(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】MOSFETの駆動回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/687 20060101AFI20240827BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H03K17/687 A
H02M1/08 A
(21)【出願番号】P 2020018286
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 剛
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101425797(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105406845(CN,A)
【文献】特開2015-033143(JP,A)
【文献】特開2008-099426(JP,A)
【文献】特開平07-030394(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104617546(CN,A)
【文献】国際公開第2020/091356(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00-17/70
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインに設けられたpチャネル型のMOSFETの駆動回路であって、
前記MOSFETのゲートを接地電圧に接続するターンオン経路に設けられた駆動用定電流源と、
前記MOSFETの前記ゲートを電源電位に接続するターンオフ線路に設けられた停止用スイッチング素子と、
前記MOSFETのソースと前記ゲートとの間に接続されたコンデンサと、
前記MOSFETの前記ソースと前記ゲートとの間に接続された第1抵抗素子と、
前記MOSFETの前記ゲートと前記停止用スイッチング素子との間に介挿された第2抵抗素子と、
前記駆動用定電流源と前記停止用スイッチング素子とを対称的にスイッチング制御する制御装置と、
を備えており、
前記MOSFETがターンオンされている間、前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子が直列に接続されて
おり、
前記駆動用定電流源は、NPN型トランジスタであり、前記停止用スイッチング素子は、PNP型トランジスタである、駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、電源ラインに設けられたMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)の駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電源ラインに設けられたMOSFETの駆動回路が開示されている。この駆動回路は、nチャネル型のMOSFETを駆動するものであって、MOSFETのゲートを電源電圧に接続するターンオン経路に設けられた駆動用スイッチング素子と、MOSFETのゲートを接地電圧に接続するターンオフ線路に設けられた停止用スイッチング素子とを備える。駆動用スイッチング素子と停止用スイッチング素子は対称的にスイッチン制御され、これによってMOSFETがターンオン及びターンオフされる。
【0003】
なお、本明細書において、二つの素子等が対称的にスイッチング制御されるとは、一方の素子がオンされるときに他方の素子がオフされ、一方の素子がオフされるときに他方の素子がオンされることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の駆動回路では、MOSFETがターンオンされたときに、MOSFETを過渡的に流れる突入電流が問題となる。このような突入電流を避けるためには、いわゆるゲート抵抗を介挿することが考えられる。しかしながら、電源電圧が有意に変動する電源ラインの場合では、適切なゲート抵抗を設けることが難しい。即ち、電源電圧が高いときは、突入電流を十分に抑制できないおそれがあり、電源電圧が低いときは、スイッチング速度を過剰に制限するおそれがある。また、ターンオン時の突入電流を考慮してゲート抵抗を設けた場合、そのゲート抵抗によってターンオフ時のスイッチング速度が無用に制限されるおそれも生じる。