(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20240827BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240827BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240827BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20240827BHJP
B23K 1/19 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
H01L23/12 K
H01L25/04 C
H01L23/48 G
B23K1/19 H
(21)【出願番号】P 2020023584
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2023-01-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上里 良憲
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195724(JP,A)
【文献】特開2014-041876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 25/07
H01L 23/48
B23K 1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック板と、
前記セラミック板の一方の主面に形成された回路パターン用金属板と、
前記回路パターン用金属板にはんだによって接合される接合面を含む接合部を有し、前記回路パターン用金属板の縁部の側に前記接合面が前記はんだにより接合された外部接続端子と、
前記回路パターン用金属板と前記外部接続端子との間であって前記回路パターン用金属板の前記縁部の側に配置されていて前記回路パターン用金属板よりも線膨張係数が低い低線膨張係数金属板と、を備え、
前記外部接続端子の前記接合部の外周の一部が、平面視で前記低線膨張係数金属板の端部から所定距離離れて前記低線膨張係数金属板に重な
り、
前記回路パターン用金属板は、前記低線膨張係数金属板の配置位置に前記低線膨張係数金属板を位置決めする凹部を有している、
半導体モジュール。
【請求項2】
前記外部接続端子を前記回路パターン用金属板に接合する前記はんだの領域が前記回路パターン用金属板の対向する2箇所の前記縁部に挟まれて接しているとき、前記低線膨張係数金属板は、前記回路パターン用金属板のそれぞれの前記縁部の側に配置されている、請求項1記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記外部接続端子は、前記接合部と前記接合部から前記接合面とは反対側の方向に延びる導電部とを有するL字状の屈曲部材である、請求項1記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記外部接続端子は、前記接合部と前記導電部とを接続する屈曲部分が前記回路パターン用金属板の前記縁部に沿う方向に配置されている、請求項3記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記外部接続端子は、前記屈曲部分が前記回路パターン用金属板の前記縁部の側に配置されている、請求項4記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記外部接続端子は、前記接合部の前記屈曲部分とは反対側に位置する先端部分が前記回路パターン用金属板の前記縁部の側に配置されている、請求項4記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記外部接続端子は、前記接合部と前記接合部から前記接合面とは反対側の方向に延びる導電部とを有し、前記接合部と前記導電部とを接続する屈曲部分が前記回路パターン用金属板の一方の前記縁部の側に配置され、前記接合部の前記屈曲部分とは反対側に位置する先端部分が前記回路パターン用金属板の他方の前記縁部の側に配置されている、請求項2記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記低線膨張係数金属板は、前記回路パターン用金属板の前記縁部に沿う方向において前記接合部の第1の長さよりも長い長辺と、前記回路パターン用金属板の前記縁部に対して直角方向において前記接合部の第2の長さよりも短い短辺と、を有する、請求項3記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記低線膨張係数金属板は、前記接合部の第2の長さを1としたとき、前記短辺の長さを0.1ないし0.3とした、請求項8記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記低線膨張係数金属板は、前記はんだの厚さを1としたとき、厚さを0.1ないし0.5とした、請求項8記載の半導体モジュール。
