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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】プレス方法およびプレス装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20240827BHJP
   B30B 3/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61F13/15 350
B30B3/00 B
A61F13/15 352
A61F13/533 100
A61F13/15 390
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020033523
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133128
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】花生 裕之
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-196505(JP,A)
【文献】特開2019-083863(JP,A)
【文献】特開2015-181785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
B30B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプに高吸水性樹脂が混合された構成材料の堆積されたマット状のコアがラップシートで被包された吸収体の半製品を有するとともに吸収性物品に設けられるマット体をプレスするプレス方法であって、
厚み方向に窪んだ凹部を有するとともに前記吸収体の半製品のみの第一積層体をなす前記マット体を全体的に前記厚み方向へ押圧する前プレス工程と、
前記前プレス工程で押圧された前記第一積層体にセンターシートが積層された第二積層体をなす前記マット体の前記凹部を前記厚み方向へ押圧する後プレス工程と、を備え
前記後プレス工程は、押圧方向の先端部のほうが前記押圧方向の基端部よりも先細りのテーパー形状に前記凹部を押圧し、前記凹部の底部を拡げることなく前記凹部を押圧して当該凹部の開口を拡げる
ことを特徴とするプレス方法。
【請求項2】
前記後プレス工程は、前記凹部を押圧して深くする
ことを特徴とする請求項1に記載のプレス方法
【請求項3】
前記後プレス工程は、前記先端部のほうが前記基端部よりも前記凹部を拡げる度合いが小さい
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプレス方法
【請求項4】
前記後プレス工程は、前記凹部を押圧して当該凹部の表面に凹凸を形成する
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載のプレス方法。
【請求項5】
パルプに高吸水性樹脂が混合された構成材料の堆積されたマット状のコアがラップシートで被包された吸収体の半製品を有するとともに吸収性物品に設けられるマット体をプレスするプレス装置であって、
厚み方向に窪んだ凹部を有するとともに前記吸収体の半製品のみの第一積層体をなす前記マット体を全体的に前記厚み方向へ押圧する前プレス部と、
前記前プレス部で押圧された前記第一積層体にセンターシートが積層された第二積層体をなす前記マット体の前記凹部を前記厚み方向へ凸部で押圧する後プレス部と、を備え
前記凸部は、押圧方向の先端部のほうが前記押圧方向の基端部よりも先細りのテーパー形状をなし、
前記凸部の前記基端部は、前記前プレス部で押圧された前記マット体において前記後プレス部の前記凸部で押圧される前の前記凹部の開口よりも大きく、
前記凸部の前記先端部は、前記前プレス部で押圧された前記マット体において前記後プレス部の前記凸部で押圧される前の前記凹部の底部と同じまたは前記底部よりも小さい
ことを特徴とするプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット状の加工対象をプレスする方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつや生理用ナプキンといった吸収性物品を製造する手法の一つとして、マット状の加工対象を厚み方向にプレス(押圧)する加工が知られている。この加工でプレスされる対象としては、構成材料の堆積されたマット状の部材やこの部材にシートの重ね合わせられた積層体といったマット体が挙げられる。