これらの実情を鑑み、本明細書は、電源ラインのMOSFETを安定して駆動し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、電源ラインに設けられたpチャネル型のMOSFETの駆動回路に具現化される。この駆動回路は、MOSFETのゲートを接地電圧に接続するターンオン経路に設けられた駆動用定電流源と、MOSFETのゲートを電源電圧に接続するターンオフ線路に設けられた停止用スイッチング素子と、MOSFETのソースとゲートとの間に接続されたコンデンサと、MOSFETのソースとゲートとの間に接続された第1抵抗素子と、MOSFETのゲートと停止用スイッチング素子との間に介挿された第2抵抗素子と、駆動用定電流源と停止用スイッチング素子とを対称的にスイッチング制御する制御装置とを備える。
【0007】
上記した駆動回路は、MOSFETをターンオンするときに、駆動用定電流源をオンしつつ、停止用スイッチング素子をオフする。その結果、MOSFETのゲートは、駆動用定電流源を介して接地電圧に接続され、MOSFETのゲート電圧(ソース-ゲート間の電位差)は、電源電圧の大きさにかかわらず一定の速度で上昇する。これにより、過大な突入電流の発生が抑制される。なお、ゲート電圧が上昇するときの速度は、駆動用定電流源の定格電流だけでなく、ソース-ゲート間に接続されたコンデンサの容量を用いて自由に設計することができる。
【0008】
加えて、上記した駆動回路では、MOSFETがターンオフされている間、MOSFETのソース-ゲート間に接続された第1抵抗素子には、電源電圧の大きさにかかわらず、駆動用定電流源による定電流が流れ、一定の電圧が発生する。これにより、MOSFETのゲート電圧も、一定の値に維持される。電源電圧の影響を受けないことから、第1抵抗素子の抵抗値に若干の製造誤差が生じても、MOSFETのゲート電圧を許容範囲内へ容易に維持することができる。従って、第1抵抗素子には、高品質な製品(即ち、高価な製品)が必要とされず、比較的に安価な汎用品を採用することができる。
【0009】
さらに、上記した駆動回路は、MOSFETをターンオフするときに、駆動用定電流源をオフしつつ、停止用スイッチング素子をオンする。その結果、MOSFETのゲートは、第2抵抗素子を介して電源電圧に接続され、MOSFETのゲート電圧は速やかに低下する。前述したように、MOSFETがターンオンされていた間、MOSFETのゲート電圧は、電源電圧の大きさにかかわらず一定に維持される。従って、電源電圧が大きく変動する場合でも、その影響を受けることなく、MOSFETを一定の短時間でオフすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の駆動回路10の構成を示す回路ブロック図。
【
図2】実施例2の駆動回路110の構成を示す回路ブロック図。
【
図3】実施例3の駆動回路210の構成を示す回路ブロック図。
【
図4】比較例である従来の駆動回路330の構成を示す回路ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
図1を参照して、実施例1の駆動回路10について説明する。
図1に示すように、本実施例の駆動回路10は、電源2と負荷4との間を接続する電源ライン6に設けられたMOSFET8(SW1)に接続され、当該MOSFET8の動作を制御する。MOSFET8は、pチャネル型のMOSFETであるが、その具体的な構造及び仕様については、特に限定されない。
【0012】
駆動回路10は、駆動用定電流源SW2を備える。駆動用定電流源SW2は、MOSFET8のゲートを、接地電圧GNDに接続するターンオン経路12に設けられている。駆動用定電流源SW2は、スイッチング素子の一種であり、ターンオン経路12を電気的に導通及び遮断する。また、駆動用定電流源SW2は、オンされてターンオン経路12を導通したときに、定電流を通電するように構成されている。特に限定されないが、本実施例における駆動用定電流源SW2は、NPN型トランジスタである。
【0013】
駆動回路10は、停止用スイッチング素子SW3をさらに備える。停止用スイッチング素子SW3は、MOSFET8のゲートを、電源電圧Vinに接続するターンオフ経路14に設けられている。なお、ターンオフ経路14のうち、MOSFET8のゲートから延びる一部の区間は、ターンオン経路12との共通経路となっている。特に限定されないが、本実施例における停止用スイッチング素子SW3は、例えばPNP型トランジスタである。