【請求項11】
前記低線膨張係数金属板は、前記回路パターン用金属板の前記縁部の側とは反対側の辺の中央部に切欠き部を有する、請求項8記載の半導体モジュール。
【請求項12】
前記低線膨張係数金属板は、前記回路パターン用金属板の前記縁部に沿う方向にある前記外部接続端子の前記接合部の角部の直下にそれぞれ配置されている、請求項1記載の半導体モジュール。
【請求項13】
前記低線膨張係数金属板は、モリブデンを主材料とする金属である、請求項1記載の半導体モジュール。
【請求項14】
前記低線膨張係数金属板は、表面がニッケルまたは錫でコーティングされている、請求項
13記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用半導体素子と電気的に接続される外部接続端子(リードフレーム)を備えた半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動用インバータ装置などの電力変換装置には、半導体モジュールが用いられている。半導体モジュールは、セラミック板の両側の主面に回路パターン用金属板および放熱板が形成された絶縁基板と、回路パターン用金属板に搭載される電力用半導体素子および外部接続端子と、放熱板に接合されるベース板と、ケースとを備えている。電力用半導体素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)およびFWD(Free Wheeling Diode)またはMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が用いられている。
【0003】
回路パターン用金属板への電力用半導体素子および外部接続端子の接合は、生産性を考慮し、はんだ付けが主流になっている。外部接続端子を回路パターン用金属板に接合するはんだについては、外部接続端子と回路パターン用金属板との間の電気的接続がオープンにならないよう、外部接続端子と回路パターン用金属板との間には十分なはんだが充填されている。
【0004】
このような半導体モジュールでは、動作時に電力用半導体素子の発熱による熱サイクルが発生し、セラミック板の外部接続端子の搭載位置には、はんだおよび回路パターン用金属板の膨張・収縮による熱応力がかかる。はんだは、回路パターン用金属板よりも線膨張係数が大きく、しかも、ボリュームもあって、セラミック板にかかる応力をより大きくしている。また、電力用半導体素子の発熱によりベース板が熱変形すると、ケースも変形するので、ケースに固定された外部接続端子は、ケースから圧縮応力および引っ張り応力を受けることになる。このため、セラミック板は、外部接続端子が搭載される回路パターン用金属板の周縁部に応力が集中することになるので、応力集中部にクラックが生じ、絶縁破壊のリスクが高まることになる。
【0005】
従前より、半導体素子の発熱に起因する応力を緩和する手段として、線膨張係数の低い材料を用いることが提案されている(たとえば、特許文献1,2参照)。特許文献1に記載の技術では、回路パターン用金属板を銅板と、銅板の銅よりも線膨張係数の低い材料の金属板とを積層した積層構造にし、半導体素子と回路パターン用金属板との接合部に応力がかかることによる半導体装置の破損を防止している。また、特許文献2に記載の技術では、半導体素子の外周と回路パターンとの間に枠形状の低熱膨張材を設置し、半導体素子にかかる熱膨張差による応力を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-253125号公報
