lonza、イタリア)中で8×104個/mLに希釈し、cultrexマトリックスを含んでいる各ウェルに播種した。前記プレートを、37℃、5%CO2で4時間インキュベートした後、毛細管構造の数及びそれらの分岐点の数を計数した。これらの実験における陽性対照として、同じ培養条件下でHUVEC細胞(Lonza、イタリア)を用いた。EGM-2中において、3週間、hCPC-ns及びそこから誘導された異なる亜集団(hCPC-CD117+、hCPC-CD90-)を培養することにより、内皮へのコミットメントを分析した後、フローサイトメトリーによって免疫表現型を決定した。
【0162】
(培地中におけるサイトカイン分泌)
培地中でのサイトカインの発現を決定するために、hCPC-ns細胞及びそこから誘導される異なる亜集団(hCPC-CD117+、hCPC-CD90+、hCPC-CD90-)の馴化培地を回収して、48時間以内に前記培地中に放出された可溶性因子の量を測定した。続いて、マイクロスフェアに基づいた多重イムノアッセイ(Bio-Plexアッセイ、Bio-Rad Laboratories)を用いて、培地中に放出されたサイトカイン、ケモカイン及び成長因子を比較した。培地を、10分間、4000gで遠心分離した。上清を回収し、使用まで80℃で凍結した。Luminex technology(Bio-Plex、Bio-Rad)を使用説明書に従って用いて、以下の血管新生因子(間質細胞由来因子(SDF-1)、GRO(成長調節癌遺伝子)-α(GRO-α)、幹細胞因子(SCF)、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン-6(IL-6)、IL-8、IL-10、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP-1b)、Regulated on Activation Normal T Cell Expressed and Secreted(RANTES)、血管内皮成長因子(VEGF)及び肝細胞成長因子(HGF))の存在について、前記試料を二連で評価した。
【0163】
(トロポニンIの心臓レベル(cTnI)の分析)
iPSから誘導される心筋細胞(CM-d-hiPSCs)内のcTnIの濃度を決定するため、transwell(登録商標)(0.4μm孔)内における共培養をCM-d-hiPSCs細胞とhCPC-ns細胞(並びにそれらから誘導された異なる亜集団である、hCPC-CD117+、hCPC-CD90+、hCPC-CD90-)との間で行った。共培養の開始から7日後、馴化培地を回収し、心筋トロポニンELISAアッセイのために用いた。前記馴化培地を、4000gで10分間遠心分離し、化学発光ELISAキット(Calbiotech)を、キットに含まれる説明書に従って使用して、上清をcTnI濃度の決定のために用いた。
【0164】
(TNF-αの分析)
iPSから誘導される心筋細胞(CM-d-hiPSCs)内のTNF-α濃度を決定するため、transwell(登録商標)(0.4μm孔)内で、
CM-d-hiPSCs細胞とhCPC-ns細胞(並びにそこから誘導された異なる亜集団である、hCPC-CD117+、hCPC-CD90+、hCPC-CD90-)との間で共培養を行った。共培養の開始から3日後及び7日後、馴化培地を回収し、遠心分離(10分、4000g)の後、キット内に含まれる説明書に従ってELISA(Invitrogen)アッセイに用いた。ELISAアッセイに用いられる同じ馴化培地における各試料のタンパク質濃度に対してTNF含有量を標準化するために、540nmにおける吸光度を測定するBCA(Pierce)を用いてタンパク質定量を行った。
【0165】
(Sircolアッセイ)
TGF-β1で5日間処置されたhCPC-ns及びそこから誘導される異なる亜集団であるhCPC-CD117+、hCPC-CD90+、hCPC-CD90-、の細胞溶解物及び上清中の総可溶性コラーゲンの含有量を、製造業者のプロトコルの記載に従って、sircolアッセイ(Biocolor)を用いて測定した。標準曲線によりコラーゲンの量を算出した。
【0166】
(統計分析)
定量的結果は、平均±標準偏差(SD)又は標準誤差(SE)として表される。スチューデントt検定によって変数を分析した。GraphPad Prism5によって統計的有意性を評価し、P値≦0.05を統計的有意と考えた。
【0167】
結果
最近、細胞治療において用いられる幹細胞及び/又は前駆細胞が、心臓保護作用及び抗アポトーシス作用を発揮し、血管形成を増加させ、炎症プロセスを調節する可溶性因子の産生を通じて、損傷を受けた心筋に対して良い効果を及ぼすという概念が明らかになってきた。ゆえに、これらのプロセスを効率的に調節することが可能な細胞集団を見出すことが重要である。