【0014】
駆動回路10は、コンデンサCと、第1抵抗素子R1と、第2抵抗素子R2と、シャント抵抗R3とをさらに備える。コンデンサCは、MOSFET8のソースとゲートとの間に接続されている。言い換えると、MOSFET8のソースとゲートは、コンデンサCを介して互いに接続されている。第1抵抗素子R1についても、MOSFET8のソースとゲートとの間に接続されている。即ち、第1抵抗素子R1は、コンデンサCに対して並列に接続されており、MOSFET8のソースとゲートは、第1抵抗素子R1を介して互いに接続されている。
【0015】
第2抵抗素子R2は、ターンオン経路12とターンオフ経路14との共通経路に設けられている。即ち、第2抵抗素子R2は、MOSFET8のゲートと駆動用定電流源SW2との間に介挿されているとともに、MOSFET8のゲートと停止用スイッチング素子SW3との間にも介挿されている。但し、他の実施形態として、第2抵抗素子R2は、ターンオン経路12とターンオフ経路14とのそれぞれに対して、個別に設けられてもよい。この場合、それら二つの第2抵抗素子R2は、互い等しい抵抗値を有してもよいし、互いに異なる抵抗値を有してもよい。
【0016】
シャント抵抗R3は、電源ライン6に設けられており、シャント抵抗R3には、電源ライン6に流れる電流に応じた電圧降下が発生する。シャント抵抗R3は、その抵抗に起因する損失を低減するために、例えば第1抵抗素子R1や第2抵抗素子R2と比較して、十分に小さい抵抗値を有するとよい。なお、シャント抵抗R3は、電源ライン6を流れる電流検出素子の一例である。他の実施形態として、シャント抵抗R3に代えて、又は加えて、他の電流検出素子(例えばホール素子)が採用されてもよい。
【0017】
駆動回路10は、制御装置16をさらに備える。制御装置16は、駆動用定電流源SW2と、停止用スイッチング素子SW3とのそれぞれに接続されており、それらの動作を制御する。詳しくは、制御装置16は、駆動用定電流源SW2と停止用スイッチング素子SW3とを対称的にスイッチング制御するように構成されており、それによってMOSFET8をターンオン及びターンオフする。例えば、制御装置16は、駆動用定電流源SW2をオン(導通)するとともに、停止用スイッチング素子SW3をオフ(遮断)することによって、MOSFET8をターンオンすることができる。また、制御装置16は、駆動用定電流源SW2をオフ(遮断)するとともに、停止用スイッチング素子SW3をオン(導通)することによって、MOSFET8をターンオフすることができる。
【0018】
駆動回路10は、保護回路18をさらに備える。保護回路18は、シャント抵抗R3に接続されており、シャント抵抗R3に生じる電圧、即ち、電源ライン6に流れる電流を監視している。そして、保護回路18は、シャント抵抗R3に生じた電圧が、所定の上限値を上回るときに、電源ライン6に流れる電流が過大であると判断して、制御装置16へ所定の異常信号を出力する。制御装置16は、保護回路18から異常信号を受信したときに、MOSFET8をターンオフすることによって、過電流からMOSFET8や負荷4を保護するように構成されている。
【0019】
次に、駆動回路10の動作について説明する。駆動回路10は、MOSFET8をターンオンするときに、駆動用定電流源SW2をオンしつつ、停止用スイッチング素子SW3をオフする。その結果、MOSFET8のゲートは、駆動用定電流源SW2を介して接地電圧GNDに接続され、MOSFET8のゲート電圧(ソース-ゲート間の電位差)は、電源電圧Vinの大きさにかかわらず一定の速度で上昇する。これにより、過大な突入電流の発生が抑制される。なお、ゲート電圧が上昇するときの速度は、駆動用定電流源SW2の定格電流だけでなく、ソース-ゲート間に接続されたコンデンサCの容量を用いて自由に設計することができる。
【0020】
上記の点に関して、
図4に示す比較例を参照しながら説明を補足する。
