(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】算出方法、軸受装置及び工作機械の主軸装置
(51)【国際特許分類】
G01B 21/12 20060101AFI20240827BHJP
F16C 35/12 20060101ALI20240827BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20240827BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20240827BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20240827BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240827BHJP
B23B 19/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01B21/12
F16C35/12
F16C41/00
F16C19/06
F16C19/26
B23Q17/00 A
B23B19/02 B
(21)【出願番号】P 2020002835
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】剱持 健太
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120658(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19919007(DE,A1)
【文献】特開昭56-168108(JP,A)
【文献】特開2011-240415(JP,A)
【文献】特表平3-504416(JP,A)
【文献】特開2001-349718(JP,A)
【文献】特開2000-110836(JP,A)
【文献】特開2008-82425(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013276(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 13/00-13/24
G01B 21/00-21/32
F16C 35/12
F16C 41/00
F16C 19/06
F16C 19/26
B23Q 17/00
B23B 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と、
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間に回転可能に配置された玉とを有し、前記回転部材を回転可能に支持する
転がり軸受と、
前記
転がり軸受を保持するハウジングと、
前記ハウジングまたは前記
転がり軸受の非回転部分に設けられて、前記回転部材と共に回転する面までの距離を測定する変位センサと、
を有する軸受装置に用いられる算出方法であって、
前記変位センサは非接触で前記距離を測定する非接触変位センサであり、
前記回転部材の回転軸と直交する面上に、3つ以上の位置に設けられる前記変位センサによる測定結果に基づいて、前記回転部材の径の変化量を算出し、
且つ、前記回転軸のラジアル方向の変位量を算出し、
前記3つ以上の位置は前記直交する面上に定義される円の円周上に有ると共に、前記3つ以上の位置のうちの少なくとも2つの位置は互いに対向しない位置であ
り、
前記変位センサによる前記距離の測定は前記回転部材の回転中に行われる、
ことを特徴とする算出方法。
【請求項2】
前記
回転部材の径の変化と前記回転軸のラジアル方向の変位は、少なくとも前記転がり軸受の温度変化に起因する、
ことを特徴とする請求項1に記載の算出方法。
【請求項3】
回転部材と、
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間に回転可能に配置された玉とを有し、前記回転部材を回転可能に支持する転がり軸受と、
前記転がり軸受を保持するハウジングと、
前記ハウジングまたは前記転がり軸受の非回転部分に設けられて、前記回転部材と共に回転する面までの距離を測定する変位センサと、
前記変位センサによる測定結果に基づいて、前記回転部材の径の変化量を算出し、且つ、前記
回転部材の回転軸のラジアル方向の変位量を算出する算出部と、
を備え、
前記変位センサは非接触で前記距離を測定する非接触変位センサであり、
前記変位センサは、
前記回転部材の回転軸と直交する面上に定義される円の円周上において、3つ以上の位置に設けられ、
前記3つ以上の位置のうちの少なくとも2つの位置は互いに対向しない位置であり、前記変位センサによる前記距離の測定は前記回転部材の回転中に行われる、
ことを特徴とする軸受装置。
【請求項4】
前記
転がり軸受は、
前記回転部材の軸方向の一端近傍に設けられる前側
転がり軸受と、前記回転部材の軸方向の他端近傍に設けられる後側
転がり軸受と、を有し、
前記回転部材の回転軸と直交する面は、
前記前側
転がり軸受より前記回転部材の軸方向の一端側に位置しない、
ことを特徴とする請求項3に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記前側
転がり軸受は、
第1の前側
転がり軸受と、前記第1の前側
転がり軸受より前記回転部材の軸方向の他端側に位置する第2の前側
転がり軸受とからなり、
前記回転部材の回転軸と直交する面は、
前記第1の前側
転がり軸受と前記第2の前側
転がり軸受との間に位置する、
ことを特徴とする請求項4に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記前側
転がり軸受は、
第1の前側
転がり軸受と、前記第1の前側
転がり軸受より前記回転部材の軸方向の他端側に位置する第2の前側
転がり軸受とからなり、
前記回転部材の回転軸と直交する面は、
前記第2の前側
転がり軸受より前記回転部材の軸方向の他端側に位置する、
ことを特徴とする請求項4に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記回転部材と共に回転する面は、
前記
転がり軸受の内輪の外表面である、
ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項8】
前記回転部材と共に回転する面は、
前記
転がり軸受の内輪に
隣接して設けられた間座に設けられる、
ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項9】
前記回転部材と共に回転する面は、
前記回転部材の外周面である、
ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項10】
前記
転がり軸受は、
前記回転部材の軸方向の一端近傍に設けられる前側
転がり軸受と、前記回転部材の軸方向の他端近傍に設けられる後側
転がり軸受と、を有し、
前記軸受装置は、
前記前側
転がり軸受と前記後側
転がり軸受との間に前記回転部材を回転させるモータを有し、
前記回転部材
と共に回転する面は、
前記モータに最も近い前記前側
転がり軸受の内輪
に隣接する間座に設けられる、
ことを特徴とする請求項3または請求項6に記載の軸受装置。
【請求項11】
前記
転がり軸受の非回転部分は、
当該
転がり軸受の外輪であり、
前記変位センサは、
前記
転がり軸受の外輪に設けられる、
ことを特徴とする請求項3から請求項10のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項12】
前記軸受装置は、
前記前側転がり軸受と前記後側転がり軸受との間に前記回転部材を回転させるモータを有し、
前記回転部材と共に回転する面は、
前記モータに最も近い前記前側転がり軸受の内輪に隣接する間座に設けられる、
ことを特徴とする請求項4に記載の軸受装置。
【請求項13】
回転部材と、
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間に回転可能に配置された玉とを有し、前記回転部材を回転可能に支持する
転がり軸受と、
前記
転がり軸受を保持するハウジングと、
前記ハウジングまたは前記
転がり軸受の非回転部分に設けられて、前記回転部材と共に回転する面までの距離を測定する変位センサと、
を有する工作機械の主軸装置であって、
前記変位センサは非接触で前記距離を測定する非接触変位センサであり、
前記変位センサは、前記回転部材の回転軸と直交する面上に、3つ以上の位置に設けられ、
前記主軸装置は、前記変位センサによる測定結果に基づいて、前記回転部材の径の変化量
と、前記回転軸のラジアル方向の変位量とを算出する算出部をさらに有し、
前記3つ以上の位置は前記直交する面上に定義される円の円周上に有ると共に、前記3つ以上の位置のうちの少なくとも2つの位置は互いに対向しない位置であ
り、
前記変位センサによる前記距離の測定は前記回転部材の回転中に行われる、
ことを特徴とする工作機械の主軸装置。
【請求項14】
前記算出部における算出結果に基づいて、前記
転がり軸受
の劣化を検出する検出部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項13に記載の工作機械の主軸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、算出方法、軸受装置及び工作機械の主軸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工作機械の主軸(スピンドル)において、切削荷重をコントロールし、加工の高速化、高精度化および軸受の長寿命化に繋げようとする動きが強まっており、その方策の一つとして、運転中の軸荷重量を測定することに対するニーズが高まっている。また、使用中の軸受の異常を事前に検知する技術へのニーズも同様に高まっており、軸受の長寿命化と合わせて、加工ラインそのものを可能な限り止めずに運用しようとする動きが強まっている。
【0003】
また、加工中の軸荷重量を直接測定することは非常に困難であるため、その代替手段として、渦電流変位センサ等の非接触変位センサを用いて軸変位を計測し、軸変位を切削荷重へ換算する手法が採られている。軸変位から切削荷重へ換算するためには、工作機械スピンドルの剛性値が必要となるが、その剛性値には、使用される軸受の剛性が大きく影響する。
【0004】