【0168】
(hCPC-CD90-細胞の免疫表現型の特性決定)
以前の報告[4]と合致するように、hCPC-CD90-細胞の亜集団は、典型的な間葉マーカー(例えば、CD29、CD44、CD73及びCD200)を発現するが造血マーカー(例えば、CD14及びCD34)や免疫系マーカー(HLA-DR)を発現しない間葉系細胞の表現型特性を同様に維持する。表3は、フローサイトメトリーにおけるhCPC-CD90-の特性決定を示し、間葉マーカー(CD29、CD44、CD73、CD105及びCD200)、免疫系マーカー(HLA-DR)及び造血マーカー(CD34、CD45及びCD14)の発現を示す。データは、平均±SE(n=9)として表される。
【0169】
【0170】
(hCPC-CD90
-細胞の内皮分化)
機能的アッセイ及びフローサイトメトリーによってhCPC-CD90
-細胞の分化を評価した。増殖後、cultrex合成マトリックス上で管構造を形成する能力について細胞を試験したが、他の分析された集団((hCPC-CD117
+、hCPC-CD90
+、hCPC-CD90
-)に対して4時間後における新しい管構造分岐の数の有意な増加を示した(
図18)。
【0171】
さらに、hCPC-CD90
-細胞を、3週間、血管新生促進培地EGM-2中で成長させ、成熟内皮細胞に分化するそれらの能力を確立させた。結果として、考察された他のhCPC集団(hCPC-ns及びhCPC-CD117
+)と比較しての内皮マーカーCD144/Ve-カドヘリン及びKDR/VEGFR2の発現の増加によって示されるように、hCPC-CD90
-はより内皮細胞に分化しやすいことが示され、hCPC-CD117
+細胞との比較においては統計的有意性に達している(
図19)。
【0172】
hCPC-CD90-細胞によるサイトカイン、ケモカイン及び成長因子分泌の分析
異なるhCPC亜集団の血管新生促進能を、hCPC-ns、hCPC-CD117+、hCPC-CD90+及びhCPC-CD90-の上清中におけるサイトカイン含有量を比較することによって、多重分析の使用により試験した。表4に示されるように、hCPC及びそれらから誘導された亜集団の上清中に、多くの血管形成サイトカイン(SDF-1、Gro-α、SCF、LIF、IL-6、IL-8、IL-10、MCP-1、MIP-1b、RANTES、HGF及びVEGF)が見出された。
【0173】
【0174】
前記表は、48時間で細胞によって放出された各サイトカインの発現(pg/mL/105)と、3つの細胞型によって産生された因子のスチューデントt検定による統計的比較の結果とを示す。*=hCPC-nsに対する比較におけるt検定によるpがp<0.05。データは、平均±SE(n=3)として表される。
【0175】
特に、血管新生促進サイトカイン(Gro-α及びIL-8)及び炎症誘発性サイトカイン(IL-6、MCP-1及びMIP-1b)のレベルが、hCPC-CD90
-の上清中では、同じ患者の非選択集団(hCPC-ns)と比較して著しく向上したことを我々は見出したが、このことは、選択された前記集団が、同じ試料の非選択の集団と比較して因子を産生する能力がより大きいことを示唆している。さらに、hCPC-CD117
+、hCPC-CD90
+及びhCPC-CD90
-亜集団中における分泌因子強化を、同じ患者に由来する非選択の対応物にと比較して分析する(
図20)。その結果、hCPC-CD117
+亜集団と比較してhCPC-CD90
-においては考察されたほとんど全ての因子についてより大きい発現が見られ、IL-6及びIL-8については統計的有意性に達している。
【0176】
(hCPC-CD90-は、Duchenne型筋ジストロフィー及びBecker型筋ジストロフィーの主要な病態生理学的特性からの復帰を媒介する。)
ジストロフィー患者(DMD)(Duchenne型ジストロフィー及びBecker型ジストロフィー)のiPS由来心筋細胞は、他の心筋疾患について記載されている[6]のと同様に心筋細胞死の増加及び腫瘍壊死因子(TNF)-αなどの炎症誘発性サイトカイン放出を含む、筋ジストロフィーにおいて典型的な一連の表現型欠陥を示す。複数のDMD病態生理学的経路と拮抗する細胞集団を発見することは、細胞治療における開発の可能性の観点において重要である。このために、ジストロフィー患者のiPS由来心筋細胞の存在下で、hCPCのいくつかの集団を培養した。共培養の開始から3日後及び7日後に上清を回収し、該上清を用いてジストロフィー障害において生じる心臓損傷の指標(培地中への心筋トロポニンI及びTNF-αの放出)を評価した。
【0177】
(hCPC-CD90
-亜集団の心臓保護効果)
異なるhCPC集団の心臓保護効果を評価するために、Duchenne型患者及びBecker型患者に由来するCM-d-hiPSCの存在下で、それらを共培養した。結果として、分析されたものの中では、hCPC-CD90