図4に示す比較例の駆動回路310では、MOSFET8のスイッチング動作が、駆動用のスイッチング素子SW4によって制御される。具体的には、スイッチング素子SW4がオンされると、電源ライン6が二つの抵抗素子R1、R2を介して接地電圧GNDに接続され、二つの抵抗素子R1、R2による分圧比に応じてMOSFET8のソース-ゲート間に電圧(即ち、ゲート電圧)が発生する。これにより、MOSFET8はターンオンされる。このとき、MOSFET8がターンオンされる速度、即ち、ゲート電圧Vgが変化する速度は、二つの抵抗素子R1、R2の分圧比(R1/R2)、二つの抵抗素子R1、R2の合成抵抗(R1+R2)、コンデンサCとMOSFET8のゲートとの合計容量(C)と、電源電圧Vinとで定まり、MOSFET8をターンオンするのに要する所要時間tonは、次の式で表される。
【0021】
Vg=Vin*R1/(R1+R2)*(1-ε^(-ton/(R1*R2/(R1+R2))*C))
よって、
ton=-C*R1*R2/(R1+R2)*ln(1-Vg/(Vin*R1/(R1+R2)))
【0022】
上記の式から明らかなように、所要時間tonは、電源電圧Vinに大きく依存する。例えば、抵抗値R1=24.3kΩ、抵抗値R2=10kΩ、合計容量C=0.68μFとし、MOSFET8のターンオンに要するゲート電圧Vgを2.5Vとした場合、電源電圧Vinが8Vであれば所要時間tonは2.80msecとなる。これに対して、電源電圧Vinが6Vに低下すると、所要時間tonは4.27msに延長され、電源電圧Vinが24.5Vに上昇すれば、所要時間tonは0.75msまで短縮される。このように、従来の構造であると、MOSFET8をターンオンするのに要する所要時間tonが、電源電圧Vinに応じて大幅に変化するので、電源電圧Vinの大きさによっては、過大な突入電流を招くおそれがある。
【0023】
これに対して、本実施例における駆動回路10では、駆動用定電流源SW2に定電流(I)が流れることによって、MOSFET8がターンオンされる。このとき、MOSFET8をターンオンするのに要する所要時間tonは、次の式で表される。
【0024】
Vg=I*R1*(1-ε^(-ton/(R1*C)))
よって、
ton=-C*R1*ln(1-Vg/(R1*I))
【0025】
上記の式から明らかなように、所要時間tonは、電源電圧Vinに依存しない。従って、例えば抵抗値R1=82kΩ、合計容量C=0.1μF、定電流I=100μAとし、MOSFET8のターンオンに要するゲート電圧Vgを2.5Vとした場合、所要時間tonは2.98msecとなり、この値は電源電圧Vinの大きさにかかわらず一定となる。このように、電源電圧Vinが様々に変動する場合でも、過大な突入電流の発生が抑制され、突入電流に対する付加的な回路構成も必要とされない。
【0026】
加えて、本実施例の駆動回路10では、MOSFET8がターンオンされている間、MOSFET8のソース-ゲート間に接続された第1抵抗素子R1には、電源電圧Vinの大きさにかかわらず、駆動用定電流源SW2による定電流Iが流れ、一定の電圧が発生する。これにより、MOSFET8のゲート電圧Vgも、一定の値に維持される。電源電圧Vinの影響を受けないことから、第1抵抗素子R1の抵抗値に若干の製造誤差が生じても、MOSFET8のゲート電圧Vgを許容範囲内へ容易に維持することができる。従って、第1抵抗素子R1には、高品質な製品(即ち、高価な製品)が必要とされず、比較的に安価な汎用品を採用することができる。
【0027】
上記の点に関して、再び
図4に示す比較例を参照しながら説明を補足する。
図4に示す比較例の駆動回路310では、MOSFET8がターンオンされている間、電源ライン6が二つの抵抗素子R1、R2を介して接地電圧GNDに接続され、MOSFET8のソース-ゲート間には、二つの抵抗素子R1、R2による分圧比に応じたゲート電圧Vgが発生する。即ち、ゲート電圧Vgは、Vg=Vin*R1/(R1+R2)の式で表される。従って、例えば電源電圧Vinが6Vであれば、ゲート電圧Vgは4.3Vとなり、電源電圧Vinが24.5Vであれば、ゲート電圧Vgは17.4Vとなって、電源電圧Vinに応じてゲート電圧Vgは大幅に変化する。そのことから、従来の回路構造によると、電源電圧Vinの大きさにかかわらず、MOSFET8を確実にターンオンするためには、二つの抵抗素子R1、R2に高品質の抵抗(例えば、±0.5%の精度)を採用する必要があった。
【0028】
これに対して、本実施例の駆動回路10では、ゲート電圧Vgが電源電圧Vinに依存せず、Vg=I*R1の式で表される。従って、例えば抵抗値R1=82kΩ、定電流I=100μAとすると、ゲート電圧Vgは8.2Vとなり、この値は電源電圧Vinの大きさにかかわらず一定となる。これにより、二つの抵抗素子R1、R2に高品質の抵抗(例えば、±0.5%の精度)を採用することなく、MOSFET8のゲート電圧Vgを許容範囲内へ容易に維持することができる。