【文献】特開2014-41876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載の技術は何れも、半導体素子と回路パターン用金属板との線膨張係数差による応力を受けて半導体素子が破損してしまうことを回避するものであり、外部接続端子に応力がかかることによりセラミック板にクラックが発生することを回避するものではない。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、外部接続端子に応力がかかることによりセラミック板にクラックが発生することを回避した半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記の課題を解決するために、1つの案では、セラミック板と、セラミック板の一方の主面に形成された回路パターン用金属板と、回路パターン用金属板にはんだによって接合される接合面を含む接合部を有し、回路パターン用金属板の縁部の側に接合面がはんだにより接合された外部接続端子と、回路パターン用金属板と外部接続端子との間であって回路パターン用金属板の縁部の側に配置されていて回路パターン用金属板よりも線膨張係数が低い低線膨張係数金属板と、を備え、外部接続端子の接合部の外周の一部が、平面視で低線膨張係数金属板の端部から所定距離離れて低線膨張係数金属板に重なり、回路パターン用金属板は、低線膨張係数金属板の配置位置に低線膨張係数金属板を位置決めする凹部を有している、半導体モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の半導体モジュールは、低線膨張係数金属板が熱膨張差で発生する、外部接続端子から回路パターン用金属板への応力を緩和するので、回路パターン用金属板の縁部の直下のセラミック板にかかる応力も緩和されるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態に係る半導体モジュールの断面を示す断面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る半導体モジュールの内部を平面で示す図である。
【
図4】低線膨張係数金属板の寸法を説明する図であって、(A)は低線膨張係数金属板のサイズを外部接続端子のサイズとの関係で示し、(B)は低線膨張係数金属板の厚さをはんだの厚さとの関係で示している。
【
図5】外部接続端子の配置を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【
図6】外部接続端子の配置の変形例を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【
図8】低線膨張係数金属板の第1の変形例を示す図である。
【
図9】低線膨張係数金属板の第2の変形例を示す図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る半導体モジュールにおける外部接続端子搭載部の断面を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図中、同一の符号で示される部分は、同一の構成要素を示している。また、各実施の形態は、矛盾のない範囲で複数の実施の形態を部分的に組み合わせて実施することが可能である。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は第1の実施の形態に係る半導体モジュールの断面を示す断面図、
図2は第1の実施の形態に係る半導体モジュールの内部を平面で示す図、
図3は外部接続端子の例を示す斜視図である。
図4は低線膨張係数金属板の寸法を説明する図であって、(A)は低線膨張係数金属板のサイズを外部接続端子のサイズとの関係で示し、(B)は低線膨張係数金属板の厚さをはんだの厚さとの関係で示している。
図5は外部接続端子の配置を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
図6は外部接続端子の配置の変形例を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
図7は構成部材の物性の例を示す図である。なお、
図2は、外部接続端子およびケースを除いた状態を示している。
【0014】
第1の実施の形態に係る半導体モジュール10は、セラミック板11と、回路パターン用金属板12,13,14と、放熱板15と、半導体素子16,17と、外部接続端子18,19と、ベース板20と、ケース21とを備えている。なお、
図2に示す半導体モジュール10の例では、回路パターン用金属板12,13を接続するボンディングワイヤ10aを有している。
【0015】
半導体素子16,17は、電力用半導体素子であればよく、IGBTやMOSFETなどのスイッチング素子、または、FWDとすることができる。半導体素子16,17は、また、スイッチング素子とダイオードとを一体化したRC(逆導通)-IGBTであってもよい。このような半導体素子16,17の材料は、シリコン(Si)または炭化シリコン(SiC)である。
【0016】
