(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ガスバリア積層体、並びにこれを含む包装材及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20240827BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240827BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240827BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B32B27/30 102
B65D65/40 D
B65D81/24 F
(21)【出願番号】P 2019226624
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 茂実
(72)【発明者】
【氏名】小島 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】石井 里佳
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103382677(CN,A)
【文献】特開2004-204366(JP,A)
【文献】特開2005-313504(JP,A)
【文献】特表2005-537147(JP,A)
【文献】特開2005-138289(JP,A)
【文献】特開2006-082239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
B65D 81/18 - 81/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、ガスバリア性被覆層とを備える積層構造を有し、
前記ガスバリア性被覆層が、
(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、
(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子と、
を含み、
前記ガスバリア性被覆層の質量を100質量部としたとき、前記ガスバリア性被覆層における前記シリカ粒子の含有量が
5~30質量部であり、
前記紙基材の表面上に前記ガスバリア性被覆層が直接形成されている、ガスバリア積層体(ただし、前記シリカ粒子の前記含有量が30質量部である前記ガスバリア性被覆層を備えるガスバリア積層体を除く。)。
【請求項2】
前記水溶性高分子がポリビニルアルコールである、請求項1に記載のガスバリア積層体。
【請求項3】
紙基材と、ガスバリア性被覆層とを備える積層構造を有し、
前記ガスバリア性被覆層が、
(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、
(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子と、
を含み、
前記ガスバリア性被覆層の質量を100質量部としたとき、前記ガスバリア性被覆層における前記シリカ粒子の含有量が1~30質量部であり、
前記紙基材の表面上に前記ガスバリア性被覆層が直接形成されており、
前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであり、
前記ポリビニルアルコールの鹸化度が90以上である
、ガスバリア積層体
(ただし、前記シリカ粒子の前記含有量が30質量部である前記ガスバリア性被覆層を備えるガスバリア積層体を除く。)。
【請求項4】
紙基材と、ガスバリア性被覆層とを備える積層構造を有し、
前記ガスバリア性被覆層が、
(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、
(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子と、
を含み、
前記ガスバリア性被覆層の質量を100質量部としたとき、前記ガスバリア性被覆層における前記シリカ粒子の含有量が1~30質量部であり、
前記紙基材の表面上に前記ガスバリア性被覆層が直接形成されており、
前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであり、
前記ポリビニルアルコールの重合度が500以上である
、ガスバリア積層体
(ただし、前記シリカ粒子の前記含有量が30質量部である前記ガスバリア性被覆層を備えるガスバリア積層体を除く。)。
【請求項5】
紙基材と、ガスバリア性被覆層とを備える積層構造を有し、
前記ガスバリア性被覆層が、
(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、
(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子と、
を含み、
前記ガスバリア性被覆層の質量を100質量部としたとき、前記ガスバリア性被覆層における前記シリカ粒子の含有量が1~30質量部であり、
前記紙基材の表面上に前記ガスバリア性被覆層が直接形成されており、
前記シリカ粒子表面のシラノール基の量が10~70μmol/m
2である
、ガスバリア積層体
(ただし、前記シリカ粒子の前記含有量が30質量部である前記ガスバリア性被覆層を備えるガスバリア積層体を除く。)。
【請求項6】
紙基材と、ガスバリア性被覆層とを備える積層構造を有し、
