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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/68 20060101AFI20240827BHJP
   B65H 5/38 20060101ALI20240827BHJP
   B65H 3/52 20060101ALI20240827BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20240827BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B65H3/68
B65H5/38
B65H3/52 310G
B65H3/06 A
B41J2/01 305
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020043870
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2020158307
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2019054152
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】橋本 麻美
(72)【発明者】
【氏名】金澤 学郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 陽一郎
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-209316(JP,A)
【文献】特開2016-135709(JP,A)
【文献】特開2007-217163(JP,A)
【文献】実開平06-063538(JP,U)
【文献】特開2017-132231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0236059(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B65H 5/36
B65H 5/38
B65H 29/52
B65H 11/00-11/02
B41J 2/01
B41J 2/165-2/20
B41J 2/21-2/215
G03G 13/00
G03G 15/00
G03G 21/16-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を収容する収容部と、
前記収容部に収容された記録媒体を給紙する給紙ローラと、
前記給紙ローラにより給紙された記録媒体を搬送方向に搬送するための搬送経路と、
前記搬送経路の一部を区画すると共に、前記搬送経路を外部から遮蔽する閉状態と前記搬送経路を外部に露出させる開状態との間で回動軸を中心に回動可能な回動部材と、
上下方向に延在し且つ前記回動軸と嵌合し、前記閉状態の前記回動部材を上方の第1位置と下方の第2位置との間で変位可能にガイドするガイド部と、
前記回動部材を前記第2位置から前記第1位置に向けて付勢する付勢部材と、
前記第1位置にある前記回動部材と係合して前記第1位置から前記開状態となる第3位置への前記回動部材の回動を規制すると共に、前記第2位置から前記第3位置への前記回動部材の回動を規制しないフレームと、を備え、
前記回動部材は、
前記搬送経路の一部を区画すると共に記録媒体を前記搬送方向にガイドする本体部と、
前記本体部に設けられ、前記第1位置のときに前記フレームに係合される被係合部と、
前記本体部に設けられ、前記本体部を前記付勢部材の付勢方向とは逆方向に操作された場合に前記本体部を前記第3位置への回動が可能となる前記第2位置に移動させる操作部と、を有しており、
前記本体部は記録媒体を前記搬送方向に沿って前記付勢方向と同じ上方へガイドするガイド面を有しており、
前記搬送方向において前記給紙ローラと前記第1位置にある前記回動部材の前記ガイド面との間に設けられ、複数の記録媒体が重なり合って送られるのを防ぐべく前記複数の記録媒体を分離する分離部をさらに備え、
前記回動部材には、当該回動部材が前記第2位置に位置した際に前記分離部との干渉を防ぐ凹部が設けられている、搬送装置。
【請求項2】
記録媒体を収容する収容部と、
前記収容部に収容された記録媒体を給紙する給紙ローラと、
前記給紙ローラにより給紙された記録媒体を搬送方向に搬送するための搬送経路と、
前記搬送経路の一部を区画すると共に、前記搬送経路を外部から遮蔽する閉状態と前記搬送経路を外部に露出させる開状態との間で回動軸を中心に回動可能な回動部材と、
上下方向に延在し且つ前記回動軸と嵌合し、前記閉状態の前記回動部材を上方の第1位置と下方の第2位置との間で変位可能にガイドするガイド部と、
前記回動部材を前記第2位置から前記第1位置に向けて付勢する付勢部材と、
前記第1位置にある前記回動部材と係合して前記第1位置から前記開状態となる第3位置への前記回動部材の回動を規制すると共に、前記第2位置から前記第3位置への前記回動部材の回動を規制しないフレームと、を備え、
前記回動部材は、
前記搬送経路の一部を区画すると共に記録媒体を前記搬送方向にガイドする本体部と、