軸受は、構造的に、回転による遠心変形、摩擦およびモータなどの発熱による熱変形、具体的には、軸受の内輪と外輪との温度差による熱膨張差の影響により、その剛性が大きく変化する特性を有している。そのため、軸変位から切削荷重へ換算するためには、軸変位だけでなく、軸受の剛性変化による工作機械スピンドルの剛性変化も考慮しなければならない。
【0005】
一方、軸受の熱膨張差の変化量は、軸受の異常の検知にも活用できる。軸受の劣化に伴って転がり摩擦が増大し、軸受の発熱が増大するが、そのとき同時に熱膨張差も変化するため、その変化を監視することで軸受の状態が推測でき、主軸の故障などの重大な問題の未然防止や、前記監視結果をもとに軸受の状態を維持するように運転条件を調整することで、軸受を延命させることが可能となる。
【0006】
また、従来、軸変位をベクトルで測定する方法としては、直交する2点で測定する方法が一般的であるが、この方法では測定対象の径が一定であることを前提としており、軸変位と同時に径の変化が発生する場合に対応ができなくなる。
【0007】
このような状況において、特許文献1は、回転体の芯ずれ算出方法に関し、回転体を回転させながら周方向の外表面に沿った3点の測定データから計算円を算出し、算出した計算円に基づいて回転体の芯ずれを算出することを開示している。特許文献1の方法によれば、測定点を3点とすることにより、測定平面上において1つの円を定めることができるため、軸変位ベクトルと径の変化量とを算出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、回転部材の回転軸と直交する面上における3つ以上の位置の測定データを用いて、回転軸のラジアル方向の変位量と回転部材の径の変化量とを測定することができる算出方法、軸受装置及び工作機械の主軸装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る算出方法は、回転部材と、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間に回転可能に配置された玉とを有し、前記回転部材を回転可能に支持する転がり軸受と、前記転がり軸受を保持するハウジングと、前記ハウジングまたは前記転がり軸受の非回転部分に設けられて、前記回転部材と共に回転する面までの距離を測定する変位センサと、を有する軸受装置に用いられる算出方法であって、前記変位センサは非接触で前記距離を測定する非接触変位センサであり、前記回転部材の回転軸と直交する面上に、3つ以上の位置に設けられる前記変位センサによる測定結果に基づいて、前記回転部材の径の変化量を算出し、且つ、前記回転軸のラジアル方向の変位量を算出し、前記3つ以上の位置は前記直交する面上に定義される円の円周上に有ると共に、前記3つ以上の位置のうちの少なくとも2つの位置は互いに対向しない位置であり、前記変位センサによる前記距離の測定は前記回転部材の回転中に行われる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る軸受装置は、回転部材と、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間に回転可能に配置された玉とを有し、前記回転部材を回転可能に支持する転がり軸受と、前記転がり軸受を保持するハウジングと、前記ハウジングまたは前記転がり軸受の非回転部分に設けられて、前記回転部材と共に回転する面までの距離を測定する変位センサと、前記変位センサによる測定結果に基づいて、前記回転部材の径の変化量を算出し、且つ、前記回転部材の回転軸のラジアル方向の変位量を算出する算出部と、を備え、前記変位センサは非接触で前記距離を測定する非接触変位センサであり、前記変位センサは、前記回転部材の回転軸と直交する面上に定義される円の円周上において、3つ以上の位置に設けられ、前記3つ以上の位置のうちの少なくとも2つの位置は互いに対向しない位置であり、前記変位センサによる前記距離の測定は前記回転部材の回転中に行われる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る工作機械の主軸装置は、回転部材と、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間に回転可能に配置された玉とを有し、前記回転部材を回転可能に支持する転がり軸受と、前記転がり軸受を保持するハウジングと、前記ハウジングまたは前記転がり軸受の非回転部分に設けられて、前記回転部材と共に回転する面までの距離を測定する変位センサと、を有する工作機械の主軸装置であって、前記変位センサは非接触で前記距離を測定する非接触変位センサであり、前記変位センサは、前記回転部材の回転軸と直交する面上に、3つ以上の位置に設けられ、前記主軸装置は、前記変位センサによる測定結果に基づいて、前記回転部材の径の変化量と、前記回転軸のラジアル方向の変位量とを算出する算出部をさらに有し、前記3つ以上の位置は前記直交する面上に定義される円の円周上に有ると共に、前記3つ以上の位置のうちの少なくとも2つの位置は互いに対向しない位置であり、前記変位センサによる前記距離の測定は前記回転部材の回転中に行われる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る算出方法の一態様によれば、回転部材の回転軸と直交する面上における3つ以上の位置の測定データを用いて、回転軸のラジアル方向の変位量と回転部材の径の変化量とを測定することができる。
【0016】
また、本発明に係る軸受装置では、回転部材の回転軸と直交する面上における3つ以上の位置の測定データを用いて、回転軸のラジアル方向の変位量と回転部材の径の変化量とを測定することができる。
【0017】
また、本発明に係る工作機械の主軸装置では、回転部材の回転軸と直交する面上における3つ以上の位置の測定データを用いて、回転軸のラジアル方向の変位量と回転部材の径の変化量とを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る工作機械の主軸装置の第1実施形態の構成を示す図である。
【
図2】本発明に係る軸受装置の第1実施形態の構成を示す模式図である。
【
図3】本発明に係る軸受装置の第2実施形態を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る軸受装置の第3実施形態を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る軸受装置の第4実施形態を示す断面図である。
【
図6】本発明に係る軸受装置の第5実施形態を示す断面図である。
【
図7】本発明に係る軸受装置の第6実施形態を示す断面図である。
【
図8】本発明に係る軸受装置の第7実施形態を示す断面図である。
【
図9】本発明に係る軸受装置の第8実施形態を示す断面図である。
【
図10】本発明に係る工作機械の主軸装置の第9実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図中、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0020】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0021】
(第1実施形態)
<工作機械の主軸装置の構成>
まず、本発明に係る工作機械の主軸装置の第1実施形態における構成について、
図1を参照して説明する。
【0022】
工作機械の主軸装置1は、軸受装置10と、制御装置20と、を有している。
【0023】
軸受装置10は、モータビルトイン方式であり、転がり軸受で支持する回転部材の回転軸のラジアル方向の変位量と回転部材の径の変化量とを検出して軸荷重を測定可能になっている。なお、軸受装置10の構成の詳細については後述する。
【0024】
制御装置20は、軸受装置10が測定した測定結果に基づいて、軸荷重量を算出する。制御装置20は、軸荷重測定部101と、モータ駆動回路102と、CPU103と、を有する。
【0025】
<軸受装置の構成>
次に、軸受装置10の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1において、左方向を前方向及び右方向を後方向として説明する。
図2において、
図2(a)は、互いに対向する位置を除く3つの位置に変位センサ100を設けた場合を示しており、
図2(b)は、互いに対向する位置と、互いに対向する位置以外の位置と、の3つの位置に変位センサ100を設けた場合を示している。
【0026】
一般的に、軸受装置10の軸受の近傍には、予圧の調整又は潤滑機構の設置等を理由として間座が設けられている。また、一般的な軸受装置10に使用される軸受は、固定側軸受と自由側軸受とに大別され、それぞれ単列または複列で構成される。ここで、固定側および自由側は、軸方向において固定および自由という意味である。
【0027】
具体的には、軸受装置10は、ハウジング11と、回転部材21と、前側転がり軸受31と、前側外輪側間座36と、前側内輪側間座38と、ナット39と、後側転がり軸受41と、後側外輪側間座46と、ナット47と、後側内輪側間座48と、駆動モータ51と、変位センサ100と、を有している。
【0028】
軸受装置10は、固定部材であるハウジング11に対して、中空状の回転部材21(工作機械のスピンドル)が前側転がり軸受31及び後側転がり軸受41によって回転自在に支持されている。回転部材21は、前側転がり軸受31と後側転がり軸受41との間に配置された駆動モータ51によって回転駆動される。
【0029】
前側軸受としての前側転がり軸受31は、ハウジング11と回転部材21との間において、回転部材21の回転軸Pの軸方向の一端(前端)近傍に設けられており、背面組合せとなるように配置された略同一寸法の一対の第1の前側軸受としてのアンギュラ玉軸受31a及び第2の前側軸受としてのアンギュラ玉軸受31bで構成されている。アンギュラ玉軸受31a及び31bの各々は、静止側軌道輪である外輪33と、回転側軌道輪である内輪34と、静止側軌道である外輪軌道溝と回転側軌道である内輪軌道溝との間に、接触角を持って配置された転動体としての複数の玉35と、を備えている。つまり、各軸受31a、31bは、内輪34と、外輪33と、内輪34と外輪33との間に回転可能に配置された玉35を有している。
【0030】
各アンギュラ玉軸受31a及び31bは、ハウジング11に外輪側間座36を介して外輪33が内嵌され、ハウジング11にボルト締めされた前側軸受外輪押え37によって固定されている。
【0031】