セラミック板11、回路パターン用金属板12,13,14および放熱板15は、絶縁基板を構成している。回路パターン用金属板12,13,14は、セラミック板11の一方の主面に形成され、放熱板15は、セラミック板11の他方の主面の全面に形成され、はんだ22によってベース板20に接合されている。
【0017】
セラミック板11の厚さは、0.2mm以上、1.2mm以下である。セラミック板11は、薄すぎると曲げ応力や衝撃によりセラミック板11にクラックが入り破損するおそれがある。厚すぎると半導体素子の発熱を放熱することが抑制され半導体素子が破損するおそれがある。回路パターン用金属板12,13,14および放熱板15の厚さは、0.1mm以上、2.5mm以下である。セラミック板11の材料は、絶縁性を有するセラミックであればよく、たとえば、アルミナ(Al2O3)、窒化シリコン(Si3N4)または窒化アルミニウム(AlN)である。セラミック板11に形成された回路パターン用金属板12,13,14および放熱板15の材料は、導電性および熱伝導性に優れた金属であればよく、たとえば、銅(Cu)、銅合金、アルミニウム(Al)またはアルミニウム合金である。ベース板20の材料は、熱伝導性に優れた金属であればよく、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。
【0018】
回路パターン用金属板12には、外部接続端子18がはんだ23によって接合されている。はんだ23の接合領域は、
図2に示したように、回路パターン用金属板12の周囲の対向する2箇所の縁部12a,12bに挟まれて接した位置にある。すなわち、はんだ
23の接合領域は、回路パターン用金属板12の短辺方向(
図1および
図2では左右方向)では、回路パターン用金属板12の縁部12a,12bまでそれぞれ達している。回路パターン用金属板13には、半導体素子16がはんだ24によって接合され、外部接続端子19がはんだ25によって接合されている。はんだ25の接合領域は、
図2に示したように、回路パターン用金属板13の周囲の1箇所の縁部13aまで達している。回路パターン用金属板14には、半導体素子17がはんだ26によって接合されている。
【0019】
はんだ23~26は、鉛フリーはんだを基体として構成されている。半導体素子16,17が接合されるはんだ24,26の材料は、ボイドが発生しにくく、高温耐性を有する。たとえば、錫およびアンチモン(Sn-Sb)を主成分とする合金系のはんだである。外部接続端子18,19が接合されるはんだ23,25の材料は、はんだ24,26よりも低弾性率を有する。たとえば、錫および銀(Sn-Ag)を主成分とする合金系のはんだである。また、はんだ23~26は、添加物が含まれてもよい。添加物は、たとえば、銅、ビスマス、インジウム、ニッケル、ゲルマニウム、コバルトまたはシリコンである。
【0020】
外部接続端子18,19は、
図3に示したように、回路パターン用金属板12,13にはんだ23,25によって接合される接合部27と外部と電気的に接続される導電部28とを有するL字状の屈曲部材である。導電部28は、接合部27から接合部27のはんだ接合面とは反対側の方向、好ましくは、接合部27のはんだ接合面に対して垂直方向に延びている。接合部27は、屈曲部分27aによって導電部28と接続され、屈曲部分27aと反対側の辺が外部接続端子18,19の先端部分27bをなしている。
【0021】
外部接続端子18,19の寸法は、導電部28から延びる接合部27の長さL1が1~5mm、接合部27の屈曲部分27aのある側と反対側の辺の長さL2が1~6mm、接合部27の厚さTが0.5~1.5mm、導電部28の高さHが4~35mmである。長さL1および長さL2は、厚さTと同じか厚さTより大きい。また、接合部27の厚さTは、導電部28の厚さと同じか、導電部28より薄い。本実施の形態では、外部接続端子18,19は、接合部27の長さL1が3.0mm、長さL2が1.1mm、厚さTが1.0mm、導電部28の高さHが32mmのものを使用している。外部接続端子18,19の材料は、銅または銅合金である。
【0022】