前記ガスバリア性被覆層が、
(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、
(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子と、
を含み、
前記ガスバリア性被覆層の質量を100質量部としたとき、前記ガスバリア性被覆層における前記シリカ粒子の含有量が1~30質量部であり、
前記紙基材の表面上に前記ガスバリア性被覆層が直接形成されており、
前記シリカ粒子が鱗片状である
、ガスバリア積層体
(ただし、前記シリカ粒子の前記含有量が30質量部である前記ガスバリア性被覆層を備えるガスバリア積層体を除く。)。
【請求項7】
紙基材と、ガスバリア性被覆層とを備える積層構造を有し、
前記ガスバリア性被覆層が、
(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、
(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子と、
を含み、
前記ガスバリア性被覆層の質量を100質量部としたとき、前記ガスバリア性被覆層における前記シリカ粒子の含有量が1~30質量部であり、
前記紙基材の表面上に前記ガスバリア性被覆層が直接形成されており、
前記ガスバリア性被覆層が、(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物を更に含む
、ガスバリア積層体
(ただし、前記シリカ粒子の前記含有量が30質量部である前記ガスバリア性被覆層を備えるガスバリア積層体を除く。)。
【請求項8】
紙基材と、ガスバリア性被覆層とを備える積層構造を有し、
前記ガスバリア性被覆層が、
(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、
(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子と、
を含み、
前記ガスバリア性被覆層の質量を100質量部としたとき、前記ガスバリア性被覆層における前記シリカ粒子の含有量が1~30質量部であり、
前記紙基材の表面上に前記ガスバリア性被覆層が直接形成されており、
前記ガスバリア性被覆層が、(D)シラン化合物を更に含む
、ガスバリア積層体
(ただし、前記シリカ粒子の前記含有量が30質量部である前記ガスバリア性被覆層を備えるガスバリア積層体を除く。)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のガスバリア積層体を含む包装材。
【請求項10】
請求項9に記載の包装材と、前記包装材に収容された内容物とを備える包装体。
【請求項11】
ガスバリア積層体を含む包装材と、前記包装材に収容された内容物とを備える包装体であって、
前記ガスバリア積層体が、紙基材と、ガスバリア性被覆層とを備える積層構造を有し、
前記ガスバリア性被覆層が、
(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、
(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子と、
を含み、
前記ガスバリア性被覆層の質量を100質量部としたとき、前記ガスバリア性被覆層における前記シリカ粒子の含有量が1~30質量部であり、
前記紙基材の表面上に前記ガスバリア性被覆層が直接形成されており、
前記包装材が折り目を有する
、包装体
(ただし、前記ガスバリア性被覆層の前記シリカ粒子の前記含有量が30質量部であるガスバリア積層体を備える包装体を除く。)。
【請求項12】
ガスバリア積層体を含む包装材と、前記包装材に収容された内容物とを備える包装体であって、
前記ガスバリア積層体が、紙基材と、ガスバリア性被覆層とを備える積層構造を有し、
前記ガスバリア性被覆層が、
(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、
(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子と、
を含み、
前記ガスバリア性被覆層の質量を100質量部としたとき、前記ガスバリア性被覆層における前記シリカ粒子の含有量が1~30質量部であり、
前記紙基材の表面上に前記ガスバリア性被覆層が直接形成されており、
前記内容物が要冷蔵又は要冷凍である
、包装体
(ただし、前記ガスバリア性被覆層の前記シリカ粒子の前記含有量が30質量部であるガスバリア積層体を備える包装体を除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスバリア積層体、並びにこれを含む包装材及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料、医薬品及び化学品等の多くの分野では、それぞれの内容物に応じた包装材が使用されている。包装材は、内容物の変質の原因となる酸素及び水蒸気等の透過防止性(ガスバリア性)が求められる。特許文献1は、特定の処理が施された熱可塑性樹脂基材フィルムの少なくとも片面上に、ガスバリア性コート層を積層してなるガスバリア性フィルムを開示している。このガスバリア性コート層は、特定の鱗片状シリカとポリビニルアルコール系樹脂とからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、海洋プラスチックごみ問題等に端を発する環境意識の高まりから、脱プラスチックの機運が高まっている。プラスチック材料の使用量削減の観点から、種々の分野において、プラスチック材料の代わりに、紙を使用することが検討されている。包装材を構成する材料の一部をプラスチックフィルムから紙に変更すれば、包装材の分野において、プラスチック材料の使用量を削減することができる。