また、各アンギュラ玉軸受31a及び31bの内輪34は、回転部材21に内輪側間座38を介して外嵌され、回転部材21に締結されたナット39によって回転部材21に固定されている。アンギュラ玉軸受31a及び31bは、ナット39によって定位置予圧が負荷されている。したがって、前側転がり軸受31によって回転部材21の回転軸P方向の位置が位置決めされている。
【0032】
前側外輪側間座36は、一対のアンギュラ玉軸受31aとアンギュラ玉軸受31bとの間に配置される中間部間座36aと、前側転がり軸受31よりも後方の後端部間座36bと、を有している。
【0033】
前側内輪側間座38は、回転部材21に嵌合しており、前側転がり軸受31よりも前方の前端部間座38aと、一対のアンギュラ玉軸受31aとアンギュラ玉軸受31bとの間に配置される中間部間座38bと、前側転がり軸受31よりも後方の後端部間座38cと、を備えている。中間部間座38bの径方向外面(外周面)38dが変位センサ100と対向している。以下の記載において、中間部間座38bの径方向外面38dを対向面と称する。対向面38dは、変位センサ100によって変位センサ100と中間部間座38bとの間の距離を測定するための測定面である。対向面38dは、最も前方の軸受であるアンギュラ玉軸受31aよりも後方に配置されている。対向面38dの位置は、回転部材21の回転軸Pのラジアル方向の変位又は回転部材21の径の変化により変化する。
【0034】
後側軸受としての後側転がり軸受41は、円筒ころ軸受であり、ハウジング11と回転部材21との間において、回転部材21の回転軸Pの軸方向の他端(後端)近傍に設けられていると共に、外輪42と、内輪43と、転動体としての複数の円筒ころ44と、を有する。後側転がり軸受41の外輪42は、ハウジング11に内嵌され、ハウジング11にボルト締結された後側軸受押え45によって外輪側間座46を介してハウジング11内に固定されている。後側転がり軸受41の内輪43は、回転部材21に締結されたナット47によって内輪側間座48を介して回転部材21に固定されている。
【0035】
後側外輪側間座46は、軸受41よりも前方の前端部間座46aと、後側転がり軸受41よりも後方の後端部間座46bと、を有している。
【0036】
後側内輪側間座48は、回転部材21に嵌合している。後側内輪側間座48は、後側転がり軸受41よりも前方の前端部間座48aと、後側転がり軸受41よりも後方の後端部間座48bと、を有している。
【0037】
駆動モータ51は、ハウジング11に内嵌されさたステータ52と、ステータ52の内周側に間隙を介して対向する回転部材21に外嵌されたロータ53とで構成されている。
【0038】
変位センサ100は、ハウジング11に保持されており、回転部材21の回転軸Pと直交する面上に定義される円R(
図2(a)参照)の円周上において、互いに対向する位置を除く3つ以上の位置に設けられる。つまり、本実施形態では、変位センサ100が3つ設けられる。
図2(a)は、変位センサ100が円Rの円周上の3つの位置S1、S2及びS3に設けられる場合を例示している。
図2(a)において、位置S1とS2との間の角度をθ1、位置S2とS3との間の角度をθ2、及び位置S3とS1との間の角度をθ3とする。
図2(a)に示すように、位置S1、S2及びS3は、円Rの円周上において互いに対向しないように、例えばθ1、θ2及びθ3の各々が120度となるように配置されている。θ1が180度である場合には、S1とS2とが互いに対向する位置になる。
【0039】
変位センサ100は、回転部材21の回転軸Pと直交する方向において、対向面38dに対向して設けられている。変位センサ100は、対向面38dとの距離を測定し、測定した距離に応じた電気信号を制御装置20の軸荷重測定部101に出力する。変位センサ100は、軸受装置10の非回転体側に設置されており、変位センサ100の測定面は、軸受装置10の回転体側と対向している。
【0040】
変位センサ100は、渦電流変位センサ、静電容量変位センサ、レーザ変位計またはエアギャップセンサ等の非接触変位センサである。
【0041】
<制御装置の構成>
次に、軸受装置10に接続されている制御装置20の構成ついて、
図1を参照して説明する。軸受装置10と制御装置20との接続は、有線接続でもよいし、無線接続でもよい。
【0042】
上記したように、制御装置20は、軸荷重測定部101と、モータ駆動回路102と、CPU103と、を備えている。
【0043】
軸荷重測定部101は、CPU103の制御によって動作する。軸荷重測定部101は、3つの変位センサ100の検出値を受信する。より詳しくは、軸荷重測定部101は、3つの変位センサ100から入力される3つの測定面の各々との距離に応じた電気信号を受信し、当該電気信号に基づいて、回転部材21の回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)および回転部材21の径の変化量を測定する。軸荷重測定部101は、測定した回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)および回転部材21の径の変化量の測定結果に基づいて軸荷重を算出し、軸荷重の算出結果をCPU103に出力する。ここで、回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)とは、回転部材21の回転軸Pの基準位置からの回転軸Pと直交する方向におけるずれである。また、回転部材21の径の変化とは、回転部材21の基準となる径に対する径の変化である。
【0044】
モータ駆動回路102は、CPU103の制御に従って、駆動モータ51を駆動させる。
【0045】
CPU103は、図示しないメモリに予め記憶されている制御プログラムを読み出して、読み出した制御プログラムを実行することにより制御装置20の全体の動作を制御する。CPU103は、軸荷重測定部101から入力される軸荷重の算出結果に基づいて、所定の制御を行う。ここで、所定の制御は、駆動モータ51の駆動力を低下させるためのモータ駆動回路102に対する制御、又は測定結果の示す軸荷重の荷重量が閾値以上である場合に異常であることを表示等して報知する制御等である。軸荷重が異常であることを表示する表示部は、制御装置20が有していてもよい。あるいは、制御装置20は、外部の表示装置に信号を出力して、当該表示装置が軸荷重異常に関する情報や画像を表示してもよい。
【0046】
なお、制御装置20は、軸荷重の荷重量を算出する場合に限らず、回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)および回転部材21の径の変化量を算出することにとどめてもよい。この場合には、例えば回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)および回転部材21の径の変化量を表示装置に表示して報知するようにしてもよい。
【0047】
<工作機械の主軸装置の動作>
次に、工作機械の主軸装置1の動作について、説明する。
【0048】
制御装置20は、軸受装置10の回転部材21を回転させた状態で、任意の状態を基準円として、基準円からの径方向への変位量に対して、外接円中心法、内接円中心法、最小領域中心法又は最小自乗中心法等の近似法を用いて、3つの位置の対向面38dにおける測定値から測定円を算出する。この際に、測定精度を高めるために複数回の測定を行うことが好ましい。
【0049】
また、軸受装置10は、高速回転かつ高い回転精度を要求される機械であることから、その構成要素も高い精度で製作される。また、測定変位量は、測定円の径に対し、1/1000乃至1/10000程度と非常に小さい。これより、1回の測定のみでも十分な測定精度が見込めるため、上記の近似法ではなくて、基準円と測定円との差分を求めてもよい。具体的には、各変位センサ100の出力値を基準値とするかゼロオフセットし、その後に任意の時点から別の時点までの各変位センサ100の出力値の差分量を計測する。そして、各変位センサ100の測定面である各対向面38dにおける各差分量の平均値が対向面38dの回転軸Pからの径(
図2に示す円Rの径)と、所定の基準円の径と、の径の変化量となる。また、3つの位置の変位センサ100のうちの2つの位置の変位センサ100における各差分量と、この各差分量の平均値と、の差(2値)より回転軸Pの変位ベクトル変位量を算出する。この際に、2つの位置の変位センサ100の組み合わせの数だけ回転軸Pの変位ベクトル変位量を算出可能であるため、これらの変位ベクトル変位量の平均値を使用することにより高い精度の変位ベクトル変位量を得ることができる。なお、回転軸Pに対する円Rの円周上において隣り合う変位センサ100間の各角度(
図2の場合にはθ1、θ2及びθ3)が同一角度に近いほど、上記の変位量の測定精度を高くすることができる。
【0050】
変位センサ100を
図2(a)に示す配置とすることで、変位ベクトル変位量および径の変化量を算出する際に、円Rの径の数値または回転部材21の径の数値が不要となり、3つの変位センサ100の測定値のみで算出可能となる。より具体的には、3つの変位センサ100の測定値から径の変化量が算出できると共に、3つの変位センサ100の測定値のうち、任意の2つを用いて変位ベクトル変位量が算出できる。このとき変位ベクトル変位量は組合せにより3値得られるため、それらを平均化することで変位ベクトル変位量の精度が高まる。尚、変位センサ100が対向する場合(例えば
図2(b)の場合)も上記の算出方法にて変位ベクトル変位量は算出可能であるが、対向する組合せの変位センサ100(例えば
図2(b)の位置S1及びS2の変位センサ100)では変位ベクトル変位量が算出不可となるため、得られる変位ベクトル変位量が2値となり、精度が低下することになる。
【0051】
また、
図2(a)及び
図2(b)のいずれの場合においても、円Rの径の値または回転部材21の径の値が明らかである場合には、3つの変位センサ100の測定値と合わせて、各変位センサ100の配置軸上における回転部材21の径の座標が定まるため、それらの座標の変化から変位ベクトル変位量および径の変化量が算出可能となる。
【0052】
工作機械の主軸装置1により計測される回転部材21の径の変化及び回転軸Pのラジアル方向の変位量は、基準円に対する遠心膨張量と、変位センサ100の設置位置と測定面との温度差による熱膨張差と、により生じる。ここで、遠心膨張量は、何れの位置でも一定となるが、熱膨張量差は、変位センサ100が軸受に近いほど、軸受との乖離が小さくなるため小さくなる。ただし、熱膨張量差は、軸受の温度上昇と、変位センサ100の位置における温度上昇と、の関係が予め明らかになっていれば補正可能である。
【0053】