上記の加工でマット体がプレスされることにより、マット体の型崩れ防止や形状保持といった定形性の向上が図られる。このような定形性を高めるために、凹部の設けられた積層体を全体的にプレスする技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6108598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように凹部の設けられたマット体が一度だけ全体的にプレス加工される場合には、このプレス加工後の切断加工や貼合加工といった他の加工によって、凹部の深さ不足や型崩れを招くおそれがある。あるいは、平面的にマット体がプレスされる場合にも、このプレス加工によって凹部の深さ不足や型崩れを招くおそれがある。
よって、マット体における凹部の成形性を高めるうえで改善の余地がある。
【0005】
ここで開示するプレス方法およびプレス装置は、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、マット体における凹部の成形性を高めることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示するプレス方法は、厚み方向に窪んだ凹部を有するマット体を全体的に前記厚み方向へ押圧する前プレス工程と、前記前プレス工程で押圧された前記マット体の前記凹部を前記厚み方向へ押圧する後プレス工程と、を備えている。
ここで開示するプレス装置は、厚み方向に窪んだ凹部を有するマット体を全体的に前記厚み方向へ押圧する前プレス部と、前記前プレス部で押圧された前記マット体の前記凹部を前記厚み方向へ凸部で押圧する後プレス部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
開示のプレス方法およびプレス装置によれば、マット体における凹部の成形性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】尿パッドを部分的に破断させた横断面を模式的に示す斜視図である。
図2】尿パッドを製造する装置の要部を示すCD方向視の模式図である。
図3】前パート(前プレス部)の要部におけるMD方向視のTD方向断面を示す模式図である。なお、図3ではプレス対象の積層体(マット体)について外形のみ図示する。
図4】後パート(後プレス部)の要部におけるMD方向視のTD方向断面を示す模式図である。なお、図4ではプレス対象の積層体について外形のみ図示する。
図5】プレス加工される積層体のTD方向断面を示す模式図である。なお、図5では積層体について外形のみ図示する。
図6】プレス方法を説明するフローチャートである。
図7図4の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態としてのプレス方法およびプレス装置を説明する。
これらの方法および装置でプレス(押圧)される対象は、凹部を有するマット状の部材(以下「マット体」と称する)である。
【0010】
ここでは、吸収性物品に設けられるマット体をプレス対象として例説する。具体的には、吸収性物品の一例として尿パッドを挙げる。この尿パッドに設けられる半製品のマット体として、吸収体や吸収体にシートの重ね合わせられた積層体を例示する。これらの積層体に凹部が設けられることにより、尿パッドの着用者に対するフィット性の向上が図られ、着用者からの排泄物を拡散させることによる吸水性の向上も図られる。
本実施形態のプレス方法およびプレス装置では、搬送される積層体に設けられた凹部がプレスされることにより、凹部の成形性が向上する。
【0011】
下記の実施形態では、説明に用いる方向を以下のように定義する。
尿パッドについての説明では、長手方向,幅方向および厚み方向の三方向を用いる。長手方向および幅方向は、尿パッドが延在する面に沿う方向であって、互いに直交する方向である。厚み方向は、長手方向および幅方向の双方に対して直交する方向である。
厚み方向については、尿パッドが着用者に装着された状態において、着用者の肌に向く側を肌面側(厚み方向の一方)とし、肌面側の反対側を非肌面側(厚み方向の他方)とする。
【0012】
プレス装置についての説明では、MD方向(Machine Direction),CD方向(Cross Direction)およびTD方向(Transverse Direction)の三方向を用いる。
MD方向は、積層体が搬送される方向である。CD方向は、MD方向に対して直交する方向である。これらのMD方向およびCD方向は、搬送される積層体が延在する面に沿う方向でもある。TD方向は、MD方向およびCD方向の双方に直交する方向である。