-の亜集団が、培養の7日後における(培養におけるcTnIの放出で測定された)Duchenne型患者及びBecker型患者のCM-d-hiPSCの死滅を有意に減少させることが可能な唯一のものであることが示された(
図21)。
【0178】
(hCPC-CD90
-及びhCPC CD117
+/CD90
-亜集団の抗炎症効果)
異なるhCPC集団の抗炎症効果を評価するために、Duchenne型患者及びBecker型患者のCM-d-hiPSCの存在下で、細胞を共培養した。結果として、分析されたものの中では、hCPC-CD90
-亜集団が、培養の3日後にDuchenne型患者のCM-d-hiPSCにおいて生じる損傷を有意に軽減すること(培地中におけるTNF-αの放出の減少によって示される)が可能な唯一のものであることが示された。表現型が損傷を受ける程度がより低いBecker型患者のCM-d-hiPSCに関して、それらは、考察された種々の亜集団(hCPC-CD117
+、hCPC-CD90
-及びhCPC-CD117
+/CD90
-)に対してポジティブに応答し、培地中におけるTNF-α放出の有意な減少を示した。これらの条件において、より著しい効果を誘発すると見受けられる細胞集団は、hCPC-CD117
+/CD90
-亜集団であり、続いてhCPC CD90
-亜集団である(
図22)。
【0179】
(TGF-β1によるhCPC処置のインビトロにおける効果)
間葉由来の前駆細胞を用いた細胞治療の枠組においては、これらの細胞が、コラーゲンを産生する筋線維芽細胞に分化する能力に目を向けることが必要である。なぜなら、この望ましくない現象が、損傷を受けた心筋の回復を損なう可能性があるからである。
【0180】
実際、コラーゲン沈着は創傷治癒の本質的かつ通常は可逆的な部分であるが、生理学的組織修復は、線維性結合組織(例えば、コラーゲン及びフィブロネクチン)の蓄積が生じる場合、進行性で不可逆性の線維性応答に展開する可能性があり、永久的な瘢痕、心不全、及び(心不全における場合のように)最終的には死につながる。
【0181】
この状況において、線維化促進状況(TGF-β1発現の増加を伴う)でもコラーゲンの沈着に関与しない細胞を有することが重要である。このため、hCPCの種々の集団において培地中における可溶性コラーゲンの産生を誘発するTGF-β1処置(5日間)の効果を分析した。
【0182】
Sircolアッセイによるこれらの細胞及び培地におけるコラーゲンの定量の結果から、hCPC-CD90
-亜集団は、考察された他の集団(hCPC-ns、hCPC-CD117
+及びhCPC-CD90
+)と比較して、コラーゲンを産生する能力が最も低いことが示された(
図23)。
【0183】
参考文献
[1]Bolli R,Chugh AR,D’Amario D,Loughran JH,Stoddard MF,Ikram S,Beache GM,Wagner SG,Leri A,Hosoda T,Sanada F,Elmore JB,Goichberg P,Cappetta D,Solankhi NK,Fahsah I,Rokosh DG,Slaughter MS,Kajstura J,Anversa P,Lancet.Novembre 2011.26;378(9806):1847-57.
[2] Makkar RR,Smith RR,Cheng K,Malliaras K,Thomson LE,Berman D,Czer LS, Marban L,Mendizabal A,Johnston PV,Russell SD,Schuleri KH,Lardo AC,Gerstenblith G,Marban E.Lancet.Marzo 2012.10;379(9819):895-904.
[3]Williams AR,Hatzistergos KE,Addicott B,McCall F,Carvalho D,Suncion V,Morales AR,Da Silva J,Sussman MA,Heldman AW,Hare JM.Circulation.Gennaio 2013.15;127(2):213-23.
[4]Gambini E,Pompilio G,Biondi A,Alamanni F,Capogrossi MC,Agrifoglio M,Pesce M.Cardiovasc Res.Febbraio 2011.Vol.89(2):362-73.
[5] Gambini E.Pompilio G,Alamanni F,Capogrossi MC,Agrifoglio M,Persico L.,Gambini A:,Pesce M.Translational Res.November 2012.Vol.160(5):363-373.