【0005】
紙は折り目保持性(デッドホールド性とも称される。)を有することから、加工がしやすいという特長を有する。従来、紙にガスバリア性を付与する検討もなされている。例えば、特開2004-204366号公報(以下、特許文献2という。)は、紙又は板紙のコート面に、蒸着アンカー層、蒸着薄膜層、オーバーコート層が順に設けられている防湿紙を開示している。特許文献2は、オーバーコート層の一態様として、ポリビニルアルコールと無機層状化合物(例えば、モンモリロナイト、ヘクライト、サポナイト)の混合物からなる層を開示している(特許文献2の段落[0039]参照)。特許文献2の段落[0027]の記載によれば、この防湿紙はコピー用紙の梱包紙又はたばこの紙製包装袋(ソフトタイプ)もしくは紙製箱(ボックスタイプ)として好適に使用できる。
【0006】
しかし、本発明者らの検討によると、より鋭角な折り目がある包装(例えば、ピロー包装、三方シール包装及びガゼット包装)に特許文献2に記載の防湿紙を適用した場合、蒸着薄膜層及びオーバーコート層にクラックが生じてガスバリア性が低下する点において改善の余地がある。これに加え、紙は水分を吸収すると伸びる性質があるため、この伸びにオーバーコート層が十分に追従できず、ガスバリア性が低下し得る。
【0007】
本開示は、紙の特長である折り目保持性を有し且つ折り曲げられたり紙基材が吸湿した後においても十分なガスバリア性を有するとともに、プラスチック材料の使用量削減に寄与するガスバリア積層体、並びにこれを含む包装材及び包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係るガスバリア積層体は、紙基材と、ガスバリア性被覆層とを備える積層構造を有し、ガスバリア性被覆層が、(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子とを含む。上記ガスバリア性被覆層は、(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子とを含む水溶液若しくは水/アルコール混合溶液の塗膜を加熱乾燥することによって形成され、これらの成分の水素結合によりバリア性が発現する。
【0009】
本発明者らの検討によると、ガスバリア性被覆層に(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子と、(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子が共存することで、ガスバリア積層体が折り曲げられた後においても、ガスバリア性被覆層のガスバリア性が著しく低下することはない。このため、ガスバリア積層体のガスバリア性が十分に維持される。これは、ガスバリア性被覆層において、ヒドロキシ基とシラノール基の水素結合により、水溶性高分子とシリカ粒子が互いに比較的強固に密着しており、ガスバリア積層体が折り曲げられてもガスバリア性被覆層にクラックが生じにくく、仮にクラックが生じてもこれが広がりにくいためと推察される。これに加え、紙基材が水分を吸収して伸びることによってガスバリア性被覆層に張力が加わっても、上記作用により、ガスバリア性被覆層の性能が十分に維持されると推察される。なお、本発明者らの検討によると、ガスバリア性被覆層が上記水溶性高分子及び上記シリカ粒子の両方を含有することで、ガスバリア性被覆層がシリカ粒子を含有しない場合と比較して耐水性も向上する。
【0010】
本発明者らが評価を行った実施例によると、ガスバリア性被覆層が折り曲げられた後においても十分な水蒸気バリア性を維持する観点から、上記水溶性高分子はポリビニルアルコールであることが好ましい。同様の観点から、ポリビニルアルコールは、鹸化度が90以上であることが好ましく、重合度が500以上であることが好ましい。
【0011】
シリカ粒子は、水溶性高分子のヒドロキシ基を介して十分に強固に密着し得るシラノール基を表面に有していればよい。シリカ粒子表面のシラノール基の量は、例えば、10~70μmol/m2である。ガスバリア性被覆層が折り曲げられた後においても十分な水蒸気バリア性を維持する観点から、シリカ粒子は鱗片状であることが好ましい。
【0012】
ガスバリア性被覆層は、(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物を含んでもよい。(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物はシラノール基を有する。このシラノール基は、(A)水溶性高分子のヒドロキシ基と水素結合をすると推察される。また、当該シラノール基同士又は当該シラノール基と(B)シリカ粒子のシラノール基が縮合すると推察される。ガスバリア性被覆層は、(D)シラン化合物(例えば、シランカップリング剤)を更に含んでもよい。また、包装材の用途又は求められるガスバリア性能に応じて、ガスバリア積層体は、紙基材とガスバリア性被覆層との間に、ガスバリア性を有する蒸着層を更に備えてもよい。紙基材は、ガスバリア性被覆層が形成される側の表面にプライマー層を有することが好ましい。プライマー層は、紙の凸凹を埋める目止めの役割も果たす。これに加え、ガスバリア積層体が蒸着層を含む場合、蒸着層が形成される面をプライマー層によって平滑にすることで蒸着層を欠陥なく均一に製膜することが可能となる。