外部接続端子18と回路パターン用金属板12との間には、はんだ23に埋設された状態で回路パターン用金属板12,13よりも線膨張係数が低い低線膨張係数金属板29,30が配置されている。はんだ23は、回路パターン用金属板12の縁部12a,12bまで達している。低線膨張係数金属板29は、回路パターン用金属板12の縁部12aの側に配置され、低線膨張係数金属板30は、回路パターン用金属板12の縁部12bの側に配置されている。この場合、回路パターン用金属板12の縁部12a,12bの側は、はんだ23が達している縁部12a,12bから、外部接続端子18の直下にわたる領域である。同様に、外部接続端子19と回路パターン用金属板13との間にも、はんだ25に埋設された状態で低線膨張係数金属板31が配置されている。はんだ25は、回路パターン用金属板13の縁部13aまで達している。低線膨張係数金属板31は、回路パターン用金属板13の縁部13aの側に配置されている。この場合、回路パターン用金属板13の縁部13aの側は、はんだ25が達している縁部13aから、外部接続端子19の直下にわたる領域である。
【0023】
低線膨張係数金属板29,30,31の材料は、モリブデン(Mo)であり、表面には、ニッケルまたは錫によるコーティングが施されている。低線膨張係数金属板29,30,31は、
図2に示されるように、平面視長方形をなしているが、外部接続端子18,19が回路パターン用金属板12,13に配置される場所によって数および向きが決められている。
【0024】
外部接続端子18が接合される回路パターン用金属板12は、
図2では、横幅が狭く、はんだ23の領域が回路パターン用金属板12の長手方向に延びる縁部12a,12bに挟まれて接した領域に位置している。この場合、外部接続端子18から見ると、応力を与えやすい部分は、外部接続端子18の屈曲部分27aおよび先端部分27bであり、回路パターン用金属板12から見ると、セラミック板11にクラックが入りやすい部分は、回路パターン用金属板12の縁部12a,12bの直下である。このため、低線膨張係数金属板29,30は、それぞれ、回路パターン用金属板12の縁部12a,12bの側において、平面視長方形の長辺を縁部12a,12bに沿うようにして配置されている。
【0025】
一方、外部接続端子19は、その屈曲部分27aが回路パターン用金属板13の短辺方向の中央近傍に位置し、外部接続端子19の先端部分27bだけが回路パターン用金属板13の縁部13aの側に位置している。このため、回路パターン用金属板13では、その縁部13aの側にのみ低線膨張係数金属板31が配置されている。
【0026】
平面視長方形をなす低線膨張係数金属板29,30は、
図4(A)に示したように、長辺の長さL11を外部接続端子18の先端部分27bの辺の長さL2よりも長くしてある。また、低線膨張係数金属板29,30の短辺の長さL12は、回路パターン用金属板12の縁部12a,12bに直交する方向の外部接続端子18の接合部27の長さL1aを1としたとき、0.1ないし0.3の長さにしている。低線膨張係数金属板29,30の厚さT2は、
図4(B)に示したように、はんだ23の厚さT1を1としたとき、0.1ないし0.5の厚さにしている。なお、低線膨張係数金属板31は、低線膨張係数金属板29,30と同じサイズを有している。
【0027】
外部接続端子18,19、回路パターン用金属板12,13およびはんだ23,25が熱膨張したときに、回路パターン用金属板12,13の縁部12a,12b,13aに沿った位置においてセラミック板11に応力がかかる。そのため、低線膨張係数金属板29,30,31を配置しない場合、セラミック板11は、回路パターン用金属板12,13の縁部12a,12b,13aの直下にクラックが発生するおそれがある。第1の実施の形態に係る半導体モジュール10によれば、外部接続端子18,19と回路パターン用金属板12,13との間に低線膨張係数金属板29,30,31を配置している。低線膨張係数金属板29,30,31は、モリブデンを使用している。モリブデンは、
図7に例示したように、温度上昇による膨張の割合を示す線膨張係数がセラミック板11に似た特性を有している。すなわち、モリブデンは、はんだ23,25よりも線膨張係数が小さく、外部接続端子18,19および回路パターン用金属板12,13の材料である銅よりも線膨張係数がさらに小さい。このため、回路パターン用金属板12,13およびはんだ23,25が熱膨張したときにモリブデンによりセラミック板11にかかる応力が緩和され、セラミック板11は、回路パターン用金属板12,13の縁部12a,12b,13aの直下にクラックが発生しにくくなる。
【0028】
なお、第1の実施の形態では、外部接続端子18,19は、屈曲部分27aを含む接合部27の辺が回路パターン用金属板12,13の縁部12a,12b,13aと同じ方向を向いて接合されている。しかし、屈曲部分27aを含む接合部27の辺が回路パターン用金属板12,13の縁部12a,12b,13aに直角な方向になるよう外部接続端子18,19を90度回転した状態でも、低線膨張係数金属板29,30,31の配置方法を第1の実施の形態と同じようにすることで、同様の効果を発揮することができる。これは、セラミック板11にクラックを生じさせるような応力がかかる接合部27の位置が回路パターン用金属板12,13の縁部12a,12b,13aに沿った側であるためである。