[6]Diwan A.,Tran T,Misra A MD.Curr Mol Med 2003;3:161-182.
本開示に係る態様には、以下の態様も含まれる。
<1>
以下のステップを含む、ヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法:
a)心臓細胞の集団を含む心臓組織試料をミンチすること、
b)細胞懸濁液が得られるまで、酵素混合物を用いて前記心臓組織を4回、漸進的に消化し、そして30μm~100μmの範囲内の大きさのフィルタにより濾過すること、
c)細胞懸濁液が得られるまで、酵素混合物を用いて、ステップb)で得られた残りの心臓組織を16時間さらに消化し、そして30μm~100μmの範囲内の大きさのフィルタにより濾過すること、
d)心臓細胞を増殖させるのに適切な培地中で、ステップb)及びステップc)で得られた細胞懸濁液を培養すること、
e)心臓細胞を増殖させるのに適切な培地中において、ステップd)で得られた細胞懸濁液を酵素溶液又は非酵素溶液の存在下で予備的に増殖させること、
f)心臓細胞をさらに増殖させるのに適切な培地中において、ステップe)で得られた心臓細胞を酵素溶液又は非酵素溶液の存在下で二次的に増殖させること、
g)心臓前駆細胞の開始集団内で発現した1又は複数の表面抗原に対するモノクローナル抗体を使用して、陽性選択及び/又は陰性選択によって、心臓細胞の1又は複数の亜集団を単離すること。
<2>
ステップa)の前記心臓組織試料が、右心耳生検、左心耳生検、中隔生検、心尖生検、及び心室生検からなる群から選択される、<1>に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<3>
ステップa)を前記ミンチすることが手動又は自動で行われる、<1>~<2>のいずれか1つに記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<4>
ステップb)及びステップc)の酵素混合物が基礎培地及び酵素溶液を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<5>
前記酵素溶液がコラゲナーゼ及び/又はプロテアーゼの混合物を含む、<4>に記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<6>
前記コラゲナーゼ及び/又はプロテアーゼ混合物が、コラゲナーゼI、コラゲナーゼII、コラゲナーゼIV、トリプシン、EDTA、アクターゼ(accutase)、コラゲナーゼA、ディスパーゼ(dispase)及びリベラーゼ(liberase)からなる群から選択される1又は複数の酵素を含む、<4>~<5>のいずれか1つに記載のヒト心臓前駆細胞亜集団の単離のために方法。
<7>
前記基礎培地がHam’s/F12である、<4>~<6>のいずれか1つに記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<8>
前記コラゲナーゼ混合物が0.1~3mg/mLの範囲内の濃度で存在する、<4>~<7>のいずれか1つに記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<9>
ステップd)、ステップe)及びステップf)の前記心臓細胞を増殖させ、かつ拡大するのに適切な培地が、10%のウシ胎児血清、2mMのL-グルタチオン、5×10
-3
U/mLのヒトエリスロポイエチン、10ng/mLの塩基性線維芽細胞成長因子及び抗生物質が補充されたHam’s/F12培地である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<10>
細胞増殖のためのステップe)及びステップf)の酵素溶液又は非酵素溶液が、Tryple(登録商標)Select、トリプシン及び/又はEDTAの混合物、細胞解離緩衝液、セルストリッパ、アクターゼ及びディスパーゼからなる群から選択される、<1>~<9>のいずれか1つに記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<11>
ステップg)のモノクローナル抗体が、ビオチン又は蛍光分子(好ましくはFITC若しくはAPCから選択される蛍光分子)で標識されている、<1>~<10>のいずれか1つに記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<12>
ステップg)の抗体が、
【表5】
からなる群から選択される1又は複数の抗原に対するモノクローナル抗体である、<1>~<11>のいずれか1つに記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<13>
ステップg)の選択が免疫磁気分離によって行われる、<1>~<12>のいずれか1つに記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<14>
ステップg)のモノクローナル抗体が、抗CD117及び/又は抗CD90である、<11>~<13>のいずれか1つに記載のヒト心臓前駆細胞亜集団を単離する方法。
<15>
CD90
-
及びCD117
++
/CD90
-
から選択される表面マーカープロファイルを特徴とする、<14>に記載の単離方法によって得られるヒト心臓前駆細胞の亜集団。
<16>
単独で、又は、ヒト心臓前駆細胞の別の亜集団と組み合わせて、医療分野において使用するための<15>に記載のヒト心臓前駆細胞の亜集団。
<17>
心臓血管細胞治療、又は心臓細胞移植及び/又は心臓組織移植の分野における使用のための、<16>に記載のヒト心臓前駆細胞の亜集団。