【0013】
本開示の一側面に係る包装材は上記ガスバリア積層体を含む。この包装材は、紙の特長である折り目保持性を有し且つ折り曲げられたり紙基材が吸湿した後においても十分なガスバリア性を有する。
【0014】
本開示に一側面に係る包装体は、上記包装材と、上記包装材に収容された内容物とを備える。この包装体は、包装材が折り目を有するものであってもよい。上述のとおり、上記包装材は、紙の特長である折り目保持性を有し且つ折り曲げられた後においても十分なガスバリア性を有する。この包装体は、内容物が要冷蔵又は要冷凍のものであってもよい。上記包装材は、低温の内容物によって包装体の表面に結露が生じて紙基材が吸湿した後においても、上述のとおり、十分なガスバリア性を有する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、紙の特長である折り目保持性を有し且つ折り曲げられたり紙基材が吸湿した後においても十分なガスバリア性を有するとともに、プラスチック材料の使用量削減に寄与するガスバリア積層体、並びにこれを含む包装材及び包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本開示に係るガスバリア積層体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は本開示に係る包装材の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は本開示に係る包装体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は本開示に係るガスバリア積層体の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<ガスバリア積層体>
図1に示すように、本実施形態に係るガスバリア積層体10は、紙基材1と、プライマー層2と、蒸着層3と、ガスバリア性被覆層5とをこの順序で備える積層構造を有する。
【0019】
(紙基材)
紙基材1としては特に限定されるものではなく、ガスバリア積層体10が適用される包装材の用途に応じて適宜選択すればよい。紙基材1の具体例として、上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙及びクラフト紙が挙げられる。紙基材1の厚さ(単位面積あたりの質量)は、例えば、20~500g/m2又は25~400g/m2の範囲であればよい。
【0020】
(プライマー層)
プライマー層2は、紙基材1の表面上に設けられ、紙基材1と蒸着層3との間の密着性能向上を目的としたものである。これに加え、プライマー層2は、蒸着層3が形成される面を平滑にすることで蒸着層3を欠陥なく均一に製膜することに加え、紙の凸凹を埋める目止めの役割も果たす。
【0021】
プライマー層2を構成する材料としては、シランカップリング剤、有機チタネート、ポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン及びフェノールが挙げられる。
【0022】
上記ウレタン結合及びウレア結合は予め重合段階で導入したポリマーを使用しても、アクリル及びメタクリル系ポリオールなどのポリオールとイソシアネート基を持つイソシアネート化合物、あるいは、アミノ基を持つアミン樹脂とエポキシ基及びグリシジル基を持つエポキシ化合物などを反応させてウレタン結合を形成させたものや、イソシアネート化合物と水又は酢酸エチル等の溶剤、又はアミノ基を持つアミン樹脂との反応によりウレア結合をさせたものを使用してもよい。これらのうち、プライマー層2を構成する非水性樹脂としてはアクリルポリオールとポリエステルポリオール及びイソシアネート化合物、シランカップリング剤等との複合物がより好ましい。
【0023】
アクリルポリオールとは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物もしくは、アクリル酸誘導体モノマー及びその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物のうち、末端にヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。またポリエステルポリオールとは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの反応性誘導体等の酸原料と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のアルコール原料から周知の製造方法で得られたポリエステル系樹脂の内末端に二個以上のヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。
【0024】
イソシアネート化合物は、アクリルポリオール及びポリエステルポリオールと反応してできるウレタン結合により基材や無機酸化物との密着性を高めるために添加されるもので主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。これを達成するためにイソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)やヘキサレンジイソシアネート(HMDI)などのモノマー類と、これらの重合体、誘導体が用いられ、これらが単独かまたは混合物等として用いられる。