このように、本実施形態によれば、最も前方のアンギュラ玉軸受31aよりも後方に設置された前側内輪側間座38の中間部38bに変位センサ100を配置することにより、最も軸荷重に近い軸受と同一レベルの変化量及び変位量を測定でき、軸受装置10の剛性に大きな影響を与える工具端と軸受との距離(工具端(作用点)と、軸受の回転部材21に対する接触角と回転軸Pとの交点(支持点)と、の距離)が長くなることを抑制することができると共に、回転による軸受の温度変化を精度よく測定することができる。
【0054】
なお、上記の実施形態では、前側転がり軸受31が2つの転がり軸受(アンギュラ玉軸受)を有するとしたが、前側転がり軸受31は1つ又は3つ以上の転がり軸受から構成されてもよい。
【0055】
(第2実施形態)
本発明に係る工作機械の主軸装置の第2実施形態における構成は、
図1において軸受装置10の代わりに軸受装置110を有する以外は同一構成であるので、その説明を省略する。
【0056】
<軸受装置の構成>
次に、本発明に係る軸受装置110の第2実施形態における構成について、
図3を参照して説明する。
図3において、左方向を前方向及び右方向を後方向として説明する。なお、
図3においては、軸受装置110の下半分の記載を省略すると共に、変位センサ及び駆動モータに接続されている制御装置の記載を省略する。また、
図3において
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
軸受装置110は、回転部材21と、前側転がり軸受31と、前側外輪側間座36と、前側内輪側間座38と、ナット39と、後側転がり軸受41と、後側外輪側間座46と、ナット47と、後側内輪側間座48と、駆動モータ51と、変位センサ100と、ハウジング111と、を有している。
【0058】
軸受装置110は、固定部材であるハウジング111に対して、中空状の回転部材21(スピンドル軸)が前側転がり軸受31及び後側転がり軸受41によって回転自在に支持されている。
【0059】
前側内輪側間座38は、回転部材21に嵌合している。前側内輪側間座38は、前側転がり軸受31よりも前方の前端部間座38aと、一対のアンギュラ玉軸受31aとアンギュラ玉軸受31bとの間に配置される中間部間座38bと、前側転がり軸受31よりも後方の後端部間座38cと、を備えている。後端部間座38cの径方向外面(外周面)38eが変位センサ100と対向している。以下の記載において、後端部間座38cの径方向外面38eを対向面と称する。対向面38eは、変位センサ100によって変位センサ100と後端部間座38cとの間の距離を測定するための測定面である。対向面38eは、最も前方の軸受であるアンギュラ玉軸受31aよりも後方に配置されている。対向面38eの位置は、回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)又は回転部材21の径の変化により変化する。
【0060】
変位センサ100は、ハウジング111に保持されており、アンギュラ玉軸受31bよりも軸方向Pの後端側に位置すると共に駆動モータ51に最も近い前側内輪側間座38の後端部間座38cに位置する、回転部材21の回転軸Pと直交する面上に定義される円の円周上において、3つ以上の位置に設けられる。変位センサ100は、回転部材21の回転軸Pと直交する方向において、対向面38eに対向して設けられている。変位センサ100は、対向面38eとの距離を測定し、測定した距離に応じた電気信号を制御装置20の軸荷重測定部101に出力する。変位センサ100は、軸受装置110の非回転体側に設置されており、変位センサ100の測定面は、軸受装置110の回転体側と対向している。
【0061】
なお、本実施形態に係る制御装置は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。また、軸受装置110の動作は上記第1の実施形態に係る軸受装置10と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0062】
一般的な軸受装置110の場合、前側転がり軸受31自身若しくは後側転がり軸受41自身の発熱の程度、又は駆動モータ51からの発熱若しくは放熱の程度から、前側転がり軸受31及び後側転がり軸受41において、駆動モータ51近傍の軸受装置10の非回転体側の外輪33及び外輪42が熱的に最も過酷となる。本実施形態では、熱的に過酷な前側内輪側間座38の後端部間座38cの対向面38eを変位センサ100の測定面にすることにより、加工荷重のみならず加工荷重に加えて、駆動モータ51の熱の影響を早期に検出可能であるため、前側転がり軸受31又は後側転がり軸受41の熱の影響による劣化に対して早期に対策を講じることができ、軸受装置110の短寿命化を抑制することができる。
【0063】
(第3実施形態)
本発明に係る工作機械の主軸装置の第3実施形態における構成は、
図1において軸受装置10の代わりに軸受装置210を有する以外は同一構成であるので、その説明を省略する。
【0064】
<軸受装置の構成>
次に、本発明に係る軸受装置210の第3実施形態における構成について、
図4を参照して説明する。
図4において、左方向を前方向及び右方向を後方向として説明する。なお、
図4においては、軸受装置210の下半分の記載を省略すると共に、変位センサ及び駆動モータに接続されている制御装置の記載を省略する。また、
図4において
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0065】
軸受装置210は、回転部材21と、前側転がり軸受31と、前側外輪側間座36と、前側内輪側間座38と、ナット39と、後側転がり軸受41と、後側外輪側間座46と、ナット47と、後側内輪側間座48と、駆動モータ51と、変位センサ100と、ハウジング211と、を有している。
【0066】
軸受装置210は、固定部材であるハウジング211に対して、中空状の回転部材21(スピンドル軸)が前側転がり軸受31及び後側転がり軸受41によって回転自在に支持されている。
【0067】
後側内輪側間座48は、回転部材21に嵌合している。後側内輪側間座48の後端部間座48bの径方向外面(外周面)48cが変位センサ100と対向している。以下の記載において、後端部間座48bの径方向外面48cを対向面と称する。対向面48cは、変位センサ100によって変位センサ100と後端部間座48bとの間の距離を測定するための測定面である。対向面48cは、最も前方の軸受であるアンギュラ玉軸受31aよりも後方に配置されている。対向面48cの位置は、回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)又は回転部材21の径の変化により変化する。
【0068】
変位センサ100は、自由側軸受である後側転がり軸受41近傍に設置されている。変位センサ100は、ハウジング211に保持されており、回転部材21の回転軸Pと直交する面上に定義される円の円周上において、3つ以上の位置に設けられる。変位センサ100は、回転部材21の回転軸Pと直交する方向において、対向面48cに対向して設けられている。変位センサ100は、対向面48cとの距離を測定し、測定した距離に応じた電気信号を制御装置20の軸荷重測定部101に出力する。変位センサ100は、軸受装置210の非回転体側に設置されており、変位センサ100の測定面は、軸受装置210の回転体側と対向している。
【0069】
なお、本実施形態に係る制御装置は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。また、軸受装置210の動作は上記第1の実施形態に係る軸受装置10と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0070】
このように、本実施形態によれば、後側転がり軸受41近傍に変位センサ100を配置することにより、回転部材21の回転軸Pの軸変位ベクトルと、回転部材21の径の変化と、を測定することができる。
【0071】
(第4実施形態)
本発明に係る工作機械の主軸装置の第4実施形態における構成は、
図1において軸受装置10の代わりに軸受装置310を有する以外は同一構成であるので、その説明を省略する。
【0072】
次に、本発明に係る軸受装置310の第4実施形態における構成について、
図5を参照して説明する。
図5において、左方向を前方向及び右方向を後方向として説明する。なお、
図5においては、軸受装置310の下半分の記載を省略すると共に、変位センサ及び駆動モータに接続されている制御装置の記載を省略する。また、
図5において
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0073】
軸受装置310は、回転部材21と、前側転がり軸受31と、前側外輪側間座36と、前側内輪側間座38と、ナット39と、後側転がり軸受41と、後側外輪側間座46と、ナット47と、後側内輪側間座48と、駆動モータ51と、変位センサ100と、ハウジング311と、を有している。
【0074】
軸受装置310は、固定部材であるハウジング311に対して、中空状の回転部材21(スピンドル軸)が前側転がり軸受31及び後側転がり軸受41によって回転自在に支持されている。回転部材21は、前側転がり軸受31と後側転がり軸受41との間に配置された駆動モータ51によって回転駆動される。
【0075】
後側内輪側間座48は、回転部材21に嵌合している。後側内輪側間座48の前端部間座48aの径方向外面(外周面)48dが変位センサ100と対向している。以下の記載において、前端部間座48aの径方向外面48dを対向面と称する。対向面48dは、変位センサ100によって変位センサ100と前端部間座48aとの間の距離を測定するための測定面である。対向面48dは、最も前方の軸受であるアンギュラ玉軸受31aよりも後方に配置されている。対向面48dの位置は、回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)又は回転部材21の径の変化により変化する。
【0076】
変位センサ100は、自由側軸受である後側転がり軸受41近傍に設置されている。変位センサ100は、ハウジング311に保持されており、回転部材21の回転軸Pと直交する面上に定義される円の円周上において、3つ以上の位置に設けられる。変位センサ100は、回転部材21の回転軸Pと直交する方向において、対向面48dに対向して設けられている。変位センサ100は、対向面48dとの距離を測定し、測定した距離に応じた電気信号を制御装置20の軸荷重測定部101に出力する。変位センサ100は、軸受装置310の非回転体側に設置されており、変位センサ100の測定面は、軸受装置310の回転体側と対向している。