前記本体部に設けられ、前記第1位置のときに前記フレームに係合される被係合部と、
前記本体部に設けられ、前記本体部を前記付勢部材の付勢方向とは逆方向に操作された場合に前記本体部を前記第3位置への回動が可能となる前記第2位置に移動させる操作部と、を有しており、
前記回動軸は前記回動部材に設けられ、
前記回動部材が前記第2位置から前記第3位置へ回動するに従って、前記回動軸を前記第2位置よりも下方に案内する案内機構をさらに備えた、搬送装置。
【請求項3】
前記案内機構は、前記回動部材に設けられて曲面状の摺動面を有するカム部と、前記回動部材の回動時に前記カム部の前記摺動面に摺接する摺動部とを有する、請求項に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記回動部材の上部には、前記搬送経路の一部を区画すると共に、前記回動部材が前記第1位置にあるときに、前記フレームの下端よりも上方に位置する上端を有するガイドフラップが設けられている、請求項2又は3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記案内機構は、前記回動部材が前記第2位置と前記第3位置との間で回動する際に、前記ガイドフラップが前記フレームの下端を通過するまでの間、前記回動軸を前記第2位置よりも下方に案内する、請求項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記搬送方向において前記回動部材よりも下流側に配置されて駆動軸を有する搬送ローラと、記録媒体に対して記録を行う記録部を支持するキャリッジと、前記キャリッジを支持するガイドフレームと、をさらに備え、
前記駆動軸および前記ガイドフレームは、前記フレームに支持されている、請求項1乃至の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記操作部は、前記本体部において主走査方向の中央に配置されている、請求項1乃至の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記操作部は、前記本体部の上端部に設けられる、請求項1乃至の何れか1項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ等の画像記録装置に用いられる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタの背面側には、給紙ローラから給紙されたシートが搬送される搬送経路の一部を構成する背面カバーが設けられている。背面カバーは、ジャム処理時にユーザがシートへアクセスできるように、上記搬送経路を区画する閉位置と当該搬送経路を開放する開位置との間で移動可能に構成されている。
【0003】
上述の通り、背面カバーは、搬送経路を区画しているため、当該搬送経路を搬送されるシートから力を受ける。このとき、シートから受ける力は背面カバーを閉位置から開位置へ付勢する力となる。そのため、シートから受ける力によって開位置へと移動しないように背面カバーを閉位置に確実に保持する必要がある。一方、ジャム処理時には、ユーザが背面カバーを手動で操作して閉位置から開位置へ移動させる構成が一般的であるため、ユーザが大きな力をかけずとも背面カバーを容易に閉位置から開位置へ移動できるよう、高い操作性を確保することも必要である。
【0004】
上記のような要求を達成するため、次のようなものが開示されている。例えば特許文献1には、背面カバーの内部に可動式のロック部品を別で設けて、当該背面カバーの閉位置でのロックと軽快な開放の実現を図るものが開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、専用のロック部品を設けずに、背面カバーが閉位置にある状態を保持するために樹脂製の背面カバー本体の弾性を利用することで、部品点数を減らすと共に背面カバー全体としての剛性を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-166623号公報
【文献】特開2009-179447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、背面カバーにロック部品を設けることで部品点数が増加するため、背面カバー全体としての剛性が低下し、またコストアップや背面カバーとロック部品との位置決め精度の低下などを招いていた。また、特許文献2の技術では、樹脂製部材の弾性を利用することで部品点数の削減に寄与はするが、背面カバーを閉位置に保持する保持力(保持荷重)を大きくしようとすると、当該背面カバーの開閉時の操作性が悪くなるといったトレードオフの関係を招いていた。
【0008】