【0029】
さらに、本実施例の駆動回路10は、MOSFET8をターンオフするときに、駆動用定電流源SW2をオフしつつ、停止用スイッチング素子SW3をオンする。その結果、MOSFET8のゲートは、第2抵抗素子R2を介して電源電圧Vinに接続され、MOSFET8のゲート電圧Vgは速やかに低下する。前述したように、MOSFET8がターンオンされていた間、MOSFET8のゲート電圧は、電源電圧Vinの大きさにかかわらず一定に維持される。従って、電源電圧Vinが大きく変動する場合でも、その影響を受けることなく、MOSFET8を一定の短時間でオフすることができる。
【0030】
上記の点に関して、再び
図4に示す比較例を参照しながら説明を補足する。
図4に示す比較例の駆動回路310では、スイッチング素子SW4がオフされると、MOSFET8のソース-ゲート間が第1抵抗素子R1を介して接続され、ゲート電圧Vgが低下していく。これにより、MOSFET8がターンオフされる。このとき、MOSFET8がターンオフされる速度、即ち、ゲート電圧Vgがターンオフに要する電圧(Vgoff)まで低下するのに要する所要時間toffは、次の式で表される。
【0031】
Vgoff=Vg*ε^(-toff/(R1*C))
よって、
toff=-C*R1*ln(Vgoff/Vg)
【0032】
上記の式から明らかなように、所要時間toffは、ターンオン時のゲート電圧Vgに依存し、そのゲート電圧Vgについては、前述したように電源電圧Vinに依存する。例えば、抵抗値R1=24.3kΩ、合計容量C=0.68μF、電源電圧Vin=8Vとした場合、ターンオン時のゲート電圧Vgは前述の式によって5.7Vとなり、MOSFET8のターンオフに要するゲート電圧Vgoffが2.5Vであれば、所要時間toffは13.6msecと非常に遅くなる。そして、電源電圧Vinが高くなるほど、所要時間toffはさらに遅くなってしまう。
【0033】
これに対して、本実施例の駆動回路10では、MOSFET8をターンオフするときに、MOSFET8のゲートが、第2抵抗素子R2を介して電源電圧Vinに接続される。従って、MOSFET8のターンオフに要する所要時間toffは、toff=-C*R2*ln(Vgoff/Vg)の式で表され、抵抗値R2=100Ω、合計容量C=0.1μFとした場合、ターンオン時のゲート電圧Vgは前述の式によって8.2Vとなるので、所要時間toffは11.9μsecとなり、従来構造と比較して1/1000程度の時間で高速にターンオフされる。これにより、駆動回路10は、保護回路18によって電源ライン6の過電流が検出された場合に、MOSFET8を直ちにターンオフして、電源ライン6を即時に遮断することができる。
【0034】
(実施例2)
図2を参照して、実施例2の駆動回路110について説明する。本実施例の駆動回路110もまた、pチャネル型のMOSFET8のための駆動回路であり、多くの部分で実施例1の駆動回路10と共通する構造を有する。但し、本実施例の駆動回路110は、実施例1の駆動回路10と比較して、シャント抵抗R3の位置が変更されている。このように、シャント抵抗R3の位置については、電源ライン6に流れる電流を検出し得る限り、特に限定されない。なお、
図1、
図2では、共通又は対応する構成要素に同一の符号が付されており、ここでは重複する説明を省略する。
【0035】
(実施例3)
図3を参照して、実施例3の駆動回路210について説明する。本実施例の駆動回路210もまた、pチャネル型のMOSFET8のための駆動回路であり、多くの部分で実施例1の駆動回路10と共通する構造を有する。但し、本実施例の駆動回路210は、駆動用定電流源SW2及び停止用スイッチング素子SW3に、MOSFETが採用されており、この点において実施例1の駆動回路10と相違する。このように、駆動用定電流源SW2及び停止用スイッチング素子SW3には、各種のスイッチング素子を採用することができる。
【0036】
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0037】
2:電源
4:負荷
6:電源ライン
8:MOSFET
10、110、210: 駆動回路
12:ターンオン経路
14:ターンオフ経路
16:制御装置
18:保護回路
310:従来の駆動回路の一例