【0077】
なお、本実施形態に係る制御装置は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。また、軸受装置310の動作は上記第1の実施形態に係る軸受装置10と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0078】
本実施形態では、後側転がり軸受41よりも駆動モータ51に近い位置を変位センサ100の測定面にすることにより、駆動モータ51から後側転がり軸受41へ流れる熱量を容易に推定することができる。
【0079】
(第5実施形態)
本発明に係る工作機械の主軸装置の第5実施形態における構成は、
図1において軸受装置10の代わりに軸受装置410を有する以外は同一構成であるので、その説明を省略する。
【0080】
次に、本発明に係る軸受装置410の第5実施形態における構成について、
図6を参照して説明する。
図6において、左方向を前方向及び右方向を後方向として説明する。なお、
図6においては、軸受装置410の一部を記載すると共に、変位センサ及び駆動モータに接続されている制御装置の記載を省略する。また、
図6において
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0081】
軸受装置410は、回転部材21と、ナット39と、後側転がり軸受41と、後側外輪側間座46と、ナット47と、後側内輪側間座48と、駆動モータ51と、変位センサ100と、ハウジング411と、前側転がり軸受431と、前側外輪側間座436と、前側内輪側間座438と、を有している。
【0082】
軸受装置410は、固定部材であるハウジング411に対して、中空状の回転部材21(スピンドル軸)が前側転がり軸受431及び後側転がり軸受41によって回転自在に支持されている。回転部材21は、前側転がり軸受431と後側転がり軸受41との間に配置された駆動モータ51によって回転駆動される。
【0083】
前側転がり軸受431は、ハウジング411と回転部材21との間に設けられており、背面組合せとなるように配置された一対のアンギュラ玉軸受431a及び431bで構成されている。アンギュラ玉軸受431a及び431bの各々は、静止側軌道輪である外輪433と、回転側軌道輪である内輪434と、静止側軌道である外輪軌道溝と回転側軌道である内輪軌道溝との間に、接触角を持って配置された転動体としての複数の玉435と、を備えている。つまり、各軸受431a、431bは、内輪434と、外輪433と、内輪434と外輪433との間に回転可能に配置された玉435を有している。
【0084】
各アンギュラ玉軸受431a及び431bは、ハウジング411に外輪側間座436を介して外輪433が内嵌され、ハウジング411にボルト締めされた前側軸受外輪押え37によって固定されている。
【0085】
また、各アンギュラ玉軸受431a及び431bの内輪434は、回転部材21に内輪側間座438を介して外嵌され、回転部材21に締結されたナット39によって回転部材21に固定されている。したがって、前側転がり軸受431によって回転部材21の回転軸P方向の位置が位置決めされている。
【0086】
アンギュラ玉軸受431aの内輪434は、アンギュラ玉軸受431aの外輪433よりも後方に延設されている。アンギュラ玉軸受431aの内輪434の径方向外面(外周面)434aが変位センサ100と対向している。以下の記載において、アンギュラ玉軸受431aの内輪434の径方向外面434aを対向面と称する。対向面434aは、変位センサ100によって変位センサ100とアンギュラ玉軸受431aの内輪434との間の距離を測定するための測定面である。対向面434aは、最も前方の軸受であるアンギュラ玉軸受431aよりも後方に配置されている。対向面434aの位置は、回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)又は回転部材21の径の変化により変化する。
【0087】
前側外輪側間座436は、一対のアンギュラ玉軸受431aとアンギュラ玉軸受431bとの間に配置される中間部間座436aと、前側転がり軸受431よりも後方の後端部間座436bと、を有している。
【0088】
前側内輪側間座438は、回転部材21に嵌合している。前側内輪側間座438は、前側転がり軸受431よりも前方の前端部間座438aと、一対のアンギュラ玉軸受431aとアンギュラ玉軸受431bとの間に配置される中間部間座438bと、前側転がり軸受431よりも後方の後端部間座438cと、を備えている。
【0089】
変位センサ100は、回転部材21の回転軸Pと直交する方向において、対向面434aに対向して設けられている。変位センサ100は、対向面434aとの距離を測定し、測定した距離に応じた電気信号を制御装置20の軸荷重測定部101に出力する。変位センサ100は、軸受装置410の非回転体側に設置されており、変位センサ100の測定面は、軸受装置410の回転体側と対向している。
【0090】
なお、本実施形態に係る制御装置は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。また、軸受装置410の動作は上記第1の実施形態に係る軸受装置10と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0091】
本実施形態では、前側転がり軸受431の内輪434の対向面434aを変位センサ100の測定面にすることにより、前側転がり軸受431の内輪434の径の変化をより厳密に測定することができる。
【0092】
(第6実施形態)
本発明に係る工作機械の主軸装置の第6実施形態における構成は、
図1において軸受装置10の代わりに軸受装置510を有する以外は同一構成であるので、その説明を省略する。
【0093】
次に、本発明に係る軸受装置510の第6実施形態における構成について、
図7を参照して説明する。
図6において、左方向を前方向及び右方向を後方向として説明する。なお、
図6においては、軸受装置410の一部を記載すると共に、変位センサ及び駆動モータに接続されている制御装置の記載を省略する。また、
図6において
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0094】
軸受装置510は、回転部材21と、ナット39と、後側転がり軸受41と、後側外輪側間座46と、ナット47と、後側内輪側間座48と、駆動モータ51と、変位センサ500と、ハウジング511と、前側転がり軸受531と、前側外輪側間座536と、前側内輪側間座538と、を有している。
【0095】
軸受装置510は、固定部材であるハウジング511に対して、中空状の回転部材21(スピンドル軸)が前側転がり軸受531及び後側転がり軸受41によって回転自在に支持されている。回転部材21は、前側転がり軸受531と後側転がり軸受41との間に配置された駆動モータ51によって回転駆動される。
【0096】
前側転がり軸受531は、ハウジング511と回転部材21との間に設けられると共に、背面組合せとなるように配置された一対のアンギュラ玉軸受531a及び531bで構成されている。アンギュラ玉軸受531a及び531bの各々は、静止側軌道輪である外輪533と、回転側軌道輪である内輪534と、静止側軌道である外輪軌道溝と回転側軌道である内輪軌道溝との間に、接触角を持って配置された転動体としての複数の玉535と、を備えている。つまり、各軸受531a、531bは、内輪534と、外輪533と、内輪534と外輪533との間に回転可能に配置された玉535を有している。
【0097】
各アンギュラ玉軸受531a及び531bは、ハウジング511に外輪側間座536を介して外輪533が内嵌され、ハウジング511にボルト締めされた前側軸受外輪押え37によって固定されている。
【0098】
また、各アンギュラ玉軸受531a及び531bの内輪534は、回転部材21に内輪側間座538を介して外嵌され、回転部材21に締結されたナット39によって回転部材21に固定されている。したがって、前側転がり軸受531によって回転部材21の回転軸P方向の位置が位置決めされている。
【0099】
アンギュラ玉軸受531aの外輪533及び内輪534の各々は、アンギュラ玉軸受531bの外輪533及び内輪534の各々よりも回転軸P方向の長さが長い。アンギュラ玉軸受531aの外輪533は、変位センサ500を保持している。内輪534の径方向外面(外周面)534aが変位センサ500と対向している。以下の記載において、アンギュラ玉軸受531aの内輪534の径方向外面534aを対向面と称する。対向面534aは、変位センサ100によって変位センサ500とアンギュラ玉軸受531aの内輪534との間の距離を測定するための測定面である。対向面534aは、最も前方の軸受であるアンギュラ玉軸受531aよりも後方に配置されている。対向面534aの位置は、回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)又は回転部材21の径の変化により変化する。
【0100】
前側外輪側間座536は、回転部材21に嵌合している。前側外輪側間座536は、一対のアンギュラ玉軸受531aとアンギュラ玉軸受531bとの間に配置される中間部間座536aと、前側転がり軸受531よりも後方の後端部間座536bと、を有している。
【0101】
前側内輪側間座538は、回転部材21に嵌合している。前側内輪側間座538は、前側転がり軸受531よりも前方の前端部間座538aと、一対のアンギュラ玉軸受531aとアンギュラ玉軸受531bとの間に配置される中間部間座538bと、前側転がり軸受531よりも後方の後端部間座538cと、を備えている。
【0102】
変位センサ500は、回転部材21の回転軸Pと直交する面上に定義される円の円周上において、3つ以上の位置に設けられる。つまり、本実施形態では、変位センサ500が3つ設けられる。
【0103】
変位センサ500は、アンギュラ玉軸受531aの外輪533に保持されている第1のコネクタ500aと、第1のコネクタ500aと挿抜自在に嵌合すると共にハウジング511を挿通して制御装置20に接続している第2のコネクタ500bと、を有している。
【0104】
変位センサ500の第1コネクタ500aは、回転部材21の回転軸Pと直交する方向において、対向面534aに対向して設けられている。変位センサ500は、対向面534aとの距離を測定し、測定した距離に応じた電気信号を制御装置20の軸荷重測定部101に出力する。変位センサ500は、軸受装置510の非回転体側に設置されており、変位センサ500の測定面は、軸受装置510の回転体側と対向している。