そこで、本発明は、背面カバーである回動部材を閉位置に保持するためのロック部品を設けることなく、当該回動部材の閉位置における保持および軽快な開閉操作性を両立させて実現することができる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の搬送装置は、記録媒体を収容する収容部と、前記収容部に収容された記録媒体を給紙する給紙ローラと、前記給紙ローラにより給紙された記録媒体を搬送方向に搬送するための搬送経路と、前記搬送経路の一部を区画すると共に、前記搬送経路を外部から遮蔽する閉状態と前記搬送経路を外部に露出させる開状態との間で回動軸を中心に回動可能な回動部材と、上下方向に延在し且つ前記回動軸と嵌合し、前記閉状態の前記回動部材を上方の第1位置と下方の第2位置との間で変位可能にガイドするガイド部と、前記回動部材を前記第2位置から前記第1位置に向けて付勢する付勢部材と、前記第1位置にある前記回動部材と係合して前記第1位置から前記開状態となる第3位置への前記回動部材の回動を規制すると共に、前記第2位置から前記第3位置への前記回動部材の回動を規制しないフレームと、を備え、前記回動部材は、前記搬送経路の一部を区画すると共に記録媒体を前記搬送方向にガイドする本体部と、前記本体部に設けられ、前記第1位置のときに前記フレームに係合される被係合部と、前記本体部に設けられ、前記本体部を前記付勢部材の付勢方向とは逆方向に操作された場合に前記本体部を前記第3位置への回動が可能となる前記第2位置に移動させる操作部と、を有するものである。
【0010】
本発明に従えば、付勢部材により回動部材を第1位置に向けて付勢して当該回動部材の被係合部をフレームに係合させることによって、回動部材を第1位置である閉位置にて保持(ロック)することができる。これにより、回動部材を閉位置に保持するためのロック部品を設けることなく、回動部材を閉位置にて保持することができる。また、回動部材を樹脂製にしてその弾性を利用することに起因して、回動部材を閉位置に保持する保持力を大きくしなければならないといった必要性が本発明では生じない。このため、上記保持力の増大化とトレードオフの関係にある、回動部材の開閉時の操作性が悪くなることがない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、背面カバーを閉位置に保持するためのロック部品を設けることなく、当該背面カバーの閉位置における保持および軽快な開閉操作性を両立させて実現することができる搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る搬送装置が適用される画像記録装置の斜視図である。
図2図1の画像記録装置の搬送装置の構成を示す模式図である。
図3図1の回動部材を後方から見た斜視図である。
図4図1の回動部材を側方から見た模式図である。
図5図1の回動部材を前方から見た斜視図である。
図6図1の回動部材が第2位置にあるときの画像記録装置の内部構成を示す断面図である。
図7】案内機構の詳細な構成を示す側面図である。
図8図1の回動部材が第3位置(開位置)にあるときの画像記録装置の内部構成を示す断面図である。
図9図1の回動部材が開状態であるときの画像記録装置を示す斜視図である。
図10】変形例の搬送装置における回動部材を側方から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る搬送装置について図面を参照して説明する。この搬送装置は例えばインクジェットプリンタ等の画像記録装置に適用される。以下に説明する搬送装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0014】
以下では、画像記録装置としてインクジェットプリンタを例に挙げて説明するが、画像記録装置はこれに限られるものではなく、例えばレーザープリンタや感熱式プリンタ等の他のプリンタであってもよい。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の搬送装置1が適用される画像記録装置10は例えば直方体状の筐体2を備えている。搬送装置1の構成要素の一部および印刷ユニットは筐体2内に設けられ、他の一部は外部に露出するように設けられている。なお、筐体2上にスキャナユニットが設けられてもよい。
【0016】
図2に示すように、本実施形態の搬送装置1は、シート(記録媒体)Kを収容する収容部(給紙トレイ)11と、給紙ローラ12と、駆動軸13aを有する搬送ローラ13と、排出ローラ14と、排出トレイ15と、収容部11から排出トレイ15に至るまでに形成された搬送経路Hと、回動部材(背面カバー又はシュートカバーとも称呼される)16とを備えている。
【0017】
搬送ローラ13は搬送方向において回動部材16よりも下流側に配置されている。収容部11は筐体2内の下部に配置されている。この収容部11に収容されているシートKは給紙ローラ12により回動部材16の内側面を介して搬送ローラ13に向けて搬送される。また、シートKは搬送ローラ13により後述のプラテン20に向けて搬送され、印刷処理が行われた後、排紙ローラ14に向けて搬送される。さらに、シートKは排出ローラ14により排出トレイ15に向けて搬送される。
【0018】
上述の搬送経路Hのうちの搬送ローラ13と排出ローラ14との間の部分の下方にはプラテン20が設けられており、プラテン20の上方にはノズルからインクを吐出する吐出ヘッド(記録部)22が取り付けられたキャリッジ21が設けられている。キャリッジ21は左右方向(主走査方向)に延在するガイドフレーム21aに移動可能に支持されている。このガイドフレーム21aおよび搬送ローラ13の駆動軸13aは、画像記録装置10の筐体2内に設けられて前後方向に延在する部分を有するフレーム50に支持されている。
【0019】