【0029】
第1の実施の形態では、外部接続端子18,19の屈曲部分27aを含む接合部27の辺が回路パターン用金属板12,13の縁部12a,12b,13aに平行になっている。低線膨張係数金属板29,30,31は、回路パターン用金属板12,13の縁部12a,12b,13aに沿ってその近傍に配置されている。
【0030】
具体的には、外部接続端子18については、
図4(A),(B)に示したように、外部接続端子18の屈曲部分27aを回路パターン用金属板12の縁部12aの側にし、先端部分27bを回路パターン用金属板12の縁部12bの側にして配置している。このとき、外部接続端子18は、屈曲部分27aおよび先端部分27bの辺が回路パターン用金属板12の縁部12a,12bと同じ方向を向いて接合されていることになる。低線膨張係数金属板29,30は、回路パターン用金属板12の縁部12a,12bの近傍に配置されている。外部接続端子19については、
図5(A),(B)に示したように、先端部分27bを回路パターン用金属板13の縁部13aの側にして配置している。このとき、外部接続端子19は、屈曲部分27aおよび先端部分27bの辺が回路パターン用金属板13の縁部13aと同じ方向を向いて接合されていることになる。低線膨張係数金属板31は、回路パターン用金属板13の縁部13aの近傍に配置されている。
【0031】
なお、
図6(A),(B)は、外部接続端子19の配置の変形例を示している。この変形例によれば、外部接続端子19の配置の向きを変更している。すなわち、外部接続端子19は、屈曲部分27aを回路パターン用金属板13の縁部13aの側にして配置されている。このとき、外部接続端子19は、屈曲部分27aおよび先端部分27bの辺が回路パターン用金属板13の縁部13aと同じ方向を向いて接合されていることに変わりはない。低線膨張係数金属板31は、外部接続端子19の屈曲部分27aの直下ではあるが、回路パターン用金属板13の縁部13aの近傍に配置されていることに変わりはない。この外部接続端子19の配置の変形例は、外部接続端子18においても適用することができる。すなわち、外部接続端子18は、屈曲部分27aを回路パターン用金属板12の縁部12bの側にし、先端部分27bを回路パターン用金属板12の縁部12aの側にして回路パターン用金属板12に接合されていてもよい。
【0032】
以上のような半導体モジュール10の場合、ベース板20およびケース21の熱変形により外部接続端子18,19の導電部28が引き上げられることで、屈曲部分27aを含む接合部27が上方へ引き上げられる力が生じる。また、ベース板20およびケース21の熱変形により外部接続端子18,19の導電部28がベース板20の主面と平行に移動することで、接合部27の屈曲部分27aまたは先端部分27bが上方へ引き上げられる力が生じる。そのため、低線膨張係数金属板29,30,31を配置しない場合には、セラミック板11は、回路パターン用金属板12,13の縁部12a,12b,13aの直下にクラックが発生するおそれがある。このような場合でも、外部接続端子18,19と回路パターン用金属板12,13との間に低線膨張係数金属板29,30,31を配置することで、セラミック板11にかかる応力が緩和され、セラミック板11は、回路パターン用金属板12,13の縁部12a,12b,13aの直下にクラックが発生しにくくなる。
【0033】
低線膨張係数金属板29,30,31は、モリブデンを使用している。モリブデンは、はんだ23,25よりもヤング率が大きく、外部接続端子18,19および回路パターン用金属板12,13の材料である銅よりもヤング率がさらに大きい。このため、ベース板20およびケース21の熱変形により、外部接続端子18,19を介して回路パターン用金属板12,13に応力がかかる場合にも、セラミック板11にかかる応力が低線膨張係数金属板29,30,31により緩和されることになる。そのため、セラミック板11は、回路パターン用金属板12,13の縁部12a,12b,13aの直下にクラックが発生しにくくなる。
【0034】
[第1の変形例]
図8は低線膨張係数金属板の第1の変形例を示す図である。
【0035】
図2および
図4に示した低線膨張係数金属板29,30は、平面視長方形の形状を有しているが、
図8に示す低線膨張係数金属板29a,30aは、対向する辺の中央部に切欠き部29b,30bを有している。これにより、回路パターン用金属板12と外部接続端子18との間にて電流が流れるはんだ23の断面積が広がって電気抵抗値が低減するので、通電能力を上げることができる。