【0013】
[I.一実施形態]
以下に述べる一実施形態では、項目[1]で構成を説明し、その後の項目[2]で項目[1]の構成による作用および効果を述べる。
[1.構成]
本項目[1]では、プレス対象である積層体の設けられた尿パッドを小項目[1-1]で説明し、それから、小項目[1-2]でプレス装置を説明する。そして、小項目[1-3]でプレス方法を説明する。
【0014】
[1-1.尿パッド]
図1に示すように、尿パッド1には、吸収体2に種々のシート5~8が重ね合わせられている。
吸収体2は、コア3がラップシート4で被包(ラップ)されている。
【0015】
コア3は、構成材料の堆積されたマット状の部材である。コア3には、粉砕あるいは解繊されたパルプ(いわゆる「フラッフパルプ」)に高吸水性樹脂(「SAP〈Super Absorbent Polymer〉」とも称される)が混合された材料が用いられる。このコア3は、尿パッド1を装着する着用者から排泄された尿を吸収し保持する機能を担う。
ラップシート4は、肌面側および非肌面側の双方からコア3を覆うシート状の被包部材である。ラップシート4には、不織布やティシュなどの薄膜材が用いられる。ここでは、コア3の肌面側を覆うアッパシート4Uとコア3の非肌面側を覆うロアシート4Lとの二枚からなるラップシート4を例示する。
【0016】
上記の吸収体2に対して肌面側には、センターシート5が重ね合わせられ、センターシート5の幅方向外側にサイドシート6が配置されている。
吸収体2に対して非肌面側には、バックシート7が重ね合わせられ、バックシート7の非肌面側にカバーシート8が重ね合わせられている。
センターシート5は、水分を透過させて吸収体2に吸収させるため、透水性を有する。また、センターシート5は、尿パッド1において最も肌面側に配置される(このことから「トップシート」とも称される)。
【0017】
サイドシート6は、幅方向外側への漏れを防ぐため、非透水性を有する。また、サイドシート6は、尿パッド1において最も肌面側に配置される。このサイドシート6のうち幅方向内側の部位は、他の部材に貼り付けられておらず、センターシート5よりも肌面側に配置される自由端を有する。
また、バックシート7は、吸収体2からの漏れを防ぐため、非透水性を有する。
【0018】
カバーシート8は、上記の吸収体2およびシート5,6,7を非肌面側から被覆する。このカバーシート8は、バックシート7の補強とともに触感向上のために設けられる。なお、カバーシート8は、単層構造に限らず、インナーカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0019】
上記のシート5~8が吸収体2に重ね合わせられた尿パッド1には、幅方向中央で長手方向に延在する溝9(凹部)が設けられている。
溝9は、肌面側から非肌面側へ向けて窪んだ凹部が長手方向に延在する部位である。この溝9は、少なくともコア3に凹設される。ここでは、コア3の凹みに沿ってラップシート4やセンターシート5が配置された溝9を例示する。さらに、肌面側から非肌面側へ向かうほど先細りのテーパー形状をなす溝9を例に挙げる。
【0020】
ここでは、溝9に対する領域ごとに吸収体2における高吸水性樹脂の含有度合いが相違する。具体的には、下記の底領域R1のほうが下記の側領域R2よりも高吸水性樹脂の含有度合いが小さく設定されている。
・底領域R1:溝9の底部9Bに対して非肌面側の領域
・側領域R2:溝9の側部9Cに対して幅方向外側の領域
【0021】
以下、上記の溝9が設けられた尿パッド1のうち、吸収体2のみの半製品を第一積層体24(マット体)と称し、センターシート5の積層された吸収体2の半製品を第二積層体29(マット体)と称する。
これらの積層体24,29は、つぎに説明する装置によって製造される。
【0022】
[1-2.プレス装置]
尿パッド1の製造装置には、図2に示すように、コンベア機構10で順繰りに搬送される積層体24,29の製造用に、フォームパート20(フォーム部)およびプレスパート34(プレス部,プレス装置)が設けられている。
【0023】
搬送される積層体24,29の厚み方向はTD方向に沿う。ここでは、長手方向がMD方向に沿う姿勢の積層体24,29が搬送され、幅方向がCD方向に沿う。ただし、長手方向がCD方向に沿う姿勢で積層体24,29が搬送されてもよく、この搬送姿勢では幅方向がMD方向に沿う。
なお、本製造装置では、上述した尿パッド1の構成部材が製造途中の半製品であることから、項目[1-1]で述べた各構成を同様の名称で記したうえで、積層体24,29を除く各構成には符号に「′」を付して記す。