【0105】
変位センサ500は、渦電流変位センサ、静電容量変位センサ、レーザ変位計またはエアギャップセンサ等の非接触変位センサである。
【0106】
なお、本実施形態に係る制御装置は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。また、軸受装置510の動作は上記第1の実施形態に係る軸受装置10と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0107】
本実施形態では、アンギュラ玉軸受531aの外輪533に変位センサ500を保持させて、変位センサ500と外輪533とを一体にすることにより、変位センサ500と対向面534aとのギャップ量を予め調整しておくことができる。
【0108】
また、本実施形態では、変位センサ500と外輪533とを一体にすることにより、回転部材21の回転軸Pの軸変位ベクトルと、回転部材21の径の変化と、を測定する際における、ハウジング511と外輪533との間に生じるずれの影響を回避することができる。
【0109】
また、本実施形態では、変位センサ500と制御装置20とを有線で接続する場合において、変位センサ500をコネクタ式として第1のコネクタ500aを外輪533に保持させて組付けした後に、第2のコネクタ500bを接続することができるため、変位センサ500と制御装置20とを接続する信号線が断線することなく変位センサ500を設置することができる。
【0110】
また、本実施形態では、内輪534の対向面534aを測定面とすることにより、前側転がり軸受531の内輪534の径の変化を厳密に測定することができる。
【0111】
(第7実施形態)
本発明に係る工作機械の主軸装置の第7実施形態における構成は、
図1において軸受装置10の代わりに軸受装置610を有する以外は同一構成であるので、その説明を省略する。
【0112】
次に、本発明に係る軸受装置610の第7実施形態における構成について、
図8を参照して説明する。
図8において、左方向を前方向及び右方向を後方向として説明する。なお、
図8においては、軸受装置610の一部を記載すると共に、変位センサ及び駆動モータに接続されている制御装置の記載を省略する。また、
図8において
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0113】
軸受装置610は、回転部材21と、ナット39と、後側転がり軸受41と、後側外輪側間座46と、ナット47と、後側内輪側間座48と、駆動モータ51と、変位センサ600と、ハウジング611と、前側転がり軸受631と、前側外輪側間座636と、前側内輪側間座638と、を有している。
【0114】
軸受装置610は、固定部材であるハウジング611に対して、中空状の回転部材21(スピンドル軸)が前側転がり軸受631及び後側転がり軸受41によって回転自在に支持されている。回転部材21は、前側転がり軸受631と後側転がり軸受41との間に配置された駆動モータ51によって回転駆動される。
【0115】
前側転がり軸受631は、ハウジング611と回転部材21との間に設けられていると共に、背面組合せとなるように配置された一対のアンギュラ玉軸受631a及び631bで構成されている。アンギュラ玉軸受631a及び631bの各々は、静止側軌道輪である外輪633と、回転側軌道輪である内輪634と、静止側軌道である外輪軌道溝と回転側軌道である内輪軌道溝との間に、接触角を持って配置された転動体としての複数の玉635と、を備えている。つまり、各軸受631a、631bは、内輪634と、外輪633と、内輪634と外輪633との間に回転可能に配置された玉635を有している。
【0116】
各アンギュラ玉軸受631a及び631bは、ハウジング611に外輪側間座636を介して外輪633が内嵌され、ハウジング611にボルト締めされた前側軸受外輪押え37によって固定されている。
【0117】
また、各アンギュラ玉軸受631a及び631bの内輪634は、回転部材21に内輪側間座638を介して外嵌され、回転部材21に締結されたナット39によって回転部材21に固定されている。したがって、前側転がり軸受631によって回転部材21の回転軸P方向の位置が位置決めされている。
【0118】
アンギュラ玉軸受631aの外輪633は、アンギュラ玉軸受631aの内輪634よりも後方に延設されていると共に、変位センサ600を保持している。
【0119】
前側外輪側間座636は、一対のアンギュラ玉軸受631aとアンギュラ玉軸受631bとの間に配置される中間部間座636aと、前側転がり軸受631よりも後方の後端部間座636bと、を有している。
【0120】
前側内輪側間座638は、回転部材21に嵌合している。前側内輪側間座638は、前側転がり軸受631よりも前方の前端部間座638aと、一対のアンギュラ玉軸受631aとアンギュラ玉軸受631bとの間に配置される中間部間座638bと、前側転がり軸受631よりも後方の後端部間座638cと、を備えている。中間部間座638bの径方向外面(外周面)638dが変位センサ600と対向している。以下の記載において、中間部間座638bの径方向外面638dを対向面と称する。対向面638dは、変位センサ600によって変位センサ600と中間部間座638bとの間の距離を測定するための測定面である。対向面638dは、最も前方の軸受であるアンギュラ玉軸受631aよりも後方に配置されている。対向面638dの位置は、回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)又は回転部材21の径の変化により変化する。
【0121】
変位センサ600は、回転部材21の回転軸Pと直交する面上に定義される円の円周上において、3つ以上の位置に設けられる。つまり、本実施形態では、変位センサ600が3つ設けられる。
【0122】
変位センサ600は、アンギュラ玉軸受631aの外輪633に保持されている第1のコネクタ600aと、第1のコネクタ600aと挿抜自在に嵌合すると共にハウジング611を挿通して制御装置20に接続している第2のコネクタ600bと、を有している。
【0123】
変位センサ600の第1コネクタ600aは、回転部材21の回転軸Pと直交する方向において、対向面638dに対向して設けられている。変位センサ600は、対向面638dとの距離を測定し、測定した距離に応じた電気信号を制御装置20の軸荷重測定部101に出力する。変位センサ600は、軸受装置610の非回転体側に設置されており、変位センサ600の測定面は、軸受装置610の回転体側と対向している。
【0124】
変位センサ600は、渦電流変位センサ、静電容量変位センサ、レーザ変位計またはエアギャップセンサ等の非接触変位センサである。
【0125】
なお、本実施形態に係る制御装置は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。また、軸受装置610の動作は上記第1の実施形態に係る軸受装置10と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0126】
本実施形態では、アンギュラ玉軸受631aの外輪633に変位センサ600を保持させることにより、変位センサ600と対向面638dとのギャップ量を予め調整しておくことができる。
【0127】
また、本実施形態では、変位センサ600と外輪633とを一体にすることにより、回転部材21の回転軸Pの軸変位ベクトルと、回転部材21の径の変化と、を測定する際における、ハウジング611と外輪633との間に生じるずれの影響を回避することができる。
【0128】
(第8実施形態)
本発明に係る工作機械の主軸装置の第8実施形態における構成は、
図1において軸受装置10の代わりに軸受装置710を有する以外は同一構成であるので、その説明を省略する。
【0129】
次に、本発明に係る軸受装置710の第8実施形態における構成について、
図9を参照して説明する。
図9において、左方向を前方向及び右方向を後方向として説明する。なお、
図9においては、軸受装置710の一部を記載すると共に、変位センサ及び駆動モータに接続されている制御装置の記載を省略する。また、
図9において
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0130】
軸受装置710は、回転部材21と、前側転がり軸受31と、前側外輪側間座36と、ナット39と、後側転がり軸受41と、後側外輪側間座46と、ナット47と、後側内輪側間座48と、駆動モータ51と、変位センサ100と、ハウジング711と、前側内輪側間座738と、を有している。
【0131】
軸受装置710は、固定部材であるハウジング711に対して、中空状の回転部材21(スピンドル軸)が前側転がり軸受31及び後側転がり軸受41によって回転自在に支持されている。
【0132】
回転部材21は、前側転がり軸受31と後側転がり軸受41との間に配置された駆動モータ51によって回転駆動される。回転部材21の径方向外面(外周面)21aが変位センサ100と対向している。以下の記載において、回転部材21の径方向外面21aを対向面と称する。対向面21aは、変位センサ100によって変位センサ100と回転部材21との間の距離を測定するための測定面である。対向面21aは、最も前方の軸受であるアンギュラ玉軸受31aよりも後方に配置されている。対向面21aの位置は、回転軸Pのラジアル方向の変位(芯ずれ)又は回転部材21の径の変化により変化する。
【0133】
前側内輪側間座738は、回転部材21に嵌合している。前側内輪側間座738は、前側転がり軸受31よりも前方の前端部間座738aと、一対のアンギュラ玉軸受31aとアンギュラ玉軸受31bとの間に配置される中間部間座738bと、を備えている。
【0134】
変位センサ100は、ハウジング711に保持されており、回転部材21の回転軸Pと直交する面上に定義される円の円周上において、3つ以上の位置に設けられる。
【0135】
変位センサ100は、回転部材21の回転軸Pと直交する方向において、対向面21aに対向して設けられている。変位センサ100は、対向面21aとの距離を測定し、測定した距離に応じた電気信号を制御装置20の軸荷重測定部101に出力する。変位センサ100は、軸受装置710の非回転体側に設置されており、変位センサ100の測定面は、軸受装置710の回転体側と対向している。
【0136】
なお、本実施形態に係る制御装置は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。また、軸受装置610の動作は上記第1の実施形態に係る軸受装置10と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0137】