【0036】
この低線膨張係数金属板29a,30aは、外部接続端子18の下に2つ配置する場合に効果的である。しかし、外部接続端子19の場合のように、直下に1つの低線膨張係数金属板31を配置する場合にも、低線膨張係数金属板30aを使用することで、通電部の断面積が増えることから、有効である。
【0037】
[第2の変形例]
図9は低線膨張係数金属板の第2の変形例を示す図である。
【0038】
図9に示す低線膨張係数金属板31a,31bは、平面視正方形をなしていて、回路パターン用金属板13の縁部13aに
近い外部接続端子19の接合部27の角部の直下にそれぞれ配置されている。これにより、回路パターン用金属板13と外部接続端子19との間の電気抵抗値を低減しながら外部接続端子19が回路パターン用金属板13を介してセラミック板11にかかる応力を緩和することができる。
【0039】
さらには、
図9に係る半導体モジュールでは、第1の実施の形態の外部接続端子19とは異なる位置および向きにして回路パターン用金属板13に接合された外部接続端子19を有している。この外部接続端子19は、回路パターン用金属板13の縁部13aの側に寄せて第1の実施の形態の外部接続端子19とは時計回りに90度回転させた状態ではんだ25により回路パターン用金属板13に接合されている。外部接続端子19は、屈曲部分27aおよび先端部分27bの直下に応力が集中し、回路パターン用金属板13では、その縁部13aの直下に応力が集中する。このため、応力緩和部としては、外部接続端子19により応力が集中する領域と回路パターン用金属板13により応力が集中する領域とが重なった領域に設置するのが効果的である。
【0040】
この半導体モジュールでは、外部接続端子19の屈曲部分27aの外側角部の直下であって回路パターン用金属板13の縁部13aの側に低線膨張係数金属板31aが配置され、外部接続端子19の先端部分27bの直下であって回路パターン用金属板13の縁部13aの側に低線膨張係数金属板31bが配置されている。回路パターン用金属板13の縁部13aの側にある外部接続端子19の接合部27の辺と屈曲部分27aの辺との交差位置に低線膨張係数金属板31aが配置されることで、導電部28の直下でセラミック板11にかかる応力が緩和される。同様に、縁部13aの側にある外部接続端子19の接合部27の辺と先端部分27bの辺との交差位置に低線膨張係数金属板31bが配置されることで、接合部27の直下でセラミック板11にかかる応力が緩和される。
【0041】
なお、
図9では、低線膨張係数金属板31a,31bを外部接続端子19に適用した場合について示したが、外部接続端子18にも同様に適用することができる。外部接続端子18に適用する場合には、低線膨張係数金属板31a,31bと同じ形状の低線膨張係数金属板が外部接続端子18の接合部27における四隅の直下にそれぞれ配置されることになる。さらには、低線膨張係数金属板31a,31bの形状は、平面視正方形に限定されず、矩形状、長円形状、または、円形状のものでも同様の効果を得ることができる。
【0042】
[第2の実施の形態]
図10は第2の実施の形態に係る半導体モジュールにおける外部接続端子搭載部の断面を示す部分断面図である。
【0043】
第2の実施の形態に係る半導体モジュールにおいては、回路パターン用金属板12は、低線膨張係数金属板29,30が配置される位置の表面に凹部12c,12dが形成されている。凹部12c,12dは、低線膨張係数金属板29,30の外形よりも大きな形状を有し、かつ、はんだ23の厚さよりも小さい深さを有している。
【0044】
回路パターン用金属板12の表面に段差を設けたことにより、外部接続端子18を回路パターン用金属板12にはんだ接合するときに、低線膨張係数金属板29,30は、凹部12c,12dに嵌まって位置決めされる。このため、はんだ23が溶融されたとき、凹部12c,12dに位置決めされた低線膨張係数金属板29,30が配置されるべき位置から移動してしまうことはない。
【符号の説明】
【0045】
10 半導体モジュール
10a ボンディングワイヤ
11 セラミック板
12,13,14 回路パターン用金属板
12a,12b,13a 縁部
12c,12d 凹部
15 放熱板
16,17 半導体素子
18,19 外部接続端子
20 ベース板
21 ケース
22,23,24,25,26 はんだ
27 接合部
27a 屈曲部分
27b 先端部分
28 導電部
29,29a,30,30a,31,31a,31b 低線膨張係数金属板
29b,30b 切欠き部