【0024】
――フォームパート――
フォームパート20は、第一積層体24を形成するパートである。
このフォームパート20には、コア3′の構成材料を供給するダクト21と、ダクト21から供給された構成材料が外周に堆積されるフォーミングドラム22とが設けられている。
【0025】
ダクト21には、フォーミングドラム22の外周の一部(図2では右上の外周縁部)を覆うように配置された下流端部21aに開口が配置される。このダクト21は、下流端部21aに向けて広げられた形状をなし、「スカート」とも称される。
ダクト21の内部には、粉砕あるいは解繊されたパルプや高吸水性樹脂が供給される。このダクト21の内部では、分散した状態のパルプに高吸水性樹脂の混合した構成材料がフォーミングドラム22へ向けて空気流で吹き付けられる。
【0026】
フォーミングドラム22は、ダクト21から供給されたパルプおよび高吸水性樹脂を内周側へ吸引することで、その外周に構成材料の堆積したコア3′を形成する回転体である。このフォーミングドラム22の外周には、コア3′の概形に応じた形状の金型が設けられており、この金型の内部に積重されたパルプおよび高吸水性樹脂がコア3′として形成される。
【0027】
ここでは、溝9′の設けられたコア3′が形成され、底領域R1′のほうが側領域R2′よりも高吸水性樹脂の含有度合いが小さいコア3′が製造される。
たとえば、溝9′に対応する箇所のマスキングされた金型を用いることで、溝9′の設けられたコア3′が形成される。また、ダクト21からCD方向基準で内側よりも外側に多くの高吸水性樹脂を供給することによって、側領域R2′よりも底領域R1′に含有される高吸水性樹脂の量を抑えることが可能である。
【0028】
ここでは、フォーミングドラム22の下部において、搬送される帯状のロアシート4L′にコア3′が受け渡されて載置される。それから、コア3′の肌面側にアッパシート4U′が溝9′に沿って積層される。
このようにして製造された第一積層体24は、つぎに説明するプレスパート34でプレス加工される。
【0029】
――プレスパート――
プレスパート34は、以下に示す前プレスパート30(以下「前パート30」と略称する,前プレス部)および後プレスパート40(以下「後パート40」と略称する,後プレス部)が設けられている。
・前パート30:第一積層体24を全体的にプレス加工するパート
・後パート40:第二積層体29を部分的にプレス加工するパート
【0030】
前パート30よりもMD方向下流側に後パート40が設けられ、前パート30と後パート40との間で第一積層体24にセンターシート5′(図示省略)が積層される。なお、前パート30と後パート40との間において、切断加工や貼合加工といった他の加工(図示省略)が実施されてもよい。
この前パート30は、図3に示すように、溝9′に沿うことなく第一積層体24を平面的にプレス加工する。一方、後パート40は、図4に示すように、溝9′に沿って第二積層体29を部分的にプレス加工する。
【0031】
上記の前パート30および後パート40でプレス加工される積層体24,29は、下記の三状態をなす。
・ 前状態 :前パート30でプレス加工される前の状態
・中間状態:前パート30のプレス加工後かつ後パート40のプレス加工前の状態
・ 後状態 :後パート40でプレス加工された後の状態
【0032】
積層体24,29は、図5に示すように、前状態,中間状態,後状態のそれぞれで横断面の形状(厚み方向の断面形状)が変化する。
前パート30で第一積層体24が全体的にプレス加工されて前状態から中間状態に遷移することから、前状態よりも中間状態のほうが第一積層体24の全体的な厚み寸法(厚み方向の寸法)が小さくなる。溝9′についても、中間状態の厚み寸法D1(第一寸法)のほうが前状態の厚み寸法D0よりも小さくなる。
【0033】
第二積層体29における溝9′が後パート40で部分的にプレス加工されて中間状態から後状態に遷移することから、中間状態よりも後状態のほうが第二積層体29における溝9′の厚み寸法(いわば深さ)が大きくなる。
そのほか、ここで説明する溝9′は、前状態および中間状態では、厚み方向の位置によらず幅寸法(幅方向に沿った寸法)が一定の角溝形状をなす。後状態では、肌面側から非肌面側に向かうにつれて幅寸法が小さくなすテーパー形状をなす。
【0034】
上述の三状態に積層体24,29をプレス加工する前パート30および後パート40には、図2に示すように、コンベア機構10の搬送速度に応じた速度で回転するロール3P,3A,4P,4Aが設けられている。