【0025】
シランカップリング剤としては、任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を用いることができ、例えばエチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤あるいはその加水分解物の一種ないしは二種以上を用いることができる。
【0026】
プライマー層2は紙基材1の表面上にコーティング液を塗布する工程を経て形成される。塗布方法としては、通常用いられるキャスト法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等の従来公知の方法を用いることが可能である。コーティング液の塗布によって形成された塗膜を加熱乾燥させることでプライマー層2が形成される。プライマー層2の厚さは、例えば、0.01μm~10μm程度である。
【0027】
(蒸着層)
蒸着層3は金属又は無機化合物を蒸着した層である。酸素ガスバリア性の高い材料として酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素素(SiOx)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化マグネシウム(MgO)又はインジウム-スズ酸化物(ITO)などを用いることができる。材料コスト、バリア性能及び透明性の点から、蒸着層3を構成する材料は酸化アルミニウム又は酸化ケイ素が好ましい。蒸着層3はアルミニウムを蒸着して形成されたものであってもよい。
【0028】
蒸着層3の厚さは使用用途によって適宜設定すればよいが、好ましくは10~300nmであり、より好ましくは20~200nmである。蒸着層3の厚さを10nm以上とすることで蒸着層3の連続性を十分なものとしやすく、他方、300nm以下とすることでカールやクラックの発生を十分に抑制でき、十分なバリア性能及び可撓性を達成しやすい。
【0029】
蒸着層3は、真空成膜手段によって成膜できる。酸素ガスバリア性能や膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。また真空蒸着法の中でも、特に電子ビーム加熱による成膜手段は、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで制御し易いことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることから有効である。
【0030】
(ガスバリア性被覆層)
ガスバリア性被覆層5は、蒸着層3を保護するとともに、水蒸気バリア性の向上に寄与し、これにより蒸着層3との相乗効果による高いガスバリア性を発現させるためのものである。ガスバリア性被覆層5は、蒸着層3の表面上に、以下の(A)と、(B)と、必要に応じて(C)とを含む塗膜を形成する工程を経て形成される。
【0031】
(A)ヒドロキシ基を有する水溶性高分子(以下、場合により「(A)成分」という。)
(B)シラノール基を表面に有するシリカ粒子(以下、場合により「(B)成分」という。)
(C)ケイ素アルコキシド及びその加水分解物の少なくとも一方(以下、場合により「(C)成分」という。)
【0032】
ガスバリア性被覆層5に(A)成分と、(B)成分が共存することで、ガスバリア積層体10が折り曲げられた後においても、ガスバリア性被覆層5のガスバリア性が著しく低下することはない。このため、ガスバリア積層体10のガスバリア性が十分に維持される。ガスバリア性被覆層5が更に(C)成分を含むことで、(C)成分は加水分解及び脱水縮合(例えば、ゾルゲル法)によって有機-無機複合体となる。すなわち、(C)成分は、加水分解・重縮合反応によってSi-O結合を形成するとともに、ケイ素アルコキシドの加水分解物のシラノール基が(A)成分のヒドロキシ基と水素結合する。これに加え、(C)成分のシラノール基同士又は当該シラノール基と(C)成分のシラノール基が縮合する。これらの反応により、ガスバリア性被覆層5に優れた耐水性及び張力に対する優れた耐性が発現すると推察される。
【0033】
(A)水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。これらのなかでもポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)は、ガスバリア性被覆層5のガスバリア性を優れたものとできるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものであり、例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分鹸化PVAから、酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等を用いることができる。本発明者らの検討によると、ガスバリア性被覆層5が折り曲げられた後においても十分な水蒸気バリア性を維持する観点から、PVAの鹸化度は90以上であることが好ましく、重合度は500以上であることが好ましい。
【0034】