このような構成において、収容部11から給紙されたシートKは給紙ローラ12により回動部材16の内側面を介して搬送ローラ13に向けて搬送される。その後、シートKは搬送ローラ13により吐出ヘッド22の下方まで搬送される。そこで吐出ヘッド22により画像がシートKに印刷され、画像が印刷されたシートKは排出ローラ14により排出トレイ15へ排出される。このようにして、シートKは収容部11から排出トレイ15に至るまでに形成された搬送経路Hに沿って搬送される。なお、搬送経路Hには、上述の搬送ローラ13の他に、別の搬送ローラが設けられてもよい。
【0020】
回動部材16は筐体2の背面側(後側)に設けられている。回動部材16は大略板状に形成されている。回動部材16は、一対の回動軸16aを有しており、搬送経路Hを外部から遮蔽する閉状態と当該搬送経路Hを外部に露出させる開状態との間で回動軸16aを中心に回動可能に構成されている。回動部材16は、閉状態において後述の付勢部材36(図4参照)により上方に付勢されることで第1位置P1に位置される。これに対して、回動部材16は、ユーザが後述の操作部27を操作して付勢部材36による付勢力に抗して押し下げられ、第1位置P1の下方に位置する第2位置P2に位置される。また、回動部材16は、回動軸16aを介して第2位置P2から回動することで、開状態である第3位置P3に位置されるようになっている。回動部材16は搬送経路Hの一部を区画するように配置されている。詳細には、給紙ローラ12により給紙されたシートKは、第1位置P1(閉状態)にある回動部材16の内側面に接触しつつ搬送ローラ13へ送られるようになっている。
【0021】
図3に示すように、回動部材16は、本体部25と、当該本体部25に設けられた一対の被係合部26と、本体部25に設けられた操作部27と、本体部25に設けられたガイドフラップ28とを有している。なお、図3においてDsは主走査方向であり、Dfは主走査方向Dsに直交する副走査方向である。
【0022】
本体部25は、上述した搬送経路H(図2)の一部を区画するものであり、シートKを搬送経路Hに沿ってガイドする機能を有している。具体的には、本体部25は、シートKを搬送方向に沿って後述の付勢部材36による付勢方向と同じ上方向へガイドするガイド面25b(図2図5参照)を有している。本体部25は主走査方向Dsに延在するように形成され、副走査方向Dfに厚みを有する部分を含む。本体部25の主走査方向Dsの両側の各々の下端には上述した回動軸16aを支持する支持部材25aが設けられている。各回動軸16aは支持部材25aに支持された状態で主走査方向Dsに沿って外側に向けて延在する。
【0023】
被係合部26は、本体部25の主走査方向Dsの両側の各々の上端に設けられている。被係合部26は、副走査方向Dfに延在する被係合本体部26aと、この被係合本体部26aに設けられて上方に突出する爪部26bとを有している。図4に示すように、爪部26bは、回動部材16が第1位置P1(閉状態)にあるときに本体部25の上端よりも高い位置に位置される。また、同図に示すように、爪部26bは、回動部材16が第1位置P1にあるときに、筐体2内に設けられた後述のフレーム50に係合される。このように爪部26bがフレーム50に係合することで、回動部材16の閉状態が保持(ロック)されるようになっている。これにより、回動部材16が閉状態から開状態(第3位置P3)に移動しないように、回動部材16の回動が規制される。
【0024】
操作部27は、本体部25の厚み部分を切り欠くようにして形成された溝部から成る。この操作部27の幅(主走査方向Dsにおける長さ)は、ユーザの1本の指(例えば人差し指)の最大幅よりも大きく設定されている。これにより、ユーザはその指を操作部27上に配置した状態で、後述の付勢部材36による上方に向けての付勢力に抗して本体部25を押し下げることができる。また、操作部27は本体部25において主走査方向Dsの中央に配置されている。これによって、ユーザによる操作部27の操作によって生じる押圧力が本体部25の主走査方向Dsの中央から両端に向けて均等に伝達されるため、当該本体部25を傾かせることなく下降させることができる。以上のような構成によって、ユーザは、本体部25を第3位置P3への回動が可能となる第2位置P2に移動させることができる。また、図3に示すように、操作部27は、本体部25の上端部に設けられている。これによって、例えばユーザは画像記録装置10の前方からでも操作部27へ容易にアクセスすることが可能となる。ユーザが画像記録装置10の前方から回動部材16を開けようとした場合、仮に操作部27が回動部材16の後面に設けられていると、ユーザは画像記録装置10の後方まで手を回さなければならず、回動部材16を開ける作業を実行しづらい。本実施形態では操作部27が本体部25の上端部に設けられているため、画像記録装置10の後方まで手を伸ばさずとも容易に操作部27へアクセスすることができる。また、操作部27を下方に押すだけで回動部材16のロックが解除されるため、容易に回動部材16を開けることができ、例えばジャム処理時のユーザの操作性が向上する。
【0025】