前パート30には第一積層体24のプレス用に下記のロール3P,3Aが設けられ、後パート40には第二積層体29のプレス用に下記のロール4P,4Aが設けられている。
【0035】
・フラットロール3P:フラットな外周面で第一積層体24をプレスするロール
・アンビルロール3A:フラットロール3Pによるプレス加工の台座となるロール
・ プレスロール4P:凸部50で第二積層体29の溝9′をプレスするロール
・アンビルロール4A:プレスロール4Pによるプレス加工の台座となるロール
【0036】
凸部50は、径方向外側に突出した状態でプレスロール4Pに取り付けられ、積層体24,29の溝9′に対応する箇所に配置されている。ここでは、溝9′がMD方向に沿って延びることから、プレスロール4Pの周方向に沿って延在する凸部50(いわば「凸条」)が設けられている。なお、凸部50の延在寸法は、溝9′の延在寸法よりもやや短く設定されている。
以下、図4を参照して、プレスロール4Pの凸部50について詳述する。
【0037】
凸部50は、その突出寸法D2(第二寸法)が中間状態の溝9′の厚み寸法D1図5参照)よりも大きく形成されている(D2>D1)。
突出寸法D2とは、凸部50がプレスロール4Pの径方向に突出する寸法である。詳細には、中間状態の第二積層体29に厚み方向へ進入する凸部50の寸法が突出寸法D2である。このように、凸部50において押圧方向の先端部5Tと基端部5Bとがプレスロール4Pの径方向に沿って離間する突出寸法D2は、凸部50でプレス加工される中間状態の溝9′の厚み寸法D1よりも大きく設定される。
【0038】
また、凸部50における基端部5Bは、中間状態の溝9′における開口9A′(図5参照)よりも大きく形成されている。詳細に言えば、基端部5BにおけるCD寸法(CD方向の寸法)W2は、中間状態の溝9′における開口9A′のCD寸法W1図5参照)よりも大きく設定されている(W1>W2)。
一方、凸部50における先端部5Tは、中間状態の溝9′における底部9B′(図5参照)よりも小さく形成されている。詳細に言えば、先端部5TにおけるCD寸法B2は、中間状態の溝9′における底部9B′のCD寸法B1図5参照)よりも小さく設定されている(B2<B1)。ただし、先端部5Tは、中間状態の溝9′における底部9B′と同じ大きさであってもよい(B1=B2)。
【0039】
さらに、凸部50は、先端部5Tのほうが基端部5Bよりも先細りのテーパー形状をなしている。換言すれば、プレスロール4Pの径方向に沿って外側に向かうにつれて、凸部50におけるプレスロール4Pの軸方向に沿う寸法が小さく設定されている。
そのほか、凸部50は、順繰りに搬送される第二積層体29の溝9′どうしの間隔に対応する周方向の間隔を空けて、プレスロール4Pに対して断続的に配置されている。このような断続配置により、プレスロール4Pが一回転する間に溝9′のプレス加工が連続的に実施される。
【0040】
[1-3.プレス方法]
つぎに、図6を参照して、上述したプレスパート34によるプレス方法を述べる。
このプレス方法では、前プレス工程(ステップS10)が実施されてから、後プレス工程(ステップS20)が実施される。このような二段階(多段階)のプレス工程が本プレス方法では実施される。
【0041】
前プレス工程は、前パート30によるプレス加工の工程である。この前プレス工程では、溝9′の設けられた第一積層体24を全体的に厚み方向へプレスする。
後プレス工程は、後パート40によるプレス加工の工程である。この後プレス工程では、第二積層体29の溝9′を厚み方向へ押圧する。
【0042】
上記の後プレス工程では、プレスパート34の説明で上述した寸法D1,D2や大きさの相対的な関係,凸部50のテーパー形状といった構成に応じて、以下に列挙する工程1~4が実施される。
・工程1:溝9′を押圧して深くする
・工程2:押圧方向の先端部のほうが基端部よりも先細りの形状に溝9′を押圧する
・工程3:溝9′を押圧して開口9A′を拡げる
・工程4:溝9′の底部9B′を拡げることなくプレスする
【0043】
上記の工程1~4に対応する構成1~4について、以下に列挙しておく。なお、構成1は工程1に対応し、同様に構成2~4は工程2~4に対応する。
・構成1:中間状態の溝9′の厚み寸法D1よりも突出寸法D2が大きいこと
・構成2:先細りのテーパー形状を凸部50がなすこと
・構成3:中間状態の溝9′の開口9A′の幅(CD寸法)よりも凸部50の基端部
5Bの幅(CD寸法)が大きいこと
・構成4:中間状態の溝9′の底部9B′の幅(CD寸法)よりも凸部50の先端部
5Tの幅(CD寸法)が小さいこと
【0044】
[2.作用および効果]