(B)シリカ粒子は、迷路効果によってガスバリア性被覆層5のガスバリア性(特に水蒸気バリア性)を向上させるためのものである。シリカ粒子の表面におけるシラノール基の量は、10~70μmol/m2であり、15~60μmol/m2又は20~45μmol/m2であってもよい。シリカ粒子表面のシラノール基の量が10μmol/m2以上であることで、(A)水溶性高分子に対するシリカ粒子の優れた密着性を達成できる。なお、シラノール基の量の上限値(70μmol/m2)は入手のしやすさの観点から特定したものである。シリカ粒子のSiO2純度は、例えば、95質量%以上であればよく、98質量%以上であることが好ましい。
【0035】
(B)シリカ粒子の平均粒径は0.1~10μmであり、0.1~8μm又は0.1~7μmであってもよい。シリカ粒子の形状は、球状であっても鱗片状であってもよい。鱗片状シリカ粒子の市販品として「サンラブリーLFS」(AGCエスアイテック株式会社製、平均粒子径:0.3~0.5μm、表面のシラノール基量:約30μmol/m2)が挙げられる。球状シリカ粒子の市販品として「サンラブリーC」(AGCエスアイテック株式会社製、平均粒子径:4~6μm、表面シラノール基量:約30μmol/m2)が挙げられる。迷路効果によるガスバリア性を比較的少ない量で発現させる観点から、鱗片状であることが好ましい。鱗片状のシリカ粒子のアスペクト比は、例えば、10~100であり、15~80又は20~60であってもよい。なお、シリカ粒子の平均粒子径は、SEMの視野内における任意の計10個のシリカ粒子について長径と短径の長さを測定し、その和を2で割ることで得られる値の平均値を意味し、アスペクト比は長径の平均値を短径の平均値で除すことによって算出される値を意味する。
【0036】
(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物は、一般式、Si(OR)n(R:CH3,C2H5等のアルキル基)で表される化合物が加水分解したものであり、シラノール基を有する。ケイ素アルコキシドの具体例として、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランが挙げられる。
【0037】
塗膜の形成に使用する溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、塗工性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また製造性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
【0038】
ガスバリア性被覆層5を形成するための塗液は、以下の組成(溶媒を除いた成分の質量100質量部基準)であることが好ましい。
(A)水溶性高分子の量MA…30~98質量部(より好ましくは50~98質量部、60~98質量部又は80~98質量部)
(B)シリカ粒子の量MB…1~60質量部(より好ましくは1~50質量部又は1~30質量部)
(C)ケイ素アルコキシド及びその加水分解物の合計量MC…60質量部以下(より好ましくは1~50質量部、1~40質量部又は1~30質量部)
【0039】
(A)成分の量MAが30質量部以上であることで、ガスバリア性被覆層5の優れた可撓性及び耐屈曲性が達成され、他方、98質量部以下であることで、(B)成分及び(C)の配合によってガスバリア性被覆層5の優れた水蒸気バリア性が達成される。ガスバリア性被覆層5が(A)成分と、(B)成分及び(C)成分の両方とを含むことで、(A)成分と、(B)成分及び(C)成分の一方とを含む場合と比較して(A)成分の量が比較的多くても安定して高い水蒸気バリア性を達成できる。したがって、(A)成分の量の下限値は、上記のとおり、50質量部、60質量部又は80質量部であることがより好ましい。
【0040】
(B)成分の量MBが1質量部以上であることで、ガスバリア性被覆層5の優れた耐屈曲性と耐水性と水蒸気バリア性が達成され、他方、60質量部以下であることで、ガスバリア性被覆層5の十分な可撓性を確保できる。ガスバリア性被覆層5が(A)成分と、(B)成分及び(C)成分の両方とを含むことで、(C)成分を含まない場合と比較して(B)成分の量が少なくても高い水蒸気バリア性を達成できる。したがって、(B)成分の量の上限値は、上記のとおり、50質量部又は30質量部であることがより好ましい。
【0041】
(C)成分の量MCが60質量部以下であることで、ガスバリア性被覆層5の十分な可撓性を確保できる。ガスバリア性被覆層5が(A)成分と、(B)成分及び(C)成分の両方とを含むことで、(B)成分を含まない場合と比較して(C)成分の量が比較的少なくても高い水蒸気バリア性を達成できる。したがって、(C)成分の量の上限値は、上記のとおり、50質量部、40質量部又は30質量部であることがより好ましい。
【0042】
上述のとおり、ガスバリア性被覆層5において、(A)成分の量MAが比較的多くてもよく、また、(B)成分の量MB及び/又は(C)成分の量MCは比較的少なくてもよい。すなわち、(B)成分の量MBと(C)シリカ粒子の量MCの合計量の(A)水溶性高分子の量MAに対する比(MB+MC)/MAは、1.5以下であればよく、1.0未満又は0.9以下であってもよい。
【0043】
(B)成分の量MBと(C)成分の量MCの合計(MB+MC)は、2~70質量部であればよく、ガスバリア性被覆層5の水蒸気バリア性と耐屈曲性の両立の観点から、2~50質量部であることが好ましい。
【0044】