本実施形態では、回転部材21に測定面を設けることにより、構成要素を減らして簡易な構成にすることができると共に、間座と回転部材21との嵌め合いが隙間嵌めの際に生じる間座と回転部材の回転軸Pとのずれによる変位センサ100と測定面21aとのギャップ量の誤差の影響を無くすることができる。
【0138】
(第9実施形態)
<工作機械の主軸装置の構成>
本発明に係る工作機械の主軸装置の第9実施形態における構成について、
図10を参照して説明する。
【0139】
工作機械の主軸装置200は、圧力損失測定部221と、圧縮気体供給部230と、軸受装置240と、演算処理部PUと、表示部DPと、を有している。
【0140】
具体的には、工作機械の主軸装置200は、圧縮気体を利用して回転部材21のラジアル方向変位を検出する変位検出部201と、変位検出部201に圧縮気体を供給して、前側外輪側間座36及び前側内輪側間座38間の隙間に応じた圧力損失を測定する圧力損失測定部221とを1組として備えている。これら変位検出部201及び圧力損失測定部221の組を円周方向に複数組(ここでは2組)備えている。また、変位測定部200は、各圧力損失測定部221の測定結果に基づいて回転部材21に作用する荷重量を演算する演算処理部PUを備えている。
【0141】
変位検出部201は、回転部材21の回転軸Pと直交する面上に定義される円Rの円周上において、3つ以上の方向に設けられる。変位検出部201は、回転部材21の回転軸P方向の何れの位置にも配置可能である。より好ましくは、最前列軸受の後方近傍に配置されることが望ましい。
【0142】
変位検出部201のそれぞれは、前側転がり軸受31の前側外輪側間座36及び前側内輪側間座38を含んで構成されている。すなわち、前側外輪側間座36は、アンギュラ玉軸受31a及び31bの外輪33の互いに対向する軸方向端面に接触する外周側リング部36aと、外周側リング部36aより幅狭の内周側リング部36bとを備えている。
【0143】
外周側リング部36aには軸方向の中央部に外側から内側に窪む凹部36cが形成されている。内周側リング部36bは、内周面が前側内輪側間座38の外周面に所定の被測定隙間gを形成するように対向している。
【0144】
そして、外周側リング部36aの凹部36cの底部から内周面に半径方向に延長する漏斗状の圧縮気体吐出ノズル202が形成され、圧縮気体吐出ノズル202から圧縮気体が前側外輪側間座36及び前側内輪側間座38間の被測定隙間gに吐出される。
【0145】
ここで、工作機械のスピンドル軸は、多くの場合において、工具を把持するための機構として軸内径部にドローバを設けるため、中空軸となっており、また、加工効率向上のため、高速回転させることを想定している。このため、特に、高速回転使用時において、回転部材21、前側内輪側間座38等の回転部材は、遠心力により数~数10μm程度膨張する。さらに、スピンドル回転中は、ハウジング241と回転部材21の間で温度差が生じ、多くの場合回転部材21の方が高くなるため、ハウジング241と回転部材21の間の隙間量は数~数10μm程度小さくなる。
【0146】
また、工作機械スピンドルにおいて、前側外輪側間座36と前側内輪側間座38の間等の、ハウジング241と回転部材21間に形成される隙間は、スピンドル内部や転がり軸受31への異物の侵入を防ぐため、大きくてもコンマ数mm程度で設定される。
【0147】
そこで、前側外輪側間座36及び前側内輪側間座38間の被測定隙間gは、回転部材21の静止時において0.05mm~0.5mmに設定されるが、回転部材21のラジアル方向変位に対する圧力損失の変化量は、隙間量が小さいほど大きくなるため、被測定隙間gは、0.05mm~0.2mmに設定することが好ましい。
【0148】
運転中の前側外輪側間座36及び前側内輪側間座38間の被測定隙間gを精度良く測定するため、変位検出部201に設けられる前側内輪側間座38は、可能な限り回転部材21と同軸となることが望ましい。そのため、前側内輪側間座38は、軸に対して、中間ばめ若しくは締まりばめで嵌合されることが望ましい。
【0149】
一方、ハウジング241には、圧縮気体吐出ノズル202と同軸的に外周面から前側外輪側間座36の凹部36cに達して2段階に内径が縮小する円形の開口部203が形成されている。開口部203には、
図10に示すように、後側側壁に形成された圧縮気体供給通路204の一端が開口されている。圧縮気体供給通路204の他端は、
図10に示すように、ハウジング241に形成された後端に開口して軸方向に前方に延長して形成された圧縮気体供給通路205に連通している。
【0150】
また、開口部203内には、
図2(a)及び(b)に示すように、圧縮気体供給通路204から供給される圧縮気体の方向を軸方向から半径方向に方向変換して圧縮気体吐出ノズル202に供給する気体方向変換部としての気体接続部206が装着されている。気体接続部206は、開口部203に内嵌可能な形状、例えば開口部203の内周形状と同一形状の外周形状を有し、内部に開口部203に連通する気体通路66a及び気体通路66aに一端が連通し、他端が圧縮気体吐出ノズル202に連通する気体通路66bが形成されている。気体接続部206の側壁と開口部203の内壁との間にはOリング67が配置され、気体接続部206の底面と凹部36cの底面との間にも同様にOリング68が配置され、これらOリング67及び68によって圧縮空気の漏れを防止している。
【0151】
また、気体接続部206は、
図2(a)及び(b)に示すように、外周面の段部が開口部203の内周面の段部と接触することにより、半径方向に位置決めされている。また、気体接続部206は、半径方向外側の端面がハウジング241の外周面にねじ止めされた押え片209に接触して開口部203からの抜け出しが防止されている。尚、気体接続部206は、押え片209で抜け出しを防止する場合に限らず、気体接続部206の外周面側にフランジ部を形成し、このフランジ部をねじ止めすることもでき、気体接続部206のハウジング241に対する固定方法は任意の固定方法をとることができる。
【0152】
圧力損失測定部221には、
図1に示すように、前側転がり軸受31及び後側転がり軸受41に潤滑油を供給する図示しないオイルエア潤滑やオイルミスト潤滑による潤滑系統に圧縮気体供給部230から圧縮気体が供給される。圧縮気体供給部230は、圧縮気体を吐出するコンプレッサ231と、コンプレッサ231から吐出される圧縮気体を調圧する潤滑系統用のレギュレータ232と、レギュレータ232と並列に接続された圧力損失測定用のレギュレータ233とを備えている。尚、第1実施形態ではオイルエア潤滑やオイルミスト潤滑に限定されない。例えば、グリース潤滑などにも適用可能である。潤滑油やグリースは潤滑剤の例である。潤滑系統は、軸受31及び41に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部である。
【0153】
圧力損失測定部221は、圧縮気体の供給経路に介挿された絞り222と、絞りの上流側及び下流側の差圧を検出する差圧センサ223とを備えている。
【0154】
絞り222は、レギュレータ233とハウジング241に形成された圧縮気体供給通路205の開口とを連結する配管224に介挿されている。絞り222の絞り量は、回転部材21の回転中で回転部材21のラジアル方向変位が“0”であるときに差圧センサ223で検出される差圧検出値が予め設定した設定値となるように設定する。これにより、絞り222の下流側の圧力が絞り222から変位検出部201までの配管長さ及び配管径による流路抵抗を考慮した回転部材21のラジアル方向変位のみに応じた圧力損失を表すようになる。
【0155】
差圧センサ223は、低圧側が絞り222の下流側の配管224に接続され、高圧側が配管225を介してレギュレータ233に接続されている。差圧センサ223では、レギュレータ233から供給される圧縮空気圧と変位検出部201に接続された絞り222の下流側圧力すなわち変位検出部201での回転部材21の変位に応じた圧力損失との差圧を検出し、検出した差圧検出値をアナログ値又はデジタル値として出力する。
【0156】
演算処理部PUは、例えばマイクロコンピュータ等の演算処理装置で構成され、各圧力損失測定部221の差圧センサ223から出力される差圧検出値が入力され、この差圧検出値に基づいて回転部材21のラジアル方向の換算変位量を算出する。また、演算処理部PUは、算出した回転部材21のラジアル方向の換算変位量に予め算出した圧縮気体吐出ノズル202の軸方向位置における軸剛性値を乗算することにより、回転部材21に与えられる荷重量を演算し、演算結果を表示器DPに出力して表示する。ここで、軸剛性値は、荷重点、前側転がり軸受31の軸受位置、軸受剛性、軸剛性及び変位検出部201の圧縮気体吐出ノズル202の軸方向位置等に基づいて算出する。
【0157】
尚、回転部材21に与えられる荷重量は、上述した演算によって算出する場合に限らない。例えば、既知の荷重を回転部材21に与えて、そのときの圧力損失測定部221の差圧センサ223から出力される差圧検出値を測定することを繰り返すことにより、荷重と差圧検出値との関係を表す荷重算出用マップを作成し、これを演算処理部PUの記憶部に記憶しておく。この場合には、切削時の差圧センサ223で検出した差圧検出値を基に荷重算出用マップを参照することにより、差圧検出値から直接荷重量を算出できる。このようにすると、差圧センサ223の差圧検出値を変位量に換算する必要がなく、荷重量を容易に算出できる。このとき、荷重算出用マップを使用する代わりに荷重算出用マップの特性線の方程式を求め、求めた方程式に差圧センサ223の差圧検出値を代入することにより荷重量を算出することもできる。
【0158】
尚、変位検出部201及び圧力損失測定部221の組は、前述したように2組以上設けるので、各圧力損失測定部221は、
図1に示すように、レギュレータ233に並列に接続されている。
【0159】
<軸受装置の構成>
本発明に係る軸受装置の第9実施形態における構成について、
図10を参照して説明する。なお、
図10において
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0160】
軸受装置240は、回転部材21と、前側転がり軸受31と、前側外輪側間座36と、前側内輪側間座38と、ナット39と、後側転がり軸受41と、後側外輪側間座46と、ナット47と、後側内輪側間座48と、駆動モータ51と、ハウジング241と、を有している。
【0161】