本実施形態のプレス方法およびプレスパート34は、上述のように構成されるため、以下のような作用および効果を得ることができる。
前プレス工程で第一積層体24が全体的にプレスされて浅くなった溝9′が後プレス工程で再びプレスされることから、溝9′の成形性を高めることができる。
詳細に言えば、前プレス工程のプレス加工後に溝9′が浅くなったり型崩れしたりしたとしても、このように成形性の低下した溝9′が後プレス工程で改めてプレス加工される。これにより、溝9′の形状を回復させることができ、第二積層体29ひいては尿パッド1の成形性を向上させることができる。
【0045】
さらに、後プレス工程では溝9′を押圧して深くすることから、プレスされた溝9′が深くさせられ、溝9′の成形性を確実に高めることができる。
そのうえ、後プレス工程で先細りのテーパー形状に溝9′がプレスされることから、肌面側から非肌面側に向かうにつれて幅寸法が小さくなすテーパー形状の溝9を尿パッド1に設けることができる。このような溝9の設けられた尿パッド1によれば、尿パッド1の着用者からの排泄物の拡散性や吸水性を向上させることができる。
【0046】
上記のように後プレス工程で溝9′の開口9A′が拡げられることから、溝9′の開口9A′が小さくなるような成形性の低下を確実に抑えることができる。この点からも、溝9′の成形性を高めることができる。
このように拡げられた溝9の設けられた尿パッド1によれば、着用者からの排泄物が溝9へ案内されやすくなり、吸水性の向上に資する。
【0047】
あるいは、後プレス工程で溝9′の底部9B′が拡げられることなくプレスされることから、溝9′の過剰な拡幅を抑えつつ成形性を向上させることができる。
このように底部9B′がプレスされることにより、溝9′を深くする成形やテーパー形状への成形にともなってコア3′の構成材料を円滑に移動させることが可能になる。換言すれば、コア3′の構成材料が移動するための余裕をもたせることにより、溝9′の成形性を向上させることができる。
【0048】
そのほか、底領域R1のほうが側領域R2よりも高吸水性樹脂の含有度合いが小さく設定されることから、溝9からの水分がコア3に吸収された際に、底領域R1における高吸水性樹脂の膨潤が抑えられる。よって、溝9の潰れを抑えることができる。
上記の領域R1,R2における高吸水性樹脂の密度勾配は、底領域R1よりも側領域R2のほうが高吸水性樹脂の含有度合いが大きいと言えることから、溝9から水分がコア3に吸収された際に、側領域R2における高吸水性樹脂の膨潤が促進されうる。これによって側領域R2が肌面側へ向けて膨潤すれば、溝9の深さが確保されうる。
【0049】
そのため、尿パッド1が装着者に着用された状態で排泄された際にも、溝9の成形性の低下を抑えることができる。
なお、プレスパート34によっても、上記のプレス方法による作用および効果を得ることができる。
【0050】
[II.その他]
上述した実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0051】
凸部50の形状には、上述の形状に限らず、種々の形状を採用することができる。具体的に言えば、図7に示すように、先端部5Tのほうが基端部5Bよりも先細り度合いが小さいテーパー形状の凸部50を用いてもよい。すなわち、先端部5Tよりも基端部5Bのほうが溝9′を拡げる度合いが大きい凸部50を用いてもよい。ここでいう「先細り度合い」や「拡げる度合い」は、凸部50の端縁が押圧方向に対して傾斜する角度に対応する。この傾斜角度が小さいほど、先細り度合いや拡げる度合いも小さい。
また、プレスロールの径方向(厚み方向)に沿って凸凹した凹凸部5Uが設けられた凸部50を用いてもよい。すなわち、溝9′の表面に凹凸を形成する凸部50を用いてもよい。
【0052】
上記のように段階的なテーパー形状の凸部50でプレスされた溝9′は、肌面側よりも非肌面側においてコア3′の構成材料の移動が小さい。このような溝9′によれば、排泄物が溝9に案内されやすくなる。あるいは、先細り度合いの大きいだけのテーパー形状をなす凸部(段階的なテーパー形状ではない凸部)と比較して、溝9に案内された排泄物の水分を吸収するコア3の体積(量)も確保される。そのため、溝9の表面に凹凸部5Uで形成された凹凸によって、着用者からの排泄物の拡散性向上や吸水性向上に資する。よって、尿パッド1を装着する着用者の快適性向上に資する。
【0053】
あるいは、後プレス工程や後パートでプレスされる箇所は、溝のように延在する凹部に限らず、延在せずに窪んだ凹部であってもよい。この場合には、凹部の形状に対応して凸部が延在せずに設けられる。また、凹部は一つの尿パッドにおいて複数が設けられてもよい。この場合には、凹部に応じた箇所に凸部が増設される。