図5に示すように、ガイドフラップ28は、回動部材16の上部に設けられ、当該回動部材16と同様に搬送経路Hの一部を区画する。ガイドフラップ28は、搬送ローラ13の側の部分を曲面状に形成した曲面部28aを有している。シートKは本体部25のガイド面25bに案内された後、この曲面部28a上を摺動することで搬送ローラ13に向かって搬送される。ガイドフラップ28は、回動部材16が第2位置P2にあるときに、フレーム50の下端とほぼ同じ高さ又は当該下端よりも上方に位置する上端28bを有する。
【0026】
また、図5に示すように、画像記録装置10には分離部30が設けられている。分離部30は回動部材16の下方に配置されている。分離部30は、搬送方向において給紙ローラ12と、第1位置P1にあるときの回動部材16のガイド面25bとの間に設けられている。分離部30は、搬送方向に沿って形成された傾斜面を有し、当該傾斜面上に突出して搬送方向に並設された複数の突起31を有している。このような構成において、複数のシートKが重なり合って分離部30まで搬送されてきた際に、下側のシートKが分離部30の上記突起31に引っ掛かることで上側のシートKから分離される。これによって、複数のシートKが重なり合った状態で分離部30の下流側に搬送されることを防ぐことができる。
【0027】
また、回動部材16には、当該回動部材16が第1位置P1から第2位置P2に位置した際に、分離部30の上部との干渉を防ぐ凹部32が設けられている。これによって、回動部材16を第2位置P2に移動させた際に、当該回動部材16と分離部30との干渉が生じないようになっている。
【0028】
ここで、図4に戻り、画像記録装置10の筐体2内には、一対の回動軸16aの各々に対応して一対のガイド部35が設けられている。このガイド部35は、回動部材16の第1位置P1に対応する位置と回動部材16の第2位置P2に対応する位置との間で回動軸16aが往復動(上下動)し得るように上下方向に延在しており、回動軸16aと嵌合されて当該回動軸16aをガイドするものである。このようなガイド部35は、例えば筐体2内の両側壁にそれぞれ溝状に形成することができる。
【0029】
回動部材16の下方には付勢部材36が設けられている。付勢部材36は例えばバネである。この付勢部材36の上端には押圧部材36aが接続されている。付勢部材36の下端は筐体2内に設けられたベース51に接続されている。回動部材16は通常時には付勢部材36により第2位置P2から第1位置P1に向けて付勢されている。これにより、被係合部26の爪部26bがフレーム50の鉛直部分に係合するので、回動部材16は第1位置P1にあるときには回動しないようロックされる。このようにフレーム50は回動部材16の第1位置P1における位置決めを行う。これに対して、ユーザが操作部27を押し下げると、回動軸16aが付勢部材36の付勢力に抗してガイド部35にガイドされつつ下方に移動するため、これに伴って本体部25は下方に移動して第2位置P2に位置する。このような構成によって、回動部材16を第1位置P1から第2位置P2に変位させることができる。
【0030】
回動部材16を第1位置P1からその下方の第2位置P2に移動させると、図7に示すように被係合部26の爪部26bのフレーム50に対する係合が解除される。すなわち、フレーム50による、回動部材16の第2位置P2から第3位置P3への回動の規制がなくなる。これにより、ユーザは、回動部材16を第2位置P2から第3位置P3に向けて回動させることで開状態にすることができる。
【0031】
次いで、搬送装置1には、図7に示すように、回動部材16が第2位置P2から第3位置P3へ回動するに従って、付勢部材36(図4参照)の付勢力にさらに抗して回動部材16を第2位置P2よりも下方に案内する案内機構40が設けられている。案内機構40はカム部41および摺動部42を有している。カム部41は、回動軸16aに連結されていると共に、直線面41a1および当該直線面41a1に連続した曲面41a2を含む摺動面41aを有している。カム部41の曲面41a2は、回動軸16aを中心として形成された円弧の面である。
【0032】
摺動部42は、回動部材16の回動時にカム部41の摺動面41aに摺接する。摺動部42は、筐体2内に設けられ、側面視で例えばL字状に形成された部材である。図7に示すように、摺動部42のうちの上下に延在する部分の下端は、カム部41の直線面41a1の摺接開始部分の高さとほぼ同じ高さに配置されている。カム部41が摺動部42を摺接する前において、直線面41a1の摺接終了部分はその摺接開始部分よりも高い位置に配置されている。すなわち、図7に示すカム部41の状態において、直線面41a1は右肩上がりに傾斜している。
【0033】