上記塗液には、ガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、安定化剤、粘度調整剤及び着色剤等の添加剤を必要に応じて加えてもよい。例えば、耐熱水性向上の観点から、式(R1Si(OR2)3)nで示されるシラン化合物(シランカップリング剤)を塗液に添加してもよい。有機官能基(R1)は、ビニル、エポキシ、メタクリロキシ、ウレイド及びイソシアネート等の非水性官能基であることが好ましい。シランカップリング剤の具体例として、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレート、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0045】
ガスバリア性被覆層5は蒸着層3の表面上に塗液を塗布する工程を経て形成される。塗布方法としては、通常用いられるキャスト法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等の従来公知の方法を用いることが可能である。塗液の塗布によって形成された塗膜を加熱乾燥させることでガスバリア性被覆層5が形成される。
【0046】
ガスバリア性被覆層5の厚さは包装材の用途によって適宜決めればよいが、好ましくは0.01~100μmであり、より好ましくは0.01~50μmである。ガスバリア性被覆層5の厚さ(乾燥後の厚さ)が0.01μm以上であれば均一な塗膜が形成しやすく、十分なガスバリア性を達成しやすく、他方、100μm以下とすることでクラックの発生を抑制しやすい。
【0047】
<包装材>
図2は、ガスバリア積層体10を含む包装材の一例を模式的に示す断面図である。この図に示す包装材20は、ガスバリア積層体10と、シーラント層15と、これらを貼り合わせる接着層12とを備える。シーラント層15として、ポリプロプレンフィルム、ポリエチレンフィルムなどが挙げられる。ホットシールニスやコールドシールニスをガスバリア積層体10に直接塗布することによってシーラント層15を形成してもよい。ホットシールニスの種類は特には問わないが、例えばポリエステル/硝化綿系樹脂やエチレン-酢酸ビニル共重合体系の水性エマルジョンタイプの接着剤が挙げられる。コールドシール剤の種類も特には問わないが具体例としては、イソプレンなどの合成ゴム、天然ゴムや天然ゴムの変性物のエマルジョンなどが挙げられる。環境負荷低減の観点から、シーラント層15として、バイオマス由来のエチレン、プロピレン等を原材料に用いたバイオマスポリエチレン、バイオマスポリプロピレン又はバイオマスポリエチレンテレフタレート)を一部又は全部に含むシーラントフィルムを使用してもよい。このようなシーラントフィルムは例えば特開2013-177531号に開示されている。
【0048】
接着層12は、ガスバリア積層体10とシーラント層15とを接着しており、優れた耐熱水性を有する。接着層12を構成する接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、二官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。各種ポリオールは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。接着層12は、接着促進を目的として、上述のポリウレタン樹脂に、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物、シランカップリング剤などが配合されたものであってもよい。
【0049】
接着層12の厚さは、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmであり、3~7μmであってもよい。なお、熱処理によってガスバリア積層体10にシーラント層15をラミネートしてもよい。
【0050】
<包装体>
図3は包装材20からなるガゼット袋50を示す斜視図である。ガゼット袋50に内容物(不図示)した後、上部の開口51をシールすることで包装体が製造される。ガゼット袋50は、包装材20が折り曲げられている箇所(折り曲げ部B1,B2)を有する。折り曲げ部B1は、最内層側から見て包装材20が谷折りされている箇所であり、他方、折り曲げ部B2は、最内層側から見て包装材20が山折りされている箇所である。
【0051】
ガゼット袋50は、折り曲げられた後においても十分なガスバリア性を維持できるガスバリア積層体10を含んでいる。このため、内容物の変質を十分に長期にわたって抑制することができる。また、プラスチック材料で全体が構成された容器と比較して、プラスチック材料の使用量を削減できる。本実施形態に係る包装体は、内容物が要冷蔵又は要冷凍のものであってもよい。低温の内容物によって包装体の表面に結露が生じて紙基材1が吸湿した後においても、包装材20は十分なガスバリア性を有する。
【0052】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、紙基材1とガスバリア性被覆層5との間に、蒸着層3を有するガスバリア積層体を例示したが、高度なガスバリア性が求められない包装材にガスバリア積層体を提供する場合、
図4に示すように蒸着層3及びプライマー層2は設けなくてもよい。また、上記実施形態においては、包装体の一例として、ガゼット袋を挙げたが、本開示に係る包装材を使用して、例えば、ピロー袋、三方シール袋又はスタンディングパウチを作製してもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