ハウジング241は、前側転がり軸受31と駆動モータ51との間で2分割された前側円筒部242と後側円筒部243とで構成されている。
【0162】
前側円筒部242は、外径が小さい前側の小外径部242aと外径が小外径部242aに比較して大きい後側の大外径部242bとで構成されている。これら小外径部242a及び大外径部242bの内周面は、等しい内径に形成されているが、小外径部242aの前端側から後端側にかけて前側転がり軸受31を収納する軸受収納段差部242cが形成されている。
【0163】
後側円筒部243は、逆に、内径が大きい大内径部243aと内径が大内径部243aより小さい小内径部243bとで形成されている。
【0164】
各アンギュラ玉軸受31a及び31bは、ハウジング241の前側円筒部242に形成された軸受収納段差部242cに前側外輪側間座36を介して外輪33が内嵌され、ハウジング241の前側円筒部242にボルト締めされた前側軸受外輪押え37によって固定されている。
【0165】
後側転がり軸受41の外輪42は、ハウジング241の後側円筒部243の小内径部243bに内嵌され、小内径部243bにボルト締結された後側軸受押え45によって後側外輪側間座46を介して小内径部243bに固定されている。
【0166】
駆動モータ51は、ハウジング241の後側円筒部242の大内径部243aに内嵌されさたステータ52と、ステータ52の内周側に間隙を介して対向する回転部材21に外嵌されたロータ53とで構成されている。
【0167】
<工作機械の主軸装置の動作>
本発明に係る工作機械の主軸装置の第9実施形態における動作について、
図10を参照して説明する。
【0168】
先ず、圧縮気体供給部230から圧力損失測定部221に圧縮気体を供給し、前述したように、軸受装置240の回転部材21を回転させた状態で、回転部材21のラジアル方向変位が“0”である状態で、圧力損失測定部221の絞り222の絞り量を、差圧センサ223で検出される差圧検出値が予め設定された設定値となるように調整しておく。
【0169】
そして、軸受装置240の回転部材21が停止している状態で、コンプレッサ231を始動することにより、圧縮気体をレギュレータ232で調圧して、図示しない前側転がり軸受31及び後側転がり軸受41に対する潤滑油供給系統に設定圧の圧縮気体を供給して、前側転がり軸受31及び後側転がり軸受41に対する潤滑剤の供給を開始する。
【0170】
これと同時に、又は前後してコンプレッサ231から吐出される圧縮気体をレギュレータ233で調圧して圧力損失測定部221に供給する。
【0171】
圧力損失測定部221に供給された圧縮気体は絞り222を介してハウジング241の圧縮気体供給通路205に入力される。圧縮気体供給通路205に入力された圧縮気体は、圧縮気体供給通路204から気体接続部206で軸方向から半径方向に90度方向転換されて圧縮気体吐出ノズル202に供給される。
【0172】
圧縮気体吐出ノズル202に供給された圧縮気体は、前側外輪側間座36及び前側内輪側間座38間の被測定隙間gに供給され、被測定隙間gの間隔すなわち回転部材21のラジアル方向変位が“0”の状態から大きくなると被測定隙間gの間隔が小さくなり、これに応じて圧力損失が小さくなり、逆にラジアル方向変位が小さくなると被測定隙間gの間隔が大きくなり、これに応じて圧力損失が大きくなる。ここで、被測定隙間gは、上述したように、中空軸の回転部材21が高速回転すると、回転部材21や前側内輪側間座38などの回転部材が遠心力により膨張し、また、ハウジング241に対して回転部材21が高温化することに起因して間隙が小さくなる。
【0173】
したがって、回転部材21のラジアル方向変位が“0”である無負荷状態では、差圧センサ223で検出される差圧検出値が予め設定した設定値となり、回転部材21のラジアル変位が“0”であることを表す差圧検出値が演算処理部PUに出力される。
【0174】
このため、演算処理部PUでは、差圧センサ223から入力される差圧検出値を回転部材21のラジアル方向変位に換算し、換算したラジアル方向変位に予め設定した軸剛性値を乗算することにより、回転部材21に負荷された荷重量を算出する。算出された荷重量は表示器DPに出力されて表示される。この場合、ラジアル方向変位が“0”であるので、表示器DPに表示される荷重量は“0”となる。
【0175】
この状態で、例えば切削を開始すると、回転部材21に切削荷重が加わることになり、この切削荷重に応じたラジアル方向変位が回転部材21に生じる。このラジアル方向変位は、回転部材21に加わる切削荷重の方向に依存する。
【0176】
このため、回転部材21のラジアル方向変位に応じて複数の変位検出部201の圧縮気体吐出ノズル202から吐出される圧縮気体にラジアル方向変位に応じた圧力損失が生じる。この圧力損失が圧力損失測定部221の差圧センサ223で差圧検出値として検出される。
【0177】
検出された差圧検出値が演算処理部PUに供給されることにより、演算処理部PUで前述したように差圧検出値を回転部材21のラジアル方向変位に換算し、換算したラジアル方向変位に予め設定した軸剛性値を乗算することにより、回転部材21に負荷された荷重量を算出する。算出された荷重量は表示器DPに出力されて表示される。
【0178】
このように、本実施形態によると、前側転がり軸受31の前側外輪側間座36及び前側内輪側間座38を含んで構成される変位検出部201に圧縮気体を供給することにより、圧縮気体吐出ノズル202から圧縮気体が前側外輪側間座36及び前側内輪側間座38間の被測定隙間gに吐出される。このため、被測定隙間gの間隔すなわち回転部材21のラジアル方向変位に応じた圧縮気体の圧力損失が生じる。圧力損失をハウジング241の外側に設けた圧力損失測定部221の差圧センサ223で検出し、検出した差圧検出値を演算処理部PUに供給することにより、回転部材21に負荷される荷重量を算出することができる。
【0179】
したがって、変位検出部201では所定の被測定隙間gを介して対向する前側外輪側間座36及び前側内輪側間座38、圧縮気体供給通路204、気体接続部206及び圧縮気体吐出ノズル202を設けるだけの簡易な構成で回転部材21のラジアル方向変位に応じた圧力損失を生じさせることができる。このため、変位検出部201に電気的に動作する部品を必要としないので、配線の引き回しや電気的絶縁を考慮する必要がない。
【0180】
また、圧力損失測定部221では、圧縮気体を絞り222を介して変位検出部201に供給し、絞り222の下流側すなわち変位検出部201側の圧力と圧力損失測定部221に供給される圧縮気体の元圧との差圧を検出することで変位検出部201での圧力損失を測定することができる。そして、検出した差圧検出値を回転部材21のラジアル方向変位に変換してから回転部材21に負荷される荷重量を算出したり、或いは差圧から直接回転部材21に負荷される荷重量を算出したりすることができる。
【0181】
このため、回転部材21を転がり軸受で回転自在に支持する場合に、簡単な構成で、圧縮気体を利用して回転部材21のラジアル方向変位を算出したり、回転部材21に負荷される荷重量を算出したりすることができる。
【0182】
尚、本実施形態では、ハウジング241内に軸方向に延長する圧縮気体供給通路204及び65を形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、気体接続部206の気体通路66bを外周側に延長して開口させ、この開口部に圧力損失測定部221を接続するようにしてもよい。或いは、圧縮気体供給通路205を省略して、圧縮気体供給通路204をハウジング241の外周面に開口させ、この開口部に圧力損失測定部221を接続するようにしてもよい。
【0183】
また、本実施形態では、軸受装置240の回転部材21を回転させた状態で、回転部材21のラジアル方向変位が“0”である状態で、圧力損失測定部221の絞り222の絞り量を、差圧センサ223で検出される差圧検出値が予め設定された設定値となるように調整しておく場合について説明した。しかしながら、本発明は、この調整に限定されるものではない。例えば、外部負荷なしで軸受装置240の回転部材21が停止している状態(0回転の状態)で圧力損失測定部221の絞り222により各圧力損失測定部221の差圧をある値に調整し、この状態を変位0として設定しておく。そして、回転部材21の回転数を変化させると、各圧力損失測定部221の差圧が回転部材21の回転数に応じて変化し、それにより変位0と設定した差圧も同量オフセットされる。そして、回転数が安定した後、上記同様の無負荷の状態で外部よりトリガ信号を与え、その時の値を改めて“0”とする。これにより、回転部材21の回転が一定であれば、違う回転数でも上記第1実施形態と同じように測定が可能となる。
【0184】
なお、上記において特定の実施形態が説明されているが、当該実施形態は単なる例示であり、本発明の範囲を限定する意図はない。本明細書に記載された装置及び方法は上記した以外の形態において具現化することができる。また、本発明の範囲から離れることなく、上記した実施形態に対して適宜、省略、置換及び変更をなすこともできる。かかる省略、置換及び変更をなした形態は、請求の範囲に記載されたもの及びこれらの均等物の範疇に含まれ、本発明の技術的範囲に属する。
【0185】
具体的には、第1実施形態乃至第8実施形態において、制御装置20のCPU103によって軸荷重の算出結果に基づいて所定の制御を行うようにしたが、これに限らず、制御装置20の機能を備える単体の電子部品によって軸荷重を算出すると共にその算出結果に基づいて所定の制御を行うようにしてもよい。
【0186】
また、上記の第1実施形態乃至第4実施形態における構成のうちの何れか2つ以上の構成を組み合わせてもよいし、上記の第5実施形態乃至第8実施形態における構成の何れか2つ以上の構成を組み合わせてもよいし、上記の第1実施形態乃至第4実施形態における構成のうちの何れか2つ以上を組み合わせた構成に対して、上記の第5実施形態乃至第8実施形態における構成の何れか1つ又は2つ以上の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0187】
1…工作機械の主軸装置、10…軸受装置、11…ハウジング、20…制御装置、21…回転軸、31…前側転がり軸受、31a,31b…アンギュラ玉軸受、33…外輪、34…内輪、35…玉、36…前側外輪側間座、38…前側内輪側間座、41…後側転がり軸受、46…後側外輪側間座、48…後側内輪側間座、51…駆動モータ、52…ステータ、53…ロータ、100…変位センサ、101…軸荷重測定部、102…モータ駆動回路、103…CPU、R…円、S1,S2,S3…位置