このような構成を有する案内機構40は、回動部材16が第2位置P2と第3位置P3との間で回動する際に、ガイドフラップ28がフレーム50の下端を通過するまでの間、回動部材16を当該回動部材16が第2位置P2にある時の位置よりも下方に案内する。詳しくは、回動部材16が第2位置P2から第3位置P3に向かって回動し始める際に、傾斜配置された直線面41a1に摺動部42が摺接することでカム部41が徐々に下方に移動するよう押さえ付けられた状態で回動する。これにより、回動部材16の本体部25は付勢部材36の付勢力にさらに抗して第2位置P2よりも下方に案内されつつ回動する。これによって、回動部材16を第2位置P2から第3位置P3に回動させる際に当該回動部材16に設けられたガイドフラップ28の上端28bがフレーム50の下端に接触することを回避しながら、回動部材16を図8および図9に示すように第3位置P3(開位置)まで回動させることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の搬送装置1によれば、付勢部材36により回動部材16を第1位置P1に向けて付勢して当該回動部材16の被係合部26をフレーム50に係合させることによって、回動部材16を第1位置P1(閉状態)に保持させることができる。これにより、回動部材を閉状態に保持するためのロック部品を設けることなく、回動部材16を容易に閉状態に保持することができる。また、回動部材を樹脂製にしてその弾性を利用することに起因して、回動部材を閉位置に保持する保持力を大きくしなければならないといった必要性が生じない。このため、上記保持力の増大化とトレードオフの関係にある、回動部材16の開閉時の操作性が悪くなることがない。
【0035】
また、本実施形態では、本体部25がシートKを搬送方向に沿って上方へガイドするガイド面25bを有している。ガイド面25bがシートKから受ける力の向きは、付勢部材36が回動部材16を第1位置P1に付勢する向きと同じであるため、回動部材16がシートKから受ける力によって閉状態から開状態へ移動することが抑制される。このように、簡易な構成で回動部材16の閉状態を保持することができる。
【0036】
また、本実施形態では、複数のシートKが重なり合って分離部30まで搬送されてきた際に、下側のシートKが分離部30によって上側のシートKから分離される。これによって、複数のシートKが重なり合った状態で分離部30の下流側に搬送されるのを防ぐことができる。
【0037】
また、本実施形態では、回動部材16が第2位置P2から第3位置P3に向かって回動する際に、ガイドフラップ28がフレーム50の下端を通過するまでの間、回動部材16が第2位置P2にある時の位置よりも下方に案内される。これによって、ガイドフラップ28の上端28bがフレーム50の下端に接触することを回避することができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、ガイドフレーム21aおよび搬送ローラ13の駆動軸13aが、回動部材16の第1位置P1における位置決めを行うフレーム50に支持されている。このような構成によって、フレーム50により回動部材16、搬送ローラ13および吐出ヘッド22が位置決めされるので、吐出ヘッド22に対するシートKの搬送精度を向上することができる。これにより、シートKにおける画像記録の乱れを防止又は抑制することができる。
【0039】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0040】
上記実施形態では、付勢部材36としてバネを採用することとしたが、これに限らず、例えば弾性体などの他の付勢部材を用いてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、操作部27を本体部25の厚み部分を切り欠くようにして形成した溝部として構成したが、これに限定されるものではなく、例えば本体部25から後方に突出した突起部などで操作部27を構成することも可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、ガイド部35を筐体2内の壁に溝状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば筐体2の壁に支持された所定厚さの板部材に溝を形成し当該溝をガイド部35として採用してもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、シートKの搬送経路Hとして、収容部11からシートKを回動部材16に向けて送り出し、当該回動部材16上を移動した後、前方に向けて搬送する経路を採用したが、シートKが回動部材16上を移動する経路(つまり、回動部材16により搬送経路Hの一部が区画されているもの)が搬送経路Hに含まれていれば、当該搬送経路Hは上記経路に限定されるものではない。
【0044】
さらに、上記実施形態では、回動軸16aが回動部材16に設けられ、ガイド部35が筐体2に設けられる構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば図10に示すように回動軸16aが筐体2に設けられ、ガイド部35が回動部材16に設けられる構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 搬送装置
10 画像記録装置
11 収容部
12 給紙ローラ
13 搬送ローラ
13a 駆動軸
16 回動部材
16a 回動軸
21 キャリッジ
21a ガイドフレーム
22 吐出ヘッド(記録部)
25 本体部
25b ガイド面
26 被係合部
27 操作部
28 ガイドフラップ
30 分離部
32 凹部
35 ガイド部
36 付勢部材
40 案内機構
41 カム部
41a 摺動面
42 摺動部
50 フレーム
Df 副走査方向
Ds 主走査方向
H 搬送経路
K シート(記録媒体)
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10