以下の材料を準備した。
[(A)水溶性高分子]
・PVA1:ポリビニルアルコール(重合度:2300、鹸化度:98~99)
・PVA2:ポリビニルアルコール(重合度:500、鹸化度:98~99)
・PVA3:ポリビニルアルコール(重合度:500、鹸化度:87~89)
・変性PVA:エクセバール(重合度:500、株式会社クラレ製)
・PAA:ポリアクリル酸(重合度:500)
[(B)無機粒子]
・鱗片状シリカ粒子:サンラブリーLFS(商品名、AGCエスアイテック株式会社製、平均粒子径0.3~0.5μm、表面のシラノール基量:約30μmol/m2)
・球状シリカ粒子:サンラブリーC(商品名、AGCエスアイテック株式会社製、平均粒子径5μm、表面のシラノール基量:30μmol/m2、実施例4で使用)
・鱗片状鉱物粒子:クニピアF(商品名、クニミネ工業株式会社製、平均粒子径2μm、表面のシラノール基量:0μmol/m2、比較例2,3で使用)
[(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物]
・TEOS:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.05N)89.6gを加えた後、30分間攪拌することによって加水分解させた固形分3質量%(SiO2換算)の液
【0055】
[ガスバリア性被覆層形成用の塗液の調製]
(実施例1~4,10及び比較例3)
PVA1の溶液(固形分:5質量%、溶媒:水/IPA=90/10(質量比))に(B)無機粒子を少量ずつ加え、30分間以上にわたって攪拌して塗液を調製した。表1,3に塗液の組成を示す。
【0056】
(実施例5)
PVA2の溶液(固形分:5質量%、溶媒:水/IPA=90/10(質量比))に(B)無機粒子を少量ずつ加え、30分間以上にわたって攪拌して塗液を調製した。表2に塗液の組成を示す。
【0057】
(実施例6)
PVA3の溶液(固形分:5質量%、溶媒:水/IPA=90/10(質量比))に(B)無機粒子を少量ずつ加え、30分間以上にわたって攪拌して塗液を調製した。表2に塗液の組成を示す。
【0058】
(実施例7)
変性PVAの溶液(固形分:5質量%、溶媒:水/IPA=90/10(質量比))に(B)無機粒子を少量ずつ加え、30分間以上にわたって攪拌して塗液を調製した。表2に塗液の組成を示す。
【0059】
(実施例8)
PAAの溶液(固形分:5質量%)に(B)無機粒子を少量ずつ加え、30分間以上にわたって攪拌して塗液を調製した。表2に塗液の組成を示す。
【0060】
(実施例9)
PVA1の溶液(固形分:5質量%、溶媒:水/IPA=90/10(質量比))に(B)無機粒子を少量ずつ加え、30分間以上にわたって攪拌して溶液を調製した。この溶液に(C)ケイ酸アルコキシドの加水分解物を加え、30分以上攪拌して塗液を得た。表2に塗液の組成を示す。
【0061】
(比較例1)
PVA1の水溶液(固形分:5質量%、溶媒:水/IPA=90/10(質量比))に(C)ケイ酸アルコキシドの加水分解物を加え、30分以上攪拌して塗液を得た。表3に塗液の組成を示す。表3に塗液の組成を示す。
【0062】
(比較例2)
PVA1の水溶液(固形分:5質量%、溶媒:水/IPA=90/10(質量比))に(B)無機粒子を少量ずつ加え、30分間以上にわたって攪拌して溶液を調製した。この溶液に(C)ケイ酸アルコキシドの加水分解物を加え、30分以上攪拌して塗液を得た。表3に塗液の組成を示す。
【0063】
[ガスバリア積層体の作製]
(実施例1~9及び比較例1~3)
まず、紙(厚さ:50g/m2)の表面上にプライマー層を形成し、次いで、プライマー層の表面上に、AL蒸着層を形成した。AL蒸着層の表面上に、実施例1~9及び比較例1~3に係る塗液をバーコーターでそれぞれ塗工した。塗膜をオーブンで120℃1分間乾燥させることによって、ガスバリア性被覆層(厚さ:約0.5μm)を形成した。これらの工程を経て、ガスバリア積層体(層構成:紙/プライマー層/AL蒸着層/ガスバリア性被覆層)を得た。
【0064】
(実施例10)
まず、コート紙(厚さ:50g/m2)の紙の表面上にプライマー層を形成した。プライマー層の表面上に、実施例10に係る塗液をバーコーターで塗工した。塗膜をオーブンで120℃1分間乾燥させることによって、ガスバリア性被覆層(厚さ:約0.5μm)を形成した。これらの工程を経て、ガスバリア積層体(層構成:紙/プライマー層/ガスバリア性被覆層)を得た。
【0065】
[水蒸気透過度の測定]
実施例及び比較例に係るガスバリア積層体の水蒸気透過度をMOCON法で測定した。測定条件は、温度40℃、相対湿度90%とした。600gのローラーを300mm/分の速さで転がしながら、ガスバリア積層体に折り目をつけ、開いた後のガスバリア積層体の水蒸気透過度も同様に測定した。なお、表1~3における「谷折り」はガスバリア性被覆層側から見てガスバリア積層体を谷折りした後の水蒸気透過度を示し、「山折り」はガスバリア性被覆層側から見てガスバリア積層体を山谷折りした後の水蒸気透過度を示す。表1~3に結果を単位[g/m2・day]で表記した。
【0066】
【0067】
【0068】
【符号の説明】
【0069】
1…紙基材、2…プライマー層、3…蒸着層、5…ガスバリア性被覆層、10…ガスバリア積層体、15…シーラント層、20…包装材、50…ガゼット袋、B1,B2…折り曲げ部