なお、凸部は、プレスロールに取り付けられる形態に限らず、板材あるいは円弧状の底面を有する柱体といった種々の基材に取り付けられてもよい。
【0054】
そのほか、前プレス工程や前パートによるプレス加工において、前状態の凹凸形状に沿って積層体をプレスしてもよい。つまり、後プレス工程や後パート部で凹部をプレスするだけでなく、前プレス工程や前パート部においても凹部をプレスしてもよい。この場合には、前プレス工程のプレス加工による凹部の成形性低下が抑えられ、製品状態での成形性向上に資する。
【0055】
[III.付記]
以上の実施形態に関し、以下の付記を開示する。
〔付記1〕
厚み方向に窪んだ凹部を有するマット体を全体的に前記厚み方向へ押圧する前プレス工程と、
前記前プレス工程で押圧された前記マット体の前記凹部を前記厚み方向へ押圧する後プレス工程と、
を備えたことを特徴とするプレス方法。
〔付記2〕
前記後プレス工程は、前記凹部を押圧して深くする
ことを特徴とする付記1に記載のプレス方法。
〔付記3〕
前記後プレス工程は、押圧方向の先端部のほうが前記押圧方向の基端部よりも先細りのテーパー形状に前記凹部を押圧する
ことを特徴とする付記1または2に記載のプレス方法。
〔付記4〕
前記後プレス工程は、前記凹部を押圧して当該凹部の開口を拡げる
ことを特徴とする付記3に記載のプレス方法。
〔付記5〕
前記後プレス工程は、前記先端部のほうが前記基端部よりも前記凹部を拡げる度合いが小さい
ことを特徴とする付記4に記載のプレス方法。
〔付記6〕
前記後プレス工程は、前記凹部の底部を拡げることなく押圧する
ことを特徴とする付記3~5の何れか1項に記載のプレス方法。
〔付記7〕
前記後プレス工程は、前記凹部を押圧して当該凹部の表面に凹凸を形成する
ことを特徴とする付記1~6の何れか1項に記載のプレス方法。
〔付記8〕
厚み方向に窪んだ凹部を有するマット体を全体的に前記厚み方向へ押圧する前プレス部と、
前記前プレス部で押圧された前記マット体の前記凹部を前記厚み方向へ凸部で押圧する後プレス部と、
を備えたことを特徴とするプレス装置。
〔付記9〕
前記前プレス部で押圧された前記マット体において前記凸部で押圧される前の前記凹部における前記厚み方向の寸法である第一寸法よりも、前記凸部が前記厚み方向へ前記マット体に進入する寸法である第二寸法のほうが大きい
ことを特徴とする付記8に記載のプレス装置。
〔付記10〕
前記凸部は、押圧方向の先端部のほうが前記押圧方向の基端部よりも先細りのテーパー形状をなす
ことを特徴とする付記8または9に記載のプレス装置。
〔付記11〕
前記凸部の前記基端部は、前記前プレス部で押圧された前記マット体において前記後プレス部の前記凸部で押圧される前の前記凹部の開口よりも大きい
ことを特徴とする付記10に記載のプレス装置。
〔付記12〕
前記凸部は、前記先端部のほうが前記基端部よりも先細り度合いが小さい
ことを特徴とする付記11に記載のプレス装置。
〔付記13〕
前記先端部は、前記前プレス部で押圧された前記マット体において前記後プレス部の前記凸部で押圧される前の前記凹部の底部と同じまたは前記底部よりも小さい
ことを特徴とする付記10~12の何れか1項に記載のプレス装置。
〔付記14〕
前記凸部は、前記厚み方向に凸凹した凹凸部を有する
ことを特徴とする付記8~13の何れか1項に記載のプレス装置。
【符号の説明】
【0056】
1 尿パッド
2 吸収体
3,3′ コア
4 ラップシート
4U,4U′ アッパシート
4L,4L′ ロアシート
5,5′ センターシート
6 サイドシート
7 バックシート
8 カバーシート
9,9′ 溝(凹部)
9A′ 開口
9B,9B′ 底部
9C 側部
10 コンベア機構
20 フォームパート(フォーム部)
21 ダクト
21a 下流端部
22 ドラム
24 第一積層体(第一マット体)
29 第二積層体(第二マット体)
30 前パート(前プレス部)
3P フラットロール
3A アンビルロール
34 プレスパート(プレス装置)
40 後パート(後プレス部)
4P プレスロール
4A アンビルロール
50 凸部
5B 基端部
5T 先端部
5U 凸凹部
1 溝の底部のTD寸法
2 凸の先端部のTD寸法
0 前状態の溝9′の厚み寸法
1 中間状態の溝9′の厚み寸法(第一寸法)
2 突出寸法(第二寸法)
1 底領域
2 側領域
1 溝の開口のTD寸法
2 凸部の基端部のTD寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7